(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】移植片本体、可膨張式充填チャネル、及び充填構造を有するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20220405BHJP
【FI】
A61F2/06
(21)【出願番号】P 2018559824
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(86)【国際出願番号】 US2017032490
(87)【国際公開番号】W WO2017197313
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-11
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506128064
【氏名又は名称】エンドーロジックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】チョボトフ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マチェク ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ディートン ディヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】コロン ウィリアム
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/183489(WO,A1)
【文献】特表2009-521287(JP,A)
【文献】特表2011-522614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの血管の中に配置するためのシステムであって、
移植片本体と、
前記移植片本体に取り付けられた1又は2以上の可膨張式チャネルと、
前記移植片本体によって形成された内腔の中に少なくとも部分的に挿入可能な移植片延長部と、
外壁及び内壁を有する充填構造であって、前記内壁は内側内腔を定める、充填構造と、を備え、
前記充填構造の内側内腔は、前記移植片延長部を受け入れるように構成され、
前記充填構造は、前記移植片本体の少なくとも一部分及び前記1又は2以上の可膨張式チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りで膨張可能
である、
システム。
【請求項2】
前記充填構造は、前記移植片延長部に取り付けられる、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記充填構造は、前記移植片延長部の長さに沿って2又は3以上の別々の箇所で前記移植片延長部に取り付けられる、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記充填構造は、前記移植片延長部の近位端から離れた1又は2以上の箇所だけで前記移植片延長部に取り付けられ、
前記充填構造は、前記移植片延長部の前記近位端の少なくとも一部分の周りで拡張可能である、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記移植片本体の中に少なくとも部分的に挿入可能な第2の移植片延長部をさらに備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
前記充填構造は、前記第2の移植片延長部に取り付けられる、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記充填構造は、前記移植片本体、前記移植片延長部、及び前記第2の移植片延長部とは別個に前記血管の中に挿入可能である、請求項
5に記載のシステム。
【請求項8】
前記充填構造は、前記少なくとも1つの血管の壁と、前記移植片本体の少なくとも一部分、前記1又は2以上の可膨張式チャネルのうちの前記少なくとも1つの前記少なくとも一部分、及び前記移植片延長部の少なくとも一部分の各々との間の空間を充填するように拡張可能である、請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
前記充填構造は、前記移植片本体に取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記充填構造は、前記移植片本体の遠位端を越えて拡張可能である、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記1又は2以上の可膨張式チャネルの特定の可膨張式チャネルは、前記移植片本体の近位端と前記移植片本体への前記充填構造の取り付け箇所との間に位置付けられる、請求項
9に記載のシステム。
【請求項12】
前記1又は2以上の可膨張式チャネルの第2の特定の可膨張式チャネルは、前記移植片本体の遠位端と前記移植片本体への前記充填構造の前記取り付け箇所との間に位置付けられる、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記充填構造の少なくとも一部分の周りで膨張可能な第2の充填構造をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年5月13日出願の米国仮出願第62/336,547号の優先権を主張し、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、一般的に、管腔内人工血管及びこのような人工血管を配置する方法に関し、一部の用途において、血管の処置に使用するための管腔内人工血管に関する。
【背景技術】
【0003】
腹部大動脈瘤は、大動脈すなわち大血管が腹部を通過する場合にその壁の異常な拡張よって生じる嚢である。大動脈は本幹又は動脈であり、そこから全身動脈系が種々の血管と共に生じる。大動脈は心臓の左心室から生じ、上行し、前屈し、胸部及び腹部を通って第4腰椎の高さまで下行し、ここで総腸骨動脈と呼ばれる血管に分かれる。
【0004】
一部の動脈瘤は、病変大動脈の腎臓下の部分、例えば腎臓の下に発生する。処置しないまま放置すると、動脈瘤は、最終的に嚢の破裂に至り、結果として非常に短時間で致命的な出血が起きる場合がある。このような破裂に関連する高い死亡率は、当初は腹部大動脈瘤の経腹的外科的修復に至った。しかしながら、腹壁に関与する手術は、高い危険性を伴う一大事である。
【0005】
