(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】抵抗発生装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/10 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
G05F1/10 R
(21)【出願番号】P 2018140348
(22)【出願日】2018-07-26
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】長井 秀行
(72)【発明者】
【氏名】真野 息吹
(72)【発明者】
【氏名】西島 克俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-25372(JP,U)
【文献】特開平8-29463(JP,A)
【文献】特開2004-363759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/10
G01R 21/00
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、
前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、
前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧と前記目標抵抗値とに基づいて前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値を測定する値測定処理を実行して、
前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする抵抗発生装置。
【請求項2】
一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、
前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、
前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧と前記目標抵抗値とに基づいて前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、
前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする抵抗発生装置。
【請求項3】
一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、
前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、
前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧と前記目標抵抗値とに基づいて前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値および前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、
前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくし、かつ前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記ゲインを小さくする抵抗発生装置。
【請求項4】
一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、
前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、
前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込まれる前記電流の電流値を測定する電流測定部と、
前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部で測定されている前記電流値と前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧とに基づいて前記一対の測定端子間に発生させている抵抗の抵抗値を算出すると共に、当該算出した抵抗値と前記目標抵抗値との差分がゼロに近づくように前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値を測定する値測定処理を実行して、
前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする抵抗発生装置。
【請求項5】
一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、
前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、
前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込まれる前記電流の電流値を測定する電流測定部と、
前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部で測定されている前記電流値と前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧とに基づいて前記一対の測定端子間に発生させている抵抗の抵抗値を算出すると共に、当該算出した抵抗値と前記目標抵抗値との差分がゼロに近づくように前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、
前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする抵抗発生装置。
【請求項6】
一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、
前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、
前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込まれる前記電流の電流値を測定する電流測定部と、
前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部で測定されている前記電流値と前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧とに基づいて前記一対の測定端子間に発生させている抵抗の抵抗値を算出すると共に、当該算出した抵抗値と前記目標抵抗値との差分がゼロに近づくように前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値および前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、
