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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】コンタクトレンズの消毒方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 12/12 20060101AFI20220405BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220405BHJP
   A61L 12/08 20060101ALI20220405BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20220405BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
A61L12/12 102
A61L2/20
A61L12/08 104
C11D7/18
G02C13/00
A61L101:22
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018545904
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 US2017019933
(87)【国際公開番号】W WO2017151604
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-05
(31)【優先権主張番号】15/058,241
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517389056
【氏名又は名称】ベター・ヴィジョン・ソリューションズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リン・ウィンタートン
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-114557(JP,A)
【文献】特表平07-500425(JP,A)
【文献】特開平08-003868(JP,A)
【文献】特開2004-141546(JP,A)
【文献】特表2001-502201(JP,A)
【文献】特開昭60-217333(JP,A)
【文献】特表2002-526203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 12/12
A61L 12/08
A61L 101/22
A61L 2/20
C12N 11/08
C12N 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3%の過酸化水素を含む所定量の洗浄剤中にコンタクトレンズを2時間から4時間浸漬することであって、前記所定量の洗浄剤が、5から15mLの間である、浸漬すること、および
過酸化水素の効力を高めるために、繊維状の触媒過酸化水素賦活物質を0.4gから0.7gまで所定量の洗浄剤中に2時間から4時間浸漬し、繊維状の触媒過酸化水素賦活物質は、コンタクトレンズと同時に浸漬されることを含み、
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質は、鉄カチオンを含む、
コンタクトレンズを消毒する方法。
【請求項2】
浸漬するステップが、洗浄剤中に繊維状の触媒過酸化水素賦活物質を0.5g浸漬することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、布を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、布1gあたり最大22,000μgの鉄カチオンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、布1gあたり最大10,000μgの鉄カチオンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、布1gあたり少なくとも9,000μgの鉄カチオンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
所定量の洗浄剤が、5から10mLの間である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
所定量の洗浄剤が、9から11mLの間である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
