(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】斜視内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20220405BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220405BHJP
A61B 1/05 20060101ALI20220405BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20220405BHJP
A61B 1/07 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61B1/12 542
A61B1/00 715
A61B1/05
A61B1/06 531
A61B1/07 730
(21)【出願番号】P 2018235811
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 治彦
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-258058(JP,A)
【文献】特開平9-122070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0265499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコープの先端に設けられ、前記スコープの軸線に挟角を有して傾斜する傾斜端面が形成される硬性部と、
前記硬性部に内設され、光学中心軸が前記傾斜端面に略垂直となるカメラと、
前記硬性部に内設され、前記傾斜端面から照明光を出射する自発光体と、
前記自発光体からの発熱が伝わる受熱面を有するとともに、前記受熱面から前記光学中心軸に沿う方向に延在する熱伝導部を有する一次伝熱体と、を備える、
斜視内視鏡。
【請求項2】
前記一次伝熱体が最も近接する前記硬性部の内壁面と前記一次伝熱体との間、および前記一次伝熱体と前記カメラとの間には、断熱材が設けられる、
請求項1に記載の斜視内視鏡。
【請求項3】
前記受熱面と反対側の前記熱伝導部の延在方向先端部には、二次伝熱体が一体または別体で接続され、
前記二次伝熱体は、前記熱伝導部と反対側に放熱部を有し、
前記放熱部は、前記硬性部の内壁面に接触する、
請求項1または2に記載の斜視内視鏡。
【請求項4】
前記硬性部には、照明光軸が前記傾斜端面に対して略垂直となる照明手段が内設され、
前記自発光体は、前記光学中心軸と前記照明光軸とを通る第1の仮想線から平行にシフトした第2の仮想線上の位置にオフセットして配置される、
請求項3に記載の斜視内視鏡。
【請求項5】
前記放熱部は、前記硬性部の内壁面における円周長の少なくとも略半分以上の長さを有して円弧状に形成され、
前記内壁面の前記放熱部が接触しない放熱部非接触部には、前記照明手段に接続される光ファイバが配置される、
請求項4に記載の斜視内視鏡。
【請求項6】
前記二次伝熱体には、前記熱伝導部と前記放熱部の間に、他部材と接触しない垂下伝熱部が設けられる、
請求項3~5のうちいずれか一項に記載の斜視内視鏡。
【請求項7】
前記一次伝熱体に接続される前記二次伝熱体の垂下伝熱部受熱面が、前記垂下伝熱部の肉厚よりも大きい距離で前記硬性部の内壁面から離間している、
請求項6に記載の斜視内視鏡。
【請求項8】
前記一次伝熱体と前記二次伝熱体とが別体で形成され、
前記熱伝導部の延在方向先端部に、前記二次伝熱体がねじにより締結される、
請求項3~7のうちいずれか一項に記載の斜視内視鏡。
【請求項9】
前記自発光体を実装し、基端側から延在している伝送ケーブルの先端が接続される電極と、前記自発光体の発光に伴う発熱を前記一次伝熱体に放熱する放熱部とを有する実装回路体、を更に備え、
前記電極と、前記放熱部とは分離して配置される、
請求項1~8のうちいずれか一項に記載の斜視内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、斜視内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、挿入部の径を太くすることなく、発光素子により充分な光量を得つつ発光素子で発生した熱を有効に放熱する手段を備える内視鏡が開示されている。この内視鏡は、湾曲部の湾曲部材の先端部に少なくとも一つの突出部が形成され、それぞれの突出部には、発光素子であるLEDが取り付けられた基板が固定される。基板は先端硬性部より熱伝導性の高い部材で形成され、発光素子であるLEDで発生する熱は、基板から湾曲部材に伝導できる。湾曲部材は先端硬性部と同等、もしくはより熱伝導性の高い部材で形成されているため、基板から湾曲部材に伝導された熱は、先端硬性部ではなく更に湾曲部材の基端側に伝導され、湾曲部材の基端側に連結される可撓管の螺旋管に伝導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1の構成では、LED(Light Emission Diode)の熱を基板から湾曲部材に伝導する部材が、湾曲部材の先端部に形成した突出部である。突出部は、SUS等の薄い金属板に、小片状の切欠き部が形成される部分を切欠き部の基端で内周側に屈曲させる(即ち、切り起こし加工する)ことで形成している。このため、突出部は、十分な熱容量が得にくく、効率的な放熱が行えない可能性がある。また、基板の固定される突出部は、硬性部表面に外皮のみを隔てて近接するため、硬性部表面の温度を抑制しにくい可能性がある。更に、LEDの照明光軸が、先端硬性部の軸線と平行であるため、斜視方向を撮影方向とする斜視内視鏡に同様の構成を適用した場合、先端部を熱容量の大きい大サイズで形成しかつ傾斜させると、放熱構造の占有体積が増大し、挿入部の小径化が難しくなる。
【0005】
