IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車内灯利用型表示体 図1
  • 特許-車内灯利用型表示体 図2
  • 特許-車内灯利用型表示体 図3
  • 特許-車内灯利用型表示体 図4
  • 特許-車内灯利用型表示体 図5
  • 特許-車内灯利用型表示体 図6
  • 特許-車内灯利用型表示体 図7
  • 特許-車内灯利用型表示体 図8
  • 特許-車内灯利用型表示体 図9
  • 特許-車内灯利用型表示体 図10
  • 特許-車内灯利用型表示体 図11
  • 特許-車内灯利用型表示体 図12
  • 特許-車内灯利用型表示体 図13
  • 特許-車内灯利用型表示体 図14
  • 特許-車内灯利用型表示体 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車内灯利用型表示体
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/16 20060101AFI20220405BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20220405BHJP
   G09F 13/02 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G09F13/16 E
G02B5/02 B
G09F13/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018030015
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019144469
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125176(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156303(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/062123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/16
G02B 5/02
G09F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射構造体と、光拡散フィルムと、を積層してなる車内灯利用型表示体であって、
前記光拡散フィルムが、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、
かつ、前記光拡散フィルムの平面の法線方向を0°として、前記光拡散フィルムの前記反射構造体と対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体に対して入射角0°の光線を水平方向に照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角を35°以上の値とすることを特徴とする車内灯利用型表示体。
【請求項2】
前記光拡散フィルムの前記反射構造体と対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体に対し、入射角が20°及び、-20°の光線を水平方向に照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角を20°以上の値とすることを特徴とする請求項1に記載の車内灯利用型表示体。
【請求項3】
前記光拡散フィルムにおける内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車内灯利用型表示体。
【請求項4】
前記カラム構造が、少なくとも第1のカラム構造及び第2のカラム構造を膜厚方向に積層してなる複数カラム構造であることを特徴とする請求項3に記載の車内灯利用型表示体。
【請求項5】
前記カラム構造において、前記柱状物の途中に、屈曲部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の車内灯利用型表示体。
【請求項6】
前記反射構造体と、前記光拡散フィルムとの間、又は、前記光拡散フィルムにおける前記反射構造体の位置する側とは反対側に、装飾層を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車内灯利用型表示体。
【請求項7】
前記光拡散フィルムの前面に、紫外線吸収層を設けることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の車内灯利用型表示体。
【請求項8】
前記車内灯利用型表示体の光源として、電車又はバスを利用することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の車内灯利用型表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも夜間に、電車やバス等の車内灯を利用して、所定の拡散反射光を得て、それによって、電車等の外部にいる視認者はもちろんのこと、電車等の車内の視認者であっても、駅名表示板等を明確に認識できる車内灯利用型表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光拡散特性を有する面や鏡面反射面に対して文字や画像を印刷したり、あるいは、これらの面に対して文字や画像を印刷した透明もしくは半透明のフィルムを貼合したりしてなる外光利用型の表示体が、看板や標識として用いられている。
かかる外光利用型の表示体は、各種照明や太陽直射光、拡散天空光、あるいは、建造物、路面、樹木等からの二次的散乱光といった外光を光源として利用し、所望の表示光を散乱発光させることを特徴としている。
【0003】
また、このような外光利用型の表示体としては、所望の図柄等が印刷された装飾層の前面に、樹脂中に微粒子を分散させてなる光拡散フィルムを積層してなる表示体が提案されている(例えば、特許文献1)。
より具体的には、図15(a)に示すように、少なくとも片面に凹凸が形成された、全光線透過率が90%以上で、ヘイズ率が20%以下の透光板からなる看板用前面板301及びそれを用いてなる看板が提案されている。
すなわち、凹凸面の中心線平均粗さが0.2~0.7μmであり、かつ10点平均粗さが1~7μmであり、透光板が、透明基板302と、該透明基板302の片面又は両面に積層して、一体化された光拡散層303とから構成されている。
そして、光拡散層303は、合成樹脂中に樹脂粒子が分散されてなるタイプであって、その表面に凹凸面が形成されていることを特徴とする看板用前面板301、及び、かかる看板用前面板301の背面側に表示体320が配置されてなる看板が開示されている。
【0004】
更に、プリズム、コーナーキューブアレイ、マイクロビーズ等を用いた再帰性反射面の前面に、所望の図柄等が印刷された装飾層を積層してなる再帰反射性の外光利用型の表示体が提案されている(例えば、特許文献2)。
より具体的には、図15(b)に示すように、再帰反射キューブコーナーシート材424が提案されている。
すなわち、観察表面と、平行な溝群の少なくとも2つの交差するセットによって画定される複数のキューブコーナー要素を備えた構造化表面435と、該キューブコーナー要素の少なくともいくつかの上に配置された金属フィルム430とを有するキューブ層432と、を備えている。
そして、前面と該キューブ層432の該観察表面に接合された後面とを有する実質的に透明なオーバーレイ層434と、該オーバーレイ層434に配置された着色標示416と、を具備し、該着色標示416が該溝群の少なくとも1つのセットに対して整列配置される、再帰反射キューブコーナーシート材424が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-109414号公報(特許請求の範囲)
