(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】取付具及び建物の壁構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
E04F13/08 101D
E04F13/08 101F
(21)【出願番号】P 2017191184
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】達木 亮平
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138647(JP,A)
【文献】特開2003-129638(JP,A)
【文献】特開2013-011056(JP,A)
【文献】特開2003-074167(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
当接具を備えることが可能であり、構造体に壁材を取り付けるための取付具であって、
前記取付具は、
前記構造体に固定可能な基板部と、
前記基板部の一方の側端縁から前記基板部に対して突出する壁部と、
前記基板部の他方の側端縁側から前記壁部と同じ側に突出し、かつ前記基板部から突出する長さが前記壁部よりも短い突出部と、
前記壁部の先端縁から前記基板部と対向するように延びて前記突出部に接近する支持部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁部側に屈曲する第1係止部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記突出部側に屈曲する第2係止部と、を有し、
前記突出部の先端縁は、前記突出部の突出する方向と交差する方向に延びるものはなく、
前記当接具は、
前記突出部側から前記基板部及び前記基板部と略同一平面上の少なくとも一方に固定可能な取付部と、
前記取付部に対して交差する方向に立設され、前記基板部とは反対側に向かって突出する立設片と、
前記取付部と一体をなし、前記基板部に対して交差する方向から前記突出部を挟持可能な挟持部と、を有していることを特徴とする取付具。
【請求項2】
前記挟持部は、
前記取付部と一体をなし、前記突出部に当接可能な第1挟持部と、
前記第1挟持部との間に前記突出部の板厚と略等しい隙間を設けて前記第1挟持部と共に前記突出部を挟持可能な第2挟持部と、
前記取付部とは反対側で前記第1挟持部と前記第2挟持部とを接続しつつ前記取付部から離間するように延びる板部と、を有している請求項1記載の取付具。
【請求項3】
前記壁部は、貫通孔を有している請求項1又は2記載の取付具。
【請求項4】
前記壁部は、前記基板部側から前記支持部側に向かうにつれて、前記突出部から離間するように傾斜している請求項1乃至3のいずれか1項記載の取付具。
【請求項5】
前記当接具の前記取付部は、前記基板部及び前記基板部と略同一平面上の少なくとも一方に対して締結具で固定されるための固定孔を有し、
前記基板部は、前記支持部とは反対側に凹み、かつ前記基板部の前記他方の側端縁と平行に延びる凹部を有し、
前記凹部は、前記挟持部が前記突出部を挟持し、かつ前記取付部が前記基板部に対向する状態で、前記固定孔の中心を通過する位置に配置されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の取付具。
【請求項6】
構造体に対し、当接具を備えることが可能な取付具を用いて壁材を取り付けた壁構造であって、
前記取付具は、
前記構造体に固定可能な基板部と、
前記基板部の一方の側端縁から前記基板部に対して突出する壁部と、
前記基板部の他方の側端縁側から前記壁部と同じ側に突出し、かつ前記基板部から突出する長さが前記壁部よりも短い突出部と、
前記壁部の先端縁から前記基板部と対向するように延びて前記突出部に接近し、前記壁
材の裏面を支持可能な支持部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁部側に屈曲し、前記壁材の一端部を係止可能な第1係止部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記突出部側に屈曲し、前記壁材の他端部を係止可能な第2係止部と、を有し、
前記突出部の先端縁は、前記突出部の突出する方向と交差する方向に延びるものはなく、
前記当接具は、
前記突出部側から前記基板部及び前記基板部と略同一平面上の少なくとも一方に固定可能な取付部と、
前記取付部に対して交差する方向に立設され、前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁材の側端部に当接可能な立設片と、
前記取付部と一体をなし、前記基板部に対して交差する方向から前記突出部を挟持可能な挟持部と、を有していることを特徴とする建物の壁構造。
【請求項7】
構造体に壁材を取り付けるための取付具であって、
前記構造体に固定可能な基板部と、
前記基板部の一方の側端縁から前記基板部に対して突出する壁部と、
前記基板部の他方の側端縁側から前記壁部と同じ側に突出し、かつ前記基板部から突出する長さが前記壁部よりも短い突出部と、
前記壁部の先端縁から前記基板部と対向するように延びて前記突出部に接近する支持部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁部側に屈曲する第1係止部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記突出部側に屈曲する第2係止部と、を有し
、
前記突出部の先端縁は、前記突出部の突出する方向と交差する方向に延びるものはないことを特徴とする取付具。
【請求項8】
