(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】欠陥検査装置および欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220405BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20220405BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2251
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2018171609
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野島 和弘
(72)【発明者】
【氏名】手塚 知秀
(72)【発明者】
【氏名】大西 篤志
(72)【発明者】
【氏名】山田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】濱口 晶
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-023056(JP,A)
【文献】特開2008-004840(JP,A)
【文献】特開2013-225618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/2251
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ上に展開されたパターンを示す電子情報を取得する取得部と、
設計データが示す図形のうち、前記電子情報に対応する部分をクリップして設計情報を得るクリップ部と、
前記電子情報が示す各パターンに第1の番号を付与し、前記設計情報が示す各パターンに第2の番号を付与する第1の付与部と、
前記第1の番号と、前記第2の番号との対応関係を示す関係情報を作成するマッチング部と、
前記関係情報と、前記設計情報が示す各パターンに対応するノード情報とに基づいて、前記電子情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する照合部と、
を備えた欠陥検査装置。
【請求項2】
前記取得部により取得された前記電子情報をCAD(Computer Aided Design)データに変換した変換情報を得る変換部を、さらに備え、
前記第1の付与部は、前記変換情報が示す各パターンに前記第1の番号を付与し、
前記照合部は、前記関係情報と、前記ノード情報とに基づいて、前記変換情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記マッチング部により作成された前記関係情報の内容に基づいて、前記変換情報の欠陥種を分類する分類部を、さらに備え、
前記照合部は、前記分類部により分類された前記欠陥種に従って、前記変換情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記設計情報が示す各パターンに前記ノード情報としてノード番号を付与する第2の付与部を、さらに備え、
前記照合部は、前記関係情報と、前記ノード番号とに基づいて、前記変換情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する請求項3に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記照合部は、前記分類部によって前記変換情報の前記欠陥種が短絡状態を示す場合、前記関係情報から前記変換情報で短絡状態にあるパターンに対応する前記設計情報でのパターンを特定し、特定した前記設計情報でのパターンと、前記ノード番号との対応関係から、前記変換情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する請求項4に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記設計データが示す図形において、前記変換情報に対応する部分を当該変換情報で置換したデータから、当該変換情報を含む所定範囲の部分を置換情報として抽出する置換部と、
前記ウェハのスケマティックデータと、前記設計データの一部または全部とのLVS(Layout Versus Schematic)を実行する実行部と、
をさらに備え、
前記照合部は、前記分類部によって前記変換情報の前記欠陥種がオープン状態を示す場合、前記実行部によって、前記置換部により抽出された前記置換情報と、前記スケマティックデータとで実行された前記LVSの結果から、前記変換情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する請求項4に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記実行部は、予め、前記スケマティックデータと、前記設計データの全部との前記LVSを実行することにより、前記設計データが示す各パターン対応する前記ノード番号を生成し、
前記第2の付与部は、前記実行部により生成された前記ノード番号を、前記設計情報が示す各パターンに付与する請求項6に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
ウェハ上に展開されたパターンを示す電子情報を取得する取得部と、
前記電子情報が示す各パターンに第1の番号を付与し、設計データが示す図形のうち、前記電子情報に対応する部分である設計情報が示す各パターンに第2の番号を付与する付与部と、
前記第1の番号と、前記第2の番号との対応関係を示す関係情報を作成するマッチング部と、
前記マッチング部により作成された前記関係情報の内容に基づいて、前記電子情報の欠陥種を分類する分類部を、
を備えた欠陥検査装置。
【請求項9】
ウェハ上に展開されたパターンを示す電子情報を取得する取得部と、
前記電子情報が示す各パターンに第1の番号を付与し、設計データが示す図形のうち、前記電子情報に対応する部分である設計情報が示す各パターンに第2の番号を付与する付与部と、
前記第1の番号と、前記第2の番号との対応関係を示す関係情報を作成するマッチング部と、
前記関係情報と、前記設計情報が示す各パターンに対応するノード番号とに基づいて、前記電子情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する照合部と、
を備えた欠陥検査装置。
【請求項10】
ウェハ上に展開されたパターンを示す電子情報を取得する取得ステップと、
設計データが示す図形のうち、前記電子情報に対応する部分をクリップして設計情報を得るクリップステップと、
前記電子情報が示す各パターンに第1の番号を付与し、前記設計情報が示す各パターンに第2の番号を付与する付与ステップと、
前記第1の番号と、前記第2の番号との対応関係を示す関係情報を作成するマッチングステップと、
前記関係情報と、前記設計情報が示す各パターンに対応するノード情報とに基づいて、前記電子情報が示すパターンが前記ウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する照合ステップと、
を有する欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程中における欠陥検査の手法として、従来、工程中にSEM(Scanning Electron Microscope)画像等を取得し、それを作業者が目視検査することが行われている。
【0003】
一方、欠陥の電気的な影響を検査するためには、欠陥の発生箇所および種類を判別し、半導体回路上のどこで不良となっているかを照合することがが必要であり、そのために多大な時間が必要とされる。
【0004】
また、CAD(Computer-Aided Design)による設計パターン(設計)に基づく画像データと、取得したSEM画像との差分を取ることによって、欠陥を発見するDie To Databaseという手法も知られている。
【0005】
しかしながら、ウェハ上に展開されたSEM画像のパターンは、例えば、パターン形成の際の露光条件に大きく左右されるため、前記設計パターンと完全に一致させることは困難であり、そのため、真に問題となる欠陥部分のみを差分として精度よく抽出することも困難となっている。
【0006】
さらに、取得したSEM画像に基づいてCADデータを作成し、これを回路データと照合する手法も考えられる。通常、SEM画像で取得できる領域の範囲は限定的であるため、前記SEM画像に含まれない領域の配線接続状況により欠陥の致命度は異なってくる。そのため、チップ全体を対象に照合することが必要となり、多大な時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施形態は、半導体の製造における欠陥検査において検査時間を短縮することができる欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る欠陥検査装置は、取得部と、クリップ部と、第1の付与部と、マッチング部と、照合部と、を備える。取得部は、ウェハ上に展開されたパターンを示す電子情報を取得する。クリップ部は、設計データが示す図形のうち、電子情報に対応する部分をクリップして設計情報を得る。第1の付与部は、電子情報が示す各パターンに第1の番号を付与し、設計情報が示す各パターンに第2の番号を付与する。マッチング部は、第1の番号と、第2の番号との対応関係を示す関係情報を作成する。照合部は、関係情報と、設計情報が示す各パターンに対応するノード情報とに基づいて、電子情報が示すパターンがウェハの回路上の欠陥を含むか否かを照合する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、SEM画像とCAD設計データに基づく画像との差分について説明するための図である。
【
図2】
