(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車両用レドーム
(51)【国際特許分類】
B60R 13/00 20060101AFI20220405BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220405BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220405BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220405BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20220405BHJP
C23C 14/20 20060101ALI20220405BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20220405BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60R13/00
B32B9/00 A
B32B15/08 D
B32B27/00 E
C23C14/08 K
C23C14/20 A
H01Q1/32 Z
H01Q1/42
(21)【出願番号】P 2018564743
(86)(22)【出願日】2016-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2016063173
(87)【国際公開番号】W WO2017211419
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2019-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】515015698
【氏名又は名称】ザニーニ オート グループ、エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー プハダス, アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】アルメンゴル アイ ロカスパーナ, ホセ, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ペラルタ モラレス, ヘルソン ハイール
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】畔津 圭介
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511285(JP,A)
【文献】特表2014-500956(JP,A)
【文献】特開2010-188713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R13/00
B32B15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波透過性樹脂から形成された基板(18)と装飾層(20)を備えた、車両のためのレドーム(10)であって、
前記基板(18)が、装飾層(20)と接する面(近位面)と、前記近位面と反対側の面(遠位面)を有し、
前記装飾層(20)が、前記近位面に付与され
、
前記装飾層(20)が、半金属
及び/又は半金属合金
並びに少なくとも1つの酸化物
で形成された層である、車両用レドーム(10)。
【請求項2】
前記酸化物が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銀(Ag)、ケイ素(Si)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ガリウム(Ga)、及び/又はアルミニウム(Al)を含む、請求項1に記載の車両用レドーム(10)。
【請求項3】
前記半金属又は前記合金の半金属が、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及び/又はテルルから選択される、請求項1に記載の車両用レドーム(10)。
【請求項4】
さらに、前記装飾層(20)を覆う電波透過性樹脂層(22)を含む、請求項1に記載の車両用レドーム(10)。
【請求項5】
前記樹脂層(22)が装飾用のインクオーバーレイを含む、請求項4に記載の車両用レドーム(10)。
【請求項6】
前記装飾層(20)において、前記半金属
及び/又は半金属合金
並びに少なくとも1つの酸化物は、前記近位面の表面上に、PVDマグネトロンスパッタリングにより堆積される、請求項1に記載の車両用レドーム(10)。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のレドーム(10)を含む車両(14)であって、フロントグリルアセンブリ(12)を含み、前記フロントグリルアセンブリ(12)
の外面に前記レドーム(10)が配置され、前記車両(14)が、さらに、前記レドーム(10)の後ろに配置され且つ前記レドーム(10)に位置合わせされたレーダアンテナ(16)を含む、車両(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドームに関し、このレドームは、レーダ装置、特には自動車のフロントグリルの背後に配置されたレーダ装置を、装飾的な金属像を呈しつつ保護するためのものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の衝突回避及びアダプティブクルーズコントロールシステムのセンサとして、電波送受信装置(例えば、ミリ波レーダ)が用いられている。
【0003】
自動車前方の障害物及び自動車間の距離を測定するレーダ装置等において、アンテナは、最大の性能を得るために、車両前方の中央に配置されることが好ましい。レーダンテナは自動車のフロントグリル付近に設置され得るが、美的外観を損なわないためにアンテナを見えないように隠すこと、また、気象及び空気中汚染物質などの外的環境因子からアンテナを遮蔽することが好ましい。
