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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20220405BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20220405BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20220405BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08G59/17
C08G59/24
C09K3/10 B
C09K3/10 L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017526724
(86)(22)【出願日】2017-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2017015318
(87)【国際公開番号】W WO2017183583
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2016084574
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/029893(WO,A1)
【文献】特開2006-099027(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
C08G 59/17
C08G 59/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有し、
ビスフェノールAの含有量が50ppm以下であり、
前記硬化性樹脂全体におけるエポキシ基と(メタ)アクリロイル基との合計量に対するエポキシ基の比率が50モル%以下である液晶表示素子用シール剤を製造する方法であって、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、吸着剤を用いたビスフェノールAの物理的吸着除去により精製する工程と、
精製したビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を少なくとも重合開始剤及び/又は熱硬化剤と混合する工程とを有することを特徴とする液晶表示素子用シール剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性及び遮光部硬化性に優れ、かつ、環境への負荷を低減できる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤の製造方法、並びに、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂と光重合開始剤と熱硬化剤とを含有する光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
【0003】
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うことで極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0004】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。装置の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部まで光が到達せず硬化が不充分となるという問題があった。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出し、溶出したシール剤成分による硬化反応が液晶中において進行することで液晶汚染が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着性及び遮光部硬化性に優れ、かつ、環境への負荷を低減できる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤の製造方法、並びに、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記硬化性樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有し、ビスフェノールAの含有量が50ppm以下であり、前記硬化性樹脂全体におけるエポキシ基と(メタ)アクリロイル基との合計量に対するエポキシ基の比率が50モル%以下である液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、液晶表示素子用シール剤に含まれる硬化性樹脂として、化学的、物理的に優れるビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を配合することを検討した。しかしながら、このような硬化性樹脂を用いた場合に特に遮光部硬化性が充分に得られないことがあるという問題があった。本発明者らは、遮光部硬化性を悪化させる原因が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂中に僅かに存在しているビスフェノールAが重合反応を阻害していることにあると考えた。そこで本発明者らは、ビスフェノールAの含有量を特定値以下となるようにすることにより、接着性及び遮光部硬化性に優れる液晶表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、本発明の液晶表示素子用シール剤は、ビスフェノールAの含有量を少なくしていることから、該ビスフェノールAによる環境への負荷を低減できるものとなる。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する。上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性に優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。また、上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル変性した完全(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよいし、一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよい。
【0010】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂中にビスフェノールAが多く存在していると、得られる液晶表示素子用シール剤の遮光部硬化性及び環境に悪影響を与える。
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ビスフェノールAの含有量が50ppm以下である。硬化性樹脂として上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いつつ、上記ビスフェノールAの含有量を50ppm以下とすることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性及び遮光部硬化性に優れ、かつ、環境への負荷を低減できるものとなる。
なお、上記ビスフェノールAの含有量は、シール剤から、ジメチルスルホキシド溶液等の任意の溶液を用いてビスフェノールAを抽出し、液体クロマトグラフィーを用いて定量測定することができる。
【0011】
上記ビスフェノールAの含有量を50ppm以下とする方法としては、例えば、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、純水を用いたビスフェノールAの水洗除去により精製する方法、吸着剤を用いたビスフェノールAの物理的吸着除去により精製する方法等が挙げられる。
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法であって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、純水を用いたビスフェノールAの水洗除去により精製する工程と、精製したビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を少なくとも重合開始剤及び/又は熱硬化剤と混合する工程とを有する液晶表示素子用シール剤の製造方法、並びに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、吸着剤を用いたビスフェノールAの物理的吸着除去により精製する工程と、精製したビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を少なくとも重合開始剤及び/又は熱硬化剤と混合する工程とを有する液晶表示素子用シール剤の製造方法もまた、それぞれ本発明の1つである。