本開示は、上記従来の事情に鑑みて案出され、斜視方向の撮影画角と照射範囲を重ね合わせつつ効率的な放熱が行え、硬性部表面の温度を安全な範囲に抑制し、かつ放熱構造の占有体積の増大を抑制できる斜視内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、スコープの先端に設けられ、前記先端の軸線に挟角を有して傾斜する傾斜端面が形成される硬性部と、前記硬性部に内設され光学中心軸が前記傾斜端面に略垂直となるカメラと、前記硬性部に内設され前記傾斜端面から照明光を出射する自発光体と、前記自発光体からの発熱が伝わる受熱面を有するとともに、前記受熱面から前記光学中心軸に沿う方向に延在する熱伝導部を有する一次伝熱体と、を備える、斜視内視鏡を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、斜視方向の撮影画角と照射範囲を重ね合わせつつ効率的な放熱が行え、硬性部表面の温度を安全な範囲に抑制し、且つ放熱構造の占有体積は抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る内視鏡システムの外観例を示す斜視図
【
図5B】実装回路体の背面側を模式的に示した外観図
【
図7】内視鏡システムのハードウェア構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る斜視内視鏡の構成および作用を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システム11の外観例を示す斜視図である。ここで用いられる用語として、水平面に載置されたビデオプロセッサ13の筐体の鉛直上方向と鉛直下方向をそれぞれ「上」、「下」と称する。また、斜視内視鏡15の先端前方側を「前(先)」と称し、ビデオプロセッサ13に接続される側を「後」と称する。
【0011】
内視鏡システム11は、斜視内視鏡15と、ビデオプロセッサ13と、モニタ17とを含む構成である。斜視内視鏡15は、医療用の例えば硬性鏡または軟性鏡である。ビデオプロセッサ13は、被写体である観察対象(例えば、人体、人体内部の患部)を撮像することで得られる撮像画像(例えば、静止画、動画を含む)に対して画像処理する。モニタ17は、ビデオプロセッサ13から出力される表示用信号に従って、画像を表示する。画像処理は、例えば、色補正、階調補正、ゲイン調整を含むが、これらの処理に限定されない。
【0012】
斜視内視鏡15は、観察対象を撮像する。斜視内視鏡15は、観察対象の内部に挿入されるスコープ19と、スコープ19の後端部が接続されるプラグ部21とを備える。また、スコープ19は、比較的長い可撓性を有する軟性部23と、軟性部23の先端に設けられた剛性を有する硬性部25とを含む構成である。
【0013】
ビデオプロセッサ13は、筐体27を有し、撮像画像に対して画像処理を施し、画像処理後の表示信号を出力する。筐体27の前面には、プラグ部21の基端部29が挿入されるソケット部31が配置される。プラグ部21がソケット部31に挿入され、斜視内視鏡15とビデオプロセッサ13とが電気的に接続されることで、斜視内視鏡15とビデオプロセッサ13との間で電力および各種信号(例えば撮像画像信号、或いは制御信号)の送受信が可能となる。これらの電力および各種信号は、スコープ19の内部に挿通された伝送ケーブル(図示略)を介して、プラグ部21から軟性部23に伝送される。また、硬性部25の内側に設けられたイメージセンサ33(
図4参照)から出力される撮像画像信号は、伝送ケーブルを介して、プラグ部21からビデオプロセッサ13に伝送される。
【0014】
ビデオプロセッサ13は、伝送ケーブルを介して伝送された撮像画像信号に対し、画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用信号に変換して、モニタ17に出力する。
【0015】
モニタ17は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)或いはCRT(Cathode Ray Tube)等の表示デバイスにより構成される。モニタ17は、斜視内視鏡15によって撮像された被写体の撮像画像を表示する。モニタ17は、観察対象を照明するための可視光(つまり、白色光)の照明により撮像された可視光画像と、観察対象を蛍光発光させるための励起光により発生した蛍光が撮像された蛍光画像とを表示する。
【0016】
ビデオプロセッサ13の筐体27には、励起光の一例としてのIR(Infrared Ray)励起光の光源であるIR励起光源35が設けられる。斜視内視鏡15には、照明手段である導光体が内部に挿通される。斜視内視鏡15では、プラグ部21がソケット部31に挿入されることで、IR励起光源35から照射されるIR励起光が斜視内視鏡15の導光体に伝送される。
【0017】
図2は、
図1に示した硬性部25の側面図である。例えば円柱状に形成される硬性部25は、先端に、傾斜端面37を有する。傾斜端面37は、円柱の軸線39に鋭角の挟角αを有して傾斜する。なお、軸線39は、斜視内視鏡15の軸線でもある。実施の形態1では、硬性部25の先端に、軸線直交端面41が形成される。つまり、傾斜端面37は、軸線直交端面41から後方に向かって挟角αの余角(つまり、(90-α)度)で傾斜する面となる。ここで、傾斜端面37は、軸線39に沿って先端より後退する側(具体的には、
図2に矢印aで示す側)を傾斜側と称す。なお、硬性部25は、上記の軸線直交端面41が省略され、全てが傾斜端面37であってもよい。
【0018】
硬性部25内には、カメラ43(
図4参照)が設けられる。カメラ43は、傾斜端面37の略中央部に、光学中心軸45が略垂直に配置される。
図2において、斜視内視鏡15の視野方向は、例えば光学中心軸45を軸線39に対する伏角 βとした下向きとすることができる。伏角 βは、例えば30度程度とすることができる。言い換えれば、傾斜端面37は、軸線直交端面41に対して伏角 βに相当する角度で後方に向かって傾斜する。なお、斜視内視鏡15は、実際の運用時、管内を360度の任意角度で回転して観察が行われる。そのため、180度回転された場合には、伏角βは、仰角(an angle of elevation)となる。カメラ43は、光学中心軸45を中心に角度θの視野を有する。実施の形態1において、「視野」とは、光学系で鮮明に結像される物(体)空間の範囲を言う。
【0019】
図3は、
図2に示した斜視内視鏡15の硬性部25の正面図である。硬性部25の傾斜端面37には、撮像窓47が配置される。撮像窓47は、被写体からの光を入射する。撮像窓47は、傾斜端面37の略中央部において、傾斜端面37を略円形(円形を含む)に彫り込んだ凹部として形成される。この撮像窓47の底部には、レンズカバーガラス49が配置される。
【0020】
