(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27M 3/00 20060101AFI20220405BHJP
E04F 15/04 20060101ALI20220405BHJP
B27D 1/04 20060101ALI20220405BHJP
B27M 3/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B27M3/00 C
E04F15/04 601A
B27D1/04 K
B27D1/04 F
B27M3/04
(21)【出願番号】P 2018083581
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】加納 秀男
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-074609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0069044(US,A1)
【文献】特開2010-144466(JP,A)
【文献】特開2003-245908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 3/00 - 3/38
E04F 15/00 - 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の板状体の一面の少なくとも一端部に
、後の第五工程で形成する雄実および雌実までの距離より小さい深さの凹部を形成する第一工程と、該凹部を除く第一の板状体の一面に接着剤を塗布する第二工程と、第一の板状体の接着剤塗布面に第二の板状体を積層する第三工程と、前記第一工程で形成した凹部を含み且つ前記第二工程で塗布した接着剤には干渉しないように少なくとも第一の板状体の前記凹部形成側端部を
切断する第四工程と、
前記第四工程で切断した後の両端部から第一の板状体の不要部分を切除して雄実および雌実を形成する第五工程と、を有する積層板の製造方法。
【請求項2】
前記第一工程で形成する凹部が断面矩形状の凹部であり、前記第四工程で該凹部の内側面に沿った切断面で第一および第二の板状体の端部を
切断することを特徴とする、請求項1記載の積層板の製造方法。
【請求項3】
前記第一工程で形成する凹部が少なくとも内側面が傾斜面とされた凹部であり、前記第四工程では、該傾斜面の範囲内で第一の切断面で第一および第二の板状体の端部を
切断する工程を一回または複数回行った後、最終的に該傾斜面の上端を通る第二の切断面で第一および第二の板状体の端部を
切断することを特徴とする、請求項1記載の積層板の製造方法。
【請求項4】
第一の板状体が木質基材であり、第二の板状体がクッション材であり、積層板が防音床材であることを特徴とする、請求項1ないし
3のいずれか記載の積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の一面にクッション材を積層接着してなる防音床材などの少なくとも2層の積層板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2層の積層板、たとえば、木質基材の一面にクッション材を積層接着してなる防音床材は、特許文献1などに公知である。
【0003】
このような防音床材は、
図8に示すように、連続した製造ラインにおいて、木質基材1(
図8(a))の一面1aに接着剤2を塗布し(
図8(b))、この接着剤塗布面1aにクッション材3を積層した(
図8(c))後、一旦製造ラインから外し、接着剤2が完全に硬化するまで養生させてから、製造ラインに戻して、次工程の実加工(雄実4および雌実5の形成)などの切削加工を行う(
図8(d))ことにより製造していた。クッション材3を積層した後、接着剤2が完全に硬化するのを待たずに次工程に進むと、切削加工時に、未硬化または半硬化状態の接着剤2が切削加工機(テノーナー)の刃に付着して、刃の劣化や加工精度の低下を生じさせるため、上記のような製造方法を採用せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願平2-125919(実開平4-82246)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の製造方法によると、クッション材3を積層した後、接着剤2が完全に硬化するまで養生させてから切削加工を行う必要があるため、連続した製造ラインで次工程(切削加工)に進むことができず、生産効率が悪い。
