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特許7053263還元コバルト触媒を用いるフィッシャー-トロプシュ法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】還元コバルト触媒を用いるフィッシャー-トロプシュ法
(51)【国際特許分類】
   C10G 2/00 20060101AFI20220405BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20220405BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220405BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C10G2/00
B01J23/889 M
B01J37/08
B01J37/18
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2017531781
(86)(22)【出願日】2015-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2015078417
(87)【国際公開番号】W WO2016091693
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-12-03
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】14197770.2
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397035070
【氏名又は名称】ビーピー ピー・エル・シー・
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ファーガスン,ユエン
(72)【発明者】
【氏名】クラウィエック,ピオトル
(72)【発明者】
【氏名】オヘーダ ピネダ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】パタースン,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ,マシュー ジェームズ
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】蔵野 雅昭
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-522684号公報
【文献】特表2006-513020号公報
【文献】特表平11-514575号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G1/00-99/00
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び一酸化炭素の混合物を含むフィードを炭化水素へ変換するための方法であって、該フィード中の水素及び一酸化炭素は、1:9から9:1の体積比で存在し、
該方法は:
a.該フィードを、高められた温度、及び大気圧又は高められた圧力で、二酸化チタン及びコバルトを含む触媒と接触させる工程を含み、
該触媒は、コバルトの質量に対して30%から95%の金属コバルトを含み、
また、該方法は
i.工程aで用いられる該触媒を形成するために、220℃から250℃の温度で還元剤をもって、
a)二酸化チタン担持体、及び
b)コバルト酸化物、コバルト酸化物に分解可能であるコバルト化合物又はそれらの混合物を含む触媒組成物に対して前処理する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記触媒が、コバルトの質量に対して35%から90%の金属コバルトを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、コバルトの質量に対して40%から85%の金属コバルトを含む請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
前記触媒が、コバルトの質量に対して70%から80%の金属コバルトを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
工程iが、前記触媒組成物を水素ガス含有流に暴露することによって行われ、前記水素ガス含有流は、一酸化炭素ガス及び水素ガスの体積に対して10%未満の一酸化炭素ガスを含む請項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程iが、前記触媒組成物を一酸化炭素ガス含有流に暴露することによって行われ、該一酸化炭素ガス含有流は、一酸化炭素ガス及び水素ガスの体積に対して10%未満の水素ガスを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水素及び一酸化炭素の前記混合物が、合成ガスの形態である請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水素及び一酸化炭素の前記混合物が、水素ガス及び一酸化炭素ガスを、0.5:1から5:1の範囲の体積比で含む請求項1から7のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