近年、血管内移植として知られている、動脈の内腔内の管腔内位置に人工血管の動脈移植片の経腔的配置を含む、動脈瘤修復の非常に低侵襲性の臨床的手法が開発されている。この方法によって、移植片は、伸縮式ステントのような取付けデバイスにより動脈壁の内壁面に取り付けられ、動脈瘤の上に第1のステント及び動脈瘤の下に第2のステントが存在する場合がある。
【0006】
特定の病状において、血管の病変領域は、分岐血管にわたって延びる。これらの分岐血管への血流は、身体及び生体器官の末梢領域の潅流にとって重要である。多くの動脈は大動脈から枝分かれする。例えば、頸動脈は、血液を脳の中に供給し、腎動脈は血液を腎臓の中に供給し、上腸間膜動脈(SMA)は膵臓に供給し、内腸骨動脈は生殖器官に供給し、鎖骨下動脈は血液を腕に供給する。大動脈が病的である場合、分岐血管も影響を受ける可能性がある。胸部大動脈瘤は、大動脈に加えて鎖骨下及び頸動脈に影響を与える場合があるが、腹部動脈瘤は、大動脈に加えてSMA、腎臓、及び内腸骨動脈に影響を与える場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による大動脈のような少なくとも1つの血管の中に配置するためのシステムは、移植片本体、1又は2以上の可膨張式チャネル、及び充填構造を含む。1又は2以上の可膨張式チャネルは、移植片本体に取り付けられる。充填構造は、移植片本体の少なくとも一部分及び1又は2以上の可膨張式チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りで膨張可能である。
【0008】
一部の実施形態において、システムは、移植片本体によって形成された内腔の中に少なくとも部分的に挿入可能な移植片延長部をさらに含む。特定の実施形態において、充填構造は、移植片延長部の少なくとも一部分の周りで膨張可能である。同様に、一部の実施形態において、充填構造は、移植片延長部に取り付けられる。種々の実施形態において、充填構造は、移植片延長部の長さに沿って2又は3以上の別々の箇所で移植片延長部に取り付けられる。一部の実施形態において、充填構造は、移植片延長部の近位端から離れた1又は2以上の箇所だけで移植片延長部に取り付けられ、充填構造は、移植片延長部の近位端の少なくとも一部分の周りで拡張可能である。
【0009】
一部の実施形態において、システムは、移植片本体の中に少なくとも部分的に挿入可能な第2の移植片延長部をさらに含む。一部の実施形態において、充填構造は、第2の移植片延長部に取り付けられる。一部の実施形態において、充填構造は、移植片本体、移植片延長部、及び第2の移植片延長部とは別個に血管の中に挿入可能である。種々の実施形態において、充填構造は、少なくとも1つの血管の壁と、移植片本体の少なくとも一部分、1又は2以上の可膨張式チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分、及び移植片延長部の少なくとも一部分の各々との間の空間を充填するように拡張可能である。
【0010】
一部の実施形態において、充填構造は、移植片本体に取り付けられる。同様に、一部の実施形態において、充填構造は、移植片本体の遠位端を越えて拡張可能である。一部の実施形態において、1又は2以上の可膨張式チャネルの特定の可膨張式チャネルは、移植片本体の近位端と移植片本体への充填構造の取り付け箇所との間に位置付けられる。一部の実施形態において、1又は2以上の可膨張式チャネルの第2の特定の可膨張式チャネルは、移植片本体の遠位端と移植片本体への充填構造の取り付け箇所との間に位置付けられる。一部の実施形態において、システムは、充填構造の少なくとも一部分の周りで膨張可能な第2の充填構造をさらに含む。
【0011】
実施形態による方法は、移植片本体を少なくとも1つの血管の中に挿入する段階と、移植片本体に取り付けられた1又は2以上の可膨張式チャネルを充填する段階と、充填構造を充填して、移植片本体の少なくとも一部分及び1又は2以上の可膨張式チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りで膨張させる段階とを含む。一部の実施形態において、充填構造は、移植片本体に取り付けられる。一部の実施形態において、本方法は、移植片本体によって形成された内腔の中に移植片延長部の少なくとも一部分を挿入する段階をさらに含み、充填構造は、移植片延長部の少なくとも一部分の周りに広がる。一部の実施形態において、充填構造は、移植片延長部に取り付けられ、本方法は、移植片本体によって形成された内腔の中に移植片延長部の少なくとも一部分を挿入する段階をさらに含む。一部の実施形態において、本方法は、第2の充填構造を充填して、充填構造の少なくとも一部分の周りで膨張させる段階をさらに含む。
【0012】
実施形態によるシステムは、移植片本体及び充填構造を含む。種々の実施形態において、少なくとも1つの周方向可膨張式チャネルは、移植片本体の近位開放端の近くの移植片本体の近位部分に向かって配置され、複数の周方向可膨張式チャネルは、移植片本体の遠位開放端の近くの移植片本体の遠位部分に向かって配置される。種々の実施形態において、充填構造は、充填媒体で充填可能であり且つ移植片本体の遠位部分に向かって配置された複数の周方向可膨張式チャネルの少なくとも一部分の周りで拡張可能である内部容積を定める。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】腎臓下の大動脈瘤を有する例示的な患者の生体構造の断面図を示す。
【
図2】例示的な実施形態による管腔内人工器官システムの正面図である。
【
図3】線2-2に沿った
図2の管腔内人工器官システムの断面図である。
【
図4】動脈瘤を修復するように配備された
図2の管腔内人工器官システムの図である。
【
図5】別の例示的な実施形態による管腔内人工器官システムの正面図である。
【
図6】動脈瘤を修復するように配備された
図5の管腔内人工器官システムの図である。
【
図7】別の例示的な実施形態による管腔内人工器官システムの正面図である。
【
図8】動脈瘤を修復するように配備された
図7の管腔内人工器官システムの図である。
【
図9A】管腔内人工器官システムの配備のための一実施形態による方法のフローチャートである。
【
図9B】
図9Aの方法と共に使用することができる一実施形態による方法を示す。
【
図9C】
図9A及び9Bの方法と共に使用することができる一実施形態による方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は、本開示の特定の実施形態に関する。この説明では、図面が参照され、明細書及び図面全体にわたって同様の部分は同様の番号で示される。
