(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】圧力試験装置と圧力試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/00 20190101AFI20220405BHJP
G01N 3/36 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01M13/00
G01N3/36
(21)【出願番号】P 2018016123
(22)【出願日】2018-02-01
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】神馬 弘至
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-068663(JP,A)
【文献】特開昭62-259036(JP,A)
【文献】実開平06-024273(JP,U)
【文献】特表2009-503488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
F16F 9/00 - 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のショックアブソーバのベースバルブの耐圧試験を行う圧力試験装置であって、
前記ベースバルブを保持する保持機構と、
前記保持機構を介して前記
ベースバルブに流体圧を加えるシリンダ機構と、
前記シリンダ機構を作動させる加振機構と、
を備え、
前記保持機構は、前記
ベースバルブを着脱可能に保持する試験評価専用の治具によって構成され、
前記シリンダ機構は、前記
ベースバルブが通常の作動時に用いられる専用の流体を用いて前記
ベースバルブに流体圧を加えることを特徴とする圧力試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力試験装置であって、
前記シリンダ機構から前記保持機構に流体圧を供給する流体供給通路と、
前記保持機構から排出された流体を前記シリンダ機構に戻すリターン通路と、
前記流体供給通路から分岐して形成され、下流端が前記リターン通路に接続された分岐通路と、
前記分岐通路に設けられ、前記試験対象物に加えられた流体圧を計測する圧力検出器と、
前記分岐通路の前記圧力検出器の下流側に配置され、前記分岐通路内の流体圧が所定以上になった際に流体をリリーフするリリーフ弁と、
前記リターン通路に設けられ、前記保持機構から戻された流体を貯留するリザーバタンクと、
を備えたことを特徴とする圧力試験装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の圧力試験装置であって、
保持機構は、ほぼ有底筒状に形成され、前記リターン通路の上流端が接続される基体と、
ほぼ有蓋筒状に形成されて前記基体の開口端から内部にねじ込み固定され、前記流体供給通路の下流端が接続される保持部と、
を備え、
前記基体は、底壁の外周に一体に有する周壁の開口端側の内周面に雌ねじ部が形成されていると共に、前記底壁に前記リターン通路の上流端が接続される接続孔が貫通形成されている一方、
前記保持部は、蓋壁の外周に一体に有する周壁の外周に前記雌ねじ部に着脱可能に螺着する雄ねじ部が形成されていると共に、前記蓋壁に前記流体供給通路の下流端が接続される第2接続孔が貫通形成され、
前記蓋壁のほぼ中央に形成された雌ねじ孔に、固定用ボルトが螺着されていると共に、該固定用ボルトの頭部と該固定用ボルトの軸部に嵌挿された位置決めスペーサとの間に、ばね部材とばね押さえプレートが介装固定され、
前記ばね部材は、外周部が前記保持部の開口端縁に自身のばね復帰力で弾接して、前記第2接続孔と連通する保持部の内部に有する収容室を閉塞していると共に、前記固定用ボルトによって前記保持部から着脱可能に保持されていることを特徴とする圧力試験装置。
【請求項4】
請求項1に記載の圧力試験装置を用いた車両のショックアブソーバのベースバルブの耐圧試験を行う圧力試験方法であって、
前記加振機構によって
前記シリンダ機構を作動させて、
前記保持機構の内部に着脱可能に保持された
前記ベースバルブに、前記
ベースバルブが通常の作動時に用いられる専用の流体を用いて
