(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】粒子の安定性と凝集を光学的に測定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20220405BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220405BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20220405BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20220405BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01N15/14 D
G01N21/64 Z
G01N21/01 B
G01N21/59 Z
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2018516798
(86)(22)【出願日】2016-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2016073471
(87)【国際公開番号】W WO2017055583
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-05-27
(32)【優先日】2015-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515132571
【氏名又は名称】ナノテンパー・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】バースケ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーア,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブライトシュプレッヒャー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】デリックス,ヨナタン
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-504398(JP,A)
【文献】特開2005-091168(JP,A)
【文献】特開2003-294754(JP,A)
【文献】特開2007-046904(JP,A)
【文献】特開2009-098049(JP,A)
【文献】特開平03-020642(JP,A)
【文献】特開2008-051747(JP,A)
【文献】特開2008-304314(JP,A)
【文献】特開平06-027018(JP,A)
【文献】特開2000-139498(JP,A)
【文献】特開平07-120376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0013336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0234865(US,A1)
【文献】特開2009-014407(JP,A)
【文献】特表平07-503322(JP,A)
【文献】特開2013-033031(JP,A)
【文献】特開平07-092076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 21/64
G01N 21/01
G01N 21/59
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル容器(30)に入っている液体サンプル(10)中の粒子の少なくとも安定性及び凝集を光学的に測定するための方法であって、該方法は下記工程:
液体サンプルを入れたサンプル容器(30)を温調素子(77)上に置き、そしてサンプル容器(30)及び液体サンプル(10)を、温調素子(77)との接触により温度調節する工程、ここで温調素子(77)は、シリコンを含む材料又はシリコンからなる材料で製造されている、
粒子を蛍光的に励起するために、サンプル(10)に少なくとも一つの第一の波長の光(21)を照射する工程、
粒子の散乱を調べるために、サンプル(10)に少なくとも一つの第二の波長の光(20)を照射する工程、
サンプル(10)によって放出される蛍光を測定する工程、及び
減光(22)を第二の波長で測定する工程
を含み、ここで、
第二の波長の照射光(20)は、サンプル容器(30)を通過し、温調素子(77)により反射され、再度サンプル容器(30)を反対方向に通過して、減光として出射され、
安定性は測定された蛍光に基づいて測定され、凝集は測定された減光に基づいて測定される方法。
【請求項2】
蛍光及び減光が共通の光学システムで測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルの照射が、
i)第一及び第二の波長で同時に実施されない;又は
ii)第二の波長による照射は連続的に実施されるが、第一の波長による照射は断続的に実施される、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
第一の波長による照射は周期的に実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
蛍光及び減光が同時に測定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
i)減光及び蛍光が共通の検出器(53)によって測定される;
ii)減光が第一の検出器(50)及び/又は第二の検出器(51)によって測定され、第一の蛍光波長の蛍光が第一の検出器(50)によって測定され、第二の蛍光波長の蛍光が第二の測定器(51)によって測定される;又は
iii)減光が第一の検出器(52)によって測定され、第一の蛍光波長の蛍光が第二の
検出器(51)によって測定され、第二の蛍光波長の蛍光が第三の測定器(50)によって測定される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
サンプル容器(30)がキャピラリー(30)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
温調素子(77)が、
i)自己蛍光が1%未満で、自己蛍光をほとんど持たない、及び/又は
ii)第二波長の波長範囲で、30%を超える高い反射率を有する
材料でできている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
温調素子の表面に少なくとも一つの溝(90)が形成され、サンプル容器が溝(90)の上方に配置され、第二の波長の照射光(20)が溝(90)の底面から反射されて戻ってくる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
溝(90)が1~10mmの幅と、第二波長の光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
サンプル容器(30)が、測定中に、第一及び/又は第二の波長の照射光に対して及び/又は検出器に対して相対的にシフトする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
サンプル容器(30)が、数回行き来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数のサンプル容器又は複数のキャピラリー(30)が、
第一及び/又は第二の波長の照射光に対して及び/又は検出器に対して相対的にシフトすることによってスキャンされる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
i)蛍光値が、シフト全体にわたる蛍光の強度を積分することによって求められる、及び/又は
ii)減光値が、シフト全体にわたる減光の強度を積分することによって求められる、
請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
測定中、
i)熱安定性を決定するために、サンプルの温度を変化させる;
ii)化学安定性を決定するために、様々な液体サンプル中の変性剤の濃度を様々に選択する;及び/又は
iii)時間に関する安定性を決定するために、サンプルを実質的に一定の温度で1時間
を超える時間維持する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
測定中、
i)熱安定性を決定するために、サンプルの温度を上昇させる、請求項15に記載の方
法。
【請求項17】
測定中、複数のサンプル容器及び/又は光学システムが連続的に数回行き来し、蛍光及び/又は減光の測定がその運動中に実施される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第二の波長(20)が、サンプル又はサンプル中の粒子によって1%未満しか吸収されないように選ばれる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
第二の波長(20)が、サンプル又はサンプル中の粒子によって0.1%未満しか吸収されないように選ばれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第二の波長(20)が、サンプル又はサンプル中の粒子によって0.05%未満しか吸収されないように選ばれる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第一波長の光及び第二波長の光が合体されて同一直線の光線になり、それがサンプル容器に照射される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
反射されてサンプル容器から照射方向とは反対方向に出ていく第二波長の減光が、照射方向から最大でも5°しか偏位していない、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
第二波長の減光が、2°未満しか偏位していない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第二波長の減光が、1°未満しか偏位していない、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に従って、サンプル容器(30)に入っている液体サンプル(10)中の粒子の安定性及び凝集を光学的に測定するための装置であって、該装置は、
試験される粒子を蛍光的に励起するために、第一の波長の光をサンプル容器に照射するための第一の光源(40)と、
粒子の散乱を測定するために、第二の波長の光をサンプル容器に照射するための第二の光源(41)と、
サンプルから放射された励起蛍光を測定するための第一の検出器と、
第二の波長で減光(22)を測定するための第二の検出器(ここで、第二の波長の照射光(20)はサンプル容器(30)を通過し、反射され、再度サンプル容器を反対方向に通過し、減光として出射する)と、そして
測定された蛍光に基づいて粒子の安定性を決定し、測定された減光に基づいて粒子の凝集を決定する評価手段と
を含む装置。
【請求項26】
第二の波長の照射光が反射される反射面を有する温調素子を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
少なくとも一つのサンプル容器(30)を測定目的で表面に配置するように構成されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
少なくとも一つのサンプル容器(30)がキャピラリー(30)である、請求項26または27に記載の装置。
【請求項29】
反射面がシリコン(例えば結晶性シリコン)からなる、請求項26~28のいずれか1項
に記載の装置。
【請求項30】
少なくとも一つの溝(90)が温調素子の表面に形成され、サンプル容器が溝(90)の上方に配置され、第二の波長の照射光(20)が溝(90)の底面から反射されて戻ってくる、請求項26~29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
溝(90)が1~10mmの幅と、第二波長の光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法を実施するための、請求項25~31のいずれか1項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、粒子の安定性を光学的に測定するための装置又はシステム及び方法に関する。特に、本発明は、粒子の安定性だけでなく、粒子の凝集も光学的に測定できるシステム及び方法に関する。本発明によれば、好ましくは粒子の安定性及び凝集が単一の装置で、好ましくは同時又はほとんど同時に測定できる。
【背景技術】
【0002】
