(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】医療用ライトガイド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20220405BHJP
A61B 18/22 20060101ALI20220405BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20220405BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B18/22
G02B6/00 326
G02B23/26 B
(21)【出願番号】P 2019182179
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】島川 修
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051023(JP,A)
【文献】米国特許第5058983(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0080516(US,A1)
【文献】特開2017-102374(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042812(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0176772(US,A1)
【文献】特表平10-504989(JP,A)
【文献】特開2000-041997(JP,A)
【文献】特開2018-010065(JP,A)
【文献】特開2008-257156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06-5/067
A61B 18/20-18/22
G02B 6/00
G02B 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って線状に延び、前記第1方向における先端に位置する端面、基端部、及び前記第1方向において前記基端部と前記端面との間に位置し側面から光を出射する光出射部を有する導光体と、
前記第1方向に沿って延びる筒状を呈し、前記導光体の前記基端部の側面を覆うチューブと、
前記第1方向に沿って延びる筒状を呈し、前記チューブの外径よりも大きい外径を有し、前記チューブの先端部、及び前記チューブから露出した前記導光体の前記光出射部を覆い、前記チューブの先端部に対し第1の接着剤を介して接合され、前記光出射部から出射された光を透過するキャップと、
を備え、
前記キャップは、前記キャップの内面と外面との間を貫通する孔を前記第1方向における先端部に有し、
前記孔の内径は、前記光出射部を覆う前記キャップの部分の内径よりも小さく、
前記孔は、前記キャップとは異なる材料を含む第2の接着剤により封止されている、医療用ライトガイド。
【請求項2】
前記光出射部を覆う前記キャップの部分の内径は、前記チューブを覆う前記キャップの部分の内径よりも小さい、請求項1に記載の医療用ライトガイド。
【請求項3】
前記第1方向において前記導光体と前記キャップの前記先端部との間に配置された反射体を更に備え、
前記反射体は、前記導光体の前記端面に当接する光反射面を有する、請求項1または請求項2に記載の医療用ライトガイド。
【請求項4】
前記反射体は、前記光反射面を底面とする円柱状を呈しており、前記孔と前記導光体の前記端面との間に配置され、
前記孔の内径は前記反射体の外径よりも小さい、請求項3に記載の医療用ライトガイド。
【請求項5】
前記キャップは、前記キャップの側面に形成され前記キャップの周方向に延在する一又は複数のマーカ溝を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療用ライトガイド。
【請求項6】
前記光出射部は、前記第1方向において、前記一又は複数のマーカ溝のうち最も先端寄りに位置する前記マーカ溝と、前記キャップの前記先端部との間に位置する、請求項5に記載の医療用ライトガイド。
【請求項7】
前記キャップの外径は2mm以上4mm以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医療用ライトガイド。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療用ライトガイドを製造する方法であって、
前記基端部の側面が前記チューブにより覆われた前記導光体を準備する工程と、
前記チューブの先端部、及び前記チューブから露出した前記導光体の前記光出射部を前記キャップにより覆う工程と、
前記チューブと前記キャップとの隙間に前記第1の接着剤を流し込む工程と、
前記キャップの前記孔を前記第2の接着剤により封止する工程と、
を含む、医療用ライトガイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用ライトガイド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光散乱ライトガイド(Light diffusing device)の構造が開示されている。この光散乱ライトガイドでは、光ファイバのコア表面を粗面化することでコアからの光を側方に散乱させる。更に、光分布を均一化するために、粗面化されたコア表面を、散乱物質を含む保護チューブにより覆う。
【0003】
