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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】通線工具および通線方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20220405BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20220405BHJP
   H02G 7/10 20060101ALI20220405BHJP
   G02B 6/48 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G1/06
H02G7/10
G02B6/48
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018101510
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019208299
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591102660
【氏名又は名称】株式会社フジクラハイオプト
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 博之
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽太
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-46739(JP,A)
【文献】特開2010-154671(JP,A)
【文献】特開2000-134738(JP,A)
【文献】特開2013-169108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 1/06
H02G 7/10
G02B 6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを一束化するため支持線にスパイラル状に巻かれた一束化ハンガー内に新たなケーブルまたは牽引用のひもを通すための通線工具であって、
作業者が持って操作する伸縮自在の操作棒と、
前記操作棒の先端に取り付けられる保持部と、
前記保持部に回転自在に保持されると共に、その回転軸から外側に伸びる複数の柱状部材を有する輪転部と、
前記輪転部の各柱状部材の先端部と揺動自在に係合する牽引部と、
前記保持部に対して前記操作棒を着脱自在に取り付けるためのデタッチャブル工具と、を有し、
前記デタッチャブル工具は、前記保持部に固定される上部品と、前記操作棒に固定される下部品とが相互に着脱自在に構成されており、
前記上部品は、
挿入部を備える円筒形状の下部と、下端側が挿入部に挿入される上部と、前記上部品の上部の下端に設けられる第1の磁石と、を備え、
前記下部品は、
前記上部品の挿入部に挿入する径を有する上部と、前記下部品の上部の径より大きな径を有する下部と、前記下部品の上部の上端には設けられる第2の磁石と、を備え、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは、前記上部品の挿入部に前記下部品の上部が挿入し終わった状態で、所定の間隔だけ離れるようになっている
ことを特徴とする通線工具。
【請求項2】
電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って新たなケーブルまたは牽引用のひもを設置する際に、前記通信線に沿って通線工具を移動する時、前記通信線の下に、他の通信線が敷設されており、前記他の通信線を横切らなくてはならない場合に、前記デタッチャブル工具により、前記保持部に対して前記操作棒を引き離すことを特徴とする請求項1に記載の通線工具。
【請求項3】
前記作業者が、前記牽引部の後端に新たなケーブルまたは牽引用のひもを取り付け、前記操作棒を操作して前記牽引部を前記一束化ハンガー内に挿入し、所定方向に前記通線工具が向かうように前記操作棒を操作することにより、前記一束化ハンガーが、前記輪転部の回転に伴って、前記保持部と前記牽引部との間の入り口から入り、前記保持部と前記牽引部との間の出口から出て、前記一束化ハンガー内における前記所定方向へ前記牽引部が移動することを特徴とする請求項1あるいは2のいずれかに記載の通線工具。
【請求項4】
前記通線工具が、さらに、前記輪転部の柱状部材を所定位置に一時的に係留する係留部材を有することを特徴とする請求項3に記載の通線工具。
【請求項5】
前記輪転部の柱状部材の所定位置は、前記保持部と前記牽引部との間の入り口が大きく開くように前記柱状部材が停止する位置であることを特徴とする請求項4に記載の通線工具。
【請求項6】
前記一束化ハンガー内における前記所定方向へ前記牽引部が移動することにより、前記牽引部に取り付けられた前記新たなケーブルまたは牽引用のひもが、前記一束化ハンガー内を通ることを特徴とする請求項3に記載の通線工具。
