(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】光源モジュール及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20220405BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220405BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20220405BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20220405BHJP
F21S 41/00 20180101ALI20220405BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220405BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/00 L
H01L33/60
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21S41/00
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2017143552
(22)【出願日】2017-07-25
【審査請求日】2020-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】特許業務法人プロウィン特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】時田 主
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-106389(JP,A)
【文献】特開2005-050838(JP,A)
【文献】特開2007-116109(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086251(WO,A1)
【文献】特開2016-066680(JP,A)
【文献】特開2017-108092(JP,A)
【文献】特開2014-007206(JP,A)
【文献】特開2013-258161(JP,A)
【文献】特開2012-069430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268851(US,A1)
【文献】特開2007-180066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に配線パターンが形成された搭載基板と、
前記一方の表面に搭載され前記配線パターンと電気的に接続された複数の発光素子を有する光源部と、
前記光源部からの光を反射する光学部材を備え、
前記搭載基板の前記配線パターン上にはレジスト層が形成されており、
前記搭載基板上の光学部材搭載領域には、
前記配線パターンおよび前記レジスト層が形成されておらず、前記光学部材搭載領域に前記光学部材を搭載したことを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光源モジュールであって、
前記搭載基板は金属板とガラスエポキシ樹脂層の積層構造で構成されており、
前記光学部材搭載領域は、前記ガラスエポキシ樹脂層が露出していることを特徴とする光源モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光源モジュールであって、
前記光源部は前記ガラスエポキシ樹脂層を介さず前記発光素子が前記金属板に搭載されており、
前記発光素子の高さ寸法は、前記ガラスエポキシ樹脂層の厚さ寸法より大きいことを特徴とする光源モジュール。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の光源モジュールであって、
前記光学部材搭載領域は、前記光源部を挟んで一対設けられており、
前記光源部は、複数の発光素子が第一方向に沿って配列され、
複数の前記発光素子の発光中心線の延長線上において、前記光学部材が固定されることを特徴とする光源モジュール。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の光源モジュールを備え、