抗体などの活性薬は、それらの天然形でのみ活性であるように開発されているので、変性した活性薬は有効でないことが多く、避ける必要がある。変性は、タンパク質などの生体分子の構造変化を意味し、多くの場合、前記分子の生物学的機能の喪失と関連する。変性は、物理的又は化学的影響の結果でありうる。従って、薬物の変性を防止した、すなわち、例えば熱的、化学的及び/又は時間的に安定化させた活性薬製剤が開発されねばならない。
【0003】
活性薬の凝集も無効性をもたらしうる。さらに、凝集及び/又は変性した粒子、例えば凝集した抗体は、体内で免疫系の反応を誘発しうるので、薬物中に(それらの存在を)避けねばならないか又は薬物中のそれらの割合を最小化しなければならない。
【0004】
抗体などの粒子の変性は、有効性を低減するので、それ自体避けねばならない。抗体などの粒子の凝集は、免疫系の反応を誘発するほか有効性の低下も招きうるので、それ自体避けねばならない。
【0005】
粒子はなぜ凝集及び/又は変性するのか不明なことが多い。粒子は変性するから、すなわちその天然形でないから凝集するのか、それとも、粒子は天然形の状態で凝集し、その後変性するのか?そこで、粒子を包括的に特徴付けするために、単に凝集だけ又は単に変性だけを互いに別個に分析するだけでは不十分なことが多い。
【0006】
本発明のシステム及び方法を用いると、粒子の変性も凝集も測定できる。特に、本発明のシステム及び方法を用いると、粒子の変性ならびに凝集が、事実上同時に(実質的に同時に)又は同時に測定できる。
【0007】
粒子の変性は“粒子内”過程であるので、粒子の内在蛍光(例えば、トリプトファン蛍光、チロシン蛍光)を測定することにより、本発明の方法及びシステムで測定することができる。同時に、粒子の凝集は、粒子のサイズを変更する“粒子間”過程であるので、非吸収光の散乱により測定することができる。
【0008】
光の散乱、例えばレイリー散乱の場合の光の静的散乱は、粒子サイズ(半径)の6乗に依存するので、粒子サイズの変化、従って粒子の凝集を測定するのに非常に適している。前記光散乱法は公知であり、多数の装置及び方法によって使用されている。特に、先行技術で知られている装置は、一定の立体角で粒子の散乱光、すなわち入射光に対して一定の立体角で粒子によって散乱される光の割合を測定する。粒子が大きいほど、そして波長が短いほど、固定され適切に選ばれた角度の散乱光の強度は大きくなる(例えば、http://www.lsinstruments.ch/technology/static_light_scattering_sls/参照)。そのような方法は、例えば、米国特許出願US 2014/0234865 A1に記載されている。
【0009】
散乱光は例えば温度上昇中に増大することから、これらの方法は、粒子のサイズ、従って粒子の凝集の修正を余儀なくされることがある。光散乱法の分野の当業者は、試験される粒子に照射される励起光が検出光学系に入るのを避けねばならないことは知っている。当業者は、常に、前記励起光の直接検出を避けるように又は励起光を遮断するように、対応装置を構築しようとするが、これは相当な技術努力を必要とする。例えば、独特許DE 10 2007 031 244に、散乱光の測定に関して反射は望ましくないこと、そしてまたガラスキュベットでの反射も問題をもたらしうることが記載されている。
【0010】
そこで、粒子の安定性及び凝集を測定するための改良もしくは代替のシステム又は改良もしくは代替の方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US 2014/0234865 A1
【文献】DE 10 2007 031 244
【発明の概要】
【0012】
本発明の装置及び本発明の方法は、独立クレームの特徴によって規定される。好適な態様は副クレームから引き出すことができる。
本発明は、サンプル容器に入っている液体サンプル中の粒子の安定性及び/又は凝集を光学的に測定又は決定する方法に関する。本発明によれば、凝集は、安定性とは無関係に測定できるが、好ましくは安定性とともに凝集も決定できる。本発明の方法は、下記工程の少なくとも一つを含む。
【0013】
サンプルに、第一の波長の光又は光線を、特に粒子の蛍光発光を刺激するために照射する。従って、第一の波長の光は蛍光励起光である。サンプルの蛍光を決定するために、サンプルから放出された蛍光を測定する。典型的には、蛍光の波長は、蛍光励起光の第一の波長とは異なる。測定された蛍光の輝度又は強度に基づき、粒子の安定性に関する情報が得られる。好ましくは、検出器は、260nm~300nmの波長範囲、さらに好ましくは270nm~290nmの波長範囲の蛍光励起光と320nm~380nmの波長範囲の蛍光発光で蛍光を測定する。
【0014】
粒子の凝集は、サンプルを好ましくは第一の強度I0を有する第二の波長の光で照射することによって決定される。本発明によれば、第一又は第二の波長は、例えばレーザーによって提供されるような正確な波長に対応しうる。本発明によれば、第一及び第二の波長という用語は、“中”波長又は波長範囲の意味では“中心”波長でもありうる。例えば、波長範囲は、光源がレーザーでなければ、光源から放出される。本発明によれば、好ましくは、狭い又は広い波長範囲にわたって光を放出するLEDが使用される。波長の範囲を制限するために、帯域通過フィルター=“励起フィルター”が好ましくは光路に組み込まれる。例えば、帯域通過フィルターは、所望の励起波長範囲を維持するために、30nm~1nmの帯域通過幅を有しうる。これによって、LEDから放出される光が蛍光発光検出の波長範囲にない波長範囲に限定されるので、蛍光に関して特に好適である。さらに、減光測定にもLEDを使用するのが好適である。また、この場合、適切な帯域通過幅を有する帯域通過フィルターは、サンプルに放射される波長範囲を“第二の波長”(第二波長範囲)に限定するためにも同様に使用できる。
【0015】
粒子の散乱は、好ましくは第二の波長で決定される。本発明によれば、減光は第二の波長で測定される。サンプル容器を通過する第二の波長の照射光I0と、好ましくはこれも第二の波長の出射光I(強度I)の比は減光を説明する。好ましくは、入射放射線I0は、サンプル容器を通過し、反射され、入射方向とは実質的に反対側にサンプル容器を通過し、その後、光I(本発明の意味においては減光とも呼ばれる)として出る。測定された出射光(減光)の輝度又は強度Iに基づき、特に照射光の強度I0との関連で、粒子の安定性に関する情報が得られる。本発明によれば、純粋な凝集の測定は、上記の蛍光測定なしでも実施できる。
【0016】
好ましくは、第二の波長は、試験されるサンプル中の粒子が前記波長で吸収しないか又はごくわずか、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、さらに好ましくは4%、3%、2%又は1%未満しか吸収しないように選ばれる。さらに好適なのは0.1%未満である。さらに、波長は、“サンプル”全体又は“サンプル液体”に関してではなく、粒子の吸収挙動に関して選ばれるのが好適である。なぜならば、おそらくサンプル又はサンプル液体中に、選択された液体との関係で吸収する添加物が存在するからである。しかしながら、本発明は粒子の安定性及び凝集を調べるので、残りの成分の吸収挙動は“一定”と仮定できる。
【0017】
例えば、タンパク質は、それらのペプチド結合(吸収極大はおよそ220nm)及びそれらのアミノ酸(吸収極大はおよそ280nm)のため、200nm~300nmの範囲の光を吸収することが知られている。そこで、本発明によれば、好ましくは300nmより大きい波長を有する光が使用される(
図16参照)。好ましくは、第一及び第二の波長は異なる。あるいは、第一及び第二の波長は等しくてもよい。
【0018】
蛍光を測定するために、少なくとも一つの第一の波長が使用される。本発明によれば、蛍光測定のために第一の波長のほかに更なる波長を使用することも可能である。従って、例えば、第一の蛍光は280nmの波長で励起され、第二の蛍光は632nmの第二の蛍光チャンネルで励起される。
【0019】
それに対応して、本発明によれば、少なくとも一つの第二の波長が減光の測定に使用できる。例えば、減光は少なくとも二つの異なる波長、例えば385nmと532nmで測定できる。ここでは、例えば、ミー散乱などを定量するために、二つの波長で測定された値の比を形成及び評価することが可能である。
【0020】
言い換えれば、本発明によれば、二つ以上の蛍光チャンネル及び/又は二つ以上の減光チャンネルを決定のために使用することが可能である。本発明の好適な態様又は本発明の好適な特徴の組合せは、以下の例示的側面に記載されている。
【0021】
1a.特に、サンプル容器に入っている液体サンプル中の粒子、リガンド及び/又は粒子-リガンド複合体の安定性及び/又は凝集を光学的に測定するための方法。好ましくは、サンプル容器は反射面に配置される。その場合、サンプル容器は表面と少なくとも部分的に接触している。
【0022】
1b.好ましくは、粒子を蛍光的に励起するために、サンプルに少なくとも一つの第一の波長、又は少なくとも一つの第一の波長範囲の光を照射する工程を含む、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0023】
1c.好ましくは、粒子及び/又はリガンド結合の散乱を調べるために、サンプルに少なくとも一つの第二の波長又は少なくとも一つの第二の波長範囲の光を照射する工程を含む、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0024】
1d.好ましくは、サンプルによって放出される蛍光を測定する工程を含む、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
1e.好ましくは、少なくとも一つの第二の波長で又は少なくとも一つの第二の波長範囲で減光を測定する工程を含む、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0025】
1f.少なくとも一つの第二の波長又は少なくとも一つの第二の波長範囲の照射光がサンプル容器に照射され、その結果、少なくとも一部はサンプル容器を通過し、表面によって反射され、少なくとも一部は再度サンプル容器を実質的に反対方向に通過し、減光として出射する、前記側面に記載の方法。
【0026】
1g.好ましくは、測定された蛍光に基づいて安定性を、及び/又は測定された減光に基づいて凝集及び/又はリガンド結合を決定する工程を含む、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0027】
2.蛍光及び減光が共通の光学システムで測定される、側面1に記載の方法。
3.第一及び第二の波長によるサンプルの照射が同時に実施されない;又は第二の波長による照射は連続的に実施されるが、第一の波長による照射は断続的、好ましくは周期的に実施される、側面1又は2のいずれか一つに記載の方法。
【0028】
4.蛍光及び減光が、順に、ほぼ同時に測定及び/又は放出される、前記側面のいずれか一つに記載の方法。ほぼ同時とは、好ましくは最大でも4ms、2ms又は1ms以内である。例えば、第一波長の光だけを1ms間スイッチオンし、その後第二波長の光を1ms間スイッチオンすると、ほぼ同時とは2ms以内を意味する。本発明によれば、同時が好適である。同時測定は、例えば、
図8の構成で達成できる。同時測定は、より高い効率又は性能という特別の利点を有する。従って、
図8の構成を用いると、例えば、凝集を測定する場合、
図7より5倍高い性能が可能である。
【0029】
5.減光及び蛍光が共通の検出器(例えば
図6参照)で測定される;減光が第一の検出器及び/又は第二の検出器によって測定され、第一の蛍光波長の蛍光が第一の検出器によって測定され、第二の蛍光波長の蛍光が第二の測定器(51)で測定される(例えば
図7参照);又は減光が第一の検出器によって測定され、第一の蛍光波長の蛍光が第二の検出器によって測定され、第二の蛍光波長の蛍光が第三の検出器によって測定される(例えば
図8参照)、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0030】
6.サンプル容器がキャピラリーである、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
7.サンプル容器が温度調節(加熱又は冷却)されている、好ましくは温調素子(tempering element)(加熱又は冷却素子)の上に置かれ、接触によって調節処理されている、前記側面のいずれか一つに記載の方法。ここで、温調素子は、好ましくは、反射面を含み、好ましくは第二波長の照射光を反射し、再度サンプル容器(30)を反対方向に通過して減光として出射する。
【0031】
