(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン(MXene)粒子及びその製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20220405BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220405BHJP
C07C 211/07 20060101ALI20220405BHJP
C07C 211/21 20060101ALI20220405BHJP
C07F 7/28 20060101ALI20220405BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20220405BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20220405BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20220405BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20220405BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20220405BHJP
C07F 9/40 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C01G23/00 Z
C08L101/00
C07C211/07
C07C211/21
C07F7/28 G
C07F19/00
C09D11/52
C09C3/10
C09C3/08
C09C3/12
C07F9/40 Z
(21)【出願番号】P 2019170028
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2019-09-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0117801
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0040846
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サンホ
(72)【発明者】
【氏名】ク,チョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,スン サン
(72)【発明者】
【氏名】ペク,キョン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム,テシン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ-リム
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108557822(CN,A)
【文献】特表2020-518682(JP,A)
【文献】O. MASHTALIR et al.,Amine-Assisted Delamination of Nb2C MXene for Li-Ion Energy Storage Devices,Adv. Mater.,2015年,27,3501-3506.,DOI: 10.1002/adma.201500604
【文献】R. BIAN et al.,3D assembly of Ti3C2-MXene directed by water/oil interfaces,Nanoscale,2018年01月02日,10,3621-3625.
【文献】A. VAUGHN et al.,Selective Calixarene-Directed Synthesis of MXene Plates, Crumpled Sheets, Spheres, and Scrolls,Chem. Eur. J.,2017年,23,8128-8133.,DOI: 10.1002/chem.201701702
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
C01B32/00-32/991
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子;及び前記表面改質された2次元マキシン粒子の表面に形成された有機保護膜を含有し、
前記官能基がホスホネート(phosphonate)、及びアミン(amine)で構成された群から選択され、
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が、保護膜を形成する有機溶媒に分散されていることが特徴である、
不動態化(passivation)された2次元マキシン粒子。
【請求項2】
前記有機溶媒に有機高分子が分散されており、前記有機保護膜が、前記有機溶媒および/または前記有機高分子によって形成されている、請求項1に記載の2次元マキシン粒子。
【請求項3】
ホスホネートが、下記式(1)または(2)、アミンが、下記式(3)で示されることが特徴である、請求項1に記載の2次元マキシン粒子:
【化1】
【化2】
【化3】
ここで、R
1、R
2、R
3及びR
4が、それぞれ独立に、飽和または不飽和炭化水素、C
1~C
6アルコキシ基またはヒドロキシ基であり、R
5が、飽和または不飽和炭化水素であり、このとき R
1、R
2、R
3及びR
4がすべて飽和または不飽和炭化水素である場合とR
1、R
2、R
3及びR
4がすべてヒドロキシ基である場合は除き、
A
1、A
2、及びA
3はそれぞれ独立に、Hまたは飽和または不飽和炭化水素であり、このとき、 A
1、A
2、及びA
3がすべてHである場合は除く。
【請求項4】
表面改質の対象である2次元マキシン粒子が、下記実験式(1)または実験式(2)を有する結晶セル(crystal cells)が2次元配列(two-dimensional array)を成した層(layer)を1つ以上含む2次元遷移金属カーバイド、ナイトライド(transition metal carbides、nitrides)またはこれらの組み合わせであることが特徴である、請求項1に記載の2次元マキシン粒子:
[実験式1]
M
n+1X
n(1)
ここで、各Xは、Mの8面体(octahedral array)内に位置し、
Mは、IIIB族金属、IVB族金属、VB族金属、及びVIB族金属で構成された群から選択される金属であり、
各Xは、C、N、またはその組み合わせであり、
n=1、2、または3であり;
[実験式2]
M′
2M″
nX
n+1 (2)
ここで、各Xは、M′及びM″の8面体内に位置し、
M′及びM″は、IIIB族金属、IVB族金属、VB族金属、及びVIB族金属で構成された群から選択される互いに異なる金属であり、
各Xは、C、N、またはその組み合わせであり、
n= 1、または2である。
【請求項5】
前記飽和または不飽和炭化水素が、それぞれ独立に、C
1-25アルキル、C
2-25アルケニル、C
2-25アルキニル、C
6-25アリール、または(C
6-25アリール)-(C
1-4アルキル)で構成された群から選択されることが特徴である、請求項1に記載の2次元マキシン粒子。
【請求項6】
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法において、
酸エッチングの工程を介して製造されたマキシン粒子が分散された水溶液を準備する第1段階;
前記水溶液と相分離される有機基溶媒に、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階;及び
第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して、界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる第3段階
を含み、
前記官能基がホスホネート(phosphonate)、アミン(amine)及びシラン(silane)で構成された群から選択され、