所定量の洗浄剤が、取り外し可能なシールを含むエンクロージャ内部に画定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、所定量の洗浄剤中に浸漬されたバスケットによって取り外し可能に支持され、バスケットはシールによって支持される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
洗浄剤を中和することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
洗浄剤を中和することが、所定量の洗浄剤中に白金中和要素を浸漬することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
洗浄剤を中和することが、コンタクトレンズおよび繊維状の触媒過酸化水素賦活物質を所定量の等張性緩衝生理食塩水に曝すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
等張性緩衝生理食塩水が、中和酵素を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
中和酵素が、カタラーゼである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コンタクトレンズおよび繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が所定量の洗浄剤中に浸漬されている間に、中和ステップが実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、環形状を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
繊維状の触媒過酸化水素賦活物質が、所定量の洗浄剤内部で取り外し可能に支持される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として2017年2月28日に出願され、2016年3月2日に出願された米国特許出願第15/058,241号の優先権を主張し、この全開示が全体として参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概してコンタクトレンズの消毒に関する。より詳細には、本開示は、過酸化水素を用いたコンタクトレンズの消毒に関する。
【0003】
アカントアメーバ種は1973年に眼感染症で最初に発見された。その初期のコンタクトレンズ非関連感染症(アカントアメーバ角膜炎またはAK)以来、ほとんどの症例はコンタクトレンズ装着と関連してきた。最初に報告された一連の症例は、塩錠剤と共に、酵素錠剤と共に水を使用すること、または水泳中または浴槽でのレンズの装着と関連していた。これらの事例以降、米国での年間感染率は、1988年にシャウムベルクらによって、100万人あたり約2症例と報告された。英国では、シールが、2003年のレベルで、ベースライン値として3万人あたり1症例(約33症例/100万人)と報告した。英国での発生に関して最も頻繁に引用されている発生率は、100万人あたり20症例である。
【0004】
2005-2007年に、イリノイ大学シカゴ校(UIC)の職員が大流行を報告し、これは疾病管理センター(CDC)に照会された。CDCは複数州の調査を開始した。CDCによる広範な調査により、アボットメディカルオプティクス(AMO)コンプリートマルチプラスの単一製品の使用において、アカントアメーバ角膜炎(AK)のリスクが増加したことが示された。この特定の製品との相関関係として報告されたのは、生物が栄養体からシストになる製剤の成分に起因するということであった。シストは、ほとんどの消毒オプションに対してより耐性がある。
【0005】
AMO製品の回収以来、米国での発生率は、主要眼科センターの発生率のレビュー結果に基づけば、1998年のD.シャウムベルクによる調査で報告されたレベルにまで戻っていない。現在の比率は、米国では100万人あたり12-20症例程度であると推定されている。CDCはAKの発生率について追跡調査を継続している。
【0006】
これは、飲料水の処理の変化の結果であると仮説が立てられている。消毒に使用される塩素の濃度は、塩素化された副生成物の発生を減少させるために低減された。
【0007】
コンタクトレンズ装着者の環境からの曝露レートを理解することは、消毒の有効性について製品を試験する方法を開発する上で重要である。特に英国の研究者は、定期的に、特に「貯蔵」された水において家庭のパイプや蛇口の内部をふき取る方法を通常使用して、家庭の水道の汚染の重要な証拠を報告してきた。しかしながら、米国における環境調査では、湖沼や河川の水柱に存在する微生物数が少ない。この微生物数は100-200mlあたりの生物数として測定されることが多い。この度合いは10以下であることも多かった。テキサス州フォートワースの水道で実施され、ヒューストンの大学で発表された研究では、公共水道として使用されている湖からの暴風雨のない期間中の「グラブ」サンプル中には微生物が示されなかった。有意な流出がない状態で、雨期後にアカントアメーバが低レベル検出され、実質的に水の流れのない小さな池で検出された。同じ研究では、家からの流出水からアカントアメーバは回収されなかった。