水素及び一酸化炭素の前記混合物が、水素ガス及び一酸化炭素ガスを、1:1から3:1の範囲の体積比で含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
水素及び一酸化炭素の前記混合物が、水素ガス及び一酸化炭素ガスを、1.6から2.2:1の範囲の体積比で含む請求項1から9のいずれか一項に記載の方法
【請求項11】
前記触媒が、前記触媒の質量に対して、5%から30%のコバルトを含む請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、前記触媒の質量に対して、5%から25%のコバルトを含む請求項1から11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記触媒が、前記触媒の質量に対して、10%から20%のコバルトを含む請求項1から12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
前記触媒が、さらに、クロム、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ホウ素、ジルコニウム、ガリウム、トリウム、ランタン、セリウム、ルテニウム、レニウム、パラジウム、白金、これらの化合物及び/又は混合物から選択される1つ又はそれ以上の促進剤を含む請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記促進剤が、前記触媒の質量に対して、0%から5%の量で存在する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記促進剤が、前記触媒の質量に対して、0.1%から3%の量で存在する請求項14に記載の方法
【請求項17】
前記促進剤が、前記触媒の質量に対して、0.5%から2.5%の量で存在する請求項14に記載の方法
【請求項18】
コバルト酸化物又はコバルト酸化物に分解可能であるコバルト化合物が、酸化コバルト(III)、酸化コバルト(II,III)、酸化コバルト(II)、これらに分解可能である化合物、又はこれらの混合物から選択される請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒組成物を前処理する前記工程が、230℃から250℃の温度で行われる請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
フィッシャー-トロプシュ触媒を作製するための方法であって、フィッシャー-トロプシュ触媒は、(i)二酸化チタン担持体、及び(ii)コバルトを含み、ここでコバルトの質量に対して30%から95%の金属コバルトを含んでおり、前記方法は、
a)二酸化チタン担持体、及び
b)コバルト酸化物又はコバルト酸化物に分解可能であるコバルト化合物を含む触媒組成物に対し、還元剤を220℃から250℃の温度で接触させることで還元を行ってフィッシャー・トロプシュ触媒を作製する工程を含む方法。
【請求項21】
前記触媒は、コバルトの質量に対して35%から90%の金属コバルトを含む請求項20に記載の方法
【請求項22】
前記触媒は、コバルトの質量に対して40%から85%の金属コバルトを含む請求項20に記載の方法
【請求項23】
前記触媒は、コバルトの質量に対して70%から80%の金属コバルトを含む請求項20に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素ガス及び水素ガスの混合物を含むフィード(例:合成ガス(シンガス))を、二酸化チタン(チタニア)担持体を含むコバルト触媒上で、炭化水素へ変換するためのフィッシャー‐トロプシュ(FT)法、そのための触媒、並びに前記触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のFT法は、典型的には、二酸化チタン上に担持されていてよい酸化コバルト(II)ジコバルト(III)(酸化コバルト又は酸化コバルト(II,III)としても知られる、すなわち、Co)などの酸化物コバルトを含む安定な触媒組成物を利用し、並びに酸化コバルト(II,III)を還元して、触媒活性種であると理解されている元素(又は金属)コバルト(Co)とすることによって触媒を活性化するための還元工程を用いる。従って、得られる触媒の活性を向上するためには、存在するコバルトの可能な限り多くを還元することが、言い換えると、可能な限り100%に近いコバルトの還元度を得ることが望ましいと考えられてきた。Batholomew et al, Journal of Catalysis 128, 231-247 (1991)を参照されたい。米国特許第7851404号には、二酸化チタン担持体を含む還元コバルト触媒を利用するFT法が開示されている。そのようなFT触媒の特性を向上又は維持することが、最も特には、その活性に関連して、すなわち、同じ温度でのシンガスから炭化水素へのより高い変換を(又は、同じ変換をより低い温度で)可能とすること、及び少なくとも5個の炭素原子を有する炭化水素(C5+)の生産に対する選択性又は特にエネルギー消費のより少ない条件(すなわち、より低い温度又はより低い継続時間)で操作される場合のメタン生成を回避する選択性など、より望ましい選択性を可能とすることが依然として継続的に求められている。驚くべきことに、今回、二酸化チタン担持コバルト触媒の限定的な度合い(程度)の還元、すなわち、より低い達成レベルとした還元(続いてフィードに暴露された場合の触媒の還元の度合いも同様)を利用することができ、それでも少なくとも許容可能であり、さらには高められたFT法における触媒活性及びC5+選択性が達成されることが見出された。
