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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】油脂の増粘又は固化剤
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20220405BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20220405BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23D9/00 504
A23L29/10
C09K3/00 103L
C09K3/00 103M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017145839
(22)【出願日】2017-07-27
(65)【公開番号】P2018042550
(43)【公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2016174288
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 彩恵
(72)【発明者】
【氏名】土井 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 丈志
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086690(JP,A)
【文献】特開2012-082236(JP,A)
【文献】特開2012-180742(JP,A)
【文献】特開2013-110975(JP,A)
【文献】特開2015-180742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D、C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(A)~(D)を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする透明性に優れた油脂の増粘又は固化剤。
(A)全構成脂肪酸の45%以上が、炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸であり、且つ、構成脂肪酸として、(1)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸を少なくとも1種以上、(2)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種以上を含み、(1):(2)のモル比が0.91:0.09~0.99:0.01
(B)ポリグリセリンの平均重合度が20量体以上
(C)エステル化率が70%以上
(D)上記(A)~(C)を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルをナタネ白絞油に添加しB型粘度計を用いて測定した時の粘度が、20℃で1000-4000mPa・sとなる増粘油について、波長349.5nmにおける透過率が10%以上である
【請求項2】
油脂が香味油である請求項1記載の油脂の増粘又は固化剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油脂の増粘又は固化剤を含有する油脂。
【請求項4】
油脂の増粘又は固化剤が0.05%以上である請求項3記載の油脂。
【請求項5】
請求項3又は4記載の油脂を含有する食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする油脂の増粘又は固化剤、並びに、油脂の増粘又は固化剤を含有する油脂、及びそれらを用いた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品分野において液状油脂を増粘させる技術としては、油脂を水素添加する方法が一般的に知られている。しかしながら、油脂中の不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸となりそれに伴い融点が高くなるため使用しづらく、食品に供した場合口どけが悪くなる問題があった。また、水素添加する方法では、一部の不飽和脂肪酸のシス型結合がトランス型に変化し、このトランス脂肪酸が人体へ健康影響を及ぼすリスクについて近年問題視されている。
それを改善するために液状の食品を増粘又は固化させる技術としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法が挙げられる。
【0003】
その技術として、主構成脂肪酸を炭素数20以上であるベヘン酸としエステル化度が50%以上としたポリグリセリン脂肪酸エステルの使用が知られている(例えば、特許文献1参照。)。更にゲル強度の優れた技術として、選択する脂肪酸とそのモル比率を固定することで解決され(例えば、特許文献2参照。)、続いてゲル強度の優れた技術として、選択する脂肪酸とそのモル比率に加え、ポリグリセリンの重合度及びエステル化度を特定した技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
液状の食品を増粘又は固化させる場合、より透明であるほうが見栄えが良く好ましい。これらの従来技術で増粘又は固化した油脂は透明性に優れておらず、満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3497780号公報
【文献】特許第4823637号公報
