(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】特定の天然カプサイシノイドの微生物生成のための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 13/00 20060101AFI20220405BHJP
C12P 19/18 20060101ALI20220405BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12P13/00 ZNA
C12P19/18
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2019503221
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(86)【国際出願番号】 US2017042944
(87)【国際公開番号】W WO2018017772
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-10
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519015911
【氏名又は名称】コナジェン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Conagen Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】ホイ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】シャオダン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】ランラン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ホンシュエ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ワン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/109168(WO,A1)
【文献】特開2008-048612(JP,A)
【文献】特開2003-310294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 13/00 - 13/24
C12P 19/00 - 19/64
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となるカプサイシノイドのグルコシドを作製する生合成方法であって、
a)形質転換細胞系においてアシル-CoAシンテターゼ(ACS)およびカプサイシンシンセターゼ(CS)を発現させることと;
b)前記形質転換細胞系においてUDP-グルコシルトランスフェラーゼを発現させることであって、ここで、前記UDP-グルコシルトランスフェラーゼが、C.roseusのCaUGT2であり、配列番号5と少なくとも
90%の配列同一性を共有するDNA配列によりコードされる、および/または配列番号6と少なくとも90%のタンパク質配列
同一性を共有する、発現させることと;
c)前記細胞系を培地中で成長させることと;
d)前記対象となるカプサイシノイドのグルコシドを生成することとを含む方法。
【請求項2】
前記ACSおよびCSの両方が、Capsicum属の植物からクローニングされ、ここで、前記Capsicum属の植物が、ゴーストチリであってよい、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項3】
前記発現されたACSが、LCAS4またはLCAS5に基づいて、アラビドプシスからクローニングされた遺伝子に由来する、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項4】
培地に加えて原材料を前記細胞系に供給することをさらに含み、前記原材料が、ノナン酸、ペラルゴニウムの油、オクタン酸およびデカン酸からなる群から選択されてよい、請求項3に記載の生合成方法。
【請求項5】
前記形質転換細胞系が、バニリンのバニリルアミンへの変換を触媒することができるアミノトランスフェラーゼをさらに含み、前記原材料が、バニリンおよびバニリアミンの少なくとも1つをさらに含む、請求項4に記載の生合成方法。
【請求項6】
前記形質転換細胞系が、酵母、非カプサイシノイド生成植物、藻類および細菌を含む群から選択される、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項7】
前記細胞系がE.Coliである、請求項6に記載の生合成方法。
【請求項8】
前記対象となるカプサイシノイドが、カプサイシンまたはノニバミドである、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項9】
利用される前記ACSが、配列番号3と少なくとも90%の
配列同一性を共有する
DNA配列によりコードされるACSである、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項10】
利用される前記ACSが、配列番号1と少なくとも90%のタンパク質配列
同一性を共有するACSである、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項11】
利用される前記CSが、配列番号4と少なくとも90%の
配列同一性を共有する
DNA配列によりコードされるCSである、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項12】
利用される前記CSが、配列番号2と少なくとも90%のタンパク質配列
同一性を共有するCSである、請求項1に記載の生合成方法。
【請求項13】
対象となるカプサイシノイドグルコシドを生成する方法であって、
1)配列番号1と少なくとも90%のタンパク質配列
同一性を共有するACS酵素、2)配列番号2と少なくとも90%のタンパク質配列
同一性を共有するCS酵素、および3)配列番号6と少なくとも90%のタンパク質配列
同一性を共有するCaUGT2酵素を発現することができる形質転換微生物培養物を提供することと;
前記形質転換微生物培養物に特定の脂肪酸前駆体を供給することとを含む方法。
【請求項14】
前記対象となるカプサイシノイドグルコシドが、カプサイシングルコシドであり、前記脂肪酸前駆体が、6E-8-メチル-6-ノネン酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象となるカプサイシノイドグルコシドが、ノニバミドグルコシドであり、前記脂肪酸前駆体が、ノナン酸である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月19日に出願された米国仮特許出願第62/363,951号の優先権を主張し、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の援用
