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特許7053463超音波システムを使用して脳腫瘍を治療するための方法及びキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】超音波システムを使用して脳腫瘍を治療するための方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20220405BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220405BHJP
   A61N 7/02 20060101ALI20220405BHJP
   A61B 8/14 20060101ALN20220405BHJP
   A61B 5/055 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZMD
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K41/00
A61K9/14
A61K9/10
A61N7/02
A61B8/14
A61B5/055 390
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018524762
(86)(22)【出願日】2016-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2016105293
(87)【国際公開番号】W WO2017080481
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】62/253,805
(32)【優先日】2015-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518161846
【氏名又は名称】ナビフス コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NAVIFUS CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】14F., No. 96, Sec. 2, Zhongshan N. Rd., Zhongshan Dist., Taipei City 104, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ハオ-リー
(72)【発明者】
【氏名】チュー, ポー-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ティン-クアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, クオ-チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ピン-ユエン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, チーウン-イン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501918(JP,A)
【文献】特表2014-504276(JP,A)
【文献】特表2011-529039(JP,A)
【文献】国際公開第2015/047103(WO,A1)
【文献】米国特許第07896821(US,B1)
【文献】米国特許第05752515(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0241529(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095325(US,A1)
【文献】Biochem.Biophys.Res.Commun.,2006年,Vol.340,p.1085-1090
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベバシズマブ(Bevacizumab)を有効成分とする脳腫瘍治療剤であって、
以下の工程(1)~(3)
(1)前記ベバシズマブの投与量が、投与の対象となるヒトに対し、毎週、0.011~11mg/kg体重となるように、前記脳腫瘍治療剤を投与する工程と
(2)超音波応答性媒体を前記対象に投与する工程と、
(3)前記対象に0.55~0.84MIの超音波曝露を行う工程と、
を含む、脳腫瘍の治療に用いられ、
前記超音波応答性媒体は、マイクロバブルであり、マイクロバブルの粒子は、コアシェル構造を有し、前記シェルは生体適合性材料で形成されており、コアは生体適合性気体媒体であり、
前記工程(1)~(3)は、微小液滴を前記対象に投与することを含まない、
脳腫瘍治療剤
【請求項2】
前記ベバシズマブの投与量が、毎週、0.11~11mg/kg体重である、請求項1に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項3】
前記ベバシズマブの投与量が、毎週、1.1~11mg/kg体重である、請求項に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項4】
前記ベバシズマブの前記投与が静注によるものである、請求項1に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項5】
前記超音波応答性媒体の投与が静注によるものである、請求項1に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項6】
前記マイクロバブルの粒子の平均直径が0.1~10μmである、請求項に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項7】
前記投与において、前記マイクロバブルの量が1.9×106~1.17×108粒子/kg体重である、請求項に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項8】
前記超音波曝露が前記対象の中枢神経系に対して行われる、請求項1に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項9】
前記脳腫瘍が多形性膠芽腫(Glioblastoma multiforme)である、請求項1に記載の脳腫瘍治療剤
【請求項10】
脳腫瘍を治療するためのキットであって、
ベバシズマブ製剤と、
超音波応答性媒体と、
超音波トランスデューサー(transducer)を含む超音波システムと、を含み、
前記超音波応答性媒体は、マイクロバブルであり、マイクロバブルの粒子は、コアシェル構造を有し、前記シェルは生体適合性材料で形成されており、コアは生体適合性気体媒体であり、
前記超音波システムは、0.55~0.84MIの超音波曝露を生成するように設定され、
当該キットは、微小液滴を含まない、
キット。
【請求項11】
前記ベバシズマブ製剤が、0.11~25mg/mLのベバシズマブと注入用担体とを含み、前記mg/mLが、前記ベバシズマブ製剤の合計体積に基づくものである、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記注入用担体が、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記超音波応答性媒体が、1×104~1×1012粒子/mLの粒子を含み、前記粒子/mLは、前記超音波応答性媒体の合計体積に基づくものである、請求項10に記載のキット。