【0015】
本明細書に記載されている特定の実施形態は、限定されるものではないが、胸部、上行、及び腹部大動脈を含む、大動脈のような血管における病巣、動脈瘤、又は他の欠損を処置するシステム、方法、及び装置に関する。しかしながら、本システム、方法、及び装置は、身体の他の区域、又は他の分野にも適用可能であり、このような追加の適用例は、本開示の一部を形成することが意図される。例えば、本システム、方法、及び装置は、動物の血管の処置に適用可能であることを認識できるはずである。本明細書で説明する管腔内人工器官システム、方法、及び装置の種々の実施形態及び/又は態様は、身体の他の部分に適用することができ、又は胸部、上行、及び腹部大動脈の処置以外の他の適用例を有することができる。さらに、特定の実施形態は、大動脈の特定の部分に関して本明細書に記載することができるが、記載された実施形態は、大動脈の他の部分又は身体の他の部分に使用するために適合することができ、記載された大動脈部分に限定されないことを理解されたい。
【0016】
管腔内人工器官システム及びその構成要素などの本明細書で検討される移植片の実施形態に関して、用語「近位の」とは患者の心臓に向かう部位を指し、用語「遠位の」とは患者の心臓から離れる部位を指す。本明細書で検討する送出システムカテーテル及びその構成要素に関連して、用語「遠位の」とはカテーテルを使用しているオペレータから離れて配置された部位を指し、用語「近位の」とはオペレータに向かう部位を指す。
【0017】
図1は、腎臓下の大動脈瘤を有する例示的な患者の生体構造の断面図である。
図1では、大動脈10は、大動脈分枝11で2つの腸骨動脈12及び13に枝分かれする。動脈瘤嚢14は、大動脈10の膨隆部を示す。名前が示すように、腎臓下の大動脈瘤は、腎動脈15及び16の下に位置する。腎動脈15及び16と動脈瘤嚢14との間の大動脈10の部分は、近位ネック17と呼ばれる。多くの場合、壁在血栓18は、動脈瘤嚢14の内壁上に形成される。
【0018】
図2は、例示的な実施形態による管腔内人工器官システム20の正面図である。
図3は、
図2の線2-2で切り取った断面図である。
図4は、大動脈10において動脈瘤を修復するように配備された
図2の管腔内人工器官システム20を示す。
図2、3、及び4を参照すると、管腔内人工器官システム20は、移植片本体22、可膨張式チャネル32A及び32B、充填構造26、移植片延長部28、及び近位係止部材24を含む。種々の実施形態において、充填構造26は、動脈瘤の区域に位置決め可能な二重壁の充填構造である。種々の実施形態において、移植片延長部28は、移植片本体22の遠位端から延びるように、移植片本体22によって形成された内腔30の中に少なくとも部分的に挿入可能である。
【0019】
移植片本体22は、中心内腔30を定める。移植片本体22は、少なくとも1つの血管(例えば、大動脈)の病変部分を通して血液流を送る人工血管壁を提供する。一部の実施形態において、移植片本体22は、略円筒形の管状形状を有する。管腔内人工器官システム20は、限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、及び/又はパラリンなどの何らかの好適な材料から形成することができる。種々の実施形態において、移植片本体22は、PTFE又はePTFEのような移植材料の1又は2以上の層から形成される。一部の実施形態に関して、移植片本体22は、患者の大動脈の動脈瘤にわたって広がるために、約5cm~約10cm、一部の実施形態において約6cm~約8cmの軸方向長さを有する。
【0020】
可膨張式チャネル32A及び32Bのような可膨張式要素のネットワークは、接着剤、縫合糸によって、又は移植片本体22と一体化されることによって移植片本体22に取り付けられるか又はその上に配置される。一部の実施形態において、管腔内人工器官システム20は、少なくとも1つの近位周方向可膨張式チャネル(可膨張式チャネル32Aとして示す)及び少なくとも1つの遠位周方向可膨張式チャネル(可膨張式チャネル32Bとして示す)を含む。一部の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bの各々は、移植片本体22の円周全体の周りに広がる。一部の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの1又は2以上だけが、移植片本体22の円周の周りに部分的に広がる。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bは、例えば長手方向の可膨張式充填チャネル34によって互いに流体連通状態にあるように、互いに連通状態にある。種々の実施形態において、長手方向の可膨張式充填チャネル34は、可膨張式チャネル32A及び32Bの間の流体連通を可能にするように設計された管状構造である。
【0021】
種々の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bは、長手方向の可膨張式充填チャネル34を通る膨張材料又は充填材料又は媒体による圧力を受けて膨張し、長手方向の可膨張式充填チャネル34は、可膨張式チャネル32A及び32Bのネットワークと流体連通する内腔を形成する。一部の実施形態において、膨張材料は、長手方向の可膨張式充填チャネル34の内腔の中に配置された一方向弁によって可膨張式チャネル32A及び32Bのネットワーク内に保持される。一部の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bのネットワークは、膨張材料で充填され、この膨張材料は、可膨張式チャネル32A及び32Bの中に注入された後に、固化する、硬化する、さもなければ粘度が高くなる、又はより硬質になるようになった硬化性材料である。膨張材料が長手方向の可膨張式充填チャネル34を通過すると、可膨張式チャネル32A及び32Bの各々は、膨張材料で充填される。加えて、種々の実施形態において、長手方向の可膨張式充填チャネル34は、膨張材料で充填されて剛性かつ強固な管腔内人工器官システム20を提供するようにもなっている。
【0022】
