(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】非水電解質電池用吸着層並びにこれを用いた非水電解質電池用セパレータ及び非水電解質電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/434 20210101AFI20220405BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220405BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20220405BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20220405BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220405BHJP
【FI】
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/443 E
H01M50/446
H01M50/451
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2017166086
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暢浩
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 宏之
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 真也
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527266(JP,A)
【文献】特表2011-521436(JP,A)
【文献】特開2015-099746(JP,A)
【文献】特開2018-085286(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 6/00- 6/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質電池用吸着層を有する、非水電解質電池用セパレータであって、
前記非水電解質電池用吸着層は、チタン酸リチウムと、絶縁性無機粒子とを含み、
前記絶縁性無機粒子の平均最長径は、前記チタン酸リチウムの平均最長径より大き
く、前記絶縁性無機粒子は、陰イオン交換体である、非水電解質電池用セパレータ。
【請求項2】
チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子の合計質量を100質量%としたとき、チタン酸リチウムが0質量%超90質量%未満である、請求項
1に記載の非水電解質電池用セパレータ。
【請求項3】
前記非水電解質電池用吸着層は、前記非水電解質電池用セパレータの少なくとも片面に存在する、請求項
1又は2に記載の非水電解質電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の非水電解質電池用セパレータを備える、非水電解質電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池用吸着層並びにこれを用いた非水電解質電池用セパレータ及び非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の発展又は環境技術への関心の高まりに伴い、様々な電気化学デバイスが開発されている。特に、省エネルギー化への要請が多くあり、それらに貢献できる電気化学デバイスへの期待はますます高くなっている。
【0003】
蓄電デバイスの代表例であり、かつ非水電解質電池の代表例でもあるリチウムイオン二次電池は、従来、主に小型機器用電源として使用されており、近年ではハイブリッド自動車及び電気自動車用電源としても着目されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池では、デバイスの高性能化に伴い高エネルギー密度化が進展しており、信頼性の確保が重要となっている。また、車載用電源などの中型又は大型のリチウムイオン二次電池では、小型機器よりも特に信頼性が確保される必要がある。更に、車載用電源としては、製品サイクルに合わせて、長い期間にわたって充放電容量を維持可能なリチウムイオン二次電池が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1は、電池容量の劣化を抑制することが可能な非水電解液二次電池を提供することを目的とし、正極と負極とを含む電極体を備える非水電解液二次電池であって、電極体は、正極と負極との間に配置され、負極と離隔しているチタン酸リチウム含有層を含む、非水電解液二次電池を記載している。特許文献2は、拡散抵抗を低くしてリチウムの受け入れ性を向上させることができるリチウムイオン二次電池等を提供することを目的とし、セパレータの負極活物質層を向く負極側主面上に形成され、負極活物質層に直接または間接に導通し、チタン酸リチウム及び第1導電材を含むLTO導電層を有する、リチウムイオン二次電池を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/020729号
【文献】特開2014-137889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非水電解質電池では、その系中に存在する又は生じることがある金属イオンが、電池の安全性及び寿命特性に悪影響を及ぼすことがある。例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム(Li)イオンが正極-負極間を移動することで充放電が行われる。ここで、電池内にLiイオン以外の微量の金属イオン、例えばコバルトイオン(Co2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、マンガンイオン(Mn2+)が存在すると、これらの金属が負極表面に析出して、電池寿命低下の原因となったり、析出した金属がセパレータを破って正極に到達することで短絡の原因となったり、安全性が低下することが知られている。このような金属イオンは、一般的に電池構成材料の不純物に由来することがあり、また、それ以外にも正極活物質等の電池構成部材に含まれる金属が電池内の副反応に伴い非水電解質に溶出することに由来することもある。例えば、非水電解質の分解反応等によってフッ化水素酸(HF)が発生し、HFによって正極活物質に含まれる金属が溶出することがある。更に、このような金属の溶出は、電池が高温下に晒された場合に、より顕著になることが指摘されている。
【0008】
本発明の解決しようとする課題のひとつは、安全性及び寿命特性に優れる非水電解質電池を提供することができる、非水電解質電池用吸着層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、チタン酸リチウムと、絶縁性無機粒子とを含む、非水電解質電池用吸着層を使用することにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
チタン酸リチウムと、絶縁性無機粒子とを含む、非水電解質電池用吸着層。
[2]
上記絶縁性無機粒子は、陰イオン交換体である、項目1に記載の非水電解質電池用吸着層。
[3]
チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子の合計質量を100質量%としたとき、チタン酸リチウムが0質量%超90質量%未満である、項目1又は2に記載の非水電解質電池用吸着層。
[4]
項目1~3のいずれか一項に記載の非水電解質電池用吸着層を有する、非水電解質電池。
[5]
正極、負極、セパレータ、及び前記非水電解質電池用吸着層を含む、非水電解質電池であって、
上記非水電解質電池用吸着層は、上記セパレータの内部、上記正極と上記セパレータとの間、及び上記負極と上記セパレータとの間からなる群から選択される少なくとも一つの、一部又は全部に形成されている、項目4に記載の非水電解質電池。
[6]
項目1~3のいずれか一項に記載の非水電解質電池用吸着層を有する、非水電解質電池用セパレータ。
[7]
項目1~3のいずれか一項に記載の非水電解質電池用吸着層を少なくとも片面に有する、非水電解質電池用セパレータ。
[8]
正極、項目1~3のいずれか一項に記載の非水電解質電池用吸着層、セパレータ、及び負極がこの順に積層されている、積層体又は上記積層体の捲回体と、非水電解質とを有する、非水電解質電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非水電解質電池用吸着層は、非水電解質電池に存在する又は生じることのある金属イオンを効率的に吸着することができるため、安全性及び寿命特性に優れる非水電解質電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本願明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0012】