【0006】
また、切削加工時には、木質基材1およびクッション材3の両端部(
図7(d)に点線で示す部分)をテノーナーなどの切削加工機で切除して雄実4および雌実5を形成するが、このときに、木質基板1の一面の全面に塗布した接着剤2の一部も切除してしまうことになり、接着剤に無駄が生じ、製造コストが高くなる。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、防音床材のような少なくとも2層の積層板を製造するに際して、生産効率を向上すると共に、接着剤の無駄を排して製造コストを低減することができる新規の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、第一の板状体の一面の少なくとも一端部に、後の第五工程で形成する雄実および雌実までの距離より小さい深さの凹部を形成する第一工程と、該凹部を除く第一の板状体の一面に接着剤を塗布する第二工程と、第一の板状体の接着剤塗布面に第二の板状体を積層する第三工程と、前記第一工程で形成した凹部を含み且つ前記第二工程で塗布した接着剤には干渉しないように少なくとも第一の板状体の前記凹部形成側端部を切断する第四工程と、前記第四工程で切断した後の両端部から第一の板状体の不要部分を切除して雄実および雌実を形成する第五工程と、を有する積層板の製造方法である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の積層板の製造方法において、前記第一工程で形成する凹部が断面矩形状の凹部であり、前記第四工程で該凹部の内側面に沿った切断面で第一および第二の板状体の端部を切断することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る本発明は、請求項1記載の積層板の製造方法において、前記第一工程で形成する凹部が少なくとも内側面が傾斜面とされた凹部であり、前記第四工程では、該傾斜面の範囲内で第一の切断面で第一および第二の板状体の端部を切断する工程を一回または複数回行った後、最終的に該傾斜面の上端を通る第二の切断面で第一および第二の板状体の端部を切断することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の積層板の製造方法において、第一の板状体が木質基材であり、第二の板状体がクッション材であり、積層板が防音床材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によれば、第一工程で第一の板状体の一面の少なくとも一端部に凹部が形成された後に第二工程で該凹部を除く面に接着剤が塗布されるので、凹部には接着剤が塗布されず、また、第四工程では接着剤塗布部分を切除しない。したがって、接着剤の使用量が少なくて済み、製造コストを抑えることができる。さらに、接着剤の完全硬化を待たずに第四工程を行うことができるので、連続した製造ラインで効率的に製造することができる。また、第四工程で用いるテノーナーなどの切削加工機の刃に接着剤が付着しないので、刃の劣化や加工精度の低下を招くこともない。
【0014】
請求項2に係る本発明によれば、第一工程で断面矩形状の凹部が形成されるので、第四工程ではこの凹部の内側面に沿った切断面で切除すれば良く、切削加工を容易且つ高精度に行うことができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によれば、第一工程で内側に傾斜面を有する凹部が形成されるので、第四工程ではこの凹部の傾斜面の範囲内に仮切断面を設定して切除した後に、テノーナーなどの切削加工機を徐々に内側に移動させていって、最終的に傾斜面の上端(凹部と第一の板状体の一面とがなす角部)を通る切断面で切除することができるので、切削加工機の加工精度が劣る場合であっても、切削加工を容易且つ高精度に行うことができる。
【0017】
請求項4に係る本発明によれば、防音床材として使用するに適した積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【
図2】本発明の他実施形態(実施例2)による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【
図3】本発明の他実施形態(実施例3)による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【
図4】本発明の他実施形態(実施例4)による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【