前記一方の表面には、前記配線パターンと電気的に接続された給電コネクタが搭載され、前記給電コネクタを介して複数の前記発光素子に対して選択的に電力を供給することを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源モジュール及び車両用灯具に関し、特に素子搭載基板の表面に複数の発光ダイオードを設ける光源モジュールおよび車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。このようなADB技術では、複数のLED(Light Emitting Diode)などの発光素子を基板上に列状に搭載して、車両や歩行者に対応する領域のLEDを消灯するものも提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
さらに近年では、発光素子を基板上に二次元的に多数配置して、選択的に発光素子の消灯と点灯を切り替えることでハイビームの配光パターンをより詳細に制御するものも提案されている。このような二次元的な発光素子の配列を行う車両用灯具では、二次元的な配光パターンを良好に照射するために、発光素子の実装密度を上げるとともに実装位置の精度を向上させる必要がある。発光素子としてLEDを用いる場合には、表面実装型のパッケージを採用して、基板上に形成したランドに個々のLEDを位置決めして実装する構造を採用して高密度に実装している。
【0005】
図10は、従来から提案されているADB技術を用いた光源モジュール1を示す模式平面図である。
図10に示すように従来の光源モジュール1は、基板2上に外部と電気的に接続するためのコネクタ3が搭載され、基板2の表面にはコネクタ3から延長して配線パターン4が形成され、配線パターン4上に複数のLED5が搭載されている。また、配線パターン4での意図しない光の反射を抑制するために基板2の表面をレジスト層で覆い、LED5からの光を所望の配光特性で反射するために、基板2上に光学部材を搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の光源モジュール1では、基板2の表面を覆うレジスト層を塗布により形成しているため、膜厚の均一性を向上するにも限界があった。設計と異なる膜厚のレジスト層上に光学部材を搭載すると、光学部材の焦点位置にLEDを正確に位置合わせすることができず、車両用灯具として照射する配光特性を得られないという問題が生じる。特にADB技術では、光の照射領域と非照射領域を精密に制御する必要があるため、光学部材とLEDの相対的位置関係の調整は通常の車両用灯具よりもシビアな問題となる。
【0008】
そこで本発明は、高密度に発光素子を実装しながらも光学部材とLEDの相対的位置関係を精密に位置合わせすることが可能な光源モジュール及び車両用灯具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光源モジュールは、一方の表面に配線パターンが形成された搭載基板と、前記一方の表面に搭載され前記配線パターンと電気的に接続された複数の発光素子を有する光源部と、前記光源部からの光を反射する光学部材を備え、
前記搭載基板の前記配線パターン上にはレジスト層が形成されており、前記搭載基板上の光学部材搭載領域には、前記配線パターンおよび前記レジスト層が形成されておらず、前記光学部材搭載領域に前記光学部材を搭載したことを特徴とする。
【0010】
このような本発明の光源モジュールでは、搭載基板の光学部材搭載領域ではレジスト層が除去されており、レジスト層の膜厚が設計値と異なっていても光学部材を所望の位置に固定することができ、高密度に発光素子を実装しながらも光学部材とLEDの相対的位置関係を精密に位置合わせすることができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記搭載基板は金属板とガラスエポキシ樹脂層の積層構造で構成されており、前記光学部材搭載領域は、前記ガラスエポキシ樹脂層が露出している。
【0012】
また本発明の一態様では、前記光源部は前記ガラスエポキシ樹脂層を介さず前記発光素子が前記金属板に搭載されており、前記発光素子の高さ寸法は、前記ガラスエポキシ樹脂層の厚さ寸法より大きい。
【0013】
また本発明の一態様では、前記光学部材搭載領域は、前記光源部を挟んで一対設けられており、前記光源部は、複数の発光素子が第一方向に沿って配列され、複数の前記発光素子の発光中心線の延長線上において、前記光学部材が固定される。
【0014】