【文献】特許第5727749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、油脂に対し容易に溶解し、少量の添加で油脂を増粘又は固化することが可能であり、増粘又は固化した油脂は透明性に優れ、長期間油脂の分離を抑えることができる油脂の増粘又は固化剤、及び油脂の増粘又は固化剤を含有する油脂、更にはそれらを含有する食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意努力した結果、次に示す特定の組成を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを常温で液状の油脂に少量添加することで増粘又は固化出来る事を見出し、本発明の完成に至った。特定の組成のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、構成脂肪酸中に炭素数16~18の直鎖脂肪酸を45%以上含む脂肪酸と平均重合度が10量体以上のポリグリセリンとをエステル化させエステル化率は70%以上のものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明における油脂の増粘又は固化剤は、油剤に対し容易に溶解し、少量の添加で油剤を増粘又は固化することが可能であり、増粘又は固化した油脂は透明性に優れ、長期間油脂の分離を抑えることが可能となる。また、本発明を含有した食品は、食感がよく、保型性に優れ、油浮きが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明における油脂の増粘又は固化剤は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分として、脂肪酸、ポリグリセリンが挙げられる。脂肪酸については、全構成脂肪酸の内、炭素数16~18の直鎖脂肪酸が分子数として45%以上を含む場合に高いゲル強度及び優れた透明性が得られる。なお、この割合は、全構成脂肪酸のモル数に対する炭素数16~18の直鎖脂肪酸のモル数の割合を示す。一方、主構成脂肪酸がベヘン酸である場合、優れた透明性が得られない。また、優れた透明性を得るには、炭素数16~18の直鎖脂肪酸が70%以上、更には90%以上が好ましい。
構成脂肪酸は、炭素数8~14の直鎖脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸のいずれかを含む事が好ましい。
【0009】
構成脂肪酸として(1)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸を少なくとも1種以上、(2)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種以上が挙げられる。構成脂肪酸の比率として(1):(2)のモル比が、0.91:0.09~0.99:0.01のとき、低添加量で油脂を増粘又は固化できゲル強度が高く、透明性に優れ、長期間油脂の分離を抑えることが可能となり好ましい。脂肪酸(1)にはパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられ、脂肪酸(2)にはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エルカ酸、イソステアリン酸等が挙げられるが、脂肪酸(2)の範囲であれば、特に限定するものではない。(1):(2)のモル比率の(1)の部分が下限を外れる場合、ゲル強度は低下し、低添加量で固化を達成できず、それに伴い固化達成時の透明性は低下する。また、モル比率の(1)の部分が上限を超える場合、低添加量で固化を達成するものの、固化達成時に濁りを生じ透明性は低下する。
【0010】
ポリグリセリンには水酸基価から算出した平均重合度が10量体以上のものが用いられる。これよりも平均重合度が低いポリグリセリンを用いた場合、十分なゲル強度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない。ポリグリセリンの平均重合度は高い程、ゲル強度が高く、低添加量で固化を達成するため透明性に優れる。そのため、ポリグリセリンの平均重合度は20以上、更に30以上、最も好ましくは40以上が好ましい。
【0011】
ここで言うポリグリセリンの平均重合度とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度である。詳しくは、(式1)及び(式2)から算出した平均重合度である。
【0012】
(式1)平均重合度=(112.2×10-18×水酸基価)/(74×水酸基価-56.1×10
(式2)水酸基価=(a-b)×28.05/試料の採取量(g)
a:空試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
上記(式1)中の水酸基価は社団法人日本油化学会編「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年度版」に準じて(式2)で算出される。
【0013】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は70%以上とする。これよりもエステル化率が低い場合、十分なゲル強度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない。エステル化率は、高いほどゲル強度が高く、低添加量で固化を達成するため透明性に優れる。そのため、エステル化率は80%以上、好ましくは90%以上である。
【0014】
ここで言うエステル化率とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100
で算出される値である。
【0015】
本発明の油脂固化剤は上記の各成分の上記条件を満たすような組成で仕込み、水酸化ナトリウム等の触媒を加え、常圧もしくは減圧下においてエステル化反応を行うことで製造することが可能である。
【0016】
