IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イメリス グラファイト アンド カーボン スイッツァランド リミティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】低粘度の高導電性カーボンブラック
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20220405BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220405BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220405BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220405BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20220405BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220405BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220405BHJP
【FI】
C09C1/48
C08L23/06
C08K3/04
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/525
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2017567600
(86)(22)【出願日】2016-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2016066343
(87)【国際公開番号】W WO2017005921
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2019-06-12
(31)【優先権主張番号】15176181.4
(32)【優先日】2015-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511089686
【氏名又は名称】イメリス グラファイト アンド カーボン スイッツァランド リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル エー.シュパール
(72)【発明者】
【氏名】ジモーネ チュルヒャー
(72)【発明者】
【氏名】マルレーネ ロドレルト-バチリエリ
(72)【発明者】
【氏名】フラビオ モルナギーニ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エム.グリューンベルガー
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052237(JP,A)
【文献】特開2003-292821(JP,A)
【文献】特開平11-060984(JP,A)
【文献】国際公開第2014/137964(WO,A1)
【文献】特開2011-174069(JP,A)
【文献】国際公開第2014/205211(WO,A1)
【文献】特開2008-150270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0256249(US,A1)
【文献】特表2015-527440(JP,A)
【文献】特表2016-512849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/012002(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/140228(WO,A1)
【文献】特開2014-221889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/48
C08L 23/06
C08K 3/04
H01M 4/62
H01M 4/131
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも40%のcOAN/OAN比、
(ii)80~300m2/gのBET SSA
(iii)少なくとも0.30のミクロ細孔の割合、及び
(iv)少なくとも250(ml/100g)のOAN、
を特徴とし、前記ミクロ細孔は2nm未満の直径によって規定され、前記ミクロ細孔の割合はミクロ細孔面積をBET SSAで除した値(ミクロ細孔面積/BET SSA)である、カーボンブラック材料。
【請求項2】
ミクロ細孔面積は20~80m2/gである、請求項1記載のカーボンブラック材料。
【請求項3】
100~250(ml/100g)のcOANを有することをさらに特徴とする、請求項1又は2記載のカーボンブラック材料。
【請求項4】
250~350(ml/100g)のOANをさらに特徴とする、請求項1~3のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項5】
cOAN/OANの比が75%未満である、請求項1~4のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項6】
70~200m2/gの、統計的厚さ法(STSA)に基づく外部表面積をさらに特徴とする、請求項1~5のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項7】
水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、35~70nmの凝集体内気孔の孔サイズ(IF)をさらに特徴とする、請求項1~6のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項8】
1.80~2.00g/cm3のキシレン密度をさらに特徴とする、請求項1~7のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項9】
0.3580~0.3640nmの層間間隔c/2をさらに特徴とする、請求項1~8のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項10】
前記カーボンブラック材料のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s-1にて決定したときに、5000 mPa.s未満の粘度を特徴とする、請求項1~9のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項11】
2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、45~230Ω・cmの粉末電気抵抗率を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項12】
1wt%の前記カーボンブラック材料、3wt%のPVDFバインダを96wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極において2点測定により決定したときに、400~1200Ω・cmの電極抵抗率を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項13】
1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダを97wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極において4点測定によって決定したときに、400~1100Ω・cmの電極抵抗率を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項14】
高密度ポリエチレン(HDPE)中の体積電気抵抗率が、
(i)HDPE複合材料が12.5wt%の前記カーボンブラック材料を含むときに、100~1000Ω・cmであること、及び/又は、
(ii)HDPE複合材料が12.5wt%の前記カーボンブラック材料を含むときに、10~100Ω・cmであること、
を特徴とする請求項1~13のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
【請求項15】
亜化学量論量の空気及び/又はCO2及び/又はスチームと共に高い芳香族性の炭化水素を反応器に供給し、それにより、1000℃~1600℃の温度で、ガス化した炭化水素の分解を引き起こすことによる熱酸化分解を含む、請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料の製造方法。
【請求項16】
前記高い芳香族性の炭化水素は、コールタール油、エチレンタール油、キャットクラッカー油、天然ガス、石油化学蒸留残渣の重質留分又はこれらの材料のいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
