(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/33 20180101AFI20220405BHJP
F21S 41/164 20180101ALI20220405BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20220405BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20220405BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220405BHJP
【FI】
F21S41/33
F21S41/164
F21W102:135
F21Y101:00 100
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018080090
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 利行
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-077302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/33
F21S 41/164
F21W 102/135
F21Y 101/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム形成領域とハイビーム形成専用領域からなる反射面を有するリフレクタと、
遮光部材を介して第1光をリフレクタのロービーム形成領域に照射して前方にロービーム用配光パターンを形成する第1発光部と、第1発光部との選択によって点灯して出射する第2光をリフレクタのロービーム用形成領域及びハイビーム形成専用領域の双方に照射して前方にハイビーム用配光パターンを形成する第2発光部と、
カットオフライン形成端よりも下方に向かう前記第1光を遮光するインナーシェードと、を備える光源と、を有する車両用前照灯において、
前記リフレクタ及び光源は、ランプボディと、透明または半透明の前面レンズとの内側に設けられ、
前記リフレクタのロービーム形成領域が、ハイビーム形成専用領域の反射光を照射する際に形成されるハイビーム用ホットゾーンに補助配光を反射する補助集光領域を有するように形成され
、
前記リフレクタは、複数の反射セグメントによって構成され、
前記ロービーム形成領域の補助集光領域が、連続して形成される複数の反射セグメントから構成されて、前記ハイビーム用ホットゾーンに向けて第2光の一部を集光反射する補助集光セグメントとして形成され、
前記補助集光セグメントが、ロービーム用フィラメントの点灯時に第1光の一部による補助配光をH-H線の下方かつV-V線上の領域に反射するように形成され、
前記カットオフライン形成端は、光軸に直交する方向かつ水平方向に延びる軸線に対し、頂部から左斜め下方に15°傾斜するように形成された左下降カットオフライン形成端と、頂部から右斜め下方に15°傾斜するように形成された右下降カットオフライン形成端と、を有することを特徴とする、車両用前照灯。
【請求項2】
前記補助集光領域がリフレクタのロービーム形成領域の外周近傍に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記補助集光領域が、第2光の一部をハイビーム用配光パターンの最大光度となる領域に照射することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ロービーム用及びハイビーム用の双方のフィラメントを有するハロゲンバルブ光をリフレクタで反射させて配光パターンを形成する車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インナーシェード付のロービーム用フィラメントとハイビーム用フィラメントをそれぞれ備え、選択的に点灯するいずれか一方のフィラメントの光をリフレクタで前方に反射することでロービーム用配光パターンまたはハイビーム用配光パターンを形成するハロゲン前照灯が開示されている。
【0003】
特許文献1のハロゲン前照灯は、インナーシェードを介して水平及び斜めに下降するカットオフラインを形成されるロービーム用フィラメントの光をリフレクタのロービーム形成領域(カットオフライン光に倣って形成される水平カットオフライン形成端及び斜めに下降する斜めカットオフライン形成端よりも上方の領域)で下向きに反転反射させることでロービーム用配光パターンを形成し、ハイビーム用フィラメントの光をリフレクタの全領域(ロービーム形成領域とリフレクタの残りの領域であるハイビーム形成専用領域)で反射させてハイビーム用配光パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の車両用前照灯は、ハロゲンバルブよりも消費電力が少ないLED素子を光源とするものが多く、LED前照灯においては、LED光の指向性の強さやLED素子の灯室内占有領域の小ささを利用したデザイン上の観点からハロゲン前照灯よりも幅や高さの短いリフレクタを採用することが多い。一方、LED光源の採用を前提にリフレクタを小さく設計された前照灯においても、車両のグレード付けの観点からLED光源のみならずハロゲンバルブを採用することがある。
