(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 3/44 20060101AFI20220405BHJP
A01B 63/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A01B3/44
A01B63/10 F
(21)【出願番号】P 2018026913
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】足立 周一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05833010(US,A)
【文献】特開2017-169495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 3/44
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機が昇降可能に連結される走行機体と、
前記作業機が備える油圧アクチュエータに作動油を出力する外部油圧取出装置と、
前記外部油圧取出装置の油圧出力状態を制御する制御部と、を備える作業車両であって、
前記制御部は、前記外部油圧取出装置の油圧出力状態を予め設定された設定情報に基づいて自動的に制御する外部油圧自動制御手段と、
前記外部油圧自動制御手段が前記外部油圧取出装置の外部油圧ポートから作動油を出力させるとき、所定の報知を行う外部油圧報知手段と、を備え、
前記外部油圧取出装置は、作動油を出力する外部油圧ポートを複数備え
、
前記設定情報は、作業機上昇毎に作動油を交互に出力する一対の前記外部油圧ポートが設定される交互出力ポート設定情報を含み、
前記外部油圧自動制御手段は、作業機上昇毎に、前記交互出力ポート設定情報で設定された一対の前記外部油圧ポートから交互に作動油を出力させ、
前記外部油圧報知手段は、一対の前記外部油圧ポートを識別するためのシンボルマークを液晶表示部に表示させるとともに、次回作動油を出力する前記外部油圧ポートのシンボルマークの表示形態と、前回作動油を出力した前記外部油圧ポートのシンボルマークの表示形態と、を異ならせることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記外部油圧報知手段は、前記外部油圧自動制御手段が前記外部油圧取出装置の外部油圧ポートから作動油を出力させるとき、液晶表示部及びブザーによって報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記外部油圧取出装置は、作動油を出力する前記外部油圧ポートを複数備え、
前記外部油圧報知手段は、複数の前記外部油圧ポートを識別するためのシンボルマークを液晶表示部に表示させるとともに、該シンボルマークの表示形態の変化に基づいて作動油出力中の前記外部油圧ポートを報知することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部油圧取出装置を備えるトラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
外部油圧取出装置を備える作業車両が知られている。外部油圧取出装置は、油圧アクチュエータを備える作業機を走行機体に連結して作業を行う場合に使用されるものであり、外部油圧取出装置の外部油圧ポートに油圧配管を介して作業機の油圧アクチュエータを接続すると、走行機体の運転部に設けられる外部油圧操作具(バルブ切換操作具)の操作に基づいて作業機の油圧アクチュエータを作動させることが可能になる。
【0003】
しかしながら、作業機の油圧アクチュエータを頻繁に作動させる作業では、外部油圧操作具の操作頻度が高くなり、オペレータの負担が増大する虞がある。例えば、走行機体にリバーシブルプラウを連結して耕起作業を行う場合、1行程が終わる毎に枕地でリバーシブルプラウを上昇させた後、油圧アクチュエータを作動させてリバーシブルプラウを上下反転させる必要があるので、枕地におけるオペレータの操作(1行程終了時の作業機上昇操作、リバーシブルプラウ上下反転操作、機体旋回操作、次行程開始時の作業機下降操作)が煩雑になり、作業効率が低下する虞がある。
【0004】