前記壁部は貫通孔を有し、前記基板部側から前記支持部側に向かうにつれて、前記突出部から離間するように傾斜している請求項7記載の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁材の取付具及び建物の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3に壁材を取り付けるための従来の取付具の例が開示されている。特許文献1開示の取付具(留付金具)は、断面略C型の形状であり、第1側壁部が基板部の上端縁から基板部に対して突出し、第1当接部が第1側壁部の先端縁から下向きに屈曲している。
【0003】
特許文献2開示の取付具(第1の留付金具)は、壁材(外壁板)の横ずれを防止するための当接具(横ずれ防止金具)を備えることが可能である。この取付具では、上方水平部が上方立設部を介して平板部に接続し、上向きに突出している。当接具は、上方水平部を裏側係止片と下方固定板で挟持することにより、取付具に仮り付けされる。
【0004】
特許文献3開示の取付具(留め付け治具本体)は、当接具(左右隔置板)を備えることが可能である。この取付具では、固定面板が基板部(背面板)と段差をもって下地材側に形成されている。当接具は、タッピンネジのみを用いて固定面板に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-74947号公報
【文献】特開2013-11056号公報
【文献】特開2003-74167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の取付具では、当接具が開示されていない。
【0007】
また、特許文献2記載の取付具では、当接具を構造体に接近する方向に移動させて上方水平部よりも上方に位置させた後、下向きに移動させて下方固定板を挟持させるため、当接具を取付具の裏側に挟み込む必要があり、取付作業が面倒である。
【0008】
さらに、特許文献3記載の取付具では、固定面板により、当接具を仮り付けなしでタッピンネジを用いて固定面板に固定する構成であるため、取付作業時に当接具が落下するおそれがある。このため、取付作業を容易に、かつ安全に実施することが難しい。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付作業を容易に実施できる取付具及び建物の壁構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様の取付具は、当接具を備えることが可能であり、構造体に壁材を取り付けるための取付具であって、
前記取付具は、
前記構造体に固定可能な基板部と、
前記基板部の一方の側端縁から前記基板部に対して突出する壁部と、
前記基板部の他方の側端縁側から前記壁部と同じ側に突出し、かつ前記基板部から突出する長さが前記壁部よりも短い突出部と、
前記壁部の先端縁から前記基板部と対向するように延びて前記突出部に接近する支持部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁部側に屈曲する第1係止部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記突出部側に屈曲する第2係止部と、を有し、
前記突出部の先端縁は、前記突出部の突出する方向と交差する方向に延びるものはなく、
前記当接具は、
前記突出部側から前記基板部及び前記基板部と略同一平面上の少なくとも一方に固定可能な取付部と、
前記取付部に対して交差する方向に立設され、前記基板部とは反対側に向かって突出する立設片と、
前記取付部と一体をなし、前記基板部に対して交差する方向から前記突出部を挟持可能な挟持部と、を有していることを特徴とする。
【0011】
第1の態様の取付具では、当接具を基板部に対して交差する方向に移動させるだけで、挟持部に取付具の突出部を挟持させることができる。つまり、当接具を屋外側から移動させて、取付具の突出部に容易に仮り付けでき、その仮り付けされた当接具の取付部を例えば、ねじ等の締結具によって、基板部及び基板部と略同一平面上の少なくとも一方に固定できる。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様の取付具では、取付作業を容易に実施できる。
【0013】
本発明の第2の態様として、挟持部は、取付部と一体をなし、突出部に当接可能な第1挟持部と、第1挟持部との間に突出部の板厚と略等しい隙間を設けて第1挟持部と共に突出部を挟持可能な第2挟持部と、取付部とは反対側で第1挟持部と第2挟持部とを接続しつつ取付部から離間するように延びる板部と、を有していることが望ましい。
【0014】
この場合、第1、2挟持部及び板部を板金の折り曲げ加工等によって容易に形成できる。そして、作業者が板部を持ちながら、第1、2挟持部に突出部を確実に挟持させることができる。
【0015】
本発明の第3の態様として、壁部は、貫通孔を有していることが望ましい。
【0016】
この場合、壁材の裏面と基板部との間の空間と、貫通孔とにより、取付具の周辺において通気性を確保することができる。また、壁部に到達した雨水等を貫通孔によって下方に流すことができる。その結果、壁材や構造体の強度や耐久性の低下を抑制できる。
【0017】
本発明の第4の態様として、壁部は、基板部側から支持部側に向かうにつれて、突出部から離間するように傾斜していることが望ましい。
【0018】
この場合、壁部に到達した雨水等を傾斜によって構造体から離間する方向に流すことができる。特に、壁部が貫通孔を有する場合には、構造体から離間する方向に流された雨水等をその貫通孔によって下方に流すことができる。その結果、壁材や構造体の強度や耐久性の低下を抑制できる。
【0019】
本発明の第5の態様として、当接具の取付部は、基板部及び基板部と略同一平面上の少なくとも一方に対して締結具で固定されるための固定孔を有していることが望ましい。基板部は、支持部とは反対側に凹み、かつ基板部の他方の側端縁と平行に延びる凹部を有していることが望ましい。そして、凹部は、挟持部が突出部を挟持し、かつ取付部が基板部に対向する状態で、固定孔の中心を通過する位置に配置されていることが望ましい。