【発明の概要】
【0003】
第一の態様によると、本発明は、従って、水素及び一酸化炭素の混合物を含むフィードを炭化水素へ変換するための方法に関し、フィード中の水素及び一酸化炭素は、1:9から9:1の体積比で存在し、この方法は、フィードを、高められた温度、及び大気圧又は高められた圧力で、二酸化チタン及びコバルトを含む触媒と接触させる工程を含み、ここで、触媒は、最初、コバルトの質量に対して30%から95%の金属コバルトを含む。この態様はまた、望ましくは、二酸化チタン担持体、及び酸化物コバルト(例:酸化コバルト)又はそれに分解可能であるコバルト化合物を含む触媒組成物を還元によって前処理して、上記触媒を作製する工程も含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0004】
有利には、本発明の方法において、触媒は、最初、コバルトの質量に対して35%から90%の金属コバルト、好ましくは、コバルトの質量に対して70%から80%の金属コバルトなど、コバルトの質量に対して40%から85%(又は50%から85%)の金属コバルトを含む。本明細書で用いられる場合、一般用語「コバルト」は、金属(元素)形態の、又はコバルト化合物の一部としてのコバルトを含み(すなわち、存在する全コバルトを意味する)、従って、例えば、触媒が「コバルトを含む」と称される場合、それは、触媒が金属/元素コバルト及び/又は少なくとも1つのコバルト化合物を含むという意味であることを意図している。同様に、コバルトの質量は、存在するコバルト原子及びイオンの合計質量を含み、すなわち、いずれのコバルト化合物中のその他のいずれのイオンも無視する。本明細書で用いられる場合、より具体的な用語「金属コバルト」又は「元素コバルト」は、ゼロの酸化状態のコバルト、すなわち、Coを意味する。
【0005】
本発明に従う触媒のコバルトの質量に対する金属コバルトのパーセント(本明細書において、還元の度合いと交換可能である)は、最初の触媒に適用され、それは、方法の開始時、すなわち、触媒がフィードと最初に接触する時点を意味する。従って、コバルトの質量に対する金属コバルトのパーセントは、炭化水素を生産するために触媒にフィードを導入する直前、及び/又は実質的に導入する時点での触媒に適用され、又は加えて、若しくは別の選択肢として、還元工程によって、特にそのような還元工程がin situで行われる場合に達成される還元の度合いを意味し得る。明白なことには、従って、触媒をフィード自体に高められた温度で暴露することが、完全な還元などの請求される範囲外のレベルまでを例として、還元の度合いにさらに影響を与え得ることは認識される。しかし、フィードへの暴露時又はその後に触媒のさらなる還元が起こった場合であっても、本発明の有益性が維持されることが見出されており、このことは、特に本発明の範囲内に含まれる。
【0006】
本発明で用いられる触媒は、二酸化チタン担持体、及び酸化物コバルト又はそれに分解可能であるコバルト化合物を含む触媒組成物を、還元剤で前処理することによって得ることができる。従って、前処理又は還元工程を用いて、すなわち、触媒を還元することによって、還元の度合いを得ることができる。この前処理は、本発明によって特に限定されない。
【0007】
適切には、気体還元であってよい、すなわち、還元性ガス流を用いてよい前処理工程が用いられてよい。還元性ガス流が用いられる場合、それは、有利には、少なくとも25体積%の還元性ガスを、好ましくは、少なくとも50体積%の還元性ガスを、より好ましくは、少なくとも75体積%の還元性ガスを、さらにより好ましくは、少なくとも90体積%の還元性ガスを、なおさらにより好ましくは、少なくとも95体積%の還元性ガスを含み、なおさらに好ましくは、それは、実質的に完全に還元性ガスから成っている。残部は、アルゴン、ヘリウム、窒素、及び/若しくは水蒸気などの不活性希釈剤、又は炭化水素(例:メタン)若しくは二酸化炭素などの少量成分を含んでよく、又はそれらであってよい。上記で言及される還元性ガスは、特に、一酸化炭素又は水素であってよい。
【0008】
有利には、そのようなガスは、水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを用いたプロセスが行われる場所で容易に入手可能であることから、触媒は、分子水素を含むガス(水素ガス)及び/又は一酸化炭素を含むガス(一酸化炭素ガス)などの還元性ガスを用いて前処理されてよい。水素ガスが用いられる場合、早過ぎる反応の開始及び結果として生じる性能不良の触媒を回避する目的で、還元性ガス流が、10%未満の一酸化炭素ガス(水素ガス及び一酸化炭素ガスの体積に対して)を含むことが適切である。同様に、一酸化炭素ガスが用いられる場合、還元性ガス流は、10%未満の水素ガス(水素ガス及び一酸化炭素ガスの体積に対して)を含むことが適切である。いかなる誤解をも避けるために、本明細書で報告される還元性ガス流中に存在してもよい水素の上限は、ガス流中の一酸化炭素の体積のみに対するものであり、一酸化炭素及びいずれの不活性希釈剤又はその他の成分をも組み合わせた体積に対するものではない。同様に、本明細書で報告される還元性ガス中に存在してもよい一酸化炭素の上限は、ガス流中の分子水素の体積のみに対するものであり、水素及びいずれの不活性希釈剤又はその他の成分をも組み合わせた体積に対するものではない。