【0004】
アンテナを保護し、且つ、レーダ装置の電波妨害及び信号損失を回避するために、電波透過可能なレーダウィンドウを、フロントグリル内の、レーダアンテナの設置位置に対応する位置に設けることが提案されてきた。これにより、電波がウィンドウを通して送受信されることが可能になった。しかし、レーダウィンドウは、フロントグリルの構成要素のパターンの中断により、グリルの見栄えを悪くした。さらに、車両の不体裁な内部、例えばレーダ送受信機が、レーダウィンドウを通して見えてしまうことがあった。
【0005】
特許文献1において、レーダウィンドウとフロントグリル本体との一体化が提案された。特許文献1にて開示されたレーダウィンドウは、複数の樹脂層を、凹凸を設けて積層することにより形成される。このコンポーネントは、樹脂層間に凹凸を有して堆積された金属層により、フロントグリルのフィン部材がレーダウィンドウを継目なく延在するような印象を与えた。
【0006】
このようなレーダウィンドウに堆積される金属として、インジウムが使用された。インジウムを堆積部材(deposit member)上に堆積させたとき、インジウムは、表面上に均一な薄膜の形態で堆積されず、ナノメートル寸法の島状に堆積された。すなわち、インジウムを堆積部材上に堆積させたとき、堆積部材の表面は、ナノメートル寸法の堆積部分と非堆積部分との組み合わせになり、堆積部分にはインジウムが島状に堆積され、非堆積部分には何も堆積されなかった。
【0007】
この場合、電波は、非堆積部分を通して送受信されることができ、また、堆積部材の表面は、目視すると、金属光沢を有する部材として認識され得る。なぜなら、堆積部分にインジウムがナノメートル寸法で島状に堆積されているからである。
【0008】
堆積がこのように選択的であることにより、インジウム金属の付与工程が複雑化した。また、堆積部分が互いに非常に近接して形成された場合、電波の送受信が十分に行われなかった。金属の伝導性のためには、低密度の蒸着方法、例えば熱蒸着を用いることが必要であった。これらの方法では、部材全体を通じて、或いは、同一バッチで生産される部材間での均一な厚さの堆積が保証されなかった。その他の堆積方法、例えば、スパッタリングは、均一な島状の堆積を保証するであろうが、スパッタリングによる金属密度は、減衰レベルを高めてしまい、このようなシステムは、レーダアンテナの前方に設置されるレドームには有用でない。
【0009】
特許文献1は、金属部領域上に堆積されたインジウムを含む薄い金属層を開示しており、この領域は、外側から見ると、レーダ装置のビーム経路用のプラスチックめっき部材に覆われているようである。しかし、インジウム光沢膜層が外力により剥離し若しくは損傷を受けないように、或いは、水分若しくは汚染空気などの外的環境ストレスにより腐食されないように安定的な保護層を形成することにより、光沢のあるデザインと、電波透過耐久信頼性とを保証する必要があった。
【0010】
これは以下の理由による。すなわち、インジウムは非常に柔らかい金属材料であり、モース硬度スケール値が1.2である。インジウムは基本的に金属材料であるため、上述のような環境ストレスにより腐食する。インジウム膜層を必要以上に厚くせずにインジウムの光沢効果のあるデザインが得られるように膜厚を確実に確保することにより、耐久信頼性を保証する必要がある。なぜなら、インジウムは基本的に金属材料であるため、電波伝搬損失が伝導損失として生じるからである。また、インジウム層は、ベース体の表面上に予め膜が形成されている樹脂成形部品にライニング樹脂の二次形成を連続して行った場合、溶融樹脂の熱により溶けてしまう。なぜなら、インジウムの融点が非常に低く、例えば156℃だからである。
【0011】
インジウム膜は金属色を呈するため、エンブレムの膜などに適しているが、インジウム膜は、剥離しやすく、耐久性及び耐摩耗性に欠けるという問題を有する。また、インジウム膜は基本的に金属であるため、腐食するであろう。そこで、二酸化ケイ素を含むセラミック膜を堆積させれば、耐久性が向上し、膜または塗装を保護できよう。しかし、二酸化ケイ素を含むセラミック層は無色であるため、例えば金属色の外観は得られない。
【0012】
本願と同一出願人の名義である特許文献2は、装飾的レドームを開示しており、この装飾的レドームは、電波透過性樹脂からつくられた基板と、当該基板の近位面に付与された複数の半金属又は半金属合金(シリコン(ケイ素)、ゲルマニウム)層を含む装飾層と、当該装飾層を覆う電波透過性樹脂とを備え、前記装飾層を覆う前記電波透過性樹脂が、装飾用のインクオーバーレイを含む。
【0013】
使用される半金属の個数が限られていると、審美的に限界が生じる。参考として、金属、例えば、アルミニウム、クロム、スズ、又は銀は、車両に使用され、又はカラーマッチングに用いられる。半金属は様々な色調を提供できるため、本明細書に記載する装飾物により、カラーマッチング以外のものも達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第6328358号明細書
【文献】国際公開第2012/066417号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、これらの限界を克服し、以下に開示するその他の利点を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による車両のためのレドームは、電波透過性樹脂から形成された、近位面及び遠位面を有する基板と、前記近位面に付与された装飾層とを備えている。当該装飾層は、前記近位面上に堆積された半金属又は半金属合金を含む。前記レドームは、前記半金属又は半金属合金が少なくとも1つの酸化物と組み合わされていることを特徴とする。
【0017】
前記装飾層が、半金属又は半金属合金と1以上の酸化物とからのみ形成され又は構成され得ることを指摘しておかなければならない。
【0018】
