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  • 特許-乗客コンベアの制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】乗客コンベアの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/06 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B66B29/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018116012
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019218173
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【氏名又は名称】別所 公博
(74)【代理人】
【識別番号】100206782
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】畑木 一成
(72)【発明者】
【氏名】石田 正人
(72)【発明者】
【氏名】松野 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆之
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0029841(US,A1)
【文献】特開2010-018417(JP,A)
【文献】特開2016-172626(JP,A)
【文献】特開2011-098803(JP,A)
【文献】特開2005-067847(JP,A)
【文献】特開2009-234747(JP,A)
【文献】特開平07-101663(JP,A)
【文献】特開2006-027790(JP,A)
【文献】特開平01-288596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアで発生する音を集音可能なように設けられた集音部と、
前記乗客コンベアの踏段のクリートと噛み合うくしのくし歯部分を撮影可能なように設けられた第1の撮影部と、
前記集音部によって集音された前記音と、前記第1の撮影部によって撮影された前記くしの前記くし歯部分の画像とを取得するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記集音部によって集音された前記音が、前記くしと前記踏段との間に異物が挟み込まれている異物挟み込み状態が発生している場合に生じる異音であるか否かを判定する第1の判定を行い、
前記第1の撮影部によって撮影された前記くしの前記くし歯部分の前記画像から、前記異物挟み込み状態が発生しているか否かを判定する第2の判定を行い、
前記第1の撮影部によって撮影された前記くしの前記くし歯部分の前記画像から、前記くし歯が破損しているくし歯破損状態が発生しているか否かを判定する第3の判定を行い、
前記第1の判定の結果と、前記第2の判定の結果と、前記第3の判定の結果とに基づいて、前記異物挟み込み状態が発生しているか否かと、前記くし歯破損状態が発生しているか否かとを検出し、
前記コントローラは、前記第1の判定において、予め記憶される参照音と前記集音部によって集音された前記音とが互いに異なり、かつ、前記集音部によって集音された前記音が一定周期の音である場合に、前記音が前記異音であると判定し、
前記集音部は、スカートガードにおける前記くしに隣り合う部分に設けられており、前記くしと前記踏段との間に前記異物が挟み込まれている場合に生じる前記異音を集音す
乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記異物挟み込み状態および前記くし歯破損状態の少なくとも一方の状態が発生していることを検出した場合、前記乗客コンベアの運転を停止させる
請求項1に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
前記乗客コンベアに乗っている乗客を撮影可能に設けられた第2の撮影部をさらに備え、
前記コントローラは、前記異物挟み込み状態および前記くし歯破損状態の少なくとも一方の状態が発生していることを検出した場合、前記第2の撮影部の撮影結果から前記乗客コンベアに前記乗客が乗っていないことを確認した後、前記乗客コンベアの運転を停止させる
請求項2に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の判定において、予め記憶される前記参照音と、前記集音部によって集音された前記音とを比較することで前記音が前記異音であるか否かを判定し、
前記コントローラは、前記参照音を更新するリセット機能を備え
前記リセット機能が機能した場合には、前記乗客コンベアが通常に運転しているときの稼働音および前記乗客コンベアの周囲の環境音のそれぞれが前記集音部に集音され、集音された前記稼働音および前記環境音が新たな前記参照音として、記憶部にすでに記憶されている前記参照音に上書きされ
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのくしの状態を検出する乗客コンベアの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターなどの乗客コンベアを運転している場合にくしと踏段との間に異物が挟み込まれている状態が継続することによって、くしのくし歯が破損してしまうことがある。そこで、従来において、このようなくし歯の破損を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-84012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の従来技術では、複数のくし歯のそれぞれにIDタグを取り付ける構成となり、構成が複雑化するという問題がある。