(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】新規な脂肪酸デカルボキシラーゼ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12P 5/00 20060101AFI20220405BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220405BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220405BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220405BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220405BHJP
C12Q 1/26 20060101ALI20220405BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20220405BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20220405BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20220405BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20220405BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12P5/00 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/26
C12N9/02
C12N9/16 Z
C12N15/53
C12N15/29
C12N15/55
(21)【出願番号】P 2018560882
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2017062061
(87)【国際公開番号】W WO2017198802
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-08
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ブイッソン
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・ソリグ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン・ルグレ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・キュイーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ブランジー
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ペルティエ
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】A8JHB7_CHLRE,Uniprot[online],2007年,[retrieved on 2021-04-21]. Retrieved from the Internet:<URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A8JHB7.txt?version=1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸からアルカン及び/又はアルケンを産生するための、ポリペプチド又は前記ポリペプチドを発現する細胞の使用であって、前記ポリペプチドは、脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有し、且
つFAD結合ドメイン、及びコンセンサス配列G-X-L-(X)
4-C-[D/E]-X-G-[A/G]-F-X-[K/R](配列番号4)を含み、Xは任意のアミノ酸であ
り、配列番号1~3及び5~8並びにこれらのうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はこれで構成される、使用。
【請求項2】
配列番号1の位置C372、R391、Y406、Q426、H512及びN515において1個、2個、3個、4個、5個又は6個のアミノ酸が保存されており、ナンバリングは配列番号1におけるアミノ酸ナンバリングに対応する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
位置388~428の間のアミノ酸残基の少なくとも40%が、V、I、L、M、F、W、C、A及びYからなる群から選択される疎水性残基であり、ナンバリングは配列番号1におけるアミノ酸ナンバリングに対応する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、藻類、好ましくは微細藻類又はシアノバクテリア由来のGMC酸化還元酵素である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
脂肪酸並びに対応する脱カルボキシル化アルカン及び/又はアルケンが、8から24個の炭素原子、好ましくは12から22個の炭素原子の長さを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記脂肪酸並びに前記対応する脱カルボキシル化アルカン及び/又はアルケンは、1個又は複数の官能基により置換及び/又は中断されている、請求項1から
5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記脂肪酸並びに前記対応する脱カルボキシル化アルカン及び/又はアルケンは、1個又は複数の基によって、例えば、ヒドロキシル、C
1~C
3アルコール、C
1~C
3アシル、C
1~C
3エステル、C
1~C
3アミン、アミノ基、C
1~C
3アミド、カルボキシル、アルデヒド、エポキシ、ハロゲン、C
1~C
3アルコキシ、C
1~C
3チオアルキル、C
1~C
3イミン、ニトリル、C
1~C
3スルホン又はC
1~C
3スルホキシド等の硫黄基、チオール、ニトロ、シアノ、C
1~C
3ハロゲノアルキルによって置換されているか、或いはO、N若しくはS等のヘテロ原子、アセチレン基、ジビニルエーテル基等のエーテル、又はオキソ基によって中断されていてもよい、請求項
6に記載の使用。
【請求項8】
前記脂肪酸は、ヒドロキシル又はメチル基によって置換されてもよい飽和又は不飽和C12~C18脂肪酸である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に規定のポリペプチドを脂肪酸と接触させ且つ300から540nmの間の波長を有する光に供する、脂肪酸からアルカン及び/又はアルケンを製造する方法。
【請求項10】
前記光は400から520nmの間の波長を有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有し、且
つFAD結合ドメイン、及びコンセンサス配列G-X-L-(X)
4-C-[D/E]-X-G-[A/G]-F-X-[K/R](配列番号4)を含み、Xは任意のアミノ酸であ
り、配列番号1~3及び5~8並びにこれらのうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はこれで構成される、
脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有する異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、アルカン及び/又はアルケンを産生するように操作された組換え宿主細胞で
あって、前記宿主細胞が、微細藻類又はシアノバクテリアであり、前記異種ポリペプチドは、前記微細藻類又は前記シアノバクテリアにおいて、チオエステラーゼと共発現される、組換え宿主細胞。
【請求項12】
脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有し、且
つFAD結合ドメイン、及びコンセンサス配列G-X-L-(X)
4-C-[D/E]-X-G-[A/G]-F-X-[K/R](配列番号4)を含み、Xは任意のアミノ酸であ
り、配列番号1~3及び5~8並びにこれらのうちの1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はこれで構成される、
脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有する異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、アルカン及び/又はアルケンを産生するように操作された組換え宿主細胞で
あって、前記宿主細胞が、細菌であり、前記異種ポリペプチドは、前記細菌において、リパーゼと共発現される、組換え宿主細胞。
【請求項13】
請求項1
1又は12に記載の組換え宿主細胞が培養され、アルカン及び/又はアルケンが回収された、脂肪酸からアルカン及び/又はアルケンを製造する方法。
【請求項14】
試料中の遊離脂肪酸を計量するための請求項1から
4のいずれか一項に規定のポリペプチドの使用。
【請求項15】
a.脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で請求項1から
4のいずれか一項に規定の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、
b.前記アルカン/アルケン及び/又はCO
2を回収する工程、及び
c.前記アルカン/アルケン及び/又はCO
2を定量化する工程
を含む、前記試料中の遊離脂肪酸を計量するための方法。
【請求項16】
a.脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で請求項1から
4のいずれか一項に規定の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、
b.前記脂肪酸デカルボキシラーゼが発する蛍光を測定する工程
を含む、前記試料中の遊離脂肪酸を計量するための方法。
【請求項17】
前記試料をリパーゼと接触させる、前の工程を含む、請求項1
5又は
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵素学の分野、特に脂肪酸デカルボキシラーゼに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカン及びアルケンは、化石燃料の主成分であるが、これらはまた、植物、昆虫、シアノバクテリア及び一部の細菌に自然に存在する。珪藻及び群体性緑藻綱ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)も、21個超の炭素原子を有するアルカン/アルケンを産生することが知られている。
【0003】
殆どのアルカン及びアルケン生合成経路には、活性化された脂肪酸(アシル-ACP又はアシル-CoA)のアルデヒド中間体への変換及びアルカン及びアルケンへの最終的な脱カルボニル化が関与する。これらの反応は、様々な酵素によって触媒されている。植物では、27から33個までの炭素の超長鎖のアルカンが、2つの相同の推定酸化還元酵素ECERIFERUM1(CER1)及びECERIFERUM3(CER3)(Bernardら、2012、The Plant Cell、24(7)、3106~18頁; Bourdenxら、2011、Plant Physiology、156(1)、29~45頁)の作用により脂肪酸から生成する。昆虫では、21から37個までの炭素のクチクラアルカン及びアルケンの合成には、アシルエステル還元酵素及びシトクロムP450(Qiuら、2012、PNAS、109、14858~14863頁)が関与する。シアノバクテリアでは、経路は、アシル-ACP還元酵素及びアルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼで構成されている(Liら、2012、Biochemistry、51(40)、7908~16頁; Rudeら、2011、Applied and Environmental Microbiology、77(5)、1718~27頁)。細菌ジェオトガリコッカスspp(Jeotgalicoccus spp)及びシュードモナスsp(Pseudomonas sp)のみが遊離脂肪酸の直接の脱カルボキシル化より炭化水素を産生することができる(Grantら、2015、Journal of the American Chemical Society、137(15)、4940~3頁; Ruiら、2014、PNAS、111、18237~18242頁; Rudeら、2011、Applied and Environmental Microbiology、77(5)、1718~27頁)。しかし、こういった細菌の脂肪酸デカルボキシラーゼは、アルケン(末端不飽和を保有している)を産生することができるがアルカンは産生できない。微細藻類では、炭化水素の合成を触媒する酵素はまったく知られていない。微細藻類ボツリオコッカス・ブラウニーのアルカン合成系を精製する試みがなされ、コバルトポルフィリン酵素により脂肪アルデヒド中間体の脱カルボニルを介して合成が進むことが示唆された(Dennis & Kolattukudy、1992、PNAS、89(12)、5306~10頁)。しかし、タンパク質は特定されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO95/17413
【文献】WO95/22625
【文献】米国特許第5,223,409号
【文献】WO92/06204
【文献】WO99/43835
【文献】WO96/00787
【文献】WO00/56900
【文献】US6,379,945
【文献】US6,410,828
【文献】US5,689,044
【文献】US8,318,482
【文献】US5,750,385
【文献】US5,639,952
【文献】US5,447,858
【文献】US2013/0023035
【文献】US2013-0323780
【文献】US2014-0154806
【文献】US2014-0363892
【文献】WO94/25612
【文献】WO00/24883
【文献】EP 238023
【文献】WO96/00787
【文献】US4,889,803
【文献】US5,047,335
【文献】WO08/119082
【文献】US8,183,028
【文献】WO14120829
【文献】WO16044779
【文献】WO15089102
【文献】WO13170369
【非特許文献】
【0005】
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【文献】Qiuら、2012、PNAS、109、14858~14863頁
【文献】Liら、2012、Biochemistry、51(40)、7908~16頁
【文献】Rudeら、2011、Applied and Environmental Microbiology、77(5)、1718~27頁
【文献】Grantら、2015、Journal of the American Chemical Society、137(15)、4940~3頁
【文献】Ruiら、2014、PNAS、111、18237~18242頁
【文献】Dennis & Kolattukudy、1992、PNAS、89(12)、5306~10頁
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【文献】NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)
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【文献】Cyanidioschyzon merolae (http://merolae.biol.s. u-tokyo.ac.jp/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、脂肪酸からアルカン/アルケンを製造するのに適した酵素のニーズが依然として強い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルカン及びアルケンの合成向けの、微細藻類で同定された新規クラスの酵素の同定に関するものである。アルカンシンターゼがこれらの微生物で同定されたのは初めてである。本酵素は、脱カルボキシル化により遊離脂肪酸のアルカン及び/又はアルケンへの変換を触媒する。本酵素は、原核生物及び真核生物に存在するFAD依存性タンパク質のスーパーファミリー(GMC(グルコース-メタノール-コリン)酸化還元酵素)に属し、これには種々の酵素(主にアルコール酸化酵素)が含まれる。これまで、生化学的観点から特徴付けられた、微細藻類由来のGMC酸化還元酵素はなく、アルカンシンターゼとして同定された、GMC酸化還元酵素スーパーファミリーのメンバーは他にはなかった。そこで、これは、バイオ燃料、グリーンケミストリー、診断及び栄養における用途を備えたアルカン及びアルケンの合成向けの新規な酵素である。
【0008】
したがって、本発明は、ポリペプチド又は脂肪酸からアルカン及び/アルケンを産生するための前記ポリペプチドを発現する細胞の使用に関するものであり、ここで、ポリペプチドは、脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有し、且つ配列番号1と少なくとも40%の同一性を有する配列を含む。
【0009】
好ましくは、ポリペプチドは、コンセンサス配列G-X-L-(X)4-C-[D/E]-X-G-[A/G]-F-X-[K/R](配列番号4)を含み、Xは任意のアミノ酸である。或いは又は加えて、配列番号1の位置C372、R391、Y406、Q426、H512及びN515において1個、2個、3個、4個、5個又は6個のアミノ酸が保存されている。或いは又は加えて、位置388~428の間のアミノ酸残基の少なくとも40%が、V、I、L、M、F、W、C、A及びYからなる群から選択される疎水性残基である。
【0010】
より具体的な一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1~3及び5~14並びにこれらのうちの1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列、を含むか又はこれで本質的に構成される。
【0011】
好ましくは、ポリペプチドは、藻類、好ましくは微細藻類又はシアノバクテリア由来である。
【0012】
好ましくは、脂肪酸並びに対応する脱カルボキシル化アルカン及び/アルケンは8から24個の炭素原子を、好ましくは12から22個の炭素原子を含む。
【0013】
任意選択で、脂肪酸並びに対応する脱カルボキシル化アルカン及び/アルケンは、1個又は複数の官能基により置換及び/又は中断されている。好ましくは、脂肪酸並びに対応する脱カルボキシル化アルカン及び/アルケンは、1個又は複数の基によって、例えば、ヒドロキシル、C1~C3アルコール、C1~C3アシル、C1~C3エステル、C1~C3アミン、アミノ基、C1~C3アミド、カルボキシル、アルデヒド、エポキシ、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、C1~C3チオアルキル、C1~C3イミン、ニトリル、C1~C3スルホン又はC1~C3スルホキシド等の硫黄基、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C3ハロゲノアルキルによって置換されているか、或いはO、N若しくはS等のヘテロ原子、アセチレン基、ジビニルエーテル基等のエーテル、又はオキソ基によって中断されていてもよい。
【0014】
本発明はまた脂肪酸からアルカン及び/アルケンを製造する方法に関するものであり、ここで、上で規定のポリペプチドを脂肪酸と接触させ、且つポリペプチドのFAD補因子の存在下で光に供する。好ましくは、光は、300から540nmの間の、より好ましくは400から520nmの間の波長を有する。例えば、光は、白色光又は青色若しくはUV光子を含有する任意の光(例えば400から520nmまで)である。
【0015】
本発明は更に、上で規定の異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え宿主細胞に関するものである。好ましくは、宿主細胞は、細菌、微細藻類、糸状菌又は酵母である。
【0016】
第一の実施形態では、異種ポリペプチドは、好ましくは、微細藻類、シアノバクテリア又は大腸菌(E. coli)において、チオエステラーゼと共発現される。別の実施形態では、異種ポリペプチドは、好ましくは、細菌又は微細藻類において、リパーゼと共発現される。
【0017】
本発明は脂肪酸からアルカン及び/アルケンを製造する方法に関するものであり、ここで、本発明による組換え宿主細胞が培養され、アルカン及び/アルケンが回収された。
【0018】
また、本発明は、試料中の遊離脂肪酸を計量するための、上で規定のポリペプチドの使用に関するものである。より具体的には、試料における遊離脂肪酸を計量するための方法は、(a)脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、(b)アルカン/アルケン及び/又はCO2を回収する工程、及び(c)アルカン/アルケン及び/又はCO2を定量化する工程を含む。或いは、試料における遊離脂肪酸を計量するための方法は、(a)脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、及び(b)脂肪酸デカルボキシラーゼが発する蛍光を測定する工程を含む。任意選択で、方法は、特に脂肪酸を遊離脂肪酸へと変換するのに適した条件で、リパーゼと試料を接触させる、前の工程を含む。
【0019】
本発明はまた、脂肪酸の脱カルボキシル化向けの、上で規定のポリペプチドの使用に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、脂肪酸の脱カルボキシル化の活性によって遊離脂肪酸をアルカン及びアルケンへと変換することができる新規なクラスの酵素を同定した。
【0021】
定義
約(about):本明細書で使用される場合、「約」とは、更に10%大きく又は更に10%小さく、好ましくは更に5%大きく又は更に5%小さいことを意味する。例えば、約100とは、90から110の間を、好ましくは95から105の間を意味する。
【0022】
コード配列:用語「コード配列」とは、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接的に指定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は一般的に、ATG、GTG、又はTTG等の開始コドンにより始まり、TAA、TAG、又はTGA等の停止コドンにより終結する、オープンリーディングフレームにより判定される。コード配列は、ゲノムのDNAであっても、cDNAであっても、合成DNAであっても、それらの組合せであってもよい。遺伝コードは、宿主細胞向けに最適化することができる。
【0023】
制御配列:用語「制御配列」とは、本発明の酵素をコードするポリペプチドの発現に必要である核酸配列を意味する。制御配列は、酵素をコードするポリヌクレオチドに対して在来(すなわち、同じ遺伝子由来)であっても、異種(すなわち、異なる遺伝子及び/又は異なる種由来)であってもよい。好ましくは、制御配列は異種である。当業者によって良く知られ且つ現在使用されている制御配列が好ましいであろう。そのような制御配列は、それらに限定されないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを含む。最小限で、制御配列は、プロモーター、並びに転写停止シグナル及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、酵素をコードするポリヌクレオチドのコード領域と制御配列とのライゲーションを促進する特定の制限部位を導入するためのリンカーを備えることができる。制御配列及びコード配列の機能的な組合せは、発現カセットと呼ぶことができる。
【0024】
発現:用語「発現」とは、それらに限定されないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むポリペプチドの生成に関与する任意の段階を含む。
【0025】
発現ベクター:用語「発現ベクター」とは、本発明の酵素をコードするポリヌクレオチドを含み、そしてその発現を提供する制御配列に作用可能に連結される、直鎖状又は環状のDNA分子を意味する。それで、発現ベクターは、本発明の酵素を発現するのに適した発現カセットを含む。
【0026】