【請求項7】
前記一束化ハンガーが、前記輪転部の回転に伴って、前記輪転部の柱状部材の間に挟まれた状態で、前記保持部と前記牽引部との間の入り口から入り、前記保持部と前記牽引部との間の出口から出ることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の通線工具。
【請求項8】
作業者が持って操作する伸縮自在の操作棒と、前記操作棒の先端に取り付けられる保持部と、前記保持部に回転自在に保持されると共に、その回転軸から外側に伸びる複数の柱状部材を有する輪転部と、前記輪転部の各柱状部材の先端部と揺動自在に係合する牽引部と、前記保持部に対して前記操作棒を着脱自在に取り付けるためのデタッチャブル工具と、を有する通線工具を用いて、ケーブルを一束化するため支持線にスパイラル状に巻かれた一束化ハンガー内に新たなケーブルまたは牽引用のひもを通すための通線方法であって、
前記作業者が前記牽引部の後端に前記新たなケーブルまたは牽引用のひもを取り付ける工程と、前記作業者が前記操作棒を伸ばし、前記牽引部を前記一束化ハンガー内に挿入する工程と、
前記通線工具を前記一束化ハンガー内において所定方向に向かうように前記操作棒を操作する工程と、
電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って新たなケーブルまたは牽引用のひもを設置する際に、前記通信線に沿って通線工具を移動する時、前記通信線の下に、他の通信線が敷設されており、前記他の通信線を横切らなくてはならない場合に、前記デタッチャブル工具により、前記保持部に対して前記操作棒を引き離す工程と、を有し、
前記デタッチャブル工具は、前記保持部に固定される上部品と、前記操作棒に固定される下部品とが相互に着脱自在に構成されており、
前記上部品は、
挿入部を備える円筒形状の下部と、下端側が挿入部に挿入される上部と、前記上部品の上部の下端に設けられる第1の磁石と、を備え、
前記下部品は、
前記上部品の挿入部に挿入する径を有する上部と、前記下部品の上部の径より大きな径を有する下部と、前記下部品の上部の上端には設けられる第2の磁石と、を備え、
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは、前記上部品の挿入部に前記下部品の上部が挿入し終わった状態で、所定の間隔だけ離れるようになっている
ことを特徴とする通線方法。
【請求項9】
前記所定方向に前記通線工具が向かうように前記操作棒を操作することにより、前記一束化ハンガーが、前記輪転部の回転に伴って、前記保持部と前記牽引部との間の入り口から入り、前記保持部と前記牽引部との間の出口から出て、前記一束化ハンガー内における前記所定方向へ前記牽引部が移動することを特徴とする請求項8に記載の通線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱に架設された通信線等を一束化するための一束化ハンガーの中に、新たな通信線を通すための通線工具および通線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信技術の進歩に伴い、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って光ケーブル等の新たなケーブルを設置することが多くなって来ており、これらのケーブルは、電柱間に張った支持線により保持される。
【0003】
そして、図19に示すように、これらのケーブル101は、美観等の観点から、支持線103にスパイラル状等に巻かれた一束化ハンガー105等の道具により、一束化されて支持線103に支持されるようになっている。
【0004】
図19は、支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105により一束化されて支持線103に支持されたケーブル101を示す概略説明図である。
【0005】
上述した一束化ハンガー105を用いた一束化工法では、新たなケーブルを追加しようとした場合、一束化ハンガー105内にその新たなケーブルを通さなければならず、やっかいな手作業が強いられるものであった。
【0006】
すなわち、従来では、図20に示すような先方ガイド部材107を用いて、その先方ガイド部材107の後端に直進性の有る長いロッド109を取り付け、先方ガイド部材107を使って一束化ハンガー105内を通した後、ロッド109の後端に新たなケーブルを取り付け牽引して一束化ハンガー105内に追加していた。
【0007】
なお、先方ガイド部材107は、一束化ハンガー105内に直進性の有る長いロッド109を案内する機能を有する。
【0008】
図20は、従来技術により、一束化ハンガー105内に直進性の有る長いロッド109を通す動作を示す概略説明図である。
【0009】
なお、図20では、わかり易くするため、図19に記載したケーブル101および支持線103は省略して表示した。
【0010】
当然、上記手作業は、高所作業車等を使っての高所作業となり、危険を伴うばかりでなく、作業場所が制限される、コストや時間がかかる等の問題点があった。
