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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】無線周波数用途のための構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/76 20060101AFI20220405BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20220405BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20220405BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20220405BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20220405BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01L21/76 L
H01L27/12 F
H01L27/12 B
H03H9/25 C
B81B7/02
B81C1/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018564318
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 FR2017051418
(87)【国際公開番号】W WO2017212160
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】1655266
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック デボネ
(72)【発明者】
【氏名】イオヌット ラドゥ
(72)【発明者】
【氏名】オレグ コノンチュク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール ラスキン
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-316420(JP,A)
【文献】特表2013-537715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/76
H01L 21/02
H03H 9/25
B81B 7/02
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
500Ω・cmより大きい抵抗率を有する第1の半導体材料(10’)から作製された支持基板(10)と、
第2の材料(20)で充填され、第1の材料(10’)の第1の面(1)上の複数の第1のゾーン(11)と第2の材料(20)の少なくとも1つの第2のゾーン(21)とを画定する、前記支持基板(10)内の複数のトレンチ(2)と
を備える超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)において、
前記第2の材料は10kΩ・cmより大きい抵抗率を有し、
前記第1のゾーン(11)は10μm未満の最大寸法を有し、前記第2のゾーン(21)によって互いに分離されることを特徴とする超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項2】
前記第1のゾーン(11)および前記第2のゾーン(21)の表面密度は、前記支持基板(10)の前記第1の面(1)から前記トレンチ(2)の深さまで延びる前記基板の上側部分(200)上で、20W/m・Kより大きい平均熱伝導率、前記第1の材料(10’)の誘電率未満の平均誘電体誘電率、および前記第1の材料(10’)の前記抵抗率より高い抵抗率を与える請求項1に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項3】
前記第2のゾーン(21)は、前記支持基板(10)の前記第1の面(1)上にメッシュを形成する請求項1または2に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項4】
前記トレンチ(2)の深さは1μmから100μmの間である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項5】
前記支持基板(10)を構成する前記第1の材料(10’)はシリコンである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項6】
前記トレンチ(2)を充填する前記第2の材料(20)が、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、窒化アルミニウム、アモルファスもしくは多結晶シリコン、カーボンリッチシリコン、ポリマー、またはガスの中から選択される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項7】
前記複数のトレンチ(2)が、前記第2の材料(20)で部分的に充填され、前記第2の材料(20)とは異なる組成の第3の材料で部分的に充填される請求項1乃至6のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項8】
前記第3の材料(23)が、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、窒化アルミニウム、アモルファスもしくは多結晶シリコン、カーボンリッチシリコン、ポリマー、またはガスの中から選択される請求項7に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項9】
前記支持基板(10)の第1の面(1)上に配置された誘電体層(30)を備える請求項1乃至8のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項10】
誘電体層(30)と前記支持基板の前記第1の面(1)との間に、第3の材料から構成された追加の層(24)を備える請求項7乃至9のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項11】
前記誘電体層(30)が、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコンの窒化酸化物、窒化アルミニウムから選択された材料から構成される請求項9または10に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項12】