また、特許文献1に記載の従来技術では、構成上、くし歯が破損している状態(以下、くし歯破損状態と称す)を検出できるものの、くし歯が破損する前のくしと踏段との間に異物が挟み込まれている状態(以下、異物挟み込み状態と称す)を検出できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、構成を容易化しつつ、くしの状態として、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の両方を検出することのできる乗客コンベアの制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における乗客コンベアの制御装置は、乗客コンベアで発生する音を集音可能なように設けられた集音部と、乗客コンベアの踏段のクリートと噛み合うくしのくし歯部分を撮影可能なように設けられた第1の撮影部と、集音部によって集音された音と、第1の撮影部によって撮影されたくしのくし歯部分の画像とを取得するコントローラと、を備え、コントローラは、集音部によって集音された音が、くしと踏段との間に異物が挟み込まれている異物挟み込み状態が発生している場合に生じる異音であるか否かを判定する第1の判定を行い、第1の撮影部によって撮影されたくしのくし歯部分の画像から、異物挟み込み状態が発生しているか否かを判定する第2の判定を行い、第1の撮影部によって撮影されたくしのくし歯部分の画像から、くし歯が破損しているくし歯破損状態が発生しているか否かを判定する第3の判定を行い、第1の判定の結果と、第2の判定の結果と、第3の判定の結果とに基づいて、異物挟み込み状態が発生しているか否かと、くし歯破損状態が発生しているか否かとを検出し、コントローラは、第1の判定において、予め記憶される参照音と集音部によって集音された音とが互いに異なり、かつ、集音部によって集音された音が一定周期の音である場合に、音が異音であると判定し、集音部は、スカートガードにおけるくしに隣り合う部分に設けられており、くしと踏段との間に異物が挟み込まれている場合に生じる異音を集音するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構成を容易化しつつ、くしの状態として、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の両方を検出することのできる乗客コンベアの制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置を備えたエスカレーターを示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置のコントローラによって行われるくしの状態を検出する一連の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による乗客コンベアの制御装置を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態では、乗客コンベアの一例であるエスカレーターに本発明が適用される場合を例示するが、動く歩道等に対しても本発明が適用可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置を備えたエスカレーターを示す斜視図である。
【0011】
図1において、エスカレーターの上部および下部のそれぞれの乗降口の間に循環移動される複数の踏段1の両側には、エスカレーターの長手方向に沿って延びた欄干2が立設されている。各欄干2には、踏段1と同期して周回移動する移動手摺3が取り付けられている。
【0012】
各乗降口に敷設された床板4の踏段1側には、エスカレーターの幅方向に沿って延びた板状のくし板5が敷設されている。くし板5には、幅方向に沿って配置された複数のくし6が、複数のねじ7によって取り付けられている。各くし6の先端には、複数のくし歯6aが設けられている。くし6のくし歯6aは、踏段1のクリート8と噛み合っている。くし板5は、くし6が踏段1のクリート8と噛み合う側に緩やかに傾斜されて配置されている。
【0013】
欄干2には、長手方向に沿って配置されたスカートガード9が設けられている。マイクロフォン10は、エスカレーターで発生する音を集音可能なように設けられた集音部の一例である。
【0014】
カメラ11は、踏段1のクリート8と噛み合うくし6のくし歯6aを撮影可能なように設けられた第1の撮影部、およびエスカレーターに乗っている乗客を撮影可能に設けられた第2の撮影部の一例である。第1の撮影部および第2の撮影部の機能は、同一のカメラによって実現されていてもよいし、別々のカメラによって実現されていてもよい。
【0015】
マイクロフォン10およびカメラ11は、エスカレーターのどの箇所に設けられていてもよいが、例えば、スカートガード9の、くし6付近の部分に設けられている。
【0016】
コントローラ12は、トラス内の機械室に設けられ、エスカレーター全体の動作を制御する。コントローラ12は、例えば、演算処理を実行するマイクロコンピュータと、プログラムデータ、固定値データ等のデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、格納されているデータを更新して順次書き換えられるRAM(Random Access Memory)等によって実現される。
【0017】
コントローラ12は、マイクロフォン10によって集音された音と、カメラ11を構成する第1の撮影部によって撮影されたくし歯6aの部分の画像とを取得し、その取得した結果を用いて、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の少なくとも一方の状態が発生しているか否かを検出する。
【0018】
なお、異物挟み込み状態は、くし6と踏段1との間に異物が挟み込まれている状態である。異物挟み込み状態が発生している場合に生じる異音は、エスカレーターが通常に運転しているときの稼働音、およびエスカレーターの周囲の環境音とは明らかに相違する。くし歯破損状態は、くし歯が破損している状態である。くし6と踏段1との間に異物が挟み込まれている状態が継続すれば、くし歯6aが破損する。