【0006】
LED光源の採用を前提として専有面積を狭く設計されたリフレクタは、特許文献1に示すようなハロゲンバルブ用の従来のリフレクタに比べてハイビーム形成専用領域を小さく形成される。特に、近年の高効率光源バルブのインナーシェードには、水平及び斜め下方に傾斜するカットオフラインでは無く左右両方とも斜め下方に傾斜するカットオフラインを有するカットオフライン光を形成するものがある。そのため、リフレクタのハイビーム形成専用領域は、このような高効率光源バルブの採用に基づいてロービーム形成領域を確定するカットオフライン形成端を従来の水平方向から斜め下方に形成されることにより、益々面積を狭められる。
【0007】
このようなハイビーム形成専用領域の面積の減少は、集光性の低下によってホットゾーンの光度不足を生じさせるおそれがある。
【0008】
本願は、上記問題に鑑みて、LED光源を前提とした専有面積の小さなリフレクタに高効率ハロゲンバルブを利用しても十分な光度のホットゾーンを有するハイビーム用配光パターンを形成可能な車両用前照灯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ロービーム形成領域とハイビーム形成専用領域からなる反射面を有するリフレクタと、遮光部材を介して第1光をリフレクタのロービーム形成領域に照射して前方にロービーム用配光パターンを形成する第1発光部と、第1発光部との選択によって点灯して出射する第2光をリフレクタのロービーム用形成領域及びハイビーム形成専用領域の双方に照射して前方にハイビーム用配光パターンを形成する第2発光部を備える光源と、を有する車両用前照灯において、前記リフレクタのロービーム形成領域が、ハイビーム形成専用領域の反射光を照射する際に形成されるハイビーム用ホットゾーンに補助配光を反射する補助集光領域を有するように形成されることが望ましい。
【0010】
(作用)リフレクタのロービーム形成領域に設けられた補助集光領域は、第1発光部の点灯かつ第2発光部の消灯時にロービーム用配光パターンの一部を形成し、第2発光部の点灯かつ第1発光部の消灯時にハイビーム形成専用領域による反射光を補光してハイビーム用ホットゾーンの光束を増加させる。
【0011】
また、車両用前照灯において、前記リフレクタは、複数の反射セグメントによって構成され、前記ロービーム形成領域の補助集光領域が、前記ハイビーム用ホットゾーンに向けて第2光の一部を集光する補助集光セグメントとして形成されることも望ましい。
【0012】
(作用)リフレクタのロービーム形成領域の補助集光領域が、第1発光部の点灯時にロービーム用配光パターンの一部を形成すると共に第2発光部の点灯時にハイビーム形成専用領域による反射光を補光してハイビーム用ホットゾーンの光束を増加させる。
【0013】
また、車両用前照灯において、前記補助集光領域は、リフレクタのロービーム形成領域の外周近傍に形成されることも望ましい。
【0014】
(作用)リフレクタの外周近傍領域から発せられる反射光は、集光度が高く、小さな光像を形成する。
【0015】
また、車両用前照灯において、前記補助集光領域が、第2光の一部をハイビーム用配光パターンの最大光度となる領域に照射するように形成されることも望ましい。
【0016】
(作用)リフレクタのロービーム形成領域の集光領域が、ハイビーム用配光パターンの最高光度となる領域に補助集光を照射することにより、ホットゾーン内の最高光度とすべき領域の光度が増大される。
【発明の効果】
【0017】
車両用前照灯によれば、リフレクタのロービーム形成領域に設けられた補助集光領域が、第1発光部の点灯時にロービーム用配光パターンの形成に寄与することのみならず、第2発光部の点灯時にハイビーム形成専用領域による反射光を補光してハイビーム用ホットゾーンの光束増加に寄与することにより、十分な最高光度を持つハイビーム用配光パターンが形成される。
【0018】
車両用前照灯によれば、補助集光領域をリフレクタの外周近傍領域に形成することで反射光の集光度が高くなって光束密度が増大するため、ホットゾーンの光度が更に向上する。
【0019】
車両用前照灯によれば、リフレクタのロービーム形成領域に設けられた補助集光領域によって、ハイビームホットゾーン内の最大光度とすべき領域の光度が最大になることにより、ハイビーム用配光パターンの遠方への伸びが最大になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明の実施形態に係る車両用前照灯の縦断面図。
【
