(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20220405BHJP
F16K 31/363 20060101ALI20220405BHJP
F16K 17/04 20060101ALI20220405BHJP
G05D 16/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K31/363
F16K17/04 E
F16K17/04 Z
G05D16/10 Z
(21)【出願番号】P 2018005041
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中野 哲
(72)【発明者】
【氏名】久保 利賀剛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 荘吾
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-153160(JP,A)
【文献】特開2017-089703(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103775305(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/122
F16K 31/363
F16K 17/04
G05D 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダの内部を往復動可能に収容されるピストンと、前記ピストンを付勢するとともに前記シリンダ及び前記ピストンの軸線と同軸上に設けられるコイルばねとを備え、前記軸線が鉛直方向に沿って延びる仮想線に交わる弁装置において、
前記コイルばねは、前記コイルばねの端部が当接しているピストンの座面に対して作用する前記コイルばねの横力が鉛直方向の上側に向けて作用する状態で、前記ピストンの座面に当接して
おり、
前記シリンダが設けられているとともにガス流路が設けられているボディを更に備え、
前記シリンダの内部に前記ピストンが収容されている状態で、前記ピストンと前記ボディとの間には前記ガス流路の一部分が設けられ、
前記ガス流路における前記シリンダよりも上流側には、前記ガス流路を開閉するとともに前記軸線と同軸上に設けられる弁機構が設けられ、
前記弁機構は、前記コイルばねを第1のコイルばねとしたとき、前記ガス流路の途中に設けられている弁座と、前記ピストンの往復動に応じて前記弁座に離着座するとともに前記弁座よりも上流側に設けられる弁体と、前記弁体を前記弁座側へ付勢する第2のコイルばねとを備え、
前記第2のコイルばねは、前記第2のコイルばねの端部が当接している前記弁体の座面に対して作用する前記第2のコイルばねの横力が鉛直方向の上側に向けて作用する状態で、前記弁体の座面に当接している
弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車に用いられる水素ガス等、高圧ガスの圧力調整に用いられる弁装置として、ガスの入り口である一次ポートとガスの出口である二次ポートとの間に設けられた弁機構と、弁機構の弁体を押圧してその開き量を調整する押圧機構とを備えたものがある。
【0003】
特許文献1に記載される弁装置の押圧機構は、シリンダ内を往復動可能に収容されたピストンと、シリンダと同軸上に配置され、ピストンを弁機構側へ付勢するコイルばねとを備えている。
【0004】
上記の弁装置では、一次ポートに流入した高圧ガスの圧力に基づいてピストンがシリンダ内を往復動し、ピストンの位置に基づいて弁機構の開き量を調整することにより高圧ガスが減圧されて二次ポートから送出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでコイルばねは、その中心軸に沿って圧縮した場合であっても、有効巻き数や形状等に応じて、コイルばねの中心軸に沿った力以外に、コイルばねの中心軸と交わる方向の力、すなわち横力が発生する。そのため、コイルばねを圧縮した際にピストンに作用するコイルばねの付勢力の方向は、コイルばねの中心軸に対して僅かに傾く。その結果、ピストンがシリンダの軸線と交差する方向に付勢され、ひいてはピストンがシリンダの軸線に対して傾斜してしまうおそれがある。
【0007】
その点、特許文献1の弁装置では、ピストンに作用するコイルばねの付勢力の方向をコイルばねの軸線に沿う方向となるようにコイルばねの有効巻き数を調整することで、ピストンの傾斜を抑制している。
【0008】