本発明における透明性とは、20℃におけるB型粘度計(東機産業株式会社製)での測定時の粘度が1000-4000mPa・sとなるように、上記の各成分の上記条件を満たす組成のポリグリセリン脂肪酸エステルをナタネ白絞油(ボーソー油脂株式会社製)に添加した増粘油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、波長349.5nmにて測定した透過率が、10%以上であるものであり、好ましくは15%~20%、より好ましくは30%以上である。
【0017】
本発明の、油脂増粘剤及び油脂固化剤により増粘又は固化される油脂や油剤としては、食品原料として使用される油脂や油剤の範疇であれば特に限定されるものではなく、また、化粧品原料として使用される油脂や油剤への応用も可能とする。例えば油脂としてはアボガド油、アマニ油、アルガン油、アーモンド油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジラフィー油、カカオ脂、キャロット油、キューカンバー油、牛脂、ココナッツ油、グレープシード油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シア脂、ダイズ油、タートル油、チョウジ油、茶油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、ハトムギ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、メドウフォーム油、綿実油、ヤシ油、ローズヒップ油、乳脂、ハトムギ油、ホホバ油、ラベンダー油、卵黄油、米油、ラノリン、ローズマリー油等、ロウ類としては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ミツロウ、モンタンロウ、ライスワックス、ラノリンワックス等、炭化水素油類としてはイソドデカン、スクワラン、セレシン、パラフィン、プリスタン、流動パラフィン、流動イソパラフィンワセリン等、脂肪酸類としてはアラキドン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、エルカ酸、オレイン酸、カプリン酸、カプリル酸、ステアリン酸、セバシン酸、パーム核脂肪酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等、高級アルコール類としてはイソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、オクチルアルコール、キミルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、デシルアルコール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコール等、シリコーン油類としてはジメチコン、ジフェニルジメチコン、シクロペンタシロキサン、トリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、エステル油類としてはアジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジヘプチルウンデシル、アボカド油脂肪酸エチル、安息香酸アルキル、イソステアリルグリセリル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸コレステリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸トリデシル、イソパルミチン酸オクチル、イソペラルゴン酸オクチル、エチルヘキサン酸セチル、エルカ酸オクチルドデシル、エチルヘキサン酸セトステアリル、エチレングリコール脂肪酸エステル、エルカ酸オクチルドデシル、オクタン酸アルキル(C14,C16,C18)、オクタン酸イソセチル、オクタン酸セテアリル、オクタン酸ステアリル、オクタン酸セチル、オクタン酸イソステアリル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸フィトステリル、カプリン酸セチル、カプリル酸セチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル、酢酸ラノリン、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ステアリン酸ヘキシルデシル、炭酸ジアルキル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオレイン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリオクタノイン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ノナイソステアリン酸デカグリセリル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、リノール酸トコフェロール、リシノール酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル等、シリコーン類としてはアミノプロピルジメチコン、アルキルメチコン、アルコキシ変性ポリシロキサン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマー、(ジメチルシロキサン/メチルセチルオキシシロキサン)コポリマー、ステアリルジメチコン、セチルジメチコンシリコン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルトリメチコン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレンアルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体等、植物の茎、花、蕾、葉、根、果実皮、樹皮、樹脂由来の精油等が例示できる。なお、効果の点より好ましくは、アマニ油、オリーブ油、サフラワー油、ダイズ油、ナタネ油、パーム油、ヒマワリ油、ヤシ油である。