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が、保護膜を形成する有機溶媒に分散されていることが特徴である、表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法。
【請求項7】
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が、請求項1~5のいずれか一項に記載されたことが特徴である、請求項6に記載の表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法。
【請求項8】
マキシン有機溶媒分散インクの製造方法において、
酸エッチング工程を介して製造されたマキシン粒子が分散された水溶液を準備する第1段階;
前記水溶液と相分離される有機基溶媒に、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階;
第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して、界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる第3段階;
界面反応後に相分離を誘導する第4段階;
相分離された水溶液層で表面改質されたマキシン粒子を含有する有機溶液を分離する第5段階;及び
選択的に、第5段階から得られた有機溶液の濃度を調節したり、溶媒を置換する第6段階
を含み、
前記官能基がホスホネート(phosphonate)、アミン(amine)及びシラン(silane)で構成された群から選択され、
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が、保護膜を形成する有機溶媒に分散されていることが特徴である、マキシン有機溶媒分散インクの製造方法。
【請求項9】
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子および有機溶媒を含有する有機溶媒分散インクであって、
前記官能基がホスホネート(phosphonate)、及びアミン(amine)で構成された群から選択され、
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が、保護膜を形成する有機溶媒に分散されていることが特徴である、有機溶媒分散インク。
【請求項10】
表面改質された2次元マキシン粒子以外の他の粒子、高分子または両方を含有する、請求項9のいずれか一項に記載の有機溶媒分散インク。
【請求項11】
飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が、請求項1~5のいずれか一項に記載されたことが特徴である、請求項9に記載の有機溶媒分散インク。
【請求項12】
請求項9に記載された有機溶媒分散インクを含有するフィルム。
【請求項13】
請求項9に記載された有機溶媒分散インクを含有する複合体。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載された、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された
2次元マキシン粒子;及び高分子、表面改質された2次元マキシン粒子以外の他の異種粒子または両方を含有する複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン(MXene)粒子及びその製造方法及び用途(例えば、伝導性フィルム)に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁干渉(EMI、Electromagnetic Interference)は、電子、通信、輸送、航空、軍事備品から発生する電磁波間による干渉現象であって、この現象はデバイスの誤動作の原因になるだけでなく、人間に有害な影響を与えることができる。特に、最近の電子デバイスが小型化、高集積化及び高機能化されて、デバイス間の電磁干渉の現象による誤作動の問題がさらに深刻になっている。電磁波遮蔽の素材は電磁干渉の現象を遮断する素材であって、電気伝導性が高い素材ほど電磁波遮蔽の効率に優れた特性を有する。従来は、銀、銅のような金属素材が主に用いられたが、密度が高く、製造コストが高価で、重く、腐食しやすくて、加工が難しい欠点があって、次世代のモバイル電子/通信デバイスへの使用に限界があった。これらの既存素材の問題点を克服するために、新しい二次元構造のナノ材料であるマキシン(MXene)という遷移金属炭化物及び遷移金属炭窒化物を含む高分子複合体を用いて、黒鉛の構造と同様の多層積層構造の電磁波遮蔽能力に優れた素材開発に対する関心が高まっている。
【0003】
グラフェン(Graphene)に代表される2次元ナノ粒子は、優れた機械的、電磁気的特性を有し、次世代素材として活発に研究されている。これらの2次元ナノ粒子の中で、最近開発されたマキシン(MXene)は遷移金属とカーボンの層状構造をなしている。
【0004】
2011年、Drexel大学でマキシン(MXenes)という新しい系列の2次元(2D)結晶質遷移金属カーバイド(crystalline transition metal carbides)が開発された。2015年、マキシンファミリーは、二重遷移金属(double M)MXenesの発見により、さらに拡張された。最近、Ti2C、Ti3C2、Nb2C、V2C、Ta4C3、Mo2TiC2、Mo2Ti2C3、Cr2TiC2など20個の異なるマキシン組成が合成され、ほとんどのマキシン(MXene)は非常に高い金属性伝導度を有している。
【0005】
一般的に、マキシンはマックス相(MAX phase)というセラミック材料から合成される。マックス相は、遷移金属、カーボン、14族元素(アルミニウムまたはシリコンなど)の積層構造を有しており、フッ酸などの強酸を用いたエッチング工程を介して14族元素だけを選択的に除去し、2次元のマキシンナノ粒子を残す。これらの強酸水溶液での反応により、マキシン表面には-OH、=O、-Fなどの末端官能基(terminal groups)が生成され、これらの官能基はマキシンに親水性の特性を付与する。したがって、合成されたマキシンは、優れた水分散特性を有し、水分散インクに製造されて様々な工程を介して機能性素材として活用される。また、2次元マキシンは、優れた電気伝導度を有し、これをなす遷移金属及び炭素/窒素の組成種類及び割合の調節を介して機能性を付与することができる。
【0006】
しかし、水溶液相に分散されたマキシンは、水分子及び溶存酸素によって容易に酸化されて金属酸化物に変化し、その本来の優れた特性を失ってしまうため、長期保管が難しい。水溶液相に分散されたマキシンは凝集すると再分散が難しい。また、親水性表面を有するマキシンは、疎水性を有する材料(高分子、有機溶媒など)との引力が低くて均質の複合材料を形成するのに難しい。さらに、水溶液分散インクで疎水性材料との混合インクの製造に限界があり、水の高い沸点及び水を除去するための高エネルギー消費は、スプレーコーティング、スピンコーティング、インクジェットプリンティングなどの液状工程に制限がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Langmuir 2005, 31, 10966
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機溶媒に分散が容易な粒子は、これを含有する高分子複合体の製造が容易なだけでなく、さまざまな性能のフィルム、コーティング製品の応用に有利な特性を有する。
【0009】
したがって、本発明は、親水性マキシン粒子の問題点を改善するために、2次元マキシン粒子の表面を疎水性を有するか官能基を有するリガンドに改質して、親水性の特性を減らすか、疎水性の特性を付与し、このように表面改質された2次元マキシン粒子が有機溶媒に分散されたインクを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の様態は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子;及び前記表面改質された2次元マキシン粒子の表面に形成された有機保護膜を含有する、不動態化(passivation)された2次元マキシン粒子を提供する。