《非水電解質電池》
非水電解質電池は、一般的に、正極と、負極と、セパレータと、電解質と、外装体とを有する。本願明細書において、非水電解質電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明することがあるが、そのような説明は本発明の理解を助けることのみを目的とするものであり、本実施形態の非水電解質電池はリチウムイオン二次電池に限定されるものではない。
【0013】
本願明細書において、正極、負極、セパレータ、非水電解質、及び外装体を含む、リチウムイオン二次電池を構成する部材を総称して「電池構成部材」という。電池構成部材を構成する材料として、例えば外装体にはアルミニウム等;正極活物質にはニッケル、コバルト、マンガン、鉄、亜鉛、銅、及びアルミニウム等;また、集電箔には銅、及びアルミニウム等が典型的に用いられる。これらの金属は、例えばHFと接触することで金属イオンとなって電池内に溶出する。溶出した金属イオンは負極で還元されて析出し、例えばリチウムイオン二次電池ではLi含有化合物を生じて容量の低下を招く。その結果、電池の安全性及び寿命特性が著しく低下してしまうことがある。本実施形態の非水電解質電池は、後述する特定の非水電解質電池用吸着層を有することで、電池内に存在する又は生じる金属イオンを効果的に吸着することができ、金属の析出を抑え、電池の寿命特性を向上させることができる。また、負極における金属の析出を抑制することができ、短絡をより効果的に抑制することが可能であるため、電池の安全性の向上に寄与することができる。本実施形態の非水電解質電池は、好ましくは後述する特定の非水電解質電池用吸着層を有し、より好ましくは後述する特定の非水電解質電池用吸着層から構成される多孔質層を有する。非水電解質電池用吸着層は、セパレータの内部、正極とセパレータとの間、及び負極とセパレータとの間からなる群から選択される少なくとも一つの、一部又は全部に形成されていることが好ましい。非水電解質電池用吸着層は、正極とセパレータとの間の一部又は全部に形成されていることがより好ましい。
【0014】
〈非水電解質電池用吸着層〉
本実施形態の非水電解質電池用吸着層は、チタン酸リチウムと絶縁性無機粒子とを含む。非水電解質電池用吸着層は、チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子に加えて、バインダーを更に含んでいてもよい。本実施形態の非水電解質電池用吸着層は、好ましくは、非水電解質電池用吸着層を含む多孔質層であることができ、より好ましくは、非水電解質電池用吸着層から構成される多孔質層であることができる。
【0015】
(チタン酸リチウム)
チタン酸リチウムは、チタン(Ti)とリチウム(Li)とを含む酸化物である。例えば、LixTiyOz(0<x≦4、1≦y≦5、2≦z≦12)で表される化合物であっても良い。例えば、Li4Ti5O12、Li2Ti3O7、LiTiO4、Li0.5TiO2が挙げられる。本実施形態では、チタン酸リチウムを絶縁性無機粒子とともに層状に形成することで、金属イオンを効率的に吸着することができ、金属元素が負極上に析出することを効率的に抑制することができるため、安全性及び寿命特性に優れる非水電解質電池を提供することができる。その理由としては、理論に限定されないが、絶縁性無機粒子を含有することで、チタン酸リチウムの分散性が高まり、金属イオンをより効率的に吸着することができるからであると発明者らは推察している。
【0016】
チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子の合計質量を100質量%としたとき、チタン酸リチウムの量の下限は、好ましくは、0質量%超、40質量%以上、60質量%以上、又は90質量%以上とすることができ、上限は、好ましくは90質量%以下、90質量%未満、60質量%以下、又は40質量%以下とすることができる。この中でも、チタン酸リチウムの量は、より好ましくは0質量%超90質量%未満、より更に好ましくは0質量%超70質量%以下、特に好ましくは40質量%以上60質量%以下である。チタン酸リチウムが0質量%超90質量%未満であると、非水電解質電池のエネルギー密度を高く維持し、かつ金属イオン吸着率に優れる傾向にある。特に、アスペクトが高いチタン酸リチウム、例えばアスペクトが5以上のチタン酸リチウムを使用したとき、チタン酸リチウムを50質量%未満とする効果はより顕著になる。
【0017】
チタン酸リチウムのBET比表面積は、好ましくは3m2/g以上1000m2/g以下である。BET比表面積が3m2/g以上であることによって、非水電解質電池の寿命特性及び安全性をより向上させることができる。チタン酸リチウムのBET比表面積は、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは50m2/g以下、更に好ましくは30m2/g以下である。BET比表面積が1000m2/g以下であることにより、チタン酸リチウムの凝集が抑えられ、非水電解質電池のエネルギー密度が向上する傾向にある。
【0018】
チタン酸リチウムの形状は特に限定されないが、チタン酸リチウムを非水電解質電池用吸着層内に良好に分散させるためには、分散性に優れた形状であることが好ましく、粒子状であることが好ましい。チタン酸リチウムの平均二次粒子径(D50)は、好ましくは0.05μm~5μm、より好ましくは0.1μm~3.5μm、更に好ましくは0.2μm~3μmである。平均二次粒子径が0.05μm~5μmであることによって、非水電解質電池のエネルギー密度が高まる傾向にある。
【0019】
チタン酸リチウムの平均二次粒子径を0.05μm~5μmの範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、従来公知の方法、例えば、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ビーズミル法、ジェットミル法、容器回転式圧縮剪断型ミル法、磁器乳鉢で粉砕する方法等が挙げられる。
【0020】
チタン酸リチウムの結晶系としては、特に限定されないが、スピネル構造、ラムズライト構造、アナターゼ構造が挙げられる。これらの中でスピネル構造(典型的にはLi4Ti5O12と表される)が好ましい。
上記のチタン酸リチウムの調製方法は、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウムや炭酸リチウム等のリチウム化合物と二酸化チタンとを、LiとTiのモル比が所定の範囲となるように湿式及び又は乾式混合し、乾燥後、焼成することにより作製することができる。焼成温度は、好ましくは550℃~1500℃、より好ましくは600℃~1200℃である。また、焼成雰囲気については、特に限定されないが、大気中で焼成することが好ましい。また、通常の大気中焼成後に400~1000℃の温度範囲で熱処理(アニール)をして、酸素欠損を修復することが好ましい。アニールによりチタン酸リチウムの結晶性がより高まり、吸着性能もより高まる。
また、チタン酸リチウムは水素(H)を含んでもよい。水素(H)は、リチウム(Li)の一部と置換されて含まれ得る。
さらにチタン酸リチウムは、式:LiATi5-BMBO12+C
(式中、Mは、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、B、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Nb、Mo、W、Bi、Na及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Aは3~5、Bは0.005~1.5、Cは-1~1を満たす。)で表されるものであってもよい。Mは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、B、Mg、Zr、Nb及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、上述のチタン酸リチウムは1種を単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
(バインダー)
本実施形態の非水電解質電池用吸着層において、チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子は、バインダーで結着されていてもよい。これは、チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子を固定し、電池内での脱落と不安全性を防ぐ観点から好ましい。それに加えて特に重要なことは、チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子を、互いに混合及び分散した状態で保持できるからである。バインダーによる結着が十分であれば、充放電による負極の膨張収縮等に伴って、または、電池セルにかかる外部応力に伴って、チタン酸リチウム同士の間隔が狭まり、細密に充填され、チタン酸リチウムの金属イオン吸着能が低下することを効果的に抑制することができる。よって、非水電解質電池用吸着層が電池内のいかなる場所に設置された場合においても、バインダーを含むことが好ましい。