【0011】
そこで、本願発明の発明者は、図19および図20に示すように、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って設置されたケーブル101が、支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105により一束化されて支持線103に支持されている状態で、新たなケーブルを一束化ハンガー105内に通すための通線工具を提案した。
【0012】
この通線工具は、作業者が持って使用する伸縮自在の操作棒3と、操作棒3の先端3aに取り付けられる本体部からなり、その本体部は、輪転部材9を回転自在に保持する保持部5と、輪転部材9の先端部と揺動自在に係合する牽引部7とからなっている。
【0013】
そして、作業者13は、伸縮自在の操作棒3を伸ばして、通線工具1の本体部を一束化ハンガー105に近づけ、一束化ハンガー105の一端から、牽引部7の一端7dに取り付けられた先方ガイド部材107を一束化ハンガー105内に挿入し、牽引部7の他端に取り付けられた新たなケーブル10を一束化ハンガー105内に通して行く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2000-134738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述のような通線工具による通線方法は、時として、以下のような不具合を招く危険があった。
【0016】
すなわち、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って光ケーブル等の新たなケーブルを設置する際、その通信線に沿って通線工具を移動させなければならないが、その通信線の下に、他の通信線が敷設されており、通線動作を行う際に、その他の通信線を横切らなくてはならない場合があり、通線工具の操作棒3が、他の通信線と接触し、その通線動作ができなくなることがあった。
【0017】
また、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って光ケーブル等の新たなケーブルを設置する際、その通信線に沿った通線工具の移動動作において、その通信線が道路を横切っている場合等、その事情により、その通線作業を中断しなければならないことがあった。
【0018】
そのような時、操作棒3の付いた通線工具1をそのまま通信線に残しておくと危険であるので、移動し危険を回避しなければならなかった。
【0019】
本発明は、上述の問題を解決するためのものであり、その目的は、通線作業を中断しなければならない場合にも、安全かつスムーズに操作棒のみを回収できる通線工具および通線方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の特徴は、ケーブルを一束化するため支持線にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー内に新たなケーブルを通すための通線工具であって、作業者が持って操作する伸縮自在の操作棒と、前記操作棒の先端に取り付けられる保持部と、前記保持部に回転自在に保持されると共に、その回転軸から外側に伸びる複数の柱状部材を有する輪転部と、前記輪転部の各柱状部材の先端部と揺動自在に係合する牽引部と、前記保持部に対して前記操作棒を着脱自在に取り付けるためのデタッチャブル工具と、を有することである。
【0021】
本願発明の他の特徴は、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って新たなケーブルを設置する際に、前記通信線に沿って通線工具を移動する時、前記通信線の下に、他の通信線が敷設されており、前記他の通信線を横切らなくてはならない場合に、前記デタッチャブル工具により、前記保持部に対して前記操作棒を取り外すことである。
【0022】
本願発明の他の特徴は、前記作業者が、前記牽引部の後端に新たなケーブルまたはひもなどを取り付け、前記操作棒を操作して前記牽引部を前記一束化ハンガー内に挿入し、所定方向に前記通線工具が向かうように前記操作棒を操作することにより、前記一束化ハンガーが、前記輪転部の回転に伴って、前記保持部と前記牽引部との間の入り口から入り、前記保持部と前記牽引部との間の出口から出て、前記一束化ハンガー内における前記所定方向へ前記牽引部が移動することである。
【0023】
本願発明の他の特徴は、前記通線工具が、さらに、前記輪転部の柱状部材を所定位置に一時的に係留する係留部材を有することである。
【0024】
本願発明の他の特徴は、前記輪転部の柱状部材の所定位置は、前記保持部と前記牽引部との間の入り口が大きく開くように前記柱状部材が停止する位置であることである。
【0025】
本願発明の他の特徴は、前記一束化ハンガー内における前記所定方向へ前記牽引部が移動することにより、前記牽引部に取り付けられた前記新たなケーブルまたはひもなどが、前記一束化ハンガー内を通ることである。
【0026】