図5】本発明の他実施形態(実施例5)による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【
図6】
図4および
図5の各工程(a)~(e)を上面から見た図で示す説明図である。
【
図7】本発明の他実施形態(実施例6)による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【
図8】従来技術による防音床材(積層板)の製造方法を工程順に示す説明図である。各図は長手方向の断面図として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
図1ないし図
7において、図
8に示される部材ないし要素と同一または対応する部材ないし要素には同一の符号が付されている。
【実施例1】
【0020】
図1に示される実施例1による防音床材(積層板)の製造方法は、木質基材1(
図1(a))の一面(防音床材として製品化された状態では裏面)1aの両端部に断面矩形状の凹部6a,6bを形成する第一工程(
図1(b))と、凹部6a,6bを除く木質基材面1aに接着剤2を塗布する第二工程(
図1(c))と、木質基材1の接着剤塗布面にクッション材3を積層する第三工程(
図1(d))と、木質基材1の両端部に形成した断面矩形状凹部6a,6bの内側面6c,6dに沿った切断面X,Yで木質基材1およびクッション材3の両端部を切除すると共に実加工する第四工程(
図1(e))と、を有する。
【0021】
木質基材1には、MDFやHDFなどの木質繊維板、合板、LVL、無垢材、集成材またはそれらの任意複合板が好適に用いられる。クッション材3には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂発泡体、合成ゴムや天然ゴムなどのゴム発泡体が好適に用いられる。第二工程(
図1(c))において木質基材1の一面1aにクッション材3を貼り合わせるために用いる接着剤2は、ポリウレタンリアクティブ(PUR)ホットメルト接着剤、水性エマルジョン接着剤、酢酸ビニル接着剤などであり、凹部6a,6bを除く木質基材面1aのみに接着剤2を塗布し、凹部6a,6bには接着剤が入り込まないようにする必要があることから、ロールコーターを用い塗布することが好ましい。
【0022】
この実施例では、第一工程(
図1(b))で木質基材面1aの両端部に断面矩形状の凹部6a,6bを形成する。凹部6aの長さAは第四工程(
図1(e))で形成する雄実4の突出長さBと略同一またはそれより若干大きく、凹部6a,6b間の長さCは最終的に製造しようとする防音床材の表面長さC(
図1(e))と略同一となるように形成される。凹部6a,6bの深さD,Eは、最終的に製造しようとする防音床材の接着剤塗布面から雄実4,雌実5までの距離F,G(F=G)より小さいものであれば、特に限定的ではない。
【0023】
これら凹部6a,6bは、第四工程(
図1(e))の切削加工時に切除すべき部分(点線で示す部分)に対応して形成され、且つ、第二工程(
図1(c))で木質基材1の一面1aにロールコーターで接着剤2を塗布するときにロールコーターが接触しにくい形状を有することが好ましく、この観点から、この実施例では断面矩形状の凹部6a,6bが形成される。
【0024】
次の第二工程(
図1(c))ではこれら凹部6a,6bを除く木質基材1の一面1aに接着剤2が塗布されるので、凹部6a,6bには接着剤が塗布されない。なお、
図1は長手方向の断面図として示されているので、木質基材1の一面1aの長手方向両端部に接着剤が塗布されない凹部6a,6bが形成されているが、これに代えて、またはこれに加えて、木質基材1の一面1aの短手方向両端部に接着剤が塗布されない断面矩形状の凹部(または実施例2に示すように内側傾斜面を有する断面逆台形状または断面直角三角形状の凹部)を形成しても良い。
【0025】
このようにすることにより、第二工程(
図1(c))で木質基材1の一面1aに塗布された接着剤2の両端は、凹部6a,6bの側面と略面一になり、その上に第三工程(
図1(d))でクッション材3が積層されることになる。第三工程において木質基材1の一面1aの上に接着剤2を介してクッション材3を積層するには、一般に冷圧ロールプレス装置が用いられるが、接着剤2の種類などによっては熱圧ロールプレス装置や平板プレス装置を用いて行っても良い。
【0026】
第四工程(
図1(e))は、第三工程(