【文献】特表2003-531396号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の看板用前面板を用いた看板の場合、外光の入射角度が変化した場合に、一定の表示特性を安定的に保持することが困難になるという問題が見られた。
また、特許文献2に記載の再帰反射キューブコーナーシート材の場合、光が入射してきた角度方向に再帰反射し、比較的正面に近い角度範囲でしか特性を発現しないため、外光の入射角度が変化する用途には、事実上、使用できないという問題が見られた。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載の看板用前面板も、特許文献2に記載の再帰反射キューブコーナーシート材も、夜間に、電車やバス等の車内灯を利用して、所定の拡散反射光を得て、それによって、視認者に対して、駅名表示機能等を発揮することなど、全く想定されていなかった。
【0008】
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、反射構造体(反射層)と、所定の光拡散フィルムと、を積層してなる車内灯利用型表示体により、これらの問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、昼間は外光(太陽光等)を利用し、所定の拡散反射光により表示認識ができ、一方、夜間は、電車やバス等の多数の車内灯を利用し、所定の拡散反射光を得ることができる。それにより車内の視認者等が、駅名表示板等として認識可能な車内灯利用型表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、反射構造体と、光拡散フィルムと、を積層してなる車内灯利用型表示体であって、光拡散フィルムが、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、かつ、光拡散フィルムの平面の法線方向を0°として、光拡散フィルムの反射構造体と対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体に対して、入射角0°の水平方向の光線を照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角(拡散角度の角度幅)を35°以上の値とすることを特徴とする車内灯利用型表示体が提供され、上述した問題点を解決できる。
【0010】
すなわち、本発明の車内灯利用型表示体であれば、所定の内部構造を有する光拡散フィルムを使用していることから、車内灯利用型表示体を鉛直方向に設置し、少なくとも夜間において、広範囲の角度から入射する車内灯の光を受光した場合に、幅広い開き角で効率的に光拡散反射させることができる。
したがって、車内灯利用型表示体から、所定の開き角において、所定照度の拡散反射光が出射されることから、特別な電源がなくとも、車内に存する複数の視認者等であっても、駅名表示板等として、明確に認識できる。
【0011】
なお、ゲインとは、スクリーン分野などにおいて、反射特性を示す数値である。一定の光源より完全拡散板(標準白色板)に照射された反射光を輝度系で計測し、その輝度値を基準値(1)として、同一条件下で各角度よりスクリーンに照射して得られた輝度値の比率を意味する、光拡散の程度を示す指標である。
したがって、ゲインの数値が大きいほど、光拡散の程度が大きくできることを意味し、ひいては、車内の複数の視認者等が、車内灯利用型表示体を、駅名表示板等として、同時、かつ、明確に認識できる。
【0012】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、光拡散フィルムの平面の法線方向を0°として、光拡散フィルムの反射構造体と対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体に対し、入射角が20°及び、-20°の光線を水平方向に照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角(拡散角度の角度幅)を、少なくとも20°以上の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、車内灯利用型表示体に対する車内灯からの光の入射角度が変化する場合であっても、電車やバスは、通常、横長であることから、所定角度範囲の光を更に確保し易いという利点がある。
例えば、車両の移動に伴い、一つの窓からの光が、車内灯利用型表示体への所定角度から外れても、他の窓からの光が新たに所定角度範囲内に入射する。
よって、事実上、車内灯利用型表示体は、大きな光拡散入射角度領域を有することから、車両が移動する場合であっても、一定量の光を受光することができる。
むしろ、集光作用によって、複数の窓から車内灯の光を取り込み、車内灯利用型表示体は、反射輝度を高めることができる。
そのため、車外の視認者はもちろんのこと、車内の複数の視認者等であっても、車内灯利用型表示体を、別な窓から駅名表示板等として、同時、かつ、明確に認識できる。
【0013】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、光拡散フィルムにおける内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造であることが好ましい。
このように構成すると、更に良好な光散乱性(等方性拡散)が得られることから、幅広い入射角度の車内灯からの光を利用することができ、ひいては、視認する発光輝度についても、効果的に高めることができる。
【0014】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、カラム構造が、少なくとも第1のカラム構造及び第2のカラム構造を膜厚方向に積層してなる複数カラム構造であることが好ましい。
このように構成すると、膜厚が多少厚くなるものの、より幅広い入射角度の車内灯からの光であっても有効に利用することができ、ひいては、車内の視認者等が視認する光拡散反射させた光の発光輝度を更に高めることができる。
【0015】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、カラム構造において、柱状物の途中に、屈曲部を有することが好ましい。
このように、所定の屈曲部を設けて構成することにより、より幅広い入射角度の車内灯からの光を利用することができ、ひいては、車内の視認者等が視認する光拡散反射させた光の発光輝度を更に高めることができる。
【0016】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、反射構造体と、光拡散フィルムとの間、又は、光拡散フィルムにおける反射構造体の位置する側とは反対側に、装飾層を有することが好ましい。
このように装飾層を含んで構成することにより、車内灯からの光の入射角度が変化する場合であっても、所定の光拡散フィルムの効果により、装飾層による所望の表示内容を、一定の表示特性をもって安定的に表示させることができる。
更には、装飾層によって、車内の視認者等が、輝度の均一性に優れた、駅名表示等を示す表示光として認識できる。
【0017】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、光拡散フィルムの前面に、紫外線吸収層を設けることが好ましい。
このように構成すると、光拡散フィルムにおける紫外線劣化を有効に防止し、長期間の使用に耐えることができる。
【0018】
また、本発明の車内灯利用型表示体を構成するにあたり、車内灯利用型表示体の光源として、電車又はバスを利用することが好ましい。
このように構成すると、電車等が移動して、車内灯からの入射角度が変化するように思われるが、通常、電車等であれば、横幅が長く、車内灯の光が、複数の窓からそれぞれ出射されるという特徴がある。
その結果、移動する電車等であっても、車内の視認者等が、駅名表示等を示す表示光を、明確、かつ均一に認識できる。
【0019】
そして、むしろ移動する電車等の場合、所定角度内となる入射光と、所定角度からはずれる入射光は、同程度となるので、車内灯利用型表示体の明るさは一定に保たれると言える。
