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特許7053509睡眠深度潜時に基づいて睡眠中に聴覚刺激の音量を調整するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】睡眠深度潜時に基づいて睡眠中に聴覚刺激の音量を調整するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A61M21/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018567276
(86)(22)【出願日】2017-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017065654
(87)【国際公開番号】W WO2018001936
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】62/354,902
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(73)【特許権者】
【識別番号】506097988
【氏名又は名称】ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア モリーナ,ゲイリー ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ベレーシ,ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】リードナー,ブレイディ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】トノーニ,ジューリオ
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-65996(JP,A)
【文献】国際公開第2016/087983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整するよう構成されているシステムであって、
前記聴覚刺激を前記対象者に提供するよう構成されている1つ以上の感覚刺激器と、
前記対象者における脳活動に関連する情報を伝達する出力信号を生成するよう構成されている1つ以上のセンサと、
前記1つ以上の感覚刺激器及び前記1つ以上のセンサと動作可能に通信する1つ以上のハードウェアプロセッサであって、前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、マシン読み取り可能な命令により、
前記出力信号に基づいて、第1の睡眠セッションについての前記対象者における脳活動パラメータを決定することであって、前記脳活動パラメータは、前記対象者の睡眠が前記第1の睡眠セッション中に深くなるレートを示す深化時間を含み、前記深化時間は、前記第1の睡眠セッション中の前記対象者における睡眠深度を示す、(i)脳波(EEG)信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)前記対象者における徐波の密度、又は(iii)前記第1の睡眠セッションについてのヒプノグラムに基づいて決定される、決定することと、
前記深化時間に基づいて、後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される聴覚刺激についての音量増加率を決定することであって、前記音量増加率は、以下の式
【数1】
のうち少なくとも1つにおけるモデルを使用して決定され、式中、Vは時間tにおける音量であり、rは音量増加率であり、V 及びV はそれぞれ、前記対象者について選択される最大音量及び最小音量であり、Tは深化時間である、決定することと、
前記の決定された音量増加率及び前記後続の睡眠セッション中の前記出力信号に基づいて、前記後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される前記聴覚刺激の音量を調整するように前記1つ以上の感覚刺激器を制御することと、
を行うよう構成されている、1つ以上のハードウェアプロセッサと、
を有する、システム。
【請求項2】
前記最小音量及び前記最大音量は、前記対象者について、以前の睡眠セッションからの前記対象者における脳活動に関連する情報に基づいて、前記以前の睡眠セッション中の以前の睡眠深度推定に基づいて、且つ/又は、人口統計学的に類似した集団についての対応する音量閾値に基づいて選択された最小閾値音量及び最大閾値音量である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、さらに、(i)前記EEG信号の前記高周波数帯域におけるパワーと前記低周波数帯域におけるパワーとの前記比、(ii)前記対象者における前記徐波の密度、又は(iii)前記第1の睡眠セッションについての前記ヒプノグラムに基づいて、前記第1の睡眠セッションについての経時的な睡眠深度を決定することを行うよう構成されており、
前記深化時間は、2つの予め定められた睡眠深度閾値の間の時間である、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、前記深化時間が、前記対象者の前記第1の睡眠セッションにおける連続的なN3睡眠セグメントの分布に指数関数をあてはめることにより決定されるように、構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、前記の決定された音量増加率及び前記後続の睡眠セッション中の前記出力信号に基づいて、前記後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される前記聴覚刺激の音量を調整するように前記1つ以上の感覚刺激器を制御することが、
前記後続の睡眠セッション中の前記比、前記徐波の密度、及びピーク間徐波振幅のうちの1つ以上に基づいて、前記後続の睡眠セッション中の前記対象者における睡眠深度を決定することと、
前記後続の睡眠セッション中の前記の決定された睡眠深度及び前記の決定された音量増加率に基づいて、前記後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される前記聴覚刺激の音量を調整するように前記1つ以上の感覚刺激器を制御することと、
を含むように、構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上の感覚刺激器は、トーン発生器及び/又はスピーカを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上のセンサは、EEG電極を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整するシステムであって、
前記聴覚刺激を前記対象者に提供する聴覚刺激提供手段と、
前記対象者における脳活動に関連する情報を伝達する出力信号を生成する出力信号生成手段と、
前記出力信号に基づいて、第1の睡眠セッションについての前記対象者における脳活動パラメータを決定する手段であって、前記脳活動パラメータは、前記対象者の睡眠が前記第1の睡眠セッション中に深くなるレートを示す深化時間を含み、前記深化時間は、前記第1の睡眠セッション中の前記対象者における睡眠深度を示す、(i)脳波(EEG)信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)前記対象者における徐波の密度、又は(iii)前記第1の睡眠セッションについてのヒプノグラムに基づいて決定される、手段と、
前記深化時間に基づいて、後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される聴覚刺激についての音量増加率を決定する手段であって、前記音量増加率は、以下の式
【数2】
のうち少なくとも1つにおけるモデルを使用して決定され、式中、Vは時間tにおける音量であり、rは音量増加率であり、V 及びV はそれぞれ、前記対象者について選択される最大音量及び最小音量であり、Tは深化時間である、手段と、