【0018】
また、本発明の油脂の増粘剤又は固化剤、油脂増粘剤又は油脂固化剤を含有する油脂及びその油脂を含有する食品の範疇は特に限定されるものではなく、調理用素材、加工食品、調理済食品等、幅広く適用が可能である。例えば業務用家庭用の揚げ油、炒め油、離型油、天板油、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、フラワーペースト、クリーム類、粉末油脂類、乳化油脂類といった油脂・加工油脂、即席麺、カップ麺、即席スープ・シチュー類といった即席食品、カレー、スープ・シチュー類、パスタソース、中華食品の素、どんぶりの素といったレトルト食品・缶詰類、高カロリー飲料、流動食、栄養バランス食、栄養補助食品、特定保健用食品といった機能食品、パン、マカロニ・スパゲティ等のパスタ類、ピザパイ、麺類、ケーキミックス、加工米飯、シリアルといった小麦粉・デンプン食品、キャラメル、キャンディ、チューインガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、ゼリー、プリンといった菓子・デザート、しょうゆ、みそ、ソース類といった基礎調味料、カレー・シチュー用ルー、たれ、ドレッシング、マヨネーズ風調味料、麺つゆ、鍋料理用つゆ、ラー油、マスタード、からし、わさび、おろししょうが、おろしにんにく、キムチの素、デミグラスソース、ホワイトソース、トマトソースといった複合調味料、乳、加工乳、発酵乳、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム類、調整粉乳、クリーム類といった乳製品、水産缶詰、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、油漬け魚肉缶詰といった水産加工品、ピーナツバター、ジャム・マーマレード、チョコレートクリーム、メンマ加工品、ザーサイ加工品、ねりごま・ごまペーストといった農産加工品、畜肉ハム・ソーセージ、畜産缶詰、ペースト類、ハンバーグ、ミートボール、味付け畜肉缶詰といった畜産加工品、冷凍食品、冷蔵食品、パック入りや店頭販売用惣菜といった調理済み・半調理済み食品の他、愛玩動物用ペットフード、家畜用飼料が例示できる。好ましくは、本発明の特徴である透明性より、炒め油、マーガリン、ファットスプレッド、カレー、パスタソース、中華食品の素、チョコレート、カレー・シチュー用ルー、ソース、ドレッシング、マヨネーズ風調味料、ラー油、チョコレートクリームである。
【0019】
更に本発明の油脂の増粘剤又は固化剤を含有する油脂として、透明性に優れた香味油を提供することが可能である。この香味油中で、油脂の増粘剤又は固化剤は低添加量でも、油不溶物が分散安定性に優れる。
【0020】
本発明の対象となる香味油とは、油脂としての物性の他、食品に好ましい香味を有している油性物質を指し、特に限定するものではないが、一般的には、そのまま油脂として利用されているゴマ油、オリーブ油、ピーナツ油、アーモンド油、クルミ油、ピスタチオ油、ラード、バター、鶏油等のほか、油脂に香味を人工的に付与したものもその範疇になる。後者の例としては、油脂にタマネギ、ネギ、ニンニク、ショウガ、ニラ、トウガラシ、トマト等の野菜類、ローズマリー、タイム、ローレル、バジル、オレガノ、タラゴン、ディル、フェンネル、サボリー、チャービル、ミント、レモングラス、マジョラム、アニス、オールスパイス、カホクザンショウ、カルダモン、クミン、グリーンペッパー、クローブ、コショウ、コリアンダー、サフラン、サンショウ、シソ、シナモン、スターアニス、セージ、ターメリック、タラゴン、ナツメグ、バニラ、パプリカ、フェンネル、ホースラディッシュ、ラディッシュ、ワサビ、マスタード、チンピなどのハーブ・香辛料類、しょうゆ、みそ、カレー、鰹節、鯖節、昆布といった調味料類加工食品類、カツオ、サバ、貝柱、エビ、イカ、タコといった魚介類やその加工品、タマゴ、鶏肉、牛肉、豚肉、チーズといったタンパク性素材類をそのままあるいは乾燥、焙煎して、油脂に浸漬して香りを付与した、あるいは固体状態で分散させた香味油が例示できる。また油脂に直接メントールや果物系等の香料、バター、チーズ、バニラ等のフレーバーを付与したものであってもよい。
【0021】
この本発明における、油不溶物とは、上記に例示した香味油中に常温で固体状態で分散するものが挙げられるが、油に不溶のものであれば特に限定するものではない。
【0022】
この透明性に優れた香味油とするには、一般的には香味油を60℃以上に加熱し、本発明の油脂の増粘剤又は固化剤を十分に溶解させた後、室温又は冷蔵下で冷却することにより得られる。ここで、油脂の増粘剤又は固化剤の添加量は香味油に対して0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは1.0重量%以上であり、油脂の種類及び分散させる油不溶物の種類によって異なる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例
【0023】
実施例1
平均重合度が40のポリグリセリン123.2gとステアリン酸(C18)247.8g、ベヘン酸(C22)282.8g、オレイン酸(C18F1)46.2gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸として(1)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸、(2)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸としたとき、(1):(2)のモル比は、0.92:0.08)
【0024】
実施例2
平均重合度が40のポリグリセリン133gとステアリン酸(C18)521.6g、オレイン酸(C18F1)45.4gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は92%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0025】