より硬い又は実質的に硬化状態に硬化できるゲル、液体、又は他の流動性材料などの硬化性充填媒体又は膨張材料を用いて、可膨張式チャネル32A及び32B内に配置された硬化材料の機械的特性によって、移植片本体22に対する機械的支持を提供することができる。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bのネットワークは、可膨張式チャネル32A及び32Bの剛性に起因して膨張状態にある場合に移植片本体22に対する構造的支持を提供する。一部の実施形態において、生理食塩水などの非硬化性膨張材料が高い内部圧力を維持できる限りにおいて使用される場合であっても、可膨張式チャネル32A及び32Bのネットワークは、可膨張式チャネル32A及び32Bの高い内部圧力よって引き起こされる可膨張式チャネル32A及び32Bの剛性に起因して膨張状態にある場合に移植片本体22に対する構造的支持を提供する。この硬直性又は剛性の増加は、様々な目的に有用な場合がある。例えば、配備時に、可膨張式チャネル32A及び32Bのネットワークの膨張は、移植片本体22を押し付けて、開放流れ内腔を有する略円筒形の構成に一致させるようになっており、これは流れ内腔に送出カテーテル、ガイドワイヤなどを位置決めして誘導しようと試みる場合に有用な場合がある。また、流れ内腔のこのような位置決め及び誘導は、蛍光透視撮像下で可視化を高める放射線不透過性膨張材料の使用によって容易にすることができる。
【0023】
種々の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bは、硬化性充填材料を受け入れて、可膨張式チャネル32A及び32Bが膨張状態であり材料が硬化又は固化している場合に移植片本体22に対して構造的硬直性を提供するように構成される。放射線不透過性充填材料を用いて、可膨張式チャネル32A及び32Bの充填プロセス及びその後の移植片延長部28の係合の監視を容易にすることができる。一部の実施形態において、最も近位にある可膨張式チャネル32Aのうちの少なくとも1つは、移植片本体22の近位部分の上に配置された膨張可能なカフ(cuff)であり、これは動脈瘤嚢14の上の大動脈10の近位ネック17の部分をシールするなどの、患者の血管の内面をシールするように拡張可能に構成される。種々の実施形態において、2以上の可膨張式充填チャネル34が存在でき、各々は可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの1又は2以上の異なるグループに接続する。
【0024】
種々の実施形態において、移植片延長部28は、PTFE又はePTFEのような可撓性移植材料の1又は複数の内層及び1又は複数の外層から形成される。移植材料の内層及び外層は、1又は複数の移植材料、及び/又は同様のものの多層の管状延長部、積層外被から形成することができる。一部の実施形態に関して、移植材料の内層又は外層は、透過性、半透過性、又は実質的に非透過性とすることができる。一部の実施形態に関して、移植片延長部28の一部の長さは透過性とすることができ、中間長手方向セクションのような1又は2以上の長手方向セクションは半透過性又は非透過性である。移植片延長部28の各々の一部の実施形態は、全体的に先細になる又は広がった構成を有することができ、一部の内側内腔は、移植片延長部28が弛緩した拡張状態にある場合に先細になるか又は広がっている。材料の積層外被を含む実施形態に関して、外被は、円周方向にらせん状で又は何らかの他の好適な構成で実施することができる。種々の実施形態において、移植片延長部28は、移植材料に取り付けられた又はその内部で一体化されたステント29を有する、ステント-移植片デバイスである。例えば、一部の実施形態において、移植片延長部28の各々は、移植材料の外層と内層との間に介在する半径方向に拡張可能なステント29を含む。
【0025】
一部の実施形態に関して、移植片延長部28の各々のステント29は、移植材料の柔軟層の少なくとも1つの外層と少なくとも1つの内層との間に配置された介在自己拡張式ステントである。移植材料の外層と内層との間に配置された介在ステントは、複数の長手方向に離間したターンが開放管状構成に螺旋状に巻回された細長い弾性要素から形成することができる。一部の実施形態において、移植片延長部28の各々のステント29は、ステント29の近位端から遠位端への巻回、波状構成を有する。一部の実施形態に関して、移植片延長部28の各々のステント29は、「ニチノール」として知られている超弾性NiTi合金のような、超弾性合金から形成される。加えて、一部の実施形態に関して、各移植片延長部28の移植材料は、少なくとも1つの低透過率の軸方向ゾーンをさらに含むことができる。
【0026】
種々の実施形態において、移植片延長部28の各々は、対応するカテーテルによって対応する腸骨動脈12、13を通って配備される。移植片延長部28の各々は、別々の段階で、又はお互いに実質的に及び/又はほぼ同時に配備することができる。移植片延長部28の各々の近位端36は、移植片本体22の中心内腔30の中に挿入可能である。種々の実施形態において、移植片延長部28のステント29の拡張により及び可膨張式チャネル32A及び32Bの膨張により、移植片延長部28は、移植片本体22の内面の形状に及び生体内で互いに合致して構成要素の間の溝(gutter)を排除する。種々の実施形態において、移植片延長部28の遠位端35は、それぞれの腸骨動脈12、13内で配備可能であり、移植片延長部28は、移植片本体22の遠位端部分38から外へ延び、それぞれの腸骨動脈12、13の中に延びる。また、一部の実施形態は、放射線不透過性膨張材料を用いて移植片延長部28の充填プロセス及びその後の係合の監視を容易にすることができる。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32Bのうちの1又は2以上は、移植片本体22の遠位開口部の可視化及び挿入された移植片延長部28への適合化に利用され、構成要素の間の溝を最小にするのに役立つ。
【0027】
種々の実施形態において、移植片延長部28は、移植片本体22の中に横並びに配置され、これらの近位端36は、近位周方向可膨張式チャネル32Aのうちの1又は2以上によって取り囲まれた区域の近くに又はその内部に延びる。種々の実施形態において、リング状並置のさらなる改良は、各移植片延長部28の近位端36が可膨張式チャネル32Aのうちの少なくとも1つによって取り囲まれた区域の内側に配置されるように、移植片延長部28を配備することによって達成することができる。一部の実施形態において、近位膨張は、キッシングバルーンで達成され、キッシングバルーンの伸縮式ステントは、移植片延長部28に利用される。
【0028】
