(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】歯車の切削工具、および、かさ歯車およびハイポイド歯車の切削方法
(51)【国際特許分類】
B23F 21/22 20060101AFI20220405BHJP
B23F 9/12 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B23F21/22
B23F9/12
(21)【出願番号】P 2018538887
(86)(22)【出願日】2017-01-31
(86)【国際出願番号】 US2017015791
(87)【国際公開番号】W WO2017136329
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-11-12
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ジェイ.シュタットフェルト
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ジェイ.ノルセッリ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ビー.スペンサー
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-179455(JP,A)
【文献】実開昭58-117314(JP,U)
【文献】東ドイツ国経済特許第047583(DD,A1)
【文献】特開2013-000879(JP,A)
【文献】特開2012-030354(JP,A)
【文献】特表2015-533667(JP,A)
【文献】米国特許第04268194(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 9/08- 9/14
B23F 5/27
B23F 21/22-21/23
B23C 3/32
B23C 5/06
B23C 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かさ歯車およびハイポイド歯車を作成するための歯車の切削工具であって、
カッター軸線(83)を中心に回転可能であって複数のブレード溝群を具え、前記ブレード溝群のそれぞれが少なくとも2つのブレード位置決め溝を有するカッターヘッド(82)と、
前記ブレード位置決め溝の一方に配備される第1の切削ブレード(41)と、前記ブレード位置決め溝の他方に配備される第2の切削ブレード(40)とを含む少なくとも1つのブレード溝群であって、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)が第1の切れ刃(33)および第2の切れ刃(31)を具えた切削端をそれぞれ有し、前記第1および第2の切削ブレードの前記切削端が同じで
あり、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)は、それぞれ、前記第1の切削ブレード(41)および前記第2の切削ブレード(40)の両方に同じすくい角を提供する中立の向きを有する前面を有する少なくとも1つのブレード溝群と
を具え、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)は、歯車加工対象物に歯溝を切削するように操作可能であり、前記歯溝は、前記歯車加工対象物の1つの歯の凸歯面と、直近の前記凸歯面に向かい合う凹歯面との間に空間を画成し、
前記第1および第2の切削ブレード(41、40)は、第1の向きに前記ブレード溝群に相互に配置
可能であり、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の一方(41)は、前記第1の切れ刃(33)または前記第2の切れ刃(31)の一方(33)を用いて前記歯溝の前記凸歯面または前記凹歯面の一方を切削するように操作可能であり、前記第1および第2の切削ブレードの他方は、前記第1の切れ刃(33)または前記第2の切れ刃(31)の他方(31)を用いて前記歯溝の前記凸歯面または前記凹歯面の他方を切削するように操作可能であり、
かつ、前記第1の向きと歯面が互いに向かい合う第2の向きにおいて、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の前記一方(41)は、前記第1の向きの歯面が互いに向かい合う切れ刃を用いて前記第1の向きの向かい合う歯面を切削するように操作可能であり、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の前記他方(40)は、前記第1の向きの歯面が互いに向かい合う切れ刃(33)を用いて前記第1の向きの向かい合う歯面を切削するように操作可能であり、