2016年6月27日に作成された「C1497.70006WO00.txt」と名付けられたファイルに含まれる配列表は、電子提出(米国特許庁EFS-Web出願システムを使用)によって同時に出願され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明の分野は、カプサイシノイドの微生物生成に有用な方法およびプロセスに関する。より具体的には、いくつかの実施形態において、本発明は、プラントベースのシステムにおいて別様には可能でない収率でノニバミドおよび他の特定のカプサイシノイドを生成する方法を提供する。本発明は、中でも、所望のカプサイシノイドを生合成するように改変された、遺伝子改変E.coli.株を提供する。所望のカプサイシノイドを生成するように遺伝子改変された微生物を生成する方法、ならびに、特定の出発材料から開始して所望のカプサイシノイドを高収率および高純度レベルで生成するための生成方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、いくつかの実施形態において、微生物生成株の特定の供給源を使用して、高収率で所望のカプサイシノイド化合物を生成するための微生物株を修飾する方法に関する。カプサイシノイド化合物(限定することなく、カプサイシン(CP)、ジヒドロカプサイシン(DHCP)、ノニバミド(NV)等)は、唐辛子の「スパイシー」成分であり、エネルギー代謝を促進することによっていくつかの病理を予防するのに有効となり得、中枢神経系を刺激し、脂肪分解酵素を活性化させる。加えて、これらの化合物は消化管を滅菌し、消費されるときに免疫を改善し、免疫および疲労を活性化させるのに有効でもある。
【0005】
カプサイシノイド化学
「スパイシーさ」または刺激性は、カプサイシノイドと呼ばれるアルカロイドを生成するCapsicum属における唐辛子特有の特徴である。本質的に、カプサイシノイドは、哺乳動物がそれらの果実を消費すること、および種子を破壊することを抑止するために、植物中に存在する。ヒトは、一過性受容体潜在性チャネル(またはイオンチャネルの「TRP」ファミリーの)メンバーに構造的に関連する受容体を介してカプサイシノイドを感知することができる。感覚ニューロンにおいて重要である他の受容体と同様に、カプサイシノイド受容体(「TRPV1」、バニロイドTRP、バニロイド1受容体またはTRPV1とも呼ばれる)は、カプサイシンに対する感度を可逆的に失うことにより、カプサイシンおよびピペリンと関連付けられる刺激性の臭気および痛み/辛み感覚、ならびに同じ刺激への長期的曝露下において他の痛みおよび辛味刺激を媒介する(Caterina et al.,1997)。この現象は、痛みセンサがオフにされ得るため人が辛い食品に堪えることができる、およびさらにはそれを楽しむことができることを一部説明し得る。
【0006】
カプサイシン(「CP」)、8-メチル-N-トランス-6-ノネンアミド、およびジヒドロカプサイシン(「DHCP」)、8-メチル-N-バニリルノナンアミドは、唐辛子における2つの主要なカプサイシノイドであり、集合的に唐辛子の刺激性の最大90%の原因である(Garces-Claver et al.,2007)。これらの2つの化合物およびより少ないカプサイシノイド化合物は、世界中で消費される食品およびその他の用途における重要な成分である(European Commission Scientific Committee on Food,2002)。一般に、唐辛子のカプサイシン含量は、0.1~1%w/wの範囲であり(Govindarajan and Sathyanarayana 1991)、多くの用途において、CPおよび/またはDHCP化合物を濃縮するための方法の使用が必要とされている。食品、医薬品ならびに他の産業および自己防衛用途におけるカプサイシノイドの幅広い使用に起因して、カプサイシノイド化合物の生成および濃縮の需要が増大している。
【0007】
Capsicum属は、20種を超える唐辛子を含み、C.annuum、C.frutescens、C.chinense、C.baccatum、およびC.pubescensが栽培されている(Walsh and Hoot,2001)。様々なレベルおよび種類のカプサイシノイドの存在に起因して、様々なCapsicum種にわたり、刺激性またはスパイシーさのレベルにおいて幅広い遺伝子的変動性がある。例えば、C.annuumからの非刺激性のパプリカのスコアは0.0SHU(Scoville Heat Unit;カプサイシンの量を示すスケール)であり「ブート・ジョロキア」またはゴーストチリは、インド北東部原産のC.chinenseおよびC.frutescensのハイブリッドであり、スコアは最大1,001,304SHUである(Bosland and Baral、2007)。
【0008】
植物から抽出された純CPは、典型的には、辛味指数において約16,000,000のスコビル単位を有し、この濃度では、1グラム当たり5000USドル超で販売され得る(Backelor,2000)。しかしながら、唐辛子のカプサイシノイドの含量は、一般に非常に低く、環境および成長条件によって大幅に影響を受け、持続可能性および一貫性の問題をもたらす。
【0009】
植物から抽出される場合、典型的には、ヘキサン、クロロホルム、およびエタノール等の溶媒を使用した固-液抽出がカプサイシノイド回収に一般に使用される(Catchpole et al.,2003)。しかしながら、溶媒抽出自体は、エネルギー集約的であり、毒性廃棄物処分の問題をもたらし、植物自体が成長するのに広大なエーカー数を必要とし、また、微量構成物質を回収するためにさらなる精製を必要とする生成物を生成する。したがって、純粋なカプサイシノイドおよび/または他のカプサイシノイドのコストを低減し、大規模栽培および処理の環境影響の低下させるために、新たな生成方法が必要とされている(Yao et al.,1994)。選択された微生物株の遺伝子操作は、これらの必要な改善に対応し、および所望のカプサイシノイドの種類の選択性、存在量および純度を増加させる可能性を有する。
【0010】
上記に加えて、消費者は、食品、芳香剤、香味剤または医薬構成成分のための自然および生物学的原材料を承認および活発に求める一方で、調達、一貫性のある効力および環境的に持続可能な生成を懸念している。この状況により、本発明の微生物発酵および生成方法は、いくつかの実施形態において、様々な産業および研究に有用な量で生物学的に生成物を生成する能力を有する改変微生物株により生成された化合物を、無機化学合成よりも自然な様式で提供する。
【0011】
したがって、望ましいカプサイシン化合物を安定して生成することができる改変微生物株を使用した特定の生物学的経路の開発を通して、CP、NVおよびDHCPならびに他のカプサイシノイドを生成する新規な方法を開発する必要性が存在する。具体的には、本発明は、中でも、商業的に関連する量で発酵プロセスからCP、NV、およびDHCPを生成するための方法を提供する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、カプサイシノイドを生成する改善された方法を包含する。本発明は、酵母または細菌等の細胞系を含む改変微生物中のカプサイシノイドを生成する方法を提供する。出願人らは、アシル-CoAシンテターゼ(「ACS」)(配列番号1)およびカプサイシンシンセターゼ(「CS」)(配列番号2)のための遺伝子を単離し、またそれらを対象となる細胞形に挿入し、好ましい実施形態においてはこの細胞系はE.coliである。これらの遺伝子は、発現されると、その系におけるカプサイシノイドの生成を可能にする。本発明によれば、いくつかの実施形態において、このシステムは、実質的な量でCP、DHCP、およびNVカプサイシノイドを生成する。
【0013】
本発明によれば、いくつかの実施形態において、細胞系におけるACSおよびCSを発現することを含む、培地/長鎖カルボン酸からカルボキシルCoAを作製する生合成方法が提供される。いくつかの実施形態において、該システムは、長鎖カルボン酸を必要とし、細胞系が、培地中でACSおよびCSにより形質転換され、かつカルボキシルCoAを生成する。これらの培養物は、改変された微生物株が天然前駆体から供給されるとき、ある特定のカプサイシノイドを生成する。したがって、ノナン酸は、供給前駆体として使用され得、例えば、ペラルゴニウムまたはヨーロッパオリーブ(Olea europaea)の油から得ることができる。本発明の他の供給前駆体としては、オクタン酸、デカン酸、バニリンおよびバニリルアミンが挙げられる。オクタン酸はまた、本発明に従って使用され得、例えば、パームおよびココナッツ油において天然に見出され得る。デカン酸は、Cuphea種の種子に見出される。天然バニリンはまた、微生物発酵によって生成され得る(Zhou and Yu,2014)。加えて、天然バニリルアミンは、pAMTから得ることができる。(Weber et al.,2014)。