斜視内視鏡15は、蛍光観察用の励起光(例えばIR励起光)を被写体の被観察領域に照射し、励起光の照射に基づいて被写体に予め投与された蛍光薬剤(例えば、ICG(Indocyanine Green))或いは皮膚内の自家蛍光物質から発せられる蛍光を撮像し、蛍光画像を取得できる。蛍光観察では、例えば自家蛍光観察では波長405nmの光、赤外光観察では例えば波長690nm~820nmのIR励起光が用いられる。以下、実施の形態1では、蛍光観察用の励起光として、IR励起光を用いる例を説明するが、励起光はこれに限定されない。
【0021】
また、硬性部25の傾斜端面37には、照射窓51が穿設される。照射窓51は、撮像窓47と同様に傾斜端面37を円形に彫り込んだ凹部として形成される。この照射窓51の底部には、照明手段である導光体(例えば光ファイバ53)の先端が配置される。光ファイバ53は、この先端が光出射端面となる。光ファイバ53は、光出射端面と反対側の基端がプラグ部21に接続される。光ファイバ53は、IR励起光源35からのIR励起光を伝送することで照射窓51からIR励起光を出射する。光ファイバ53は、カメラ43の光学中心軸45に対して傾斜側の傾斜端面37に、照明光軸55が略垂直となるように配置される。なお、光学中心軸45および照明光軸55の角度は上述の角度に限らず、傾斜端面37に対して垂直でなくてもよい。
【0022】
更に、硬性部25の傾斜端面37には、照射窓57が穿設される。照射窓57は、撮像窓47と同様に傾斜端面37を円形に彫り込んだ凹部として形成される。この照射窓57の底部には、照明光軸55が略垂直に配置される自発光体(例えば、LED(Light Emitting Diode)素子)が配置される。
【0023】
自発光体は、
図3において、光学中心軸45と光ファイバ53の照明光軸55とを通る第1の仮想線59から平行にずれた(言い換えると、シフトした)第2の仮想線61の位置にオフセットして配置される。実施の形態1においてこの自発光体(例えばLED63)は、被写体を照明するための白色照明光を出射するが、照明光の発振波長や波長帯域は特に限定されない。
【0024】
従って、斜視内視鏡15では、照明手段である導光体(例えば光ファイバ53)がIR励起光源35に接続されてIR励起光を出射し、自発光体であるLED63が白色照明光を出射する。なお、斜視内視鏡15内に配置される自発光体の数、導光体の数は、0(ゼロ)個である場合を含め、特に限定されない。
【0025】
また、硬性部25には、図中破線で示す二次伝熱体119が設けられる。二次伝熱体119は、硬性部25の内壁面に沿う円弧状で形成される。この二次伝熱体119については後述する。
【0026】
図4は、
図3に示した第1の仮想線59による側断面図である。硬性部25は、カメラ43を収容する。カメラ43は、光路を構成する複数の光学部品(例えばレンズ)を有し、被写体からの光を光路に入射させて結像する。ここでいう被写体からの光は、例えば被写体における可視光(白色光)に対する反射光、もしくは、被写体に予め投与された蛍光薬剤(例えばインドシアニンググリーン(ICG))を蛍光発光させるための励起光により励起された蛍光を含む。カメラ43は、複数の光学部品(例えばレンズ)を収容するための円筒状の鏡筒65を有する。鏡筒65の先端外周は、撮像窓47に当接した状態で硬性部25に固定される。
【0027】
鏡筒65の内部には、光学部品であるレンズカバーガラス49、絞り50、第1レンズ67、スペーサ69、第2レンズ71、第3レンズ73および第4レンズ75が、先端側より順に収容される。スペーサ69は、第1レンズ67と第2レンズ71との間に挟入され、例えば斜視内視鏡15の軟性部23などの屈曲時に双方の凸曲面同士が接触することを防止する。第4レンズ75の後方には、イメージセンサ33が配置される。
【0028】
実施の形態1において、イメージセンサ33は、固体撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Device)もしくはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)と、その撮像素子の光入射面側に撮像素子の保護用のセンサカバーガラス77とが一体に成形されたものとして構成される。
【0029】
イメージセンサ33は、連結部材79の内方に嵌合されて鏡筒65と同時に連結される。これにより、イメージセンサ33は、センサ中心が光学中心軸45に位置決めされる。
【0030】
イメージセンサ33の光入射面側には、第1励起光カットフィルタ81が蒸着されたフィルタ蒸着ガラスが固定される。
【0031】
また、斜視内視鏡15では、第2励起光カットフィルタ83が、最も被写体側に配置される第1レンズ67よりも更に被写体側に配置される。第2励起光カットフィルタ83は、外周が例えば鏡筒65の内周に固定される。
【0032】
イメージセンサ33の背面には、複数のパッドが設けられる。イメージセンサ33の背面には、可撓基板85がこのパッドを介して導通接続される。可撓基板85は、イメージセンサ33と伝送ケーブル(図示略)との間に配置される。可撓基板85には、複数本の線状導体をパターン印刷した伝送回路が形成される。可撓基板85は、伝送ケーブルに束ねられているそれぞれの電線を、この伝送回路に導通接続する。これにより、イメージセンサ33は、可撓基板85を介して伝送ケーブルと接続される。可撓基板85としては、複数の帯状薄板からなる導体を絶縁シート材で覆って、可撓性を有する帯状ケーブルに形成したFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)、可撓性を有する絶縁基板に線状導体をパターン印刷したFPC(フレキシブル・プリント・配線板)等を用いることができる。
【0033】
カメラ43の下方に配置される光ファイバ53は、外周が金属パイプ87により覆われる。この金属パイプ87は、外周が更に樹脂パイプ89により覆われている。
【0034】
光ファイバ53は、光出射端面が照射窓51に固定されて照明光軸55に沿って、照射窓51と反対側の内径側へ延在する。光ファイバ53は、カメラ43より後方の硬性部内空間において、軸線39に沿う方向に曲がる屈曲部91を有する。
【0035】
図5Aは、
図3に示した第2の仮想線61による側断面図である。