単離された:「単離された」という用語は、自然界に存在しない形態又は環境にある物質を意味する。単離された物質の非限定的例として、(1)天然には存在しない任意の物質、(2)自然界では付随している天然に存在する成分の1つ若しくは複数又は全部から少なくとも部分的に取り出されている任意の物質、例えば、それらに限定されないが、任意の酵素、変異体、核酸、タンパク質、ペプチド又は補因子、(3)自然界で見出される物質に対して、人為的に改変された任意の物質、或いは(4)天然では付随している他の成分に対して、当該物質の量を増加すること(例えば、物質をコードする遺伝子の複数のコピー;物質をコードする遺伝子に天然では付随しているプロモーターより強力なプロモーターの使用)により、改変された任意の物質、が挙げられる。
【0027】
組換え体:組換え体とは、遺伝子工学により製造される核酸構築物、ベクター及びタンパク質を指す。
【0028】
異種:宿主細胞、ベクター又は核酸構築物の文脈においては、遺伝子工学によって宿主細胞、ベクター又は核酸構築物へと導入された、酵素に対するコード配列を指す。宿主細胞の文脈では、酵素に対するコード配列は、それが導入される細胞とは異なる供給源に由来することを意味するか、或いは、酵素に対するコード配列は、それが導入される細胞と同じ種から得られるが、その環境が自然ではないことから、例えば、それが、その自然のプロモーターではないプロモーターの制御下にあるから、又はその自然の位置とは異なる位置に導入されているから、それは異種とみなされることを意味する。
【0029】
核酸構築物:用語「核酸構築物」とは、一本鎖又は二本鎖のいずれかである核酸分子を意味し、これは、そうでなければ自然界に存在しないであろう様式で核酸のセグメントを含有するよう修飾されているか、或いは合成によるものであり、1つ又は複数の制御配列を含む。
【0030】
作用可能に連結された:「作用可能に連結された」という用語は、制御配列がコード配列の発現を導くよう、制御配列がコード配列に対して適切な位置にある構成を意味する。
【0031】
過剰発現:用語の過剰発現とは、対応する野生型細胞において通常に発現されるよりも高い濃度で、細胞において核酸又はポリペプチドを発現する又は発現させる、ことを意味する。
【0032】
配列同一性:2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、「配列同一性」というパラメーターによって記載される。本発明の目的のために、二つのアミノ酸配列(A)と(B)との間の「パーセント同一性」は、最適にアライメントされた2つの配列を、比較ウィンドウを通して比較することによって決定される。配列の前記アライメントは、例えば、Needleman-Wunschのグローバルアライメント用のアルゴリズムを使用して、良く知られた方法により実施することができる。タンパク質分析ソフトウエアは、保存的アミノ酸置換を含めて、種々の置換、欠失及びその他の改変に割り当てられる類似性の尺度を使用して類似の配列を一致させる。全体のアライメントが得られれば、アライメントされた同一のアミノ酸残基の総数を、配列(A)と(B)との間の最も長い配列に含まれる残基の総数で割ることによって、同一性のパーセント値を得ることができる。
【0033】
配列同一性は、通常は、配列解析ソフトウエアを使用して決定される。二つのアミノ酸配列を比較するにあたり、例えば、EMBL-EBIによって提供され且つwww.ebi.ac.uk/Tools/services/web/toolform.ebi?tool=emboss_needle&context=proteinで入手可能な、タンパク質のペアワイズ配列アライメントのためのツール「Emboss needle」を、デフォルト設定:(I)Matrix:BLOSUM62、(ii)Gap open:10、(iii)gap extend:0.5、(iv)output format:pair、(v)end gap penalty:false、(vi)end gap open:10、(vii)end gap extend:0.5を使用して、使用することができる。
【0034】
或いは、配列同一性はまた通常は、そのコアアライメントエンジンとしてHHalignアルゴリズム及びそのデフォルト設定を使用する、配列解析ソフトウエアのClustal Omegaを使用して決定することができる。アルゴリズムは、デフォルトの設定とともに、Soding, J. (2005)「Protein homology detection by HMM-HMM comparison」. Bioinformatics 21、951~960頁に記載されている。(www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)
【0035】
アミノ酸:本明細書で規定のアミノ酸配列は以下に示す一文字標記で表される:A、Ala、(アラニン);R、Arg、(アルギニン);N、Asn、(アスパラギン);D、ASP、(アスパラギン酸);C、Cys、(システイン);Q、Gln、(グルタミン);E、Glu、(グルタミン酸);G、Gly、(グリシン);H、His、(ヒスチジン);I、Ile、(イソロイシン);L、Leu、(ロイシン);K、Lys、(リジン);M、Met、(メチオニン);F、Phe、(フェニルアラニン);P、Pro、(プロリン); S、Ser、(セリン);T、Thr、(トレオニン);W、Trp、(トリプトファン);Y、Tyr、(チロシン);及びV、Val、(バリン)。
【0036】
「本質的に成る」とは、ポリペプチドが示されている配列番号を有し、20個以下のアミノ酸、好ましくは10個以下のアミノ酸の変化、すなわち、置換、挿入、及び/又は欠失を更に含み得る、ことを意図する。具体的には、ポリペプチドは、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個以下のアミノ酸で変化を有していてもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失を有していてもよい。置換とは、ある位置を占めているアミノ酸を異なるアミノ酸で交換することを意味し;欠失とは、ある位置を占めているアミノ酸の除去を意味し;及び挿入とは、ある位置を占めているアミノ酸の隣に及びその直後にあるアミノ酸を付加することを意味する。置換は、保存的置換とすることができる。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さなアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン及びメチオニン)の各群内である。特異的活性(specific activity)を全体として変化させないアミノ酸置換は当技術分野で知られており、例えば、H. Neurath及びR.L. Hill(1979、In、The Proteins、Academic Press、New York)によって記載されている。一般的な置換は、以下である、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Ala、Ala/Glu、及びAsp/Gly。
【0037】
或いは、アミノ酸変化は、ポリペプチドの物理化学的特性が変化するほどの性質のものである。例えば、アミノ酸変化によって、ポリペプチドの熱安定性が改善し、基質特異性が変化し、pH最適性が変わる等のことが起き得る。ポリペプチドにおける本質的なアミノ酸については、部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発(Cunningham及びWells、1989、Science 244: 1081~1085頁)等の当技術分野において知られている手順に従って同定することができる。後者の技法では、単一アラニン突然変異が分子中の残基毎に導入され、結果として得られる変異型分子を、分子の活性に対して決定的であるアミノ酸残基を同定するためにL-チロシンから4-HBAを生成する能力について試験する。Hiltonら、1996、J. Biol. Chem. 271: 4699~4708頁をも参照されたい。酵素又は他の生物学的相互作用の活性部位はまた、推定される接触部位のアミノ酸の突然変異と併せて、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識等の技法により決定される、構造の物理的解析によって決定することができる。例えば、de Vosら、1992、Science 255: 306~312頁; Smithら、1992、J. Mol. Biol. 224: 899~904頁; Wlodaverら、1992、FEBS Lett. 309: 59~64頁を参照されたい。本質的なアミノ酸の同一性はまた、関連するポリペプチドとのアライメントから推測することもできる。
【0038】
単一又は複数のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入は、Reidhaar-Olson及びSauer、1988、Science 241: 53~57頁; Bowie及びSauer、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2152~2156頁; WO95/17413;又はWO95/22625により開示されているもの等の、突然変異誘発、組換え及び/又はシャフリングに関する既知の方法を使用して、続く適切なスクリーニング手順によって、作製し且つ試験することができる。使用することのできる他の方法には、エラープロンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowmanら、1991、Biochemistry 30: 10832~10837頁;米国特許第5,223,409号; WO92/06204)及び領域指定突然変異誘発(Derbyshireら、1986、Gene 46: 145頁; Nerら、1988、DNA 7: 127頁)が含まれる。突然変異誘発/シャフリング方法を、ハイスループットの自動化スクリーニング方法と組み合わせて、宿主細胞により発現されるクローン化、突然変異誘発ポリペプチドの活性を検出することができる(Nessら、1999、Nature Biotechnology 17: 893~896頁)。活性ポリペプチドをコードする突然変異誘発DNA分子を、宿主細胞から回収し、当技術分野における標準的な方法を使用して迅速に配列決定することができる。これらの方法により、ポリペプチドにおける個々のアミノ酸残基の重要性を速やかに決定することが可能である。
【0039】
保存された:保存されたアミノ酸とは、特定の配列を参照配列とアライメントし、参照配列に示される位置に相当している特定の配列の残基は参照配列中に存在する残基と同一であることを、意図する。アライメントは、利用可能な任意の方法によって、特に、まさに上の同一性決定のために開示された方法により、より好ましくはClustal Omegaによって、行うことができる。残基の位置は、参照配列に示されている。
【0040】
精製する又は精製された:本明細書で使用される場合、用語「精製する(purify)」、「精製された(purified)」又は「精製(purification)」とは、ある分子を、その環境から、例えば単離又は分離によって、取り出すこと又は単離することを意味する。「実質的に精製された」分子は、それらに付随する他の成分を、少なくとも約60%含まない、好ましくは少なくとも約75%含まない、より好ましくは少なくとも約90%含まない。本明細書で使用される場合、これらの用語は、試料からの夾雑物の除去も指す。例えば、夾雑物の除去は、試料中のアルカン/アルケンのパーセント値の増加をもたらすことができる。例えば、アルカン/アルケンが宿主細胞中で産生される場合、そのアルカン/アルケンは、宿主細胞タンパク質の除去によって精製することができる。精製後は、試料中のアルカン/アルケンのパーセント値が増加している。用語「精製する」、「精製された」又は「精製」は、絶対的純度を必要としない。これらは相対的用語である。したがって例えば、オレフィンが宿主細胞中で産生される場合、精製されたアルカン/アルケンとは、他の細胞成分(例えば核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、又は他の炭化水素)から実質的に分離されているものである。別の例では、精製アルカン/アルケン調製物とは、アルカン/アルケンが夾雑物、例えば発酵後に存在する可能性がある夾雑物等を実質的に含んでいないものである。一部の実施形態では、試料の少なくとも約50質量%がアルカン/アルケンで構成される場合、当該アルカン/アルケンは精製されている。他の実施形態では、試料の少なくとも約60質量%、70質量%、80質量%、85質量%、90質量%、92質量%、95質量%、98質量%、若しくは99質量%又はそれ以上がアルカン/アルケンで構成される場合、オレフィンは精製されている。
【0041】
脂肪酸デカルボキシラーゼ活性:
「脂肪酸デカルボキシラーゼ活性」とは、脂肪酸からカルボン酸基の除去、特にアルデヒド中間体なしの且つ末端不飽和の導入無しの直接の除去を指す。脂肪酸デカルボキシラーゼ活性は、当業者に利用可能な任意の方法により測定することができる。より好ましくは、活性は、以下の方法により測定することができる。
【0042】
インビトロの酵素アッセイでは、適切な溶媒(エタノール又はジメチルスルホキシド)に溶かした基質(通常はC16:0遊離脂肪酸)100ナノモル、内標準物質としてC16アルカン2ナノモル、及び活性バッファー(100mMのNaClを含む50mMのTris-HCl、pH8.2)500μLと精製酵素(そのFAD補因子を含有する)5~10μg、又は総タンパク質抽出物、を含有する密封バイアル中で反応を行う。バイアルを、25℃で、2000μモル.光子.m-2.s-1での白色光(又は青色光子を含有する任意の光)存在下で、250rpmの回転アジテーター上で、インキュベートする。次いで、濃水酸化ナトリウム(10Mで10μL)をバイアルに注入して反応を止め、試料を氷上で冷却する。炭化水素を、ヘキサンで抽出し、水素炎イオン化検出器及び質量分析(GC-FID-MS)に接続されているガスクロマトグラフィーによって定量化する。
【0043】
脂肪酸デカルボキシラーゼポリペプチド:
本発明は、脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有し、本明細書中で「脂肪酸デカルボキシラーゼ」と呼ばれるが、且つ、配列番号1、配列番号5又は配列番号7と、好ましくは配列番号1と少なくとも40%の同一性を有する配列を含むか、これで本質的に構成されるか、又は構成されるポリペプチドに関するものである。
【0044】
例えば、脂肪酸デカルボキシラーゼは、配列番号1、配列番号5又は配列番号7と、好ましくは配列番号1と少なくとも42%、45%、50%又は55%の同一性を有する配列を含むか、これで本質的に構成されるか、又は構成される。
【0045】
別の態様では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、配列番号1~3及び配列番号5~14のいずれかと少なくとも55、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は99%の同一性の配列を含むか、これで本質的に構成されるか、又は構成される。
【0046】
さらなる一態様では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、配列番号1~3及び配列番号5~14のいずれかの配列を含むか、これで本質的に構成されるか、又は構成される。好ましい一実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、配列番号1、5、7~14のいずれかの、より好ましくは配列番号1、5、及び7のいずれかの配列を含むか、これで本質的に構成されるか、又は構成される。
【0047】
一実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはコンセンサス配列G-X1-L-(X)4-C-[D/E]-X2-G-[A/G]-F-X3-[K/R/S/E](配列番号4)を含み、Xは任意のアミノ酸である(配列番号26)。好ましい一実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはコンセンサス配列G-X1-L-(X)4-C-[D/E]-X2-G-[A/G]-F-X3-[K/R](配列番号4)を含み、Xは任意のアミノ酸である。
【0048】
好ましくは、X1は、P、L及びGからなる群から選択することができる。好ましくは、(X)4はより詳細には[T/A]-[T/S/C]-[P/T/A]-[G/A]とすることができる。好ましくは、X2はH、N及びRからなる群から選択することができる。好ましくは、X3は疎水性アミノ酸とすることができ、とりわけL、V、A及びFからなる群から選択することができる。
【0049】
特定の一実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、コンセンサス配列G-X1-L-(X)4-C-[D/E]-X2-G-[A/G]-F-X3-[K/R/S/E](配列番号26)を含み、ここで、
- X1は、P、L及びGからなる群から選択することができ、
- (X)4はより詳細には[T/A]-[T/S/C]-[P/T/A]-[G/A]とすることができ、
- X2はH、N及びRからなる群から選択することができ、及び
X3は疎水性アミノ酸とすることができ、とりわけL、V、A及びFからなる群から選択することができる。
【0050】
極めて特定の一実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはコンセンサス配列G-X1-L-(X)4-C-[D/E]-X2-G-[A/G]-F-X3-[K/R](配列番号4)を含み、ここで、
- X1は、P、L及びGからなる群から選択することができ、
- (X)4はより詳細には[T/A]-[T/S/C]-[P/T/A]-[G/A]とすることができ、
- X2はH、N及びRからなる群から選択することができ、及び
- X3は疎水性アミノ酸とすることができ、とりわけL、V、A及びFからなる群から選択することができる。
【0051】
別の又はさらなる好ましい実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、配列番号1を参照して保存されたアミノ酸を含む。配列番号1の参照配列に対して、配列番号1の残基C372、R391、Y406、Q426、H512及びN515のうちの1個、2個、3個、4個、5個又は全てが保存されている。配列番号1におけるこれらの位置に相当する、別の脂肪酸デカルボキシラーゼにおけるそれらの位置で相当している残基についても同じことが言えるだろう。
【0052】
別の又はさらなる好ましい実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、基質、すなわち遊離脂肪酸がその中に進入することができる疎水性トンネルを形成する領域を含む。この領域は、配列番号1の位置391から426までの残基間に位置する。したがって、位置388~428の間のアミノ酸残基の少なくとも40%は、疎水性残基であり、好ましくはV、I、L、M、F、W、C、A及びYからなる群から選択される。
【0053】
脂肪酸デカルボキシラーゼは細菌又は微細藻類由来等の任意の起源である。
【0054】
好ましくは、脂肪酸デカルボキシラーゼは、藻類、好ましくは微細藻類又はシアノバクテリア由来である。例えば、脂肪酸デカルボキシラーゼは、クロレラ(Chlorella)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、コッコミクサ(Coccomyxa)、ボルボックス(Volvox)、エクトカルプス(Ectocarpus)、エミリアニア(Emiliania)、アウレオコックス(Aureococcus)、コンドルス(Chondrus)、ガルデリア(Galdieria)又はナンノクロロプシス(Nannochloropsis)由来の脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有するGMC酸化還元酵素である。多数の微細藻類の種が知られており、例えばデータベースAlgaeBase(www.algaebase.org/)上で見出すことができる。
【0055】
特定の一実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼは、クロレラ・バリアビリス(Chlorella variabilis)、特にクロレラ・バリアビリスNC64A由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはフェオダクチラム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはコッコミクサ・サブエリプソイディア(Coccomyxa subellipsoidea)、特にコッコミクサ・サブエリプソイディアC-169由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはシオミドロ(Ectocarpus siliculosus)由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはエミリアニア・ハックスレイ(Emiliania huxleyi)由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはアウレオコックス・アノファジェフェレンス(Aureococcus anophagefferens)由来である。別の特定の実施形態では、脂肪酸デカルボキシラーゼはナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)由来である。
【0056】
好ましくは、脂肪酸デカルボキシラーゼは、長さが約750、700、650、又は600アミノ酸残基以下である。
【0057】
本発明はまた、上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼのアミノ酸配列が別のポリペプチドの領域のN末端又はC末端で融合している、ハイブリッドポリペプチド又は融合ポリペプチドにも関するものである。脂肪酸デカルボキシラーゼ活性は、ハイブリッドポリペプチド又は融合ポリペプチド中に維持されている。好ましくは、別のポリペプチドの領域は、脂肪酸デカルボキシラーゼのN末端で融合している。或いは、別のポリペプチドの領域は、脂肪酸デカルボキシラーゼのC末端で融合している。融合ポリペプチドの製造技法は当技術分野で既知であり、酵素をコードするコード配列及び別のペプチドの付加領域を連結反応させることを含み、その結果、それらがフレーム中にあり、且つ融合ポリペプチドの発現が同一のプロモーター及びターミネーターの制御下にある。融合ポリペプチドはまた、融合ポリペプチドが翻訳後に作製される、インテイン(intein)技術を使用して構築することもできる(Cooperら、1993、EMBO J. 12: 2575~2583頁; Dawsonら、1994、Science 266: 776~779頁)。
【0058】
融合ポリペプチドの付加領域を、本開示による酵素の安定性を増強するために選択して、細胞(例えば、細菌細胞又は酵母細胞)からの融合タンパク質の分泌(例えば、N末端疎水性シグナルペプチド)を促進することができるか、又は融合タンパク質を精製する助けとすることができる。より具体的には、付加領域は酵素の精製又は固定化に有用であるタグとすることができる。かかるタグは当業者に良く知られており、例えば、Hisタグ(His6)、FLAGタグ、HAタグ(インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープ)、マルトース結合タンパク質(MPB)、MYCタグ(ヒトプロトオンコプロテインMYC由来のエピトープ)、STREPタグ又はGSTタグ(小グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)である。付加領域はチオレドキシンすることができる。
【0059】
融合ポリペプチドは、酵素と付加領域との間に切断部位を更に含むことができる。融合タンパク質の分泌又は精製の際に、この部位は切断され2つのポリペプチドを放出する。切断部位の例には、それらに限定されないが、Martinら、2003、J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 3: 568~576頁; Svetinaら、2000、J. Biotechnol. 76: 245~251頁; Rasmussen-Wilsonら、1997、Appl. Environ. Microbiol. 63: 3488~3493頁; Wardら、1995、Biotechnology 13: 498~503頁;及びContrerasら、1991、Biotechnology 9: 378~381頁; Eatonら、1986、Biochemistry 25: 505~512頁; Collins-Racieら、1995、Biotechnology 13: 982~987頁; Carterら、1989、Proteins: Structure, Function, and Genetics 6: 240~248頁;及びStevens、2003、Drug Discovery World 4: 35~48頁において開示されている部位が含まれる。例えば、切断部位はTEV(タバコエッチウイルス)切断部位であってもよい。その他の切断部位は、当業者によって良く知られている。