【0020】
この場合、固定孔に挿入されるねじ等の締結具の尖った先端が凹部に引っ掛かることにより、締結具の固定孔に対する位置ズレを抑制できる。その結果、取付作業を一層容易に実施できる。
【0021】
本発明の第6の態様の建物の壁構造は、構造体に対し、当接具を備えることが可能な取付具を用いて壁材を取り付けた壁構造であって、
前記取付具は、
前記構造体に固定可能な基板部と、
前記基板部の一方の側端縁から前記基板部に対して突出する壁部と、
前記基板部の他方の側端縁側から前記壁部と同じ側に突出し、かつ前記基板部から突出する長さが前記壁部よりも短い突出部と、
前記壁部の先端縁から前記基板部と対向するように延びて前記突出部に接近し、前記壁材の裏面を支持可能な支持部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁部側に屈曲し、前記壁材の一端部を係止可能な第1係止部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記突出部側に屈曲し、前記壁材の他端部を係止可能な第2係止部と、を有し、
前記突出部の先端縁は、前記突出部の突出する方向と交差する方向に延びるものはなく、
前記当接具は、
前記突出部側から前記基板部及び前記基板部と略同一平面上の少なくとも一方に固定可能な取付部と、
前記取付部に対して交差する方向に立設され、前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁材の側端部に当接可能な立設片と、
前記取付部と一体をなし、前記基板部に対して交差する方向から前記突出部を挟持可能な挟持部と、を有していることを特徴とする。
【0022】
本発明の第6の態様の建物の壁構造によれば、第1の態様の取付具が奏する作用効果により、取付作業を容易に実施できる。
【0023】
本発明の第7の態様の取付具は、構造体に壁材を取り付けるための取付具であって、
前記構造体に固定可能な基板部と、
前記基板部の一方の側端縁から前記基板部に対して突出する壁部と、
前記基板部の他方の側端縁側から前記壁部と同じ側に突出し、かつ前記基板部から突出する長さが前記壁部よりも短い突出部と、
前記壁部の先端縁から前記基板部と対向するように延びて前記突出部に接近する支持部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記壁部側に屈曲する第1係止部と、
前記支持部から前記基板部とは反対側に向かって突出し、前記突出部側に屈曲する第2係止部と、を有し、
前記突出部の先端縁は、前記突出部の突出する方向と交差する方向に延びるものはないことを特徴とする。
【0024】
第7の態様の取付具では、突出部の任意の位置に、例えば、壁材の横ずれを防止するための部材等の追加部材を容易に取り付けることができる。
【0025】
本発明の第8の態様として、壁部は貫通孔を有し、基板部側から支持部側に向かうにつれて、突出部から離間するように傾斜していることが望ましい。
【0026】
この場合、第3及び第4の態様の取付具と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の取付具及び建物の壁構造では、取付作業を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施の形態1の建物の壁構造の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1の取付具と、取付具に備えられる当接具とを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係り、外壁板の斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係り、取付具及び当接具によって外壁板を支持する状態を示す部分斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係り、当接具の正面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係り、当接具の上面図である。
【
図8】
図8は、
図2のVIII-VIII断面を示す部分断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2の取付具の部分斜視図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2の取付具に備えられる当接具を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係り、
図5と同様の断面を示す部分断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3の取付具の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施の形態1~3を図面を参照しつつ説明する。なお、
図1において、垂直上方向を上と表示し、垂直下方向を下と表示する。また、
図1の屋外から屋内に向う方向において水平左方向を左と表示し、水平右方向を右と表示する。そして、
図2以降の各図に示す各方向は、
図1に対応させて表示する。
【0030】
(実施の形態1)
図1に示すように、実施の形態1の壁構造は、壁構造の具体的態様の一例である。この壁構造は、住宅、施設、倉庫等の建物を構成する構造体8に対し、
図2に示す取付具10を用いて、複数の外壁板2を取り付けたものである。外壁板2は、壁材の一例である。
図3及び
図4等に示すように、外壁板2は、それ自体が高い強度や剛性を有して建物の外壁を構成する壁材である。なお、壁材は外壁板に限定されず、例えば、建物を外装する化粧板、屋内用構造パネル、内装板等であってもよい。
【0031】