図5Bは、実装回路体93の背面側を模式的に示した外観図である。カメラ43に対してオフセットされたLED63は、傾斜端面37の背面側に配置される。LED63は、光出射端面が照射窓57の内周に、水密に嵌合される。LED63は、例えば基板である直方体状の実装回路体93(
図5B参照)に実装される。
図5Bに示すように、実装回路体93は、例えば2つの電極PD1と放熱部HR1とを有する。LED63の発光素子は
図5Bの電極PD1および放熱部HR1とは反対側の表面に実装配置されている。2つの電極PD1と放熱部HR1とは、同一平面上に配置され、それぞれ分離して離間している。実装回路体93には、可撓基板85を介して伝送ケーブルの先端側の導線(図示略)がそれぞれの電極PD1に対して導通接続(例えば半田付け)される。実装回路体93は、熱伝導率の高い部材(例えば窒化アルミ)により形成される。実装回路体93は、後述する一次伝熱体と当接する放熱部HR1を介して、LED63の発光に伴う発熱を、後述する一次伝熱体の受熱面へ効率よく伝える。なお、LED63が実装される端子面の構成によっては
図5Bに示すような実装回路体93を省略し、LED63の放熱面から直接伝熱することも可能である。
【0036】
実施の形態1に係る斜視内視鏡15は、硬性部25に一次伝熱体111が内蔵するように内側に設けられる(つまり内設される)。一次伝熱体111は、LED63の後方に配置される。一次伝熱体111には、受熱面107が形成される。受熱面107は、傾斜端面37と略平行に形成されてLED63を実装し、LED63からの発熱が伝わる。このため、一次伝熱体111は、熱伝導率の大きい部材(例えば銅、アルミ)により形成される。
【0037】
一次伝熱体111は、この受熱面107から光学中心軸45に沿う方向に延在する熱伝導部109を有する。熱伝導部109は、延在方向に直交する断面形状が例えば四角形の杆(棒)状となって形成される。この熱伝導部109の後端部には、受熱面107と平行な方向に折り曲げられた接続部112が形成される。つまり、一次伝熱体111は、熱伝導部109と接続部112とが側面視でL字形となって形成される。接続部112には、後述するねじ131が螺合する雌ねじ部が側面に形成される。
【0038】
硬性部25の内部には、断熱材115が配置されている。この断熱材115は、一次伝熱体111が最も近接する硬性部25の内壁面113と一次伝熱体111との間に配置される。また、断熱材115は、一次伝熱体111とカメラ43との間に配置される。断熱材115は、熱伝導率の小さい部材によりシート状あるいは板状に形成され、LED63の発熱が伝わり高温となった一次伝熱体111からの熱流を遮蔽する。一次伝熱体111は、断熱材115が設けられることにより、内壁面113やカメラ43に近接配置が可能となっている。これにより、硬性部25は、外表面の昇温を抑制しつつ小径化しやすくなっている。なお、断熱材115は、硬性部25の内部の空気と置き換えることも可能である。この場合、LED63および一次伝熱体111は、二次伝熱体119との接触部分以外を空中にて保持する構成となる。
【0039】
図6は、
図5AのA-A断面図である。カメラ43は、後部に設けられるイメージセンサ33の背面に、複数のパッドが縦横に配置された半田付け面を有する。この半田付け面の各パッドには、可撓基板85(
図4参照)のそれぞれの導体が導通接続される。
【0040】
一次伝熱体111には、受熱面107と反対側の熱伝導部109の延在方向先端部117に、二次伝熱体119が接続される。二次伝熱体119は、硬性部25の内壁面113に沿って湾曲する半円筒形状で形成される。二次伝熱体119は、熱伝導率の大きい部材(例えば銅、アルミ)により形成される。二次伝熱体119は、一次伝熱体111と一体または別体で形成される。二次伝熱体119は、熱伝導部109と反対側に、放熱部121を有する。この放熱部121は、硬性部25の内壁面113に接触する。
【0041】
放熱部121は、硬性部25の内壁面113における円周長の少なくとも略半分以上の長さを有して円弧状に形成される。硬性部25の内壁面113は、放熱部121の接触しない部分が、放熱部非接触部123となる。この放熱部非接触部123には、照明手段に接続される光ファイバ53が配置される。
【0042】
また、二次伝熱体119には、熱伝導部109と放熱部121の間に、垂下伝熱部129が設けられている。この垂下伝熱部129は、熱伝導部109の延在方向先端部117から硬性部25の半径方向に平行に延在することで、内壁面113や他部材と接触しないように配置されている。垂下伝熱部129は、所定の面積を有した板状に形成される。二次伝熱体119は、熱伝導部109からの熱流が、この垂下伝熱部129において面方向に拡がって伝わる。垂下伝熱部129で拡がった熱は、熱対流あるいは熱ふく射により硬性部25の内部空間(例えば空気)にも放熱される。従って、二次伝熱体119は、放熱部121が、熱伝導部109よりも低い温度となって内壁面113に接触する。
【0043】
このように、硬性部25では、LED63からの発熱が、放熱部121へ到達するまでの間に、受熱面107を介して熱容量の大きい熱伝導部109で吸熱され、更に垂下伝熱部129で放熱されることにより、多段的に下降するようになされている。
【0044】
本実施の形態に係る二次伝熱体119は、一次伝熱体111と別体で形成される。二次伝熱体119は、垂下伝熱部129の始端が、ねじ131により熱伝導部109の延在方向先端部117に締結される。垂下伝熱部129の始端および熱伝導部109の延在方向先端部117は、熱が良好に伝わるように、大きな面積で密着される。
【0045】
一次伝熱体111に接続される二次伝熱体119の垂下伝熱部受熱面133は、垂下伝熱部129の肉厚tよりも大きい距離Lで硬性部25の内壁面113から離間している。従って、垂下伝熱部129の上端における垂下伝熱部受熱面133と反対側の面は、内壁面113から直線距離s(s=L-t)の空隙135を有している。この空隙135の直線距離sは、垂下伝熱部129の垂下方向に向かって徐々に増加し、垂下伝熱部129における垂下方向の略中央位置で最大となる。
【0046】
図7は、内視鏡システム11のハードウェア構成例を示すブロック図である。斜視内視鏡15は、可撓基板85に第1駆動回路95を備える。第1駆動回路95は、駆動部として動作し、イメージセンサ33の電子シャッタをオンまたはオフする。イメージセンサ33は、第1駆動回路95によって電子シャッタがオンにされた場合、撮像面に結像した光学像を光電変換することで、撮像画像信号を出力する。光電変換では、光学像の露光および画像信号の生成および読み出しが行われる。