【0009】
適切には、前処理工程は、100℃から500℃、好ましくは、200℃から350℃の温度で、及び/又は10から5500kPa、好ましくは、20から3000kPa、より好ましくは、50から1000kPa、さらにより好ましくは、100から800kPaを例とする所望されるいずれ圧力で行われてもよい。この工程の間、還元性ガス(水素ガス又は一酸化炭素ガスなど)は、適切には、100から10000時間-1、好ましくは、250から3000時間-1などの250から5000時間-1、より好ましくは、1000時間-1を例とする250から2000時間-1の範囲のガス毎時空間速度(GHSV)で触媒床上を通される。本明細書で用いられる場合、特に断りのない限り、GHSVは、触媒床体積に基づき、標準温度及び圧力に換算されたガス体積に対するガス毎時空間速度を意味する。
【0010】
触媒中に所望されるレベルの金属コバルトを効率的に得る目的で、触媒を還元する前処理工程は、有利には、200℃から300℃、好ましくは、220℃から280℃、より好ましくは、230℃から250℃の温度で行われる。これらの温度範囲は、特に、(限定されないが)一酸化炭素ガス及び/又は水素ガスを用いての触媒の還元と組み合わせて適用される。これらの温度範囲内では、還元の度合いの制御がより容易であると考えられる。本明細書で用いられる場合、温度とは、フィード温度、適用される温度、及び/又は触媒床温度を意味し得る。
【0011】
前処理工程の厳密な継続時間は、所望される還元の度合いを得るという限りにおいてのみ重要である。上記で具体的に挙げた温度範囲のいずれとの組み合わせであってもよい前処理工程の代表的な継続時間としては、0.1から100時間、好ましくは、1から50時間、より好ましくは、5から35時間、さらにより好ましくは、7から20時間、なおさらにより好ましくは、10から15時間が挙げられる。
【0012】
便宜上、前処理工程は、望ましくは、触媒の充填及び除去に必要とされる時間及び労力を削減する目的で、続いてのシンガスの炭化水素への変換に用いられるものと同じ反応器で行われてよい(「in situ」)。in situでの還元はまた、シンガスの炭化水素への変換が開始される時点で、前処理工程の過程で達成された還元の度合いが依然として存在していることを確認するいかなる工程の必要性も軽減するものである。しかし、前処理工程は、FT反応器以外の別の場所で行われてもよい(「ex situ」)。
【0013】
本明細書で用いられる場合、還元の度合いは、昇温還元(TPR)を用いて測定されてよい。TPRは、還元性ガスをサンプル上に流しながら、触媒(例:酸化コバルト(II,III))を設定された温度上昇に掛けるという、固体物質同定のための技術である。排出ガスが熱伝導度型検出器(TCD)又は質量分析器(MS)によって分析されて、還元剤ガス濃度の低下又は水などの他の種の発生が特定され得る。
【0014】
本明細書において還元の度合いを特定するために、サンプルを乾燥し、触媒中に存在するコバルト原子の100%還元(例:CoからCoへの100%還元に相当)までTPRを行うことにより、標準データセットが作成される。標準データは、従って、サンプルを1800時間-1のGHSVでアルゴンガスと接触させ、温度を20℃から120℃まで5℃/分の速度で昇温し、続いて120℃で15分間滞留させた後、やはりアルゴンガス下で20℃まで冷却することを含む乾燥工程に最初にサンプルを掛けることにより、in situ(すなわち、TPRユニット内)で得られてよい。TPR自体は、4% Hガス(アルゴン中)を3800時間-1のガス毎時空間速度(GHSV)で用い、温度を20℃から800℃まで5℃/分の速度で昇温することで行われてよい。サンプルデータは、一般的に、上記のような乾燥工程を行い、続いて所望される還元工程を行い(例えば、1800時間-1のGHSV、240、260、280、又は300℃で、100%水素ガス下、10時間)、次にTPRを100%還元まで行うことによって作成される。サンプルデータは、従って、サンプルを1800時間-1のGHSVでアルゴンガスと接触させ、温度を20℃から120℃まで5℃/分の速度で昇温し、続いて120℃で15分間滞留させた後、やはりアルゴンガス下で20℃まで冷却することを含む乾燥工程に最初にサンプルを掛けることにより、in situ(すなわち、TPRユニット内)で得られてよい。還元工程自体では、100% Hガスが、やはり1800時間-1のGHSVで用いられ、温度は、20℃から150℃まで2℃/分の速度で昇温され、続いて150℃から所望される還元温度までは1℃/分の速度でのより遅い昇温とされ、その後、その所望される還元温度での10時間の滞留、及びアルゴンガス下での20℃までの冷却が行われてよい。次に、TPR自体が上記のように行われる。TCDを利用して、温度に対する熱伝導度のグラフが作成されてよく、完全な還元では、伝導度がベースライン値に近付く。サンプルTPRデータで得られたTCDグラフ下面積(ベースラインに対する)を、標準TPRデータの対応する面積と比較することにより、サンプルと標準データとの間で、前処理還元間に消費された水素の相対量を算出することができる。実際には、これは、サンプルに対して得られたTCDグラフ下の積分面積を、標準データに対するTCDグラフ下面積から差し引き、次に得られた値を、標準データからの積分面積のパーセントとして表すことを含む。式として表すと、これは以下のようになる:
【0015】
【数1】
【0016】
TPRは、サンプルに対する技術的測定が還元工程に続いて行われることから、還元の度合いを特定するために利用するのに有利な技術である。従って、上記式から消費H%が算出されるが、得られるデータは、別の還元性ガス(例えば、一酸化炭素)が用いられた場合であっても適用可能であり、対応する消費H%として表されるだけであり、水素還元からの化学量論を用いて、還元の度合い、すなわち、Coとして存在するコバルト原子のパーセントを算出することができる。単に消費Hパーセントを特定することは、異なる触媒において還元によって生成したCoの異なる相対量に対応し得るが、Coは、触媒活性種であると理解されており、従って、本発明の状況において、還元によって生成したCoの実際量を理解することが望ましいことから、これは好ましい手法である。
【0017】
酸化コバルト(Co)の完全な還元は、以下の化学式によって示されるように、二段階プロセスである(まず、酸化第一コバルトとしても知られる酸化コバルト(II)への還元、次に酸化コバルト(II)の金属コバルトへの還元)。
【0018】
[化1]
Co+H→3CoO+H
CoO+H→Co+H
式2及び3:酸化コバルト(II,III)の金属コバルトへの段階的還元
【0019】
全体としての還元は、別の選択肢として、単一の化学量論式として表すこともできる:
【0020】
[化2]
Co+4H→3CoO+HO+3H→3Co+4H
式4:酸化コバルト(II,III)の金属コバルトへの全体としての還元
【0021】
従って、第一の段階では、1当量のHが、まったく金属コバルトを生成することなく消費され、一方第二では、3当量が消費される。全体では、従って、完全な還元は、3当量のCoをCoへ還元するのに4当量のHを必要とする。しかし、第一の段階は、第二よりも非常に速いと考えられ、従って、本明細書では、Coの形成がまったく発生する前に、完了まで進行するものと仮定される。金属コバルトの生成に必要とされる水素の量は、従って、還元の度合いが低い程、金属コバルトの1モルに対して高くなり、100%還元に近付くに従って、3モルのCoごとに4モルのHという化学量論比に向かう傾向にある。
【0022】
このことを考慮すると、サンプルで達成される還元の度合いは、以下の式を用いて算出することができる:
【0023】
【数2】
【0024】
より一般的には、還元の律速段階まではx当量のHが必要であり、律速段階の間及びその後は、y当量のHが必要であるという化学量論を有する還元の場合、還元の度合いは、以下の式を用いて算出することができる:
【0025】
【数3】
【0026】
上述のTPRを用いることにより、従って、例えば、触媒が炭化水素の生産に用いられる前に行われ得る保存、輸送、又はその他の中間工程のいずれかの期間の後、コバルトの質量に対する存在するコバルト金属の量が本発明の範囲内に維持されていることを確認する目的で、ex situで還元された触媒に対する還元の度合いを特定することができる。そうでなかった場合、必要とされる還元の度合いを達成するために、追加の対策が講じられてよく、例えば、in situでの追加の還元、又は保存及び輸送時における触媒の酸化性雰囲気への暴露の回避である。そのような酸化性雰囲気の回避は、触媒を不活性(例:窒素)雰囲気中に包装すること、触媒を還元性雰囲気(例:5体積%のH、95体積%の窒素)中に包装すること、触媒の表面に薄い保護酸化物層を形成することによって不動態化すること、又は保存及び輸送のために触媒にワックス被覆を施すことによって達成され得る。
【0027】
本発明に従って用いられる触媒は、金属コバルトへ還元されることを意図するコバルト化合物を含んでよい。コバルト化合物が何であるかは、そのコバルト化合物が金属コバルトへ分解可能であるべきである(直接又は間接的(例:中間体を介して)こと以外は、特に限定されず、そのような化合物の混合物を含む。好ましくは、コバルト化合物は、酸化物コバルト、それに分解可能であるコバルト化合物、又はそれらの混合物であり、例えば、酸化コバルト(III)、酸化コバルト(II,III)、及び/又は酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化コバルト(II,III)、及び/又は酸化コバルト(II)に分解可能である化合物、並びにこれらの組み合わせである。より好ましくは、コバルト化合物は、酸化コバルト(II,III)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II,III)及び/若しくは酸化コバルト(II)に分解可能であるコバルト化合物、又はこれらの混合物であり、例えば、酸化コバルト(II,III)、酸化コバルト(II)、硝酸コバルト(例:硝酸コバルト六水和物)、酢酸コバルト、又は水酸化コバルトである。さらにより好ましくは、コバルト化合物は、酸化コバルト(II,III)、酸化コバルト(II)、又はこれらの混合物であり、それは、この場合、酸化物生成のための追加の焼成/酸化/分解工程が必要ではなくなるからであり、なおさらにより好ましくは、コバルト化合物は、酸化コバルト(II,III)である。酸化物コバルト以外のコバルト化合物が用いられる場合、これは、本明細書において、触媒前駆体と称される場合があり、そこから、酸化コバルトを形成するために用いられる焼成/酸化/分解工程が、炭化水素合成反応器に対して、又は還元工程に対してin situ又はex situで行われてよい。