前記第2の向きによって切削される歯溝が前記第1の向きによって切削される歯溝と同じであることを特徴とする歯車の切削工具。
【請求項2】
前記第1および第2の切削ブレード(41、40)は、相互に独立して前記カッターヘッド(82)のカッター軸線(83)に対して径方向に調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の歯車の切削工具。
【請求項3】
かさ歯車およびハイポイド歯車の切削方法であって、
カッター軸線(83)を中心に回転可能であるカッターヘッド(82)を具えると共に複数のブレード溝群を含み、このブレード溝群のそれぞれが少なくとも2つのブレード位置決め溝を有し、前記ブレード溝群の少なくとも1つが前記ブレード位置決め溝の一方に配備される第1の切削ブレード(41)と、前記ブレード位置決め溝の他方に配備される第2の切削ブレード(40)とを含み、これら第1および第2の切削ブレード(41、40)が第1の切れ刃(33)および第2の切れ刃(31)を具えた切削端をそれぞれ有し、当該第1および第2の切削ブレード(41、40)の切削端が同じで
あり、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)は、それぞれ、前記第1の切削ブレード(41)および前記第2の切削ブレード(40)の両方に同じすくい角を提供する中立の向きを有する前面を有する切削工具を用意することと、
前記切削工具を回転し、この回転している切削工具と歯車加工対象物とを相互にかみ合い状態へともたらし、前記第1および第2の切削ブレードが歯車加工対象物に複数の歯溝を切削するように操作され、これら歯溝が前記歯車加工対象物の1つの歯の凸歯面と、直近の前記凸歯面に向かい合う凹歯面との間に空間をそれぞれ画成することと
を具え、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)は、前記ブレード溝群へと相互に第1の向きに配置され、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の一方(41)は、前記第1の切れ刃(33)または前記第2の切れ刃(31)の一方(33)を用いて前記歯溝のそれぞれの前記凸歯面または前記凹歯面の一方を切削するように操作され、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の他方(40)は、前記第1の切れ刃(33)または前記第2の切れ刃(31)の他方(31)を用いて前記歯溝のそれぞれの前記凸歯面または前記凹歯面の他方を切削するように操作されることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記カッターヘッド(82)の前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の前記一方(41)の位置と、前記カッターヘッド(82)の前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の前記他方(40)の位置とを前記カッターヘッドにて相互に交換し、それによって前記第1および第2の切削ブレード(41、40)が前記第1の向きと歯面が互いに向かい合う第2の向きに前記カッターヘッド(82)に相互に配置されることと、
前記切削工具を回転し、この回転している切削工具と別な歯車加工対象物とを相互にかみ合い状態へともたらすことと
をさらに具え、前記第2の向きにおいて、前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の前記一方(41)は、前記第1の向きの歯面が互いに向かい合う切れ刃を用いて前記第1の向きの向かい合う歯面を切削するように操作され、
前記第1および第2の切削ブレード(41、40)の前記他方(40)は、前記第1の向きの歯面が互いに向かい合う切れ刃を用いて前記第1の向きの向かい合う歯面を切削するように操作され、
前記第2の向きによって切削される前記別な歯車加工対象物の歯溝は、前記第1の向きによって切削される前記歯車加工対象物の前記歯溝と同じであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車を作成するための切削工具、特に別々に配備されるが同一の切削ブレードを有し、歯車の歯を作成するための切削工具に向けられている。
【背景技術】
【0002】
かさ歯車およびハイポイド歯車は、単一割り出し処理(正面フライス加工)または連続割り出し処理(正面ホブ加工)にて切削されることができる。これら両方の処理は、
図1の溝群11で表す複数の溝群(同一ブレード群)を持ったカッターヘッド10を使用する。