また上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、上記何れか一つに記載の光源モジュールを備え、前記一方の表面には、前記配線パターンと電気的に接続された給電コネクタが搭載され、前記給電コネクタを介して複数の前記発光素子に対して選択的に電力を供給することを特徴とする。
【0015】
このような本発明の車両用灯具では、高密度に発光素子を実装しながらも光学部材とLEDの相対的位置関係を精密に位置合わせすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、高密度に発光素子を実装しながらも光学部材とLEDの相対的位置関係を精密に位置合わせすることが可能な光源モジュール及び車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における車両用灯具100を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態における光源モジュール40を示す模式斜視図である。
【
図3】第1実施形態における搭載基板41を示す模式平面図である。
【
図4】第1実施形態における搭載基板41の構造を詳細に説明する図であり、
図4(a)は分解斜視図であり、
図4(b)は模式断面図である。
【
図5】搭載基板41上に各部材を搭載した状態の光源モジュール40を示す模式平面図である。
【
図6】サブマウント43を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図7】発光部搭載領域49にサブマウント43を搭載した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】発光部搭載領域49周辺を拡大して示す拡大平面図である。
【
図9】第2実施形態において隣接する発光素子43cからの合成光度を示すグラフであり、
図9(a)は発光素子43cの距離が遠くて合成光度が不十分である例を示し、
図9(b)は発光素子43cの距離が近くて合成光度が十分である例を示している。
【
図10】従来から提案されているADB技術を用いた光源モジュール1を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態における車両用灯具100を示す分解斜視図である。車両用灯具100は、レンズ10と、レンズホルダ20と、リフレクタ30と、光源モジュール40と、ヒートシンク50と、冷却ファン60とを備え、各部材が相互に位置決めされて図示しない固定手段で固定されている。
【0019】
レンズ10は、透光性材料で構成されて光源モジュール40からの光を所定の配光分布となるように前方に照射するための部材である。レンズホルダ20は、レンズ10と光源モジュール40およびリフレクタ30との相対的位置関係を維持した状態で保持するための部材である。リフレクタ30は、光源モジュール40の前方に配置されて光源モジュール40からの光を前方に反射する部材であり、本発明における光学部材に相当している。
【0020】
光源モジュール40は、車両用灯具100の外部から供給される電力および信号に応じて発光する部材であり、詳細は後述する。ヒートシンク50は、光源モジュール40の背面で光源モジュール40に接触して配置された熱伝導性の良好な部材であり、背面側に放熱フィンが形成されている冷却ファン60は、ヒートシンク50の背面側に配置されて、電力が供給されることで空気の流れを生じさせる部材である。
【0021】
車両用灯具100では、外部から電力および信号が供給されると、光源モジュール40が電力と信号に応じて発光し、リフレクタ30で前方に反射された光がレンズホルダ20内およびレンズ10を介して前方に照射される。また、光源モジュール40の発光に伴う熱はヒートシンク50を介して空気中に放熱され、冷却ファン60からの送風によって冷却される。
【0022】
図2は、本実施形態における光源モジュール40を示す模式斜視図である。光源モジュール40は、搭載基板41と、配線パターン42と、サブマウント43と、給電コネクタ44と、金属ワイヤ45aと、光吸収性樹脂部45と、レジスト層46とを備え、搭載基板41には光学部材搭載領域47が形成されており、光学部材搭載領域47内には光学部材固定部48が形成されている。
【0023】
搭載基板41は、熱伝導性が良好な材料で形成された略平板状の部材であり、一方の表面に配線パターン42が形成されるとともに、複数のサブマウント43と給電コネクタ44が搭載されている。また配線パターン42を覆うようにレジスト層46が形成されている。搭載基板11を構成する材料は限定されないが、銅やアルミニウム等の熱伝導性が良好な金属を用いることが好ましい。
