(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】車両用ペダル装置
(51)【国際特許分類】
G05G 1/327 20080401AFI20220405BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G05G1/327
B60T7/06 A
(21)【出願番号】P 2019027631
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英幸
(72)【発明者】
【氏名】木下 摂
(72)【発明者】
【氏名】山口 元太
(72)【発明者】
【氏名】足立 康雄
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-34839(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005042281(DE,A1)
【文献】特開2008-162329(JP,A)
【文献】特開2017-41102(JP,A)
【文献】特開平10-175492(JP,A)
【文献】特開2006-142940(JP,A)
【文献】特開平8-175346(JP,A)
【文献】特開2010-67138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/327
B60T 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって操作されるペダルと、
前記ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、
車両衝突時に前記ペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える車両用ペダル装置であって、
前記ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられ、
前記ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に前記傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられ、
前記被ガイド部は、主面部と、前記主面部の車幅方向の端部から下方側に延びる側面部と、前記主面部の車両後方側の端部から下方側に延びる後端面とを含み、
前記被ガイド部には、脆弱部が設けられ
、
前記脆弱部は、前記側面部に形成された切欠部を含み、
前記側面部は、車幅方向から見た場合に、前記切欠部によって上方側に窪むように形成されていることを特徴とする車両用ペダル装置。
【請求項2】
運転者によって操作されるペダルと、
前記ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、
車両衝突時に前記ペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える車両用ペダル装置であって、
前記ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられ、
前記ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に前記傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられ、
前記被ガイド部は、主面部と、前記主面部の車幅方向の端部から下方側に延びる側面部と、前記主面部の車両後方側の端部から下方側に延びる後端面とを含み、
前記被ガイド部には、脆弱部が設けられ
、
前記脆弱部は、前記側面部に形成された凹部を含み、
前記側面部は、上方側から見た場合に、前記凹部によって車幅方向内側に窪むように形成されていることを特徴とする車両用ペダル装置。
【請求項3】
運転者によって操作されるペダルと、
前記ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、
車両衝突時に前記ペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える車両用ペダル装置であって、
前記ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられ、
前記ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に前記傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられ、
前記被ガイド部は、主面部と、前記主面部の車幅方向の端部から下方側に延びる側面部と、前記主面部の車両後方側の端部から下方側に延びる後端面とを含み、
前記被ガイド部には、脆弱部が設けられ
、
前記脆弱部は、前記主面部に形成された貫通孔を含むことを特徴とする車両用ペダル装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1つに記載の車両用ペダル装置において、