【0022】
良好な吸着特性を維持する観点から、バインダーのTgは-80℃以上0℃以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては-70℃以上-10℃以下であることが好ましい。更に好ましくは、-60℃以上-20℃以下である。この範囲にあることで、負極の膨張収縮や外部応力に対しても高い安定性を維持可能であり、結果として良好な吸着特性を維持することができる。
【0023】
チタン酸リチウムを固定するバインダーとしては、限定されないが、例えば、使用する非水電解液に対して不溶又は難溶であり、かつ電気化学的に安定なものが好ましい。このようなバインダーとしては、限定されないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン;フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、及びポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。バインダーの融点及び/又はガラス転移温度は180℃以上であることが好ましい。
【0024】
これらの中でも、バインダーとしては、樹脂製ラテックスバインダーが好ましい。なお、本明細書において「樹脂製ラテックス」とは、樹脂が媒体中に分散した状態のものを示す。チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子と、樹脂製ラテックスバインダーとを含む多孔質の非水電解質電池用吸着層を有するセパレータは、イオン透過性が低下し難く、出力特性に優れる傾向にある。また、異常発熱時など、電池の温度上昇が速い場合であっても円滑なシャットダウン性能を示し、耐熱収縮性が高く、安全性に優れる傾向にある。
【0025】
樹脂製ラテックスバインダーとしては、限定されないが、例えば、脂肪族共役ジエン系単量体又は不飽和カルボン酸単量体、及びこれらと共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られるものが挙げられる。このような樹脂製ラテックスバインダーを用いることにより、電気化学的安定性と結着性がより向上する傾向にある。乳化重合方法としては限定されず、公知の方法を用いることができる。単量体及びその他の成分の添加方法としては、限定されないが、一括添加方法、分割添加方法、及び連続添加方法を挙げることができ、いずれを使用してもよい。また、重合方法としては、限定されないが、一段重合、二段重合又は多段階重合を挙げることができ、いずれを使用してもよい。
【0026】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられる。これらの中でも、脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3-ブタジエンが好ましい。脂肪族共役ジエン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
不飽和カルボン酸単量体としては、限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノ又はジカルボン酸(無水物)等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
脂肪族共役ジエン系単量体又は不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体としては、限定されないが、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。これらの中でも、他の単量体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。他の単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、限定されないが、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、メチルメタクリレートが好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記で説明した単量体に加えて、様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体成分を更に使用することもできる。
【0031】
樹脂製ラテックスバインダーの平均粒子径は、好ましくは50nm~500nm、より好ましくは60nm~460nm、更に好ましくは70nm~420nmである。平均粒子径が50nm以上であることにより、チタン酸リチウム及び絶縁性無機粒子と樹脂製ラテックスバインダーとを含む吸着層のイオン透過性が低下し難く、出力特性に優れる傾向にある。樹脂製ラテックスバインダーの平均粒子径が500nm以下であることで、結着性がより良好となり、負極や正極の膨張収縮に対しての耐性が高まり、より良好な吸着特性を維持できる傾向にある。
【0032】
樹脂製ラテックスバインダーの平均粒子径の制御は、重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pHなどを調整することで可能である。
【0033】
樹脂製ラテックスバインダーの量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、例えば、単位面積当たりに、好ましくは0.1g/m2以上、より好ましくは0.5g/m2以上である。電池のエネルギー密度の低下を抑え、内部抵抗の上昇を抑える観点から、樹脂製ラテックスバインダーの量は、単位面積当たりに、好ましくは15g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下である。
【0034】
(絶縁性無機粒子)
本実施形態の非水電解質電池用吸着層は、絶縁性無機粒子を含むことによって、チタン酸リチウムの分散性を向上させることができる。本願明細書において、「絶縁性無機粒子」とは、体積抵抗率が103Ω・cm以上の無機材料の粒子を意味する。絶縁性無機粒子の体積抵抗率は、好ましくは10Ω4・cm以上、より好ましくは105Ω・cm以上、更に好ましくは106Ω・cm以上であってよい。絶縁性無機粒子は、平均最長径がチタン酸リチウムより大きいことが好ましい。ここでいう「最長径」とは、粒子の最長軸方向の長さをいう。非水電解質電池用吸着層は、チタン酸リチウムとともに、この特定の平均最長径を有する絶縁性無機粒子を含有することで、チタン酸リチウムの分散性が特に高まり、金属イオンを効率的に吸着することができる。チタン酸リチウムの最長径に対する絶縁性無機粒子の最長径の比率は、限定されないが、好ましくは1.01以上1000以下、より好ましくは1.1以上500以下、更に好ましくは1.2以上300以下とすることができる。
【0035】
粒子の平均最長径を測定する方法としては、特に制限されないが、例えば、走査型電子顕微鏡で、100個の粒子の最長軸方向の長さを観察し、平均値を算出することにより測定することができる。
【0036】
絶縁性無機粒子としては、限定されないが、例えば、200℃以上の融点を有し、かつ非水電解質電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。このような絶縁性無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム、チタン酸塩、ニオブ酸塩、ニオブ・チタン酸塩、ゼオライト、などの陽イオン交換体、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、石膏、硫酸バリウムなどの炭酸塩および硫酸塩、アルミナ三水和物(ATH)、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、イットリアなどの酸化物系セラミックス、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、SiO2-MgO(ケイ酸マグネシウム)、SiO2-CaO(ケイ酸カルシウム)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ランタン、炭酸セリウム窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、水酸化マグネシウム、シリコンカーバイド、タルク、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイトなどの層状シリケート、アスベスト、ケイ藻土、ガラス繊維などの合成層状シリケート、例えば、雲母またはフルオロ雲母などの中性層状シリケート、例えば、ヘクトライト、サポナイト、またはバーミキュライト、ナノクレイなどのインターカレーションおよび剥離を改善する改良剤を含有する天然または合成層状シリケート、ホウ酸亜鉛、および陰イオン交換体からなる群から選択される無機粒子などが挙げられる。