【0047】
第1励起光カットフィルタ81は、イメージセンサ33の前側(受光側)に配置され、レンズを通る光のうち、被写体で反射されたIR励起光を遮光し、IR励起光による蛍光発光の光および可視光を透過させる。
【0048】
ビデオプロセッサ13は、コントローラ97、第2駆動回路99、IR励起光源35、イメージプロセッサ101、およびディスプレイプロセッサ103を備える。
【0049】
コントローラ97は、斜視内視鏡15における被写体の撮像処理の動作手順を統括的に制御する。コントローラ97は、第2駆動回路99に対して発光制御し、内視鏡内の第1駆動回路95に対して駆動制御する。第2駆動回路99は、IR励起光と、LED63とを発光制御する。
【0050】
第2駆動回路99は、例えば光源駆動回路であり、IR励起光源35を駆動し、撮像期間中に発光制御する。なお、IR励起光源35の発光制御について特に限定する必要はなく、IR励起光源35はIR励起光を、例えば、連続的に、間欠的にまたは単発的に発光してもよい。
【0051】
この撮像期間は、観察部位を斜視内視鏡15で撮像する期間を示す。撮像期間は、例えば、内視鏡システム11が、ビデオプロセッサ13または斜視内視鏡15に設けられたスイッチをオンにするユーザ操作を受け付けてから、オフにするユーザ操作を受け付けるまでの期間である。
【0052】
IR励起光源35は、レーザダイオード(LD:図示略)を有し、LDから光ファイバ53を通った690nm~820nmの波長帯域を有するレーザ光(つまり、IR励起光)を出射する。
【0053】
第2駆動回路99は、LED63を駆動し、発光制御し、例えば、可視光(白色光)をパルス発光させる。LED63は、撮像期間において、例えば、可視光画像を撮像するタイミングで、可視光を被写体にパルス照射する。なお、一般に、蛍光発光の光は微弱な明るさである。一方、可視光は短いパルスでも強い光が得られる。なお、LED63の発光制御について特に限定する必要はなく、LED63は可視光を、例えば、連続的に、間欠的にまたは単発的に発光してもよい。
【0054】
内視鏡システム11の第2駆動回路99は、可視光と励起光とを交互に出力する。内視鏡システム11では、可視光の照射タイミングと、励起光により発生した蛍光画像の撮像タイミングが重複しないようになされている。
【0055】
イメージプロセッサ101は、イメージセンサ33から交互に出力される蛍光発光画像と可視光画像とに対して画像処理し、画像処理後の画像データを出力する。なお、イメージセンサ33内で露光制御することによって可視光と励起光との重複を回避することができる。
【0056】
ディスプレイプロセッサ103は、イメージプロセッサ101から出力される画像データを、映像表示に適したNTSC(National Television System Committee)信号等の表示用信号に変換し、モニタ17に出力する。
【0057】
モニタ17は、ディスプレイプロセッサ103から出力される表示用信号に従い、蛍光発光画像と可視光画像とを、例えば同一の領域に表示する。モニタ17は、可視光画像および蛍光画像を同一の画面上に、重畳または個別に表示する。これにより、ユーザは、モニタ17に表示された蛍光発光画像と可視光画像とを、同一撮像画像に重ねて、或いは個別に見ながら、観察対象を高精度に確認できる。
【0058】
なお、斜視内視鏡15は、照明手段が、IR励起光を出射する自発光体であってもよい。この場合、硬性部25には、傾斜端面37に照明光軸55が略垂直に配置されて白色照明光を出射する上記と同様の自発光体(例えばLED63)が設けられる。
【0059】
次に、上記した実施の形態1に係る斜視内視鏡15の作用を説明する。
【0060】
[斜視構造]
実施の形態1に係る斜視内視鏡15は、斜視内視鏡15の先端に設けられ、斜視内視鏡15の軸線39に鋭角の挟角αを有して傾斜する傾斜端面37が形成される硬性部25を有する。また、斜視内視鏡15は、傾斜端面37に設けられた撮像窓47と、硬性部25に設けられ、撮像窓47を介して撮像するカメラ43とを有する。また、斜視内視鏡15は、傾斜端面37に設けられ、傾斜端面37において撮像窓47よりも後方に配置される照射窓51と、硬性部25に設けられ、照射窓51を介して照射する照明手段とを有する。
【0061】
実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、カメラ43より後方の硬性部内空間に、ほぼ直径方向に渡る収容空間を確保することができる。
【0062】
実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、カメラ43は、撮像窓47から傾斜端面37の垂直方向に配置される。また、照明手段は、照射窓51から傾斜端面37の垂直方向に配置される。
【0063】
実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、照射手段はカメラ43の後方に配置されるため、照射手段を配置するための空間を確保することができる。
【0064】
実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、カメラ43は、光学中心軸45が傾斜端面37に対して略垂直となるよう配置される。また、照明手段は、照明光軸55が傾斜端面37に対して略垂直となるよう配置される。また、カメラ43は、光学中心軸45が照明手段の照明光軸55に対して略平行となるように配置される。
【0065】
実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、照明手段の照明光軸55が、カメラ43の光学中心軸45よりも傾斜側(つまり、軸線39に沿って先端より後退する側)の傾斜端面37に配置される。言い換えれば、照明手段が、カメラ43よりも傾斜側の傾斜端面37に配置される。カメラ43の光学中心軸45と、照明手段の照明光軸55とは、ともに傾斜端面37に対して略垂直に配置される。従って、光学中心軸45と照明光軸55とは、ほぼ平行となり、相互に干渉せずに配置される。照明手段は、導光体である場合、傾斜端面37に略垂直な方向の延在長が、カメラ43の光学中心軸45に沿う長さよりも長くなる。このため、カメラ43の後方には、硬性部内空間の確保が容易となる。この硬性部内空間は、照明手段が導光体である場合、傾斜端面37に略垂直な方向に傾斜配置された導光体(例えば光ファイバ53)を、軸線39に沿う方向に曲げるための有効なスペースとなる。