前記誘電体層(30)が前記第2の材料(20)から構成される請求項9乃至11のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項13】
前記支持基板(10)の前記第1の面(1)上に配置された有用な層(40)を備える請求項1乃至12のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項14】
誘電体層(30)が、有用な層(40)と前記支持基板(10)の前記第1の面(1)との間に挟まれる請求項9乃至13のいずれか一項に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項15】
前記有用な層(40)が、半導体材料、絶縁材料、または導電性材料、さらには圧電材料の中から選択された材料から構成される請求項13または14に記載の超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の基板(100、101、102)と、
基板(100、101、102)上に配置された超小型電子デバイスの層(50)と
を備える超小型電子無線周波数デバイス用の基板(110、102)。
【請求項17】
前記超小型電子デバイスは、アンテナスイッチ、アダプタ、電力増幅器、低雑音増幅器、受動構成要素、高周波数で動作する他の回路、無線周波数MEMS構成要素、または無線周波数フィルタである請求項16に記載の超小型電子無線周波数デバイスの構造(110、111)。
【請求項18】
第1の面(1)を有する、500Ω・cmより大きい抵抗率を有する第1の半導体材料から作製された支持基板を設けるステップと、
前記支持基板(10)の前記第1の面から決定された深さまで延びる複数のトレンチ(2)をマスクに従ってエッチングするステップと、
第2の材料(20)で前記複数のトレンチ(2)を充填し、第1の材料(10’)の第1のゾーン(11)および前記第2の材料(20)の前記第1の面(1)上の少なくとも1つの第2のゾーン(21)を形成するステップとを含む超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)を製造するための方法において、
その最大寸法が10μm未満である前記第1のゾーンが、前記第2の材料(20)が10kΩ・cmよりも大きい抵抗率を有する前記第2のゾーン(21)によって互いに絶縁されることを特徴とする超小型電子無線周波数デバイス用の基板(100、101、102)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型無線周波数デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数信号(10MHzから100GHz)の送信または受信に関係するほとんどの用途では、デバイスは、具体的には変化するモバイルテレフォニーの規格によって(2G、3G、LTE、LTE Advanced、LTE Advanced PRO、5G...)推進される、ますます厳しくなる仕様を満たす基板を必要とする。基板材料の特定は、具体的には以下を保証しなければならない。
【0003】
- 通常は広い周波数範囲にわたって1000Ω/cmよりも大きい実効抵抗率を呈することによる、低い挿入損失(低い信号減衰)および良好な線型性(高調波を引き起こす、低い信号ひずみ)
- 特にデバイスの使用範囲内[-40℃;150℃]での温度性能の安定性
- 通常は20W/mKより大きい熱伝導率による、十分な熱放散能力
- 通常はシリコンの誘電体誘電率(εsilicon=11)以下の誘電体誘電率による、活性層と支持基板との間の弱い容量結合 さらに、大容量要件を満たすために、基板は、半導体業界、特にCMOSシリコン製造ラインと互換性がなければならない。もちろん、それはまた、特に電気通信の分野の消費者用途(テレフォニーおよびセルラネットワーク、WiFi接続性、Bluetooth)によって採用されるように、競争力のあるコストを有さなければならない。宇宙および軍事用途は特に性能および耐熱性に敏感である。
【0004】
アンテナスイッチおよびアダプタ、電力増幅器、低雑音増幅器、さらには受動構成要素(R、L、C)などの無線周波数(RF)デバイスは、様々なタイプの基板上で開発され得る。
【0005】
例えば、シリコンの表面層内に超小型電子技術を使用して生成された構成要素が、温度に無関係のサファイア基板材料の絶縁特性、20W/m.Kより大きいその伝導率、および11未満のその誘電率から恩恵を受けることを可能にする、SOS(シリコンオンサファイア)として知られているシリコンオンサファイア基板が知られている。例えば、このタイプの基板上に製造されたアンテナスイッチおよび電力増幅器は、非常に良好な性能指数を示すが、解決策の全コストが高過ぎるために、ニッチ用途向けに主に使用されている。
【0006】
支持基板と、支持基板上に配置されたトラッピング層(数百ナノメートルから数ミクロンの厚さ)と、トラッピング層上に配置された誘電体層と、誘電体層上に配置された半導体層とを備える高抵抗率シリコン基板も知られている。支持基板は通常、1kΩ・cmより大きい抵抗率を有する。トラッピング層は、非ドープの多結晶シリコンを含み得る。現況技術に基づく、高抵抗率シリコン支持基板とトラッピング層との組合せは、SOI HR(高抵抗率シリコン支持基板を備えるシリコンオンインシュレータ)内に埋め込まれた、通常は酸化物層の下に存在する寄生伝導層をなくすことを可能にする。背景技術で知られる高抵抗率半導体基板上に製造されたRFデバイスの性能の評価を当業者は見い出すであろう(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
それでも、ポリシリコントラッピング層は、層内のトラップの密度を低下させることに寄与する部分再結晶作用を高温熱処理ステップ中に受けるという欠点を有する。このトラップの密度の低下に関するRFデバイス性能の劣化は、いくつかの用途については禁止的であり得る。さらに、これらの基板は、動作温度の全範囲にわたって、特に100℃より上でRF性能の安定性を保証することに苦闘している。その抵抗率は、支持基板内の熱キャリアの生成を考慮すると低下し、結合デバイス/基板が信号減衰およびひずみの主な寄与因子となる。温度が0℃未満に低下するとき、性能劣化も観察された。最後に、誘電率がシリコンの誘電率(約11)に非常に近いままとなる。
【0008】