本願発明の他の特徴は、前記一束化ハンガーが、前記輪転部の回転に伴って、前記輪転部の柱状部材の間に挟まれた状態で、前記保持部と前記牽引部との間の入り口から入り、前記保持部と前記牽引部との間の出口から出ることである。
【0027】
本願発明の他の特徴は、作業者が持って操作する伸縮自在の操作棒と、前記操作棒の先端に取り付けられる保持部と、前記保持部に回転自在に保持されると共に、その回転軸から外側に伸る複数の柱状部材を有する輪転部と、前記輪転部の各柱状部材の先端部と揺動自在に係合する牽引部と、前記保持部に対して前記操作棒を着脱自在に取り付けるためのデタッチャブル工具と、を有する通線工具を用いて、ケーブルを一束化するため支持線にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー内に新たなケーブルを通すための通線方法であって、前記作業者が前記牽引部の後端に前記新たなケーブルまたはひもなどを取り付ける工程と、前記作業者が前記操作棒を伸ばし、前記牽引部を前記一束化ハンガー内に挿入する工程と、前記通線工具を前記一束化ハンガー内において所定方向に向かうように前記操作棒を操作する工程と、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って新たなケーブルを設置する際に、前記通信線に沿って通線工具を移動する時、前記通信線の下に、他の通信線が敷設されており、前記他の通信線を横切らなくてはならない場合に、前記デタッチャブル工具により、前記保持部に対して前記操作棒を取り外す工程と、を有することである。
【0028】
本願発明の他の特徴は、前記所定方向に前記通線工具が向かうように前記操作棒を操作することにより、前記一束化ハンガーが、前記輪転部の回転に伴って、前記保持部と前記牽引部との間の入り口から入り、前記保持部と前記牽引部との間の出口から出て、前記一束化ハンガー内における前記所定方向へ前記牽引部が移動することである。
【発明の効果】
【0029】
通線作業を中断しなければならない場合にも、安全かつスムーズに操作棒のみを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明を実施した通線工具1を示す図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
図2図1に示した通線工具1の本体部を示す側面図である。
図3図1に示した通線工具1の本体部の使用されている状態での側面図である。
図4図1に示した通線工具1の本体部の背面図である。
図5図2に示した牽引部7の展開図である。
図6】保持部材5aを外した状態での通線工具1の本体部の斜視図である。
図7】支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105内に、図1に示した通線工具1を使ってケーブルを通す方法の概略説明図である。
図8図1に示したデタッチャブル工具4の全体側面図である。
図9図8に示したデタッチャブル工具4の全体断面図である。
図10図9におけるX―X’線から見た断面図である。
図11図8に示したデタッチャブル工具4の上部4aの側面図である。
図12図8に示したデタッチャブル工具4の下部4bの側面図である。
図13】支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105内に、図1に示した通線工具1を使ってケーブルを通す方法の概略説明図である。
図14】通線動作を行う通信線101の下に、他の通信線101Eが敷設されている場合の通線動作の概略説明図である。
図15】本発明の第2の実施形態の通線工具1を示す図であり、先方ガイド部材107へカバー107eを装着する前の側面図である。
図16】本発明の第2の実施形態の通線工具1を示す図であり、先方ガイド部材107へカバー107eを装着した後の側面図である。
図17】本発明の第3の実施形態の通線工具1の本体部を示す側面図である。
図18】本発明の第3の実施形態の通線工具1の本体部を示す斜視図である。
図19】支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105により一束化されて支持線103に支持されたケーブル101を示す概略説明図である。
図20】従来技術により、一束化ハンガー105内に直進性の有る長いロッド109を通す動作を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、図19および図20に示すように、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って設置されたケーブル101が、支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105により一束化されて支持線103に支持されている状態で、新たなケーブルを一束化ハンガー105内に通すための通線工具に関するものである。
【0032】
図1は、本発明を実施した通線工具1を示す図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【0033】