図2は、チップ全体に対して行うLVS(照合動作)について説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るSEM装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態における制御コントローラのハードウェアの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態における制御コントローラの機能ブロックの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態におけるSEM画像をCADに変換する例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態における設計CADにおいてSEM画像に置換する例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るSEM装置のLVSの一般動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るSEM装置におけるノード番号を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態における欠陥検査処理を含む全体処理のフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係るSEM装置の欠陥検査処理のフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態に係るSEM装置の図形番号を付与する動作を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るSEM装置における欠陥種を説明するための図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るSEM装置のマッチングを説明するための図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係るSEM装置のマッチングを説明するための図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係るSEM装置のマッチングを説明するための図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係るSEM装置の欠陥種分類のフローチャートである。
【
図18】
図18は、実施形態に係るSEM装置の回路照合のフローチャートである。
【
図19】
図19は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
【
図23】
図23は、実施形態の変形例に係るSEM装置における欠陥種を説明するための図である。
【
図24】
図24は、実施形態の変形例に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係るSEM装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態は一例であり、本発明がこの実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、SEM画像とCAD設計データに基づく画像との差分について説明するための図である。
図1を参照しながら、SEM画像と設計CADとの差分に含まれるエラーについて説明する。
【0013】
図1(a)は、各種半導体部品が実装されたウェハにおけるチップの回路上の欠陥を検査するために、SEM装置において電子源から当該ウェハへ向けて電子線を照射させて、当該ウェハから放出された二次電子を検出することにより得られたSEM画像500を示す。なお、
図1(a)に示す画像は実際のSEM画像を模式的に示したものであり、ここでは便宜的にSEM画像と称するものとする。
図1(a)の点線部に示すように、SEM画像500には、回路上の欠陥が含まれている。
【0014】
また、SEM画像500に対応するCADにより設計されたデータに基づく画像(設計CAD510と称するものとする)を、
図1(b)に示す。理論上は、
図1(a)に示すSEM画像500と、
図1(b)に示す設計CAD510との差分を抽出することによって、欠陥部分を示す画像のみが抽出される。ただし、上述したように、SEM画像が示すウェハのパターンは、パターン形成の際の露光条件に大きく左右されるため、実際には、
図1(c)に示す差分画像550のように、欠陥部分とは関係のない部分まで差分(エラー)として抽出される。このように、設計パターン(設計CAD)と、SEM画像が示すウェハのパターンとを欠陥部分以外で完全に一致させることは困難であるため、欠陥部分のみを差分として精度よく抽出することは困難である。
【0015】
図2は、チップ全体に対して行う欠陥検査の一手法であるLVS(Layout Versus Schematic)について説明するための図である。
図2の例を参照しながら、SEM画像の局所的なパターンに欠陥があり、チップ全体でLVSを行う場合について説明する。
【0016】
LVSは、ウェハチップの回路を設計したスケマティックデータと、パターンを作成するために作成された設計パターン(設計CAD)とについて回路上の不一致がないかどうかを照合する動作またはツールをいう。本実施形態の説明では、上述の照合動作を示すものとしてLVSという文言を用いるものとする。
【0017】
図2の配線パターンにおいて、取得されたSEM画像501は、局所的にショート(短絡)している配線(白地パターン)の状態を示している。このSEM画像501では、上側の配線601と下側の配線602とがSEM画像501の中央部でショートしているように見える。しかしながら、
図2の左側に示すように、SEM画像501の視野外の前記2つの配線同士が配線603を介して連続的に形成されている可能性がある。あるいはまた、
図2の右側に示すように、SEM画像501の上側の配線と同じ層の配線611と、SEM画像501の下側の配線と同じ層の配線612とは、
図2の左側について説明した例のように、配線同士が連続的に形成されていないが、例えば、それぞれの配線がビア611aおよびビア612aを介して、配線621を介して接続されている可能性もある。
【0018】
このように、チップ全体の設計パターン(設計CAD)のうち、SEM画像501に対応する部分を当該SEM画像501に置換した置換画像と、当該チップ全体の回路の接続状態を規定するスケマティックデータとで、LVSを実行することにより、SEM画像501上の欠陥(ショート)が、実際に致命的な欠陥であるか否かを判定することができる。
図2の場合、SEM画像501上の上側と下側の配線同士は、連続的に形成されているか、もしくは下層の配線等の別の配線を介して接続されている。これらはいずれも短絡されていることと同等であり、SEM画像501上から判断するとショートの状態であっても、動作的に問題はなく、チップ全体として致命的な欠陥ではないものとして判定される。
【0019】
しかしながら、上述のようにチップ全体についてLVSを実行するのは多大な時間を必要とするため、SEM画像毎にLVSを実行するのは、欠陥検査としては実際的ではない。以下、本実施形態では、半導体の製造における欠陥検査において検査時間を短縮することができるSEM装置の構成および動作について説明する。
【0020】
図3は、実施形態に係るSEM装置の全体構成の一例を示す図である。
図3を参照しながら、本実施形態に係るSEM装置1の全体構成について説明する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態に係るSEM装置1は、電子銃鏡筒11と、ステージ21と、検出器23と、制御コントローラ31と、信号処理回路32と、モニタ33と、画像格納部34と、カラム制御回路35と、ステージ駆動制御回路36と、座標格納部37と、レシピファイル格納部38と、を備えている。
【0022】
電子銃鏡筒11は、試料(例えば、ステージ21上のウェハ22)に対して電子線EBを照射する装置である。電子銃鏡筒11は、その内部に、電子源12と、磁界レンズ13と、走査コイル14と、を含む。
【0023】
電子源12は、タングステン等で形成されたフィラメントの加熱によって電子線EBを照射する装置である。
【0024】
磁界レンズ13は、コイル状に巻かれた電線と、当該電線の周囲を囲むヨークとを含んで構成され、電線に流れる電流によって回転対象な磁力線を生成し、電子源12から照射された電子線EBの太さを調整するレンズである。
【0025】
走査コイル14は、電子源12により照射され、磁界レンズ13により太さが調整された電子線EBを、試料上を走査させるためのコイルである。
【0026】
ステージ21は、電子線EBの照射対象となるウェハ22等の試料を載置するための台である。ステージ21は、平面内の移動(X軸、Y軸)、および縦方向の移動(Z軸)のほか、例えば、載置面の傾斜、および載置面の回転等の動きをする。
【0027】
検出器23は、電子源12からの電子線EBがウェハ22に照射することにより、ウェハ22から放出される二次電子SEを検出する装置である。
【0028】
制御コントローラ31は、SEM装置1の全体の制御を司るコントローラである。具体的には、制御コントローラ31は、信号処理回路32、モニタ33、および画像格納部34を制御すると共に、信号処理回路32により生成されたSEM画像(電子画像の一例)を用いた欠陥検査処理を実行する。
【0029】
信号処理回路32は、制御コントローラ31の制御に従って、検出器23により検出された二次電子の量を検出することによって1枚の画像(SEM画像)を生成する回路である。信号処理回路32により生成されたSEM画像は、画像格納部34に記憶される。このようなSEM画像は、例えば、すべての画像でウェハチップ全体を網羅するように生成されるものとしてもよく、事前に光学検査装置を用いてパターン異常個所を特定しておき、その座標を含む領域について生成されるものとしてもよい。または、主要な検出箇所(例えば、従来の経験、または前の工程から把握される回路上の欠陥が発生しやすい箇所、またはパターンの密度が高い箇所等)を予め設定しておき、当該検出箇所について生成されるものとしてもよい。
【0030】
モニタ33は、信号処理回路32により生成されたSEM画像等を表示するCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイの表示装置である。
【0031】