8.温調素子がほとんど自己蛍光を持たない材料でできている、側面7に記載の方法。好ましくは、材料は、最大蛍光シグナルの5%、3%未満、さらに好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.5%未満の自己蛍光しか持たない。言い換えれば、例えば、最大出力を有する励起LEDが光を放出し、蛍光検出器が最大100シグナルを測定した場合(飽和前)、自己蛍光材料に帰属できるのは単に1というシグナル強度だけで、これが1%である。材料が第二波長の波長範囲で高い反射率、好ましくは>30%、好ましくは>40%、さらに好ましくは>50%を有する場合、さらに有利である。好ましくは、材料はシリコンを含有する又は純シリコンからなる。
【0032】
さらに好適な側面に従って、表面は、少なくとも一つの窪み、例えば、測定中にキャピラリーを置いておく温調素子の表面の少なくともある領域にわたって伸びているファロー(furrow)、溝(groove)、又はマイクログルーブ(micro groove)の形態の窪みを有する。好ましくは、キャピラリーは、測定中、温調素子の表面に直接接触しているが、キャピラリーは、溝の深さのために溝の上方にあり、溝の底面とは直接接触していない。好ましくは、溝は、1~10mm、さらに好ましくは2~8mm、さらに好ましくは3~7mm、さらに好ましくは約3mmの幅であるが、本発明の光の背面反射は、好ましくは、溝の上方にあるキャピラリーの領域で発生又は測定される。好ましくは、溝はおよそ10~30μmの深さを有する。特に、溝は、背面散乱における干渉効果をさらに抑制するために、使用光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する。従って、好ましくは、使用LED光源は、およそ15μmの範囲のコヒーレンス波長を有するので、>7.5μmの溝深が好適である。
【0033】
溝の底面からの光の効率的な背面反射を保証するために、溝は好ましくは蝕刻されている。好ましくは、溝又は溝の底面は、好ましくはナノメートル範囲、例えば±5nm、好ましくは±1nmの平均粗度を有する。好適な態様に従って、溝は表面の実質的部分にわたって伸びているので、例えば、数本のキャピラリーが溝の上方に配置できる。さらに好適な態様に従って、溝は表面の端まで伸びていないので、シリコンは溝の周囲で一定の厚さを有し、ゆえに、例えば切断又はのこ引き(sawing)により、より容易に加工することができる。
【0034】
9.サンプル容器が測定中に、第一及び/又は第二の波長の照射光に対して及び/又は検出器に対して相対的にシフトし、好ましくは数回(連続的に)行き来し、さらに好ましくは複数のサンプル容器又は複数のキャピラリーが前記相対運動によってスキャンされる、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0035】
10.蛍光値が、シフト全体にわたる蛍光の強度を積分することによって求められる及び/又は減光値が、シフト全体にわたる減光の強度を積分することによって求められる、側面9に記載の方法。
【0036】
11.測定中、熱安定性を決定するために、サンプルの温度を変化させる、好ましくは上昇させる;化学安定性を決定するために、様々な液体サンプル中の変性剤の濃度を様々に選択する;及び/又は時間に関する安定性を決定するために、サンプルを実質的に一定の温度で1時間を超える時間維持する、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0037】
12.測定中、複数のサンプル容器及び/又は光学システムが連続的に数回行き来し、蛍光及び/又は減光の測定がその運動中に実施される、側面11に記載の方法。
13.第二の波長が、サンプル又はサンプル中の粒子によって1%、0.1%、0.05%未満、好ましくは0.1%未満しか吸収されないように選ばれるので、減光の測定が第二波長の光の散乱の直接尺度となる、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0038】
14.第一波長の光及び第二波長の光が合体されて同一直線の光線になり、それがサンプル容器に照射される、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
15.反射されてサンプル容器から照射方向とは反対方向に出ていく第二波長の減光が、照射方向から最大でも5°、好ましくは2°未満、さらに好ましくは1°未満しか偏位していない、前記側面のいずれか一つに記載の方法。
【0039】
16a.特に前記側面のいずれか一つに従って、特に、サンプル容器に入っている液体サンプル中の粒子及び/又はリガンド及び/又は粒子リガンド複合体の安定性及び/又は凝集を光学測定するための装置。
【0040】
16b.装置が、特に試験される粒子を蛍光的に励起するために、少なくとも第一の波長の光をサンプル容器に照射するための少なくとも一つの第一の光源を含む、前記側面のいずれか一つに記載の装置。
【0041】
16c.装置が、粒子及び/又はリガンド結合の散乱又は凝集を測定するために、少なくとも一つの第二の波長の光をサンプル容器に照射するための少なくとも一つの第二の光源を含む、前記側面のいずれか一つに記載の装置。
【0042】
16d.装置が、サンプルから放射された励起蛍光を測定するための少なくとも第一の検出器を含む、前記側面のいずれか一つに記載の装置。
16e.装置が、少なくとも一つの第二の波長で減光を測定するための少なくとも一つの第二の検出器を含み、第二の波長の照射光はサンプル容器を通過し、反射され、再度サンプル容器を反対方向に通過し、減光として出射する、前記側面のいずれか一つに記載の装置。
【0043】
16f.装置が、測定された蛍光に基づいて粒子の安定性を決定し、測定された減光に基づいて粒子及び/又はリガンド結合の凝集を決定する評価手段を含む、前記側面のいずれか一つに記載の装置。好ましくは、装置は、第一及び第二の光源の放出光をそれぞれ第一及び第二の波長に狭めるための第一及び/又は第二の帯域通過フィルターを含む。好ましくは、帯域通過フィルターは10nm、20nm又は30nmの帯域通過幅を有する。
【0044】
好ましくは、装置は、第二波長の照射光が反射される反射面を有する温調素子を有する。例えば、シリコンは、好適な反射挙動を有し、そして接触による温度調節にも適しているので、特に好適であることは明白である。さらに、装置は、少なくとも一つのサンプル容器を測定目的で表面に配置するのに適しているのが好適である。例えば、別個に配列されたキャピラリーの形態で又は複数のキャピラリーを収容した担体によって、数個のサンプル容器が表面に配置される。好ましくは、少なくとも一つの溝が温調素子の表面に形成される。サンプル容器は、第二波長の照射光が好ましくは少なくとも溝の底面から反射されるように溝の上方に配置できる。例えば、1~10mmの幅及び第二波長の光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する溝が形成されうる。
【0045】
17.側面1~15のいずれか一つに記載の方法を実施するための、側面16に記載の装置の使用。
本発明の方法又は本発明のシステムは、従来の光散乱測定と比較して全く異なる手法を有する。本発明によれば、好ましくは、散乱されない光が測定される。さらに、好ましくは、粒子によって吸収されない波長を有する光が使用される。つまり、測定シグナルは、粒子サイズの増大のために散乱が増加すると減少する。前記本発明の測定技術は、好ましくは、より速く、より正確で、より堅牢な凝集の同時検出(減光による)及びタンパク質の変性又はアンフォールディング(折り畳み構造のほどけ)の検出(蛍光による)を高出力で好ましくは可能にする特定の蛍光光学系と組み合わされる。
【0046】
本発明の方法は、好ましくは、凝集測定のための励起光がサンプル容器を2回通過し、反射されて検出器に戻る(
図1参照)ように構成される。本発明によれば、凝集測定のための励起光は、サンプル容器を1回だけ通過し、その後一方向透過を測定することも可能である。直接透過も反射後の透過も、励起光の“残余部分”が測定されることを意味する。すなわち、公知法ではまさに回避されるべきことである。
【0047】
本発明によれば、原則として、減光が測定される(例えば、https://de.wikipedia.org/wiki/Extinktion_(Optik)参照)。光学では、減光又は光学濃度は、知覚的な対数的に定式化された不透明度O、従って媒質を通過した後の放射線(例えば光)の減弱の尺度である。I0は入射する放射線、Iは出射する放射線で、減光Eは透過度τを対数値として説明する。
【0048】
【0049】
一般的に、吸収、散乱、回折及び反射のプロセスが減弱/減光に関与する。本発明によれば、好ましくは試験される粒子(例えば生体分子)によって吸収されない波長が使用され、反射及び回折のようなその他の影響変数が好ましくは一定に保たれるので、本発明によれば、実質的に純粋な散乱に基づく減弱が測定される。
【0050】
この手法は特に有益である。なぜならば、前記“散乱”測定原理は、粒子の内在蛍光を測定するための(単一)光学システムにうまく統合できるからである。従って、ただ一つの光学システムを用いて、nmスケールの粒子の変性もそれらのnm-μmスケールの凝集も検出又は測定できる。二つの測定は、構成にもよるが、順次、互いの直後、又はさらには同時に実施できる。
【0051】
本発明によれば、試験されるサンプルは好ましくはキャピラリーに入れて試験される。キャピラリーは迅速に所望の測定位置に導入できるため、複数のサンプルを同時に分析することが可能になるという好適な利点を追加する。さらに、これによって、高密度のデータ点が保証されるので、たとえ小さなシグナル変化でも正確に決定及び評価することが可能となる。これは、これまで既存の方法では保証されていなかったことである。
【0052】
本発明によれば、複数のキャピラリーは、測定装置のアレイ素子上に直接置くことができる。更なる態様に従って、複数のキャピラリーは、別のアレイ上に配置することもできるので、半自動又は自動的充填及び/又は測定が可能となる。
【0053】
本発明の出願人、NanoTemper Technologies GmbHは、キャピラリー内の液体を光学的に試験する測定装置を開発し、販売している。個々のキャピラリーを手に取って液体に浸漬し、その後別々にアレイ上に配置した後、測定装置に挿入することも知られている。別々のキャピラリーに充填する前記方法は、例えば、http://www.youtube.com/watch?v=rCot5Nfi_Ogに公開されているNanoTemper Technologies GmbHのビデオに示されている。個別充填は一定の個別サンプルには有益であるが、大量のサンプルの場合、前記方法は、容易に自動化できない多くの取扱い工程を必要とする。
【0054】
本発明と同一出願人によって出願された欧州特許EP2575787には、磁力によってアレイに保持されたキャピラリーが記載されている。これは、個々のキャピラリーのアレイへのより容易な及び/又はより正確な配置を可能にする。換言すれば、個々のキャピラリーの個別充填はさらに好適であるが、その後の工程は磁力によって支援されている。
【0055】
最後に、欧州特許EP2848310には、キャピラリー用の別個のアレイが記載されている。これも、半自動又は自動充填及び/又は測定を可能にする。特に、前記アレイは本発明の方法にも使用できる。これは、複数のキャピラリーを効率的に充填できるだけでなく、非常に高速でスキャンすることもできるという追加の利点を有する。
【0056】
以下で、いくつかの用語について、本願の文脈においてそれらの用語をいかに理解すべきか定義する。
粒子
本願の文脈において、粒子は、好ましくは、活性薬、一般に生体分子、例えばタンパク質、抗体、膜タンパク質、膜受容体、ペプチド、ヌクレオチド、DNA、RNA、酵素;分子フラグメント、“小分子”、糖、有機結合、非有機結合;小胞、ウィルス、細菌、細胞、ミセル、リポソーム、組織サンプル、組織切片、膜標本、マイクロビーズ及び/又はナノ粒子であるが、これらに限定されない。
【0057】
蛍光測定
粒子、好ましくはタンパク質は、化学的又は熱的に変性され得、内部構造変化は、内在蛍光、例えばトリプトファン蛍光、チロシン蛍光、フェニルアラニン蛍光、タンパク質の場合、好ましくはトリプトファン蛍光によって測定することができる。ここでは、粒子の構造/内部変化は、蛍光の強度の変化又は最大蛍光のシフト又は蛍光寿命の変化などによって検出できる。試験される粒子、例えばタンパク質のいわゆる融点もこのようにして決定できる。融点は、試験される粒子、例えばタンパク質が、半分折り畳まれ(例えば天然立体配座のタンパク質)、半分折り畳みのほどけた(例えば構造化されていない変性形のタンパク質)状態と定義される。この文脈において、蛍光強度の変化は、例えば、温度又は変性剤もしくは補因子/リガンドの添加に応じて決定でき、及び/又は時間的経過が記録できる。
【0058】
