(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】バッテリ端子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/552 20210101AFI20220405BHJP
H01M 50/567 20210101ALI20220405BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220405BHJP
【FI】
H01M50/552
H01M50/567
H01M50/543
(21)【出願番号】P 2018001175
(22)【出願日】2018-01-09
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】塩浜 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕介
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091783(JP,A)
【文献】特開2015-133308(JP,A)
【文献】特開2015-115236(JP,A)
【文献】特開2016-081585(JP,A)
【文献】実開平06-028994(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1793921(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1396511(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0198867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の板状部材を有する本体部と、
前記一対の板状部材にそれぞれ設けられバッテリポストが挿通されるポスト孔と、
前記一対の板状部材にそれぞれ設けられ端部から前記ポスト孔まで連通されたスリットと、
前記一対の板状部材間に配置され前記スリットを挟んで前記一対の板状部材の両端部に配置される板部材と、
前記板部材の一端側に配置され前記板部材を貫通するボルト挿通穴にナットが締結される締結部が挿通されるボルトと、
前記板部材と前記ナットとの間に配置され前記ナットの締結により前記一対の板状部材を前記板部材の一端側から他端側に向けて押圧するブラケットと、
前記板部材の他端側に設けられ前記一対の板状部材と係合し前記ブラケットによる前記一対の板状部材への押圧力を受け前記スリットを狭める保持部と、
前記ブラケット
及び前記ボル
トの前記本体部と対向する側にそれぞれ設けられ
た第1テーパであって、前記それぞれ設けられた第1テーパは互いに対向する部分から離れる方向に
かけて前記本体部側に向けて傾斜された
前記それぞれ設けられた第1テーパと、
前記ブラケット
及び前記ボル
トの前記本体部と対向する側と反対側にそれぞれ設けられ
た第2テーパであって、前記それぞれ設けられた第2テーパは互いに対向する部分から離れる方向に
かけて前記本体部側から離れる方向に向けて傾斜された
前記それぞれ設けられた第2テーパと、
前記本体部側に設けられ前記第1テーパと係合し前記ナットによる締結力を前記一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する第1被テーパと、
前記板部材に設けられ前記第2テーパと係合し前記ナットによる締結力を前記一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する第2被テーパと、
を有することを特徴とするバッテリ端子。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリ端子であって、
前記第1被テーパは、前記本体部と別体で形成され、前記一対の板状部材と係合されるスペーサに設けられていることを特徴とするバッテリ端子。
【請求項3】
請求項
1記載のバッテリ端子であって、
前記第1被テーパは、前記一対の板状部材に設けられていることを特徴とするバッテリ端子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバッテリ端子であって、
前記ボルトの前記ナットが締結される端部と反対側の端部には、前記ボルトと別体で形成された押圧部材が前記ボルトと一体に固定され、