【0060】
特定の一実施形態では、本発明は、ヒスチジンタグ、チオレドキシン、切断部位及び上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼを含むポリペプチドに関するものである(例えば、クロレラ脂肪酸デカルボキシラーゼを含むかかる構築物に関する配列番号3を参照されたい)。
【0061】
本発明は更に、上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を含む組換え核酸構築物又はベクターにも関するものである。より具体的には、核酸構築物又はベクターは、前記脂肪酸デカルボキシラーゼを発現するのに適している。また、上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を含む、核酸、組換え核酸構築物、又は組換えベクターを含む、組換え宿主細胞が提供される。
【0062】
脂肪酸デカルボキシラーゼをコードする核酸及び核酸構築物
本発明は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドに関するものである。核酸は、DNA(cDNA又はgDNA)、RNA、又は両者の混合物であってもよい。これは、一本鎖形態若しくは二本鎖形態又は両者の混合物であってもよい。これは、例えば、修飾結合、修飾プリン塩基又は修飾ピリミジン塩基、又は修飾糖を含む、修飾ヌクレオチドを含んでもよい。これは、化学合成、組換え、及び突然変異誘発を含めて、当業者に知られている任意の方法によって調製することができる。
【0063】
任意選択で、コード配列を、宿主細胞での発現向けに最適化することができる。具体的には、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼは、藻類、特に微細藻類由来であるので、酵素をコードする核酸配列を、大腸菌等の細菌宿主、酵母宿主又は更に酵素の由来元の微細藻類とは異なる微細藻類向けに最適化することができる。
【0064】
本発明はまた、1つ又は複数の制御配列に作用可能に連結された、本開示による脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物にも関するが、これは、制御配列と適合する条件下で適切な宿主細胞においてコード配列の発現を導く。ポリヌクレオチドを様々な手段で操作して、脂肪酸デカルボキシラーゼの発現を提供することができる。ベクターへのその挿入に先立ちポリヌクレオチドを操作することが、発現ベクターに応じて望ましく又は必要な場合もある。組換えDNA法を利用してポリヌクレオチドを修飾する技法は、当技術分野で良く知られている。
【0065】
制御配列は、宿主細胞よって認識される、又は本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドの発現向けのインビトロ発現系において認識される、プロモーターを含み得る。プロモーターは、脂肪酸デカルボキシラーゼの発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、変異型、切断型、及びハイブリッドプロモーターを含む宿主細胞における転写活性を示す任意のポリヌクレオチドとすることができ、且つ宿主細胞にとって相同又は異種のいずれかである、細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から獲得することができる。任意選択で、プロモーターを誘導性とすることができる。任意選択で、プロモーターは、脂肪酸デカルボキシラーゼの過剰発現を可能にする強力なプロモーターである。任意選択で、プロモーターは、強力な誘導性プロモーターである。
【0066】
細菌宿主細胞における適切なプロモーターの例は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)のアルファ-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)のアルファ-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス・リケニホルミスのペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のマルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)、枯草菌(Bacillus subtilis)のレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、枯草菌のxylA及びxylB遺伝子、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のcryIIIA遺伝子(Agaisse及びLereclus、1994、Molecular Microbiology 13: 97~107頁)、大腸菌のlacオペロン、大腸菌のtrcプロモーター(Egonら、1988、Gene 69: 301~315頁)、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)のアガラーゼ遺伝子(dagA)、及び原核生物のベータ-ラクタマーゼ遺伝子(Villa-Kamaroffら、1978、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 3727~3731頁)、並びにtacプロモーター(DeBoerら、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 21~25頁)、から得られるプロモーターである。さらなるプロモーターは、Gilbertら、「Useful proteins from recombinant bacteria」、1980、Scientific American 242: 74~94頁;及びSambrookら、1989に記載されている。タンデムプロモーターの例はWO99/43835に開示されている。
【0067】
糸状菌宿主細胞における適切なプロモーターの例は、アスペルギルス・ニヅランス(Aspergillus nidulans)のアセトアミダーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の中性アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガーの酸安定アルファ-アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー又はアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼ(glaA)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼのアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス・オリゼのトリオースリン酸イソメラーゼ、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)のトリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)のアミログルコシダーゼ(WO00/56900)、フザリウム・ベネナツムのDaria(WO00/56900)、フザリウム・ベネナツムのQuinn(WO00/56900)、リゾムコル・ミヘイ(Rhizomucor miehei)のリパーゼ、リゾムコル・ミヘイのアスパラギン酸プロテイナーゼ、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)のベータ-グルコシダーゼ、トリコデルマ・レセイのセロビオヒドラーゼI、トリコデルマ・レセイのセロビオヒドラーゼII、トリコデルマ・レセイのエンドグルカナーゼI、トリコデルマ・レセイのエンドグルカナーゼII、トリコデルマ・レセイのエンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・レセイのエンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・レセイのエンドグルカナーゼV、トリコデルマ・レセイのキシラナーゼI、トリコデルマ・レセイのキシラナーゼII、トリコデルマ・レセイのベータ-キシロシダーゼ、の遺伝子から得られたプロモーター、並びにNA2-tpiプロモーター(非翻訳リーダーがアスペルギルスのトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーにより置き換えられた、アスペルギルスの中性アルファ-アミラーゼ遺伝子由来の修飾プロモーター;非限定的な例としては、非翻訳リーダーがアスペルギルス・ニヅランス又はアスペルギルス・オリゼのトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーにより置き換えられた、アスペルギルス・ニガーの中性アルファ-アミラーゼ遺伝子由来の修飾プロモーターが挙げられる)、;並びに、それらの変異型、切断型及びハイブリッドプロモーターである。
【0068】
酵母宿主において、有用なプロモーターは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のエノラーゼ(ENO-1)、サッカロマイセス・セレビシエのガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロマイセス・セレビシエのアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロマイセス・セレビシエのトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロマイセス・セレビシエのメタロチオネイン(CUP1)、及びサッカロマイセス・セレビシエの3-ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主細胞に関する他の有用なプロモーターは、Romanosら、1992、Yeast 8: 423~488頁によって記載されている。
【0069】
誘導性プロモーターは、例えば、光強度又は高温若しくは低温に応答することができ、及び/又は特定の化合物に応答することができる。誘導性プロモーターは、例えば、ホルモン応答性プロモーター(例えば、エクジソン応答性プロモーター、例えばUS6,379,945に記載されている)、メタロチオネインプロモーター(US6,410,828)、サリチル酸、エチレン、チアミン、及び/又はBTH等の化学物質に応答することができる、感染に関連する(PR)プロモーター(US5,689,044)等、又はそれらのある組合せとすることができる。誘導性プロモーターはまた、明暗に(US8,318,482; US5,750,385; US5,639,952)、金属に(Eukaryotic Cell 2:995~1002頁(2003))又は温度(US5,447,858; Abeら、Plant Cell Physiol. 49: 625~632頁(2008); Shrodaら、Plant J. 21: 121~131頁(2000)に応答することができる。上記の例は、使用することができるプロモーターのタイプ又は特定のプロモーターに限定するものではない。プロモーター配列は、宿主生物において機能的であることを条件として、任意の生物に由来し得る。ある特定の実施形態では、誘導性プロモーターは、例えば宿種内で動作するプロモーターに誘導性を付与するために、既知の誘導性プロモーター由来の1つ又は複数の部分又はドメインを宿主細胞内で動作することができる異なるプロモーターの少なくとも一部分へと融合することによって、形成される。
【0070】
当業者であれば、様々な既知のプロモーター配列を微細藻類種向けに有効に配置し得ることを理解するであろう。例えば、微細藻類において導入遺伝子の発現を駆動するために一般に使用されるプロモーターにはカリフラワーモザイクウイルスプロモーター35S(CaMV35S)の種々のバージョンが含まれ、これは、渦鞭毛藻類及び緑藻植物類の両方で使用されてきた(Chowら、Plant Cell Rep.、18:778~780頁、1999; Jarvis及びBrown、Curr. Genet.、317~321頁、1991; Lohuis及びMiller、Plant J.、13:427~435頁、1998)。シミアンウイルス由来のSV40プロモーターも、いくつかの藻類で活性であることを報告している(Ganら、J. Appl. Phycol.、151 345~349頁、2003; Qinら、Hydrobiologia 398-399、469~472頁、1999)。クラミドモナス由来のRBCS2(リブロース二リン酸カルボキシラーゼ、小サブユニット)(Fuhrmannら、Plant J、19:353~361頁、1999)及びPsaD(光化学系I複合体の豊富なタンパク質; Fischer及びRochaix、FEBS Lett. 581:5555~5560頁、2001)のプロモーターも有用であり得る。HSP70A/RBCS2及びHSP70A/p2TUBの融合プロモーター(チューブリン)(Schrodaら、Plant J、21: 121~131頁、2000)もまた導入遺伝子の発現改善に有用であり得、この場合、HSP70Aプロモーターは、他のプロモーターの上流に配置されたとき、転写活性化因子として機能することができる。目的の遺伝子の高レベルの発現はまた、珪藻のフコキサンチン-クロロフィルa/b結合タンパク質をコードするfcp遺伝子(Falciatoreら、Mar. Biotechnol、1:239~251頁、1999; Zaslavskaiaら、J. Phycol. 36:379~386頁、2000)、又は、ユウスティグマトファイト(eustigmatophyte)ビオラキサンチン-クロロフィルa/b結合タンパク質をコードするvcp遺伝子(米国特許第8,318,482号を参照されたい)の、プロモーターの制御下で、例えば珪藻種において達成し得る。所望であれば、誘導性プロモーターによって、トランスジェニック微細藻類において遺伝子の発現を迅速且つ緊密に制御することを可能とし得る。例えば、硝酸還元酵素をコードするNR遺伝子のプロモーター領域を、かかる誘導性プロモーターとして使用することができる。NRプロモーター活性は、通常はアンモニウムによって抑制され、アンモニウムが硝酸塩によって置き換わると誘導され(Poulsen及びKroger、FEBS Lett 272:3413~3423頁、2005)、したがって、微細藻類細胞をアンモニウム/硝酸塩の存在中で増殖させると、遺伝子発現をスイッチオフ又はオンすることが可能である。US2013/0023035; US2013-0323780、US2014-0154806;及びUS2014-0363892に開示のものを含めて、種々の藻類プロモーターが知られており、使用することができる。
【0071】
制御配列は転写ターミネーターの場合もあり、これは、転写を停止するために宿主細胞に認識される。ターミネーターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3'末端に作用可能に連結される。本発明では、宿主細胞において機能的である任意のターミネーターを使用することができる。
【0072】
細菌宿主細胞にとって好ましいターミネーターは、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)のアルカリプロテアーゼ(aprH)、バチルス・リケニホルミスのアルファ-アミラーゼ(amylL)、及び大腸菌のリボソームRNA(rrnB)の遺伝子から得られる。
【0073】
糸状菌宿主細胞にとって好ましいターミネーターは、アスペルギルス・ニヅランスのアントラニレートシンターゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのアルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリゼのTAKAアミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポラムのトリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0074】
酵母宿主細胞にとって好ましいターミネーターは、サッカロマイセス・セレビシエのエノラーゼ、サッカロマイセス・セレビシエのシトクロムC(CYC1)、及びサッカロマイセス・セレビシエのグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得られる。酵母宿主細胞にとって有用な他のターミネーターは、Romanosら、1992、上掲によって記載されている。
【0075】
制御配列はまた、プロモーター下流の、及び遺伝子の発現を増加させる遺伝子のコード配列の上流の、mRNAスタビライザー領域とすることができる。
【0076】
適切なmRNAスタビライザー領域の例は、バチルス・チューリンゲンシスのcryIIIA遺伝子(WO94/25612)及び枯草菌SP82遺伝子(Hueら、1995、Journal of Bacteriology 177: 3465~3471頁)から得られる。
【0077】
制御配列はまた、リーダー、すなわち、宿主細胞による翻訳に重要であるmRNAの非翻訳領域であってもよい。リーダーは、脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドの5'末端と作用可能に連結されている。宿主細胞において機能的である任意のリーダーを使用することができる。
【0078】
糸状菌宿主細胞にとって好ましいリーダーは、アスペルギルス・オリゼのTAKAアミラーゼ及びアスペルギルス・ニヅランスのトリオースホスフェートイソメラーゼの遺伝子から得られる。
【0079】
酵母宿主細胞にとって適切なリーダーは、サッカロマイセス・セレビシエのエノラーゼ(ENO-1)、サッカロマイセス・セレビシエの3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、サッカロマイセス・セレビシエのアルファ-因子、及びサッカロマイセス・セレビシエのアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)の遺伝子から得られる。
【0080】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわち、脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドの3'末端に作用可能に連結される配列とすることができ、且つ、転写される場合、シグナルとして宿主細胞に認識されて、転写mRNAにポリアデノシン残基を添加する。宿主細胞において機能的である任意のポリアデニル化配列を使用することができる。
【0081】
糸状菌の宿主細胞にとって好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・ニヅランスのアントラニレートシンターゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのアルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリゼTAKAアミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポラムのトリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0082】
酵母宿主細胞にとって有用なポリアデニル化配列については、Guo及びSherman、1995、Mol. Cellular Biol. 15: 5983~5990頁によって記載されている。
【0083】
制御配列としてはまた、シグナルペプチドコーディング領域であってもよく、これは、脂肪酸デカルボキシラーゼのN末端に連結されたシグナルペプチドをコードし、脂肪酸デカルボキシラーゼを細胞の分泌経路に導く。ポリヌクレオチドのコード配列の5'末端は、脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするコード配列のセグメントと、翻訳リーディングフレームにおいて自然に連結している、シグナルペプチドコード配列を本質的に含有することができる。或いは、コード配列の5'末端は、コード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード配列を含有してもよい。外来性のシグナルペプチドコード配列は、コード配列がシグナルペプチドコード配列を自然には含有しない場合に必要になることがある。或いは、外来性シグナルペプチドコード配列は、ポリペプチドの分泌を増強するために、天然のシグナルペプチドコード配列に単に置き換わることができる。しかし、発現ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導く任意のシグナルペプチドコード配列を使用することができる。シグナルペプチドはまた、葉緑体トランジットペプチド、脂肪酸デカルボキシラーゼの葉緑体トランジットペプチド又は他の任意の葉緑体トランジットペプチドとすることができる。
【0084】
細菌宿主細胞にとって有効なシグナルペプチドコード配列は、バチルスNCIB 1 1837のマルトジェニックアミラーゼ、バチルス・リケニホルミスのスブチリシン、バチルス・リケニホルミスのベータ-ラクタマーゼ、バチルス・ステアロテルモフィルスのアルファ-アミラーゼ、バチルス・ステアロテルモフィルスの中性プロテアーゼ(nprT、nprS、nprM)、及び枯草菌のprsAの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード配列である。さらなるシグナルペプチドは、Simonen及びPalva、1993、Microbiological Reviews 57: 109~137頁によって記載されている。
【0085】
糸状菌宿主細胞にとって有効なシグナルペプチドコード配列は、アスペルギルス・ニガーの中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼのTAKAアミラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)のセルラーゼ、フミコラ・インソレンスのエンドグルカナーゼV、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)のリパーゼ、及びリゾムコル・ミエヘイのアスパラギン酸プロテイナーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード配列である。
【0086】
酵母宿主細胞にとって有用なシグナルペプチドは、サッカロマイセス・セレビシエのアルファ-因子及びサッカロマイセス・セレビシエのインベルターゼの遺伝子から得られる。他の有用なシグナルペプチドコード配列については、Romanosら、1992、上掲により記載されている。
【0087】
また、宿主細胞の増殖に対してポリペプチドの発現を調節する調節配列を付加することが望ましい場合もある。調節系の例としては、調節化合物の存在を含めて、化学的又は物理的刺激に応じて、遺伝子の発現をオン又はオフさせるものである。原核生物系における調節系には、lac、tac、及びtrpオペレータ系が含まれる。酵母では、ADH2系又はGAL1系を使用することができる。糸状菌では、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリゼのTAKAアルファ-アミラーゼプロモーター、及びアスペルギルス・オリゼのグルコアミラーゼプロモーターを使用することができる。調節配列のその他の例は、遺伝子増幅を可能にする調節配列である。真核生物系では、これら調節配列には、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、及び重金属で増幅されるメタロチオネイン遺伝子が含まれる。これらの場合、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは調節配列と作用可能に連結される。
【0088】
発現ベクター
本発明はまた、上に開示の核酸構築物、又は本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチド、プロモーター、並びに転写及び翻訳停止シグナルを含む組換え発現ベクターにも関するものである。様々なヌクレオチド及び制御配列を一緒に連結して、1つ又は複数の好都合な制限部位を含み得る組換え発現ベクターを製造することができ、その結果、そのような部位で、脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドの挿入又は置換が可能になる。或いは、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む核酸構築物を発現に適切なベクターに挿入することにより発現させることができる。