【0066】
従って、実施の形態1に係る斜視内視鏡15によれば、先端面に傾斜端面37を有する硬性部25において、カメラ43より後方の硬性部内空間に、ほぼ直径方向に渡る収容空間を確保することができる。
【0067】
また、斜視内視鏡15では、照明手段は、線状の導光体により構成され、且つカメラ43より後方の硬性部内空間において軸線39に沿う方向に曲がる屈曲部91を有する。
【0068】
この斜視内視鏡15では、照明手段が線状の導光体により構成される。導光体は、例えば光ファイバ53とすることができる。光ファイバ53は、1本の光ファイバ53でもよいが、例えば光ファイバ素線を複数本束ねて、その両端を棒状に一体化したファイババンドルとすることができる。ファイババンドルは、先端で束ねた複数本の光ファイバ素線を接着剤により固め、その先端を研磨して光出射端面とする。そのため、ファイババンドルは、先端近傍が硬質の棒状となる。この導光体は、光出射端面が、傾斜端面37に穿設された照明光用の照射窓51(つまり、孔)に接続される。言い換えれば、研磨された導光体の光出射端面は、傾斜端面37と平行となる。照明光軸55が傾斜端面37に略垂直に接続された導光体の先端近傍は、硬質であるため、所定長が傾斜端面37に垂直な方向で硬性部内空間に収容される。
【0069】
ここで、硬性部25は、正面視において、例えば円形となる。硬性部25を正面視した円形において、光学中心軸45と照明光軸55を通る第1の仮想線59は、円形の直径方向となる。導光体は、この直径方向の一端側(つまり、傾斜端側)に、光出射端面が配置される。導光体は、照明光軸55が光学中心軸45とほぼ平行となり、カメラ43と干渉せずに配置されるため、傾斜端面37に略垂直な方向の延在長が、カメラ43の光学中心軸45に沿う長さよりも長くなる。そのため、導光体は、傾斜配置した先端近傍の直線長を長くとれる。
【0070】
導光体は、傾斜端側に光出射端面が配置されるので、
図4に示した硬性部25の側面視において、延在長が直角三角形の斜辺に相当する。この直角三角形は、高さが、硬性部25の略内径となる。
【0071】
従って、斜視内視鏡15では、カメラ43の傾斜側で、且つ後方側に、硬性部25の略内径を高さとした直角三角形に囲まれる十分な配索スペース(屈曲空間105)を確保することができる。
【0072】
また、従来構造に比べ、十分な屈曲空間105が確保された導光体は、硬性部内空間において、曲率半径の大きな屈曲部91を収容できる。その結果、導光体は、光導波路からの曲げによる放射損失を生じにくくした収容が可能となる。
【0073】
また、斜視内視鏡15では、硬性部25には、傾斜端面37に照明光軸55が略垂直に配置される自発光体が設けられる。
【0074】
この斜視内視鏡15では、硬性部25が、照明手段に加え、自発光体(例えばLED63)を有する。これにより、斜視内視鏡15は、それぞれの長所を活かした異なるタイプの照明手段を搭載できる。近年、自発光体は、十分な光強度の白色照明を出射するものが開発されている。一方、自発光体では十分な光強度が得られないIR励起光には、IR励起光源35に接続した導光体(例えば光ファイバ53)を使用できる。斜視内視鏡15は、白色照明用に自発光体を用いることで、白色照明用とIR励起光用の双方に導光体を使用した場合に比べ、コストを大幅に抑制できる。また、斜視内視鏡15は、自発光体を用いることにより、軽量化が可能となる。斜視内視鏡15は、常に医者或いはその補助者(以下「医者等」)により把持されて施術が行われることが多い。このため、軽量化された斜視内視鏡15は、医者等の負担を軽減できる。
【0075】
また、斜視内視鏡15では、照明手段は、IR励起光源35に接続され、被写体を蛍光発光させるための励起光(例えばIR励起光)を出射し、自発光体は被写体を広範に照明するための白色照明光を出射する。
【0076】
この斜視内視鏡15では、被写体に白色照明光(可視光)を照射することにより、被写体の可視光画像が得られる。これに加え、例えば手術等の前に予め被写体内に投与された蛍光薬剤にIR励起光を照射することで、蛍光発光による例えば深層の血管情報が得られる。即ち、可視光観察と赤外光観察との双方が可能となる。
【0077】
また、斜視内視鏡15では、照明手段は、被写体を蛍光発光させるための励起光(例えばIR励起光)を出射する自発光体であり、硬性部25には、傾斜端面37に照明光軸55が略垂直に配置され、被写体を広範に照明するための白色照明光を出射する自発光体が設けられる。
【0078】
この斜視内視鏡15では、照明手段は、被写体を蛍光発光させるためのIR励起光を出射する自発光体となる。これに加え、被写体を広範に照明するための白色照明光を出射する自発光体も設けられる。従って、斜視内視鏡15は、IR励起光および白色照明光の双方が、異なる自発光体から出射される。この斜視内視鏡15では、導光体が不要となるので、導光体を使用した場合に比べ、コストを更に抑制できる。また、更なる軽量化が可能となる。また、更なる軽量化により、医者等の負担をより一層軽減できる。
【0079】
[放熱構造]
実施の形態1に係る斜視内視鏡15は、スコープ19の先端に設けられ、スコープ19の先端側の軸線39に鋭角の挟角αを有して傾斜する傾斜端面37が形成される硬性部25を有する。斜視内視鏡15は、硬性部25に内設され、光学中心軸45が傾斜端面37に略垂直となるカメラ43と、硬性部25に内設され、傾斜端面37から照明光を出射する自発光体(例えばLED63)とを有する。斜視内視鏡15は、傾斜端面37と略平行に形成されてLED63を実装し、LED63からの発熱が伝わる受熱面107を有するとともに、この受熱面107から光学中心軸45に沿う方向に延在する熱伝導部109を有する一次伝熱体111と、を有する。
【0080】
この斜視内視鏡15では、LED63が、一次伝熱体111における熱伝導部109の受熱面107に固定される。一次伝熱体111は、例えば銅あるいはアルミ等の熱伝導率の高い金属よりなる中実のブロック体として形成される。熱伝導部109は、傾斜端面37に対して略垂直なカメラ43の光学中心軸45に沿う方向に延在する杆状となる。LED63は、この杆状となった熱伝導部109の一端面に設けられた受熱面107に基板が平行に固定されるため、斜視方向となるカメラ43の撮影画角に対して照射範囲を重ね合わせることができる。