窒化アルミニウムや炭化ケイ素などの他の支持基板は、RF特性仕様を満たすが、標準の半導体業界と互換性がない。デバイスの最終層を移送するための支持基板としてのその使用が考えられる。それでも、これらの特定の材料のコストは、回路移送技術のコストとあいまって、これらの解決策の大量採用のためには依然として高過ぎる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】“Silicon-on-insulator(SOI) Technology, Manufacture and Applications”, points 10.7 and 10.8, Oleg Kononchuk and Bich-Yen Nguyen, Woodhead Publishing
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点のすべてまたは一部を改善する、無線周波数用途に適した基板を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はまず、
・500Ω・cmより大きい抵抗率を有する第1の半導体材料から作製された支持基板と、
・第2の材料で充填され、支持基板の第1の面上の第1の材料の複数の第1のゾーンと第2の材料の少なくとも1つの第2のゾーンとを画定する、支持基板内の複数のトレンチと
を備える超小型電子無線周波数デバイス用の基板に関する。
【0012】
基板は、
・第2の材料が10kΩ・cmより大きい抵抗率を有し、
・第1のゾーンが10μm未満の最大寸法を有し、第2のゾーンによって互いに分離される
という点で注目に値する。
【0013】
第2の材料で充填されたトレンチを備える、本発明による基板の上側部分の役割は、高く安定した抵抗率レベルを支持基板が維持するように、支持基板の第1の面の近傍で生成され得る移動可能な電荷の移動をブロックすることである。
【0014】
第1のゾーンの最大寸法に関する制限と、高抵抗性材料から作製された少なくとも1つの第2のゾーンによる、これらの第1のゾーンの互いからの絶縁とは、上側部分で、支持基板を構成する第1のゾーンの半導体材料内の潜在的な移動電荷の移動をブロックすることを可能にする。この上側部分では、電荷は、ある第1のゾーンから別の第1の隣接するゾーンに通過するために、第2の材料で充填されたトレンチを迂回することによって、より長い距離を移動しなければならない。したがって基板の実効抵抗率が増加する。
【0015】
これは、具体的には、RFデバイスがその上に作製される基板内の寄生伝導の有害な効果をなくすことを可能にする。
【0016】
本発明の有利な特徴によれば、以下が単独で、または組み合わせて取られる。
【0017】
・第1のゾーンおよび第2のゾーンの表面密度が、支持基板の第1の面からトレンチの深さまで延びる基板の上側部分上で、20W/m・Kより大きい平均熱伝導率、第1の材料の誘電率未満の平均誘電体誘電率、および第1の材料の抵抗率より高い抵抗率を与える。
【0018】
・第2のゾーンが、支持基板の第1の面上にメッシュを形成する。
・トレンチ深さが1μmから100μmの間である。
・支持基板を構成する第1の材料がシリコンである。
・トレンチを充填する第2の材料が、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、窒化アルミニウム、アモルファスもしくは多結晶シリコン、カーボンリッチシリコン、ポリマー、さらにはガスの中から選ばれる。
・複数のトレンチが、第2の材料で部分的に充填され、第2の材料とは異なる性質または組成の第3の材料で部分的に充填される。
・第3の材料が、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、窒化アルミニウム、アモルファスもしくは多結晶シリコン、カーボンリッチシリコン、カーボンリッチシリコン、ポリマー、さらにはガスの中から選ばれる。
・第2または第3の材料が、第1の材料で生成され得る移動可能な電荷をトラップする特性を有する。
【0019】
・基板が、支持基板の第1の面上に配置された誘電体層を備える。
・基板が、誘電体層と支持基板の第1の面との間に、第3の材料から構成された追加の層を備える。
・誘電体層が、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、窒化アルミニウムから選ばれた材料から構成される。
・誘電体層が第2の材料から構成される。
・基板が、支持基板の第1の面上に配置された有用な層を備える。
・誘電体層が、有用な層と支持基板の第1の面との間に挟まれる。
・有用な層が、半導体材料、絶縁材料、または導電性材料、あるいは圧電材料から選ばれた材料から構成される。
【0020】
本発明はまた、
・上記などの基板
・基板上に配置された超小型電子デバイスの層
を備える無線周波数超小型電子デバイスの構造に関する。
【0021】
本発明の有益な特徴によれば、単独で、または組み合わせて取られて、超小型電子デバイスは、アンテナスイッチ、アダプタ、電力増幅器、低雑音増幅器、受動構成要素、無線周波数MEMS構成要素、無線周波数フィルタ、または高周波数で動作する別の回路である。
【0022】
本発明はさらに、
・500Ω・cmより大きい抵抗率を有する第1の半導体材料から作製された支持基板を設けること、
・支持基板の第1の面から決定された深さまで延びる複数のトレンチをマスクに従ってエッチングすること、
・第2の材料で複数のトレンチを充填し、第1の材料の第1のエリアおよび第2の材料の少なくとも1つの第2のゾーンを第1の面上に形成すること
を含む、超小型電子無線周波数デバイス用の基板に関する。
【0023】
方法は、その最大寸法が10μm未満である第1のゾーンが、その第2の材料が10kΩ・cmよりも大きい抵抗率を有する第2のゾーンによって互いに絶縁される点で注目に値する。
【0024】
最後に、本発明は、
・500Ω・cmより大きい抵抗率を有する第1の半導体材料から作製された支持基板を設けること、
・支持基板上の、第1の材料から形成され、所与の高さの複数のピラーの、マスクによる局所的被覆であって、ピラーの上面が基板の第1の面を画定し、ピラーが、基板の第1の面から、ピラーの決定された高さによって画定される深さまで延びる複数のトレンチによって互いに絶縁される局所的被覆、
・複数のトレンチを第2の材料で充填して、第1の面上の第1の材料の第1のエリアと、第2の材料の少なくとも1つの第2のゾーンとを形成すること
を含む、超小型電子無線周波数デバイス用の基板に関する。
【0025】
方法は、その最大寸法が10μm未満である第1のゾーンが、その第2の材料が10kΩ・cmよりも大きい抵抗率を有する第2のゾーンによって互いに絶縁される点で注目に値する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面への参照に続く発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
図1】(a)~(d)は、本発明による基板を製造する方法のステップを示す図である。
図2】本発明による基板の2つの変形形態を平面図および断面図で示す図である。