別のカーボンブラック、微細グラファイト、剥離グラファイト、ナノグラファイト、サブミクロングラファイト、剥離グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び/又は炭素繊維を場合によりさらに含む、請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料を含む導電性組成物。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を含む、導電性ポリマー複合材料。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物のリチウムイオン電池における使用。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を含む、電気化学セルの電極。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を導電性添加剤として含む、リチウムイオン電池。
【請求項22】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を含む、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項23】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を含む、カーボンブラシ。
【請求項24】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を含むリチウムイオン電池を備えた、電気乗物、ハイブリッド電気乗物又はプラグインハイブリッド電気乗物。
【請求項25】
請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を細孔形成性材料として含む、セラミック、セラミック前駆体材料又はグリーン材料。
【請求項26】
液体及び請求項1~14のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は請求項17記載の導電性組成物を含む、分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、例えば、圧縮吸油値対非圧縮吸油値(cOAN/OAN)の比較的高い比によって示されるように、圧縮状態でのその構造の良好な保持を特徴とする新規カーボンブラック材料に関する。この材料は、とりわけ、分散体中の低粘度及び低い電気抵抗率を示すことを特徴とすることができる。このような材料は、様々な用途、例えばリチウムイオン電池などの電気化学セルの製造において、又は、ポリマー複合材料中で導電性添加剤として有利に使用することができる。本開示はまた、そのような材料の製造方法、ならびに下流用途及び前記カーボンブラック材料を含む製品を記載する。
【背景技術】
【0002】
背景
カーボンブラックは、サイズが小さく、概してアモルファス又はパラクリスタルの炭素粒子が異なるサイズ及び形状の凝集体に成長したもののファミリーの総称である。
【0003】
カーボンブラックは、一般に、様々な供給源からの炭化水素の熱分解によって気相で形成される。熱分解のためのエネルギーは、油又はガスなどの燃料を燃焼させるか、又は、分解プロセスに使用される原料の一部を亜化学量論量の空気で燃焼させることによって得ることができる。熱分解には2つの原理があり、第一は酸素の非存在下での熱分解であり、第二は熱酸化分解(不完全燃焼)である。例えばKuhner G, Voll M (1993) Manufacture of Carbon Black. In: Donnet J-B, Bansal RC and Wang M-J (eds) Carbon Black - Science and Technology, 2nd edn. CRC Taylor & Francis, Boca Raton-London-New York, ch. 1, pp 1-64を参照されたい。
【0004】
カーボンブラックは絶縁性又は半導電性マトリックスに導電性を付与する。通常、マトリックスは、マトリックス中に導電経路が確立される濃度で、非導電状態又は低導電状態から導電状態まで浸透する。導電性カーボンブラックグレードは、従来のカーボンブラックよりも低い臨界濃度で、このいわゆる浸透効果を達成する。これは球状の一次粒子の化学的に結合した枝分かれ状又は鎖状の凝集体への複合配置によって確立された高カーボンブラック構造に関し、この凝集体は静電気力によって、より大きな塊状物に再び塊化する。これらの塊化したカーボンブラック塊状物によって形成される空隙体積はカーボンブラック構造の尺度であり、いわゆる吸油値(OAN)を特徴とすることができる。カーボンブラック材料の圧縮状態におけるカーボンブラック構造は、圧縮吸油値(cOAN)と呼ばれるパラメータを特徴とする。圧縮状態でのカーボンブラック構造の保持はカーボンブラック構造の剪断エネルギーに対する安定性を示す。ポリマーマトリックス中の浸透しきい値を克服するためのカーボンブラック濃度は、通常、cOANに(逆)相関し、すなわちcOANが増加するにつれて低くなる。
【0005】
導電性カーボンブラックグレードは、種々の用途、例えばリチウムイオン電池などの電気化学セルの電極における導電性添加剤として使用される。導電性カーボンブラックグレードは電気化学セル容量を提供する電気化学的プロセスに寄与しないので、そのような導電性添加剤の濃度は、典型的には最小化されるように求められる。しかしながら、低濃度で存在する場合でさえも十分に高い導電性(すなわち、低抵抗率)を提供するカーボンブラックグレードは、しばしば高い表面積を示し、そのことは電気化学的挙動及びその処理及び取り扱い特性の点で不利である。カーボンブラック導電性添加剤の外部表面積が増大すると、電解質によって濡らされる電極表面積は拡大され、これは通常、寄生副反応に関連する電荷損失を増加させる。電極製造プロセスでは、典型的には、電極材料の水系又は溶媒系分散体を調製し、金属箔集電体上に電極をコーティングするために使用する。しかしながら、高い表面積のために、導電性又は極導電性であるカーボンブラックは、通常、液体媒体中に分散することが困難であり、おそらくはカーボンブラック表面での溶媒の吸着のために望ましくない高粘度を生じさせる。
【0006】
また、熱可塑性ポリマーの配合プロセスにおいて、低表面積の導電性カーボンブラックグレードは、ポリマーマトリックスへの分散において利点を示す。例えば、コンパウンドの粘度を高表面積カーボンブラックと同じレベルまで増加させない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記に議論した状況に関して、本発明の目的は、特にリチウムイオン電池の電極などの様々な用途において導電性添加剤として使用される場合に、改善された全体的な特性を示す新規カーボンブラック材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
驚くべきことに、例えば、高BET SSAカーボンブラックよりも高い抵抗率を有する低BET比表面積(BET SSA)カーボンブラックと比較して、比較的低い電気抵抗率を示し、同時に、前記カーボンブラック材料を含有する分散体の粘度を増加させることのない、カーボンブラック材料を調製することが可能であることを今回発見した。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本開示に記載のカーボンブラック材料は、別のやり方では相互に排他的である特性(例えば、(低い)粘度及び低い電気抵抗率を達成する)を組み合わせると考えられる。好ましい特性の組み合わせは、とりわけ、比較的高いcOAN/OAN及び無視できない割合のミクロ細孔(2nm未満の直径によって規定される)を含むカーボンブラック粒子の形態によって説明することができる。
【0009】
したがって、第一の態様において、本開示は少なくとも約40%又は少なくとも約45%のcOAN/OANの比を特徴とすることができるカーボンブラック材料に関する。
【0010】
さらに、材料は、約80~約400m2/g又は約80~約300m2/g又は約100~約250m2/gのBET SSAをさらに特徴とすることができる。代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は、検出可能な含量のミクロ細孔を有し、好ましくは、ミクロ細孔面積は5~250m2/gであることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、カーボンブラック材料は、代わりに又は加えて、
(i)2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、粉末電気抵抗率が約45~約200Ω.cm又は約50~約190Ω.cm又は約60~約170Ω.cmであること、又は、
