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特許7053261精密表面を有する物品を形成するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】精密表面を有する物品を形成するプロセス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/10 20060101AFI20220405BHJP
   C03B 23/023 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G02B5/10 C
C03B23/023
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017518432
(86)(22)【出願日】2015-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2015073527
(87)【国際公開番号】W WO2016058975
(87)【国際公開日】2016-04-21
【審査請求日】2018-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】62/064,043
(32)【優先日】2014-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517116784
【氏名又は名称】メディア ラリオ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ベンハム,ロバート デイビット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルセッチ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】チッテリオ,オベルト
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-511318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00-5/136
C03B 23/00-35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応光学系であり、少なくとも1メートルの直径を有する、片面又は両面の精密物品を形成するプロセスであって、
a)前面(12)および背面(14)を有する薄板(10,10a,10b)を用意するステップであって、前記薄板(10,10a,10b)の材料は、ガラス、フロートガラス、ポリカーボネートシート又はポリアミドフィルムである高品質ポリマー、金属シート、又は、箔であり、厚さが0.2~6mmである、ステップと、
b)精密物品の精密表面として形成される、前記薄板(10,10a,10b)の前面(12)を、セラミックス、アルミニウム、青銅または鋳鉄からなり、円筒形状ではないマンドレル(20,20a,20b)の表面と接触させるステップであって、前記アルミニウム、前記青銅または前記鋳鉄は、無電解ニッケルまたはクロムメッキでコートされており、前記マンドレル(20,20a,20b)は一定の表面形状を有する、ステップと、
c)前記薄板(10,10a,10b)の少なくとも一部および前記マンドレル(20,20a,20b)の少なくとも一部の周りに折り畳み式囲い(30,30a,30b)を配置して、密閉された内部(32)を形成し、前記薄板(10,10a,10b)の外側面となる前記薄板(10,10a,10b)の背面(14)の一部を外部環境(44)と触れさせ、前記外部環境(44)は、前記薄板(10,10a,10b)の背面(14)、及び、前記折り畳み式囲い(30,30a,30b)の外側と隣接するため、前記薄板(10,10a,10b)の背面(14)の少なくとも一部は、空気に暴露されてアクセス可能な状態、又は、圧力チャンバーの内部に暴露されている、ステップと、
d)前記密閉された内部(32)に少なくとも部分真空を形成し、前記密閉された内部(32)と前記外部環境(44)又は圧力チャンバーとの間に圧力差を設定し、それにより、前記薄板(10,10a,10b)を、前記マンドレル(20,20a,20b)の表面に合わせて形成するステップと、
e)被覆されておらず、アクセス可能な前記薄板(10,10a,10b)の背面(14)を支持構造物(70)に、接着剤(60)の硬化温度を超えない温度で操作した後に、接着剤(60)で固定することにより、前記支持構造物(70)に前記薄板(10,10a,10b)が固定されて前記精密物品を確定するステップであって、前記接着剤(60)は、粘度が1000センチポアズ未満である、低発熱特性を有する2成分系エポキシ、又は、熱硬化性接着剤である、ステップと、
f)前記精密物品を、前記支持構造物(70)と一緒に、前記マンドレル(20,20a,20b)から取り外し、成形された前記薄板(10,10a,10b)の前面が前記精密物品の精密表面を確定する、ステップと、を含むプロセス。
【請求項2】
前記外部環境(44)が、一定の圧力を備えた内部を有する環境制御チャンバー(50)としての圧力チャンバーの内部(52)、またはバッグの形態の折り畳み式囲い(30)の外部により定められ、コンプレッサー(54)の操作によって1気圧~10気圧の制御可能な圧力の内部(52)を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記成形された薄板(10,10a,10b)の前面(12)を1層または複数層の材料でコーティングし、一定の選択波長または一定の選択範囲の波長での反射面を確定することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記薄板(10,10a,10b)を、ポリカーボネートシート又はポリアミドフィルムの形態であるポリマーから製作される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記薄板(10,10a,10b)がガラスから作製され、