前記ガイド部材には、前記傾斜面の車幅方向の端部に側壁部が形成されていることを特徴とする車両用ペダル装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1つに記載の車両用ペダル装置において、
前記ダッシュパネルに取り付けられるレバーブラケットと、
前記レバーブラケットに回動可能に設けられるレバーと、
前記レバーブラケットと前記ペダルブラケットとを締結する締結部材とを備え、
前記レバーは、車両衝突時に、前記ガイド部材と当接して回動されることにより、前記締結部材による前記レバーブラケットと前記ペダルブラケットとの締結を解除するように構成されていることを特徴とする車両用ペダル装置。
【請求項6】
運転者によって操作されるペダルと、
前記ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、
車両衝突時に前記ペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える車両用ペダル装置であって、
ダッシュパネルに取り付けられるレバーブラケットと、
前記レバーブラケットに回動可能に設けられるレバーと、
前記レバーブラケットと前記ペダルブラケットとを締結する締結部材とを備え、
前記ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられ、
前記ペダルブラケットは、
前記ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に前記傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられ、
前記被ガイド部には、脆弱部が設けられ
、
前記レバーは、車両衝突時に、前記ガイド部材と当接して回動されることにより、前記締結部材による前記レバーブラケットと前記ペダルブラケットとの締結を解除するように構成されていることを特徴とする車両用ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられるブレーキペダル装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のブレーキペダル装置は、運転者によって操作されるブレーキペダルと、ブレーキペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、前面衝突などの車両衝突時にペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備えている。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられている。ダッシュパネルは、エンジンコンパートメントとキャビンとを区画するように構成されている。インパネリインフォースメントは、車幅方向に延びるように形成され、ダッシュパネルに対して車両後方側に配置されている。
【0004】
ガイド部材には、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられている。ペダルブラケットの車両後方側には、車両衝突時にガイド部材の傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられている。また、ペダルブラケットの車両前方側には、ダッシュパネルに固定される固定部が設けられ、その固定部の近傍には、車両衝突時にペダルブラケットが変形される際の変形中心が設定されている。これにより、車両衝突時に、ダッシュパネルがインパネリインフォースメントに対して車両後方側に移動された場合に、被ガイド部が傾斜面にガイドされることにより、ペダルブラケットが変形中心を中心にして下方側に回動されるので、ブレーキペダルの車両後方側への移動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のブレーキペダル装置では、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面によってガイドされる場合に、被ガイド部と傾斜面との当接部分に過大荷重が作用すると、被ガイド部が傾斜面に食い込み、被ガイド部が傾斜面で引っ掛かることが考えられる。そして、被ガイド部が傾斜面で引っ掛かる場合には、被ガイド部を傾斜面に沿って適切にガイドすることができず、ブレーキペダルの車両後方側への移動抑制効果が低減されるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面で引っ掛かるのを抑制することが可能な車両用ペダル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による車両用ペダル装置は、運転者によって操作されるペダルと、ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、車両衝突時にペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える。ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられている。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられている。被ガイド部は、主面部と、主面部の車幅方向の端部から下方側に延びる側面部と、主面部の車両後方側の端部から下方側に延びる後端面とを含む。被ガイド部には、脆弱部が設けられている。脆弱部は、側面部に形成された切欠部を含む。側面部は、車幅方向から見た場合に、切欠部によって上方側に窪むように形成されている。