【請求項14】
前記粒子の平均直径が0.1~10μmである、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記超音波応答性媒体が注入用担体と混合される、請求項10に記載のキット。
【請求項16】
前記注入用担体が、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記脳腫瘍が多形性膠芽腫である、請求項10に記載のキット。
【請求項18】
前記超音波システムが、医用イメージングをベースとしたガイダンス超音波システム(guidance ultrasound system)である、請求項10に記載のキット。
【請求項19】
前記医用イメージングが、ニューロナビゲーション、超音波検査、光学イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)、核イメージング、又は磁気共鳴イメージング(MRI)を含む、請求項18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2015年11月11日に出願された米国特許仮出願第62/253,805号に基づく。
【0002】
(先行技術の記載)
多形性膠芽腫(GBM)患者は、通常、5年生存率がわずか5%未満であり、侵襲的な外科術(aggressive surgery)並びにそれに続く補助化学療法及び放射線療法後の全生存期間の中央値はわずか15ヶ月である。GBMは、不規則で広範囲の血管増殖、血管新生因子の発現増大、及び顕著に高レベルで分泌された血管内皮増殖因子(VEGF)を示す、高度に血管が新生した腫瘍であることから、抗血管新生療法が新しい治療開発の取り組みの焦点となっている。GBMとの関連性の高いVEGF発現により、腫瘍の低酸素状態及び壊死と相関する血管内皮細胞の成長及び増殖が生じ、腫瘍の血管新生及び進行を誘発する。
【0003】
ベバシズマブは、VEGF-Aアイソフォームに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であり、血管内皮細胞の増殖を中和する。ベバシズマブは、腫瘍による血管新生を低減し、血管の完全性を改善し、腫瘍に関連する浮腫を低減して、臨床上の生活水準を向上させる。理論上、一貫した抗血管新生薬の投与により、血管網が破壊され、酸素及び栄養輸送が妨害され、腫瘍は最終的に飢餓状態に陥ることになる。しかしながら、これらの抗腫瘍効果はまた、血管透過性を効果的に低減しかつ異常な毛細血管漏出を一時的に逆転する(temporally reverse)抗VEGF剤の能力を介した「血管の正常化」にも妨げられる。一時的な「血管の正常化」は、BBBの完全性を回復させ、ベバシズマブの脳実質への更なる透過(penetration)を制限することから、GBM細胞の血管新生の抑制及び持続的な腫瘍の飢餓状態を減少させ、患者の生存を改善する。
【発明の概要】
【0004】
前述の観点から、本発明の目的の1つは、抗血管新生療法を用いて脳腫瘍を治療する方法を提供するというものである。本発明の別の目的は、脳腫瘍を治療するためのキットを提供するというものである。かかる方法及びキットでは、より少ない投与量の抗血管新生薬を使用しながらもより適切な有効性を提供することができる。
【0005】
前述の目的を達成するため、本発明は、脳腫瘍の治療に必要とされるベバシズマブの有効量を低減する方法であって、以下の工程:ベバシズマブを対象に投与する工程[ここで、かかるベバシズマブは0.011~11mg/kg体重の量である];かかる対象に超音波応答性媒体(ultrasound-response medium)を投与する工程;並びにかかる対象に0.1~2MI(メカニカルインデックス、Mechanical index)の超音波曝露を行う工程を含む、方法を提供する。好ましくは、かかる超音波曝露は0.47~1.26MIであり;より好ましくは0.55~0.84MIである。
【0006】
好ましくは、かかるベバシズマブの量は、0.11~11mg/kg体重である。より好ましくは、かかるベバシズマブの量は、1.1~11mg/kg体重である。好ましくは、かかるベバシズマブのかかる投与は、静注による。
【0007】
好ましくは、かかる超音波応答性媒体のかかる投与は、静注による。好ましくは、かかる超音波応答性媒体は複数の粒子である。好ましくは、かかる粒子の平均直径は0.1~10μmである。好ましくは、かかる投与に当たり、かかる複数の粒子の量は1.9×106~1.17×108粒子/kg体重である。好ましくは、かかる粒子はマイクロバブルである。
【0008】
好ましくは、かかる超音波曝露はかかる対象の中枢神経系に対して行われる。好ましくは、かかる脳腫瘍は多形性膠芽腫である。
【0009】
本発明は、脳腫瘍を治療するためのキットであって、ベバシズマブ製剤と、超音波応答性媒体と、超音波トランスデューサーを含む収束超音波(focus ultrasound)システムと、を含む、キットも提供する。
【0010】
好ましくは、かかるベバシズマブ製剤は、0.11~25mg/mLのベバシズマブと注入用担体とを含み、かかるmg/mLは、かかるベバシズマブ製剤の合計体積に基づくものである。好ましくは、かかる注入用担体は、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである。
【0011】
好ましくは、かかる超音波応答性媒体は、1×104~1×1012粒子/mLの粒子を含み、かかる粒子/mLは、かかる超音波応答性媒体の合計体積に基づくものである。好ましくは、かかる粒子の平均直径は0.1~10μmである。
【0012】
好ましくは、かかる超音波応答性媒体は、注入用担体と混合される。好ましくは、かかる注入用担体は、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである。
【0013】
好ましくは、かかる脳腫瘍は多形性膠芽腫である。
【0014】
好ましくは、かかる超音波システムは、医用イメージングをベースとしたガイダンス超音波システム(guidance ultrasound system)である。好ましくは、かかる医用イメージングは、ニューロナビゲーション、超音波検査、光学イメージング、コンピュータ断層撮影、核イメージング(CT)、又は磁気共鳴イメージング(MRI)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】神経膠腫を有するマウスにおいて、超音波により誘導されるBBB開口を用いベバシズマブの送達を増強する実験デザインについて、時間経過を示す。50mg/kg体重で静注によりベバシズマブを毎週投与し(初回のMRIスクリーニング後、1、8、15、22、及び29日目)、腫瘍の進行及び生存をT2-MRIにより長期的に追跡した。超音波曝露は毎週実施した(初回のMRIスクリーニング後、ベバシズマブの静注投与前、1、8、15、22、及び29日目)。