画像格納部34は、信号処理回路32により生成されたSEM画像を記憶(格納)する記憶装置である。画像格納部34は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリまたは光ディスク等の電気的、磁気的または光学的に記憶可能な記憶装置である。なお、画像格納部34は、SEM画像だけでなく、例えば、チップの設計パターン(設計CAD)のデータ、および、スケマティックデータ等も記憶しているものとしてもよい。また、SEM画像、設計パターン(設計CAD)およびスケマティックデータのうち少なくともいずれかが、SEM装置1外の外部装置に記憶されるものとしてもよい。
【0032】
カラム制御回路35は、制御コントローラ31の制御に従って、電子銃鏡筒11の動作を制御する回路である。例えば、カラム制御回路35は、電子源12による電子線の照査動作、磁界レンズ13による電子線の調整動作、および走査コイル14による電子線の走査動作等を制御する。
【0033】
ステージ駆動制御回路36は、制御コントローラ31の制御に従って、ウェハ22が載置されているステージ21の動作を制御する回路である。例えば、ステージ駆動制御回路36は、ステージ21の平面内の移動(X軸、Y軸)、縦方向の移動(Z軸)、載置面の傾斜、および載置面の回転等の動きを制御する。
【0034】
座標格納部37は、電子線EBを照射するステージ21(ウェハ22)上の座標、またはステージ21を駆動する座標等を規定する座標データを記憶する記憶装置である。座標格納部37は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリまたは光ディスク等の電気的、磁気的または光学的に記憶可能な記憶装置である。
【0035】
レシピファイル格納部38は、電子線EBをステージ21に照射してSEM画像を得るための計測点および測定条件等を規定するレシピファイルを格納する記憶装置である。レシピファイル格納部38は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリまたは光ディスク等の電気的、磁気的または光学的に記憶可能な記憶装置である。
【0036】
なお、
図3に示す例では、画像格納部34、座標格納部37およびレシピファイル格納部38を、便宜上別々の記憶装置として図示しているが、これに限定されるものではなく、1つの記憶装置で構成されるものとしてもよい。また、画像格納部34、座標格納部37およびレシピファイル格納部38のうち少なくともいずれかが、SEM装置1外の外部装置に備えられているものとしてもよい。
【0037】
また、
図3に示したSEM装置1の構成は一例を示すものであり、例えば、
図3に示した構成要素以外の構成要素を含むものとしてもよい。
【0038】
図4は、実施形態における制御コントローラのハードウェアの構成例を示す図である。
図4を参照しながら、本実施形態における制御コントローラ31のハードウェア構成について説明する。
【0039】
図4に示すように、制御コントローラ31は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、入出力I/F104と、制御回路I/F105と、を備え、各装置はバスによって互いに通信可能に接続されている。
【0040】
CPU101は、制御コントローラ31全体、ひいてはSEM装置1全体の動作を制御する演算装置である。ROM102は、CPU101が各機能を制御するために実行するファームウェア等のプログラムを記憶する不揮発性記憶装置である。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。
【0041】
入出力I/F104は、制御コントローラ31外の記憶装置(画像格納部34、座標格納部37およびレシピファイル格納部38)との間でデータの入出力を行うためのインターフェースである。
【0042】
制御回路I/F105は、信号処理回路32、カラム制御回路35およびステージ駆動制御回路36との間で、動作指令等を含む制御データのやり取りを行うためのインターフェースである。
【0043】
なお、
図4に示した制御コントローラ31のハードウェア構成は一例を示すものであり、
図4に示した構成要素以外の構成要素を含むものとしてもよい。例えば、SEM装置1が外部装置との間でデータ通信を行う場合、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)/IP等の通信プロトコルに対応したネットワークI/Fを備えるものとしてもよい。
【0044】
図5は、実施形態における制御コントローラの機能ブロックの構成例を示す図である。
図6は、実施形態におけるSEM画像をCADに変換する例を示す図である。
図7は、実施形態における設計CADにおいてSEM画像に置換する例を示す図である。
図8は、実施形態に係るSEM装置のLVSの一般動作を説明するための図である。
図9は、実施形態に係るSEM装置におけるノード番号を説明するための図である。
図5~
図9を参照しながら、本実施形態に係るSEM装置1の制御コントローラ31の機能ブロックの構成について説明する。
【0045】
図5に示すように、本実施形態における制御コントローラ31は、第1の取得部201(取得部)と、第2の取得部202と、クリップ部203と、変換部204と、置換部205と、LVS実行部206(実行部)と、第1の付与部207(付与部)と、マッチング部208と、分類部209と、第2の付与部210と、回路照合部211と、を有する。
【0046】
第1の取得部201は、外部の記憶部220に記憶されている信号処理回路32により生成されたウェハ上の局所的なパターンを示すSEM画像を取得する機能部である。第1の取得部201は、
図4に示すCPU101によるプログラムの実行、および、入出力I/F104によって実現される。また、記憶部220は、例えば、
図3に示す画像格納部34によって実現される。なお、記憶部220は、SEM装置1外の外部装置により備えられているものとしてもよく、この場合、第1の取得部201は、上述のネットワークI/Fを介して、外部装置からSEM画像を取得するものとすればよい。
【0047】
第2の取得部202は、外部の記憶部220に記憶されている設計CADデータ(設計データの一例)を取得する機能部である。第2の取得部202は、
図4に示すCPU101によるプログラムの実行、および、入出力I/F104によって実現される。
【0048】
クリップ部203は、第2の取得部202により取得されたチップ全体の設計CADデータが示す図形のうち、第1の取得部201により取得されたSEM画像に対応する部分をクリップする機能部である。以下、クリップ部203によりクリップされたSEM画像に対応する設計CADデータが示す図形の部分を、単に「設計CAD」(設計情報の一例)と称する場合がある。
【0049】
変換部204は、第1の取得部201により取得されたSEM画像をCADデータに変換する機能部である。例えば、変換部204は、
図6(a)に示すSEM画像502を、所定の輝度値を境界として二値化して、
図6(b)に示す二値化画像552を生成する。そして、変換部204は、二値化画像552から、
図6(c)に示すCADデータ(欠陥CAD522)に変換する。なお、以下では、変換部204によりSEM画像から変換されたCADデータを、「変換CAD」(変換情報の一例)と称する場合がある。
【0050】
置換部205は、第2の取得部202により取得されたチップ全体の設計CADデータが示す図形において、変換部204により変換して得られた変換CADに対応する部分を当該変換CADで置換する機能部である。以下、置換部205により、チップ全体の設計CADデータが示す図形において変換CADに対応する部分を当該変換CADで置換されることにより得られたCADデータを、「置換CAD」と称する場合がある。例えば、置換部205は、設計CADデータが示す図形において、
図7(a)に示す欠陥CAD522(変換CAD)に対応する部分を当該欠陥CAD522で置換することにより、
図7(b)に示す置換CAD532を得る。
【0051】
LVS実行部206は、ウェハチップの回路を設計したスケマティックデータと、CADデータ(設計CADデータ等)とを、回路上で不一致がないかどうかを照合するLVSを実行する機能部である。例えば、LVS実行部206は、
図8に示すように、LVSの対象となるCADデータとして置換CAD532、置換CAD532の下層のCADデータである下層CAD512a、および、置換CAD532の上層のCADデータである上層CAD512bを入力し、これらのCADデータとスケマティックデータとでLVSを実行する。
【0052】
このように、LVS実行部206により、スケマティックデータと、チップ全体に対応する設計CADデータとのLVSを実行しておくことによって、設計CADデータが示す各配線パターンが互いに導通しているか否かを示す情報が付与されたAGF(Added Node GDS File)が得られる。AGFにおいては、設計CADデータ上の複数の配線パターンがチップ上のいずれかの場所で導通(短絡)している場合、同一の番号(ノード番号)(ノード情報の一例)で対応付けられている。AGFによって、設計CADデータの各配線パターンの導通(短絡)状態が把握されるので、例えば、
図9に示すように、設計CADデータからクリップされた設計CAD513が示す各配線パターンに対して、導通(短絡)した配線パターンであることを示すノード番号(
図9では、A1~A6)を付与することが可能となる。
【0053】
第1の付与部207は、後述する変換CADの欠陥種を判定するために、変換部204により得られた変換CADの各配線パターン、およびクリップ部203により得られた設計CADの各配線パターンに、それぞれ任意の順序で番号(図形番号)(第1の番号、第2の番号)を付与する機能部である。
【0054】
マッチング部208は、変換CADの配線パターンと、設計CADの配線パターンとを、付与された図形番号を用いて互いに対応付け(マッチング)を行う機能部である。
【0055】
分類部209は、マッチング部208によるマッチングの結果に基づいて、変換CADの配線パターンの欠陥の種別(欠陥種)を分類(判定)する機能部である。どのような欠陥種に分類されるかについての詳細は後述する。