図2は、図1に示した通線工具1の主要部を示す側面図であり、図3は、図1に示した通線工具1の主要部の使用されている状態での側面図である。
【0034】
図4は、図1に示した通線工具1の本体部の背面図である。
【0035】
図1図3に示すように、通線工具1は、作業者が持って使用する伸縮自在の操作棒3と、操作棒3の先端に取り付けられる本体部と、操作棒3と本体部とを着脱自在に結合するデタッチャブル工具4とを有している。
【0036】
操作棒3の先端に取り付けられる本体部は、輪転部材9を回転自在に保持する保持部5と、輪転部材9の先端部と揺動自在に係合する牽引部7とからなっている。
【0037】
なお、デタッチャブル工具4により、保持部5の下端に操作棒3の先端が取り付けられる。
【0038】
また、牽引部7の一端7dには、図20に示すような先方ガイド部材107が取り付けられ、牽引部7の他端7eには、新たなケーブル10(あるいは新たなケーブル10の接続された紐)を取付けるための係止部材21が設けられている。
【0039】
図2および図4に示すように、輪転部材9は、保持部5をなす2つの保持部材5a、5bに挟まれるようになっており、保持部材5a、5bの間に架け渡された軸部9aを中心矢印B方向に回転する。輪転部材9は、矢印B方向に回転するだけでは無く、矢印B方向と反対の矢印C方向に回転させることもできる。
【0040】
輪転部材9の軸部9aには、軌道輪からなる円筒部材9bが設けられ、この円筒部材9bには、軸部9aを中心にして、扇状に外側に伸る複数(この実施形態例の場合は7つ)の柱状部材9cが設けられており、各柱状部材9cの先端部には、後述する牽引部7の溝7cと係合する車輪9fが回転自在に設けられている。そして、柱状部材9cは、輪転部材9の回転時に、図2の矢印B方向に回転するようになっている。
【0041】
また、牽引部7の所定位置には、磁石部材11が設けられており、各柱状部材9cの先端部9fを引き付けて、後述する所定位置に一時的に係留する係留部材として機能する。このため、各柱状部材9cの車輪を含む先端部9fは、磁石部材11に反応する金属からできている。
【0042】
図5は、図2に示した牽引部7の展開図であり、図6は、通線工具1の本体部の斜視図であり、保持部材5aを外した状態となっている。
【0043】
図4および図5に示すように、牽引部7は、2つの牽引部材7a、7bとが合わさるようになっており、2つの牽引部材7a、7bとが合わされた状態で、円弧状の溝7cを形成し、その円弧状の溝7cに、輪転部材9の各柱状部材9cの車輪9fが係合して相互に移動自在となる。
【0044】
従って、牽引部7と保持部5とが一定の距離を保った状態で、輪転部材9が回転できるようになっている。
【0045】
さらに、牽引部7の前方の下部には、掻き分けフィン7fが設けられている。
【0046】
図7に示すように、通常、一束化ハンガー105内に複数本敷設されたドロップケーブル101が、複数本敷設されており、この掻き分けフィン7fは、後述するように、実際に通線工具1を使ってケーブルまたは牽引用のひもを一束化ハンガー105内に通す場合に、そのドロップケーブル101を掻き分けて、そのドロップケーブル101が、通線工具1の牽引部7の溝7cに巻き込まれることを防止する役割をはたす。
【0047】
図7は、支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105内に、図1に示した通線工具1を使ってケーブルを通す方法の概略説明図である。
【0048】
次に、図8図12を参照して、操作棒3と本体部とを着脱自在に結合するデタッチャブル工具4について説明する。
【0049】
図8は、図1に示したデタッチャブル工具4の全体側面図であり、図9は、図8に示したデタッチャブル工具4の全体断面図であり、図10は、図9におけるX―X’線から見た断面図であり、図11は、図8に示したデタッチャブル工具4の上部4aの側面図であり、図12は、図8に示したデタッチャブル工具4の下部4bの側面図である。
【0050】
図8図12に示すように、デタッチャブル工具4は、相互に着脱自在に繋がる断面円形状の上部品4aと下部品4bとからなり、上部品4aの上端4a1は、第1のねじ4a3によって本体部の保持部5の下端に固定されており、下部品4bの下端4b1は、第2のねじ4b3によって操作棒3の先端3dに固定されている。
【0051】
デタッチャブル工具4の上部品4aは、さらに上部4a5と下部4a7とからなり、上部4a5と下部4a7とは、第3のねじ4a9によって固定されており、上部4a5と下部4a7とが固定された状況で、円筒形の下部4a7により、デタッチャブル工具4の下部品4bが挿入される挿入部4a10が形成される。
【0052】
上部4a5の下端には、後述する下部品4bの第2の磁石4b5に対応する第1の磁石4a11が設けられ、下部4a7の下部には、後述する下部品4bの突起部4b7と係合する溝4a13が設けられている。
【0053】