【0081】
熱伝導部109は、延在方向に垂直な断面が、受熱面107とほぼ同じ面積となる。熱伝導部109は、この受熱面107とほぼ同じ面積の断面積を有して光学中心軸45に沿ったブロック体である。一方、従来の放熱構造において、LED63の基板を固定していた突出部は、SUS等の薄い金属板に小片状の切欠き部を設け、この切欠き部の基端を屈曲させて形成していた。この放熱構造では、熱伝導に寄与する断面積は、小片状の切欠き部における基端(屈曲部)の断面積となる。このため、一次伝熱体111の熱伝導部109と、突出部とを比較した場合、熱伝導に寄与する断面積は、突出部に比べて一次伝熱体111の熱伝導部109が遙かに大きくなる。また、一次伝熱体111は、突出部に比べ、物体の比重量と比熱の積に関係する熱容量を、十分に大きく確保できる。言い換えれば、一次伝熱体111の熱伝導部109は、熱と電気の相似性を考えた場合の熱抵抗が突出部に比べ十分に小さい。その結果、一次伝熱体111の熱伝導部109に形成した受熱面107にLED63を搭載する放熱構造では、突出部にLED63を搭載する放熱構造に比べ、効率のよい熱流が得られる。これにより、大幅に放熱効率を向上させることができる。
【0082】
また、一次伝熱体111は、熱伝導部109が、受熱面107から光学中心軸45に沿って延在するため、LED63との接続部近傍が硬性部25の内壁面113に接触することがない。そのため、LED63の発熱による熱流が硬性部25に短距離の熱伝導で伝わり、硬性部表面を昇温させることを抑制できる。
【0083】
更に、熱伝導部109は、光学中心軸45に沿う方向に延在して配置されている。このため、熱伝導部109は、円筒状の硬性部25における内部空間において、軸線39に傾斜した方向で、直径方向の一端から他端に向かって、広い収容空間を利用して配置が可能となる。言い換えれば、広い収容空間を有効に利用できる形状および姿勢配置であるので、収容構造に余裕ができる。斜視内視鏡15の放熱構造では、その分、硬性部25の小径化が実現可能となる。
【0084】
従って、実施の形態1に係る斜視内視鏡15によれば、斜視方向の撮影画角と照射範囲を重ね合わせつつ効率的な放熱が行え、硬性部表面の温度を安全な範囲に抑制し、且つ放熱構造の占有体積の増大を抑制できる。
【0085】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、一次伝熱体111が最も近接する硬性部25の内壁面113と一次伝熱体111との間、および一次伝熱体111とカメラ43との間には、断熱材115が設けられている。
【0086】
この斜視内視鏡15では、一次伝熱体111は、LED63からの発熱が伝わることにより、温度が上昇する。昇温した一次伝熱体111は、硬性部25の内壁面113や、カメラ43と空気層により離間している。この離間距離が小さい場合、熱は、熱対流あるいは熱ふく射により伝達される。このような固体と流体との間の熱移動で熱伝導、熱対流、熱ふく射の3形式が混ざり合った現象を熱伝達という。一次伝熱体111は、硬性部25の内壁面113に最も近接する間、およびカメラ43との間に、断熱材115が設けられている。断熱材115は、熱伝導率の小さい材質に、反射率の高い箔等を積層することにより、一次伝熱体111からの熱の伝達を効果的に抑制できる。これにより、一次伝熱体111に断熱材115を付設した放熱構造は、カメラ43および硬性部表面の温度を安全な範囲に抑えることができる。
【0087】
なお、断熱材115は、一次伝熱体111と接触する反対面が、硬性部25の内壁面113に接触してもよい。この場合、断熱材115は、一次伝熱体111を内壁面113に支持する支持部材としての作用も有する。
【0088】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、受熱面107と反対側の熱伝導部109の延在方向先端部117には、二次伝熱体119が一体または別体で接続される。二次伝熱体119は、熱伝導部109と反対側に放熱部121を有し、放熱部121は、硬性部25の内壁面113に接触する。
【0089】
この斜視内視鏡15では、熱伝導部109の延在方向先端部117に、二次伝熱体119が接続される。従って、受熱面107に伝わったLED63からの発熱は、熱容量の大きな熱伝導部109を通った後、延在方向先端部117に接続される二次伝熱体119へと流れる。熱伝導部109へと伝わった熱は、熱伝導部109の表面から硬性部25の内部空間へも放熱される。従って、二次伝熱体119へ伝わる温度は、受熱面107よりも下がる。二次伝熱体119へ伝わった熱は、硬性部25の内壁面113に接触する放熱部121から硬性部25へ伝わる。硬性部25へ伝わった熱は、最終的に、硬性部25の表面から安全な範囲の温度で外部へと放熱される。
【0090】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、硬性部25に、照明光軸55が傾斜端面37に対して略垂直となる照明手段が内設される。LED63は、光学中心軸45と照明光軸55とを通る第1の仮想線59から平行にシフトした第2の仮想線61上の位置にオフセットして配置される。
【0091】
この斜視内視鏡15では、第1の仮想線上に、照明手段、カメラ43、およびLED63を並べて配置する場合に比べ、LED63が第2の仮想線61にオフセットされる分、直径方向の収容密度が緩和される。その結果、カメラ43、照明手段、LED63の直径が特定される場合には、硬性部25の小径化が可能となる。また、逆に、硬性部25の内径が特定されている場合には、直径の大きいカメラ43、照明手段、LED63の搭載が可能となる。
【0092】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、放熱部121は、硬性部25の内壁面113における円周長の少なくとも略半分以上の長さを有して円弧状に形成され、内壁面113の放熱部121が接触しない放熱部非接触部123には、照明手段に接続される光ファイバ53が配置される。
【0093】