【0056】
第2の付与部210は、LVS実行部206により得られたAGFに基づいて、設計CADの各配線パターンにノード番号を付与する機能部である。ここで、「設計CADの各配線パターンにノード番号を付与する」とは、設計CADの各配線パターンがいずれかのノード番号に対応付けられた状態にすることを示す。例えば、LVSの結果、各配線パターンにノード番号が対応付けられたチップ全体の設計CADデータから、変換CADに対応する部分をクリップすることによって、ノード番号が対応付けられた設計CADが得られる場合の動作等をも含む概念であるものとする。
【0057】
回路照合部211は、マッチング部208により変換CADと設計CADとのマッチングの結果、および、第2の付与部210により設計CADの付与されたノード番号を用いて、変換CADが示す配線パターンについて回路上致命的な欠陥が存在するか否かを判定する機能部である。回路照合部211の具体的な動作については、後述する。
【0058】
クリップ部203、変換部204、置換部205、LVS実行部206、第1の付与部207、マッチング部208、分類部209、第2の付与部210および回路照合部211は、ソフトウェアであるプログラムが
図4に示すCPU101により実行されることによって実現される。なお、上述の各機能部の一部または全部は、プログラムの実行ではなく、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路によって実現されるものとしてもよい。
【0059】
なお、
図5に示す制御コントローラ31の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図5に示す制御コントローラ31で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図5に示す制御コントローラ31で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0060】
図10は、実施形態における欠陥検査処理を含む全体処理のフローチャートである。
図10を参照しながら、本実施形態に係るSEM装置1による欠陥検査処理を含む半導体の製造工程の全体処理の概要について説明する。
【0061】
(ステップS11)
半導体の製造工程のうち、検査工程前の前工程(プロセスA)が行われる。プロセスAでは、例えば、ウェハの洗浄、酸化、拡散および成膜が行われた後、リソグラフィによって回路パターン等を形成する。そして、ステップS12へ移行する。
【0062】
(ステップS12)
回路パターン(配線パターン)が形成されたウェハに対して検査・計測を実施する検査工程が行われる。検査工程では、例えば、ウェハ上に形成された回路パターンに対し、隣接する同じパターンから得られる光学像またはSEM画像の差分像から異常パターンを検出する欠陥検査、ならびに、回路パターンの線幅および穴径の測定、ウェハの膜厚の計測からプロセス異常を検出すること等が行われる。また、検査工程において、上述の電子銃鏡筒11、検出器23および信号処理回路32によって、ウェハ上の対象とする部分でのSEM画像を生成され、記憶部220に記憶しておくものとしてもよい。また、本ステップにおいて、LVS実行部206は、予め、スケマティックデータと、チップ全体に対応する設計CADデータとのLVSを実行しておき、AGFを得ておくものとしてもよい。そして、ステップS13へ移行する。
【0063】
(ステップS13)
ウェハ上に形成された回路パターンが設計通りの接続関係となっているかどうかの回路上の欠陥の有無を検査する欠陥レビュー工程が行われる。欠陥レビュー工程は、本実施形態に係るSEM装置1による欠陥検査処理に対応する。欠陥検査処理の詳細は後述する。そして。ステップS14へ移行する。
【0064】
(ステップS14)
欠陥レビュー工程後の後工程(プロセスB)が行われる。プロセスBでは、例えば、ウェハ上に形成された集積回路等を切削してチップ化するダイシング、ならびに、ダイシングにより切削された集積回路を搭載したチップの保護および周辺回路との接続を容易にする処理等を含むパッケージング等が行われる。このような後工程が終了して、半導体の製造工程が終了する。
【0065】
なお、上述の各ステップにおける処理は例示であり、その他の処理または工程が含まれ、複数回繰り返し処理されることがあるのは言うまでもない。
【0066】
図11は、実施形態に係るSEM装置の欠陥検査処理のフローチャートである。
図12は、実施形態に係るSEM装置の図形番号を付与する動作を示す図である。
図13は、実施形態に係るSEM装置における欠陥種を説明するための図である。
図14は、実施形態に係るSEM装置のマッチングを説明するための図である。
図15は、実施形態に係るSEM装置のマッチングを説明するための図である。
図16は、実施形態に係るSEM装置のマッチングを説明するための図である。
図11~
図16を参照しながら、本実施形態に係るSEM装置1における欠陥検査処理の流れについて説明する。なお、LVS実行部206により、予め、スケマティックデータと、チップ全体に対応する設計CADデータとのLVSが実行され、AGFが得られているものとする。
【0067】
(ステップS131)
SEM装置1の第1の取得部201は、外部の記憶部220に記憶されている信号処理回路32により生成されたウェハ上の局所的なパターンを示すSEM画像を取得する。SEM装置1の第2の取得部202は、外部の記憶部220から、欠陥検査処理の対象となっているウェハについての設計CADデータを取得する。SEM装置1のクリップ部203は、第2の取得部202により取得されたチップ全体の設計CADデータが示す図形のうち、第1の取得部201により取得されたSEM画像に対応する部分をクリップして設計CADを得る。そして、ステップS132の終了を確認して、ステップS133へ移行する。
【0068】
(ステップS132)
ステップS131の処理と並行して、SEM装置1の変換部204は、第1の取得部201により取得されたSEM画像をCADデータに変換して変換CADを得る。そして、ステップS131の終了を確認して、ステップS133へ移行する。
【0069】
(ステップS133)
SEM装置1の第1の付与部207は、後述する変換CADの欠陥種を判定するために、変換部204により得られた変換CADの各配線パターン、およびクリップ部203により得られた設計CADの各配線パターンに、それぞれ任意の順序で番号(図形番号)を付与する。
【0070】
例えば、第1の付与部207は、
図12(a)に示すSEM画像504から変換された
図12(b)に示す変換CAD524の各配線パターンに対して、
図12(c)に示すように図形番号(D1~D7)を付与する。同様に、第1の付与部207は、変換CAD524に対応する設計CADである設計CAD514の各配線パターンに対して図形番号(G1~G8)を付与する。変換CADおよび設計CADそれぞれの配線パターンに番号を付与する際には、異なる配線パターンには異なる図形番号を付与するが、付与する図形番号の順序は任意でよい。例えば、
図12(c)に示す変換CAD524における図形番号「D3」で示される配線パターンは、
図12(d)に示す設計CAD514における図形番号「G4」で示される配線パターンに対応するものと判断されるが、図形番号が異なっていてもよい。
【0071】
ここで、先に、後述するステップS135の欠陥種分類で分類される欠陥種について、
図13を参照しながら説明する。
図13(a)に示す図形番号(G1~G8)が付与された設計CAD514は、上述の
図12(c)に示したものと同様である。
図13(b)に示す変換CAD524aは、図形番号D1~D9が付与されており、設計CAD514と比較して、図形番号D9で示される配線パターンが余分に存在しているので、「アイランド」の欠陥種であると分類される。
図13(c)に示す変換CAD524bは、図形番号D1~D7が付与されており、設計CAD514における図形番号G2の配線パターンと、図形番号G3の配線パターンとが短絡(ショート)したような図形番号D2の配線パターンを有するので、「ショート」の欠陥種であると分類される。
図13(d)に示す変換CAD524cは、図形番号D1~D7が付与されており、設計CAD514における図形番号G7の配線パターンが存在しないので、「ミッシング」の欠陥種であると分類される。
図13(e)に示す変換CAD524dは、図形番号D1~D9が付与されており、設計CAD514における図形番号G2の配線パターンが、図形番号D2の配線パターンと図形番号D8の配線パターンとに分離した状態を呈しているので、「オープン」の欠陥種であると分類される。なお、ステップS135の欠陥種分類で分類される欠陥種は、当該分類段階では、各欠陥種が実際の回路上の致命的な欠陥を示しているとは限られるものではなく、最終的にチップの回路上で致命的な欠陥の有無の判定は、ステップS136の回路照合で行われる。
【0072】
図11に戻り、説明を続ける。ステップS133の第1の付与部207による図形番号の付与後、ステップS134へ移行する。
【0073】
(ステップS134)
SEM装置1のマッチング部208は、変換CADの配線パターンと、設計CADの配線パターンとを、付与された図形番号を用いて互いに対応付け(マッチング)を行う。
【0074】
例えば、
図14(a)に示す図形番号G1~G8が付与された設計CAD514と、
図14(b)に示す図形番号D1~D8が付与された変換CAD524eとのマッチングを行う場合、マッチング部208は、設計CAD514と変換CAD524eとを重ね合わせて、重なり合う配線パターンの図形番号の対応付けが把握できるように、
図14(c)に示すようなマトリクスの情報(関係情報の一例)を作成する。
図14(c)に示すマトリクスでは、設計CADの図形番号と、同じ図形番号が変換CADで対応していることを示している。また、当該マトリクスにおいて、行に存在する「Σ」(「設計(G)」における「Σ」)は、変換CAD(SEM由来)の特定の図形番号の配線パターンに対応する配線パターンが、設計CAD(設計由来)上でいくつ存在するかを示している。一方、当該マトリクスにおいて、列に存在する「Σ」(「SEM(D)」における「Σ」)は、設計CAD(設計由来)の特定の図形番号の配線パターンに対応する配線パターンが、変換CAD(SEM由来)上でいくつ存在するかを示している。