前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくし、かつ前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記ゲインを小さくする抵抗発生装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記値測定処理において前記直流定電圧の電圧値を測定すると共に、前記フィードバック制御における前記電流源に設定する前記電流値の初期値として、測定した前記プルアップ抵抗の抵抗値および測定した当該直流定電圧の電圧値に基づいて算出される電流値を使用する請求項1,3,4,6のいずれかに記載の抵抗発生装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記値測定処理において前記直流定電圧の電圧値および前記プルアップ抵抗の抵抗値を測定すると共に、前記フィードバック制御における前記電流源に設定する前記電流値の初期値として、測定した前記プルアップ抵抗の抵抗値および測定した当該直流定電圧の電圧値に基づいて算出される電流値を使用する請求項2または5記載の抵抗発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の抵抗値の抵抗を発生させ得る抵抗発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の抵抗発生装置の基本的なものとして、下記特許文献1において従来の技術として開示された抵抗発生装置が知られている。この抵抗発生装置は、抵抗器や測温抵抗体などの抵抗値を測定するデジタルマルチメータの校正や、測温抵抗体をセンサとする各種温度計の校正において、値の既知な標準抵抗を発生させる装置として使用される。
【0003】
この場合、デジタルマルチメータなどの測定装置として、内部に抵抗測定用の測定電流を発生させるための電流源を備えて、その測定電流を一対の測定端子間に接続された被測定抵抗に流してその際に被測定抵抗に発生する電圧降下の電圧値(以下、単に「電圧降下」ともいう)を計測し、この計測された電圧降下を測定電流の電流値で除算することで、被測定抵抗の抵抗値を求める構成を有する測定装置がある。
【0004】
この構成の測定装置用の抵抗発生装置は、測定装置の測定端子間から出力される測定電流を吸い込む電流源と、電流源で吸い込む電流の電流値を測定する電流計と、電圧を発生させて測定端子間に印加する電圧源とを内部に有して構成されている。この抵抗発生装置では、測定装置側の電流源から出力される測定電流を抵抗発生装置側の電流源が吸い込むと共に、電流計がこの電流源で吸い込む測定電流の電流値Iを計測する。この計測される電流値Iは、測定装置側の電流源が定電流源(測定電流の電流値Iが既定値)のときにはこの既定値となる。電圧源は、この計測された電流値I(既定値)と抵抗発生装置に設定された抵抗の抵抗値Rとに基づいて算出される電圧値V(=I×R)で電圧を発生させて、測定端子間に印加する。これにより、抵抗発生装置は、設定された抵抗値Rの抵抗を測定端子間に発生させることができる。
【0005】
また、他の測定装置として、
図4に示す測定装置(サーミスタ温度測定装置)51が知られている。この測定装置51は、測定端子52a,52b間に接続された抵抗体(サーミスタ)53に、プルアップ抵抗54を介して直流電源55から直流定電圧Vdd(例えば、グランドGの電位を基準とするDC+5V)を印加すると共に、プルアップ抵抗54(抵抗値Rpu)と抵抗体53の直列回路がこの直流定電圧Vddを分圧して得られる電圧(分圧電圧)Vをバッファ(高入力インピーダンスの増幅器)56を介して検出し、この検出した電圧Vの電圧値V1と、抵抗体53についての電圧値V1と温度との関係を示すデータテーブル(
図4に示す回路構成で、抵抗体53の温度を徐々に変化させたときの各温度と、各温度において測定される電圧値V1との関係を、実験またはシミュレーションで求めて得られるデータテーブル)とに基づいて、抵抗体53の温度(例えば、抵抗体53が配設された部位の温度)を計測する。
【0006】
一方、この構成の測定装置用の抵抗発生装置41は、
図5に示すように、測定装置51の一対の測定端子52a,52bに接続される一対の接続端子42a,42bと、測定装置51の一方の測定端子52aから接続端子42aを経由して電流Iを吸い込むと共に接続端子42bを経由して他方の測定端子52bに出力する(戻す)電流源43と、接続端子42a,42b間の電圧Vを測定する電圧測定部44と、所定の時間間隔で、電流源43に対して吸い込む電流Iの電流値I1を設定しつつ(例えば、初期値をゼロとして電流値I1を増加する設定を実行しつつ)、この電流値I1と電圧測定部44が測定している現在の電圧Vの電圧値V1(=Vdd-Rpu×I)とに基づいて抵抗値R(=V1/I1)を算出し、算出した抵抗値Rと抵抗発生装置41に設定された目標抵抗値Rtgとの差分に基づき、電流源43に対する新たな電流値I1を決定するというフィードバック制御を実行して、算出される抵抗値Rを目標抵抗値Rtgに収束させる処理部45とを備えている。これにより、この抵抗発生装置41は、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を測定端子52a,52b間に発生させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記した従来の抵抗発生装置41には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この抵抗発生装置41では、実行するフィードバック制御の安定性や過渡特性(速応性および減衰性)は、測定装置51側のプルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび直流電源55の測定端子52a,52b間に等価的に存在する容量成分57の容量値Cpdの影響を受ける。このことから、抵抗発生装置41では、抵抗値Rpuおよび容量値Cpdが未知の状況下において、上記の安定性を確実に維持すべく、過渡特性を犠牲にして、フィードバック制御の制御量を小さくしている。つまり、フィードバック制御の入力である電圧値V1に基づいて出力であるところの新たな電流値I1を算出する際のゲインを小さくすると共に、この新たな電流値I1を電流源43に設定するまでの間に、電流源43が直前に設定された電流値I1で電流Iを吸い込む状態に移行し得るようにしている。
【0009】