【0008】
コンタクトレンズケア製品の殺菌消毒効力を試験するための主要な規格は、ISO 14729.13である。この規格は、5つの微生物、2つのグラム陰性菌、緑膿菌、およびセラチア・マルセッセンス、グラム陽性菌、黄色ブドウ球菌、酵母、カンジダアルビカンス、およびフザリウム・ソラニ菌に対する試験を要請する。1990年代にこの規格が策定されている間に(1980年代の大流行の後に策定された)、アカントアメーバがこの試験プロトコルの一部として含まれていなかったという理由で議論が行われた。2014年に第2の規格ISO 18259:2014がISOの下で制定され、これはレンズおよびケースの存在下でケア製品を試験する。この新しい規格には、ISO 14729と同じ5つの微生物が含まれている。アカントアメーバは、この新しい規格の試験微生物としては含まれていない。
【0009】
ISO消毒規格14729は、世界中のほとんどの管轄区域で受け入れられてきた主要な基準である。FDAの下で米国には現在別個の規格はなく、この規格はコンタクトレンズケア製品のANSI Z-80-18規格に含まれている。
【0010】
2007年の出来事が最初にUICで生じた後、この属の様々な種に対する効力を評価するための多くの方法が存在している。2009年1月にFDAが主催するワークショップで実施された議論では、1つの項目が試験規格に含まれるよう総意勧告を受けた。この項目とは、栄養体のシストへの転換(またはシスト形成)の尺度であった。これは、2015年に公表されたISO規格(ISO19045)に含まれている。この新しい規格は如何なる判定基準も含まないが、ポジティブコントロール(30%を超えるシスト形成)とネガティブコントロール(コントロール5%未満)との間の差がこの規格の研究室間で観察された。
【0011】
消毒効力の測定の開発には、はるかに困難があった。アカントアメーバ種の多くは、様々な微生物成長条件、試験条件および回収技術を用いて試験されている。これらの違いは、個々のケア製品について様々な結果をもたらしている。最近になってのみ栄養体の測定に対する単一の方法が、2つの種を用いた検証のためにISO TC172/SC7/WG9の専門家によって選択されている。専門家は、2015年末には、方法論を検証するために研究室間の重層試験を実行するプロトコルを開発していた。
【0012】
方法の開発の第2段階は、アカントアメーバのシスト形態の消毒効力を測定することである。手順およびプロトコルは専門家コミュニティ内で確定されていない。一般に、アカントアメーバ種に対する消毒効力の結果は、多くの研究者が公表している。非規格の試験条件が与えられた場合、いくつかの違いが報告されている。
【0013】
現在のところ、2つの微生物学ワークショップおよび眼科有識者からの勧告がありながらも、米国での消毒の承認の間に必要とされるアカントアメーバに対する試験要件は存在しない。現時点では、シスト形成を引き起こす製品の評価手順(ISO 18259)は米国で採用されていない。しかしながら、アカントアメーバに対して「効果的」なケアシステムを持つ必要性が認識されている。
【0014】
シスト形成は2007年の製品リコールに関連していたが、ISO規格18259には判定基準がない。新しい製品は、試験プロトコルの下で重大なシスト形成を引き起こすべきではない。
【0015】
適切な試験方法論を見出すことの困難さを越えて、有効性のための適切な基準を設定することには対処されていない。レンズケアにおいて懸念される3つの異なるタイプの微生物、すなわち細菌、真菌およびアメーバが存在する。それらは非常に様々な速度で生じる。毎日の装着におけるすべての微生物について全体的に観察された割合は、10,000人に約4人であり、装着が延長されると10,000人に20人である。最も頻繁に細菌感染が観察され、その後はかなり低いレベルの真菌が観察される。比較として、アカントアメーバ感染症の発生率は、全体の感染率よりも200-1000倍近く低い。ほとんどの消毒の能力の観点からみて、細菌は真菌に比べてより容易に排除され、そのどちらもアカントアメーバに比べて、特にシスト形態のアカントアメーバに比べてはるかに容易に排除される。
【0016】
細菌についての国際規格ISO 14729における現在の主要な承認基準は、約100万(10)/mlの種菌を、対数にして3、1000/ml(10)まで減少させることである。真菌は、対数にして1、すなわち約100万(10)から10万(10)に減少すると予想される。製品が主要な基準を満たさない場合は、細菌についての消毒活性および真菌の停止状態を立証し、その後製品を模擬使用して適格とすることによって、消毒レジメンでの使用を認めることができる。基準の作成では、真菌生物に対する有効性と高リスクの要件を考慮して、現在の基準で真菌の要件と等しいかそれ以上のアカントアメーバの要件を正当化することは困難であり得る。