【0012】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、純水を用いたビスフェノールAの水洗除去により精製する場合、フラスコ等の容器内に上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂と純水とを投入して、加熱しながら撹拌を行った後に純水を分液する水洗操作を繰り返し行うことで精製することができる。
また、上記水洗除去は、40℃~50℃の温水を用いて行うことが好ましい。
【0013】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、吸着剤を用いたビスフェノールAの物理的吸着除去により精製する場合、用いられる吸着剤としては、例えば、木炭、石炭、活性炭、カーボンブラック等の炭素系多孔質体類、シリカゲル、アルミナ、マグネシア等の無機系多孔質体類、ジルコニア架橋体、アルミナ架橋体、酸化クロム架橋体、酸化チタン架橋体、酸化鉄架橋体等の粘土系多孔質体類、多孔質ガラス類、ゼオライト類、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体類、ポリアクリル酸エステル系架橋体類及びこれらを化学修飾したイオン交換樹脂類等が挙げられる。
【0014】
上記硬化性樹脂は、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂に加えて、その他の硬化性樹脂を含有してもよい。
上記その他の硬化性樹脂としては、上記完全(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のその他の(メタ)アクリル化合物や、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び上記部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のその他のエポキシ化合物等が挙げられる。なかでも、上記硬化性樹脂は、上記完全(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記その他の(メタ)アクリル化合物(これらを併せて単に「(メタ)アクリル化合物」ともいう)を含有することが好ましい。
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られる(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸とビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物とを反応させることにより得られるその他の完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0016】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
上記その他の完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0019】
上記その他の完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0020】
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコート806、エピコート4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコートYX-4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコート630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれも三菱化学社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0021】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0022】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
また、上記イソシアネート化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0024】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、上述したその他の完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN-9000H、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-330、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンSH-500B(いずれも根上工業社製)、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6LPA、U-6HA、U-10H、U-15HA、U-122A、U-122P、U-108、U-108A、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4100、UA-4000、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AI-600、AH-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0026】
上記(メタ)アクリル化合物は、液晶への悪影響を抑える点で、-OH基、-NH-基、-NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0027】
上記硬化性樹脂全体におけるエポキシ基と(メタ)アクリロイル基との合計量に対するエポキシ基の比率の好ましい上限は50モル%である。上記エポキシ基の比率が50モル%以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の液晶に対して溶解しにくくなって液晶汚染性がより低くなり、得られる液晶表示素子が表示性能により優れるものとなる。上記エポキシ基の比率のより好ましい上限は20モル%である。
【0028】
上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、上記その他の完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を合成するための原料として挙げたエポキシ化合物や、上記部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂以外の部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
本発明の液晶表示素子用シール剤が上記その他の硬化性樹脂を含有する場合、上記硬化性樹脂全体100重量部中における上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は100重量部である。上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性、塗布性、低液晶汚染性等により優れるものとなる。上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は上記(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は90重量部である。
【0030】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤としては、硬化速度等の観点からラジカル重合開始剤が好適に用いられる。上記ラジカル重合開始剤を用いた場合、ビスフェノールAによる硬化阻害が特に生じやすくなるが、本発明の液晶表示素子用シール剤は、該ビスフェノールAの含有量が極めて少ないため、このような硬化阻害を抑制し、遮光部硬化性に優れるものとなる。
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤や、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0031】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0032】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE 184、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 651、IRGACURE 819、IRGACURE 907、IRGACURE 2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、NCI-930(ADEKA社製)、SPEEDCURE EMK(日本シーベルヘグナー社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0033】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0034】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0035】
