(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/04 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A42B3/04
(21)【出願番号】P 2018059547
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2020-12-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月4日に、第21回レスキューグランプリにて展示した。 平成29年10月9日に、双葉安全大会にて展示した。 平成29年11月29日に、東海道新幹線総合事故復旧訓練にて展示した。 平成29年11月29日~平成29年12月1日に、第5回鉄道技術展2017にて展示した。
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住友 太郎
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3041106(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0438033(KR,Y1)
【文献】登録実用新案第3091123(JP,U)
【文献】特開2008-266858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に被る帽体と、前記帽体の外側面に設けられたカードホルダと、を備えたヘルメットであって、
前記カードホルダは、
前記外側面の一部を隙間を介して覆い、前記外側面に沿ってホルダ空間を区画する透明なカバー部材と、
前記帽体の前方又は後方に向けて前記ホルダ空間を開放する開口部と、
前記開口部を介し、前記帽体の前後方向に沿って前記ホルダ空間から出し入れされるホルダ部材と、
前記ホルダ部材の出し入れ方向の両側に設けられた一対の係止部と、
前記カバー部材に設けられ、前記ホルダ部材を前記ホルダ空間に挿入したときに前記一対の係止部を係止する一対の被係止部と、
を備えたことを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽体の外側面にIDカード等を収容するカードホルダが設けられたヘルメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帽体の外側面に形成された凹部と、この凹部を覆う透明なカバー部材とによって区画されたホルダ空間から、帽体の上下方向に沿ってホルダ部材を出し入れするカードホルダが設けられたヘルメットが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3002441号
【文献】特許第3043296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のヘルメットでは、ホルダ部材を帽体の上下方向に沿ってホルダ空間から出し入れするため、ホルダ部材の引き出しに必要な力の方向が直線的になる。そのため、ヘルメットを落とした場合や、飛来物、転倒等に起因する衝撃を受けた場合に、衝撃の作用方向がホルダ部材の引き出し方向に一致しやすく、ホルダ部材が容易に外れるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、帽体への衝撃入力によるホルダ部材の脱落を防止することができるヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のヘルメットは、頭部に被る帽体と、帽体の外側面に設けられたカードホルダと、を備えている。
そして、カードホルダは、帽体の外側面の一部を隙間を介して覆い、この外側面に沿ってホルダ空間を区画する透明なカバー部材と、帽体の前方又は後方に向けてホルダ空間を開放する開口部と、この開口部を介して帽体の前後方向に沿ってホルダ空間から出し入れ可能なホルダ部材と、ホルダ部材の出し入れ方向の両側に設けられた一対の係止部と、カバー部材に設けられ、ホルダ部材をホルダ空間に挿入したときに一対の係止部をそれぞれ係止する一対の被係止部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
よって、帽体に衝撃が入力してもホルダ部材を脱落させにくくでき、帽体への衝撃入力によるホルダ部材の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施例1のヘルメットにおいて、ホルダ部材を引き出した状態を示す斜視図である。
【
図5】実施例1のヘルメットにおいて、ホルダ部材の引き出し時の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のヘルメットを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