図3】本発明による基板の2つの変形形態を平面図および断面図で示す図である。
図4】(a)~(b)は、本発明による基板の他の変形形態を断面図で示す図である。
図5】(a)~(b)は、本発明による基板を示す図である。
図6】(a)~(d)は、本発明による基板を示す図である。
図7】本発明による無線周波数超小型電子デバイスの構造を示す図である。
図8】本発明による無線周波数超小型電子デバイスの構造を示す図である。
図9】本発明による基板を示す図である。
図10】本発明による構造内の、無線周波数超小型電子デバイスの動作周波数に応じた基板の実効抵抗率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
説明部分では、図中の同一の参照が、同一のタイプの要素について使用され得る。図は、明快のために原寸に比例しない概略表現である。具体的には、z軸に沿った層の厚さは、x軸およびy軸に沿った横方向の寸法に対して原寸に比例せず、それらの間の層の相対的厚さは、必ずしも図では尊重されているわけではない。
【0028】
本発明は、図1(a)から1(c)に示される、超小型電子無線周波数デバイスに適した基板を生成するための方法に関する。方法は、その抵抗率が500Ω・cmより大きい第1の半導体材料10’で支持基板10に設けることを含む(図1(a))。有利には、第1の材料の抵抗率は、1000オーム、さらには3000Ωより大きくなるようにさらに選ばれる。例示として、第1の材料10’は単結晶シリコンでよい。
【0029】
本発明によれば、方法はまた、マスクに従って基板10の第1の面1をエッチングする段階をも含み、複数のトレンチ2が、支持基板10の第1の面1から、決定された深さまで延びる。このエッチング段階の前に、マスクに従ってエッチングすべきパターンを画定し、マスキング層によってエッチングすべきではないパターンを保護するために通常通り実施されるフォトリソグラフィ段階が先行し得る。エッチングは、ウェットまたはドライの化学エッチングの周知の技法によって実施され得る。次いで、支持基板10の第1の面1上に堆積したマスキング層を除去することができ、したがって図1(b)に示される、トレンチ2を備える基板10が得られる。
【0030】
変形形態によれば、トレンチ2は、第1の材料から作製され、支持基板10上の所与の高さの、複数のピラーの局所的被覆によって、マスクに従って生成され得る。被覆の後、ピラーの上面が基板10の第1の面を画定し、ピラーは、第1の面からピラーの高さによって画定される深さまで延びる複数のトレンチによって互いに絶縁される。そのような局所的被覆は、例えば選択的エピタキシによって実施され得、このケースでは、被覆を免除すべきエリアが、マスキング層(具体的には酸化シリコンまたは窒化シリコン)によって覆われる。次いで、エピタキシが、マスクされていないエリア上で局所的に行われる。エピタキシの後、トレンチの底部に存在するマスキング層が保持され、またはウェットエッチングもしくはドライエッチングによって除去され得る。
【0031】
製造工程は、複数のトレンチ2を第2の材料20で充填する段階をさらに含む。第2の材料20は、その電気的特性に関して選ばれ、具体的には、それは10kΩ・cmより大きい抵抗率を有する。第2の材料20は、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、窒化アルミニウムなどの電気絶縁体から選ばれ得る。あるいは、それは、アモルファス、多結晶、真性シリコンなどの高抵抗性半導体、または例えば耐熱性率を安定化するように選ばれた組成を有する高抵抗性半導体(具体的には、それがカーボンドープトシリコンまたはカーボンリッチシリコンである場合)から選ばれ得る。最後に、第2の材料20はまた、絶縁ポリマーから選ばれ得る。
【0032】
例示として、トレンチ2を充填する段階は、化学、蒸気、または液体被覆によって実施され得、または熱処理によって(例えば、酸化シリコンで充填するケースでは熱酸化によって)実施され得る。有利には、第2の材料20は、いくつかのRFデバイスの後続の製造のために必要とされる高熱処理(特に、1000℃、さらには1200℃まで)に耐え得る。いくつかのケースでは、第2の材料20は、基板100上にデバイスを製造する後続のステップの間に、中温または低温処理(500℃未満、さらには350℃未満)を受けなければならないだけである。これは、例えば「ゾル-ゲル」型技法(スピンコーティング)によって堆積された、ポリマーなどの第2の材料20についての他のオプションを可能にする。
【0033】
製造工程のこのステージで得られた基板100が、図1(c)に示されている。
【0034】
図1(d)に示される変形形態によれば、トレンチ2は、第2の材料20によって部分的に充填され、第2の材料20とは異なる性質および/または組成の第3の材料23によって部分的に充填され得る。第3の材料23は、第2の材料20を構成することができると述べた材料から選ばれ得る。有利には、第3の材料23はまず、トレンチ2の内部壁上に堆積され、次いで第2の材料20が第3の材料23上に堆積され、トレンチ2が充填される。一例として、かつ限定と見なされることなく、第1の多結晶シリコン被覆がトレンチ2の内部壁上に作製され、次いで第2の窒化シリコン被覆が多結晶シリコン上に作製され、トレンチ2が充填され得る。この例では、第3の材料23は多結晶シリコンから作製され、第2の材料20は窒化シリコンから作製される。
【0035】
別の変形形態によれば、トレンチ2は、空洞の状態に、すなわちどんな固体材料も充填することなく保たれ得る。このケースでは、第2の材料20は、本発明による製造工程中に後で導入され得る、ガスまたは混合気、例えば空気または他のガスから構成される。
【0036】
この変形形態によれば、第3の材料23も、トレンチ2の内部壁上に堆積され得、トレンチ2の主要部分は、そうでない場合はガスまたは混合気のみで充填される。
【0037】
図2(a)は、平面図の基板100、すなわち第1の面1による基板100を示す。図2(a)に示される断面Cに沿った同一の基板100の断面図が図2(b)に提示されることに留意されたい。
【0038】
第1の面1上の第1の材料10’の第1のエリア11と、第2の材料20の少なくとも1つの第2のゾーン21とを形成するために第2の材料20で充填されたトレンチ2。基板100は、第1のゾーン11が10μm未満の最大寸法を有する点で注目に値する。他の有利な実施形態によれば、第1のゾーン11の最大寸法はさらに、8μm、5μm、さらには2μm未満となる。
【0039】