【0089】
発現ベクターの作製では、コード配列は、コード配列が発現に適切な制御配列と作用可能に連結されるように、ベクター中に位置している。組換え発現ベクターは、組換えDNA手順に簡便に供されることが可能であり、ポリヌクレオチドの発現をもたらすことが可能である任意のベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)とすることができる。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、ベクターを導入しようとする宿主細胞との適合性に左右される。ベクターは、直鎖状プラスミドであっても又は閉環状プラスミドであってもよい。
【0090】
ベクターは、自律的複製型ベクター、すなわち、染色体外のエンティティとして存在し、その複製が染色体複製から独立しているベクター、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、又は人工染色体であってもよい。ベクターは、自己複製を確実とするための何らかの手段を含有してもよい。或いは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製するものであってもよい。更に、単一のベクター若しくはプラスミド、又は宿主細胞のゲノムに導入しようとする全DNAを共に含有する、2つ以上のベクター若しくはプラスミド、或いはトランスポゾンを使用することができる。
【0091】
ベクターは、形質転換、形質移入、形質導入等を受けた細胞の選択を容易とする1つ又は複数の選択可能なマーカーを含有することが好ましい。選択可能なマーカーは、その産物が、殺生剤又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求株に原栄養性等をもたらす遺伝子である。
【0092】
細菌性選択可能なマーカーの例としては、バチルス・リケニホルミス若しくは枯草菌の、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、又はテトラサイクリン耐性等の抗生物質耐性を付与する、遺伝子又はマーカーである。酵母宿主細胞に適切マーカーには、それらに限定されないが、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3が含まれる。糸状菌宿主細胞において使用するための選択可能なマーカーには、それらに限定されないが、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸還元酵素)、pyrG(オロチジン-5'-リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、及びtrpC(アントラニレートシンターゼ)、並びにそれらの同等物が含まれる。アスペルギルス細胞で使用するのに好ましいのは、アスペルギルス・ニヅランス又はアスペルギルス・オリゼのamdS及びpyrG遺伝子並びにストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)の遺伝子である。
【0093】
ベクターは、宿主細胞のゲノムへのベクターの組込み、又はゲノムとは独立した細胞中でのベクターの自律複製を可能とする要素を含有することが好ましい。
【0094】
宿主細胞ゲノムへの組込みを行う場合、ゲノムへの配列の組込みは相同的又は非相同的組換えを利用することができる。或いは、ベクターは、染色体における正確な位置での宿主細胞のゲノムへの相同的組換えによる組込みを導くさらなるポリヌクレオチドを含有することができる。正確な位置で組込みの可能性を高めるために、組込み要素は、100~10,000塩基対、400~10,000塩基対及び800~10,000塩基対等の十分な数の核酸を含有している必要があり、これは、相同的組換えの確率を高めるために、対応する標的配列に対して高度の配列同一性を有する。組込み要素は、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同的である任意の配列とすることができる。更に、組込み要素は、非コード又はコードポリヌクレオチドとすることができる。他方で、ベクターは、非相同的組換えにより宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。
【0095】
自律複製に関して、ベクターは、対象の宿主細胞におけるベクターの自律的な複製を可能とする複製起点を更に含むことができる。複製起点は、細胞において機能する自律複製を媒介する任意のプラスミドレプリケータとすることができる。「複製起点」又は「プラスミドレプリケータ」という用語は、インビボでのプラスミド又はベクターの複製を可能とするポリヌクレオチドを意味する。細菌性複製起点の例は、大腸菌における複製を可能にするするプラスミドのpBR322、pUC19、pACYC177及びpACYC184の複製起点、並びにバチルスにおける複製を可能にするするプラスミドのpUB1 10、pE194、pTA1060及びpAMβ1の複製起点である。酵母宿主細胞で使用するための複製起点の例は、2ミクロン複製起点、ARS1、ARS4、ARS1及びCEN3の組合せ、並びにARS4及びCEN6の組合せである。糸状菌細胞において有用な複製起点の例は、AMA1及びANSIである(Gemsら、1991、Gene 98: 61~67頁; Cullenら、1987、Nucleic Acids Res. 15: 9163~9175頁; WO00/24883)。AMA1遺伝子の単離及び遺伝子を含むプラスミド又はベクターの構築は、WO00/24883に開示されている方法に従って達成することができる。
【0096】
本発明のポリヌクレオチドの2つ以上のコピーを宿主細胞に挿入して、ポリペプチドの産生を増加させることができる。配列の少なくとも1つのさらなるコピーを宿主細胞ゲノムに組み込むことにより、又はポリヌクレオチドと共に増幅可能な選択可能なマーカー遺伝子を含ませることにより、ポリヌクレオチドのコピーの数を増加させることが可能であり、ここで、選可能なマーカー遺伝子の増幅されたコピー、従って、それによるポリヌクレオチドのさらなるコピーを含有する細胞を、適切な選択可能な薬剤の存在中で細胞を培養することにより選択可能である。
【0097】
上記の要素を連結反応させて、本発明の組換え発現ベクターを構築するために使用される手順は、当業者に周知である(例えば、Sambrookら、1989、上掲を参照されたい)。
【0098】
宿主細胞
本発明は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼを発現する組換え宿主細胞、より具体的にはアルカン/アルケンを産生するように操作された組換え宿主細胞に関するものである。組換え宿主細胞は、内因性脂肪酸デカルボキシラーゼを発現することができるがその過剰発現を伴う(例えば、強力な異種プロモーターにより発現を制御することによって、及び/又は細胞中の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子の数を増加させることによって)。或いは、組換え宿主細胞は、本発明の異種の脂肪酸デカルボキシラーゼを発現し得る。加えて又は別の代替では、組換え宿主細胞は、脂肪酸の産生を増加するために、又は優先的脂肪酸の産生に有利に遺伝子操作されている。例えば、宿主細胞は、細菌(光合成細菌を含む)、糸状菌、酵母又は脂肪酸デカルボキシラーゼが得られる種とは異なる種に由来する微細藻類とすることができる。
【0099】
したがって、本発明は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼの産生を導く1つ又は複数の制御配列に作用可能に連結されている、本開示による脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、組換え宿主細胞にも関するものである。本開示による脂肪酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む構築物又はベクターが宿主細胞に導入され、その結果、構築物又はベクターは染色体への組込み体として、又は既述の自己複製染色体外ベクターとして維持される。
【0100】
「宿主細胞」という用語は、複製の最中に生じる突然変異により、親細胞と同一ではない親細胞のあらゆる子孫を包含する。宿主細胞の選択は、ポリペプチドをコードする遺伝子及びその供給源にかなりの程度左右されるであろう。
【0101】
宿主細胞は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼの組換え産生に有用なあらゆる細胞、例えば、原核生物又は真核生物とすることができる。
【0102】
原核生物宿主細胞は、任意のグラム陽性菌又はグラム陰性細菌とすることができる。グラム陽性菌としては、それらに限定されないが、バチルス、クロストリジウム(Clostridium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ゲオバチルス(Geobacillus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、オセアノバチルス(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)及びストレプトマイセス(Streptomyces)が挙げられる。グラム陰性菌としては、それらに限定されないが、カムピロバクター(Campylobacter)、大腸菌、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、イリオバクター(Ilyobacter)、ネイッセリア(Neisseria)、シュードモナス、サルモネラ(Salmonella)及びウレアプラズマ(Ureaplasma)が挙げられる。細菌宿主細胞は、それらに限定されないが、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリキファシエンス、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ファーマス(Bacillus firmus)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・パミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌、及びバチルス・チューリンゲンシスの細胞といった任意のバチルスの細胞とすることができる。細菌宿主細胞はまた、それらに限定されないが、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、腺疫菌(Streptococcus equi)及びストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)の細胞といった任意のストレプトコッカスの細胞とすることができる。細菌宿主細胞は更に、それらに限定されないが、ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリコロル、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、及びストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の細胞といった任意のストレプトマイセスの細胞とすることができる。特定の一実施形態では、宿主細胞はシアノバクテリアである。シアノバクテリエ類(Cyanobacteriae)には、それらに限定されないが、シネココッカス属(Synechococcus)、シネコシスティス属(Synechocystis)、アナベナ属(Anabaena)、スピルリナ属(Spirulina)の種が含まれる。
【0103】
バチルス細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang及びCohen、1979、Mol. Gen. Genet. 168: 111~115頁を参照されたい)、コンピテント細胞形質転換(例えば、Young及びSpizizen、1961、J. Bacteriol. 81: 823~829頁、又はDubnau及びDavidoff-Abelson、1971、J. Mol. Biol. 56: 209~221頁を参照されたい)、電気穿孔法(例えば、Shigekawa及びDower、1988、Biotechniques 6: 742~751頁を参照されたい)、又は接合(例えば、Koehler及びThorne、1987、J. Bacteriol. 169: 5271~5278頁を参照されたい)によって実施することができる。大腸菌細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換(例えば、Hanahan、1983、J. Mol. Biol. 166: 557~580頁を参照されたい)又は電気穿孔法(例えば、Dowerら、1988、Nucleic Acids Res. 16: 6127~6145頁を参照されたい)により実施することができる。ストレプトマイセスの細胞へのDNAの導入は、プロトプラスト形質転換、電気穿孔法(例えば、Gongら、2004、Folia Microbiol. (Praha) 49: 399~405頁を参照されたい)、接合(例えば、Mazodierら、1989、J. Bacteriol. 171: 3583~3585頁を参照されたい)、又は形質導入(例えば、Burkeら、2001、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 6289~6294頁を参照されたい)により実施することができる。シュードモナスの細胞へのDNAの導入は、電気穿孔法(例えば、Choiら、2006、J. Microbiol. Methods 64: 391~397頁を参照されたい)又は接合(例えば、Pinedo及びSmets、2005、Appl. Environ. Microbiol. 71: 51~57頁を参照されたい)により実施することができる。ストレプトコッカスの細胞へのDNAの導入は、自然応答能(natural competence)(例えば、Perry及びKuramitsu、1981、Infect. Immun. 32: 1295~1297頁を参照されたい)、プロトプラスト形質転換(例えば、Catt及びJollick、1991、Microbios 68: 189~207頁を参照されたい)、電気穿孔法(例えば、Buckleyら、1999、Appl. Environ. Microbiol. 65: 3800~3804頁を参照されたい)、又は接合(例えば、Clewell、1981、Microbiol. Rev. 45: 409~436頁を参照されたい)により実施することができる。しかし、宿主細胞にDNAを導入するための、当技術分野で知られている任意の方法を使用することができる。
【0104】
宿主細胞はまた、真核生物、例えば、哺乳動物、昆虫、植物、又は真菌細胞とすることができる。宿主細胞は、真菌細胞とすることができる。本明細書で使用する「真菌」には、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)、並びに卵菌門(Oomycota)及びあらゆる栄養胞子形成菌(Hawksworthら、In、Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi、8版、1995、CAB International, University Press、Cambridge、英国により定義されている通り)が含まれる。真菌宿主細胞は、酵母細胞とすることができる。本明細書で使用する「酵母」には、有子嚢胞子酵母(エンドミケス目(Endomycetales))、担子菌酵母、及び不完全菌類(Fungi imperfecti)(不完全酵母菌綱(Blastomycetes))に属する酵母が含まれる。酵母の分類法は、将来変わり得ることから、本発明の目的のために、酵母は、Biology and Activities of Yeast (Skinner、Passmore、及びDavenport編、Soc. App. Bacteriol. Symposium Series第9号、1980)に記載の通りに、定義するものとする。酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロマイセス、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、若しくはヤロウイア(Yarrowia)の細胞、例えば、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、サッカロマイセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・ジアスタチクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロマイセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)、又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lypolytica)の細胞とすることができる。真菌宿主細胞は、糸状菌細胞とすることができる。「糸状菌」には、真菌亜門(Eumycota)及び卵菌亜門(Hawksworthら、1995、上掲、に定義される通り)のあらゆる糸状形態が含まれる。糸状菌は、概して、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及びその他の複合多糖類から構成される菌糸壁を特徴とする。糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ビルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コプリヌス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネオカリマスチクス(Neocallimastix)、ニューロスポラ(Neurospora)、パエシロマイセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロケーテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロマイセス(Piromyces)、プレウロタス(Pleurotus)、シゾフィルム(Schizophyllum)、タラロマイセス(Talaromyces)、テルモアスクス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トラメテス(Trametes)、又はトリコデルマ(Trichoderma)の細胞とすることができる。例えば、糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニヅランス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼ、ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレジエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベッセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・サブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・サブベルミスプラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィルム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンスランジクム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トロピクム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナツム(Chrysosporium zonatum)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオルス・ヒルスツス(Coriolus hirsutus)、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クロークウェレンス(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンディ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム、フザリウム・レチクラツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナツム、フミコラ・インソレンス、フミコラ・ラヌギノサ、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲヌム(Penicillium purpurogenum)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テルレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシカラー(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レセイ、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞とすることができる。
【0105】
真菌細胞は、それ自体知られている方法で、プロトプラストの形成、プロトプラストの形質転換、及び細胞壁の再生を含む工程により形質転換することができる。アスペルギルス宿主細胞及びトリコデルマ宿主細胞を形質転換する適切な手順は、EP 238023、Yeltonら、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 1470~1474頁、及びChristensenら、1988、Bio/Technology 6: 1419~1422頁に記載されている。フザリウム種を形質転換する適切な方法は、Malardierら、1989、Gene 78: 147~156頁、及びWO96/00787に記載されている。酵母は、Becker及びGuarente、In Abelson、J.N.及びSimon、M.I.編、Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology、Methods in Enzymology、194巻、182~187頁、Academic Press, Inc.、New York; Itoら、1983、J. Bacteriol. 153: 163頁;及びHinnenら、1978、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1920頁に記載されている手順を使用して形質転換することができる。
【0106】
細胞はまた、哺乳動物細胞、例えばCOS、CHOとすることができる(US4,889,803; US5,047,335)。特定の一実施形態では、細胞は、非ヒト及び非胚性である。加えて、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼは、例えば動物による乳産物中の、非ヒトトランスジェニック動物による産物とすることができる。
【0107】