図1(d))により得た積層板の両端の所定部分をテノーナーなどの切削加工機で切除して、雄実4および雌実5を形成する工程である。既述したように、木質基材1の一面1aに塗布された接着剤2の両端は凹部6a,6bの内側面と略面一になっているので、この工程では、これらの面に沿った切断面X,Yで木質基材1およびクッション材3の両端部を切除すると共に、所要の実加工を施す。すなわち、雄実4側においては切断面Xに沿ってクッション材3の端部を切除すると共に、木質基材1については雄実4を除く部分を切断面Xに沿って切除し、雌実5側においては切断面Yに沿って木質基材1およびクッション材3の端部を切除すると共に、木質基材1についてはさらに内方に掘り込み加工することによって雌実5を形成する。
図1(e)において点線で示される部分が、木質基材1およびクッション材3の切除部分である。凹部6a,6bの内側面に沿った切断面X,Yで切除するので、切断位置を目視にて容易に確認することができ、切削加工を容易且つ高精度に行うことができる。
【0027】
木質基材1の一面1aの両端部に凹部6a,6bが形成されており、それら凹部6a,6bの側面と略面一の切断面X,Yで切除するので、従来技術による切削工程(
図7(d))とは違って、接着剤塗布部分を切除しない。したがって、接着剤2の無駄をなくし、製造コストを抑えることができるだけでなく、接着剤2の完全硬化を待たずに連続した製造ラインで次工程に進むことができるので、生産効率が向上する。また、テノーナーなどの切削加工機の刃に接着剤2が付着しないので、刃の劣化や加工精度の低下を招くこともない。
【0028】
図示しないが、
図1(a)において、木質基材1の他面1b(防音床材として製品化された状態では表面)にあらかじめ突板や化粧シートなどの化粧材を貼着し、あるいは塗装を施すことにより化粧層を形成しておいても良い。
【実施例2】
【0029】
図2に示される実施例2による防音床材(積層板)の製造方法は、第一工程(
図2(b))で木質基材1の一面1aの両端部に形成する凹部を、断面矩形状の凹部6a,6bに代えて、内側に傾斜面7b,7eを有する凹部7a,7dとした点において、
図1に示される実施例1による防音床材(積層板)の製造方法と異なっている。その他の点は実質的に同じであるので、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0030】
この実施例では、木質基材1の一面1aの両端部に傾斜面7b,7eを有する凹部7a,7dが形成されており、傾斜面7b,7eの上端を通る切断面X,Yで切除するので、接着剤塗布部分を切除しない。したがって、実施例1において上述したと同様の作用効果を発揮することができる。加えて、傾斜面7b,7eを有する凹部7a,7dが形成されるこの実施例によれば、まず、傾斜面7b,7eの範囲内の仮切断面(たとえば
図2(d)に示す仮切断面X’,Y’)で切除した後に、テノーナーを徐々に内側に移動させていって、最終的に傾斜面7b,7eの上端を通る切断面X,Yで切除することができるので、テノーナーの加工精度が劣る場合であっても、実加工を含む切削加工を容易且つ高精度に行うことができる利点がある。
【0031】
この実施例では、木質基材1の雄実4形成側の端部に形成する凹部7aを内側の傾斜面7bと外側の水平面7cとからなる断面逆台形状とし、木質基材1の雌実5形成側の端部に形成する凹部7dを傾斜面7eを有する断面直角三角形状としているが、内側に傾斜面を有する形状であれば特に限定されない。たとえば、雄実4側の凹部7aについて水平面7cを無くして断面直角三角形状としても良いし、雌実5側の凹部7dについて外側に水平面を有する断面逆台形状としても良い。
【実施例3】
【0032】
図3に示される実施例3による防音床材(積層板)の製造方法では、当初の木質基材1(
図3(a))として、最終的に製造しようとする防音床材の表面長さCと雄実4の突出長さB(いずれも
図3(e))との合計に略等しくなる長さG(G=C+B)を有するものを用意する(
図3(a))。第一工程(
図3(b))では、この木質基材1の雄実4形成側の端部に断面矩形状の凹部6aを形成する。木質基材1の他端部(雌実5形成側の端部)には凹部を形成しない。そして、第二工程(
図3(c))で凹部6aを除く木質基材面1aに接着剤2を塗布し、第三工程(
図3(d))でクッション材3を積層した後、第四工程(
図3(e))で凹部6aの内側面に沿った切断面Xで切除すると共に不要部分を切除して雄実4および雌実5を形成する。
【0033】
この実施例によれば、あらかじめ木質基材1の長さGを、最終的に製造しようとする防音床材の表面長さCと雄実4の突出長さB(いずれも