特許文献2には、光学プローブの構造が開示されている。この光学プローブは、略円筒形の第1の光透過領域、及び第1の光透過領域の外側面を覆う第2の光透過領域を有する略円筒形のプローブ先端部と、光源及びプローブ先端部を光学的に繋ぐ光ファイバとを備える。光ファイバのコアから出射された光は第1の光透過領域に入射する。第1の光透過領域は、空気または樹脂材料により形成されている。第2の光透過領域の内側面または外側面の少なくとも一方には、円周に沿った複数の溝または突起が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6315775号明細書
【文献】特開2019-72491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療用ライトガイドは、線状の導光体と、導光体の先端部付近を露出させつつ導光体を被覆する保護チューブとを備え、導光体の先端部付近から、導光体の短手方向(側方)に向けて光を出射するものである。医療用ライトガイドは、生体内の管腔部等に挿入された状態で光を出射する。これにより、管腔部等の側壁付近に発生した癌などの患部に光が照射され、この光によって患部が治療される。このような治療方法は、一般的に光線力学的治療(PDT:Photodynamic therapy)と称される。安定的に光を照射するために、PDTに用いられる医療用ライトガイドにおいて光を出射する部分の外径は、該ライトガイドが挿入される管腔部等の内径に適合することが望ましい。例えば、子宮頸管の内壁に光を照射する場合、一般的に、子宮頸管の内径は導光体を被覆するチューブの外径よりも大きい。このように、内径が比較的大きい管腔部等にライトガイドを挿入する場合には、ライトガイドの外径を管腔部等の内径に適合させる為に、導光体の先端部に、チューブよりも太い透明なキャップを被せることが考えられる。
【0006】
導光体の先端部にキャップを被せる場合、キャップの長さを少なくともチューブの先端部に被さる程度とし、キャップとチューブとの隙間に接着剤を流し込み、該隙間を気密に封止することが望ましい。しかしながら、キャップ内の空間が閉じられているためキャップ内の空気の逃げ道がない故に、キャップとチューブとの隙間に接着剤が流れ込みにくく、接着強度が不十分になるおそれがある。
【0007】
そこで、本開示は、キャップとチューブとの接着強度をより高めることが可能な医療用ライトガイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る医療用ライトガイドは、第1方向に沿って線状に延び、第1方向における先端に位置する端面、基端部、及び第1方向において基端部と端面との間に位置し側面から光を出射する光出射部を有する導光体と、第1方向に沿って延びる筒状を呈し、導光体の基端部の側面を覆うチューブと、第1方向に沿って延びる筒状を呈し、チューブの外径よりも大きい外径を有し、チューブの先端部、及びチューブから露出した導光体の光出射部を覆い、チューブの先端部に対し接着剤を介して接合され、光出射部から出射された光を透過するキャップとを備える。キャップは、キャップの内面と外面との間を貫通する孔を第1方向における先端部に有し、孔の内径は、光出射部を覆うキャップの部分の内径よりも小さく、孔は、キャップとは異なる材料を含む接着剤により封止されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の医療用ライトガイド及びその製造方法によれば、キャップとチューブとの接着強度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る医療用ライトガイド1の先端部付近を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された医療用ライトガイド1の側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された医療用ライトガイド1の中心軸線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、導光体2の中心軸線Cに垂直な断面を示す図である。
【
図6】
図6の(a)部は、本実施形態の光出射部22を部分的に拡大して示す側面図である。
図6の(b)部は、光軸方向(光軸方向A1)に沿った光出射部22の拡大断面図である。
【
図7】
図7の(a)部及び(b)部は、反射体5の例を示す切欠斜視図である。
【
図8】
図8は、光軸方向A1に沿ったキャップ4の断面図である。
【
図9】
図9の(a)部、(b)部及び(c)部は、生体Bの管腔部B1に医療用ライトガイド1を挿入して管腔部B1の患部B2に医療用ライトガイド1から光を照射する方法の例についての説明図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る医療用ライトガイド1を製造する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る医療用ライトガイドは、第1方向に沿って線状に延び、第1方向における先端に位置する端面、基端部、及び第1方向において基端部と端面との間に位置し側面から光を出射する光出射部を有する導光体と、第1方向に沿って延びる筒状を呈し、導光体の基端部の側面を覆うチューブと、第1方向に沿って延びる筒状を呈し、チューブの外径よりも大きい外径を有し、チューブの先端部、及びチューブから露出した導光体の光出射部を覆い、チューブの先端部に対し第1の接着剤を介して接合され、光出射部から出射された光を透過するキャップと、を備える。キャップは、キャップの内面と外面との間を貫通する孔を第1方向における先端部に有する。孔の内径は、光出射部を覆うキャップの部分の内径よりも小さい。孔は、キャップとは異なる材料を含む第2の接着剤により封止されている。