前記の決定された音量増加率及び前記後続の睡眠セッション中の前記出力信号に基づいて、前記後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される前記聴覚刺激の音量を調整するように前記聴覚刺激提供手段を制御する手段と、
を有する、システム。
【請求項9】
前記最小音量及び前記最大音量は、前記対象者について、以前の睡眠セッションからの前記対象者における脳活動に関連する情報に基づいて、前記以前の睡眠セッション中の以前の睡眠深度推定に基づいて、且つ/又は、人口統計学的に類似した集団についての対応する音量閾値に基づいて選択された最小閾値音量及び最大閾値音量である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
(i)前記EEG信号の前記高周波数帯域におけるパワーと前記低周波数帯域におけるパワーとの前記比、(ii)前記対象者における前記徐波の密度、又は(iii)前記第1の睡眠セッションについての前記ヒプノグラムに基づいて、前記第1の睡眠セッションについての経時的な睡眠深度を決定する手段
をさらに有し、
前記深化時間は、2つの予め定められた睡眠深度閾値の間の時間である、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
前記深化時間は、前記対象者の前記第1の睡眠セッションにおける連続的なN3睡眠セグメントの分布に指数関数をあてはめることにより決定される、請求項8記載のシステム。
【請求項12】
前記の決定された音量増加率及び前記後続の睡眠セッション中の前記出力信号に基づいて、前記後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される前記聴覚刺激の音量を調整するように前記聴覚刺激提供手段を制御することは、
前記後続の睡眠セッション中の前記比、前記徐波の密度、及びピーク間徐波振幅のうちの1つ以上に基づいて、前記後続の睡眠セッション中の前記対象者における睡眠深度を決定することと、
前記後続の睡眠セッション中の前記の決定された睡眠深度及び前記の決定された音量増加率に基づいて、前記後続の睡眠セッション中に前記対象者に提供される前記聴覚刺激の音量を調整するように前記聴覚刺激提供手段を制御することと、
を含む、請求項8記載のシステム。
【請求項13】
前記聴覚刺激提供手段は、トーン発生器及び/又はスピーカを含む、請求項8記載のシステム。
【請求項14】
前記出力信号生成手段は、EEG電極を含む、請求項8記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整するよう構成されているシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠をモニタリングするシステムが知られている。睡眠中の感覚刺激が知られている。睡眠中の感覚刺激は、しばしば、連続的に且つ/又は対象者の睡眠パターンに対応しない間隔及び強度で、適用される。本開示は、従来技術のシステムにおける欠点を克服する。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本開示の1つ以上の態様は、睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整するよう構成されているシステムに関する。本システムは、1つ以上の感覚刺激器、1つ以上のセンサ、1つ以上のハードウェアプロセッサ、及び/又は他のコンポーネントを有する。1つ以上の感覚刺激器は、聴覚刺激を対象者に提供するよう構成されている。1つ以上のセンサは、対象者における脳活動に関連する情報を伝達する出力信号を生成するよう構成されている。1つ以上のハードウェアプロセッサは、1つ以上の感覚刺激器及び1つ以上のセンサと動作可能に通信する。1つ以上のハードウェアプロセッサは、マシン読み取り可能な命令により、出力信号に基づいて、第1の睡眠セッションについての対象者における脳活動パラメータを決定することであって、脳活動パラメータは、対象者の睡眠が第1の睡眠セッション中に深くなるレートを示す深化時間(deepening time)を含み、深化時間は、第1の睡眠セッション中の対象者における睡眠深度を示す、(i)脳波(EEG)信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者における徐波の密度、又は(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラムに基づいて決定される、決定することと、深化時間に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激についての音量増加率を決定することと、決定された音量増加率及び後続の睡眠セッション中の出力信号に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激の音量を調整するように1つ以上の感覚刺激器を制御することと、を行うよう構成されている。
【0004】
本開示のさらに別の態様は、調節システムにより、睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整する方法に関する。調整システムは、1つ以上の感覚刺激器、1つ以上のセンサ、1つ以上のハードウェアプロセッサ、及び/又は他のコンポーネントを有する。本方法は、1つ以上の感覚刺激器により、聴覚刺激を対象者に提供するステップと、1つ以上のセンサにより、対象者における脳活動に関連する情報を伝達する出力信号を生成するステップと、1つ以上のプロセッサにより、出力信号に基づいて、第1の睡眠セッションについての対象者における脳活動パラメータを決定するステップであって、脳活動パラメータは、対象者の睡眠が第1の睡眠セッション中に深くなるレートを示す深化時間を含み、深化時間は、第1の睡眠セッション中の対象者における睡眠深度を示す、(i)脳波(EEG)信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者における徐波の密度、又は(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラムに基づいて決定される、ステップと、1つ以上のプロセッサにより、深化時間に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激についての音量増加率を決定するステップと、1つ以上のプロセッサにより、決定された音量増加率及び後続の睡眠セッション中の出力信号に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激の音量を調整するように1つ以上の感覚刺激器を制御するステップと、を含む。
【0005】
本開示のさらに別の態様は、睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整するシステムに関する。本システムは、聴覚刺激を対象者に提供する聴覚刺激提供手段と、対象者における脳活動に関連する情報を伝達する出力信号を生成する手段と、出力信号に基づいて、第1の睡眠セッションについての対象者における脳活動パラメータを決定する手段であって、脳活動パラメータは、対象者の睡眠が第1の睡眠セッション中に深くなるレートを示す深化時間を含み、深化時間は、第1の睡眠セッション中の対象者における睡眠深度を示す、(i)脳波(EEG)信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者における徐波の密度、又は(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラムに基づいて決定される、手段と、深化時間に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激についての音量増加率を決定する手段と、決定された音量増加率及び後続の睡眠セッション中の出力信号に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激の音量を調整するように聴覚刺激提供手段を制御する手段と、を有する。
【0006】