【0011】
本発明の第2の様態は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法において、
酸エッチング工程を介して製造されたマキシン粒子が分散された水溶液を準備する第1段階;
前記水溶液と相分離される有機基溶媒に、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階;及び
第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる第3段階
を含むものである、表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第3様態は、マキシン有機溶媒分散インクの製造方法において、
酸エッチング工程を介して製造されたマキシン粒子が分散された水溶液を準備する第1段階;
前記水溶液と相分離される有機基溶媒に、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階;
第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して、界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる第3段階;
界面反応後に相分離を誘導する第4段階;
相分離された水溶液層で表面改質されたマキシン粒子を含有する有機溶液を分離する第5段階;及び
選択的に、第5段階から得られた有機溶液の濃度を調節したり、溶媒を置換する第6段階
を含むものである、マキシン有機溶媒分散インクの製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第4様態は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子を含有する有機溶媒分散インクを提供する。
【0014】
本発明の第5様態は、第4様態の有機溶媒分散インクを用いて液状工程で製造されたフィルムまたは複合体を提供する。
【0015】
本発明の第6様態は、第1様態に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子またはその有機保護膜を除去した表面改質された2次元マキシン粒子;及び高分子、表面改質された2次元マキシン粒子以外の他の異種粒子、または両方を含有する複合体を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、2次元マキシン粒子、例えば、Mn+1Xn(Tx)、または M′2M″nXn+1(Tx)で示される親水性マキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させることが特徴である。
【0018】
本発明でマキシン(MXenes)は、下記実験式(1)で示される結晶セル(crystal cells)が実質的に2次元配列(two-dimensional array)を成した層(layer)を1つ以上含む2次元遷移金属カーバイド、ナイトライド(transition metal carbides、nitrides)またはこれらの組み合わせであってもよい(
図1参照)。
【0019】
[実験式1]
Mn+1Xn (1)
ここで、各Xは、Mの8面体(octahedral array)内に位置し、
Mは、IIIB族金属、IVB属金属、VB属金属、及びVIB属金属で構成された群から選択される金属であり、
各Xは、C、N、またはその組み合わせ、好ましくは、Cであり、
n=1、2、または3である。
【0020】
Mの非制限的な例としては、Sc、Y、Lu、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W及びその組み合わせであってもよく、このとき、Mn+1Xnマキシンの非制限的な例としては、Sc2C 、Ti2C、V2C、Cr2C、Cr.sub.2N、Zr2C、Nb2C、Hf2C、Ti3C2、Ti2C、V3C2、Ta3C2、Ta4C3、Ti4C3、V4C3、Ta4C3、またはその組み合わせなどがある。
【0021】
また、本発明でマキシンは下記実験式(2) で示される結晶セルが実質的に2次元配列を成した層(layer)を1つ以上含む2次元遷移金属カーバイド、ナイトライド、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
[実験式2]
M′2M″nXn+1 (2)
ここで、各Xは、M′及び M″の8面体内に位置し、
M′及び M″は、IIIB属金属、IVB属金属、VB属金属、及びVIB族金属で構成された群から選択される互いに異なる金属であり(例えば、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Moまたはその組み合わせである)、
各Xは、C、N、またはその組み合わせ、好ましくは、Cであり、
n=1、または2である。
【0023】
M′2M″nXn+1の非制限的な例としては、Mo2TiC2、Mo2VC2、Mo2TaC2、Mo2NbC2、Mo2Ti2C3、Cr2TiC2、Cr2VC2、Cr2TaC2、Cr2NbC2、Ti2NbC2、Ti2TaC2、V2TaC2、V2TiC2、Mo2Ti2C3、Mo2V2C3、Mo2Nb2C3、Mo2Ta2C3、Cr2Ti2C3、Cr2V2C3、Cr2Nb2C3、Cr2Ta2C3、Nb2Ta2C3、Ti2Nb2C3、Ti2Ta2C3、V2Ta2C3、V2Nb2C3、V2Ti2C3などがある。
【0024】
一般的に、
図1に示すように、マキシンはマックス相(MAX phase)をエッチングして合成してもよい。
【0025】
マキシンを製造するためにマックス相をエッチングするエッチング剤の非制限的な例としては、HF、NH4HF2、HClとLiFの混合物のようにF-を含有する強いエッチング剤などがある。例えば、常温でHF水溶液でTi3AlC2をエッチングすると、Al原子が選択的に除去され、カーバイド層の末端官能基(terminal groups)としてO、OH、及び/またはF原子が形成される。
【0026】
従って、本発明のエッチングを介して製造されたマキシンはMn+1Xn(Tx)またはM′2M″nXn+1(Tx)で示されてもよく、ここで、Txは、エッチングにより形成される、-OH、=O、-Fなどの末端官能基を意味する。
【0027】
本明細書において、飽和または不飽和炭化水素は、CnH2n+1、CnH2n-1、CnH2n-3(1 ≦ n ≦ 25)のような脂肪族炭化水素、脂肪族環状炭化水素、芳香族炭化水素を含む。さらに、官能基(例えば、-OH、NH2、-COOH、-CH=CH-)に置換された炭化水素も含む。
【0028】
本発明の飽和または不飽和炭化水素を含む官能基における官能基は、有機相に分散された飽和または不飽和炭化水素を含む表面改質用前駆体をマキシン表面とイオン結合または共有結合させうるものを含んでもよい。
【0029】
具体的には、前記官能基は、ホスホネート(phosphonate)、アミン(amine)、及びシラン(silane)で構成された群から選択されるものであってもよく、マキシンを表面改質させうる官能基に該当する限り、これに制限されるものではない。ただし、本願でカルボキシレート(carboxylate)をマキシン表面に結合させては表面改質できないことを確認したところ、本願発明の飽和または不飽和炭化水素を含む官能基は、マキシンを表面改質させうる官能基であることを実質的に確認したことに意義がある。
【0030】
一方、前記官能基の中でホスホネートは、下記式(1)または(2)、アミンは、下記式(3)、シランは、下記式(4)で示してもよい。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【化4】
ここで、 R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、飽和または不飽和炭化水素、C
1~C
6アルコキシ基またはヒドロキシ基であり、R