したがって、この抵抗発生装置41には、過渡特性を犠牲にした関係上、目標抵抗値Rtgの抵抗を発生させるまでに要する時間が長くなるという解決すべき課題が存在している。
【0010】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、所望の抵抗値(目標抵抗値)を発生させるまでに要する時間を短縮し得る抵抗発生装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく請求項1記載の抵抗発生装置は、一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧と前記目標抵抗値とに基づいて前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値を測定する値測定処理を実行して、前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする。
【0012】
また、請求項2記載の抵抗発生装置は、一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧と前記目標抵抗値とに基づいて前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする。
【0013】
また、請求項3記載の抵抗発生装置は、一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧と前記目標抵抗値とに基づいて前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値および前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくし、かつ前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記ゲインを小さくする。
【0014】
また、請求項4記載の抵抗発生装置は、一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込まれる前記電流の電流値を測定する電流測定部と、前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、前記電流測定部で測定されている前記電流値と前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧とに基づいて前記一対の測定端子間に発生させている抵抗の抵抗値を算出すると共に、当該算出した抵抗値と前記目標抵抗値との差分がゼロに近づくように前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値を測定する値測定処理を実行して、前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする。
【0015】
また、請求項5記載の抵抗発生装置は、一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込まれる前記電流の電流値を測定する電流測定部と、前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、前記電流測定部で測定されている前記電流値と前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧とに基づいて前記一対の測定端子間に発生させている抵抗の抵抗値を算出すると共に、当該算出した抵抗値と前記目標抵抗値との差分がゼロに近づくように前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくする。
【0016】
また、請求項6記載の抵抗発生装置は、一対の測定端子のうちの一方の測定端子に接続されたプルアップ抵抗を介して直流定電圧を当該一対の測定端子のうちの他方の測定端子の電位を基準として当該一対の測定端子間に接続される抵抗体に印加すると共に、前記抵抗体と前記プルアップ抵抗とで測定定電圧が分圧されて得られる分圧電圧を検出する機能を有する測定装置の当該一対の測定端子間に当該抵抗体に代えて接続されて、設定された目標抵抗値の抵抗を当該一対の測定端子間に発生させる抵抗発生処理を実行する抵抗発生装置であって、前記一対の測定端子間に接続されると共に、設定された電流値の電流を、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込むと共に前記他方の測定端子を介して当該測定装置に出力する電流源と、前記一方の測定端子を介して前記測定装置から吸い込まれる前記電流の電流値を測定する電流測定部と、前記一対の測定端子間の端子間電圧を測定する電圧測定部と、前記電流測定部で測定されている前記電流値と前記電圧測定部で測定されている前記端子間電圧とに基づいて前記一対の測定端子間に発生させている抵抗の抵抗値を算出すると共に、当該算出した抵抗値と前記目標抵抗値との差分がゼロに近づくように前記電流源に設定する前記電流値をフィードバック制御する前記抵抗発生処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記抵抗発生処理の実行に先立ち、前記プルアップ抵抗の抵抗値および前記一対の測定端子間に存在する容量成分の容量値を測定する値測定処理を実行して、前記抵抗発生処理において、前記値測定処理で測定された前記抵抗値が大きいほど前記フィードバック制御のゲインを小さくし、かつ前記値測定処理で測定された前記容量値が大きいほど前記ゲインを小さくする。
【0017】
また、請求項7記載の抵抗発生装置は、請求項1,3,4,6のいずれかに記載の抵抗発生装置において、前記処理部は、前記値測定処理において前記直流定電圧の電圧値を測定すると共に、前記フィードバック制御における前記電流源に設定する前記電流値の初期値として、測定した前記プルアップ抵抗の抵抗値および測定した当該直流定電圧の電圧値に基づいて算出される電流値を使用する。
【0018】
また、請求項8記載の抵抗発生装置は、請求項2または5記載の抵抗発生装置において、前記処理部は、前記値測定処理において前記直流定電圧の電圧値および前記プルアップ抵抗の抵抗値を測定すると共に、前記フィードバック制御における前記電流源に設定する前記電流値の初期値として、測定した前記プルアップ抵抗の抵抗値および測定した当該直流定電圧の電圧値に基づいて算出される電流値を使用する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1,4記載の抵抗発生装置では、処理部は、プルアップ抵抗の抵抗値が大きいほどフィードバック制御(ループ)のゲインを小さくしてフィードバック制御する。この場合、プルアップ抵抗の抵抗値が大きいほど、電流源で吸い込む電流の電流値の変化分によるプルアップ抵抗で生じる電圧降下の変化分が大きくなる(つまり、発生させる抵抗の抵抗値の変化分が大きくなる)。したがって、この抵抗発生装置によれば、抵抗値が大きいほどフィードバック制御のゲインを小さくして、電流値の変化分が大きくなり過ぎないようにするフィードバック制御を実行することができるため、設定された目標抵抗値の抵抗を、安定した状態で(リンギングの少ない状態)で、かつ高速に(短時間に)発生させることができる。