【0024】
また、搭載基板41として導電性の基板上に絶縁性の基板を貼り合わせた複合基板を用いるとしてもよく、例えば金属基板上にガラスエポキシ樹脂層を貼り付けたものが挙げられる。搭載基板41を金属基板で構成する場合には、金属材料の酸化による熱伝導率低下を防止するために、搭載基板41の裏面側に酸化防止膜を形成することが好ましい。酸化防止膜の形成方法としてはプリフラックス処理やAuメッキ処理が挙げられるが、放熱性向上という観点からAuメッキ処理が好ましい。
【0025】
配線パターン42は、搭載基板41の表面に形成された導電性パターンであり、給電コネクタ44の端子からサブマウント43への電気的接続を確保するためのものである。搭載基板41として導電性材料を用いる場合には、配線パターン42と搭載基板41の間に絶縁層を形成する。
【0026】
サブマウント43は、搭載基板41の表面に搭載されるとともに金属ワイヤ45aにより配線パターン42に電気的に接続され、金属ワイヤ45aを介して電力が供給されることにより電力に応じた発光を行う部材である。サブマウント43の詳細な構造については後述する。
【0027】
給電コネクタ44は、搭載基板41の表面に搭載された外部との電気的接続を確保するための部材であり、複数の端子が配線パターン42に電気的に接続されている。給電コネクタ44の形状として
図2では略直方体のものを示しているが、公知のケーブルハーネスに対応して接続可能なものであれば外形や端子形状等は限定されない。
【0028】
金属ワイヤ45aは、サブマウント43に設けられた端子と搭載基板41上に形成された配線パターン42とを接続するための部材であり、公知のワイヤボンディング技術で実現できる金属製の導電性部材である。金属ワイヤ45aを構成する材料は限定されず、金、銅、アルミニウム等を用いることができるが、金を用いることが好ましい。
【0029】
光吸収性樹脂部45は、ベース樹脂に無機フィラーと光吸収性材料を混入した樹脂部材であり、金属ワイヤ45aを覆って封止する。光吸収性樹脂部45による金属ワイヤ45aの封止は、金属ワイヤ45aを個別に1本ずつ封止するとしてもよいが、複数の金属ワイヤ45aを一括して封止することが好ましい。光吸収性樹脂部45のベース樹脂としては、高い耐熱性、耐光性、透光性を有したハンドリングの良い硬化性樹脂組成物が好ましく、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の公知の封止材料が挙げられる。特に、熱による光吸収性樹脂部45の膨張や収縮で金属ワイヤ45aに応力が加わり変形や破断することを防止するためには、ベース樹脂として硬化後の弾性率が低いシリコーン樹脂を用いることが好ましい。ベース樹脂に混入する光吸収性材料としては、カーボンフィラー等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の光源モジュール40では、金属ワイヤ45aを光吸収性樹脂部45で覆って封止することで、金属ワイヤ45aに導電性異物が付着してショートすることを防止できる。また、光吸収性樹脂部45は光吸収性材料を混入しているため、サブマウント43からの光が金属ワイヤ45aに到達して反射され、迷光として車両用灯具100の外部に照射されることを防止できる。特に、ADB技術を用いてサブマウント43に含まれる発光素子を選択的に点灯させる場合には、金属ワイヤ45aにより反射された迷光が非照射領域に到達することを防止でき、高密度に発光素子を実装しながらもグレアの発生を抑制することが可能となる。
【0031】
光吸収性樹脂部45を形成する際には、無機フィラーと光吸収性材料を混練したベース樹脂をディスペンサー等で金属ワイヤ45a上に供給した後に硬化する。光吸収性材料を混練した後の粘度およびチクソ性は、塗布後の成型性や給電ワイヤへの応力を考慮して、ベース樹脂の材料選定や無機フィラーの添加量を調整することで任意に調整可能である。チクソ性はディスペンサーの射出性/塗布後の成型性より、E型粘度計における23℃、回転数0.5rpmの粘度、および回転数5rpmの粘度において、(0.5rpmの粘度)/(5rpmの粘度)が2.0以上3.5以下であることがハンドリングの観点から好ましい。チクソ性をこの範囲に設定するとベース樹脂の流動性が適度に保たれ、サブマウント43の周囲をダム部材等で囲まなくとも、樹脂が流出して金属ワイヤ45aが露出することや、金属ワイヤ45a同士の間隙や下部に空隙が生じることを防止できる。