本発明の方法に適した藻類種には、例えばアクナンテス(Achnanthes)、アンフィプローラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)、ボエケロビア(Boekelovia)、ボリドモナス(Bolidomonas)、ボロジネラ(Borodinella)、ボトリディウム(Botrydium)、ボツリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスフェラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、キクロテラ(Cyclotella)、デスモデスムス(Desmodesmus)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Elipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、ユードリナ(Eudorina)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、ユースチグマトス(Eustigmatos)、フランケイア(Franceia)、フラジラリア(Fragilaria)、フラジラリオプシス(Fragilaropsis)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ゴニウム(Gonium)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハンチア(Hantzschia)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ヒメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ロボスファエラ(Lobosphaera)、ミクル・アクチニウム(Micr actinium)、ミクラステリアス(Micrasterias)、モノダス(Monodus)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナンノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス、ナビクラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、エードゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パンドリナ(Pandorina)、パラクロレラ(Parachlorella)、パリエトクロリス(Parietochloris)、パリエティキトリウム(Parietichytrium)、パスケリア(Pascheria)、パブロバ(Pavlova)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、ファイオダクチラム(Phaiodactylum)、ファガス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストルム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、シゾクラミデラ(Schizochlamydella)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、スケレトネマ(Skeletonema)、スピロギラ(Spyrogyra)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラクロレラ(Tetrachlorella)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシラ(Thalassiosira)、スラウストキトリウム(Thrautochytrium)、トリボネマ(Tribonema)、ウルバ(Ulva)、バウケリア(Vaucheria)、ビリジエラ(Viridiella)、ヴィシェリア(Vischeria)及びボルボックスの属の種等の微細藻類が含まれる。特に適切な種の非限定的な例には、例えば、アンフォラ、キートケロス、キクロテラ、シリンドロテカ、フィッツリフェラ、フラジラリア、フラジラリオプシス、ナビクラ、ニッチア、フェオダクチラム、シュードニッチア(Pseudo-nitzia)、若しくはタラシオシラの属の任意の種等の珪藻、又はユウスティグマトファイト、例えば、ユースチグマトス、モノダス、ナンノクロロプシス、若しくはヴィシェリアが含まれる。
【0108】
より具体的には、使用することのできる微細藻類には、それらに限定されないが、アクナンテス・オリエンタリス(Achnanthes orientalis)、アグメヌルム(Agmenellum)、アンフィプローラ・ヒアリン(Amphiprora hyaline)、アンフォラ・コジフェイフォルミス(Amphora cojfeiformis)、アンフォラ・コジフェイフォルミス・リネア(Amphora cojfeiformis linea)、アンフォラ・コフェイジブルミス・プンクタタ(Amphora coffeijbrmis punctata)、アンフォラ・コフェイジブルミス・タヨロリ(Amphora cojfeiformis taylori)、アンフォラ・コフェイジブルミス・テヌイス(Amphora cojfeiformis tenuis)、アンフォラ・デリカティッシマ(Amphora delicatissima)、アンフォラ・デリカティッシマ・キャピタイア(Amphora delicatissima capitaia)、アンフォラsp.(Amphora sp.)、アナハエナ(Anahaena)、アナバエナ・バリアビルス(Anabaena variabilis)、アンキストロデスルヌス(Ankistrodesrnus)、アンキストロデスルヌス・ジャルカタス(Ankistrodesrnus jalcatus)、ボエケロビア・ホオグランディ(Boekelovia hooglandii)、ボロジネラsp.(Borodinella sp.)、ボツリオコッキス・ブラウニイ(Botryococciis braunii)、ボツリオコッカス・スデイイクス(Botryococcus sudeiicus)、ブラクテオコッカス・ミノール(Bracteococcus minor)、ブラクテオコッカス・メディオヌクレタス(Bracteococcus medionucleatus)、カルテリア(Carteria)、キートケロス・グラシリス(Chaetoceros gracilis)、キートケロス・ムエレリ(Chaetoceros muelleri)、キートケロス・ムエレリ・スハサルスム(Chaetoceros muelleri suhsalsum)、キートケロスsp.(Chaetoceros sp.)、コナミドリムシ、クラミドモナス・モエブシイ(Chlamydomonase moewusi)、クラミドモナス・ニバリス(Chlamydomonas nivalis)、クラミドモナス・コダテ(Chlamydomonas caudate)、クロレラ・アニトラタ(Chlorella anitrata)、クロレラ・アンタルクティカ(Chlorella antarctica)、クロレラ・アウレオビリディス(Chlorella aureoviridis)、クロレラ・カンジダ(Chlorella Candida)、クロレラ・カプスレイト(Chlorella capsulate)、クロレラ・デシカート(Chlorella desiccate)、クロレラ・エリプソイデア(Chlorella ellipsoidea)、クロレラ・エメルソニイ(Chlorella emersonii)、クロレラ・フスカ(Chlorella fusca)、クロレラ・フスカvar.バクオレタ(Chlorella fusca var. vacuolata)、クロレラ・グルコトロファ(Chlorella glucotropha)、クロレラ・インフシオナム(Chlorella infusionum)、クロレラ・インフシオナムvar.アクトフィラ(Chlorella infusionum var. actophila)、クロレラ・インフシオナムvar.アウゼノフィラ(Chlorella infusionum auxenophila)、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)、クロレラ・ロボフォラ(Chlorella lobophora)(SAG37.88株)、クロレラ・ルテオビリアイス(Chlorella luteoviriais)、クロレラ・ルテオビリディスvar.アウレオビリディス(Chlorella luteoviridis var. aureoviridis)、クロレラ・ルテオビリディスvar.ルテスセンス(Chlorella luteoviridis var. lutescens)、クロレラ・ミニアタ(Chlorella miniata)、クロレラ・ミヌティッシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ムタビリス(Chlorella mutabilis)、クロレラ・ノクツルナ(Chlorella nocturna)、クロレラ・オヴァリス(Chlorella ovalis)、クロレラ・パルバ(Chlorella parva)、クロレラ・ファトフィリア(Chlorella photophila)、クロレラ・プリングシェイミィ(Chlorella pringsheimii)、クロレラ・プロトセコイデスvar.アシジコラ(Chlorella protothecoides var.acidicola)、クロレラ・レグラリス(Chlorella regularis)、クロレラ・レグラリスvar.ミニマ(Chlorella regularis var. minima)、クロレラ・レグラリスvar.ウンヒリカタ(Chlorella regularis var. umhricata)、クロレラ・レイシグリィ(Chlorella reisiglii)、クロレラ・サッカロフィア(Chlorella saccharophila)、クロレラ・サッカロフィアvar.エリプソイデア(Chlorella saccharophila var. ellipsoidea)、クロレラ・サリナ(Chlorella salina)、クロレラ・シンプレックス(Chlorella simplex)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラsp.(Chlorella sp.)、クロレラ・スファエリカ(Chlorella sphaerica)、クロレラ・スティグマイオフォラ(Chlorella stigmaiophora)、クロレラ・バリアビリス(Chlorella variabilis)、クロレラ・バニエリィ(Chlorella vanniellii)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・ブルガリスf.テニア(Chlorella vulgaris f. tenia)、クロレラ・ブルガリスvar.アウトトロフィカ(Chlorella vulgaris var. autotrophica)、クロレラ・ブルガリスvar.ヴィリディス(Chlorella vulgaris var.viridis)、クロレラ・ブルガリスvar.ブルガリス(Chlorella vulgaris var. vulgaris)、クロレラ・ブルガリスvar.ブルガリスf.テルティア(Chlorella vulgaris var. vulgaris f tertia)、クロレラ・ブルガリスvar.ブルガリスf.ヴィリディス(Chlorella vulgaris var. vulgaris f. viridis)、クロレラ・シャンセラ(Chlorella xanthella)、クロレラ・ゾジィンジエンシス(Chlorella zojingiensis)、クロレラ・ツレホウシオイデス(Chlorella trehouxioides)、クロレラ・ブルガリス、クロロコッカム・インフシオヌム(Chlorococcum infusionum)、クロロコッカムsp.(Chlorococcum sp.)、クロゴニウム(Chlorogonium)、クロオモナスsp.(Chroomonas sp.)、クリソスファエラsp.(Chrysosphaera sp.)、コッコミクサ・サブエリプソイディアC-169、クリコスファエラsp.(Cricosphaera sp.)、クリピヘコディニウム・コーニィ(Crypihecodinium cohnii)、クリプトモナスsp.(Cryptomonas sp.)、キクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)、キクロテラ・メネグヒニアナ(Cyclotella meneghiniana)、キクロテラsp.(Cyclotella sp.)、ドナイエラsp.(Dunaiiella sp.)、ジマリエラ・バルダウィル(Dimaliella bardawil)、ドナイエラ・ヒイオクラタ(Dunaiiella hioculata)、ドナイエラ・グラヌラテ(Dunaiiella granulate)、ドナイエラ・マリタイム(Dunaiiella maritime)、ドナイエラ・ミヌタ(Dunaiiella minuta)、ドナイエラ・パルヴァ(Dunaiiella parva)、ドナイエラ・ペイルセイ(Dunaiiella peircei)、ドナリエラ・プリモレクタ(Dunaliella primolecta)、ドナリエラ・サイナ(Dunaliella saiina)、ドナリエラ・テリコラ(Dunaliella terricola)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、ジマリエラ・ヴィリディス(Dimaliella viridis)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、エレモスファエラ・ヴィリディス(Eremosphaera viridis)、エレモスファエラsp.(Eremosphaera sp.)、エリプソイドンsp.(Ellipsoidon sp.)、ユーグレナ、フランケイアsp.(Franceia sp.)、フラジラリア・クロトネンシス(Fragilaria crotonensis)、フラジラリアsp.(Fragilaria sp.)、グレオカプサsp.(Gleocapsa sp.)、グロエオサムニオンsp.(Gloeothamnion sp.)、ヘマトコッカス・プルウィイアリス(Haematococcus plwialis)、ヒメノモナスsp.(Hymenomonas sp.)、イソクリシス・アフガルハーナ(Isochrysis affgalhana)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクル・アクチニウム、ミクル・アクチニウム、ミクロモナス(Micromonas)、ミクロモナス・プシラ(Micromonas pusilla)、モノラフィディウム・ミヌイウム(Monoraphidium minuium)、モノラフィアイウムsp.(Monoraphiaium sp.)、ナンノクロリスsp.(Nannochloris sp.)、ナンノクロロプシス・サイーナ(Nannochloropsis saiina)、ナンノクロロプシスsp.(Nannochloropsis sp.)、ナビクラ・アクセプタタ(Navicula acceptata)、ナビクラ・ヒスカンテラエ(Navicula hiskanterae)、ナビクラ・シュードテネロイデス(Navicula pseudotenelloides)、ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)、ナビクラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)、ナビクラsp.(Navicula sp.)、ネフロクロリスsp.(Nephrochloris sp.)、ネフロセルルニスsp.(Nephroselrnis sp.)、ニツスチア・コムニス(Nitschia communis)、ニッチア・アレカンヅフナ(Nitzschia alexandfjna)、ニッチア・コムニス(Nitzschia communis)、ニッチア・デイシパタ(Nitzschia dissipata)、ニッチア・フルスツルム(Nitzschia frustulum)、ニッチア・ハンツスチアナ(Nitzschia hantzschiana)、ニッチア・インコンスピクア(Nitzschia inconspicua)、ニッチア・インテルメディア(Nitzschia intermedia)、ニッチア・マイクロセファリア(Nitzschia microcephalia)、ニッチア・プシラ(Nitzschia pusilla)、ニッチア・プシラ・エリプティカ(Nitzschia pusilla elliptica)、ニッチア・プシラ・モノエンシス(Nitzschia pusilla monoensis)、ニッチア・クアヅラングラー(Nitzschia quadrangular)、ニッチアsp.(Nitzschia sp.)、ノストックsp.(Nostoc sp)、ノストック・ピムクチフォルメ(Nostoc Pimctiforme)、オクロモナスsp.(Ochromonas sp.)、オオキスティス・パルバ(Oocystis parva)、オオキスティス・プシラ(Oocystis pusilla)、オオキスティスsp.(Oocystis sp.)、オスクラトリア・リムネティカ(Oscllatoria limnetica)、オスシラトリアsp.(Oscillatoria sp.)、オスシラトリア・スボレヴィス(Oscillatoria suborevis)、オストレオコッカス(Osterococcus)、オストレオコッカス・ルチマリイニス(Osterococcus lucimariniis)、オストレオコッカス・タウリ(Osterococcus tauri)、パラクロレラ・ケッセリ(Parachlorella kessleri)、パスケリア・アシドフィラ(Pascheria acidophila)、パブロバsp.(Pavlova sp.)、ファガス(Phagus)、ファオダクチラム・トリコルヌーツルン(Phaaodactylum tricornuturn)、プノルミディウム(Pnormidium)、ピアイイモナスsp.(Piaiymonas sp.)、プレウロクリシス・カルテラ(Pleurochrysis carterae)、プレウロクリシス・デンタテ(Pleurochrysis dentate)、プレウロクリシスsp.(Pleurochrysis sp.)、プロクロロコッカス・マリナス(Prochlorococcus marinus)、プロトテカ・ウィクケルハミイ(Prototheca wickerhamii)、プロトテカ・スタグナント(Prototheca stagnant)、プロトテカ・ポルトリセンシス(Prototheca portoricensis)、プロトテカ・モイルフォルミス(Prototheca moirforrms)、プロトテカ・ゾフィ(Prototheca zopfii)、シュードクロレラ・アクアティカ(Pseudochlorella aquatica)、ピラミルノリアスsp.(Pyramirnorias sp.)、ピロボイリス(Pyroboirys)、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)、サルシノイド・クリソフィテ(Sarcinoid chrysophyte)、セネデスムス・アルマツス(Scenedesmus armatus)、シネコシスティスsp.(Scynechocystis sp.)、シネコッカス(Scynechococcus)、シゾシツリム(Schizochytrim)、スピロギラ(Spirogyra)、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、スチココッカスsp.(Stichococcus sp.)、シネココッカスsp.(Synechococcus sp.)、テトラエドロン(Tetraedron)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)、テトラセルミスsp.(Tetraselmis sp.)、テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)、タラシオシラ・ウェイッスフロギィ(Thalassiosira weissflogii)、ビリジエラ・フリデリシアナ(Viridiella fridericiana)、及びボルボックス・カルテリが、含まれる。一部の実施形態では、ナンノクロロプシス属のメンバーが、N.ガディタナ、N.グラヌラータ(N. granulata)、N.リムネティカ(N. limnetica)、N.オセアニカ(N. oceanica)、N.オクラタ(N. oculata)、及びN.サリナ(N. salina)の内から選択される。
【0109】
本発明の方法に適した藻類種には、それらに限定されないが、紅藻植物類(Rhodophyta)の属の藻類種、例えばシアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)、グラシラリア(Gracilaria)、カッパフィカス(Kappaphycus)、ポリフィリジウム(Porphyridium)、及びポルフィラ(Porphyra);車軸藻類(Charophyta)の属の藻類種、例えばクロステリウム(Closterium)及びペニウム(Penium);緑藻植物類(Chlorophyta)の属の藻類種、例えばユードリナ、ゴニウム、ヘマトコッカス、ロボスファエラ、ミクラステリアス、オストレオコッカス、パンドリナ、パラクロレラ、プラチモナス、シュードコリシスチス、セネデスムス、ウルバ、及びボルボックス;褐藻類(Phaeophyta)の属の藻類種、例えばラミナリア(Laminaria)、も含まれる。
【0110】
宿主細胞はまた、アンフィディニウム(Amphidinium)及びシンビオディニウム(Symbiodinium)等の渦鞭毛藻門(Dinophyta)の属の種の内から;ロタレラ(Lotharella)等のクロララクニオン門(Chlorarachniophyta)の属の種の内から;ユーグレナ等のユーグレナ門(Euglenozoa)の属の種の内から、選択することもできる。
【0111】
本発明によれば、特定の分枝パターン、飽和度、及び炭素鎖長を有するアルカン/アルケンを、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼを用いて、そういった特定の特徴を有する脂肪酸基質から産生することができる。したがって、目的の脂肪酸基質を産生又は過剰産生するように、脂肪酸生合成経路内の各段階を改変することができる。例えば、宿主細胞において、脂肪酸生合成経路に関与する既知の遺伝子を発現、過剰発現、又は減弱させて、所望の脂肪酸基質を産生することができる(例えば、WO08/119082、US8,183,028を参照されたい)。例示的遺伝子がWO08/119082の
図1に及びUS8,183,028(その開示が参照により本明細書に組み込まれる)の表1とcol25~30とに提供されている。
【0112】
次に、宿主細胞を、脂質の産生及び/又は脂肪酸の産生を増加させる又は導くために改変することができる。例えばランダム突然変異誘発後に、遊離脂肪酸を産生するその能力に対して又は遊離脂肪酸の特定のプロファイルに対して、改変宿主細胞を選択することができ、或いは新しい遺伝子を導入するか若しくは一部の遺伝子(遊離脂肪酸の同化に関与する遺伝子)の発現を高めることによる及び/又はその他の遺伝子を欠失させるか若しくはそれらの発現(遊離脂肪酸の異化に関与する遺伝子)を低減させることによる、遺伝子操作によって、改変宿主細胞を調製することができる。加えて、宿主細胞を、優先的脂肪酸の産生を高め且つ望まれない脂肪酸の産生を減少させるために改変することができる。
【0113】
例えば、脂質の産生のために、宿主細胞は(例えば、それらに限定されないが、藻類又は不等長毛宿主細胞)、脂質生合成において機能する、ポリペプチドをコードする1つ又は複数の非天然遺伝子を任意選択で含むことができ、これには、それらに限定されないが、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)遺伝子、グリセロホスフェートアシルトランスフェラーゼ(GPAT)遺伝子、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(デヒドロゲナーゼ)(LPAAT)遺伝子、ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)遺伝子、及び/又はモノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(MGAT)遺伝子を含めて、脂肪酸、脂肪酸誘導体、及び/又はグリセロ脂質の産生向けの酵素をコードするポリペプチドが含まれるが、それらには限定されない。
【0114】
好ましい一実施形態では、宿主細胞は、リパーゼを発現又は過剰発現するために改変されている。リパーゼは、遊離脂肪酸及びグリセロールを産生するため、アシル脂質(例えばトリグリセリド又はグリセロリン脂質又はグリセロガラクト脂質(glycerogalactolipid))を加水分解する。好ましくは、リパーゼは、広範なトリアシルグリセロール、ホスホリパーゼ及びガラクトリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素である。例としては、モルモット膵リパーゼ関連タンパク質2型、フザリウムクチナーゼ又はスタフィロコッカス・ヒイカス(Staphylococcus hyicus)リパーゼが挙げられる(Liuら、2011、PNAS 108:6905頁)。好ましい一実施形態では、宿主細胞は、細菌であり、リパーゼを発現し、好ましくは過剰発現する。従って、本発明の一つの目的は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼとリパーゼとを発現する、好ましくは過剰発現する組換え宿主細胞であり、それらの一方又は両方は、宿主細胞に対して異種である。好ましい一実施形態では、宿主細胞は細菌である。