前記ボルト側の前記第1テーパと前記第2テーパは、前記押圧部材に設けられていることを特徴とするバッテリ端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ端子に関する。詳細には、バッテリのバッテリポストに接続されるバッテリ端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ端子としては、一対の板状部材としての上側分割体と下側分割体とを有する本体部と、上側分割体と下側分割体とにそれぞれ設けられバッテリポストが挿通されるポスト孔と、上側分割体と下側分割体とにそれぞれ設けられ端部からポスト孔まで連通されたスリットと、上側分割体と下側分割体との間に配置されスリットを挟んで上側分割体と下側分割体の両端部に配置される板部材としての貫通板と、貫通板の一端側に配置され貫通板に設けられた螺合孔に締結されるボルトと、貫通板とボルトの頭部との間に配置されボルトの締結により上側分割体と下側分割体とを貫通板の一端側から他端側に向けて押圧するブラケットとしての第1スペーサと、貫通板の他端側に設けられ上側分割体と下側分割体とに係合し第1スペーサによる上側分割体と下側分割体への押圧力を受けスリットを狭める保持部としての抜け止め部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このバッテリ端子では、第1スペーサの本体部と対向する側に、貫通板と対向する部分から離れる方向に本体部側に向けて傾斜されたテーパ面が設けられ、本体部側に配置される第2スペーサに、第1スペーサのテーパ面と係合しボルトによる締結力を上側分割体と下側分割体を押圧する押圧力に変換するテーパ面が設けられている。
【0004】
このようなバッテリ端子では、上側分割体と下側分割体のポスト孔がバッテリポストに挿通された状態で、貫通板の螺合孔にボルトを締結することにより、第1スペーサのテーパ面と第2スペーサのテーパ面との係合によって、上側分割体と下側分割体が抜け止め部側に向けて押圧される。
【0005】
この上側分割体と下側分割体にかかる押圧力を抜け止め部が受けることにより、上側分割体と下側分割体のスリットが狭められ、バッテリ端子がバッテリポストに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1のようなバッテリ端子では、ブラケットに設けられたテーパ面と、本体部側に設けられた被テーパ面との係合のみでボルトの締結力を一対の板状部材を押圧する押圧力に変換している。
【0008】
このような構造では、バッテリポストにバッテリ端子を固定させるために必要な一対の板状部材を押圧する十分な押圧力を得るためには、ブラケットのテーパ面を長くし、ボルトの締結部を長くする必要があり、それ以上ブラケットのテーパ面やボルトの締結部を短くすることができず、バッテリ端子を小型化することが困難であった。
【0009】
そこで、この発明は、一対の板状部材を押圧する十分な押圧力を得ることができ、小型化することができるバッテリ端子の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、一対の板状部材を有する本体部と、前記一対の板状部材にそれぞれ設けられバッテリポストが挿通されるポスト孔と、前記一対の板状部材にそれぞれ設けられ端部から前記ポスト孔まで連通されたスリットと、前記一対の板状部材間に配置され前記スリットを挟んで前記一対の板状部材の両端部に配置される板部材と、前記板部材の一端側に配置され前記板部材を貫通するボルト挿通穴にナットが締結される締結部が挿通されるボルトと、前記板部材と前記ナットとの間に配置され前記ナットの締結により前記一対の板状部材を前記板部材の一端側から他端側に向けて押圧するブラケットと、前記板部材の他端側に設けられ前記一対の板状部材と係合し前記ブラケットによる前記一対の板状部材への押圧力を受け前記スリットを狭める保持部と、前記ブラケット及び前記ボルトの前記本体部と対向する側にそれぞれ設けられた第1テーパであって、前記それぞれ設けられた第1テーパは互いに対向する部分から離れる方向にかけて前記本体部側に向けて傾斜された前記それぞれ設けられた第1テーパと、前記ブラケット及び前記ボルトの前記本体部と対向する側と反対側にそれぞれ設けられた第2テーパであって、前記それぞれ設けられた第2テーパは互いに対向する部分から離れる方向にかけて前記本体部側から離れる方向に向けて傾斜された前記それぞれ設けられた第2テーパと、前記本体部側に設けられ前記第1テーパと係合し前記ナットによる締結力を前記一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する第1被テーパと、前記板部材に設けられ前記第2テーパと係合し前記ナットによる締結力を前記一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する第2被テーパとを有することを特徴とするバッテリ端子である。
【0011】
このバッテリ端子では、ブラケットとボルト側との本体部と対向する側に、互いに対向する部分から離れる方向に本体部側に向けて傾斜された第1テーパがそれぞれ設けられ、本体部側に、第1テーパと係合しナットによる締結力を一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する第1被テーパが設けられている。
【0012】