基板100はまた、第1のゾーン11が、第2の材料20から作製された第2のゾーン21によって互いに分離される、すなわちそれらが互いに接触しない点でも注目に値する。有利には、それらは互いに電気的に絶縁され、第2の材料20は、10kΩ・cmより大きい抵抗率を有する。有利には、第2の材料20または第3の材料23は、使用されるとき、第1の材料10’内に生成され得る、移動可能な電荷をトラップする特性を有する。
【0040】
図2(a)および3(a)に示される例によれば、少なくとも1つの第2のゾーン21は、第1のゾーン11のそれぞれを分離する、支持基板10の第1の面1上のメッシュを形成する。このメッシュの形状、およびゾーン11、21の寸法に応じて、第1のゾーン11の表面密度は異なり得る。有利には、第1のゾーン11の表面密度は、支持基板10の第1の面からトレンチ2の深さまで延びる基板の上側部分200上で、20W/m・Kより大きい平均熱伝導率、第1の材料の誘電率未満の平均誘電体誘電率、および第1の材料10’の抵抗率より大きい、または少なくとも1000Ω・cmよりも大きい実効抵抗率を与えるように選ばれる。
【0041】
例示のために、第1のゾーン11は、支持基板10の第1の面1の表面の20から70%の間をカバーし、第2のゾーン21は追加の表面をカバーする。
【0042】
トレンチ2は、1μmから100μmの間の深さを有する。横方向寸法aの超小型電子デバイス(基板100の上側部分200の上に横方向に配置される)について、電場が基板100内の約a/3の深さまで貫通すると見なされ得る。したがって、100μmの典型的横方向寸法を有するRFアンテナスイッチング型デバイスについて、トレンチ2の深さは、約30~40μmでなければならず、したがって電場は基板100の上側部分200のみを見る。次いで、上側部分200の電気的特徴(実効抵抗率、誘電率)は、上記で配置された超小型無線周波数デバイスの性能を調整する。
【0043】
エッチングの周知の技法は、その形状因子(深さに対する横方向寸法の比)が通常は1/5から1/30の間であるトレンチを生成することを可能にする。例えば、本発明によるトレンチ2の形状因子は、一般には1/5から1/30の間となり、10μmの最大横方向寸法について、トレンチ2の深さは50から100ミクロンの間でよく、1ミクロンの最大横方向寸法について、深さは5μmから30μmの間でよい。
【0044】
図4(a)および4(b)は、本発明による基板100の代替実施形態を示す。基板100の上側部分200では、第1の材料10’から作製された部分が、深さの方向に(すなわち、図のz軸に沿って)セグメント化され得る。この目的で、トレンチ2を充填した後、第2の材料20の少なくとも1つのセグメント化層25が、支持基板10の第1の面1の表面全体にわたって堆積され得る。このセグメント化層25は、上記で参照した第2の材料20のうちの1つでは、トレンチ2を充填するために使用されたものと同一でよく、または異なるものでよい。
【0045】
次いで、第1のゾーン11と向かい合う第1の材料10’と、第2のゾーン21と向かい合う第2の材料20の局所的被覆の後続のステップが実施される。これらのステップは、上側部分200の厚さでいくつかのセグメント化を達成するために、必要に応じて何回も反復され得る。
【0046】
あるいは、上側部分200の第1の材料10’によって構成される部分のセグメント化は、基板100内のイオン注入によって実施され得る。例示のために、酸素、窒素、水素、ヘリウムなどの中から選ばれた化学種が、上側部分200の第1の材料部分10’を完全にセグメント化する層25を構成するために、所与の深さに導入され得る。
【0047】
本発明による超小型電子無線周波数デバイス用の基板を製造するための方法は、支持基板10の第1の面1上の誘電体層30の形成ステージをさらに含み得る(図5(a))。例示のために、その厚さは数ナノメートルから3μmの間で変動し得る。有利には、誘電体層30は、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒化酸化物、または窒化アルミニウムの中から選ばれた材料から作製される。それは、様々な周知の化学堆積技法によって堆積され得る。任意選択で、誘電体層30は第2の材料20と同一の性質でよい。
【0048】
図5(b)に示される変形形態によれば、第2の材料の層が誘電体層30の下に存在する。実際には、本発明による方法のトレンチ充填段階2の間に、第2の材料20の層が、トレンチ2内、および支持基板10の第1の面1上に堆積され得る。次いで、この層の平坦化段階(例えば、機械化学研磨)が実施され、表面トポロジが削減され得、支持基板10の第1の面1上に第2の材料20内の残留層22が残る。
【0049】
別の変形形態(図示せず)によれば、残留層22は、誘電体層30のすべてまたは一部を構成し得る。
【0050】
製造工程はまた、誘電体層30の形成前に、支持基板10の第1の面1上の追加の層24の形成ステージをも含み得る(図9)。有利には、この追加の層24は第3の材料23から構成され、後者は、第1の材料10’内に生成することのできる移動電荷(自由キャリア)をトラップする特性を有する。
【0051】
本発明による超小型電子無線周波数デバイス用の基板製造方法はまた、本発明による基板100または101上に配置される有用な層40の形成ステージをも含み得る。
【0052】
例示のために、有用な層40は、以下を含む、当業者に周知の薄膜移送方法のうちの1つによって移送される。
【0053】
- ドナー基板内の軽水素および/またはヘリウムイオンの注入と、例えばこのドナー基板の基板100または101への分子ボンディングによるボンディングとに基づくSmart Cut(商標)プロセス。次いで、分離段階が、イオンの注入の深さによって定義される脆化レベルで、ドナー基板(有用な層)から薄表面層を分離することを可能にする。高温での熱処理を含み得る仕上げステップが、必要な結晶および表面品質を最終的に有用な層40に与える。このプロセスは、シリコン層について、例えば数ナノメートルから約1.5μmの間の厚さを有する非常に薄い有用な層の製造に特に適している。
【0054】
- 具体的には、例えば数十nmから20μmまでのより厚い有用な層40を得ることを可能にする、Smart Cutプロセスと、その後に続くエピタキシャル段階。
【0055】
- ダイレクトボンディングと、機械、化学、および/または化学機械シンニングプロセス。それらは、直接的に基板100または101上に分子ボンディングによってドナー基板を組み上げ、次いで、例えば研削およびCMP(「化学機械研磨」)によって、有用な層40の所望の厚さまでドナー基板をシンニングするものである。これらのプロセスは、例えば数ミクロンから数十ミクロン、最大で数百ミクロンまでの厚い層を移送するのに特に適している。
【0056】