タンパク質を調べる場合、例えば、330nm±10nm及び350nm±10nmの波長でトリプトファン蛍光が同時に、しかしスペクトル的には分離されて測定できる。350nmにおける蛍光強度と330nmにおける蛍光強度の商(F350/F330)は、粒子の内部構造又は立体配座の変化に依存しているので、好適な測定値である。例えば、トリプトファンの蛍光発光極大は、トリプトファンがその疎水性環境(例えばタンパク質内)から、タンパク質のアンフォールディングのために親水性環境(例えば水)に出て行くと、短波長(例えば330nm±10nm)から長波長(例えば350nm±10nm)にシフトする。例えば、融点は、F350/F330曲線の一次微分の最大値から決定できる。
【0059】
減光/散乱測定
溶液中の粒子は照射光を散乱することができる。物理学において、散乱とは、一般的に局所的に異なる物体(散乱中心)との相互作用による物体の偏向を意味する。従って、粒子における光の散乱は、試験される粒子との相互作用による照射(励起)光の偏向である。散乱角θは、散乱光が偏向された角度と定義される。本発明によれば、散乱は、光が実際に、照射(励起)光の光線の経路から測定して、好ましくは約1°を超えて、好ましくは2°、3°、4°を超えて、好ましくは179°、178°、177°、176°未満偏向されたことを意味する。
【0060】
例えば、レイリー散乱(粒子寸法が光波長の~1/10、すなわち粒子寸法が光波長と比べて小さい)とミー散乱(粒子寸法が光波長の範囲以上)のように、異なる種類の散乱の間には区別がある。溶液中の散乱の程度は、粒子の寸法及び数に依存する。レイリー散乱の散乱強度は波長の4乗に反比例するので、長波長範囲よりも短波長範囲、例えば300~400nmでより明白である。散乱の程度は、照射光の強度を透過光の強度と比較することによる減光測定によって定量することができる。差は散乱光の量に対応するので、粒子又は粒子の凝集の形成の尺度としての役割を果たす。
【0061】
生体分子、例えばタンパク質の場合、300nmより大きい波長での減光の検出は有益である。特に、300~400nmでの減光の検出は有益であり、およそ385nmでは特に有益である。なぜならば、その波長では実質的に光が吸収されないからであるが(タンパク質の吸収極大はおよそ280nm)、レイリー散乱の波長依存性のため、散乱は非常に大きい。例えば、385nmの光の使用は、市場に出回っている適切なLEDは著しく短い波長を有するLEDよりも前記波長でより効率的であるので、有益である。特に、多数の光子を検出するためには強い光出力が有益である。従って、減光測定は、フォトンノイズによって制限されることが多い。フォトンノイズのシグナル-ノイズ比はポアソン分布に従う。すなわち、平方根(フォトン数)に従って改良する。
【0062】
さらに、減光のための上記波長の選択は更なる利点も有する。光が粒子に吸収されないので、粒子が破壊されず、この波長範囲で“強い”光出力が使用できる。減光測定用のLEDの光出力は、好ましくは100μWより大きい範囲、好ましくは1mWより大きい範囲である。好ましくは、減光測定のためのLEDの光出力は0.1mW~5mWの範囲である。
【0063】
減光測定のためには、シグナルのノイズがほとんどなく、励起光源のドリフトが少ないのが有益である。LEDは、適切なLEDコントローラーを用いて非常に安定的にノイズ削減的に動作できるので、減光測定に有益である。
【0064】
生体分子、例えばタンパク質は、有益な波長範囲より著しく小さいので、レイリー散乱が仮定できる。レイリー散乱は、粒径の6乗に依存するので、例えば粒子の凝集による粒子サイズの変化は、散乱の顕著な変化をもたらす。粒子における散乱は全空間方向に発生するので、本発明によれば、減光を通じて散乱又は散乱の程度を定量することが提案される。そうすることにより、散乱光が小さい角度範囲でしか検出されない従来の光散乱測定とは対照的に、散乱角に依存することなく全散乱の定量化が可能となる。さらに、減光測定は、例えば境界面における反射やダスト粒子などの汚染物といった測定欠陥(artifact)に対する感受性が低い。
【0065】
減光測定に好適な波長又は波長範囲は、例えばタンパク質の吸収スペクトルが示されている
図16から導き出すことができる。例えば、前記スペクトルから、280nmより大きい、好ましくは300nmより大きい波長が特に好適であるということが導き出せる。
【0066】
サンプル容器
本発明によれば、容器又はサンプル容器に入った液体又は流体の形態のサンプルが検査される。原則的には、本発明の方法は、一定の種類及び形状のサンプル容器に制限されない。しかしながら、好ましくは、いくつかの利点を有するキャピラリーがサンプル容器として使用される。例えば、細いキャピラリーの使用は、少量で済むために材料の無駄が削減される。さらに、細いキャピラリーは、それらの毛細管力だけで受動的に液体を吸引するための高い毛細管力を備えている。高粘度の液体でさえ、毛細管力によってキャピラリーに吸引できる。例えば、サンプルを上下逆にして吸引させることも可能である。そうすれば、重力も毛細管力の方向に作用するので、充填が支援される。使い捨てのキャピラリーの使用は、個々のサンプル間の交差汚染を回避する。細いキャピラリーとは、キャピラリーを通る光路長が短いことを意味する。これは非常に高濃度の溶液(高濃度の粒子)の測定にも有益である。本発明によれば、例えば、個々のキャピラリー又はアレイに入れたキャピラリーが使用できる。従って、例えば、数本のキャピラリー入りのアレイを反射面に置くことができ、数本のキャピラリーは、好ましくは、アレイからキャピラリーを取り出す必要なしに表面と接触する。言い換えれば、キャピラリーは、キャピラリーをアレイに入れたまま、接触温度調節によって、表面との接触により温度調節することができる。
【0067】
キャピラリー入りの好適なアレイは、例えば欧州特許EP2848310に記載されている(前記特許は引用によって本明細書に援用する)。特に、EP2848310は、マイクロウェルプレートから数本のキャピラリーの同時充填ができる数本のキャピラリー用アレイに関する。さらに、EP2848310は、マイクロリットル範囲の容積を有する液体を充填、運搬及び測定するための装置及び方法にも関する。好適な態様によれば、24本のキャピラリーが一つのアレイに配置できる。
【0068】
液体サンプルは、好ましくは、キャピラリー内での測定中、静的、すなわち非流動状態である。好ましくは、測定中、キャピラリー内では、自然な温度の動き及び/又は液体中での蒸発による可能な動きを超える流動がない。
【0069】
キャピラリーは、ガラス及び/又はポリマー及び/又は下記要素の少なくとも一つ、すなわちホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸3.3ガラス(例えばDURANガラス)、石英ガラス、例えばsuprasil、infrasil、合成溶融石英、ソーダ石灰ガラス、Bk-7、ASTM タイプ1 クラスA ガラス、ASTM タイプ1 クラスB ガラス製でありうる。ポリマーは、PTFE、PMMA、ZeonorTM、ZeonexTM、Teflon AF、PC、PE、PET、PPS、PVDF、PFA、FEP、及び/又はアクリルガラスを含みうる。
【0070】
特に、キャピラリーの少なくとも一範囲は、200nm~1000nm、好ましくは250nm~900nmの波長を有する光に対して透明であるのが好適である。特に好適なのは、キャピラリーの前記範囲は以下の波長範囲(これらに制限されない):940nm~1040nm(好ましくは980nm±10nm)、1150nm~1210nm、1280nm~1600nm(好ましくは1450nm±20nm及び/又は1480nm±20nm及び/又は1550nm±20nm)、1900nm~2000nm(好ましくは1930nm±20nm)を有する光に対しても透明であることである。当業者であれば、透明な範囲は、キャピラリー全体に拡大できることも分かるはずである。換言すれば、キャピラリーは透明で、好ましくは上記材料の一つで一体的に製造されている。
【0071】
好ましくは、使用されるキャピラリーは、0.1mm~0.8mm、好ましくは0.2mm~0.6mm、さらに好ましくは0.5mmの内径を有する。好適なキャピラリーの外径は、好ましくは0.2mm~1.0mm、好ましくは0.3mm~0.65mmである。
【0072】
キャピラリーの形状は一定の形状に制限されない。好ましくは、円形の断面又は楕円形の断面を有する管状キャピラリーが使用される。しかしながら、異なる断面、例えば、三角形、四角形、五角形又は多角形の断面を有するキャピラリーを使用することも可能である。さらに、直径及び/又は断面がキャピラリーの長さにわたって一定でない又は一定のキャピラリーが使用できる。
【0073】
シリコン表面
本発明によれば、サンプル容器はシリコン表面上にある。好ましくは、シリコン表面の上方に配置されたキャピラリーがサンプル容器として使用される。シリコン表面は、好ましくは反射面又は励起光が反射する表面として働く。さらに、本発明によれば、サンプル容器又はキャピラリーはシリコン表面と直接接触できるので、サンプル容器/キャピラリーとシリコン間の直接接触熱交換が達成される。シリコンは、本発明にとって特に有益な一定の性質を有する。
【0074】
シリコンは好適な波長範囲で自己蛍光を発しない。シリコンは、本発明によれば好適な波長範囲で高い反射を有する(例えば
図9参照)。さらに、シリコンは、複数のキャピラリーの迅速で均一な
温度調節に特に有益な高い熱伝導率を有する。前記三つの性質は、本発明の装置及び本発明の方法にとって特に有益である。
【0075】
シリコンの更なる利点は、例えばその耐薬品性と入手及び製造の容易性である。そのことがさらに、極めて滑らか又は非常に正確な形状/表面の形成を可能にしている。
しかしながら、本発明はシリコンの使用に限定されない。従って、その他の材料も、シリコンの代わりに、反射面及び/又は温度調節のために使用できる。一般的に、好適な波長測定範囲で低自己蛍光又は無自己蛍光であり、好ましくは同時に、例えば>10%の照射光の反射を示す材料が適切である。本発明によれば、例えば、反射コーティング、例えば干渉コーティング(interferometric coating)を好適に備えた石英層又は石英プレートが使用されてもよい。
【0076】
本発明は、複数の測定を実施するために、効率、速度及びコストに関していくつかの利益を提供する。細いキャピラリーが好ましくはシリコン上に置かれ、好ましくは内在蛍光(蛍光、リン光、発光)の測定及び散乱(減光)の測定と共に単一光学システムに対して連続的にシフトするという組合せは、好適であり、特に有益である。特に、シリコンは、非常に良好な熱伝導性と使用波長の光を反射する性質の組合せのために、好適な材料である。複数のサンプルを個々のキャピラリーに対する滞留時間なしに運転することによる高速及び正確な減光の検出も、従来法に比べて測定速度及びデータ点密度を劇的に増加させる。
【0077】
本発明の方法及び本発明の装置は従来技術とは根本的に異なる。特に、本発明によれば、構成要素は、光散乱分野の当業者が従来技術の教示に基づいて使用しないような様式で組み合わされる。さらに、本発明の測定法も、吸収測定分野の当業者が実施するような公知法とは異なる。原則的に、吸収測定用の光学システムと本発明の装置との間に共通する特徴はある。しかしながら、本発明によれば、減光測定のための波長は、サンプルによって吸収されないように特定的に選択される。従って、本発明によれば、寸法依存性の光散乱の測定が達成できる。
【0078】
例えば、先行技術から、unCHAINED LABS社よりUNitTMの名称で販売されている装置が知られている。前記装置では、マイクロキュベットは個別に制御せねばならず、測定に際して、マイクロキュベットは測定光学系に対して正確に配置せねばならない。本発明によれば、キャピラリーは測定を止めることなく永続的/連続的に動き;キャピラリーは“完全スキャン”される。従って、本発明によれば、より堅牢でより効率的な構成と、とりわけ、かなり高いデータ密度が達成される。
【0079】
先行技術によれば、完全スペクトルの記録のために、制御されたマイクロキュベットあたりの測定時間は数秒かかる。従って、一つの温度で例えば48個のサンプルを測定すると、それだけで既に数分かかる。通常の1℃/分の加熱速度は、ゆえに低いデータ点密度しかもたらさない。本発明によれば、単に二つの別個の波長(減光及び蛍光)を検出するだけで既に十分であり、キャピラリーは、通過中にそれぞれ<50ms間、光に暴露されればよいので、本発明によれば、桁違いに高いデータ点密度が達成される。
【0080】
先行技術では、通常通り静的光散乱が測定される。すなわち、励起光は遮断され、実際、散乱される光の一部しか測定されない。しかしながら、本発明によれば、透過部分又は反射部分も測定される。すなわち、散乱されない光又は照射光の一部も測定される。
【0081】
さらに、従来技術の光散乱の測定はサンプルに正確に照準を合わせる必要があるため、入念な調整と定期的なメンテナンスを要する。さらに、別個のサンプルへの照準合わせにたとえわずかな誤差があっても、光散乱シグナルに変動をもたらしうるため、再現性に劣る。
【0082】