【0012】
この医療用ライトガイドでは、キャップの内面と外面との間を貫通する孔がキャップの先端部に設けられている。キャップとチューブとの隙間に第1の接着剤を流し込む際、キャップ内部の空気が孔を通って外部へ逃げることができるので、キャップとチューブとの隙間に第1の接着剤が流れ込み易くなり、キャップとチューブとの接着強度をより高めることができる。なお、キャップとチューブとの隙間に第1の接着剤を流し込んだ後、キャップの孔を第2の接着剤により封止すれば、キャップの内部を最終的に気密状態に維持することができる。また、キャップの外径はチューブの外径よりも大きいので、内径がチューブの外径よりも大きい管腔部等において医療用ライトガイドの外径を管腔部等の内径に適合させることが可能となり、当該管腔部等の側壁に対して安定的に光を照射することができる。
【0013】
上記の医療用ライトガイドにおいて、光出射部を覆うキャップの部分の内径は、チューブを覆うキャップの部分の内径より小さくてもよい。これにより、キャップと光出射部との隙間を狭くしてキャップの内部空間における光出射部のガタつきを低減し、光をより安定的に照射することができる。
【0014】
上記の医療用ライトガイドは、第1方向において導光体とキャップの先端部との間に配置された反射体を更に備え、反射体は、導光体の端面に当接する光反射面を有してもよい。医療用ライトガイドにおいては、側方からのみ光を出射し、前方へは出射しないことが望まれる。患部でない正常細胞が損傷することを防ぐためである。この医療用ライトガイドでは、導光体から前方へ出射しようとする光は光反射面にて反射し、導光体へ戻って光出射部から側方へ出射する。故に、前方への光の出射を抑制することができる。
【0015】
上記の医療用ライトガイドにおいて、反射体は、光反射面を底面とする円柱状を呈しており、孔と導光体の端面との間に配置され、孔の内径は反射体の外径より小さくてもよい。孔の内径が反射体の外径より小さい場合、反射体がキャップの孔から脱落することを容易に防ぐことができる。また、キャップの孔内に配置された第2の接着剤と導光体との間に遮光性の反射体が介在するので、光が第2の接着剤を通過することを回避できる。従って、キャップとは屈折率が異なる第2の接着剤に起因して照射光の強度分布が変化することを防ぐことができる。
【0016】
上記の医療用ライトガイドにおいて、キャップは、キャップの側面に形成されキャップの周方向に延在する一又は複数のマーカ溝を有してもよい。この場合、マーカ溝の位置を検出することによって体内における医療用ライトガイドの位置を容易に把握することができる。
【0017】
上記の医療用ライトガイドにおいて、光出射部は、第1方向において、一又は複数のマーカ溝のうち最も先端寄りに位置するマーカ溝と、キャップの先端部との間に位置してもよい。この場合、光出射部から出射される光とマーカ溝とが互いに重ならないので、マーカ溝に起因して照射光の強度分布が変化することを防ぐことができる。
【0018】
上記の医療用ライトガイドにおいて、キャップの外径は2mm以上4mm以下であってもよい。キャップの外径がこのような範囲内の大きさである場合、子宮頸管部の側壁にキャップの外側面をフィットさせつつ、全周にわたって均一なパワーで安定的に光を照射することができる。
【0019】
一実施形態に係る医療用ライトガイドの製造方法は、上記いずれかの医療用ライトガイドを製造する方法であって、基端部の側面がチューブにより覆われた導光体を準備する工程と、チューブの先端部、及びチューブから露出した導光体の光出射部をキャップにより覆う工程と、チューブとキャップとの隙間に第1の接着剤を流し込む工程と、キャップの孔を第2の接着剤により封止する工程と、を含む。この製造方法によれば、チューブとキャップとの隙間に第1の接着剤を流し込んだ後に、キャップの孔を第2の接着剤により封止するので、キャップとチューブとの接着強度を高めるとともに、キャップの内部を最終的に気密状態に維持することができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の医療用ライトガイド及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
一実施形態に係る医療用ライトガイドは、光線力学療法(PDT)に用いられる。PDTでは、生体内に光感受性物質(増感剤)を注入し、標的となる生体組織に或る波長の光を照射して光感受性物質から活性酸素を生じさせ、これによって癌や感染症などの病巣を治療する。癌に対する光感受性物質としては、例えばMeijiSeikaファルマ製のレザフィリン(登録商標)が用いられる。この患部へレーザ光を照射するために、光ファイバ等の導光体の先端部付近に側方へ光を出射する部分を設けた医療用ライトガイドが用いられる。医療用ライトガイドの体内への挿入は外科手術を必要としないので、患者への負担が小さい。細い管状になった器官患部へレーザ光を照射する際には、医療用ライトガイドの前方へ光を照射するよりも医療用ライトガイドの側面から光を照射するほうが作業性が良い。
【0022】
図1は、本実施形態に係る医療用ライトガイド1の先端部付近を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された医療用ライトガイド1の側面図である。