図14(c)に示すマトリクスでは、行の「Σ」の値がすべて1であり、列の「Σ」の値もすべて1であるので、設計CADの配線パターンと、変換CADの配線パターンとが、互いに1対1に対応している。この場合の変換CADは、「欠陥なし」という欠陥種であると分類される。
【0075】
ただし、上述したように、第1の付与部207によって付与される図形番号は任意の順序で付与されるので、設計CADと変換CADとで同じ配線パターンに同じ図形番号が付与されるとは限らない。
図14に示す例では、設計CAD514の図形番号で特定される配線パターンと、変換CAD524eの図形番号で特定される配線パターンとでは、図形番号が互いに一致していない。しかしながら、マッチング部208により、設計CAD514および変換CAD524eについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスは、
図14(d)に示すマトリクスとなり、行の「Σ」の値がすべて1であり、列の「Σ」の値もすべて1であり、設計CADの配線パターンと、変換CADの配線パターンとが、互いに1対1に対応付けられる。したがって、欠陥種としては「欠陥なし」ということになる。
【0076】
なお、マッチング部208により作成される図形番号の対応付けの情報として、便宜上
図14に示すようなマトリクス形式の情報として示したが、これに限定されるものではなく、図形番号の対応付けが規定される情報であれば、どのような形式の情報であってもよい。
【0077】
また、
図15(b)に示すような図形番号(D1~D9)が付与された変換CAD524aは、
図15(a)に示す設計CAD514が配線パターンとして有さない、図形番号D9で特定される配線パターンを含んでいる。この場合、マッチング部208により、設計CAD514および変換CAD524aについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスは、
図15(d)に示すようなマトリクスとなる。
図15(d)に示すマトリクスは、変換CAD524aにおける図形番号D9の配線パターンに対応する配線パターンが設計CAD514には存在しないことを示しており、変換CAD524aの図形番号D9に対応する行の「Σ」の値が0となっている。この場合、次のステップS135では、変換CAD524aは、「アイランド」の欠陥種に分類されることになる。
【0078】
また、
図15(c)に示すような図形番号(D1~D7)が付与された変換CAD524cは、
図15(a)に示す設計CAD514における図形番号G7の配線パターンに対応する配線パターンを有さない。この場合、マッチング部208により、設計CAD514および変換CAD524cについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスは、
図15(e)に示すようなマトリクスとなる。
図15(e)に示すマトリクスは、設計CAD514における図形番号G7の配線パターンに対応する配線パターンが変換CAD524cには存在しないことを示しており、設計CAD514の図形番号G7に対応する列の「Σ」の値が0となっている。この場合、次のステップS135では、変換CAD524cは、「ミッシング」の欠陥種に分類されることになる。
【0079】
また、
図16(b)に示すような図形番号(D1~D7)が付与された変換CAD524bは、
図16(a)に示す設計CAD514における図形番号G2の配線パターンと、図形番号G3の配線パターンとが短絡(ショート)したような図形番号D2の配線パターンを含んでいる。この場合、マッチング部208により、設計CAD514および変換CAD524bについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスは、
図16(d)に示すようなマトリクスとなる。
図16(d)に示すマトリクスは、変換CAD524bにおける図形番号D2の配線パターンに対応する配線パターンとして、設計CAD514には図形番号G2およびG3で示される2つの配線パターンが存在することを示しており、変換CAD524bの図形番号D2に対応する行の「Σ」の値が2となっている。この場合、次のステップS135では、変換CAD524bは、「ショート」の欠陥種に分類されることになる。
【0080】
また、
図16(c)に示すような図形番号(D1~D9)が付与された変換CAD524dは、
図16(a)に示す設計CAD514における図形番号G2の配線パターンが、図形番号D2の配線パターンと図形番号D8の配線パターンとに分離した状態を呈している。この場合、マッチング部208により、設計CAD514および変換CAD524dについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスは、
図16(e)に示すようなマトリクスとなる。
図16(e)に示すマトリクスは、設計CAD514における図形番号G2の配線パターンに対応する配線パターンとして、変換CAD524dには図形番号D2およびD8で示される2つの配線パターンが存在することを示しており、設計CAD514の図形番号G2に対応する列の「Σ」の値が2となっている。この場合、次のステップS135では、変換CAD524bは、「オープン」の欠陥種に分類されることになる。
【0081】
図11に戻り、説明を続ける。ステップS134のマッチング部208によるマッチング後、ステップS135へ移行する。
【0082】
(ステップS135)
SEM装置1の分類部209は、マッチング部208によるマッチングの結果に基づいて、変換CADの配線パターンの欠陥の種別(欠陥種)を分類(判定)する。この分類部209による欠陥種の分類動作の詳細については後述する。
【0083】
(ステップS136)
SEM装置1の第2の付与部210は、LVS実行部206により得られたAGFに基づいて、設計CADの各配線パターンにノード番号を付与する。また、SEM装置1の回路照合部211は、マッチング部208により変換CADと設計CADとのマッチングの結果、および、第2の付与部210により設計CADの付与されたノード番号を用いて、変換CADが示す配線パターンについて回路上致命的な欠陥が存在するか否かを判定する。この第2の付与部210および回路照合部211による回路照合の動作の詳細については後述する。
【0084】
以上のようなステップS131~S136の流れで、SEM装置1における欠陥検査処理が実行される。
【0085】
図17は、実施形態に係るSEM装置の欠陥種分類のフローチャートである。
図17を参照しながら、本実施形態に係るSEM装置1における欠陥検査処理のうち欠陥種の分類動作(
図11のステップS135)の流れについて説明する。
【0086】
(ステップS1351)
SEM装置1の分類部209は、マッチング部208により作成された設計CADと変換CADとの図形番号の対応付けを規定するマトリクスにおいて、行の「Σ」および列の「Σ」について集計を行う。そして、ステップS1352へ移行する。
【0087】
(ステップS1352)
分類部209は、行の「Σ」および列の「Σ」の値がすべて1であるか否かを判定する。すべての「Σ」の値が1である場合(ステップS1352:Yes)、ステップ1353へ移行し、いずれかの「Σ」の値が1以外である場合(ステップS1352:No)、ステップS1354へ移行する。
【0088】
(ステップS1353)
分類部209は、図形番号の対応付けを規定するマトリクスにおいて、行の「Σ」および列の「Σ」の値がすべて1であると判定した場合、変換CADについて「欠陥なし」の欠陥種に分類する。そして、欠陥種の分類動作を終了する。
【0089】
(ステップS1354)
分類部209は、図形番号の対応付けを規定するマトリクスにおいて、いずれかの「Σ」の値が1以外であると判定した場合、さらに、いずれかの「Σ」の値に0が含まれる否かを判定する。いずれかの「Σ」の値に0が含まれる場合(ステップS1354:Yes)、ステップS1355へ移行し、0が含まれない場合(ステップS1354:No)、ステップS1358へ移行する。
【0090】
(ステップS1355)
分類部209は、さらに、値として0を含む「Σ」が、行の「Σ」(「設計(G)」における「Σ」)であるのか、列の「Σ」(「SEM(D)」における「Σ」)であるのか判定する。値として0を含む「Σ」が、行の「Σ」(「設計(G)」における「Σ」)である場合(ステップS1355:設計)、ステップS1356へ移行し、列の「Σ」(「SEM(D)」における「Σ」)である場合(ステップS1355:SEM)、ステップS1357へ移行する。
【0091】
(ステップS1356)
分類部209は、変換CADについて「アイランド」の欠陥種に分類する。例えば、上述の
図15(b)に示す変換CAD524aについて、マッチング部208により
図15(d)に示すようなマトリクスが作成されている場合、分類部209は、変換CAD524aについて「アイランド」の欠陥種に分類する。そして、欠陥種の分類動作を終了する。
【0092】
(ステップS1357)
分類部209は、変換CADについて「ミッシング」の欠陥種に分類する。例えば、上述の
図15(c)に示す変換CAD524cについて、マッチング部208により
図15(e)に示すようなマトリクスが作成されている場合、分類部209は、変換CAD524cについて「ミッシング」の欠陥種に分類する。そして、欠陥種の分類動作を終了する。
【0093】
(ステップS1358)
分類部209は、さらに、値が0ではなく、かつ1以外の値、すなわち2以上の「Σ」が、行の「Σ」(「設計(G)」における「Σ」)であるのか、列の「Σ」(「SEM(D)」における「Σ」)であるのか判定する。2以上の値を含む「Σ」が、行の「Σ」(「設計(G)」における「Σ」)である場合(ステップS1358:設計)、ステップS1359へ移行し、列の「Σ」(「SEM(D)」における「Σ」)である場合(ステップS1358:SEM)、ステップS1360へ移行する。
【0094】
(ステップS1359)