本開示のこれらの目的及び他の目的、これらの特徴及び他の特徴、並びにこれらの特性及び他の特性に加えて、構造の関連要素の動作方法及び機能、並びにパーツの組み合わせ及び製造の実利が、図面を参照して以下の説明及び特許請求の範囲を検討すると、より明らかになるであろう。図面の全ては、本明細書の一部を形成し、様々な図面において、類似する参照符号は、対応する部分を表している。しかしながら、図面は、例示及び説明の目的に過ぎず、本開示の限界の定義として意図されているものではないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整するよう構成されているシステムを示す図。
図2】睡眠中のユーザのEEGの典型的なモニタリングと、覚醒を引き起こすことなく睡眠徐波を増強するための聴覚刺激の送達と、を示す図。
図3】覚醒を引き起こすリスクがある聴覚刺激音量増加率を示す図。
図4】刺激の音量がユーザにおける徐波活動を増強するレベルに達しないような、ユーザにとって低すぎる、典型的なシステムにおける聴覚刺激音量増加率を示す図。
図5】睡眠セッション中の睡眠深度を示す図。
図6】連続的なN3セグメントの分布に指数関数をあてはめることにより存続を推定することを示す図。
図7】本システムにより実行される動作をまとめた図。
図8a】本システムを使用して集められた実験結果を示す図。
図8b】本システムを使用して集められた実験結果を示す図。
図9】調整システムにより、睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の参照を含む。本明細書において使用される場合、2つ以上のパーツ又はコンポーネントが「結合されている」という記述は、リンクが生じる限りにおいて、これらのパーツが、直接的に又は間接的にすなわち1つ以上の中間パーツ又はコンポーネントを介して、一緒につなげられる又は動作することを意味する。本明細書において使用される場合、「直接結合されている」は、2つの要素が互いに直接接触していることを意味する。本明細書において使用される場合、「固定的に結合されている」又は「固定されている」は、2つのコンポーネントが、互いに対して一定の向きを維持しながら一体として移動するように結合されていることを意味する。
【0009】
本明細書において使用される場合、「単一の(unitary)」という語は、コンポーネントが単一の(single)ピース又はユニットとして生成されることを意味する。すなわち、別々に生成され、次いでユニットとして一緒に結合される複数のピースを含むコンポーネントは、「単一の(unitary)」コンポーネント又はボディでない。本明細書において使用される場合、2つ以上のパーツ又はコンポーネントが互いに「係合する」という記述は、これらのパーツが、直接的に又は1つ以上の中間部分又はコンポーネントを介して、互いに対して力を及ぼすことを意味する。本明細書において使用される場合、「数」という用語は、1又は1より大きい整数(すなわち複数)を意味する。
【0010】
例えば、次に限定されるものではないが、一番上、一番下、左、右、上方、下方、前、後、及びこれらの派生語等の方向を示す語は、図面に示される要素の向きに関連し、請求項に明示的に記載されていない限り、請求項を限定するものではない。
【0011】
図1は、睡眠中に対象者12に送達される聴覚刺激の音量を調整するよう構成されているシステム10の概略図である。睡眠中に聴覚刺激を用いて対象者12における徐波活動(SWA)を増加させることにより、睡眠の回復値が高められ得る。睡眠覚醒閾値音量(sleep-arousing threshold volume)未満の音量範囲内では、より高い聴覚刺激音量は、対象者12におけるより高いSWAレベルをもたらす。主観的に選択されたより低い音量から、刺激の音量が、微小覚醒を防止するために、徐々に増加され得る。システム10は、対象者12を覚醒させる過度に速い音量増加を防止するために、且つ/又は、効果がないものであり得る且つ/又は浅い睡眠中に最大の刺激が加えられることをもたらし得る遅い刺激音量増加を回避するために、(以下で説明される)音量増加の動態が対象者12の睡眠深度に適応されるように、構成されている。
【0012】
上述したように、睡眠中の聴覚刺激は、睡眠徐波を増強し、睡眠の回復値を増加させる。睡眠中のユーザの脳波(EEG)をモニタリングし、覚醒を引き起こすことなく睡眠徐波を増強するために聴覚刺激を送達することが知られている。このプロセスが図2に示されている。図2は、ユーザ202に結合されているEEG電極200を示している。EEG電極200は、EEG信号204を出力する。典型的なシステムは、睡眠覚醒事象の存在を判定する(206)。覚醒事象は、より高いアルファ帯域(8~12Hz)及びベータ帯域(15~30Hz)におけるEEGパワーにおける閾値を使用して検出される。覚醒が刺激中に(210)検出された場合(208)、刺激は直ちに停止される(212)。覚醒が刺激期間外で(214)検出された場合(208)、次の刺激セグメントの開始が遅らせられる(216)。覚醒が検出されない場合(218)、典型的なシステムは、EEGのより低いデルタ周波数範囲(0.5~4Hz)における高い活動により特徴付けられる徐波睡眠(例えばN3睡眠)の存在をリアルタイムで検出する(220)ことに進む。徐波睡眠が、十分に長い時間期間にわたって検出された場合(222)、典型的なシステムは、一定の1秒長のトーン間インターバル(inter-tone interval)だけ互いから分離された50ミリ秒長のトーンのシーケンスからなる聴覚刺激を送達する(224)。聴覚刺激の音量は、ユーザにおける徐波を増強するために、徐々に増加される。時間「t」秒において、時間ウィンドウ[t-15;t]におけるSWA(例えば、EEGの0.5~4Hzの周波数帯域におけるパワー)が、時間ウィンドウ[t-30;t-15]におけるSWAよりも低い場合、刺激の音量は、現在の音量に固定割合「rfixed」比例した分だけ増加される。時間ウィンドウ[t-15;t]におけるSWAが、時間ウィンドウ[t-30;t-15]におけるSWA以上である場合、音量は変更されずそのままである。
【0013】
音量増加率が高すぎる場合、ユーザにおいて覚醒を引き起こすリスクがある。これが図3に示されている。図3において、EEG信号300及び刺激音量302は、音量増加率304が20%に予め設定された(306)EEG記録について示されている。この例において、音量増加ΔVは、ΔV=+0.2・Vとして、現在の音量に関連している。この例において、音量は、8分で、0.02(~ 80+20・log(0.02))から始まって(316)、0.45(~ 80+20・log(0.45)=73dB)という正規化された音量に達している(310、312、314)。図3に示されている例におけるユーザにとって、この音量増加率は、ユーザの徐波睡眠を阻害している(320)ので、過度に高い。
【0014】
音量増加率がユーザにとって低すぎる場合、刺激の音量は、ユーザにおけるSWAを増強するレベルに達しない。図4は、(例えば、ユーザに対して行われた実験的知覚検査に従った、)より大きな刺激に耐えることができるユーザについて、刺激音量がより高いレベルに達しないようにする、ΔV=+0.1・Vであるような0.1という音量増加率400を示している。この特定の場合について、刺激は、約13分で、45dBから始まって66.8dBまで増加している(402)。あまりに低く設定される音量増加率の別の欠点は、睡眠が浅くなる過程にあるときに、音量がより高いレベルに達することがあり、これは覚醒を引き起こすおそれがある、ということである。信号の比較的長い期間(例えば、2~3分の期間)は、睡眠段階404 N3(406)として(例えば、ヒプノグラムにおいて)スコアリングされ得るが、この期間内の睡眠深度は、一様に低いものではなく、より浅い睡眠が、継続的な(例えば、数分長の)N3(408)睡眠期間の開始時及び終了時に生じるU字形の動態に従って変化する。
【0015】