【0032】
レジスト層46は、搭載基板41の表面側に配線パターン42を覆うように形成された絶縁性の膜状部材である。レジスト層46を構成する材料は限定されないが、搭載基板41の表面と配線パターン42での光反射が異なることによる迷光を抑制するために、レジスト層46を形成した領域内の光反射率を均一化するように光反射性材料または光吸収性材料を用いることが好ましい。
【0033】
光学部材搭載領域47は、光学部材であるリフレクタ30を搭載するための搭載基板41表面における領域であり、レジスト層46が形成されず搭載基板41の表面が露出している領域である。光学部材搭載領域47は、サブマウント43を搭載している領域を挟んで搭載基板41の両側に位置しており、光学部材搭載領域47にリフレクタ30を当接させて固定することで、サブマウント43を跨いでリフレクタ30を配置することができる。
【0034】
光学部材固定部48は、光学部材搭載領域47内に設けられた貫通孔である。光学部材搭載領域47にリフレクタ30を当接させ、光学部材固定部48に搭載基板41の表面側からネジ等の固定部材を挿入して搭載基板41およびリフレクタ30をヒートシンク50に固定する。光学部材固定部48の形成位置についても詳細を後述するが、2つの光学部材固定部48の間にサブマウント43が配列されている。
【0035】
図3は、本実施形態における搭載基板41を示す模式平面図である。
図2で示したように、搭載基板41上には配線パターン42が形成されており、配線パターン42を覆ってレジスト層46が形成されている。
図3に示すように、光学部材搭載領域47と、サブマウント43を搭載する発光部搭載領域49と、金属ワイヤ45aをボンディングする部分と、給電コネクタ44を搭載する給電コネクタ搭載部44aと、給電コネクタ44の端子を接続する部分を除いた領域にはレジスト層46が形成されている。
【0036】
発光部搭載領域49は、前述したように複数のサブマウント43を搭載する領域であり、図中左右方向を長手方向としてサブマウント43を二列配列できるように形成されている。また、光学部材固定部48の中心を結ぶ線L1は、発光部搭載領域49の略中央を長手方向に沿って横断するような位置関係とされている。
【0037】
図4は、本実施形態における搭載基板41の構造を詳細に説明する図であり、
図4(a)は分解斜視図であり、
図4(b)は模式断面図である。
図4(a)に示すように、搭載基板41は、金属板41aと接着シート41bとガラスエポキシ樹脂層41cの積層構造で構成されている。接着シート41bとガラスエポキシ樹脂層41cには、それぞれに発光部搭載領域49に対応した形状の開口部49b,49cが形成されており、開口部49b,49cの位置が一致している。接着シート41bとガラスエポキシ樹脂層41cの所定領域に開口部49b,49cを予め形成しておき位置合わせして貼り付けるとしてもよく、金属板41aとガラスエポキシ樹脂層41cを接着シート41bで貼り付けた後に切削加工等により開口部49b,49cを一括して形成するとしてもよい。
【0038】
図4(b)に示すように、発光部搭載領域49の周囲では接着シート41bとガラスエポキシ樹脂層41cが積層され、ガラスエポキシ樹脂層41c上には配線パターン42およびレジスト層46が形成されている。発光部搭載領域49の内部では、開口部49b,49cに対応した領域で金属板41aの表面が一部露出している。また、前述したように光学部材搭載領域47にはレジスト層46が形成されていないため、光学部材搭載領域47ではガラスエポキシ樹脂層41cが露出している。
【0039】
本実施形態の光源モジュール40では、光学部材搭載領域47にはレジスト層46が形成されておらず、光学部材であるリフレクタ30をガラスエポキシ樹脂層41cに直接搭載して固定する。これにより、レジスト層46の膜厚のばらつきによって生じるリフレクタ30とサブマウント43との位置ズレを抑制し、光学部材と発光素子43cの相対的位置関係を精密に位置合わせして良好な配光特性で光照射することが可能となる。また、金属板41aに接着シート41bを用いてガラスエポキシ樹脂層41cを貼り付けることで、金属板41a上に高熱伝導性フィラーを含有した絶縁層を形成する必要がなくなり、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0040】