本発明によれば、減光は、光が反射のためにキャピラリーを2回通過した後に測定される。高濃度の粒子及び長い路長(例えば1cm)の場合、キャピラリーを通過して戻ってくる光はないであろう。従って、本発明によれば、内径が例えば0.5mmの細いキャピラリーが好適である。現在入手できる溶液/方法/装置は、高濃度溶液、例えば高濃度抗体(例えば水溶液中150mg/mlの抗体)の取扱い及び測定に問題を有する。一つには、使用されているサンプル室に高粘度液体を充填できないこと、もう一つには、それらの光路長が長すぎることである。しかしながら、前記高濃度溶液は、製薬業界にとっては、特に製剤測定において非常に関心が高いものである。
【0083】
細いキャピラリーの使用は大きなダイナミックレンジの測定を可能にする。なぜならば、測定が非常に高感度であり(蛍光検出の場合、キャピラリー材料及びシリコンの自己蛍光がほとんど/全くないこと、減光検出の場合、薄肉キャピラリーの高透過及びシリコンの良好な反射特性/均一性)、同時に高濃度溶液の測定も可能にするからである(高濃度溶液の減光測定に関して有利な薄い光学層厚)。本発明の方法は、それぞれの個別サンプルはそれ自体に参照されるので、インナーフィルター効果に対して堅牢(robust)である。従って、大きな材料濃度範囲、例えば50mg/mlのタンパク質~5μg/mlのタンパク質が単一の測定で分析できる。
【0084】
性質:光学系下でのキャピラリーの連続的な往復運動
測定中、キャピラリーの光学系に対する好適な連続相対シフト(
図3及び4参照)は、測定の効率及び正確さに関して更なる利点を有する。本発明によれば、複数のサンプルが、例えば全サンプルを同時に同じ温度に
温度調節することにより、並行測定できる。本発明の方法は、個々のキャピラリーに対して長い滞留時間を必要としない;キャピラリー上の特定の測定点に向けた駆動も必要ない。このため、当該方法は非常に堅牢かつ非常に高速である。
【0085】
本発明によれば、さらに、測定は好ましくはキャピラリーの縦軸に対して垂直に実施されるため、キャピラリーの対称性が利用できる。さらに、円形又は円筒形のキャピラリー(円形断面)が有益である。なぜならば、そのようなキャピラリーは安価に製造できるだけでなく、良好な品質及び高い正確性も有するからである。
【0086】
本発明のな高速スキャン手順のため、非常に高いデータ点密度が達成でき、データ評価に有益な効果をもたらす。以下で、前記利点のいくつかを例を用いて計算する。
例えば、内径0.5mm及び外径0.65mmを有する48本の個別のキャピラリーを温度調節されたシリコン上に2.25mmの距離(キャピラリーの中心からキャピラリーの中心)で水平に配置した。キャピラリーを入れた前記温調体全体は、固定搭載された光学システム下で、例えば、ステップモーターなどで動作する直線軸により、連続的に往復運動をする。
【0087】
例えば、温調体、従ってキャピラリーは、例えば45mm/sの速度で光学系下でスキャンされる。この速度で、2.25mmの距離間隔の全48本のキャピラリーはおよそ3秒以内にスキャンされる。特に、往復運動をすることにより、各キャピラリーは平均3秒ごとに測定される(“平均”というのは、例えば最外側のキャピラリーは、進行方向が逆転することにより、実際的には瞬時に2回測定されることになるからで、キャピラリーが再び正確に光学系下に戻るまでに3秒(行き)+3秒(戻り)=6秒かかる)。
【0088】
例示的構成において、温調体の温度、従ってキャピラリーの温度は、連続往復運動の間、1分間に1℃の速度で連続的に上昇する。従って、1℃/分の温度勾配だと、キャピラリーあたり1分につき20個の測定点のデータ密度が達成される。これは、平均0.05℃の温度分解度(temperature definition)に相当する。一定のキャピラリー数及び一定の運転速度で、1℃/分の温度上昇速度を半分の0.5℃/分にすると、0.05℃の温度分解度(1℃/分の場合)は、0.025℃(0.5℃/分の場合)に倍増する。
【0089】
キャピラリーの直径全体を連続的にスキャン、すなわち測定するので、本発明の方法は、キャピラリーの単一点のみで測定する従来技術の従来法(例えば、unCHAINED LABS社製UNitTM参照)よりも局所的汚染(例えばダスト粒子、気泡、特にキャピラリーの直径より小さい汚染物)に対してより堅牢である。特に、先行技術では、小さな局所汚染物でも測定欠陥及び測定の拒絶を招きうる。
【0090】
本発明のなキャピラリースキャニングの更なる有益側面は、“測定光線”で円形キャピラリーをスキャンするため、異なる層厚も実質的に自動的に測定されることである。従って、例えば
図3は、最大のサンプル厚/層厚がキャピラリーの中央部に存在することを示している。サンプル液のより薄い層厚は端部に対称的に存在する。これは、例えば、非常に高濃度溶液、すなわち散乱が多すぎてキャピラリーの中央部(最大層厚)ではシグナルが通過しない(すべての光が散乱される)場合に有益である。しかしながら、シグナルが通過しなければ、シグナルの変化は測定できない。本発明によれば、キャピラリーの直径全体にわたってスキャンされるので、反射光線がキャピラリーのより短い距離をカバーすればよい端部領域で>0の測定値が得られる。このように高濃度範囲のサンプルが溶液中で測定できるので、これは実際的に有益である。
【0091】
蛍光及び減光/散乱を測定するための光学系
本発明の更なる利点は、蛍光及び減光を測定するための光学系に見ることができる。これは単純な様式で構築されている。好都合なことに、共通の光学システムが両方の測定に使用できる。本発明の(共通)光学系の利点は、例えば先行技術の別個の光学系に比べて、調整、位置決め、材料消費の分野にある。さらに、本発明の共通光学システムは空間も節約する。
【0092】
本発明によれば、蛍光測定と減光測定は、順次、ほぼ同時又は同時に実施できる。同時測定とは、蛍光による粒子内(=分子内)過程と、“散乱”/減光による粒子のサイズ変化(=分子間)の測定が同時に実施できることを意味する。これにより、二つの過程の直接相関がもたらされる。このようにして、変性(蛍光)と凝集(減光)が同時に又は同じ温度で始まるのか、又は一方の過程が他方の過程より先に始まるのかを認識することができる。これも、より堅牢な測定をもたらす。
【0093】
測定が同時に実施されるという事実は、より高い又は高いデータ密度ももたらす。減光と蛍光が互いに別個に測定される場合よりも時間単位あたり2倍のデータが測定できる。従って、測定はより正確になり、タンパク質の融点及びタンパク質の凝集が始まる温度がより容易に決定できる。
【0094】
減光測定(“散乱”測定)の本発明の構成は、静的散乱光測定よりも、キャピラリー上及びキャピラリー内の汚染物、不純物、気泡に対して、より堅牢である。
粒子、例えばタンパク質、例えば抗体、酵素、ペプチドの好適な材料濃度は、0.001~500mg/mlである。有益濃度は、0.1~100mg/mlである。
【0095】
本発明の構成及び本発明の方法は、多くの異なる濃度を単一の実験で同時に測定することを可能にする。つまり、例えば1000倍異なる濃度が一つの同じ測定セッティングで同時に測定できる。
【0096】
本発明のシステム及び方法によって、粒子の熱安定性、粒子の化学安定性のほか、粒子の時間に関する安定性の測定も可能である。以下に、安定性を測定するための例をより詳細に記載する。
【0097】
熱安定性
熱安定性を測定する場合、水溶液又は液相中に粒子が入っているキャピラリーを、シリコンを含む
温調体の上に置き、キャピラリーの温度を低い値、例えば15℃から高い値、例えば95℃に上昇させながら、内在蛍光及び(好ましくは同時に)散乱/減光を好ましくは連続的に測定する(
図13参照)。例えば、-20℃~+130℃及び/又はその一部の温度も使用できる。
【0098】
まず、シリコン表面を布と無水エタノールで数回清拭する。その後、分析されるサンプルを少なくとも10μl調製する。サンプルは、例えば、様々な材料濃度、例えば5mg/ml~0.3mg/mlの抗体溶液、又は異なる緩衝液中の異なる生体分子もしくは同一生体分子などである。次に、10μlの各溶液を、キャピラリーを溶液中に浸漬することにより毛細管力によってキャピラリーに充填する。次に、充填されたキャピラリーをキャピラリーアレイに移し、その後、蓋を用いてシリコン表面に押し付ける。全キャピラリーの330及び350nmの発光波長における減光及び蛍光を20℃の温度で3~5秒以内に決定する“発見スキャン”により、発光強度を調整する。これは検出器の過剰暴露を回避するためのものであるが、手動でも自動でも行える。その後、測定される温度範囲(例えば20℃~95℃)及び温度勾配(例えば1℃/分)を決定する。後者は、例えば0.1℃/分~100℃/分の間で変化させてもよい。前記パラメーターが決定されたら、測定が開始され、サンプルの減光及びサンプルの蛍光の温度依存性が同時に測定及び表示される。測定が終了したら、温度は自動的に初期値に戻る。
【0099】
熱的アンフォールディング曲線の分析は、例えば特定のアンフォールディング温度(粒子の50%がアンフォールディングする温度)の決定によって実施される。これは、例えば、生データの一次又は二次微分の分析による変曲点の確認によって又はその他の数学的方法によって実施できる。減光測定による粒子形成の分析は、好ましくは、凝集が始まる温度の検出によって及び最大減光の決定によって実施される。
【0100】
例えば、粒子のアンフォールディングの可逆性又は不可逆性も、熱安定性の測定によって決定できる。これは、例えば、最初に温度を20℃から95℃まで温度勾配1℃/分で上げ、その後、95℃の温度を同じ又は異なる温度勾配で20℃まで下げる。アンフォールディングが、例えば、加熱及び冷却工程の後に可逆的であれば、350nm対330nmの蛍光比は、再度初期レベル/前記工程でそれが持っていたのと同じ値に到達する。本発明によれば、凝集も同時に測定すると、凝集がアンフォールディングの不可逆性をもたらしたかどうか発見できる。例えば、抗体が例えば60℃及び72℃の融解温度で蛍光シグナルに異なる熱的アンフォールディング過程を有していた場合、そして同時に減光中に75℃で凝集を示した場合、例えば、第一の実験で60℃に加熱し、次いで再度冷却し、第二の実験で75℃より高く、すなわち凝集温度を超えて加熱し、再度冷却する。第一の実験で可逆的なアンフォールディングが示され、第二の実験で不可逆的なアンフォールディングが示されたら、凝集が不可逆的なアンフォールディングをもたらした又は再フォールディングして天然状態に戻るのを妨げたと結論付けることができる。
【0101】
化学安定性:
化学安定性を測定する場合、粒子を、増大する濃度の変性剤、例えばグアニジン塩酸塩又は尿素などのカオトロピック塩と水溶液中で混合し、キャピラリーに充填して、
温調体に載せる。粒子のアンフォールディングの程度は、規定の温度で、キャピラリーを1回運転し、蛍光を検出することによって検出される(
図12参照)。
【0102】
化学的アンフォールディングの使用分野は、例えば、タンパク質、例えば抗体及び酵素の製剤の最適化、粒子の熱力学的特徴付けならびに活性薬研究の分野である。
時間に関する安定性
時間に関する安定性を測定する場合、水溶液中の粒子をキャピラリーに充填し、減光と蛍光を規定の時間、一定の温度で測定する。>3時間の測定に関しては、キャピラリー端を適切な物質、例えば液体プラスチック、接着剤、ワックス、パテで密封、又は適切な材料、例えばシリコーン、ゴム、プラスチックを機械的に押し込むことによって密封し、蒸発によるサンプル材料の喪失を回避するのが有益である。時間に関する安定性の測定は、例えば、粒子、特にタンパク質及び活性薬の特徴付けのため、及び前記粒子の製剤の最適化のために使用される。
【0103】
品質管理
測定が品質管理のために行われる場合、粒子溶液は、それらの再現性について試験されるか、又は貯蔵試験及びストレス試験が実施される。後者については、例えば、タンパク質を、それらのフォールディングに悪影響を及ぼす可能性のある条件、例えば温度上昇、激しい振盪/撹拌、凍結及び解凍サイクルに暴露する。様々な手順を実施した後、溶液をキャピラリーに充填し、サンプルの蛍光ならびに減光を、単一のキャピラリースキャンか、又は20℃から95℃までの例えば1℃/分の温度勾配で検出する。非処理参照サンプルと比較することにより、アンフォールディングされた又は凝集されたタンパク質の割合が検出できる。
【0104】
リガンド結合
前記測定は“サーマル・シフト・アッセイ”とも呼ばれる。リガンド結合を測定する場合、粒子、例えばキナーゼなどの酵素を、リガンド、例えば分子のフラグメントと共に水溶液中でインキュベートする。リガンドが粒子に結合すると、前記リガンド結合は、粒子の熱安定性などの安定性及び/又はその凝集挙動に影響しうる。例えば、粒子へのリガンド結合は、その融解温度(粒子の50%が天然形で50%が変性形である温度)を上昇又は下降させうる、すなわち粒子を安定化又は不安定化しうる。リガンドなしの粒子に対する粒子-リガンド複合体の融解温度のシフトは、“デルタT”として測定でき、粒子へのリガンドの結合が検出できる。本発明の方法及び装置は、デルタT>=0.2℃という融解温度の最小シフトでも、確実かつ再現的に検出し、定量化することを可能にする。それにより、様々なリガンドが、例えばそれらの融解温度のシフト(デルタT)によって、選別及び選択できる。タンパク質の結晶学などの用途に関しては、結合した場合に粒子の融解温度を特に高い融解温度にシフトさせる、従って粒子を安定化するリガンドが探し求められる。