図1に戻ると、いくつかの実施形態において、システム10は、感覚刺激器16、センサ18、プロセッサ20、電子ストレージ22、ユーザインタフェース24、及び/又は他のコンポーネントのうちの1つ以上を有する。図1において、感覚刺激器16、センサ18、プロセッサ20、電子ストレージ22、及びユーザインタフェース24は、別個のエンティティとして示されている。これは、限定的であるようには意図されていない。システム10のコンポーネントの一部及び/若しくは全て並びに/又は他のコンポーネントは、1つ以上の単一デバイスにグループ化され得る。例えば、システム10のコンポーネントの一部及び/又は全ては、対象者12により着用されるヘッドバンド及び/又は他の衣類の一部としてグループ化され得る。
【0016】
感覚刺激器16は、聴覚(例えばトーン)刺激及び/又は他の感覚刺激を対象者12に提供するよう構成されている。感覚刺激器16は、睡眠セッションの前に、睡眠セッション中に、睡眠セッションの後に、且つ/又は他の時間に、聴覚刺激及び/又は他の感覚刺激を対象者12に提供するよう構成されている。例えば、感覚刺激器16は、睡眠セッションにおける徐波睡眠中に、聴覚刺激を対象者12に提供するよう構成され得る。感覚刺激器16は、睡眠セッション中に、聴覚刺激を対象者12に提供して、対象者12において徐波活動(以下で説明されるように0.5~4Hz帯域におけるEEGパワーにより示される)を誘発、維持、及び/又は調整するよう構成され得る。いくつかの実施形態において、感覚刺激器16は、調整することが、対象者12における徐波活動(SWA)の増加、減少、及び/又は他の調整を含むように、構成され得る。いくつかの実施形態において、聴覚刺激の送達は、SWAに関連付けられる睡眠段階に対応するように、時間が定められる、対象者12を睡眠から覚醒させるように、時間が定められる、且つ/又は、対象者12における他の睡眠に対応するように、時間が定められる。
【0017】
上述したように、感覚刺激器16は、対象者12の聴覚刺激によって、SWAを誘発及び/又は調整するよう構成されている。いくつかの実施形態において、感覚刺激器16は、非侵襲的脳刺激及び/又は他の方法によって、SWAを誘発及び/又は調整するよう構成され得る。感覚刺激器16は、聴覚刺激及び/又は他の感覚刺激を用いて、非侵襲的脳刺激によって、SWAを誘発及び/又は調整するよう構成され得る。他の感覚刺激は、におい、視覚刺激、接触、味、及び/又は他の刺激を含む。例えば、経頭蓋磁気刺激を対象者12に適用して、SWAを誘発する、増加させる、且つ/又は減少させることができる。感覚刺激器16の例は、音楽プレイヤ、トーン発生器、1つ以上のスピーカ、対象者12の頭皮上の電極の集合、振動刺激(体性感覚刺激としても知られている)を送達するユニット、脳の皮質を直接刺激する磁場を発生させるコイル、光発生器、フレグランスディスペンサ、及び/又は他のデバイスのうちの1つ以上を含み得る。
【0018】
センサ18は、対象者12の脳活動に関連する情報及び/又は他の情報を伝達する出力信号を生成するよう構成されている。センサ18は、対象者12の睡眠セッション中に継続的に、睡眠セッション中に定期的間隔で、睡眠セッションの前に、睡眠セッションの後に、且つ/又は他の時間に、出力信号を生成するよう構成されている。対象者12の脳活動は、対象者12における睡眠深度、現在の睡眠段階、SWA、及び/又は、対象者12の他の特性に対応し得る。対象者12の脳活動は、急速眼球運動(REM)睡眠、非急速眼球運動(NREM)睡眠、及び/又は他の睡眠に関連付けられ得る。対象者12の睡眠段階は、NREM段階N1、段階N2、若しくは段階N3睡眠、REM睡眠、及び/又は他の睡眠段階のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、N1は、浅い睡眠状態に対応し、N3は、深い睡眠状態に対応する。いくつかの実施形態において、NREM段階3又は段階2睡眠は、徐波睡眠(例えば深い睡眠)であり得る。
【0019】
センサ18は、このようなパラメータを直接的に測定する1つ以上のセンサを含み得る。例えば、センサ18は、対象者12の脳内の電流フローから生じる、対象者12の頭皮に沿った電気的活動を検出するよう構成されている電極であってもよいし、且つ/又は、そのような電極を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のセンサ18は、EEG電極及び/又は他のセンサである。EEGは、睡眠セッションを通じた変化を示す。例えば、EEGデルタパワー(SWA)の顕著な変化が、典型的には現れる。SWAは、0.5~4.5Hz帯域におけるEEG信号のパワーに対応する。いくつかの実施形態において、この帯域は、0.5~4Hzに設定される。SWAは、所与の睡眠セッションの周期的変動を通じた典型的な挙動を有する。SWAは、非急速眼球運動(NREM)睡眠中に増加し、急速眼球運動(REM)睡眠の開始前に減少し、REM中には低いままである。連続するNREMエピソードにおけるSWAは、1つのエピソードから次のエピソードまでに徐々に減少する。所与の睡眠セッション中の対象者12についてのEEGから、SWAが推定され得る、且つ/又は、徐波睡眠(例えば段階N3)が判定され得る。
【0020】
センサ18は、対象者12の脳活動に関連する情報を間接的に伝達する出力信号を生成する1つ以上のセンサを含み得る。例えば、1つ以上のセンサ18は、対象者12の心拍数に基づく出力を生成することもできるし(例えば、センサ18は、対象者12の胸部に配置される心拍数センサであってもよいし、且つ/又は、対象者12の手首におけるブレスレットとして構成されてもよいし、且つ/又は、対象者12の別の肢に配置されてもよい)、対象者12の動きに基づく出力を生成することもできるし(例えば、センサ18は、アクチグラフィ信号を使用して睡眠を分析することができるような、加速度計を有する、対象者12の手首及び/又は足首に巻かれるブレスレットを含み得る)、対象者12の呼吸に基づく出力を生成することもできるし、且つ/又は、対象者12の他の特性に基づく出力を生成することもできる。
【0021】
センサ18が、対象者12の近くの単一の位置に図示されているが、これは、限定的であるようには意図されていない。センサ18は、例えば、対象者12の皮膚に取り外し可能に結合される、(例えば、ヘッドバンド、リストバンド等として)対象者12により着用される対象者12の衣類に取り外し可能に結合される、感覚刺激器16内に(又はそのような感覚刺激器16と通信する)、(例えば、対象者12の動きに関連する出力信号を伝達するカメラ等の)対象者12が睡眠している間に対象者12を指し示すように配置される、且つ/又は、他の位置に等、複数の位置に配置されるセンサを含み得る。
【0022】
プロセッサ20は、システム10において情報処理機能を提供するよう構成されている。そのようなものとして、プロセッサ20は、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されているデジタル回路、情報を処理するように設計されているアナログ回路、状態機械、及び/又は、情報を電子的に処理するための他の機構のうちの1つ以上を含み得る。プロセッサ20は、1つ以上の感覚刺激器16、1つ以上のセンサ18、及び/又は他のコンポーネントと動作可能に通信するよう構成されている。プロセッサ20が、単一のエンティティとして図1に示されているが、これは、例示の目的に過ぎない。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、複数の処理ユニットを含んでもよい。これらの処理ユニットは、同じデバイス(例えば、感覚刺激器16、センサ18)内に物理的に配置されてもよいし、プロセッサ20は、連携して動作する複数のデバイスの処理機能を表してもよい。
【0023】
図1に示されているように、プロセッサ20は、マシン読み取り可能な命令により、1つ以上のコンピュータプログラムコンポーネントを実行するよう構成されている。1つ以上のコンピュータプログラムコンポーネントは、パラメータコンポーネント30、睡眠深度コンポーネント32、深化時間コンポーネント34、割合コンポーネント36、制御コンポーネント38、及び/又は他のコンポーネントのうちの1つ以上を含む。プロセッサ30は、ソフトウェア;ハードウェア;ファームウェア;ソフトウェア、ハードウェア、及び/又はファームウェアの何らかの組み合わせ;及び/又は、プロセッサ20上で処理機能を構成するための他の機構;により、コンポーネント30、32、34、36、38及び/又は他のコンポーネントを実行するよう構成され得る。