図2】(a)本実施例の光源バルブの左側面図。(b)光源バルブのインナーシェード周辺を上方から見た拡大平面図。(c)
図2(b)のI-I断面図
【
図4】本実施形態の車両用前照灯によるロービーム用配光パターンをリフレクタの後方から透視的に見た状態を示す図。
【
図5】本実施形態の車両用前照灯によるハイビーム用配光パターンをリフレクタの後方から透視的に見た状態を示す図。
【
図6】本実施形態の車両用前照灯によるハイビーム用配光パターンを車両の上方から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。各図においては、車両用前照灯の各部や車両用前照灯の搭載車両のドライバーから見た道路の方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。
【0022】
図1により本実施形態における車両用前照灯1を説明する。本実施形態は、発光するフィラメント(8,10)の切替えによってロービーム光またはハイビーム光を選択的に出射する2灯式の車両用前照灯1を示している。車両用前照灯1は、ランプボディ2と透明または半透明の前面レンズ3の内側に形成される灯室S内に灯具ユニット4、及びエクステンションリフレクタ11を設けることで形成される。尚、本実施形態においては、後述する
図6に示すように車両用前照灯を搭載した車両24が左側通行の国で使用されることを想定している。
【0023】
灯具ユニット4は、光源バルブ5,リフレクタ6及びアウターシェード7によって構成される。光源バルブ5は、光軸O方向に伸びるロービーム用フィラメント8(第1発光部),インナーシェード9及びハイビーム用フィラメント10(第2発光部)を有するハロゲンバルブ等の高効率発光バルブである。光源バルブ5は、光軸Oを中心とした回転放物面上に後述する複数の反射セグメントを設けて形成されたリフレクタ6に光軸Oを基準として同軸となるように取り付けられ、ロービーム点灯時にフィラメント8を点灯させ、ハイビーム点灯時にフィラメント10を点灯させる。リフレクタ6は、反射面6aに設けられた後述する反射セグメントによって光源バルブ5の光を前方に反射する。アウターシェード7は、ロービーム用フィラメント8から前方に直接出射する光を遮蔽するように光源バルブ5の前端部を被うキャップ7aとリフレクタ6に取り付けられる取付部7bによって構成される。尚、灯室S内の灯具ユニット4の周辺領域は、前方から見えないようにエクステンションリフレクタ11によって遮蔽される。
【0024】
図2(a)は、
図1の光源バルブ5を示す。光源バルブ5は、口金5a、口金に固定された筒型ガラス球5b、端子5c、口金5aを介して端子5cに電気的に接続される金属製のリード線5d、ロービーム用フィラメント8、遮光部材であるインナーシェード9及びハイビーム用フィラメント10を有する。ロービーム用フィラメント8、インナーシェード9及びハイビーム用フィラメント10は、それぞれガスを封入されて密閉された筒型ガラス球5bの内側において、リード線5dを介して口金5aに保持される。
【0025】
ロービーム用フィラメント8は、光軸Oと同軸になるよう配置され、インナーシェード9は、ロービーム用フィラメント8の下側に配置され、ハイビーム用フィラメント10は、ロービーム用フィラメント8の後方において光軸Oの近傍に配置される。筒型ガラス球5bの先端には、ロービーム用及びハイビーム用フィラメント(8,10)から前方に直接出射する光を遮蔽する遮蔽被膜5eが設けられる。尚、本実施形態においては、フィラメントを発光させる光源バルブ5の代わりにLED等の半導体発光素子を発光させる光源を用いても良い。
【0026】
インナーシェード9は、
図2(b)(c)に示すように正面から見て上方に開口する有底のカップ型形状を有する。インナーシェード9の後端には、上方から見て後方に凸となる湾曲形状に形成された遮光部9aが設けられる。
図2(c)に示す遮光部9aの上端には、正面から見て光軸Oの直下かつ近傍に位置する頂部9bから左斜め下方に傾斜する左下降カットオフライン形成端9cと、頂部9bから右斜め下方に傾斜するように形成された右下降カットオフライン形成端9dが設けられる。
【0027】
図2(c)の左下降カットオフライン形成端9c及び右下降カットオフライン形成端9dは、それぞれ光軸Oに直交する方向かつ水平方向に延びる軸線O1に対して15°ずつ下方に傾斜するように形成される。尚、左右の下降カットオフライン形成端の下方への傾斜角は、15°に限られない。また、下降カットオフライン形成端の一方は、従来の光源バルブのように水平カットオフラインの形成端とされても良い。
【0028】
ロービーム用フィラメント8は、
図2(c)のインナーシェード9によって左右の下降カットオフライン形成端(9c,9d)よりも下方に向かう光を遮光されつつロービーム用の第1光S1を後方のリフレクタ6に照射する。第1光S1は、水平方向から左斜め及び右斜め下方にそれぞれ略15°ずつ傾斜する左右の下降カットオフライン(12,13)を有する。一方、ハイビーム用フィラメント10は、遮光されることなくハイビーム用の第2光S3を後方のリフレクタ6に照射する。