【0017】
消毒効力を試験するためのISO19045-218の草案における現在の方法は、栄養体について研究室間評価が進められている。これらの試験のための種菌は、細菌および真菌に使用される種菌よりも低い(10-10)。判断基準が特定されていないが、少なくとも対数が1つ減少することは、溶液を用いた試験下で栄養体が減少することおよび模擬使用試験に含めるための増殖または停止がないことに関して望ましく、14729に概説される一般的手順において、回収は微生物10/ml未満である。ISO 18259で提案されている条件の下での試験の結果は、減少を示し経時的なレンズとケースに応じた増加を示さない。
【0018】
この時点で、アカントアメーバシストの消毒のための承認されたプロトコルは存在しない。方法論開発における主な考慮事項は、シスト形態を形成するための手順であると予想される。種菌レベルは、ISO 19045-1および19045-2について使用された評価で得られた結果によって決定される可能性が高い。シストは消毒に対してはるかに耐性があるので、消毒効力は栄養体で得られるものよりも低い傾向がある。これは困難をもたらす。アカントアメーバのシスト形態は、栄養体形態に戻ることができ、両方とも潜在的に感染性である。理想的には、製品は、栄養体およびシスト形態の双方について同様の消毒効力を有するであろう。
【0019】
米国では、微生物学ワークショップおよび眼科有識者で推奨されているにもかかわらず、アカントアメーバを試験する必要がないままである。研究者は製品を評価しており、多くの製造業者は、多くの様々な試験プロトコルの下で、独自の製品と活性に関して競争力のある製品を研究している。
【0020】
欧州では、適切なデータを有する製造業者が、製品ラベル上にアカントアメーバに対する効果の有効性に関する主張を含めている。他の管轄区域は、特定の主張の受け入れ方が異なる。
【0021】
過酸化水素(H)は、コンタクトレンズの消毒を含む多くの状況で使用される広く受け入れられている消毒剤である。アカントアメーバに対していくつかの活性が実証されているが、同時の過酸化物中和スキームを採用する3%H系では、長い接触時間後に限定された対数減少しか報告されていない。アカントアメーバ角膜炎の危険性に起因して、この領域ではるかに大きな活性を示すことができる系は、主張を支持する競争上の優位性を生み出す可能性を持ち、有利であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
一態様では、本開示は、コンタクトレンズを消毒する方法であって、約3%の過酸化水素を有する所定量の洗浄剤中にコンタクトレンズを最大4時間浸漬すること、および繊維状の触媒賦活剤を最大0.7gまで所定量の洗浄剤中に最大4時間浸漬することを含む方法に関する。繊維状触媒賦活剤は、コンタクトレンズと同時に浸漬される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】カップ、レンズ支持体および繊維状触媒を含む、眼科用レンズを洗浄するためのシステムの上面斜視図および側面斜視図を示す。
図2図1に示されるレンズ支持体および繊維状触媒の、カップなしの側面斜視図を示し、レンズ支持体から取り外された繊維状触媒を示す、
図3図1に示されるカップおよび繊維状触媒の、シールおよびバスケットなしの側面斜視図を示し、繊維状触媒がカップによって取り外し可能に支持されている代替実施形態を示す。
図4】A.castellanii(ATCC 50370)栄養体に対する試験系の有効性を示す。
図5】A.polyphaga(ATCC 30461)栄養体に対する試験系の有効性を示す。
図6】A.castellanii(ATCC50370)シストに対する試験系の有効性を示す。
図7】A.polyphaga(ATCC 30461)シストに対する試験系の有効性を示す。
図8】A.castellanii(ATCC 50370)シストに対する試験系の有効性を示し、2時間および4時間後の触媒への曝露の有効性を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な実施形態は、固体支持体を含む触媒を使用して微生物(例えば、胞子、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌および酵母など)を死滅および/または不活性化する方法であって、固体支持体が1つ以上の繊維および支持体に固定された金属カチオンを含む方法、該、触媒を用いて基材、例えばコンタクトレンズを消毒する方法、微生物を死滅および/または不活性化するためのおよび基材を消毒するための触媒の使用、ならびに触媒を含む微生物を死滅および/または不活性化するための組成物および装置に関する。