また、ブラケットとボルト側との本体部と対向する側と反対側には、互いに対向する部分から離れる方向に本体部側から離れる方向に向けて傾斜された第2テーパがそれぞれ設けられ、板部材には、第2テーパと係合しナットによる締結力を一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する第2被テーパが設けられている。
【0013】
このため、ナットの締結力を一対の板状部材を押圧する押圧力に変換する部分が4箇所設けられているので、ブラケットの第1テーパと第2テーパを短くし、ボルトの締結部を短くしても、スリットを狭めることができる十分な押圧力を得ることができ、ブラケットやボルトを小型化することができる。
【0014】
従って、このようなバッテリ端子では、一対の板状部材を押圧する十分な押圧力を得ることができ、小型化することができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバッテリ端子であって、前記第1被テーパは、前記本体部と別体で形成され、前記一対の板状部材と係合されるスペーサに設けられていることを特徴とする。
【0016】
このバッテリ端子では、第1被テーパが、本体部と別体で形成され、一対の板状部材と係合されるスペーサに設けられているので、本体部と独立して第1被テーパを設計することができ、設計の自由度を向上することができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のバッテリ端子であって、前記第1被テーパは、前記一対の板状部材に設けられていることを特徴とする。
【0018】
このバッテリ端子では、第1被テーパが、一対の板状部材に設けられているので、ナットの締結力から変換された押圧力を、直接、一対の板状部材が受けることができ、スリットを安定して狭めることができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバッテリ端子であって、前記ボルトの前記ナットが締結される端部と反対側の端部には、前記ボルトと別体で形成された押圧部材が前記ボルトと一体に固定され、前記ボルト側の前記第1テーパと前記第2テーパは、前記押圧部材に設けられていることを特徴とする。
【0020】
このバッテリ端子では、第1テーパと第2テーパが、ボルトと別体で形成された押圧部材に設けられているので、ボルトと独立して第1テーパと第2テーパを設計することができ、設計の自由度を向上することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一対の板状部材を押圧する十分な押圧力を得ることができ、小型化することができるバッテリ端子を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバッテリ端子をバッテリに組付けたときの斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るバッテリ端子の分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るバッテリ端子の上面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るバッテリ端子の側面図である。
【
図5】(a)は本発明の実施の形態に係るバッテリ端子の板部材の板の上面図である。(b)は
図5(a)の斜視図である。(c)は
図5(a)の側面図である。(d)は
図5(a)の正面図である。
【
図6】(a)は本発明の実施の形態に係るバッテリ端子のボルトの上面図である。(b)は
図6(a)の斜視図である。(c)は
図6(a)の側面図である。
【
図7】(a)は本発明の実施の形態に係るバッテリ端子の押圧部材の上面図である。(b)は
図7(a)の斜視図である。(c)は
図7(a)の側面図である。(d)は
図7(a)の正面図である。
【
図8】(a)は本発明の実施の形態に係るバッテリ端子のボルトと押圧部材とを一体に設けたときの上面図である。(b)は
図8(a)の斜視図である。(c)は
図8(a)の側面図である。(d)は
図8(a)の正面図である。
【
図9】(a)は本発明の実施の形態に係るバッテリ端子のスペーサの上面図である。(b)は
図9(a)の斜視図である。(c)は
図9(a)の側面図である。(d)は
図9(a)の正面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るバッテリ端子の分解斜視図である。
【
図11】(a)は本発明の第2実施形態に係るバッテリ端子の上面図である。(b)は本発明の第2実施形態に係るバッテリ端子の側面図である。
【
図12】(a)は本発明の第2実施形態に係るバッテリ端子の本体部の上面図である。(b)は本発明の第2実施形態に係るバッテリ端子の本体部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図12を用いて本発明の実施の形態に係るバッテリ端子について説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1~