図3(e))との合計に略等しくなるように設定しているので、雄実4形成側の端部のみを切断面Xで切除すれば良く、切削加工のさらなる効率化を図ることができる。この場合、雄実4の先端面および雌実5の上下には木質基材1の木口面がそのまま表れることになるが、これらの面は防音床材として施工した状態では外部に露出しないので、特に問題はない。木質基材1に合板やLVLなどが用いられる場合は、これらの面に単板の粗い木口が現れることになるが、このような不都合が生ずる場合は、これらの面を必要に応じてサンダーなどで研磨して円滑面とすれば良い。
【0034】
上記以外については実施例1による製造方法と基本的に同様であるので、説明を割愛する。この実施例において、木質基材面1aの雄実4形成側の端部には実施例1と同様の断面矩形状の凹部6aを形成しているが、これに代えて、実施例2に示されるような内側傾斜面7bと外側水平面7cとを有する断面逆台形状の凹部7aまたは内側傾斜面7eを有する断面直角三角形状の凹部7dを形成しても良い。実施例3をこのように変形した実施形態においても、実施例2について既述したように、テノーナーの加工精度が劣る場合であっても、実加工を含む切削加工を容易且つ高精度に行うことができる。
【実施例4】
【0035】
実施例1~3は、いずれも、一枚の木質基材1に接着剤2を介してクッション材3を積層して一枚の防音床材を製造するものであるが、一枚の木質基材1から複数枚の積層板(防音床材)を製造することも可能である、その一例(実施例4)が
図4および
図6に示されている。この実施例では、長手方向および短手方向に幅広の木質基材1に接着剤2を介して幅広のクッション材3を積層した後に、長手方向および短手方向にそれぞれ2つ割りして計4枚の防音床材を製造するに際して、実施例1について説明した第一ないし第四工程に適宜変更を加えて実施するものである。この実施例では、313×1840mmの木質基材1(
図4(a),
図6(a))から、2つ割の際の切断代をそれぞれ3mmとして、4枚の143×900mm(表面寸法、雄実4を含めた寸法は150.5mm×907.5mm)の小割フロア11が製造される。
【0036】
より詳しく説明すると、第一工程(
図4(b),
図6(b))では、実施例1の第一工程(
図1(b))と同様に、木質基材1(
図4(a))の一面(防音床材として製品化された状態では裏面)1aの長手方向および短手方向の両端部にそれぞれ断面矩形状の凹部6a,6bを形成すると共に、その長手方向および短手方向の中央にそれぞれ中央凹部8a,8bを形成する。中央凹部8a,8bは、一方側(中央凹部8aについて
図4の左側)の部分が凹部6bに相当し、他方側(中央凹部8aについて
図4の右側)の部分が凹部6aに相当し、これらを切断代となる部分を介して連続させた幅広の断面矩形状を有するように形成される。
【0037】
さらに、この実施例では、第一工程(
図4(b),
図6(b))において、木質基材面1aに任意深さまで任意間隔で複数の裏溝9を形成する。裏溝9は、木質基材1に可撓性を与えてクッション材3による衝撃吸収作用を補助するためのものであり、この実施例では、
図6(b)に明らかなように、木質基材面1に長手方向および短手方向に沿って縦横に延長する格子状の裏溝9として形成される。
【0038】
第二工程(
図4(c),
図6(c))で凹部6a,6bおよび中央凹部8a,8b(および裏溝9)を除く木質基材面1aに接着剤2を塗布した後、第三工程(
図4(d),
図6(d))でこの接着剤塗布面にクッション材3を積層接着して積層板とする。これら第二工程および第三工程は、実施例1の第二工程および第三工程と基本的に同様である。
【0039】
第四工程(
図4(e),
図6(e))では、実施例1の第四工程(
図1(e))と同様に、テノーナーにより、凹部6a,6bの内側面に沿う切断面X,Yで木質基材1およびクッション材3の両端部を切除し、中央凹部8a,8bの溝幅内を通る切断面Zで木質基材1およびクッション材3を略中央部を切除し、さらに、切除後の各材の両端部の不要部分を切除して雄実4および雌実5を形成する。これにより、143×900mm(表面寸法)の防音床材を一度に4枚製造することができる。
図4(e)において点線で示される部分が、第四工程で切除される部分である。
【0040】
中央凹部8a,8bで小割り(2つ割り)する点および裏溝9を形成する点以外は実施例1と同様であるので、説明を割愛する。各部の寸法関係も実施例1と同様で良い。
【実施例5】
【0041】