そこで、作業機の上昇に応じてリバーシブルプラウを自動的に上下反転させる作業車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような作業車両によれば、リバーシブルプラウを用いた耕起作業におけるオペレータの操作負担を軽減し、作業性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の作業車両のように、作業機に対する作動油出力を自動化した場合、作業機に対する作動油出力をオペレータが認識できず、作業機の動作をオペレータが把握できない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、作業機が昇降可能に連結される走行機体と、前記作業機が備える油圧アクチュエータに作動油を出力する外部油圧取出装置と、前記外部油圧取出装置の油圧出力状態を制御する制御部と、を備える作業車両であって、前記制御部は、前記外部油圧取出装置の油圧出力状態を予め設定された設定情報に基づいて自動的に制御する外部油圧自動制御手段と、前記外部油圧自動制御手段が前記外部油圧取出装置の外部油圧ポートから作動油を出力させるとき、所定の報知を行う外部油圧報知手段と、を備え、前記外部油圧取出装置は、作動油を出力する外部油圧ポートを複数備え、前記設定情報は、作業機上昇毎に作動油を交互に出力する一対の前記外部油圧ポートが設定される交互出力ポート設定情報を含み、前記外部油圧自動制御手段は、作業機上昇毎に、前記交互出力ポート設定情報で設定された一対の前記外部油圧ポートから交互に作動油を出力させ、前記外部油圧報知手段は、一対の前記外部油圧ポートを識別するためのシンボルマークを液晶表示部に表示させるとともに、次回作動油を出力する前記外部油圧ポートのシンボルマークの表示形態と、前回作動油を出力した前記外部油圧ポートのシンボルマークの表示形態と、を異ならせることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両であって、前記外部油圧報知手段は、前記外部油圧自動制御手段が前記外部油圧取出装置の外部油圧ポートから作動油を出力させるとき、液晶表示部及びブザーによって報知を行うことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の作業車両であって、前記外部油圧取出装置は、作動油を出力する前記外部油圧ポートを複数備え、前記外部油圧報知手段は、複数の前記外部油圧ポートを識別するためのシンボルマークを液晶表示部に表示させるとともに、該シンボルマークの表示形態の変化に基づいて作動油出力中の前記外部油圧ポートを報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、制御部は、外部油圧取出装置の油圧出力状態を予め設定された設定情報に基づいて制御する外部油圧自動制御手段を備えるので、オペレータの操作負担を軽減し、作業性を向上させることができる。また、制御部は、外部油圧自動制御手段が前記外部油圧取出装置の外部油圧ポートから作動油を出力させるとき、所定の報知を行う外部油圧報知手段を備えるので、オペレータは、外部油圧自動制御手段による自動的な作動油出力を認識することができる。さらに設定情報は、作業機上昇毎に作動油を交互に出力する一対の外部油圧ポートが設定される交互出力ポート設定情報を含み、外部油圧自動制御手段は、作業機上昇毎に、交互出力ポート設定情報で設定された一対の外部油圧ポートから交互に作動油を出力させるので、作業機上昇毎に、一対の外部油圧ポートから交互に作動油を出力させる必要がある作業機(例えば、リバーシブルプラウ)にも対応できる。また、外部油圧報知手段は、一対の外部油圧ポートを識別するためのシンボルマークを液晶表示部に表示させるとともに、次回作動油を出力する外部油圧ポートのシンボルマークの表示形態と、前回作動油を出力した外部油圧ポートのシンボルマークの表示形態と、を異ならせるので、オペレータは、次回作動油を出力する外部油圧ポートを予測することができる。
請求項2の発明によれば、外部油圧報知手段は、前記外部油圧自動制御手段が前記外部油圧取出装置の外部油圧ポートから作動油を出力させるとき、液晶表示部及びブザーによって報知を行うので、オペレータは、外部油圧自動制御手段による自動的な作動油出力を確実に認識することができる。