種々の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22を取り囲み、膨張すると、移植片本体22と大動脈10又は他の血管の壁との間の動脈瘤嚢14内の環状空間を占める。充填構造26は、充填構造26の外壁42と充填構造26の内壁44との間に定められた内部容積40を定める。種々の実施形態において、内壁44は内側内腔46を定め、内側内腔46は、移植片本体22及び移植片延長部28を受け入れるように構成される。種々の実施形態において、充填構造26の幾何学形状は、処置されている特定の患者の幾何学形状に一致するように選択又は製作される。充填構造26の内部容積40の中に送出された充填材料又は媒体で膨張すると、外壁42は半径方向外向きに拡張する。
【0029】
種々の実施形態において、充填構造26は、充填構造26の内部容積40の中への充填材料又は媒体の導入を可能にする少なくとも1つの弁を含む。特定の実施形態において、弁は単純なフラップ弁を含む。一部の実施形態において、弁は、他のより複雑なボール弁又は他の一方向弁構造を含む。一部の実施形態において、弁は、二方弁構造を含み、内部容積40の充填及び選択的排出の両方を可能にする。一部の実施形態において、充填管は、ニードル又は他の充填構造を含み、弁を通過して充填媒体の充填及び除去の両方を可能にする。
【0030】
管腔内人工器官システム20の種々の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22と一体的に形成される。例えば、一部の実施形態において、移植片本体22は、充填構造26の内壁44の少なくとも一部分を形成する。一部の実施形態において、充填構造26の内壁44は、接着剤や縫合糸などの他の好適な取付け機構で移植片本体22に結合される又は取り付けられる。一部の実施形態において、移植片本体22は、充填構造26の内部容積40と流体連通しない可膨張式チャネル32A及び32Bにも取り付けられている。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32B及び充填構造26は、別個の弁によって別々に充填される。種々の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22、可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの1又は2以上、及び移植片延長部28の各々の少なくとも一部の周りで環状、ドーナツ状構造を形成する。種々の実施形態において、充填構造26は、エンドバッグ(endobag)などのバッグである。種々の実施形態において、充填構造26は、現場で重合することができる「ポリエチレングリコール(PEG)」又は別のポリマーのような硬化性充填材料で充填可能である。
【0031】
種々の実施形態において、移植片延長部28は、充填構造26の膨張前に充填構造26の内側内腔46内に横並びに配備される。これは、充填構造26が平行な移植片延長部28の縁部に一致することを可能にする。種々の実施形態において、送出システムは、充填構造26用の充填内腔を有する充填ラインを含み、これは主送出カテーテルを引き出すことができるように摺動可能に一体化され、一方で充填内腔は後に残り、依然として充填構造26に接続され、充填の準備ができている(例えば、その端部に嵌合するスリップ接続ルアーを取り付けることによって)。
【0032】
種々の実施形態において、充填構造26は移植片本体22を取り囲む。充填構造26は内部容積40を定める。種々の実施形態において、内部容積40は、硬化性膨張又は充填材料を受け入れるようになっている。放射線不透過性膨張材料及び/又は放射線不透過性マーカーを用いて、充填プロセスの監視を容易にすることができる。一部の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22、近位係止部材24、及び/又は移植片延長部28のうちの1又は2以上に結合して所望の配列を維持する。種々の実施形態において、充填構造26は、縫合糸、接着剤、又は他の好適な取付け機構を用いて移植片本体22の近位端の近くの移植片本体22に結合され、縫合糸、接着剤、又は他の好適な取付け機構を用いて移植片本体22の遠位端の近くの移植片本体22に結合される。
【0033】
種々の実施形態において、近位係止部材24は、血液がそこを通るのを維持するために腎動脈15、16を横切って位置決め可能である。種々の実施形態において、近位係止部材24は、大動脈10内で管腔内人工器官システム20を係止する働きをする。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32Aのうちの1又は2以上は、大動脈10の動脈瘤嚢14の上、充填構造26の上、及び動脈瘤嚢14の上の大動脈10の近位ネック17部分に対する膨張シール上に位置決めされる。種々の実施形態において、移植片本体22及び近位係止部材24が配備された後に移植片延長部28が配備される。
【0034】
種々の実施形態において、近位係止部材24は、移植片本体22の近位端に配置され、移植片本体22に固定される。種々の実施形態において、近位係止部材24は、支柱を用いて拡張式遠位ステント部分に固定された拡張式(例えば、自己拡張式、バルーン拡張式など)近位ステント部分を有する。支柱の一部の実施形態は、この支柱に隣接する近位ステント部分又は遠位ステント部分の断面積と実質的に同じか又はこれよりも大きい断面積を有することができる。このような構成は、近位係止部材又はこれらの構成要素を結合する支柱における応力集中点を避ける上で有用とすることができる。一部の実施形態に関して、近位係止部材24は、配備された拡張状態において半径方向外向きに広がるように構成された鋭い組織係合先端を有する複数の返し部をさらに含み、近位係止部材24を大動脈10の壁などの血管の壁に固定する。一部の実施形態に関して、近位係止部材24は、超弾性ニチノール(NiTi)合金などの超弾性合金から作られた4つの王冠状近位ステント部分及び8つの王冠状遠位ステント部分を含む。
【0035】
管腔内人工器官システム20は、大動脈10のような少なくとも1つの血管内に位置決め可能である。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32A及び32Bは、移植片本体22に取り付けられる。種々の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22の少なくとも一部分の周り、及び可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りで膨張可能である。種々の実施形態において、充填構造26は、硬化性充填材料又は媒体を充填することによって膨張される。一部の実施形態において、管腔内人工器官システムは、移植片本体22によって形成された中心内腔30の中に少なくとも部分的に挿入可能である移植片延長部28を含む。一部の実施形態において、充填構造26は、移植片延長部28の各々の少なくとも一部分の周りで膨張可能である。