5は、飽和または不飽和炭化水素であり、このとき、R
1、R
2、R
3及びR
4のすべてが飽和または不飽和炭化水素である場合と R
1、R
2、R
3及びR
4のすべてがヒドロキシ基である場合は除き、
A
1、A
2、及びA
3は、それぞれ独立に、Hまたは飽和または不飽和炭化水素であり、このとき、A
1、A
2、及びA
3がすべてHである場合は除く。
【0035】
本発明における前記飽和または不飽和炭化水素は、それぞれ独立に、C1-25アルキル、C2-25アルケニル、C2-25アルキニル、C6-25アリール、または(C6-25アリール)-(C1-4アルキル)で構成された群から選択される飽和または不飽和炭化水素であってもよく、具体的には、C1-13アルキル、C2-13アルケニル、C2-13アルキニル、C6-10アリール、または(C6-10アリール)-(C1-4アルキル)であってもよいが、これに制限されるものではない。さらに、前記飽和または不飽和炭化水素は、その鎖の中間または側鎖にO、NまたはSなどのヘテロ元素を含んでもよい。また、前記飽和または不飽和炭化水素は、ヒドロキシ基、カルボキシル基などの官能基が置換されてもよく、繰り返し単位1000以下または平均分子量500,000以下の疎水性ポリマーであってもよい。
【0036】
本発明の具体的な実施例では、C25以内の飽和または不飽和炭化水素または分子量5000以内の飽和または不飽和炭化水素を含むポリマーを用いたが、疎水性残基を含む有機溶媒内で分散されている限り、炭化水素基を構成する炭素数に制限されるものではない。
【0037】
本発明において、マキシン粒子の表面改質に使用可能な飽和または不飽和炭化水素を含むアミンの例は、下記の通りである:
【0038】
具体的には、ヘキシルアミン、ドデシルアミン及びアミン化された疎水性ポリマー(末端に-NH2を含むポリスチレン、MW=5,000)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明において、マキシン粒子の表面改質に使用可能な飽和または不飽和炭化水素を含むホスホネートの例は、下記の通りである:
【0040】
具体的には、プロピルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、及びtert-ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、ジエチル3-ブテニルホスホネート、及びジエチル(2-シアノエチル)ホスホネートであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において、マキシン粒子の表面改質に使用可能な飽和または不飽和炭化水素を含むシランの例は、下記の通りである:
具体的には、ドデシルトリエトキシシラン(Dodecyltriethoxysilane:DTES)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明に基づいて2次元マキシン粒子、例えば、Mn+1Xn(Tx)またはM′2M″nXn+1(Tx)で示される親水性マキシン粒子を、相対的に疎水性である飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させると、有機溶媒に容易に分散されることがあり、有機溶媒に分散されている有機高分子とも均一に混合されうる。
【0043】
したがって、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子は、表面に有機溶媒または有機高分子によって有機保護膜が形成され、これにより、酸素または水との接触が抑制されて2次元マキシン粒子の酸化を抑制、すなわち不動態化させうる。つまり、水との接触を制限することにより酸化を防止し、長期間の保管に非常に有利である。また、本発明は、2次元マキシン粒子の大きさに関係なく適用されてもよく、分散及び凝集の問題のあるナノ粒子の場合にも適用されうる。
【0044】
したがって、本発明は飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子;及び前記表面改質された2次元マキシン粒子の表面に形成された有機保護膜を含有する、不動態化された2次元マキシン粒子を提供しうる。
【0045】
このとき、本発明に係る不動態化された2次元マキシン粒子は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が保護膜を形成する有機溶媒に分散されたものであってもよく/分散されたものであるか、保護膜を形成する有機高分子で被覆または有機高分子に分散されたものであってもよい。
【0046】
有機溶媒は様々な有機化合物またはその複合体の生産及びフィルムのような成形体の製造時に広く用いられるし、有機溶媒の分子量は小さくて室温で液体である。有機溶媒は、アルカン、オレフィン、アルコール、アルデヒド、アミン、エステル、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素、水素化炭化水素、テルペンオレフィン、ハロゲン化炭化水素、ヘテロサイクリック化合物、窒素含有化合物、硫黄含有化合物などのように多様である。
【0047】
有機溶媒は固有の溶解度パラメータ(定数)を有し、これに分散/溶解させようとする材質の溶解度パラメータと類似するほど溶解力が良い。
【0048】
したがって、分散させようとする有機溶媒の極性に応じて、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基の分子量、組成及び/または置換基を調節して、様々な有機溶媒だけでなくて、様々な他の素材が分散/溶解された有機溶媒に官能基で表面改質された2次元マキシン粒子を分散/溶解させてもよい。また、飽和または不飽和炭化水素の分子量、組成及び/または置換基を調節してマキシン粒子の表面電荷量を所望する範囲で調節することができるだけでなく、分散されている有機溶媒の極性が調節可能で、これにより、異種粒子または高分子との引力特性を調節して複合インク及び複合体の製造を容易にすることができる。
【0049】
本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法は、
酸エッチング工程を介して製造したマキシン(ナノ)粒子が分散された水溶液を準備する第1段階;
前記水溶液と相分離される有機溶媒に、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階;及び
第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる第3段階を含む。
【0050】
また、本発明に係るマキシン有機溶媒分散インクの製造方法は、
酸エッチング工程を介して製造したマキシン粒子が分散された水溶液を準備する第1段階;
前記水溶液と相分離される有機溶媒に、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階;
第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる第3段階;
界面反応後に相分離を誘導する第4段階;
相分離された水溶液層で表面改質されたマキシン粒子を含有する有機溶液を分離する第5段階;及び
選択的に、第5段階で得られた有機溶液の濃度を調節したり、溶媒を置換する第6段階を含む。
【0051】
前記本発明の飽和または不飽和炭化水素を含む官能基における官能基は、前述した通りである。
【0052】
前記酸エッチング工程を介して製造したマキシン粒子が分散された水溶液を準備する第1段階と有機溶媒に飽和または不飽和炭化水素を含む官能基が溶解された有機溶液を準備する第2段階は、順序と関係なく行ってもよく、同時に行うことも可能である。
【0053】
本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質されたマキシン粒子は、アミンとの物理吸着(physisorption)によって達成できる。例えば、マキシン粒子の表面は、陰極性を帯びるため陽極性を帯びる官能基を含む化合物は、マキシン粒子の表面に静電気的引力、イオン結合及び水素結合によって付着されてもよく、これにより、マキシン粒子の表面を不動態化させて、表面に現れた飽和または不飽和炭化水素により有機溶媒に対する分散性が向上されたことが特徴である。