【0037】
絶縁性無機粒子は、陰イオン交換体であることが好ましい。本願明細書において、「陰イオン交換体」とは、電池内に存在する又は生じる陰イオンを吸着し、代わりに他の陰イオンを放出することができる物質をいう。絶縁性無機粒子が陰イオン交換体であることで、非水電解質電池用吸着層におけるチタン酸リチウムの分散性を向上するだけでなく、金属イオンをより効率的に吸着することができるため、より好ましい。
【0038】
陰イオン交換体の絶縁性無機粒子としては、限定されないが、例えば、層状複水酸化物(Mg-Alタイプ、Mg-Feタイプ、Ni-Feタイプ、Li-Alタイプ)、層状複水酸化物-アルミナシリカゲル複合体、ベーマイト、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、ヘマタイト、酸化ランタン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、塩基性酢酸銅及び塩基性硫酸鉛等が挙げられる。水分量が比較的少なく、電池の膨れを防ぐ観点から、陰イオン交換体としては、ベーマイト、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、ヘマタイト、酸化ランタン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムが好ましい。陰イオン交換体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
絶縁性無機粒子の量は、絶縁性無機粒子及びチタン酸リチウムの合計質量を100質量%としたとき、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。
【0040】
〈多孔質層〉
本明細書における非水電解質電池用吸着層は、非水電解質電池用吸着層を含む多孔質層であることが好ましく、非水電解質電池用吸着層から構成される多孔質層であることがより好ましい。
【0041】
多孔質層におけるチタン酸リチウムと絶縁性無機粒子との合計含有量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、多孔質層の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)を基準として、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上である。
【0042】
多孔質層の空孔率は、30%以上80%以下であることが好ましい。より好ましくは、40%以上であることが好ましい。また、その上限は、70%以下であることが好ましい。
【0043】
多孔質層の体積抵抗率は、1×103Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下であることが好ましい。この範囲にあることによって、寿命特性を向上させることができる。より好ましい範囲は、1×104Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下である。
【0044】
〈非水電解質電池用セパレータ〉
本明細書における非水電解質電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、好ましくは、本実施形態の非水電解質電池用吸着層を有し、より好ましくは本実施形態の非水電解質電池用吸着層から構成される多孔質層を有する。非水電解質電池用セパレータは、本実施形態の非水電解質電池用吸着層を少なくとも片面に有することが更に好ましく、非水電解質電池用吸着層を多孔質基材の少なくとも片面に有することがより更に好ましい。多孔質基材は、イオンの透過性が高く、かつ正極と負極とを電気的に隔離する機能を有するものであれば限定されない。非水電解質電池に用いられる公知の多孔質基材を用いることができる。
【0045】
多孔質基材が非水電解質電池用吸着層を有する場合、非水電解質電池用吸着層の厚みは、1μm~10μmであることが好ましい。非水電解質電池用吸着層の厚みは、1μm以上、5μm未満であることで非水電解質電池のエネルギー密度が高まる傾向にあるため、更に好ましい。
【0046】
〈多孔質基材〉
多孔質基材の材料としては、限定されないが、電池中の非水電解質に対して安定であり、かつ電気化学的に安定な材料、例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など;ポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;ポリウレタンが挙げられる。セパレータの形態としては、限定されないが、例えば微多孔膜、及び不織布等が挙げられる。
【0047】
多孔質基材は、好ましくは80℃以上180℃以下、より好ましくは100℃以上150℃以下において、その孔が閉塞する性質(「シャットダウン機能」ともいう。)を有することが好ましい。したがって、多孔質基材としては、JIS K 7121の規定に準じて示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、好ましくは80℃以上180℃以下、より好ましくは100℃以上150℃以下のポリオレフィンを含む、微多孔膜又は不織布を用いることがより好ましい。
【0048】
多孔質基材としての微多孔膜又は不織布は、例えば、PEから構成されていてもよく、PPから構成されていてもよく、又は2種以上の材料を含んでいてもよい。多孔質基材は、PEから構成される微多孔膜とPPから構成される微多孔膜との積層体、例えば、PP、PE、PPの順に積層された三層積層体であってもよい。
【0049】
微多孔膜としては、例えば、従来から知られている溶剤抽出法、乾式又は湿式延伸法などにより形成された孔を多数有するイオン透過性の多孔質膜を用いることができ、非水電解質電池のセパレータとして汎用されている微多孔膜であってよい。
【0050】
本願明細書において、ポリオレフィンを「主体とする」多孔質基材とは、その構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中におけるポリオレフィンの含有量が30体積%以上であるものをいい、好ましくは70体積%以上である。
【0051】
ポリオレフィンを主体とする多孔質基材、特に微多孔膜は、電池内が高温になることによって熱収縮し易い。しかしながら、本実施形態の非水電解質電池用吸着層が耐熱層として機能し、多孔質基材全体の熱収縮が抑制されるため、より高温下での安全性に優れた非水電解質電池を得ることができる。
【0052】
非水電解質電池用吸着層における無機粒子の量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、多孔質層の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)を基準として、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上である。
【0053】
多孔質基材は、本実施形態のチタン酸リチウムと絶縁性無機粒子以外に、樹脂粒子を有してもよい。多孔質基材が樹脂粒子を有することによって、例えば、高温下におけるセパレータ全体の形状安定性を更に高めることができる。
【0054】
樹脂粒子としては、耐熱性及び電気絶縁性を有し、電池中の非水電解質に対して安定であり、かつ電池の作動電圧範囲において酸化還元され難い電気化学的に安定な樹脂で構成されるものが好ましい。このような樹脂粒子を形成するための材料としては、スチレン樹脂(ポリスチレンなど)、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレートなど)、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシドなど)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデンなど)、及びこれらの誘導体から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂の架橋体;尿素樹脂;及びポリウレタン等が挙げられる。樹脂粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂粒子は、必要に応じて、樹脂に添加することができる公知の添加剤、例えば酸化防止剤などを含有してもよい。
【0055】
樹脂粒子の形態は、それぞれ独立して、板状、鱗片状、針状、柱状、球状、多面体状、塊状など、いずれの形態であってもよく、透過性向上の観点から、複数の面を有する多面体状が好ましい。