前記シリンダ機構によって流体圧を加えることを特徴とする圧力試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ショックアブソーバの部品などの試験対象物に、ショックアブソーバ専用の流体圧を作用させる圧力試験装置と圧力試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来におけるショックアブソーバのバルブの作動試験は、一定の圧力に調整された専用のアブソーバオイルをバルブの一方向及び他方向(ショックアブソーバの伸長、圧縮方向に対応する方向)から作用させて、バルブの動作の良否を判定するようになっている。
【0003】
ところが、試験流体として実際に使用する専用のオイルを用いていることから、試験後にバルブがオイルで汚れて作業性が悪くなるおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば以下の特許文献1に記載された圧力試験装置は、試験流体として、ショックアブソーバのバルブに所定の圧力に調整された揮発性を有する洗浄剤を用いて、ショックアブソーバの圧縮方向または伸長方向に対応したバルブの動作を試験するものである。
【0005】
このように、試験流体として、揮発性を有する洗浄液を用いることによって、洗浄処理をすることなく、バルブ内部などに異物が付着または残留することを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の圧力試験装置にあっては、試験流体として揮発性を有する洗浄剤を用いていることから、正規のオイルとは粘度に起因した流動抵抗などが大きく相違している。このため、バルブ作動の適正な試験評価が得られないおそれがある。
【0008】
しかも、バルブ単体の試験を行うために、製品としてのショックアブソーバ自体を利用していることから、試験終了後は、ショックアブソーバを、その都度解体してバルブを取り出さなければならない。この結果、試験作業が煩雑になって作業能率の低下を招いている。
【0009】
本発明は、前記従来の技術的課題に鑑みて案出されたもので、試験対象物の適正な試験結果が得られると共に、試験作業能率の向上が図り得る圧力試験装置及び圧力試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、車両のショックアブソーバのベースバルブの耐圧試験を行う圧力試験装置であって、
前記ベースバルブを保持する保持機構と、
前記保持機構を介して前記ベースバルブに流体圧を加えるシリンダ機構と、
前記シリンダ機構を作動させる加振機構と、
を備え、
前記保持機構は、前記ベースバルブを着脱可能に保持する試験評価専用の治具によって構成され、
前記シリンダ機構は、前記ベースバルブが通常の作動時に用いられる専用の流体を用いて前記ベースバルブに流体圧を加えることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記シリンダ機構から前記保持機構に流体圧を供給する流体供給通路と、前記保持機構から排出された流体を前記シリンダ機構に戻すリターン通路と、前記流体供給通路から分岐して形成され、下流端が前記リターン通路に接続された分岐通路と、
前記分岐通路に設けられ、前記試験対象物に加えられた流体圧を計測する圧力検出器と、前記分岐通路の前記圧力検出器の下流側に配置され、前記分岐通路内の流体圧が所定以上になった際に流体をリリーフするリリーフ弁と、前記リターン通路に設けられ、前記保持機構から戻された流体を貯留するリザーバタンクと、を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、保持機構は、ほぼ有底筒状に形成され、前記リターン通路の上流端が接続される基体と、
ほぼ有蓋筒状に形成されて前記基体の開口端から内部にねじ込み固定され、前記流体供給通路の下流端が接続される保持部と、
を備え、
前記基体は、底壁の外周に一体に有する周壁の開口端側の内周面に雌ねじ部が形成されていると共に、前記底壁に前記リターン通路の上流端が接続される接続孔が貫通形成されている一方、
前記保持部は、蓋壁の外周に一体に有する周壁の外周に前記雌ねじ部に着脱可能に螺着する雄ねじ部が形成されていると共に、前記蓋壁に前記流体供給通路の下流端が接続される第2接続孔が貫通形成され、
前記蓋壁のほぼ中央に形成された雌ねじ孔に、固定用ボルトが螺着されていると共に、該固定用ボルトの頭部と該固定用ボルトの軸部に嵌挿された位置決めスペーサとの間に、ばね部材とばね押さえプレートが介装固定され、