分類部209は、変換CADについて「ショート」の欠陥種に分類する。例えば、上述の
図16(b)に示す変換CAD524bについて、マッチング部208により
図16(d)に示すようなマトリクスが作成されている場合、分類部209は、変換CAD524bについて「ショート」の欠陥種に分類する。そして、欠陥種の分類動作を終了する。
【0095】
(ステップS1360)
分類部209は、変換CADについて「オープン」の欠陥種に分類する。例えば、上述の
図16(c)に示す変換CAD524dについて、マッチング部208により
図16(e)に示すようなマトリクスが作成されている場合、分類部209は、変換CAD524dについて「オープン」の欠陥種に分類する。そして、欠陥種の分類動作を終了する。
【0096】
以上のようなステップS1351~S1360の流れで、SEM装置1の欠陥検査処理における欠陥種の分類動作が実行される。
【0097】
図18は、実施形態に係るSEM装置の回路照合のフローチャートである。
図19は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
図20は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
図21は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
図22は、実施形態に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
図18~
図22を参照しながら、本実施形態に係るSEM装置1における欠陥検査処理のうち回路照合動作(
図11のステップS136)の流れについて説明する。
【0098】
(ステップS1361)
SEM装置1の回路照合部211は、欠陥検査処理の対象となる変換CADが分類部209によっていずれの欠陥種に分類されたか確認する。変換CADが「欠陥なし」の欠陥種にされた場合(ステップS1361:欠陥なし)、ステップS1362へ移行する。「アイランド」または「ショート」の欠陥種に分類された場合(ステップS1361:アイランドまたはショート)、ステップS1363へ移行する。「ミッシング」または「オープン」の欠陥種に分類された場合(ステップS1361:ミッシングまたはオープン)、ステップS1365へ移行する。
【0099】
(ステップS1362)
回路照合部211は、変換CADに対応するチップ上の回路に致命的な欠陥がないものと判断する。そして、回路照合動作を終了する。
【0100】
(ステップS1363)
SEM装置1の第2の付与部210および回路照合部211は、ショートモードの回路照合を実行する。例えば、ここでは、ステップS1361において、変換CADが「ショート」の欠陥種に分類されたものとして説明する。
【0101】
図19(a)に示す設計CAD514は、上述の
図11に示すステップS133において図形番号G1~G8が付与された状態を示している。
図19(b)に示す変換CAD524bは、同じくステップS133において図形番号D1~D7が付与された状態を示している。
図19(c)に示すマトリクスは、上述の
図11に示すステップS134において、マッチング部208によって設計CAD514および変換CAD524bについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスである。
【0102】
また、上述のように、欠陥検査処理の実行にあたって、予め、LVS実行部206により、スケマティックデータと、チップ全体に対応する設計CADデータとのLVSが実行され、AGFが得られているので、設計CAD514における各配線パターンには、ノード番号が対応付けられている。したがって、第2の付与部210は、LVS実行部206により得られたAGFに基づいて、設計CAD514の各配線パターンにノード番号を付与する。設計CAD514にノード番号A1~A6を付与した状態を、
図19(d)に示す設計CAD514aとする。
【0103】
回路照合部211は、設計CAD514の図形番号(G1~G8)と、設計CAD514aのノード番号(A1~A6)との対応付けを示す
図19(e)に示すようなマトリクスを作成する。そして、回路照合部211は、マッチング部208により作成された
図19(c)に示すマトリクスを参照し、変換CAD524bにおいて「ショート」の状態となっている図形番号D2の配線パターンが、設計CAD514の図形番号G2およびG3の配線パターンに対応することを特定する。そして、回路照合部211は、作成した
図19(e)に示すマトリクスを参照し、特定した設計CAD514の図形番号G2およびG3の配線パターンに対応する設計CAD514aにおける配線パターンのノード番号を確認する。
【0104】
図19(e)に示すマトリクスの場合、回路照合部211は、設計CAD514の図形番号G2およびG3の配線パターンに対応する設計CAD514aにおける配線パターンのノード番号がそれぞれA1およびA2であることを確認することができる。したがって、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524bにおいて、短絡(ショート)している図形番号D2の配線パターンが、異なるノード番号の配線パターン同士を短絡していることになり、回路上で欠陥があるものと判定する(判定NG)。
【0105】
一方、回路照合部211は、変換CAD524bにおいて、短絡(ショート)している図形番号D2の配線パターンが、同じノード番号の配線パターン同士を短絡していることを確認した場合、回路上での欠陥はないものと判定する(判定OK)。
【0106】
また、ステップS1361において、変換CADが「アイランド」の欠陥種に分類された場合については、回路照合部211は、例えば、実際の回路状態を示す変換CAD(例えば、変換CAD524a)において、余分に存在している配線パターン(例えば、変換CAD524aにおける図形番号D9の配線パターン)に対応する、設計CAD514aにおけるノード番号が付与された配線パターンが存在しない。したがって、回路上での欠陥はないものと判定するものとしてもよい(判定OK)。
【0107】
なお、ステップS1361において、変換CADが「アイランド」の欠陥種に分類された場合、以下のようにしてもよい。すなわち、まず、第2の取得部202により取得されたチップ全体の設計CADデータが示す図形において、変換部204により変換CAD(例えば、
図20(a)に示す変換CAD524a)を取得する。ここで変換CAD524a内の各配線パターンには図形番号D1~D9が付与される。次いで、置換部205によって、前記CADデータが示す図形において、この変換CAD524aに対応する部分を当該変換CAD524aで置換する(置換CAD)。この置換CADに基づいて、
図20(b)に示すように、変換CAD524aと同じ部分に存在するビアパターンG1~G3(上層配線と下層配線とを接続するための配線)を示す設計CAD518を抽出する。さらに、
図20(c)に示すように、この設計CAD518を前記変換CAD524aと、合成し、配線パターンとビアパターンが合成された変換CAD524mを作成する。次いで、再度、ステップS133と同様に、第1の付与部207は、変換CAD524mの各パターンに対して、図形番号D1~D8を付与し直す。その後、回路照合部211は、「ショート」の欠陥種に分類された場合と同様に回路照合を実行する。回路照合部211は、その結果に基づいて、回路上での欠陥がない(判定OK)、または、回路上での欠陥がある(判定NG)ものとして判定するようにしてもよい。
【0108】
そして、ステップS1364へ移行する。
【0109】
(ステップS1364)
回路照合部211によりOKと判定された場合(ステップS1364:OK)、ステップS1362へ移行し、NGと判定された場合(ステップS1364:NG)、ステップS1367へ移行する。
【0110】
(ステップS1365)
SEM装置1の第2の付与部210および回路照合部211は、オープンモードの回路照合を実行する。例えば、ここでは、ステップS1361において、変換CADが「オープン」の欠陥種に分類されたものとして説明する。
【0111】
図21(a)に示す設計CAD514は、上述の
図11に示すステップS133において図形番号G1~G8が付与された状態を示している。
図21(b)に示す変換CAD524dは、同じくステップS133において図形番号D1~D9が付与された状態を示している。
図21(c)に示すマトリクスは、上述の
図11に示すステップS134において、マッチング部208によって設計CAD514および変換CAD524dについて作成された図形番号の対応付けを示すマトリクスである。また、上述のように、設計CAD514における各配線パターンには、ノード番号が対応付けられている。したがって、第2の付与部210は、LVS実行部206により得られたAGFに基づいて、設計CAD514の各配線パターンにノード番号を付与する。設計CAD514にノード番号A1~A6を付与した状態を、上述のように、
図19(d)に示す設計CAD514aとする。
【0112】
回路照合部211は、設計CAD514の図形番号(G1~G8)と、設計CAD514aのノード番号(A1~A6)との対応付けを示す上述の
図19(e)に示すようなマトリクスを作成する。回路照合部211は、マッチング部208により作成された
図21(c)に示すマトリクスを参照し、変換CAD524dにおいて「オープン」の状態となっている図形番号D2およびD8の配線パターンが、設計CAD514の図形番号G2の配線パターンに対応することを特定する。そして、回路照合部211は、作成した
図19(e)に示すマトリクスを参照し、特定した設計CAD514の図形番号G2の配線パターンに対応する設計CAD514aにおける配線パターンのノード番号を確認する。
図21に示す例では、回路照合部211は、設計CAD514の図形番号G2の配線パターンに対応する設計CAD514aにおける配線パターンのノード番号がA2であることを確認することができる。ただし、この場合、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524dにおいて、オープンとなっている図形番号D2およびD8の配線パターンが、チップ全体の他の箇所で導通(短絡)しているのか、導通していないのかを判定することができない。