更に言えば、移動する電車等の場合、車内灯利用型表示体の開き角が大きいことから、一定移動距離、すなわち、一定時間、車内の視認者等は同程度の鮮明さで、駅名表示等を視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)~(b)は、本発明の車内灯利用型表示体の構成例を説明するために供する図である。
図2図2(a)~(d)は、本発明の車内灯利用型表示体の構成部品を説明するために供する図である。
図3図3(a)~(b)は、視認者による、垂直方向及び水平方向からの車内灯利用型表示体の視認状態を説明するために供する図である。
図4図4(a)~(b)は、カラム構造を有する光拡散制御フィルムにおける入射角度依存性及び等方性光拡散を説明するために供する図である。
図5図5(a)~(b)は、本発明における光拡散制御フィルムにおける内部構造の態様を説明するために供する図である。
図6図6(a)~(b)は、入射角-20°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)の反射特性とを、ゲインに関して比較説明するために供する図である。
図7図7(a)~(b)は、入射角-20°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)とを、輝度に関して比較説明するために供する図である。
図8図8(a)~(b)は、入射角0°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)の反射特性とを、ゲインに関して比較説明するために供する図である。
図9図9(a)~(b)は、入射角0°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)の反射特性とを、輝度に関して比較説明するために供する図である。
図10図10(a)~(b)は、入射角20°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)ゲインに関して比較説明するために供する図である。
図11図11(a)~(b)は、入射角20°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)とを、輝度に関して比較説明するために供する図である。
図12図12(a)~(b)は、入射角40°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)とを、ゲインに関して比較説明するために供する図である。
図13図13(a)~(b)は、入射角40°における、実施例1~4(光拡散制御フィルムを用いた車内灯利用型表示体の反射特性と、比較例1~4(再帰性反射フィルムを用いた車内灯利用型表示体及び標準完全拡散板)とを、輝度に関して比較説明するために供する図である。
図14図14(a)~(b)は、光拡散フィルムを用いた車内灯利用型表示体を、正面及び斜め30°から観察した場合の視覚性を比較して説明するために供する図である。
図15図15(a)~(b)は、それぞれ従来の外光利用型反射フィルム等を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態は、図1に例示するように、少なくとも反射構造体D(反射層25c等を含む反射構造体D)と、光拡散フィルム23b(光拡散フィルム23b等を含む光拡散構造体C)と、を積層してなる車内灯利用型表示体50であって、光拡散フィルム23bが、当該光拡散フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、かつ、光拡散フィルム23bの平面の法線方向を0°として、光拡散フィルム23bにおける、反射構造体Dと対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体50に対して、入射角0°の水平方向の光線を照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角を35°以上の値とすることを特徴とする車内灯利用型表示体50である。
そして、図1に例示される車内灯利用型表示体50は、光拡散構造体Cの外光入射側に、装飾層23f等を含むメディア構造体Bや、プロテクト構造体Aを例示的に備えており、更には、これらとは別構造体として、シール材25fや表面保護層23hを備えている。
以下、本発明の車内灯利用型表示体50に関する実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0022】
1.車内灯利用型表示体の基本構成
(1)基本構成
最初に、本発明の車内灯利用型表示体の基本構成を、具体的に説明する。
すなわち、図1(a)に例示される車内灯利用型表示体50は、図面上、矢印Fに沿った方向に、下方から順次に、基材25aとしてのアルミ樹脂複合板(アルポリック板)、反射構造体Dと、光拡散構造体Cと、メディア構造体Bと、プロテクト構造体Aと、を備えている。
すなわち、図1(a)は、車内灯利用型表示体50を水平方向に切断してなる断面を、鉛直方向に、上方から平面視した状態を概略的に示している。
【0023】
より具体的には、図2(d)に例示されるように、車内灯利用型表示体50は、図面上、矢印Fに沿った方向に、下方から順次に、粘着剤層25bと、反射層25cと、基材25dと、粘着剤層25eとを有する、反射構造体Dを含んで構成されている。
なお、反射構造体Dは、必ずしも反射層25cと基材25dの両方を含んでいる必要はなく、金属箔のような一層から構成されていてもよい。
すなわち、所定の反射構造体を含んでなる車内灯利用型表示体は、外部から入射されてなる光を、矢印Fに沿った方向に対して、平行又は所定角度をなす方向に反射させ、その反射光を外部方向である視認側に対して、出射させる機能を有している。
【0024】
また、図2(c)に例示されるように、車内灯利用型表示体50は、透明樹脂フィルム23a(第1のPETフィルム等)と、光拡散フィルム23bと、別な透明樹脂フィルム23c(第2のPETフィルム等)と、を有する光拡散構造体C(これを単に、光拡散フィルムと称する場合がある。)を含んで構成されている。
また、図2(b)に例示されるように、車内灯利用型表示体50は、粘着剤層23dと、透明樹脂フィルム(第1のポリ塩化ビニル樹脂フィルム等)23eと、装飾層23fと、を有し、所定の装飾性や情報性等を発揮するメディア構造体Bを含んでいる。
そして、図2(a)に例示されるように、車内灯利用型表示体50は、粘着剤層23g及び表面保護層23hを含むプロテクト構造体Aを含んでいる。更に、このプロテクト構造体Aとは別構造体として、車内灯利用型表示体の機械的強度や耐久性を強化するために、シール材25fを、光拡散フィルム23b等の周囲に備えている。
【0025】
また、かかる車内灯利用型表示体50は、後述するように、使用する光拡散フィルム23bにおいて、所定の内部構造(カラム構造等)を有することを特徴としている。
したがって、複数窓等を介して、車内灯からの光を受光することにより、幅広い開き角に、視認側に光拡散反射させることが可能な車内灯利用型表示体を効率的に得ることができる。
すなわち、電車やバスの車外にいる視認者はもちろんのこと、車内にいる複数の視認者であっても、夜間において、車外に存する車内灯利用型表示体としての駅名表示板等を認識できる。
なお、車内灯利用型表示体としての駅名表示板等は、昼間においても、太陽光等の外光を利用して、視認者は十分認識できる。
その他、上述した開き角とは、光拡散フィルムから出射された光が、拡散されて広がっていく状況において、その広がり具合を示す角度である。
したがって、例えば、図6(a)の実施例1に対応した特性曲線の場合において、-20°の入射光に対して、ゲインが1以上となる拡散角度は-33°~33°であることから、開き角としては、66°となる。
【0026】
(2)反射構造体D
反射構造体Dは、光を反射するものであれば特に制限されるものではないが、車内灯利用型表示体50にフレキシブル性を付与できることから、例えば、反射層25cが金属蒸着層から構成され、基材25dが透明プラスチックフィルムから構成されてなる積層体とすることが好ましい。