図1は、長方形の外側ブレード溝15と長方形の内側ブレード溝16とを持つ正面フライス加工カッターへッド10の立体投影図を示している。溝15および16は、1つのブレード群1を表している。カッターヘッド10は、この切削処理中に方向14へと回転する。
【0003】
それぞれのブレード群は、通常、個々のカッターへッドの溝に組み込まれる1つから3つまでのブレードにて構成される。1つのブレード群あたり3つのブレードの場合、一般に第1のブレードはより荒い、または歯底のブレードである。すべてのブレード群の荒い、または底面のブレードは、凸歯面および凹歯面の他に、かさ歯車のすみ肉および歯底もまた荒削りする。それぞれのブレード群の第2のブレードは、一般的に外側ブレードである。すべてのブレード群の外側ブレードは、凹歯面と凹歯面側のすみ肉とを仕上げ削りする。それぞれのブレード群の第3のブレードは、一般的に内側ブレードである。すべてのブレード群の内側ブレードは、凸歯面と凹歯面側のすみ肉とを仕上げ削りする。
【0004】
より一般的な構成は、ブレード群毎に2つの溝11を持つカッターへッド10である。カッターヘッドのそれぞれのブレード群の第1のブレードは、外側ブレード(溝底半径12)である。すべてのブレード群の外側ブレードは、かさ歯車のすべての溝の歯底の一部を含むすみ肉の凹歯面側を粗削りすると共に仕上げ削りする役割を有する。前記カッターヘッドのそれぞれのブレード群の第2のブレードは、内側ブレード(溝底半径13)である。すべてのブレード群の内側ブレードは、かさ歯車のすべての溝の歯底の一部を含むすみ肉の凸歯面側を粗削りして仕上げ削りする役割を有する。
【0005】
図2(a)は、外側ブレード51および内側ブレード55を縦につなげた断面図にて上述の切り屑除去構成を示している。相対的な
切削方向59が両方のブレード51および55に作用する。外側ブレード51は、外側の歯面(凹歯面)を切削して切り屑52を形成する鋭い切れ刃53を有する。ブレード51の隙間端54は、なまくら形状を有し、内側の歯面(凸歯面)の如何なる切削にも関与しない。内側ブレード55は、内側の歯面(凸歯面)を切削して切り屑56を形成する鋭い切れ刃57を有する。ブレード55の隙間端58は、なまくら形状を有し、外側の歯面(凹歯面)の如何なる切削にも関与しない。
【0006】
この分野で知られている他の可能性は、例えば特許文献1に示されたようなブレード群毎に1つのブレードを持つカッターヘッドである。このような構成において、
図3(a)に示すような単一ブレード型(すなわち総形ブレード)は、凹歯面と、凹側のすみ肉と、歯底と、凸側のすみ肉とに加え、かさ歯車の凸歯面をもまた、粗削りおよび仕上げ削りしよう。
【0007】
図3(a)は、総形ブレード20に対する正面図を示している。その前面60は、両方の切れ刃21および23に対して同じ横すくい角を与える中立の向きを持つ。また、刃先半径22および24も示されている。ブレード刃先幅25は、切削される歯元の幅と等しく、ブレード20が両方の歯面(凹および凸)から切り屑を同時に除去することを可能にする。
図3(a)における総形切削ブレード20は、刃先半径22を持つ外側切れ刃21と、内側刃先半径24を持つ内側切れ刃23と、2つの切れ刃の間に空間をあけて正確な溝幅を切削するための刃先幅25とを具えている。
【0008】
図2(b)は、縦につなげた総形ブレード64および第2の総形ブレード69の断面図を示している。相対的な
切削方向59が両方のブレード64および69に作用する。ブレード64は、相対的な切削方向59に対して直交する正面60を有する。ブレード64の2つの切れ刃61および62は、凸および凹歯面に加え、歯元領域(図示せず)からもまた、つながった切り屑63を切り取る。ブレード64の切れ刃61および62は、正面60が
切削方向に対して直交しているので、中立に(穏やかに)働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2(b)における第2のブレード69は、相対的な切削
方向59に関して鋭利ではなくて中立に見える切れ刃66および67を形成する正面65を持ち、ブレード64と同じ外形を有する。理想的な場合、切り屑68は切り屑63と同じとなろう。切れ刃61がカッターヘッドにおいて切れ刃66と同じ径方向位置を有すると共に切れ刃62がカッターヘッドにおいて切れ刃67と同じ径方向位置を有するように、カッターヘッドにおける総形ブレード64および69の径方向の調整は、ほとんど不可能である。同一ブレードの一部である2つの切れ刃(例えば61および62)に対し、異なる径方向の調整を実現させることは不可能である。ブレード形状の研削における誤差に加えてカッターへッドの溝の誤差もまた、個々の切れ刃の独立した調整によって補償することができない。
【0011】