【0014】
本方法は、より費用効果が高く、より容易に得られる特定の出発分子の遺伝子改変および標的供給によって、著しい量のカプサイシノイドを生成することができる細菌株の開発のためのアプローチを提供する。
【0015】
本発明のある特定の実施形態において、生成された標的カプサイシノイドは、NV、CP、およびDHCPからなる群から選択される。
【0016】
本開示の実施形態は、中鎖~長鎖カルボン酸のカルボキシルCoAを作製することによりカプサイシノイドを開発する生合成方法であって、細胞系においACSを発現させることと、中鎖~長鎖カルボン酸を細胞系に供給することと、細胞系を培地中で成長させることと、カルボキシルCoAを生成することとを含む生合成方法である。
【0017】
さらなる実施形態は、ACSが、ゴーストチリペッパーからクローニングされたACSlから発現されることである。(参考までに表1を参照されたい。)
【0018】
代替の実施形態は、ACSがLCAS4またはLCAS5に基づいてアラビドプシスから発現されることである。別の実施形態において、ACSは、Capsicum sppからクローニングされたACS2から発現される。さらに、いくつかの実施形態において、本発明において使用されるACSは、少なくとも66%(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%)の配列同一性を共有するACSであり、ACSlは、ゴーストチリペッパーからクローニングされている。別の実施形態において、ACSは、少なくとも92%(例えば、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の配列類似性を共有するACSである。
【0019】
さらなる実施形態は、中鎖または長鎖カルボン酸が8-メチル-トランス-6-ノネン酸であることである。長鎖カルボン酸は、一般に、14~18個の炭素を有し、中鎖カルボン酸は、一般に、8~13個の炭素を有する。
【0020】
本発明の一実施形態において、中鎖~長鎖カルボン酸の細胞系への供給は、選択された株による使用のために、中長鎖カルボン酸を細胞系に添加することを含む。
【0021】
代替の実施形態において、中鎖~長鎖カルボン酸の細胞系への供給は、細胞系の生合成経路から中鎖~長鎖カルボン酸を発現させることを含む。
【0022】
製品/商業的有用性の観点から、米国の市場においてカプサイシンを含有する数十の製品があり、鎮痛剤から害虫忌避剤まで、ならびに食品および補助食品の全てにおいて使用され得る。カプサイシンを含有する製品は、例えば、エアロゾル、液体、または粒状配合物であってもよい。
【0023】
実施形態における細胞系について、それは、細菌、酵母、およびそれらの組み合わせ、または選択された遺伝子の遺伝子形質転換を可能にし、またその後代替の供給前駆体からの所望のカプサイシノイドの生合成を可能にする任意の細胞系から選択される。最も好ましい微生物系において、所望のカプサイシノイド化合物を生成するためにE.coliが使用される。
【0024】
本開示の実施形態は、8-メチルノネノイル-CoAを作製する生合成方法であって、細胞系においてACSを発現させることと、細胞系に8-メチル-トランス-6-ノネン酸を供給することと、培地中で細胞系を成長させることと、8-メチルノネノイル-CoAを生成することとを含む生合成方法である。いくつかの実施形態において、本発明のACSは、ゴーストチリペッパーからクローニングされたACSlから発現される。代替として、ACSは、ArabidopsisからクローニングされたLCAS4またはLCAS5から発現され得る。
【0025】
別の実施形態において、本発明のACSは、Capsicum sppからクローニングされたACS2から発現される。さらに、いくつかの実施形態において、ACSは、ゴーストチリペッパーからクローニングされたACSIと少なくとも66%(例えば少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)の配列同一性を共有するACSである。別の実施形態において、ACSは、ゴーストチリペッパーからクローニングされたACSIとタンパク質レベルで少なくとも92%(例えば92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の配列類似性を共有するACSである。
【0026】
いくつかの態様において、本発明は、対象となるカプサイシノイドを作製する生合成方法であって、形質転換細胞系においてACSおよびCSを発現させることと、細胞系を培地中で成長させることと、対象となるカプサイシノイドを生成することとを含む方法である。
【0027】
いくつかの実施形態において、ACSは、Capsicum属の植物からクローニングされる。いくつかの実施形態において、Capsicum属の植物は、ゴーストチリである。いくつかの実施形態において、発現されたACSは、LCAS4またはLCAS5に基づいて、アラビドプシスからクローニングされた遺伝子に由来する。いくつかの実施形態において、CSは、Capsicum属の植物からクローニングされる。いくつかの実施形態において、Capsicum属の植物は、ゴーストチリである。
【0028】
いくつかの実施形態において、方法は、培地に加えて原材料を該細胞系に供給することをさらに含む。いくつかの実施形態において、原材料は、ノナン酸、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニリアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、原材料は、ノナン、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニリアミンのうちの2つ以上の混合物である。いくつかの実施形態において、原材料はノナン酸である。いくつかの実施形態において、該原材料は、中鎖~長鎖脂肪酸であるC6~C12炭化水素から選択される。いくつかの実施形態において、原材料は、中鎖~長鎖脂肪酸である2種以上のC6~C12炭化水素の混合物である。
【0029】
いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、酵母、非カプサイシノイド生成植物、藻類および細菌を含む群から選択される。いくつかの実施形態において、細胞系はE.Coliである。
【0030】
いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、カプサイシンである。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、NVである。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、DHCPである。いくつかの実施形態において、生成されたカプサイシノイドは、CP、NV、およびDHCPを含む混合物である。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、ノルジヒドロカプサイシンである。
【0031】
いくつかの実施形態において、利用されるACSは、配列番号3と少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のDNA配列類似性を共有するACSである。いくつかの実施形態において、利用されるACSは、配列番号1と少なくとも90%(例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のタンパク質配列類似性を共有するACSである。いくつかの実施形態において、利用されるCSは、配列番号4と少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のDNA配列類似性を共有するCSである。いくつかの実施形態において、利用されるCSは、配列番号2と少なくとも90%(例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のタンパク質配列類似性を共有するCSである。