(ii)1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダを97wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極で決定したときに、電極抵抗率が約40~約180Ω.cm又は約45~約170Ω.cm又は約50~約160Ω.cmであること、
を特徴とし、
(iii)N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s-1にて決定した粘度が約5000mPa.s未満又は4000mPa.s未満又は3000mPa.s未満であることをさらに特徴とする。
【0012】
本発明の別の態様は、亜化学量論量の空気及び/又はスチームと共に、コールタール油、スチーム及びキャットクラッカー油、天然ガス、石油化学蒸留残渣の重質留分又はこれらの材料のいずれかの混合物などの(好ましくは液体又は気体)炭化水素を反応器に供給し、それにより、約1000℃~約1600℃、例えば1400~1500℃又は1450~1550℃の温度で、ガス化した炭化水素の分解を引き起こすこと、そしてO2、CO2、H2Oなどの酸化性種又はそれらの混合物の存在下にカーボンブラック材料を形成することによる熱酸化分解を含む、本開示に記載のカーボンブラック材料の製造方法に関する。
【0013】
本開示に記載の方法によって得ることができるカーボンブラック材料は本開示の別の態様を表す。
【0014】
本開示のさらに別の態様は、本開示において記載されそして規定されるカーボンブラック材料を含む導電性組成物を含む。これらの導電性組成物は、場合により、他のカーボンブラック、微細グラファイト、剥離グラファイト、ナノグラファイト、サブミクロングラファイト、剥離グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び/又は炭素繊維をさらに含むことができる。
【0015】
本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含む導電性ポリマー複合材料は本開示のさらなる態様を表す。
【0016】
本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物のリチウムイオン電池における使用は本開示のさらなる態様である。
【0017】
最後に、電気化学セルの電極、リチウムイオン電池、エネルギー貯蔵デバイス、カーボンブラシ、リチウムイオン電池を備えた電気乗物、ハイブリッド電気乗物又はプラグインハイブリッド電気乗物、セラミック、セラミック前駆体材料、グリーン材料、又は、液体分散体であって、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含むものは本開示のさらなる態様を表す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、カーボンブラックCB3(パネルA)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像、及び、従来技術の市販のカーボンブラック材料C-NERGY(商標)SUPER C65(パネルB)及びEnsaco(登録商標)350P(パネルC)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図2図2は、N-メチル-2-ピロリドン中の分散体(5wt%CB、95%NMP)で2500rpmで25分間撹拌した後の、種々のカーボンブラック材料(CB1~CB5)ならびに比較材料C-NERGY(商標) SUPER C45及びC65ならびにEnsaco(登録商標)350Pのレオロジー挙動(粘度対せん断速度)を示す。
図3図3は、10~15wt%のカーボンブラックの濃度範囲での高密度ポリエチレン(HDPE)中の種々のカーボンブラックの浸透曲線(体積抵抗率)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本開示に記載の新規で有利なカーボンブラック材料は、カーボンブラック材料を製造するための熱酸化分解プロセスで形成される酸化性種を変化させることによって発見された。一般に、本開示のカーボンブラック材料は、例えばリチウムイオン電池における導電性添加剤として、又は、導電性ポリマーにおけるフィラーとして典型的に使用される市販の低表面積導電性カーボンブラック材料よりも良好な全体的特性を示す。特に、本開示に記載のカーボンブラック材料は、粉末として、そして、例えば電極中の添加剤として存在するときに、同時に、比較的低い外部表面積を示しながら、優れた(すなわち、比較的低い)電気抵抗率を示す。これらの特性は粘度の点で有利な特性をもたらし、すなわち、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの中の本開示に記載のカーボンブラック材料を含むスラリーの粘度は優れた抵抗挙動にもかかわらず十分に低いままである。
【0020】
従来技術では、高BET比表面積(BET SSA)を有するカーボンブラックを選択することによって、低い(電気)抵抗率が典型的に達成されている。しかしながら、カーボンブラック材料の高いBET SSAは、典型的には、適切な液体(NMP又は水など)中に前記カーボンブラック材料を含む分散体の粘度の顕著な増加を導くことが観察されており、それは処理中の関連性のある欠点である。
【0021】
高表面積のカーボンブラックに関係するこれらのプロセス関連の欠点は、低BET SSA材料の低粘度を共有しながら高BET SSAカーボンブラックの良好な導電性を共有すると思われる本開示に記載のカーボンブラック材料の提供によって克服された。しかしながら、それは全体的により高い電気抵抗率を有する。
【0022】
より具体的には、一般にBET SSAが(許容される粘度を有する他の低BET SSA材料に対して)増加しているが、材料の外部表面積(その周囲、例えば、リチウムイオン電池内の電解質に接触する表面)をあまり多く拡大しないカーボンブラック材料を製造することができた。言い換えれば、本開示に記載のカーボンブラック材料は、典型的には、BET SSAの増加を示すが、前記BET SSAの増加は、主として材料のミクロ気孔率の増加によって達成され、幾何学的表面積の増加(例えば、一次粒子サイズを減少させることによって)及びメソ細孔を増加によって達成されるものでない。
【0023】
ミクロ細孔は、通常、液体によって湿らされないほど小さい(すなわち、<2.0nm)。したがって、このようなミクロ細孔を有することを特徴とするカーボンブラック材料は、比較的に小さな濡れ性電極表面積を示すだけでなく、液体又は熱可塑性分散体中に存在する場合に高BET SSAカーボンブラック材料で典型的に観察される粘度増加を制限する。換言すれば、ミクロ細孔は、一般に、本開示に記載のカーボンブラック材料の全表面積の有意な割合を表すようである。
【0024】
本開示に記載のカーボンブラック材料中のミクロ細孔の存在はまた、キシレンがミクロ細孔に入ることができないので、低BET SSAカーボンブラック材料と比較して、概して観察される、より低いキシレン密度によって支持される。この効果により、キシレン密度は材料の真密度をむしろ過小評価する。本開示のカーボンブラック材料はまた、一般に、低BET SSAを有する従来の導電性カーボンブラックグレードよりも高い圧縮吸油値(cOAN)を示し、それによって低カーボンブラック濃度(例えば、1wt%)でより低い電極抵抗をもたらす。
【0025】
導電性カーボンブラック材料
したがって、第一の態様では、本開示は、少なくとも約40%のcOAN/OANの比、すなわち、圧縮状態での吸油値は、対応する(未圧縮)吸油値の少なくとも0.4倍であることを特徴とすることができるカーボンブラック材料に関する。いくつかの実施形態において、cOAN/OAN比は、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%又は少なくとも約60%である。特定の実施形態では、cOAN/OAN比は、少なくとも40%を超えることができるが、75%未満又は70%未満又は65%未満であることができる。上述したように、より高いcOAN、したがってより高いcOAN/OAN比は、圧縮後にその構造的一体性を大きな程度で保持するカーボンブラック材料を示す。
【0026】
カーボンブラック材料は、約80~約400m2/gのBET SSAをさらに特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、BET SSAは80~約300m2/g又は100~約250m2/gであろう。
【0027】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料はミクロ細孔を有することを特徴とすることができ、すなわち、カーボンブラックは検出可能な、好ましくは、かなりの量のミクロ細孔を含む。特定の実施形態では、カーボンブラック材料は、約5~約250m2/g又は10~150m2/g又は10~100m2/g又は20~80m2/gのミクロ細孔を特徴とすることができる。