有利には、前述の層移送プロセスは、(活性層がそれから導出される)ドナー基板および支持基板100、101の分子接着ボンディング段階に基づく。トレンチ2を充填する第2の材料20がガスまたは混合気である特定のケースでは、2つの基板のアセンブリ後にトレンチ2内にトラップされるガスが、予期される第2の材料20に対応するように、ボンディングエンクロージャ内の大気が制御される(ガスの組成、圧力など)。具体的には、トレンチ2内の準真空構成を達成するために、ボンディングチャンバ内の大気が非常に低い圧力にされ得、このタイプの構成は、いくつかのケースでは、表面の有用な層40の機械的強度にとって好ましい。
【0057】
有用な層40は、材料または材料のスタックから構成され、アナログの、またはデジタルのRFデバイスを実装することを可能にする。したがって、それは、目標とされるRFデバイスのタイプに応じて、半導体材料、伝導性材料、または絶縁材料の中から選ばれ得、より具体的には、それは、圧電材料の中から選ばれる材料から構成され得る。
【0058】
有用な層40は、例えば、シリコン、ゲルマニウムシリコン、ゲルマニウム、III-V材料、ニオブ酸リチウム、リチウムタンタル酸、窒化アルミニウム、PZTなどから作製され得る。
【0059】
図6(a)、6(b)、および6(c)は、
○有用な層40と、
○誘電体層30と、
○基板100であって、第1の材料10’から作製された支持基板10と、
・第2の材料20で充填されるトレンチ2(図6(a))、
・その壁が第3の材料23と並べられ、第2の材料20で充填されるトレンチ2(図6(b))、
・その壁が第3の材料23と並べられ、第2の材料20で充填されるトレンチ2であって、追加の層24が、支持基板10の第1の面と誘電体層30との間に挟まれるトレンチ2(図6(c))と
を備える基板100と
を備える、本発明による基板102を示す。
【0060】
無線周波数用途のためのSOI基板の分野で周知のように、酸化シリコンによって例えばシリコンキャリア基板上に形成される誘電体層は、正の電荷を有する。これらの電荷は、誘電体層との界面で支持基板から来る負の電荷によって補償される。これらの電荷は、誘電体層の下の、支持基板内の表面寄生伝導層を生成し、次いで、この伝導層での支持基板の抵抗率が約10~100Ω・cmまで低下する。したがって、支持基板の抵抗率に敏感な電気的性能(信号の線型性、挿入損失のレベル、受動構成要素の品質因子など)が、この伝導層の存在によって大幅に低下する。
【0061】
基板102の上側部分200の役割は、具体的には、それが高い、安定した抵抗率レベルを保持するように、支持基板10の第1の面の近傍で生成された移動電荷の移動をブロックすることである。
【0062】
実際に、第1のゾーン11の最大寸法に関する制限は、支持基板10を構成する第1の半導体材料10’内の潜在的移動電荷の移動をブロックすることを可能にする。電荷は、ある第1のゾーン11から別の第1の隣接するゾーン11まで通過するために、第2の材料20で充填されたトレンチ2を迂回することによって、より長い距離を移動しなければならない。したがって基板102の上側部分200の実効抵抗率が増加する。これは、RFデバイスを備える基板102内の誘電体層の下に現れる寄生伝導の有害な効果のすべてまたは一部をなくすことを可能にする。
【0063】
例示のために、8kΩ・cmの公称抵抗率を有する単結晶シリコン基板10と、第3の材料23として堆積された多結晶シリコンと、第2の材料として堆積された二酸化シリコンとから形成され、トレンチ2が20μmの深さを有する、図6(b)に示されるような基板102のケースを取り上げ、誘電体層30も二酸化シリコンから作製され、有用な層40が単結晶シリコンから作製される。図10は、有用な層40内および/または有用な層40上に存在する無線周波数デバイスの動作周波数の関数としての、支持基板10の上側部分200の実効抵抗率の進展のシミュレーションを示す。図10の変形形態A、B、およびCは、第1のゾーン11の3つの異なる最大寸法10μm(A)、5μm(B)、および2μm(C)に対応する。変形形態Aは、上側部分200の実効抵抗率が、約2.5GHz未満の周波数について1000Ω・cmより上にとどまることを示す。変形形態Bは、5GHz未満のすべての周波数について、1000Ω・cmより大きい実効抵抗率を維持することを可能にする。最後に、変形形態Cは、5GHz未満の周波数について、支持基板10の公称抵抗率より大きい上側部分200の実効抵抗率を得ることを可能にし、それはまた、15GHz未満のすべての周波数について、1000Ω・cmより大きい実効抵抗率を保持することも可能にする。したがって、酸化シリコンの誘電体層30の下の第1の材料10’(シリコン)内で生成された移動電荷の第1のゾーン内の閉じ込めは、支持基板10の上側部分200の実効抵抗率を増加させることを可能にする。実効抵抗率が増加し、広い周波数範囲にわたって高いままであるので、第1のゾーン11の寸法が削減される。
【0064】
上側部分200の誘電率はまた、トレンチ2内の第2の材料(二酸化シリコン)の存在のために、初期支持10基板(シリコン)の誘電率に関連して改善される。
【0065】
第1のゾーン11および第2のゾーンの密度は、支持基板11の平均熱伝導率を20W/m・Kより高く維持するように選ばれ、これは、第2のゾーン21の(X、Y平面内の)寸法を変動させることによって達成される。
【0066】
最後に、100℃より上でのRF性能の安定性が、トレンチ2の内部壁上の第3の材料23(多結晶シリコン)の存在のために、基板10の上側部分200で改善され得、有利には、トレンチ2間の第1の材料10’で生成される熱キャリアの少なくとも一部がトレンチ2の深さ全体にわたって第3の材料23のレベルでトラップされることになり、広い温度範囲にわたってより安定した実効抵抗率を有する上側部分200が実現されるので、第3の材料23は移動可能な電荷をトラップする特性を有する。
【0067】
室温での実効抵抗率、誘電率、および熱伝導率の実質的に類似の性能が、例えば8kΩ・cmの公称抵抗率を有する単結晶シリコンから作製された支持基板10、第2の材料20としてのガスまたは混合気(大気圧またはより低い制御された圧力での空気または窒素)、20μmの深さを有するトレンチ2で形成された、図6(a)に示される基板102で予想され、誘電体層30はやはり二酸化シリコンから作製され、有用な層40は単結晶シリコンから作製される。
【0068】
別の例によれば、(トレンチ2を充填する)その第2の材料20が高抵抗性ポリシリコンから作製される、図6(a)に基づく基板102は、広い温度範囲にわたる実効抵抗率の安定性および上側部分200の熱伝導率に関して改善された性能を有しているはずであり、一方、上側部分200の誘電率は、支持基板10(シリコン)のそれに近いままとなる。
【0069】