切り屑63および68は大きくてかさ高であり、切削領域から除去することが困難である。中立角度の正面60および65を持つ2つの向かい合わせの切れ刃にかぶさる切り屑を形成するため、2つの切れ刃61および62の切り屑形成は、65および57も同様に、相互に妨害すると共に最適な切り屑の剪断および形成を妨げる。結果として、
図2(b)に示す工具形状を用いた切削処理によって生み出される切削力ならびに切り屑および部品の温度は、
図2(a)に示す工具形状を用いた切削処理によって生み出される切削力ならびに切り屑および部品の温度と比較すると、より高い。
【0012】
ブレード64および69は、異なるブレード群に属する。
図2bによるブレードを持つカッターへッドは、ブレード群毎に1つのブレードを有する。
【0013】
単一ブレード型のカッターへッドは、完成したかさ歯車が歯先と歯元との間の歯底に沿った平行な溝幅を示すので、完成処理にて切削される正面フライス加工のかさ歯車に単に用いられるだけである。溝底を含むそれぞれの歯溝の両歯面を作成するために一種類のブレード64を単に使用するだけの単一ブレード切削処理(
図2(b)に概略的に示す)は、多くの欠点を有する。両方の切れ刃をつなぐブレード正面(一般には平坦面である)60は、およそゼロ度の横すくい角を両方の切れ刃61および62のために単に与えることができるだけである。ゼロ度の横すくい角(切削
方向59に対して直交する正面60)に関し、切り屑除去処理は、切り屑を除去するために(正の横すくい角を必要とする鋭い切れ刃で切り屑を剪断するというよりはむしろ)より大きな可塑化作業を行わなければならない。
【0014】
全ブレード輪郭(
図3(a)の23-24-25-22-21の部分)の周囲の切削動作のため、2つの歯面からの切り屑は、しばしば結合されたような単一の切り屑63および68である。両方ともゼロの横すくい角に加えてつながった切り屑もまた、切削中により高い切削力と、より高い部品温度とを引き起し、その後、より低い品質の部品をもたらす。他の欠点は、結合された外側-内側の切り屑63および68が大きい空間を必要とし、従って切削領域から簡単に離れて流出しないということである。大きくてよりかさばる切り屑は、ブレード群毎に2つのブレード51および55を有する外側-内側ブレード切削システムにて作り出されるより小さく丸まった切り屑52および56(
図2(a))よりも、連続するブレード間に切り屑を詰まらせてしまう可能性がより高い。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、別々に配備されるが2つの同一な切削ブレード(例えば1つの外側ブレードおよび1つの内側ブレード)をそれぞれの切削ブレード群が含む歯車切削工具を具えている。本発明のブレード構成は、歯車の凸歯面および凹歯面の他に歯溝のすみ肉および歯底部もまた同時に切削するための一種類のブレードをただ単に必要とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカッターシステムは、外側切削ブレードおよび内側切削ブレードの径方向の調整を相互に独立に可能とする。さらに、内側および外側の切削ブレードを相互に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】長方形のブレード溝を持つ正面フライスカッターヘッドの立体投影図を示す。
【
図2(a)】縦につなげた外側切削ブレードおよび内側切削ブレードの断面図を示す。
【
図2(b)】縦につなげた第1の総形切削ブレードおよび第2の総形切削ブレードの断面図を示す。
【
図2(c)】縦につなげた本発明の単一ブレードおよび第2単一ブレードの断面図を示す。
【
図3(b)】本発明による単一ブレードの正面図を示す。
【
図3(c)】2つの平行な単一ブレードの正面図を示す。
【
図4】その中心線83と、縦につなげた単一ブレード41に関する外側溝取り付け面84および単一ブレード40に関する内側溝取り付け面85とを持つカッターへッド82の断面図を示す。
【
図5】スペーサーブロック86および87を追加した
図4のカッターヘッドを示す。
【
図6】ブレードの下の固定ブロック114と、ブレードの上のスペーサープリズム111とを有する五角形断面の切削ブレード110の立体投影図を示す。
【
図7】その中心線83と、縦につなげた単一ブレード41に関する外側溝取り付け面84および単一ブレード40に関する内側溝取り付け面85とを持つカッターへッド101の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この明細書にて用いた「発明」および「この発明」および「本発明」という用語は、この明細書および下の特許請求の範囲の任意の請求項のあらゆる内容を概括的に参照することを意図している。これらの用語を含む記述は、そこに記述した内容に限定するか、その意図または下の特許請求の範囲の任意の請求項の範囲に限定するように理解されるべきではない。さらにまた、この明細書は、この出願の任意の特定部分や段落、表現または図面において、すべての請求項によって保護される内容を記述または限定しようと務めていない。この内容は、明細書全体と、すべての図面と、下の任意の請求項とを参照することによって理解されるべきである。この発明は、他の構成が可能であり、種々の方法にて実践または実行できる。また、ここで用いた言い回しおよび術語が説明の目的のためであって、限定するものとして見なされるべきではないものと解釈される。