図1に示すように、構造体8は、例えば、鉄骨造等の躯体である。構造体8は、複数の構造部材によって構成されている。構造部材には、左右方向に所定の間隔を有して並ぶ複数の柱部材9の他、柱部材9間に配置される間柱等の補助部材も含まれる。柱部材9や間柱等としては、C型鋼等の鋼製型材等が使用される。なお、構造体8は、本実施の形態の構成に限定されず、例えば、鉄筋コンクリート造、レンガ造等の躯体、又は木造建築物であってもよい。
【0032】
各柱部材9間には、断熱材5が設けられている。断熱材5は、ロックウール繊維やグラスウール繊維等からなる繊維系断熱材である。断熱材5は、発泡ポリウレタン、発泡フェノール、発泡ポリスチレン等の発泡プラスチック系断熱材であってもよい。
【0033】
断熱材5の表面には、断熱ボード6及び防水シート7が敷設されている。断熱ボード6は、例えば、耐火性や遮音性を有する石膏ボード、石膏ボードと発泡フェノール板との複合板、発泡ポリスチレンボード等である。防水シート7は、公知の防水シートである。断熱ボード6及び防水シート7は、柱部材9等に図示しない止めねじ等によって取り付けられて、上下方向及び左右方向に延在し、各柱部材9及び補助部材を屋外側から覆っている。なお、防水シート7は省略してもよい。
【0034】
実施の形態1の取付具10は、各柱部材9の屋外側に固定されて、構造体8に対し、複数の外壁板2を上下方向及び左右方向に隣接するように取り付けるためのものである。取付具10は、取付具の具体的態様の一例である。
【0035】
各取付具10は、各柱部材9と外壁板2との間に配置されている。各取付具10は、上下方向に所定の間隔をおいて各柱部材9に取り付けられ、それぞれ左右方向に延びている。
図2及び
図4等に示すように、取付具10は、長尺な金属製型材である。取付具10は、金属板材が折り曲げ加工及びプレス加工等されることによって製造されている。なお、取付具10の材質や製造方法は上記に限定されず、各種の材料や、製造方法を適宜選択できる。
【0036】
取付具10の形状についての以下の説明では、上下方向、左右方向及び屋内外方向について、
図5等に示すように、柱部材9に固定された状態の取付具10の姿勢を基準とする。
【0037】
図2に示すように、取付具10の基板部11は、左右方向の長さが上下方向の長さよりも大きい長方形状をなしている。基板部11の左右方向の長さは、一例として約50~70cmであるが、これよりも長くてもよいし、短くてもよい。また、取付具10は、施工箇所に応じて、適宜切断して使用される。
【0038】
基板部11には、複数の固定孔11Hが屋内外方向に貫設されている。各固定孔11Hは、基板部11における上下方向の略中央に配置され、左右方向に所定の間隔をおいて互いに離間している。基板部11の屋内方向を向く面は、断熱ボード6や柱部材9に当接可能な平坦面となっている。基板部11の屋外方向を向く面も、平坦面となっている。
図2及び
図4に示すように、基板部11における各固定孔11Hよりも上方には、凹部11Dが形成されている。凹部11Dは、基板部11の屋外方向を向く面から屋内方向に溝状に凹み、かつ基板部11の上端縁11Bと平行な方向、すなわち左右方向に直線状に延びている。
【0039】
図5に示すように、基板部11が左右方向に延びる状態で断熱ボード6に当接される。基板部11は、取付具10のための締結具としてのねじ10Bが任意の固定孔11Hに挿通されて、断熱ボード6を介して各柱部材9にねじ込まれることにより、各柱部材9に締結されるようになっている。こうして、取付具10の基板部11は、複数の柱部材9に亘って固定されるようになっている。固定孔11Hは、取付具10を柱部材9に固定する際において、取付具10の固定位置の決定や位置ずれを抑制し、作業を容易にする。
【0040】
図2及び
図5に示すように、壁部12は、基板部11の下端縁11Aから略直角に屈曲して屋外方向に突出し、かつ左右方向に延びる長方形状をなしている。基板部11の下端縁11Aは、基板部の一方の側端縁の一例である。
図5に示すように、壁部12には、貫通孔12Hが上下方向に貫設されている。図示は省略するが、貫通孔12Hは、左右方向に所定の間隔をおいて、壁部12に複数設けられている。
【0041】
突出部13は、基板部11の上端縁11Bから屈曲して屋外方向に突出し、かつ左右方向に延びる長方形状をなしている。基板部11の上端縁11Bは、基板部の他方の側端縁の一例である。突出部13の上面及び下面は平坦面となっている。本実施の形態1では、基板部の他方の側端縁である上端縁11Bから突出部13が形成されているが、突出部13は必ずしも上端縁11Bから直接に形成される必要はなく、他方の側端縁側、すなわち、上端縁を含む上端縁の近傍の領域から形成されていればよい。
【0042】
突出部13の板厚T1は、取付具10を構成する金属板材等の板厚である。突出部13が屋外方向に突出する長さをL13とし、壁部12が屋外方向に突出する長さをL12とする。長さL13は長さL12よりも短く設定されている。つまり、突出部13の先端縁は、壁部12の先端縁12Aよりも基板部11に近い位置にある。これにより、突出部13の先端縁と外壁板2の裏面2Bとの間に隙間W2ができる。
【0043】
支持部14は、壁部12の先端縁12Aから略直角に屈曲して、基板部11と対向するように上方に延びて、突出部13に接近している。支持部14は、左右方向の長さが上下方向の長さよりも大きい長方形状をなしている。支持部14は、基板部11と略平行である。支持部14の屋外方向を向く面は、外壁板2の裏面2Bに当接可能な平坦面となっている。
【0044】
複数の第1係止部15及び第2係止部16が支持部14の上端縁14Aに接続している。第1係止部15は、支持部14の上端縁14Aから略直角に屈曲して屋外方向に突出する支承部17の一部と第1係止片15Bとを含んでいる。第2係止部16は、支承部17の他部と第2係止片16Bとを含んでいる。
【0045】