実施例1におけるヘルメット1の構成を
図1から
図4に基づいて説明する。
実施例1のヘルメット1は、
図1に示すように、使用者が頭部に被る帽体2と、帽体2の外側面2aに設けられたカードホルダ10と、を備えている。カードホルダ10は、使用者を識別するための名札や安全管理上の作業員証、IDカード等(以下、「カード」という)の携行を要する現場において、必要なカードを着脱可能に携行可能とするものである。このカードホルダ10は、カバー部材20と、ホルダ部材30と、を有している。
【0011】
カバー部材20は、透明又は透光性を有する合成樹脂材によって形成され、帽体2に対向する面が開放した筐体形状を呈している。このカバー部材20は、帽体2の外側面2aに固定されて、外側面2aの一部を隙間を介して覆う。これにより、カバー部材20と帽体2の外側面2aとの間に、外側面2aに沿ったホルダ空間Hが区画される。なお、このカバー部材20の帽体2への固定は、例えば帽体2の外側面2aに形成された凹部や穴と、カバー部材20に形成された凸部との既知の嵌合構造や、接着剤を用いた貼着、溶接等によって行われる。ここで、カバー部材20の帽体2に対する固定強度は、ヘルメット1の通常の使用状況では外れない程度に設計されることが好ましい。
【0012】
そして、カバー部材20は、帽体2の外側面2aに対向する正面21と、ヘルメット1の前方に臨む第1側面22と、ヘルメット1の後方に臨む第2側面23と、ヘルメット1の上方に臨む上面24と、ヘルメット1の下方に臨む下面25と、を有している。
【0013】
正面21は、帽体2の外側面2aに沿って湾曲している。ここで、正面21の帽体周方向の曲率は、帽体2の周方向の曲率にほぼ一致する一方、正面21の帽体上下方向の曲率は、帽体2の上下方向の曲率よりも大きい。これにより、ホルダ空間Hは、正面21と帽体2の外側面2aとの間に、帽体周方向に一定間隔で湾曲すると共に、帽体下方に向かって次第に狭くなる隙間を有する。
【0014】
さらに、第1側面22には、
図2に示すように開口部26が形成され、ホルダ空間Hは開口部26によりヘルメット1の前方に向かって開放される。第2側面23には、後述する第2係止片34が突出する第2開口部27が形成されている。そして、正面21には、後述する第1係止部35を着脱可能に係止する第1被係止部28と、後述する第2係止部36を着脱可能に係止する第2被係止部29と、が形成されている。
【0015】
開口部26は、
図2に示すように、ヘルメット1の上下方向に延びるスリット形状を呈し、上面24と下面25及び正面21にそれぞれ沿っている。また、第2開口部27は、第2側面23の上下方向中央部分に形成されている。
【0016】
第1被係止部28は、正面21の前端部21aに形成され、カバー部材20の上下方向中央部分をほぼ矩形に切り欠いた第1切欠部28aと、第1切欠部28aに隣接すると共に正面21の一部をホルダ空間Hの外方に膨出させた膨出部28bと、を有している。ここで、第1切欠部28aは、開口部26に連続している。また、膨出部28bにより、正面21の内側には凹みα(
図4参照)が形成される。
【0017】
第2被係止部29は、正面21の後端部21bに形成され、カバー部材20の上下方向中央部分を切り欠いた第2切欠部29aと、第2切欠部29aの縁部からホルダ空間H内に突出した爪部29bと、を有している。ここで、第2切欠部29aは、第2開口部27に連続している。
【0018】
ホルダ部材30は、合成樹脂製の薄板部材であり、表面にカードを装着した状態でホルダ空間Hから出し入れされる。ここで、ホルダ部材30の出し入れ動作は、開口部26を介し、ヘルメット1の前後方向に沿って行われる。このホルダ部材30は、
図3に示すように、ホルダ本体31と、把持部32と、第1係止片33と、第2係止片34と、を有している。
【0019】
ホルダ本体31は、カバー部材20の正面21とほぼ同じ大きさの薄板形状を呈し、帽体2の外側面2aに沿うように湾曲している。このホルダ本体31の表面には、カードを配置するカード配置領域Xと、カード配置領域Xを取り囲む周壁部31aと、が形成されている。ここで、ホルダ本体31の表面とは、ホルダ本体31がホルダ空間Hに収容されたときにカバー部材20の正面21に対向する面である。また、周壁部31aには、カード配置領域X内に向かって突出した薄板状の複数のカード保持片31bが形成されている。周壁部31aは、少なくともカード配置領域Xに配置するカードの厚み程度の高さを有している。また、各カード保持片31bとホルダ本体31の表面との間には、カードを挿入可能な隙間が設けられている。
【0020】
なお、複数のカード保持片31bは、ここではホルダ本体31の上下側部に沿って間隔を置いて三つずつ形成されている。さらに、カード配置領域Xには、ホルダ本体31を貫通する一対の大開口31cと、複数のカード保持片31bにそれぞれ対向した複数の小開口31dと、が形成されている。
【0021】