【0027】
そして、反射層25cである金属蒸着層としては、アルミニウム蒸着層、銀蒸着層、ステンレス蒸着層、銅蒸着層等の少なくとも一つが挙げられる。
また、基材25dである透明プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースなどのセルロースフィルム、ポリエチレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム等の少なくとも一種が挙げられる。
【0028】
また、反射層25cにおける反射面の立体形状としては、通常、平滑性に富んだ平面状とすることが好ましいが、鋸歯状やコーナーキューブアレイのような非平面状とすることもできる。
すなわち、鋸歯状やコーナーキューブアレイのような非平面状であれば、光入射角度と観察角度を、比較的自由に設計できるという利点がある。
【0029】
また、反射構造体を、一部に光透過部分を有する構成を備えてなる、半透過反射型とすることも好ましい。
この理由は、複数の車内灯等からの光が比較的十分な環境下では、当該光を表示光の光源として利用する一方、複数の車内灯等からの光が不十分な環境下では、反射構造体の裏面に設けたバックライトを表示光の光源として利用できるためである。
なお、反射構造体の厚さとしては、反射性とフレキシブル性の両立の観点から、1~5,000μmの範囲内の値とすることが好ましく、10~200μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0030】
(3)光拡散構造体C
次いで、図1図2(c)に例示される、光拡散構造体C及びその主要部である光拡散フィルム23bについて説明する。
すなわち、複数の窓やドア等から、入射して来る車内灯の光を、それぞれ一定の光拡散入射角度領域の入射光として取込み、拡散反射光として、所定の開き角となるように光拡散させながら、所定方向に出射させることができる。
したがって、車内灯利用型表示体50は、所定の内部構造を有する光拡散フィルム23bを用いていることから、少なくとも夜間において、多数の窓等を介して、広範囲の角度から入射する車内灯の光を、効率的に、拡散反射光(表示光)として、幅広い開き角において、効率的に光拡散反射させることができる。
【0031】
すなわち、光拡散フィルム23bが、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、かつ、光拡散フィルム23bの平面の法線方向を0°として、光拡散フィルム23bにおける、反射構造体Dと対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体50に対して、入射角0°の水平方向の光線を照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角を35°以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる開き角が、35°未満の値になると、少なくとも夜間において、広範囲の角度から入射する車内灯の光を受光した場合に、幅広い開き角で効率的に光拡散反射させることが困難となるためである。同様の観点から、上述した開き角は、50°以上の値とすることがより好ましく、60°以上の値とすることが更に好ましい。
なお、上述した開き角の上限は特に制限されるものではないが、通常、90°程度である。
したがって、車内灯利用型表示体から、所定の開き角において、所定照度の拡散反射光として出射することが困難となることから、車内に存する複数の視認者等が、駅名表示板等として、明確に認識することが困難となる場合があるためである。
【0032】
また、光拡散フィルム23bの平面の法線方向を0°として、光拡散フィルム23bにおける、反射構造体Dと対向する側と反対側から、鉛直方向に配置した車内灯利用型表示体50に対し、入射角が20°及び、-20°の水平方向の光線を照射した場合に測定される、水平方向におけるゲインが1以上となる出射光の開き角を、20°以上の値とすることが好ましく、40°以上の値とすることがより好ましく、50°以上の値とすることが特に好ましい。
この理由は、このように出射光の開き角を制御することによって、車内灯利用型表示体に対する車内灯からの光の入射角度が変化する場合でも、電車やバスは、通常、横長であることから、所定角度範囲の光を更に確保し易いためである。
よって、事実上、車内灯利用型表示体は、大きな光拡散入射角度領域を有することから、車両が移動する場合であっても、一定量の光を受光することができ、ひいては、車外の視認者はもちろんのこと、車内の複数の視認者等であっても、車内灯利用型表示体を、別な窓から駅名表示板等として、同時、かつ、明確に認識できる。
なお、上述した開き角の上限は特に制限されるものではないが、通常、90°程度である。
その他、拡散反射光(表示光)の照度は高いほど、車内灯利用型表示体に対する視認性は向上するが、設置環境によって大きく変化する。よってゲインという指標を用いる事で、その値が1.0以上であれば一般的な看板より明るい表示が可能であることがわかる。
【0033】
そして、入射角が20°及び、-20°の光線を照射した場合に測定される、水平方向に沿った拡散反射光のゲインが1.05以上であれば、夜間であっても、複数の窓やドア等から、入射して来る車内灯の光として十分であることが判明している。
したがって、より視認性を良好とするためには、拡散反射光のゲインが1.10以上の値となることが好ましく、かかるゲインが1.20以上の値となることがより好ましく、かかるゲインが1.30以上の値となることが更に好ましい。
【0034】
よって、図3(a)~(b)に示されるように、停車位置や存在位置等の関係で、車内灯利用型表示体に対する車内灯の光の入射角度が変化したような場合であっても、横長配置された多数の窓やドアがあることから、事実上、一定の表示特性を安定的に保持できる。
また、車内灯利用型表示体50において、所定の内部構造を有する光拡散フィルム23bであれば、光拡散特性が単純なガウス分布型の光拡散特性ではなく、輝度の均一性に優れた光拡散特性を有することから、視野角内における表示光の輝度の均一性についても向上させることができる。
【0035】
また、本発明に用いる所定の光拡散フィルムは、図4(a)に示すように、光拡散フィルム23bの内部にカラム構造20aを有しており、屈折率が相対的に高い柱状物12aが、屈折率が相対的に低い領域14aに、所定間隔をもって林立していることから、光拡散入射角度領域内である入射光であれば、等方拡散光として、外部に出射する特性がある。
したがって、このような柱状物12aと、屈折率が相対的に低い領域14aとの屈折率差が、0.01以上の値とすることが好ましく、0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値とすることが更に好ましい。
そして、図4(a)に示す入射光Bのように、内部にカラム構造20aを有する光拡散フィルム23bは、入射光の入射角が、光拡散入射角度領域に含まれる場合には、その入射角が異なる場合であっても、集光作用を発揮して、ほぼ同様の光拡散光を出射させることができる。
なお、図4(b)に、図4(a)に示すカラム構造20aを有する光拡散フィルム23bによる等方性拡散して得られる光拡散状態を示す。
【0036】
また、図4(a)や図5(a)に示される、カラム構造20a、20cを有する光拡散フィルム23b、23´bは、通常、入射された光は、円状に拡散され、いわゆる「等方性」拡散性を発揮することになる。
但し、図4(a)における入射光A及びCのように、入射角度が光拡散入射角度領域に含まれない場合には、出射光のフィルムと平行な面内での拡散であれば、図4(b)等に示される三日月型の光になって、それについても拡散光として利用できるという特徴がある。
すなわち、拡散角度領域外からの光源入射に対しても、三日月拡散光により、正反射方向に対して、ある程度明るく表示できる。
【0037】