【0025】
疑義を避けるために、「繊維状触媒」という用語は、触媒的に活性な部位または中心が結合しているポリマー繊維を含む触媒を意味する。「繊維」という用語は、単一のモノフィラメントと、複数のモノフィラメントからなる複合フィラメントとを双方含む。例示的な繊維状触媒は、ポリアクリロニトリル(以後、「PAN」)繊維を含む任意の布であり得る。本明細書で布に言及するときは、単に1つ以上のPAN繊維の配置を指すことができる。本発明の1つの態様では、PAN繊維を含む布は、繊維状編みメッシュのような編物地である。したがって、この態様では、PAN繊維/ヤーンは編物であってよい。編物地は、当該技術分野において既知の任意の適切な方法によって準備することができる。
【0026】
例示の繊維状触媒は、(i)ポリアクリロニトリル繊維を含む布を、改質された布を提供するため、塩基の存在下で、ヒドラジン硫酸塩およびジヒドラジン硫酸塩(特に硫酸ジヒドラジン)および硫酸ヒドロキシルアミンから選択されるヒドラジン塩で処理するステップ;(ii)改質された布を塩基で処理する工程;および(iii)鉄カチオンの硫酸塩および第2の金属カチオンの塩(特に硫酸塩、硝酸塩および/または塩化物塩、より好ましくは硫酸塩および/または塩化物塩、最も好ましくは硫酸塩)を含む水溶液で改質された布を処理するステップであって、第2の金属カチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛のカチオン、およびそれらの混合物から選択されるステップ、を含む方法を用いて調製することができる。記載された方法で使用される例示的な繊維状触媒は、米国特許第8,410,011号明細書、第8,513,303号明細書および米国特許出願第2011/0098174号明細書に記載されている繊維状触媒を含むことができ、その各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
例示的な実施形態では、この方法は、約3%の過酸化水素を約10mlから構成される所定量の洗浄剤溶液中にコンタクトレンズを浸漬すること、および最大0.7gの繊維状触媒賦活物質を所定量の洗浄剤溶液中に最大4時間浸漬することを同時に含む。より好ましくは、コンタクトレンズおよび繊維状触媒賦活物質は、2から4時間の間洗浄剤溶液中に浸漬される。この所定量の洗浄溶液(約10ml)と0.7gの繊維状触媒との比率は、最大の触媒作用を生じる。繊維状触媒は、過酸化水素中で安定な平衡を可能にし、したがって、過酸化水素よりも微生物を死滅させる能力がより優れた安定なヒドロキシ基を生成する。
【0028】
好ましくは、0.4から0.7gの間の繊維状触媒賦活剤が洗浄剤溶液中に浸漬される。より好ましくは、約0.5gの繊維状触媒賦活剤が洗浄剤溶液に浸漬される。
【0029】
好ましくは、繊維状触媒賦活物質は布から構成される。より好ましくは、繊維状触媒賦活物質は鉄カチオンを含む。よりさらに好ましくは、繊維状触媒賦活物質は、布1グラム当たり最大22,000μgの鉄カチオンを含む。特に、繊維状触媒賦活物質は、布1グラム当たり最大10000μgの鉄カチオン、より好ましくは布1グラム当たり最大9000μgの鉄カチオンを含む。この濃度未満では、ヒドロキシラジカルの生成は、優れた微生物効力をもたらすには不十分である。この比率未満では、活性触媒中心の数は、動的消毒系において優れた殺菌効力を作り出すために必要なヒドロキシラジカルを生成するには不十分である。この消毒系は過酸化水素濃度が別個のPt元素または触媒酵素によって打ち消されているものである。このタイプの「一段階」過酸化水素系が最も好ましいので、この比率により、優れた殺菌効力を作り出すために必要な微環境を作り出すことができる。
【0030】
所定量の洗浄剤溶液は、取り外し可能なシールを含むエンクロージャ内部に画定される。繊維状触媒賦活物質は、所定量の洗浄剤溶液に浸漬されたバスケットによって取り外し可能に支持される。バスケットはシールによって支持される。洗浄剤溶液の体積は、好ましくは5mLから15mLの間、より好ましくは5mLから11mLの間、最も好ましくは9mLから11mLの間である。過酸化水素のこの濃度は、酸素と水との同時中和を受ける従来の過酸化物溶液に適切な微生物効力を提供する。2つの別個のコンタクトレンズ、およびそれらのそれぞれの左目および右目指定ホルダーを容易に浸水させるために、この体積/寸法が有効であることが分かる。
【0031】
この方法はさらに、例えば、白金中和要素を所定量の洗浄剤溶液に浸漬することによって、および/またはコンタクトレンズおよび繊維状触媒賦活剤を所定量の等張性緩衝生理食塩水に曝すことによって、洗浄剤溶液を中和することを含む。例示的な等張性緩衝生理食塩水は、カタラーゼなどの中和酵素を含むことができる。好ましくは、コンタクトレンズおよび繊維状触媒賦活物質が所定量の洗浄剤溶液に浸漬されている間に、洗浄剤溶液は中和される。