【0028】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は約100~約250(ml/100g)のcOANをさらに特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、cOANは約120~約200(ml/100g)又は約120~約180(ml/100g)である。
【0029】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は、約150~約350(ml/100g)のOANをさらに特徴とすることができる。特定の実施形態において、OANは、約150~約330(ml/100g)又は約150~約300(ml/100g)又は約200~約300(ml/100g)又は約250~約300(ml/100g)の範囲にあることができる。
【0030】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料のミクロ細孔の割合は、少なくとも約0.10又は少なくとも0.15又は少なくとも0.20又は少なくとも0.25又は少なくとも0.30である。いずれの粒状材料も必然的に表面(及びそれゆえメソ細孔)を有するので、ミクロ細孔の割合は常に1.0未満でなければならないことが理解されるであろう。したがって、実際には、0.7又はさらには0.5の値を超えるミクロ細孔の割合はめったに達成できない。
【0031】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は、約70~約300m2/gの、統計的厚さ法(STSA)に基づく外部表面積を特徴とすることができる。特定の実施形態において、STSAは、約80~約200m2/g又は約90~約180m2/g又は約90~約150m2/gである。
【0032】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は、方法のセクションでより詳細に記載されているとおりの水銀圧入ポロシメトリーによって決定して、約35~約70nmの凝集体内気孔の孔サイズ(「IF」)を特徴とすることができる。特定の実施形態では、材料は、約40~約65nm又は約48~約62nm又は約50~約60nmの凝集体内気孔の孔サイズ(「IF」)を特徴とする。
【0033】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は、約1.8000~2.0000g/cm3又は約1.8100~1.9500g/cm3又は約1.8200~1.8800g/cm3のキシレン密度を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、キシレン密度は、約1.8100~約1.8700g/cm3又は約1.8200~約1.8600g/cm3の範囲である。いずれの理論に拘束されることも望まないが、本開示に記載のいくつかのカーボンブラック材料の比較的低い見かけのキシレン密度は、キシレンがカーボンブラック粒子中のミクロ細孔に「アクセスできない」という事実に起因すると考えられる。
【0034】
代わりに又は加えて、カーボンブラック材料は、約0.3580~約0.3640nmの層間間隔c/2を特徴とすることができる。特定の実施形態では、層間間隔c/2は、約0.3590~約0.3630nm又は約0.3600~約0.36200nm又は約0.3600~約0.3615nmである。
【0035】
本発明によるカーボンブラック材料は、以下のいずれか1つの機能的特性をさらに特徴とする。
(i)2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、約45~約200Ω・cmの粉末電気抵抗率を有すること。いくつかの実施形態では、抵抗率は約50~約190Ω・cm又は約60~約180Ω・cm又は約60~約170Ω・cm又は約65~約160Ω・cmであることができる、及び/又は、
(ii)1wt%の前記カーボンブラック材料、3wt%のPVDFバインダ及び96wt%のNMCを含むフィルムを含む電極において決定(2点測定による)したときに、約400~約1200Ω・cm又は約500~約1000Ω・cmの電極抵抗率を有すること、及び/又は、
(ii)1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダ及び97wt%のNMCを含むフィルムを含む電極において決定(4点測定による)したときに、約30~約210Ω・cm又は約40~約180Ω・cmの電極抵抗率を有すること。いくつかの実施形態では、電極抵抗率は約45~約170Ω・cm又は約50~約160Ω・cmであることができる、及び/又は、
(iii)高密度ポリエチレン(HDPE)中の体積電気抵抗率が、12.5wt%で存在するときに、約100~約1000Ω・cm又は約120~約600Ω・cmであること、及び/又は、15wt%で存在するときに、約10~約100Ω・cm又は約20~約80Ω・cmであること、及び/又は、
(iv)95wt%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s-1にて決定した粘度が、約5000 mPa.s未満であること。特定の実施形態では、このような系での粘度は4000 mPa.s未満、3000mPa.s未満、2500 Pa.s未満、2300 Pa.s未満、2100 Pa.s未満又はさらには2000 mPa.s未満である。
【0036】
上記のパラメータを決定するための適切な方法は、当該技術分野で一般的に知られており、適宜、下記の方法のセクションでより詳細に記載されている。
【0037】
本開示のこの態様の1つの実施形態において、カーボンブラック材料は、上記の任意の2つのパラメータを特徴とする。他の実施形態では、カーボンブラック材料は、上記の任意の3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10又は11又は12のパラメータを特徴とする。カーボンブラック材料は、原則的に、上に列挙した全てのパラメータを特徴とすることもできる。
【0038】
本開示のこの態様のさらに別の実施形態において、カーボンブラック材料は、パラメータ(i)[粉末抵抗率]又は(ii)[電極抵抗率]をパラメータ(iii)[分散体中の粘度]と共に特徴とする。
【0039】
あるいは、カーボンブラック材料は、パラメータ[分散体中の粘度]及び[cOAN/OANの比]で、場合によりパラメータ[ミクロ細孔面積]及び/又は[ミクロ細孔の割合]とともに規定することができる。本開示で意図されるパラメータのさらなる可能な組み合わせは、添付の番号を付した実施形態及び特許請求の範囲に見出すことができる。いずれにしても、上記のパラメータの任意の可能な組み合わせを用いて、本開示のカーボンブラック材料を規定することができることが理解されるであろう。
【0040】
本開示に記載のカーボンブラック材料の調製方法
本開示はまた、本開示に記載の新規カーボンブラック材料の調製方法に関する。
【0041】
したがって、本開示のこの態様の1つの実施形態において、本開示に記載のカーボンブラック材料の調製方法は、亜化学量論量の空気及び/又はスチームとともに、コールタール油、エチレンタール、キャットクラッカー油、天然ガス、石油化学蒸留残渣の重質留分又はこれらの材料のいずれかの混合物などの、高度に芳香族性を有する炭化水素(好ましくは液体又は気体)を反応器に供給し、それにより、ガス化炭化水素を約1000℃~約1600℃、例えば1400~1500℃又は1450~1550℃の温度で分解させること、及び、O2、CO2、H2O又はそれらの混合物などの酸化性種の存在下にカーボンブラック材料を形成させることによる熱酸化分解を含む。
【0042】
反応器中の反応時間は、典型的には1秒未満から数秒未満であるが、正確な条件は、カーボンブラック材料の生成に用いられる炭素源及び反応器に依存することが理解されるであろう。
【0043】
本開示に記載の方法により調製されるカーボンブラック材料
本発明の別の態様は、本開示に記載の方法によって得ることができるカーボンブラック材料に関する。好ましくは、カーボンブラック材料は、上記の又は添付の特許請求の範囲に記載のカーボンブラック材料を規定するための製品パラメータのいずれか1つをさらに特徴とすることができる。
【0044】
本開示に記載のカーボンブラック材料を含む導電性組成物
本開示に記載のカーボンブラック材料を含む導電性組成物は本開示の別の態様を表す。いくつかの実施形態では、導電性組成物は、他のカーボンブラック材料、微細グラファイト、剥離グラファイト、ナノグラファイト、サブミクロングラファイト、剥離グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維又はそれらの混合物をさらに含むことができる。
【0045】
本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物の使用