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物の例としては、V-65、V-501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0036】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0037】
上記重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0038】
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0039】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、SDH、ADH(いずれも大塚化学社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0040】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、より熱硬化性に優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量が50重量部を超えると、得られる液晶表示素子用シール剤の粘度が高くなり、塗布性が悪くなることがある。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0041】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の透湿防止性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0042】
上記充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0043】
本発明の液晶表示素子用シール剤中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は70重量%である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は60重量%である。
【0044】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0045】
上記シランカップリング剤としては、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができることから、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0046】
本発明の液晶表示素子用シール剤中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0047】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0048】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0049】
上記チタンブラックは、波長300~800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370~450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0050】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0051】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0052】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0053】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0054】
本発明の液晶表示素子用シール剤中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は80重量%である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の基板に対する密着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は70重量%であり、更に好ましい下限は30重量%、更に好ましい上限は60重量%である。
【0055】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他添加剤等を含有してもよい。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0057】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、E型粘度計を用いて25℃、1rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が5万mPa・s、好ましい上限が70万mPa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が塗布性に優れるものとなる。上記粘度のより好ましい下限は10万mPa・s、より好ましい上限は50万mPa・sである。
なお、上記E型粘度計としては、例えば、5XHBDV-III+CP(ブルックフィールド社製、ローターNo.CP-51)等を用いることができる。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0059】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0060】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0061】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられる。具体的には例えば、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤を、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で別の基板を重ね合わせる工程、及び、本発明の液晶表示素子用シール剤のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、接着性及び遮光部硬化性に優れ、かつ、環境への負荷を低減できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤の製造方法、並びに、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0064】
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)
フラスコに10%水酸化ナトリウム水溶液1000重量部、ビスフェノールA230重量部、及び、エピクロルヒドリン180重量部を投入し、窒素雰囲気で80℃で3時間撹拌を行った。次いで、メチルイソブチルケトン600重量部を加えて反応物を溶解した後、静置し、水層を分離除去した。その後、0.1mol/Lの塩酸水溶液300重量部を投入し、撹拌を行った後、水層を分離除去し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液を得た。
【0065】
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂A(精製品)の作製)
「(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)」で得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液に純水500重量部を加えて50℃で30分間加熱撹拌を行った後に純水を分離除去する水洗操作を行った。更に、この水洗操作を4回繰り返した後、減圧蒸留により溶媒を取り除き、ビスフェノールA型エポキシ樹脂A(精製品)を得た。なお、上記水洗操作に用いた純水は、40℃~50℃の温水である。
【0066】
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂B(精製品)の作製)
「(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)」で得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液に、吸着剤としてキョーワード2000(協和化学工業社製、酸化アルミニウム・酸化マグネシウム固溶体)を10重量部加えて50℃で30分間加熱撹拌を行い、濾過によりキョーワード2000を分離した後、減圧蒸留により溶媒を取り除き、ビスフェノールA型エポキシ樹脂B(精製品)を得た。
【0067】
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂C(未精製品)の作製)