ステップd)において、前記成形された薄板(10,10a,10b)を形成するために、前記薄板(10,10a,10b)をマンドレル表面(22)に合わせて形成するプロセスが、融点T未満及びガラス転移温度T未満であるプロセス温度Tで実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記支持構造物(70)は、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、セラミック、ガラス、又は、炭化ケイ素から製作され、前記薄板(10,10a,10b)の厚さより、8~12倍の厚さを有し、前記支持構造物(70)が、50ミクロンまでの厚さを有し、接着剤、結合材料またはセメント材料のいずれかである、1つの層の固定材料(60)により前記成形された薄板(10,10a,10b)に固定される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
両面精密物品を形成するプロセスであって、前記外部環境(44)が支持構造物(70)から作製され、それにより、前記支持構造物(70)の第1の側に第1の薄板(10a)を使って第1のマンドレル(20a)上に請求項1に記載のプロセスが実施され、一方、前記支持構造物(70)の相対する側に第2の薄板(10b)を使って第2のマンドレル(20b)上に請求項1に記載のプロセスが実施され、前記第1の薄板(10a)と第2の薄板(10b)である形成された物品を前記第1のマンドレル(20a)と第2のマンドレル(20b)から取り外した後、成形された前記第1の薄板(10a)と第2の薄板(10b)の前面(12)が前記両面精密物品の第1の精密表面と第2の精密表面を確定することにより行われることを特徴とするプロセス。
【請求項8】
前記第1の薄板(10a)及び第2の薄板(10b)を有する、前記両面精密物品が全体として均一な2mm~6mmの範囲の厚さおよび少なくとも1メートルの直径を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記支持構造物(70)が、1mm~2mmの範囲の均一な厚さを有するガラスまたは軽量金属の固体層である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項7に記載の方法によって前記両面精密物品(80)を形成した後、複数のアクチュエータ(110)が操作可能に制御装置(140)に接続され、前記制御装置(140)は、命令を備える非一時的コンピュータ可読媒体(144)を含み、前記アクチュエータ(110)は、選択表面形状を前記両面精密物品(80)に形成して確定するために、前記両面精密物品(80)に、少なくとも片側から 独立して圧力を作用させる、請求項7に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、精密物品を形成するプロセス、特に、精密表面を有する物品の形成プロセスに関する。
【0002】
本明細書で言及されるいずれの刊行物または特許文書の全開示も、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
精密物品は、少なくとも1つの精密な部分を有し、種々の商業上および産業上の用途に使用される対象物である。1つの精密物品の種類は、ミラーなどの光学部品である。この場合、精密な部分は、鏡面である。このような光学部品は、特に大規模な、例えば、望遠鏡などの大きな光学機器用の大きなミラーの場合には、大きなミラーを形成するのが困難で高価となりがちである。
【0004】
したがって、規模拡大可能で、簡単かつ経済性にも優れる精密物品の作製プロセスが必要とされている。
【0005】
現状技術に対する簡単なコメント:
米国特許出願公開第2014/0234581号明細書(特許文献1)は、第2の型を使って、型によりガラスを成形するプロセスについて言及している。このプロセスは、ガラス転移温度でガラスを低粘度になるまで加熱することに本質がある。熱プロセスは、700/800℃近辺の温度を予測させる。このプロセスによって、室温でのまたは最大700℃での操作は可能ではなく、これは、ガラス箔を支持構造物に接着するために使用されるエポキシ樹脂の硬化温度である。我々のプロセスは、ガラス箔のガラス転移温度に達することはない。米国特許第4038014号明細書(特許文献2)は、熱および真空を適用して眼科用レンズを生成するプラスチック箔を成形するプロセスについて言及している。このプロセスは、レンズをシリコーンゴムで被覆することからなる。型もまた適切な材料のクッションで被覆して、プラスチックレンズ表面の劣化が回避される。この特許は、型の技術革新に焦点を絞っている。この場合にも、加熱システムは、レンズ生成に使われるプラスチック材料のガラス転移温度に達する。欧州特許第2463094号は、物品上に保護シートを適用するプロセスについて言及している。この場合には、保護シートは成形され、型に接着するのと類似の方式で、物品に接着される。欧州特許第2463094号(特許文献3)は、物品上に保護シートを適用するプロセスについて言及している。この場合には、保護シートは成形され、物品に接着される(型に接着するの同じように)。米国特許出願公開第2014/0234581号明細書(特許文献1)は、高温でガラスを成形するプロセスおよび装置について言及している。米国特許出願公開第2011/0198021号明細書(特許文献4)に関しては、米国特許出願公開第2014/0234581号明細書(特許文献1)の場合と同様に、これらの特許は、高温でガラスを成形するプロセスおよび装置について言及している。