図3は、
図1に示された医療用ライトガイド1の中心軸線に沿った断面図である。
図1、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の医療用ライトガイド1は、導光体2、チューブ3、キャップ4、及び反射体5を備えている。
【0023】
導光体2は、患部に照射するための光を医療用ライトガイド1の先端部に向けて伝搬するための要素であり、光伝搬方向を光軸方向(第1方向)A1として、光軸方向A1に沿って線状に延びている。
図4は、導光体2の中心軸線Cに垂直な断面を示す図である。導光体2は、例えばプラスチック製若しくはガラス製の光ファイバであり、光を導波するコア2aと、コア2aの周囲を覆うクラッド2bとを有する。導光体2がプラスチック製である場合、コア2aは例えばアクリル(PMMA)またはポリカーボネート(PC)からなる。クラッド2bは、例えばフッ素が添加された樹脂からなる。コア2aの屈折率は、クラッド2bの屈折率よりも大きい。コア2aの直径は例えば0.1mm以上2.0mm以下であり、一実施例では0.4mmである。クラッド2bの外径は例えば0.11mm以上2.1mm以下であり、一実施例では0.5mmである。開口数(NA)は例えば0.1以上0.6以下であり、一実施例では0.5である。導光体2に入力される光の波長は、生体内に注入される光感受性物質の励起エネルギーに応じて適宜選択され、例えば400nm以上800nm以下であり、光感受性物質としてレザフィリン(登録商標)を用いる場合は664nmの赤色光である。
【0024】
図5は、導光体2を示す側面図である。
図5に示すように、導光体2は、基端部21、光出射部22、先端部23、及び端面24を有する。端面24は、光軸方向A1における導光体2の先端に位置する。基端部21、光出射部22、及び先端部23は、導光体2の光軸方向A1に沿ってこの順に並んで配置されている。具体的には、先端部23は端面24を含む位置に設けられており、光出射部22は、導光体2の光軸方向A1において先端部23と基端部21との間に位置する。生体組織に照射されるべき光は、基端部21における光出射部22とは反対側の一端から入力される。その為に、基端部21の該一端には、生体組織に照射されるべき光を出力する光源(不図示)が光学的に接続され得る。光出射部22から出射される光の強度は、例えば100mW以上500mW以下である。
【0025】
基端部21、光出射部22、及び先端部23は、それぞれ導光体2の一部であるので、導光体2の光軸方向A1に延びるコア2a、及びコア2aを覆うクラッド2b(
図4を参照)を有する。なお、先端部23においてコア2a及びクラッド2bは必要であるが、基端部21及び光出射部22においてコア2a及びクラッド2bは任意の要素である。基端部21及び光出射部22は、例えば単一の屈折率を有する領域のみによって構成されてもよい。また、本実施形態では基端部21、光出射部22、及び先端部23が単一の部材(1本の光ファイバ)によって構成されているが、これらは互いに別個の部材からなってもよい。その場合、それらの部材が互いに固着(例えば接着)されることにより一体化される。
【0026】
光出射部22は、基端部21から受けた光を外周面22aから側方へ拡散させつつ出射する部分である。拡散のための構造は様々であり、例えば、光出射部22の外周面22aに光拡散のための凹・凸のうち一方または両方を形成する、光出射部22の内部に光拡散のための微細な空孔(若しくは散乱物質)を埋め込む、等がある。
図6の(a)部は、本実施形態の光出射部22を部分的に拡大して示す側面図である。
図6の(b)部は、光軸方向A1に沿った光出射部22の拡大断面図である。これらの図に示すように、本実施形態では、光出射部22の外周面22aに複数の凹部(溝)22bが形成されている。これらの溝22bは例えばレーザ加工若しくは機械加工により形成され、その断面形状は例えばV字状である。また、これらの溝22bの深さは、光出射部22のコア2aに達している。複数の溝22bのそれぞれは光出射部22の周方向に沿っていて、複数の溝22bは導光体2の光軸方向A1に沿って並んでいる。なお、溝22bの延在方向はこれに限られず、例えば光軸方向A1に沿って延びていてもよい。また、光拡散のための凹凸はこのような溝22bに限られず、例えば光出射部22の外周面22aが、光を散乱する粗面であってもよい。粗面とは、例えばサンドブラスト加工、化学的エッチング、ヤスリ加工等の粗面加工が施された面をいう。一例では、外周面22aの表面粗さは、導光体2を伝搬する光の波長の5倍以上且つ50倍以下である。外周面22aの表面粗さは、例えば、算術平均粗さで示され、コア2aを通る光を外周面22aから散乱させることが可能な程度の値を有する。光軸方向A1における光出射部22の長さは、例えば10mmである。
【0027】
基端部21から光出射部22に入射した光は、端面24に向かって進む毎に外周面22aから側方へ拡散する。故に、端面24側の光出射部22の端に近づくに従い、次第に光強度が減少する。しかし、患部に光を均一に照射するためには、出射光の強度分布が、導光体2の光軸方向A1にわたって均一であることが望ましい。故に、本実施形態では、端面24側の光出射部22の端に近づくに従って溝22bの間隔が次第に狭くなっている。言い換えると、端面24側の光出射部22の端に近づくに従って、光出射部22の外周面22aにおける光の拡散度合いが大きくなっている。
【0028】
先端部23は、光出射部22において側方へ拡散せずに残った光(以下、残光という)を導波する部分である。先端部23は、光出射部22と反射体5(