【0020】
請求項2,5記載の抵抗発生装置では、処理部は、容量成分の容量値が大きいほどフィードバック制御(ループ)のゲインを小さくしてフィードバック制御する。この場合、容量成分の容量値が大きいほど、処理部からの電流源への電流値の設定のタイミングを基準(始期)としたときのプルアップ抵抗で生じる電圧降下の変化の遅れが大きくなる(つまり、発生させる抵抗の抵抗値の変化の遅れが大きくなる)。したがって、この抵抗発生装置によれば、容量値が大きいほどフィードバック制御のゲインを小さくして、抵抗値の変化の遅れに起因したリンギングの発生を回避しつつフィードバック制御を実行することができるため、設定された目標抵抗値の抵抗を、安定した状態で、かつ高速に発生させることができる。
【0021】
請求項3,6記載の抵抗発生装置では、処理部は、プルアップ抵抗の抵抗値が大きいほどのゲインを小さくしてフィードバック制御すると共に、容量成分の容量値が大きいほどゲインを小さくしてフィードバック制御する。したがって、この抵抗発生装置によれば、この抵抗値が大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、電流値の変化分が大きくなり過ぎないようにするフィードバック制御を実行したり、この容量値が大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、抵抗値の変化の遅れに起因したリンギングの発生を回避しつつフィードバック制御を実行したりすることができるため、設定された目標抵抗値の抵抗を、一層安定した状態で、かつ高速に発生させることができる。
【0022】
請求項7,8記載の抵抗発生装置では、処理部は、フィードバック制御における電流源に設定する電流値の初期値として、測定したプルアップ抵抗の抵抗値および測定した直流定電圧の電圧値に基づいて算出される電流値を使用する。したがって、この抵抗測定装置によれば、電流源に対して設定する電流値の初期値をゼロアンペアとする構成と比較して、設定された目標抵抗値の抵抗をさらに短時間に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】抵抗発生装置1および測定装置51の構成図である。
【
図2】IIR型デジタルフィルタのブロック線図である。
【
図3】値測定処理20を説明するためのフローチャートである。
【
図5】従来の抵抗発生装置41および測定装置51の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、抵抗発生装置の実施の形態について説明する。
【0025】
まず、抵抗発生装置としての抵抗発生装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0026】
抵抗発生装置1は、
図4に示す測定装置51用の抵抗発生装置であって、
図1に示すように、測定装置51の一対の測定端子52a,52bに接続される一対の接続端子2a,2bと、電流源3、電圧検出部4、スイッチ5、電流検出部6、基準抵抗7、操作部8、処理部9および出力部10を備えて、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を一対の測定端子52a,52bに接続された一対の接続端子2a,2b間に発生させることが可能に構成されている。なお、測定装置51については、背景技術で説明した構成、つまり、一方の測定端子52aに接続されたプルアップ抵抗54を介して直流定電圧Vddを他方の測定端子52bの電位(グランドGの電位)を基準として一対の測定端子52a,52b間に印加すると共に、一対の測定端子52a,52b間に接続された抵抗体(サーミスタや抵抗発生装置1)とプルアップ抵抗54とで測定定電圧Vddが分圧されて得られる電圧(分圧電圧)Vを検出する構成と同一であるため、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
具体的には、抵抗発生装置1では、接続端子2aは、接続ケーブルCB1を介して測定端子52aに接続可能に構成され、また接続端子2bは、接続ケーブルCB2を介して測定端子52bに接続可能に構成されている。電流源3は、接続端子2a,2b間に接続されて、処理部9から設定された電流値Isの電流Iを接続端子2a側から吸い込むと共に、吸い込んだ電流Iを接続端子2b側へ出力可能に構成されている。電圧検出部4は、接続端子2a,2b間の電圧(端子間電圧)Vを検出すると共に、この電圧Vの電圧値V1に応じて電圧値が変化する電圧信号Vvに変換して処理部9に出力する。
【0028】
スイッチ5および基準抵抗7は、直列に接続された状態で、電流源3および電圧検出部4と並列になる状態で接続端子2a,2b間に接続されている。また、スイッチ5は、例えば、バイポーラトランジスタや電界効果型トランジスタなどの半導体スイッチで構成されると共に処理部9によって制御されて、オン状態およびオフ状態のうちの任意の一方の状態に移行する。また、基準抵抗7は、既知の抵抗値Rrの固定抵抗で構成されている。
【0029】
電流検出部6は、本例では一例として、スイッチ5および基準抵抗7の直列回路における接続端子2a側の一端(この直列回路と並列接続された電流源3および電圧検出部4のそれぞれにおける接続端子2a側の一端でもある)と接続端子2aとの間に接続されている。なお、図示はしないが、電流検出部6は、スイッチ5および基準抵抗7の直列回路における接続端子2b側の他端(この直列回路と並列接続された電流源3および電圧検出部4のそれぞれにおける接続端子2b側の他端でもある)と接続端子2bとの間に接続される構成であってもよい。この構成により、電流検出部6は、測定装置51の測定端子52aから接続端子2aに流入する電流I(接続端子2bから測定装置51の測定端子52bに流出する電流でもある)を電圧信号Vi(この流入または流出する電流の電流値に比例して電圧値が変化する電圧信号)に変換して処理部9に出力する。
【0030】
操作部8は、例えば、抵抗発生装置1の不図示のパネル面に配置されたテンキーを含む操作スイッチや、抵抗発生装置1に接続されたキーボードなどで構成されている。また、操作部8は、抵抗発生装置1の使用者によって操作されることにより、目標抵抗値Rtgを示す抵抗値データを処理部9に出力可能に構成されている。