【0036】
一部の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22に取り付けられる。同様に、一部の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22の遠位端を越えて拡張可能である。一部の実施形態において、可膨張式チャネル32Aの特定の可膨張式チャネルは、移植片本体22の近位端と移植片本体22への充填構造26の取り付け箇所との間に位置付けられる。例えば、充填構造26は、可膨張式チャネル32Aのうちの上部の1つの下の移植片本体22に取り付けられる。一部の実施形態において、可膨張式チャネル32Bの特定の可膨張式チャネルは、移植片本体22の遠位端と移植片本体22への充填構造26の上部取り付け箇所との間に位置付けられる。一部の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22及び移植片延長部28とは別個に血管の中に挿入可能である。種々の実施形態において、充填構造26は、大動脈10の動脈瘤嚢14の壁などの血管の壁と、移植片本体22の少なくとも一部分、可膨張式チャネル32A、32Bの1又は2以上のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分、及び移植片延長部28の少なくとも一部分の各々との間の空間を充填するように拡張可能である。
【0037】
ここで
図5を参照すると、別の例示的な実施形態による管腔内人工器官システム50の正面図が示されている。
図6は、大動脈10の動脈瘤を修復するように配備された
図5の管腔内人工器官システム50の図である。
図5及び6を参照すると、管腔内人工器官システム50は、移植片本体22、可膨張式チャネル32A及び32B、移植片延長部28、及び近位係止部材24を含む。管腔内人工器官システム50は、充填構造126A及び126Bの各々が移植片延長部28のそれぞれに結合された、複数の充填構造126A及び126Bをさらに含む。例示的な実施形態によれば、充填構造126A及び126Bの各々は、1又は2以上の縫合糸(例えば、ステント29に縫合された)、接着剤、又は別の好適な取付け機構を用いて移植片延長部28のそれぞれに結合される。
【0038】
一部の実施形態において、充填構造126Aは、少なくとも遠位取り付け点150A及び近位取り付け点152Aにおいて移植片延長部28のそれぞれに結合され、近位取り付け点152Aは移植片本体22の遠位端のすぐ遠位にある。一部の実施形態において、充填構造126Bは、少なくとも遠位取り付け点150B及び近位取り付け点152Bにおいて移植片延長部28のそれぞれに結合され、近位取り付け点152Bは移植片本体22の遠位端のすぐ遠位にある。一部の実施形態において、充填構造126A及び126Bは、近位偏向形状を有するように形成される。一部の実施形態において、充填構造126A及び126Bは、別個の開口部及び別個の充填内腔を介して別々に充填される。一部の実施形態において、充填構造126A及び126Bは、互いに流体連通状態にあり、同じ充填内腔で充填される。
【0039】
管腔内人工器官システム50は、大動脈10のような少なくとも1つの血管内に位置決め可能である。種々の実施形態において、1又は2以上の可膨張式チャネル32A及び32Bは、移植片本体22に取り付けられる。充填構造126Aは、移植片本体22の少なくとも一部分及び可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周り、及び移植片延長部28のそれぞれの1つの少なくとも一部分の周りで膨張可能である。充填構造126Bは、移植片本体22の少なくとも一部分及び可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周り、及び移植片延長部28のそれぞれの1つの少なくとも一部分の周りで膨張可能である。
【0040】
移植片延長部28は、移植片本体22によって形成された内腔の中に少なくとも部分的に挿入可能である。種々の実施形態において、充填構造126Aは、遠位取り付け点150A及び近位取り付け点152Aなどの、移植片延長部の長さに沿った2又は3以上の別々の箇所で移植片延長部28のそれぞれに取り付けられる。一部の実施形態において、充填構造126Aは、移植片延長部28の近位端から離れている1又は2以上の箇所においてのみそれぞれの移植片延長部28に取り付けられ、充填構造126Aは、それぞれの移植片延長部28の近位端の少なくとも一部分の周りで拡張可能である。一部の実施形態において、充填構造126Aは、移植片延長部28の両方に取り付けられる。
【0041】
種々の実施形態において、充填構造126Aは、動脈瘤嚢14の壁と、移植片本体22の少なくとも一部分、可膨張式チャネル32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分、及び充填構造126Aが取り付けられるそれぞれの移植片延長部28の少なくとも一部分の各々との間の空間を充填するように拡張可能である。種々の実施形態において、充填構造126Bは、動脈瘤嚢14の壁と、移植片本体22の少なくとも一部分、可膨張式チャネル32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分、及び充填構造126Bが取り付けられるそれぞれの移植片延長部28の少なくとも一部分の各々との間の空間を充填するように拡張可能である。
【0042】
種々の実施形態において、近位係止部材24は、血液がそこを通るのを維持するために腎動脈15、16に横切って位置決め可能であり、大動脈10内の管腔内人工器官システム50を係止する働きをする。種々の実施形態において、移植片延長部28の遠位端は、それぞれの腸骨動脈12、13内に配備可能であり、移植片延長部28は、移植片本体22の遠位端部分から外に延びてそれぞれの腸骨動脈12、13の中に延びる。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32Aのうちの1又は2以上は、大動脈10の動脈瘤嚢14の上、充填構造126A及び126Bの上、及び動脈瘤嚢14の上の大動脈10の近位ネック17部分に対する膨張シール上に位置決めされる。