この斜視内視鏡15では、二次伝熱体119の放熱部121が、硬性部25の内壁面113における円周方向に沿って円弧状に形成される。この円弧の長さは、円周長の少なくとも略半分以上の長さを有する。放熱部121は、硬性部25における円筒状の内壁面113に対して円周方向の略半分以上の円弧長で接触することにより、内方に収容される他部材と干渉することなく、内壁面113との接触面積を大きく確保できる。これにより、小径化を阻害することなく、効率的な放熱を行うことができる。円弧状の放熱部121は、内壁面113の接触始端125において温度が高く、内壁面113に接触しながら円周方向に延在した接触終端127の温度が、接触始端125よりも低くなる。これは、内壁面113から外部へ放熱が行われた結果である。放熱部121は、接触終端127で温度差の縮小により、熱伝導(即ち、放熱量)も小さくなる。また、円弧状となって放熱部121が接触する硬性部25における内壁面113の円周方向には、放熱部121が接触しない放熱部非接触部123が設けられる。この放熱部非接触部123には、内壁面113に近接して硬性部25の軸線39に沿う方向で延在する光ファイバ53が配置される。斜視内視鏡15の放熱構造では、LED63とは別に設けられる照明手段の導光部材(光ファイバ53)を、放熱部121の放熱効果が小さくなったスペース(即ち、放熱部非接触部123)を有効に利用して配置している。
【0094】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15では、二次伝熱体119には、熱伝導部109と放熱部121の間に、他部材と接触しない垂下伝熱部129が設けられている。
【0095】
この斜視内視鏡15では、二次伝熱体119に、垂下伝熱部129が設けられている。この垂下伝熱部129は、一次伝熱体111の熱伝導部109における延在方向先端部117と、二次伝熱体119の放熱部121との間に設けられる。すなわち、二次伝熱体119は、一次伝熱体111の延在方向先端部117から放熱部121までの間が、硬性部25の内部空間に他部材と接触せずに露出する。硬性部25の内部空間には、空気が充填される。これにより、垂下伝熱部129は、空気に対して熱対流、熱ふく射により放熱がなされる。これら熱対流、熱ふく射による熱伝達率は、熱伝導に比べて熱伝達率が小さい。従って、垂下伝熱部129は、熱と電気の相似性からコンデンサ的役割を果たす。これにより、一次伝熱体111からの熱が流れた垂下伝熱部129は、所定の温度に昇温し、放熱部121との間に生じる温度差(温度勾配)により放熱部121へ効率よく熱を伝えることができる。
【0096】
なお、放熱構造が最初に内壁面113に接触することとなる接触始端125における外表面の温度は、一次伝熱体111における熱伝導部109の熱容量、および二次伝熱体119における垂下伝熱部129の熱対流や熱ふく射による吸熱により、安全な範囲に下げられる。
【0097】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15は、一次伝熱体111に接続される二次伝熱体119の垂下伝熱部受熱面133が、垂下伝熱部129の肉厚tよりも大きい距離Lで硬性部25の内壁面113から離間している。
【0098】
この斜視内視鏡15では、垂下伝熱部129の上端における垂下伝熱部受熱面133と反対側の面は、内壁面113から直線距離s(s=L-t)の空隙135を有している。この空隙135は、垂下伝熱部受熱面133と反対側の面から内壁面113へ熱伝達により熱が伝わる際の熱抵抗となる。この熱抵抗は、少なくとも上記の断熱材115を介して垂下伝熱部129を内壁面113に密着させた場合の熱抵抗よりも大きくなるように直線距離sが設定されている。これにより、硬性部25では、空隙135を確保することで断熱材115を省略して、部品点数の増大を抑制している。
【0099】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15は、一次伝熱体111と二次伝熱体119とが別体で形成され、熱伝導部109の延在方向先端部117に、二次伝熱体119がねじ131により締結される。
【0100】
この斜視内視鏡15では、一次伝熱体111と二次伝熱体119とが、別部材で形成される。熱容量を確保したい一次伝熱体111には、例えば比熱の大きな銅を用いることができる。また、内壁面113との接触を良好としたい二次伝熱体119には、例えばアルミを用いることができる。これら異種金属が一次伝熱体111と二次伝熱体119とに用いられた場合、ねじ131を用いることにより、双方を簡単に接続できる。また、一次伝熱体111と二次伝熱体119とを、別体で組み付けできるので、極めて小さい硬性部25の内部空間への良好な組付け性を確保することができ、生産性を高めることができる。
【0101】
また、実施の形態1に係る斜視内視鏡15は、LED63を実装し、基端側から延在している伝送ケーブルの先端が接続される2つの電極PD1と、LED63の発光に伴う発熱を一次伝熱体111に放熱する放熱部HR1とを有する実装回路体93、を更に有する。それぞれの電極PD1と、放熱部HR1とは分離して配置される。
【0102】
この斜視内視鏡15では、実装回路体93において、伝送ケーブルの先端が接続される2つの電極PD1と放熱部HR1とが分離かつ離間して配置されている。これにより、電極PD1と離間した状態で、LED63の発光に伴って生じる発熱が放熱部HR1を介して一次伝熱体111に効率的に伝わるとともに、伝送ケーブルの導線を電極PD1のそれぞれに簡易に接続可能となり、製造を効率化できる。
【0103】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、先端面に傾斜端面を有する硬性部において、カメラより後方の硬性部内空間に、ほぼ直径方向に渡る収容空間を確保できる斜視内視鏡として有用である。
【符号の説明】
【0105】
15 斜視内視鏡
19 スコープ
25 硬性部
37 傾斜端面
39 軸線
43 カメラ
45 光学中心軸
53 光ファイバ
55 照明光軸
59 第1の仮想線
61 第2の仮想線
63 LED
107 受熱面
109 熱伝導部
111 一次伝熱体
113 内壁面
115 断熱材
117 延在方向先端部
119 二次伝熱体
121 放熱部
123 放熱部非接触部
129 垂下伝熱部
131 ねじ
133 垂下伝熱部受熱面