【0056】
樹脂粒子の平均粒子径(D50)は、それぞれ独立して、好ましくは0.1μm~4.0μm、より好ましくは0.2μm~3.5μm、更に好ましくは0.4μm~3.0μmである。平均粒子径が0.1μm~4.0μmであることによって、高温におけるセパレータの熱収縮がより抑制される傾向にある。
【0057】
多孔質基材が樹脂粒子を有する場合、これらの粒子は、例えば、(i)本実施形態の非水電解質電池用吸着層に、又は(ii)非水電解質電池用吸着層及び基材とは別の、他の多孔質層(以下、単に「他の多孔質層」ともいう。)に含有させてもよい。
【0058】
樹脂粒子を、(i)非水電解質電池用吸着層に含有させる場合には、チタン酸リチウムの含有量が上記で説明した好適な範囲内になるように、樹脂粒子の含有量を調整することが好ましい。
【0059】
樹脂粒子を、(ii)他の多孔質層に含有させる場合、当該他の多孔質層は、例えば:基材としての不織布又は微多孔膜の片面上であって、本実施形態の非水電解質電池用吸着層が設けられた面とは反対側の面上に配置してもよく;非水電解質電池用吸着層と基材との間に配置してもよく;又は、非水電解質電池用吸着層の表面のうち基材と接する面とは反対の面上に配置してもよい。
【0060】
樹脂粒子を含む他の多孔質層は、基材及び/又は非水電解質電池用吸着層と一体化していてもよく、これらとは独立した膜として存在し、電池内でこれらと重ね合わせられてセパレータを構成していてもよい。
【0061】
樹脂粒子を、(ii)他の多孔質層に含有させる場合、当該他の多孔質層における樹脂粒子の含有量は、他の多孔質層の全体積(空孔部分を除く全体積)中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは50体積%以上である。
【0062】
樹脂粒子を、(ii)他の多孔質層に含有させる場合、当該多孔質層はバインダーを含有することが好ましい。他の多孔質層における樹脂粒子の含有量は、他の多孔質層の全体積(空孔部分を除く全体積)中、好ましくは99.5体積%以下である。バインダーとしては、本実施形態の非水電解質電池用無機粒子を含有する多孔質層に用いることができるものとして例示したバインダーと同様のものを使用することができる。
【0063】
多孔質基材が本実施形態の非水電解質電池用無機粒子を含有する多孔質層を有しない場合であっても、セパレータは、上述した不織布又は微多孔膜を基材として有し、その片面又は両面上に、その他の無機粒子又は樹脂粒子を含む他の多孔質層を有する多孔質基材であってもよい。
【0064】
非水電解質電池用セパレータの空孔率は、非水電解質の保持量を確保してイオン透過性を良好にするために、セパレータの乾燥した状態で好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、セパレータの乾燥した状態で好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。本願明細書において、セパレータの空孔率P(%)は、セパレータの厚み、単位面積当たりの質量、及び構成成分の密度から、下記式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P={1-(m/t)/(Σai・ρi)}×100
{式中、aiは、全体の質量を1としたときの成分iの比率であり、ρiは、成分iの密度(g/cm3)であり、mは、セパレータの単位面積当たりの質量(g/cm2)であり、かつtは、セパレータの厚み(cm)である。}
【0065】
非水電解質電池用セパレータの総厚は、上述の多孔質層を有する場合及び有しない場合のいずれにおいても、好ましくは2μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、更に好ましくは7μm以上30μm以下である。セパレータの総厚が2μm以上であることにより、セパレータの機械強度がより向上する傾向にある。また、セパレータの総厚が200μm以下であることにより、電池内におけるセパレータの占有体積が減るため、非水電解質電池がより高容量化し、イオン透過性がより向上する傾向にある。
【0066】
非水電解質電池用セパレータの透気度は、好ましくは10秒/100cc以上500秒/100cc以下、より好ましくは20秒/100cc以上450秒/100cc以下、更に好ましくは30秒/100cc以上450秒/100cc以下である。透気度が10秒/100cc以上であることにより、セパレータを非水電解質電池に用いた際の自己放電がより少なくなる傾向にある。透気度が500秒/100cc以下であることにより、より良好な充放電特性が得られる傾向にある。
【0067】
多孔質基材が本実施形態の非水電解質電池用無機粒子を含有する多孔質層を有する場合、多孔質層の厚みは、1μm~10μmであることが好ましい。
【0068】
多孔質基材が樹脂粒子を含む他の多孔質層を有する場合、当該他の多孔質層の厚みは、1μm~10μmであることが好ましい。
【0069】
多孔質基材の基材自体、例えば不織布又は多孔質膜自体の厚みは、5μm~40μmであることが好ましい。
【0070】
本実施形態の非水電解質電池用無機粒子を含有する多孔質層は、本実施形態の非水電解質電池用無機粒子、及びバインダーなどを、水又は有機溶媒に分散又は溶解させて調製した組成物(例えば、ペースト、スラリーなど)を、多孔質層を形成したい箇所に塗布して乾燥させることにより形成してもよく、組成物を樹脂フィルムなどの基材上に塗布して乾燥させた後に剥離して、独立した膜として形成してもよい。その他の無機粒子又は樹脂粒子を含む他の多孔質層もまた、上記と同様に形成することができる。
【0071】
〈正極〉
正極は、一般に、集電体と、その上に形成された正極合剤層とを有し、正極合剤層は、正極活物質と、導電助材と、バインダーとを含むことが好ましい。
【0072】
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な公知のものを用いることができる。正極活物質としては、リチウムを含む材料が好ましい。正極活物質としては、例えば、
下記式(1):
LixMn2-yMyOz (1)
{式中、Mは、遷移金属元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0<x≦1.3、0.2<y<0.8、かつ3.5<z<4.5である。}
で表される酸化物;
下記式(2):
LixMyOz (2)
{式中、Mは、遷移金属元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0<x≦1.3、0.8<y<1.2、かつ1.8<z<2.2である。}
で表される層状酸化物;
下記式(3):
LiMn2-xMaxO4 (3)
{式中、Maは、遷移金属元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、かつ0.2≦x≦0.7である。}
で表されるスピネル型酸化物;
下記式(4):
Li2McO3 (4)
{式中、Mcは、遷移金属元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。}で表される酸化物と下記式(5):
LiMdO2 (5)
{式中、Mdは、遷移金属元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。}で表される酸化物との複合酸化物であって、下記式(6):
zLi2McO3-(1-z)LiMdO2 (6)
{式中、Mc及びMdは、それぞれ上記式(4)及び(5)におけるMc及びMdと同義であり、かつ0.1≦z≦0.9である。}
で表される、Liが過剰な層状の酸化物正極活物質;
下記式(7):
LiMb1-yFeyPO4 (7)
{式中、Mbは、Mn及びCoから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、かつ0≦y≦1.0である。}
で表されるオリビン型正極活物質;及び
下記式(8):
Li2MePO4 F (8)
{式中、Meは、遷移金属元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。}で表される化合物が挙げられる。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0073】
正極活物質は、より高電位で作動させて電池のエネルギー密度を高めることができるものが好ましい。本実施形態の非水電解質電池は、正極活物質から溶出して負極に析出することで電池特性を低下させたり短絡を引き起こしたりする金属イオンを効果的に吸着することができ、これにより電池性能低下を抑制できるので、正極活物質としては、上記式(3)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、及び上記式(2)で表される層状化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0074】