【0031】
処理部9は、A/D変換器、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、電流源3およびスイッチ5に対する制御処理、電圧測定処理、電流測定処理、値測定処理20(
図3参照)、および抵抗発生処理を実行する。この場合、電圧測定処理では、処理部9は、電圧検出部4から出力される電圧信号VvをA/D変換器でサンプリング(サンプリング周波数fs)することにより、電圧信号Vvの瞬時値データ(上記した電圧Vの瞬時値を示すデータでもある)に変換して、メモリに記憶する。また、処理部9は、この瞬時値データに基づいて、接続端子2a,2b間の電圧Vの現在の電圧値V1を測定する。つまり、処理部9は、電圧検出部4と共に電圧測定部を構成して、接続端子2a,2b間(測定端子52a,52b間)の電圧(端子間電圧)Vの現在の電圧値V1を測定する。
【0032】
また、電流測定処理では、処理部9は、電流検出部6から出力される電圧信号ViをA/D変換器でサンプリング(電圧信号Vv用のA/D変換器と同期してサンプリング)することにより、電圧信号Viの瞬時値データ(上記した接続端子2aに流入する電流Iの瞬時値を示すデータでもある)に変換して、メモリに記憶する。また、処理部9は、この瞬時値データに基づいて、接続端子2aに流入する電流Iの現在の電流値I1を測定する。つまり、処理部9は、電流検出部6と共に電流測定部を構成して、測定装置51から接続端子2aに流入する電流Iの現在の電流値I1を測定する。
【0033】
また、抵抗発生処理では、処理部9は、電圧検出部4で測定されている電圧Vの電圧値V1と目標抵抗値Rtgとに基づいて、電流源3に設定する電流値Isをフィードバック制御する。
【0034】
このフィードバック制御のフィードバックループには、測定装置51側のプルアップ抵抗54と容量成分57とで構成される1次遅れ要素(LPF)と、処理部9でのA/D変換処理および抵抗値Rの算出処理によるむだ時間要素とが含まれており、これらの要素はいずれもこのフィードバック制御の安定性を乱す要素となっている。このため、本例では、処理部9は、このフィードバック制御の安定性を確保しつつ、発生させる抵抗の抵抗値Rを高速に目標抵抗値Rtgに収束させるべく、電圧信号Vvの瞬時値データに対してデジタルフィルタ処理(フィードバックループでの発振を抑えるために、高周波帯域での利得を抑えつつ、瞬時値データにゲインを与える処理)を実行すると共に、このデジタルフィルタ処理で得られた電圧信号Vvの瞬時値データに基づいて、電流源3に設定する電流Iの電流値Isを算出する。つまり、本例のフィードバックループには、このデジタルフィルタ処理に対応するデジタルフィルタが補償用の要素として含まれている。本例ではデジタルフィルタとしてIIR(Infinite Impulse Response )型デジタルフィルタを使用するものとする。
【0035】
このIIR型デジタルフィルタは、
図2に示すブロック線図で表されることから、その伝達関数は下記の式(1)で表される。これにより、このIIR型デジタルフィルタを含む本例の抵抗発生装置1でのフィードバックループのゲインは、パラメータkが、大きいときには大きくなり、小さいときには小さくなる。
H(z)=k/(1-(1-k)z
-1) ・・・ (1)
【0036】
また、このIIR型デジタルフィルタは、このパラメータkに応じてカットオフ周波数fcが変化し、またナイキスト周波数(サンプリング周波数fsの1/2の周波数)よりも十分に低い周波数領域において、このフィルタの利得特性を1次のLPF(ローパスフィルタ)に近似することができる。この利得特性を1次のLPFに近似したときの、このフィルタのカットオフ周波数fcは、下記の式(2)で表される。
fc=k×fs/(2π×(1-k)) ・・・ (2)
【0037】
また、抵抗発生装置1では、処理部9が、値測定処理20において、後述するように、測定装置51側のプルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび容量成分57の容量値Cpdを測定すると共に、測定した抵抗値Rpuおよび容量値Cpdを考慮して算出されるパラメータkをIIR型デジタルフィルタに適用することで、IIR型デジタルフィルタによる補償を最適化する構成を採用している。このため、抵抗発生装置1では、IIR型デジタルフィルタによる補償を最適化し得るパラメータkの算出式(後述の式(6))を処理部9に予め記憶しておき、処理部9は、この算出式に基づいてパラメータkを求めて、IIR型デジタルフィルタに適用して、上記のフィードバック制御を実行する。以下、パラメータkを求める式の算出手順について説明する。
【0038】
IIR型デジタルフィルタの利得AIIRと、目標抵抗値Rtgに対する抵抗値Rpuの比率と、利得余裕GMとの関係は、位相が180°遅れる周波数fにて、下記の式(3)を満たすように設定される。
AIIR×(Rpu/Rtg)×GM=1 ・・・ (3)
この場合、IIR型デジタルフィルタ自身で位相が90°遅れるため、位相が180°遅れる周波数fとは、1次遅れ要素(LPF)と処理部9での上記の算出処理とによるむだ時間要素(1次遅れ要素をむだ時間要素に換算したときのむだ時間をTRCとし、算出処理でのむだ時間をTとしたときに、この2つのむだ時間の合計(TRC+T))で位相が90°遅れる周波数fである。したがって、この周波数fは、1/{4×(TRC+T)}と表される。なお、1次遅れ要素での一次遅れをむだ時間に換算した上記のTRCは、抵抗値Rpuと容量値Cpdとを用いて、π/3√3×Rpu×Cpdの式で表される。
【0039】
また、利得特性を1次のLPFに近似したときの周波数f(=ω/2π)におけるIIR型デジタルフィルタの利得AIIRは、下記の式(4)で表される。
AIIR=|1/(1+jωτ)|
=1/√(1+4π2f2τ2)
ここで、τ=1/(2π×fc)であるから、これを代入して、
AIIR=1/√(1+f2/fc2) ・・・ (4)
【0040】
また、この式(4)で表される利得AIIRを上記式(3)に代入して、fcを求めると、fcは下記の式(5)で表される。
fc=f/√{(Rpu×GM/Rtg)2-1} ・・・ (5)
このfcは、所定の周波数fで利得余裕GMを得るために必要なカットオフ周波数fcを示している。
【0041】
また、上記式(2)からパラメータkを求めると、
k=1/(fs/(2π×fc)+1)
となり、この式に上記式(5)を代入すると、
k=1/(fs/(2π×f)×√{(Rpu×GM/Rtg)2-1}+1)
となる。また、この式に、上記式(3)を満たす周波数f(=1/{4×(TRC+T)})を代入することで、パラメータkについての最終的な下記の式(6)が算出される。