【0115】
好ましい一実施形態では、宿主細胞は、脂肪酸の産生を増加するために、又は優先的脂肪酸の産生に有利に、チオエステラーゼの発現を発現するように、過剰発現するように又は減弱するように操作されている。好ましくは、宿主細胞は、チオエステラーゼを発現又は過剰発現するために改変されている。従って、本発明の一つの目的は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼとチオエステラーゼとを発現する、好ましくは過剰発現する組換え宿主細胞であり、それらの一方又は両方は、宿主細胞に対して異種である。好ましい一実施形態では、宿主細胞は微細藻類又はシアノバクテリアである。
【0116】
脂肪酸生合成を終了させることによって、アシル-アシルキャリアタンパク質(ACP)チオエステラーゼは、脂肪酸最終産物の長さ及び同一性を機能的に決定する(Salasら、(2002) Archives of Biochemistry and Biophysics 403: 25~34頁)。アミノ酸配列アライメントに基づいて、植物チオエステラーゼは、2つのファミリーにクラスター化することが示されたが、FatAは、18:1-ACPに対して顕著な選好を有し、18:0-ACP及び16:0-ACPに対して軽微な活性を示し、及びFatBは主に、炭素8~16個の間で異なる鎖長を有する飽和アシル-ACPを加水分解する(Voelker、In Genetic Engineering 18巻. Setlow JK.編集、New York、Plenum Press; 1996: 111~133頁; Ginalski、ら、Nucl Acids Res (2003) 31:3291~3292頁;及びJonesら、(1995) Plant Cell 7: 359~371頁)。
【0117】
チオエステラーゼは、EC 3.1.2からの酵素、より具体的には、EC 3.1.2.2(パルミトイル-CoAヒドロラーゼ)、EC 3.1.2.14(オレオイル-[アシル-キャリア-タンパク質]ヒドロラーゼ)、EC 3.1.2.18(ADP-依存性短鎖-アシル-CoAヒドロラーゼ)、EC 3.1.2.19(ADP依存性中鎖-アシル-CoAヒドロラーゼ)、EC 3.1.2.20、EC 3.1.2.21(ドデカノイル-[アシル-キャリア-タンパク質]ヒドロラーゼ)、EC 3.1.2.22(パルミトイル-タンパク質ヒドロラーゼ)からの、酵素に属する。
【0118】
チオエステラーゼの例は、WO14120829、及びWO16044779に開示されている。これらはまた、tesBによりコードされている大腸菌チオエステラーゼ(GenBank受託番号AAA24665.1を参照されたい)、ラクトバチルス・ブレビスのチオエステラーゼ(GenBank受託番号ABJ63754.1)、及びラクトバチルス・プランタラムのエステラーゼ(GenBank受託番号CCC78182.1)を含む。中鎖脂肪酸を調製するのに適した植物由来のチオエステラーゼの別の例はRadakovitsら、2011、Metabolic Engineering 13(1):89~95頁において開示されている。
【0119】
好ましい一実施形態では、チオエステラーゼは、短鎖及び中鎖脂肪酸に有利に選択される。
【0120】
本発明の特定の一態様では、脂肪酸デカルボキシラーゼの産生を促す条件下で上に規定の宿主細胞を培養する工程、並びに脂肪酸デカルボキシラーゼを回収する工程及び/又は精製する工程を含む、本発明による脂肪酸デカルボキシラーゼを製造する方法も提供される。或いは、上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードする核酸による脂肪酸デカルボキシラーゼのインビトロでの発現を含む、本発明による脂肪酸デカルボキシラーゼを製造する方法も提供される。任意選択で、方法は、脂肪酸デカルボキシラーゼを固体支持体上に固定化する工程を更に含む。
【0121】
酵素は当技術分野で知られている方法を使用して回収することができる。例えば、酵素は、それらに限定されないが、収集、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿を含めて、従来の手順により栄養培地から回収することができる。
【0122】
酵素は、それらに限定されないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、調製用等電点電気泳動)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE、又は抽出(例えば、Protein Purification、Janson及びRyden編、VCH Publisher、New York、1989を参照されたい)を含む当技術分野で知られている種々の手順により精製して、実質的に純粋なポリペプチドを入手することができる。代替の一態様では、酵素は回収されるのではなく、むしろ、酵素を発現している本発明の宿主細胞が、酵素の供給源として使用される。
【0123】
アルカン/アルケンを製造するための使用
本発明はまた、脂肪酸からアルカン/アルケンを製造するための、上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼ、又は脂肪酸デカルボキシラーゼを含む固体支持体、又は、核酸、組換え核酸構築物若しくは上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を含む組換えベクターを含む組換え宿主細胞の使用にも関するものである。
【0124】
脂肪酸基質
アルカン/アルケンは、脂肪酸から、本発明による酵素によって製造される。特に、脂肪酸は、脂肪族鎖又は分枝鎖及びカルボキシル酸基を含む遊離脂肪酸である。脂肪酸は飽和でも不飽和でもよい。脂肪酸は、モノ不飽和であっても多価不飽和であってもよい。脂肪酸は2から36個の炭素原子を含むことができる。全体として、脂肪酸は、脂肪族鎖の長さに基づいて4つの群に分類される:(1)短鎖脂肪酸(SCFA)は、6個未満の炭素の脂肪族テールを有する脂肪酸である(例えば、酪酸):(2)中鎖脂肪酸(MCFA)は、6~12個の炭素の脂肪族テールを有する脂肪酸であり、中鎖トリグリセリドに見出すことができる:(3)長鎖脂肪酸(LCFA)は、脂肪族テール13~21を有する脂肪酸である:(4)超長鎖脂肪酸(VLCFA)は、22個の炭素より長い脂肪族テールを有する脂肪酸である。本発明は、MCFA及びLCFA向けに、より具体的にLCFA向けに非常に適切である。好ましい一実施形態では、脂肪酸は、8又は10から24個の炭素原子、好ましくは12から22個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、脂肪酸基質は、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21又はC22脂肪酸、好ましくはC10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21又はC22 脂肪酸、なおより好ましくはC12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21又はC22 脂肪酸である。より好ましくは、脂肪酸は、8から20個の炭素原子、好ましくは12から18個の炭素原子、なおより好ましくは14から18個の炭素原子、更により好ましくは16から又は17個の炭素原子を含む。特定の一態様では、脂肪酸基質は、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20又はC21脂肪酸、好ましくはC12、C13、C14、C15、C16、C17、C18又はC19脂肪酸、なおより好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18脂肪酸である。脂肪族鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、更には環状部分を含んでもよい。
【0125】
特定の一実施形態では、脂肪酸は分枝鎖を含む。分枝鎖は、C1~C3アルキル基による、好ましくはメチルによる置換を有する主鎖を含んでもよい。具体的には、脂肪酸は、フィタン酸及びプリスタン酸等のテルペノイド脂肪酸であってもよい。
【0126】
また、脂肪酸の脂肪族鎖は、1個又は複数の基によって、例えば、ヒドロキシル、C1~C3アルコール、C1~C3アシル、C1~C3エステル、C1~C3アミン、アミノ基、C1~C3アミド、カルボキシル、アルデヒド、エポキシ、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、C1~C3チオアルキル、C1~C3イミン、ニトリル、C1~C3スルホン又はC1~C3スルホキシド等の硫黄基、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C3ハロゲノアルキルによって置換されていてもよく、或いは、O、N若しくはS等のヘテロ原子、アセチレン基、ジビニルエーテル基等のエーテル、又はオキソ基によって中断されていてもよい。好ましくは、脂肪酸の脂肪族鎖は、ヒドロキシル、カルボキシル、エポキシ、ハロゲン、チオール、又はニトリル等の1個又は複数の基によって置換されていてもよく、或いは、S原子、アセチレン基、又はジビニルエーテル基等のエーテルによって中断されていてもよい。好ましくは、脂肪族鎖は、特に脂肪族鎖の末端で、1つの基で置換されている。非常に特定の一実施形態では、脂肪酸の脂肪族鎖は、特に脂肪族鎖の末端で、ヒドロキシルで置換されている。
【0127】
別の実施形態では、脂肪酸の脂肪族鎖は非置換である。
【0128】
脂肪酸基質は、単離された若しくは精製された脂肪酸であってもよく、又は前述の脂肪酸の混合物であってもよい。
【0129】
「遊離脂肪酸」とは、脂肪酸がカルボキシル基を保有するその形態にある、すなわち、脂肪酸のエステル形態又はその他の誘導体ではない、形態を指すことを意図する。
【0130】
アルカン/アルケン
本発明のアルカン/アルケンは対応する脂肪酸の脱カルボキシル化によって得られる。したがって、アルカンは飽和脂肪酸から及びアルケンは不飽和脂肪酸からから得られる。本発明の酵素は、末端不飽和を導入しない。それ故、好ましい一実施形態では、得られたアルケンは末端不飽和を示さない。
【0131】
本発明の使用及び方法によって得られるアルカン/アルケンは、8又は10から24個の炭素原子を、好ましくは12から22個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルカン/アルケンは、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21又はC22アルカン/アルケン、好ましくはC10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21又はC22アルカン/アルケン、なおより好ましくはC12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21又はC22アルカン/アルケンである。より好ましくは、アルカン/アルケンは、8から20個の炭素原子、好ましくは12から18個の炭素原子、なおより好ましくは14から18個の炭素原子、更により好ましくは16から17個の炭素原子を含む。特定の一態様では、アルカン/アルケンは、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20又はC21アルカン/アルケン、好ましくはC12、C13、C14、C15、C16、C17、C18又はC19アルカン/アルケン、なおより好ましくはC12、C14、C16、C17又はC18アルカン/アルケンである。脂肪族/炭化水素鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、更には環状部分を含んでもよい。
【0132】
特定の一実施形態では、アルカン/アルケンは分枝鎖を含む。分枝鎖は、C1~C3アルキル基による、好ましくはメチルによる置換を有する主鎖を含んでもよい。具体的には、脂肪酸は、フィタン及びプリスタン等のテルペノイドアルカンであってもよい。
【0133】
また、脂肪酸の脂肪族鎖は、上で詳述の1個又は複数の基によって置換又は中断されていてもよいので、脱カルボキシル化後の対応するアルカン/アルケンはまた、1個又は複数の基によって置換又は中断されていてもよい。したがって、アルカン/アルケンは、1個又は複数の基によって、例えば、ヒドロキシル、C1~C3アルコール、C1~C3アシル、C1~C3エステル、C1~C3アミン、アミノ基、C1~C3アミド、カルボキシル、アルデヒド、エポキシ、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、C1~C3チオアルキル、C1~C3イミン、ニトリル、C1~C3スルホン又はC1~C3スルホキシド等の硫黄基、チオール、ニトロ、シアノ、C1~C3ハロゲノアルキルによって置換されていてもよく、或いは、O、N若しくはS等のヘテロ原子、アセチレン基、ジビニルエーテル基等のエーテル、又はオキソ基によって中断されていてもよい。好ましくは、アルカン/アルケンは、ヒドロキシル、カルボキシル、エポキシ、ハロゲン、チオール、又はニトリル等の1個又は複数の基によって置換されていてもよく、或いは、S原子、アセチレン基、又はジビニルエーテル基等のエーテルによって中断されていてもよい。好ましくは、アルカン/アルケンは、特に脂肪族鎖の末端で、1つの基で置換されている。非常に特定の一実施形態では、アルカン/アルケンは、特に脂肪族鎖の末端で、ヒドロキシルで置換されてあり、そしてアルコールである。
【0134】
アルカン/アルケンは、単離された若しくは精製されたアルカン/アルケンであってもよく、又は前述のアルカン/アルケンの混合物であってもよい。極めて特定の一実施形態では、特に大腸菌等の細菌において発現する場合、酵素によって、C13~C17アルカン及びアルケンを産生することができる。
【0135】
無細胞系でのアルカン/アルケンの製造
第1の態様では、本発明は、脂肪酸、特に遊離脂肪酸からのアルカン/アルケンを製造するための上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼの使用に関するものである。したがって、本発明はアルカン/アルケンを製造する方法に関するものであり、ここで、上で規定の脂肪酸デカルボキシラーゼを脂肪酸又は脂肪酸の混合物と接触させ且つ光に曝露し、それによって脂肪酸又は脂肪酸の混合物を対応するアルカン/アルケンへ変換する。脂肪酸又は脂肪酸の混合物は、精製された形態であっても、原組成物/原産物中に存在してもよい。脂肪酸デカルボキシラーゼは、精製されていても、単離されていても、タンパク質抽出物中に、特に総タンパク質抽出物中に存在していてもよい。一般に、FAD補因子は、複合体として脂肪酸デカルボキシラーゼと共に既に存在している。任意選択で、FAD補因子は脂肪酸デカルボキシラーゼと共に添加することができる。
【0136】
酵素は、その活性のために青色光子を含有する光への曝露を必要とする。好ましい一実施形態では、青色光は、400から520nmの、好ましくは450nmから495nmの、特に約450nmの波長を有する。提供される光の量は、例えば10から3000μモル.光子.m-2.s-1まで、好ましくは約2000μモル.光子.m-2.s-1とすることができる。
【0137】
しかし、光は300~540nmの間のより広い波長の範囲を有することができる。実際、本発明者らは、FAD、酵素の補因子は、300から540nmの波長範囲の光を吸収することが可能であること、及び、酵素はこの範囲で脂肪酸を脱カルボキシル化することができるはずであることを観察した。実際、FADの吸収スペクトルは300~540nmの波長範囲の間に含まれる。
【0138】
酵素はまた、補因子としてFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)を必要とし、これは通常、微細藻類の抽出物から、又は異種発現から精製された酵素に結合している。
【0139】
方法は、アルカン/アルケンを回収するさらなる工程を含む場合もある。アルカン/アルケンは、当業者に利用可能な任意の方法によって抽出又は精製することができる。アルカン/アルケンを有機相に回収することができる。例えば、アルカン/アルケンは有機溶媒で、例えばヘキサンで抽出することができる。しかし、アルカン/アルケンはまた凝縮によって培養のガス相から回収する可能性もある。
【0140】
組換え宿主細胞系におけるアルカン/アルケンの産生
本発明は、脂肪酸から、特に遊離脂肪酸からアルカン/アルケンを産生するための上に記載の組換え主細胞の使用に関するものである。本発明また脂肪酸からアルカン/アルケンを製造する方法にも関し、ここで、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼを発現するのに有効な条件下で、上に記載の組換え宿主細胞を培養する。
【0141】
したがって、本発明は、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼを発現するのに有効な条件下で培養された上に記載の組換え宿主細胞を含む細胞培養物に関するものである。
【0142】
任意選択で、脂肪酸を含む培地で組換え宿主細胞を培養することができる。或いは又は加えて、組換え宿主細胞は脂肪酸を産生する又は含む。
【0143】
方法では、組換え宿主細胞は、バイオマスを、好ましくは脂質に富む、特に脂肪酸に富むバイオマスを得るための条件中で、好ましくは培養される。次に、第2の工程において、アルカン/アルケンへの脂肪酸の変換が開始される。例えば、脂肪酸デカルボキシラーゼが既に組換え宿主細胞中で発現されている場合、第2の工程は、脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を可能にするため、青色光子を含有する光を組換え宿主細胞に当てることによって開始することができる。実際、本発明者らは、アルカンの産生は、光、特にその波長によって制御することができることを示した。青色光(>400nm及び<530nm)はアルカンを産生することができるが、一方、赤色光(>600nm及び<700nm)はアルカンを産生することができない。そして、本発明の方法において、アルカン産生は、光によってインビボで調節することができる。或いは、脂肪酸デカルボキシラーゼの発現が誘導性プロモーターによって制御されている場合、脂肪酸デカルボキシラーゼの発現を誘導し且つ光子(300~540nm)に供すことによって、第2の工程を開始することができる。更に、光強度(光子束)が酵素活性を調節する。光子束が高いと酵素活性は高まるが、一方、光子束が低いと酵素活性は低下する。
【0144】
或いは、方法は、好ましくは脂質に富む、特に脂肪酸に富むバイオマスの産生と、アルカン/アルケンへの脂肪酸の変換とを連動して促進する条件中で、組換え宿主細胞を培養することを含み得る。
【0145】
「富む」とは、バイオマスが、乾燥バイオマスで、脂質、特に脂肪酸の質量で少なくとも20、30、40、50、60又は70%を含むこと、を意図する。
【0146】
方法は、組換え宿主細胞から、又は培養培地からのアルカン/アルケンを単離又は回収するさらなる工程を含む場合もある。
【0147】
アルカン/アルケンは、当業者に利用可能な任意の方法によって抽出又は精製することができる。例えば、アルカン/アルケンは有機溶媒で、例えばヘキサンで抽出することができる。アルカン/アルケンを有機相に回収することができる。
【0148】
例示的分離プロセスの一つは、2相(二相性(bi-phasic))分離プロセスである。このプロセスは、アルカン/アルケンを産生するのに十分な条件下で遺伝子操作宿主細胞を発酵させる工程、アルカン/アルケンが有機相に集合することを可能とする工程、及びその有機相を水性発酵ブロスから分離する工程を含む。この方法は、バッチ式発酵設定でも連続発酵設定でも実施することができる。
【0149】
アルカン/アルケンを製造するための本発明による方法及び使用は、バイオ燃料、化学において、特に化粧品及び他の分野において有用である材料、例えば、プラスチック、樹脂、ファイバー、エラストマー、医薬品、潤滑剤又はゲル剤、を調製するために使用することができる。
【0150】
本明細書に記載のアルケンは、燃料として使用するか又はこれに変換することができる。当業者であれば、燃料の用途に応じて、様々なアルケンを製造及び使用することができることを理解するであろう。例えば、分枝アルケンは、寒冷気候での使用を意図した自動車燃料に望ましいであろう。加えて、本明細書に記載のアルケンは、燃料製造のための原料として使用する場合、当業者は、オレフィン原料の特徴は製造される燃料の特徴に影響を与えることを理解するであろう。したがって、燃料製品の特徴は、原料として使用するための特定のアルケンを製造することによって選択することができる。
【0151】
本明細書に記載の方法を使用して、所望の燃料品質を有するバイオ燃料をアルケンから製造することができる。生物学的に製造されるアルケンは、ジェット燃料、ディーゼル、又はガソリンとして使用することができるバイオ燃料の新しい供給源である。アルケンを使用して作製されたいくつかのバイオ燃料は、再生可能な供給源から製造されたものではなく、新しい組成物である。
【0152】
脂肪酸計量
本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼは、遊離脂肪酸の定量化にも有用であり、遊離脂肪酸の定量化用のキットに含めることができる。具体的には、本発明は試料中の脂肪酸を定量化するための方法に関するものであり、脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、アルカン/アルケンを回収する工程、及びアルカン/アルケンを定量化する工程を含む。試料は、食品試料又は生物学的試料、特に、血液、血清、血漿、尿等等の生物学的流体試料とすることができる。生成するアルカン/アルケンを有機溶媒で抽出し、特に、水素炎イオン化検出器及び質量分析に接続されているガスクロマトグラフィー(GC-FID-MS)によって定量化することができる。
【0153】
特定の一実施形態では、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼはまた、全脂肪酸の定量化にも有用であり、全脂肪酸の定量化用のキットに含めることができる。具体的には、本発明は試料中の脂肪酸を定量化するための方法に関するものであり、脂肪酸を遊離脂肪酸へ変換するのに適した条件でリパーゼと試料を接触させる工程及び上に詳述の通り遊離脂肪酸を定量化する工程を含む。したがって、方法は、脂肪酸を遊離脂肪酸へ変換するのに適した条件でリパーゼと試料を接触させる工程、脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼを接触させる工程、アルカン/アルケンを回収する工程、及びアルカン/アルケンを定量化する工程を含んでよい。生成するアルカン/アルケンを有機溶媒で抽出し、定量化することができる。
【0154】
脂肪酸デカルボキシラーゼは、脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するとき、副産物としてCO2を生成する。そして、代替的な方法では、本発明は試料中の脂肪酸を定量化するための方法に関するものであり、脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、CO2を回収する工程、及びCO2を定量化する工程を含む。CO2の量は、当業者に知られている任意の方法、例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)によって測定することができる。
【0155】
さらなる一態様では、本発明者らは、脂肪酸デカルボキシラーゼの蛍光は、基質濃度の関数として変化することを観察した。したがって、蛍光の変化によって、試料中の脂肪酸を定量化するさらなる手段が提供される。そして、さらなる代替的な方法では、本発明は、試料中の脂肪酸を定量化するための方法に関するものであり、脂肪酸をアルカン/アルケンへと変換するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼと試料を接触させる工程、及び脂肪酸デカルボキシラーゼによって放出される蛍光を測定する工程を含む。好ましくは、蛍光は500から700の波長で測定し、動態は約540nmで好ましくは行われる。
【0156】
当然のことながら、試料中の脂肪酸を定量化する方法は、上で詳述したいくつかの方法を組み合わせることができ、例えば、アルカン/アルケンとCO2とを定量化する工程、アルカン/アルケンを定量化する工程と酵素蛍光を測定する工程、CO2を定量化する工程と酵素蛍光を測定する工程、又は3つのパラメーターの組合せである。
【0157】
脂肪酸の計量は、疾患の診断、例えば肝臓疾患(WO15089102)、糖尿病及び子癇(WO13170369)の診断に有用である。