【0105】
ここでは、蛍光シグナルによって熱安定性を測定するだけでなく、本発明の減光測定によって粒子、リガンド及び/又は粒子-リガンド複合体の凝集可能性も測定することが有益である。これにより、例えば、熱的安定性をもたらすリガンドのほか、凝集をもたらすリガンドを選別することも可能になるはずである。
【0106】
以下に、本発明の好適な態様を、図面を参照することにより、詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】
図1は、光透過の減弱を測定することによる本発明の光散乱測定の動作モードを示す。
【
図2】
図2は、先行技術による固定された散乱光検出角を用いた散乱光の直接測定を示す。
【
図3】
図3は、サンプルを光学システムに対して動かすことによる蛍光シグナル及び減光シグナルの形成を示す。
【
図4】
図4は、減光測定を評価するための態様を示す。
【
図5】
図5は、蛍光測定を評価するための態様を示す。
【
図6】
図6は、蛍光と減光を同時に測定するための態様を示す。
【
図7a】
図7aは、蛍光比と減光をほぼ同時に測定するための態様を示す。蛍光光線の経路が描かれている。
【
図7b】
図7bは、
図7aの態様を示すが、減光光線の経路が描かれている。
【
図8a】
図8aは、蛍光比と減光を同時に測定するための更なる態様を示す。蛍光光線の経路が描かれている。
【
図8b】
図8bは、
図8aの態様を示すが、減光光線の経路が描かれている。
【
図10】
図10は、抗体の、分子内アンフォールディングを蛍光によって、分子間凝集を減光によって同時に検出するための測定例を示す。
【
図11】
図11は、様々な緩衝液中で温度依存的に抗体の凝集が増加する測定例を示す。
【
図12】
図12は、化学的アンフォールディングによって様々な温度でのタンパク質の安定性を検出するための測定例を示す。
【
図13】
図13は、50mg/ml~2μg/mlの様々なタンパク質濃度を使用した場合の蛍光光学系のダイナミックレンジを示す例示的測定を示す。
【
図14】
図14は、強制分解試験によるタンパク質の品質管理のための例示的測定を示す。
【
図15】
図15は、抗体の最適貯蔵条件を求める緩衝液スクリーニングのための例示的測定データを示す。
【
図16】
図16は、タンパク質の例示的吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図2は、固定角での静的散乱光測定による通常の粒子の測定法を示す。試験されるサンプル13は、強散乱又は強凝集粒子の入った液体である。サンプル液はキャピラリー30に入っており、これが表面77上に配置されている。減光測定のために、光20が上から下方にキャピラリー30を通ってサンプル液に照射される。照射光20の一部は、直接、すなわち実質的に照射方向と反対側に、反射光22として反射されて戻ってくる。散乱光24の測定のために、散乱光検出器200を照射光線20とサンプルの間に角度Φで配置することにより、強散乱粒子13の入ったサンプルで散乱された光24を直接測定する。
【0109】
このシステムの不利益は以下のようにまとめられる。検出器200中のシグナルへの寄与は、小さい角度範囲/角度Φ周辺の範囲への散乱によって生じたものだけである。小さい角度範囲での測定のため、システムは、望まざる機械の動き、例えば垂直方向の動きの影響を受けやすい。キャピラリー30の一定の位置では、キャピラリー壁での検出器200方向への反射(例えば光線25)のほうが試験される粒子での光散乱より強い。散乱光測定分野の当業者であれば、反射又は反射面77(例えばシリコン)を避けるのが重要であることを知っている。なぜならば、そこからも望まざる反射光線26が検出器200に入るかもしれないからである。散乱光検出器200に入る前記反射光線26は、測定シグナルの不正を招く。なぜならば、従来技術では、散乱光測定のために、角度Φ周辺のごく小さい角度範囲しか測定できないからである。そこで、当業者は、すべての望まざる散乱光を遮断するために、非常に複雑な光学システムを構築しようとするが、そのために光学システムは脆弱で高価なものとなる。特に、当業者は反射面を避けようとする。さらに、検出器200の傾いた配置は、垂直光線経路を有する既存の光学系への組込みを妨げる。
【0110】
図1は、本発明の測定の動作モードを概略的に示す。好ましくは、本発明によれば、光の散乱部分は
図2のように直接測定されないが、光透過の減弱、いわゆる減光が測定される。言い換えれば、減光は散乱されない光である。光学系の構成にもよるが、照射光20の光線軸から±10°未満、好ましくは±8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°、1°未満で散乱される光は、好ましくは散乱されない光と解釈される。高い受容角度範囲を有する場合、高いシグナル-ノイズ比が達成でき、小さい範囲を有する場合、直線性は高濃度で良好である。
【0111】
この例でも、試験されるサンプルはキャピラリー30内にあり、それが表面77上に配置されている。到達光線20の光は、サンプル溶液13中の粒子によって一部は様々な角度で散乱される(散乱光24参照)。照射光の光線は表面77で反射され、光線22として、照射光線20とは反対側に戻ってくる。光線20、22(表面77で反射されるので、サンプル容積13を2回通過する)の強度は、サンプルで散乱される光線の強度に依存する。反射光線22の強度は検出器100によって測定される。この検出器の受容範囲は光線20、又は光線20、22と同一直線上にある。到達/照射光線20及び反射光線22の波長は、好ましくは、測定されるサンプルが前記範囲でなるべく光を吸収しないように選ばれる。従って、光の減弱は、主に散乱(減光)による効果で、吸収によってではないということが達成できる。前記本発明の方法の更なる利益は、表面77で反射される光線26が測定を妨害しないことである。
【0112】
図17aは、本発明の
温調体の表面77を示す上面図で、数本のキャピラリー30がその上に配置されている。表面77は、
図17a及び17bから分かるように、長さL及び幅Bを有し、表面層はさらに奥行きTを有する。好ましくは長さLは幅Bより長い。さらに、測定のために、キャピラリー30は表面77の幅Bに沿って伸びていて、キャピラリーは、キャピラリーの両端が表面77を超えて突き出るように、好ましくは幅Bより長いのが好適である。接触によってキャピラリー30を
温度調節するために、キャピラリーは、
温調素子の表面77上に直接載せる、すなわち表面77に直接接触しているのが好適である。さらに好適な態様によれば、キャピラリーの一部分が表面に直接接触していないような少なくとも一つの領域を形成するのがさらに有益であろう(キャピラリーの他の領域は表面と接触してる)。特に、直接接触していない領域は光学測定のために有益で、それについては以下で説明する。
【0113】
好適な態様に従って、例えばファロー(furrow)、溝(groove)、マイクログルーブ(micro groove)、又は“溝(ditch)”90の形態の窪み90が表面77に提供できる。そうすると、溝90の領域でキャピラリーは表面77に直接接触しない。溝90は、好ましくは、測定中にキャピラリーを載せる温調素子の少なくともある領域にわたって伸びている。溝90は、好ましくは、温調素子の幅に対して中央領域に形成されるので、各キャピラリーは、中央測定領域90では表面77と直接接触しない。しかしながら、前記領域90の右及び左(温調素子の幅に対して)では、キャピラリー30は、接触温度調節を確保するために表面と直接接触している。
【0114】
溝は、好ましくは、1~10mm、さらに好ましくは2~8mm、さらに好ましくは3~7mm、例えば5mm、さらに好ましくは約3mmの幅を有する(幅Bに沿って)。本発明によれば、本発明のなの光の反射は、好ましくは、キャピラリーの前記溝領域で発生又は測定される。
【0115】
好ましくは、溝はおよそ10~30μmの深さを有する。溝90は、背面散乱における干渉効果をさらに抑制するために、使用光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する(
図17bの奥行きTの方向参照)のが特に好適である。妨害する干渉効果は、例えばニュートン環のために発生するが、本発明の溝を用いれば、抑制又はさらには回避することができる。本発明によれば、レーザー光源又はLEDが光源として使用できる。LED光源は、例えば本発明で使用される通り、典型的にはおよそ15μmの範囲のコヒーレンス波長を有するので、>7.5μmの溝深が好適である。深さは、コヒーレンス波長の半分の1.5倍~コヒーレンス波長の半分の10倍であるのが特に好適である。好ましくは、深さの上限は、コヒーレンス波長の半分の5倍である。特に、本発明によれば、溝は干渉を抑制するに足るだけの深さであるべきであるが、それと引き換えにキャピラリーの下に大きすぎるエアークッションが存在するべきでない。なぜならば、このような場合、キャピラリー内の所望温度がエアークッションによって妨害されかねないからである。さらに、溝には更なる好適な利点がある。それは、キャピラリー30の表面が表面77と直接接触しないので、キャピラリー30の表面の引掻き傷及びキャピラリーによる
温調体の表面の引掻き傷が測定領域(溝)で抑制又は回避されるという利点である。特に、本発明によれば、
温調体の表面の引掻き傷は回避できるが、キャピラリーの引掻き傷の可能性は、キャピラリーが好ましくは使い捨て品として使用されるので、容認可能でありうる。本発明によれば、例えば、キャピラリーは、その材料がシリコンより低い硬度を有するものが使用されうる。
【0116】
溝90の底面からのより効率的な光の反射を保証するために、溝は、好ましくは、温調素子の表面に蝕刻される。好ましくは、温調素子は、溝90がシリコン層に直接形成されるように、シリコンでできた表面層を有する。本発明の好適な態様に従って、溝はシリコンに蝕刻される。さらに、好適な蝕刻法は、溝の底面を、前記表面の反射挙動がなお優れたものであるように、非常に滑らかに形成できるという利点を有する。好ましくは、底面は、好ましくはナノメートル範囲、好ましくは<±10nm、好ましくは<±5nm、例えば±1~2nmの平均粗度を有する。
【0117】
好適な態様によれば、溝は表面の実質的部分にわたって伸びているので、例えば、測定されるべく表面77の上に置かれている全キャピラリー30が溝の上方に配置できる。
図17aに示されているように、溝90は、キャピラリー30が溝90の上に横方向に配置できるように、長さLに沿って伸びている(
図17b参照)。さらに好適な態様によれば、溝90はLの全長にわたって伸びていないので、好ましくは端部領域91には溝が形成されていない。このことは、例えば、シリコンが溝90の周囲で一定の厚さを有しているので加工しやすい(例えば切断又はのこ引き(sawing))という利点を有する。
【0118】
好ましくは、シリコンは温調素子の表面として使用される。好ましくは、以下でさらに詳述する通り、純粋な(結晶性)シリコンが使用される。好ましくは、本発明の溝90は、結晶性シリコンの好適な結晶学的方向に沿って、好ましくは[111]方向(ミラーの方向指数)に沿って形成される。
【0119】
例えば、溝は、キャピラリーの外側にある液体が、好ましくは溝の領域にある測定領域に到達しないという利点も有する。溝の領域では、キャピラリーと温調体間の距離が溝の領域の外側より大きいので、キャピラリーの外側の液体が毛細管力のために溝の外側に保持されるのは有益である。
【0120】
それは、例えば、キャピラリーが時に、液滴がキャピラリーの外側に付着した状態で充填された場合に起こりうる。前記液滴は、測定領域に到達した場合に妨げとなりうる。しかしながら、毛細管力は、キャピラリーから温調体までの距離が短いほど大きくなるので、前記液体は溝の外に保持される。従って、例えば、液滴の液体が溝内の測定領域に達するのを回避できる。
【0121】
図3a)~3c)は、本発明の蛍光測定及び減光測定のためのシグナルの形成を示す。
図1と同様、試験されるサンプルはキャピラリー内にある。試験されるサンプルは、散乱/凝集粒子(以下でサンプル12と呼ばれる)も蛍光粒子(以下でサンプル15と呼ばれる)も含有する。サンプルを測定するために、好ましくは、検出器はキャピラリーの上方でシフトするか、又はキャピラリーが検出器の下方でシフトする。前記シフトは、好ましくは、キャピラリーの縦軸に対して横方向に実施される。あるいは、キャピラリーも検出器もシフトしてもよい。しかしながら、好ましくは、キャピラリー30と検出器100の間の相対運動80は、測定中に起こることが想定される。
【0122】
蛍光測定及び減光測定のための照射光線20、21がキャピラリー30に到達する以前は、検出器は蛍光23を測定しないので(上列;シグナル(蛍光))、減光測定22のための反射光22に減弱はない(下列;シグナル(減光))。それに対応して、