更にまた、内部にカラム構造を有する光拡散フィルムとして、以下の内部構造を有することも好適的である。
すなわち、屈折率が相対的に高い柱状物における、厚さ方向の断面における柱状物の幅(S)が0.1~15μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。
また、隣接する柱状物におけるスペース(P)が0.1~15μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。更に、フィルム面の法線方向における柱状物の長さ(La)を20~700μmとすることが好ましく、50~300μmとすることがより好ましい。
【0038】
また、光拡散フィルムを車内灯利用型表示体内に組み込む場合、当該車内灯利用型表示体を鉛直方向に配置したと仮定して、拡散出射光の開き角がより大きくなる方向が、水平方向となるように光拡散フィルムを配置することが好ましい。
そこで、図5(a)に示されるように、単一層の光拡散フィルム23´が屈曲部16を有するカラム構造20c(以下、ベントカラムタイプと称する場合がある)を含む場合であって、それを車内灯利用型表示体に組み込む場合について説明する。
すなわち、この場合、光拡散フィルムの一方の面側と他方の面側で、柱状物の位置が変化している方向(開き角が大きい方向)と、該表示体を鉛直方向に配置した場合の表示体からの拡散出射光の水平方向と、が一致するように配置することが好ましい。
【0039】
更に言えば、図5(b)に示される単一層の光拡散フィルム23´´bは、図面上、フィルム内部上方に、等方性光拡散を示すカラム構造20aと、フィルム内部下方に、異方性光拡散を示すルーバー構造20bをそれぞれ備えている。
そして、カラム構造20aは、屈折率が相対的に高い柱状物12aが、屈折率が相対的に低い領域14aに、所定間隔をもって林立している一方、ルーバー構造20bは、屈折率が相対的に高い複数のルーバー12bが、屈折率が相対的に低い領域14bに、所定間隔をもって、平行に立設配置されている。
【0040】
すなわち、図5(b)に示される光拡散フィルム23´´bは、単一層でありながら、図面上、上下方向に異なる光拡散構造(カラム構造20a、ルーバー構造20b)を、それらに含まれる屈折率が相対的に高い柱状物12aと、屈折率が相対的に高い複数のルーバー12bの端が、それぞれ相互侵入するような近接状態で、配置されている。
したがって、光拡散フィルム23´´bに入射された光は、まず、カラム構造20aによって等方性光拡散され、次いで、この等方性光拡散された光は、ルーバー構造20bによって、異方性光拡散されて、図面上、外部下方に出射されることになる。
よって、このような単一層に異なる光拡散特性を発揮する内部構造を備えた光拡散フィルム23´´bであっても、単独又は複数枚を重ねて、車内灯利用型表示体の光拡散フィルムに用いることによって、更に所望の表示光を鮮明に視認することができる。
【0041】
そして、複数層ではなく、単一層の光拡散フィルムである場合、光拡散フィルムの膜厚が30~700μmの範囲内の値であることが好ましく、60~400μmの範囲内の値であることがより好ましい。
よって、かかる膜厚の光拡散フィルムが所定の光拡散特性を発揮することにより、当該フィルムが単一層からなるにもかかわらず、広範囲の角度から入射して来る光を、効率的に表示光として車内灯利用型表示体の正面を中心として、比較的幅広い範囲に、拡散光を出射できる。
【0042】
(4)メディア構造体B
また、図1(a)~(b)に示すように、メディア構造体Bは、図面上、矢印Fに沿った方向に、反射構造体D及び光拡散構造体Cの上方に配置されることが好ましい。
また、メディア構造体Bは、所定の装飾層(印刷層と称する場合もある。)23fを有することが好ましい。
【0043】
更には、メディア構造体Bは、光拡散構造体Cと対向する側の表面と反対側の表面に装飾層23fを有することが好ましい。
このように構成すると、電車等の停車位置や、視認者の存在位置の関係で、車内灯の入射角度が変化したような場合であっても、所定の内部構造を有する光拡散フィルムの効果により、車内の視認者等が、装飾層による所望の表示内容を、駅名表示等を示す表示光として、明確に認識できる。
【0044】
また、メディア構造体Bは、図1(a)~(b)に示すように、製造容易性の観点から透明樹脂フィルム23e上に、装飾層23fが形成されていることが好ましい。
また、車内灯利用型表示体の形成を容易にする観点から、メディア構造体Bの一部として、一方の面には粘着剤層23dが設けられていることが好ましい。
【0045】
また、かかるメディア構造体Bにおける装飾層23fは、図面上、矢印Fに沿った方向に、反射構造体Dや光拡散構造体の上方に配置されてなる、直接印刷された印刷層であってもよい。
なお、かかる装飾層の厚さの下限については、通常、1μm以上の値とすることが好ましく、5μm以上の値とすることがより好ましい。
一方、かかる装飾層の厚さの上限については、通常、50μm以下の値とすることが好ましく、20μm以下の値とすることがより好ましい。
【0046】
その他、装飾層の表面に、着色層(黒色層や白色層)を設けて、その一部分を切り抜いて、表示したい文字、図形、記号等の形状とすることも好ましい。
このように構成することにより、表示したい文字、図形、記号等を含む装飾層として、より視認性を向上させたり、装飾性を向上させたりできる。
【0047】
(5)プロテクト構造体A
更に、図1(a)~(b)に例示するように、図面上、矢印Fに沿った方向に、メディア構造体Bの視認側に、プロテクト構造体Aを設けることも好ましい。
すなわち、このような構成であれば、耐久性等に優れているとともに、光を遮る装飾層が形成されていない部分(文字や図柄等が印刷されていない部分)については、反射構造体Dにより反射された光が、プロテクト構造体Aを容易に透過する。
その一方、光を遮る装飾層が形成された部分については、反射構造体Dにより反射された光の透過が阻害される。
したがって、このようなプロテクト構造体Aを備えた車内灯利用型表示体であれば、例えば、電車やバスの駅名表示のための照明用の電力を特に必要とせず、長期にわたって、安価に使用できる。
【0048】
また、図1(a)~(b)に例示する車内灯利用型表示体50は、通常、駅ホーム等のように屋外設置されて使用されるため、図面上、矢印Fに沿った方向に、光拡散フィルム23bの上方に、プロテクト構造体Aの一部として、表面保護層23hを設けることが好ましい。
かかる表面保護層23hは、主剤としてのフッ素樹脂やアクリル樹脂、あるいは、ポリエステル樹脂等からなる樹脂板もしくは樹脂フィルム、又はガラス板から構成されることが好ましい。
そして、これらの表面保護層23hの具体例の中でも、破損等の防止しやすいことから、樹脂板であることがより好ましい。
【0049】
また、表面保護層23hは、所定の紫外線吸収剤を均一配合して、紫外線吸収機能を付与されていることが好ましい。これにより、光拡散フィルムにおける紫外線劣化を有効に防止し、更に長期間の使用に耐えられるようになる。
そして、表面保護層23hに、紫外線吸収材剤を含有する代わりに、表面保護層23hのいずれかの側に、別途あるいは併用して、紫外線吸収層を設けることも好ましい。
その他、図1(a)~(b)における車内灯利用型表示体50であれば、各種粘着剤層25b、25e、23d、23gや各種基材(透明樹脂フィルム)25d、23a、23c、23e等の少なくとも一層に、紫外線吸収剤を配合して、紫外線吸収機能を発揮させることもできる。
【0050】
また、表面保護層23hの表面につき、表面粗さ(Ra)が50nm~100μmとなるように、マット処理されていることも好ましい。
この理由は、これにより、装飾性や高級感を付与できるとともに、紫外線を適当に乱反射させ、更に長期間の使用に耐えられるためである。
【0051】
その他、図1(a)に示すように、車内灯利用型表示体50は、図面上、底面に、例えば、アルポリック板、アクリル樹脂板、セラミック板、ガラス板等の補強部材としてのシール材25fを設けることが好ましい。
この理由は、かかるシール材25fによって、車内灯利用型表示体50の周囲を機械的、化学的に保護強化して、外部からの水分やほこり等の侵入を防止できるためである。