【0006】
現状技術を考慮すると、ガラス箔を型に成形するプロセスを提供することが本発明の目的であるが、生産サイクルの最後には、ガラスシートは、マンドレルから分離させる必要がある。さらに、このようなプロセスは、ガラス転移温度に達するべきでなく、また、ガラス箔のガラス転移温度にも達するべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2014/0234581号明細書
【文献】米国特許第4038014号明細書
【文献】欧州特許第2463094号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0198021号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、少なくとも1つの精密表面を有する物品である、精密物品を形成するプロセスに関する。本開示のある態様はまた、本明細書で開示のプロセスにより形成された製品としての精密物品に関する。
【0009】
本開示のいくつかの態様には、精密表面を有する物品を形成するプロセスが含まれる。プロセスは、マンドレルの表面と接触している薄板を用意することを含む。その後、プロセスは、薄板がマンドレル表面上に引き寄せられ、それにより、薄板をマンドレル表面の形状に実質的に合わせるように、折り畳み式囲いを使って、薄板の両側間に圧力差を設けることを含む。その後、成形された薄板は支持部材に固定され、物品を確定する。その後、物品はマンドレルから取り外される。薄板の前面は、物品の精密表面を確定する。
【0010】
本開示のいくつかの態様は、両面精密物品および適応光学系の形成プロセスならびに精密物品を用いる方法を含む。
【0011】
本開示のある態様は、精密表面を形成するプロセスである。プロセスは、前面および背面を有する薄板材料を用意すること;一定の表面形状を有するマンドレルの表面と薄板材料の前面とを接触させること;薄板の少なくとも一部およびマンドレルの少なくとも一部のまわりに折り畳み式囲いを配置して密閉された内部を形成し、薄板の背面の一部を外部環境と繋げること;密閉された内部で少なくとも部分真空を形成して、密閉された内部と外部環境との間で圧力差を設定し、それにより、薄板をマンドレル表面に実質的に合わせて成形された薄板を形成させること;薄板の裏側を支持構造物に固定し、精密物品を確定すること;および精密物品をマンドレルから取り外すこと、を含む。
【0012】
本開示の別の態様は、外部環境が1気圧の圧力を有する上記のプロセスである。
【0013】
本開示の別の態様は、外部環境が、一定の圧力を備えた内部を有する環境制御チャンバーにより規定され、内部圧は、例えば、1気圧~10気圧に制御可能な、上記のプロセスである。
【0014】
本開示の別の態様は、薄板がガラスから作製される、上記のプロセスである。
【0015】
本開示の別の態様は、マンドレルが折り畳み式囲いの内部にある、上記のプロセスである。
【0016】
本開示の別の態様は、成形された薄板の前面を1層または複数層の材料でコーティングし、一定の選択波長または一定の選択範囲の波長での反射面を確定することをさらに含む、上記プロセスである。
【0017】
本開示の別の態様は、1つの層の固定材料により、支持構造物が成形された薄板に固定される、上記のプロセスである。
【0018】
本開示の別の態様は、固定材料層が、名目厚さ50ミクロンの接着剤である、上記のプロセスである。
【0019】
本開示の別の態様は、折り畳み式囲いがバッグの形態である、上記のプロセスである。
【0020】
本開示の別の態様は、精密物品がミラーを確定する、上記のプロセスである。
【0021】
本開示の別の態様は、精密表面を有する物品を形成するプロセスである。プロセスは、前側と背側の相対する面を有する薄板を用意すること、および前面をある一定の表面形状を有するマンドレルの表面と接触させること;薄板がマンドレル表面に引き寄せられ、それにより、薄板をマンドレル表面の形状に実質的に合わせて、成形された薄板を形成させるように薄板の前面と背面との間に圧力差を設けること;成形された薄板を支持部材に固定し、物品を確定すること;および物品をマンドレルから取り外し、成形された薄板の前面が物品の精密表面を確定すること、を含む。
【0022】
本開示の別の態様は、圧力差が名目上1気圧である、上記のプロセスである。
【0023】
本開示の別の態様は、圧力差が1気圧~10気圧である、上記のプロセスである。
【0024】
本開示の別の態様は、薄板がガラスから作製される、上記のプロセスである。
【0025】
本開示の別の態様は、圧力差の形成が、薄板の少なくとも一部と、マンドレルの少なくとも一部の周りに折り畳み式囲いを配置し、密閉された内部を形成し、密閉された内部を少なくとも部分的に排気することを含む、上記のプロセスである。
【0026】
本開示の別の態様は、精密表面を1層または複数層の材料でコーティングし、選択波長または一定の選択範囲の波長での反射面を確定することをさらに含む、上記プロセスである。
【0027】
本開示の別の態様は、1つの層の固定材料により、支持構造物が成形された薄板に固定される、上記のプロセスである。
【0028】
本開示の別の態様は、固定材料層が、名目厚さ50ミクロンの接着剤である、上記のプロセスである。
【0029】