図9を用いて第1実施形態について説明する。
【0025】
本実施の形態に係るバッテリ端子1は、一対の板状部材3,3を有する本体部5と、一対の板状部材3,3にそれぞれ設けられバッテリポスト7が挿通されるポスト孔9,9と、一対の板状部材3,3にそれぞれ設けられ端部からポスト孔9,9まで連通されたスリット11,11と、一対の板状部材3,3間に配置されスリット11を挟んで一対の板状部材3,3の両端部に配置される板部材13と、板部材13の一端側に配置され板部材13を貫通するボルト挿通穴15にナット17が締結される締結部19が挿通されるボルト21と、板部材13とナット17との間に配置されナット17の締結により一対の板状部材3,3を板部材13の一端側から他端側に向けて押圧するブラケット23と、板部材13の他端側に設けられ一対の板状部材3,3と係合しブラケット23による一対の板状部材3,3への押圧力を受けスリット11を狭める保持部25とを備えている。
【0026】
そして、ブラケット23とボルト21側との本体部5と対向する側には、互いに対向する部分から離れる方向に本体部5側に向けて傾斜された第1テーパ27,27がそれぞれ設けられ、ブラケット23とボルト21側との本体部5と対向する側と反対側には、互いに対向する部分から離れる方向に本体部5側から離れる方向に向けて傾斜された第2テーパ29,29が設けられ、本体部5側には、第1テーパ27,27と係合しナット17による締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する第1被テーパ31,31が設けられ、板部材13には、第2テーパ29,29と係合しナット17による締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する第2被テーパ33,33が設けられている。
【0027】
また、第1被テーパ31,31は、本体部5と別体で形成され、一対の板状部材3,3と係合されるスペーサ35に設けられている。
【0028】
さらに、ボルト21のナット17が締結される端部と反対側の端部には、ボルト21と別体で形成された押圧部材37がボルト21と一体に固定され、ボルト21側の第1テーパ27と第2テーパ29は、押圧部材37に設けられている。
【0029】
ここで、
図1に示すように、バッテリ端子1は、例えば、バッテリ39の上面の隅部に上面から一段低くなるように切り欠かれて形成された凹所41に配置される。
【0030】
このバッテリ39の凹所41には、バッテリポスト7が突設されており、このバッテリポスト7にバッテリ端子1が固定されることにより、バッテリ39とバッテリ端子1とが電気的に接続される。
【0031】
このバッテリポスト7に接続されたバッテリ端子1には、機器に接続されたヒューズユニット(不図示)の接続部や機器に接続された電線の端末部に設けられた端子(不図示)が電気的に接続され、バッテリ端子1を介してバッテリ39と機器とが電気的に接続される。
【0032】
以下、
図1~
図9を用いてこのようなバッテリ端子1の詳細について説明する。
【0033】
図1~
図9に示すように、バッテリ端子1は、本体部5と、板部材13と、ボルト21と、ブラケット23とを備えている。
【0034】
本体部5は、導電性材料からなり、一枚の板材に対してプレス加工や折り曲げ加工などを施すことにより、一対の板状部材3,3と、ポスト孔9,9と、スリット11,11と、スタッドボルト43が保持される機器側接続部45とを備えている。
【0035】
一対の板状部材3,3は、一枚の板材に対して折り曲げ加工を施すことにより、連結部47を介して連続する一部材で形成され、互いの対向面が平行となるように離間して配置されている。
【0036】
この一対の板状部材3,3には、それぞれポスト孔9,9と、スリット11,11と、機器側接続部45とが設けられている。
【0037】
ポスト孔9,9は、離間して配置された一対の板状部材3,3の中央部に、中心を同一位置となるように一対の板状部材3,3を貫通してそれぞれ設けられている。
【0038】
このポスト孔9,9には、バッテリ39のバッテリポスト7が挿通され、スリット11,11の幅が狭められることにより、バッテリポスト7に固定されつつ、バッテリポスト7に電気的に接続される。
【0039】
スリット11,11は、一対の板状部材3,3の連結部47側の端部からポスト孔9,9に連通されており、一対の板状部材3,3のポスト孔9,9から連結部47までの部分と連結部47とが、幅方向に2分割されるように分断している。
【0040】
このスリット11,11は、一対の板状部材3,3の幅方向両側から押圧力を受けることにより、その幅が狭められ、ポスト孔9,9の径を縮小させ、バッテリポスト7にポスト孔9,9を固定させる。
【0041】