【0032】
いくつかの実施形態において、細胞系は、細菌、酵母、植物細胞、動物細胞、in vitro翻訳系、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドを生成することは、i)粗生成物を精製することと、ii)真空下で溶媒を除去して、濃縮カプサイシノイド生成物を提供することとを含む。いくつかの実施形態において、粗生成物は、カラムクロマトグラフィーにより精製される。いくつかの実施形態において、粗生成物は、酸-塩基抽出によって精製される。いくつかの実施形態において、粗生成物は、真空蒸留によって精製される。いくつかの実施形態において、該生成物は、半分取HPLCによって精製される。
【0034】
いくつかの実施形態において、細胞系は、バニリンのバニリルアミンへの変換を触媒することができるアミノトランスフェラーゼをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、C.roseusからのCaUGT2を含む。いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、配列番号5と少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のDNA配列類似性を共有するCaUGT2を含む。いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、配列番号6と少なくとも90%(例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のタンパク質配列類似性を共有するCaUGT2を含む。
【0036】
他の態様において、本発明は、培地内で成長する形質転換細胞系によって生成される対象となるカプサイシノイドを提供する。いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、酵母、非カプサイシノイド生成植物、藻類および細菌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、ACSおよびCapsicum属の植物に由来するACSの存在によって形質転換される。いくつかの実施形態において、細胞系に形質転換されたACSは、LCAS4またはLCAS5に基づいてアラビドプシスに由来するACSである。いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、ACSおよびCapsicum属の植物に由来するCSの存在によって形質転換される。いくつかの実施形態において、形質転換細胞系は、ACSおよびゴーストチリに由来するCSの存在によって形質転換される。
【0037】
いくつかの実施形態において、生成する方法は、さらに、形質転換細胞系に特定の原材料を供給することを含む。いくつかの実施形態において、原材料は、ノナン、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニリアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、原材料は、ノナン、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニリアミンのうちの2つ以上を含有する混合物から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、CPである。いくつかの実施形態において、該カプサイシノイドは、NVである。いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、DHCPである。いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、CP、NVおよびDHCPの混合物である。いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、70%超(例えば70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、99%超)の純度を有する。いくつかの実施形態において、カプサイシノイド含量は、乾燥基準で約85重量%超(例えば約85重量%超、約90重量%超、約95重量%超、約98重量%超、または約99重量%超)である。いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、精製カプサイシンである。
【0039】
さらに他の態様において、本発明は、対象となるカプサイシノイドを生成する方法であって、形質転換微生物培養物に特定の脂肪酸前駆体を供給することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、カプサイシンであり、脂肪酸前駆体は、6E-8-メチル-6-ノネン酸である。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、ジヒドロカプサイシンであり、脂肪酸前駆体は、8-メチルノナン酸である。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、ノニバミドであり、脂肪酸前駆体はノナン酸。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、N-バニリオクタミドであり、脂肪酸前駆体は、オクタン酸である。いくつかの実施形態において、対象となるカプサイシノイドは、N-バニリルデカンアミドであり、前駆体は、デカン酸である。いくつかの実施形態において、形質転換培養物は、酵母または細菌の微生物培養物である。
【0040】
いくつかの実施形態において、微生物培養物は、配列番号3と少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のDNA配列類似性を共有するACSを発現する。いくつかの実施形態において、微生物培養物は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のタンパク質配列類似性を共有するACSを発現する。いくつかの実施形態において、微生物培養物は、配列番号4と少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のDNA配列類似性を共有するCSを発現する。いくつかの実施形態において、微生物培養物は、配列番号2と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のタンパク質配列類似性を共有するCSを発現する。いくつかの実施形態において、微生物培養物は、配列番号5と少なくとも75%(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のDNA配列類似性を共有するCaUGT2を発現する。いくつかの実施形態において、微生物培養物は、配列番号6と少なくとも90%(例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%)のタンパク質配列類似性を共有するCaUGT2を発現する。
【0041】