本開示の別の態様は、両面精密物品を形成するプロセスである。プロセスは、それぞれ前側と背側の相対する面を有する第1と第2の薄板を用意すること;端壁板のそれぞれの前面を第1と第2の整列されたマンドレルのそれぞれの第1と第2の表面と接触させ、第1のマンドレル表面が第1の表面形状を有し、第2のマンドレル表面が第1の表面形状に対し相補的な第2の表面形状を有すること;第1と第2の薄板がそれらの対応する第1と第2のマンドレル表面に引き寄せられ、それにより、第1と第2の薄板をそれぞれの第1と第2のマンドレル表面の表面形状に実質的に合わせて、第1と第2の成形された薄板をそれぞれ形成させるように、それぞれの第1と第2の薄板の前面と背面の間に圧力差を設けること;成形された薄板を共通の支持部材の相対する側に固定し、物品を確定すること;および第1と第2のマンドレルから物品を取り外し、第1と第2の成形された薄板の前面が両面精密物品の第1と第2の精密表面を確定すること、を含む。
【0030】
本開示の別の態様は、両面精密物品が2mm~6mmの範囲の実質的に均一な厚さを有する、上記のプロセスである。
【0031】
本開示の別の態様は、支持部材が、1mm~2mmの範囲の実質的に均一な厚さを有するガラスまたは軽量金属の固体層である、上記のプロセスである。
【0032】
本開示の別の態様は、精密物品が少なくとも1メートルの直径を有する、上記のプロセスである。
【0033】
本開示の別の態様は、適応光学系を形成するプロセスである。プロセスは、上記プロセスを実施して、両面精密物品を形成すること;および第1の精密表面を独立にアドレスで参照でき、両面精密物品を局所的に変形させるように配置された一連のアクチュエータを使って操作可能なように支持して、第2の精密表面に対する選択表面形状を確定すること、を含む。
【0034】
本開示の別の態様は、アクチュエータが、選択表面形状を確定するようにアクチュエータを独立に作動させる組込型命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を含む制御装置に操作可能なように接続された、上記のプロセスである。
【0035】
追加の特徴および利点は、後続の発明を実施するための形態の項で示され、一部は、当業者なら、説明から、または明細書およびその特許請求の範囲、ならびに添付図面に記載の実施形態を実施することにより、容易に明らかになるであろう。前出の一般的説明および以下の発明を実施するための形態の両方は、単に、例示的なものであり、特許請求の範囲の本質および特性の理解のために概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。
【0036】
添付の図面は、さらなる理解を得るために含められたものであり、本明細書の一部に組み込まれると共に本明細書の一部をなすものである。図面は、1種または複数の実施形態を例示し、発明を実施するための形態と共に、種々の実施形態の原理と操作を説明するものである。したがって、本開示は、付属の図面と併せて考察することにより、以下の発明を実施するための形態からより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】マンドレルの表面に接触させようとしている薄板の例の概略側面図である。
図2A】マンドレルの表面形状の例を示すマンドレルの例の断面図である。
図2B】マンドレルの表面形状の例を示すマンドレルの例の断面図である。
図2C】マンドレルの表面形状の例を示すマンドレルの例の断面図である。
図3】薄板およびマンドレルに対し操作可能なように配置され、薄板の両側に圧力差の形成を可能とする密閉された内部を形成する折り畳み式囲いを示す部分的な切取り図である。
図4】薄板をマンドレル表面に引き寄せさせる圧力差によりマンドレル表面に実質的に合わせるように成形された薄板を示し、また、折り畳み式囲いの収縮状態を示す図である。
図5】この図は、図3と類似であり、折り畳み式囲いの密閉された内部の外部環境が、例えば、他の部品の製造プロセスの中に、より大きな圧力差を付与するまたは締め付け圧力を付与する制御が可能なように、環境制御チャンバーが、薄板、マンドレルおよび折り畳み式囲いを含む実施形態を示す。
図6】この図は、図4と類似であり、固定材料を使って、成形された薄板の背面に固定されるプロセスにおける支持構造物を示す。
図7】この図は、図6と類似であり、固定材料を使って、成形された薄板の背面に固定された支持構造物を示し、この固定材料は、この時点で、薄層の固定材料の形態である。
図8】マンドレル表面から取り外されている精密物品を示す図である。
図9A】この図は、図7に類似であり、相補的な表面形状を有する、2つの整列されたマンドレルを使って両面精密物品を形成するための配置例を示す。
図9B】層状構造物の中央の1つの固体材料層として、支持構造物を示す、両面精密物品の一部の拡大断面図である。
図10】本明細書で開示の両面精密物品を用いた適応光学系の例の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以降で、本開示の種々の実施形態に関して詳細に言及し、その実施例を添付図面に例示している。可能な限り、全図面を通して、同じまたは類似の参照番号および記号を使用して同じまたは類似の部品が参照される。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、当業者は本開示の重要な態様を説明するために図面が簡略化されていることをわかるであろう。
【0039】
以下に示す特許請求の範囲は、この発明を実施するための形態に組み込まれ、その一部を構成する。
【0040】