【0029】
図1及び
図3に示すリフレクタ6は、複数の反射セグメントからなる反射面6aを有し、光源バルブ5から反射面6aに入射した光の上下及び左右方向を反転するように前方に反射する。
図3の反射面6aは、点P1-P2-P3-P4で結ばれた線よりも上方に位置するロービーム用反射セグメント群14(ロービーム形成領域)と、点P1-P2-P3-P4で結ばれた線よりも下方に位置するハイビーム用反射セグメント15aからなるハイビーム専用反射セグメント群15(ハイビーム形成専用領域)によって形成される。
図4に示すように、ロービーム用フィラメント8の第1光S1は、ロービーム用反射セグメント群14のみに入射し、ハイビーム用フィラメント10の第2光S3は、ロービーム用反射セグメント群14とハイビーム専用反射セグメント群15を含む反射面6aの全体に入射する。
【0030】
図3に示すようにロービーム用反射セグメント群14は、反射面6aの左側で外周から内周にかけて点P1-P2-P5-P6で囲まれた領域に設けられた複数の第1カットオフライン形成セグメント16と、反射面の右側で外周から内周にかけてリフレクタ点P3-P4-P7-P8で囲まれた領域に設けられた複数の第2カットオフライン形成セグメント17と、P6-P5-P8-P7を結ぶ線よりも上方の領域に設けられた複数の汎用セグメント18によって形成される。
【0031】
図3に示す点P7-P9-P10で囲まれた複数の汎用セグメントは、リフレクタ6の反射面6aの補助集光領域となる補助集光セグメント26を形成する。補助集光セグメント26を形成する複数の汎用セグメントは、リフレクタ6のロービーム用反射セグメント群14の外周近傍から連続して形成される。補助集光セグメント26は、リフレクタ6のロービーム用反射セグメント群14の外周近傍領域に形成されることにより、反射光の集光度を増大させ、光束密度の高く明るい小さな光像を車両の前方に表示する。
【0032】
図3に示すように複数の第1カットオフライン形成セグメント16の下端部には、点P1-P2を結ぶ線上に連続する左カットオフライン形成端19が形成され、複数の第2カットオフライン形成セグメント17の下端部には、点P3-P4を結ぶ線上に連続する右カットオフライン形成端20が形成される。
【0033】
図3の左右のカットオフライン形成端(19,20)は、インナーシェード9の左右の下降カットオフライン形成端(9c,9d)よりも最大で略+5°ずつ斜め下向きに傾斜するように(即ち、15°+最大で略5°傾斜するように)マージンを形成される。その結果、
図2に示す第1光S1によって形成された左右斜め下方に略15°ずつ傾斜する下降カットオフライン(12、13)は、上記マージンによってハイビーム専用反射セグメント群15側にはみ出すこと無く、ロービーム用反射セグメント群14内に形成される。尚、上記マージンの最大値は、下方に微少角傾けられていれば、+略5°に限られない。
【0034】
図1に示すようにロービーム用フィラメント8から反射面6aに入射した第1光S1は、ロービーム用反射セグメント群14によって前方かつ斜め下方に反射され、第1光S1の反射光S2が
図4のロービーム用配光パターンLpを表示する。また、
図1に示すようにハイビーム用フィラメント10から反射面6aに入射した第2光S3は、ロービーム用反射セグメント群14とハイビーム専用反射セグメント群15の双方によって前方に反射され、第2光S3の反射光S4が
図5のハイビーム用配光パターンHpを表示する。
【0035】
具体的には、
図1に示すロービーム用フィラメント8の点灯時に生じる反射光S2のうち
図3及び
図4に示すリフレクタ6のロービーム用反射セグメント群14の左下領域にある第1カットオフライン形成セグメント16、ロービーム用反射セグメント群14の右下領域にある第2カットオフライン形成セグメント17、汎用セグメント18のうち反射面6aの左半分に配置される左汎用セグメント18a及び汎用セグメント18のうち反射面6aの右半分に配置される右汎用セグメント18b(補助集光セグメント26を除く)でそれぞれ反射された光(S21,S22,S23,S24)は、上下左右に反転反射されてロービーム用配光パターンLpの全域を前方に表示する。その際、第1カットオフライン形成セグメント16による反射光S21は、右斜上方に拡散することなく対向車ドライバーの目線を示す水平線H-Hの近傍直下に集光して水平カットオフライン22を有する配光領域Lp1を表示することにより、鮮明な水平カットオフライン22を有するロービーム用配光パターンLpを対向車ドライバーに眩惑を生じさせることなくより遠くまで表示させる。
【0036】
また、
図1に示すようにハイビーム用フィラメント10の点灯時に生じる第2光S3は、ロービーム用フィラメント8よりも後方からロービーム用反射セグメント群14とハイビーム専用反射セグメント群15からなる反射面6aの全域に入射する。反射光S4のうち、