【0024】
コンポーネント30、32、34、36、及び38が、単一の処理ユニット内で同一の場所に配置されたものとして図1に示されているが、プロセッサ20が複数の処理ユニットを含む実施形態においては、コンポーネント30、32、34、36、38及び/又は他のコンポーネントのうちの1つ以上のコンポーネントは、他のコンポーネントからリモートに配置されてもよいことを理解されたい。以下で説明される異なるコンポーネント30、32、34、36、38及び/又は他のコンポーネントにより提供される機能の記載は、例示のためにあり、コンポーネント30、32、34、36、及び/又は38のうちのいずれのコンポーネントも、説明されるものよりも多い又は少ない機能を提供してもよいので、限定的であるようには意図されていない。例えば、コンポーネント30、32、34、36、及び/又は38のうちの1つ以上のコンポーネントは、除去されてもよく、該コンポーネントの機能の一部又は全ては、他のコンポーネント30、32、34、36、及び/又は38により提供されてもよい。別の例として、プロセッサ20は、コンポーネント30、32、34、36、及び/又は38のうちの1つのコンポーネントに属する以下の機能の一部又は全てを実行することができる1つ以上の追加のコンポーネントを実行するよう構成されてもよい。
【0025】
パラメータコンポーネント30は、睡眠セッション中の対象者12における脳活動パラメータを決定するよう構成されている。パラメータコンポーネント30は、上記の出力信号及び/又は他の情報に基づいて、脳活動パラメータを決定するよう構成されている。いくつかの実施形態において、1つ以上の脳活動パラメータは、EEGの様々な周波数帯域におけるパワー等のEEG関連パラメータ、高周波数帯域(例えば、アルファ周波数帯域、ベータ周波数帯域)におけるパワーと低周波数帯域(例えば、デルタ周波数帯域、シータ周波数帯域)におけるパワーとの比、及び/又は他のパラメータを含む。いくつかの実施形態において、パラメータコンポーネント30は、1つ以上の脳活動パラメータが、周波数、振幅、位相、及び/又は、紡錘波、K複合体、又は、睡眠徐波、アルファ波、及び/又はEEG信号の他の特性等、特定の睡眠パターンの存在であるように、且つ/又は、これらに関するように、構成されている。いくつかの実施形態において、1つ以上の脳活動パラメータを決定することは、脳活動に関連する個々の振動成分を加算的に組み合わせること、及び/又は、脳活動に関連する個々の振動成分に対して他の数学演算を実行することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上の脳活動パラメータは、EEG信号の周波数、振幅、及び/又は他の特性に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、決定された脳活動パラメータ及び/又はEEGの特性は、REM睡眠段階及び/又はNREM睡眠段階に対応する睡眠状態であり得る、且つ/又は、そのような睡眠状態を示し得る。いくつかの実施形態において、決定された脳活動パラメータは、上述したREM睡眠段階及び/又はNREM睡眠段階である。
【0026】
いくつかの実施形態において、脳活動パラメータは、EEG信号の低周波数帯域(例えば約0~約6Hz)におけるパワー、高周波数帯域(例えば約8~約40Hz)におけるパワー、EEG信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、そのような比の対数、対象者12における徐波の密度、対象者12における紡錘波の出現頻度、対象者12における徐波のピーク間振幅、及び/又は他のパラメータのうちの1つ以上を含む。パラメータコンポーネント30は、負のピークの振幅が、予め定められた閾値(例えば、-40マイクロボルト、及び/又は、システム10が本開示に記載されているように機能することを可能にする任意の他の閾値)未満であり、且つ、EEG信号における負へのゼロ交差(negative going zero-crossing)とその後に続く正へのゼロ交差(positive going zero-crossing)との間の時間期間が、第2の予め定められた閾値(例えば、200ミリ秒、及び/又は、システム10が本開示に記載されているように機能することを可能にする任意の他の閾値)よりも長い、EEG信号における負へのゼロ交差とその後に続く正へのゼロ交差とを検出することにより、個々の徐波を検出するよう構成されている。いくつかの実施形態において、パラメータコンポーネント30は、睡眠セッション中に継続的に、睡眠セッション中に予め定められた間隔で、且つ/又は他の時間に、対象者12における脳活動パラメータを決定するよう構成されている。
【0027】
いくつかの実施形態において、脳活動パラメータは睡眠深度を含む。睡眠深度コンポーネント32は、(例えば、第1の)睡眠セッション中の対象者12の睡眠深度を決定するよう構成されている。いくつかの実施形態において、睡眠セッションは、較正睡眠セッション及び/又は他の睡眠セッションであり得る。対象者12の睡眠深度を決定することは、(i)EEG信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者12における徐波の密度、(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラム、対象者12における紡錘波の出現頻度、及び/又は、対象者12における睡眠深度を示す他のパラメータを決定することを含む。いくつかの実施形態において、EEG信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比は、EEG信号のアルファ帯域(8~12Hz)又はベータ帯域(15~30Hz)帯域とデルタ帯域(0.5~4Hz)又はシータ帯域(4~8Hz)とのパワー比の対数である、且つ/又は、このようなパワー比の対数を含む。いくつかの実施形態において、対象者12における徐波の密度は、所与の時間期間における検出された睡眠徐波の密度(例えば、20秒における検出された徐波の数)であり得る、且つ/又は、このような密度を含み得る。いくつかの実施形態において、ヒプノグラムは、(例えば介護者により)手動で決定される、且つ/又は、睡眠深度コンポーネント32及び/又はプロセッサ20の他のコンポーネント30により自動で決定される。
【0028】
いくつかの実施形態において、睡眠深度コンポーネント32は、(例えば、センサ18からの)フィルタリングされたEEG信号に基づいてリアルタイム又はほぼリアルタイムで決定された比(例えば、ベータ-デルタ比(β/δ)及び/又は任意の他の高周波数帯域パワー対低周波数帯域パワー比)に基づいて、睡眠深度を決定するよう構成されている。いくつかの実施形態において、睡眠深度コンポーネント32は、二乗されたフィルタリングされた信号の移動平均(例えば、この比の滑らかな変動を保証するために、30秒長(これは、限定的であるようには意図されていない)の平均化が用いられる)を決定し、この移動平均に基づいて、この比を決定する。いくつかの実施形態において、睡眠深度コンポーネント32は、睡眠深度が、この比の決定された値であるように、構成されている。
【0029】