【0158】
脂肪酸の除去
本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼはまた、組成物から、例えば、食物性油から、特に精製食物性油から、遊離脂肪酸を除去するのにも有用であり得る。実際、本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼの使用によって、任意の化学的プロセスなしで脂肪酸の脱カルボキシル化を可能にすることができる。したがって、本発明はまた、脂肪酸の脱カルボキシル化のための、上で規定のポリペプチドの使用に関するものであり、それによって、脂肪酸を除去する、又は、組成物の遊離脂肪酸を脱カルボキシル化するのに適した条件で本発明の脂肪酸デカルボキシラーゼを組成物と接触させる工程を含む、組成物から遊離脂肪酸を除去する方法に関するものである。
【0159】
本発明の更なる態様及び利点を以下の実験セクションに開示するが、これは、例示であって、本出願の範囲を限定するものではないとみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【
図1】クロレラホモジネートにおけるアルカンシンターゼ活性の検出の図である。クロレラ・バリアビリスNC64Aの細胞ホモジネートを過重水素化(D31)パルミチン酸と密閉バイアル中で一晩インキュベートした。ガス相の炭化水素を固相マイクロ抽出(SPME)によって抽出し、質量分析(GC-MS)に接続されているガスクロマトグラフィーにより分析した。m/z=243.5±0.5に相当するイオンを抽出した。 上のパネル:標識ペンタデカン産物に相当するクロマトグラムの部分。対照:30分間95℃で予備加熱したホモジネート。下のパネル:標識ペンタデカンの質量スペクトル。
【
図2】アルカンシンターゼの部分的精製に関する手順及び精製の種々の工程におけるタンパク質プロファイルの分析に関する手順の概要の図である。アルカンシンターゼ活性のアッセイは細胞ホモジネートについて、
図1に記載の細胞画分及び溶出画分で行った。タンパク質電気泳動は、変性条件下で10%ゲルアクリルアミド上で行った。1:ゲル濾過後、2:fast flow Q後;3及び4:Mono Q後(プロテオミクス解析用に送られた画分)。
【
図3】3種の精製のそれぞれの後にプロテオミクス解析によって検出されたタンパク質の数及び共通である10個のタンパク質のリストの図である。3種の独立した精製を行った(A、B、C)。
【
図4】クロレラのアルカンシンターゼは、葉緑体-予測GMC酸化還元酵素であることを示す図である。データは、PFAMとProtparamとから取得した。アミノ酸:654;分子量:69070Da、理論PI:9.075。Predalgoによって葉緑体に位置すると予測された。
【
図5】クロレラGMC酸化還元酵素を発現する大腸菌細胞のタンパク質の分析の図である。このクロレラ酵素は、C末端Hisタグ化タンパク質として発現させた。左: SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって見られた総タンパク質プロファイル。右:抗His抗体を使用するウエスタンブロット。C:空のベクターを有する対照株; GMC:クロレラGMC酸化還元酵素を発現する株。
【
図6】クロレラGMC酸化還元酵素を発現する大腸菌細胞における炭化水素内容物の分析の図である。細胞を鹸化し、炭化水素内容物をSPME及びGCMSによって分析した。脂肪酸基質はまったく添加されていなかったことが強調されるべきである。上のパネル:炭化水素に相当するクロマトグラムの領域。下のパネル:検出されたアルカンの質量スペクトル。対照:空のベクターを有する株;GMC:クロレラGMC酸化還元酵素を発現する株。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【
図7】GMC酸化還元酵素を発現するトランスジェニック微細藻類中の炭化水素の分析の図である。炭化水素については、葉緑体ゲノムがGMC酸化還元酵素をコードする遺伝子で形質転換されている、微細藻類コナミドリムシの株においてGC-MSによって分析した。上のパネル:炭化水素ピークを示すGCクロマトグラムの部分。下のパネル:炭化水素の定量化。WT:野生型株。GMC OE:クロレラGMC酸化還元酵素を発現する株。
【
図8A】GMC酸化還元酵素ファミリーの多重アライメント(A)の図である。多重アライメントは、クロレラ(配列番号1)、クラミドモナス(配列番号5)、コッコミクサ(配列番号9)、ボルボックス(配列番号10)、エクトカルプス(配列番号11)、エミリアナ(配列番号12)、アウレオコックス(配列番号13)、フェオダクチラム(配列番号7)、ナンノクロロプシス(配列番号14)からの配列を使用して、Clustal O (1.2.1)で作った。
【
図8B-1】GMC酸化還元酵素ファミリーの系統樹(B)の図である。無根系統樹は、種々の起源(近隣結合法)から一セットの56のGMC酸化還元酵素タンパク質配列を使用して作った。クロレラGMC酸化還元酵素に囲みを付した。
【
図9】組換えクロレラGMC酸化還元酵素の精製画分の図である。酵素は、N末端Hisタグ化タンパク質として大腸菌で発現させ且つNiカラムで精製した。F1~F4は溶出画分である。L:分子量ラダー。
【
図10】種々の脂肪酸でのクロレラGMC酸化還元酵素の相対活性の図である。精製された組換え酵素は、白色光の下で種々の鎖長の脂肪酸とインキュベートし、生成物をGC-MSによって分析した。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【
図11】アルカンシンターゼにより触媒される脱カルボキシル化の副産物としてのCO
2の図である。1-
13C-パルミテートを精製組換え酵素とインキュベートした際に放出される
13CO
2の相対的定量。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【
図12】クロレラGMC酸化還元酵素は、テルペン酸(terpenoic acid)をメチルアルカン及びアルケンに変換する図である。精製組換え酵素を、白色光の下でフィタン酸と共にインキュベートし、そして生成物をGC-MSによって分析した。
【
図13】クロレラGMC酸化還元酵素は、ヒドロキシ脂肪酸をアルカノールに変換する図である。精製組換え酵素を、白色光の下でヒドロキシパルミテートと共にインキュベートし、そして生成物をGC-MSによって分析した。
【
図14】リパーゼと組み合わせたGMC酸化還元酵素を使用する脂肪酸からのアルカンのインビトロ産生の図である。精製クロレラGMC還元酵素及びリゾプス(Rhizopus)のリパーゼをグリセリルトリヘプタデカノエートと共にインキュベートし、そして生成物をGC-MSで分析した。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【
図15】クロレラGMC酸化還元酵素の吸収スペクトルの図である。
【
図16】藻類GMC酸化還元酵素の光依存性の図である。a、クロレラGMC酸化還元酵素の吸光度スペクトル及び作用スペクトル。b、1-
13C-パルミテートをこのクロレラ酵素とインキュベートした際の、メンブレンインレット質量分析による
13CO
2放出のモニタリング。反応混合物を850μモル光子m
-2s
-1での連続光(青色又は赤色)条件に曝露した。c、光強度によるクロレラGMC酸化還元酵素活性の依存性。d、30μモル光子m
-2s
-1での青色光、次いで赤色光での培養中のクラミドモナス細胞における総炭化水素の変化。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【
図17】クロレラアルカンシンターゼを発現し、且つ暗又は明(1000μモル光子m
-2s
-1の、400から800nmの光子を含有する白色光)中で培養された大腸菌細胞中の炭化水素の定量化の図である。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。Nd、検出されず。
【
図18】基質の存在下でのGMC酸化還元酵素の蛍光に関する動態の図である。励起は450nm±5、発光は540nmであった。種々の濃度のパルミチン酸を使用した。
【
図19】クラミドモナスGMC酸化還元酵素又はフェオダクチラムGMC酸化還元酵素を発現する大腸菌細胞中の炭化水素の定量化の図である。細胞をメチル基転移し、炭化水素含有量を溶媒抽出及びGCMSにより分析した。脂肪酸基質はまったく添加されていなかったことが強調されるべきである。空のベクターで形質転換した大腸菌細胞においてアルカンは検出されなかった。Tr、痕跡量。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【
図20】藻類GMC酸化還元酵素及びリパーゼを共発現する大腸菌細胞中の炭化水素の定量化の図である。細胞をメチル基転移し、炭化水素含有量を溶媒抽出及びGCMSにより分析した。脂肪酸基質はまったく添加されていなかったことが強調されるべきである。陰性対照:空のベクターで形質転換された大腸菌細胞。Nd、検出されず。Cr:コナミドリムシ。Cv:クロレラ・バリアビリス。リパーゼは、細菌スタフィロコッカス・ヒイカス(Uniprot P04635)由来である。定量化データは平均±s.d.(n=3)を示す。
【0161】
【0162】
【実施例】
【0163】
ここで、本発明者らは、モデル微細藻類のクロレラ・バリアビリスNC64Aにおいてアルカン及びアルケンの合成を触媒する酵素を同定した。酵素を、基質として重水素標識したパルミチン酸及びペンタデカン産物を捕捉するために固相マイクロ抽出を使用して部分的に精製した。グルコース-メタノール-コリン酸化還元酵素ファミリーに属する候補タンパク質を、3種の独立した部分精製からなるプロテオミクス解析により同定した。大腸菌におけるこのクロレラ候補遺伝子の異種発現によって13から17個の炭素の直鎖状炭化水素の産生がもたらされ、単一の酵素が燃料様アルカン及びアルケンを産生するのに十分であることが示された。クロレラアルカンシンターゼは、補因子としてFADを使用する69kDaの葉緑体-予測タンパク質である。インビトロアッセイが示すところによれば、この酵素はC12~C22脂肪酸を使用して、アルカン及びアルケンを形成することができる。この酵素の活性は、400から540nmまでの光子の存在に厳密に依存することが判明したが、300から400nmまででも機能し得た。したがって、これらの結果によって、グルコース-メタノール-コリン酸化還元酵素ファミリーの触媒レパートリーに関する現在の知識が広がり、微生物におけるアルカン及びアルケンの再生可能な且つ光駆動の産生に新たな道が開かれる。
【0164】
結果
クロレラ・バリアビリスNC64A由来のアルカンシンターゼ活性の部分精製
本発明者らは、クロレラ・バリアビリスNC64A含めて、種々の微細藻類がC15~C17アルカン及びアルケンを合成する能力を持っていることを示した。同一の研究において、本発明者らは、クロレラ培養に外因的に添加した重水素化パルミチン酸がアルカン及びアルケンに変換され得ることも示した。微細藻類におけるアルカン合成の酵素的経路を同定するために、本発明者らは、基質として重水素標識されたパルミチン酸の使用に基づいた従来の精製アプローチを選択した。
【0165】
第1の工程によって、酵素活性はクロレラ細胞ホモジネート中で測定可能であることを確認した。重水素化パルミチン酸を細胞ホモジネートに添加し、密封バイアル中で一晩インキュベートした。予期されるペンタデカン産物を固相マイクロ抽出(SPME)によって抽出し、質量分析に接続されているガスクロマトグラフィー(GC-MS)により分析した。標識ペンタデカンに相当する12.03分のピークが、インタクトな細胞上で検出し得たが、このピークは予熱した対照ホモジネートには存在しなかった(
図1)。
【0166】
したがって、クロレラホモジネートはアルカン合成酵素活性を有することが、この実験により示された。ほとんどの生物で同定されたアルカン合成経路は、アルデヒド中間体を有することから、本発明者らは、標識C16アルデヒドを使用して同一の実験を行ったが、標識ペンタデカンを検出することはできなかった。
【0167】
したがって、標識パルミチン酸を使用して、全ての精製手順において活性をアッセイした(
図2)。細胞を50000gで遠心分離すると、ほとんどの活性は上清画分に見出された。しかし、105000gでの二回目の遠心分離の後、活性はほとんどペレット(ミクロソーム画分)中に見い出された。活性を可溶化するために様々な界面活性剤を試験し、そして最も効率的ものはトリトンX100であることが判明した。
【0168】
次いで、いくつかの予備試験を行い、その後に、更に活性を精製した。フェレドキシン、フェレドキシン還元酵素、NADP、NADPH及びATPのようないくつかの補因子を様々な組合せで可溶化ミクロソーム画分上に添加した。それらのいずれも活性を高めることは認められず、精製した画分に関するアッセイにそれらを添加しなかった。本発明者らはまた、3日で、4℃で保存した可溶化ミクロソーム画分の活性は90%減少することを観察し、全精製プロセスは、数日以内で行う必要があることを示した。
【0169】
可溶化された活性の部分精製には、分取カラムSuperdex 200によるゲル濾過の第1の工程、次いで、2つの陰イオン交換カラム、fast flow Q、より分解能のある最終のmono Qが関与した。ほとんどの画分を、先に記載のアッセイを使用してアルカンシンターゼ活性についてアッセイした。最も活性な画分のタンパク質内容物を、変性条件下アクリルアミドゲル上での電気泳動により分析した(
図2)。
【0170】
3種の独立した部分精製を行った。最終精製工程の後に最も高い活性を有する画分をプロテオミクス解析向けに送った。少なくとも2のペプチドカウントのカットオフを取ることによって、3種の精製の間で10種のタンパク質のみが共通であった(
図3)。これらのタンパク質のうち9つが、特徴がはっきりした酵素に対して明確なホモログであった。多様な範囲の活性を有する一群の酵素に属する唯一の候補は、グルコース-メタノール-コリン(GMC)酸化還元酵素ファミリーに由来する推定酵素であった。この候補はまた、最も高いペプチドカウントを有する一つでもあった。したがって、異種発現用にこれを選択した。
【0171】
クロレラアルカンシンターゼはGMC酸化還元酵素ファミリーのメンバーである
クロレラGMC酸化還元酵素をコードする遺伝子は、公開されているESTによって完全にカバーされなかった。クロレラからの全RNA抽出物を使用して約2kbのcDNAをクローニングした。これは、69kDaタンパク質(
図4)をコードし、且つ微細藻類配列適合ソフトウエアPredalgoによって葉緑体に局在すると予測された。N末端葉緑体標的シグナルは50残基長であると予測される。TMHMMソフトウエアによれば、膜貫通ドメインはないことが予測された。このcDNAは、C末端Hisタグ化タンパク質として大腸菌において発現した(
図5)。組換えタンパク質の存在をウエスタンブロットによってチェックした。GMC酸化還元酵素を発現する大腸菌細胞の揮発性産物のSPME及びGC-MSによる分析によって、13から17個の炭素の長鎖アルカンの存在が示されたが、これらは、空ベクターで形質転換された大腸菌細胞に不在であった(
図6)。したがって、これらの結果によって、クロレラGMC酸化還元酵素の発現は、大腸菌においてアルカン及びアルケンを産生するのに十分であったことが、実証された。更に、その葉緑体ゲノムがこのクロレラ酵素をコードするcDNAで形質転換されたクラミドモナス株において、ヘプタデセン含有量における増加が注目され、ヘプタデカンも出現した(
図7)。したがって、この結果は、このクロレラ酵素は葉緑体内で機能的であることを示している。
【0172】
クロレラGMC酸化還元酵素又は他の種由来の生化学的に特徴付けられた他のGMC酸化還元酵素を使用するBlastP検索を公共のデータベースで行って、様々なGMC酸化還元酵素タンパク質の配列を取得した。藻類の配列の多重アライメントによって、C372、R391、Y406、Q426、H512及びN515等の一部のクロレラ残基が他の藻類において高度に保存されていることが示され(
図8A)、そして無根系統樹を作成した(
図8B)。Blast検索によって、ほとんどの生物においてGMC酸化還元酵素は、単一の遺伝子ファミリーであることが示された。クロレラ・バリアビリスNC64Aでは、クロレラアルカンシンターゼは唯一のGMC酸化還元酵素である。系統樹が示したところによれば、GMC酸化還元酵素ファミリーは少なくとも7つの群から成り、これらのうち1つには生化学的に特徴付けられたメンバーがまだまったくない。興味深いことに、褐色の大型藻類(エクトカルプス)と、赤色の大型藻類(コンドルス)と、種々の起源由来の微細藻類(トレボウキシア藻綱(Trebouxiophyceae)クロレラ、緑藻綱クラミドモナス及びボルボックス、コッコミクサ科(Coccomyxaceae)コッコミクサ、真正眼点藻綱(Eustigmatophycae)ナンノクロロプシス、コッコリツス藻綱(Coccolithophyceae)エミリアナ、珪藻フェオダクチラム)との配列が、一緒にグループ化された。このクロレラ酵素は、GMC酸化還元酵素のこの藻類群において機能的に特徴付けられた最初のものである。
【0173】
クロレラアルカンシンターゼは、様々な脂肪酸に作用する光駆動型フォトエンザイム(photoenzyme)である
その活性を更に特徴付けるために、クロレラGMC酸化還元酵素をHisタグ化タンパク質として大腸菌で発現させ、ニッケルカラムで精製した(
図9)。精製組換え体は、C12からC22の炭素の範囲にある様々な飽和遊離脂肪酸に活性であることが見出されたが(
図10)、このことによって、大腸菌内において形成された脂肪酸の広いプロファイルが説明される(
図6)。
【0174】
反応の副産物を決定するために、本発明者らは、カルボキシル基を
13Cで標識したパルミチン酸を使用した。本発明者らは、
13CO
2の産生を観察し、酵素が副産物としてCO
2を放出すること、すなわち、酵素は脂肪酸デカルボキシラーゼであることを実証した(
図11)。
【0175】
アルカンシンターゼ活性を更に特徴付けるために、置換脂肪酸を基質として使用した。フィタン酸(3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカン酸)が分枝アルカンに変換されることが見出されたが、このことは、アルカンシンターゼはテルペン酸に活性であることを示している(
図12)。16-OHパルミチン酸を基質として使用することでペンタデカノールの産生が起こり、このことによって、脂肪族アルコールを産生するためにクロレラGMC酸化還元酵素を使用可能であることが示されている(
図13)。
【0176】
インビトロで、アルカンシンターゼは、直接基質としてTAG(トリアシルグリセロール)を使用することはできない(
図14)。しかし、脂肪酸を放出するTAG(トリアシルグリセロール)リパーゼの存在下で、炭化水素の産生が観察される。この観察によって、GMC酸化還元酵素は、脂質に富む油や廃棄物から炭化水素を製造するために使用可能であることが示されている。
【0177】
図15に、FADは、320から540nmの光子を吸収することができることが示されている。これは、酵素の作用スペクトルと一致した(
図16A)。
【0178】
アルカンシンターゼが、光駆動型酵素(フォトエンザイム)又は光活性化酵素であるかどうかを判定するために、反応中にCO
2の産生をモニターした。酵素の活性は、光子の存在により駆動され、光を切ると即座に停止する(
図16B)。ペンタデカンの産生は光強度に対して線形に増加し、このことにより、クロレラGMC酸化還元酵素はフォトエンザイムであることが確認される(
図16C)。コナミドリムシで観察されるように、藻類アルカンシンターゼの光依存性を、光の質(青色又は赤色)を使用して藻類細胞の炭化水素産生を調節するために使用可能である(
図16D) 。微細藻類は、青色の光子の存在中で炭化水素を産生し、一方、赤色で産生停止し、アルカン含有量が減少する。アルカンフォトシンターゼ(photosynthase)炭化水素を発現する大腸菌細胞において、アルカン及びアルケンの最適産生向けの時間を選択する誘導因子としても、光を使用し得る(
図17)。
【0179】
基質濃度は、酵素の蛍光を調節する。
酵素の光依存性に対して、本発明者らは、酵素の蛍光が、基質の有無にかかわらず、酵素の活性中に変化可能なのではないかと疑う。この目的のために、本発明者らは、蛍光スペクトルを取り及び動態を作成した(
図18)。本発明者らは、蛍光及び動態が基質濃度と共に劇的に変化することを観察した。脂肪酸濃度を決定するために、蛍光パラメーターを使用することは有用であり得る。
【0180】
クラミドモナス及びフェオダクチラム由来のGMC酸化還元酵素もアルカンシンターゼである
他の藻類GMC酸化還元酵素も脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を有し、したがってアルカンシンターゼであるという可能性を調査するために、別の緑藻綱(コナミドリムシ)及び珪藻(フェオダクチラム・トリコルヌーツム)のGMC酸化還元酵素を大腸菌で発現させ、細菌細胞の総脂肪酸及び炭化水素をGC-MS-FIDにより分析した。コナミドリムシ酵素によって、ペンタデカン及びヘプタデカン並びにモノ不飽和類似体の大腸菌細胞における形成が起こった(
図19)。同じ化合物は、より少ない量ではあるが、フェオダクチラム酵素により形成された。
【0181】
遊離脂肪酸は、膜構造に有害であるので、遊離脂肪酸プールは生細胞中で通常は小さい。利用可能な遊離脂肪酸の量を増加させることによりアルカン及びアルケンの産生が大腸菌で増強され得るかどうかを調べるために、細菌性リパーゼ(Uniprot P04635)を、クロレラ又はクラミドモナスのアルカンシンターゼと共発現させた(
図20)。これは、GMC酸化還元酵素単独を発現する大腸菌株と比較して、ほとんどの炭化水素が2~3倍増加するという結果となった。
【0182】
考察
アルカン及びアルケンは、バイオ燃料製造にとって興味深い化合物であり、アルケンは、化学産業にとって特に興味深い。本研究では、部分精製及びプロテオミクス解析を使用して、本発明者らは、クロレラから微細藻類アルカンシンターゼを同定することができた。これは、GMC酸化還元酵素ファミリーのメンバーである。大腸菌で発現させた場合、このタンパク質は単独で、アルカン及びアルケンを生じることができる。本酵素の主な関心は、遊離脂肪酸の正式な脱カルボキシル化を触媒して飽和炭化水素を形成するその明白な能力、及びこれがフォトエンザイムであるという事実である。メカニズム及びおそらく補因子についての要求性は、細菌のシトクロムP450アルカンシンターゼと異なることが予想される。したがって、クロレラGMC酸化還元酵素によって、アルカン合成酵素のプールが拡大し、生物工学的応用に新たな可能性が提供される。
【0183】
GMC酸化還元酵素の藻類のグループ
GMC酸化還元酵素ファミリーは、1992年に最初に記載された。種々の生物由来のグルコースデヒドロゲナーゼ、コリンデヒドロゲナーゼ、グルコース酸化酵素及びメタノール酸化酵素(それぞれ、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、大腸菌、アスペルギルス・ニガー、及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))からのタンパク質配列と比較すると、類似性は低いが保存されたモチーフが示された。これらの酵素は、そのアミノ末端近くにフラビン酵素部位及び標準のADP結合βαβフォールドを含有する。構造研究によって、これらのタンパク質は、N末端FAD結合ドメイン及びC末端基質結合ドメインで構成されていることが確認されている。FAD結合ドメインは、ジヌクレオチド結合タンパク質にとって典型的であるアルファベータフォールドを形成するが、一方、基質結合ドメインはアルファヘリックスで囲まれたベータシートからなる。これらのタンパク質の一般的なトポロジーは保存されているが、挿入された構造要素はコリンデヒドロゲナーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼの両方にある。
【0184】
GMC酸化還元酵素ファミリーのメンバーは多様な反応、大部分はアルコールのアルデヒドへの酸化を触媒する。このファミリーには、グルコース酸化酵素及びメタノール酸化酵素、脂肪族アルコール酸化酵素、コリンデヒドロゲナーゼが含まれる。しかし、ファミリーにはまた、ヒドロキシマンデロニトリルに作用するアーモンド由来のリアーゼが含まれ、このことは、ファミリーが非常に多様な触媒メカニズムを保有することを示している。活性の光に対する厳密な依存性は、組換え酵素と関連することが見出されたFAD補因子によって媒介される可能性がある。FADの存在は、全てのGMC酸化還元酵素と同じく、このクロレラ酵素はFAD結合ドメインを有する、という事実と一致した(
図15)。
【0185】