【0009】
このように構成することによって、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面によってガイドされる場合に、被ガイド部と傾斜面との当接部分に過大荷重がかかる前に脆弱部が変形されることにより、被ガイド部が傾斜面に食い込むのを抑制することができる。また、車両衝突時に被ガイド部の後端面を傾斜面に沿って摺動させることができ、被ガイド部の後端部を下方に変形しやすくすることができる。
【0010】
本発明による車両用ペダル装置は、運転者によって操作されるペダルと、ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、車両衝突時にペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える。ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられている。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられている。被ガイド部は、主面部と、主面部の車幅方向の端部から下方側に延びる側面部と、主面部の車両後方側の端部から下方側に延びる後端面とを含む。被ガイド部には、脆弱部が設けられている。脆弱部は、側面部に形成された凹部を含む。側面部は、上方側から見た場合に、凹部によって車幅方向内側に窪むように形成されている。
【0011】
このように構成することによって、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面によってガイドされる場合に、被ガイド部と傾斜面との当接部分に過大荷重がかかる前に脆弱部が変形されることにより、被ガイド部が傾斜面に食い込むのを抑制することができる。また、車両衝突時に被ガイド部の後端面を傾斜面に沿って摺動させることができ、被ガイド部の後端部を車幅方向に変形しやすくすることができる。
【0012】
本発明による車両用ペダル装置は、運転者によって操作されるペダルと、ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、車両衝突時にペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える。ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられている。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられている。被ガイド部は、主面部と、主面部の車幅方向の端部から下方側に延びる側面部と、主面部の車両後方側の端部から下方側に延びる後端面とを含む。被ガイド部には、脆弱部が設けられている。脆弱部は、主面部に形成された貫通孔を含む。
【0013】
このように構成することによって、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面によってガイドされる場合に、被ガイド部と傾斜面との当接部分に過大荷重がかかる前に脆弱部が変形されることにより、被ガイド部が傾斜面に食い込むのを抑制することができる。また、車両衝突時に被ガイド部の後端面を傾斜面に沿って摺動させることができ、脆弱部を容易に形成することができる。
【0014】
上記車両用ペダル装置において、ガイド部材には、傾斜面の車幅方向の端部に側壁部が形成されていてもよい。
【0015】
このように構成すれば、被ガイド部の後端部が傾斜面に対して車幅方向にずれるのを抑制することができる。
【0016】
上記車両用ペダル装置において、ダッシュパネルに取り付けられるレバーブラケットと、レバーブラケットに回動可能に設けられるレバーと、レバーブラケットとペダルブラケットとを締結する締結部材とを備え、レバーは、車両衝突時に、ガイド部材と当接して回動されることにより、締結部材によるレバーブラケットとペダルブラケットとの締結を解除するように構成されていてもよい。
【0017】
このように構成すれば、ペダルブラケットおよびレバーブラケットがガイド部材に固定されないことから、組付けの簡単化を図ることができる。
【0018】
本発明による車両用ペダル装置は、運転者によって操作されるペダルと、ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、車両衝突時にペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材と、ダッシュパネルに取り付けられるレバーブラケットと、レバーブラケットに回動可能に設けられるレバーと、レバーブラケットとペダルブラケットとを締結する締結部材とを備える。ガイド部材は、インパネリインフォースメントに取り付けられ、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜する傾斜面が設けられている。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ、車両衝突時に傾斜面によってガイドされる被ガイド部が設けられている。被ガイド部には、脆弱部が設けられている。レバーは、車両衝突時に、ガイド部材と当接して回動されることにより、締結部材によるレバーブラケットとペダルブラケットとの締結を解除するように構成されている。