【0032】
図1および図2は、上述の洗浄プロセスを実行するための例示的なシステムを示す。図示のシステムは、好ましくはシールを形成するために、カップ12と接続する蓋10を含む。蓋10は、例えば、どちらも参照によってここに組み込まれる、米国特許第6,945,389号明細書および米国特許第8,767,367号明細書に記載されている容器と同様に、スナップフィットおよび対応するスレディングなど、シールを形成する任意の機構を介してカップ12と密封的に接続することができる。バスケット14は蓋10から延び、蓋10によって支持される。使用の際、ケージ14は、眼科用レンズを受け取り、カップ12内部に挿入される。ケージ14の遠位自由端には、中和リング16が支持されている。中和リング16は、白金を含むことができる。
【0033】
繊維状触媒18要素が示されており、ケージ14構造によって、例えば中和リング16の周りに支持されている。図示された繊維状触媒18は、中和リング16の周りに取り外し可能にぴったりとはめ込まれるリング形状を有することができる。繊維状触媒18は、眼科用レンズを洗浄するのに使用するために、上述した繊維状触媒材料から構成することができる。
【0034】
使用時には、カップ12は、例えば上記過酸化水素などの洗浄液で満たされる。ケージ14は、眼科用レンズが浸されるようにカップ12内の過酸化水素に挿入される。上記のように、繊維状触媒18は過酸化水素と反応して眼用レンズを洗浄する。中和リング16は、上述したように、過酸化水素を中和する。
【0035】
代替的には、図3に示すように、繊維状触媒18をカップ12内部に取り外し可能に支持することができる。繊維状触媒18は、摩擦嵌合、接着剤、または当業者であれば理解する繊維状触媒をカップ内に留めることができる任意の他の方法で、カップ12内部に支持されてよい。使用時には、ケージ14がカップ12内部に挿入され、中和リング16が繊維状触媒18の環形状内部に挿入される。
【0036】
〔比較例〕
図4-8は、アカントアメーバの栄養体およびシストに対する市販のワンステップ過酸化水素コンタクトレンズケア溶液の有効性を評価し、触媒賦活物質の添加が消毒の効力を増加させるかどうかを決定するために行った研究を示す。
【0037】
ここに記載された実施例では、A.castellanii(ATCC 50370)およびA.polyphaga(ATCC 30461)株がアカントアメーバ角膜炎症例から単離されたが、その遺伝的および形態学的特徴は異なっていた。菌株の形態は栄養体およびシストであった。栄養体はAc#6培地で増殖させ、シストは非栄養寒天上に形成させた。
【0038】
Bausch+Lomb PeroxiClear(登録商標)溶液(白金ディスク中和系を有する3%過酸化水素)およびAOSept(登録商標)Plus溶液(白金ディスク中和系を有する3%過酸化水素)を試験系とした。1/4強度リンゲル液をネガティブコントロールとして用いた。消毒剤中和剤は、1/4強度リンゲル液中の500U/mlカタラーゼであった。
【0039】
25℃で2、4、6および24時間消毒剤溶液に曝露した後の栄養体またはシストの生存率を定量するための最も確実な数による方法を用いて試験を行った。0.5gの触媒賦活物質(「布」)を含むかまたは含まない上記の市販の過酸化水素系10mlを用いた。シストで試験する場合、一定分量を1、2、4および6時間の間隔で取り出し、生き残った微生物の数を決定した。栄養体では、急速な死滅が過酸化水素系で起こり、サンプリングの時点が5、10、15および30分に短縮された。
【0040】
図4は、A.castellanii(50370)の栄養体について示し、布の存在下で4.5log10killであったのに対して、AOSept(登録商標)系が30分曝露後に3.0log10killを与えた(P<0.001)。同様に、Bausch+Lomb系は、布が含まれていた場合4.5log10killであったのに対して、30分後に3.9log10killを示した(P<0.001)。
【0041】
図5は、A.polyphaga(30461)の栄養体について、AOSept(登録商標)系が、布の存在下で4.5log10killであるのと比較して、30分曝露後に2.8log10killを与えたことを示す(P<0.001)。同様に、Bausch+Lomb系は、布が含まれていた場合に4.5log10killであったのに対して、30分後に3.5log10killを示した(P<0.001)。
【0042】
図6は、A.castellanii(50370)のシストについて、AOSept(登録商標)系が、布の存在下で2.8log10killであったのに対して、6時間曝露後に1.2log10killを与えたことを示す(P<0.001)。同様に、Bausch+Lomb系は、布が含まれていた場合2.8log10killを示したのに対して、6時間後に1.4log10killを示した(P<0.001)。