図5は、搭載基板41上に各部材を搭載した状態の光源モジュール40を示す模式平面図である。
図4で示した搭載基板41の給電コネクタ搭載部44aと端子接続部分にハンダを塗布し、表面実装型の給電コネクタ44をハンダリフローにより実装する。また、サブマウント43の裏面と発光部搭載領域49内で露出する金属板41aとを接着剤で固定し、長手方向に沿って複数のサブマウント43を二列配列した後に、ワイヤボンディングにより金属ワイヤ45aでサブマウント43と配線パターン42とを電気的に接続する。最後に、複数の金属ワイヤ45aに対してディスペンサーで光吸収性樹脂部45を塗布して硬化する。前述したように、光学部材固定部48の中心を結んだ線L1は、二列に配列したサブマウント43の長手方向に沿って略中央に位置している。
【0041】
図6は、サブマウント43を拡大して示す拡大斜視図である。サブマウント43は、サブマウント基板43a上に複数のサブマウント配線43bが形成され、サブマウント配線43b上に複数の発光素子43cが搭載され、複数の発光素子43cの側面を一括して光反射性樹脂部43dが封止している。また、サブマウント基板43a上の一部には光反射性樹脂部43dが形成されず、サブマウント基板43aの表面及びサブマウント配線43bが露出している。発光素子43cは、光反射性樹脂部43dの内部において、隣り合うサブマウント配線43b間に跨ってフリップチップ実装されている。
【0042】
サブマウント基板43aは、絶縁性で熱伝導性が良好な材質で形成された略矩形の平板状部材であり、例えばSiやAlN等で構成されている。サブマウント配線43bは、サブマウント基板43aの一方の表面上に形成された導電性パターンであり、発光素子43cと電気的に接続されるとともに金属ワイヤ45aがワイヤボンドされる。
【0043】
発光素子43cは、2本の金属ワイヤ45aに電気的に接続されて、金属ワイヤ45a間に電圧が印加されると発光する部材であり、LEDチップと蛍光体材料との組み合わせによって構成されている。LEDチップとしては青色や紫色、紫外光の波長を一次光として出射するGaN系などの公知の化合物半導体材料を用いることができる。蛍光体材料としては、一次光により励起されて所望の二次光を照射する公知の材料を用いることができ、LEDチップからの一次光と混色により白色を得るものや、複数の蛍光体材料を用いて複数の二次光の混色により白色を得るものを用いることができる。
【0044】
光反射性樹脂部43dは、ベース樹脂に光反射性微粒子を混入した部材であり、例えば酸化チタン等の微粒子を混入した白色樹脂が挙げられ、発光素子43cで出射した光を良好に反射する。また光反射性樹脂部43dは、発光素子43cを囲んで側面を封止して充填されており、発光素子43cの側面から照射される光を発光素子43c内部方向に反射する。これにより、発光素子43cでの発光は発光素子43c側面から側方に漏れ出すことがなく、発光素子43cの上面から良好に外部に照射される。
【0045】
図6に示すように、サブマウント43の長手方向に沿って配列された複数の発光素子43cは、隣接する発光素子43c同士の側面間距離はd1であり、発光素子43c同士の中心間距離はd2となっている。
図2に示したように、複数のサブマウント43が上下二列に配列されて光源部を構成しており、長手方向に延伸してサブマウント基板43aが複数隣接して配置されて一列目を構成するとともに、一列目に隣接して二列目のサブマウント基板43aが配置されている。
【0046】
図7は、発光部搭載領域49にサブマウント43を搭載した状態を示す部分拡大断面図である。発光部搭載領域49で露出した金属板41a上に接着剤でサブマウント基板43aが固定され、サブマウント基板43a上の発光素子43cの側面は光反射性樹脂部43dで封止されている。サブマウント基板43a上の光反射性樹脂部43dが形成されていない領域には、金属ワイヤ45aの一端がワイヤボンドされている。
【0047】
本実施形態の光源モジュール40では、複数の発光素子43cをサブマウント基板43a上に搭載し、サブマウント基板43a表面に形成されたサブマウント配線43bに対して金属ワイヤ45aをワイヤボンドして電力を供給する。これにより、ハンダを用いて発光素子43cを配線パターン42上に直接搭載するよりも、融点の高い金属ワイヤ45aで大電流を供給することができ、光源モジュール40の光度を高めることが可能となる。また、サブマウント基板43aを発光部搭載領域49内で露出した金属板41aに対して搭載し、耐熱温度が高い接着剤を用いて固定することにより、ハンダを用いた発光素子43cの実装よりも耐熱温度を高く設定でき、さらに大電流供給と高光度化を図ることができる。