図2】超音波により誘導される血液脳関門(BBB)の開口についての概念及びMRI観察例を示す。(a)超音波により誘導される血液脳関門の開口を用い、神経膠腫治療の際のベバシズマブの送達を増強する実験アプローチについての概念図。(B~I)中等度(0.4MPa、すなわち、0.63MI)及び高強度(0.8MPa、すなわち、1.26MI)の超音波曝露レベルで超音波により誘導されるBBB開口についてのCE-MRI解析例。(b、c)造影T1強調像のマップにおいてのシグナル強度レベルの増加量(%);(d、e)R1マップの曲線下面積(AUC)の累積(s-1.min);(f、g)Ktransマップ(min-1);(h、i)Veマップ。
図3】送達されたベバシズマブの透過に対しての定量、MRイメージングとの相関、及びウェスタンブロッティングを示す。(a)HPLCにより測定された異なる超音波曝露(それぞれ0、0.4、及び0.8MPa;すなわち、0、0.63、及び1.26MI)レベルでのベバシズマブ濃度;(b~e)ベバシズマブ濃度と、T1-WI(パネル(b))、R1-AUCレベルの変化(パネル(c))、Ktransレベルの変化(パネル(d))、及びVeレベルの変化(パネル(e))におけるSI増加を含む、造影MRIの異なるインデックスとの相関。(f)超音波により誘導されるBBB開口後にベバシズマブのCNSへの透過が増強されたことを示すウェスタンブロット。(g)ウェスタンブロット強度の定量分析の比較。記号「***」は、p<0.001を表す。BEV=ベバシズマブ。
図4】超音波支援による70kDaの蛍光標識デキストランのCNS送達についての、蛍光顕微鏡による観察結果を示す。(a、b)は超音波に曝露されていない対照動物の左半球及び右半球である。BBBが完全な状態であることから、蛍光シグナルは検出されなかった。(c、d)右半球を0.3MPaで超音波曝露処理した動物(蛍光強度42354±3937a.u.)。(e、f)右半球を0.4MPaで超音波曝露(すなわち、0.63MI)処理した動物(蛍光強度81329±7926a.u.)。(g、h)右半球を0.53MPaで超音波曝露(すなわち、0.84MI)処理した動物(蛍光強度85348±1050a.u.)。バー=100μm。
図5】超音波支援による150kDaの蛍光標識デキストランのCNS送達についての、蛍光顕微鏡による観察結果を示す。(a、b)超音波曝露していない対照動物の左半球及び右半球。BBBが完全な状態であることから、蛍光シグナルは検出されなかった。(c、d)右半球を0.3MPa/0.4MHzで超音波曝露処理した動物(蛍光強度22716±3706a.u.)。(e、f)右半球を0.4MPaで超音波曝露(すなわち、0.63MI)処理した動物(蛍光強度29208±7518a.u.)。(g、h)右半球を0.53MPa/0.4MHzで超音波曝露(すなわち、0.84MI)処理した動物(蛍光強度52643±11644a.u.)。バー=100μm。
図6】超音波支援による250kDaの蛍光標識デキストランのCNS送達についての、蛍光顕微鏡による観察結果を示す。(a、b)超音波曝露していない対照動物の左半球及び右半球。BBBが完全な状態であることから、蛍光シグナルは検出されなかった。(c、d)右半球を0.3MPa(すなわち、0.47MI)で超音波曝露処理した動物(蛍光強度42012±5764a.u.)。(e、f)右半球を0.4MPaで超音波曝露(すなわち、0.63MI)処理した動物(蛍光強度60504.81±1956.97a.u.)。(g、h)右半球を0.53MPaで超音波曝露(すなわち、0.84MI)処理した動物(蛍光強度71672±7770a.u.)。バー=100μm。
図7】それぞれ異なる誘発された圧力、及び超音波により増強された分子サイズの下での、蛍光強度変化の比較を示す。超音波曝露を施していない対照動物では、BBBが妨害するため、デキストランは透過しない。適用される音圧が高くなるほど、あるいは投与される蛍光標識デキストランの大きさが小さくなるほど、検出され得る蛍光強度は高くなった。
図8】蛍光強度と、3種類の濃度の蛍光標識デキストランとの相関を示す。(a~c)様々な大きさの蛍光標識デキストランは、全て、蛍光強度対濃度間の相関が高いことを示す(それぞれ70kDa(パネル(a))、150kDa(パネル(b))、及び250kDa(パネル(c))について、r2=0.9517、0.8447、及び0.9679)。
図9】腫瘍の進行を追跡するT2強調MRI例を示す。(a~d)各試験群において、T2強調MRIを使用して、7日目~35日目までの間、毎週、脳腫瘍の進行を監視した。超音波により誘導されるBBB開口のみを行った場合には(パネル(b))、未処理の対照(パネル(a))と同様の腫瘍進行が示されたのに対し、ベバシズマブ投与のみの場合には、腫瘍進行の抑制が向上していることが示された(パネル(c))。各群の中でも、超音波により誘導されるBBB開口と、ベバシズマブ投与とを併せて行った場合に最も有意な腫瘍抑制効果が提供された(パネル(d))。
図10】腫瘍の進行及び動物の生存率分析を示す。(a、b)各試験群における7日目~35日目の腫瘍進行。パネル(a)は腫瘍体積(mm3)を示し、パネル(b)は腫瘍の週毎の進行率(%)を示す。(c)各試験群の動物の生存率を示すカプランマイヤープロット。BEV=ベバシズマブ。
図11】HE染色及びCD-31染色した免疫化学(IHC)蛍光顕微鏡法の比較を示す。(a~c)ベバシズマブ投与のみで処理した脳腫瘍を示すHE染色及びCD-31 IHC顕微鏡観察像。(d~f)超音波により誘導されるBBB開口と併せてベバシズマブ投与で処理した脳腫瘍を示す、HE染色及びCD-31 IHC顕微鏡観察像。バー=500μm。(g)腫瘍領域内で測定された血管密度の定量比較。(h、i)それぞれ(C)及び(F)により得られた、CD-31標識された血管構造を示す拡大画像。バー=100μm。
図1268Ga-ベバシズマブの注入後15分の時点でのBBB開口マウスの減衰補正したPET/CT画像を示す。a.試験群(n=3)において、マウスは超音波で処理し、68Ga-ベバシズマブを注入した。円は、超音波による標的部位を示す。対照群(n=3)は、68Ga-ベバシズマブの注入量は等しいものの、超音波処理は行っていない。b.BBB開口効果についてのPET定量と、両群の主要臓器(心臓、肝臓、腎臓、肺、筋肉)に関する生体分布プロファイル。
図13】送達されたベバシズマブ透過量を示す。「ブランク」は対照群(未処理群)を表す。「50mg」、「30mg」及び「10mg」は、それぞれ、超音波曝露はせずに50mg/kg体重、30mg/kg体重、及び10mg/kg体重のベバシズマブで処理した群を表す。「超音波+50mg」、「超音波+30mg」及び「超音波+10mg」は、それぞれ、超音波曝露と共に50mg/kg体重、30mg/kg体重、及び10mg/kg体重のベバシズマブで処理した群を表す。
図14】体積をもとに腫瘍の進行を示す。「対照」は対照群(未処理群)を表す。「50mg」は、超音波曝露はせずに50mg/kg体重のベバシズマブで処理した群を表す。「超音波+30mg」及び「超音波+10mg」は、それぞれ超音波曝露と共に30mg/kg体重又は10mg/kg体重のベバシズマブで処理した群を表す。
図15】実験モデルマウスの生存確率を示す。「対照」は対照群(未処理群)を表す。「50mg」は、超音波曝露はせずに50mg/kg体重のベバシズマブで処理した群を表す。「超音波+30mg」及び「超音波+10mg」は、それぞれ超音波曝露と共に30mg/kg体重又は10mg/kg体重のベバシズマブで処理した群を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