k=1/(2fs×(TRC+T)/π×√{(Rpu×GM/Rtg)2-1}+1)
・・・ (6)
【0042】
出力部10は、一例として、ディスプレイ装置や発光ダイオードなどの表示装置で構成されている。処理部9は、操作部8から目標抵抗値Rtgを示す抵抗値データを入力したときには、この抵抗値データで示される目標抵抗値Rtgを出力部10に表示させたり、また値測定処理20の実行中を示す旨を出力部10に表示させたり、抵抗発生処理の実行の結果、発生させている抵抗が目標抵抗値Rtgで安定したとき(発生させている抵抗が目標抵抗値Rtgに収束したとき)には、その旨を出力部10に表示させたりする出力処理を実行する。
【0043】
次に、抵抗発生装置1の動作について図面を参照して説明する。なお、抵抗発生装置1は、
図1に示すように、接続端子2aが接続ケーブルCB1を介して測定装置51の測定端子52aに接続され、かつ接続端子2bが接続ケーブルCB2を介して測定装置51の測定端子52bに接続されているものとする。
【0044】
抵抗発生装置1では、初期状態(電源投入直後)において、処理部9は、電流源3およびスイッチ5に対する制御処理を実行して、吸い込む電流Iの電流値I1の初期値をゼロアンペアに設定して電流源3を動作させると共に、スイッチ5をオフ状態に移行させる。電流源3は、電流値I1の初期値がゼロアンペアに設定されることにより、実質的にオープン状態に移行する。
【0045】
この状態において、操作部8に対する操作(目標抵抗値Rtgの設定操作)が行われて、操作部8が目標抵抗値Rtgを示す抵抗値データを出力したときには、処理部9は、この抵抗値データを取得して記憶すると共に、値測定処理20を開始する。
【0046】
この値測定処理20では、まず、測定装置51の直流定電圧Vddを測定する(ステップ21)。この場合、上記したように、スイッチ5がオフ状態で、かつ電流源3がオープン状態のため、電圧検出部4が検出する接続端子2a,2b間の電圧Vの電圧値V1は、直流定電圧Vddの電圧値(理解の容易のため、電圧値Vddともいう)そのものとなっている。したがって、処理部9は、電圧測定処理を実行して、接続端子2a,2b間の電圧Vについての電圧値V1を測定すると共に、この測定した電圧値V1を直流定電圧Vddの電圧値Vddとして記憶する。なお、この状態において測定装置51では、容量成分57は、プルアップ抵抗54を介して電圧値Vddに充電された状態となっている。
【0047】
次いで、処理部9は、測定装置51のプルアップ抵抗54の抵抗値Rpuと容量成分57の容量値Cpdとを測定する(ステップ22)。この場合、処理部9は、電流測定処理を実行して、電流検出部6から出力される電圧信号Viについての瞬時値データのメモリへの記憶を開始すると共に、スイッチ5に対する制御処理を実行してオフ状態からオン状態に移行させる。これにより、測定装置51側の容量成分57の基準抵抗7による放電が開始されて、メモリには、この放電開始からの電圧信号Viの瞬時値データ(容量成分57からの放電電流としての電流Iの瞬時値を示すデータ)が記憶される。
【0048】
また、容量成分57からの放電は、容量成分57の電圧(つまり、電圧検出部4が検出している接続端子2a,2b間の電圧Vの電圧値V1が電圧値(Vdd×Rr/(Rr+Rpu))になった時点で完了する。したがって、処理部9は、電圧測定処理を実行して測定している電圧値V1が一定となったことを検出したときに、電圧信号Viについての瞬時値データのメモリへの記憶を終了させると共に、スイッチ5に対する制御処理を実行してオン状態からオフ状態に移行させる。
【0049】
処理部9は、メモリに記憶されている電圧信号Viについての瞬時値データのうちの電圧値V1が一定となったときの瞬時値データに基づいて、容量成分57の放電が完了した状態での電流Iの電流値I1(つまり、測定装置51側の直流電源55から、プルアップ抵抗54、接続端子2a、スイッチ5、基準抵抗7および接続端子2bを経由して測定装置51側に戻る電流の電流値)を測定する。また、この測定した電流値I1、測定した電圧値V1、および測定した電圧値Vddに基づいて、プルアップ抵抗54の抵抗値Rpu(=(Vdd-V1)/I1)を算出(測定)して記憶する。また、処理部9は、メモリに記憶されている電圧信号Viについての瞬時値データのうちの放電状態のときの瞬時値データに基づいて、放電電流についての時定数(Cpd×Rr)を算出すると共に、算出した時定数と既知の抵抗値Rrとから容量成分57の容量値Cpdを算出(測定)して記憶する。
【0050】
続いて、処理部9は、IIR型デジタルフィルタについてのパラメータkを決定する(ステップ23)。具体的には、処理部9は、メモリに予め記憶されている上記の式(6)に、算出した抵抗値Rpuおよび容量値Cpdから算出される上記のTRC(=π/3√3×Rpu×Cpd)、処理部9の算出処理での既知のむだ時間T(サンプリング周期:1/fs)、既知のサンプリング周波数fs、抵抗値Rpu、設定された目標抵抗値Rtg、および予め規定されたGM(例えば、14dB)を代入することにより、パラメータkを算出(決定)して記憶する。これにより、値測定処理20が完了する。
【0051】
次いで、処理部9は、抵抗発生処理を実行することにより、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、接続端子2a,2b間(つまり、測定装置51の測定端子52a,52b間)に発生させる。
【0052】
具体的には、処理部9は、まず、スイッチ5に対する制御処理を実行してオフ状態に移行させることで、接続端子2a,2b間から基準抵抗7を切り離す。
【0053】
次いで、処理部9は、電流源3に対する制御処理を実行して、吸い込む電流Iの電流値Isを初期値(例えば、ゼロアンペア)から所定の時間間隔(例えば、A/D変換器のサンプリング周期:1/fs)でステップ的に変化(後述するようにして算出される抵抗値Rが目標抵抗値Rtgに達するまでは増加)させる。電流源3は、新たに設定された電流値Isに向けて、吸い込んでいる電流Iの電流値I1を変化させる。この電流源3の動作に対応して、測定装置51側から接続端子2aを経由して流入する電流Iの電流値I1、および接続端子2a,2b間に生じる電圧Vの電圧値V1が変化する。
【0054】
処理部9は、電流源3に新たな電流値Isを設定した後、上記の所定の時間が経過する直前に、電圧検出部4から入力した電圧信号Vvを瞬時値データにA/D変換すると共に、この瞬時値データをデジタルフィルタで処理(フィルタリング処理)して、パラメータkを用いて補償された瞬時値データを算出する。また、処理部9は、電圧測定処理を実行して、この補償された電圧信号Vvの瞬時値データに基づいて、現在の電圧Vの電圧値V1を測定する。また、処理部9は、測定した電圧値V1と目標抵抗値Rtgとに基づいて、電流源3に対して設定する次の新たな電流値Isを算出する。つまり、処理部9は、測定された電圧値V1に基づいて新たな電流値Isを算出して電流源3に対して設定するというフィードバック制御を、測定装置51側の回路要素の値(プルアップ抵抗54の抵抗値Rpu)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインで実行する。