把持部32は、ホルダ本体31の前側縁部31eに設けられている。この把持部32は、ホルダ部材30をホルダ空間Hから出し入れするときに使用者によって把持される部分であり、ホルダ本体31の上下方向の全長にわたって形成されている。
【0022】
第1係止片33は、ホルダ本体31と把持部32との間であって、ホルダ本体31の前側縁部31eを跨いで形成されている。この第1係止片33は、把持部32に連続する一端部33aを残して周囲が切り抜かれ、一端部33aを基部として撓み変形が可能な板バネ形状を呈している。この第1係止片33のホルダ本体31側の他端部33bには第1係止部35が形成され、中央部の表面には凹凸部33cが形成されている。
【0023】
そして、この第1係止片33は、ホルダ部材30の上下方向中央部分に位置し、このホルダ部材30がホルダ空間Hに収容されたとき、第1係止部35が第1被係止部28の膨出部28bによって形成された凹みαに入り込んで係止される。一方、第1係止片33の表面に形成された凹凸部33cは、ホルダ部材30がホルダ空間Hに収容された際、第1被係止部28の第1切欠部28aによってカバー部材20の外部に露出される。
【0024】
第1係止部35は、ホルダ部材30の挿入方向に向かって先細りとなった楔形状を呈している。これにより、第1係止部35は、凹みαに入り込みやすく、且つ抜けにくい。
【0025】
第2係止片34は、ホルダ本体31の後側縁部31fに形成され、カード配置領域Xに連続する一端部34aを残して周囲が切り抜かれ、一端部34aを基部として撓み変形が可能な板バネ形状を呈している。また、この第2係止片34は、他端部34bがホルダ本体31の後側縁部31fよりも突出している。第2係止片34の表面には、周壁部31aの一部と、第2係止部36と、滑り止め部34cとが、一端部34aから他端部34bに向かって順に形成されている。
【0026】
そして、この第2係止片34は、ホルダ部材30の上下方向中央部分に位置し、このホルダ部材30がホルダ空間Hに収容されたとき、他端部34bが第2開口部27から突出すると共に、第2係止部36が第2被係止部29の爪部29bに噛み合って係止される。
【0027】
第2係止部36は、ホルダ部材30の挿入方向に向かって先細りとなった楔形状を呈している。これにより、第2係止部36は、爪部29bに噛み合いやすく、且つ外れにくい。
【0028】
次に、実施例1のヘルメット1の作用を説明する。
実施例1のヘルメット1において、カードホルダ10を使用して必要なカードを携行するには、予めホルダ部材30をホルダ空間Hから引き出しておく。
【0029】
ここで、ホルダ部材30を引き出すには、まず、第1係止片33を押圧し、帽体2に向かって撓み変形させる。これにより、
図5に示すように、第1係止部35は凹みαから外れ、第1被係止部28による第1係止部35の係止が解除される。
【0030】
次に、この第1係止部35の係止を解除した状態で、第2係止片34を押圧し、帽体2に向かって撓み変形させる。これにより、
図5に示すように、第2係止部36と爪部29bとの噛み合いが外れ、第2被係止部29による第2係止部36の係止が解除される。なお、第1係止部35及び第2係止部36の解除は、どちらを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0031】
そして、第1係止部35及び第2係止部36をいずれも解除状態にしたら、この第1係止片33及び第2係止片34を押圧したまま、ホルダ部材30をヘルメット1の前方へとスライド移動させる。これにより、ホルダ部材30は、開口部26を介してホルダ空間Hから引き出される。
【0032】
ホルダ空間Hからホルダ部材30を引き出したら、ホルダ部材30のカード配置領域Xにカード(不図示)を配置し、さらにカードの周縁部を複数のカード保持片31bとホルダ本体31との間に挿入する。これにより、カードは、ホルダ部材30に装着される。なお、カード配置領域Xにカードを配置することで、カードの周縁が周壁部31aに干渉し、カードの位置ずれが防止される。
【0033】
ホルダ部材30にカードを装着したら、ホルダ部材30の把持部32を持ち、このホルダ部材30を、ホルダ本体31の後側縁部31fから開口部26に挿入する。そして、ホルダ部材30を帽体2の外側面2aに沿ってヘルメット1の後方へとスライド移動させる。
【0034】
ホルダ部材30がスライド移動していくと、第1係止片33に形成された第1係止部35が膨出部28bの縁部に当接し、第2係止片34に形成された第2係止部36が爪部29bに当接する。ホルダ部材30をさらに移動させていくことで、第1係止片33は一端部33aを基部として撓み変形し、第1係止部35は膨出部28bの縁部を乗り越える。そして、第1係止部35が膨出部28bの縁部を乗り越えると、第1係止片33の弾性に基づく形状復元作用によって第1係止部35が凹みαに入り込む。これにより、第1被係止部28によって第1係止部35が係止される。
【0035】