図3を参照)との間に位置する。先端部23は、導光体2の端面24を含む。換言すれば、反射体5側の先端部23の端面は、導光体2の端面24を構成する。先端部23は、光を殆ど拡散しない非拡散部である。すなわち、先端部23の外周面23aには溝、粗面等の凹凸加工は何らも施されておらず、外周面23aは滑らか(滑面)となっている。言い換えると、外周面23aは光軸方向A1に沿って平坦である。光軸方向A1における先端部23の長さは、光出射部22に形成された複数の溝22bの最小間隔よりも長い。先端部23の長さは、例えば0.5mm以上5mm以下である。なお、上述したように、本実施形態では複数の溝22bの間隔は、端面24側の光出射部22の端に近づくに従って次第に狭くなっている。従って、複数の溝22bの最小間隔とは、端面24に最も近い2つの溝22bの間隔を指す。
【0029】
再び
図1、
図2及び
図3を参照する。チューブ3は、導光体2の基端部21を保護するために、基端部21の側面21aを覆う。光出射部22及び先端部23は、チューブ3から露出している。チューブ3は、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といった樹脂からなる筒状(例えば円筒状)の部材であって、光軸方向A1に沿って延びている。チューブ3は、軸方向(すなわち導光体2の光軸方向A1)に一様な内径及び外径を有している。チューブ3と導光体2との隙間の間隔は例えば0.05mm以上0.5mm以下であり、一実施例では0.2mmである。チューブ3の肉厚は例えば0.1mm以上1.0mm以下であり、一実施例では0.15mmである。チューブ3の内側面3aと導光体2との間には空隙が設けられており、該空隙は空気によって満たされている。勿論、導光体2のクラッド2bよりも低い屈折率を有する、光波長に対して透明な液体やゲル状物質が該空隙に充填されていてもよい。チューブ3の先端には接着剤63が設けられ、接着剤63によってチューブ3が導光体2に固定される。接着剤63は、一例として感光性のエポキシ樹脂またはアクリル樹脂を主に含む。
【0030】
反射体5は、光軸方向A1において、導光体2の先端(光が入力される基端とは反対側の一端)すなわち端面24と、キャップ4の先端部42(後に詳述)との間に配置されている。
図7の(a)部及び(b)部は、反射体5の例を示す切欠斜視図である。これらの図に示すように、反射体5は、導光体2の端面24と対向する光反射面5aを有し、導光体2を伝搬して端面24に到達した光を、光反射面5aにおいて反射する。本実施形態の反射体5は、導光体2の光軸方向A1を中心軸方向とする円柱状を呈する。光反射面5aは、円柱の底面により構成されている。光反射面5aは平滑面であり、光反射面5a及び導光体2の端面24のうち少なくとも一方は鏡面であってもよい。なお、鏡面とは、例えば研磨により鏡面加工が施された面であったり、金属めっき、金属蒸着などを施されて表面の凹凸が小さくなった面をいう。また、鏡面は、光の散乱を抑制して光を元の方向に戻す面であってもよい。
【0031】
反射体5は、
図7の(a)部に示すように、光反射面5aを有する金属体51を含んでもよいし、
図7の(b)部に示すように、金属製若しくは非金属製の支持体53の一端面に形成され光反射面5aを有する金属膜52を含んでもよい。光反射面5aを構成する材料(すなわち前記した金属体51若しくは金属膜52を構成する材料)は、例えば、Ag、Ag合金、Au、Au合金、Al、Al合金のうち少なくとも1つの金属を含んでもよい。特に、光出射部22から出射する光が赤色光である場合には、赤色光に対する反射率が高く吸収が小さいAgが好適である。反射体5の直径Dは例えば0.5mm以上0.7mm以下であり、光軸方向A1における長さLは例えば0.5mm以上5mm以下である。反射体5の長さLが短いほど、医療用ライトガイド1の先端部を小型化できる。また、反射体5の長さLが長いほど、反射体5の熱容量が大きくなり、光の吸収による温度上昇を低減することができる。金属膜52の形成方法は、例えば蒸着、めっき等である。
【0032】
図1から
図3に示すように、キャップ4は、光軸方向A1に沿って延びる筒状(例えば円筒状)の部材である。キャップ4は、導光体2の光出射部22及び先端部23、並びに反射体5を保護するために、光出射部22の外周面(側面)22a、先端部23の外周面(側面)23a、及び反射体5の側面5b(
図7を参照)を覆う。また、光軸方向A1におけるキャップ4の長さLaは、同方向における光出射部22、先端部23及び反射体5を合わせた長さLbよりも長く、キャップ4はチューブ3の先端部を更に覆っている。一例では、長さLaは31mm以上40mm以下である。キャップ4は、光出射部22から出射された光の波長を含む波長域において光透過性を有する材料により構成され、例えばポリカーボネートといった樹脂を主に含む。一実施例では、キャップ4はポリカーボネートのみからなる。ここで、光透過性を有するとは、対象光の波長を含む波長域において80%以上の透過率を有することを意味する。対象光の波長が可視光域に含まれる場合、キャップ4は透明であってもよい。
【0033】
後述するように、キャップ4の外径はチューブ3の外径よりも太く、またポリカーボネートは適度な剛性を有するので、生体内の管腔部等に挿入する際に医療用ライトガイド1の先端部を曲がりにくくすることができ、作業性を向上できる。また、管腔部等が子宮頸管部である場合、閉じている子宮頸管部を拡張しながら挿入するので、キャップ4が或る程度の剛性を有するとよい。ポリカーボネートは薬品に対する耐性も有しており、滅菌消毒による外側面4bのダメージも低減され得る。