本開示に記載のカーボンブラック材料は、優れた電気化学的、機械的及びレオロジー的特性を示すので、本開示のさらに別の態様は、様々な下流用途、例えばリチウムイオン電池又は燃料電池などの電気化学セルにおける添加剤として、又は、導電性ポリマー、導電性コーティング、カーボンブラシ、硬質金属(WC製造)及びUV安定剤における添加剤としての前記カーボンブラック材料の使用に関する。
【0046】
本開示に記載のカーボンブラック材料を用いる下流製品
結果的に、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含むリチウムイオン電池又は燃料電池などの電気化学セルの電極は本発明の別の態様を表す。本発明はまた、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含むリチウムイオン電池に関する。
【0047】
別の態様において、本開示は、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含む導電性ポリマー複合材料に関する。いくつかの実施形態では、ポリマー複合材料中のカーボンブラック材料の質量比は、全組成物の5~95質量%又は10~85質量%又は20~50質量%である。
【0048】
さらに別の態様では、本発明は、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含むエネルギー貯蔵デバイスに関する。
【0049】
本発明のさらなる態様は、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含むカーボンブラシに関する。
【0050】
本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含むリチウムイオン電池を含む電気乗物、ハイブリッド電気乗物又はプラグインハイブリッド電気乗物は本開示の別の態様を表す。
【0051】
さらに、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を細孔形成材料として含む、セラミック、セラミック前駆体材料又はグリーン材料は本開示の別の態様である。
【0052】
最後に、本開示のさらに別の態様は、液体、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、水又は水性溶媒混合物、及び、本開示に記載のカーボンブラック材料又は導電性組成物を含む分散体に関する。そのような分散体は、それらの好ましい(すなわち、比較的低い)スラリー粘度をさらに特徴とすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%のカーボンブラック材料を含む分散体の粘度(2500RPM及び剪断速度13*1/sで25分間の攪拌後)は、典型的には約5000mPa/s未満又は4000mPa/s未満又は3000mPa/s未満又はさらには2500mPa/s未満である。
【0053】
分散体は、場合により、他のカーボンブラック材料、微細グラファイト、剥離グラファイト、ナノグラファイト、サブミクロングラファイト、剥離グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維又はそれらの混合物をさらに含んでよい。そのような実施形態では、本開示に記載のカーボンブラック材料は、炭素質粒子の総量の10~99wt%又は炭素質粒子の総量の20~90%又は炭素質粒子の総量の30~85wt%の範囲で存在する。
【0054】
本開示に記載のカーボンブラック製品を規定するために使用される様々な特性及びパラメータを決定するための適切な方法を下記により詳細に説明する。
【0055】
測定方法
本開示で特定される百分率(%)値は、他に特定されない限り質量基準である。
【0056】
吸油値
パラフィンオイルを、吸収計のミキサーチャンバ内の乾燥した(125℃で1時間)カーボンブラックサンプルに定速ビュレットを用いて添加する。サンプルが油を吸収するときに、混合物は自由流動状態から半可塑性塊化物の1つに変化し、それに伴って粘度が増加する。この増加した粘度は、トルク感知システムに伝達される。粘度が所定のトルクレベルに達するときに、吸収計及びビュレットは同時に遮断される。添加した油の量をビュレットから読み取る。カーボンブラックの単位質量あたりのオイルの体積は吸油値である。
【0057】
本開示に記載のカーボンブラック材料について、以下のパラメータ:パラフィンオイル、10gのカーボンブラック及び400mN.mにおけるトルクリミットスイッチを用いてASTM D2414-14、手順Aに従ってOAN値を測定した。
参考:ASTM D2414-14
【0058】
圧縮吸油値
カーボンブラックのサンプルを圧縮し、吸収計で試験して、ASTM D2414-01の方法に従って吸油値を決定する。初期OAN値と圧縮されたサンプルのOAN値との差は、そのサンプルの構造の安定性を反映する。
【0059】
本開示に記載のカーボンブラック材料について、ASTM D3493-14に従って、下記のパラメータ:パラフィン油、165MPaの圧力で4回圧縮によりcOAN値を測定した。
参考:ASTM D3493-14
【0060】
吸収剛性体積(AS試験)
この試験は、5グラムのカーボンブラックによって吸収されうる液体(水中の10%のアセトン)の量を決定する。カーボンブラックを500ml三角フラスコに入れる。回転運動で激しく振とうしながら、最終的に1つのボールが形成されるまで少量の液体をカーボンに添加する。最初は、このボールは脆く、振とうしたときに破壊するが、最後には、ボールは崩壊することなくかなり激しい振とうに抵抗する。この時間中に添加された液体の量を計量し、試験をml/5gで表す。
参考:内部メソッド
比BET表面積、STSA(統計的厚さ表面積、又は外部表面積)、ミクロ細孔面積及びミクロ細孔の割合
測定は、Micromeritics ASAP2020 Physisorption Analyzerで行った。この方法は、77Kでp/p0 = 0.01~0.30の範囲の液体窒素の吸着等温線の表示に基づく。Brunauer, Emmet and Teller(Adsorption of Gases in Multimolecular Layers, J. Am Chem. Soc., 1938,60,309-319)により提案された手順に従って、単層容量を決定することができる。窒素分子の断面積、サンプルの単層容量及び重量に基づいて、サンプルの比表面積、t-プロットのミクロ細孔面積及びミクロ細孔の割合を計算した。
T-プロットミクロ細孔面積= BET SSA-STSA
ミクロ細孔の割合= t-プロットミクロ細孔面積/ BET SSA
参考:ASTM D6556-14
【0061】
キシレン密度
この分析は、DIN 51 901に規定されている液体排除の原理に基づく。約2.5g(精度0.1mg)の粉末を25ml比重計で秤量する。キシレンを真空下(15Torr)で添加する。標準圧力下での数時間の滞留時間後に、比重計を状態調整し、計量する。密度は、サンプルの質量と体積の比を表す。質量はサンプルの重量により与えられ、体積はサンプル粉末あり及びなしでのキシレン充填比重計の重量の差から計算される。
参考:DIN 51 901
【0062】
X線回折
PANalytical X'Celerator検出器と結合したPANalytical X'Pert PRO回折計を使用してXRDデータを収集した。回折計は下記の表に示す特性を有する。
【表1】
【0063】
PANalytical X'Pert HighScore Plusソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0064】
層間間隔c/2
層間間隔c/2はX線回折法により測定される。[002]反射プロファイルのピーク最大値の角度位置は決定され、ブラッグ式を適用することによって、層間間隔を計算する(Klug and Alexander, X-ray diffraction Procedures, John Wiley&Sons Inc., New York, London(1967))。測定手順は、焼成石油コークスに使用されるASTM D5187-10に由来する後述の結晶子サイズLcの決定と同じである。
【0065】
結晶子サイズLc
結晶子サイズは、[002]回折プロファイルの分析及び最大半量でのピークプロファイルの幅の決定によって決定される。ピークの広がりはScherrer (P. Scherrer, Gottinger Nachrichten 2, 98 (1918))によって提案されるとおりに結晶子サイズによって影響されるはずである。本発明では、焼成石油コークスのASTM D5187-10に記載の方法を、本開示に記載のカーボンブラック材料に適合させた。
【0066】
凝集体内気孔の孔サイズ(IF)
凝集体内気孔の孔サイズIFは水銀圧入法により測定した。炭素材料(0.02~0.3g)をデバイスの高圧チャンバ(Micromeritics Autopore III)に入れ、60,000psia(4137bar)までの水銀圧で分析を行った。細孔サイズ分布は、水銀の接触角130°、表面張力485*10-3N/m及び水銀密度13.5335g/mlのWashburn式を適用することによって得られる。IFは対数差分圧入プロットのピーク位置として定義される。