【0048】
図7に示すように、ガラスエポキシ樹脂層41c上に形成された配線パターン42はレジスト層46で覆われているが、金属ワイヤ45aの他端をワイヤボンドする位置にはレジスト層46が形成されていない。金属ワイヤ45a全体は光吸収性樹脂部45で封止されており、金属ワイヤ45aの両端におけるワイヤボンド位置と金属ワイヤ45aの上部および下部に充填されている。光吸収性樹脂部45は、サブマウント基板43aのワイヤボンド位置において光反射性樹脂部43dに隣接して形成されている。
図7では接着シート41bの図示は省略している。
【0049】
上述したように、サブマウント43は発光部搭載領域49内でガラスエポキシ樹脂層41cを介さず金属板41aに搭載されており、サブマウント43における発光素子の高さ寸法は、ガラスエポキシ樹脂層41cの厚さ寸法より大きい。ここでサブマウント43における発光素子の高さ寸法とは、サブマウント基板43aの底面から発光素子43cの上面までの距離であり、例えば1.3mm程度である。
【0050】
本実施形態の光源モジュール40では、サブマウント43の高さがガラスエポキシ樹脂層41cの厚さよりも大きいため、サブマウント43の光取り出し面である発光素子43c上面がガラスエポキシ樹脂層41cよりも上方に位置する。これにより、サブマウント43から照射される光がガラスエポキシ樹脂層41cの側面に入射して遮られることを防止でき、良好に光を取り出して所望の配光特性で光照射することができる。
【0051】
本実施形態の光源モジュール40では、金属板41aとガラスエポキシ樹脂層41cを接着シート41bで貼り合わせた後に、搭載基板41の裏面側から抜き打ち加工で光学部材固定部48を形成する。ガラスエポキシ樹脂層41cの厚さ寸法を0.05mm~0.2mm、好ましくは0.075mm~0.15mmとすると、抜き打ち加工時に金属板41aに生じるバリがガラスエポキシ樹脂層41cによって抑制され、光学部材であるリフレクタ30を精密に位置合わせして固定することが可能となる。
【0052】
図8は、発光部搭載領域49周辺を拡大して示す拡大平面図である。
図8に示すように光吸収性樹脂部45は、複数の金属ワイヤ45aを一括して封止しており、配線パターン42のワイヤボンド位置からサブマウント43のワイヤボンド位置まで覆い、光反射性樹脂部43dに隣接する位置にまで形成されている。また、サブマウント43は左右方向に沿って複数配列されるとともに、上下方向に二列が隣接して配置されて本発明の光源部を構成している。
【0053】
上下二列にサブマウント43が配列された光源部では、発光素子43cも二列に配列されており、
図8に示す線L2は二列の発光素子43cの中間位置を示す発光中心線である。この発光中心線L2は、
図5で示した光学部材固定部48の中心を結んだ線L1と略一致しており、複数の発光素子43cの発光中心線L2の延長線上において、光学部材であるリフレクタ30が固定される。
【0054】
本実施形態の光源モジュール40では、光学部材固定部48の中心を結んだ線L1と、サブマウント43の発光中心線L2とが略一致しているため、搭載基板41に反りが生じている場合などにも、発光中心線L2上でリフレクタ30を締結することで反りを低減し、光源部と光学部材との位置関係を適切に設定することができる。また、ヒートシンク50を含めて一括して搭載基板41とリフレクタ30を締結すると、発光部搭載領域49の裏面側をヒートシンクに対して密着させることができ、反りの無い搭載基板41と同様の放熱特性を得ることが可能となる。
【0055】
配線パターン42のワイヤボンド位置は、発光部搭載領域49の図中上下辺に沿って設けられており、図中上列のサブマウント43に対しては図中上方から金属ワイヤ45aがワイヤボンディングされ、図中下列のサブマウント43に対しては図中下方から金属ワイヤ45aがワイヤボンディングされている。したがって、第一列および第二列の発光素子43cは、第一列に接続される金属ワイヤ45aと、第二列に接続される金属ワイヤ45aとの間に位置している。
【0056】