【0113】
そこで、この場合、SEM装置1の置換部205は、
図22(a)に示すように、第2の取得部202により取得されたチップ全体の設計CADデータが示す図形において、変換部204により変換して得られた変換CAD524dに対応する部分を当該変換CAD524dで置換する。そして、置換部205は、変換CAD524dで置換したCADデータから、当該変換CAD524dを含む所定範囲の部分を置換CAD534(置換情報の一例)として抽出する。置換CAD534(変換CAD524dを含む)の各配線パターンには、それぞれノード番号が対応づけられているのは上述の通りである。変換CAD524dにおいて欠陥(オープン)があるものと判定された図形番号D2およびD8の配線パターンが特定されているので、チップ全体のCADデータを用いてLVSを実行しなくても、上述のように、変換CAD524dを含む所定範囲の部分についてLVSを実行すれば、実際に回路上の致命的な欠陥であるかどうかを判断することができる。そして、LVS実行部206は、スケマティックデータと、チップ全体のCADデータのうち置換した変換CAD524dを含む所定範囲の部分である置換CAD534とのLVSを実行する。上記の所定範囲について、具体的には、変換CAD524dにおいて、欠陥(オープン)があるものと判定された図形番号D2およびD8の配線パターンと、マッチング部208および回路照合部211で特定されたノード番号A2に属する図形が含まれる範囲である。予めノード番号からLVSを実行する図形数を削減することができるため、検査時間を短縮することができる。
【0114】
LVS実行部206のLVSによるトレースの結果、例えば、
図22(b)に示すように、オープン欠陥である図形番号D2およびD8に対応するノード番号A2を構成する設計CADに含まれる図形であって、かつ、変換CAD524d外の回路部分において、図形番号D2の配線パターンと、図形番号D8の配線パターンとが導通していることが検出された場合を考える。この場合、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524dにおいて、オープン状態にあると判定された図形番号D2およびD8の配線パターンが、同じノード番号の配線パターンであると判断することができ、この場合、回路上での欠陥がないものとして判定する(判定OK)。
【0115】
一方、LVS実行部206のLVSによるトレースの結果、例えば、
図22(c)に示すように、オープン欠陥である図形番号D2およびD8に対応するノード番号A2を構成する設計CADに含まれる図形であって、かつ、変換CAD524d外の回路部分において、図形番号D2の配線パターンと、図形番号D8の配線パターンとが導通していないことが検出された場合を考える。この場合、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524dにおいて、オープン状態にあると判定された図形番号D2およびD8の配線パターンが、異なるノード番号の配線パターンであると判断することができ、この場合、回路上での欠陥があるものとして判定する(判定NG)。
【0116】
また、ステップS1361において、変換CADが「ミッシング」の欠陥種に分類された場合については、回路照合部211は、例えば、実際の回路状態を示す変換CAD(例えば、
図13(d)に示す変換CAD524c)において、設計CAD514aのノード番号A6の配線パターンに対応する配線パターンが存在しないことを確認する。ただし、この場合、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524cにおいて、ミッシングとなっている当該変換CAD524c上では存在しない配線パターンが、チップ全体の回路でどのような影響があるのかを判定することができない。
【0117】
そこで、同様に、置換部205は、第2の取得部202により取得されたチップ全体の設計CADデータが示す図形において、変換部204により変換して得られた変換CAD524cに対応する部分を当該変換CAD524cで置換して、
図22(a)に示す置換CAD534に相当する置換CADを抽出する。そして、LVS実行部206は、スケマティックデータと、チップ全体のCADデータのうち置換した変換CAD524cを含む所定範囲の部分とのLVSを実行する。上記の所定範囲について具体的には、変換CAD524cと対応する設計CAD514における図形番号G7から特定されたノード番号A6に属する図形が含まれる範囲である。
【0118】
LVS実行部206のLVSによるトレースの結果、例えば、置換CAD内であって、かつ、変換CAD524c外の回路部分において、ノード番号A6の配線パターンで構成される回路で導通していない等の部分がないことが検出された場合を考える。この場合、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524cにおいて、ノード番号A6に対応する配線パターンが存在しないことが回路上で悪影響を与えないと判断することができ、この場合、回路上での欠陥がないものとして判定する(判定OK)。
【0119】
一方、LVS実行部206のLVSによるトレースの結果、例えば、置換CAD内であって、かつ、変換CAD524c外の回路部分において、ノード番号A6の配線パターンで構成される回路で導通していない等の部分が存在することが検出された場合を考える。この場合、回路照合部211は、実際の回路状態を示す変換CAD524cにおいて、ノード番号A6に対応する配線パターンが存在しないことが回路上で悪影響を与えていると判断することができ、この場合、回路上での欠陥があるものとして判定する(判定NG)。
【0120】
そして、ステップS1366へ移行する。
【0121】
(ステップS1366)
回路照合部211によりOKと判定された場合(ステップS1366:OK)、ステップS1362へ移行し、NGと判定された場合(ステップS1366:NG)、ステップS1367へ移行する。
【0122】
(ステップS1367)
回路照合部211は、変換CADに対応するチップ上の回路に致命的な欠陥があるものと判断する。そして、回路照合動作を終了する。
【0123】
以上のように、本実施形態に係るSEM装置1では、変換CADおよび設計CADの各配線パターンに図形番号を付与し、それぞれの図形番号を用いて対応付け(マッチング)を行い、その対応付けの結果に基づいて変換CADの欠陥種を分類するものとしている。そして、設計CADの配線パターンにノード番号を付与し、設計CADの図形番号とノード番号との対応付けの結果に基づいて、実際の回路状態を示す変換CADにより回路上での欠陥の有無を判断するものとしている。このような欠陥検査処理では、例えば、スケマティックデータと、チップ全体の設計CADデータとのLVSを実行する必要がないので、半導体の製造における欠陥検査での検査時間を短縮することができる。
【0124】
また、本実施形態に係るSEM装置1では、変換CADの欠陥種として、例えば、「ショート」または「アイランド」と分類された場合、設計CADおよび変換CADの図形番号の対応付け、ならびに、設計CADにおける図形番号とノード番号との対応付けの結果に基づいて、実際の回路状態を示す変換CADにより回路上での欠陥の有無を判断するものとしている。この場合、LVSを実行せずに回路上の欠陥の有無を判断できるので、さらに検査時間を短縮することができる。
【0125】
また、本実施形態に係るSEM装置1では、変換CADの欠陥種として、例えば、「オープン」または「ミッシング」と分類された場合、チップ全体の設計CADデータが示す図形において、変換部204により変換して得られた変換CADに対応する部分を当該変換CADで置換し、置換したCADデータから、当該変換CADを含む所定範囲の部分を置換CADとして抽出するものとしている。そして、スケマティックデータと、チップ全体のCADデータのうち置換した変換CADを含む所定範囲の部分である置換CADとのLVSを実行し、実際の回路状態を示す変換CADにより回路上での欠陥の有無を判断するものとしている。この場合、LVSを実行するにしても、LVSを実行する対象となるCADデータを限定的な範囲とすることができるので、検査時間を短縮することができる。
【0126】
なお、LVS実行部206による実行対象の処理は、LVSに限定されるものではなく、AGFを得るための処理以外では、例えば、等電位追跡を行う処理であってもよい。また、SEM画像からCADデータに変換した変換CAD、および、設計CADデータからSEM画像に対応する部分をクリップした設計CADを用いて、欠陥検査処理を行うものとしているが、CADデータではなく画像データを用いて欠陥検査処理を行うものとしてもよい。例えば、変換CADの代わりに、SEM画像そのもの、またはSEM画像から欠陥検査処理に適した画像処理を施した画像を用いるものとしてもよい。
【0127】
(変形例)
上述の実施形態に係るSEM装置1と相違する動作を中心に説明する。上述の実施形態では、回路パターン(配線パターン)についてのSEM画像を用いた欠陥検査処理を説明した。本変形例では、異なる層の回路パターンを接続するビアについてのSEM画像を用いた欠陥検査処理について説明する。なお、本変形例に係るSEM装置の構成は、上述の実施形態に係るSEM装置1と同様の構成であるため、各装置、回路および機能部等については同一の符号を付して説明する。
【0128】
図23は、実施形態の変形例に係るSEM装置における欠陥種を説明するための図である。
図23を参照しながら、本変形例に係るSEM装置1における欠陥種分類で分類される欠陥種について説明する。
【0129】
図23(a)に示す設計CAD515は、クリップ部203によりクリップされた、ビアについてのSEM画像に対応する設計CADデータが示す図形の部分であり、第1の付与部207によって図形番号(G1~G3)が付与されている。また、
図23(b)~
図23(d)に示す図形は、ビアについてのSEM画像から変換部204によりCADデータに変換された変換CADを示す。