請求項3の発明によれば、外部油圧報知手段は、複数の外部油圧ポートを識別するためのシンボルマークを液晶表示部に表示させるとともに、該シンボルマークの表示形態の変化に基づいて作動油出力中の外部油圧ポートを報知するので、オペレータは、作動油出力中の外部油圧ポートを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトラクタの機体後部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るトラクタの運転部を示す内部斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るトラクタの制御構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るトラクタの液晶表示装置の表示例を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るトラクタの外部油圧自動制御の制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係るトラクタの外部油圧手動制御の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、1は作業車両であるトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、エンジンが搭載されるエンジン搭載部2と、クローラ式の走行部3と、オペレータが乗車する運転部4と、作業機5が連結される作業機連結部6と、を備える。
【0011】
作業機連結部6は、作業機5を昇降自在に支持する昇降リンク機構7、該昇降リンク機構7を左右一対のリフトロッド8を介して吊持するリフトアーム9、該リフトアーム9を昇降動作させるリフトシリンダ(図示せず)などを備えて構成されており、リフトアーム9の昇降動作に応じて作業機5が昇降されるとともに、左右いずれか一方のリフトロッド8に介設されるリフトロッドシリンダ(図示せず)の伸縮動作に応じて作業機5が左右傾斜される。
【0012】
図1に示される作業機5は、リバーシブルプラウであって、上下反転状に配置された一対のプラウ5a、5bと、一対のプラウ5a、5bを上下反転させる反転用油圧シリンダ5c(油圧アクチュエータ)と、を備えており、走行機体1にリバーシブルプラウを連結して耕起作業を行う場合、1行程が終わる毎に枕地でリバーシブルプラウを上昇させた後、圃場の耕起方向を一方向に揃えるために、反転用油圧シリンダ5cを作動させて一対のプラウ5a、5bを上下反転させる必要がある。
【0013】
図2に示すように、走行機体1の後部には、作業機5が備える油圧アクチュエータに作動油を出力する外部油圧取出装置10が設けられている。本実施形態の外部油圧取出装置10は、外部油圧ポートAと外部油圧ポートBとを1組として構成され、外部油圧ポートAから作動油を出力して外部油圧ポートBで戻り油を受け入れる第1方向作動状態と、外部油圧ポートBから作動油を出力して外部油圧ポートAで戻り油を受け入れる第2方向作動状態と、両外部油圧ポートA、Bを閉じる作動停止状態と、に切り換えが可能となっている。
【0014】
例えば、作業機5としてリバーシブルプラウが連結された本実施形態のトラクタでは、外部油圧取出装置10の外部油圧ポートAに油圧配管(図示せず)を介して反転用油圧シリンダ5cの縮小側ポートを接続し、且つ、外部油圧ポートBに油圧配管(図示せず)を介して反転用油圧シリンダ5cの伸長側ポートを接続すると、外部油圧バルブA(
図4参照)の切換操作に応じて反転用油圧シリンダ5cを縮小方向に作動させたり、外部油圧バルブB(
図4参照)の切換操作に応じて反転用油圧シリンダ5cを伸長方向に作動させることにより、リバーシブルプラウを任意の方向に反転動作させることが可能になる。
【0015】
なお、本実施形態の外部油圧取出装置10は、外部油圧ポートA、B以外に、第2の外部油圧ポートA2、B2及び第3の外部油圧ポートA3、B3を備えるが、本明細書では外部油圧ポートA、Bを中心に説明する。
【0016】
図2に示すように、走行機体1の後部には、機体外部で油圧系の操作を行うための操作部11~15が複数設けられている。例えば、走行機体1の後部左側には、リフトアーム9を昇降操作する機外リフトアーム操作部11と、外部油圧取出装置10の油圧出力状態を操作する機外外部油圧操作部12と、が設けられ、走行機体1の後部右側には、外部油圧取出装置10の油圧出力状態を操作する機外外部油圧操作部13と、リフトロッドシリンダを伸縮操作する機外リフトロッド操作部14と、リフトアーム9を昇降操作する機外リフトアーム操作部15と、が設けられている。