【0054】
その製造方法において、第1段階で酸エッチング工程を介して製造したマキシン粒子が分散された水溶液は、その酸性度を調節して、pH2~6の範囲を有する酸性溶液、pH6~7の範囲を有する中性溶液、pH7~9を有する塩基性溶液であってもよく、官能基の種類に応じてそれぞれの官能基を活性化させうる固有の適切なpH値を当業者が選択して表面改質の反応速度を速く調節してもよい。
【0055】
前記のように溶液の酸性度を調節することにより、官能基を活性化させて表面改質の反応を促進してもよい。一方、pHが低すぎる場合、反応は急速に起こるが、マキシン粒子の酸化を伴って金属酸化物に変質されることがあり、pHが高すぎる場合には、反応速度が非常に遅くなって反応を完了するまでに長時間遅延されうる。したがって、当業者は用いられるアミン化合物の種類に応じて適切なpHを選択してもよい。
【0056】
本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子の製造方法及び本発明に係るマキシン有機溶媒分散インクの製造方法は、水と混ざらない有機溶媒(solubility in water <10% w/w)を用いることが特徴である。
【0057】
第2段階で用いられる有機溶媒は水と混ざることなく、マキシン粒子の表面改質剤である飽和または不飽和炭化水素を含む官能基を分散/溶解させうる限り、その種類に制限がなく、その非制限的な例としては、アセチルアセトン、アニリン、アニソール、ベンゼン、ベンゾニトリル(benzonitrile)、ベンジルアルコール、1-ブタノール、イソブタノール、二硫化炭素(carbon disulfide)、四塩化炭素(carbon tetraholoride)、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、ジクロロエタン、N,N-ジメチルアニリン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、1-ヘプタノール、1-ヘキサノール、ジクロロメタン、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-ペンタノン、3-ペンタノン、トルエン、p-キシレン(p-xylene)があり、これらを単独で、または2種以上組み合わせて混合溶媒で用いてもよい。
【0058】
第3段階は、第1段階のマキシン粒子含有水溶液と第2段階の有機溶液とを混合及び攪拌して界面反応を介してマキシン粒子を飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質させる段階である。
【0059】
図2aは一具体例として、界面反応を介してホスホネートで表面改質された2次元マキシン粒子が有機溶媒に分散されたマキシンインクを製造する方法を図式化したものであり、有機溶媒はクロロホルムを用いて水より密度が高くて下に位置する。逆に、水より密度が低い有機溶媒を用いる場合、
図3aに示すように、水溶液が下に位置して有機溶媒が上に位置する。
【0060】
図2bは一具体例として、界面反応を介してアミンで表面改質された2次元マキシン粒子が有機溶媒に分散されたマキシンインクを製造する方法を図式化したものであり、有機溶媒はトルエンを用いて水より密度が低くて上に位置する。逆に、水より密度が高い有機溶媒を用いる場合、
図3bに示すように、水溶液が上に位置して有機溶媒が下に位置する。
【0061】
図2に例示されたように、水溶液の水溶性マキシン粒子が界面で飽和または不飽和炭化水素を含むアミンで表面改質されると、相対的に疎水性化されて有機溶液に移動する。したがって、表面改質されたマキシン粒子だけを有機溶液相から容易に分離できる。このとき、本発明に係る表面改質された2次元マキシン粒子は、有機溶液中の有機溶媒によって酸素または水との接触が抑制され、2次元マキシン粒子の酸化を抑制、すなわち、不動態化させうる保護膜が形成される。
【0062】
このとき、攪拌を介して水溶液と有機溶液との間に界面反応が起こる界面を最大化してもよく、攪拌速度は溶液の体積、攪拌機、磁気バーの有無などの条件に応じて当業者が適切な速度で選択してもよく、界面反応を誘発しうる限り、単純に手だけで振って撹拌することも可能である。
【0063】
第3段階は、5~100℃で1秒~24時間行ってもよい。
【0064】
第4段階は、界面反応後に相分離を誘導する段階であって、例えば、撹拌を停止して待つと、水溶液と有機溶液が分離される。
【0065】
第5段階は、相分離された溶液層の中で表面改質されたマキシン粒子を含有する有機溶液を分離する段階であって、これにより、有機溶液に分散されている表面改質されたマキシン粒子を回収できる。本発明の具体的な実施例では、様々な有機溶媒を用いて本発明の製造方法でマキシンを表面改質し、相分離して水溶液を除去した後、有機溶液に分散された形態で表面改質されたマキシン粒子を回収した(
図4)。
【0066】
この際、反応しない官能基はミセル構造でエマルジョンを形成するため、超音波を加えて反応しない官能基を除去する段階をさらに含んでもよく、これを除去して有機溶液の分離を容易にしてもよい。
【0067】
本発明に係るマキシン有機溶媒分散インクの製造方法は、第5段階で得られた有機溶液の濃度を調節したり、溶媒を置換する第6段階をさらに行ってもよく、行わなくてもよい。
【0068】
第6段階で表面改質されたマキシン含有有機溶液の濃度は、自然蒸発法、回転真空蒸発法、遠心分離法などにより濃縮したり、溶媒の追加により希釈して調節してもよい。
【0069】
第6段階で溶媒の置換は、遠心分離器、順次濃縮及び希釈法、透析法を介して行ってもよい。
【0070】
第6段階を介してマキシン有機溶媒分散インクの濃度を0.1mg/mLの~100mg/mLに調節してもよい。
【0071】
図7(Selected area electron diffraction)及び
図10から分かるように、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子、具体的には、飽和または不飽和炭化水素を含むホスホネートで表面改質された2次元マキシン粒子(
図7a)及び飽和または不飽和炭化水素を含むアミンで表面改質された2次元マキシン粒子(
図7b)も、表面改質前の2次元マキシン粒子の結晶構造をそのまま維持するため、固有の特性(例えば、電気伝導性)を維持する。
【0072】
例えば、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子は、表面改質前の2次元マキシン粒子自体の固有の特性である、優れた電気伝導度、自己損失及び誘電損失の特性を保持することができ、電波吸収剤として用いられてもよい。
【0073】
本発明で表面改質の対象である2次元マキシン粒子は、連続的に結晶構造が同一の独立型(free-standing)2次元アセンブリであるか、これらが積層されたアセンブリ(stacked assemblies)であってもよい。積層されたアセンブリの場合、原子、イオン分子が層間に挿入されてもよい。このとき、層間挿入される原子またはイオンはリチウムであってもよい。したがって、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子も、バッテリー、スーパーキャパシタのようなエネルギー貯蔵装置に用いてもよい。
【0074】
さらに、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基の分子量、組成及び/または置換基を調節することにより、マキシン粒子の表面電荷量を調節してもよく、分散されている溶媒の極性を多様化してもよく、後続の反応のための官能基を導入してもよい。また、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子を含む有機分散インクは、液状工程(ろ過法、スプレー工程、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット、多層コーティング法など)を介してフィルム及び複合体を形成しうる。