参考:ISO 15901-1:2005(E)
【0067】
粘度
ディソルバーディスク(ディスク直径:4.5cm、容器直径:6.5cm)、メカニカルスターラを25分間2500rpmで使用して、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に5wt%のカーボンブラック材料を含むスラリー(例えば、2.5gのCBを47.5gのNMPに溶解させたもの)を調製した。剪断速度13s-1でコーン/プレート測定システム(コーン直径5cm、コーン角2°)を備えたMolecular Compact Rheometer MCR302(Physica, Germany)を用いて分散体のレオロジーを測定し、mPa.sで表した。測定温度は20℃であった。
参考:DIN 3219
【0068】
4.5kN/cm2での粉末抵抗率(98wt%のNMC中の2wt%のCB)
0.2gのカーボンブラック及び9.8gの市販のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)粉末を、高剪断エネルギー実験室ミキサーを用いてアセトン中に分散させ、粉末成分の十分な均質化を確保にした。サンプルを80℃で一晩乾燥することによりアセトンを除去した。黄銅製の2本の帯電したピストン(直径:1.13cm)の間に、絶縁ダイ(内径11.3mmのガラス繊維強化ポリマー製のリングであり、追加の機械的支持のためにスチール製の大きなリングに挿入されている)の内部で2gの各々の乾燥粉末混合物を圧縮した。加えられた力は、実験中に制御され、一方、ダイ内のピストンの相対位置(すなわち、粉末サンプルの高さ)は、長さゲージを用いて測定された。既知の一定電流でのサンプル間の電圧降下を、ピストンを電極として用いて4.5kN/cm2の圧力で現場測定した(2点抵抗測定)。サンプル抵抗は、ピストンとサンプルとの間の接触抵抗が無視できると仮定して、オームの法則を用いて計算した(計算された抵抗はサンプル全体に帰因していた)。モールドの公称内径(1.13cm)及び測定されたサンプル高さを用いてサンプル抵抗率を計算し、Ω・cmで表した。実験の間、ポリマーリングは、サンプルの横方向の拡張(側方方向の歪み)の結果として弾性的に変形した。ポリマーリングの弾性変形は、4.5kN cm-2以下の圧力ではほとんど無視でき、比較のために無視することができる。
参考:
Probst, Carbon 40 (2002) 201-205
Grivei, KGK Kautschuk Gummi Kunststoffe 56. Jahrgang, Nr. 9/2003
Spahr, Journal of Power Sources 196 (2011) 3404-3413
【0069】
電極抵抗率2点(1wt%のCB、3wt%のPVDFバインダ、96wt%のNMC)
ニーダーを用いて、カーボンブラック2g、市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)6g及び市販のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)粉末192gをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に20rpmで約3時間分散させた。PVDFバインダを予めNMPに溶解し(12wt%)、その後、乾燥粉末に添加した。効果的な混練のためにペーストの粘度を調整するためにNMPを添加し、次いで、再び添加してペーストをスラリーに希釈した。このスラリーを、均質化器を用いて2000rpmで30分間混合した。このスラリーをアルミ箔(厚さ20μm)上にドクターブレードによりコーティングした(湿潤厚さ約200μm)。コーティングされた箔を真空中で120℃にて一晩乾燥させた。2つの金属平表面を用いて、サンプル(直径12mm)に課された30MPaの圧力下で2点設定を用いてコーティングのスルー面(through-plane)抵抗を測定した。サンプル寸法及びサンプル厚さ(適用圧力の解放後に測定される)を使用してスルー面抵抗率を計算した。
【0070】
電極抵抗率4点(1wt%のCB、2wt%のPVDFバインダ、97%のNMC)
カーボンブラック1g、市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)2g及び市販のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)粉末97gを、ディソルバーディスク(ディスク直径:4.5cm、容器直径:6.5cm)を用いてN-メチル-2-ピロリドン(NMP))に2500rpmで20分間分散させた。PVDFバインダを、予めNMPに溶解し(12wt%)、次いで、スラリーに添加した。スラリーをマイラー(PET)箔上にドクターブレードでコーティングした(湿潤厚さ:200μm)。コーティングされた箔を真空中にて120℃で一晩乾燥させた。コーティングの面内抵抗は4点設定を用いて測定した。面内抵抗率は、サンプル寸法(2×2cm)及び測定されたサンプル厚さを用いて計算した。
【0071】
HDPEにおける体積抵抗(電気)
ローラーミキサを用いて所定量のカーボンブラックとポリマー溶融物(160℃)を混合することにより、高密度ポリエチレン(HDPE Finathene 47100)コンパウンドを調製した。200kNの力を2分間加えて、コンパウンドを180℃で圧縮成形することにより、コンパウンドプレート(10×10cm)を製造した。成形後に、200kNの力をなおも加えながら、ステンレススチールモールドを水冷することにより、コンパウンドプレートを室温に冷却した。ダイを使用して4点設定を使用して面内抵抗を測定するために、2cm幅のサンプルをコンパウンドプレートから切り出した。50kg(490.5N)に相当する力を加えながら、サンプルを2枚の断熱板の間の銅製のくさび形電極(くさびの先端間の距離:2cm)にプレスし、サンプルと電極との十分な接触を確保した。サンプルの端部(最小長さ:4cm)を、内部抵抗が高い4点オームメーターの他の2本のリード線に接続した。サンプル寸法(2×2cm)及び測定サンプル厚さ(0.5~3mm)を使用して面内抵抗率を計算した。
【0072】
一般的な用語で本発明の様々な態様を説明したが、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及びわずかな変更が可能であることは当業者には明らかであろう。本発明は、下記の番号のついた非限定的な実施形態を参照することによってさらに記載される。
1.下記から選択されるいずれか2つのパラメータを特徴とするカーボンブラック材料。
(i)2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、約45~約200Ω・cm又は約50~約190Ω・cm又は約60~約170Ω・cmの粉末電気抵抗率、
(ii)1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダを97wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極において決定したときに、約40~約180Ω・cm又は約45~約170Ω・cm又は約50~約160Ω・cmの電極抵抗率、
(iii)N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s-1にて決定して、約5000 mPa.s未満又は4000 mPa.s未満又は3000mPa.s未満の粘度
(iv)少なくとも約40%又は少なくとも約45%のcOAN/OAN比、
(v)ミクロ細孔を有し、好ましくは、ミクロ細孔面積は5~250m2/gである、
(vi)前記カーボンブラック材料のミクロ細孔の割合は少なくとも約0.10又は少なくとも約0.15又は少なくとも約0.2である、
(vii)約150~約350又は約150~約300又は約200~約300(ml/100g)のOAN、
(viii)約100~約250又は約120~約200又は約120~約180(ml/100g)のcOAN、
(ix)約80~約400m2/g又は約80~約300m2/g又は100~約250m2/gのBET SSA、
(x)約70~約300m2/g又は約80~約200m2/g又は約90~約150m2/gの、統計的厚さ法(STSA)に基づく外部表面積、
(xi)水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、約35~約70nm又は40~65nm又は50~60nmの凝集体内気孔の孔サイズ(IF)、
(xii)約1.8100~1.8700g/cm3又は約1.8200~1.8600g/cm3のキシレン密度、
(xiii)約0.3580~約0.3640nm又は約0.3590~約0.3630nm又は約0.3600~約0.3620nmの層間間隔c/2。
2.