【0043】
ここで
図7を参照すると、別の例示的な実施形態による管腔内人工器官システム70の正面図が示されている。
図8は、大動脈10の動脈瘤を修復するように配備された
図7の管腔内人工器官システム70の図である。
図7及び8を参照すると、管腔内人工器官システム70は、移植片本体22、可膨張式チャネル32A及び32B、移植片延長部28、及び近位係止部材24を含む。管腔内人工器官システム50は、複数の充填構造226A、226B、226C、及び226Dをさらに含む。種々の実施形態において、充填構造226A、226B、226C、及び226Dは、移植片本体22及び移植片延長部28の両方とは別個に動脈瘤に送出可能である。一部の実施形態において、充填構造226A、226B、226C、及び226Dは、いずれかの移植片延長部28の送出前に動脈瘤の部位に送出される。一部の実施形態において、充填構造226A、226B、226C、及び226Dは、移植片延長部28のうちの少なくとも1つの送出後に動脈瘤の部位に送出される。
【0044】
管腔内人工器官システム70は、大動脈10のような少なくとも1つの血管内に位置決め可能である。種々の実施形態において、1又は2以上の可膨張式チャネル32A及び32Bは、移植片本体22に取り付けられる。充填構造226Bは、移植片本体22の少なくとも一部分と、可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分との周りで膨張可能である。充填構造226Aは、充填構造226Bの少なくとも一部分の周りで膨張可能であり、大動脈10の動脈瘤嚢14の壁と接触するように拡張可能である。充填構造226Cは、移植片本体22の少なくとも一部分と、可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りとで膨張可能である。充填構造226Dは、充填構造226Cの少なくとも一部分の周りで膨張可能であり、大動脈10の動脈瘤嚢14の壁と接触するように拡張可能である。また、充填構造226A及び226Dの各々は、移植片延長部28に対応する1つの少なくとも一部分の周りで膨張可能である。移植片延長部28は、移植片本体22によって形成された内腔の中に少なくとも部分的に挿入可能である。
【0045】
種々の実施形態において、近位係止部材24は、血液がそこを通るのを維持するように腎動脈15、16を横切って位置決め可能であり、大動脈10内の管腔内人工器官システム70を係止する働きをする。種々の実施形態において、移植片延長部28の遠位端は、それぞれの腸骨動脈12、13内に配備可能であり、移植片延長部28は、移植片本体22の遠位端部分から外へ延びてそれぞれの腸骨動脈12、13の中に延びる。種々の実施形態において、可膨張式チャネル32Aのうちの1又は2以上は、大動脈10の動脈瘤嚢14の上、充填構造226A、226B、226C、及び226Dの上、及び動脈瘤嚢14の上の大動脈10の近位ネック17部分に対する膨張シール上に位置決めされる。
【0046】
種々の実施形態による管腔内人工器官は、可膨張式チャネルのネットワーク及び移植片本体を有する主管腔内人工器官、1又は2以上の移植片延長部、近位係止部材、及び動脈瘤の区域で位置決め可能な1又は2以上の二重壁の充填構造を含む。種々の実施形態による管腔内人工器官は、本明細書では腸骨枝の中に延びる移植片延長部と共に腹部大動脈に位置決めされるとは説明されている。一部の構造では、管腔内人工器官は、腎臓の上に配置することができ、大動脈から分岐した1又は2以上の血管(例えば、左腎動脈、右腎動脈、第2腰椎、精巣、下腸間膜、正中仙骨、その他)を通って移植片本体から延びる追加の移植片延長部を含むことができる。従って、一部の実施形態において、管腔内人工器官は、限定されるものではないが、1、2、3、又はそれ以上の分枝動脈のための要素を含む特定の用途に必要な任意の数の要素を含むことができる。分枝動脈に配置された要素は、広範な血管及び広範な位置に適合するように構成することができるので、要素は、何らかの適切なサイズ、形状、又は構成とすることができ、広範な位置のいずれにおいても移植片本体に取り付けることができる。
【0047】
管腔内人工器官は分枝させることができる。管腔内人工器官は、内部に主流体流内腔を有する、拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のような柔軟移植材料から形成することができる。管腔内人工器官は、識別できる節及び原繊維構造がない多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことができる。また、分岐管腔内人工器官は、主流体流内腔と連通する同側の流体流内腔を有する同側の脚と、主流体流内腔と連通する対側の流体流内腔を有する対側の脚と、移植片本体上に配置された可膨張式チャネルのネットワークとを含むことができる。
【0048】
可膨張式チャネルのネットワークの可膨張式チャネルは、本体部分、並びに同側の及び対側の脚を含む管腔内人工器官のあらゆる部分の上に配置することができる。可膨張式チャネルのネットワークは、硬化性充填材料を受け入れて、注入管のネットワークが膨張状態にあり膨張材料が硬化又は固化している場合に移植片本体に対して構造的剛性を提供するように構成することができる。放射線不透過性膨張材料を用いて、移植片延長部の充填プロセス及びその後の係合の監視を容易にすることができる。また、可膨張式チャネルのネットワークは、移植片本体の近位部上に配置された少なくとも1つの膨張可能なカフを含むことができ、カフは、大動脈のような患者の血管の内面をシールするように構成されている。可膨張式チャネルのネットワークは、デバイスの近位端及び遠位端においてチャネルと連通する少なくとも1つの長手方向充填チャネルを含むことができる。さらに、可膨張式チャネルのネットワークは、デバイスの一端において周方向チャネルと連通する長手方向チャネルを含むことができる。
【0049】
移植片延長部は、移植片本体の遠位端に配置することができる。分岐管腔内人工器官に関して、内部に配置された流体流内腔を有する少なくとも1つの同側の移植片延長部は、移植片本体の同側の脚の流体流内腔にシールされてこれと連通する移植片延長部の流体流内腔と共に配備することができる。加えて、内部に配置された流体流内腔を有する少なくとも1つの対側の移植片延長部は、移植片本体の対側の脚の流体流内腔にシールされてこれと連通する移植片延長部の流体流内腔と共に配備することができる。