なお、スリット11,11の幅方向両側に位置する一対の板状部材3,3には、一対の板状部材3,3の剛性を高めるために、打ち出し加工などによって補強部49,49がそれぞれ設けられている。
【0042】
このようなスリット11,11の幅を狭めることによってバッテリポスト7に固定される本体部5には、機器側接続部45が設けられている。
【0043】
機器側接続部45は、一方の板状部材3(ここではスタッドボルト43の突出方向に位置する側)が他方の板状部材3側に向けて屈曲され、一対の板状部材3,3間にスタッドボルト43が保持されている。
【0044】
スタッドボルト43は、頭部(不図示)が一対の板状部材3,3間に挟み込まれることによって本体部5に保持され、ナット(不図示)が締結される締結部51が一方の板状部材3を貫通して設けられた孔から本体部5の外部に突出して配置されている。
【0045】
このスタッドボルト43には、機器に接続されたヒューズユニットの接続部や機器に接続された電線の端末部に設けられた端子が挿通され、締結部51にナットを締結することにより、スタッドボルト43に固定されつつ、電気的に接続され、バッテリ端子1を介してバッテリ39と機器とが電気的に接続される。
【0046】
なお、スタッドボルト43の突出方向は、バッテリポスト7と同一方向となっているが、これに限らず、スタッドボルト43の突出方向をバッテリポスト7と異ならせてもよく、スタッドボルト43の突出方向は、周辺部材との干渉などを考慮して適宜選択すればよい。
【0047】
このような本体部5のスリット11側の一対の板状部材3,3間には、長さ方向の両端部がスリット11を挟んで一対の板状部材3,3の幅方向の両端部側に位置するように板部材13が配置される。
【0048】
板部材13は、導電性材料からなる板材をプレス加工によって成形された長方形状の板53が2枚重ね合わされ、溶接、或いは接着剤による接着などの固定手段によって一体に固定されている。
【0049】
この板53は、2枚が重ね合わせられることにより、重ねられた板厚が本体部5の一対の板状部材3,3間の距離と同等になるように設定されている。
【0050】
このように板部材13を2枚の板53を重ね合わせて構成することにより、1つの板部材13を形成するために、鍛造や鋳造を用いる必要がなく、1枚の板53をプレス加工で形成することができ、板部材13の剛性を保持しつつ、板部材13を軽量化し、低コスト化することができる。
【0051】
この板部材13は、長さ方向の一端側が本体部5の幅方向の一側から挿入され、長さ方向の両端部がスリット11を挟んで一対の板状部材3,3の幅方向の両端部側に位置するように、一対の板状部材3,3間に配置される。
【0052】
このような板部材13の長さ方向の一端側には、板部材13(ここでは2枚の板53)を貫通し、長穴状に形成されたボルト挿通穴15が設けられている。
【0053】
このボルト挿通穴15には、ボルト21が挿通される。
【0054】
ボルト21は、ナット17が締結される締結部19が設けられ、ナット17が締結される側と反対側の端部に圧入部55が設けられている。
【0055】
このボルト21の圧入部55は、四角形の板状に形成され一対の対向壁57,57が立設された押圧部材37の底壁59の中央部に底壁59を貫通して設けられた圧入孔61に圧入され、ボルト21と押圧部材37とが一体に固定される。
【0056】
この押圧部材37が一体に設けられたボルト21は、板部材13が本体部5の一対の板状部材3,3間に配置された状態で、締結部19が板部材13のボルト挿通穴15を挿通し、板部材13の一端側に配置される。
【0057】
このように配置されたボルト21は、本体部5の一対の板状部材3,3の幅方向の他側側にそれぞれ形成された半円状の切欠部63,63に締結部19が収容して配置される。
【0058】
このようなボルト21の締結部19に締結されるナット17と板部材13との間には、ブラケット23が配置される。
【0059】
ブラケット23は、板状の導電性材料からなり、折り曲げ加工を施すことにより、板部材13と平行な底壁65を介して連続する一部材で一対の側壁67,67の互いの対向面が平行となるように離間し、全体としてコ字状に形成されている。
【0060】
このブラケット23の底壁65には、ボルト21の締結部19が挿通されるボルト孔69が底壁65を貫通して設けられている。
【0061】
このようなブラケット23は、ボルト21の締結部19にナット17が締結されることにより、底壁65がナット17と当接し、後述する第1テーパ27,27と第2テーパ29,29とが、第1被テーパ31,31と第2被テーパ33,33と係合することによって、ナット17の締結力を一対の板状部材3,3を板部材13の一側から他側に向けて押圧する押圧力に変換する。
【0062】
このようなブラケット23で変換された押圧力は、板部材13の他端側に設けられた保持部25によって受けられる。
【0063】