しかし、ピストンの傾斜を抑制するため、弁装置の製品仕様毎に有効巻き数等、コイルばねの構成を変更するのは手間がかかる。
本発明の目的は、簡易な構成によりピストンの傾斜が抑制できる弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成し得る弁装置は、シリンダと、前記シリンダの内部を往復動可能に収容されるピストンと、前記ピストンを付勢するとともに前記シリンダ及び前記ピストンの軸線と同軸上に設けられるコイルばねとを備え、前記軸線が鉛直方向に沿って延びる仮想線に交わる弁装置を前提としている。前記コイルばねは、前記コイルばねの端部が当接しているピストンの座面に対して作用する前記コイルばねの横力が鉛直方向の上側に向けて作用する状態で、前記ピストンの座面に当接している。
【0010】
この構成によれば、コイルばねの横力は、ピストンの重力により弱められる。そのため、ピストンに作用するコイルばねの付勢力の方向を、第1のコイルばねの軸線に沿った方向により近づけることができる。このため、簡易な構成によりピストンの傾斜が抑制できる。
【0011】
[2]上記[1]の構成を有する弁装置において、前記シリンダが設けられているとともにガス流路が設けられているボディを更に備え、前記シリンダの内部に前記ピストンが収容されている状態で、前記ピストンと前記ボディとの間には前記ガス流路の一部分が設けられ、前記ガス流路における前記シリンダよりも上流側には、前記ガス流路を開閉するとともに前記軸線と同軸上に設けられる弁機構が設けられ、前記弁機構は、前記コイルばねを第1のコイルばねとしたとき、前記ガス流路の途中に設けられている弁座と、前記ピストンの往復動に応じて前記弁座に離着座するとともに前記弁座よりも上流側に設けられる弁体と、前記弁体を前記弁座側へ付勢する第2のコイルばねとを備え、前記第2のコイルばねは、前記第2のコイルばねの端部が当接している前記弁体の座面に対して作用する前記第2のコイルばねの横力が鉛直方向の上側に向けて作用する状態で、前記弁体の座面に当接していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第2のコイルばねの横力は、弁体の重力により弱められる。そのため、弁体に作用する第2のコイルばねの付勢力の方向を、第2のコイルばねの軸線に沿った方向により近づけることができる。すなわち、ピストンの傾斜を抑制しつつ弁体の傾斜も抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弁装置によれば、簡易な構成によりピストンの傾斜が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】第1のコイルばねにおける横力の方向を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、弁装置の一実施形態を説明する。
図1に示すように、弁装置1は、燃料電池自動車に搭載される水素タンクと燃料電池との間に設けられる装置である。弁装置1は、水素タンクに貯留される高圧(例えば80Mpa程度)の水素ガスを減圧(例えば1Mpa程度)して燃料電池に送出する機能を有している。弁装置1は、鉛直方向(
図1の上下方向)に沿って延びる仮想線L1に対して、弁装置1の軸線L2が直交するように車両に搭載されている。すなわち、弁装置1は、地面に対して水平をなしている。なお、鉛直下方向は、重力方向であり、鉛直上方向とは、反重力方向である。また、鉛直上方向は、鉛直方向の上側の一例である。
【0016】
弁装置1は、ボディ10と、弁機構20と、押圧機構30とを備えている。
ボディ10には、ガスの入り口である一次ポート11、供給流路12、有底円筒状の収容穴13、送出流路14、及びガスの出口である二次ポート15が弁装置1の上流側から下流側に向けてこの順番で設けられている。
【0017】
供給流路12は、一次ポート11から収容穴13の底面13aに向けて延びている。供給流路12は、収容穴13と同軸上に、換言すれば弁装置1の軸線L2上に設けられている。供給流路12は、収容穴13の底面13aにおける中央に開口している。供給流路12は、収容穴13側へ向かうにつれて段階的に内径が大きくなる。具体的には、供給流路12には、円筒状の第1の収容部12a、有底円筒状の第2の収容部12b、及び有底円筒状の第3の収容部12cが一次ポート11から収容穴13に向けてこの順番で形成されている。
【0018】