低圧バーストモードでの経頭蓋の超音波曝露は、局所的、一時的、及び可逆的にBBBを開口することができる。経頭蓋の超音波曝露により、局所エネルギーを脳の深部領域に非侵襲的に送達することができる。BBBの破綻は、正常組織には影響を及ぼさずに、治療薬の脳における局所濃度を上昇させることができる。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、試薬、薬剤、又は医薬を必要としている対象が所望の効果を得るのに十分な試薬、薬剤、又は医薬の量を指す。本明細書において、「脳腫瘍を治療する」又は同等の記述は、腫瘍の進行の低減及び/若しくは予防、腫瘍の大きさの縮小、対象の正常な生理機能に対する腫瘍による影響の低減及び/若しくは予防、あるいはこれらの組み合わせを指すものであるが、但し限定するものではない。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「超音波応答性媒体」は、超音波の音響出力(acoustic power)に応答してキャビテーションを提供することのできる媒体を呼称するものである。好ましい実施形態では、かかるキャビテーションはBBBを開口可能であり、より好ましくはBBB全体の透過性を増加させることができる。理論に束縛されるものではないが、かかる超音波応答性媒体は、かかる超音波曝露と相乗的に使用され、BBBを開口すなわち破綻し、これにより医薬の透過性を増加させる。
【0019】
本発明の一態様は、脳腫瘍の治療におけるベバシズマブの有効性を増強する方法を提供する。本方法を使用することにより、脳腫瘍の治療に必要とされるベバシズマブの有効量が低減され得る。代替的な実施形態では、かかる脳腫瘍は、髄膜腫又は星状細胞腫であり得る。特定の実施形態では、かかる星状細胞腫は多形性膠芽腫である。
【0020】
本発明の方法は、ベバシズマブを対象に投与すること、超音波応答性媒体をかかる対象に投与すること、並びにかかる対象に超音波曝露を行うこと、を含む。代替的な実施形態では、上記の3つの工程の実施に特に順序はない。
【0021】
好ましい実施形態では、かかるベバシズマブの投与量はヒトを対象とするものである。代替的な実施形態では、ベバシズマブのかかる投与量は、マウスモデルの実験より得られたデータをもとに計算される。例えば、計算は、Reagan-Shaw et al.,FASEB J.2008 Mar;22(3):659-61において教示される式に基づく。一実施形態では、かかるベバシズマブの量は0.011~11mg/kg体重であり、好ましくは0.11~11mg/kg体重であり、より好ましくは1.1~11mg/kg体重である。
【0022】
代替的な実施形態では、かかる超音波応答性媒体は複数の粒子である。好ましい実施形態では、かかる粒子の投与量は1.9×106~1.17×108粒子/kg体重である。代替的な実施形態では、かかる粒子の平均直径は0.1~10μmである。
【0023】
好ましくは、かかる粒子はマイクロバブルである。代替的な実施形態では、かかるマイクロバブルはコアシェル構造を有し、ここで、かかるシェルは生体適合性材料(アルブミン、脂質、又はポリマー等が挙げられるがこれらに限定されない)からなり、コアは生体適合性気体媒体である。代替的な実施形態では、かかるマイクロバブルは、アルブミンコートマイクロバブル、脂質シェルマイクロバブル、ガス充填マイクロバブル、又はこれらの組み合わせを含む。別の代替的な実施形態では、かかるマイクロバブルは、例えば、SonoVue(登録商標)、Definity(登録商標)、Optison(登録商標)、Imagent(登録商標)、Levovist(登録商標)、又はLumason(登録商標)などの市販品であり得る。
【0024】
代替的な実施形態では、かかる超音波曝露は0.1~2MI(メカニカルインデックス;
【0025】
【数1】
として定義され、式中、Pは最大負音圧(MPa)であり、fは周波数(MHz))であり、好ましくは0.47~1.26MIであり、より好ましくは0.55~0.84MIである。好ましくは、かかる超音波曝露は対象の中枢神経系に対し実施され、より好ましくは、対象の脳に対し実施される。
【0026】
本発明の別の態様は、脳腫瘍を治療するためのキットである。代替的な実施形態では、かかるキットを使用して本発明の方法を実施する。代替的な実施形態では、かかる脳腫瘍は、髄膜腫又は星状細胞腫であり得る。特定の実施形態では、かかる星状細胞腫は多形性膠芽腫である。本発明のキットは、ベバシズマブ製剤と、超音波応答性媒体と、超音波システムと、を含む。代替的な実施形態では、かかるベバシズマブ製剤は、0.11~25mg/mLのベバシズマブと、注入用担体とを含む。かかる注入用担体は、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせであり得るがこれらに限定されない。
【0027】
本発明のキットのかかる超音波応答性媒体は、本発明の方法に関し前項に記載のものと同じである。好ましい実施形態では、かかる超音波応答性媒体は製剤としての注入用担体と混合され、かかる製剤は、1×104~1×1012粒子/mLの粒子を含み、かかる粒子/mLは、かかる製剤の合計体積に基づくものである。代替的に、かかる注入用担体は、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである。好ましい実施形態では、かかる粒子は、かかる粒子と、塩類溶液と、ヘパリンと、を含む調製物として配合される。
【0028】
典型的な超音波システムは、通常、超音波トランスデューサーと、水槽とを含む。特定の実施形態では、かかる超音波システムは、医用イメージングをベースとしたガイダンス超音波システムである。好ましい実施形態では、かかる超音波システムはニューロナビゲーションガイド超音波システムであり、かかるシステムはニューロナビゲーションシステム(Tsai et al,Ultrasonics Symposium(IUS),2015 IEEE International)を更に含む。代替的な実施形態では、かかる超音波システムは、超音波検査ガイド超音波システム、光学イメージングガイド超音波システム、コンピュータ断層撮影ガイド超音波システム、核イメージング(CT)ガイド超音波システム、又はMRIガイド超音波システムであり得る。
【0029】
以下の実験及び詳細は、本発明の趣旨及び概念を更に説明するために提供される。以下の情報は本発明の特許請求の範囲を制限することを意図するものではないことに留意されたい。当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、以下に記載の本発明の詳細な説明に改変を施すことができる。
【0030】
実験1~4。
以下の実験1~4の材料及び方法
1.U87神経膠腫動物モデル。
U87マウス神経膠腫細胞を、37℃、5% CO2下で、10%ウシ胎仔血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したMEMで培養した。BioLASCO(Taiwan)の雄性無菌NU/NUマウス(5~7週齢、20~25g)を制御環境下に収容した。全ての実験は所属の動物実験委員会の承認を受けた。U87細胞を移植するに当たり、マウスには2%イソフルランガスで麻酔を行い、定位固定フレーム上に固定した。頭蓋冠を覆う皮膚の矢状切開を行い、露出させた頭蓋において、ブレグマの1.5mm前側かつ2mm外側に対し、27Gの針を使用して孔を形成した。5分かけて脳表面から2mm深部に5μLのU87細胞懸濁液(1×105個/μL)を注入し、針を2分かけて引き抜いた。移植から10日後に、異種移植片の成長をMRIにより監視した。