さらに別の例によれば、8kΩ・cmの公称抵抗率を有する単結晶シリコン基板10と、第3の材料23として堆積された多結晶シリコンと、堆積された二酸化シリコンまたは窒化シリコンの第2の材料から形成され、トレンチ2が20μmの深さを有する、図6(c)に示されるような基板102のケースを取り上げ、追加の層24がポリシリコンから作製され、誘電体層30も二酸化シリコンから作製され、有用な層40が単結晶シリコンから作製される。
【0070】
高周波数範囲(通常は50GHzまで)にわたる上側部分200の実効抵抗率に関する性能は、やはり前の例と比較して著しく改善され、実効抵抗率は最大で30kΩ・cmの値に達する。この例では、誘電体層30の下の第3の材料23(ポリシリコン)の追加の層24の存在は、第1のゾーン11内で生成された自由キャリアを効果的にトラップすることを可能にする。第1の材料10’内に存在する残留移動電荷の(第1のゾーン11内の)閉じ込めは、支持基板10の上側部分200の実効抵抗率をさらに増加させることを可能にする。
【0071】
有利には、第1のゾーン11の最大サイズは、基板102上に生成されるデバイスに応じて、具体的にはそのサイズに応じて選ばれる。例えば、0.3μm未満のチャネル長および500μmより大きいチャネル幅によって特徴付けられるトランジスタを備えるアンテナスイッチ型デバイスでは、第1のゾーン11の(図のX、Y平面内の)最大寸法は約1μmから選ばれる。
【0072】
一般には、第1のゾーン11の最大寸法および第2のゾーン21の寸法は、各構成要素が基板102をほぼ均質な基板として「見る」ように選ばれ、すなわちデバイスは、完全に第1のゾーン11の上に配置されるべきではなく、完全に第2のゾーン21の上に配置されるべきではない。構成要素(このケースではトランジスタ)が、複数の第1のゾーン11にわたって延びる少なくとも1つの寸法を有することが有益である。これは、具体的には、構成要素の電気的特徴のより大きい分散を生み出すことが可能な、構成要素のレベルでの不均質な機械的制約を限定することを可能にする。
【0073】
トレンチ2の深さ、したがって基板101の上側部分200の厚さはまた、基板102(または基板100もしくは101)上で生成されるRFデバイスのタイプに従って定義される。具体的には、この深さは、デバイスによって生成される電力と、基板102内の電磁場の貫通の深さとに基づいて選ばれる。例えば、1ワットの電力を切り換えるアンテナスイッチ型デバイスでは、電磁場の貫通は約50μmであり、トレンチ2の深さは、50μm程度に選択され、通常は30から70μmの間である。
【0074】
100MHzより高い周波数で動作するRFデバイスでは、第2の材料20または第3の材料は、それが使用されるとき、先に基板102のいくつかの例で示されたように、第1の材料10’内で生成され得る、移動可能な電荷をトラップする特性を有することは有益である。
【0075】
本発明はまた、
・前述のような基板100、101、または102
・基板100、101上に直接的に配置され、または基板100、101上にそれ自体が配置される誘電体層30上に配置された超小型電子デバイス50の層と
を備える超小型電子無線周波数デバイスの構造110(図7に示される)に関する。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、構造110の超小型電子デバイス50は、アンテナスイッチ、アダプタ、電力増幅器、低雑音増幅器、または受動構成要素(R、L、C)でよい。
【0077】
このタイプのデバイスの製造についての例示として、10nmから1.5μmの間、例えば145nmの厚さを有するシリコンから作製された有用な層40と、20nmから2ミクロンの間、例えば400nmの厚さを有する酸化シリコンから作製された下にある誘電体層30とを有する基板102を使用することが可能となり、第1のゾーン11は、2ミクロン間隔を置いて配置された、1ミクロン辺の正方形の形状を有し、上側部分200は50ミクロンの厚さにわたって延びる(第2の材料20によって充填されるトレンチ2の深さ)。第1の材料10’は単結晶シリコンであり、第2の材料20は窒化シリコンである。任意選択で、目標とされる構成要素の使用の周波数に応じて、第3の材料23に対応するカーボン濃縮多結晶シリコンの層が、第1の10’と第2の材料との間に挟まれたトレンチ2の壁と並び得、それは、数十nmから200nmの厚さを有し得る。さらに別のオプションによれば、追加の多結晶シリコン層24が、支持基板10の第1の面と誘電体層30との間に挟まれ得、追加の層24は、通常は100nmから1μmの範囲の厚さを有し得る。
【0078】
有用な層40内および有用な層40上に開発されるデバイス50の層は、複数の能動構成要素(MOS型、バイポーラ型など)および複数の受動構成要素(コンデンサ、インダクタ、抵抗器など)を備える。
【0079】
超小型構成要素の製造は、通常は950~1100℃、さらにはそれを超える高温での熱処理を含む、いくつかの段階の実装を必要とする。シリコン(第1の材料10’)、窒化シリコン(第2の材料20)、および任意選択のカーボン濃縮ポリシリコン(第3の材料)からなる基板110の上側部分200は、そのRF特性に影響を及ぼす可能性の高いどんな劣化も受けることなく、このタイプの処理に耐えることができる。
【0080】
変形形態によれば、デバイス50の層が、SOI型の基板上にまず開発され、次いで当業者に周知の層移送技法によって本発明による基板100または101上に移送され、図8に示される構造111が形成され得る。
【0081】
図8では、構造111は、一方では、第2の材料20で充填された複数のトレンチ2を備える支持基板10を備え、任意選択で、その上に、誘電体層として働く第2の材料20から作製された残留層22が配置される。後者の上には、デバイス50の層があり、金属相互接続および誘電体の層のいわゆる「バックエンド」部分が残留層22の上に配置され、有用な層40内に部分的に開発される、いわゆる「フロントエンド」部分(シリコン)は、それ自体バックエンド部分の上にある。最後に、有用な層40の上に、任意選択で誘電体層31がある。
【0082】
前述のどちらのケースでも、デバイス50内に拡散されることが意図され、基板100、101、102内に貫通する高周波数信号の結果として生じる電磁場は、支持基板10の第1の材料10’の公称抵抗率よりも高く、または構造110、111の上側部分200の、少なくとも1000Ω・cmよりも高く、全動作温度範囲[-40℃;150℃]にわたって安定である実効抵抗率のために、わずかな損失(挿入損失)およびひずみ(高調波)を受けるだけであり、実際には、本発明による上側部分200の構成は、(寄生伝導層または熱ドナーから来る)半導体基板内の移動電荷の移動をブロックする。有利には、構造110、111は好ましい熱放散特性を有し、第1の材料はシリコンである。さらに有利には、(高抵抗性または絶縁性の)第2の材料で充填されたトレンチの存在のためにシリコンのそれと比較して低減された、上側部分200の平均誘電率のために、デバイス50の層と支持基板10との間の容量結合が大幅に低減される。