第1の収容部12aは、第2の収容部12bの底面12dに開口している。第2の収容部12bの内径は、第1の収容部12aの内径よりも大きい。第2の収容部12bの第1の収容部12aと反対側の開口部は、第3の収容部12cの底面12eに開口している。第3の収容部12cの内径は、第2の収容部12bの内径よりも大きい。第3の収容部12cの内周面には、雌ねじ12fが設けられている。
【0019】
収容穴13は、軸線L2に沿って延びており、供給流路12と反対側に向けて開口している。収容穴13の開口端部の内周面の一部分には、雌ねじ13bが設けられている。
送出流路14は、収容穴13の底面13aから二次ポート15に向けて延びており、二次ポート15に接続されている。送出流路14は、収容穴13の底面13aにおける軸線L2から偏心した位置に開口している。なお、供給流路12及び送出流路14は、ガス流路の一例である。
【0020】
弁機構20は、弁装置1の軸線L2と同軸上に設けられている。弁機構20は、供給流路12に収容される。弁機構20は、供給流路12を開閉する機能を有している。弁機構20は、弁座21と、弁体22と、プラグ23と、バルブステム24と、第2のコイルばね25とを有している。
【0021】
図2に示すように、弁座21は、ガス流路の途中に設けられている。弁座21は、第2の収容部12bに収容されている。弁座21には、その中央部分に供給流路12を連通する弁孔21aが設けられている。
【0022】
弁体22は、供給流路12の第1の収容部12aに収容されている。弁体22は、有底円筒状をなしている。弁体22の外径は、供給流路12の内径よりもやや小さく設定されている。そのため、弁体22は、供給流路12内で軸方向移動可能である。弁体22は、当接部22aと、有底筒状の本体部22bとを有している。
【0023】
当接部22aは、本体部22bよりも弁座21側に設けられている。当接部22aは、テーパ部22cと、円柱部22dとを有している。テーパ部22cは、本体部22bから弁座21側に向かうにつれて徐々に外径が縮径されている。テーパ部22cは、弁座21に離着座することにより弁座21の弁孔21aを開閉する部分である。円柱部22dは、テーパ部22cから弁座21側に向かって延びている。円柱部22dは、外径が一定に保たれている。円柱部22dの外径は、弁座21の弁孔21aの内径よりも小さい。
【0024】
本体部22bは、有底穴22eを有している。有底穴22eは、供給流路12の一次ポート11側に開口している。有底穴22eには、第2のコイルばね25が収容されている。第2のコイルばね25は、供給流路12の上流側に配置された棒状の支持部材80の先端面80aと弁体22の有底穴22eの底面22fとの間に圧縮された状態で収容されている。弁体22は、第2のコイルばね25により弁座21側へ付勢されている。なお、第2のコイルばね25の端部が当接している有底穴22eの底面22fは、弁体22の座面の一例である。
【0025】
プラグ23は、円筒状をなしている。プラグ23の外周面には、雄ねじ23aが設けられている。プラグ23は、第3の収容部12cに収容されている。具体的には、プラグ23の雄ねじ23aは、第3の収容部12cの雌ねじ12fに螺合されている。プラグ23は、第3の収容部12cに収容された状態で、収容穴13の内部に一部分が突出している。また、プラグ23は、弁座21を第2の収容部12bの底面12dに向けて付勢している。このため、弁座21はプラグ23と底面12dとの間に圧縮された状態で収容されている。プラグ23の中央には、軸線L2に沿った方向に貫通する貫通孔23bが設けられている。貫通孔23bの上流側部分は、貫通孔23bの下流側部分よりも小径となっている。貫通孔23bの上流側部分の内径は、弁座21の弁孔21aの内径と等しい。また、プラグ23の収容穴13の内部に突出している突出部23cには、貫通孔23bと収容穴13とを連通する流路孔23dが設けられている。流路孔23dは、軸線L2に直交する方向に沿って延びている。
【0026】
バルブステム24は、プラグ23の貫通孔23bの内部に収容されている。バルブステム24は、円柱部24aと、下流端部24bと、上流端部24cとを有している。
円柱部24aの外径は、貫通孔23bの内径よりも小さい。そのため、バルブステム24は、貫通孔23b内を軸線L2に沿って移動可能である。円柱部24aには、軸線L2に沿って延びる複数の流路孔24dが設けられている。複数の流路孔24dは、軸線L2回りに等角度間隔で設けられている。
【0027】
下流端部24bは、円柱状をなしている。下流端部24bは、円柱部24aから下流側に突出している。下流端部24bの外径は、円柱部24aよりも小さい。