図3及び
図5に示すロービーム用反射セグメント群14(補助集光セグメント26を除く)で反射された光S41は、反転されること無く前方かつほぼ水平に反射されて、第1配光パターンHp1の全域を前方に表示し、ハイビーム専用反射セグメント群15で反射された光S42は、第2配光パターンHp2を前方に表示し、第1及び第2配光パターン(Hp1,Hp2)は、合成されることによってハイビーム用配光パターンHpを前方に表示する。
【0037】
図5に示す第1配光パターンHp1は、
図4のロービーム用配光パターンLpを水平線H-Hと所定の鉛直線V-Vの交点に対して対称となるように反転させた形状を有する。
図5に示す第2配光パターンHp2は、一部が第1配光パターンHp1に重なった状態で第1配光パターンHp1の下に表示される。
【0038】
図5に示す通り、ハイビーム用配光パターンHpの中央(水平線H-Hと鉛直線V-Vの交点を中心とした周辺領域)には、光束の集光によってホットゾーンHz(3点鎖線で示すハイビーム用配光パターンの内側で最も明るい部位)が形成される。
【0039】
一方、
図3と
図4に示すリフレクタ6のロービーム用反射セグメント群14に設けられた補助集光セグメント26は、ロービーム用フィラメント8の点灯時に反射光S2の一部である光S25による補助配光Hz1をH-H線の下方かつV-V線上においてロービーム用配光パターンLpに重ねて表示する。また、
図3と
図5に示すように補助集光セグメント26は、ハイビーム用フィラメント10の点灯時に反射光S4の一部である光S43をハイビーム用のホットゾーンHzの中央に補助配光Hz2を重ねて表示する。
【0040】
図4と
図5に示すようにリフレクタ6のロービーム用反射セグメント群14の外周近傍領域に形成された補助集光セグメント26は、ロービーム用フィラメント8の点灯時にロービーム用配光パターンLpの生成に寄与することのみならず、ハイビーム用フィラメント10の点灯時に補助集光セグメントを除く複数の汎用セグメント18がハイビーム用配光パターンHpの全体を表示する際にホットゾーンHzの中央に集光度の高い補助配光Hz2を表示してホットゾーンのHzの光束増加に寄与する。その結果、本実施形態の車両用前照灯1は、十分な最高光度を持つハイビーム用配光パターンHpを形成出来る。
【0041】
図6に示す車両24は、
図1に示す本実施形態の車両用前照灯1によりハイビーム用配光パターンHpを車両前方路面の自車線Ln1側から対向車線Ln2側にかけて表示している。
図5の二点鎖線は、本実施形態のような補助集光セグメントを持たないリフレクタを本実施形態の光源バルブ5に採用したと仮定した場合のハイビーム用配光パターンHppを示す。
【0042】
図2(a)から(c)に示す本実施形態の光源バルブ5は、高効率バルブであって水平及び斜め下方に傾斜するカットオフラインでは無く左右両方とも斜め下方に傾斜するカットオフラインを有するカットオフライン光をリフレクタに照射する。従って、使用されるリフレクタのハイビーム形成専用領域は、ロービーム形成領域を確定するカットオフライン形成端を従来の水平方向から斜め下方に形成される必要性から面積を狭められるため、
図6に示すように光源バルブ5と補助集光セグメントを持たないリフレクタによって表示されるハイビーム用配光パターンHppは、ホットゾーンに照射される光束が不十分となるために車両24に近い位置までしか照射されない。
【0043】
しかし、
図5に示すように本実施形態の車両用前照灯1によるハイビーム用配光パターンHpは、ハイビーム用配光パターンHpにおけるホットゾーンHzに補助集光セグメント26による補助配光Hz2を重ねて照射されることでホットゾーンHzの光束を増加されているため、
図6に示すようにハイビーム用配光パターンHppよりも遠方に照射される点で優れている。
【0044】
尚、本実施形態においては、車両が右側通行の国で使用されることを想定してロービーム用反射セグメント群14の第1カットオフライン形成セグメント16が水平カットオフラインを表示し、第2カットオフライン形成セグメント17が右斜めカットオフラインを形成するように構成されても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用前照灯
5 光源バルブ(光源)
6 リフレクタ
6a 反射面
8 ロービーム用フィラメント(第1発光部)
9 インナーシェード(遮光部材)
10 ハイビーム用フィラメント(第2発光部)
14 ロービーム用反射セグメント群(ロービーム形成領域)
15 ハイビーム専用反射セグメント群(ハイビーム形成専用領域)
26 補助集光セグメント(補助集光領域)
Hz ハイビーム用配光パターンのホットゾーン
Hz2 補助配光
Hp ハイビーム用配光パターン
Lp ロービーム用配光パターン
S1 第1光
S2 第2光