【0019】
上述したマイクロフォン10、カメラ11およびコントローラ12は、乗客コンベアの制御装置を構成する。
【0020】
次に、本実施の形態1におけるコントローラ12によって行われるくし6の状態を検出する処理について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置のコントローラ12によって行われるくし6の状態を検出する一連の処理を示すフローチャートである。
【0021】
ステップS101において、コントローラ12は、マイクロフォン10によって集音された音を取得し、マイクロフォン10から取得した音を用いて、第1の判定を行う。すなわち、コントローラ12は、第1の判定として、マイクロフォン10から取得した取得音が異音であるか否かを判定する。コントローラ12は、マイクロフォン10から取得した取得音が異音であると判定すれば、第1のフラグを立てる。その後、処理がステップS102へと進む。
【0022】
具体的には、コントローラ12は、マイクロフォン10から取得した取得音と、メモリなどの記憶部(図示せず)に予め記憶されている参照音とを比較する。コントローラ12は、その比較の結果として、取得音が参照音と異なる場合には、取得音が異音であると判定し、取得音が参照音と合致する場合には、取得音が異音でないと判定する。
【0023】
なお、コントローラ12は、取得音の周期性も併せて確認し、取得音が参照音と異なるという条件と、取得音が一定周期の音であるという条件との両方の条件を満たした場合、取得音が異音であると判定するように構成されていてもよい。このような構成によって、異物がくし6と踏段1との間に挟まれずに、くし6または踏段1に衝突しただけの衝突音と、異物挟み込み状態が発生している場合に生じる異音とを区別することが可能となる。
【0024】
エスカレーターが通常に運転しているときの稼働音、およびエスカレーターの周囲の環境音のそれぞれは、予め、サンプリングされて参照音として記憶部に記憶される。コントローラ12は、このような参照音を、マイクロフォン10から取得した取得音と比較する。
【0025】
このように、コントローラ12は、集音部の一例としてのマイクロフォン10によって集音された音が、くし6と踏段1との間に異物が挟み込まれている異物挟み込み状態が発生している場合に生じる異音であるか否かを判定する第1の判定を行うように構成されている。
【0026】
ステップS102において、コントローラ12は、カメラ11を構成する第1の撮影部によって撮影されたくし6のくし歯6a部分の画像を取得し、カメラ11から取得したくし6のくし歯6a部分の画像を用いて、第2の判定を行う。すなわち、コントローラ12は、第2の判定として、カメラ11から取得したくし6のくし歯6a部分の画像から、異物挟み込み状態が発生しているか否かを判定する。コントローラ12は、異物挟み込み状態が発生していると判定すれば、第2のフラグを立てる。その後、処理がステップS103へと進む。
【0027】
具体的には、コントローラ12は、記憶部に記憶されている参照画像を用いて、カメラ11から取得した取得画像、すなわちくし6のくし歯6a部分の画像を画像解析することで、くし6と踏段1との間に挟み込まれている異物が存在するか否かを判断する。
【0028】
コントローラ12は、その画像解析の結果、くし6と踏段1との間に挟み込まれている異物が存在すると判断した場合、異物挟み込み状態が発生していると判定する。一方、コントローラ12は、その画像解析の結果、くし6と踏段1との間に挟み込まれている異物が存在しないと判断した場合、異物挟み込み状態が発生していないと判定する。
【0029】
異物挟み込み状態およびくし歯破損状態が発生していない正常なくし6のくし歯6a部分の画像は、予め、撮影されて参照画像として記憶部に記憶される。コントローラ12は、このような参照画像を用いて、くし6のくし歯6a部分の画像を画像解析する。
【0030】
このように、コントローラ12は、カメラ11を構成する第1の撮影部によって撮影されたくし6のくし歯6a部分の画像から、異物挟み込み状態が発生しているか否かを判定する第2の判定を行うように構成されている。
【0031】
ステップS103において、コントローラ12は、ステップS102でカメラ11から取得したくし6のくし歯6a部分の画像を用いて、第3の判定を行う。すなわち、コントローラ12は、第3の判定として、カメラ11から取得したくし6のくし歯6a部分の画像から、くし歯破損状態が発生しているか否かを判定する。コントローラ12は、くし歯破損状態が発生していると判定すれば、第3のフラグを立てる。その後、処理がステップS104へと進む。
【0032】
具体的には、コントローラ12は、記憶部に記憶されている上述の参照画像を用いて、カメラ11から取得した取得画像、すなわちくし6のくし歯6a部分の画像を画像解析することで、くし歯6aが破損しているか否かを判断する。
【0033】
コントローラ12は、その画像解析の結果、くし歯6aが破損していると判断した場合、くし歯破損状態が発生していると判定する。一方、コントローラ12は、その画像解析の結果、くし歯6aが破損していないと判断した場合、くし歯破損状態が発生していないと判定する。
【0034】
このように、コントローラ12は、カメラ11を構成する第1の撮影部によって撮影されたくし6のくし歯6a部分の画像から、くし歯6aが破損しているくし歯破損状態が発生しているか否かを判定する第3の判定を行うように構成されている。
【0035】
ステップS104において、コントローラ12は、ステップS101での第1の判定の結果と、ステップS102での第2の判定の結果と、ステップS103での第3の判定の結果とに基づいて、エスカレーターのくし6に異常が発生していることを検出したか否かを判断する。
【0036】