興味深いことに、長鎖又は超長鎖のアルカン及びアルケンを産生することが示された全ての微細藻類種は、クロレラGMC酸化還元酵素のホモログを有するが、検出可能なアルカン及びアルケンがない唯一の種(オストレオコッカス・タウリ)にはGMCホモログがない。したがって、GMC酸化還元酵素の藻類グループのメンバーは全て、アルカンシンターゼである可能性が非常に高いと思われる。このアイデアは、コナミドリムシ及びフェオダクチラム・トリコルヌーツム由来のGMC酸化酵素は、脂肪酸デカルボキシラーゼ活性を保有するという、実証によって支持される(
図19)。
【0186】
微細藻類アルカンシンターゼの可能性のある生物工学的用途
微細藻類は脂質製造向けの有望なプラットフォームであるので、アルカン合成のための微細藻類経路の発見は、生物工学的に興味深いが、バイオマスの回収、油の抽出及びバイオディーゼルへの変換は非常に高コストである。したがって、培養培地から容易に回収可能な燃料様揮発性アルカンを微細藻類において製造することで、こういった問題を回避することができる可能性がある。
【0187】
インビトロで、このクロレラ酵素は、中鎖を含めて、様々な脂肪酸に作用することができる(
図10)。酵素が遊離脂肪酸に作用するという事実は、脂肪アルデヒドに作用する植物、シアノバクテリア又は昆虫の酵素に比べて明らかな利点である。これらの中間体は、多くの内因性還元酵素によって分解し得るからである(Rodriguez & Atsumi、2014、Metabolic Engineering、25、227~37頁)。また、遊離脂肪酸は様々なタイプのリパーゼによって生成することができ、これらのうちあるものは高度に活性であり、様々な脂質基質を使用することができる(Andersson、1996、Biochim Biophys Acta、1302、236~240頁)。リパーゼの共発現により、遊離脂肪酸のアベイラビリティが高まると、アルカン産生が増強される(
図20)。大腸菌において、クロレラGMC酸化還元酵素を発現させると、いくらかのトリデカンが産生される(
図6)。このアルカンは、藻類で観察されるものよりも短く、酵素の新規な基質(ミリスチン酸)が大腸菌に存在することに起因している。したがって、特に、短~中鎖脂肪酸を蓄積する微生物においてリパーゼと共に使用する場合、大量の中~短鎖アルカンを生成するのに、微細藻類GMC酸化還元酵素が使用可能である。
【0188】
アルカンシンターゼはフォトエンザイムであるので、光を使用して、インビトロ及びインビボでアルカン産生を細かく調節することができる。第1に、320~540からの光子の存在又は不在を使用して、アルカン産生のモーメントを選択することができる。第2に、光強度を使用して、アルカン合成の速度を増減させることができる。本明細書では連続光の下で実験を行ったが、フラッシュ等の他の条件が炭化水素合成に関して興味深い可能性があり得る。
【0189】
最終的には、産物(アルカン及びアルケン)、副産物(CO2)、及び酵素の蛍光を、試料中の遊離脂肪酸(又は、リパーゼと組み合わせて使用される場合、全脂肪酸)の濃度を推定するために使用することができる。
【0190】
材料及び方法
株及び培養条件
コナミドリムシ野生型株CC124(nit1 nit2; mt-)及びCC125 (nit1 nit2; 415 mt+)を使用した。クロレラ・バリアビリスNC64AはJ.L. Van Etten(University of Nebraska)の研究室からであった。全ての株は、25℃でのインキュベーションシェーカー(Infors HT社)において三角フラスコ中で、2%(v/v)CO2で富化した空気中で、140rpmで撹拌して、クラミドモナスについては120μmol光子m-2s-1での光強度で、クロレラについては70μmol光子m-2s-1での光強度で、ルーチン的に増殖させた。クラミドモナス及びクロレラを、トリス-酢酸-リン酸(TAP)培地及び最小培地で培養した。細胞をMultisizerTM 3(Coulter社)を使用してルーチン的にカウントした。
【0191】
天然アルカンシンターゼの精製
高速タンパク質液体クロマトグラフィーシステム(AKTApurifier 900、GE Healthcare社)を使用した。アルカンシンターゼ活性のアッセイは、次のセクションで説明されている。クロレラ細胞(200.109)を6000gで1時間遠心分離し、細胞ペレットを液体窒素中で凍結し、マイナス80℃で1時間保存した。細胞を、20mMトリス(pH8.0)、100mMのNaCl及び1mMのEDTA(バッファーA)を含有する溶解バッファーに再懸濁し、2kbarの圧力でCell Disruption(Constant社)を使用して破壊した。ホモジネートを50000gで40分間2回遠心分離した。上清を採取し、105000gで90分間遠心分離した。生成したミクロソームペレットを、2.7mMのトリトンX100を添加したバッファーA中で撹拌しながら4℃で一晩再懸濁した。超遠心分離を105000gで90分間行い、上清をゲル濾過カラムにロードした。最も活性な画分をプールし、30kDaのAmicon(登録商標)限外濾過フィルターを使用して濃縮し、バッファーを、20mMトリス(pH8.0)、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.05%(w/v)のトリトンX100バッファー(バッファーB)へと希釈することによって変更した。第2の精製工程には、陰イオン交換カラム(HiTrap Q. FF、GE Healthcare社)が関与した。タンパク質を、バッファー20mMトリス(pH8.0)、1MのNaCl、1mMのEDTA及び0.05%(w/v)のトリトンX100(バッファーC)の勾配(0~100%)を使用して溶出した。最も活性な画分をプールし、30kDaのAmicon(登録商標)限外濾過フィルターを使用して濃縮し、バッファーをバッファーBへと希釈することによって変更した。第3の精製工程には、強陰イオン交換カラム(Mono Q Gl、GE Healthcare社)が関与した。タンパク質をバッファーCの勾配を使用して溶出した。最も活性な画分をプロテオミクス解析のために保持した。
【0192】
タンパク質精製のための活性のアッセイ
酵素アッセイを、セプタム付きキャップを使用して密封された透明なガラスバイアル中で行った。反応混合物は、各精製画分500μLと、200μMの過重水素化パルミチン酸(エタノール中の10mMストック溶液)と、内部標準としてヘキサデカン(クロロホルム中の4.5mMストック溶液)45nmolとを含有した。バイアルを、120rpmで25℃で白色光(強度120μmol光子m-2s-1)の下で一晩撹拌した。反応を、注射器を使用してセプタムを通して10MのNaOH10μLの添加により停止させた。生成した炭化水素を、バイアルのヘッドスペースにおいて、ホルダーに搭載した固相マイクロ抽出(SPME)ファイバー(DVB PDMS fused silica、65μmダブルポーラー、Supelco社)をインキュベートすることによって分析した。室温で15分間インキュベートした後、SPMEファイバーをGC-MSの注入器に即座に挿入し、250℃で脱離した。下に記載の通りGC-MS分析を実施した。
【0193】
プロテオミクス解析
前述の通り、タンパク質調製、ゲル内消化及びnanoLC-MS/MS分析を行った。手短に述べれば、Laemmliバッファー中に可溶化させたタンパク質を、NuPAGEゲル(Invitrogen社)4~12%(w/v)の上部にスタックし、R-250 Coomassie Blue(BioRad社)で染色した。次いで、ゲルバンドを切り出し、トリプシン(Promega社)を使用してタンパク質をインゲル消化した。生成するペプチドを、120分の勾配を使用してタンデム質量分析に接続されているナノ液体クロマトグラフィー(LTQ-Orbitrap Velos Proに接続されているUltimate 3000、Thermo Scientific社)で分析した。ペプチド及びタンパク質を、Uniprot(クロレラ・バリアビリス分類、2016年9月版)、古典的夾雑物(ホームメード)及びMascot(2.5.1版)を使用する対応するリバースデータベースに対する同時検索を通して同定した。Prolineソフトウエアを使用して結果をフィルターし(ランク1ペプチドの保持、リバースデータ戦略を用いることによってペプチドスコアに基づき算出したペプチド同定FDR < 1%、ペプチド長≧ 7、及び同定されたタンパク質グループ当たり最低限1つの特異的ペプチド(specific peptide))、その後に、様々な試料からのタンパク質グループの編集、グループ化及び比較を行った。最低限の特異スペクトルカウント(specific spectral count)2を有すると同定されたタンパク質のみをさらなる比較のために考慮した。
【0194】
タンパク質分析及びウエスタンブロット
タンパク質抽出物はLDS NuPAGEローディングダイ最終1×を添加し、95℃で10分間沸騰させ、MOPSランニングバッファーを含む還元(w/v)SDS-PAGE10%を使用して分離し、硝酸銀で染色した。Hisタグ化タンパク質の検出のために、SDS-PAGEによって分離したポリペプチドを、セミドライブロッティングシステムを使用してニトロセルロース膜上へと移し、ウサギ抗His抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗ウサギ抗体及びECL基質(Amersham Biosciences社)を使用して、Hisタグを明らかにした。
【0195】
アルカンシンターゼcDNAのクローニング及び組換えアルカンシンターゼの精製
全RNAをフェノール-クロロホルム法によりクロレラ細胞から抽出し、SuperScript(登録商標)III逆転写酵素を使用してcDNAを合成した。GMC酸化還元酵素をコードするcDNAを、推定5'及び3'UTRプライマーフォワード: ATGGCGTCAATTACATCGCG(配列番号24);プライマーリバースTCATGCTGCCACTGTCGC(配列番号25)、で設計されたプライマーを使用して増幅し、TOPO XLプラスミドにクローニングし、配列決定した。プライマーフォワード5'-CTG TAC TTC CAA TCA GCC AGC GCA GTT GAA GAT ATT C-3'(配列番号27)及びリバースプライマー:5'-TAT CCA CCT TTA CTG TTA TCA TGC TGC AAC GGT TGC CGG TG-3'(配列番号28)を使用して、大腸菌発現向けコドン最適化合成遺伝子から、アルカンシンターゼの残基62~654に相当する配列を増幅し、pLIC07ベクターにクローニングし、これによって、ATG開始コドンの下流に、6Hisタグ化チオレドキシン用カセットコード及びタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位を導入した。組換えアルカンシンターゼを、TB培地中で37℃でOD0.9まで培養したBL21-CodonPlus (DE3)-RIL大腸菌細胞で産生させた。この段階で、温度を17℃に低下させ、細胞を更に18時間増殖させた。細胞を遠心分離(4000g、10分間)で回収し、ペレットを凍結した。細胞ペレットを4℃で30分間、溶解バッファーに再懸濁した(細胞1リットルについて溶解バッファー10ml、OD=lである)。溶解バッファーは、300mMのNaCl、50mMのトリスpH8.0、10mMのイミダゾール、グリセロール5%(w/v)、リゾチーム0.25mgmL-1、20mMのMgSO4、DNアーゼ10μg mL-1、及び抗プロテアーゼを含有した。再懸濁後、細胞を超音波処理によって溶解し、8000gで30分間遠心分離した。上清を採取し、酵素をFPLCによって精製した。第1の精製を、ニッケルカラムで行い、300mMのNaCl、50mMのトリスpH8.0、500mMイミダゾール、グリセロール5%(w/v)を含有する第二のバッファー50%(v/v)を使用する段階的勾配により、タンパク質を溶出した。タバコエッチウイルスプロテアーゼ(1mg毎10mgの総タンパク質で)を使用してHisタグ及びチオレドキシンを切断した。透析をTEVの存在下で一晩行って、バッファーを、300mMのNaCl、50mMのトリスpH8.0、10mMのイミダゾール、グリセロール5%(w/v)を含有するバッファーに変更した。ニッケルカラムを使用して第2のFPLCクロマトグラフィーを行って、Hisタグ化チオレドキシンからタンパク質を分離した。最後の精製工程は、ゲル濾過カラムとした(Superdex200 26/600mm GE Healthcare社)。この工程のため使用したバッファーは、150mMのNaCl、10mMのトリスpH8.0、グリセロール5%(w/v)を含有していた。タンパク質を、限外濾過フィルター50kDaのAmicon(登録商標)を使用して濃縮し、グリセロール20%(w/v)を添加した後、-80℃で保存した。
【0196】
大腸菌における、クロレラ・バリアビリス、コナミドリムシ及びフェオダクチラム・トリコルヌーツムのGMC酸化還元酵素の発現
コナミドリムシ及びフェオダクチラム・トリコルヌーツムのアルカンシンターゼを、コナミドリムシのプライマーフォワード、5'-TAC TTC CAA TCA ATG ATG CTG GGT CCG AAA ACC-3'(配列番号29)及びプライマーリバース、5'-TAT CCA CCT TTA CTG TTC TAC TAA ACT GCA ACC GGC TGA CG-3'(配列番号30)を使用して、大腸菌向けコドン最適化合成遺伝子から増幅した。フェオダクチラム・トリコルヌーツムについては、フォワードプライマー5'-TAC TTC CAA TCA ATG AAA AAA AGC CTG CGT AGC-3'(配列番号31)、リバースプライマー5'-TAT CCA CCT TTA CTG TTC TAC TAT GCG CTT GCG GTG-3'(配列番号32)とした。遺伝子をpLIC07ベクターにクローニングし、これによって、ATG開始コドンの下流に、6Hisタグ化チオレドキシン用カセットコード及びタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位を導入した。クロレラ・バリアビリスNC64A、コナミドリムシ又はフェオダクチラム・トリコルヌーツム由来のGMC酸化酵素を発現する大腸菌株を、37℃で180rpmで撹拌し、100μモル.光子.m-2.s-1の光で増殖させた。ODが0.6に達したとき、500μMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドのを添加した。次いで、細胞を37℃にて24時間増殖させ、回収し、5%硫酸を添加したメタノールを使用してメチル基転移を行い、炭化水素をヘキサンで抽出し、前述の通りGC-MSによって分析した。
【0197】
GMC酸化還元酵素及びリパーゼの大腸菌における共発現
クロレラ・バリアビリスNC64A(又はコナミドリムシ)由来のGMC酸化酵素を発現するベクター及び/又は細菌スタフィロコッカス・ヒイカス由来のリパーゼを発現するベクターで形質転換された大腸菌株を、TB培地中で37℃で増殖させた。1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(共発現のためにアラビノース0.2%を添加した)で発現を誘導した。次いで、細胞を25℃で100μモル.光子.m-2.s-1で1晩及び2000μモル.光子.m-2.s-1で6時間増殖させた。細胞を回収し(OD=5で4ml)、5%硫酸を添加したメタノールを使用してメチル基転移を行い、炭化水素を前述の通りSPME及びGC-MSによって分析した。
【0198】
精製酵素による酵素アッセイ
全てのアッセイを、セプタム付きキャップを使用して密封された透明なガラスバイアル中で行った。最適pHを、Teorell Stenhagenユニバーサルバッファー(33mMのクエン酸一水和物、33mMのリン酸、100mMのNaOH、16.7mMのホウ酸、1N HClで調整したpH 8.5)を使用して決定した。他のアッセイを、100mMのトリスHCl pH8.5、100mMのNaCl中で行った。反応混合物(500μL)は、典型的には、160nMの精製酵素(2.5mgml
-1のストック溶液)及び400μMの基質(エタノール中10mMのストック溶液)を含有した。一部のアッセイでは、アルカンシンターゼと共にリパーゼを使用した。この場合、基質をトリアシルグリセロールとした。全体としては、200rpmで、2000μmol光子m
-2s
-1でのLED製の白色光下で試料を15分間振とうした。インキュベーション後、試料を95℃で15分間加熱して酵素反応を停止させた。試料を冷却し、内標準物質(ヘキサデカン)を添加した(クロロホルム中の4.5mMストック溶液から45nmol)。次いで、NaOHを反応混合物に添加し(10Mのストック溶液から10μL)、試料を5分間ボルテックス混合した。次いで、ヘキサン250μLを添加し、試料を5分間ボルテックス混合して、アルカン及びアルケンを抽出した。ヘキサン相を遠心分離によって収集し、GC-MS-FIDで分析した。GC-MSへのヘッドスペース100μLの直接注入によって、分析を行った。
図11において、1-
13C-パルミテートへの活性を、メンブレンインレット質量分析を使用して
13CO
2放出によってモニターした。850μmol光子m
-2s
-1の強度で、青色(460nmでのピーク、25nmのFWHM)、又は赤色(635nmでのピーク、15nmのFWHM)のいずれかで、CBT-120 LED(Luminous、Billerica社)によって、照明を提供した。
【0199】
アルカンシンターゼの蛍光
UV-Vis分光法(Secomam社製のUVIKON XS分光光度計)で酵素を分析した。吸光度スペクトルについては、100mMのトリスpH8.5及び100mMのNaClを含有するバッファーに溶かした精製酵素で測定した。蛍光スペクトル(500~700nm)を、10nmのスリットで450nmでの励起フラックスを使用してVarian Cary Eclipseで測定した。動態については、10nmのスリットで450nmでの励起フラックスを使用して540nmで蛍光を測定した。
【0200】
メンブレンインレット質量分析(MIMS)
12CO2(m/z=44)及び13CO2(m/z=45)のオンラインの測定を、質量分析(model Prima B、Thermo Scientific社)を使用してモニターした。メンブレンインレットシステムは温度調節酸素電極チャンバー(Hansa Tech社)から成り、これは、チャンバーの底部を密封しているガス透過性の薄いテフロン膜(0.001インチ厚、YSI Inc.社)を介して質量分析計の真空ラインに連結している。分析に際しては、2.5mgmL-1での精製酵素20μL及びジメチルスルホキシド中10mMでの基質(13C-パルミチン酸)30μLを、100mMのNaClを含有する、100mMのトリス/酢酸/ホウ酸バッファーpH6.5 1.45mLに添加し、測定チャンバーに入れ、25℃で温度調節し、連続的に撹拌した。媒体に溶かしたガスは拡散しテフロン膜を通り抜けて質量分析計のイオン源に達した。
【0201】
フォトバイオリアクターでの培養
コナミドリムシCC124(nit1 nit2; mt-)及びアルカンシンターゼ遺伝子を過剰発現するコナミドリムシを、タービドスタットとして作動する1リットルのフォトバイオリアクター(BIOSTAT Aplus、Sartorius Stedim Biotech社)で最小培地(Harris、1989)中で培養した。バイオマスプローブ(Excellprobe、Exner社)を使用して連続的にA880を測定し、新鮮な培地の注入によって培養物を一定のA880に維持した。pHをKOH(0.2N)又はHCl(0.2N)の注入によって一定値7に維持した。培養物を、金属プロペラを使用して撹拌した(250rpm)。ガス流量を、0.5Lmin-1に調整した。2%(v/v)CO2で富化した空気を、質量流量計(EL flow、Bronkhorst社)を使用して作製した。フォトバイオリアクターの周囲に放射状に配置した8本の蛍光管(Osram Dulux L 18 W)により白色光を供給した。本発明者らは、それぞれ青色光と赤色光を提供するために、青色フィルター(363 special medium blue、Lee filters社、米国)、赤フィルター(113 magenta、Lee filters社、米国)を使用した。両方の光を同一強度とした(35μmol光子m-2s-1)。
【0202】
メチル基転移
脂肪酸と一緒に炭化水素を定量化するために、全細胞のメチル基転移を使用した。手短に述べると、細胞ペレット(クラミドモナスについては1億個の細胞、クロレラ・バリアビリスNC64Aについては2億個の細胞及び20mL OD-1単位の大腸菌)は、5%(v/v)の硫酸を含むメタノール含有溶液2mLを添加し、そしてトリヘプタデカノエート25μg(クロロホルム中のストック溶液2.5mgmL-1から)及び16:0-アルカン5μg(クロロホルム中のストック溶液1mgmL-1から)を内標準物質として含めた。試料を密封したガラス管中85℃で90分間インキュベートした。冷却後、FAME及び炭化水素を、ヘキサン250μL及び0.9%NaCl (w/v)500μLを添加することにより抽出した。試料を10分間ボルテックス混合し、3000gで2分間での遠心分離によって水性相から有機相を分離した。ヘキサン相を回収し、1μlを、GC-MS/FIDに注入した。
【0203】
GC-MS分析
質量分析(GC-MS)に接続されているガスクロマトグラフィーによる分析を、これは固相マイクロ抽出(SPME)の後に行ったが、以下の設定を使用して実施した。Thermo-Fischer DSQII質量分析計(単純四重極(simple quadrupole))に接続されているThermo-Fischerガスクロマトグラフィーフォーカスシリーズを、DB-5-HT(Agilent社)無極性キャピラリーカラム(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.1μm)と共に使用した。ヘリウムキャリアガスを1mLmin-1とした。オーブン温度を、50℃で最初の2分ホールドタイム、次いで50℃から300℃まで10℃min-1で上昇、及び300℃で最後の3分のホールドタイムとプログラムした。試料を250℃でスプリットレスモード(2分)で注入した。MSを、40~500amuにわたってフルスキャンでランし(電子衝撃イオン化、70eV)、内標準物質を使用して総イオン電流に基づいてピークを定量化した。補助基質決定のために、カラムHP-PLOT Q(直径0.32mm×30m)を使用し、オーブン温度40℃及びシングルイオンモニタリング(m/z40、44、45)を使用して、CO2、13CO2及びアルゴンを分析した
【0204】
GC-MS/FID分析
質量分析及び水素炎イオン化検出に接続されているガスクロマトグラフィー(GC-MS/FID)による分析を、脂肪酸及び炭化水素を一緒に定量化するために、メチル基転移反応の後のみ行った。分析については、Agilent 5975C質量分析計(単純四重極)に接続されているAgilent 7890Aガスクロマトグラフィーで実施した。Zebron 7HG-G007-11(Phenomenex社)極性キャピラリーカラム(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を使用した。水素キャリアガスを1mL min-1とした。オーブン温度を、60℃で最初の2分ホールドタイム、60℃から150℃まで20℃min-1で第1の上昇そして150℃で5分ホールドタイム、次いで150℃から240℃まで6℃min-1で第2の上昇及び240℃で最後の3分のホールドタイム、とプログラムした。試料を250℃でスプリットレスモード(1分)で注入した。MSを、40~350amuにわたってフルスキャンでランし(70eVでの電子衝撃イオン化)、内標準物質を使用してFIDシグナルに基づいてピークを定量化した。
【0205】
系統
系統樹を作るために、原核生物及び真核生物由来のGMC酸化還元酵素の56のアミノ酸配列を、Cyanobase (http://genome.kazusa.or.jp/cyanobase/)、NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、Phytozome (https://phytozome.Jgi.doe.gov)又はCyanidioschyzon merolae (http://merolae.biol.s. u-tokyo.ac.jp/)から取得した。配列をMAFFT7版のプログラムでアライメントさせた。結果として得られるアライメントをSeaView4版を使用して手動精製し、ホモロジーが疑わしい領域はさらなる解析から除外した。合計266のアミノ酸位置を系統解析のために保持した。Neighbor-Joining (NJ)、Phylogenetic Inference Package Phylip3.69版でのアプローチを使用してツリーを得た。PROTDISTプログラムを使用して、距離行列を作成した。NEIGHBORプログラムをNJ解析向けに使用し、配列入力順序を無作為化した(20回のジャンブル)。SEQBOOT及びCONSENSEプログラムを、それぞれ、100回反復でのブートストラップ値計算及び合意樹再構成に使用した。系統樹はDendroscope3版で描いた。
【配列表】