その上、図1(a)に示すように、シール材25fの表面付近に、光拡散フィルムの表面周囲を均一に、押圧固定するためのフレーム部材25gが設けてあり、外光の入射や拡散反射光の出射を妨げずに、車内灯利用型表示体50の機械的強度を更に向上させている。
【0052】
(6)粘着剤層
また、図1等に例示するように、車内灯利用型表示体50において、反射層25c、光拡散フィルム23b、及び装飾層23f等は、それぞれ粘着剤層25e、23d、23g等を介して、積層してあることが好ましい。
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、十分な粘着性及び透明性を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、従来公知のアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系の粘着剤を使用できる。
【0053】
また、粘着剤層の厚さの下限は、通常、1μm以上の値とすることが好ましく、3μm以上の値とすることがより好ましい。
一方、粘着剤層の厚さの上限は、通常、100μm以下の値とすることが好ましく、30μm以下の値とすることがより好ましい。
【0054】
(7)変更例
図1(b)に例示されるように、車内灯利用型表示体50を鉛直方向に配置して、その水平断面を鉛直方向から眺めた場合、矢印Fに沿って、反射構造体Dと、光拡散構造体Cと、メディア構造体Bと、プロテクト構造体Aと、を順次に備えていればよいが、各種形態に変更できる。
すなわち、図示しないものの、車内灯利用型表示体を鉛直方向に配置して、その水平断面を鉛直方向から眺めた場合に、背面側保護部材、反射層、粘着剤層、光拡散フィルム、紫外線吸収層、接着力強化樹脂層、装飾層付き樹脂層、表面樹脂層、前方側保護部材等を順次に備えてなる構成としても良い。
【0055】
そして、背面側保護部材と反射層(反射構造体)との間、及び、表面樹脂層と、前方側保護部材との間に、所定の緩衝スペースを設けて、各構成層の膨張、収縮等を吸収することも好ましい。
すなわち、あくまで図1(a)~図1(b)の車内灯利用型表示体50の構成は、それぞれ例示であって、目的、用途等に応じて、適宜変更することが可能である。
【0056】
(8)製造例
図1(a)等に例示される車内灯利用型表示体50は、例えば、下記工程1)~3)を含んで製造されることが好ましい。
1)(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(C)成分としての光重合開始剤と、を含む光拡散フィルム用組成物を準備する工程。
2)光拡散フィルム用組成物の塗布層を形成するとともに、当該塗布層に対して活性エネルギー線を照射して、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有する光拡散フィルムとする工程。
3)光拡散フィルムと、別途用意した反射構造体(反射層)と、を積層し、車内灯から出射され、少なくとも-20°~+20°の角度範囲で入射された光を利用して、ゲインが1.0以上となる開き角を20°以上とすべく、光拡散反射させ、当該光拡散反射させた光を、視認者に視認させる車内灯利用型表示体とする工程。
【0057】
(光拡散フィルム用組成物の準備工程)
所定の光拡散フィルム用組成物を準備すべく、例えば、下記(A)~(C)成分及び所望によりその他の添加剤を混合する工程である。
また、混合に際しては、室温下でそのまま撹拌してもよいが、均一性を向上させる観点からは、例えば、40~80℃の加温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
【0058】
ここで、(A)成分として、例えば、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
この理由は、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、(A)成分の重合速度を、(B)成分の重合速度よりも速くして、これらの成分間における重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させられるためである。
【0059】
また、(B)成分として、例えば、(B1)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(B2)ポリオール化合物、好ましくはジオール化合物、特に好ましくはポリアルキレングリコール、及び(B3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成される、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
この理由は、ウレタン(メタ)アクリレートであれば、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得られるためである。
【0060】
更に(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤の働きによって、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を形成できるためである。
なお、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、通常、25~400重量部の範囲内の値とすることが好ましく、(C)成分の含有量を、(A)成分及び(B)成分の合計量(100重量部)に対して、0.2~20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0061】
また、図5(a)に示すような柱状物12aの途中において屈曲部16を有する変形柱状物を有するカラム構造20cを形成することが好ましい。
その場合、光拡散フィルム用組成物が、上記(A)~(C)成分に対して、特に(D)成分として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
この理由は、(D)成分として、このような紫外線吸収剤を含むことにより、活性エネルギー線を照射した際に、所定波長の活性エネルギー線を、所定の範囲で選択的に吸収でき、ひいては、屈曲部を効果的に形成できるためである。
なお、(D)成分の含有量を、(A)成分及び(B)成分の合計量(100重量部)に対して、2重量部未満(但し、0重量部を除く。)の値とすることが好ましい。
【0062】
(光拡散フィルムの形成工程)
まずは、所定の光拡散フィルム用組成物を、工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する。
かかる、工程シートとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられ、その上に、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法により、塗布層の膜厚が60~700μmの範囲内の値となるように塗布することが好ましい。
【0063】
次いで、塗布層に対して、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射を行い、フィルム内にカラム構造を形成し、所定の光拡散フィルムとする。
より具体的には、活性エネルギー線の照射工程においては、工程シートの上に形成された塗布層に対し、光線の平行度が高い平行光を照射する。
【0064】
ここで、平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。
より具体的には、例えば、点光源からの照射光をレンズによって平行光とした後、塗布層に照射したり、あるいは、線状光源からの照射光を、照射光平行化部材によって平行光とした後、塗布層に照射したりすることが好ましい。
したがって、照射光である平行光の平行度を10°以下の値とすることが好ましく、7°以下の値とすることがより好ましく、3°以下の値とすることが更に好ましい。