第1係止部15の第1係止片15Bは、支承部17の複数箇所が略C字状に切り欠かれて、支承部17の先端縁から下向きに、すなわち壁部12側に屈曲することにより、屋外方向に向かって下り傾斜するように突出している。
【0046】
第2係止部16の第2係止片16Bは、支承部17の先端縁から上向きに、すなわち突出部13側に屈曲することにより、屋外方向に向かって上り傾斜するように突出している。第2係止片16Bは、左右方向に延在する長方形状をなしている。
図2及び
図4に示すように、第2係止片16Bは、左右方向に間隔をおいて複数箇所にスリット16Sが形成されている。
【0047】
取付具10は、当接具30を備えることが可能である。
図2、
図4及び
図5等に示すように、当接具30は、取付具10の突出部13における任意の箇所に取り付けられて、外壁板2の横ズレを防止するためのものである。
【0048】
当接具30は、金属板材が折り曲げ加工及びプレス加工等されることによって製造される。なお、当接具30の材質や製造方法は上記に限定されず、各種の材料や、製造方法を適宜選択できる。
【0049】
当接具30の形状についての以下の説明では、上下方向、左右方向及び屋内外方向について、
図5等に示すように、取付具10に固定された状態の当接具30の姿勢を基準とする。
【0050】
図2及び
図4~
図7に示すように、当接具30は、取付部31、立設片32及び挟持部33を有している。
【0051】
取付部31は、左右方向の長さが上下方向の長さよりも大きい略長方形状をなしている。取付部31の屋内方向を向く面は、取付具10の基板部11における屋外方向を向く面に当接可能な平坦面となっている。
【0052】
取付部31には、6つの固定孔31Hが屋内外方向に貫設されている。各固定孔31Hは、左右方向に所定の間隔をおいて互いに離間している。各固定孔31Hは、取付部31における上下方向の略中央に配置されている。各固定孔31Hは、当接具30を取付具10に固定する際において、当接具30のための締結具としてのねじ30Bを挿入するものである。
【0053】
立設片32は、取付部31の左端縁から略直角に屈曲して屋外方向に突出し、かつ上下方向に延びる略矩形片である。
【0054】
挟持部33は、取付部31の上端縁側に一体をなして設けられた上側挟持部33Uと、取付部31の下端縁側に一体をなして設けられた下側挟持部33Dとを有している。上側挟持部33Uと下側挟持部33Dとは勝手違いの同一形状である。このため、上側挟持部33Uの構成要素と下側挟持部33Dの構成要素とに同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0055】
具体的には、上側挟持部33Uは、第1挟持部35、第2挟持部36、板部34及び補助立設片39を有している。下側挟持部33Dも、第1挟持部35、第2挟持部36、板部34及び補助立設片39を有している。上側挟持部33Uの第1挟持部35、第2挟持部36、板部34及び補助立設片39と、下側挟持部33Dの第1挟持部35、第2挟持部36、板部34及び補助立設片39とは勝手違いの同一形状である。このため、上側挟持部33Uの構成について詳しく説明し、下側挟持部33Dの構成については説明を省略する。
【0056】
図4~
図7に示すように、上側挟持部33Uにおいて、第1挟持部35は、取付部31の端縁から屈曲して屋外方向に突出し、かつ左右方向に延びる長方形状をなしている。第1挟持部35における取付部31と反対側を向く面は、突出部13に当接可能な平坦面となっている。
【0057】
上側挟持部33Uにおいて、板部34は、第1挟持部35の先端縁と接続している。板部34は、第1挟持部35の先端縁から屈曲して、取付部31及び第1挟持部35から離間するように上方に延びている。板部34は、左右方向の長さが上下方向の長さよりも大きい略長方形状をなしている。
【0058】
上側挟持部33Uにおいて、第2挟持部36は、板部34に3つ形成されている。各第2挟持部36は、左右方向に所定の間隔をおいて互いに離間している。各第2挟持部36は、板部34の一部及び第1挟持部35の一部を略C字状に切り欠いて溝を設け、その溝の内側部分を板部34から折り曲げることにより形成されている。第2挟持部36は、板部34から屈曲して屋内方向に突出する略矩形片である。つまり、板部34は、第1挟持部35と第2挟持部36とを接続している。
【0059】
図5に示すように、第2挟持部36は、第1挟持部35と対向するように平行に延びている。第2挟持部36における第1挟持部35と対向する面は、第1挟持部35とは反対側から突出部13に当接可能な平坦面となっている。
【0060】
図6に示すように、第2挟持部36は、第1挟持部35との間に、取付具10の突出部13の板厚T1と略等しい隙間W1を設けている。
【0061】
補助立設片39は、板部34の左端縁から略直角に屈曲して屋外方向に突出し、かつ上下方向に延びる略矩形片である。補助立設片39は、立設片32と同一平面上に配置されている。
【0062】
このような構成である挟持部33では、基板部11に対して交差する方向から、すなわち、
図2の紙面右側に示すように、屋外側から屋内側に向かう方向(矢印Y1方向)において当接具30の上側挟持部33Uを取付具10に接近させ、上側挟持部33Uの第1挟持部35と第2挟持部36との隙間W1に突出部13を進入させることにより、上側挟持部33Uの第1挟持部35と第2挟持部36とが突出部13を挟持するようになっている。
【0063】
また、
図2の紙面左側に示すように、屋外側から屋内側に向かう方向(矢印Y1方向)において当接具30の下側挟持部33Dを取付具10に接近させ、下側挟持部33Dの第1挟持部35と第2挟持部36との隙間W1に突出部13を進入させることにより、下側挟持部33Dの第1挟持部35と第2挟持部36とが突出部13を挟持するようになっている。
【0064】
こうして、挟持部33が突出部13を挟持することにより、当接具30が取付具10の突出部13に容易に仮り付けされるようになっている。この状態で、