【0075】
例えば、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子が有機溶媒に分散されたインクを基材上に均一に塗布し、溶媒を蒸発させることにより、基材上に均一な厚さで形成された薄膜を製造してもよい。
【0076】
したがって、本発明は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子を含有する有機溶媒分散インクだけでなく、表面改質された2次元マキシン粒子以外の他の粒子及び/または高分子を含有する有機溶媒分散インクも提供することができる。
【0077】
前記インクは、フォトレジストであってもよい。
【0078】
他の粒子の非制限的な例としては、金属(例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Pt)、金属酸化物(例えば、SiO2、ITO)、ナイトライド、カーバイド、半導体(例えば、Si、GaAs、InP)、ガラス(例えば、シリカまたはホウ素系ガラス)、液晶(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、有無機多孔体、有機高分子などがある。
【0079】
前記高分子の非制限的な例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルケトン(polyetherketone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリシロキサンなどがある。
【0080】
本発明は、有機溶媒を用いるため、スプレーコーティング、スピンコーティング、インクジェットプリンティング、ろ過法などの液状工程を介してマキシンの酸化が抑制された状態で2次元マキシン粒子を含有する機能性フィルムを製造しうる。
【0081】
また、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子は疎水性を有する材料(高分子など)との混和性が高くて、均質の高性能複合材料または複合体を形成しうる。
【0082】
したがって、本発明は、飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で表面改質された2次元マキシン粒子(その有機保護膜を除去したものであってもよい);及び高分子及び/または表面改質された2次元マキシン粒子以外の他の異種粒子を含有する複合体を提供しうる。
【発明の効果】
【0083】
本発明に基づいて表面改質された2次元マキシン粒子は、表面に疎水性を導入して有機溶媒に安定に分散することができ、特に低沸点を有する溶媒への分散は形成されたインクを活用して液状工程を容易にする。また、官能基を有する飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で改質された2次元マキシン粒子は、後続工程を介して様々な機能性を付与することができる。本発明に係る表面改質された2次元マキシン粒子は、有機溶媒に分散されて保管されることにより、水溶液分散または乾燥された形態で保存されたときに発生する酸化を画期的に遅延させる。
【0084】
さらに、表面疎水性及び官能基は2次元マキシン粒子と様々な異種ナノ粒子または高分子を活用した複合体種類を最大化する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】一具体例に基づいてマックス相(MAX phase)をエッチングしてマキシンを合成することを示す概念図である。
【
図2】(a)は、界面反応を介してホスホネートで表面改質された2次元マキシン粒子が有機溶媒に分散されたマキシンインクを製造する方法を図式化したものであり、(b)は、界面反応を介してアミンで表面改質された2次元マキシン粒子が有機溶媒に分散されたマキシンインクを製造する方法、及び反応前後及び最終製造されたポリスチレンアミンで表面改質されたマキシンをトルエンに分散させたインクの形態を示したものである。
【
図3】(a)は、実施例1及び実施例2で有機溶媒として水よりも密度が低い1-ヘキサノールを用いた場合、表面改質反応の前後のマキシン分布を示したものであり、(b)は、実施例4及び実施例5で水より密度が大きいか小さい、様々な有機溶媒を用いた場合、溶媒の種類、すなわち、密度による表面改質の反応前後マキシン分布を示したものであり、(c)は、実施例5で有機溶媒として水よりも密度が低いヘキサノールを用いた場合、表面改質反応の前後のマキシン分布を示したものである。
【
図4】(a)は、表面改質されたマキシンが様々な有機溶媒に分散されたインクを示したものであり、(b)は、アミン化されたポリスチレン(PS-NH
2)で表面改質されたマキシンが様々な有機溶媒に分散されたインクを示す。
【
図5】(a)は、表面改質の対象としてTi
3C
2T
x組成のマキシンを用い、ドデシルホスホン酸でマキシンを改質した実施例1-5の表面改質されたマキシン粒子に対して、
1H NMRを用いて表面改質されたマキシンの組成分析した結果を示すものであり、(b)は、実施例1-5の表面改質されたマキシン粒子に対して、
31P NMRを用いて表面改質されたマキシンの組成を分析した結果を示すものであり、(c)は、表面改質対象としてTi
3C
2Tx組成のマキシンを用い、オレイルアミンでマキシンを改質した表面改質されたマキシン粒子に対して、
1H NMRを用いて表面改質されたマキシンの組成分析した結果を示すものである。
【
図6】(a)は、実施例2に基づいてアミン化された疎水性ポリマー、例えば、アミン化されたポリスチレンで表面改質されたマキシン粒子に対し、FT-IRを用いて表面改質されたマキシンの組成分析した結果を示すものであり、(b)は、ドデシルトリエトキシシラン(DTES)で表面改質されたマキシン粒子に対し、FT-IRを用いて表面改質されたマキシンの組成分析した結果を示すものである。
【
図7】(a)は、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)及びSAED(selected area electron diffraction)を用いて実施例1-5に従って表面改質前/後のマキシン(Ti
3C
2T
x組成のマキシン)の微細構造を比較した結果を示すものであり、(b)は、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)及びSAED(selected area electron diffraction)を用いて、実施例4に従って表面改質前/後のマキシン(Ti
3C
2T
x組成のマキシン )の微細構造を比較した結果を示すものである:(上)表面改質前のマキシン(Ti
3C
2T
x); (下)表面改質後のマキシン。
【
図8】(a)は、水分散されたTi
3C
2T
xマキシンとドデシルホスホン酸で表面改質した後、クロロホルム(CHCl
3)に分散されたマキシンを常温で3ヶ月保存した後の様子を比較したものであり、(b)は、水分散されたTi
3C
2T
xマキシンとアミン化されたポリスチレンで表面改質した後、トルエンに分散されたマキシンを常温で3ヶ月保存した後の様子を比較したものであり、(c)は、ドデシルトリエトキシシランで表面改質した後、ヘキサノールに分散されたマキシンを常温で1ヶ月以上保存した後の様子を示したものである。
【
図9】(a)は、実施例1-1(ドデシルホスホン酸で表面改質)に従って1-ヘキサノールに分散された表面改質マキシンインクをポリプロピレンメンブレン(細孔サイズ:6~70μm)を用い、ろ過法による薄膜を示すものであり、(b)は、実施例1に従ってヘキシルアミンで表面改質させ、1-ヘキサノールに分散された表面改質マキシンインクをポリプロピレンメンブレン(細孔サイズ:6~70μm)を用いた、ろ過法によって製造した薄膜を示すものである。
【
図10】
図9の製造されたそれぞれの薄膜の伝導性及び面抵抗を示すものである。
【
図11】実施例5に従って製造したヘキシルアミンで表面改質させ、1-ヘキサノールに分散された表面改質したマキシンインク(1mg/mLの濃度)をスピンコーティングして製造した薄膜を示すものである。左側の非コーティングカバーガラスから右側にコーティング層を1層ずつ増加させながら蒸着した画像を示す。