保持部25は、板部材13を構成する2枚の板53,53にそれぞれ設けられ、板53,53の端部をそれぞれ離れる方向に折り曲げることによって形成されている。
【0064】
この保持部25は、板部材13を本体部5の一対の板状部材3,3間に挿入することで、一対の板状部材3,3の幅方向の側面に対向して配置される。
【0065】
このような保持部25は、ナット17の締結によってブラケット23で変換された本体部5への押圧力を受ける。
【0066】
このようにブラケット23で変換された押圧力を保持部25で受けることにより、本体部5が幅方向の内側に押圧され、一対の板状部材3,3に設けられたスリット11,11の幅が狭められ、ポスト孔9,9がバッテリポスト7を締め付け、バッテリ端子1がバッテリポスト7に固定される。
【0067】
このような保持部25を板部材13を構成する2枚の板53,53にそれぞれ設けることにより、1枚の板状部材3にかかるブラケット23で変換された押圧力を1枚の板53の保持部25で受けることができ、安定してスリット11,11の幅を狭めることができる。
【0068】
また、保持部25は、板53の端部を折り曲げられて形成されているので、保持部25を簡易な構造とすることができ、さらに板部材13の製造コストを低減することができる。
【0069】
さらに、板部材13は、2枚の板53,53からなるので、1種類の板53を形成し、互いの保持部25,25が対称形状となるように2枚の板53,53を重ね合わせることで、板部材13を構成することができ、さらに板部材13の製造コストを低減することができる。
【0070】
このようなバッテリ端子1において、スリット11,11の幅を狭める押圧力は、第1テーパ27,27と、第2テーパ29,29と、第1被テーパ31,31と、第2被テーパ33,33との係合によって得られる。
【0071】
第1テーパ27,27は、ブラケット23の一対の側壁67,67と、ボルト21に一体に設けられた押圧部材37の一対の対向壁57,57とにそれぞれ設けられている。
【0072】
ブラケット23側の第1テーパ27は、一対の側壁67,67の本体部5と対向する側にそれぞれ設けられ、押圧部材37と対向する部分から底壁65側にかけて本体部5側に向けて傾斜された傾斜面となっている。
【0073】
押圧部材37側(ボルト21側)の第1テーパ27は、一対の対向壁57,57の本体部5と対向する側にそれぞれ設けられ、ブラケット23と対向する部分から底壁59側にかけて本体部5側に向けて傾斜された傾斜面となっている。
【0074】
この第1テーパ27,27は、ナット17と板部材13との間にブラケット23が配置された状態で、互いに対向する部分から離れる方向にかけて、それぞれ本体部5側に向けて傾斜されるように対称形状に配置される。
【0075】
第2テーパ29,29は、ブラケット23の一対の側壁67,67と、押圧部材37の一対の対向壁57,57とにそれぞれ設けられている。
【0076】
ブラケット23側の第2テーパ29は、一対の側壁67,67の本体部5と対向する側と反対側(第1テーパ27と反対側)にそれぞれ設けられ、押圧部材37と対向する部分から底壁65側にかけて本体部5側から離れる方向に向けて傾斜された傾斜面となっている。
【0077】
押圧部材37側(ボルト21側)の第2テーパ29は、一対の対向壁57,57の本体部5と対向する側と反対側(第1テーパ27と反対側)にそれぞれ設けられ、ブラケット23と対向する部分から底壁59側にかけて本体部5側から離れる方向に向けて傾斜された傾斜面となっている。
【0078】
この第2テーパ29,29は、ナット17と板部材13との間にブラケット23が配置された状態で、互いに対向する部分から離れる方向にかけて、それぞれ本体部5側から離れる方向に向けて傾斜されるように対称形状に配置される。
【0079】
第1被テーパ31,31は、本体部5と別体で形成され、一対の板状部材3,3間に挿入され、板部材13の幅方向両側にそれぞれ配置されるスペーサ35,35にそれぞれ設けられている。
【0080】
スペーサ35は、板状に形成され、一端側に基板部71の幅方向の両側面より両端部が突出された三角形状の押圧部73が設けられている。
【0081】
このスペーサ35の押圧部73には、スペーサ35の基板部71が一対の板状部材3,3間に配置された状態で、一対の板状部材3,3の幅方向の側面に係合される押圧面75,75と、第1テーパ27,27に係合される第1被テーパ31,31とが設けられている。
【0082】
押圧面75,75は、押圧部73の本体部5の幅方向の側面と対向する対向面にそれぞれ設けられ、一対の板状部材3,3の幅方向の側面に係合される。
【0083】
この押圧面75,75は、ナット17の締結により、第1テーパ27,27と第1被テーパ31,31との係合、第2テーパ29,29と第2被テーパ33,33との係合によって変換された押圧力によって一対の板状部材3,3を本体部5の幅方向に押圧し、スリット11,11の幅を狭める。
【0084】