本発明の車両用灯具100では、給電コネクタ44、配線パターン42、金属ワイヤ45a、サブマウント配線43bを介して、外部から発光素子43cに対して選択的に電力が供給され、発光素子43cが点灯する。光源部を構成する複数のサブマウント43のうち、選択された発光素子43cが点灯することで光源部全体での配光分布が決定され、リフレクタ30およびレンズ10を介してADB技術により車両用灯具100前方に二次元的な配光パターンを照射する。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図2を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、ADB技術を用いない場合にも適用することができる。車両用灯具100の構成及び光源モジュール40の構成は第1実施形態と同様であり説明を省略する。
【0058】
図9は、本実施形態において隣接する発光素子43cからの合成光度を示すグラフであり、
図9(a)は発光素子43cの距離が遠くて合成光度が不十分である例を示し、
図9(b)は発光素子43cの距離が近くて合成光度が十分である例を示している。図中横軸はサブマウント43の長手方向に沿った位置を示し、縦軸は光度を示している。図中の破線は1つの発光素子43cから照射される光の光度を示し、図中の実線は隣接する2つの発光素子43cから照射される光の合成光度を示している。
【0059】
図6に示した隣接する発光素子43cの側面間距離d1が0.6mmを超える場合には、
図9(a)に示すように合成光度のピークが小さく、1つの発光素子43cから照射される光度よりも数%程度向上するだけである。側面間距離d1を0.6mm以下とすることで、
図9(b)に示すように合成光度のピークが大きくなり、1つの発光素子43cから照射される光度よりも20%以上向上させることができる。特に、ADB技術を適用する場合には、発光素子43cを選択的に点灯および非点灯として照射領域と非照射領域を精密に制御するため、照射領域の合成光度が高いほうが非照射領域とのコントラストを高めることができ好ましい。
【0060】
側面間距離d1が0.1mm未満の場合には、発光素子43cの側面を充填している光反射性樹脂部43dの厚さが不十分となり、側面から光が漏洩して1つの発光素子43cから照射される光の光度自体が低下してしまう。また、側面から光が漏洩することで合成光度も低下してしまう。特に、ADB技術を適用して選択的に発光素子43cを点灯する場合には、側面から漏洩した光が非点灯な発光素子43cからの発光と同様に照射されてしまう可能性があり、所望の二次元的な配光パターンを照射することが困難になってしまう。
【0061】
本実施形態の光源モジュール40としてサブマウント43として複数の発光素子43cを含めた場合と、従来の1つのLEDチップをチップサイズパッケージ(CSP)とした場合における、発光素子43c間距離と合成光度の関係を表1に示す。従来のチップサイズパッケージで発光素子間隔を0.6mmとした場合の合成光度を100として相対値を示している。
【0062】
【0063】
表1に示したように、従来のチップサイズパッケージでは発光素子間隔が0.6mmで合成光度は100であり、0.2mmで合成光度は119である。一方、本実施形態のサブマウント43では発光素子43cの側面間距離d1が0.6mmで合成光度は112であり、0.2mmで合成光度は140であり、0.1mmで合成光度は147である。
【0064】
したがって、本実施形態の光源モジュール40では、発光素子43cの側面間距離d1は0.1mm~0.6mmの範囲が好ましい。複数のサブマウント43同士における発光素子43c同士の間隔も、同様に0.1mm~0.6mmの範囲とすることが好ましい。側面間距離d1がこの範囲であることにより、側面からの光漏洩を防止しつつ合成光度の向上を図ることができる。また、ADB技術を適用した場合には、照射領域と非照射領域のコントラストを高めるとともに、所望の二次元的な配光パターンを良好に照射することができる。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
100…車両用灯具
10…レンズ
20…レンズホルダ
30…リフレクタ
40…光源モジュール
50…ヒートシンク
60…冷却ファン
11…搭載基板
41…搭載基板
41a…金属板
41b…接着シート
41c…ガラスエポキシ樹脂層
42…配線パターン
43…サブマウント
43a…サブマウント基板
43b…サブマウント配線
43c…発光素子
43d…光反射性樹脂部
44…給電コネクタ
44a…給電コネクタ搭載部
45…光吸収性樹脂部
45a…金属ワイヤ
46…レジスト層
47…光学部材搭載領域
48…光学部材固定部
49…発光部搭載領域
49a,49b…開口部