【0019】
このように構成することによって、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面によってガイドされる場合に、被ガイド部と傾斜面との当接部分に過大荷重がかかる前に脆弱部が変形されることにより、被ガイド部が傾斜面に食い込むのを抑制することができる。また、ペダルブラケットおよびレバーブラケットがガイド部材に固定されないことから、組付けの簡単化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両用ペダル装置によれば、車両衝突時に被ガイド部が傾斜面で引っ掛かるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態によるブレーキペダル装置の概略構成を示した側面図である。
【
図2】
図1のブレーキペダル装置の締結部材を説明するための断面図である。
【
図3】
図1のブレーキペダル装置の被ガイド部の後端側を拡大して示した平面図である。
【
図4】
図1のブレーキペダル装置の被ガイド部の後端側を拡大して示した側面図である。
【
図5】
図1のブレーキペダル装置における車両衝突時に被ガイド部およびレバーがガイド部材に当接された状態を示した側面図である。
【
図6】
図5のブレーキペダル装置における車両衝突時にペダルブラケットがレバーブラケットから分離された状態を示した側面図である。
【
図7】
図6のブレーキペダル装置のガイド部材の溝部および被ガイド部を拡大して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、車両に設けられるブレーキペダル装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0025】
まず、
図1~
図4を参照して、本実施形態によるブレーキペダル装置100について説明する。
【0026】
ブレーキペダル装置100は、
図1に示すように、車両の運転席の足元に配置され、車両のブレーキ装置(図示省略)を作動させるために設けられている。このブレーキペダル装置100は、前面衝突などの車両衝突時に、ブレーキペダル1の車両後方側(X2方向側)への移動を抑制するように構成されている。
【0027】
ブレーキペダル装置100が設置される車両は、車体骨格の一部としてダッシュパネル150およびインパネリインフォースメント151を含んでいる。ダッシュパネル150は、エンジンコンパートメントとキャビンとを区画するように構成されている。ダッシュパネル150に対する車両前方側(X1方向側)にエンジンコンパートメントが配置され、ダッシュパネル150に対する車両後方側にキャビンが配置されている。インパネリインフォースメント151は、車幅方向(Y方向)に延びるように形成され、インストルメントパネル(図示省略)が取り付けられている。インパネリインフォースメント151は、ダッシュパネル150に対して車両後方側に配置されている。
【0028】
また、ブレーキペダル装置100は、ブレーキペダル1と、ペダルブラケット2と、レバー3と、レバーブラケット4と、締結部材5と、ガイド部材6とを備えている。このブレーキペダル装置100は、ダッシュパネル150とインパネリインフォースメント151との間に配置されており、ペダルブラケット2およびレバーブラケット4がダッシュパネル150に固定されるとともに、ガイド部材6がインパネリインフォースメント151に固定されている。
【0029】
ブレーキペダル1は、運転者によって操作される操作部材であり、ペダルブラケット2に回動可能に取り付けられている。このブレーキペダル1は、アーム11と、アーム11の下端部に設けられたパッド12とを有する。アーム11には連結部11aが形成され、連結部11aにはブレーキブースタのロッド(図示省略)が連結されている。ブレーキブースタは、ダッシュパネル150の車両前方側に固定されている。ブレーキブースタにはマスタシリンダが接続され、マスタシリンダにはブレーキ装置が接続されている。
【0030】
また、ブレーキペダル1は、アーム11の上端部に配置される回動中心C1を中心にして、ペダルブラケット2に対して回動可能に構成されている。ブレーキペダル1は、付勢部材(図示省略)によって
図1における反時計回り方向側に付勢され、ストッパ(図示省略)によって所定の初期位置に配置されている。そして、ブレーキペダル1が運転者によって踏み込まれた場合には、ブレーキペダル1が付勢部材の付勢力に抗して
図1における時計回り方向側に回動されることにより、ブレーキ装置が作動されるようになっている。なお、ブレーキペダル1は、本発明の「ペダル」の一例である。
【0031】