第1被テーパ31,31は、押圧部73の押圧面75と反対側に設けられ、三角形状の頂部から両端部にかけて、本体部5側に向けてそれぞれ対称形状に傾斜された傾斜面となっており、ブラケット23の第1テーパ27と、押圧部材37の第1テーパ27とにそれぞれ係合される。
【0085】
なお、ブラケット23側の第1被テーパ31は、ブラケット23の第1テーパ27と同一傾斜で傾斜され、押圧部材37側の第1被テーパ31は、押圧部材37の第1テーパ27と同一傾斜で傾斜されている。
【0086】
この第1被テーパ31,31は、ナット17の締結によってボルト21の軸方向にブラケット23が移動されることにより、ブラケット23の第1テーパ27と押圧部材37の第1テーパ27とに強く係合され、ナット17の締結力をスペーサ35を介して一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する。
【0087】
第2被テーパ33,33は、板部材13を構成する2枚の板53,53の端部をそれぞれ離れる方向に向けて折り曲げられた傾斜部77,77にそれぞれ設けられている。
【0088】
ブラケット23と対向する側の傾斜部77に設けられた第2被テーパ33は、板53側から傾斜部77の先端側にかけて本体部5側から離れる方向に向けて、ブラケット23の第2テーパ29と同一傾斜で傾斜された傾斜面となっている。
【0089】
押圧部材37と対向する側の傾斜部77に設けられた第2被テーパ33は、板53側から傾斜部77の先端側にかけて本体部5側から離れる方向に向けて、ブラケット23の第2テーパ29と同一傾斜で傾斜された傾斜面となっており、ブラケット23側の第2被テーパ33と対称形状に傾斜されている。
【0090】
この第2被テーパ33,33は、ナット17の締結によってボルト21の軸方向にブラケット23が移動されることにより、ブラケット23の第2テーパ29と押圧部材37の第2テーパ29とに強く係合され、ナット17の締結力をブラケット23の側壁67及び押圧部材37の対向壁57とスペーサ35を介して一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する。
【0091】
このようにナット17の締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する部分を4箇所設けることにより、ナット17の締結によるブラケット23のボルト21の軸方向への移動距離を短くしても、スリット11の幅を十分に狭められる押圧力を得ることができる。
【0092】
すなわち、ボルト21の締結部19の長さを短くし、第1テーパ27,27と第1被テーパ31,31との係合長さ及び第2テーパ29,29と第2被テーパ33,33との係合長さを短くしても、スリット11の幅を十分に狭められる押圧力を得ることができる。
【0093】
このため、ブラケット23やボルト21を小型化しても、スリット11の幅を十分に狭められる押圧力を得ることができ、バッテリ端子1を小型化することができる。
【0094】
このようなバッテリ端子1の組付けは、まず、本体部5の一対の板状部材3,3の間に、板部材13とスペーサ35,35とを挿入して配置させる。
【0095】
次に、板部材13のボルト挿通穴15に押圧部材37が一体に設けられたボルト21の締結部19を挿通してボルト21を配置させる。
【0096】
そして、ボルト21の締結部19がブラケット23のボルト孔69を挿通するようにブラケット23を配置させ、ボルト21の締結部19にナット17をある程度締結させ、バッテリ端子1の組付けを完了する。
【0097】
このように組付けられたバッテリ端子1のバッテリ39への組付けは、まず、バッテリポスト7にポスト孔9,9を挿通させ、バッテリ端子1をバッテリ39に配置させる。
【0098】
そして、ナット17をボルト21の締結部19に締結することにより、スリット11,11の幅を狭めてポスト孔9,9をバッテリポスト7に締め付け、バッテリ端子1をバッテリ39に固定し、バッテリ端子1のバッテリ39への組付けを完了する。
【0099】
このようなバッテリ端子1では、ブラケット23とボルト21側との本体部5と対向する側に、互いに対向する部分から離れる方向に本体部5側に向けて傾斜された第1テーパ27,27がそれぞれ設けられ、本体部5側に、第1テーパ27,27と係合しナット17による締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する第1被テーパ31,31が設けられている。
【0100】
また、ブラケット23とボルト21側との本体部5と対向する側と反対側には、互いに対向する部分から離れる方向に本体部5側から離れる方向に向けて傾斜された第2テーパ29,29がそれぞれ設けられ、板部材13に、第2テーパ29,29と係合しナット17による締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する第2被テーパ33,33が設けられている。