【0017】
各操作部11~15は、上下2方向に押し操作可能な押し釦式のスイッチであり、例えば、機外外部油圧操作部12、13の上側を押し操作すると、機外外部油圧スイッチB(
図4参照)のONに伴って外部油圧バルブBが作動することで反転用油圧シリンダ5cが伸長動作し、機外外部油圧操作部12、13の下側を押し操作すると、機外外部油圧スイッチA(
図4参照)のONに伴って外部油圧バルブAが作動することで反転用油圧シリンダ5cが縮小動作する。
【0018】
図3に示すように、運転部4は、オペレータが座る運転席16、該運転席16の前方に設けられるステアリングハンドル17、該運転席16の右側方に設けられる液晶表示装置18(液晶表示部)や複数の操作具などを備える。液晶表示装置18は、タッチパネル付きの液晶表示部であり、表示部及び入力部に兼用される。
【0019】
運転席16の右側方に設けられる複数の操作具には、走行変速を行う主変速レバー19及び副変速レバー20、作業機5を昇降操作する昇降操作レバー21、外部油圧取出装置10の油圧出力状態を操作する機内外部油圧操作具22などが含まれている。
【0020】
機内外部油圧操作具22は、機外外部油圧操作具12、13と同様に、上下2方向に押し操作可能な押し釦式のスイッチであり、例えば、機内外部油圧操作部22の上側を押し操作すると、機内外部油圧スイッチB(
図4参照)のONに伴って外部油圧バルブBが作動することで反転用油圧シリンダ5cが伸長動作し、機内外部油圧操作部22の下側を押し操作すると、機内外部油圧スイッチA(
図4参照)のONに伴って外部油圧バルブAが作動することで反転用油圧シリンダ5cが縮小動作する。なお、
図3において、符号23、24は、第2の外部油圧ポートA2、B2及び第3の外部油圧ポートA3、B3の油圧出力状態を操作するレバー方式の外部油圧操作具である。
【0021】
図4に示すように、走行機体1には、各種の制御を行う制御部25が設けられている。本実施形態の制御部25は、主に操作系の入出力機器が接続される操作系制御部26と、主に作業機系の出力機器が接続される作業機系制御部27と、これらを通信可能に接続するCANなどのネットワークと、を備えて構成されるが、制御部25は、1つの制御モジュールで構成してもよいし、3つ以上の制御モジュールで構成してもよい。
【0022】
操作系制御部26には、前述した機外外部油圧スイッチA、機外外部油圧スイッチB、機内外部油圧スイッチA及び機内外部油圧スイッチBに加え、リフトアーム9の昇降角度を検出する作業機高さセンサ28、警報音を出力するブザー29などが接続されるとともに、ネットワークを介して液晶表示装置18が接続されている。また、作業機系制御部27には、前述した外部油圧バルブA、外部油圧バルブBなどが接続されるとともに、ネットワークを介して液晶表示装置18が接続されている。
【0023】
制御部25は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能構成として、外部油圧自動制御手段、外部油圧出力停止手段、外部油圧手動制御手段などを備える。
【0024】
外部油圧自動制御手段は、作業機5が上昇したと判断したとき、外部油圧取出装置10の油圧出力状態を予め設定された設定情報に基づいて制御する機能構成であり、設定情報には、作業機上昇時に作動油を出力する外部油圧ポートA、Bが設定される出力ポート設定情報と、作業機上昇時に作動油を出力する時間が設定される出力時間設定情報と、が含まれる。
【0025】
このような外部油圧自動制御手段によれば、作業機5の上昇に連動して作業機5の油圧アクチュエータを自動的に作動させることが可能になるので、オペレータの操作負担を軽減し、作業性を向上させることができる。また、外部油圧自動制御手段の設定情報には、作業機上昇時に作動油を出力する外部油圧ポートA、Bが設定される出力ポート設定情報と、作業機上昇時に作動油を出力する時間が設定される出力時間設定情報と、が含まれるので、作業機5側に姿勢センサ等の検出装置を設けなくても、各種の作業機5に対する作動油出力を自動化することが可能になる。
【0026】