他の態様において、本発明は、疼痛の局所治療のための鎮痛組成物を提供し、組成物は、有効量のカプサイシノイドを含有し、該鎮痛剤組成物は、本明細書に記載の方法のいずれかによって生成され、改善は、微生物細胞系において該カプサイシノイドを生成することを含む。いくつかの実施形態において、有効量は、対象となるカプサイシノイドの少なくとも0.0125パーセントである。いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、ノニバミド、N-バニリルノナンアミド、N-バニリルスルホンアミド、N-バニリルウレア、N-バニリルカルバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]-シス-単飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]二不飽和アミド、3-ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、シュードカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル、ポリゴジアール、アフラモジアール、シンナモジアール、シンナモスモライド、シンナモライド、シバムド、ノニバミド、オルバニル、N-オレイル-ホモバニルアミジア、イソベレラル、スカララジアール、アンシストロジアール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物を含む群から選択される。
【0042】
他の態様において、本発明は、香味剤および芳香剤組成物を提供し、香味剤および芳香剤組成物は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って生成された少なくとも1つのカプサイシノイドを有する。いくつかの実施形態において、カプサイシノイドは、ノニバミド、N-バニリルノナンアミド、N-バニリルスルホンアミド、N-バニリルウレア、N-バニリルカルバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]-シス-単飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]二不飽和アミド、3-ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、シュードカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル、ポリゴジアール、アフラモジアール、シンナモジアール、シンナモスモライド、シンナモライド、シバムド、ノニバミド、オルバニル、N-オレイル-ホモバニルアミジア、イソベレラル、スカララジアール、アンシストロジアール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物を含む群から選択される。
【0043】
本発明の態様をさらに記載する:
[項1]
対象となるカプサイシノイドを作製する生合成方法であって、
a)形質転換細胞系においてACSおよびCSを発現させることと;
b)前記細胞系を培地中で成長させることと;
c)前記対象となるカプサイシノイドを生成することとを含む方法。
[項2]
前記ACSが、Capsicum属の植物からクローニングされる、上記項1に記載の生合成方法。
[項3]
前記Capsicum属の植物が、ゴーストチリである、上記項2に記載の生合成方法。
[項4]
前記発現されたACSが、LCAS4またはLCAS5に基づいて、アラビドプシスからクローニングされた遺伝子に由来する、上記項1に記載の生合成方法。
[項5]
前記CSが、前記Capsicum属の植物からクローニングされる、上記項1に記載の生合成方法。
[項6]
前記Capsicum属の植物が、前記ゴーストチリである、上記項5に記載の生合成方法。
[項7]
培地に加えて原材料を前記細胞系に供給することをさらに含む、上記項1に記載の生合成方法。
[項8]
前記原材料が、ノナン酸、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびビニリアミンからなる群から選択される、上記項7に記載の生合成方法。
[項9]
前記原材料が、ノナン、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニリアミンのうちの2つ以上の混合物である、上記項7に記載の生合成方法。
[項10]
前記形質転換細胞系が、酵母、非カプサイシノイド生成植物、藻類および細菌を含む群から選択される、上記項1に記載の生合成方法。
[項11]
前記細胞系がE.Coliである、上記項10に記載の生合成方法。
[項12]
前記原材料がノナン酸である、上記項1に記載の生合成方法。
[項13]
前記対象となるカプサイシノイドが、カプサイシンである、上記項1に記載の生合成方法。
[項14]
前記対象となるカプサイシノイドが、NVである、上記項1に記載の生合成方法。
[項15]
前記対象となるカプサイシノイドが、DHCPである、上記項1に記載の生合成方法。
[項16]
前記生成されたカプサイシノイドが、CP、NV、およびDHCPを含む混合物である、上記項1に記載の生合成方法。
[項17]
培地内で成長する形質転換細胞系によって生成される、対象となるカプサイシノイド。
[項18]
前記形質転換細胞系が、酵母、非カプサイシノイド生成植物、藻類および細菌からなる群から選択される、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項19]
前記形質転換細胞系が、前記Capsicum属の植物に由来するACSおよびCSの存在によって形質転換される、上記項18に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項20]
前記製造方法が、前記形質転換細胞系に特定の原材料を供給することをさらに含む、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項21]
前記原材料が、ノナン、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニルアミンからなる群から選択される、上記項20に記載のカプサイシノイド。
[項22]
前記原材料が、ノナン、ペラルゴニウムの油、オクタン酸、デカン酸、バニリン、およびバニルアミンのうちの2つ以上を含有する混合物から選択される、上記項20に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項23]
前記形質転換細胞系が、前記Capsicum属の植物に由来するACSおよびCSの存在によって形質転換される、上記項18に記載のカプサイシノイド。
[項24]
前記細胞系に形質転換された前記ACSが、LCAS4またはLCAS5に基づいて、アラビドプシス由来のACSである、上記項18に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項25]
CPである、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項26]
NVである、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項27]
DHCPである、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項28]
生成された前記カプサイシノイドが、CP、NV、およびDHCPの混合物である、上記項17に記載のカプサイシノイド。
[項29]
前記形質転換細胞系が、前記Capsicum属の植物に由来するACSおよびCSの存在によって形質転換される、上記項19に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項30]
前記形質転換細胞系が前記ゴーストチリに由来するACSおよびCSの存在によって形質転換される、上記項29に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項31]
利用される前記ACSが、配列番号3と少なくとも75%のDNA配列類似性を共有するACSである、上記項1に記載の生合成方法。
[項32]
利用される前記ACSが、配列番号1と少なくとも90%のタンパク質配列類似性を共有するACSである、上記項1に記載の生合成方法。