上述したように、いくつかの実施形態において、睡眠深度コンポーネント32は、対象者12における徐波の密度に基づいて睡眠深度を決定するよう構成されている。睡眠深度コンポーネント32及びパラメータコンポーネント30は、対象者12における徐波の密度が、予め定められた長さの時間ウィンドウ(例えば、20秒長のウィンドウ、及び/又は、システム10が本開示に記載されているように機能することを可能にする任意の他の長さのウィンドウ)中の対象者12におけるN3睡眠中に(例えばパラメータコンポーネント30により)検出された徐波の数であるように、構成されている。予め定められた長さの時間ウィンドウは、製造時に設定されることもあるし、対象者12の以前の睡眠に基づいて睡眠深度コンポーネント32により決定されることもあるし、ユーザインタフェース24を介してユーザにより設定されることもあるし、且つ/又は、他の方法により決定されることもある。いくつかの実施形態において、睡眠深度コンポーネント32は、睡眠深度が、予め定められた時間期間における徐波の数により示されるように、構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、脳活動パラメータは深化時間を含む。深化時間は、対象者12の睡眠が、(例えば、第1の)睡眠セッション中に深くなるレートを示す。深化時間コンポーネント34は、(i)EEG信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者12における徐波の密度、(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラム、及び/又は、睡眠深度コンポーネント32により決定された(例えば上述したような)、対象者12における睡眠深度を示す他のパラメータに基づいて、深化時間を決定するよう構成されている。深化時間(例えば、以下の式における「T」)は、睡眠深度における2つの予め定められた閾値の間の時間である。睡眠深度における2つの予め定められた閾値は、システム10の製造時に設定されることもあるし、ユーザインタフェース24を介して対象者12及び/又は他のユーザにより設定されることもあるし、深化時間コンポーネント34により決定されることもあるし、且つ/又は、他の方法により決定されることもある。
【0031】
睡眠深度コンポーネント32がベータ対デルタ比の対数(log(β/δ))として睡眠深度を決定する実施形態において、深化時間コンポーネント34は、2つの予め定められた閾値(例えば「-2.5」及び「-3」であるが、これは、限定的であるようには意図されていない)が、log(β/δ)曲線において設定されるように、構成されている。log(β/δ)曲線は、睡眠が深くなるにつれて徐々に減少し、この曲線がこれらの閾値と交差するタイミングが、深化時間「T」を規定するために使用される。これが図5に示されている。図5は、(例えば、較正)睡眠セッションを示している。log(β/δ)501の曲線502は、時間504の経過とともに減少する。2つの予め定められた閾値506、508はそれぞれ、-2.5及び-3に設定されている。log(β/δ)曲線が閾値506と交差するのとlog(β/δ)曲線が閾値508と交差するのとの間の時間(図5に示されているように、閾値508は閾値506よりも低い)が、深化時間T(例えば7分)である。この例において、深化時間コンポーネント34(図1)は、EEG信号のベータ帯域(15~30Hz)におけるパワーとデルタ帯域(0.5~4Hz)におけるパワーとの比の対数を決定する。これらの帯域におけるパワーは、ウェルチ法に従って6秒長のエポック(例えば、2秒長のオーバーラップを伴う4秒長のウィンドウ)におけるパワースペクトル密度を使用して、(例えば、図1に示されているパラメータコンポーネント30により)決定される。
【0032】
図1に戻ると、睡眠深度コンポーネント32が所与の時間期間での対象者12における徐波の密度として睡眠深度を決定する実施形態において、深化時間コンポーネント34は、予め定められた閾値を、所与の時間期間にわたる2つの異なるレベルの検出された徐波(例えば、5個の徐波/20秒及び10個の徐波/20秒)に設定するよう構成されている。徐波の密度は、睡眠が深くなるにつれて増加し、これらの閾値と交差するタイミングが、深化時間「T」を規定するために使用される。睡眠深度コンポーネント32が、睡眠深度の離散化されたバージョンを提供する、(例えば、較正)睡眠セッションについてのヒプノグラムとして睡眠深度を決定する実施形態において、深化時間コンポーネント34は、閾値が、第1のN3エポックが注釈付けされる開始時間及びN3からN2への第1の遷移の時間の点で規定されるように、構成されている。
【0033】
いくつかの実施形態において、深化時間コンポーネント34は、深化時間が、対象者12の(例えば、第1の)睡眠セッションにおける連続的なN3睡眠セグメントの分布に指数関数をあてはめることにより決定されるように、構成されている。睡眠深度コンポーネント32が(例えば、較正)睡眠セッションについてのヒプノグラムとして睡眠深度を決定する実施形態において、深化時間コンポーネント34は、連続的なN3セグメントの平均期間としてN3存続期間を決定するよう構成されている。存続も、連続的なN3セグメント(又はバウト(bout))の期間の分布に指数関数をあてはめることにより推定され得る。これが図6に示されている。図6は、所与の時間よりも長く存続する連続的なN3セグメントの確率を提供するN3存続600を示している。図6に示されているグラフの縦軸は、所与の時間604よりも長い連続的なN3セグメントの割合602である。所与の時間604は、図6に示されているグラフの横軸に示されている。深化時間は、連続的なN3睡眠セグメントの分布に、指数関数的に減少する関数606をあてはめることにより、決定される。次いで、(以下で説明される)音量増加率の決定に必要とされる深化時間が、T=τ(ここで、τは、指数関数的に減少する関数606における時定数である)に設定することにより決定される。
【0034】
いくつかの実施形態において、深化時間コンポーネント34は、上述した方法のうちの1つ以上の方法の組み合わせに基づいて(例えば、log(β/δ)、徐波密度、及び/又はヒプノグラムにおける予め定められた閾値の間の時間;及び/又は、指数関数あてはめ;のうちの1つ以上の組み合わせに基づいて)、深化時間Tを決定するよう構成されている。この組み合わせ方策は、各方法を用いて得られた深化時間の重み付き平均をとることを含む。log(β/δ)曲線は、深化時間を決定するためのより良い時間分解能を有するので、この方法を用いて得られた深化時間は、重み付き平均においてより高い重みを有することができる。
【0035】
割合コンポーネント36は、後続の(例えば、第2の)睡眠セッション中に対象者12に提供される聴覚刺激についての音量増加率を決定するよう構成されている。割合コンポーネント36は、深化時間及び/又は他の情報に基づいて音量増加率を決定するよう構成されている。上述した実施形態のうちの任意の実施形態において睡眠深度コンポーネント32及び深化時間コンポーネント34により決定された深化時間を使用して、音量増加率が、以下の式(1)におけるモデルを使用して決定される:
【数1】
ここで、「V」は時間「t」における音量であり、「r」は音量増加率である。これは以下を意味する:
【数2】
ここで、「V」及び「V」はそれぞれ、(以下で説明されるように)各ユーザについて主観的に選択される最大音量及び最小音量であり、「T」は、上述した方法のうちの任意の方法により(例えば、log(β/δ)、徐波密度、及び/又はヒプノグラムにおける予め定められた閾値;及び/又は、指数関数あてはめ;のうちの1つ以上に基づいて)決定され得る深化時間である。
【0036】
いくつかの実施形態において、割合コンポーネント36は、音量増加率が、対象者12について選択された最小閾値音量及び最大閾値音量に基づいて決定されるように、構成されている。いくつかの実施形態において、割合コンポーネント36は、最小閾値音量及び最大閾値音量が睡眠セッション中に変更されずそのままであるように、構成されている。最小閾値音量及び最大閾値音量は、以前の睡眠セッションからの対象者12における脳活動に関連する情報に基づいて;以前の睡眠セッション中の以前の睡眠深度推定に基づいて;人口統計学的に類似した集団についての対応する音量閾値に基づいて;且つ/又は、他の情報に基づいて;選択される。いくつかの実施形態において、最小閾値音量及び最大閾値音量は、目が覚めている間に対象者12が知覚できる最大及び/又は最小の周波数及び/又は音量に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、割合コンポーネント36は、例えば、最小音量を、対象者12の聴覚閾値に設定し、最大音量を、対象者12を覚醒させることができる音量レベル(例えば、対象者12により設定された目覚しアラームの音量)に設定することにより、音量限界が主観的に設定されるように、構成されている。較正夜間からの睡眠EEGデータを分析し、敏感な対象者を特定することにより、音量限界を設定することも可能である。
【0037】