また、設定情報は、作業機上昇毎に作動油を交互に出力する一対の外部油圧ポートA、Bが設定される交互出力ポート設定情報を含むことができる。この場合、外部油圧自動制御手段は、作業機上昇毎に、交互出力ポート設定情報で設定された一対の外部油圧ポートA、Bから交互に作動油を出力させるので、作業機上昇毎に、一対の外部油圧ポートA、Bから交互に作動油を出力させる必要があるリバーシブルプラウなどの作業機5にも対応できる。
【0027】
外部油圧出力停止手段は、所定の操作具が操作されたとき、外部油圧自動制御手段による外部油圧取出装置10の油圧出力を停止させる機能構成であり、具体的には、機外外部油圧操作部12、13、機内外部油圧操作部22のいずれかが操作された場合、外部油圧自動制御手段による外部油圧取出装置10の油圧出力を停止させる。このような外部油圧出力停止手段によれば、外部油圧取出装置10における油圧出力の緊急停止が可能となり、安全性を向上させることができる。
【0028】
外部油圧報知手段は、外部油圧自動制御手段が外部油圧取出装置10の外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させるとき、所定の報知を行う機能構成である。このような外部油圧報知手段によれば、オペレータは、外部油圧自動制御手段による自動的な作動油出力を認識することができる。
【0029】
本実施形態の外部油圧報知手段は、外部油圧自動制御手段が外部油圧取出装置10の外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させるとき、液晶表示装置18による表示と、ブザー29による警報音の出力と、によって報知を行う。このような外部油圧報知手段によれば、オペレータは、外部油圧自動制御手段による自動的な作動油出力を確実に認識することができる。
【0030】
具体的に説明すると、本実施形態の外部油圧報知手段は、複数の外部油圧ポートA、Bを識別するためのシンボルマーク「A」、「B」と、外部油圧自動制御手段による外部油圧取出装置10の自動制御状態を示すシンボルマーク「外部油圧連動」と、を液晶表示装置18に表示させるとともに、これらのシンボルマークの表示形態の変化に基づいて作動油出力中の外部油圧ポートA、Bを報知する。例えば、外部油圧自動制御手段による外部油圧取出装置10の自動制御が有効な状態では、シンボルマーク「外部油圧連動」を点灯表示(明るく表示)し、外部油圧自動制御手段が外部油圧取出装置10の外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させる状態では、シンボルマーク「外部油圧連動」を点滅表示しつつ、作動油出力中の外部油圧ポートA、Bに対応するシンボルマーク「A」、「B」を点灯表示し、他の外部油圧ポートA、Bに対応するシンボルマーク「A」、「B」を消灯表示(暗く表示)する。このような外部油圧報知手段によれば、オペレータは、外部油圧自動制御手段による外部油圧取出装置10の自動制御状態や、作動油出力中の外部油圧ポートA、Bを認識することができる。
【0031】
また、本実施形態の外部油圧報知手段は、外部油圧自動制御手段が作業機上昇毎に一対の外部油圧ポートA、Bから交互に作動油を出力させる場合、次回作動油を出力する外部油圧ポートA、Bのシンボルマーク「A」、「B」の表示形態と、前回作動油を出力した外部油圧ポートA、Bのシンボルマーク「A」、「B」の表示形態と、を異ならせる。例えば、次回作動油を出力する外部油圧ポートA、Bのシンボルマーク「A」、「B」を点灯表示し、前回作動油を出力した外部油圧ポートA、Bのシンボルマーク「A」、「B」を消灯表示する。このようにすると、オペレータは、次回作動油を出力する外部油圧ポートA、Bを予測することができる。
【0032】
外部油圧手動制御手段は、機外外部油圧操作部12、13、機内外部油圧操作部22の操作に応じて外部油圧取出装置10の対応する外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させる機能構成であり、機外外部油圧操作部12、13の操作に応じて外部油圧ポートA、Bから出力する作動油の流量を、機内外部油圧操作部22の操作に応じて外部油圧ポートA、Bから出力する作動油の流量よりも少なくする。このような外部油圧手動制御手段によれば、機外外部油圧操作部12、13が操作される作業機5の取付作業時や調整作業時における油圧アクチュエータの動作速度を遅くし、作業機5の取付作業や調整作業を容易にできる。