【0101】
このため、ナット17の締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換する部分が4箇所設けられているので、ブラケット23の第1テーパ27と第2テーパ29を短くし、ボルト21の締結部19を短くしても、スリット11を狭めることができる十分な押圧力を得ることができ、ブラケット23やボルト21を小型化することができる。
【0102】
従って、このようなバッテリ端子1では、一対の板状部材3,3を押圧する十分な押圧力を得ることができ、小型化することができる。
【0103】
また、第1被テーパ31,31は、本体部5と別体で形成され、一対の板状部材3,3と係合されるスペーサ35に設けられているので、本体部5と独立して第1被テーパ31,31を設計することができ、設計の自由度を向上することができる。
【0104】
さらに、第1テーパ27と第2テーパ29は、ボルト21と別体で形成された押圧部材37に設けられているので、ボルト21と独立して第1テーパ27と第2テーパ29を設計することができ、設計の自由度を向上することができる。
【0105】
(第2実施形態)
図10~
図12を用いて第2実施形態について説明する。
【0106】
本実施の形態に係るバッテリ端子101は、第1被テーパ103,103が、一対の板状部材3,3に設けられている。
【0107】
なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、同様の構成であるので得られる作用・効果は同様である。
【0108】
図10~
図12に示すように、第1被テーパ103,103は、一対の板状部材3,3の幅方向の側面にそれぞれ設けられている。
【0109】
ブラケット23側の第1被テーパ103は、一対の板状部材3,3が対向する部分から離れる方向にかけてスリット11側に向けてブラケット23の第1テーパ27と同一傾斜で傾斜された傾斜面となっている。
【0110】
押圧部材37側の第1被テーパ103は、一対の板状部材3,3が対向する部分から離れる方向にかけてスリット11側に向けて押圧部材37の第1テーパ27と同一傾斜で傾斜された傾斜面となっており、ブラケット23側の第1被テーパ103と対称形状に傾斜されている。
【0111】
この第1被テーパ103,103は、ナット17の締結によってボルト21の軸方向にブラケット23が移動されることにより、ブラケット23の第1テーパ27と押圧部材37の第1テーパ27とに強く係合され、ナット17の締結力を一対の板状部材3,3を押圧する押圧力に変換しつつ、この押圧力が入力される。
【0112】
このとき、第1被テーパ103,103には、第2テーパ29,29と第2被テーパ33,33との係合による押圧力も入力され、スリット11,11の幅が狭められる。
【0113】
このように第1被テーパ103,103を一対の板状部材3,3に設けることにより、変換された押圧力を、直接、一対の板状部材3,3に入力させることができ、安定してスリット11,11の幅を狭めることができる。
【0114】
加えて、第1被テーパ103,103を一対の板状部材3,3に設けることにより、一対の板状部材3,3に係合し、第1被テーパ31,31が設けられたスペーサ35(
図2参照)を用いる必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0115】
なお、本実施の形態におけるバッテリ端子101の組付けやバッテリ端子101のバッテリ39への組付けは、第1実施形態からスペーサ35の組付けを除くものであるので、その説明を省略する。
【0116】
このようなバッテリ端子101は、第1被テーパ103,103が、一対の板状部材3,3に設けられているので、ナット17の締結力から変換された押圧力を、直接、一対の板状部材3,3が受けることができ、スリット11を安定して狭めることができる。
【0117】
なお、本発明の実施の形態に係るバッテリ端子では、第1被テーパが、スペーサと一対の板状部材とにそれぞれ独立して設けられた構造を例示しているが、これに限らず、第1被テーパをスペーサと一対の板状部材とにそれぞれ設けてもよい。
【0118】
この場合には、例えば、一対の板状部材の幅方向の側面に、スペーサの第1被テーパと一対の板状部材の第1被テーパとが面一となるようにスペーサを配置させる凹部を設ける。
【0119】
このようにスペーサと一対の板状部材とにそれぞれ第1被テーパを設けることにより、押圧力を受ける受圧面積を増大させることができ、さらに安定してスリットを狭めることができる。
【符号の説明】
【0120】
1,101…バッテリ端子
3…板状部材
5…本体部
7…バッテリポスト
9…ポスト孔
11…スリット
13…板部材
15…ボルト挿通穴
17…ナット
19…締結部
21…ボルト
23…ブラケット
25…保持部
27…第1テーパ
29…第2テーパ
31,103…第1被テーパ
33…第2被テーパ
35…スペーサ
37…押圧部材