【0031】
2.実験デザイン。
12匹の正常マウス及び42匹の腫瘍マウスを使用した。第1群の目的は、超音波により誘導されるBBB開口が正常マウス(n=4)においてベバシズマブの透過を増強させたかを評価すること、並びに適切な超音波出力範囲(n=4)及びウェスタンブロット分析(n=8;正常4匹と腫瘍4匹)を決定することとした。第2群の目的は、腫瘍マウスにおいて、ベバシズマブと超音波曝露とを併用することによる治療効果を評価することとした。下位群は次の4つであった:(1)偽処置(n=7);(2)超音波のみ(n=9);(3)ベバシズマブのみ(n=6)、50mg/kg体重で静注によりベバシズマブを毎週投与した(初回のMRIスクリーニング後、1、8、15、22、及び29日目)、並びに(4)ベバシズマブ+超音波によるBBB開口(n=12)、50mg/kg体重で静注によりベバシズマブを毎週投与した(初回のMRIスクリーニングから1、8、15、22、及び29日後)。第2群において、エンドポイントは、MRI測定による腫瘍体積が200mm3超であること、又は1週間の体重低下が20%超であることとした。実験デザインの時間経過を図1に示す。
【0032】
3.超音波曝露。
超音波は、Tsai et al,Ultrasonics Symposium(IUS),2015 IEEE Internationalによりニューロナビゲーションガイドされる超音波とする。超音波トランスデューサー(Sonic Concepts Inc.,Washington,USA;直径=60mm,曲率半径=52mm,周波数=400kHz)を適用して集束(concentrated)超音波処理エネルギーを生成した。任意波形発生器(33220A,Agilent,Palo Alto,CA)を使用して駆動信号を生成し、かかる信号をバーストモードの高周波電力増幅器(No.500-009,Advanced Surgical Systems,Tucson,AZ)に送信した。麻酔をかけたマウスを定位フレームに固定し、PE-10カテーテルを尾静脈に挿入した。アクリル製水槽下、底部の4×4cm2薄膜ウインドウ(thin-film window)に頭部をしっかりと固定してマウスを直接配置し、超音波エネルギーを進入させた。SonoVue(登録商標)SF6を充填した超音波応答性粒子(ultrasound particles)(2~5μm,10μL/マウス,2×108個マイクロバブル/mL;Bracco,Milan,Italy)を超音波の前に静脈内投与した。腫瘍を移植した脳半球部位を、次にバーストトーンモードの超音波に曝露した(電力=4~18W;最大負音圧=0.1~2MI;バースト長=10ms;パルス繰り返し周波数=1Hz;照射時間=60秒)。
【0033】
4.磁気共鳴画像(MRI)。
造影MRIを使用して、Gd-DTPA投与(Magnevist,Wayne,NJ,USA)を介しBBB透過性の増加を評価し、以下のイメージングインデックスを得た:(1)Gd-DTPA注入10後のT1強調像におけるシグナル強度の増加;(2)期間中のR1緩和度の曲線下面積(R1-AUCとして記載);(3)動態パラメーター「Ktrans」、血管内の系から細胞外血管外スペースへの移動速度定数、Ketyのコンパートメントモデルにより評価;(4)動態パラメーター「Ve」、EES中の造影剤の体積分率、Ketyのコンパートメントモデルにより評価。
磁化率強調画像シーケンスを取得して、大規模な赤血球溢出を特定した(パラメーター:TR/TE=30ms/18ms;フリップ角=40°;スライス厚=0.6mm;マトリックスサイズ=256×384;及びFOV=80×130mm2)。マウスの脳頂部に対し、7テスラの磁気共鳴断層撮影装置(Bruker ClinScan,Germany)と4チャンネルの表面コイルとを使用して、MRI画像を取得した。麻酔下のマウスをアクリルホルダーに置き、マグネット部に配置した。次のパラメーターでターボスピンエコーベースのT2強調像を使用して、腫瘍サイズを定量した:パルス繰り返し時間(TR)/エコー時間(TE)=2540/41ms;FOV=19×30mm2(156×320ピクセル);スライス厚=0.5mm;フリップ角=180;合計撮像時間=155秒。最大の腫瘍面積を含む1枚のイメージスライドを測定することにより相対的な腫瘍サイズを評価した。マウスは、初回のMRIスクリーニングから7日毎に35日目まで長期的に撮像した。
【0034】
5.組織学的検査。
エバンスブルー色素を静脈内に注入して2時間後にマウスを屠殺した。パラホルムアルデヒド固定し、パラフィン包埋した脳の10μmの切片に対し、病理組織診断を行った。塩酸-フェロシアン化カリウム溶液を入れた染色ジャーにスライドを入れ、室温で30分間置いた。スライドをヌクレアファストレッドで5分間対比染色した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を使用して、脳組織の損傷及び腫瘍進行を評価した。
血管分布を評価するため、抗マウス-CD31抗体(1:500,550274,BD Pharmingen,NJ,USA)及びヤギ-抗ラットDylight 488抗体(1:200,405409,Biolegend,CA,USA)を用い、スライドに対し免疫蛍光検査を行った。腫瘍の血管を、腫瘍断面積に対する総血管面積として定量した。
【0035】
6.ウェスタンブロット。
均質化した脳組織からの50μgタンパク質(ヤギ-抗ヒトIgG,AP112P,Millipore,USA)をウェスタンブロット分析に使用した。BioSpectrum Imaging System(UVP LLC,Upland,CA)を使用して、フィルム上のバンドの光学密度を分析した。
【0036】
7.定量的ベバシズマブ分析。
超音波処理の2時間後にマウスを屠殺し、脳を左半球と右半球に分割し、10μL/mg mLメタノールで均質化した。抽出したベバシズマブを、L-2400 UVモデルの検出器、及びL-2130モデルのポンプ(Hitachi)、及びSUPELCOSIL(商標)LC-18カラム(4.6×250mm)を使用してHPLC分析した。
【0037】
8.統計解析。
対応のない両側t検定(two-tailed unpaired t test)又はマンテルコックス検定のいずれかを用いて統計的有意性を計算した。生存分析にはカプラン・マイヤー法を使用した。統計的有意性はp<0.05で評価した。
【0038】
実験1:超音波は効率的にBBBを開口し、脳中のベバシズマブ濃度を増大させる。
この実験では、上記の方法に従い、0.63MI又は1.26MI(すなわち、0.4MPa又は0.8MPaの最大負音圧)の経頭蓋超音波に曝露し、BBB開口効果について評価した。同様にして、超音波曝露の実施前にベバシズマブを投与して、超音波曝露がベバシズマブのBBB透過に対する効果に何らかの作用を有するかを確認した。
【0039】
BBBの開口は造影MRIにより確認した。この確認には4種類のCE-MRIインデックスを使用した。0.63MI及び1.26MIの超音波曝露の両方で、標的とする脳領域においてBBBが有効に開口したことを示す結果を図2に示す。更に、高圧をかけると、より強いBBB開口効果がもたらされた。
【0040】