ペダルブラケット2は、ブレーキペダル1を回動可能に支持するように構成されている。このペダルブラケット2は、側面板21および22と、被ガイド部23とを含んでいる。側面板21および22は、車幅方向において対向するように左右一対で設けられている。
【0032】
一対の側面板21はブラケット本体であり、一対の側面板21の間にブレーキペダル1のアーム11が回動可能に取り付けられている。側面板21の車両前方側の端部には固定部21aが設けられ、その固定部21aがダッシュパネル150に固定されている。固定部21aの近傍には、車両衝突時にペダルブラケット2が変形される際の変形中心Dが設定されている。
【0033】
一対の側面板22は、それぞれ、一対の側面板21の車両後方側の端部に取り付けられている。側面板22は、締結部材5によってレバーブラケット4に締結されるように構成されている。具体的には、
図2に示すように、側面板22の上端部には、ボルト51の軸部51aが挿入される挿入孔22aが形成されている。
【0034】
被ガイド部23は、
図1に示すように、車両衝突時にガイド部材6の溝部61によってガイドされるように構成されている。この被ガイド部23は、一対の側面板21の間に取り付けられ、側面板21から車両後方側に延びるように形成されている。被ガイド部23は、
図3および
図4に示すように、板材からなり、主面部(上面部)23aと、主面部23aの車幅方向の両端部から下方側に延びる側面部23bと、主面部23aの車両後方側の端部から下方側に延びる後端面23cとを含んでいる。
【0035】
主面部23aは、平面的に見て長方形状に形成され、短手方向が車幅方向と一致するように配置されている。また、主面部23aは、車幅方向から見た場合に、車両後方側が車両前方側に比べて高い位置となるように傾斜された状態で配置されている。一対の側面部23bは、車幅方向において対向するように配置されている。後端面23cは、一対の側面部23bの後端を連結するように形成され、主面部23aおよび一対の側面部23bによって形成される断面U字形状の後端を塞ぐように構成されている。
【0036】
そして、被ガイド部23では、後端部232の近傍に脆弱部231が設けられている。この脆弱部231は、車両衝突時に被ガイド部23を変形しやすくするために設けられている。具体的には、脆弱部231は、切欠部231a(
図4参照)と、凹部231bと、貫通孔231c(
図3参照)とを含んでいる。
図4に示すように、切欠部231aは側面部23bに形成され、側面部23bは車幅方向から見た場合に切欠部231aによって上方側に窪むように形成されている。凹部231bは側面部23bに形成され、
図3に示すように、側面部23bは上方側から見た場合に凹部231bによって車幅方向内側に窪むように形成されている。貫通孔231cは、主面部23aに形成され、主面部23aの厚み方向に貫通するように形成されている。切欠部231a、凹部231bおよび貫通孔231cは、被ガイド部23の長手方向において対応する位置に配置されている。このため、凹部231b(
図4参照)が切欠部231aの上側に配置され、左右一対の凹部231b(
図3参照)の間の領域の主面部23aに貫通孔231cが配置されている。
【0037】
レバー3は、
図1に示すように、レバーブラケット4に回動可能に設けられ、レバーブラケット4から車両後方側に延びるように配置されている。レバー3は、レバーブラケット4に締結されたペダルブラケット2を車両衝突時に分離させるために設けられている。このレバー3は、車幅方向において対向するように左右一対で設けられる側面板31と、一対の側面板31の間に設けられる当接部32および押下部33(
図2参照)とを含んでいる。側面板31は、回動中心C2を中心にして、レバーブラケット4に対して回動可能に構成されている。当接部32は、レバー3の車両後方側の端部に配置されている。押下部33は、レバー3の車両前方側の端部に配置されるとともに、ボルト51の軸部51a(
図2参照)の上方に配置されている。
【0038】
レバー3は、付勢部材(図示省略)によって
図1における時計回り方向側に付勢され、ストッパ(図示省略)によって所定の初期位置に配置されている。この初期位置に配置された状態では、ボルト51が挿入されるカラー53(
図2参照)に対してレバー3の押下部33が離間されている。そして、車両衝突時に当接部32がガイド部材6の接触面62に当接された場合に、レバー3が付勢部材の付勢力に抗して
図1における反時計回り方向側に回動され、押下部33がカラー53を押し下げることにより、ペダルブラケット2がレバーブラケット4から分離されるようになっている。
【0039】
レバーブラケット4は、ペダルブラケット2の上方に配置され、レバー3を回動可能に支持するように構成されている。このレバーブラケット4は、車幅方向において対向するように左右一対で設けられる側面板41を含んでいる。一対の側面板41の間には、レバー3が回動可能に取り付けられている。側面板41の車両前方側の端部には固定部41aが設けられ、その固定部41aがダッシュパネル150に固定されている。また、側面板41の下端には切欠部41b(
図6参照)が形成され、その切欠部41bにボルト51の軸部51aが配置されている。
【0040】