実施例3
平均重合度が40のポリグリセリン128.1gとパルミチン酸(C16)246.4g、ベヘン酸(C22)280g、オレイン酸(C18F1)45.5gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は50%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0026】
実施例4
平均重合度が40のポリグリセリン142.8gとパルミチン酸(C16)507.1g、オレイン酸(C18F1)50.1gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は93%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0027】
実施例5
平均重合度が20のポリグリセリン128.3gとステアリン酸(C18)257.2g、ベヘン酸(C22)280.6g、オレイン酸(C18F1)46.8gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は49%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0028】
実施例6
平均重合度が10のポリグリセリン133.0gとステアリン酸(C18)255.3g、ベヘン酸(C22)278.5g、オレイン酸(C18F1)46.4gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は49%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0029】
実施例7
平均重合度が40のポリグリセリン123.2gとステアリン酸(C18)288.4g、ベヘン酸(C22)282.6g、オレイン酸(C18F1)5.8gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は54%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.99:0.01であった。)
【0030】
実施例8
平均重合度が40のポリグリセリン143.5gとステアリン酸(C18)239.3g、ベヘン酸(C22)272.7g、オレイン酸(C18F1)44.5gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率80%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0031】
実施例9
平均重合度が40のポリグリセリン157.5gとステアリン酸(C18)233.3g、ベヘン酸(C22)265.8g、オレイン酸(C18F1)43.4gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率70%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0032】
実施例10
平均重合度が40のポリグリセリン124.6gとステアリン酸(C18)259g、ベヘン酸(C22)293.3g、カプリル酸(C8)23.1gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0033】
実施例11
平均重合度が40のポリグリセリン124.6gとステアリン酸(C18)258.9g、ベヘン酸(C22)287.7g、ラウリン酸(C12)28.8gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は48%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0034】
実施例12
平均重合度が40のポリグリセリン114.8gとステアリン酸(C18)252g、ベヘン酸(C22)287g、エルカ酸(C22F1)46.2gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0035】
実施例13
平均重合度が40のポリグリセリン123.2gとステアリン酸(C18)253.8g、ベヘン酸(C22)282.6g、イソステアリン酸(isoC18)40.4gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は48%。構成脂肪酸として(1)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸、(2)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸としたとき、(1):(2)のモル比は、0.92:0.08)
【0036】
比較例1
平均重合度が40のポリグリセリン133.7gとミリスチン酸(C14)249.2g、ベヘン酸(C22)271.6g、オレイン酸(C18F1)45.5gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は2%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.93:0.07であった。)
【0037】
比較例2
平均重合度が10のポリグリセリン128.3gとベヘン酸(C22)531.9g、オレイン酸(C18F1)52.6gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率92%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は1%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.9:0.1であった。)