【0028】
触媒中に存在するコバルト化合物の量は、特に限定されない。本発明のいくつかの実施形態によると、触媒は、触媒の質量に対して5%から30%、好ましくは、5%から25%、より好ましくは、10%から20%のコバルト化合物を含む。
【0029】
触媒はまた、コバルト化合物のための担持物質として二酸化チタン(本明細書において、チタニアとも称される)も含む。触媒はさらに、触媒の活性を向上させるために、1つ以上の促進剤も含んでよい。促進剤の限定されない例としては:クロム、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ホウ素、ジルコニウム、ガリウム、トリウム、ランタン、セリウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、パラジウム、白金、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。1つ以上の促進剤は、元素金属として、又は酸化物を例とする化合物として存在してもよい。ある実施形態では、促進剤は、白金、モリブデン、若しくはこれらの混合物を含むか、又はこれらから選択され、例えば、モリブデンである。そのような促進剤は、触媒の質量に対して15%までの量で存在してよいが、有利には、触媒の質量に対して0%から5%、触媒の質量に対して0.1%から3%、又は1%から2.5%若しくは1.5%から2.25%など、触媒の質量に対して0.5%から2.5%の量で存在してもよく、例えば、2%である。
【0030】
触媒は、含浸、沈降、又はゲル化を含む公知のいかなる方法によって作製されてもよい。適切な方法は、例えば、二酸化チタンを、硝酸コバルト、酢酸コバルト、又は水酸化コバルトなどの金属コバルトに熱分解可能(例:酸化物を介して)であるコバルトの化合物で含浸することを含む。いずれも本技術分野にて公知であるインシピエントウェットネス技術(incipient wetness technique)又は過剰溶液技術(excess solution technique)を含む適切ないかなる含浸技術が用いられてもよい。インシピエントウェットネス技術は、担持体の表面全体を丁度湿潤するのに必要な溶液の最小体積が提供され、過剰な液体が存在しないように含浸溶液の体積が予め決定される必要があることからこのように称される。過剰溶液技術は、その名称から示唆されるように、過剰の含浸溶液を必要とし、溶媒は、通常は蒸発により、後で除去される。含浸溶液は、適切には、コバルト化合物の水溶液又は非水性有機溶液であってよい。適切な非水性有機溶媒としては、例えば、アルコール、ケトン、液体パラフィン系炭化水素、及びエーテルが挙げられる。別の選択肢として、熱分解性コバルト化合物の水性有機溶液、例えば水性アルコール系溶液が用いられてもよい。
【0031】
作製後、触媒はさらに、押出し、粉砕、粉末化、ペレット化、造粒、及び/又は凝集を含む公知のいかなる技術で成形されてもよい。好ましくは、触媒は、例えば、反応器中での圧力損失の低減及び触媒の非常に一定である直径を可能とするために、押出される。押出しでは、触媒成分の水中での混合物などから押出し可能ペーストが形成されてよく、これが続いて、所望される形状に押出され、乾燥されて、触媒が形成される。別の選択肢として、二酸化チタンの押出し可能ペーストが、粉末化された二酸化チタン及び水の混合物から形成されてもよい。このペーストは、次に、押出され、典型的には、乾燥及び/又は焼成されて、所望される形状を形成してよく、これが次に、押出された担持物質をコバルト化合物で含浸するために、コバルト化合物の溶液と接触されてよい。得られた含浸担持物質は、次に、乾燥されて触媒を形成してよく、これは、酸化コバルト(III)、酸化コバルト(II,III)、又は酸化コバルト(II)などの酸化物コバルトがまだ含まれていない場合は、焼成されてもよい。
【0032】
上記で記載したように、本発明は、第一の態様において、水素及び一酸化炭素の混合物を含むフィード、好ましくは、合成ガス混合物の形態のフィードを炭化水素に変換するための方法を提供し、この方法は、フィードを、上記で述べた還元活性化触媒組成物と接触させることを含む。
【0033】
本明細書で述べる炭化水素合成法では、フィード中の水素対一酸化炭素体積比(H:CO)は、1:9から9:1の範囲であり、好ましくは、0.5:1から5:1の範囲であり、より好ましくは、1:1から3:1、最も好ましくは、1.6:1から2.2:1である。そのような比は、特に、反応器へのフィードに関して、例えば、反応器の入口部で適用される。フィードはまた、窒素、二酸化炭素、水、メタン、並びに他の飽和及び/又は不飽和軽質炭化水素などの他のガス成分も含んでよく、各々、好ましくは、30体積%未満の濃度で存在する。反応(又は反応器)の温度は、好ましくは、100から400℃、より好ましくは、150から350℃、最も好ましくは、150から250℃の範囲に高められる。反応(又は反応器)の圧力は、大気圧であるか、又は好ましくは、1から100バール(0.1から10MPa)、より好ましくは、5から75バール(0.5から7.5MPa)、最も好ましくは、10から50バール(1.0から5.0MPa)の範囲に高められる。本明細書で用いられる場合、条件に関連して「高められる」とは、標準条件よりも高い条件を意味し、例えば、標準温度及び圧力(STP)よりも高い温度及び圧力である。
【0034】