【0033】
本実施形態の外部油圧手動制御手段は、液晶表示装置18に表示されるシンボルマーク「A」、「B」の領域がタッチ操作された場合、機内外部油圧操作部22が操作された場合と同様に、対応する外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させる。このような外部油圧手動制御手段によれば、運転部4における外部油圧取出装置10の手動操作方法を多様化し、オペレータの好みに応じた操作方法を選択できる。
【0034】
つぎに、上記のような機能構成を実現する制御部25の外部油圧自動制御及び外部油圧手動制御について、
図6及び
図7を参照しつつ説明する。
【0035】
図6に示すように、制御部25は、外部油圧自動制御を実行するにあたり、まず、外部油圧自動制御手段が制御起動状態であるか否かを判断し(S11)、該判断結果がNOの場合は、上位ルーチンに復帰する一方、判断結果がYESの場合は、外部油圧自動制御手段の設定情報が設定済みであるか否かを判断する(S12)。外部油圧自動制御手段の設定情報には、前述したように、作業機上昇時に作動油を出力する外部油圧ポートA、Bが設定される出力ポート設定情報と、作業機上昇時に作動油を出力する時間が設定される出力時間設定情報と、作業機上昇毎に作動油を交互に出力する一対の外部油圧ポートA、Bが設定される交互出力ポート設定情報と、を含むことができ、本実施形態では、ステップS12の判断結果がNOである場合、出力時間設定情報及び交互出力ポート設定情報の設定処理が実行される(S13)。
【0036】
制御部25は、外部油圧自動制御手段が制御起動状態で、且つ設定情報が設定済みの場合、液晶表示装置18においてシンボルマーク「外部油圧連動」を点灯表示させるとともに(S14)、作業機5の上昇操作や作業機5の上昇高さを判断する(S15、S16)。制御部25は、ステップS15、S16の判断結果がNOである場合、上位ルーチンに復帰する一方、作業機5が所定の高さまで上昇してステップS15、S16の判断結果がYESとなった場合、液晶表示装置18においてシンボルマーク「外部油圧連動」を点滅表示させるとともに(S17)、前回の駆動バルブが外部油圧バルブAであったか否かを判断する(S18)。そして、制御部25は、この判断結果がYESの場合は、外部油圧バルブBを駆動させて外部油圧ポートBから作動油を出力させる処理と(S19)、ブザー29を作動させる処理と(S20)、液晶表示装置18においてシンボルマーク「B」を点灯表示させる処理と(S21)、を実行する一方、判断結果がNOの場合は、外部油圧バルブAを駆動させて外部油圧ポートAから作動油を出力させる処理と(S22)、ブザー29を作動させる処理と(S23)、液晶表示装置18においてシンボルマーク「A」を点灯表示させる処理と(S24)、を実行する。
【0037】
制御部25は、外部油圧バルブA又は外部油圧バルブBを駆動させた後、バルブ駆動時間が所定時間(出力時間設定情報の設定時間)となったか否かを判断し(S25)、該判断結果がNOである場合は、時間のカウントを継続しつつ(S26)、機外外部油圧操作部12、13、機内外部油圧操作部22の操作を判断する(S27)。制御部25は、バルブ駆動時間が所定時間となったと判断した場合、又は機外外部油圧操作部12、13、機内外部油圧操作部22のいずれかが操作されたと判断した場合、外部油圧バルブA、Bの駆動を停止させる処理と(S28)、液晶表示装置18において、今回駆動した側のシンボルマーク「A」又は「B」を消灯表示させ、且つ次回駆動するシンボルマーク「B」又は「A」を点灯表示させる処理と(S29)、カウント時間をリセットする処理と(S30)、を実行する。
【0038】
図7に示すように、制御部25は、外部油圧手動制御を実行するにあたり、まず、外部油圧手動制御手段が制御起動状態であるか否かを判断し(S51)、該判断結果がNOの場合は、上位ルーチンに復帰する一方、判断結果がYESの場合は、機外外部油圧操作部12、13、機内外部油圧操作部22の操作を判断する(S52)。制御部25は、この判断結果がNOである場合、外部油圧バルブA、Bの駆動を停止させる処理を実行した後(S53)、上位ルーチンに復帰する一方、判断結果がYESの場合は、機外外部油圧操作部12、13の操作であるか否かを判断する(S54)。そして、制御部25は、この判断結果がYESの場合は、対応する外部油圧ポートA、Bから所定の流量Q1(Q1<Q2)で作動油が出力されるように対応する外部油圧バルブA、Bを駆動させる一方(S55)、判断結果がNOの場合は、対応する外部油圧ポートA、Bから所定の流量Q2で作動油が出力されるように対応する外部油圧バルブA、Bを駆動させる(S56)。