正極における導電助材及び集電体は、公知のものを使用することができる。
【0075】
正極は、本実施形態の非水電解質電池用吸着層を有してもよい。正極が本実施形態の非水電解質電池用吸着層を有する場合、その態様としては、限定されないが、例えば、(i)正極合剤層中に本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含有させる方法、又は(ii)正極合剤層の表面に本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含有する多孔質層を形成する方法が挙げられる。前者の方法の場合、本実施形態の非水電解質電池用吸着層は、正極活物質と混合された状態でもよく、正極活物質の表面にコートされていてもよい。後者の方法の場合、本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含有する多孔質層は、上記で説明した多孔質層と同じ方法により形成することができ、その構成もまた、上述の多孔質層の構成を援用することができる。
【0076】
正極中の非水電解質電池用吸着層の含有量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、例えば、集電体を除く非水電解質電池用吸着層成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、0.5体積%以上であることが好ましく、1体積%以上であることがより好ましい。また、電池のエネルギー密度及び内部抵抗の観点から、正極における非水電解質電池用吸着層の含有量は、集電体を除く正極の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、10体積%以下であることが好ましく、6体積%以下であることがより好ましい。
【0077】
正極が非水電解質電池用吸着層を含有しない場合には、正極合剤層の全質量を基準として、正極活物質の含有量は87質量%~97質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量は1.5質量%~6.5質量%であることが好ましく、バインダーの含有量は1.5質量%~6.5質量%であることが好ましい。
【0078】
正極が非水電解質電池用吸着層を含有する場合には、正極合剤層の全質量を基準として、正極活物質の含有量は79.4質量%~96.4質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量は1.4質量%~6.5質量%であることが好ましく、バインダーの含有量は1.4質量%~6.5質量%であることが好ましい。
【0079】
〈負極〉
負極は、一般に、集電体と、その上に形成された負極合剤層とを有し、負極合剤層は、負極活物質と、バインダーとを含むことが好ましい。
【0080】
負極における集電体としては、限定されないが、例えば、銅、ニッケル、及びステンレス等の金属の箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル;炭素材料、例えばカーボンクロス、及びカーボンペーパー等が挙げられる。負極における集電体は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0081】
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な公知のものを用いることができる。負極活物質としては、限定されないが、例えば、黒鉛粉末、メソフェーズ炭素繊維、及びメソフェーズ小球体などの炭素材料;並びに金属、合金、酸化物及び窒化物が挙げられる。負極活物質は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0082】
負極は、本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含んでもよい。負極が本実施形態の非水電解質電池用吸着層を有する場合、その態様としては、限定されないが、例えば、(i)負極合剤層中に本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含有させる方法、又は(ii)負極合剤層の表面に本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含有する多孔質層を形成する方法が挙げられる。前者の方法の場合、本実施形態の非水電解質電池用吸着層は、負極活物質と混合された状態でもよく、負極活物質の表面にコートされていてもよい。後者の方法の場合、本実施形態の非水電解質電池用吸着層を含有する多孔質層は、上記で説明した多孔質層と同じ方法により形成することができ、その構成もまた、上述の多孔質層の構成を援用することができる。
【0083】
負極中の非水電解質電池用吸着層の含有量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、例えば、集電体を除く負極の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、1.5体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがより好ましい。また、電池のエネルギー密度及び内部抵抗の観点から、負極における非水電解質電池用吸着層の含有量は、集電体を除く負極の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積)中、25体積%以下であることが好ましく、15体積%以下であることがより好ましい。
【0084】
負極が非水電解質電池用吸着層を含有しない場合には、負極合剤層の全質量を基準として、負極活物質の含有量は88質量%~99質量%であることが好ましく、バインダーの含有量は1質量%~12質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、導電助剤の含有量は0.5質量%~6質量%であることが好ましい。
【0085】
負極が非水電解質電池用吸着層を含有する場合には、負極合剤層の全質量を基準として、負極活物質の含有量は68質量%~98質量%であることが好ましく、全バインダーの含有量は0.8質量%~11.8質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、導電助剤の含有量は0.9質量%~5.9質量%であることが好ましい。
【0086】
負極におけるバインダーとしては、負極活物質、導電助材、及び集電体の負極を構成する材料のうち少なくとも2つを結着できる公知のものを用いることができる。非水電解質電池用吸着層のバインダーと同一または異なるものでよい。負極におけるバインダーとしては、限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、及びポリフッ化ビニリデンが挙げられる。バインダーは1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0087】
〈非水電解質〉
非水電解質としては、限定されないが、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液であってよい。リチウム塩としては、限定されないが、例えば、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF2k+1(式中、kは1~8の整数である)、LiN(SO2CkF2k+1)2(式中、kは1~8の整数である)、LiPFn(CkF2k+1)6-n(式中、nは1~5の整数であり、かつkは1~8の整数である)、LiPF4(C2O4)、及びLiPF2(C2O4)2等が挙げられる。これらの中でも、リチウム塩としては、LiPF6が好ましい。LiPF6を用いることにより、高温時においても電池特性及び安全性により優れる傾向にある。リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0088】
非水電解質に用いられる非水溶媒としては限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0089】
非プロトン性極性溶媒としては、限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート;γープチロラクトン及びγーバレロラクトンなどのラクトン;スルホランなどの環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロビルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;プロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル;並びにジメトキシエタンなどの鎖状エーテルカーボネート化合物が挙げられる。非水電解質は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0090】