本発明の方法におけるガス反応体(フィード)は、別々に、又は予め混合されて(例:シンガスの場合のように)反応器に供給されてよい。それらは、固体触媒の同じ部分で、最初にすべてが固体触媒と接触してよく、又はそれらは、固体触媒の異なる位置で添加されてもよい。水素ガスの一酸化炭素ガスに対する比は、従って、両方のガス流が流れている場合の相対的流速から特定されてよい。1つ以上のガス反応体は、固体触媒上を並流で流れることが好ましい。
【0035】
本発明の方法において用いられるフィードはまた、この方法の他所から抽出された再循環物質も含んでよく、本発明の方法に伴ういずれかの還元工程から分離された未反応の反応体などである。
【0036】
水素及び一酸化炭素の混合物は、適切には、100から10000時間-1(標準温度及び圧力に換算されたガスの体積)、好ましくは、250から3000時間-1などの250から5000時間-1、より好ましくは、250から2000時間-1の範囲のガス毎時空間速度(GHSV)で触媒床上を通される。
【0037】
本技術分野にて公知であるように、本発明の方法におけるフィードとして用いられることが好ましい合成ガスは、主として一酸化炭素及び水素を含み、その入手源及び純度に応じて少量の二酸化炭素、窒素、及びその他の不活性ガスも含む可能性がある。合成ガスを作製する方法は、本技術分野において確立されており、通常は、石炭を例とする炭素質物質の部分酸化を含む。別の選択肢として、合成ガスは、例えば、メタンの接触水蒸気改質によって作製されてもよい。合成ガス中に存在する一酸化炭素の水素に対する比は、適宜、一酸化炭素若しくは水素の添加によって変更されてよく、又は当業者に公知であるいわゆるシフト反応によって調節されてもよい。
【0038】
本発明の方法は、固定床、流動床、若しくはスラリー相反応器中、バッチで、又は連続的に行われてよい。本発明で述べる触媒を固定床法で用いる場合、粒子サイズは、触媒床全体での許容される圧力損失が達成されるような形状及び寸法とされるべきである。当業者であれば、そのような固定床反応器での使用に最適である粒子寸法を決定することができる。所望される形状及び寸法の粒子は、押出し補助剤及び/又はバインダーが所望に応じて添加されてもよいペーストの押出しによって入手されてよい。
【0039】
第二及び第三の態様によると、本発明は、水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを炭化水素に変換するための、並びに水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを炭化水素に変換する方法の選択性及び/又は生産性を増加させるための、二酸化チタン担持体及びコバルトを含む触媒の使用に関し、ここで、触媒は、コバルトの質量に対して30%から95%の金属コバルトを含む。触媒は、水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを炭化水素に変換するための方法(本発明の第一の態様がこれに関する)においてそのように用いられることから、第一の態様に関して上記で述べた触媒又はそれに関連するいずれのプロセスのいずれの特徴も、個別に又はいずれかの組み合わせで、これらの第二及び第三の態様に適用可能である。
【0040】
第四の態様では、本発明は、二酸化チタン担持体及びコバルトを含むフィッシャー-トロプシュ触媒に関し、触媒は、コバルトの質量に対して30%から95%の金属コバルトを含む。触媒は、水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを炭化水素に変換するための方法(本発明の第一の態様がこれに関する)における使用を意図していることから、第一の態様に関して上記で述べた触媒又はそれに関連するいずれのプロセスのいずれの特徴も、個別に又はいずれかの組み合わせで、この第四の態様に適用可能である。
【0041】
第五の態様では、本発明は、第四の態様に従うフィッシャー-トロプシュ触媒を作製するための方法に関し、この方法は、二酸化チタン担持体及び酸化物コバルト又はそれに分解可能であるコバルト化合物を含む触媒を還元して、フィッシャー-トロプシュ触媒を作製する工程を含む。触媒は、水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを炭化水素に変換するための方法(本発明の第一の態様がこれに関する)における使用を意図していることから、第一の態様に関して上記で述べた触媒又はそれに関連するいずれのプロセスのいずれの特徴も、個別に又はいずれかの組み合わせで、この第五の態様に適用可能である。
【0042】
第六の態様では、本発明は、第一の態様に従う方法から得られた炭化水素を含む製品(好ましくは、燃料)も提供する。この製品は、水素ガス及び一酸化炭素ガスの混合物を含むフィードを炭化水素に変換するための方法(本発明の第一の態様がこれに関する)から得られることから、第一の態様に関して上記で述べた方法のいずれの特徴も、個別に又はいずれかの組み合わせで、この第六の態様に適用可能である。
【実施例
【0043】
例1~6