【
図12】本発明に従って製造したクロロホルムに分散されたマキシンインクをスプレーコーティングに適用して形成した大面積のパターニングされた薄膜を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、本発明を実施例により本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、より詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例1-1~実施例1-6:アルキルホスホネートを用いたマキシン(MXene)の表面改質
Ti3AlC2粉末(平均粒径 ≦ 30μm)をLiF-HClで処理して準備した、脱ラミネートされたTi3C2Txマキシン水溶液を1mg/mLに希釈して10mLを準備した後、塩酸を添加して水溶液のpHを2~3に調節した。アルキルホスホン酸(Alkyl phosphonic acid)であるそれぞれのプロピルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、及びtert-ブチルホスホン酸7mgを有機溶媒である1-ヘキサノール10mLに溶解させて、各有機溶液を準備した。前記水溶液と各有機溶液とを混合して、室温で攪拌して界面反応を行った。6時間後に撹拌を停止し、水溶液と有機溶液が分離されるように待機した後、アルキルホスホネートで表面改質されたマキシン粒子が溶解された有機溶液を分離した。
【0088】
実施例2-1~実施例2-2:アリールホスホネートを用いたマキシン(MXene)の表面改質
有機溶媒である1-ヘキサノールにアルキルホスホン酸の代わりにアリールホスホン酸である、フェニルホスホン酸及びベンジルホスホン酸をそれぞれ用いることを除いては、前記実施例1と同様の方法で界面反応させてアリールホスホネートで表面改質されたマキシン粒子が溶解された有機溶液を分離した。
【0089】
実施例3-1~実施例3-2:官能基を有するホスホネートを用いたマキシン(MXene)の表面改質
有機溶媒である1-ヘキサノールにアルキルホスホン酸の代わりに官能基を有するホスホネートであるジエチル3-ブテニルホスホネート、及びジエチル(2-シアノエチル)ホスホネートをそれぞれ用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で反応させて官能基を有するホスホネートで表面改質されたマキシン粒子が溶解された有機溶液を分離した。
【0090】
実施例4-1:アルキルアミンを用いたマキシンの表面改質
Ti3AlC2粉末(平均粒径 ≦ 40μm)をLiF-HClで処理して準備した脱ラミネートされたTi3C2Txマキシン水溶液を1mg/mLに希釈して10 mLを準備した。前記水溶液のpHは約5程度であった。ヘキシルアミン、ドデシルアミンなどのアルキルアミン40mgを有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、及びヘキサン)10mLに溶解させて各有機溶液を準備した。前記水溶液と各有機溶液とを混合して室温で攪拌し、界面反応を行った。24時間後に攪拌を停止して、水溶液と有機溶液が分離されるように待機した後、アルキルアミンで表面改質されたマキシン粒子が分散された有機溶液を分離した。分離を容易にするために、必要に応じて有機溶液の分離に先立って、超音波を加え、形成されたエマルジョンを除去する段階をさらに行った。
【0091】
実施例4-2:アミン化された疎水性ポリマーを用いたマキシンの表面改質
アルキルアミンの代わりにアミン化された疎水性ポリマー(末端に-NH2を含むポリスチレン、MW=5000)を用いることを除いては、前記実施例4と同様の方法で界面反応させてアミン化された疎水性ポリマーで表面改質されたマキシン粒子が溶解された有機溶液を分離した。
【0092】
実施例5:シラン(silane)を用いたマキシンの表面改質
有機溶媒であるヘキサノールにアルキルホスホン酸の代わりにドデシルトリエトキシシラン(Dodecyltriethoxysilane:DTES)を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で界面反応させてシランで表面改質されたマキシン粒子が溶解された有機溶液を分離した。
【0093】
実験例1-1:表面改質の反応前後のマキシンの分布
図3aは、実施例1及び実施例2で有機溶媒として水よりも密度が低い1-ヘキサノールを用いた場合、表面改質の反応前後のマキシン分布を示したものである。界面反応の前にはTi
3C
2T
xマキシンが水溶液に分散されていたが、界面反応を介して表面改質されたマキシンが有機溶媒に移動されることを示す。したがって、界面反応の後には、表面改質されたマキシンがすべて密度が低い有機溶媒(1-ヘキサノール)に移動し、上層に分布した。その後、水溶液を分離して有機溶媒に分散された表面改質されたマキシンインクを得た。
【0094】
実験例1-2:表面改質の反応前後のマキシンの分布
図3bは、実施例4-1及び実施例4-2で様々な有機溶媒を用いた表面改質の反応前後のマキシン分布を示したものである。これは反応の前にはマキシンが水溶液に分散されていたが、界面反応を介して表面改質されたマキシンが有機溶媒に移動されることを示す。したがって、界面反応の後には、表面改質されたマキシンがすべて有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、及びヘキサン)に移動した。具体的には、水よりも密度が高いジクロロメタン、クロロホルム、及びクロロベンゼンを有機溶媒として用いた場合には、下層に分布して、水よりも密度が低いヘキサノール、ベンゼン、トルエン、及びヘキサンを有機溶媒として用いた場合には、上層に分布した。その後、水溶液層を分離して除去し、有機溶媒に分散された表面改質されたマキシンインクを得た。
【0095】
実験例1-3:表面改質の反応前後のマキシンの分布
図3cは、実施例5で有機溶媒として水よりも密度が低いヘキサノールを用いた場合、表面改質の反応前後のマキシンの分布を示したものである。界面反応の前にはTi
3C
2T
xマキシンが水溶液に分散されていたが、界面反応を介して表面改質されたマキシンが有機溶媒に移動されることを示す。したがって、界面反応の後には表面改質されたマキシンがすべて密度が低い有機溶媒(ヘキサノール)に移動し、上層に分布した。その後、水溶液を分離して有機溶媒に分散された表面改質されたマキシンインクを得た。
【0096】
実施例6-1~実施例6-8:様々な有機溶媒に分散されたマキシン
有機溶媒として、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、アニソール、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、及びヘキサンを用い、それぞれの有機溶媒に対してホスホン酸としては、プロピルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、tert-ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、ジエチル3-ブテニルホスホネート、及びジエチル(2-シアノエチル)ホスホネートを用いて、前記実施例1と同様の方法で反応させ、表面改質されたマキシン粒子が溶解された有機溶液を分離した。
【0097】
これらのうち、代表的な例として、ドデシルホスホン酸を用いて表面改質したマキシン粒子が、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、アニソール、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、及びヘキサンの有機溶媒に分散させたインクを
図4aに示した。
【0098】