【0050】
本明細書に開示した一部の構成は、限定されるものではないが、上述の管腔内人工器官システムなどの、管腔内人工器官システムを配備するシステム及び方法に関連し、動脈中に配備されたカテーテルのような送出カテーテルを挿入すること、所望の箇所に管腔内人工器官システムの構成要素を配備すること、標的分枝動脈の近位に事前カニューレ挿入されたガイドワイヤを提供すること、移植片本体の中心内腔から移植片本体及び充填構造内の開窓又は他の開口部を通って事前カニューレ挿入されたガイドワイヤ上で予め湾曲いた血管造影用カテーテルを追跡すること、事前カニューレ挿入されたガイドワイヤを引き出して標的血管にカニューレ挿入するために標的血管の腔口を通ってガイドワイヤを進めること、標的血管の中に血管造影用カテーテルを進めること、ガイドワイヤを引き出して剛性のあるガイドワイヤを標的血管に進めること、ガイドワイヤ上で潰れた支持構造を標的血管の中に進めること、標的血管内で支持構造を拡張すること、充填構造の中心内腔を支持するようにバルーンを膨張させること、当座の充填媒体で充填構造を事前充填すること、血管造影法によって充填構造のシール及び位置を検証すること、充填構造から当座の充填媒体を吸引すること、硬化性充填媒体で充填構造を充填すること、及び血管造影法によって充填構造のシールを検証することを含む。種々の実施形態による上述の手順のステップは、説明した順序で行うこと又は何らかの適切な好適な順序で行うことができ、さらに種々の実施形態において各ステップのうちの1又は2以上は省略することができる。一部の実施形態において、硬化性充填媒体で充填構造を充填するステップは、硬化性充填媒体で充填構造を充填するステップが第2の管腔内人工器官で行われる前に、第1の管腔内人工器官で行われる。
【0051】
図9Aは、実施形態による方法のフローチャートを示す。ステップ300では、移植片本体を少なくとも1つの血管の中に挿入する。ステップ301では、移植片本体に取り付けられた1又は2以上の可膨張式チャネルを充填する。ステップ302では、充填構造を充填して、移植片本体の少なくとも一部分及び1又は2以上の可膨張式チャネルのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りで膨張させる。例えば、
図4の管腔内人工器官システム20を参照すると、種々の実施形態において、移植片本体22を大動脈10の中に挿入し、移植片本体22に取り付けられた可膨張式チャネル32A及び32Bを充填し、充填構造26を充填して、移植片本体22の少なくとも一部分及び1又は2以上の可膨張式チャネル32A及び32Bのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の周りで膨張させる。一部の実施形態において、充填構造26は、移植片本体22に取り付けられる。
【0052】
図9Bは、
図9Aの方法と共に行うことができる方法を示す。ステップ303では、移植片延長部の少なくとも一部分を、移植片本体によって形成された内腔の中に挿入し、充填構造を移植片延長部の少なくとも一部分の周りに広げる。例えば、
図4の管腔内人工器官システム20を参照すると、移植片延長部28の各々の少なくとも一部分を移植片本体22によって形成された中心内腔の中に挿入し、充填構造26を移植片延長部28の各々の少なくとも一部分の周りで広げる。
【0053】
一部の実施形態において、充填構造は移植片延長部に取り付けられ、本方法は、移植片本体によって形成された内腔の中に移植片延長部の少なくとも一部分を挿入する段階を含む。例えば、
図6の管腔内人工器官システム50を参照すると、充填構造126Aを移植片延長部28の対応する1つに取り付け、対応する移植片延長部28の少なくとも一部分を移植片本体22によって形成された中心内腔の中に挿入する。
【0054】
図9Cは、
図9A及び9Bの本方法と共に行うことができる方法を示す。ステップ304では、第2の充填構造を充填し、別の充填構造の少なくとも一部分の周りで膨張させる。例えば、
図7の管腔内人工器官システム70を参照すると、充填構造226Aを充填し、充填構造226Bの少なくとも一部分の周りで膨張させる。同様に、充填構造226Dを充填し、充填構造226Cの少なくとも一部分の周りで膨張させる。
【0055】
別の実施形態において、よりあらゆるプロセス又は方法のステップの順番又は順序は、変更すること又は並べ直すことができる。また、他の置換、修正、変更、及び削除は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の例示的な実施形態の設計、作動条件、及び配列で行うことができる。
【0056】
例示的な実施形態に示すような管腔内人工器官システムの要素の構成及び配列は単なる例示である。本開示の実施形態は詳細に説明されているが、本開示を再検討する当業者であれば、列挙された主題の新規の教示及び利点から逸脱することなく、多くの修正(例えば、種々の要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び比率、パラメータ値、取り付け機構、材料の使用、色、配向、その他の変形形態)が可能であることを容易に認識できるはずである。例えば、一体的に形成するように示された要素は、複数の部品又は要素で構成することができる。一部の同様の構成要素は、様々な図で同じ参照番号を用いて本開示に説明されている。このことは、これらの構成要素が全ての実施形態において同一であるという意味と解釈すべきでなく、種々の修正は、種々の異なる実施形態において行うことができる。本開示の要素及び/又は組立体は、広範な色、テクスチャ、及び組合せのいずれにおいても、十分な強度及び耐久性を提供する広範な材料のいずれからも構成することができることに留意されたい。
【0057】
本明細書に開示された実施形態は、全ての点で例示であって本発明を制限するものではないと見なすべきである。本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、実施形態の種々の修正及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
20 管腔内人工器官システム
22 移植片本体
24 近位係止部材
26 充填構造
28 移植片延長部
29 ステント
30 中心内腔
32A、32B 可膨張式チャネル
34 充填チャネル
35 遠位端
36 近位端
38 遠位端部分
42 外壁
44 内壁
46 内側内腔