上流端部24cは、円柱状をなしている。上流端部24cは、円柱部24aから上流側に突出している。上流端部24cの外径は、円柱部24aよりも小さい。また、上流端部24cの外径は、弁体22の円柱部22dの外径と等しい。上流端部24c及び弁体22の円柱部22dは、弁座21の弁孔21a及びプラグ23の貫通孔23bの上流側部分の内部に挿通されている。上流端部24c及び円柱部22dは、互いに軸線L2に沿った方向で当接している。
【0028】
図1に示すように、押圧機構30は、弁装置1の軸線L2と同軸上に設けられている。押圧機構30は、収容穴13に収容される。押圧機構30は、弁機構20の開度を調整する機能を有している。押圧機構30は、シリンダ31と、ピストン32と、第1のコイルばね33とを備えている。
【0029】
シリンダ31は、有底円筒状をなしている。シリンダ31の外周面の一部分には、雄ねじ31aが設けられている。シリンダ31は、その開口端部を収容穴13の開口端部に突き合わせるかたちで収容穴13の内部に設けられている。具体的には、シリンダ31は、シリンダ31の雄ねじ31aを収容穴13の雌ねじ13bに螺合することにより、収容穴13の内部に収容されている。なお、シリンダ31の開口端部の外周には、Oリング等のシール部材61が装着されている。シール部材61により収容穴13と外部との間の気密が確保されている。シリンダ31の内部には、ばね設置穴31bが設けられている。
【0030】
ピストン32は、有底円筒状をなしている。ピストン32は、その開口端部をシリンダ31の開口端部に突き合わせるかたちでシリンダ31の内部に設けられている。ピストン32の外径は、シリンダ31の内径よりも小さく設定されている。ピストン32は、軸線L2に沿った方向において往復動可能にシリンダ31の内部に収容されている。ピストン32は、シリンダ31の内部に収容されることにより、シリンダ31の内部を減圧室G1と、圧力調整室G2とに区画している。減圧室G1は、ピストン32の外底面32aと、収容穴13の底面13aと、収容穴13の内周面とで囲まれることで設けられている。減圧室G1は、ガス流路の一部分の一例である。なお、ピストン32の外周には、ウェアリングやリップシール等のシール部材62が装着されている。シール部材62により減圧室G1と圧力調整室G2との間の気密が確保されている。ピストン32の内部には、ばね設置穴32bが設けられている。また、ピストン32の外底面32aは、バルブステム24の下流端部24bに当接している。これにより、バルブステム24及び弁体22は、ピストン32の軸線L2に沿った往復動に応じて一体的に移動可能となる。
【0031】
第1のコイルばね33は、シリンダ31のばね設置穴31bの底面31cと、ピストン32のばね設置穴32bの底面32cとの間に圧縮された状態で収容されている。このとき、第1のコイルばね33の一方の端部33aがばね設置穴31bの底面31cと当接している。また、第1のコイルばね33の他方の端部33bがばね設置穴32bの底面32cと当接している。第1のコイルばね33は、ピストン32を上流側へ向けて付勢している。なお、第1のコイルばね33が当接しているピストン32のばね設置穴32bの底面32cは、ピストン32の座面の一例である。
【0032】
このように構成された弁装置1では、減圧室G1と圧力調整室G2の差圧、第2のコイルばね25及び第1のコイルばね33の付勢力に応じてピストン32がシリンダ31の内部を往復動する。そして、ピストン32の軸線L2に沿った方向における位置に応じて弁機構20の開度を調整することで、減圧室G1側の圧力が所定圧を超えないようにしている。
【0033】
ここで、
図3に示すように、第1のコイルばね33は、その軸線L3に沿って均一に圧縮した場合であっても、軸線L3に沿った軸方向力Fl以外に、軸線L3に直交する方向の横力Fsが発生する。横力Fsの軸線L3と直交する平面内での方向は、第1のコイルばね33の諸元に応じて一義的に決まる。第1のコイルばね33を圧縮した際に発生する全体の付勢力Fcの方向は、軸線L3に対して僅かに傾く。付勢力Fcは、軸方向力Fl及び横力Fsの合成力である。また、軸方向力Fl、横力Fs、及び付勢力Fcの関係性は、第2のコイルばね25においても同様である。すなわち、付勢力Fcが軸線L3に対して傾斜することにより、ピストン32及び弁体22が軸線L2に対して傾斜するおそれがある。
【0034】
その点、