二酸化チタン上に担持された酸化コバルトを、二酸化チタン粉末を硝酸コバルト六水和物の水溶液で含浸し、続いて形成されたペーストを押出し、次に乾燥及び焼成して触媒の質量に対して10%のコバルト充填量及び触媒の質量に対して1%のマンガン充填量を有する触媒押出し物を得ることによって触媒として製造した。0.25gの触媒をTPRユニットの石英U字管反応器に充填し、100%の水素ガス下(3800時間-1のGHSVで)、以下の表1の温度で15時間にわたる還元に掛けた。上記で述べたように、還元の度合いは、TPRを用いることにより、水素消費パーセントを得るために、サンプルのTCDグラフの積分面積を、還元工程なしでTPRに掛けた標準に対して比較し、上記で詳細に述べた式5を用いてCoとして存在するCoのパーセントとして還元の度合いを算出することによって特定した。
【0044】
【表1】
【0045】
例7~10
触媒サンプルは、10質量%のコバルト充填量、1質量%のマンガン充填量である二酸化チタン担持体上の酸化コバルトであった。9.6gの触媒サンプルを、マルチチャネル触媒スクリーニング用マイクロ反応器(multi-channel catalyst-screening microreactor)の金属ライナー(metal liner)に充填した。マイクロ反応器の各チャネルは、並行して同じ乾燥手順を受け、その後、以下のプロトコルに従い、3800時間-1のGHSV及び1気圧の圧力での100%Hガス下で触媒を活性化した:
例7(比較例):室温から150℃まで2℃/分の速度で昇温、次に200℃まで1℃/分の速度で昇温、その後200℃で15時間滞留。
例8(発明例):室温から150℃まで2℃/分の速度で昇温、次に240℃まで1℃/分の速度で昇温、その後240℃で15時間滞留。
例9(比較例):室温から150℃まで2℃/分の速度で昇温、次に260℃まで1℃/分の速度で昇温、その後260℃で15時間滞留。
例10(比較例):室温から150℃まで2℃/分の速度で昇温、次に300℃まで1℃/分の速度で昇温、その後300℃で15時間滞留。
【0046】
次に、ライナーを冷却し、窒素でパージし、ゲージ圧30バールの全圧及び1250時間-1のGHSVでの18%N中1.8:1 H:COモル比のシンガス流下、温度を同一に昇温した。各例を、同一の操作条件下で同じレベルの変換を得るために、201~214℃の温度で操作し、表2に示す結果を得た。発明例のデータは、より低い還元の度合いに繋がるより穏和な還元条件にも関わらず、比較例9及び10と比較して、C5+及びCHに対する許容される選択性を、同じCO変換率に到達するための類似の温度と共に示している。例8はまた、例7と比較しても、C5+及びCHに対する向上された選択性を、同じCO変換率に到達するためのより低い温度と共に示している。
【0047】
【表2】
【0048】
例11~13
触媒サンプルは、10質量%のコバルト充填量、2質量%のマンガン充填量である二酸化チタン担持体上の酸化コバルトであった。各触媒サンプル(質量は表3に示す)を、マルチチャネル触媒スクリーニング用マイクロ反応器の金属ライナーに充填した。マイクロ反応器の各チャネルは、並行して同じ乾燥手順を受け、その後、以下のプロトコルに従い、3800時間-1のGHSV及び1気圧の圧力での100%Hガス下で触媒を活性化した:
室温から150℃まで2℃/分の速度で昇温、次に240℃まで(例11)、260℃まで(例12)、又は300℃まで(例13)、1℃/分の速度で昇温、その後、この最終温度で15時間滞留。
次に、ライナーを冷却し、窒素でパージし、ゲージ圧30バールの全圧及び1250時間-1のGHSVでの18%N中1.8:1 H:COモル比のシンガス流下、温度を同一に昇温した。各例を、同一の操作条件下、195℃の温度で操作し、表3に示す結果を得た。例11のデータは、例13と比較して、C5+に対する向上された選択性及びCHに対する類似の選択性を明らかに示しており、これは、より低い還元の度合いに繋がるより穏和な還元条件にも関わらず、及びさらには、用いられた触媒の質量が少ないにも関わらずであり、このことから、活性の向上が示される。
【0049】
【表3】
【0050】
本明細書で開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるとして理解されてはならない。そうではなく、特に断りのない限り、そのような寸法の各々は、列挙された値及びその値の近辺の機能的に同等な範囲の両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0051】
本明細書で引用される文書はすべて、いずれの相互参照若しくは関連する特許又は特許出願を含めて、明白に除外又はそうでなければ限定される場合を除いて、その全内容が参照により本明細書に援用される。いずれの文書の引用も、それが、本明細書で開示若しくは請求されるいずれの発明内容に関連しても、その先行技術であることを承認するものでも、又はそれが、単独で若しくはその他のずれの参考文献とのいずれの組み合わせであっても、いずれのそのような発明内容をも教示、示唆、又は開示することを承認するものでもない。さらに、本文書中の用語のいずれかの意味又は定義が、参照により援用される文書中の同じ用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する限りにおいて、本文書中でその用語に割り当てられた意味又は定義が優先するものとする。
【0052】
本発明の特定の実施形態について説明し、記載してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々なその他の変更及び改変が行われ得ることは明らかであろう。従って、添付の請求項に、本発明の範囲及び趣旨の範囲内であるそのようなすべての変更及び改変が含まれることを意図している。