実施形態1記載の任意の3、4、5、6又は7つのパラメータを特徴とする、実施形態1記載のカーボンブラック材料。
3.
(i)2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、粉末電気抵抗率が約45~約200Ω.cm又は約50~約190Ω.cm又は約60~約170Ω.cmであること、又は、
(ii)1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダを97wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極で決定したときに、電極抵抗率が約40~約180Ω.cm又は約45~約170Ω.cm又は約50~約160Ω.cmであること、
を特徴とし、
(iii)N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s-1にて測定した粘度が約5000mPa.s未満又は4000mPa.s未満又は3000mPa.s未満であることをさらに特徴とする、カーボンブラック材料。
4.
(i)少なくとも約40%又は少なくとも約45%のcOAN/OANの比、及び、
(ii)N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s-1にて決定して、約5000mPa.s未満又は4000mPa.s未満又は3000mPa.s未満の粘度、
を有することを特徴とする、カーボンブラック材料。
5.
cOAN/OANの比が75%未満又は70%未満又は65%未満である、実施形態4記載のカーボンブラック材料。
6.
ミクロ細孔を有し、好ましくは、前記ミクロ細孔面積は5~250m2/gであることを特徴とする、実施形態3~5のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
7.
前記材料のミクロ細孔の割合は少なくとも約0.10又は少なくとも約0.15又は少なくとも約0.2である、実施形態3~6のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
8.
(i)約150~約350又は約150~約300又は約200~約300(ml/100g)のOAN、及び/又は、
(ii)約100~約250又は約120~約200又は約120~約180(ml/100g)のcOAN
をさらに特徴とする、実施形態3~7のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
9.
(i)約80~約400m2/g又は約80~約300m2/g又は約100~約250m2/gのBET SSA、及び/又は、
(ii)約70~約300m2/g又は約80~約200m2/g又は約90~約150m2/gの、統計的厚さ法(STSA)に基づく外部表面積を有することをさらに特徴とする、実施形態3~8のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
10.
水銀圧入ポロシメトリーによって決定して、凝集体内気孔の孔サイズ(IF)が約35~約70nm又は40~65nm又は50~60nmであることをさらに特徴とする、実施形態3~9のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
11.
約1.8100~約1.8700又は約1.8200~約1.8600g/cm3のキシレン密度をさらに特徴とする、実施形態3~10のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
12.
約0.3580~約0.3640nm又は約0.3590~約0.3630nm又は約0.3600~約0.3620nmの層間間隔c/2をさらに特徴とする、実施形態3~11のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
13.
(i)2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、約45~約200Ω・cm又は約50~約190Ω・cm又は約60~約170Ω・cmの粉末電気抵抗率であること、及び/又は、
(ii)1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダを97wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極において決定したときに、電極抵抗率が約40~約180Ω.cm又は約45~約170Ω.cm又は約50~約160Ω.cmであること、
をさらに特徴とする、実施形態3~12のいずれか1項記載のカーボンブラック材料。
14.
亜化学量論量の空気と共に、コールタール油、スチーム及びキャットクラッカー油、天然ガス、石油化学蒸留残渣の重質留分又はこれらの材料のいずれかの混合物などの液体又は気体炭化水素を反応器に供給し、それにより、約1000℃~約1600℃、例えば1400~1500℃又は1450~1550℃の温度で、ガス化した炭化水素の分解を引き起こすこと、及び、O2、CO2、H2Oなどの酸化性種又はそれらの混合物の存在下にカーボンブラック材料を形成することによる熱酸化分解を含む、実施形態1~13のいずれか1項記載のカーボンブラック材料の製造方法。
15.
好ましくは、前記カーボンブラック材料は実施形態1~13のいずれか1項記載のものである、実施形態14記載の方法によって得ることができるカーボンブラック材料。
16.
別のカーボンブラック、微細グラファイト、剥離グラファイト、ナノグラファイト、サブミクロングラファイト、剥離グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び/又は炭素繊維を場合によりさらに含む、実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料を含む、導電性組成物。
17.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を含む、導電性ポリマー複合材料。
18.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物のリチウムイオン電池における使用。
19.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を含む、電気化学セルの電極。
20.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を導電性添加剤として含む、リチウムイオン電池。
21.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を含む、エネルギー貯蔵デバイス。
22.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を含む、カーボンブラシ。
23.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を含む、リチウムイオン電池を備えた電気乗物、ハイブリッド電気乗物又はプラグインハイブリッド電気乗物。
24.
実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を細孔形成性材料として含む、セラミック、セラミック前駆体材料又はグリーン材料。
25.