【0055】
本例のように、電流源3に対して設定する電流値Isを初期値のゼロからステップ的に変化させる抵抗発生処理では、電流源3が実際に吸い込む電流Iの電流値I1が初期値のゼロから徐々に増加することから、この電流Iによって測定装置51側のプルアップ抵抗54で生じる電圧降下は、ゼロボルトから徐々に増加する。これにより、処理部9が、電圧測定処理において測定する電圧値V1は電圧値Vddから徐々に減少する。したがって、抵抗発生処理で発生させている抵抗の抵抗値Rは、目標抵抗値Rtgよりも大きな値から、目標抵抗値Rtgに向けて徐々に低下するように変化する。
【0056】
この新たな電流値Isは、上記したように、測定装置51側の回路要素の値(プルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび容量成分57の容量値Cpd)を考慮して決定したパラメータkが反映された電圧信号Vvの瞬時値データに基づいて算出されたものであることから、抵抗発生装置1が発生する抵抗の抵抗値Rを、リンギングの少ない状態で、かつ高速に目標抵抗値Rtgに収束させ得るものとなっている。
【0057】
したがって、抵抗発生装置1は、電流源3に対する制御処理を実行して、吸い込む電流Iの電流値Isをステップ的に変化させる処理を、上記したように電流値Isを算出しつつ実行することで、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、リンギングの少ない状態で、かつ高速に(短時間に)発生させる。また、処理部9は、現在のステップで新たに測定した電圧値V1と直前のステップで測定した電圧値V1との差分が予め規定された誤差範囲内に収まったときに、現在発生させている抵抗の抵抗値Rが目標抵抗値Rtgに収束したと判別する。また、処理部9は、現在発生させている抵抗の抵抗値Rが目標抵抗値Rtgに収束したときには、出力処理を実行して、出力部10にその旨(発生させている抵抗が目標抵抗値Rtgに収束したこと)を表示させる。これにより、抵抗発生装置1の使用者は、測定装置51の校正を開始することが可能となる。
【0058】
このように、この抵抗発生装置1では、処理部9が、測定装置51側の回路要素の値(プルアップ抵抗54の抵抗値Rpu)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインでフィードバック制御する。具体的には、処理部9は、抵抗値Rpuが大きいほどパラメータkが小さくなることから、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御する。
【0059】
この場合、プルアップ抵抗54の抵抗値Rpuが大きいほど、電流源3で吸い込む電流Iの電流値I1の変化分によるプルアップ抵抗54で生じる電圧降下の変化分が大きくなる(つまり、発生させる抵抗の抵抗値Rの変化分が大きくなる)。したがって、この抵抗発生装置1によれば、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、電流値I1の変化分が大きくなり過ぎないようにするフィードバック制御を実行することができるため、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、安定した状態で(リンギングの少ない状態)で、かつ高速に(短時間に)発生させることができる。
【0060】
また、この抵抗発生装置1では、処理部9が、測定装置51側の回路要素の値(容量成分57の容量値Cpd)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインでフィードバック制御する。具体的には、処理部9は、容量値Cpdが大きいほどパラメータkが小さくなることから、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御する。
【0061】
この場合、容量成分57の容量値Cpdが大きいほど、処理部9からの電流源3への電流値I1の設定のタイミングを基準(始期)としたときのプルアップ抵抗54で生じる電圧降下の変化の遅れが大きくなる(つまり、発生させる抵抗の抵抗値Rの変化の遅れが大きくなる)。したがって、この抵抗発生装置1によれば、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、抵抗値Rの変化の遅れに起因したリンギングの発生を回避しつつフィードバック制御を実行することができるため、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、安定した状態で、かつ高速に発生させることができる。
【0062】
また、この抵抗発生装置1では、処理部9が、測定装置51側の回路要素の値(プルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび容量成分57の容量値Cpd)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインでフィードバック制御する。具体的には、処理部9は、抵抗値Rpuが大きいほどパラメータkが小さくなることから、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御すると共に、容量値Cpdが大きいほどパラメータkが小さくなることから、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御する。したがって、この抵抗発生装置1によれば、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、電流値I1の変化分が大きくなり過ぎないようにするフィードバック制御を実行したり、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、抵抗値Rの変化の遅れに起因したリンギングの発生を回避しつつフィードバック制御を実行したりすることができるため、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、一層安定した状態で、かつ高速に発生させることができる。
【0063】