HPLCを使用して、脳中のベバシズマブ濃度を定量した。その結果、超音波処理はCNS実質におけるベバシズマブ濃度を増大させることが示された。中等度の0.63MIの超音波曝露では、結果として、0.175±0.15μMのベバシズマブがCNSに透過した一方(すなわち、5.73倍に増加)、高強度の1.26MIの超音波曝露では、ベバシズマブは1.554±0.37μMに著しく増加した(すなわち、58.77倍に増加)(図3a)。対照においては、ベバシズマブの循環は正常に制限され、CNSへの透過は極微量であった(0.026±0.02μM)。4つのCE-MRIインデックスを、ベバシズマブ濃度との相関についても解析した(図3b~e)。R1-AUCは、測定したベバシズマブレベルについては最も高い線形相関を有することが観察された(図3c;r2=0.738)。T1強調像又はKtransにおけるシグナル強度の増加はいずれも、相関係数0.6超でベバシズマブレベルと中等度の相関を提供した(それぞれr2=0.678及び0.606;図3b及び3d)一方、Veとベバシズマブレベルとの相関は最も低かった(r2=0.56;図3e)。最終的に、4つのインデックスにより、in vivoにおいて、超音波により誘導されるBBB開口と、CNSのベバシズマブ送達の増強との十分な相関が提供された。
【0041】
実験2:超音波により誘導されるBBB開口の、大きさの異なる分子の分子透過に対する効果。
分子の大きさ及び超音波曝露レベルの分子透過への影響を理解するため、ベバシズマブ(150kDa)と同様の分子量を有する蛍光標識デキストラン(70~250kDa)をサロゲートとして、中等度曝露レベル付近(すなわち、0.4MPa/0.63MI)に精密調整(fine-tune)した曝露レベル(0.55~0.84MI)に供した。0.55MI超の音圧レベルでは、BBB開口を誘導可能であり、70kDa(図4)、150kDa(図5)、及び250kDa(図6)の蛍光標識デキストランを含む全ての大きさの分子を透過させることができることが判明した。これにより、0.63MIの曝露レベルでは、少なくとも最大で250kDaまでの分子については、安定かつ一貫した分子透過を提供することが示された。更に、超音波曝露レベルを増強させること、又は分子量を減少させることのいずれによっても、脳における蛍光強度は増加したことから、分子が小さくなる程、又は曝露レベルが強くなるほど分子透過の増加がもたらされることが示された(図7)。超音波曝露を0.84MIに増加させると、明らかな、但し極小の赤血球溢出が誘導され始めたものの(図8c)、より低い曝露レベルではこれは観察されなかった(図8a~b)。0.84MIへの曝露により生じたこれらの溢出はT2* MRIでは検出不能であった;対照的に、1.26MIの曝露では、T2* MRIにおけるシグナル強度に明らかな低下が誘導されたことから、0.84MIにの曝露より赤血球の相対的に大規模な溢出が誘導されたことが示される。これらを鑑み、以降、神経膠腫を含む腫瘍の超音波処理には0.63MIの超音波曝露レベルを選択した。
【0042】
ウェスタンブロットを実施して、超音波曝露を行った脳におけるベバシズマブのタンパク質レベルを測定した(図3f)。対照マウス又は超音波のみのマウスのいずれにおいてもベバシズマブは検出されなかった。ベバシズマブ投与のみの場合では、150kDaのバンドのみが検出され、CNS中にベバシズマブが存在していることが示された。対照的に、超音波曝露(0.63MI)とベバシズマブ投与との併用により、検出可能なベバシズマブタンパク質のレベルは顕著に増加した。超音波とベバシズマブ投与との併用では、ハイブリダイゼーション強度はほとんど3倍に増加しており(図3g)、これはHPLC分析により測定される透過性の改善と同様であった(検出カウント数12,238対4,138)。
【0043】
実験3:神経膠腫の治療のための超音波とベバシズマブとの併用ストラテジ
本発明者らは、超音波により誘導されるBBB開口により増強されたベバシズマブ送達が神経膠腫治療を改善したかを評価することを目的とした。関連する赤血球血管外漏出を回避するべく、計画した5週間の反復治療レジメンには0.63MIの超音波曝露レベルを選択した。「実験デザイン」のセクション及び図1を参照のこと。
【0044】
T2-MRIにより測定される腫瘍体積の増加と共に(図10a~b)、典型的な腫瘍のフォローアップ・イメージを図9(7日目~35日目)に示す。最終的に、未処理対照(図9a)及び超音波曝露のみ(図9b)が、腫瘍成長の進行を示した(10~35日間のフォローアップ期間では、腫瘍進行比はそれぞれ172±33.2%及び185±22.6%であった)。ベバシズマブのみの処理(図9b)では、最初の4週間の処理では腫瘍抑制効果が示されたものの、第5週目には腫瘍進行は急激に前進した。対照群(p=0.6477)又は超音波のみで処理した群(p=0.3735)では、最終的な腫瘍進行(152±27.7%)に有意な差はなかった。T2-MRIにより評価した場合に(45±16.11%,p=0.0016対対照群;図10a~b)、5週間の処理レジメンを通し、ベバシズマブ投与と超音波によるBBB開口(図9d)との併用により腫瘍進行は一貫して減少し、最も顕著な腫瘍進行の制御が示された。この結果から、超音波曝露によりベバシズマブの透過増強を促すことで、腫瘍の進行を制御する安定で持続した抗血管新生効果が提供されることが示された。
【0045】
超音波とベバシズマブとの併用処理を5週間実施した後(7日~35日間)、100日目に動物の生存率を評価した(図10c及び表1)。超音波のみの動物では、生存期間の有効な延長は示されなかった。同様のことが、MRIで監視した腫瘍進行からも観察された(対照の31日間と比較して、生存期間中央値=34日間;IST中央値=9.68%;p=0.5407)。5週間のベバシズマブ投与により、対照と比較して、生存期間が46日間にまで有意に延長された(IST中央値=48.39%;p=0.0369)。超音波により誘導されるBBB開口とベバシズマブ投与とを併用するストラテジにより、結果として、対照の生存期間中央値の2.35倍、及びベバシズマブのみの場合の1.58倍という、生存期間中央値の有意な向上(73日)が得られた。平均生存及びIST平均を計算したときにも同等の観察結果が得られた。
【0046】
表1.動物の生存率分析についての要約。超音波/ベバシズマブの併用群では生存期間中央値の延長(IST中央値;%)は135%であり、ベバシズマブのみの群の48%よりも性能に優れていたことが判明した。同様にして、平均生存期間における延長(IST平均;%)は超音波/ベバシズマブ併用群では143%であり、ベバシズマブのみの群の76%よりも優れていたことが判明した。p値は全て対照群に対するものである。
【0047】
【表1】
【0048】