【0038】
比較例3
平均重合度が40のポリグリセリン128.8gとステアリン酸(C18)257.0g、ベヘン酸(C22)114.2g、オレイン酸(C18F1)199.9gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は48%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.66:0.34であった。)
【0039】
比較例4
平均重合度が10のポリグリセリン140.8gとベヘン酸(C22)573.3gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率83%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は0%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、1:0であった。)
【0040】
比較例5
平均重合度が6のポリグリセリン123.9gとステアリン酸(C18)286.6g、ベヘン酸(C22)326.5g、オレイン酸(C18F1)53.3gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0041】
比較例6
平均重合度が40のポリグリセリン184.8gとステアリン酸(C18)221.5g、ベヘン酸(C22)252.4g、オレイン酸(C18F1)41.2gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率60%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は47%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.92:0.08であった。)
【0042】
比較例7
平均重合度が40のポリグリセリン116.2gとベヘン酸(C22)537.1g、オレイン酸(C18F1)46.7gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は1%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.91:0.09であった。)
【0043】
比較例8
平均重合度が40のポリグリセリン123.2gとベヘン酸(C22)482.2、ステアリン酸(C18)72.3g、オレイン酸(C18F1)48.2gを反応フラスコに入れ、水酸化ナトリウム0.14gを加えた後、260℃でエステル化反応することにより、エステル化率95%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。(実施例1と同様に算定したとき、全構成脂肪酸中の炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸は14%。構成脂肪酸(1):(2)のモル比は、0.91:0.09であった。)
【0044】
試験例1
50mlのガラス瓶(口内径φ32×胴径φ45×高さ78mm)に実施例1~12、並びに比較例1~8のいずれかを1.5gとナタネ白絞油(ボーソー油脂株式会社製)を48.5g秤量した。それらを90℃で加熱溶解し、20℃で2時間静置することで、実施例又は比較例を3.0重量%添加した試料を調製した。
得られた試料のゲル強度の測定を行った。ゲル強度とは、プランジャーが1mm進んだ時の反発強度(g)で表される。ゲル強度の測定には、(株)レオテック製のFUDOH RHEOMETER RT-2002D-Dを用い、プランジャーには円柱形の直径12.7mmのものを用いた。
【0045】
試験例1で測定したゲル強度の評価基準
◎◎:100g以上
◎ :60-100g未満
○ :45-60g未満
× :45g未満
【0046】
試験例2
試験例1のゲル強度測定結果に応じて増粘したナタネ白絞油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、349.5nmにて測定した吸光度から透過率を得た。この透過率は、無添加のナタネ白絞油の吸光度を透過率100%として算出した。実施例1~12、並びに比較例1~8で増粘させた菜種油の20℃における粘度を1000~4000mPa・sに固定するため、透過率測定時の添加量については、以下に示す。
【0047】
(測定時の添加量)
ゲル強度◎◎の時 1.0重量%添加
ゲル強度◎ の時 2.0重量%添加
ゲル強度○ の時 2.5重量%添加
ゲル強度× の時 3.0重量%添加
【0048】
試験例2で測定した透過率の評価基準
◎◎:30%以上
◎ :15-30%未満
○ :10-15%未満
× :10%未満
試験例1及び2の結果を表1及び2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1~表2の結果から明らかなように実施例1~12をナタネ白絞油に添加し増粘又は固化させた油は、高いゲル強度を示し、透明性に優れている。
これに対し、比較例1~6を添加し増粘又は固化させた油は、実施例1~12添加し得られたものよりゲル強度が低く、そのため、低添加量で増粘又は固化を達成できず、それに伴い増粘又は固化達成時の透明性に劣る。
また、比較例7~8を添加し増粘又は固化させた油は、ゲル強度は高いものの、ベヘン酸を主構成としているため、透過率が低く、実施例1~12添加し得られたものより透明性に優れない。
【0052】
試験例3
50mlのガラス瓶(口内径φ32×胴径φ45×高さ78mm)に実施例1~12、並びに比較例1~8のいずれかを0.5gとネギ油(ユウキ食品株式会社製)を49.5g秤量した。それらを90℃で加熱溶解し、20℃で2時間静置させ、実施例又は比較例を1.0重量%添加したネギ油を調製した。これに、油不溶物として青色1号で着色させた塩を2.5g混合する事で試料を調製した。