ここで、溝4a13は、図10に示すように、挿入部4a10の周囲に4箇所設けられている。これは、後述する下部品4bの突起部4b7と係合し易くするためである。すなわち、下部品4bの突起部4b7は、4箇所に設けられた溝4a13のいずれかに係合すれば良いので、突起部4b7が溝4a13に合うように操作棒3を回転させて調節する労力が少なくなり、溝4a13と突起部4b7との係合が行い易くなる。
【0054】
なお、この実施形態では、溝4a13の個数を4つとしたが、3つや2つ、あるいは1つでも良い。
【0055】
デタッチャブル工具4の下部品4bは、断面円形状となっており、上部は、上部品4aの挿入部4a10に挿入する径を有し、下部は、上部の径より大きな径を有しており、上部の上端には、第1の磁石4a11に対応する第2の磁石4b5が設けられ、上部と下部の接合部分には、溝4a13と係合する突起部4b7が設けられている。
【0056】
第1の磁石4a11と第2の磁石4b5とは、上部品4aの挿入部4a10は、下部品4bの上部が挿入し終わった状態で、所定の間隔Lだけ離れるようになっている。
【0057】
これにより、操作棒3と本体部との着脱動作の際に、後述するように、スムーズな着脱動作が達成できる。
【0058】
なお、この実施形態では、第1の磁石4a11と第2の磁石4b5とが、上部品4aの挿入部4a10へ下部品4bの上部が挿入し終わった状態で、所定の間隔Lだけ離れるようになっていたが、より強い磁力を確保したい場合には、上部品4aの挿入部4a10へ下部品4bの上部が挿入し終わった状態で、第1の磁石4a11と第2の磁石4b5とが接触するように設計しても良い。
【0059】
また、上部品4aの4つの溝4a13の内の1つに、下部品4bの突起部4b7が係合することにより、後述するように、本体部に対しての操作棒3の回転動作が制限されるので、通線工具1を使ってのケーブル通線動作を的確に行うことができる。
【0060】
次に、上述した構成の通線工具1の使用方法について説明する。
【0061】
図13および図7は、支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105内に、図1に示した通線工具1を使ってケーブルまたは牽引用のひもを通す方法の概略説明図である。
【0062】
まず、作業者13は、操作棒3の先端に、デタッチャブル工具4を介して、本体部の保持部5の下端を取り付ける。
【0063】
そして、牽引部7の一端7dに、先方ガイド部材107を取り付けると共に、牽引部7の他端7eの係止部材に、新たなケーブル10(あるいは新たなケーブル10を接続した紐)を取付ける。そして、図13に示すように、伸縮自在の操作棒3を伸ばして、通線工具1の本体部を一束化ハンガー105に近づけ、一束化ハンガー105の一端から、牽引部7の一端7dに取り付けられた先方ガイド部材107を一束化ハンガー105内に挿入する。
【0064】
この際、操作棒3が先方ガイド部材107の長手方向に対して約45°垂直の状態となるが、保持部5に設けられた突出部5cが、先方ガイド部材107の基端部の保持部材5a、5bの間に挟まることを防止する。
【0065】
先方ガイド部材107が一束化ハンガー105内に挿入されたら、作業者13は、図8に示すA方向に通線工具1が向かうように、操作棒3を操作する。
【0066】
この時に、図7に示すように、操作棒3が、先方ガイド部材107の長手方向に対して約45°後方に傾く状態で、先方ガイド部材107および通線工具1がA方向に移動するように操作棒3が操作される。
【0067】
それにより、図13に示すように、一束化ハンガー105の下部105aが、通線工具1の保持部5と牽引部7との間の入り口15に入って行く。
【0068】
この際、デタッチャブル工具4の上部品4aの溝4a13に、下部品4bの突起部4b7が係合しているので、本体部に対しての操作棒3の回転動作が制限される。従って、通線工具1の進行方向を確実に維持することができ、通線工具1を使ってのケーブル通線動作を的確に行うことができる。
【0069】
ここで、輪転部材9の各柱状部材9cは、磁石部材11により所定位置に一時的に係留されている。すなわち、ここで、輪転部材9の所定位置とは、保持部5と牽引部7との間の入り口15が大きく開くように、柱状部材9cが停止する位置となっている。
【0070】
これにより、一束化ハンガー105の下部105aが、スムーズに入り口15に入って行くことができる。
【0071】
なお、このような輪転部材9の各柱状部材9cを一時的に係留する機能が無いと、各柱状部材9cが入り口15に留まって、一束化ハンガー105の下部105aが、スムーズに入り口15に入って行くことができない可能性がある。
【0072】
次に、矢印A方向に通線工具1が移動するように操作すると、一束化ハンガー105の下部105aが、入り口15近くの柱状部材9c1に当り、その柱状部材9c1を、矢印B方向に付勢し、磁石部材11により引き付けられていた柱状部材9c3を、磁石部材11の引っ張り力から引き離し、輪転部材9を矢印B方向に回転させ、次の柱状部材9c1が磁石部材11により引き付けられる。
【0073】
なお、輪転部材9が矢印B方向に回転すると同時に、牽引部7の円弧状の溝7c内を、各柱状部材9cの車輪9fが移動して行く。