ベバシズマブのみの投与、又は超音波により誘導されるBBB開口との併用のいずれかの後に、H&E染色及びCD-31免疫組織化学(IHC)を使用し、腫瘍異種移植から第4週目の時点での形態変化及び血管分布を評価した(図11)。同様の腫瘍形態、すなわち、高度に増殖性の腫瘍周縁部を伴う壊死性の腫瘍コア(necrotic tumor core)の形態を、ベバシズマブのみ、又はベバシズマブ+超音波によるBBB開口の場合において検出した。ベバシズマブのみで処理した腫瘍では、CD-31 IHCにより腫瘍周縁部に豊富な血管構造が可視化されたものの、腫瘍コアの可視化はされなかった(白色矢印により図示)。対照的に、CD-31により検出される血管分布の有意な減少は、ベバシズマブ+超音波処理した異種移植片において観察され、腫瘍周縁部は、ベバシズマブのみで処理した腫瘍よりも大きさが有意に小さかった(破線により輪郭を描画;図11c及び図11f)。腫瘍血管の定量分析により、ベバシズマブのみで処理した動物の腫瘍異種移植片における血管面積の平均(±SD)%は0.93±0.19%であったことが実証された。血管面積は、超音波とベバシズマブとを併用して処理した異種移植片で顕著に減少しており、すなわち0.2±0.07%であった(図11c、図11f、図11g)。腫瘍周囲の領域において、H&E染色により組織壊死も観察された(図11b、図11e)。これらのデータは、超音波によるBBB開口を加えることで、ベバシズマブの透過が増強されたこと、並びに特に腫瘍周辺において血管新生が効率的に抑制され、結果的に腫瘍の制御が改善されたことを示す。
【0049】
実験4
実験4:超音波により誘導されるBBB開口はベバシズマブの透過を増加させる。
本発明者らは、前述の実験において、超音波処理により大きさの異なる分子の分子透過が増加したことを示した。超音波曝露により、多形神経膠芽腫(giloblastoma multiforme)の治療において必要とされるベバシズマブ投与量を低減可能であることも更に示された。本発明者らの仮説を検証するため、超音波処理あり又はなしで様々な投与量のベバシズマブにより正常マウス及び腫瘍マウスを処理した。CNS実質におけるベバシズマブ濃度をHPLCにより検出した。透過曲線(投与量vsCNS実質におけるベバシズマブ濃度)をそれに応じて作成した。超音波処理及びHPLCの操作は、前述の実験1~4に記載のものと同じとした。
【0050】
具体的には、かかる実験において、42匹の正常マウスと42匹の腫瘍マウスとを使用した。第1群では、マウスには、50mg/kg体重のベバシズマブのみを投与し(n=3)、又はかかる投与と超音波処理とを行った(n=3);第2群では、マウスには、25mg/kg体重のベバシズマブのみを投与し(n=3)、又はかかる投与と超音波処理とを行った(n=3);第3群では、マウスには、10mg/kg体重のベバシズマブのみを投与し(n=3)、又はかかる投与と超音波処理とを行った(n=3);第4群では、マウスは陰性対照として未処理とした(n=3)。マイクロPET/マイクロ-CTによりベバシズマブ濃度も求めることができる。以下は、マイクロPET/マイクロ-CTによるベバシズマブ分布の動的変化の評価についての主要な結果である。
【0051】
ベバシズマブ分布についての動的変化は、ベバシズマブを放射性同位体68Ga3+(半減期:68分;手順については補足の方法を参照のこと)で放射標識して、マイクロPET/マイクロ-CT融合画像により評価した。静注の15分後にPETイメージを撮像し、両群の代表的な冠状断PET像を取得した。この時点では、非特異的結合により、標的とする領域のコントラストは最大に達していた。
【0052】
超音波処理と粒子投与との併用により、BBB開口マウスにおける68Ga-ベバシズマブ透過は、高周波の音波を照射した領域において有意に増強されていることが示された。68Ga-ベバシズマブの透過は、0.16±0.026 SUVmaxから0.64±0.09 SUVmaxに増加していた(図12a)。これは4倍増加に相当し、HPLCによる定量結果(5.73倍)と同等である。全身性の取り込みにより、ベバシズマブは主に腎臓で吸収され、代謝されることが示された。SUVmaxレベルは対照群と比較したときにわずかに減少していたものの(7.53±4.05 SUVmax対8.19±7.29 SUVmax;p>0.05;図12bを参照されたい)、超音波によるBBB開口を行った動物では、ベバシズマブの代謝経路に変化はない。
【0053】
実験5
以下実験5の材料及び方法:
1.実験デザイン
正常マウス(n=19)及び腫瘍マウス(n=26)を含む合計45匹の腫瘍マウス(tumor-bearing mice)を使用した。実験は2群に分割した。実験群1では、主目的は、超音波により誘導されるBBB開口が、脳組織におけるベバシズマブの透過及び蓄積を促進するかを評価することとした(n=19)。正常な動物のほとんどを、超音波により誘導されるBBB開口(n=10)なし、及び超音波により誘導されるBBB開口あり(n=9)の2群に割り付け、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キットを使用して脳サンプルのベバシズマブ濃度を定量した。ベバシズマブ投与の2時間後に全ての動物を屠殺し、脳サンプルを保存した。
【0054】
実験群2の目的は、腫瘍マウスにおいて、ベバシズマブと超音波とを併用することによる治療効果を評価することとした。ベバシズマブの摂取は、U87神経膠腫細胞の移植から10日後に実施した。ベバシズマブを5回静脈内投与(U87神経膠腫細胞の移植後10日、17日、24日、31日、及び38日)し、腫瘍の進行及び生存の両方を長期的に追った。動物を4つの下位群に分割した:(1)偽処置(ベバシズマブ投与なし)(n=10);(2)週当たり10mg/kgのベバシズマブと超音波により誘導されるBBB開口との併用を5週間(n=8);(3)週当たり30mg/kgのベバシズマブと超音波により誘導されるBBB開口との併用を5週間(n=12)、及び(4)週当たり50mg/kgのベバシズマブを5週間(n=6)。
【0055】
2.超音波パラメーター
超音波は、Tsai et al,Ultrasonics Symposium(IUS),2015 IEEE Internationalによる、ニューロナビゲーションガイドされる超音波とする。超音波トランスデューサー(Imasonics,Besancon,France;直径=60mm,曲率半径=80mm,周波数=400kHz)を適用して、収束(concentrated)超音波処理エネルギーを生成した。任意波形発生器(33120A,Agilent,Palo Alto,CA)を使用して駆動信号を生成し、かかる信号をバーストモードの高周波電力増幅器(No.500-009,Advanced Surgical Systems,Tucson,AZ)に送信した。マウスには2%イソフルランガスで麻酔を行い、定位固定フレーム上に固定した。頭蓋の頂部をクリッパーで刈り取り、PE-10カテーテルを尾静脈に挿入した。アクリル製水槽下(底部に、超音波エネルギーの進入が可能な薄膜で密閉された4×4cm2のウインドウを備える)に、頭部をしっかりと薄膜ウインドウに固定してマウスを直接配置した。SonoVue SF6を充填した超音波応答性粒子(2~5μm,10μL/マウス,2×108個マイクロバブル/mL;Bracco,Milan,Italy)を処理の前に静脈内投与した。腫瘍移植をした脳部位を、次にバーストトーンモードの超音波に曝露してBBBを局所的に開口させた(0.63MI;バースト長=10ms;パルス繰り返し周波数=1Hz;照射時間=60秒)。
【0056】
3.マウス神経膠腫モデル