この試料を20℃で保存し、保存1日後、5日後、20日後に油中での塩の分散状態を確認した。
【0053】
試験例3で確認した油中での塩の分散状態の評価基準は、塩の沈降で生じる上清の体積割合とした。上清の体積割合(%)の測定は、特に限定されるものではないが、(ネギ油液面の高さ53mm-上清と沈降した塩との境界面の高さXmm)×100/ネギ油液面の高さ53mmで算出した。
【0054】
試験例4
試験例3と同様に調製した、実施例1~12、並びに比較例1~8のいずれかを1.0重量%添加したネギ油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、349.5nmにて測定した吸光度から透過率を得た。この透過率は、無添加のネギ油の吸光度を透過率100%として算出した。
【0055】
試験例4で測定した透過率の評価基準
◎◎:30%以上
◎ :15-30%未満
○ :10-15%未満
× :10%未満
試験例3及び4の結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
試験例5
50mlのガラス瓶(口内径φ32×胴径φ45×高さ78mm)に実施例1~12を0.05gとネギ油(ユウキ食品株式会社製)を49.95g秤量した。それらを90℃で加熱溶解し、20℃で2時間静置させ、実施例を0.1重量%添加したネギ油を調製した。これに油不溶物としてバジルを0.15g混合する事で試料を調製した。
この試料を5℃、20℃、40℃の各温度帯で保存し、保存1日後に油中でのバジルの分散状態を確認した。
【0058】
試験例5で確認した油中でのバジルの分散状態の評価基準は、バジルの沈降で生じる上清の体積割合とし、試験例3と同様に算出した。
【0059】
試験例6
試験例5と同様に調製した、実施例1~12のいずれかを0.1重量%添加したネギ油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、349.5nmにて測定した吸光度から透過率を得た。この透過率は、無添加のネギ油の吸光度を透過率100%として算出した。
【0060】
試験例6で測定した透過率の評価基準
◎◎◎:45%以上
◎◎ :30-45%未満
◎ :15-30%未満
○ :10-15%未満
× :10%未満
試験例5及び6の結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
試験例7
50mlのガラス瓶(口内径φ32×胴径φ45×高さ78mm)に実施例1~12を0.25gとネギ油(ユウキ食品株式会社製)を49.75g秤量した。それらを90℃で加熱溶解し、20℃で2時間静置させ、実施例を0.5重量%添加したネギ油を調製した。これに油不溶物としてバジルを0.15g混合する事で試料を調製した。
この試料を20℃で保存し、保存1日後、5日後、20日後に油中でのバジルの分散状態を確認した。
【0063】
試験例7で確認した油中でのバジルの分散状態の評価基準は、バジルの沈降で生じる上清の体積割合とし、試験例3と同様に算出した。
【0064】
試験例8
試験例7と同様に調製した、実施例1~12のいずれかを0.5重量%添加したネギ油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、349.5nmにて測定した吸光度から透過率を得た。この透過率は、無添加のネギ油の吸光度を透過率100%として算出した。
【0065】
試験例8で測定した透過率の評価基準は試験例6と同様とした。
試験例7及び8の結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
試験例9
50mlのガラス瓶(口内径φ32×胴径φ45×高さ78mm)に実施例1~12を0.025gとネギ油(ユウキ食品株式会社製)を49.975g秤量した。それらを90℃で加熱溶解し、20℃で2時間静置させ、実施例を0.05重量%添加したネギ油を調製した。これに油不溶物としてバジルを0.15g混合する事で試料を調製した。
この試料を20℃で保存し、保存1日後に油中でのバジルの分散状態を確認した。
【0068】
試験例9で確認した油中でのバジルの分散状態の評価基準は、バジルの沈降で生じる上清の体積割合とし、試験例3と同様に算出した。
【0069】
試験例10
試験例9と同様に調製した、実施例1~12のいずれかを0.05重量%添加したネギ油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、349.5nmにて測定した吸光度から透過率を得た。この透過率は、無添加のネギ油の吸光度を透過率100%として算出した。
【0070】
試験例10で測定した透過率の評価基準は試験例6と同様とした。
試験例9及び10の結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表3~6の結果から明らかなように実施例1~12をネギ油に添加し油不溶物を分散させた油は、高い透明性を有しながら、油不溶物の沈降による上清の体積割合が小さく、分散安定性にも優れる。表4の結果から明らかなように、各温度帯における保存時もその割合の変動が小さく、分散安定性に優れる。
一方、表3の結果から明らかなように、比較例1~6をネギ油に添加し油不溶物として塩を分散させた油は、実施例1~12を添加し得られたものより上清の体積割合が大きい。特に、長期保存時にその割合の変動が大きく、分散安定性に劣る。
また、比較例7~8をネギ油に添加し油不溶物として塩を分散させた油は、低添加量で油不溶物の分散を達成できるものの、ベヘン酸を主構成としているため、透過率が低く、実施例1~12を添加し得られたものより透明性に優れない。
【0073】
試験例11