締結部材5は、ペダルブラケット2とレバーブラケット4とを締結するために設けられている。締結部材5は、
図2に示すように、ボルト51およびナット52を有する。そして、ペダルブラケット2の側面板22の挿入孔22aにボルト51の軸部51aが挿入されるとともに、レバーブラケット4の側面板41の切欠部41bにボルト51の軸部51aが配置された状態で、ボルト51の軸部51aにナット52が締め付けられることにより、ペダルブラケット2とレバーブラケット4とが締結されている。なお、一対の側面板22の間にはカラー53が設けられ、そのカラー53にボルト51の軸部51aが挿入されている。すなわち、一対の側面板22および41とカラー53とが、ボルト51の頭部51bとナット52との間に挟持されている。
【0041】
ガイド部材6は、車両衝突時にペダルブラケット2の変形をガイドするために設けられている。このガイド部材6は、
図1に示すように、インパネリインフォースメント151に取り付けられ、溝部61および接触面62が設けられている。
【0042】
溝部61は、傾斜面61aおよび側壁部61bを有し、車両衝突時に被ガイド部23をガイドするように構成されている。傾斜面61aは、溝部61の底面であり、車両後方側に進むにつれて下方に位置するように傾斜されている。すなわち、傾斜面61aは、車両後方側の端部が車両前方側の端部よりも下方に配置されており、車両前方側の端部から車両後方側の端部に向けて斜め下方に延びるように形成されている。側壁部61bは、傾斜面61aの車幅方向の両端部に形成されるとともに、傾斜面61aから下方に延びるように形成されている。すなわち、溝部61の断面がU字状に形成されている。この溝部61の深さは、たとえば、被ガイド部23の後端面23cと脆弱部231との間の距離とほぼ同じに設定されている。そして、溝部61の上端部に、被ガイド部23の後端部232が配置されている。なお、この車両衝突前の状態では、被ガイド部23と溝部61とが離間されている。
【0043】
接触面62は、溝部61の上方に配置され、車両衝突時にレバー3の当接部32が当接されるように構成されている。このため、当接部32と接触面62とが高さ方向において対応する位置に配置されている。
【0044】
-車両衝突時の動作-
次に、
図5~
図7を参照して、本実施形態によるブレーキペダル装置100における車両衝突時の動作例について説明する。なお、
図5および
図6では、ダッシュパネル150(
図1参照)の図示を省略している。
【0045】
車両衝突時に、ダッシュパネル150がインパネリインフォースメント151に対して車両後方側(X2方向側)に移動された場合には、レバーブラケット4およびペダルブラケット2がガイド部材6に対して車両後方側に移動される。このため、
図5に示すように、レバー3の当接部32がガイド部材6の接触面62に当接されるとともに、ペダルブラケット2の被ガイド部23の後端部232がガイド部材6の溝部61の傾斜面61aに当接される。
【0046】
そして、レバー3の当接部32がガイド部材6の接触面62に当接される場合には、レバー3が付勢部材の付勢力に抗して回動中心C2を中心に
図5における反時計回り方向側に回動される。これにより、レバー3の押下部33(
図2参照)がカラー53(
図2参照)に当接し、レバー3によってボルト51が押し下げられる。そして、
図6に示すように、ボルト51がレバーブラケット4の切欠部41bから抜けると、締結部材5によるレバーブラケット4とペダルブラケット2との締結が解除される。すなわち、レバー3によって締結部材5および側面板22が下方に押されることにより、ペダルブラケット2がレバーブラケット4から分離される。
【0047】
また、ペダルブラケット2の被ガイド部23の後端部232がガイド部材6の溝部61の傾斜面61aに当接される場合には、被ガイド部23の後端部232が傾斜面61aに沿って摺動される。すなわち、ガイド部材6の傾斜面61aによって被ガイド部23の後端部232が下方側にガイドされる。
【0048】
したがって、ペダルブラケット2が、変形中心Dを中心にして
図6における時計回り方向側に回動されるように変形される。このようにペダルブラケット2が変形されることにより、ブレーキペダル1が相対的に車両前方側(X1方向側)に移動される。つまり、車両衝突時におけるブレーキペダル1の車両後方側への移動が抑制される。
【0049】
ここで、被ガイド部23の後端部232がガイド部材6の溝部61に沿って移動される際に、被ガイド部23にかかる荷重が大きくなると、脆弱部231を起点にして被ガイド部23が変形される。たとえば、
図7に示すように、切欠部231aが潰されるように、被ガイド部23が脆弱部231で折り曲げられる。
【0050】
-効果-