【0019】
さて、本発明の詳細がこの発明を単なる例示によって説明する添付図面を参照しつつ論じられよう。図面において、類似の特長または構成要素は、同様な参照符号によって言及されよう。
【0020】
ここでの「含む」や「有する」および「具えている」ならびにこれらの変化形の使用は、その後に列挙される物品およびそれらの均等物に加えて付加的物品もまた包含することを意図している。
【0021】
図面の記述において、上部,下部,上方,下方,後方,底,上,前,後などの如き方向に対して参照することができるけれども、これらの参照は、便宜性のために図面に対して(普通に見られるように)なされる。これら方向は、文字通りに取り上げ、すなわち本発明を何れかの形態に限定するように意図していない。加えて、「第1」,「第2」,「第3」などの如き用語は、説明の目的のためにここで用いられ、重要性または有意性を示すか、または暗示するために意図していない。
【0022】
本発明の切削ブレード30は
図3(b)に示されており、23の圧力角および形状を再現する内側切れ刃31が設けられ、24と同じ刃先半径32を有する。切削ブレードの前面36は、両方の切れ刃31および33に対して同じすくい角を与える中立の向きを有する。ブレード刃先幅35は、総形ブレード20の刃先幅25よりも、或る量42だけ小さい(
図3(c))。刃先半径34は22と同一であることが好ましく、外側切れ刃33は21と同じ圧力角および形状を有する。切れ刃33は、23に対してより大きな隔たりを有する切れ刃21と比較すると、切れ刃31に対して(前記の量42だけ)より近い。
【0023】
ブレード型30の2つの切削ブレードは、小さな誤差の溝底半径を有するカッターヘッドに配される。これは、切削ブレード30と共に同一である切削ブレード40および41と共に
図3(c)に描かれている。ブレード40および41は、相互に後続するように配されているが、前記の量42だけ相互に対して横に位置を変えている。この構成は、切れ刃31を位置43に、そして切れ刃33を位置44に配置する。
【0024】
ブレード40および41の構成は、
位置44において、切れ刃23に対してその径方向の位置と、圧力角と、形状とが同一である内側切れ
刃をもたらす。ブレード40および41の構成はまた、25と等しい両方のブレードを介して刃先幅45をもたらす。その結果として、
位置44の切れ刃は、切れ刃21と同じ圧力角と、形状と、径方向位置とを有する。ブレード40および41の組み合わせは、2つの異なるように配備されるが同一のブレード(1つの外側ブレードおよび1つの内側ブレード)からなる。それ故、本発明の切削ブレードを単一ブレードとして呼称することができる。作成される歯車溝の形状は、総形ブレード20によって作り出される形状と同一である。総形ブレード20のように、本発明のブレード構成は、完成したカッターヘッドで凸および凹歯面に加えてすみ肉および歯底もまた同時に切削するため、単一種類のブレードを単に必要とするだけである。
図2(c)は、
位置44に切り屑70を単一の側方切り屑として除去する切れ
刃を持った外側ブレードとして機能する第1の単一ブレード41を示す。ブレード41の隙間側72は、凸歯面に対する隙間42を示す。次の単一ブレード40は、
位置43に切り屑71を単一の側方切り屑として除去する切れ
刃を持った内側ブレードとして機能する。ブレード40の隙間側73は、凹歯面に対する隙間42を示す。
【0025】
本発明の単一ブレードシステムの利点は、以下を含む。
・ 同一の仕様を持つ2つの異なるブレードに対して内側および外側の切削を分離するこ
とは、管理され、取り扱われ、そして再研磨されるべき異なるブレード形状の種類を低減する。
・ 切り屑の形成がより最適であり、切削処理がより円滑である。
・ 本発明のブレード構成の切削力は、総形ブレード20の切削力よりも低く、これは処
理温度もまた、より低くする。
・ 本発明の単一ブレードのカッターシステムは、外側切削ブレードおよび内側切削ブレ
ードの径方向の調整を独立に可能にする。総形ブレード20のためのブレード調整は、1つのブレードに対する2つの切れ刃間の連続性のために不可能である。一方の切れ刃を他方の切れ刃に対して変位させることはできない。両方の切れ刃が相互に移動する。