50mlのガラス瓶(口内径φ32×胴径φ45×高さ78mm)に実施例2を0.5gとゴマ油(かどや製油株式会社製)、オリーブ油(株式会社J-オイルミルズ製)、ラー油(エスビー食品株式会社製)のいずれかを49.5g秤量した。それらを90℃で加熱溶解し、20℃で2時間静置させ、実施例2を1.0重量%添加した香味油を調製した。これに青色1号で着色させた塩を2.5g混合する事で試料を調製した。
この試料を20℃で保存し、保存1日後、5日後、20日後に油中での塩の分散状態を確認した。
【0074】
試験例12
試験例11と同様に調製した、実施例2を1.0重量%添加した香味油について、分光光度計で、光路長1.0cmの石英セルを用い、測定した吸光度から透過率を得た。この透過率は、無添加の各香味油の吸光度を透過率100%として算出した。
各香味油の吸光度測定時の波長は以下に示す。
【0075】
(測定時の波長)
ゴマ油 398.5nm
オリーブ油 317.5nm
ラー油 542.5nm
【0076】
試験例12で測定した透過率の評価基準は試験例6と同様とした。
試験例11及び12の結果を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
表7の結果から明らかなように、各香味油に実施例2を添加し油不溶物を分散させた油は、油不溶物の沈降による上清の体積割合が小さく、分散安定性に優れ、かつ透明性にも優れる。
【0079】
製造例1
アヒージョ
(具材の調製)
冷凍むきえび70gを解凍し、余分な水分をキッチンペーパーでふき取った。
マッシュルーム100gを1個当たり4等分に切った。
(香味油の調製)
鍋にオリーブ油(株式会社J-オイルミルズ製)48g、市販のアヒージョの素(エスビー食品株式会社製)5g、実施例2の本発明品を0.48g添加した。実施例2の本発明品が溶解するまで、撹拌しながら弱火で加熱し、香味油を53.48g得た。
(アヒージョの調製)
鍋に具材170gと香味油53.48gを添加し、撹拌しながら弱火で5分間加熱した。その後、全量を保存容器に移して氷水上で4℃まで冷却し、アヒージョを223.48g得た。
【0080】
(保存安定性の評価)
アヒージョを4℃で3日間冷蔵保存したところ、香味油の透明性と凝固性は維持され、液状化した油脂の発生はなく、油脂の分離は抑えられていた。
(呈味性の評価)
アヒージョを電子レンジにて700Wで90秒加熱し、呈味性を評価したところ、異味異臭は無く、香味油の本来の味や香りは維持されていた。
【0081】
製造例2
サルサカンパニョーラ
(具材の調製)
赤パプリカ35g、黄パプリカ35g、きゅうり50g、トマト40g、ブラックオリーブ10g、モッツァレラチーズ50gをそれぞれ5mm角に切った。その後、ボールに3重量%食塩水200gを入れ、赤パプリカ35g、黄パプリカ35g、きゅうり50gを添加して5分間浸漬処理し、軽くもみ、水を切り、具材表面の水気を取り除いた。
(香味油の調製)
鍋にオリーブ油(株式会社J-オイルミルズ製)130g、食塩1.5g、実施例2の本発明品を1.3g添加し、実施例2の本発明品が溶解するまで、撹拌しながら弱火で加熱した。その後、鍋ごと氷水上で4℃まで冷却し、香味油を132.8g得た。
(サルサカンパニョーラの調製)
具材220gと香味油132.8gを混合し、サルサカンパニョーラを352.8g得た。
【0082】
(評価用フランスパンの調製)
フランスパンを縦6cm、横6cm、高さ2cmに切った。
(茹でスパゲッティの調製)
90℃の水2Lにスパゲッティ(太さ1.6mm、日清フーズ株式会社製)100gを入れ、90℃で11分間加熱し、茹でスパゲッティを240g得た。
【0083】
(フランスパンでの保存安定性の評価)
評価用フランスパン1切れにサルサカンパニョーラ10gを乗せて、保存容器に入れて4℃で1日間保存したところ、香味油の透明性と凝固性は維持され、液状化した油脂の発生はなく、保存容器底部への香味油の染み出しは確認されなかった。
(茹でスパゲッティでの保存安定性の評価)
茹でスパゲッティ180gにサルサカンパニョーラ50gを乗せて、保存容器に入れて4℃で1日間保存したところ、香味油の透明性と凝固性は維持され、液状化した油脂の発生はなく、保存容器底部への香味油の染み出しは確認されなかった。
(呈味性の評価)
サルサカンパニョーラの呈味性を評価したところ、異味異臭は無く、香味油の本来の味や香りは維持されていた。
【0084】
製造例3
麻婆豆腐
(具材の調製)
豆腐350gを1.5cm角に切り、90℃のお湯500gにて2分間加熱した。その後、水を切り、豆腐表面の水気を取り除いた。
(水溶き片栗粉の調製)
水30gに片栗粉10gを加えてよく撹拌した。
(香味油の調製)
鍋にラー油(エスビー食品株式会社製)を100g、実施例2を0.5g添加し、実施例2の本発明品が溶解するまで、撹拌しながら弱火で加熱した。その後、鍋ごと氷水上で4℃まで冷却した。
(麻婆豆腐の調製)
フライパンに水を180g、市販の麻婆豆腐の素(丸美屋食品工業株式会社製)を70g入れて中火で90℃まで加熱後、上述の豆腐を350g加えてゆっくりかき混ぜながら、更に90℃まで加熱した。火を消した後、水溶き片栗粉を40g添加してゆっくりかき混ぜ、90℃まで加熱した。その後、保存容器に180g取り分けて、氷水上で4℃まで冷却した。これに、上述の香味油3gをスポイドで滴下しながら回しかけた。
【0085】
(保存安定性の評価)
麻婆豆腐を4℃で3日間冷蔵保存したところ、香味油の透明性と凝固性は維持されており、香味油の合一による油膜の極大化や容器壁面への油膜形成は抑制されていた。
(呈味性の評価)
麻婆豆腐を電子レンジにて700Wで90秒加熱し、呈味性を評価したところ、異味異臭は無く、香味油の本来の味や香りは維持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上本発明の油脂の増粘剤及び固化剤を油脂に添加することにより、増粘又は固化した油脂を得ることができ、更にそれらは透明性に優れるため、食品に好適に用いることが可能となり、産業上の貢献は大である。