【0039】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、作業機5が昇降可能に連結される走行機体1と、作業機5が備える油圧アクチュエータ(反転用油圧シリンダ5c)に作動油を出力する外部油圧取出装置10と、外部油圧取出装置10の油圧出力状態を制御する制御部25と、を備えるトラクタであって、制御部25は、外部油圧取出装置10の油圧出力状態を予め設定された設定情報に基づいて自動的に制御する外部油圧自動制御手段を備えるので、オペレータの操作負担を軽減し、作業性を向上させることができる。
【0040】
また、制御部25は、外部油圧自動制御手段が外部油圧取出装置10の外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させるとき、所定の報知を行う外部油圧報知手段を備えるので、オペレータは、外部油圧自動制御手段による自動的な作動油出力を認識することができる。
【0041】
また、外部油圧報知手段は、外部油圧自動制御手段が外部油圧取出装置10の外部油圧ポートA、Bから作動油を出力させるとき、液晶表示装置18及びブザー29によって報知を行うので、オペレータは、外部油圧自動制御手段による自動的な作動油出力を確実に認識することができる。
【0042】
また、外部油圧取出装置10は、作動油を出力する外部油圧ポートA、Bを複数備え、外部油圧報知手段は、複数の外部油圧ポートA、Bを識別するためのシンボルマークを液晶表示装置18に表示させるとともに、該シンボルマークの表示形態の変化に基づいて作動油出力中の外部油圧ポートA、Bを報知するので、オペレータは、作動油出力中の外部油圧ポートA、Bを認識することができる。
【0043】
また、設定情報は、作業機上昇毎に作動油を交互に出力する一対の外部油圧ポートA、Bが設定される交互出力ポート設定情報を含み、外部油圧自動制御手段は、作業機上昇毎に、交互出力ポート設定情報で設定された一対の外部油圧ポートA、Bから交互に作動油を出力させるので、作業機上昇毎に、一対の外部油圧ポートから交互に作動油を出力させる必要がある作業機(例えば、リバーシブルプラウ)にも対応できる。
【0044】
また、外部油圧報知手段は、一対の外部油圧ポートA、Bを識別するためのシンボルマークを液晶表示装置18に表示させるとともに、次回作動油を出力する外部油圧ポートA、Bのシンボルマークの表示形態と、前回作動油を出力した外部油圧ポートA、Bのシンボルマークの表示形態と、を異ならせるので、オペレータは、次回作動油を出力する外部油圧ポートA、Bを予測することができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、前記実施形態の外部油圧自動制御手段は、作業機の上昇操作に応じて作業機が所定の高さまで上昇したとき、外部油圧バルブを駆動させているが、所定の条件で作業機を自動的に上昇させる制御機能を備える作業車両では、所定の条件が満たされたことに応じて外部油圧バルブを駆動させるようにしてもよい。例えば、機体の後進操作に応じて作業機を自動的に上昇させる制御機能を備える作業車両では、機体の後進操作に応じて所定時間後に外部油圧バルブを駆動させてもよい。また、ステアリングハンドルの旋回操作に応じて作業機を自動的に上昇させる制御機能を備える作業車両では、ステアリングハンドルの旋回操作に応じて所定時間後に外部油圧バルブを駆動させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 走行機体
4 運転部
5 作業機
5c 反転用油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
10 外部油圧取出装置
12 機外外部油圧操作部
13 機外外部油圧操作部
18 液晶表示装置
22 機内外部油圧操作部
25 制御部
29 ブザー