図5及び
図8に示すように、ねじ30Bが任意の固定孔31Hを通過して、基板部11及び基板部11と略同一平面8P上(断熱ボード6の表面上)の少なくとも一方に締結される。ねじ30Bは、締結具の一例である。
【0065】
図4及び
図5に示す例では、ねじ30Bが固定孔31Hを通過して基板部11にねじ込まれることにより、取付部31が基板部11に締結されている。この際、基板部11の凹部11Dは、上側挟持部33Uの第1挟持部35と第2挟持部36とが突出部13を挟持し、かつ取付部31が基板部11に対向する状態で、固定孔31Hの中心を通過する位置に配置されている。これにより、固定孔31Hに挿入されるねじ30Bの尖った先端が凹部11Dに引っ掛かるので、ねじ30Bの固定孔31Hに対する位置ズレを抑制できるようになっている。
【0066】
図8に示す例では、ねじ30Bが固定孔31Hを通過して、断熱ボード6及び柱部材9にねじ込まれることにより、取付部31が基板部11と略同一平面8P上(断熱ボード6の表面上)に締結されている。こうして、取付具10の基板部11の任意の位置に、当接具30の取付部31を固定することができるようになっている。
【0067】
図3に示すように、外壁板2は、四辺形状、より具体的には、左右方向に長い略矩形状の板材である。本実施の形態では、外壁板2は、セメントを含む窯業系材料からなる。なお、外壁板2の材質や形状は上記には限定されない。例えば、外壁板2の材質は、金属系材、木質系材、樹脂系材等を適宜選択できる。また、外壁板2の形状は、四辺形状で上下方向に長い略矩形形状の板材等を適宜選択できる。
【0068】
外壁板2の表面2Fは、例えばレンガ柄等のデザインが施された外装面となっている。外壁板2の左端部には、表側左右接合部21が形成されている。外壁板2の右端部には、裏側左右接合部22が形成されている。外壁板2の下端部には、表側上下接合部23が形成されている。外壁板2の上端部には、裏側上下接合部24が形成されている。なお、
図3では、外壁板2の大きさに対して、表側左右接合部21、裏側左右接合部22、表側上下接合部23及び裏側上下接合部24の大きさが誇張して図示されている。
【0069】
表側左右接合部21は、外壁板2の裏面2Bから表面2Fに向かって凹み、上下方向、すなわち、外壁板2の左端部に沿って延びている。
【0070】
裏側左右接合部22は、外壁板2の表面2Fから裏面2Bに向かって凹み、上下方向、すなわち、外壁板2の右端部に沿って延びている。裏側左右接合部22における屋外方向を向く平坦面には、コーキング22Sが設けられている。コーキング22Sは、裏側左右接合部22に沿って直線状に配設されている。なお、コーキングは必須ではなく、コーキング22Sを省略することもできる。
【0071】
表側上下接合部23は、外壁板2の裏面2Bから表面2Fに向かって凹み、左右方向、すなわち、外壁板2の下端部に沿って延びている。表側上下接合部23には、上向きに略テーパ状に凹む係合凹部23Aが形成されている。
【0072】
裏側上下接合部24は、外壁板2の表面2Fから裏面2Bに向かって凹み、左右方向、すなわち、外壁板2の上端部に沿って延びている。裏側上下接合部24における屋外方向を向く平坦面には、コーキング24Sが設けられている。コーキング24Sは、裏側上下接合部24に沿って直線状に配設されている。なお、コーキングは必須ではなく、コーキング24Sを省略することもできる。裏側上下接合部24には、コーキング24Sよりも上方において上向きに略テーパ状に突出する係合凸部24Aが形成されている。
【0073】
図4に示すように、下側の外壁板2の裏側上下接合部24と、上側の外壁板2の表側上下接合部23とが重なり合うことによって、上下方向に隣接する外壁板2同士の間に、左右方向に延びる上下合決り部が形成される。図示は省略するが、右側の外壁板2の表側左右接合部21と、左側の外壁板2の裏側左右接合部22とが重なり合うことによって、左右方向に隣接する外壁板2同士の間に、上下方向に延びる左右合決り部が形成される。すなわち、外壁板2は、表側左右接合部21、裏側左右接合部22、表側上下接合部23及び裏側上下接合部24を備える、いわゆる「四方合決り構造」である板材である。
【0074】
図1、
図4及び
図5に示すように、外壁板2は、取付具10によって、以下のようにして構造体8に取り付けられる。
【0075】
図1に示すように、複数の取付具10を各柱部材9の下方の位置で左右方向に延びるように取り付ける。そして、各取付具10に対して、複数の外壁板2を左右方向に隣接させた状態で取り付ける。この際、各外壁板2の下端部は、
図5に示すように、取付具10の第2係止部16が係合凹部23Aを係止することによって、取付具10に支持される。係合凹部23Aは、外壁板2の他端部の一例である。
【0076】
次に、
図1に示すように、各外壁板2に対して、上方から別の複数の取付具10を左右方向に延びるように取り付ける。この際、各外壁板2の上端部は、
図4及び
図5に示すように、取付具10の第1係止部15が係合凸部24Aを係止することによって、取付具10に支持される。係合凸部24Aは、外壁板2の一端部の一例である。
【0077】
そして、その上方の取付具10に対して、さらに、複数の外壁板2を左右方向に隣接させた状態で取り付ける。この際にも、それらの外壁板2の下端部は、
図4及び
図5に示すように、取付具10の第2係止部16が係合凹部23Aを係止することによって、取付具10に支持される。
【0078】
ここで、当接具30は、複数の外壁板2を左右方向に隣接させた状態で取り付ける際に使用される。
図4に示すように、取付具10の第2係止部16によって係合凹部23Aが係止された特定の外壁板2(2S)の右方の側端部2Rに対して、立設片32及び補助立設片39を右方から当接させた状態で、当接具30の上側挟持部33Uを取付具10の突出部13に仮り付けする。さらに、ねじ30Bを固定孔31H及び凹部11Dに挿通して、断熱ボード6及び柱材9にねじ込むことにより、取付部31を基板部11に締結する。これにより、特定の外壁板2(2S)が右方に横ズレすることが防止される。そして、図示は省略するが、特定の外壁板2(2S)に別の外壁板2を右方から隣接させる。すなわち、その外壁板2の左方の側端部2L(