一方、ホルダ部材30のスライド移動により、第2係止片34も一端部34aを基部として撓み変形し、第2係止部36が爪部29bを乗り越える。そして、第2係止部36が爪部29bを乗り越えると、第2係止片34の弾性に基づく形状復元作用によって、第2係止部36が爪部29bに係合する。これにより、第2被係止部29によって第2係止部36が係止される。なお、このとき、第2係止片34の他端部34bは、カバー部材20の第2側面23に形成された第2開口部27から突出する。また、爪部29bは、
図4に示すように、第2係止片34と周壁部31aの間に挟持される。
【0036】
第1被係止部28によって第1係止部35が係止され、第2被係止部29によって第2係止部36が係止されることで、ホルダ部材30はホルダ空間H内に保持される。そして、このホルダ部材30に装着されたカードは、カバー部材20の正面21に対向する。ここで、カバー部材20が透明又は透光性を有する合成樹脂材によって形成されている。そのため、使用者は、カバー部材20を透過して外部からカードを視認することができる。この結果、使用者は、カードホルダ10を使用して必要なカードを携行することができる。
【0037】
そして、この実施例1のヘルメット1では、ホルダ部材30が出し入れされるホルダ空間Hが、帽体2の周方向に一定間隔で湾曲した隙間を有している。また、ホルダ空間Hに対するホルダ部材30の出し入れ方向は、帽体2の前後方向(帽体2の周方向)に沿っている。
【0038】
そのため、ホルダ部材30をホルダ空間Hから円滑に引き出すには、帽体2の外側面2aに沿ってホルダ部材30を円弧状に移動させる必要がある。そして、ホルダ部材30の引き出しに必要な力の方向が円弧状になるので、ホルダ部材30を円滑に引き出すために必要な力の作用方向は、直線的な一方向の衝撃入力方向に一致しない。つまり、ホルダ部材30を直線的に移動させようとすれば、ホルダ部材30と帽体2やカバー部材20と間に生じる摩擦力や、ホルダ部材30の変形による抵抗が大きくなる。このため、ホルダ部材30がホルダ空間Hから脱落しにくくなり、帽体2への衝撃入力によるホルダ部材30の脱落を防止することができる。
【0039】
また、実施例1のヘルメット1では、ホルダ本体31の前側縁部31eに第1係止部35を有する第1係止片33が形成され、ホルダ本体31の後側縁部31fに第2係止部36を有する第2係止片34が形成されている。ここで、ホルダ部材30は、ヘルメット1の前後方向に沿ってホルダ空間Hから出し入れされる。つまり、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)は、ホルダ部材30の出し入れ方向の両側に形成されている。
【0040】
そのため、ホルダ部材30をホルダ空間Hから引き出すには、第1被係止部28による第1係止部35の係止状態と、第2被係止部29による第2係止部36の係止状態とを同時に解除しなければならない。しかも、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)は、ホルダ部材30の出し入れ方向の両側に形成されている。このため、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)が互いに離れた位置となる。この結果、帽体2を落下したり、飛来物や転倒等によって衝撃が作用したとしても、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)は同時に解除状態になりにくい。よって、帽体2へ衝撃入力が生じても、ホルダ部材30がホルダ空間Hから脱落することを防止できる。
【0041】
なお、一対の係止部を、ホルダ部材の出し入れ方向に直交する方向に沿って設けた場合を考える。この場合では、一対の係止部のうち、一方だけが係止状態を解除されると、ホルダ部材が出し入れ方向に対して傾くおそれがある。そのため、ホルダ空間の内側にホルダ部材が干渉する可能性があり、そのときには他方の係止部の解除を容易に行うことができなくなる。そのため、一対の係止部を、ホルダ部材の出し入れ方向に直交する方向に沿って設けた場合では、一対の係止部の解除動作を同じタイミング行う必要があり、係止部の解除に手間がかかる。
【0042】
これに対し、実施例1では、第1係止部35の係止状態を解除した後、第2係止部36の係止状態を解除しても、ホルダ部材30が出し入れ方向(ヘルメット1の前後方向)に対して傾くことはない。つまり、ホルダ部材30を引き出すためには、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)を、同時に解除状態にする必要はあるものの、必ずしも解除動作タイミングを揃える必要はない。そのため、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)の係止状態を容易に解除することができる。