また、上記の例では、抵抗発生処理において、電流源3に対して設定する電流値Isの初期値をゼロアンペアとしているが、この構成に限定されない。例えば、処理部9は、値測定処理20において、プルアップ抵抗54の抵抗値Rpuと直流定電圧Vddの電圧値Vddとを測定している。また、目標抵抗値Rtgの抵抗を発生させている抵抗発生装置1は、プルアップ抵抗54と直列接続された状態で、直流定電圧Vddが印加される。このため、抵抗発生装置1が目標抵抗値Rtgの抵抗を発生させているときに、電流源3が吸い込む電流Iの電流値I1は、Vdd/(Rpu+Rtg)と算出される。したがって、処理部9は、抵抗発生処理において、電流源3に対して設定する電流値Isの初期値として、値測定処理20において測定したプルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび直流定電圧Vddの電圧値Vddに基づいて算出される電流値(Vdd/(Rpu+Rtg))を使用することもできる。
【0064】
この構成を採用した抵抗発生装置1によれば、電流源3に対して設定する電流値Isの初期値をゼロアンペアとする構成と比較して、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗をさらに短時間に発生させることができる。
【0065】
また、上記の抵抗発生装置1では、現在発生させている抵抗の抵抗値Rを処理部9が算出せずに、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を発生させる構成を採用しているが、この構成に限定されない。例えば、処理部9が、抵抗発生処理において、現在発生させている抵抗の抵抗値Rを算出すると共に、算出した抵抗値Rと目標抵抗値Rtgとの差分に基づいて、電流源3に対して設定する次の新たな電流値Isを算出することで、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を発生させるという構成を採用することもできる。この構成の抵抗発生装置1では、処理部9は、抵抗発生処理において、電流源3が吸い込んでいる電流Iの電流値I1を電流検出部6から出力される電圧信号Viに基づいて測定すると共に、この測定した電流値I1と電圧値V1とに基づいて、接続端子2a,2b間に現在発生させている抵抗の現在の抵抗値R(=V1/I1)を算出する。また、処理部9は、算出した現在の抵抗値Rと目標抵抗値Rtgとの差分に基づいて、電流源3に対して設定する次の新たな電流値Isを算出する。なお、他の動作については、上記した抵抗発生装置1と同じであるため、説明を省略する。
【0066】
この構成の抵抗発生装置1においても、処理部9が、測定装置51側の回路要素の値(プルアップ抵抗54の抵抗値Rpu)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインでフィードバック制御する。具体的には、処理部9は、抵抗値Rpuが大きいほどパラメータkが小さくなることから、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御する。
【0067】
したがって、この抵抗発生装置1によっても、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、電流値I1の変化分が大きくなり過ぎないようにするフィードバック制御を実行することができるため、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、安定した状態で(リンギングの少ない状態)で、かつ高速に(短時間に)発生させることができる。
【0068】
また、この抵抗発生装置1では、処理部9が、測定装置51側の回路要素の値(容量成分57の容量値Cpd)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインでフィードバック制御する。具体的には、処理部9は、容量値Cpdが大きいほどパラメータkが小さくなることから、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御する。
【0069】
したがって、この抵抗発生装置1によっても、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、抵抗値Rの変化の遅れに起因したリンギングの発生を回避しつつフィードバック制御を実行することができるため、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、安定した状態で、かつ高速に発生させることができる。
【0070】
また、この抵抗発生装置1においても、処理部9が、測定装置51側の回路要素の値(プルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび容量成分57の容量値Cpd)を考慮して決定したパラメータkに応じたゲインでフィードバック制御する。具体的には、処理部9は、抵抗値Rpuが大きいほどパラメータkが小さくなることから、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御すると共に、容量値Cpdが大きいほどパラメータkが小さくなることから、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくしてフィードバック制御する。したがって、この抵抗発生装置1によれば、抵抗値Rpuが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、電流値I1の変化分が大きくなり過ぎないようにするフィードバック制御を実行したり、容量値Cpdが大きいほどフィードバックループのゲインを小さくして、抵抗値Rの変化の遅れに起因したリンギングの発生を回避しつつフィードバック制御を実行したりすることができるため、設定された目標抵抗値Rtgの抵抗を、一層安定した状態で、かつ高速に発生させることができる。
【0071】
また、処理部9が、現在発生させている抵抗の抵抗値Rを抵抗発生処理において算出する構成の抵抗発生装置1においても、抵抗発生処理において、電流源3に対して設定する電流値Isの初期値について、ゼロアンペアとすることもできるし、設定された目標抵抗値Rtgと、値測定処理20において測定したプルアップ抵抗54の抵抗値Rpuおよび直流定電圧Vddの電圧値Vddとに基づいて算出される電流値(Vdd/(Rpu+Rtg))とすることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 抵抗発生装置
3 電流源
4 電圧検出部
6 電流検出部
9 処理部
51 測定装置
52a,52b 測定端子
54 プルアップ抵抗
55 直流電源
I 測定電流
I1 電流値
Rtg 目標抵抗値
V1 端子間電圧
Vdd 直流定電圧