前記ばね部材は、外周部が前記保持部の開口端縁に自身のばね復帰力で弾接して、前記第2接続孔と連通する保持部の内部に有する収容室を閉塞していると共に、前記固定用ボルトによって前記保持部から着脱可能に保持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願請求項1に記載の発明によれば、ベースバルブの適正な試験結果が得られると共に、試験作業能率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る圧力試験装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に供される保持治具の各構成部品を断面して示す分解図である。
【
図3】本実施形態に供される保持治具を組立てた状態を示す縦断面図である。
【
図4】本実施形態に供される保持治具の一部をカットして示す斜視図である。
【
図5】本実施形態における試験対象物であるベースバルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧力試験装置と圧力試験方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る圧力試験装置の一実施形態を示す概略図である。
【0019】
圧力試験装置は、試験対象物の一つの例として、複筒式のショックアブソーバに用いられるベースバルブ22を対象としている。そして、この圧力試験装置は、前記ベースバルブ22を内部に着脱可能に保持する保持機構である保持治具1と、この保持治具1を介してベースバルブ22に流体圧であるオイル圧を加えるシリンダ機構である油圧シリンダ2と、この油圧シリンダ2を作動させる加振機構3と、を備えている。
【0020】
そして、油圧シリンダ2によって保持治具1内のベースバルブ22に油圧作用させる油圧回路4としては、前記油圧シリンダ2から保持治具1にオイル圧を給排する流体供給通路である給排通路5と、保持治具1から排出されたオイルを油圧シリンダ2にリターンさせるリターン通路6と、前記給排通路5から分岐して形成され、下流端が前記リターン通路6に接続された分岐通路7と、この分岐通路7に設けられ、ベースバルブ22に掛かるオイル圧を計測する圧力検出器である圧力計8と、前記分岐通路7の圧力計8の下流側に配置され、前記分岐通路7内のオイル圧が所定以上になった際にオイルをリリーフするリリーフ弁9と、前記リターン通路6の下流側に設けられ、前記保持治具1から戻されたオイルを貯留するリザーバタンク10と、を備えている。
【0021】
また、リターン通路6のリザーバタンク10の下流側には、油圧シリンダ2側からリザーバタンク10側へのオイルの逆流を規制する逆止弁11が設けられている。
【0022】
前記加振機構3は、一般的なものであって、油圧または電動モータによって振動発生機のピストンロッドをストロークさせて油圧シリンダ2を作動させるようになっている。また、この加振機構3は、コントロールユニット14から出力された制御信号(制御電流)によってストロークまたは回転速度などが制御されることにより、駆動が制御されるようになっている。
【0023】
このコントロールユニット14は、予めストロークや速度、圧力などがプログラムされており、このプログラムの起動と同時にパラメータによって決定された動作にしたがって前記電動モータを駆動制御するようになっている。
【0024】
前記油圧シリンダ2は、シリンダ部2aの内部にピストンロッド2bが伸縮可能に設けられていると共に、該ピストンロッド2bの先端にシリンダ部2a内を摺動するピストン2cが設けられている。
【0025】
このピストン2cは、シリンダ部2a内を第1油圧室2dと第2油圧室2eに隔成しつつ進退動可能に収容されていると共に、内部に図外のポートやこのポートを開閉する弁体が設けられている。また、前記第2油圧室2eには、別の第2リザーバタンク12が連通路13を介して連通している。この第2リザーバタンク12内には、製品としてのショックアブソーバ専用の正規のオイルOが充填されており、この正規のオイルOが、連通路13から第2油圧室2e内に給排されるようになっている。この第2油圧室2e内のオイルは、ピストン2cの図中左方向の移動に伴って該ピストン2cのポートを介して第1油圧室2dに給排されるようになっている。
【0026】
すなわち、ピストンロッド2bが、圧縮方向へストローク(図中右方向の移動)すると、ピストン2cによって加圧された第1油圧室2d内のオイルOが給排通路5を介して保持治具1内に供給されるようになっている。一方、ピストンロッド2bが、伸長方向へストローク(図中左方向の移動)すると、ピストン2cの同方向への移動に伴って第1油圧室2dが負圧になる。このため、保持治具1や給排通路5内のオイルOの一部が第1油圧室2dに戻されるようになっている。