【0043】
図7は、A.polyphaga(30461)のシストについて、AOSept(登録商標)系が、布の存在下で3.0log10killであるのに対して、6時間曝露後に1.3log10killを与えたことを示す(P<0.001)。同様に、Bausch+Lombシステムは、布が含まれていた場合に3.1log10killであったのに対し、6時間後には1.4log10killを示した(P<0.001)。
【0044】
アカントアメーバ菌株の栄養体またはシストを1/4強度のリンゲル液および0.5gの布において6時間培養すると、生存率の有意な低下が示された(0.5log10以下の減少、結果は示さず)。この触媒賦活布は、市販の過酸化水素ワンステップコンタクトレンズ消毒剤系の双方について効力を著しく向上させた。
【0045】
図8は、アカントアメーバcastellaniiのシストに対する市販のワンステップ過酸化水素コンタクトレンズケア系の有効性を評価し、様々な量の触媒賦活物質による死滅の程度への影響を決定するために行ったさらなる検討を示す。
【0046】
記載される実施例では、アカントアメーバ角膜炎の臨床症例(臨床株)からA.castellanii(ATCC 50370)株を単離した。菌株の形態は栄養体およびシストであった。栄養体をAc#6培地で増殖させ、前述のように非栄養寒天上にシストを形成させた。
【0047】
AOSept(登録商標)Plus(白金ディスク中和系を有する3%過酸化水素)が試験系であった。1/4強度リンゲル液をネガティブコントロールとして用いた。消毒剤中和剤は、1/4強度リンゲル液中の500U/mlカタラーゼであった。
【0048】
試験は、消毒剤溶液に25℃で2時間および4時間曝露した後のシスト生存率を定量するための最も確実な数による方法を用いて、前述のように行った。白金中和ディスクおよび0.0~0.7gの触媒賦活物質(「布」)を有するAOSept(登録商標)Plus 10mlを調べた。さらに、より古いタイプの布(0.5g)も比較された。
【0049】
図7は、図1に示される2時間および4時間の曝露後の、A.castellanii(50370)のシストに対する様々な重量の布を用いた場合と用いない場合の試験溶液の有効性を示す。AOSept(登録商標)系単独では、2-4時間の曝露後に1.3-1.6log10killを示した。布の存在下で、0.1-0.4gの物質を用いてシスト滅菌の安定した増加が観察され、2時間で1.8-2.2log10kill、4時間後に2.1-3.1log10killであった。最大に増加した滅菌は、物質0.5gで生じ、2時間および4時間でそれぞれ2.9および3.5log10killであった。0.6gおよび0.7gの物質を試験したときに、さらなる滅菌は観察されなかった。より古いタイプの物質0.5gが試験されたとき、より少ない滅菌が観察され、2時間および4時間でそれぞれ1.7-1.8log10killであった。触媒賦活布地の添加は、0.1-0.4gの濃度でAOSept(登録商標)系の効力を徐々に増加させ、0.5gで著しく増強されたシスト死滅を達成した。
【0050】
開示の特定の実施形態が記載されているが、多くの他の改変および代替の実施形態が本開示の範囲内にある。例えば、特定のデバイスまたはコンポーネントに関して説明された機能のいずれかは、別のデバイスまたはコンポーネントによって実行されてもよい。さらに、特定のデバイス特性が記載されているが、本開示の実施形態は、多数の他のデバイス特性に関連し得る。さらに、実施形態は、構造的特徴および/または方法論的動作に特有の言語で説明されているが、本開示は必ずしも説明した特定の特徴または動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴および動作は、実施形態を実施する例示的な形態として開示される。特に断りのない限り、または使用されている文脈の中で他の意味で理解されない限り、「can」、「could」、「might」または「may」などの条件付き言語は、一般に、ある実施形態が、ある特徴、要素および/またはステップを含むことができ、他の実施形態が含み得ないことを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付き言語は、特徴、要素、および/またはステップが、1つまたは複数の実施形態に何らかの形で必要とされることを暗に意味することを一般に意図していない。
【符号の説明】
【0051】
10 蓋
12 カップ
14 ケージ
16 中和リング
18 繊維状触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8