図1を参照すると、表面22を有するマンドレル20に対して、前面12および背面14を有する薄板10が用意されている。一例では、名目上平坦または平面状で、可撓性となるように十分に薄い薄板10から着手される。さらなる一例では、薄板10は変形可能である。一例では、薄板10は、既知の大きさの表面粗さを有し、さらなる一例では、この表面粗さは、与えられた用途に対する特定の許容範囲未満である。薄板10は、充分に薄いため、後述のように処理した場合にマンドレル表面22の形をとることができる。一例では、薄板10は、約10ミクロン~約2mmの範囲、または約10ミクロン~約1mmの範囲の厚さを有する。薄板10の正確な厚さは、薄板の材料および変形される程度、ならびに意図される精密物品の横方向寸法(例えば、直径または類似の寸法)に依存する。
【0041】
薄板10用の材料の例は、ガラス、例えば、フロートガラスである。フロートガラスは極めて良好な(すなわち、比較的小さい)、例えば、通常、数ナノメートルから ナノメートル以下のオーダーの表面粗さを有する。他方では、フロートガラスは、フローティングプロセス中に引き起こされるうねりに起因して相対的に良くない表面形状を有し、したがって、通常は、精密光学素子用としては不適切であると見なされている。フロートガラスの表面形状の変動(振幅)は、1mm~10mmの空間周波数にわたり、約0.25ミクロン~1ミクロンのオーダーであり得る。このような表面形状特性は、1λ~4λ(λは光の可視波長)に歪んだ光学的反射をもたらすことがある。このような工学的反射は、普通の光学用途に対しては、受け入れられないと見なされるのが通常である。しかし、このようなうねりは実質的に低減または除去できるために、本明細書で開示のプロセスは、このような欠点を有するこのような材料の使用を可能とする。薄板10用のその他の物質には、他のタイプのガラスおよび高品質ポリマー、例えば、ポリカーボネートシートおよびポリアミドフィルム、および金属シートおよび箔が挙げられる。
【0042】
薄板10の前面12は、マンドレル表面22とぴったりと接触して配置される。マンドレル表面22は、既知の表面形状を有する。一例では、マンドレル表面22は、一定の大きさの表面粗さを有し、一例では、一定の大きさの表面粗さは既知であり(例えば、測定され)、一方、別の例では、未知であるが特定の閾値の大きさ未満である。マンドレル20は、従来のマンドレルに使われる任意の妥当な材料から作製できる。マンドレル表面22は、平板形状、凹形状、凸形状、波状形状、自由形状などの任意の妥当な形状とすることができる。マンドレル表面2用の表面形状の例は、図2A~2Cに示されている。
【0043】
一例では、マンドレル20は、プロセス中にその表面形状を維持するのに充分な剛性がある。一例では、マンドレル表面22は、例えば、マンドレル表面の形状を調節するように構成されたアクチュエータにより能動的に制御できる。マンドレル20は、マンドレル表面22の表面形状の安定性を確保するために、ひとかたまりの材料から作製できる。マンドレル20はまた、その重量を減らすために中空にすることができ、また一方で、マンドレル表面22の表面形状の安定性を確保するために十分な厚さを有する。
【0044】
ここで図3を参照すると、折り畳み式囲い30が、薄板10およびマンドレル20に対して、操作可能なように配置されている。この構成により、薄板10の前面12およびマンドレル表面22により一部が画定される密閉された内部32が作成される。薄板10の前面12とマンドレル表面22との間にある密閉された内部32の領域は、33で表される。
【0045】
一例では、折り畳み式囲い30は、密閉された内部32内で真空に耐える可撓性または半可撓性材料から作製される。一例では、可撓性の囲い30は真空バッグであるか、またはそれを含み、一例では、フレキシビリティを高める機構、例えば、ベローズ、折り畳み、などを含むことができる(図示せず)。可撓性の囲い30は、例えば、接着剤などのシール材36を使って背面14上で薄板10に対し密閉される端部34を含む。密閉された内部32は、マンドレル表面22(または少なくともその一部)を含むマンドレル20の少なくとも一部を取り囲む密閉環境を画定する。一例では、マンドレル20は、全体が折り畳み式囲い30内にあり、したがって、全体が密閉された内部32内にある。
【0046】
一例では、折り畳み式囲い30の密閉された内部32は、例えば、真空導管42を介して、真空ポンプ40に空気圧連結される。真空ポンプ40は、密閉された内部32を排気して、すなわち、薄板10の背面14の外部環境44に対して、その中に少なくとも部分真空を形成するように稼働される。これにより、密閉された内部32と外部環境44との間に、特に領域33中に、圧力差ΔPを生じさせる。この圧力差が、マンドレル表面22上に薄板10を引き寄せる原因となる。このことが次に、薄板10を屈曲、たわみ、前屈み状態、変形、などを生じさせる結果として、薄板10の前面12の一部または全部がマンドレル表面22と接触し、薄板をマンドレル表面22の表面形状に実質的に合わせさせる。プロセスの一部の結果を図4に示す。この図は、収縮した折り畳み式囲い30およびマンドレル表面22とぴったりと接触して配置された成形された薄板10Sを示す。
【0047】
プロセスの態様例は、選択環境条件下、例えば、選択温度または温度範囲、選択圧力または圧力範囲下などで、本明細書で開示の1つまたは複数のプロセスステップの実施を含む。この目的のために、図5を参照すると、一例では、環境制御チャンバー(「チャンバー」)50を用いて、外部環境44が設定される。チャンバー50は、薄板10、マンドレル20、および折り畳み式囲い30を含む内部52を有する。チャンバー50は、温度、圧力、湿度、雰囲気、などの、内部52内の環境条件を制御するように構成される。例えば、差圧ΔPは、チャンバー内部に操作可能なように連結されたコンプレッサー54の操作を介して、内部52の圧力を高めることにより、1気圧を超えて増加することができる。一例では、圧力差ΔPの増加は、任意の時間に、またはプロセス中のステップで(または複数のステップで)、例えば、成形された薄板10Sが形成された後、ならびに後述のその他のプロセスステップに対し、適用できる。