制御コンポーネント38は、感覚刺激を対象者12に提供するように感覚刺激器16を制御するよう構成されている。制御コンポーネント38は、後続の(例えば、第2の)睡眠セッション中に対象者12に提供される聴覚刺激の音量を調整するように感覚刺激器16を制御するよう構成されている。制御コンポーネント38は、決定された音量増加率、後続の睡眠セッション中の出力信号、及び/又は他の情報に基づいて、感覚刺激器16を制御するよう構成されている。いくつかの実施形態において、制御コンポーネント38は、決定された音量増加率及び後続の(例えば、第2の)睡眠セッション中の出力信号に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者12に提供される聴覚刺激の音量を調整するように感覚刺激器16を制御することが、後続の睡眠セッション中の上記の比、徐波の密度、及びピーク間徐波振幅のうちの1つ以上に基づいて、後続の睡眠セッション中の対象者12における睡眠深度を決定すること;及び、後続の睡眠セッション中の決定された睡眠深度及び決定された音量増加率に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者12に提供される聴覚刺激の音量を調整するように感覚刺激器16を制御すること;を含むように、構成されている。
【0038】
図7は、(図1に示されている)システム10により実行される動作をまとめたものである。図7は、(例えば、睡眠深度コンポーネント32による、)較正(例えば、第1の)睡眠セッションからのEEG信号702に基づく睡眠深度決定700を示している。図7は、700(a)log(β/δ)比、700(b)徐波の密度、及び700(c)ヒプノグラムとして、睡眠深度を決定することを示している。深化時間「T」は、(例えば、図1に示されている深化時間コンポーネント34により、)睡眠深度決定700及び/又は他の情報に基づいて決定される(702)。702(a)に示されているように、予め定められた閾値は、-2.5及び-3に設定されている(これは、限定的であるようには意図されていない)。log(β/δ)曲線は、睡眠が深くなるにつれて徐々に減少し、これらの閾値と交差するタイミングは、深化時間「T」を規定するために使用される。702(b)に示されているように、予め定められた閾値は、5個の徐波/20秒及び10個の徐波/20秒に設定されている(これは、限定的であるようには意図されていない)。徐波の密度は、睡眠が深くなるにつれて増加し、これらの閾値と交差するタイミングは、深化時間「Tsw」を規定するために使用される。702(c)に示されているように、ヒプノグラムの閾値は、第1のN3エポックが注釈付けされる開始時間及びN3からN2への第1の遷移の時間の点で規定される。これらは、深化時間「T」を規定するために使用される。上述した方法のうちの任意の方法により決定された深化時間を使用して、音量増加率が、(例えば、図1に示されている割合コンポーネント36により、)式(1)、式(2)、及び/又は式(3)におけるモデルを使用して決定される(704)。最後に、制御コンポーネント38(図1)は、決定された音量増加率、後続の(例えば、第2の)睡眠セッション中の出力信号、及び/又は他の情報に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者12に提供される聴覚刺激の音量を調整するように1つ以上の感覚刺激器16(図1)を制御する(706)よう構成されている。
【0039】
図8は、システム10を使用して集められた実験結果を示している。図8に示されている実験結果を集めるために、ユーザ(例えば、対象者12)の第1の睡眠夜間中に記録されたEEG信号を使用して、そのユーザについて(例えば、図5に示されているように)7分という深化時間を決定した。7分という深化時間を用いると、音量増加率「r」は、0.01単位(units)/秒である。増加が15秒ごとになされる場合、増加率は、15秒ごとに0.15単位である。その後、2つの試験が、後続の睡眠セッション中に行われた。第1に、以前のシステムに典型的な15秒ごとに0.1単位というデフォルトの音量増加率を用いた刺激がユーザに提供された。これが図8(a)に示されている。第2に、(システム10により決定された)15秒ごとに0.15単位という調整された音量増加率を用いた刺激がユーザに提供された。これが図8(b)に示されている。図8(a)及び図8(b)は、0.1という音量増加率及び0.15という音量増加率にそれぞれ対応するEEG信号800及びEEG信号801を示している。図8(a)及び図8(b)に示されているように、調整された音量増加率(図8(b))がユーザを覚醒させることなく使用されたとき、刺激の音量は、より高い(SWAを増加させるのにより効果的な)レベルに達している(802、804)。
【0040】
図1に戻ると、電子ストレージ22は、情報を電子的に記憶する電子記憶媒体を含む。電子ストレージ22の電子記憶媒体は、システム10と一体的に提供される(すなわち、実質的に着脱不可能な)システムストレージ、及び/又は、例えば、ポート(例えば、USBポート、ファイヤワイヤ(登録商標)ポート等)又はドライブ(例えば、ディスクドライブ等)を介してシステム10に着脱可能に接続可能である着脱可能ストレージの一方又は両方を含み得る。電子ストレージ22は、光学的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、光ディスク等)、磁気的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ドライブ等)、電荷ベースの記憶媒体(例えば、EPROM、RAM等)、ソリッドステート記憶媒体(例えば、フラッシュドライブ等)、及び/又は他の電子的に読み取り可能な記憶媒体のうちの1つ以上を含み得る。電子ストレージ22は、ソフトウェアアルゴリズム、プロセッサ20により決定された情報、ユーザインタフェース24及び/又は外部コンピューティングシステムを介して受信された情報、及び/又は、システム10が適切に機能することを可能にする他の情報を記憶することができる。電子ストレージ22は、(全部又は一部が)システム10内の別個のコンポーネントであってもよいし、電子ストレージ22は、(全部又は一部が)システム10の1つ以上の他のコンポーネント(例えば、プロセッサ20)と一体的に提供されてもよい。
【0041】
ユーザインタフェース24は、システム10と対象者12及び/又は他のユーザとの間のインタフェースを提供するよう構成されており、対象者12及び/又は他のユーザは、そのようなインタフェースを介して、システム10に情報を提供し、システム10から情報を受け取ることができる。これは、データ、キュー、結果、及び/又は命令、並びに任意の他の伝達可能なアイテム(これらは集合的に「情報」と呼ばれる)が、ユーザ(例えば、対象者12)と、感覚刺激器16、センサ18、プロセッサ20、及び/又は、システム10の他のコンポーネントのうちの1つ以上と、の間で伝達されることを可能にする。例えば、EEGは、ユーザインタフェース24を介して介護者に表示され得る。
【0042】
ユーザインタフェース24に含まれるのに適したインタフェースデバイスの例は、キーパッド、ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、ディスプレイスクリーン、タッチスクリーン、スピーカ、マイクロフォン、インジケータライト、可聴アラーム、プリンタ、触覚フィードバックデバイス、及び/又は他のインタフェースデバイスを含む。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェース24は、複数の別個のインタフェースを含む。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェース24は、感覚刺激器16及び/又はシステム10の他のコンポーネントと一体的に提供される少なくとも1つのインタフェースを含む。
【0043】