非水電解質に含まれるリチウム塩の濃度は、好ましくは0.5mol/L~1.5mol/L、より好ましくは0.9mol/L~1.25mol/Lである。
【0091】
非水電解質は、液体電解質(非水電解液)であってもよく、固体電解質であってもよい。
【0092】
非水電解質は、本実施形態のチタン酸リチウムを含有してもよい。非水電解質におけるチタン酸リチウムの含有量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、非水電解質1mL当たり、好ましくは5mg以上、より好ましくは10mg以上である。
【0093】
〈外装体〉
外装体としては、限定されないが、例えば、スチール缶、アルミニウム缶などの金属缶が挙げられる。外装体の形態としては、筒形、例えば角筒形、円筒形などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体として使用して、非水電解質電池を形成することもできる。
【0094】
《非水電解質電池の製造方法》
本実施形態の非水電解質電池の製造方法は、限定されず、例えば、正極及び負極を、本実施形態のセパレータを介して積層して積層体を得て、又は積層体を更に巻回して巻回体を得て、得られた積層体又は巻回体を、非水電解質と共に外装体内に収容することにより製造することができる。
【0095】
好ましくは、正極と、本実施形態による非水電解質電池用吸着層と、セパレータと、負極とがこの順に積層されるように積層体を得て、又はこの積層体を捲回して捲回体を得て、得られた積層体又は捲回体と非水電解質とを、外装体内に収容する方法が挙げられる。多孔質層を正極に対向させるように、正極、本実施形態のセパレータ、及び負極を積層することが好ましい。非水電解質電池が例えばリチウムイオン二次電池である場合には、このような手順でリチウムイオン二次電池の複数の構成要素を配列することによって、電池内でのリチウムイオンの移動が確保され、かつ電池の寿命特性又は安全性に影響する金属イオンの吸着が顕著になる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、特に記載のない限り各種測定および評価は、室温23℃、1気圧、及び相対湿度50%の条件下で行った。
【0097】
[実施例1]
<チタン酸リチウムの調製>
炭酸リチウムと二酸化チタンを水に分散したスラリー状態で湿式混合した。その後、乾燥し、大気下900℃で焼成し、更に700℃で熱処理した。その後、解砕処理を行いチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)の粉末を得た。得られたチタン酸リチウムは、X線回折測定から、スピネル型構造の単一相であり、異相がないことを確認した。また、得られたチタン酸リチウムの比表面積は、10m2/gであった。また、走査型電子顕微鏡で観察した100個の粒子の平均最長径は500nmであった。
【0098】
<セパレータの作製>
粘度平均分子量(Mv)700,000のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と、Mv250,000のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と、Mv400,000のホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドして、ポリオレフィン樹脂混合物を得た。得られたポリオレフィン樹脂混合物99質量%に対して、酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量%添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。
得られたポリオレフィン樹脂組成物を、窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度:7.59×10-5m2/s)を、押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。二軸押出機で溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの質量比が66質量%(樹脂組成物濃度が34質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpm、及び吐出量12kg/hであった。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1600μmのゲルシートを得た。次に、得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.1倍、及び設定温度123℃であった。次に、二軸延伸後のゲルシートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。最後に、乾燥後のゲルシートをTDテンターに導き、延伸及び熱緩和を行って、ポリオレフィン微多孔膜を得た。延伸温度は125℃であり、熱緩和温度は133℃であり、TD最大倍率は1.65倍であり、かつ緩和率は0.9であった。得られたポリオレフィン微多孔膜は、厚みが12μmであり、かつ空孔率が40%であった。
イオン交換水100質量部中に、上記のチタン酸リチウム:アルミナ(平均最長径:900m)=90:10(質量比)とした無機粒子を29質量部と、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製SNディスパーサント5468)0.29質量部とを混合した。混合後、ビーズミル処理を行い、平均粒径(D50)を1.5μmに調整し、分散液を得た。さらに、得られた分散液100質量部に対して、バインダーとしてアクリルラテックス懸濁液(固形分濃度40%、平均粒子径150nm)2.2質量部を混合して均一な多孔質層形成用組成物を調製した。なお、上記の分散液における無機粒子の平均粒子径は、レーザー式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3300EX)を用いて粒径分布を測定し、体積累積頻度が50%となる粒径を平均粒子径(μm)とした。また、樹脂製ラテックスバインダーの平均粒径は、光散乱法による粒径測定装置(LEED&NORTHRUP社製MICROTRACTMUPA150)を用い、体積平均粒子径(nm)を測定し、平均粒子径として求めた。
次に、上記ポリオレフィン微多孔膜の表面にマイクログラビアコーターを用いて上記多孔質層形成用組成物を塗布し、60℃で乾燥して水を除去し、ポリオレフィン微多孔膜上に厚さ4μmのチタン酸リチウムとアルミナを含む吸着層を配置し、吸着層を有するセパレータを得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムとアルミナを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、95体積%であった。
【0099】
<正極の作製>
正極活物質としてLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2と、導電助剤としてアセチレンブラックの粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液とを固形分比で93.9:3.3:2.8の質量比で混合した。得られた混合物に、分散溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを固形分35質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ10μmのアルミニウム箔の両面に塗布した。このとき、アルミニウム箔の一部が露出するようにした。その後、溶剤を乾燥除去し、ロールプレスで圧延した。圧延後の試料を塗布部の大きさが30mm×50mmであり、かつアルミニウム箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのアルミニウム製リード片をアルミニウム箔の露出部に溶接して正極を得た。
【0100】
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト粉末と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、97.5:1.5:1.0の固形分質量比で混合した。得られた混合物を、固形分濃度が45質量%となるように、分散溶媒としての水に添加して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ10μmの銅箔の片面及び両面に塗布した。このとき、銅箔の一部が露出するようにした。その後、溶剤を乾燥除去し、ロールプレスで圧延した。圧延後の試料を塗布部の大きさが32mm×52mmであり、かつ銅箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのニッケル製リード片を銅箔の露出部に溶接して負極を得た。