図2参照)を立設片32及び補助立設片39に右方から当接させる。
【0079】
図示及び説明は省略するが、特定の外壁板2(2S)の右方の側端部2Rに対して、立設片32及び補助立設片39を右方から当接させた状態で、
図8に示すように、当接具30の下側挟持部33Dを取付具10の突出部13に仮り付けする場合も同様である。
【0080】
こうして、取付具10は、複数の外壁板2の互いに突き合わされるコーナー部、すなわち、四方合決り部を支持するようになっている。また、取付具10の支持部14が外壁板2の裏面2Bに当接することによって、構造体8の壁面と外壁板2の裏面2Bとの間に通気空間が確保される。
【0081】
このような作業を他の外壁板2についても実施することにより、各外壁板2は、上下方向及び左右方向に隣接する状態で構造体8に支持され、構造体8の壁面を覆う。
【0082】
<作用効果>
実施の形態1の取付具10及び壁構造では、
図2に矢印Y1で示すように、当接具30を屋外側から屋内側に向かう方向に移動させて基板部11に接近させるだけで、挟持部33を構成する上側挟持部33U又は下側挟持部33Dに取付具10の突出部13を挟持させることができる。つまり、当接具30を屋外側から取付具10の突出部13に容易に仮り付けできる。そして、
図4、
図5及び
図8に示すように、その仮り付けされた当接具30の取付部31をねじ30Bによって、基板部11、及び基板部11と略同一平面8P上(断熱ボード6の表面上)の少なくとも一方に安全に固定できる。
【0083】
また、この取付具10及び壁構造では、
図5に示すように、突出部13が基板部11から突出する長さL13は、壁部12が基板部11から突出する長さL12よりも短いので、軽量化し易い。
【0084】
したがって、実施の形態1の取付具10及び壁構造では、取付作業を容易に、かつ安全に実施できるとともに、軽量化を実現できる。
【0085】
また、この取付具10及び壁構造では、突出部13の先端縁と外壁板2の裏面2Bとの間に隙間W2ができる。これにより、取付具10の周辺において通気性を確保することができる。
【0086】
さらに、この取付具10及び壁構造では、作業者が当接具30を仮り付けする際に誤って当接具30を落下させても、壁部12によって受け止めることができる。また、第1挟持部35と第2挟持部36との隙間W1が突出部13の板厚T1よりも大きな場合でも、挟持部33が突出部13に当て止まるので、挟持部33が突出部13から外れ難い。
【0087】
また、この取付具10及び壁構造では、挟持部33を構成する上側挟持部33U及び下側挟持部33Dが有する第1挟持部35、第2挟持部36及び板部34を板金の折り曲げ加工等によって容易に形成できる。そして、作業者が板部34を持ちながら、第1挟持部35及び第2挟持部36に突出部13を確実に挟持させることができる。
【0088】
さらに、この取付具10及び壁構造では、
図5に示すように、壁部12の貫通孔12Hと、外壁板2の裏面2Bと基板部11との間の空間とにより、取付具10の周辺において通気性を確保することができる。また、壁部12に到達した雨水等を貫通孔12Hによって下方に流すことができる。その結果、外壁板2や構造体8の強度や耐久性の低下を抑制できる。
【0089】
また、この取付具10及び壁構造では、
図4及び
図5に示すように、基板部11の凹部11Dは、上側挟持部33Uが突出部13を挟持し、かつ取付部31が基板部11に対向する状態で、固定孔31Hの中心を通過する位置に配置されている。これにより、固定孔31Hに挿入されるねじ30Bの尖った先端が凹部11Dに進入することにより、ねじ30Bの固定孔31Hに対する位置ズレを抑制できる。その結果、取付作業を一層容易に、かつ一層安全に実施できる。
【0090】
(実施の形態2)
図9~
図11に示すように、実施の形態2の取付具210及び壁構造では、実施の形態1の取付具10に代えて、取付具210を採用するとともに、実施の形態1の当接具30に代えて、当接具230を採用している。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0091】
実施の形態2の取付具210は、壁部212、折返片211C及び突出部213を有している。取付具210のその他の構成は、実施の形態1に係る取付具10と同様である。
【0092】
壁部212は、基板部11側から支持部14側に向かうにつれて、突出部213から離間するように下り傾斜している。具体的には、
図11に示すように、壁部212と基板部11の延長線とのなす角度αは、80度に設定されている。80度は一例であって適宜変更できる。壁部212のその他の構成は、実施の形態1に係る壁部12と同様である。
【0093】
折返片211Cは、基板部11の上端縁11Bから折り返されて下向きに延びている。
【0094】
突出部213は、基板部11の他方の側端縁である上端縁11Bからではなく、上端縁11Bを屋外側に折り返した折返片211Cの下端縁から屈曲した側端縁部11Cから壁部212と同じ側に突出している。すなわち、実施の形態2では、突出部213が基板部11の他方の側端縁側の領域から突出している。
図11に示すように、突出部213が基板部11から突出する長さL213は、壁部212が基板部11から突出する長さL212よりも短く設定されている。突出部213のその他の構成は、実施の形態1に係る突出部13と同様である。
【0095】