【0027】
また、ピストン2cが図中右方向へ移動した際には、リザーバタンク12から第2油圧室2e内にオイルOが供給され、ピストン2cが左方向へ移動した際には、ポートを介して弁体が開かれて第2油圧室2eから第1油圧室2dにオイルOが置換流入されるようになっている。
【0028】
図2は前記保持治具1の各構成部品を断面して示す分解図、
図3は保持治具1の各構成部品を組立てた状態を示す縦断面図、
図4は保持治具1の一部をカットして示す斜視図、
図5は保持治具1に保持されるベースバルブを示す断面図である。
【0029】
保持治具1は、
図2~
図4に示すように、ほぼ有底円筒状に形成され、前記リターン通路6の上流端が接続される基体20と、ほぼ有蓋円筒状に形成されて前記基体20にねじ込み固定され、前記給排通路5の一端部5aが接続される保持部21と、を備えている、
前記基体20は、比較的肉厚な円盤状の底壁20aと、該底壁20aの外周部から上方へ立ち上がった円筒状の周壁20bと、底壁20aと周壁20bに囲まれて形成された円柱状の油室20cと、を有している。
【0030】
底壁20aは、ほぼ中央位置に前記リターン通路6の上流端6aが接続される接続孔20dが
図2中上下方向に沿って貫通形成されている。
【0031】
周壁20bは、内周面、つまり内側の上部開口端20eの内周面にテーパ状の雌ねじ部20fが形成されている。この雌ねじ部20fは、本実施形態では周壁20bの上下方向のほぼ中央から上部側に形成されているが、内周面全体に形成することも可能である。
【0032】
なお、この基体20は、図外の支持装置によって安定かつ確実に支持されている。
【0033】
前記保持部21は、基体20と同軸状に配置されており、蓋壁である比較的肉厚の円盤状の上壁21aと、該上壁21aの外周部から下方へ向かって突設された円筒壁21bと、前記上壁21aと円筒壁21bとによって囲まれて形成された逆凹状の収容室21cと、を有している。
【0034】
上壁21aは、ほぼ中央位置に雌ねじ孔21dが図中上下方向に沿って貫通形成されていると共に、該雌ねじ孔21dの側部に、給排通路5の一端部5aが接続される第2接続孔21fが同じく上下方向に貫通形成されている。
【0035】
この第2接続孔21fは、内周面が段差形状に形成されて、前記収容室21cと反対側の上部が給排通路5の一端部5aに直接的に接続されるようになっていると共に、この下部の小径部21gが収容室21cに臨んで開口形成されている。
【0036】
なお、円筒壁21bは、収容室21c側の内周面に小径部21gの内周面に沿った半円状の通路溝21hが切欠形成されている。
【0037】
また、円筒壁21bは、外周面の軸方向のほぼ中央から下方に亘って基体の20の雌ねじ部20fに螺着するテーパ状の雄ねじ部21iが形成されている。
【0038】
この雄ねじ部21iは、その軸方向の長さ(円筒壁21bの軸方向長さ)が基体20の雌ねじ部20fとの螺合幅を決定するものである。つまり、前記雌雄ねじ部20f、21iのねじ込み量は、基体20の油室20cの容積を決定するものであるから、この必要な容積を確保する程度の大きさに設定されている。
【0039】
基体20と保持部21との間には、試験対象物であるばね部材としてのベースバルブ22と、該ベースバルブ22の位置決めを行うスペーサ23と、ベースバルブ22の下部を支持するばね押さえプレートであるリテーナ24と、このベースバルブ22とスペーサ23及びリテーナ24を保持部21に固定する固定用ボルト25と、が設けられている。
【0040】
前記ベースバルブ22は、
図5にも示すように、ばね鋼からなる薄肉円盤状のばね部22aと、該ばね部22aの外周部上面に加硫接着された円環状のシール部22b、とを有している。
【0041】
ばね部22aは、
図5に示すように、外周部22cの外径Dが収容室21cの下部内径よりも僅かに大きく形成されている。また、ばね部22aは、ほぼ中央位置に後述する固定用ボルト25の軸部25bが挿入されるボルト挿入孔22dが貫通形成されている。
【0042】
さらに、このばね部22aは、スペーサ23及びリテーナ24を介して固定用ボルト25によって保持部21に固定された状態では、収容室21cの下部全体を覆う形に配置されている。また、このとき、ばね部22aは、外周部22cが自身の弾性復帰力によって収容室21cの下部孔縁に弾接して該収容室21cを閉塞している。