【0065】
そして、上述したように、光拡散フィルム用組成物が、上記(A)~(C)成分に対して、特定の紫外線吸収剤を含んだ状態で、平行光を照射することにより、入射光を等方拡散し、開き角を容易に大きくできる。
したがって、図5(a)に示されるに示すような柱状物12aの途中において屈曲部16を有するカラム構造20cを備えた光拡散フィルム23´bとすることができる。
すなわち、後述する車内灯利用型表示体50において、かかる光拡散フィルム23´bの屈曲部16を有するカラム構造20cの屈曲延在方向を調整し、図3(a)に示すように、反射拡散光と、地面(水平面)と、が平行となるように配置することが好ましい。
【0066】
その他、所定の光拡散フィルムは、上述例に限定されるものではなく、例えば、図5(b)に示すような、フィルム内にルーバー構造20bとカラム構造20aを上下方向(膜厚方向)に有する複合型の光拡散フィルム23´´bであってもよい。
すなわち、上述したように、図5(b)に示される単一層の光拡散フィルム23´´bは、図面上、フィルム内部上方に、等方性光拡散を示すカラム構造20aと、フィルム内部下方に、異方性光拡散を示すルーバー構造20bをそれぞれ備えている。
よって、このような複合型の光拡散フィルム23´´bを製造して、車内灯利用型表示体50に用いることができる。
【0067】
(車内灯利用型表示体の組み立て工程)
上述した光拡散フィルムと、別途用意した反射構造体(反射層)と、を積層し、車内灯から出射され、少なくとも-20°~+20°の角度範囲で入射された光を利用して、ゲインが1.0以上となる、光拡散角度の幅である開き角を20°以上とするための工程である。
したがって、ゲインが1.0以上となる開き角を20°以上とすべく、光拡散反射させ、当該光拡散反射させた光を、車内の視認者等に視認させる車内灯利用型表示体とする工程である。
より具体的には、光拡散フィルムを鏡面反射部材(例えば、厚さ100μmのPETフィルムの表面にアルミニウムを厚さ300nmとなるように蒸着したもの)の上に、厚さ5~15μmの粘着剤層を介して貼合し、車内灯利用型表示体を製造することができる。
【実施例
【0068】
以下、実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【0069】
[実施例1]
1.光拡散フィルムの作成
(1)低屈折率重合性化合物(B)成分の合成
容器内に(B2)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(B1)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、及び(B3)成分としての2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法にしたがって反応させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
【0070】
なお、ポリプロピレングリコール及びポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定したポリスチレン換算値である。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC-8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
【0071】
(2)光拡散フィルム用組成物の調製
次いで、得られた(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、(A)成分としての前記式(3)で表される分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート150重量部と、(C)成分としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン20重量部((A)成分及び(B)成分の合計量(100重量部)に対して8重量部)とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。
なお、(A)成分及び(B)成分の屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ(株)製、アッベ屈折計DR-M2、Na光源、波長589nm)を用いてJIS K0062:1992に準じて測定したところ、それぞれ1.58及び1.46であった。
【0072】
(3)塗布工程
次いで、得られた光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしてのフィルム状の透明ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する。)に対して塗布し、膜厚120μmの塗布層を形成した。
【0073】
(4)活性エネルギー線照射工程
次いで、塗布層を所定方向に移動させながら、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック(株)製)を用い、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を、照射角(θd)がほぼ10°となるように塗布層に照射した。
その際のピーク照度は1.08mW/cm2、積算光量は53.13mJ/cm2、ランプ高さは240mmとし、塗布層の移動速度は0.2m/分とした。
【0074】
次いで、塗布層の露出面側に、厚さ38μmの紫外線透過性を有する剥離フィルム(リンテック(株)製、SP-PET382050)をラミネートした。
次いで、剥離フィルムの上から、上述した平行光の進行方向をランダムにした散乱光をピーク照度10mW/cm2、積算光量150mJ/cm2となるように照射して塗布層を完全硬化させ、工程シートと剥離フィルムを除いた状態での膜厚が170μmであるシングルカラム構造の光拡散フィルム(表1中、TYP1と称する。)を得た。
【0075】
2.車内灯利用型表示体(試験片)の製造
次いで、図2(a)~(b)に例示されるように、得られた光拡散フィルムを、反射構造体としての鏡面反射部材(厚さ100μmのPETフィルムの表面にアルミニウムを厚さ300nmとなるように蒸着したもの)の上に、厚さ15μmの粘着剤層を介して貼合し、車内灯利用型表示体評価用試験片を製造した。
なお、光拡散特性の関係上、上述した活性エネルギー線照射工程において、光拡散フィルムを長手方向に製造する方向をMD方向とした場合、光拡散フィルムにおいて、当該MD方向と水平直交するTD方向が上下方向になるように配置した。
すなわち、車内灯利用型表示体を鉛直方向に配置した場合に、光拡散フィルムの一方の面側と他方の面側で柱状物の位置が異なる方向が、水平方向と平行になるように鏡面反射部材と貼合した。
【0076】
3.車内灯利用型表示体の評価
(1)拡散反射特性の評価1(ゲイン)
得られた光拡散フィルム等を含む車内灯利用型表示体を鉛直方向に配置した状態で、車内灯からの光に想定した水平方向の光を、光拡散フィルムの平面の法線方向を0°として、光拡散フィルムの反射構造体と対向する側と反対側から、所定角度(-20°、0°、+20°)となるように、それぞれ入射させた。
そして、どの方向に、どの程度の明るさで拡散反射しているかを、小型簡易散乱測定器(サイバネットシステムズ社製, Mini-Diff)を用いて測定し、基準値との関係でゲインを算出した。
【0077】
そして、図6(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、-20°入射における拡散角度(°)に対応するゲインを採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
また、図7(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、-20°入射における拡散角度(°)に対応する輝度の値を採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