図3aのダイアグラムには水平線が示されている。
【0123】
光学システムの検出領域下でのキャピラリー30の(相対)運動80中、測定される蛍光強度23は増大し、反射光線22の強度は、キャピラリーでの屈折及びサンプル12中での散乱によって減少する(
図3b参照)。
【0124】
サンプルが入っているキャピラリーが光学系の検出領域を出ると、好ましくは、検出領域に入ったときに生成したシグナルに相当するシグナルが生成する。これは、光学システムの対称配置又はキャピラリー上方での対称運動に由来する。従って、サンプルと光学システム間の動きの方向80は無関係である。
【0125】
本発明によれば、複数のキャピラリーに入っている複数のサンプルは相次いで連続的に測定できる。複数のキャピラリーは、好ましくはサンプルアレイ上に配置できる。つまり、好ましくはサンプルアレイの連続運動によって、複数のサンプルが高いデータ密度(サンプルあたり時間単位あたりのデータ点)で記録できる。従って、例えば、100kHzを超える測定周波数を得ることも可能である。前記本発明の方法の更なる利点は、システムを調整する努力が少なくて済むことである。さらに、サンプル室としてのキャピラリー30は、毛細管力によってサンプルをキャピラリーに自動的に充填することにより、簡素な充填を可能にしている。これは、例えば、高粘度溶液の充填も可能にする。キャピラリーは好ましくは表面77上に直接載せるので、良好な熱接触を有する。
【0126】
図4a)は、キャピラリー30中の3種類の異なるサンプル11、12、13の断面を示す。第一のサンプル11は、光源によって生成及び放出された光20を散乱しないので、照射光線20の大部分22は、対物レンズ及び検出器100の方向に反射されて戻ってくる。他の二つのサンプル12及び13は、照射光20の一部を検出器100の受容角外の様々な方向に散乱する。サンプル13からはサンプル12よりも多くの照射光の部分が散乱されている。これは複数の散乱矢印24によって示されている。
【0127】
図3で既に説明した通り、測定中、サンプルは光学システムに対して相対的に動くのが好適である。
図4b)は、サンプルの水平位置に応じて検出器100によって測定された光強度の典型的な推移を示す(減光測定)。測定された強度(輝度[I])は、一方では、キャピラリー壁30における光回折、他方では、サンプル中の減光に依存する。キャピラリー壁における光回折は、異なるサンプルでも良好な近似で同一と仮定できる。しかしながら、サンプル12及び13は、サンプル11よりも照射光20の多くの部分を散乱するので、少ない光22しか反射して戻ってこない。従って、サンプル12及び13の輝度(強度)は大きく減少している。
【0128】
図4c)は、サンプルの位置に応じた減光の可能性ある推移を示す。減光を計算するための式は、一般的に、
【0129】
【0130】
である。I0(x)は、最も単純なケースでは定数でありうるか、又は水を充填されたキャピラリーでは強度の推移でありうるか、又は減光が温度誘導性の凝集形成によって始まる前の測定開始時の強度の推移でありうる。
【0131】
求める測定値“減光”(
図4d)は、減光推移E(x)の積分から得られる。積分限界は、好ましくは各キャピラリーに関して対称である。光源の輝度又は検出器の感度の変動を均衡化するため、検出された減光は、キャピラリーがない範囲での曲線E(x)の積分によって計算される参照値(
図4cの“参照面積”参照)によって補正されうる。好ましくは、前記補正は、各キャピラリーについて、前記個別のキャピラリーのすぐ隣のキャピラリーのない領域を用いて個々に実施される。本発明によれば、このことは、例えば、従来技術の測定法とは対照的に、サンプルが好ましくは測定システムに対して動くために可能となる。
【0132】
図5は、高14、平均15、及び低16蛍光の3種類のサンプルの例を用いて、
図3の測定データの可能な加工を例示的に説明している。
サンプルによって放出される蛍光の強度は、検出器100のキャピラリーに対する動き又は位置に応じて、
図5bに示されている。“蛍光値”を決定するためには、光学システムに対するサンプルのシフト80全体の値にわたって積分する(
図5c参照)。積分限界は、好ましくは対称的に一つの別個のキャピラリーを含む。積分された蛍光強度は、好ましくは、求めるサンプルの蛍光の測定値に相当する。蛍光強度を二つ以上の異なる波長で測定することも可能である。この場合、積分蛍光強度の比が、求める測定値である“蛍光比”である。
【0133】
図6は、蛍光及び減光を測定するための本発明のシステムの例示的構成を示す。好ましくは、前記蛍光及び減光の測定は、相次いで、ほぼ同時に又は同時に実施できる。(第一の)光源40、例えばLEDは、(第一の)波長21を有する光放射線21を生成し、これがサンプル容積10中の蛍光放射線の放出を刺激する。励起フィルター70は、光源40の所望でない波長範囲の可能性ある放射線を抑制する。(第二の)光源41は、サンプル容積10がごくわずかしか吸収しない(第二の)波長範囲の光放射線20を生成する。二つの光源の光40、41は、好ましくは光学レンズ60、61でコリメートされ、二色性ビームスプリッターによって同一直線の光線に結合される。
【0134】
ビームスプリッター72は、好ましくは、(第一の)波長範囲40で高い反射率を有する。さらに、ビームスプリッター72がサンプルの蛍光発光の波長範囲で高い透過率を有していると有益である。また、ビームスプリッター72が(第二の)光源41の波長範囲で一部透過及び一部反射を有するとさらに好適である。前記要件は、例えば、41の波長が10の蛍光発光と合致する場合に二色性ビームスプリッターによって満たされる。より一般的なケースでは、ビームスプリッター72は三色性ビームスプリッターである。
【0135】
ビームスプリッター72は、第一及び第二の波長の光20、21を、キャピラリー30内のサンプル10に反射する。対物レンズ62は、照射光をサンプル10にフォーカスする。第一の光源40の光は、サンプル10で蛍光放射線を生成し、これがレンズ62によってコリメートされる。第二の光源41によって生成した照射光線の光は、表面77上のサンプル10及びキャピラリー30を通過し、反射又は背面反射されて、サンプル10及びキャピラリー30の2回目の通過をする。
【0136】
表面77は、減光を測定するために、好ましくはそれ自体の蛍光がほとんどなく、第二の光源41の波長範囲で高い反射率を有する材料で製造される。反射された放射線は再度レンズ62によってコリメートされる。サンプル容積中におそらくは存在する粒子は照射光を散乱するので、元の照射光のごく小部分しか対物レンズ62に吸収されない。従って、反射されてレンズ62に戻る光の強度は、実質的に、粒子の濃度及び寸法、従ってサンプルの減光に依存する。
【0137】
フィルター73は、好ましくは、(第一の)光源40の蛍光励起光を抑制する。検出器53は、好ましくは、波長選択的な様式で、サンプルから戻ってくる光線の強度を測定する。好ましくは、第二の波長の光、すなわちサンプルを通過し、反射されて戻ってくる光、ならびに蛍光、すなわちサンプルの蛍光発光の光が検出器53によって測定される。さらに、波長選択的とは、異なる波長の強度が好ましくは互いに別に決定できることを意味する。
【0138】
図7a)は、システムの更なる本発明の態様を示し、蛍光測定中の光線の経路が描かれている。しかしながら、
図6とは対照的に、システムは(少なくとも)2個の検出器を有する。両検出器50、51は、二つの異なる波長で蛍光強度を測定するための役割を果たす。例えば、330nmと350nmが検出波長として選ばれた場合、二つのシグナルの比が、サンプル容積10中に存在している巨大分子の構造に関する情報を提供する。
【0139】
前記態様において、減光測定のための(第二の)光源41の波長は、サンプル10の蛍光発光の範囲にある。従って、蛍光の測定中、光源41はスイッチを切るべきである。順次又はほぼ同時の測定は、減光と蛍光の高速で交互の測定によって達成される。測定タイプの二つのデータ点間で経過する時間はとても短くなくてはならないので、二つの測定値の差は、測定値の測定の不確かさ未満である。例:高濃度サンプルの減光は、80℃を超える温度で変化し、およそ0.2mAU/s(ミリ吸収単位/秒)である。減光に関する測定の不確かさは例えばおよそ0.2mAUである。従って、減光は好ましくは1秒につき少なくとも1回、蛍光も1秒につき少なくとも1回測定される。前記態様において、帯域通過73は、蛍光放射線23の一部、例えば320nm~360nmの範囲を透過する。ビームスプリッター74は、蛍光放射線を、例えば320nm~340nm及び340nm~360nmの波長範囲を有する二つの光線に分離する。光線は、集光レンズ63、64により、二つの検出器50、51に集められる。二つの測定シグナルの商が求める測定値である。
【0140】
図7b)は、
図7a)のシステムの例示的態様を示すが、減光測定中の光線の経路が描かれている。第二の光源41は光放射線20を放出する。この光線は、ベースプレート77で反射された後、サンプル10を2回通過して光線22として上方に進む。サンプル10では、光線の強度は、検出範囲外の散乱によって減弱する。(第二の)光源41の波長は、好ましくは、フィルター73の透過範囲にある。光源41の波長に応じて、光は両検出器50、51に分配される。好ましくは、波長は、光の大部分が単一の検出器で測定されるように、およそ350nmである。
【0141】
図8a)は、
図6のシステムの例示的態様を示すが、
図7の態様と比べて、検出器部門の追加により拡大されている。
図7aの光線経路に対応する蛍光の光線経路が描かれている。追加の二色性ビームスプリッター75は、検出器50、51によって測定される波長範囲において透明である。
【0142】
図8b)は
図8a)のシステムを示すが、減光測定のための光線経路が描かれている。
図7のシステムと比べて、光源41の波長範囲は、検出器50、51によって測定される波長範囲の外側にある(例えば380nm)。従って、光源41は測定中にスイッチを入れたままでよく、測定タイプの蛍光と減光の間でスイッチを切り替える必要がない。ビームスプリッター72は、光源41の波長範囲において一部透明である。理想的には透過/反射比は1:1である。
【0143】
ビームスプリッター75は、(第二の)光源41の光を、サンプル10での減光によって減弱された後、検出器52に向ける。帯域通過76は、好ましくは検出器52への蛍光の量を低減する。
【0144】
3個の検出器51、52、53を有する前記態様により、減光と蛍光比は連続的に同時に測定できる。さらに、検出器52の感度は、個別に光源41からの放射線の強度に合わせることができる。検出器の感度は、例えば、減光のノイズ削減測定のために著しく高く調整できる。有益な態様において、検出器のシグナルは、24ビット・アナログ・デジタル・コンバーター(ADC)によってデジタル化され、これは全3個の検出器チャンネルで同時に、例えば4kHzの速度で読むことができる。
【0145】
図9は、シリコンの波長に応じた反射率が示されているダイアグラムである。特に、
図9は、UV領域でのシリコンの良好な反射率を示している。このことは、減光測定中に検出器に反射される光強度はなるべく高い方がいいので、特に好適である。特に、高い光強度はノイズの少ない測定を可能にする。シリコンのさらに有益な性質は、使用波長でそれ自体の蛍光がほとんどないこと、機械的に製造が容易であること、高い耐薬品性を有することである。
【0146】
図10は、
図6に記載された本発明のシステムを用いた測定を示す。温度に依存するタンパク質のアンフォールディングと、温度に依存する抗体の凝集が示されている。示されている例では、抗体のサブユニットの一つのアンフォールディングは既に60℃で始まっている。これは、350と330nmの発光間の蛍光比の特徴的変化によって特徴付けられる。凝集の増加、従って減光の増加は、73℃以降でしか観察されず、熱的により不安定なタンパク質ドメインのアンフォールディングは、抗体の凝集に寄与していないことを示唆している。
【0147】
図11は、pH4~pH6の様々なpH値での25mM酢酸塩緩衝液中1mg/mlの物質濃度を有する抗体(リツキシマブ)の減光の測定を例示的に示す。10μlの溶液を各キャピラリーで1℃/分の加熱速度で50℃から95℃に加熱した。減光の増加が>72℃の高温で観察できるが、これは凝集によって説明できる。減光の増加の程度は溶液のpH値に依存し、低いpH値ほど温度誘発性凝集を抑制している。これは、一方では、減光増加の開始遅れ(“凝集開始温度”)と、他方では、全体的に低い最大減光によって特徴付けられる。
【0148】
図12は、様々なグアニジン塩酸塩濃度での10mMクエン酸塩緩衝液(pH4)中のタンパク質リゾチームの化学安定性の分析を例示的に示す。1mg/mlのリゾチームを48の溶液中にグアニジン塩酸塩の濃度を増大させながら調製し、各溶液10μlをキャピラリーに充填し、前記キャピラリーをキャピラリーアレイ上に配置及び固定し、その後各キャピラリーを20℃、30℃及び40℃でスキャンした。その後、得られた蛍光比をグアニジン濃度の増大に関連付けてプロットした。特に、蛍光比は、全サンプルで、グアニジン濃度が増大するとS字状に増大し、折り畳みのほどけたタンパク質の割合に正比例していることを示している。温度が上昇すると、タンパク質はますます不安定化するが、これは低いグアニジン濃度の方へのデータ点のシフトによって特徴付けられる。