【0043】
シール部22bは、例えば合成ゴム材によって円環状に形成されて、
図5に示すように、上面22eが外周部22fから内周部22gに渡って漸次下り傾斜状に形成されている。また、このシール部22bは、外径が収容室21cの内径よりも僅かに小さく形成されている。したがって、シール部22bは、
図3に示すように、スペーサ23を介して固定用ボルト25によって保持部21に固定された状態では、外周面が収容室21cの下部内周面に液密的に接触して収容室21c内をシールするようになっている。
【0044】
スペーサ23は、
図2及び
図3に示すように、金属材によってほぼ円筒状に形成されて、内部に固定用ボルト25の軸部25bが挿入される挿入孔23aが貫通形成されている。また、スペーサ23の軸方向の長さLは、固定用ボルト25によってベースバルブ22を保持部21に固定した際に、ベースバルブ22のばね部22aと保持部21の収容室21cの下部開口との間を適正な位置に位置決めする長さに設定されている。つまり、このスペーサ23の軸方向の長さLによって、収容室21cに対するばね部22aとシール部22bの相対位置が決定されるようになっている。
【0045】
リテーナ24は、金属材によって比較的肉厚な円盤状に形成されて剛性が確保されていると共に、ほぼ中央位置に固定用ボルト25の軸部25bが挿入される挿入孔24aが貫通形成されている。また、リテーナ24は、上面24bの外周側に円環状の突起部24cが一体に設けられており、この突起部24cの存在によって、上面24bの外周部に環状凹部24dが形成されている。
【0046】
そして、このリテーナ24が固定用ボルト25によってベースバルブ22と一緒に保持部21に固定された状態では、
図3に示すように、ベースバルブ22のばね部22aの外周部22cがリテーナ24の環状凹部24dを覆う形に配置されている。また、リテーナ24の環状凹部24dは、ベースバルブ22の上面(ばね部22aの上面)に収容室21cから油圧が作用した際に、ばね部22aの外周部22cが突起部24cを支点としての図中下方への撓み変形を許容するようになっている。
【0047】
固定用ボルト25は、一般的なもので、外面にドライバ工具先端が嵌合可能な十字溝が形成された頭部25aと、該頭部25aの内端面から一体に伸びた軸部25bと、を有している。この軸部25bは、先端部外周に前記保持部21の雌ねじ孔21dに螺着する雄ねじ25cが切られている。そして、この固定用ボルト25は、軸部25bを介して取り付けられたリテーナ24とベースバルブ22及びスペーサ23を基体20に対して所定の軸トルクによって一緒に共締め固定するようになっている。
〔本実施形態の作用効果〕
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0048】
前述したように、まず、ベースバルブ22を、固定用ボルト25によってスペーサ23やリテーナ24と一緒に保持部21に予め取り付け固定しておく。この状態で前記保持部21を、基体20に対してテーパ状の雌雄ねじ部20f、21iを締め付け固定する。
【0049】
次に、前記ベースバルブ22の動作試験を行う。つまり、加振機構3をコントロールユニット14から出力された制御信号(制御電流)によって駆動させる。これによって、油圧シリンダ2のピストンロッド2bが、
図1に示す位置から図中右方向(圧縮方向)へストロークして、ピストン2cを同方向へ移動させる。
【0050】
したがって、第1油圧室2d内が高圧となって、該第1油圧室2d内のオイルO(油圧)が給排通路5に吐出される。この給排通路5の吐出されたオイルOは、保持治具1の第2接続孔21fから収容室21c内に供給される。
【0051】
収容室21c内に供給されたオイルOは、その圧力が圧力計8に表示されると共に、コントロールユニット14によって予め設定された所定圧に制御される。この所定圧は、例えば、ベースバルブ22が開き始める動作開始圧Poを基準として、動作又は不動作を確認できる圧力に設定されている。前記所定圧は、例えば5MPaに設定されている。
【0052】
そして、収容室21c内のオイルOの圧力が、所定圧まで上昇するとベースバルブ22に作用し、このベースバルブ22のばね部22aのばね力に打ち勝って、外周部22cがリテーナ24の突起部24cを支点として、
図3に示す位置から下方へ撓み変形する。
【0053】