また、図8(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、0°入射における拡散角度(°)に対応するゲインを採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
また、図9(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、0°入射における拡散角度(°)に対応する輝度の値を採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
【0078】
また、図10(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、20°入射における拡散角度(°)に対応するゲインを採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
また、図11(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、20°入射における拡散角度(°)に対応する輝度の値を採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
また、図12(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、40°入射における拡散角度(°)に対応するゲインを採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
また、図13(a)~(b)に、横軸に拡散角度(°)を採り、縦軸に、40°入射における拡散角度(°)に対応する輝度の値を採ってなる、特性曲線としてのチャートを示す。
なお、比較例4を基準としてゲインが1.0以上となる拡散光の光拡散角度の範囲(その幅が開き角に相当)を表1に示す。
【0079】
(2)拡散反射特性の評価2(正面及び斜め)
得られた車内灯利用型表示体を、室内灯に照らされた壁に貼付し、鉛直方向に配置した状態で、車内灯利用型表示体の正面から視覚した際の状況を写真観察(図14(a)中、記号a1が該当)し、下記基準に沿って、評価した。
同様に、車内灯利用型表示体に対して、斜め30°から視覚した際の状況を写真観察(図14(b)中、b1が該当)し、下記基準に沿って、評価した。
◎:白味を帯びて見える。
○:ほぼ白味を帯びて見える。
△:若干黒味を帯びて見える。
×:黒味を帯びて見える。
【0080】
[実施例2]
実施例2においては、以下のようにして光拡散フィルムを製造したほかは、実施例1と同様に光拡散フィルム(表1中、TYP2と称する。)を製造した。
すなわち、光拡散フィルム用組成物を調製する際に、更に(D)成分として紫外線吸収剤(BSF(株)製、TINUVIN 384-2)を0.08重量部の割合で添加したほかは、実施例1と同様に光拡散フィルム(屈曲部を有する、長さ120μmの5°傾斜のベントカラム構造)を製造した。
次いで、得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様に評価した。
【0081】
[実施例3]
実施例3においては、実施例2の光拡散フィルム用組成物200μmに対し、実施例1の条件で平行光を照射した後、剥離フィルムをラミネートし、その上から、2段階目の照射(入射角0°、ピーク照度は2.54mW/cm2、積算光量は46.76mJ/cm2)を行い、下部のカラム構造が途中で屈曲したベントダブルカラム構造の光拡散フィルム(表1中、TYP3と称する。)を、実施例1に準拠して製造した。
次いで、得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様に評価した。
【0082】
[実施例4]
実施例4においては、以下のようにして光拡散フィルムを製造したほかは、実施例1と同様に光拡散フィルム(表1中、TYP4と称する。)を製造した。
すなわち、光拡散フィルム用組成物を調製する際に、塗布厚を60μm、照射角(θd)を0°として製造した。その際のピーク照度は1.14mW/cm2、積算光量は57.6mJ/cm2であった。
次いで、得られた光拡散フィルムを用いて、実施例1と同様に評価した。
【0083】
[比較例1]
比較例1においては、実施例1の光拡散フィルムのかわりに、再帰性反射シート(封入カプセル型)FMG PSH8512(日本カーバイド社製、表1中、TYP5と称する。)を用いたほかは、実施例1と同様に評価した。
【0084】
[比較例2]
比較例2においては、実施例1の光拡散フィルムのかわりに、再帰性反射シート(高輝度カプセルレンズ型)ULP OR812(日本カーバイド社製、表1中、TYP6と称する。)を用いたほかは、実施例1と同様に評価した。
【0085】
[比較例3]
比較例3においては、実施例1の光拡散フィルムのかわりに、再帰性反射シート(超高輝度プリズムレンズ型)CRG CF99802(日本カーバイド社製、表1中、TYP7と称する。)を用いたほかは、実施例1と同様に評価した。
【0086】
[比較例4]
比較例4においては、実施例1の光拡散フィルムのかわりに、標準完全拡散板(Edmund社製、表1中、TYP8と称する。)を用いたほかは、実施例1と同様に評価した。
【0087】
【表1】
評価1:拡散反射特性の評価1
評価2:拡散反射特性の評価2(正面及び斜め)
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上、詳述したように、本発明の車内灯利用型表示体によれば、反射層を含む反射構造体と、所定の光拡散フィルムと、を積層してなる車内灯利用型表示体において、電車やバスの車内灯を利用して、夜間であっても、一定の表示特性を安定的に保持できるとともに、視野角内における表示光の輝度を高められるようになった。
したがって、本発明の車内灯利用型表示体によれば、電灯システムが無い場合であっても、夜間に認識可能な駅名表示板、看板、広告及び道路用標識等の各種表示体に適用することが期待される。
【0089】
より具体的に言葉を変えていえば、本発明の車内灯利用型表示体及その好適態様によって、下記のような効果を享受することができる。すなわち、本発明の車内灯利用型表示体は、幅広い産業上の利用可能性があると言える。
1)特別な電源がなくとも、電車やバス等の車内に存する複数の視認者等が、駅名表示看板を示す拡散光として、昼夜にかかわらず、明確に認識することができる。
2)電車等の、例えば一つの窓からの光を光源として、別の窓から、多数の視認者が、駅名表示看板を示す拡散光として、同時に視認することができる。
3)集光作用により、車両の複数の窓から発せられる車内灯の光を取込み、駅名表示看板を示す拡散光としての反射輝度を高めることができる。
4)大きな開き角を有するため、電車等の複数の窓から、一度に多数の視認者が鮮明な状態で、駅名表示看板を示す拡散光として視認することができる。
5)移動する電車等であっても、所定角度内となる入射光と、所定角度から外れる入射光は同程度となるので、表示体の明るさが一定に保たれる。
6)移動する電車等であっても、拡散光の開き角が大きいので、一定距離(一定時間)、同程度の鮮明さで、駅名表示看板を示す拡散光として視認することができる。
【符号の説明】
【0090】
12a:屈折率が相対的に高い柱状物、12b:屈折率が相対的に高いルーバー、14a:屈折率が相対的に低い領域、14b:屈折率が相対的に低いルーバー、16:屈曲部、20a、20c:カラム構造、20b:ルーバー構造、23、23a、23c、23e:透明樹脂フィルム、23b、23´b、23´´b:光拡散フィルム、23d、23g、25e、25b:粘着剤層、25c:反射層、23h:表面保護層(紫外線吸収層)、23f:装飾層、25a:基材、25f:シール材、25g:押圧部材(フレーム部材)、50:車内灯利用型表示体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15