[項33]
利用される前記CSが、配列番号4と少なくとも75%のDNA配列類似性を共有するCSである、上記項1に記載の生合成方法。
[項34]
利用される前記CSが、配列番号2と少なくとも90%のタンパク質配列類似性を共有するCSである、上記項1に記載の生合成方法。
[項35]
前記細胞系が、細菌、酵母、植物細胞、動物細胞、in vitro翻訳系、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項1~34のいずれか1項に記載の生合成方法。
[項36]
前記カプサイシノイドが、精製されたカプサイシンである、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項37]
前記カプサイシノイドが、70%超の純度である、上記項36に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項38]
前記カプサイシノイド含量が、乾燥基準で約85重量%超である、上記項17に記載の対象となるカプサイシノイド。
[項39]
ステップc)が、i)粗生成物を精製することと、ii)真空下で溶媒を除去して、濃縮カプサイシノイド生成物を提供することとを含む、上記項1に記載の生合成方法。
[項40]
前記粗生成物が、カラムクロマトグラフィーにより精製される、上記項39に記載の生合成方法。
[項41]
前記粗生成物が、酸-塩基抽出によって精製される、上記項39に記載の生合成方法。
[項42]
前記粗生成物が、真空蒸留によって精製される、上記項39に記載の生合成方法。
[項43]
前記粗生成物が、半分取HPLCによって精製される、上記項39に記載の生合成方法。
[項44]
対象となるカプサイシノイドを生成する方法であって、形質転換微生物培養物に特定の脂肪酸前駆体を供給することを含む方法。
[項45]
前記対象となるカプサイシノイドが、カプサイシンであり、前記脂肪酸前駆体が、6E-8-メチル-6-ノネン酸である、上記項44に記載の方法。
[項46]
前記対象となるカプサイシノイドが、ジヒドロカプサイシンであり、前記脂肪酸前駆体が、8-メチルノナン酸である、上記項44に記載の方法。
[項47]
前記対象となるカプサイシノイドが、ノニバミドであり、前記脂肪酸前駆体が、ノナン酸である、上記項44に記載の方法。
[項48]
前記対象となるカプサイシノイドが、N-バニリオクタミドであり、前記脂肪酸前駆体が、オクタン酸である、上記項44に記載の方法。
[項49]
前記対象となるカプサイシノイドが、N-バニリルデカンアミドであり、前記脂肪酸前駆体が、デカン酸である、上記項44に記載の方法。
[項50]
前記形質転換培養物が、酵母または細菌の微生物培養物である、上記項44に記載の方法。
[項51]
前記細胞系が、バニリンのバニリルアミンへの変換を触媒することができるアミノトランスフェラーゼをさらに含む、上記項10に記載の生合成方法。
[項52]
前記原材料が、中鎖~長鎖脂肪酸であるC6~C12炭化水素からなる群から選択される、上記項7に記載の生合成方法。
[項53]
前記原材料が、中鎖~長鎖脂肪酸である2種以上のC6~C12炭化水素の混合物である、上記項7に記載の生合成方法。
[項54]
前記対象となるカプサイシノイドが、ノルジヒドロカプサイシンである、上記項1に記載の生合成方法。
[項55]
前記形質転換細胞系が、C.roseusのCaUGT2を含む、上記項1に記載の生合成方法。
[項56]
前記形質転換細胞系が、配列番号5と少なくとも75%のDNA配列類似性を共有するCaUGT2を含む、上記項1~16、31~35、および51~55のいずれか1項に記載の生合成方法。
[項57]
前記形質転換細胞系が、配列番号6と少なくとも90%のタンパク質配列類似性を共有するCaUGT2を含む、上記項1~16、31~35、および51~55のいずれか1項に記載の方法。
[項58]
前記微生物培養物が、配列番号3と少なくとも75%のDNA配列類似性を共有するACSを発現する、上記項44に記載の方法。
[項59]
前記微生物培養物が、配列番号1と少なくとも90%のタンパク質配列類似性を共有するACSを発現する、上記項44に記載の方法。
[項60]
前記微生物培養物が、配列番号4と少なくとも75%のDNA配列類似性を共有するCSを発現する、上記項44に記載の方法。
[項61]
前記微生物培養物が、配列番号2と少なくとも90%のタンパク質配列類似性を共有するCSを発現する、上記項44に記載の方法。
[項62]
前記微生物培養物が、配列番号5と少なくとも75%のDNA配列類似性を共有するCaUGT2を発現する、上記項44および58~61のいずれか1項に記載の方法。
[項63]
前記微生物培養物が、配列番号6と少なくとも90%のタンパク質配列類似性を共有するCaUGT2を発現する、上記項44に記載の生合成方法。
[項64]
疼痛の局所治療のための鎮痛組成物であって、前記組成物は、有効量のカプサイシノイドを含有し、前記鎮痛剤組成物は、上記項1~16、31~35、および39~63のいずれか1項に記載の方法によって生成され、改善は、微生物細胞系において前記カプサイシノイドを生成することを含む方法。
[項65]
前記有効量が、対象となるカプサイシノイドの少なくとも0.0125パーセントである、上記項64に記載の鎮痛組成物。
[項66]
上記項1~16、31~35および39~63のいずれか1項に記載の方法に従って生成された少なくとも1種のカプサイシノイドを有する、香味剤および芳香剤組成物。
[項67]
前記カプサイシノイドが、ノニバミド、N-バニリルノナンアミド、N-バニリルスルホンアミド、N-バニリルウレア、N-バニリルカルバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]-シス-単飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]二不飽和アミド、3-ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、シュードカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル、ポリゴジアール、アフラモジアール、シンナモジアール、シンナモスモライド、シンナモライド、シバムド、ノニバミド、オルバニル、N-オレイル-ホモバニルアミジア、イソベレラル、スカララジアール、アンシストロジアール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物からなる群から選択される、上記項66に記載の香味剤および芳香剤組成物。
本開示は様々な修正および代替形態をとり得るが、その特定の実施形態が図面において例として示され、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、本明細書において示される図面および詳細な説明は、本開示を開示される特定の実施形態に限定するものではなく、逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲内の全ての修正、均等物、および代替物を包含するものであることを理解されたい。
【0044】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明において明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】カプサイシノイド生合成経路を示す図である。アミノトランスフェラーゼ(pAMT)は、バニリンからのバニリアミンの形成を触媒する。
【
図2】本発明の形質転換細胞系の一実施形態による特定のカプサイシノイド化合物の生成レベルを示す図である。それぞれ6E(6E-8-メチルノネン酸)、C8:0(オクタン酸またはカプリル酸)、C9:0(ノナン酸またはペラルゴン酸)およびC10:0(デカン酸またはカプリン酸)からの、CP(カプサイシン)、CP8(N-バニリオクタミド)、CP9(ノニバミド)またはCP10(N-バニリルデカンアミド)の生成。実験は、3連で行われた。各対における左のバーは、1日である。各対における右のバーは、2日である。