液体及び実施形態1~13又は15のいずれか1項記載のカーボンブラック材料又は実施形態16記載の導電性組成物を含む、分散体。
【実施例
【0073】
実施例
例1
コールタール油(CB1、CB2、CB3)又はエチレンタール(CB4、CB5)の熱酸化分解に基づいてファーネスブラックプロセスでいくつかのカーボンブラックサンプルを作製した。亜化学量論量の空気及びスチームとともに同時注入し、次いで、酸化剤/炭化水素比を調節して反応器を1450~1550℃の温度に加熱し、ガス化炭化水素の吸熱分解を引き起こし、反応器内で得られたカーボン断片からカーボンブラック材料を形成した。
【0074】
これらのカーボンブラックサンプル及びいくつかの比較例を以下のパラメータ:吸油値、圧縮吸油値、吸収剛性、BET SSA、統計的厚さ表面積(STSA、本質的に外部表面積に対応する)、ミクロ細孔面積及びミクロ細孔の割合に関して特性化した。結果を下記の表1に要約する。
【表2】
【0075】
例2
同じカーボンブラック材料を、その結晶学的特性(結晶子サイズLc及び面間距離c/2)及びそれらの水銀圧入IFピーク位置に関してさらに特性化した。さらに、試験した材料についてキシレン密度を決定した。結果を以下の表2に示す。
【表3】
【0076】
例3
種々のカーボンブラック材料をまた、その抵抗率(粉末及び2点電極(フィルム))、ならびに、分散体中の粘度(NMP中5 wt%)に関して調べた。結果を下記の表3に示す。
【表4】
【0077】
例4
様々なカーボンブラック材料を、また、高密度エチレン(HDPE)に対して様々な濃度(10, 12.5及び15 wt%)で添加し、そして得られる体積抵抗率を決定した。結果を下記の表4に示し、そして対応する浸透曲線を図3中に示している。
【表5】
本開示は以下の態様も包含する。
[1] (i)少なくとも約40%又は少なくとも約45%のcOAN/OAN比、及び、
(iii)約80~約400m 2 /g又は約80~約300m 2 /g又は100~約250m 2 /gのBET SSA、
を特徴とする、カーボンブラック材料。
[2] ミクロ細孔を有することを特徴とし、好ましくは、ミクロ細孔面積は5~250m 2 /gである、上記態様1記載のカーボンブラック材料。
[3] 約100~約250又は約120~約200又は約120~約180(ml/100g)のcOANを有することをさらに特徴とする、上記態様1又は2記載のカーボンブラック材料。
[4] 約150~約350又は約150~約300又は約200~約300(ml/100g)のOANをさらに特徴とする、上記態様1~3のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[5] cOAN/OANの比が75%未満又は70%未満又は65%未満である、上記態様1~4のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[6] 前記材料のミクロ細孔の割合は少なくとも約0.10又は少なくとも約0.15又は少なくとも約0.2である、上記態様1~5のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[7] 約70~約300m 2 /g又は約80~約200m 2 /g又は約90~約180m 2 /gの、統計的厚さ法(STSA)に基づく外部表面積をさらに特徴とする、上記態様1~6のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[8] 水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、約35~約70nm又は40~65nm又は50~60nmの凝集体内気孔の孔サイズ(IF)をさらに特徴とする、上記態様1~7のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[9] 約1.80~2.00g/cm 3 又は約1.81~1.95g/cm 3 又は約1.82~1.88g/cm 3 のキシレン密度をさらに特徴とする、上記態様1~8のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[10] 約0.3580~約0.3640nm又は約0.3590~約0.3630nm又は約0.3600~約0.3620nmの層間間隔c/2をさらに特徴とする、上記態様1~9のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[11] 前記カーボンブラック材料のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の5wt%分散体中で剪断速度13s -1 にて決定したときに、約5000 mPa.s未満又は4000 mPa.s未満又は3000mPa.s未満の粘度を特徴とする、上記態様1~10のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[12] 2wt%の前記カーボンブラック材料を98wt%のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)中に含む粉末で存在するときに、約45~約230Ω・cm又は約50~約220Ω・cm又は約60~約200Ω・cmの粉末電気抵抗率を有することを特徴とする、上記態様1~11のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[13] 1wt%の前記カーボンブラック材料、3wt%のPVDFバインダを96wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極において2点測定により決定したときに、約400~約1200Ω・cm又は約500~約1000Ω・cmの電極抵抗率を有することを特徴とする、上記態様1~12のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[14] 1wt%の前記カーボンブラック材料、2wt%のPVDFバインダを97wt%のNMC中に含むフィルムを含む電極において4点測定によって決定したときに、約400~約1100Ω・cm又は約450~約1000Ω・cm又は約500~約900Ω・cmの電極抵抗率を有することを特徴とする、上記態様1~13のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[15] 高密度ポリエチレン(HDPE)中の体積電気抵抗率が、
(i)HDPE複合材料が12.5wt%の前記カーボンブラック材料を含むときに、約100~約1000Ω・cm又は約120~約600Ω・cmであること、及び/又は、
(ii)HDPE複合材料が12.5wt%の前記カーボンブラック材料を含むときに、約10~約100Ω・cm又は約20~約80Ω・cmであること、
を特徴とする上記態様1~14のいずれかに記載のカーボンブラック材料。
[16] 亜化学量論量の空気及び/又はスチームと共に高い芳香族性の炭化水素を反応器に供給し、それにより、約1000℃~約1600℃、例えば1400~1500℃又は1450~1550℃の温度で、ガス化した炭化水素の分解を引き起こすこと、及び、O 2 、CO 2 、H 2 Oなどの酸化性種又はそれらの混合物の存在下にカーボンブラック材料を形成することによる熱酸化分解を含む、上記態様1~15のいずれかに記載のカーボンブラック材料の製造方法。
[17] 前記高い芳香族性の炭化水素は、コールタール油、エチレンタール油、キャットクラッカー油、天然ガス、石油化学蒸留残渣の重質留分又はこれらの材料のいずれかの混合物からなる群から選択され、好ましくはコールタール油、エチレンタール油から選択される、上記態様16記載の方法。
[18] 上記態様16及び17のいずれかに記載の方法によって得ることができるカーボンブラック材料であって、好ましくは、前記カーボンブラック材料は上記態様1~15のいずれかに記載のものである、カーボンブラック材料。
[19] 別のカーボンブラック、微細グラファイト、剥離グラファイト、ナノグラファイト、サブミクロングラファイト、剥離グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び/又は炭素繊維を場合によりさらに含む、上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料を含む導電性組成物。
[20] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を含む、導電性ポリマー複合材料。
[21] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物のリチウムイオン電池における使用。
[22] 上記態様1~13又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様17記載の導電性組成物を含む、電気化学セルの電極。
[23] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を導電性添加剤として含む、リチウムイオン電池。
[24] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を含む、エネルギー貯蔵デバイス。
[25] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を含む、カーボンブラシ。
[26] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を含むリチウムイオン電池を備えた、電気乗物、ハイブリッド電気乗物又はプラグインハイブリッド電気乗物。
[27] 上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を細孔形成性材料として含む、セラミック、セラミック前駆体材料又はグリーン材料。
[28] 液体及び上記態様1~15又は18のいずれかに記載のカーボンブラック材料又は上記態様19記載の導電性組成物を含む、分散体。
図1A)】
図1B)】
図1C)】
図2
図3