【0074】
このように、輪転部材9の柱状部材9cが、常に、保持部5と牽引部7との間の入り口15が大きく開くような停止位置(所定位置)となるので、一束化ハンガー105の下部105aが、スムーズに入り口15に入って行き、輪転部材9の矢印B方向への回転に伴って、輪転部9の各柱状部材9cの間に挟まれた状態で、保持部5と牽引部7との間の出口17から出て行くことができる。
【0075】
これにより、先方ガイド部材107と牽引部7とが、一束化ハンガー105内を矢印Aの方向へ進んで行くこととなり、牽引部7の係止部材7fに取り付けられた新たなケーブルまたは牽引用のひも10などが、一束化ハンガー105内に通される。
【0076】
なお、先方ガイド部材107と牽引部7とが一束化ハンガー105内を矢印Aの方向へ進む際、掻き分けフィン7fは、図7に示すように、一束化ハンガー105内のドロップケーブル101を掻き分けて、そのドロップケーブル101が、通線工具1の牽引部7の溝7cに巻き込まれることを防止する。
【0077】
そして、一束化ハンガー105の他端から、先方ガイド部材107および牽引部7を一束化ハンガー105の外に搬出することにより、一束化ハンガー105の一端から他端へと、新たなケーブル10が通ることとなる。
【0078】
上述のように新たなケーブルまたは牽引用のひも10などが一束化ハンガー105内に通されるので、図20の従来例に示すような直進性の有るロッド109を用いる必要が無くなり、牽引部7の係止部材21に、直接に新たなケーブルまたは牽引用のひも10を取り付けることができ、作業者の手間を大幅に省くことができる。
【0079】
また、輪転部材9は、矢印B方向に回転されるだけでは無く、矢印B方向と反対の矢印C方向に回転させることもできるようになっている。
【0080】
従って、図7に示すA方向に新たなケーブル10を(一束化ハンガー105内に)通しすぎた場合にも、通線工具1をD方向に戻すことができ、新たなケーブル10を所望する位置まで戻って通すようにすることもできる。
【0081】
また、ここで、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って光ケーブル等の新たなケーブルを設置する際、その通信線に沿って通線工具1を移動させなければならないが、その通信線の下に、他の通信線が敷設されており、通線動作を行う際に、その他の通信線を横切らなくてはならない場合があった。
【0082】
このような場合に、図14に示すように、作業者13は、他の通信線101Eが、通線工具1の操作棒3に接触するまで、通線工具1を移動させ、操作棒3を方向Fへ引くことにより、相互に着脱自在に繋がっているデタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとを切り離し、通線工具1の操作棒3だけ他の通信線101Eの下を潜るように移動させた後、デタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとを再び接続するようにする。
【0083】
なお、このデタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとを再び接続する際に、下部品4bの突起部4b7は、4箇所に設けられた溝4a13のいずれかに係合すれば良いので、突起部4b7が溝4a13に合うように操作棒3を回転させて調節する労力が少なくなり、溝4a13と突起部4b7との係合が容易に行える。
【0084】
そのようにすれば、通線工具の操作棒3が、他の通信線101Eと接触し、その通線動作ができなくなることが無く、連続した通線動作を達成できる。
【0085】
図14は、通線動作を行う通信線101の下に、他の通信線101Eが敷設されている場合の通線動作の概略説明図である。
【0086】
また、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って光ケーブル等の新たなケーブルを設置する際、その通信線に沿った通線工具の移動動作において、その通信線が道路を横切っている場合等の事情により、その通線作業を中断しなければならない場合にも、デタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとの着脱動作により、簡単に通線作業を中断できるようになる。
【0087】
なお、上述したデタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとの着脱動作の際、第1の磁石4a11と第2の磁石4b5とが、上部品4aの挿入部4a9の下部品4bの上部へ挿入し終わった状態で、所定の間隔Lだけ離れているので、上部品4aと下部品4bとを引き離す際に、作業者13は、所定の引く力を、操作棒3へ加えれば、上部品4aと下部品4bとを引き離すことができる。
【0088】
すなわち、デタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとが、所定の吸引力で引き合うように、第1の磁石4a11および第2の磁石4b5の吸引能力や第1の磁石4a11と第2の磁石4b5との間の距離Lが設定されている。