好ましくは、前記酸化物(単数又は複数)は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、ケイ素(Si)、銀(Ag)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ガリウム(Ga)、又は、アルミニウム(Al)から選択され、前記半金属又は前記合金の半金属は、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及び/又はテルルから選択される。
【0019】
また、本発明による車両のための前記レドームは、好ましくは、前記装飾層を覆う電波透過性樹脂層をさらに含み、当該樹脂層は、装飾用のインクオーバーレイ(a decoration ink overlay)を含む。
【0020】
有利には、前記酸化物(単数又は複数)と組み合わされた前記半金属又は半金属合金は、前記近位面の表面上に、任意の適切な物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)により堆積される。
【0021】
また、本発明は、以上に定義したレドームを含む車両にも関連している。当該車両はフロントグリルアセンブリを含み、当該グリルアセンブリ内に前記レドームが配置されている。前記車両は、さらに、前記レドームの背後に配置され且つ前記レドームに位置合わせされたレーダアンテナを含む。
【0022】
上述の欠点は、酸化物を用いることにより克服できる。これらの酸化物は、半金属又は半金属合金と組み合わせて用いられる。
【0023】
本発明によるレドームにより、以下の利点が提供され得る。すなわち、
‐半金属装飾層の、基板上への接着性が向上する、
‐半金属装飾層の耐腐食性が向上する、
‐半金属装飾層のメタリック調が、その他の車両金属装飾部分にマッチするように強調される、
‐酸化物も導電性が低いため、酸化物による電磁波への歪み導入を無視できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に従って構成され且つ本発明を具現化する、グリルアセンブリ内に設置された装飾的なレドームと、当該レドームの後ろに配置されたレーダアンテナとを有する車両の部分等角図である。
【
図2】グリル内に配置されたレドームの一部の概略断面図であり、車両内でレドームの後ろに配置されたレーダアンテナと、自動車前方の検出された物体と、放射及び反射されたレーダ波の概略図とを示す。
【
図3】ベース層、装飾層、及び保護カバー層を示すレドームの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に、本明細書及び添付の特許請求の範囲において、用語「半金属」(“metalloid”)は、以下の化合物、すなわち、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、及び/又は、テルルのいずれかを意味する。
【0026】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲において、用語「酸化物」(“oxide”)は、以下の酸化物のいずれかを意味する。すなわち、:TixOy(チタン酸化物)、VxOy(バナジウム酸化物)、CrxOy(クロム酸化物)、MnxOy(マンガン酸化物)、ZrxOy(ジルコニウム酸化物)、NbxOy(ニオブ酸化物)、MoxOy(モリブデン酸化物)、HfxOy(ハフニウム酸化物)、TaxOy(タンタル酸化物)、WxOy(タングステン酸化物)、IrxOy(イリジウム酸化物)、NixOy(ニッケル酸化物)、PtxOy(白金酸化物)、AgxOy(銀酸化物)、InxOy(インジウム酸化物)、TlxOy(タリウム酸化物)、SixOy(ケイ素酸化物)、GaxOy(ガリウム酸化物)、又は、AlxOy(アルミニウム酸化物)であり、すなわち、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銀(Ag)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、又はアルミニウム(Al)を含む酸化物である。
【0027】
レドームは、マイクロ波アンテナを覆って、アンテナを、雨、氷、風及びその他の環境状況から保護し、また、アンテナが見えなくなるように隠すために設置される。主な必要条件は、レドームがレーダ又は電波を透過させ、しかも、レドームによる信号の減衰及び/又は歪みが最小限であることである。
【0028】
本発明は、1以上の酸化物を含む半金属又は半金属合金をレドームに使用することに関する。本発明は、レドーム装飾層として、例えば、酸化物と組み合わされたゲルマニウム又はケイ素(電気抵抗が高く、すなわち、20℃で1オーム・メートルの半金属)を採用する。
【0029】
ゲルマニウムの融点は高く、938.25℃であり(ケイ素は1414℃)、また、ゲルマニウムの沸点は2833℃(ケイ素は3265℃)であるため、これらの元素は、インジウムの場合に適用されるような熱蒸着法を用いて堆積させることはできない。それでもなお、これらの元素は利点をもたらす。
【0030】
本発明によれば、物理蒸着(物理気相成長)(PVD)又は化学蒸着(化学気相成長)(CVD)が、ベース層又は本体を含む基板上に半金属及び酸化物から成る層を堆積させるために用いられる可能な方法である。これらの技術の堆積プロセスにより、装飾層の均一性が保証される。
【0031】
本発明の自動車用の装飾的レドームは、成形されたレドームを備え、この成形レドームは、樹脂から構成されたベース層又はベース体と、当該ベース層又はベース体の表面上の、光沢のある装飾層とを有する。光沢のある装飾層は、半金属(例えば、ゲルマニウム、ホウ素、ケイ素、ヒ素、アンチモン若しくはテルル)及び/又は半金属合金を1以上の酸化物と組み合わせて構成されている。
【0032】
半金属及び/又は半金属合金並びに酸化物から成る層を用いることにより、電波透過性は、欧州特許出願公開第1560288号明細書にて提示されているようなインジウム層又はその他の金属(例えば、スズ)と比較して、数桁単位で向上され得る。
【0033】
インジウム又はスズなどの金属は高導電性であり、一般的に用いられる堆積方法での厚さの変動性を伴うことで、各レーダウィンドウのレーダビーム透過性を、製造の最終段階でテストする必要があった。これが、レドームの製造費用をかなり増幅させていた。