本実施形態では、上記のように、被ガイド部23に脆弱部231が形成されることによって、車両衝突時に被ガイド部23が傾斜面61aによってガイドされる場合に、被ガイド部23と傾斜面61aとの当接部分に過大荷重がかかる前に脆弱部231が変形されることにより、被ガイド部23が傾斜面61aに食い込むのを抑制することができる。これにより、車両衝突時に被ガイド部23が傾斜面61aで引っ掛かるのを抑制することができるので、被ガイド部23を傾斜面61aに沿って適切にガイドすることができる。その結果、車両衝突時におけるブレーキペダル1の車両後方側(X2方向側)への移動を適切に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、脆弱部231として切欠部231aが形成されることによって、被ガイド部23の後端部232を下方に変形しやすくすることができる。したがって、車両衝突時に、傾斜面61aと当接する被ガイド部23にかかる荷重が大きくなると、後端部232を下方に逃がすように被ガイド部23を変形させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、脆弱部231として凹部231bが形成されることによって、被ガイド部23の後端部232を車幅方向に変形しやすくすることができる。このため、車両衝突時に、ペダルブラケット2がガイド部材6に対して車幅方向に移動され、後端部232が溝部61に嵌め合わされた被ガイド部23に車幅方向の荷重がかかる場合に、脆弱部231を起点にして被ガイド部23が車幅方向に折り曲げられる。したがって、車両衝突時にペダルブラケット2がガイド部材6に対して車幅方向に移動される場合にも、ガイド部材6によって被ガイド部23を適切にガイドすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、脆弱部231として貫通孔231cが形成されることによって、脆弱部231をより変形しやすくすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、傾斜面61aの車幅方向の両端部に側壁部61bが形成されることによって、被ガイド部23の後端部232が傾斜面61aに対して車幅方向にずれるのを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、ダッシュパネル150にレバーブラケット4が取り付けられ、レバーブラケット4にレバー3が回動可能に設けられ、締結部材5によりレバーブラケット4とペダルブラケット2とが締結され、車両衝突時にレバー3によってレバーブラケット4とペダルブラケット2との締結が解除される。このように構成することによって、ペダルブラケット2およびレバーブラケット4がガイド部材6に固定されないことから、組付けの簡単化を図ることができる。
【0056】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
たとえば、上記実施形態では、車両用のブレーキペダル装置100に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、車両用のアクセルペダル装置やクラッチペダル装置に本発明を適用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、被ガイド部23が主面部23a、側面部23bおよび後端面23cを含む例を示したが、これに限らず、被ガイド部の形状がどのようなものであってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、脆弱部231として切欠部231a、凹部231bおよび貫通孔231cが形成される例を示したが、これに限らず、脆弱部として切欠部、凹部および貫通孔のうちのいずれか1つまたは2つが形成されるようにしてもよい。また、脆弱部が、切欠部、凹部および貫通孔以外によって構成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、傾斜面61aの車幅方向の端部に側壁部61bが形成される例を示したが、これに限らず、傾斜面の車幅方向の端部に側壁部が形成されていなくてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、レバー3およびレバーブラケット4が設けられる例を示したが、これに限らず、レバーおよびレバーブラケットが設けられていなくてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ボルト51が挿入される挿入孔22aがペダルブラケット2に形成されるとともに、ボルト51が配置される切欠部41bがレバーブラケット4に形成される例を示したが、これに限らず、ボルトが挿入される挿入孔がレバーブラケットに形成されるとともに、ボルトが配置される切欠部がペダルブラケットに形成されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、運転者によって操作されるペダルと、ペダルを回動可能に支持するペダルブラケットと、車両衝突時にペダルブラケットの変形をガイドするためのガイド部材とを備える車両用ペダル装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 ブレーキペダル(ペダル)
2 ペダルブラケット
3 レバー
4 レバーブラケット
5 締結部材
6 ガイド部材
23 被ガイド部
23a 主面部
23b 側面部
23c 後端面
61a 傾斜面
61b 側壁部
100 ブレーキペダル装置(車両用ペダル装置)
150 ダッシュパネル
151 インパネリインフォースメント
231 脆弱部
231a 切欠部
231b 凹部
231c 貫通孔