【0048】
折り畳み式囲い30中の真空の大きさが、圧力差ΔPを決定する。この圧力差は、一例では、0~1気圧で変化することができる。超高真空の使用は必須ではない。例えば、薄板10のより肉厚の、またはより硬質材料に対し、1気圧を超える圧力の印加が必要な場合には、チャンバー50を使って、より大きな外圧を生成することができる。一例では、チャンバー50を使った圧力差ΔPは、最大数十気圧とすることができる。以降での図および考察では、図示および説明を容易にするために、チャンバー50を除外した。
【0049】
一例では、薄板10をマンドレル表面22に合わせて、成形された薄板10Sを形成するプロセスは、薄板を構成する材料の融点T未満で、ガラス転移温度T未満のプロセス温度Tで実施される。この条件下で、表面粗さが成形された薄板10S上に刷り込まれることなく、薄板10はマンドレル表面22の一般形状をとることができる。したがって、上記合わせるプロセスは、望ましくないマンドレル表面22の表面粗さ成分を付与せず、一方で、同時に所望の全体表面形状を付与するという利点を有する。したがって、前述のように、成形された薄板10Sは、マンドレル表面22に実質的に合わせられるといえる。ミラーなどの精密物品用の成形された薄板10Sが高品質仕上げ面を確定する場合には、これは特に重要である。
【0050】
図6は、図4と類似であり、また、プロセスの次のステップを示し、一定量の固定材料60が成形された薄板10Sの背面14と支持構造物70の前面72に供給される。固定材料60は、成形された薄板10Sの背面14または支持構造物の前面72に適用できる。一例では、固定材料60は、フィルムの形態とすることができる一例では、固定材料は、接着剤、結合材料またはセメント材料とすることができる。以降の考察では、固定材料60は、接着剤であることが想定されており、したがって、以降では、考察を容易にするために、接着剤60と呼ばれる。
【0051】
一例では、支持構造物70は、機械加工可能な材料から予め加工されている。一例では、支持構造物70は、一体型構造を有し、さらなる一例では、成形された構造を有する。支持構造物70は、成形された薄板10Sに十分な機械的支持および剛性を与え、同時に、充分に軽量である多くの形式または設計の構造物とすることができる。一例では、支持構造物70は、ひとかたまりの材料から作製できる。一例では、支持構造物70の表面72での厚さは、支持構造物の最大寸法の10%~20%である。
【0052】
別の例では、支持構造物70は、予め加工した構造的に軽量部材とすることができる。別の例では、支持構造物70は、それに組み込まれた統合温度制御システム、例えば、冷却チャネルを含めることができる。支持構造物70は、ハニカム構造を有し、繊維強化複合材料から形成できる。支持構造物70は、下記したように、成形された薄板10Sと組み合わされるので、支持構造物は、従来の機械加工および/または成形プロセスを使って成形して、成形された最終精密対象物のためになるように設計された複合構造物を作成できる。一例では、支持構造物70は、十分な支持を与え、同時に、可撓性でもある薄層材料である。
【0053】
後述の接合ステップの前に支持構造物70を完全に成形する利点は、それにより、成形された薄板10Sに悪影響を与えて、力、応力、歪みなどを付与する可能性のある、支持構造物のさらなる処理の必要性を回避することである。
【0054】
続けて図6を参照すると、支持構造物70の前面72は、2つの表面の間に挟入された接着剤60を使って、成形された薄板10Sの背面14と接合される。得られた構造物を図7に示す。
【0055】
2つの表面は接近するので、接着剤60は、薄層中に広がる。硬化中に起こるエポキシ系接着剤の体積変化のために、接着剤60の薄く均一な層が好ましい。接着層60は薄ければ薄いほど、それ自体としては、発生する体積変化は小さくなる。接着層60が均一であればあるほど、相対的に見れば、発生する体積変化は小さくなる。一例では、接着層60は、収縮(一定の割合の可変厚さ)による光学的欠陥を最小限にするために、およびせん断モード破壊を回避するために可能な限り薄いが、しかし、良好な接合を実現するために十分厚く作製される。一例では、接着層60の厚さは、約100ミクロンとすることができ、一方、別の例では、要求されるより高い表面公差、名目厚さは、約50ミクロンとすることができる。
【0056】
一例では、接着層が通常の「乾燥」に必要な空気に暴露されないので、接着剤60は、2成分系または熱硬化性接着剤である。上述のように、接着剤60は、硬化中の体積変化を回避するか、または硬化中の成形された薄板10の変形を最小限にする収縮/粘度特性を有するように選択されるのが好ましい。この性質は、小さい発熱特性を有する2成分系エポキシではより一般的である。接着剤60の用途に対しては、すぐに適用できる混合接着剤の粘度は1000センチポアズ未満であることが望ましい。好ましい接着剤60の例は、上述の熱膨張の有害作用を回避するために、室温で完全に硬化するものである。
【0057】
接着層60が形成されると、それを硬化できる。一例では、接着層60の硬化は、熱および追加の外圧を適用して(例えば、環境制御チャンバー50を介して)、マンドレル表面22と、成形された薄板10Sの前面12との間に閉じ込められた全ての気泡を圧縮することにより促進される。これにより、支持構造物70の表面72に結合されている成形された薄板10Sが得られる。これにより、表面82を有する精密物品80が確定され、物品の1つの精密な部分が表面82であり、これは、示された例では、成形された薄板10Sの前面12により確定される。