図1に示すように、第1のコイルばね33は、その軸線L3が弁装置1の軸線L2に一致している。ピストン32のばね設置穴32bの底面32cには、第1のコイルばね33の横力Fsが作用している。第1のコイルばね33の横力Fsは、鉛直上方向に沿って作用している。すなわち、第1のコイルばね33の横力Fsは、反重力方向に作用している。具体的には、第1のコイルばね33は、第1のコイルばね33の横力Fsが鉛直上方向となるように軸線L2回りの回転位相を調整した上でシリンダ31とピストン32との間に圧縮された状態で設けられている。
【0035】
第2のコイルばね25も、その軸線L3が弁装置1の軸線L2に一致している。弁体22の有底穴22eの底面22fには、第2のコイルばね25の横力Fsが作用している。第2のコイルばね25の横力Fsは、鉛直上方向に沿って作用している。すなわち、第2のコイルばね25の横力Fsは、反重力方向に作用している。具体的には、第2のコイルばね25は、第2のコイルばね25の横力Fsが鉛直上方向となるように軸線L2回りの回転位相を調整した上で弁体22と支持部材80との間に圧縮された状態で設けられている。
【0036】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)第1のコイルばね33の横力Fsは、ピストン32の重力により弱められる。そのため、ピストン32に作用する第1のコイルばね33の付勢力Fcの方向を、第1のコイルばね33の軸線L3に沿った方向により近づけることができる。そのため、簡易な構成によりピストン32の傾斜が抑制できる。
【0037】
(2)第2のコイルばね25の横力Fsは、弁体22の重力により弱められる。そのため、弁体22に作用する第2のコイルばね25の付勢力Fcの方向を、第2のコイルばね25の軸線L3に沿った方向により近づけることができる。すなわち、ピストン32の傾斜を抑制しつつ弁体22の傾斜も抑制できる。
【0038】
(3)ピストン32の軸線L2に対する傾斜を抑制できるため、ピストン32の外周に設けられているシール部材62が、シリンダ31の内周面との間で偏摩耗することを抑制できる。
【0039】
(4)また、車両走行中には、弁装置1に振動が伝わる。そのため、ピストン32がシリンダ31の内部で鉛直方向に沿って振動し、ひいてはピストン32の外周面とシリンダ31の内周面とが接触することで異音が生じるおそれがある。弁装置1では、ピストン32の重力と横力Fsとが互いにつり合う方向に作用しているため、ピストン32の鉛直方向に沿った振動が抑制される。ひいては、弁装置1に生じる異音を抑制できる。
【0040】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態において、第1のコイルばね33は、横力Fsが水平よりも鉛直方向の上側に向くように軸線L2回りの回転位相を調整してもよい。
【0041】
・また、弁装置1の軸線L2は、仮想線L1に対していくらか角度をなすように交わっていてもよい。すなわち、仮想線L1に対して軸線L2が交わるように設けられていればどのように設けてもよい。このとき、横力Fsの鉛直上方向成分が発生するように第1のコイルばね33及び第2のコイルばね25の軸線L2回りの回転位相を調整した上で、第1のコイルばね33を底面32cに、第2のコイルばね25を底面22fに当接させる。
【0042】
すなわち、横力Fsが作用する方向が反重力方向でなくてもよい。横力Fsの鉛直上方向成分が発生する、換言すると横力Fsが鉛直方向の上側に作用するように第1のコイルばね33をピストン32の底面32cに当接させ、第2のコイルばね25を弁体22の底面22fに当接させていれば、どのように構成してもよい。
【0043】
・また、第2のコイルばね25の横力Fsを鉛直方向の上側に作用させなくてもよい。第1のコイルばね33の横力Fsが鉛直方向の上側に作用していればよい。
・本実施形態において、弁装置1は、燃料電池自動車に搭載されるものとしていたが、これに限らない。例えば、高圧ガスの圧力調整が必要となる装置に適用してもよい。
【0044】
・本実施形態において、シリンダ31は、収容穴13の内部に収容されていたが、例えば、収容穴13の開口部に有底円筒状のカバーを設け、収容穴13とカバーの有底穴とでシリンダを形成してもよい。このとき、ボディ10の収容穴13の開口部と、カバーの開口部との間の気密が保たれるようにする。
【符号の説明】
【0045】
1…弁装置、10…ボディ、11…一次ポート、12…供給流路、13…収容穴、14…送出流路、15…二次ポート、20…弁機構、21…弁座、22…弁体、22f…底面、25…第2のコイルばね、30…押圧機構、31…シリンダ、32…ピストン、32c…底面、33…第1のコイルばね、L1…仮想線、L2,L3…軸線、Fs…横力。