【0101】
<非水電解質の作製>
アルゴンガス雰囲気下で、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなるように溶解して、非水電解質(非水電解液)を得た。
【0102】
<非水電解質電池の作製>
上記正極と上記負極とを、上記セパレータを介在させつつ重ね合わせて積層電極体とした。なお、セパレータは、非水電解質電池用吸着層が正極に対向するように配置した。この積層電極体を80×60mmのアルミニウムラミネート外装体内に挿入した。次に、上記非水電解質(非水電解液)を外装体内に注入し、その後、外装体の開口部を封止して、積層電極体を内部に有する非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。得られた非水電解質電池の定格容量は90mAhであった。
【0103】
<金属吸着能力の評価>
アルゴンガス雰囲気下で、上記非水電解質電池に用いた非水電解質に、トリフルオロメタンスルホン酸マンガン〔Mn(CF3SO3)2〕を、Mnの濃度が5ppmとなるように溶解した。アルゴンガス雰囲気下で、このMnを溶解した非水電解質100質量部と、チタン酸リチウム0.035質量部とをポリプロピレン製の密閉容器に入れ、バリアブルミックスローターVMR-5R(アズワン社製)を用いて23℃の雰囲気下で、100rpmで6時間に亘って振とう撹拌した。その後、孔径0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過した。このろ液中のMnの濃度(Mx)(単位:ppm)を測定し、以下の式から、吸着率(Ax)(単位:%)を算出した。
Ax=〔(5-Mx)/5〕×100
なお、Mnの濃度の測定は、ICP発光分光分析(ICP発光分光分析装置:Optima8300(パーキンエルマー社製))にて測定した。なお、測定試料の前処理には酸分解(マイクロウェーブ法)を行った。吸着率が10%未満:「×」、10~20%:「△」、20%より大きい:「〇」として評価した。
【0104】
<寿命特性/安全性試験>
・初期充放電
得られた非水電解質二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、恒温槽PLM-73S)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、充放電装置ACD-01)に接続した。次いで、その電池を0.05Cの定電流で充電し、4.35Vに到達した後、4.35Vの定電圧で2時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。
・フロート試験
上記初期充電後の電池を、50℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、恒温槽PLM-73S)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、充放電装置ACD-01)に接続した。次いで、その電池を0.5Cの定電流で4.35Vまで充電し、4.35Vに到達した後、4.35Vの定電圧で充電した。このとき、微短絡に至るまでの時間について評価した。
微短絡に至るまでの時間は、上記の充電過程において、充電容量が定格容量の2倍となるまでの時間を測定し、30日未満:「×」、30日以上60日未満:「△」、60日以上:「○」として評価した。
【0105】
[実施例2]
無機粒子としてチタン酸リチウム:ベーマイト(平均最長径:1000nm)=90:10(重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でチタン酸リチウムとベーマイトを含む吸着層を有するセパレータを得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムとベーマイトを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、95体積%であった。また、実施例1と同様の方法で、寿命特性/安全性評価を行った。なお、金属吸着能力の測定結果は実施例1の値を用いた。
【0106】
[実施例3]
無機粒子としてチタン酸リチウム:アルミナ(平均最長径:900nm)=60:40(重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でチタン酸リチウムとアルミナを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムとアルミナを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、93%であった。また、実施例1と同様の方法で、寿命特性/安全性評価を行った。なお、金属吸着能力の測定結果は実施例1の値を用いた。
【0107】
[実施例4]
無機粒子としてチタン酸リチウム:ベーマイト(平均最長径:1000nm)=60:40(重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でチタン酸リチウムとベーマイトを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムとベーマイトを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、93%であった。また、実施例1と同様の方法で、寿命特性/安全性評価を行った。なお、金属吸着能力の測定結果は実施例1の値を用いた。
【0108】
[実施例5]
無機粒子としてチタン酸リチウム:アルミナ(平均最長径:900nm)=40:60(重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でチタン酸リチウムとアルミナを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムとアルミナを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、91%であった。また、実施例1と同様の方法で、寿命特性/安全性評価を行った。なお、金属吸着能力の測定結果は実施例1の値を用いた。
【0109】
[実施例6]
無機粒子としてチタン酸リチウム:ベーマイト(平均最長径:1000nm)=40:60(重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でチタン酸リチウムとベーマイトを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムとベーマイトを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、91%であった。また、実施例1と同様の方法で、寿命特性/安全性評価を行った。なお、金属吸着能力の測定結果は実施例1の値を用いた。
【0110】
[比較例1]
無機粒子としてチタン酸リチウムのみを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でチタン酸リチウムを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、チタン酸リチウムを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、90%であった。また、実施例1と同様の方法で、寿命特性/安全性評価を行った。なお、金属吸着能力の測定結果は実施例1の値を用いた。
【0111】
[比較例2]
無機粒子としてベーマイト(平均最長径:900nm)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でベーマイトを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、ベーマイトを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、97%であった。また、実施例1と同様の方法で、金属吸着能力及び寿命特性/安全性評価を行った。
【0112】
[比較例3]
無機粒子としてアルミナ(平均最長径:900nm)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でアルミナを含む吸着層を得た。なお、このセパレータの、アルミナを含む吸着層における無機粒子の体積割合は、97%であった。また、実施例1と同様の方法で、金属吸着能力及び寿命特性/安全性評価を行った。
【0113】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の非水電解質電池用吸着層は、非水電解質電池用セパレータに用いることができ、本発明の非水電解質電池用セパレータは、非水電解質電池、例えばリチウムイオン二次電池に用いることができる。