U87マウス神経膠腫細胞を、37℃、5% CO2雰囲気下で、10%ウシ胎仔血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加した最小必須培地(MEM)で培養した。トリプシン処理により細胞を回収して、リン酸緩衝食塩液(PBS)で1回洗浄し、マウス脳の線条体に移植するためMEMに再懸濁した(1.6x105個/μL)。無菌の雄性NU/NUマウス(5~7週齢)をBioLASCO(Taiwan)から購入した。マウスを制御環境下に収容及び維持し、全ての手順は長庚大学動物委員会(Animal Committee of Chang Gung University)の動物の飼養に関するガイドラインに従って実施した。U87腫瘍細胞を移植するに当たり、マウスには2%イソフルランガスで麻酔を行い、定位固定フレーム上に固定した。頭蓋冠を覆う皮膚の矢状切開を行い、露出させた頭蓋において、ブレグマの2mm前側かつ2mm外側に対し、23Gの針を使用して孔を形成した。脳表面から2mm深部に3μLのU87神経膠腫細胞懸濁液を注入した。3分間注入を実施し、更に2分間かけて針を引き抜いた。腫瘍細胞の移植後10日間にわたり、マウスの脳の成長をMRIで監視した。
【0057】
4.定量的ベバシズマブ分析
ベバシズマブの投与の2時間後に脳組織を摘出した。脳組織を均質化し、上清と組織成分との明瞭な分離が観察されるまで、5000rpmで10分間遠心分離した。酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キット(My Biosource,Inc.San Diego,CA,USA)によりベバシズマブの濃度を測定した。吸光分光光度計により450nmで光学密度を測定し、620nmでバックグラウンドを差し引いた。
【0058】
実験5:超音波はベバシズマブの透過を増加させ、多形性膠芽腫の治療におけるベバシズマブの有効性を増強する。
図13に示す結果によると、基本的に、ベバシズマブの投与量が多くなるほど、脳におけるベバシズマブの透過が多くなることが見て取れる。更に、10mg/kg体重のベバシズマブと超音波とで併用処理した場合、超音波曝露せず50mg/kg体重のベバシズマブで処理した場合と同等の脳サンプル中ベバシズマブ濃度が示された。30mg/kg体重のベバシズマブと超音波との併用処理により、超音波曝露せず50mgのベバシズマブで処理した場合よりも更に多量のベバシズマブ透過が示された。この結果から、超音波により補助することで、脳において同程度の濃度を達成するのに必要とされるベバシズマブ量が少なくなることが示された。更に処理群では、対照群と比較して腫瘍の進行が抑えられた。加えて、超音波曝露を行った群では、ベバシズマブ投与量が少ない場合でも結果が示された(図14)。
【0059】
更に、特に生存試験では(図15)、30mg/kg体重のベバシズマブと超音波との併用により、他の群れと比べて、最も良好な生存率が提供された。10mg/kg体重のベバシズマブと超音波との併用により処理した群の生存率は、超音波処理せずに50mg/kg体重のベバシズマブで処理した群とほとんど同程度に良好であった。この結果は、超音波がより多くのベバシズマブの透過を補助し、ひいては生存率を良好にすることを示す前述の透過実験と一致した。
【0060】
結論
結論として、超音波の使用により誘導される血液脳関門の開口は、抗血管新生mAb、ベバシズマブのCNS送達を増強する。CNSベバシズマブ濃度は最大で57倍に増強され(図2a)、結果として、腫瘍周辺に顕著な抗血管新生効果が生じており、更に重要なことに、現在のGBM治療におけるベバシズマブに関する血管の正常化にまつわる課題が解決される。更に、超音波を併用してベバシズマブ送達を増強する本試験では、ベバシズマブ投与のみの場合の48%の改善と比較して、生存期間中央値の135%の改善をもたらす、より顕著な治療効果の改善が観察された(表1)。本研究は、モノクローナル抗体(又はその他の巨大分子)のCNS送達を増強するべく超音波を包含する治療ストラテジの開発に関する原理の証明を提供し、抗GBMストラテジを前進させるものとして超音波/ベバシズマブの併用を示す。
<付記事項>
[付記事項1]
脳腫瘍の治療に必要とされるベバシズマブ(Bevacizumab)の有効量を低減する方法であって、以下の工程:
ベバシズマブを対象に投与する工程と[ここで、前記ベバシズマブの量は、0.011~11mg/kg体重である]、
超音波応答性媒体を前記対象に投与する工程と、
前記対象に0.1~2MIの超音波曝露を行う工程と、を含む、方法。
[付記事項2]
前記超音波曝露が0.47~1.26MIである、付記事項1に記載の方法。
[付記事項3]
前記超音波曝露が0.55~0.84MIである、付記事項1に記載の方法。
[付記事項4]
前記ベバシズマブの量が0.11~11mg/kg体重である、付記事項1に記載の方法。
[付記事項5]
前記ベバシズマブの量が1.1~11mg/kg体重である、付記事項4に記載の方法。
[付記事項6]
前記ベバシズマブの前記投与が静注によるものである、付記事項1に記載の方法。
[付記事項7]
前記超音波応答性媒体の投与が静注によるものである、付記事項1に記載の方法。
[付記事項8]
前記超音波応答性媒体が複数の粒子である、付記事項1に記載の方法。
[付記事項9]
前記粒子の平均直径が0.1~10μmである、付記事項8に記載の方法。
[付記事項10]
前記投与において、前記複数の粒子の量が1.9×10 6 ~1.17×10 8 粒子/kg体重である、付記事項8に記載の方法。
[付記事項11]
前記粒子がマイクロバブルである、付記事項8に記載の方法。
[付記事項12]
前記超音波曝露が前記対象の中枢神経系に対して行われる、付記事項1に記載の方法。
[付記事項13]
前記脳腫瘍が多形性膠芽腫(Glioblastoma multiforme)である、付記事項1に記載の方法。
[付記事項14]
脳腫瘍を治療するためのキットであって、
ベバシズマブ製剤と、
超音波応答性媒体と、
超音波トランスデューサー(transducer)を含む超音波システムと、を含む、キット。
[付記事項15]
前記ベバシズマブ製剤が、0.11~25mg/mLのベバシズマブと注入用担体とを含み、前記mg/mLが、前記ベバシズマブ製剤の合計体積に基づくものである、付記事項14に記載のキット。
[付記事項16]
前記注入用担体が、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである、付記事項15に記載のキット。
[付記事項17]
前記超音波応答性媒体が、1×10 4 ~1×10 12 粒子/mLの粒子を含み、前記粒子/mLは、前記超音波応答性媒体の合計体積に基づくものである、付記事項14に記載のキット。
[付記事項18]
前記粒子の平均直径が0.1~10μmである、付記事項17に記載のキット。
[付記事項19]
前記超音波応答性媒体が注入用担体と混合される、付記事項14に記載のキット。
[付記事項20]
前記注入用担体が、水、塩類溶液、ポリマー、乳化剤、界面活性剤、又はこれらの組み合わせである、付記事項19に記載のキット。
[付記事項21]
前記脳腫瘍が多形性膠芽腫である、付記事項14に記載のキット。
[付記事項22]
前記超音波システムが、医用イメージングをベースとしたガイダンス超音波システム(guidance ultrasound system)である、付記事項14に記載のキット。
[付記事項23]
前記医用イメージングが、ニューロナビゲーション、超音波検査、光学イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)、核イメージング、又は磁気共鳴イメージング(MRI)を含む、付記事項22に記載のキット。


図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15