【0089】
これにより、作業者13は、一束化ハンガー105等に悪影響を与えない程度の所定の引く力で、デタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとの引き離し操作を行うことができ、上部品4aの挿入部4a10の下部品4bの上部へ挿入し終わった状態では、第1の磁石4a11および第2の磁石4b5の吸引力により、所望しない場所で、デタッチャブル工具4の上部品4aと下部品4bとが引き離されて、操作棒3が外れてしまうこともない。
【0090】
また、この実施形態では、通線工具1に、図20に示すような従来の先方ガイド部材107が取り付けられているが、これに限定されることは無く、棒のような他の構造の先方ガイド部材を取り付けても良いし、何も取り付け無くても良い。
【0091】
上述のように、本発明を実施した通線工具1によれば、電柱に架設された電線本線となる通信線に沿って設置されたケーブル101が支持線103にスパイラル状などに巻かれた一束化ハンガー105により一束化されて支持線103に支持されている状態で、簡単、安全かつスムーズに一束化ハンガー105の中に、新たなケーブル10を通すことのできるという効果を奏する。
【0092】
次に、図15および図16を参照して、本発明の第2の実施形態の通線工具1について説明する。
【0093】
この第2の実施形態の通線工具1は、先方ガイド部材107に、先方ガイド部材107の外周を覆う外周カバー107eを取り付けた構成となっている。
【0094】
すなわち、図11に示すように、先方ガイド部材107が、先端部107aおよび基端部107bを有する中心棒107cと、先端部107aの後部と基端部107bの前部との間に懸架された複数(この場合2本)の懸架棒107dとを有する構造となっており、懸架棒107dは、その中央部が中心棒107cの外周方向へ膨らむ形状となっている。
【0095】
そして、外周カバー107eが、その先端と後端とに穴を有する構成となっている。そして、図15図に示すように、外周カバー107eの後端の穴から、中心棒107cの先端部107aを通して行き、図12に示すように、懸架棒107dの外周をすっぽりと覆うように外周カバー107eを先方ガイド部材107に装着する。
【0096】
このように外周カバー107eを先方ガイド部材107に装着すると、先方ガイド部材107の内部に、例えば、一束化ハンガー105の終端部等の部品が入り込み、先方ガイド部材107の移動の妨げとなることが無い。
【0097】
次に、図17および図18を参照して、本発明の第3の実施形態の通線工具1について説明する。
【0098】
この第3の実施形態の通線工具1は、保持部5の突出部5cに、磁石5dを設けると共に、その磁石5dと対応する位置の先方ガイド部材107の基端部107bに、磁石5dと接触する金属部107fを設けた構成となっている。
【0099】
このような構成とすることにより、作業者が、一束化ハンガー105の一端から先方ガイド部材107を一束化ハンガー105内に挿入するために、この通線工具1を持ち上げる際、磁石5dと金属部107fとが吸着するので、先方ガイド部材107の動作が安定する。
【0100】
すなわち、作業者が、操作棒3を操作して通線工具1を持ち上げると、安定棒21の係止部材23に取り付けられた新たなケーブル10も持ち上げられるが、その新たなケーブル10の重さに引っ張られて、牽引部7が、輪転部材9の軸部9aを中心に矢印B方向に回動し、それに伴い、牽引部7に取り付けられた先方ガイド部材107の先端が上に持ち上げられ、上下に揺れて不安定となり、先方ガイド部材107を一束化ハンガー105へ挿入することを難しくしていた。
【0101】
そこで、この第3の実施形態のように、保持部5の磁石5dと先方ガイド部材107の金属部107fとを吸着させるようにすれば、作業者が、操作棒3を操作して通線工具1を持ち上げる際に、先方ガイド部材107の動作が安定するので、先方ガイド部材107を一束化ハンガー105へ簡単に挿入することができるようになる。
【0102】
また、先方ガイド部材107を一束化ハンガー105へ挿入した後は、操作棒3を後方へ操作することにより、保持部5の磁石5dと先方ガイド部材107の金属部107fとを簡単に離脱させることができるので、先方ガイド部材107と牽引部7とを、一束化ハンガー105内へ矢印Aの方向へ進すませることができる。
【0103】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0104】
1 通線工具
3 操作棒
4 デタッチャブル工具
5 保持部
5c 突出部
7 牽引部
7c 溝
7f 掻き分けフィン
7g 係止部材
9 輪転部材
9a 軸部
9c 柱状部材
10 新たなケーブルまたは牽引用のひも
11 磁石部材
13 作業者
101 ケーブル
103 支持線
105 一束化ハンガー
107 先方ガイド部材
109 直進性の有る長いロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20