【0083】
本発明の別の実施形態によれば、構造110、111の超小型電子デバイス50は、例えば、少なくとも1つの制御要素と、例えばオーム接触を有するマイクロスイッチまたは容量性マイクロスイッチからなるMEMSスイッチング要素とを備える、無線周波数MEMS(Micro Electro-Mechanical System)構成要素からなる。
【0084】
基板100、101、102のうちの1つは、MEMS構成要素用の支持基板として使用され得る。次いで、MEMS部品の製造は、(電極、誘電体、犠牲層、活性層を含む)複数の層の連続する被覆と、これらの異なる層上にパターンを作製することに基づく。
【0085】
第1のゾーン11は、例えば、10ミクロン間隔を置いて配置された、10μm辺の六角形の形状となり、上側部分200は、50μmの厚さ(第2の材料20によって充填されるトレンチ2の深さ)にわたって延びる。第1の材料10’は単結晶シリコンでよく、第2の材料20は窒化シリコンから作製される。
【0086】
通常はMEMS部品の前に実施される制御要素(例えば、CMOS)を製造するための超小型電子プロセスは、前の実施形態と同様に、高温での熱処理の適用を必要とする。
【0087】
記載のすべての実施形態に適用され得る、本発明の変形形態によれば、基板100の第1の面1上に第2のゾーン21によって形成されたメッシュは、第1の面の特定の領域内に配置され得る。したがって、基板100の第1の面1にわたって分散される複数の第2のゾーン21を有することが可能である。したがって、これらの第2のゾーン21が欠けている第1の面1のエリアでは、支持基板10の第1の材料10’だけが見つかる。デバイスの制御要素(CMOS)は、それらが、抵抗率を有する下にある基板、RF要素などの制限的誘電率特性を必要としない場合、第2のゾーン21が欠けている(すなわち、トレンチ2のない)エリア内で開発され得る。
【0088】
前述のように、このデバイス50内で伝播する高周波数信号は、(特に、MEMSスイッチング要素のレベルで)支持基板10内に貫通する電磁場を生成する。第2の材料20で充填されたトレンチを備える支持基板10の上側部分200の高い、安定した実効抵抗率のために、損失(挿入損失)、ひずみ(高調波)、および崩壊が少なくなる。
【0089】
有利には、構造110、111は好ましい熱放散特性を有し、第1の材料はシリコンである。さらに有利には、(高抵抗性または絶縁性の)第2の材料で充填されたトレンチの存在のためにシリコンのそれと比較して低減された、上側部分200の平均誘電率のために、デバイス50の層と支持基板10との間の容量結合が大幅に低減される。
【0090】
本発明のさらに別の実施形態によれば、構造110、111の超小型電子デバイス50は、バルク音波伝播(「Bulk Acoustic Wave」の略で「BAW」と呼ばれる)または音響伝播(「Surface Acoustic Wave」の略で「SAW」と呼ばれる)または任意の他の音響伝播モードによって動作する無線周波数フィルタから構成され得る。
【0091】
SAWフィルタの製造は、例えば、電極コームがその表面上に開発される、圧電材料で作製された有用な層40を必要とし、音波は、これらの電極の間で拡散することが意図される。したがって、本発明による構造110は、例示として、200nmから20μmの間の厚さを有するタンタル酸リチウムの有用な層40を備え得る。
【0092】
第1のゾーン11は、5ミクロンの間隔を置いて配置された、直径5ミクロンの円形形状を有し得、上側部分200は、厚さ100ミクロン(トレンチ深さ2)にわたって延在し得る。第1の材料10’は単結晶シリコンであり、第2の材料20は、空気、アモルファス、または多結晶シリコンでよい。任意選択で、誘電体層30は、有用な層40と支持基板10の第1の面1との間に追加され得る。
【0093】
構造110は、固体圧電基板よりも自然に温度が安定していることに加えて、特に挿入損失および線型性に関して、より良好なフィルタ性能を得ることを可能にする。
【0094】
本発明による無線周波数用途のための基板100、101、102、および構造110、111は、前述の実施形態に限定されない。それらは、高周波数信号が拡散し、支持基板内で望ましくない損失または外乱を受ける可能性が高い任意の用途に適しており、実際に、基板の上側部分200の物理的および電気的特徴は、全動作温度範囲にわたって安定した、良好なRF特性(限定的な損失、非線型性、および他の外乱)をアセンブリに対して与える。それらはまた、良好な熱伝導率特性および11未満の比誘電率を与え、活性層と支持基板10との間の弱い容量結合を可能にする。第1のゾーン11および第2のゾーン21の寸法、および第1の材料10’、第2の材料20、および潜在的には第3の材料の性質を選ぶことにより、一定の性能(実効抵抗率、温度の安定性、熱伝導率、誘電率)に対する、他に勝る優先順位を与えることが可能となり、したがって、用途に応じて、一方では、開発すべき超小型電子デバイスの仕様を満たし、しかし基板100、101、102の製造コストも満たすために、妥協が発見され得、したがってその大量採用が可能となる。
【0095】
本発明による基板100、101、102、および構造110、111は、具体的には、RF機能を高性能デジタルまたはアナログ機能(すなわち、高い動作周波数fT、fmaxを伴う)と組み合わせるデバイスにとって関心を引くものであり得る。
【0096】
いくつかのケースでは、デジタルおよび/またはアナログ機能は、本発明による特性を有する抵抗性基板を必要としない。次いで、第2の材料20で充填されるトレンチを備える、本発明による基板の上側部分200は局所的でよく、全体の基板100、101、102上に存在しなくてよい。したがって、第1の面の異なる領域内に配置された、基板の第1の面1上の複数の第2のゾーン21がある。したがって、これらの第2のゾーン21が欠けている第1の面1のエリアでは、支持基板10の第1の材料10’だけが見つかる。デバイスのデジタルおよび/またはアナログ機能は、それらが、抵抗率を有する下にある基板、RF要素などの制限的誘電率特性を必要としない場合、第2のゾーン21が欠けている(すなわち、トレンチ2のない)エリア内で開発され得る。
【0097】
もちろん、本発明は、記載の実施形態および例に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形形態が提供され得る。
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