すなわち、コントローラ12は、第1のフラグおよび第2のフラグの少なくとも一方が立っているか否かによって、異物挟み込み状態が発生しているか否かを検出する。コントローラ12は、第1のフラグおよび第2のフラグの少なくとも一方が立っていれば、異物挟み込み状態が発生していることを検出する。コントローラ12は、第1のフラグおよび第2のフラグのいずれも立っていなければ、異物挟み込み状態が発生していないことを検出する。
【0037】
コントローラ12は、第3のフラグが立っているか否かによって、くし歯破損状態が発生しているか否かを検出する。コントローラ12は、第3のフラグが立っていれば、くし歯破損状態が発生していることを検出する。コントローラ12は、第3のフラグが立っていなければ、くし歯破損状態が破損していないことを検出する。
【0038】
コントローラ12は、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の少なくとも一方の状態を検出すれば、エスカレーターのくし6に異常が発生していることを検出する。コントローラ12は、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態のいずれの状態も検出しなければ、エスカレーターのくし6に異常が発生していることを検出しない。
【0039】
ステップS104において、くし6に異常が発生していることを検出したと判断された場合には、処理がステップS105へと進み、くし6に異常が発生していることを検出しなかったと判断された場合には、処理が終了となる。
【0040】
このように、コントローラ12は、第1の判定の結果と、第2の判定の結果と、第3の判定の結果とに基づいて、異物挟み込み状態が発生しているか否かと、くし歯破損状態が発生しているか否かとを検出するように構成されている。
【0041】
ステップS105において、コントローラ12は、カメラ11を構成する第2の撮影部によって撮影された画像から、エスカレーターに乗客が乗っていないか否かを判断する。エスカレーターに乗客が乗っていないと判断された場合には、処理がステップS106へと進み、エスカレーターに乗客が乗っていると判断された場合には、ステップS105の処理を再度実行する。
【0042】
ステップS106において、コントローラ12は、エスカレーターの運転を停止させる。その後、処理が終了となる。図2に示すフローチャートの処理が終了となれば、コントローラ12は、立てられた上述のフラグを解除する。
【0043】
このように、コントローラ12は、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の少なくとも一方の状態が発生していることを検出した場合、乗客コンベアの運転を停止させるように構成されている。このような構成によって、くしの異常状態でのエスカレーターの運転の継続を回避することができる。
【0044】
より具体的には、コントローラ12は、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の少なくとも一方の状態が発生していることを検出した場合、第2の撮影部の撮影結果から乗客コンベアに乗客が乗っていないことを確認した後、乗客コンベアの運転を停止させるように構成されている。このような構成によって、エスカレーターに乗っている乗客が存在するにも関わらずエスカレーターの運転を停止させるような状況を回避することができる。
【0045】
なお、記憶部に記憶されている上述の参照音を更新するリセット機能がコントローラ12に具備されていてもよい。エスカレーターを保守する保守員などの操作によってリセット機能が機能した場合、エスカレーターが通常に運転しているときの稼働音、およびエスカレーターの周囲の環境音のそれぞれが新たにサンプリングされ、これらの音が新たな参照音として、記憶部にすでに記憶されている参照音に上書きされる。このようなリセット機能が設けられることで、エスカレーターの環境の変化に対応することができる。
【0046】
このように、コントローラ12は、第1の判定において、予め記憶される参照音と、マイクロフォン10によって集音された音とを比較することで、その音が異音であるか否かを判定する構成に対して、参照音を更新するリセット機能を備えて構成されていてもよい。
【0047】
以上、本実施の形態1によれば、乗客コンベアの制御装置は、集音された音が、くしと踏段との間に異物が挟み込まれている異物挟み込み状態が発生している場合に生じる異音であるか否かを判定する第1の判定の結果と、撮影されたくしのくし歯部分の画像から、異物挟み込み状態が発生しているか否かを判定する第2の判定の結果と、撮影されたくしのくし歯部分の画像から、くし歯が破損しているくし歯破損状態が発生しているか否かを判定する第3の判定の結果とに基づいて、異物挟み込み状態が発生しているか否かと、くし歯破損状態が発生しているか否かとを検出するように構成されている。
【0048】
これにより、乗客コンベアのくしの状態として、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の両方を検出することが可能となる。また、複数のくし歯のそれぞれに取り付けられるIDタグを必要とせずに、マイクロフォンおよびカメラを用いて上述の構成を実現することができるので、構成の容易化が期待できる。つまり、乗客コンベアにおいて、装置構成を容易化しつつ、くしの状態として、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の両方を検出することができる。
【0049】
さらに、異物挟み込み状態およびくし歯破損状態の少なくとも一方の状態が発生していることが検出された場合、乗客コンベアの運転を停止させる制御が行われることで、くしの異常状態での乗客コンベアの運転の継続を自動的に回避することができ、さらに、異物による踏段およびくしの摩耗を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 踏段、2 欄干、3 移動手摺、4 床板、5 くし板、6 くし、6a くし歯、7 ねじ、8 クリート、9 スカートガード、10 マイクロフォン、11 カメラ、12 コントローラ。
図1
図2