【0149】
図13は、50mg/ml~7μg/mlの様々な物質濃度でのPBS(pH7.3)中タンパク質ストレプトアビジンの例示的測定を示す。キャピラリースキャンは、キャピラリー中の様々な蛍光強度を示している。上のダイアグラムは、熱的アンフォールディングの測定開始時のキャピラリースキャンを示す。全濃度とも2回測定した。ピークの高さは、発光波長350nmにおけるキャピラリー中の蛍光強度に対応する。高いストレプトアビジン濃度での蛍光の減少は、内部フィルター効果(inner filter effect)によって説明できる。これは、励起光の強い吸収と、それによる侵入深さの減少によって生じるものである(ゆえに低蛍光)。下のダイアグラムは、350nmと330nmにおける蛍光比の温度推移を示す。前記アンフォールディング曲線は、アンフォールディングプロフィールが全濃度で記録されたことを示している。全濃度で明らかなアンフォールディング過程が確認できる。融解転移は、高ストレプトアビジン濃度で高温にシフトしているが、これはタンパク質の分子内安定化によるものである。
【0150】
図14は、タンパク質MEK1-キナーゼの強制分解試験の例示的データを示す。50mMヘペス(pH7.4)、150mMのNaCl及び2mMのDTT中1mg/mlの濃度で溶液を調製し、50μlずつ5分割した。一つの分割量は4℃で貯蔵し、参照としての使用したが、残りの分割量は、様々な条件、すなわち高温でのインキュベーション、凍結-解凍サイクル、強撹拌に暴露した。その後、全サンプルをキャピラリーに充填し、キャピラリーアレイに載せて押し付け、熱的アンフォールディングを1℃/分の加熱速度で25℃から90℃まで加熱し、蛍光によって検出した。上のダイアグラムはサンプルのアンフォールディング曲線を示す。前処理に応じて、アンフォールディング曲線の開始レベルが異なり、既にアンフォールディングされているタンパク質の割合が様々であることを示唆している。下のダイアグラムは、アンフォールディングされたタンパク質の割合を%で定量化したものである。4℃でインキュベーションしたサンプルのアンフォールディングを0%とし、60℃で15分間のインキュベーション後のサンプルを参照として用いた。
【0151】
図15は、抗体貯蔵の最適条件を識別するための緩衝液スクリーニングの例示的データを示す。モノクローナル抗体を酢酸塩緩衝液中5mg/mlの濃度で、様々なpH値ならびに130mMのNaClの不在下及び存在下で貯蔵した。次に、各抗体溶液10μlをガラス製キャピラリーに充填し、タンパク質の温度依存性アンフォールディングを蛍光の変化により測定し、温度依存性凝集を1℃/分の加熱速度で減光の増加により測定した。
図15a)及びb)は、温度依存性の凝集の増加を示している。示されたケースでは、全凝集はpH値の増加と共に増加しており、凝集シグナルの高い振幅によって特徴付けられている。生理的食塩濃度の添加は、全pH値で凝集の更なる増加を招いている(b)。図c)及びd)は、凝集開始温度の決定を示すが、これは、ベースラインに対して減光の顕著な増加が観察される最低温度に対応する。図d)は、凝集温度のpH値及び塩濃度への様々な依存性を例示的に示す。図e)及びf)は、本発明によれば
図15a)及びb)に示された凝集データと同時に記録された蛍光データを示す。溶液のpH値の増加に伴い、抗体はより高い熱安定性を示す。さらに、NaClは熱安定性に悪影響を及ぼしていることが、より低温でのタンパク質のアンフォールディングによって確認できる。比較可能な実験によって、タンパク質、例えば抗体の熱安定性が最大となり、そして凝集が最小となる条件が検出できる。
【0152】
図16は、タンパク質の例示的吸収スペクトルを示す。
本発明は、表現、特徴、数値又は範囲などの前又は後に“およそ、約、実質的に、一般的に、少なくとも”などの用語が付いている場合でも、正確又は厳密な前記表現、特徴、数値又は範囲も含むものとする(すなわち、“およそ3”は“3”も含むものとし、“実質的に放射状”は“放射状”も含むものとする)。
[発明の態様]
[1] サンプル容器(30)に入っている液体サンプル(10)中の粒子の少なくとも安定性及び凝集を光学的に測定するための方法であって、該方法は下記工程:
粒子を蛍光的に励起するために、サンプル(10)に少なくとも一つの第一の波長の光(21)を照射する工程、
粒子の散乱を調べるために、サンプル(10)に少なくとも一つの第二の波長の光(20)を照射する工程、
サンプル(10)によって放出される蛍光を測定する工程、及び
減光(22)を第二の波長で測定する工程
を含み、ここで、
第二の波長の照射光(20)は、サンプル容器(30)を通過し、反射され、再度サンプル容器を反対方向に通過して、減光として出射され、
安定性は測定された蛍光に基づいて測定され、凝集は測定された減光に基づいて測定される方法。
[2] 蛍光及び減光が共通の光学システムで測定される、1に記載の方法。
[3] サンプルの照射が、
i)第一及び第二の波長で同時に実施されない;又は
ii)第二の波長による照射は連続的に実施されるが、第一の波長による照射は断続的に実施される、
1又は2のいずれか1項に記載の方法。
[4] 第一の波長による照射は周期的に実施される、3に記載の方法。
[5] 蛍光及び減光が同時に測定される、1~4のいずれか1項に記載の方法。
[6] i)減光及び蛍光が共通の検出器(53)によって測定される;
ii)減光が第一の検出器(50)及び/又は第二の検出器(51)によって測定され、第一の蛍光波長の蛍光が第一の検出器(50)によって測定され、第二の蛍光波長の蛍光が第二の測定器(51)によって測定される;又は
iii)減光が第一の検出器(52)によって測定され、第一の蛍光波長の蛍光が第二の検出器(51)によって測定され、第二の蛍光波長の蛍光が第三の測定器(50)によって測定される、
1~5のいずれか1項に記載の方法。
[7] サンプル容器(30)がキャピラリー(30)である、1~6のいずれか1項に記載の方法。
[8] サンプル容器(30)が
温度調節されている1~7のいずれか1項に記載の方法。
[9] サンプル容器(30)が、
温調素子(77)の上に置かれ、そして接触によって
温度調節されており、ここで
温調素子は、さらに第二波長の照射光を反射し、再度サンプル容器(30)を反対方向に通過して減光として出射する、8に記載の方法。
[10]
温調素子(77)が、
i)自己蛍光が1%未満で、自己蛍光をほとんど持たない、及び/又は
ii)第二波長の波長範囲で、30%を超える高い反射率を有する
材料でできている、8又は9に記載の方法。
[11]
温調素子(77)がシリコンを含む材料、又は純シリコンからなる材料でできている、10に記載の方法。
[12]
温調素子の表面に少なくとも一つの溝(90)が形成され、サンプル容器が溝の上方に配置され、第二の波長の照射光(20)が溝(90)の底面から反射されて戻ってくる、1~11のいずれか1項に記載の方法。
[13] 溝(90)が1~10mmの幅と、第二波長の光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する、12に記載の方法。
[14] サンプル容器(30)が、測定中に、第一及び/又は第二の波長の照射光に対して及び/又は検出器に対して相対的にシフトする1~13のいずれか1項に記載の方法。
[15] サンプル容器(30)が、数回行き来する、14に記載の方法。
[16] 複数のサンプル容器又は複数のキャピラリー(30)が前記相対運動によってスキャンされる、14又は15に記載の方法。
[17] i)蛍光値が、シフト全体にわたる蛍光の強度を積分することによって求められる、及び/又は
ii)減光値が、シフト全体にわたる減光の強度を積分することによって求められる、
14~16のいずれか1項に記載の方法。
[18] 測定中、
i)熱安定性を決定するために、サンプルの温度を変化させる;
ii)化学安定性を決定するために、様々な液体サンプル中の変性剤の濃度を様々に選択する;及び/又は
iii)時間に関する安定性を決定するために、サンプルを実質的に一定の温度で1時間を超える時間維持する、
1~17のいずれか1項に記載の方法。
[19] i)熱安定性を決定するために、サンプルの温度を上昇させる、18に記載の方法。
[20] 測定中、複数のサンプル容器及び/又は光学システムが連続的に数回行き来し、蛍光及び/又は減光の測定がその運動中に実施される、14~16のいずれか1項に記載の方法。
[21] 第二の波長(20)が、サンプル又はサンプル中の粒子によって1%未満しか吸収されないように選ばれる、1~20のいずれか1項に記載の方法。
[22] 第二の波長(20)が、サンプル又はサンプル中の粒子によって0.1%未満しか吸収されないように選ばれる、21に記載の方法。
[23] 第二の波長(20)が、サンプル又はサンプル中の粒子によって0.05%未満しか吸収されないように選ばれる、21に記載の方法。
[24] 第一波長の光及び第二波長の光が合体されて同一直線の光線になり、それがサンプル容器に照射される、1~23のいずれか1項に記載の方法。
[25] 反射されてサンプル容器から照射方向とは反対方向に出ていく第二波長の減光が、照射方向から最大でも5°しか偏位していない、1~24のいずれか1項に記載の方法。
[26] 第二波長の減光が、2°未満しか偏位していない、25に記載の方法。
[27] 第二波長の減光が、1°未満しか偏位していない、25に記載の方法。
[28] 1~27のいずれか1項に従って、サンプル容器(30)に入っている液体サンプル(10)中の粒子の安定性及び凝集を光学的に測定するための装置であって、該装置は、
試験される粒子を蛍光的に励起するために、第一の波長の光をサンプル容器に照射するための第一の光源(40)と、
粒子の散乱又は凝集を測定するために、第二の波長の光をサンプル容器に照射するための第二の光源(41)と、
サンプルから放射された励起蛍光を測定するための第一の検出器と、
第二の波長で減光(22)を測定するための第二の検出器(ここで、第二の波長の照射光(20)はサンプル容器(30)を通過し、反射され、再度サンプル容器を反対方向に通過し、減光として出射する)と、そして
測定された蛍光に基づいて粒子の安定性を決定し、測定された減光に基づいて粒子の凝集を決定する評価手段と
を含む装置。
[29] 第二の波長の照射光が反射される反射面を有する
温調素子を含む、
28に記載の装置。
[30] 少なくとも一つのサンプル容器(30)を測定目的で表面に配置するように構成されている、29に記載の装置。
[31] 少なくとも一つのサンプル容器(30)がキャピラリー(30)である、29または30に記載の装置。
[32] 反射面がシリコン(例えば結晶性シリコン)からなる、29~31のいずれか1項に記載の装置。
[33] 少なくとも一つの溝(90)が
温調素子の表面に形成され、サンプル容器が溝の上方に配置され、第二の波長の照射光(20)が溝(90)の底面から反射されて戻ってくる、29~32のいずれか1項に記載の装置。
[34] 溝(90)が1~10mmの幅と、第二波長の光のコヒーレンス長の半分を超える深さを有する、33に記載の装置。
[35] 1~27のいずれか1項に記載の方法を実施するための、28~34のいずれか1項に記載の装置の使用。
【符号の説明】
【0153】
10 サンプル
11 散乱/凝集粒子を含まないサンプル
12 多少の散乱/凝集粒子を含むサンプル
13 強散乱/凝集粒子を含むサンプル
14 多数の蛍光粒子を含むサンプル
15 多少の蛍光粒子を含むサンプル
16 蛍光粒子をほとんど含まないサンプル
20 減光測定のための照射光
21 蛍光のための励起光
22 反射光
23 発光蛍光
24 特定散乱角Qの散乱光
25 “望まざる”散乱光
26 “望まざる”反射散乱光
30 キャピラリー
40 蛍光励起用光源
41 減光用光源
50 検出器1(蛍光及び減光)
51 検出器2(蛍光及び減光)
52 検出器3(減光)
53 検出システム
60 40のためのコリメーターレンズ
61 41のためのコリメーターレンズ
62 対物レンズ
63 50のための集光レンズ
64 51のための集光レンズ
65 52のための集光レンズ
70 40のための励起フィルター
71 40+41の結合のためのビームスプリッター
72 励起光と蛍光を分離するためのビームスプリッター
73 蛍光発光フィルター
74 蛍光を分離するためのビームスプリッター
75 蛍光と減光を分離するためのビームスプリッター
76 減光フィルター
77 反射、非蛍光表面、例えばシリコン表面
80 キャピラリーアレイの走行方向
90 溝、ファロー、ディッチ、窪み
91 端部領域
100 検出のための本発明の代替品
200 先行技術による散乱光のための検出光学系