【0034】
なお、キャップ4のうち、導光体2の先端部23を覆う部分、反射体5の側面5bを覆う部分、及びチューブ3の先端部を覆う部分のうち少なくとも1つの部分は、光出射部22から出射された光の波長に対して不透過性を有する材料により構成されてもよい。不透過性を有するとは、対象光の波長を含む波長域において80%未満の透過率を有することを意味する。
【0035】
図8は、光軸方向A1に沿ったキャップ4の断面図である。
図8に示すように、キャップ4の外径dcは、後述するマーカ溝41及び先端部42を除いて光軸方向A1にわたって一定であり、
図3に示すチューブ3の外径dtよりも大きい。本実施形態では、キャップ4の外径dcは2mm以上又は2.5mm以上であり、4mm以下又は3mm以下である。なお、キャップ4の外径dcは、治療すべき患部が存在する管腔部等の内径に応じて適宜変更され得る。すなわち、子宮頸管部の患部の治療を目的とする場合、キャップ4の好適な外径dcは2mm以上4mm以下であるが、体内の他の部位の患部の治療を目的とする場合、キャップ4の外径dcは2mmより小さくてもよく、4mmより大きくてもよい。
【0036】
キャップ4は、基端部21及びチューブ3を覆う第1部分45と、光出射部22及び先端部23を覆う第2部分46と、光軸方向A1におけるキャップ4の先端に位置する部分である先端部42とを有する。光軸方向A1において、第2部分46は第1部分45と先端部42との間に位置する。第1部分45及び第2部分46の各内径d1,d2は、それぞれチューブ3及び導光体2の各外径に対応して設定されている。すなわち、第1部分45及び第2部分46の各内径d1,d2はそれぞれ光軸方向A1にわたって一定であり、且つ、内径d2は内径d1よりも小さい。これにより、キャップ4とチューブ3との隙間、及びキャップ4と光出射部22との隙間をそれぞれ独立して適切に設定できる。第1部分45の内側面45aと第2部分46の内側面46aとの境界は、テーパ状の段差部47を構成している。
【0037】
第2部分46の内側面46aと導光体2との間には空隙が設けられており、該空隙は空気によって満たされている。勿論、導光体2のクラッド2bよりも低い屈折率を有する、光波長に対して透明な液体やゲル状物質が該空隙に充填されていてもよい。
【0038】
図2及び
図3に示すように、光軸方向A1におけるキャップ4の基端側の端面4cは、接着剤61(第1の接着剤)を介してチューブ3の外側面3bに接合されている。更に、この接着剤61は、光軸方向A1におけるキャップ4の基端側の端面4cから、キャップ4の内側面45aとチューブ3の外側面3bとの隙間に浸入しており、第1部分45の内側面45aは、接着剤61を介してチューブ3の先端部の外側面3bに接合されている。一例では、光軸方向A1における接着剤61の浸入長さは、同方向におけるキャップ4の長さLaの1/4倍よりも長い。加えて、
図2及び
図3に示すように、キャップ4の端面4cのほぼ全面が接着剤61に接していてもよい。
【0039】
先端部42は、例えば前方に凸の半球状といった外表面42aを有する。先端部42は、例えば、キャップ4の他の部分と共に一体成型されて成る。
【0040】
キャップ4は、先端部42の内面と外表面42aとの間を貫通する孔43を先端部42に有する。孔43は、例えば先端部42がキャップ4の他の部分と共に一体成型される際に、金型によって形成され得る。本実施形態では、孔43は光軸方向A1に沿って延びており、孔43の中心軸線と導光体2の中心軸線とは互いに一致する。孔43の延在方向に垂直な断面における孔43の形状は、例えば円形である。孔43の内径d
3は、キャップ4の第2部分46の内径d
2よりも小さい。故に、第2部分46の内側面46aと孔43との間には段差が形成されている。また、
図3に示すように、反射体5は、孔43と導光体2の端面24との間に配置されており、孔43の内径d
3は反射体5の直径Dよりも小さい。故に、この段差には、反射体5の光反射面5aとは反対側の端面が当接し、これによってキャップ4内における反射体5の相対的な位置が定まる。なお、反射体5の側面5bは、第2部分46の内側面46aと間隔をあけて配置されてもよいし、第2部分46の内側面46aに接してもよい。
【0041】
導光体2は、第2部分46内において僅かに撓んでいる。導光体2の端面24は、導光体2の復元力により、光反射面5aに押し当てられている。これにより、光反射面5aと端面24との当接状態が安定して維持される。
【0042】
図3に示すように、孔43には接着剤62(第2の接着剤)が埋め込まれている。すなわち、孔43は接着剤62により封止されている。接着剤62は、キャップ4とは異なる材料を含む。例えば、キャップ4がポリカーボネートを主に含む場合、接着剤62は、一例として感光性のエポキシ樹脂またはアクリル樹脂を主に含む。
【0043】
キャップ4は、一又は複数の(図には2本の場合を例示)マーカ溝41を有する。各マーカ溝41は、キャップ4の外側面4bに形成されており、キャップ4の周方向に延在する。一例では、各マーカ溝41はキャップ4の周方向に一周にわたって形成されている。キャップ4の中心軸方向(光軸方向A1)に沿った各マーカ溝41の断面形状は、半円状、矩形状、台形状、三角形状といった様々な形状であることができる。半円状のマーカ溝41には、応力が集中しないのでキャップ4の破断を抑制できるという利点がある。一例では、マーカ溝41同士の間隔は10mmである。
【0044】