図10は、第2の実施形態の当接具230を示しており、当接具230の取付部231Uは、左右方向の長さが上下方向の長さよりも大きい略長方形状をなしている。取付部231Uの屋内方向を向く面は、取付具210における基板部11の屋外方向を向く面に当接可能な平坦面となっている。取付部231Uには、6つの固定孔231Hが屋内外方向に貫設されている。各固定孔231Hは、左右方向に所定の間隔をおいて互いに離間している。
【0096】
取付部231Dは、取付部231Uに対して下方に位置しているだけで、取付部231Uと同一形状である。また、取付部231Uは、折返片211Cの板厚に対応して、取付部231Dよりも屋外方向に間隔W4ずれた位置にある。
【0097】
立設片232Uは、取付部231Uの左端縁から略直角に屈曲して屋外方向に突出し、かつ上下方向に延びる略矩形片である。立設片232Dは、取付部231Dの左端縁から略直角に屈曲して屋外方向に突出し、かつ上下方向に延びる略矩形片である。立設片232Uと立設片232Dとは、同一平面上に配置されている。
【0098】
挟持部233は、第1挟持部235、第2挟持部236及び板部234を有している。第1挟持部235は、取付部231Dの上端縁から屈曲して屋外方向に突出し、かつ左右方向に延びる長方形状をなしている。
図11に示すように、第1挟持部235における取付部231Dとは反対側を向く面は、突出部213に下から当接可能な平坦面となっている。第2挟持部236は、取付部231Uの下端縁から屈曲して屋外方向に突出し、かつ左右方向に延びる長方形状をなしている。
図11に示すように、第2挟持部236における取付部231Uとは反対側を向く面は、突出部213に上から当接可能な平坦面となっている。板部234は、取付部231U、231Dとは反対側で第1挟持部235と第2挟持部236とを接続している。第1挟持部235と第2挟持部236との隙間W3は、実施の形態1に係る第1挟持部35と第2挟持部36との隙間W1と同じである。
【0099】
このような構成である実施の形態2の取付具210及び壁構造では、
図11に矢印Y2で示すように、当接具230を屋外側から屋内側に向かう方向に移動させて基板部11に接近させるだけで、挟持部233の第1挟持部235及び第2挟持部236に取付具210の突出部213を挟持させることができる。つまり、当接具230を屋外側から取付具210の突出部213に容易に仮り付けできる。そして、その仮り付けされた当接具230の取付部231Dをねじ30Bによって、基板部11に安全に固定できる。また、図示は省略するが、その仮り付けされた当接具230の取付部231Uをねじ30Bによって、基板部11と略同一平面8P上(断熱ボード6の表面上)に安全に固定できる。
【0100】
また、この取付具210及び壁構造では、突出部213が基板部11から突出する長さL213は、壁部212が基板部11から突出する長さL212よりも短いので、軽量化し易い。
【0101】
したがって、実施の形態2の取付具210及び壁構造でも、実施の形態1と同様に、取付作業を容易に、かつ安全に実施できるとともに、軽量化を実現できる。
【0102】
また、この取付具210及び壁構造では、
図11に示すように、基板部11の側端縁部11Cが折返片211Cとなっていることから、取付具210は剛性が高くなっている。さらに、壁部212は、基板部11側から支持部14側に向かうにつれて、突出部213から離間するように下り傾斜している。これにより、壁部212に到達した雨水等を傾斜によって構造体8から離間する方向に流すことができる。そして、壁部212に形成された貫通孔12Hによって、構造体8から離間する方向に流された雨水等を下方に流すことができる。その結果、外壁板2や構造体8の強度や耐久性の低下を抑制できる。
【0103】
(実施の形態3)
図12に示すように、実施の形態3の取付具310では、突出部313は、基板部11の上端縁11Bから下向きに延びる切り込みによって屋外方向に向けて屈曲する複数の板状片によって構成されている。各突出部313は、基板部11の上端縁11Bよりも下方にずれた位置で、同一平面上に配置されている。つまり、各突出部313は、基板部11の上端縁11Bからではなく、側端縁部11Cから壁部12と同じ側に突出している。実施の形態3のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0104】
このような構成である実施の形態3の取付具310でも、実施の形態1、2の取付具10、210と同様の作用効果を奏することができる。
【0105】
以上において、本発明の形態を実施の形態1~3に即して説明したが、本発明の形態は上記実施の形態1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0106】
例えば、実施の形態1に係る当接具30において、上側挟持部33U及び下側挟持部33Dの一方をなくした構成も本発明に含まれる。
【0107】
また、実施の形態2に係る当接具230において、取付部231U及び取付部231Dの一方をなくした構成も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
8…構造体
2…壁材(外壁板)
2B…壁材の裏面(外壁板の裏面)
2L、2R…壁材の側端部(2L…外壁板の左方の側端部、2R…外壁板の右方の側端部)
10、210、310…取付具
11…基板部
11A…基板部の一方の側端縁(基板部の下端縁)
11B…基板部の他方の側端縁(基板部の上端縁)
12、212…壁部
12A…壁部の先端縁
13、213、313…突出部
L13、L213…突出部が基板部から突出する長さ
L12、L212…壁部が基板部から突出する長さ
14…支持部
15…第1係止部
16…第2係止部
30、230…当接具
8P…基板部と略同一平面
31、231U、231D…取付部
32、232U、232D…立設片
33、233…挟持部
35、235…第1挟持部
36、236…第2挟持部
T1…突出部の板厚
W1…第1挟持部と第2挟持部との隙間
34、234…板部
12H…貫通孔
30B…締結具(ねじ)
31H…固定孔
11D…凹部