有線又は無線である他の通信技術も、ユーザインタフェース24として、本開示により企図されていることを理解されたい。例えば、本開示は、ユーザインタフェース24が、電子ストレージ22により提供される着脱可能ストレージインタフェースと統合されてもよいことを企図している。この例において、情報は、1人以上のユーザがシステム10の実装をカスタマイズすることを可能にする着脱可能ストレージ(例えば、スマートカード、フラッシュドライブ、着脱可能ディスク等)からシステム10にロードされ得る。ユーザインタフェース24としてシステム10とともに使用するのに適した他の例示的な入力デバイス及び技術は、RS-232ポート、RFリンク、IRリンク、モデム(電話、ケーブル、又はその他)を含むが、これらに限定されるものではない。要するに、システム10と情報を通信するためのいかなる技術も、ユーザインタフェース24として、本開示により企図されている。
【0044】
図9は、調整システムにより、睡眠中に対象者に送達される聴覚刺激の音量を調整する方法900を示している。調整システムは、1つ以上の感覚刺激器、1つ以上のセンサ、1つ以上のハードウェアプロセッサ、及び/又は他のコンポーネントを有する。以下で提示される方法900の動作は、例示であることが意図されている。いくつかの実施形態において、方法900は、説明されない1つ以上の追加の動作を伴って且つ/又は説明される動作のうちの1つ以上の動作を伴わずに実現されることもある。さらに、図9に示されており以下で説明される方法900の動作の順序は、限定的であるようには意図されていない。
【0045】
いくつかの実施形態において、方法900は、1つ以上の処理デバイス(例えば、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されているデジタル回路、情報を処理するように設計されているアナログ回路、状態機械、及び/又は、情報を電子的に処理するための他の機構)で実現され得る。1つ以上の処理デバイスは、電子記憶媒体に電子的に記憶されている命令に応じて、方法900の動作の一部又は全てを実行する1つ以上のデバイスを含み得る。1つ以上の処理デバイスは、方法900の動作のうちの1つ以上の動作の実行のために特別に設計されるハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを介して構成される1つ以上のデバイスを含み得る。
【0046】
動作902において、聴覚刺激が、第1の睡眠セッション中に対象者に提供される。いくつかの実施形態において、動作902は、(図1に示されており本明細書において説明されている)感覚刺激器16と同じ又は類似する1つ以上の感覚刺激器により実行される。上述したように、いくつかの実施形態において、1つ以上の感覚刺激器は、トーン発生器、スピーカ、及び/又は他のコンポーネントを含む。
【0047】
動作904において、第1の睡眠セッション中の対象者の脳活動に関連する情報を伝達する出力信号が生成される。いくつかの実施形態において、動作904は、(図1に示されており本明細書において説明されている)センサ18と同じ又は類似する1つ以上のセンサにより実行される。いくつかの実施形態において、上述したように、1つ以上のセンサは、EEG電極及び/又は他のセンサを含む。
【0048】
動作906において、第1の睡眠セッションについての睡眠深度が決定される。睡眠深度は、(i)脳波(EEG)信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者における徐波の密度、(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラム、及び/又は他のパラメータである、且つ/又は、(i)EEG信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者における徐波の密度、(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラム、及び/又は他のパラメータに基づいて決定される。いくつかの実施形態において、睡眠深度を決定することは、第1の睡眠セッションについての経時的な睡眠深度を決定することを含む。経時的な睡眠深度の決定は、(i)EEG信号の高周波数帯域におけるパワーと低周波数帯域におけるパワーとの比、(ii)対象者における徐波の密度、(iii)第1の睡眠セッションについてのヒプノグラム、及び/又は他の情報に基づく。いくつかの実施形態において、動作906は、(図1に示されており本明細書において説明されている)睡眠深度コンポーネント32と同じ又は類似するハードウェアプロセッサコンポーネントにより実行される。
【0049】
動作908において、深化時間が決定される。深化時間は、対象者の睡眠が第1の睡眠セッション中に深くなるレートを示す。いくつかの実施形態において、深化時間は、経時的な睡眠深度のプロット図における2つの予め定められた睡眠深度閾値の間の時間である。いくつかの実施形態において、深化時間は、対象者の第1の睡眠セッションにおける連続的なN3睡眠セグメントの分布に指数関数をあてはめることにより決定される。いくつかの実施形態において、動作908は、(図1に示されており本明細書において説明されている)深化時間コンポーネント34と同じ又は類似するハードウェアプロセッサコンポーネントにより実行される。
【0050】
動作910において、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激についての音量増加率が決定される。音量増加率は、深化時間及び/又は他の情報に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、音量増加率は、さらに、対象者について選択された最小閾値音量及び最大閾値音量に基づいて決定される。最小閾値音量及び最大閾値音量は、以前の睡眠セッションからの対象者における脳活動に関連する情報に基づいて;以前の睡眠セッション中の以前の睡眠深度推定に基づいて;人口統計学的に類似した集団についての対応する音量閾値に基づいて;且つ/又は、他の情報に基づいて;選択される。いくつかの実施形態において、動作910は、(図1に示されており本明細書において説明されている)割合コンポーネント36と同じ又は類似するハードウェアプロセッサコンポーネントにより実行される。
【0051】
動作912において、1つ以上の感覚刺激器が、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激の音量を調整するように制御される。音量調整は、決定された音量増加率及び後続の睡眠セッション中の出力信号に基づく。いくつかの実施形態において、決定された音量増加率及び後続の睡眠セッション中の出力信号に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激の音量を調整するように1つ以上の感覚刺激器を制御することは、後続の睡眠セッション中の上記の比、徐波の密度、及びピーク間徐波振幅のうちの1つ以上に基づいて、後続の睡眠セッション中の対象者における睡眠深度を決定すること;及び、後続の睡眠セッション中の決定された睡眠深度及び決定された音量増加率に基づいて、後続の睡眠セッション中に対象者に提供される聴覚刺激の音量を調整するように1つ以上の感覚刺激器を制御すること;を含む。いくつかの実施形態において、動作912は、(図1に示されており本明細書において説明されている)制御コンポーネント38と同じ又は類似するハードウェアプロセッサコンポーネントにより実行される。
【0052】
上記で提供された説明は、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられているものに基づいて例示を目的として詳細を提供しているが、そのような詳細は、そのような目的のために過ぎず、本開示は、明示的に開示されている実施形態に限定されるものではなく、反対に、請求項の主旨及び範囲内にある変更形態及び均等の構成をカバーすることが意図されていることを理解されたい。例えば、本開示は、可能な限りにおいて、任意の実施形態の1つ以上の特徴を任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができることを企図していることを理解されたい。
図1
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図8a
図8b
図9