各マーカ溝41は、光軸方向A1と交差する方向から見て導光体2の基端部21と重なる位置に形成されている。言い換えると、光出射部22は、光軸方向A1において、最も先端寄りに位置するマーカ溝41と、キャップ4の先端部42との間に位置する。最も先端寄りに位置するマーカ溝41と光出射部22との間には、光軸方向A1において0.5mmないし1.0mmの間隔が設けられてもよい。最も先端寄りに位置するマーカ溝41は、光軸方向A1と交差する方向から見てチューブ3と重ならない位置(すなわち、基端部21のうちチューブ3から露出した部分と重なる位置)に形成されている。他のマーカ溝41は、光軸方向A1と交差する方向から見てチューブ3と重なる位置に形成されている。
【0045】
この医療用ライトガイド1において、患部を治療するための光(例えば赤外光)は、導光体2の基端部21の一端側から入力される。この光は基端部21内を伝搬し、光出射部22に達する。光出射部22において、この光は拡散されながら外周面22aの側方へ出射される。また、出射されずに光出射部22を通過した残光は、先端部23を伝搬して光反射面5aに達したのち、光反射面5aにて反射し、再び先端部23を伝搬して光出射部22に戻る。そして、残光は拡散されながら外周面22aの側方へ出射される。外周面22aの側方へ出射した光は、キャップ4を透過して患部に照射される。
【0046】
医療用ライトガイド1は、例えば、患者の体外から比較的アクセスしやすい部位にある管腔部等に挿入される。当該管腔部等としては、例えば、子宮頸管部が挙げられる。
図9の(a)部、(b)部及び(c)部を参照しながら、生体Bの管腔部B1に医療用ライトガイド1を挿入して管腔部B1の患部B2に医療用ライトガイド1から光を照射する方法の例について説明する。
【0047】
患部B2の長さは、患者によって異なる。しかしながら、患部B2の長さに応じて光出射部の長さが異なる複数の医療用ライトガイドを用意することは効率の点で好ましくない場合がある。そこで、本実施形態では、例えば患部B2の長さが30mmである場合に、長さがN(例えば10mm)の光出射部22を有する導光体2を30/N回(例えば、
図9の(a)部、(b)部及び(c)部の3回)に分けて移動しながら、複数回に分けて患部B2に光を照射する。このとき、マーカ溝41の間隔がNである場合、管腔部B1における光出射部22の位置の把握、及び光出射部22から患部B2への光の照射を効率よく行うことができる。
【0048】
図10は、本実施形態に係る医療用ライトガイド1を製造する方法を示すフローチャートである。まず、工程S1では、基端部21の側面21aがチューブ3により覆われた導光体2を準備する。具体的には、チューブ3に導光体2を挿入し、光出射部22及び先端部23がチューブ3から露出した状態で接着剤63を塗布し、接着剤63を硬化させる。次に、工程S2では、チューブ3の先端部、及びチューブ3から露出した導光体2の光出射部22をキャップ4により覆う。続いて、工程S3では、チューブ3とキャップ4との隙間に接着剤61を流し込む。そして、光を照射することにより接着剤61を硬化させる。その際、照射する光の波長は、キャップ4を透過する波長(例えば、キャップ4がポリカーボネートを主に含む場合は青色域)であることが望ましい。接着剤61が紫外光硬化型であっても、青色光を照射することによって、硬化時間は長くなるが硬化させることは可能である。最後に、工程S4では、キャップ4の孔43を接着剤62により封止する。具体的には、硬化前の接着剤62を孔43に流し込み、光を照射することにより接着剤62を硬化させる。その際、照射する光の波長は接着剤61の場合と同様である。
【0049】
以上に説明した、本実施形態による医療用ライトガイド1及びその製造方法によって得られる作用及び効果について、以下に説明する。
【0050】
この医療用ライトガイド1では、キャップ4の内面と外面との間を貫通する孔43がキャップ4の先端部42に設けられている。キャップ4とチューブ3との隙間に接着剤61を流し込む際、キャップ4内部の空気が孔43を通って外部へ逃げることができるので、キャップ4とチューブ3との隙間に接着剤61が流れ込み易くなり、キャップ4とチューブ3との接着強度(特に引張耐力)を高めることができる。なお、キャップ4とチューブ3との隙間に接着剤61を流し込んだ後、キャップ4の孔43を接着剤62により封止すれば、キャップ4の内部を最終的に気密状態に維持することができる。また、キャップ4の外径はチューブ3の外径よりも大きいので、内径がチューブ3の外径よりも大きい管腔部等において医療用ライトガイド1の外径を管腔部等の内径に適合させることが可能となり、当該管腔部等の側壁に対して安定的に光を照射することができる。
【0051】
本実施形態のように、光出射部22を覆うキャップ4の第2部分46の内径d2は、チューブ3を覆うキャップ4の第1部分45の内径d1より小さくてもよい。これにより、キャップ4と光出射部22との隙間を狭くして、キャップ4の内部空間における光出射部22のガタつきを低減し、光をより安定的に照射することができる。
【0052】
本実施形態のように、光軸方向A1において導光体2とキャップ4の先端部42との間に反射体5が配置されてもよい。そして、反射体5は、導光体2の端面24に当接する光反射面5aを有してもよい。医療用ライトガイド1においては、側方からのみ光を出射し、前方へは出射しないことが望まれる。患部でない正常細胞が損傷することを防ぐためである。本実施形態の医療用ライトガイド1では、導光体2から前方へ出射しようとする光は光反射面5aにて反射し、導光体2へ戻って光出射部22から側方へ出射する。故に、前方への光の出射を抑制することができる。