【
図3】好ましい細胞系のHPLCプロファイル、特にそれぞれC8:0、C9:0およびC10:0が供給されたE.coli培養物からの粗酢酸エチル抽出物のHPLCプロファイルである。CP8(N-バニリオクタミン)、CP9(ノニバミド)およびCP10(N-バニリルデカンアミド)は、それぞれ10.9、11.3、および11.8分の保持時間を有していた。挿入された写真は、それらのUV-Visスペクトルである。
図3は、基質および生成物の読取値であり、ピーク面積は280nmで測定した。
【
図4】本発明の細胞系の実施形態と比較するためのノニバミド標準のHPLCプロファイルである。
【
図5】pAMTシンターゼの存在下での、バニリンからのカプサイシンの生成を示す図である。
【
図6】CaUGT2のNi-NTA親和性クロマトグラフィーを示す図である。Pre、カラム前;post、カラム後;E1、E2、E3、カラムから収集された分画。Hisタグ付きCaUGT2は、約58kDの分子量を有する。
【
図7】in vitroでのCaUGT2によるカプサイシン-gluおよびノニバミド-gluの生成を示す図である。
【
図8】ノルジヒドロカプサイシン(7M-CP)の構造を示す図である。ノルジヒドロカプサイシン(7M-CP)は、全カプサイシノイドの約7%を占める、唐辛子中で3番目に最も豊富なCPである。
【
図9】7M-CPおよびC9-CP生成のHPLCプロファイルである。
【
図10】同じ培養系におけるC9-CPおよび7M-CP生成の比較を示す図である。実験は、二連で行われた。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の略語は、明細書において特定された意味を有する。
【0047】
本明細書において使用される用語の説明:
カプサイシンまたはCPは無色の刺激性フェノール性アミドC18H27NO3であり、様々なCapsicum種およびそれらのハイブリッドにおいて見出される一連のフェノール性アミドであり、唐辛子にその辛さまたは刺激性を与え、食品、医薬品、および安全性用途に使用される。純粋なCPは、揮発性、疎水性、無色、無臭、結晶性~ロウ状化合物である。
【0048】
本明細書において使用される場合、カプサイシノイドは、唐辛子の辛味に関与するカプサイシンに関連する刺激性化合物のクラスを指す。それらは、ヒトを含む哺乳動物に対する刺激物であり、それらが接触するあらゆる組織に焼ける感覚をもたらし得る。カプサイシノイドは、ある特定の哺乳動物および菌類に対する抑止剤として、唐辛子による二次代謝産物として生成され得る。例示的なカプサイシノイドとしては、これらに限定されないが、ノニバミド、N-バニリルノナンアミド、N-バニリルスルホンアミド、N-バニリルウレア、N-バニリルカルバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]-シス-単飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]二不飽和アミド、3-ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、シュードカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル、ポリゴジアール、アフラモジアール、シンナモジアール、シンナモスモライド、シンナモライド、シバムド、ノニバミド、オルバニル、N-オレイル-ホモバニルアミジア、イソベレラル、スカララジアール、アンシストロジアール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。ある特定のカプサイシノイドは、表2にさらに説明されている。
【0049】
細胞系は、異所性タンパク質の発現を提供する任意の細胞である。これは、細菌、酵母、植物細胞および動物細胞を含む。これは、原核細胞および真核細胞の両方を含む。また、これは、リボソーム等の細胞成分に基づくタンパク質のin vitro発現を含む。
【0050】
脂肪酸、C6~C12。本発明によれば、様々な脂肪酸が出発源材料として使用され得る。原材料としては、バニリン、バニリルアミン、またはメチル化、エチル化、もしくはグリコシル化等の芳香環における修飾を有するそれらの誘導体が挙げられ、より具体的には、6~12炭素直鎖もしくは分岐鎖脂肪酸、またはヒドロキシ脂肪酸等のそれらの誘導体(例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、およびドデカン酸)は、直鎖脂肪酸または分岐鎖脂肪酸であってもよく、本発明のカプサイシノイドを作製するために使用され得る。
【0051】
細胞系の成長成長は、細胞を増幅および分化させる適切な培地を提供することを含む。これはまた、細胞または細胞成分が、組換えタンパク質を翻訳および作製できるような源を提供することを含む。
【0052】
タンパク質発現。タンパク質生成は、遺伝子発現後に生じ得る。これは、DNAがメッセンジャーRNA(mRNA)に転写された後の段階からなる。次いで、mRNAは、ポリペプチド鎖に翻訳され、最終的にタンパク質に折り畳まれる。DNAは、核酸を細胞中に意図的に導入するプロセスであるトランスフェクションを介して細胞中に存在してもよい。この用語は、多くの場合、真核細胞の非ウイルス法に使用される。これはまた、他の方法および細胞型を指す場合があるが、他の用語が好ましい。「形質転換」は、細菌、植物細胞を含む非動物真核細胞における非ウイルスDNA移送を説明するためにより頻繁に使用される。動物細胞では、形質転換はまたこれらの細胞におけるがん性状態(発がん性)への進行を指すために使用されるため、トランスフェクションが好ましい用語である。形質導入は、しばしば、ウイルス媒介DNA移送を説明するために使用される。形質転換、形質導入、およびウイルス感染は、本出願においてトランスフェクションの定義に含まれる。
【0053】
酵母本発明によれば、本明細書において特許請求される酵母は、真菌界のメンバーとして分類される真核生物の単一細胞微生物である。酵母は、多細胞性の祖先進化した単細胞生物であるが、本発明に有用ないくつかの種は、仮性菌糸または偽菌糸として知られる接続した出芽性細胞のストリングを形成することにより多細胞の特性を発達させる能力を有するものである。
頭字語:
Pal、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ;
Ca4H、桂皮酸4-ヒドロキシラーゼ;
4CL、4-クマレートCoAリガーゼ;
HCT、ヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ;
C3H、クマロイルシキメート/キネート3-ヒドロキシラーゼ;
COMT、カフェイン酸O-メチルトランスフェラーゼ、pAMT、アミノトランスフェラーゼ;
BCAT、分岐鎖アミノ酸トランスフェラーゼ;
Kas、3-ケタ-アシルACPシンターゼ;
ACL、アシルキャリアタンパク質;
FatA、アシル-ACPチオエステラーゼ;
ACS、アシル-CoAシンターゼ、および
CS、カプサイシン合成酵素。
【0054】
[発明を実施するための形態]
本発明は、いくつかの実施形態において、特定の供給前駆体から開発された、CP、DHCPおよびNVの改善された生成方法のためのシステムに関する。
【0055】
ペラルゴン酸バニリルアミドまたはPAVAとも呼ばれるノニバミド(ここでは「NV」)は、唐辛子において特定される微量のカプサイシノイドの1つである(