・ 本発明のブレードおよびカッターシステムで作成される部品の品質は、総形ブレード
システム(ブレード20)の部品の品質よりも高い。
・ 工具寿命が終わった後、(それぞれの側に刃先半径を含む)切れ刃44および43は
摩耗している。ここで、隙間端73が44の代わりに切れ刃になり、隙間端72が43の代わりに切れ刃になるように、ブレード40および41を交換することが可能である。これは、再研磨および再コーティングすることなく、完全な第2の工具寿命を提供する。コストを節減する第2の工具寿命は重要である。
【0026】
図4は、その中心線83(回転軸線)と、縦につなげて表した単一ブレード41のための外側溝取り付け面84および単一ブレード40のための内側溝取り付け面85とを持ったカッターへッド82の断面図を示す。凹歯面RWOBを切削する外側ブレードのブレード先端半径は、溝底半径80を持つ取り付け面84にブレード41を配することによって達成される。凸歯面RWIBを切削する内側ブレードのブレード先端半径は、溝底半径81を持つ取り付け面85にブレード40を配することによって達成される。半径81は、半径80に対して前記の量42だけ減じられる。
図4におけるカッターへッドの設計は、同一のブレード40および41を使用することを可能にし、ブレード41が外側ブレードとして機能すると同時にブレード40が内側ブレードとして機能するという結果を伴う。
【0027】
内側および外側のブレードを持つ従来のカッターへッドでの異なる溝底半径は、一般的に段付きにされる。段を付けることは、内側ブレードが外側ブレードよりも小さな溝底半径を有することを意味する。外側および内側のブレードの溝底半径間の差の値は、本発明の単一ブレードを位置決めするために必要とされる量42よりも5から20倍大きい。溝底半径の差は、従来のカッターへッドが広範囲に亙って異なるかさ歯車の設計を可能にし、また様々なモジュールを持った歯車の切削をも可能にする。
【0028】
図5は、その中心線83(回転軸線)を持つカッターへッド82を縦につなげた断面図を示す。また広範囲に亙って異なるかさ歯車の設計およびモジュールに対しても本発明の単一ブレードカッターシステムを可能にするため、ブレード取り付け面84および85を改造することができ、
図5に示すように平面の平行なスペーサーブロック86および87をこれらに連結することができる。スペーサーブロック86および87の有無にかかわらず、カッターへッド82を使用することができる。異なる厚さを持つ種々のスペーサーブロック86および87を利用可能にすることによって大きな長さの半径RWOB+ΔおよびRWIB+Δを達成するため、異なる寸法90のスペーサーブロックを用意することができる。好ましい一実施形態において、外側ブレード41と内側ブレード40との間の半径差は、カッターヘッドの取り付け面84および85にて実現される。この好ましい実施形態でのスペーサーブロックの各種組み合わせは、同一厚さ90のブロック86および87を(内側および外側のブレード溝に対して)使用する。
【0029】
また、外側および内側のブレード溝に対して異なる厚さのスペーサーブロックを使用することも可能である。これは、広いモジュール範囲に対処しなければならない場合に有利である。異なる部材86および87の厚さはまた、同じ形状のブレードを使用する(同一圧力角だが異なる歯車溝幅の場合)ため、種々の異なる歯車設計の統合を可能にする。
【0030】
本発明のカッターシステムの他の変形例は、被加工物の溝底半径80および81を同一にし、必要とされる半径差をスペーサーブロック86および87に生じさせることである。量42の一部をカッター設計に適用し、量42の残りの部分をスペーサーブロックに充てるという組み合わせもまた、可能である。
【0031】
長方形の溝15および16を持ち、かつ
図1のカッターへッド10のようなカッターへッドか、あるいは
図6に示すような五角形状の溝断面(例えば米国特許第6120217号)と110によるスティックブレードとを持つカッターヘッドにて本発明の単一ブレードのカッターへッドシステムを実現することができる。この場合、スペーサーブロック111はプリズムの形態を有しよう。固定ブロック114はブレード110の下に配され、スペーサーブロック111はブレード110の上に配される。スペーサーブロック111が五角形状の断面を持つブレード110に対する相似機能で対応すると同時に、スペーサーブロック86および87は、長方形のブレード41および40に対して対応する。スペーサーブロック111は、使用可能なブレード幅113をより大きな半径へとほぼ112の距離、変位させよう。長方形のスペーサーブロック86および87の厚さ90を正確に再現するため、厚さ112のスペーサーブロック111を製作することができる。
【0032】