【0034】
本発明の、酸化物と組み合わせた半金属の層は、導電性が非常に低いため、各レドームをテストする必要がなくなる。
【0035】
半金属に酸化物を組み合わせた層を使用することにより、金属装飾が施されない領域を設ける必要がない。なぜなら、このような層は、レーダ波に関して誘電体のように機能するからである。これにより、本発明のレドームの製造工程の複雑さは、日本国特開2003-252137号公報に例示されている方法と比較して、低減される。
【0036】
ここで、図面を詳細に参照する、図面全体を通じて、類似の部品を示すためには類似の参照番号を用いる。例えば、
図1に示されている参照番号10は、図面全体において、本発明に従って構成され且つ本発明を具現化する、自動車車両14のグリルアセンブリ12内に取り付けるように構成された装飾的レドームを示す。
【0037】
車両14内の、装飾的レドーム10の背後に、レーダアンテナ16が、装飾的レドーム10に位置合わせされて配置されている。
【0038】
図2は、レドーム10の断面図を含み、本発明によるレーダアンテナのビーム経路を示す。好ましくは、近位面及び遠位面を有する層又はベース体18を含む基板が、電波伝搬損失が低いか又は誘電損失が低い透明又は不透明の樹脂から成形される。近位面の表面上で、光沢のある装飾層20が、少なくとも1つの酸化物を含む半金属及び/又は半金属合金を含む。
【0039】
本発明によれば、装飾層20は均一の厚さを有する。自動車のエンブレムなどの装飾品は、ベース層又はベース体18の近位面を、凹凸面構造で形成することにより設けられる。
【0040】
本発明による装飾的レドーム10は、さらに、本体全体をミリ波帯の半波長(the mill metric wave semi wave length)に適応させるために装飾層20を覆う透明樹脂層22を含むことができ、この結果、レーダ波に対する減衰が低減される。樹脂層22は、ベース体18及び装飾層20の上に成形されることができ、そしてその遠位面に、装飾層20の装飾的外観を補う装飾的なインクオーバーレイ(a decorative ink overlay)を含み得る。
【0041】
ベース層又はベース体18は、電波伝搬損失が低く且つ誘電特性に関して優れた材料から構成される。誘電特性は、例えば、比誘電率E’及び誘電損失tan0により示される。
【0042】
先に述べたように、レーダアンテナ16は自動車14内に取り付けられ、フロントグリルアセンブリ12の後ろに配置される。装飾的レドーム10(自動車メーカーの光沢のある金属製エンブレム、又は、特定の装飾物を含む)は、フロントグリルアセンブリ12内に配置される。
【0043】
図2を参照すると、レーダ装置16からのミリ波23が前方に、レドーム10を通って放射され、そして、物体26からの反射波24がレドーム10を通ってレーダ装置16に戻ってくる様子が見られよう。
【0044】
装飾層20は、複数の半金属及び/又は半金属合金並びに少なくとも1つの酸化物から成る層、或いは、半金属と半金属合金との交互の層から形成されることができ、各層の厚さは、約1nm~500nmであり、より好ましくは、全厚が約10nm~100nmであることが、本発明の目的の達成と金属色効果を得るために、最も有効であると考えられる。
【0045】
また、装飾層は、1つの半金属及び/又は半金属合金と少なくとも1つの酸化物との交互の層と、別の半金属層とを含んでもよい。
【0046】
このようにして、本発明の様々な態様、特徴及び構想を達成し、且つ、実際の利用条件を良好に満たす自動車用装飾的レドームが提供されることが理解されよう。
【0047】
例:
基板の近位面上の装飾の可能な非限定的な例は、ケイ素及びゲルマニウムを含む複数の半金属層、及び、以下の元素を用いた複数の酸化物堆積層である。これらの元素は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銀(Ag)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、又は、アルミニウム(Al)である。
【0048】
より好ましくは、以下の層の組み合わせが適切である。すなわち、二酸化チタン(TiO2)+二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)+二酸化ゲルマニウム(GeO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)+二酸化ケイ素(SiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)+二酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化クロム(Cr2O3)+二酸化ケイ素(SiO2)、酸化クロム(Cr2O3)+酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化ハフニウム(HfO2)+二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)+二酸化ゲルマニウム(GeO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)+二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)+二酸化ゲルマニウム(GeO2)。
【0049】
本発明の様々な可能な実施形態を考案することが可能であり、また、本明細書に示した例示的な実施形態に様々な変更を、本発明の精神から逸脱せずに加えることが可能であるため、本明細書に記載され又は添付図面に示されている全ての事項は、限定的な意味ではなく例示として解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0050】
10 レドーム
12 フロントグリルアセンブリ
14 車両
16 レーダアンテナ
18 基板
20 装飾層
22 電波透過性樹脂層