実施例4では、木質基材面1aの両端部に実施例1と同様の断面矩形状の凹部6a,6bを形成しているが、これに代えて、実施例2に示されるような内側傾斜面7bと外側水平面7cとを有する断面逆台形状の凹部7aおよび内側傾斜面7eを有する断面直角三角形状の凹部7dを形成した場合の製造工程が実施例5として
図5に記載されている。この実施例の各工程を示す上面図は
図6と同じである。また、この実施例においても、実施例2について既述したように、テノーナーの加工精度が劣る場合であっても、実加工を含む切削加工を容易且つ高精度に行うことができる。
【0042】
この実施例における第一工程(
図5(b),
図6(b))で形成される中央凹部10a,10bは、一方側(中央凹部10aについて
図5の左側)の部分が凹部7dに相当し、他方側(中央凹部10aについて
図5の右側)の部分が凹部7aに相当し、これらを切断代部分を介して連続させた断面逆台形状を有するように形成される。したがって、中央凹部10aの傾斜面10cは凹部7dの傾斜面7eに相当し、傾斜面10dは凹部7aの傾斜面7bに相当する。
【0043】
凹部および中央凹部の形状以外は実施例4と同様であるので、説明を割愛する。
【実施例6】
【0044】
図7に示される実施例6による防音床材(積層板)の製造方法は、雄実4側の端部について、第一工程(
図7(b))で形成する凹部6aを、実加工後に得られる表面寸法に対して削り代12(
図7(e))を残すように形成し、第三工程(
図7(d))ではこの削り代12を含めた部分を切断面Xで切除する点において、
図1に示される実施例1による防音床材(積層板)の製造方法と異なっている。その他の点は実質的に同じであるので、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0045】
切削加工機の加工精度が低い場合には、
図2に示される実施例2のように内側傾斜面7b,7eを有する凹部7a,7dを形成して、該内側傾斜面7b,7eの範囲内の切断面X’,Y’で仮切除した後に徐々に内側に移動させて、最終的に凹部7a,7dの上端を通る切断面X,Yで切除する方法を採用することが一つの有効策であるが、より簡便な手法として、この実施例のように、厳密な加工精度が要求される雄実4側の端部について、削り代12を与えるように凹部6aを形成して実施することも可能である。この実施例でも、既述実施例と同様に、凹部6a,6bを除く木質基材面1aに接着剤2を塗布するので、接着剤使用量の節約を介して製造コストを抑え、さらに、接着剤の完全硬化を待たずに第四工程を行うことにより連続した製造ラインで効率的に製造することができる。この実施例の場合は、雄実4側の端部を切断面Xで切除する際に切削加工機の刃に接着剤2が付着することになるが、雌実5側の端部を切断面Yで切除する際には接着剤2に干渉することなく切削加工を行うことができるので、この点においても一定の効果が認められる。
【0046】
以上において本発明を幾つかの実施例を参照して詳述したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基いて画定される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。
【0047】
たとえば、図示実施例では、いずれも、第三工程(
図1(d),
図2(d),
図3(d),
図4(d),
図5(d),
図7(d))において木質基材1と同寸のクッション材3を両端を揃えた位置関係で積層接着しているが、木質基材1とクッション材3とは必ずしも同寸でなくても良く、また、必ずしもそれらの両端が揃った状態で積層接着されなくても良い。一例として、実施例1において、クッション材3として木質基材1より短い寸法のものを用いて、その凹部6a形成側の端面を接着剤2の端面と略面一となるように積層接着しても良い。この場合に、第四工程(
図1(e),
図2(e),
図3(e),
図4(e),
図5(e),
図7(e))において切断面Xで切除すると、木質基材1のみを切除して雄実4を形成することになり、クッション材3は切除されないことになるが、このような実施形態も本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0048】
1 木質基材(第一の板状体) 1a 一面(裏面) 1b 他面(表面)2 接着剤3 クッション材(第二の板状体)4 雄実5 雌実6a,6b 断面矩形状の凹部7a,7d 内側傾斜面を有する凹部7b,7e 内側傾斜面7c 外側水平面8a,8b 断面矩形状の中央凹部9 裏溝10a,10b 断面逆台形状の中央凹部10c,10d 傾斜面11 小割フロア12 接着剤の削り代