これによって、シール部22bが、収容室21cの下部開口端から離間してシールが解除(開路)されることから、収容室21c内のオイルOは、
図3の矢印で示すように、シール部22bとばね部22aのそれぞれの外周部22cを通って油室20c内に流入する。この油室20c内のオイルOは、接続孔20dを通ってリターン通路6内に流入する。前記リターン通路6に流入したオイルOは、リザーバタンク10内に流入して、ここに一時的に貯留される。
【0054】
なお、油圧シリンダ2から給排通路5を通って収容室21cに吐出されたオイルOは、逆止弁11によってリザーバタンク10には直接供給されることはない。また、給排通路5に供給された油圧は、前述のように、分岐通路7を介して圧力計8によってチェックされるが、この分岐通路7内に油圧が過剰上昇した場合には、リリーフ弁9によって圧力調整されながらリターン通路6に戻される。
【0055】
また、油圧シリンダ2のピストンロッド2bが、伸長ストロークした場合は、第1油圧室2dが負圧になることから、リザーバタンク10や給排通路5内などのオイルOが第1油圧室2d内に戻される。
【0056】
そして、前記ベースバルブ22の動作など試験が終了した場合は、基体20から保持部21を雌雄ねじ部20f、21iを介して緩めて取り外す。その後、固定用ボルト25を緩めてスペーサ23やリテーナ24と共にベースバルブ22を保持部21から取り外す。
【0057】
この試験により一定の評価が得られたベースバルブ22は、製品であるショックアブソーバに適用されるが、一定の評価が得られないものは、廃棄あるいは再度調整などを行って再度試験を行う。
【0058】
以上のように、本実施形態における試験用のオイルOは、正規のオイルOが使用されることから、粘度に起因した収容室21cからの流動抵抗などに対する影響も少なくなり、ショックアブソーバに適用された状態での適正な試験評価が得られる。
【0059】
すなわち、ベースバルブ22の既定圧力負荷による耐久試験としての、シール部22bの切れや破損、あるいは裂傷などの状態や、シール部22bのばね部22aからの剥離状態、さらには、ばね部22aの亀裂や割れなどの状態を正確に評価することが可能になる。
【0060】
また、ベースバルブ22の試験を、製品としてのショックアブソーバの内部で行うのではなく、ベースバルブ22が着脱可能な保持治具1を利用して行うことから、その試験作業が極めて容易になり、該作業能率の向上が図れる。
【0061】
さらに、圧力試験装置も簡素な油圧回路を利用しているので、該装置の製造作業も容易である。
【0062】
また、保持治具1は、基体20と保持部21がテーパ状の雌雄ねじ部20f、21iによって結合されていることから、シール性能が発揮されて油室20cと収容室21cから外部へのオイルOのリークが抑制される。
【0063】
本実施形態では、試験対象物としてショックアブソーバのベースバルブ22としたが、これに限定されるものではなく、車両のブレーキやクラッチに用いられるカップやピストンシールなどの圧力負荷によるシール性耐久試験などにも利用することが可能である。この場合、試験における使用流体としては、正規のブレーキフルードや鉱物油が用いられる。
【0064】
また、他の試験対象物としては、機械類に一般的に使用されるOリングなどのシール部品に適用して、これの圧力負荷によるシール性耐久試験にも利用できる。この場合の使用流体としては、通常の水や正規のオイルが用いられる。
【0065】
また、保持治具1は、その構造が前記実施形態のものに限定されるものではなく、前述した試験対象物に合わせて任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…保持治具(保持機構)、 2…油圧シリンダ(シリンダ機構)、 2a…シリンダ部、 2b…ピストンロッド、 2c…ピストン、 3…加振機構、 4…油圧回路、 5…給排通路(流体供給通路)、 5a…一端部、 6…リターン通路、 7…分岐通路、 8…圧力検出器(圧力計)、 9…リリーフ弁、 10…リザーバタンク、 11…逆止弁、 12…第2リザーバタンク、 14…コントロールユニット、 20…基体、 20a…底壁、 20b…周壁、 20c…油室、 20d…接続孔、 20e…開口端、 21…保持部、 21a…上壁、 21b…円筒壁、 21c…収容室、 21d…雌ねじ孔、21f…第2接続孔、22…ベースバルブ(試験対象物)、22a…ばね部、22b…シール部、22d…挿入孔、23…スペーサ、23a…挿入孔、24…リテーナ、25…固定用ボルト、25b…軸部、25c…雄ねじ部。