なお、「解除動作タイミング」とは、一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)がそれぞれ一対の被係止部(第1被係止部28,第2被係止部29)から外れるタイミングである。
【0043】
さらに、ホルダ部材30が一対の係止部(第1係止部35,第2係止部36)を有していることで、第1係止部35と第2係止部36のいずれかが破損しても、他方の係止状態が維持されることで、ホルダ部材30の脱落を防止することができる。
【0044】
また、この実施例1では、第1係止部35が、一端部33aを基部にした撓み変形が可能な板バネ形状の第1係止片33の他端部33bに形成されている。そのため、第1係止部35が、第1係止片33の弾性に基づく形状復元作用によって第1被係止部28の凹みαに入り込む際、第1係止片33がカバー部材20に干渉して、干渉音を発生させることができる。また、第2係止部36も、一端部34aを基部にした撓み変形が可能な板バネ形状の第2係止片34に形成されている。そのため、第2係止片34の弾性に基づく形状復元作用によって、第2係止部36が爪部29bに対して係止するときにも、第2係止片34がカバー部材20に干渉して、干渉音を発生させることができる。
これにより、使用者は視覚以外に聴覚によってもホルダ部材30がカバー部材20に係止されたことを把握することができ、さらに安心してカードホルダ10を使用することができる。
【0045】
また、第1係止部35の第1被係止部28への係止や、第2係止部36の第2被係止部29への係止は、いずれも第1係止片33や第2係止片34の弾性に基づく形状復元作用によって行われる。そのため、ホルダ部材30をホルダ空間H内に保持させる際、ホルダ部材30のスライド移動以外の操作を不要とすることができる。よって、このホルダ部材30を容易にホルダ空間Hに保持させることができる。
【0046】
そして、実施例1では、第1係止片33の表面には、凹凸部33cが形成され、さらにこの凹凸部33cは、ホルダ部材30がホルダ空間Hに収容されたときには、第1被係止部28の第1切欠部28aによってカバー部材20の外部に露出される。そのため、ホルダ部材30を引き出すために第1係止片33を押圧する際、使用者の指先を滑りにくくして、ホルダ部材30の引き出し操作を円滑に行わせることができる。
【0047】
一方、第2係止片34についても表面に滑り止め部34cが形成され、ホルダ部材30がホルダ空間Hに収容されたとき、この滑り止め部34cが形成された第2係止片34の他端部34bが第2開口部27から突出する。そのため、ホルダ部材30を引き出すために第2係止片34を押圧する際、使用者の指先を滑りにくくして、ホルダ部材30の引き出し操作を円滑に行わせることができる。
【0048】
また、この実施例1のヘルメット1では、帽体2に対向する面が開放した筐体形状を呈しカバー部材20を帽体2の外側面2aに固定することで、外側面2aに沿ったホルダ空間Hを形成している。そのため、ホルダ空間Hを形成するために帽体2をへこませる必要がなく、帽体内部の空間を圧迫しない。よって、例えば帽体2を大きくすることなく、帽体内部にフェイスガード等を収納するスペースを確保することができる。
【0049】
以上、本発明のヘルメット1を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0050】
実施例1では、カバー部材20の第1側面22に開口部26を形成し、この開口部26によって帽体2の前方に向けてホルダ空間Hを開放する例を示した。しかしながら、これに限らず、ホルダ部材30を出し入れする開口部26は、ヘルメット1の後方に臨むカバー部材20の第2側面23に形成してもよい。この場合では、ホルダ空間Hは、開口部26によって帽体2の後方に向けて開放する。また、ホルダ部材30をホルダ空間Hから引き出すときには、このホルダ部材30をヘルメット1の後方に向けてスライド移動させる。
この場合であっても、ホルダ部材30の引き出しに必要な力の方向が円弧状になり、帽体2への衝撃入力によるホルダ部材30の脱落を防止することができる。
【0051】
また、実施例1では、第1被係止部28及び第2被係止部29は、いずれもカバー部材20に形成された例を示した。しかしながら、一対の被係止部は、ホルダ部材30をホルダ空間Hに挿入したときに一対の係止部を係止できればよいので、帽体2の外側面2aに形成されていてもよい。さらに、一対の被係止部のうち、一方をカバー部材20に形成し、他方を帽体2の外側面2aに形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 :ヘルメット
2 :帽体
2a :外側面
10 :カードホルダ
20 :カバー部材
26 :開口部
28 :第1被係止部
28a :第1切欠部
28b :膨出部
29 :第2被係止部
29a :第2切欠部
29b :爪部
30 :ホルダ部材
33 :第1係止片
34 :第2係止片
35 :第1係止部
36 :第2係止部
H :ホルダ空間