図23(b)に示す変換CAD525aは、図形番号D1~D4が付与されており、設計CAD515と比較して、図形番号D4で示されるビアが余分に存在しているので、「アイランド」の欠陥種であると分類される。
図23(c)に示す変換CAD525bは、図形番号D1、D2が付与されており、設計CAD515における図形番号G1のビアと、図形番号G3のビアとが短絡(ショート)したような図形番号D1のビアを有するので、「ショート」の欠陥種であると分類される。
【0130】
図23(d)に示す変換CAD525cは、図形番号D1、D2が付与されており、設計CAD515における図形番号G3のビアが存在しないので、「ミッシング」の欠陥種であると分類される。
図23(e)に示す変換CAD525dは、図形番号D1、D2が付与されており、設計CAD515における図形番号G3のビアが存在しないので、本来は存在するビアによって接続されるはずの上層の配線パターンと下層の配線パターンとがオープンの状態であると想定されるので、「オープン」の欠陥種であると分類される。なお、ビアのSEM画像の取得においては、撮像時の帯電によりオープンビア等の下層との導通の取れないビアからの二次電子の発生は極端に低下するため、
図23(d)および
図23(e)に示すように、変換CADとしてはいずれも同じものとなっている。
【0131】
図24は、実施形態の変形例に係るSEM装置の回路照合を説明するための図である。
図24を参照しながら、本変形例に係るSEM装置1における欠陥検査処理の回路照合動作について説明する。
【0132】
ここでは、上述の
図18のステップS1361において、変換CADが「アイランド」の欠陥種に分類されたものとして説明する。ただし、ビアについての変換CADが設計CADには存在しないビアが存在する場合、上層の配線パターンと、下層の配線パターンとを誤って接続(ショート)する可能性がある性質の欠陥種であるので、上述の
図19に示した変換CADが「ショート」の欠陥種に分類された場合の回路照合を実行する必要がある。
【0133】
図24(a)に示す下層CAD516aは、上述の
図11に示すステップS133において下層の設計CADに対して図形番号G1~G8が付与された状態を示している。
図24(c)に示す下層CAD516bは、同じくステップS133において上層の設計CADに対して図形番号G1、G2が付与された状態を示している。
図24(b)に示す変換CAD526は、同じくステップS133において図形番号D1~D4が付与された状態を示している。また、上述のように、欠陥検査処理の実行にあたって、予め、LVS実行部206により、スケマティックデータと、チップ全体に対応する設計CADデータとのLVSが実行され、AGFが得られているので、下層および上層の各設計CADにおける各配線パターンには、ノード番号が対応付けられている。したがって、第2の付与部210は、LVS実行部206により得られたAGFに基づいて、下層および上層の設計CADの各配線パターンにノード番号を付与する。下層の設計CADにノード番号A1~A6を付与した状態を、
図24(d)に示す下層CAD517aとする。上層の設計CADにノード番号A1、A6を付与した状態を、
図24(e)に示す上層CAD517bとする。
【0134】
回路照合部211は、下層CAD516aおよび上層CAD516bの図形番号と、下層CAD517aおよび上層CAD517bのノード番号との対応付けを示す
図24(f)に示すようなマトリクスを作成する。そして、回路照合部211は、変換CAD526において「アイランド」の状態となっている図形番号D4のビアが、下層CAD516aの図形番号G2のビアと、上層CAD516bの図形番号G2のビアとを接続(短絡)することを特定する。そして、回路照合部211は、作成した
図24(f)に示すマトリクスを参照し、特定した下層CAD516aの図形番号G2のビア、および、上層CAD516bの図形番号G2のビアに対応する下層CAD517aおよび上層CAD517bにおけるビアのノード番号を確認する。
図24(f)に示すマトリクスの場合、回路照合部211は、下層CAD516aの図形番号G2および上層CAD516bの図形番号G2のビアにそれぞれ対応する下層CAD517aおよび上層CAD517bにおけるビアのノード番号がそれぞれA2およびA6であることを確認することができる。したがって、回路照合部211は、実際のビアの状態を示す変換CAD526において、短絡(ショート)している図形番号D4のビアが、異なるノード番号のビアを短絡していることになり、回路上で欠陥があるものと判定する(判定NG)。
【0135】
一方、回路照合部211は、変換CAD526において、短絡(ショート)している図形番号D4のビアが、同じノード番号のビアを短絡していることを確認した場合、回路上での欠陥はないものと判定する(判定OK)。
【0136】
なお、上述の
図18のステップS1361において、変換CADが「ショート」の欠陥種に分類された場合においても、上述の同様に、回路上の欠陥の有無を判定することが可能である。
【0137】
また上述の
図18のステップS1361において、変換CADが「オープン」または
「ミッシング」の欠陥種に分類された場合においては、上述の
図18のステップS1365の処理と同様の処理(所定範囲の置換CADを用いたLVSを実行する処理)を行うものとすればよい。
【0138】
以上のように、本変形例に係るSEM装置1では、変換CADおよび設計CADの各ビアに図形番号を付与し、それぞれの図形番号を用いて対応付け(マッチング)を行い、その対応付けの結果に基づいて変換CADの欠陥種を分類するものとしている。そして、設計CADのビアにノード番号を付与し、設計CADの図形番号とノード番号との対応付けの結果に基づいて、実際の回路状態を示す変換CADにより回路上での欠陥の有無を判断するものとしている。このような欠陥検査処理では、例えば、スケマティックデータと、チップ全体の設計CADデータとのLVSを実行する必要がないので、半導体の製造における欠陥検査での検査時間を短縮することができる。
【0139】
また、本変形例に係るSEM装置1では、変換CADの欠陥種として、例えば、「ショート」または「アイランド」と分類された場合、設計CADおよび変換CADの図形番号の対応付け、ならびに、設計CADにおける図形番号とノード番号との対応付けの結果に基づいて、実際の回路状態を示す変換CADにより回路上での欠陥の有無を判断するものとしている。この場合、LVSを実行せずに回路上の欠陥の有無を判断できるので、さらに検査時間を短縮することができる。
【0140】
また、本変形例に係るSEM装置1では、変換CADの欠陥種として、例えば、「オープン」または「ミッシング」と分類された場合、チップ全体の設計CADデータが示す図形において、変換部204により変換して得られた変換CADに対応する部分を当該変換CADで置換し、置換したCADデータから、当該変換CADを含む所定範囲の部分を置換CADとして抽出するものとしている。そして、スケマティックデータと、チップ全体のCADデータのうち置換した変換CADを含む所定範囲の部分である置換CADとのLVSを実行し、実際の回路状態を示す変換CADにより回路上での欠陥の有無を判断するものとしている。この場合、LVSを実行するにしても、LVSを実行する対象となるCADデータを限定的な範囲とすることができるので、検査時間を短縮することができる。
【0141】
なお、上述の実施形態および変形例のSEM装置1で実行されるプログラムは、例えば、ROM等に予め組み込まれて提供されるものとしてもよい。
【0142】
また、上述の実施形態および変形例のSEM装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disc-Recordable)、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0143】
また、上述の実施形態および変形例のSEM装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および変形例のSEM装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0144】
また、上述の実施形態および変形例のSEM装置1で実行されるプログラムは、コンピュータを上述した各機能部として機能させ得る。このコンピュータは、CPUがコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0145】
本発明の実施形態および変形例を説明したが、この実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、および変更を行うことができる。この実施形態および変形例は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1 SEM装置
11 電子銃鏡筒
12 電子源
13 磁界レンズ
14 走査コイル
21 ステージ
22 ウェハ
23 検出器
31 制御コントローラ
32 信号処理回路
33 モニタ
34 画像格納部
35 カラム制御回路
36 ステージ駆動制御回路
37 座標格納部
38 レシピファイル格納部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 入出力I/F
105 制御回路I/F
201 第1の取得部
202 第2の取得部
203 クリップ部
204 変換部
205 置換部
206 LVS実行部
207 第1の付与部
208 マッチング部
209 分類部
210 第2の付与部
211 回路照合部
220 記憶部
500~502、504 SEM画像
510 設計CAD
512a 下層CAD
512b 上層CAD
513、514、514a、515 設計CAD
516a 下層CAD
516b 上層CAD
517a 下層CAD
517b 上層CAD
518 設計CAD
522 欠陥CAD
524 変換CAD
524a~524e 変換CAD
524m 変換CAD
525a~525d 変換CAD
526 変換CAD
532 置換CAD
534 置換CAD
550 差分画像
552 二値化画像
601~603 配線
611、612 配線
611a、612a ビア
621 配線
EB 電子線
SE 二次電子