「(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)」で得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液から減圧蒸留によりメチルイソブチルケトンを取り除き、ビスフェノールA型エポキシ樹脂C(未精製品)を得た。
【0068】
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂D(精製品)の作製)
「(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)」で得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液に純水500重量部を加えて50℃で30分間加熱撹拌を行った後に純水を分離除去する水洗操作を行った。更に、この水洗操作を2回繰り返した後、減圧蒸留により溶媒を取り除き、ビスフェノールA型エポキシ樹脂A(精製品)を得た。なお、上記水洗操作に用いた純水は、40℃~50℃の温水である。
【0069】
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂E(精製品)の作製)
「(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)」で得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液に純水500重量部を加えて50℃で30分間加熱撹拌を行った後に純水を分離除去する水洗操作を行った。次いで、減圧蒸留により溶媒を取り除き、ビスフェノールA型エポキシ樹脂A(精製品)を得た。なお、上記水洗操作に用いた純水は、40℃~50℃の温水である。
【0070】
(アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(精製品)の作製)
「(ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液の作製)」で得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液にアクリル酸150重量部及びトリエチルベンジルアンモニウムクロリド5重量部を投入し、窒素雰囲気で80℃で3時間撹拌を行った。次いで、純水800重量部及びジエチルエ-テル800重量部を投入して撹拌した後に水層を分離除去する水洗操作を行った。更に、この水洗操作を4回繰り返した後、減圧蒸留により溶媒を取り除き、アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(精製品)を得た。なお、上記水洗操作に用いた純水は、40℃~50℃の温水である。
【0071】
(実施例1~5、及び、比較例1、2)
表1に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~5、及び、比較例1、2の液晶表示素子用シール剤を調製した。
【0072】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0073】
(ビスフェノールAの含有量)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を、0.1wt/vol%のジメチルスルホキシド溶液となるように調製し、2時間振とうした。次いで、得られた溶液をメタノールで10倍に希釈した後、0.2μmフィルターでろ過し、外部標準法にて液体クロマトグラフィーを用いてビスフェノールAの含有量を測定した。
【0074】
(接着性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP-2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、極微量をコーニングガラス1737(20mm×50mm×厚さ0.7mm)の中央部に取り、同型のガラスをその上に重ね合わせて液晶表示素子用シール剤を押し広げ、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、接着試験片を得た。
得られた接着試験片について、テンションゲージを用いて接着強度を測定した。得られた測定値(kgf)をシール塗布断面積(cm)で除した値が、35kgf/cm以上であった場合を「◎」、30kgf/cm以上35kgf/cm未満であった場合を「○」、25kgf/cm以上30kgf/cm未満であった場合を「△」、25kgf/cm未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
【0075】
(遮光部硬化性)
まず、厚さ0.7mmのコーニングガラスの片面半分をクロム蒸着した基板Aと、片面全体をクロム蒸着した基板Bとを準備した。次に、実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤を基板Aの中央部(クロム蒸着部と非蒸着部との境界)に塗布し、基板Bを貼り合わせてからシール剤を充分に押し潰し、基板A側からメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を5秒照射した。
その後、カッターを用いて基板A及びBを剥がし、紫外線直接照射部の際から50μm離れた点(クロム蒸着により遮光されていた部分)上のシール剤について顕微IR法によってスペクトルを測定し、シール剤中の(メタ)アクリロイル基の転化率を以下の方法により求めた。即ち、815~800cm-1のピーク面積を(メタ)アクリロイル基のピーク面積とし、845~820cm-1のピーク面積をリファレンスピーク面積として、下記式により(メタ)アクリロイル基の転化率を算出し、転化率が90%以上であったものを「◎」、70%以上90%未満であったものを「○」、50%以上70%未満であったものを「△」、50%未満であったものを「×」として遮光部硬化性を評価した。
(メタ)アクリロイル基の転化率=(1-(紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基のピーク面積/紫外線照射後のリファレンスピーク面積)/(紫外線照射前の(メタ)アクリロイル基のピーク面積/紫外線照射前のリファレンスピーク面積))×100
【0076】
(液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性1))
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にて、2枚のITO薄膜付きの透明電極基板の一方にシール剤を枠状に塗布した。続いて、TN液晶(チッソ社製、「JC-5001LA」)の微小滴を液晶滴下装置にてシール剤の枠内に滴下塗布し、他方の透明電極基板を、真空貼り合わせ装置にて5Paの真空下にて貼り合わせ、セルを得た。得られたセルに、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、液晶表示素子を得た。
得られた液晶表示素子について、シール部周辺の液晶(特にコーナー部)に生じる表示むらを目視にて観察し、表示むらが確認されなかった場合を「◎」、わずかな表示むらが確認された場合を「○」、はっきりと表示むらが確認された場合を「△」、酷い表示むらが確認された場合を「×」として液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性1)を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は、実用に全く問題のないレベルである。
【0077】
(液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性2))
上記「(液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性1))」と同様の方法で作製した液晶表示素子について、40℃、50%RHの条件で180日間放置した後、シール部周辺の液晶(特にコーナー部)に生じる表示むらを目視にて観察し、表示むらが確認されなかった場合を「◎」、わずかな表示むらが確認された場合を「○」、はっきりと表示むらが確認された場合を「△」、酷い表示むらが確認された場合を「×」として液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性2)を評価した。
表示性能が初期(液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性1))と比べて悪化したものは、シール剤中の僅かな未硬化性分が徐々に液晶中に溶出したと推測される。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は、実用に全く問題のないレベルである。
【0078】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、接着性及び遮光部硬化性に優れ、かつ、環境への負荷を低減できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤の製造方法、並びに、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。