本発明のカッターへッドシステムはまた、半径方向に調節可能なカッター(例えば米国特許出願第2015/0290725号または米国特許出願第2015/0306688号)を実現することも可能である。
図7は、その中心線83(回転軸線)と、垂直なつながる単一ブレード41に関する外側溝取り付け面84および単一ブレード40に関する内側溝取り付け面85とを持つカッターへッド101の断面図を示す。
図7は、上部に改造がなく、かつ下部に改造部95および96を有する取り付け面84および85を示している。固定ねじ91および92に加え、個々の調整ねじ93および94が組み込まれている。調整ねじ93の時計回りの回転は、ブレード41の先端を方向97に動かして先端半径RW
OBtrueを増大させよう。調整ねじ93の反時計回りの回転は、ブレードの先端を方向98に動かして先端半径RW
OBtrueを減少させよう。調整ねじ94の時計回りの回転は、ブレード40の先端を方向99に動かして先端半径RW
IBtrueを増大させよう。調整ねじ94の反時計回りの回転は、ブレードの先端を方向100に動かして先端半径RW
IBtrueを減少させよう。これは、ブレード41およびブレード40を最適な切削処理のための正確な径方向位置へと相互に独立に調整することを可能にし、全体的に正確なブレード刃先幅45をもまた、保証する。また、カッターへッド101にて2つの同一な単一ブレード41および40が好ましくは利用される。取り付け面84および85は、42の半径差を有し、単一ブレード41の外側ブレードと、単一ブレード40の内側ブレードとをもたらす。
【0033】
カッターへッドの取り付け面84および85を改造する代わりに、改造しない取り付け面を用いると共にスペーサーブロック86および87に改造部95および96(
図5)を機械加工することもまた、可能である。また、カッターヘッド取り付け面の改造とスペーサーブロックの改造とを組み合わせることが実質的に可能であって、特別な場合に有用である。
【0034】
本発明の工具構成の他の実施形態は、内側ブレード溝85の半径81と等しい溝底半径80を有する外側ブレード溝84を持ったカッターへッド101を用いることである。この場合、差の量42はゼロに等しい。単一ブレードを利用し、溝84の純粋な外側切削と溝85の純粋な内側切削との利点を依然として有するため、外側ブレード41をより大きなベース量にて方向97に調整することができ、内側ブレード40を小さなベース量にて方向99に調整する(
図7)ことができる。例えば、単一ブレードは、正確な歯車溝幅を切削するために必要とされる刃先幅25よりも0.050mm小さいブレード刃先幅35へと研磨されることができ、
図7に示すような内側および外側のブレードのための初期位置にてカッターへッド101に組み立てられる。そして、外側ブレード41を方向97に0.025mm(プラスまたはマイナスの小さな修正量)調節することができ、内側ブレード40を方向100に0.025mm(プラスまたはマイナスの小さな修正量)調整することができる。この構成はまた、外側切れ刃で切削するだけの単一ブレード41と、内側切れ刃で切削するだけの内側単一ブレード40とをもたらそう。
【0035】
単一ブレードおよびカッターシステムはまた、これを単一割り出し正面フライス加工に対して上述したように、連続割り出し正面ホブ切り加工に利用することも可能である。同一の内側および外側のブレードを実現するため、外側および内側ブレード間の個々の前面距離によって、ブレードの間合いを制御することはできない。内側ブレードの切れ刃の基準点と、外側ブレードの切れ刃の基準点との間の角距離であるブレードの間合いは、歯厚と共に溝幅に影響を与える。外側の溝に配されたブレードの正面の間隔と他のすべてのパラメーターとが内側ブレードのパラメーターと等しい場合、その場合には切削の完了での正確な歯厚は、切れ刃の径方向位置の変更にて単に達成されることができるだけである。両方のブレードを同一にするため、例えば+Δsの溝幅の相違は、内側切れ刃の半径をΔs/2だけ増大させると共に外側切れ刃の半径をΔs/2だけ減少させることにより、修正されることができる。この場合、正確な歯溝幅(および歯厚)は、外側切削のためのカッターへッド溝に加えて内側切削のためのカッターへッド溝にも同一のブレードを用いることによって達成されよう。
【0036】
外側および内側の切削溝の溝半径は、外側および内側の両方の切れ刃に対する基準点の同じ半径に切削する平均的な歯車に対して達成するため、特定されなければならない。より広範囲の歯車設計を扱うため、スペーサーブロック86および87を正面ホブ切りにて用いることもまた、可能である。
【0037】
好ましい実施形態を参照しつつ本発明を記述してきたけれども、本発明がこれらの事項に限定されないことを理解すべきである。本発明は、内容に関して当業者らにとって明白である改造を包含するように意図されている。