図4aは、表面改質されたマキシンが、様々な有機溶媒に分散されて分離された有機溶液を示す。したがって、様々なアルキル基、アリール基、または官能基を含むホスホネートを用いて、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンなどの他の極性を有する様々な有機溶媒に分散されたマキシンインクを得た。
【0099】
実施例7-1~実施例7-6:様々な有機溶媒に分散されたマキシン
前記実施例4または5に従って準備したアルキルアミンまたはアミン化された疎水性ポリマーで表面改質されたマキシン粒子を有機溶媒であるヘキサノール、ジクロロエタン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム(CHCl
3)、クロロベンゼン、ベンゼン、及びトルエンに分散させてインクを製造し、これを
図4bに示した。
【0100】
実験例2-1:NMRを用いたホスホネートで表面改質されたマキシンの組成分析
表面改質の対象としてTi
3C
2T
x組成のマキシンを用い、ドデシルホスホン酸(dodecyl phosphonic acid)でマキシンを改質した実施例1-5の表面改質されたマキシン粒子に対して、
1H NMRを用いて表面改質されたマキシンの組成を分析した結果、ホスホン酸のアルキル基に該当する0.8-2.2ppm付近でピークが確認された(
図5a)。また、ホスホン酸の-OHピーク(10.2ppm)が反応の後に消えたことから見て、Ti-O-P結合が生成されたと判断される。
【0101】
実施例1-5の表面改質されたマキシン粒子に対して、
31P NMRを用いて表面改質されたマキシンの組成を分析した結果、ホスホン酸から起因したピーク(38ppm)が~25ppmにシフト(shift)したことを確認した(
図5b)。この結果は、Ti-O-P結合が生成されたことを示す(参考文献:非特許文献1)。
【0102】
実験例2-2:NMRを用いた飽和または不飽和炭化水素を含むアミンで表面改質されたマキシンの組成分析
表面改質の対象としてTi
3C
2T
x組成のマキシンを用い、オレイルアミンで表面改質したマキシン粒子に対して、
1H NMRを用いて組成を分析した結果、アミンのアルキル基に該当する1.26-5.35ppm付近でピークが確認された(
図5c)。
【0103】
実験例2-3:FT-IRを用いたアミン化された疎水性ポリマーで表面改質されたマキシンの組成分析
表面改質の対象としてTi
3C
2T
x組成のマキシンを用いて、アミン化されたポリスチレンで表面改質したマキシン粒子に対して、FT-IRを用いて組成を分析した結果(
図6a)、アミンの疎水性ポリマー、すなわち、ポリスチレンのC-Hに該当する2800-3000cm
-1及び1400-1600cm
-1付近でピークが確認された。また、芳香族環に該当する3000-3150cm
-1及び700-1100cm
-1付近でピークが確認された。
【0104】
実験例2-4:FT-IRを用いたシランで表面改質されたマキシンの組成分析
表面改質の対象としてTi
3C
2T
x組成のマキシンを用いて、ドデシルトリエトキシシラン(DTES)で表面改質したマキシン粒子に対して、FT-IRを用いて組成を分析した結果(
図6b)、マキシンには存在しないピークが確認され、T-O-Siに該当する1000cm
-1付近で振動ピークが確認された。そこで、DTESとマキシンとの共有(covalent)結合が形成されたことを確認できた。
【0105】
実験例3:SEM及びTEMを用いた表面改質前/後のマキシンの微細構造の解析
SEM(走査型電子顕微鏡)とTEM(透過電子顕微鏡)を用いて実施例1-5及び実施例4に従って表面改質前/後のマキシン(Ti
3C
2T
x組成のマキシン)の微細構造を分析した。
図7a及び
図7bから分かるように、表面改質の後にも改質前の2Dフレーク構造をそのまま維持することを確認した。
【0106】
特に、SAED(selected area electron diffraction)実験を介して結晶構造を確認したときにも、表面改質後のマキシンは改質前の結晶構造をそのまま維持することを確認した(
図7a及び
図7b)。
【0107】
この結果は、ホスホン酸とマキシン、アミンとマキシンの反応が粒子の表面だけで起こることを示す。したがって、本発明に係る飽和または不飽和炭化水素を含む官能基で2次元マキシン粒子を表面改質しても、粒子固有の特性をそのまま維持すると判断される。
【0108】
実験例4:水分散/有機分散マキシンの酸化程度の比較
水分散されたTi
3C
2T
xマキシンとドデシルホスホン酸で表面改質した後にクロロホルム(CHCl
3)に分散されたマキシンとを常温で1ヶ月以上保管した後の様子を
図8aに示した。
【0109】
水分散されたTi3C2Txマキシンは、時間の経過に応じて白っぽく変わったことが見られ、これはマキシンが酸化されてTiOx粒子に変わったことを示す。一方、クロロホルムに有機分散されたマキシンは、6ヶ月が過ぎても本来の色を維持することが見られた。これは、表面改質されたマキシンは、水との接触を制限することで酸化を防止し、長期間の保管に容易であることを示す。
【0110】
実験例5:水分散/有機分散マキシンの酸化程度の比較
水分散されたTi
3C
2T
xマキシンと実施例5に従って準備したアミン化されたポリスチレンで表面改質した後にトルエンに分散されたマキシンとを、常温で3カ月以上保管した後の様子を写真に撮って
図8bに示した。
【0111】
水分散されたTi3C2Txマキシンは、時間の経過に応じて白っぽく変わったことが見られるが、これはマキシンが酸化されてTiOx粒子に変わったことを示す。一方、有機溶媒、具体的には、トルエンに有機分散されたマキシンは、6ヶ月が過ぎても本来の色を維持することが見られた。これは、表面改質されたマキシンは、水との接触を制限することで酸化を防止し、長期間の保管に容易であることを示す。
【0112】
実験例6:有機分散マキシンの酸化程度
ドデシルトリエトキシシランで表面改質した後にヘキサノールに分散されたマキシンを、常温で1カ月以上保管した後の様子を
図8cに示した。
【0113】
ヘキサノールに分散されたマキシンは、1ヶ月が過ぎても本来の色を維持することが見られた。これは、表面改質されたマキシンは、水との接触を制限することで酸化を防止し、長期間の保管に容易であることを示す。
【0114】
実施例8-1:有機溶媒に分散されたマキシンインクを用いた薄膜の製造
実施例1-1(プロピルホスホン酸で表面改質)に従って1-ヘキサノールに分散された表面改質マキシンインクをポリプロピレンメンブレン(細孔サイズ:6~70μm)を用いて、ろ過法により薄膜を製造した。製造された薄膜は
図9aに示すように、厚さ13.6μmを有し、柔軟性を見せた。
【0115】
図10aに確認できるように、前記製造した薄膜の伝導性は、800S/cm以上であり、面抵抗は、0.9Ω/□を示した。
【0116】
実施例8-2:有機溶媒に分散されたマキシンインクを用いた薄膜の製造
実施例4に従ってヘキシルアミンで表面改質し、実施例3に従ってヘキサノールに分散させて準備した表面改質マキシンインクをポリプロピレンメンブレン(細孔サイズ:6~70μm)を用いて、ろ過法により薄膜を製造した。製造した薄膜は
図9bに示すように、厚さ20.80μmを有し、柔軟性を見せた。
【0117】
図10bに確認できるように、前記製造した薄膜の伝導性は、82S/cm以上であり、面抵抗は、5.9Ω/□を示した。
【0118】
実施例8-3:有機溶媒に分散されたマキシンインクを用いた薄膜の製造2
実施例7に従って準備したヘキシルアミンで表面改質してヘキサノールに分散させたマキシンインクとアミン化されたポリスチレンで表面改質してトルエンに分散させたマキシンインクとをカバーグラス上にスピンコーティングして薄膜を製造した。代表的にヘキシルアミンで表面改質してヘキサノールに分散させたマキシンインクを用いて製造した薄膜を写真に撮って
図11に示した。
【0119】
実施例8-4:有機溶媒に分散されたマキシンインクを用いた薄膜の製造3
有機溶媒としてトルエンの代わりにCHCl
3を用いたことを除いては、実施例7に従って準備した、オレイルアミンで表面改質してクロロホルムに分散させたマキシンインクを所望のパターンのマスクを重ねてかぶせた基材上にスプレーコーティング工程を適用して大面積パターニングし、その結果を
図12に示した。