【0053】
本実施形態のように、反射体5は、光反射面5aを底面とする円柱状を呈しており、孔43と導光体2の端面24との間に配置され、孔43の内径d3は反射体5の外径より小さくてもよい。孔43の内径d3が反射体5の外径より小さい場合、反射体5がキャップ4の孔43から脱落することを容易に防ぐことができる。また、キャップ4の孔43内に配置された接着剤62と導光体2との間に遮光性の反射体5が介在するので、光が接着剤62を通過することを回避できる。従って、キャップ4とは屈折率が異なる接着剤62に起因して照射光の強度分布が変化することを防ぐことができる。
【0054】
本実施形態のように、キャップ4は、キャップ4の外側面4bに形成されキャップ4の周方向に延在する一又は複数のマーカ溝41を有してもよい。この場合、マーカ溝41の位置を検出することによって体内における医療用ライトガイド1の位置を容易に把握することができる。なお、マーカ溝41の位置の検出は、医療用ライトガイド1を追跡しながら観察するカメラ(子宮頸管部の場合にはポルコスコープ)により得られる画像に基づいて容易に行うことができる。また、外側面4bに形成された溝をマーカとして利用することにより、医療用ライトガイド1を管腔部等において軸方向に移動させる際に、マーカが管腔壁に引っ掛かりにくいという利点もある。
【0055】
本実施形態のように、光出射部22は、光軸方向A1において、一又は複数のマーカ溝41のうち最も先端部42寄りに位置するマーカ溝41と、先端部42との間に位置してもよい。この場合、光出射部22から出射される光とマーカ溝41とが互いに重ならないので、マーカ溝41に起因して照射光の強度分布が変化することを防ぐことができる。
【0056】
本実施形態のように、キャップ4の外径dcは2mm以上4mm以下であってもよい。キャップ4の外径dcがこのような範囲内の大きさである場合、子宮頸管部の側壁にキャップ4の外側面4bをフィットさせつつ、全周にわたって均一なパワーで安定的に光を照射することができる。
【0057】
本実施形態に係る医療用ライトガイド1の製造方法によれば、チューブ3とキャップ4との隙間に接着剤61を流し込んだ後に、キャップ4の孔43を接着剤62により封止するので、キャップ4とチューブ3との接着強度を高めるとともに、キャップ4の内部を最終的に気密状態に維持することができる。
【0058】
本実施形態のように、光出射部22の外周面22aは複数の溝22bを有していてもよい。例えばこのような構造によって、光を外周面22aから側方へ拡散させる光出射部22を容易に実現することができる。この場合、光出射部22は、導光体2の光軸方向A1に延びるコア2a、及びコア2aを覆うクラッド2bを有し、複数の溝22bの深さは光出射部22のコア2aに達していてもよい。これにより、光出射部22から出射される光の平均強度(光の拡散度合い)を容易に高めることができる。
【0059】
導光体2の端面24と光反射面5aとの距離が変化すると、側方への光強度分布が変化する。従って、端面24と光反射面5aとの距離は常に一定であることが望ましく、そのために端面24と光反射面5aとが常に接していてもよい。本実施形態では、導光体2はチューブ3内において撓んでおり、端面24は導光体2の復元力により光反射面5aに押し当てられている。これにより、生体内において医療用ライトガイド1が撓んだ場合においても、導光体2の端面24と反射体5の光反射面5aとの接触状態が維持され易い。従って、医療用ライトガイド1が撓んだ場合であっても、端面24と光反射面5aとの間に隙間が生じることを抑制し、導光体2の光軸方向A1における光強度の均一性が低下することを効果的に抑制できる。
【0060】
本発明による医療用ライトガイドは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では導光体によって導波される光が赤色光である場合を例示したが、導光体によって導波される光は、赤色光以外の可視光、または赤外光などの他の波長を有してもよい。また、上記実施形態では、導光体が撓むことにより導光体の先端面が光反射部の光反射面に押し付けられているが、導光体の先端面と光反射部の光反射面とは、光の波長(例えば赤色域)に対して透明な接着剤等を介して互いに接合されてもよい。また、上記実施形態では光反射部が円柱状である場合を例示したが、光反射部の形状はこれに限られない。例えば、光反射部は、導光体の先端面に形成された光反射膜であってもよい。更に、上記実施形態では、プラスチック製のクラッド2bを有する導光体2を備える医療用ライトガイド1について説明した。しかしながら、医療用ライトガイドの導光体の材料は、ガラス等、プラスチック以外の材料であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 医療用ライトガイド
2 導光体
2a コア
2b クラッド
3 チューブ
3a 内側面
3b 外側面
4 キャップ
4b 外側面
4c 端面
5 反射体
5a 光反射面
5b 側面
21 基端部
21a 側面
22 光出射部
22a 外周面
22b 溝
23 先端部
23a 外周面
24 端面
41 マーカ溝
42 先端部
42a 外表面
43 孔
45 第1部分
45a 内側面
46 第2部分
46a 内側面
51 金属体
52 金属膜
53 支持体
61,62,63 接着剤
A1 光軸方向
B 生体
B1 管腔部
B2 患部
C 中心軸線
d2,d3 内径
dc,dt 外径