【0058】
この時点で、図8に示すように、シール材36は、成形された薄板10の背面14から取り外され、精密物品80は、マンドレル20の表面22から取り外される。精密物品80は、例えば、光学ミラーまたは光学ミラー部品とすることができる。一例では、精密表面82を、選択波長または波長範囲に対する所望の反射率を設定し、精密ミラーを確定するための1種または複数の材料コーティングの適用などのさらなる処理に供することができる。
【0059】
さらなるプロセスの考察
プロセスの温度は、接着層60の硬化要件により大きく支配される。大抵の接着剤は、名目上20℃の室温~約70℃の硬化温度を有し、これはエポキシ樹脂の典型的なガラス転移温度である。また、精密物品80が高温用途を有する場合に使用できるフィルム接着剤およびセラミック接着剤などのより高い温度で硬化する接着剤も存在する。
【0060】
精密物品80の最大操作温度は通常、使われる接着剤60により支配される。接着剤60のガラス転移温度を超えないのは、一般に、優れた進め方である。したがって、通常のエポキシ樹脂は、約70℃までに限定されることになる。他方では、接着剤60の作業温度は、120℃~130℃の範囲、全分解の温度は300℃超とすることができる。また、セラミック接着剤(セメント)は、精密物品80の高温操作用の接着剤60として使用することができる。
【0061】
上記で考察したように、マンドレル20は、ほぼ任意の望ましい特性を有する材料から作製できる。与えられた状況に対する妥当であると考えられること以外の実用上の重量制限または寸法制限は存在しない。これにより、マンドレル20を極端に高精密に構築することが可能となる。このような精密仕上げ用の材料の例は、セラミックスまたは超硬合金である。特に、マンドレル20用の材料の例には、ガラス、特に低熱膨張型の、Zerodur(登録商標)、Borofloat(登録商標)またはPyrex(登録商標)などのガラスが挙げられる。金属材料を組み合わせて、損傷に耐え、必要な表面品質を促進するハードコーティング層を有する安定な塊状材料を生成することができる。金属マンドレルは、無電解ニッケルまたはクロムメッキでコートしたアルミニウム、青銅または鋳鉄から作製でき、1000ビッカース硬度を超える表面硬度を有する安定な高熱導電性塊が得られる。
【0062】
マンドレル表面22と薄板10の前面12との間の部位33中で真空の生成を促進するために、マンドレル20用に多孔質材料を使用することも可能である。この多孔質材料は、焼結粉末から生成することができる金属またはセラミック形態とすることができる。このタイプの材料の例には、METAPOR(登録商標)およびESPOR(登録商標)が挙げられる。
【0063】
多くの場合、マンドレルは、良好な表面形状(小さい形状誤差)および扱いやすい大きさの表面粗さを有する必要があろう。場合によっては、表面粗さは、数十ナノメートル2乗平均平方根(RMS)粗さ以下、および好ましくはできればより小さい必要がある。表面仕上げの品質は、完成品に直接影響を与えないが、間接的に影響を与える場合がある。
【0064】
一例では、薄板10がマンドレル20の表面22と適合する場合、薄板10の表面12および14(それが透明な場合)と、マンドレルの表面22(これも透明な場合)との間に生じる干渉縞が評価される。このような干渉縞は、2つの反射面または部分反射面の間に生成され、表面が密接な接触状態にないこと、ならびに接触の程度または接触の欠除を示すことができる。密接な接触の欠除は、混入物または閉じ込められた空気の存在による場合がある。干渉縞が、マンドレル20の表面22と薄板10との間で必要な程度の密接な接触が生じていないことを示す場合には、薄板を除去し、洗浄し、マンドレルに再適用(または別の薄板を使用)して、プロセスを継続する前に、適切な接触を確保することができる。
【0065】
仕上げミラーに対するマンドレルの表面粗さ要件の利点は、マンドレル粗さの要件がとても低いというだけでなく、均一性に対する厳格な要件を持たず、引っ掻き傷および小さな傷などの通常の研磨欠陥に耐えることができることである。
【0066】
支持構造物70は、機械的耐性、密度、熱伝導率および熱膨張係数に基づいて選択される材料から作製できる。一例では、使用される材料は、従来法で数マイクロメートルまたは数十マイクロメートルの精度まで加工して、接合部を閉じるのに最小量の接着剤しか必要としない結合面を形成する十分な機械的安定性を有する必要がある。
【0067】
支持構造物70用の材料の例には、軽量金属、例えば、アルミニウム、マグネシウム、リチウムおよびそれらの合金が挙げられる。セラミックスもまた、特定の用途に好適し、ガラス、炭化ケイ素およびアルミナなどの材料が同様に特定の用途に好適する。特殊な用途向けの別の材料には、ベリリウムおよびインバーを含めることができる。いくつかの実施形態では、例えば、1mm~2mmの比較的薄層のガラスを含む、ガラスを使用することができる。
【0068】
成形された薄板10に結合する前に軽量構造および/または熱制御をする特殊な機構を有する支持構造物70も作製できる。このプロセスは、精密物品80が比較的扱いにくく、後になって、このような機構を作製するのが難しい状況において、従来の機械加工/溶接の使用を可能とする。
【0069】
両面プロセス
本明細書で開示のプロセスは、図9Aおよび9Bに示したような、両面精密物品80を形成する両面プロセスを含む。図9Aの配置は、それぞれの折り畳み可能構造物30aおよび30bに囲われた、2つの相対する、予め整列されたマンドレル20aおよび20bを示す。これらの折り畳み可能構造物30aおよび30bは、それぞれ、操作可能なように真空ポンプ40に連結された真空導管42aおよび42bを含む。折り畳み可能構造物30aおよび30bはまた、別々の真空ポンプに操作可能なように連結できる。
【0070】
両面プロセスは、図9Aに示すように、2つの薄板10が、マンドレル20aおよび20bと適合するようにそれぞれに用意され、それぞれの成形された薄板10Saおよび10Sbをそれらの上に形成することを別にすれば、上述のように実施できる。図9Bは、得られた両面精密物品80の一部の拡大断面図であり、これは、精密物品の相対する側に2つの精密表面82aおよび82bを含む。
【0071】
2つの成形された薄板10Saおよび10Sbは、それぞれの結合層60aおよび60bを使って、支持構造物70のそれぞれの相対する72aおよび72bに結合される。相補的に成形されたマンドレル20aおよび20bにより形成された成形薄板10Saおよび10Sbは、例えば、層状精密物品内で種々の力のバランスをとることにより物品がその形状を維持するのを助ける強化された構造支持体を有する精密物品を提供する。一例では、チャンバー50は、両面プロセスにおいて、特に結合材料層60aおよび60bが形成された後であるが、これらの層の硬化前に、チャンバー50を使用できる。
【0072】
本両面プロセスでは、支持構造物70は、ガラスまたは軽量の金属またはその他の軽量の固体材料などの固体材料から作製できる。さらなる一例では、支持構造物70は、成形された薄板10Saおよび10Sbよりも約8~12倍厚く、一例では、名目上10倍厚い。
【0073】
一例では、成形された薄板10Saおよび10Sbは、それぞれ、0.2mm~0.4mmの厚さを有し、完成品の両面精密物品80のコアとしての機能をする支持構造物70は、1mm~2mm、あるいは1.1mm~1.5mmの厚さを有する。一例では、最終の両面精密物品80は、2mm~6mmの実質的に均一な厚さを有し、および、一例では、メートルのオーダーの直径を有し、および、一例では、直径は少なくとも1メートルである。ここで、精密物品80は、段階的湾曲(これは、比較的長い焦点距離、例えば、10メートルより大きい、あるいは50メートルより大きい焦点距離を確定する)を有することができ、または実質的に平面(例えば、100メートルより大きい、あるいは500メートル、あるいは1000メートルより大きい焦点距離)であり得ることにも留意されたい。このような層状(積層)構造は、強いが、しかしまた、物品の直径がその全体厚さに比べて充分に大きい場合、可撓性で、局所的に変形可能でもある。
【0074】
適応光学系
図10は、上記で開示の両面精密物品80の一部の拡大断面を示す。両面精密物品80は、独立にアドレスで参照できる一連のアクチュエータ110により操作可能なように支持され、このアクチュエータは次に支持プレナム120によって支持されて、適応光学系130を確定する。示した例では、精密表面82aは、反射面として使用される。上記で考察したように、精密表面82aは、1種または複数材料層を含んで、一定の選択波長または波長範囲での反射率を高めて、望遠鏡ミラーなどのミラーを確定してもよい。
【0075】
制御装置140は、一連のアクチュエータ110に操作可能なように接続され、プロセッサー142およびアクチュエータを独立にアドレス指定し、選択して作動させる命令(例えば、ファームウェアまたはソフトウェア中の)を含む非一時的コンピュータ可読媒体144(プロセッサーの一部であっても、または別の記憶装置ユニット、などであってもよい)を含む。一例では、アクチュエータ110は、精密表面82aから反射された光に対する選択または所望光学波面に基づいて、精密表面82aに対する選択表面形状を確定するように作動される。一例では、所望の光学波面は、それが画像を形成する場合(単独でまたはその他の光学部品と組み合わせて)、収差を実質的に含まないものである。したがって、一例では、所望の光学波面は、波面が大気などの収差媒体を通って移動する際に、発生する可能性があるなどの場合に、入射波に付与される光学収差の有害作用の影響を弱める役割をするものである。
【0076】
したがって、適応光学系130は、制御装置140の動作下で精密表面82に対する一定の表面形状を機械的に確定するように構成される。適応光学系の例は、米国特許第4,467,186号;同第4,967,063号;同第7,125,128号;および同第7,333,215号で開示されている。
【0077】
図10の適応光学系130の一例では、精密物品80は、代わりに、例えば、図8に示し、上記で考察したような、前述の片面精密物品とすることができる。このような精密物品80では、支持構造物70は、好ましくは充分に薄く、適応光学用途のための精密表面の必要な局所的変形を可能とする。両面精密物品80は、上述の積層構造内の力のバランスをとることにより、適応光学系130において、より良好な光学性能を示すことが期待される。
【0078】
添付の特許請求の範囲で定められる本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく本明細書に記載された本開示の好ましい実施形態に対して様々な修正を行なうことができることは当業者には自明であろう。したがって、本開示は、このような修正物および変更物が添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入る場合には、これらを包含する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10