図2、Constant et al.,1996)。これは、刺激性香味料用の食品添加剤として使用される。これはまた、製薬産業においてカプサイシンの代替として使用される。しかしながら、唐辛子中のノニバミドの極めて低い含量に起因して、現在の植物抽出方法の使用は商業的に実行可能ではなく、したがって化学合成によってのみ作製されている。化学的に合成されたノニバミドは容易に入手可能であり、安価であり、非天然化合物は、自然製品の需要が好ましい消費者には快く受け入れられていない。天然であるためには、化学物質は、本発明の方法において提供されるように、天然材料の抽出により得られる、または酵素もしくは微生物によって天然前駆体から形質転換される必要がある。
【0056】
本発明の一態様は、本発明のACSおよびCSのDNAおよび対応するタンパク質配列である。ACSおよびCSのDNA配列は、ゴーストチリペッパーから特定および取り出され、本発明における使用のためにプラスミドに挿入された。そのような配列は、本明細書において、それぞれ配列番号3および配列番号4として提供される。
【0057】
本発明は、核酸分子および本明細書に記載の方法におけるその使用を含み、核酸分子は、それぞれ配列番号1および配列番号2にハイブリダイズする核酸配列、またはそれらの任意の補体、またはそれらの任意のシスエレメントを有する。本発明また、核酸分子および本明細書に記載の方法におけるその使用を提供し、核酸分子は、本発明のACSおよびCS配列に対する配列番号3から配列番号4、それらの任意の補体、またはそれらの任意のシスエレメント、またはそれらに任意の断片からなる群から選択される核酸配列を含む。(表1、配列番号3および4を参照されたい)。
【0058】
追加の実施形態は、形質転換された植物の過剰発現の標準的な既知の技法を利用してACSlを過剰発現することによって、唐辛子植物におけるカプサイシノイドのレベルを変更するためのACSlの使用を含む。別の実施形態は、遺伝子の発現をノックアウトまたはノックダウンするための標準的な既知の技法を利用してACSlをノックアウトまたはノックダウンすることにより、唐辛子植物におけるカプサイシノイドのレベルを変更するためのACSIの使用を含む。この場合も、過剰発現またはノックアウト/ノックダウンは、当業者によって知られている標準的な分子細胞戦略および技法によるものである。別の実施形態は、ACSlの発現または過剰発現を伴う脂肪酸を含むアシル-CoAおよびそれらの下流代謝産物を生成するためのACSlの使用を含む。別の変形例は、アシル-CoA、およびノックアウトまたはノックダウンACSlを含む脂肪酸を含むそれらの下流代謝産物のレベルを調節するためのACSI使用である。生成された異なる特定のカプサイシノイドは、培養物に供給される異なる脂肪酸によって決定される。(表3を参照されたい)。
【0059】
本明細書の方法によって作製されるアシルCoAは、対象となるカプサイシノイドを作製するために利用され得、それらは一般に、中鎖の種類のものである。この場合も、ACSlは中鎖および長鎖カルボン酸の両方のアシル-CoAへの変換を媒介し得るが、中鎖活性は今日のバイオ燃料産業において必須の成分であるため、中鎖活性は長鎖活性よりもはるかに重要である。ACSlに関して上述されるような他の重要性は、トランスジェニック技術によって植物におけるカプサイシノイドレベルを変更するために使用され得ることである。しかしながら、ACSlは、長鎖アシル-CoAに関する使用から除外されない。一実施形態において、細菌ベースの系または酵母ベースの系等の細胞系が、ACSを発現するように修飾され得る。ACSは、ゴーストペッパーからクローニングされたACS1であってもよい。他の好適なACSは、アラビドプシスからのLCAS4およびLCAS5に基づくものである。他の既知のACS1およびACS2もまた、細胞系において発現され得る。次いで、8-メチル-トランス-6-ノネン酸および8-メチルノナン酸等の適切な基質が、細胞系に供給され得る。基質はまた、細胞系内の生合成経路の一部として発現され得る。次いで、細胞系は、8-メチル-トランス-6-ノネノイル-CoAまたは8-メチルノナノイル-CoAの生合成生成を可能にするためにインキュベートされる。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、微生物系における異種タンパク質生成の効率は、生成される最終的ポリペプチドを変化させることなく、発現に使用される細胞系に好ましくなり得るが元の遺伝子源生物とは異なるものにDNA配列を改変するコドン変化により向上され得る。この問題を克服するために通常使用されるアプローチは、対象となるポリペプチドを生成する宿主生物に好ましいコドン配列に指向させるために、特定の細胞株において稀なコドンを除去する、または稀なコドンtRNAの付加のための標的化突然変異誘発を含む。近年、そのような「コドン最適化」技術における改善は、合成遺伝子の費用効果の高い生成を可能にし、それによってこれは本発明のために実行可能な代替物および潜在的に有用なものとなる。
【0061】
同一性および類似性
同一性は、配列の整列(配列情報もしくは構造情報のみ、またはいくつかの他の情報を使用して行うことができるが、通常は配列情報のみに基づく)後に配列の対の間で同じであるアミノ酸の割合であり、類似性は、いくつかの類似性マトリックスを使用した整合に基づいて割り当てられたスコアである。類似性指数は、タンパク質の配列整列のために当業者により使用される以下のBLOSUM62、PAM250もしくはGONNET、または任意のマトリックスのうちのいずれか1つであり得る。
【0062】
同一性は、2つの下位配列間の対応度である(配列間にギャップはない)。25%以上の同一性は、機能の類似性を示し暗示し、一方で18~25%は構造または機能の類似性を暗示する。2つの完全に無関係なまたはランダム配列(100残基を超える)が20%超の同一性を有し得ることに留意されたい。類似性は、それらが比較される場合に、2つの配列間の類似度である。これは、それらの同一性に依存する。
【0063】
ハイブリダイゼーション技法を使用した配列類似性の決定
核酸ハイブリダイゼーションは、DNA操作の当業者に周知の技法である。核酸の所与の対のハイブリダイゼーション特性は、それらの類似性または同一性の指標である。
【0064】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、一般に、相補的塩基鎖対合を介して結合する核酸分子の能力を指す。そのようなハイブリダイゼーションは、核酸分子が、適切な条件下で接触する場合に生じ得る。「特異的にハイブリダイズ」とは、逆平行二本鎖核酸構造を形成する2つの核酸分子の能力を指す。核酸分子は、それらが「完全な相補性」を示す場合、別の核酸分子の「補体」であると言われ、すなわち、1つの配列内の各ヌクレオチドは、別の配列におけるその塩基対合パートナーヌクレオチドと相補的である。2つの分子は、少なくとも従来の「低ストリンジェンシー」条件下で互いにアニールしたままであることを許すのに十分な安定性をもって互いにハイブリダイズすることができる場合、「最小限に相補的」であると言われる。同様に、分子は、少なくとも従来の「高ストリンジェンシー」条件下で互いにアニールしたままであることを許すのに十分な安定性をもって互いにハイブリダイズすることができる場合、「相補的」であると言われる。例えば少なくとも低ストリンジェンシー条件下で他の核酸分子にハイブリダイズする核酸分子は、他の核酸分子の「ハイブリダイズ可能な同族体」と言われる。従来の低ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシー条件は、本明細書において、ならびにSambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,2nd Ed.‘Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(1989)およびHaymes et al.,NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION,A PRACTICAL APPROACH,IRL Press,Washington,DC(1985)により説明されている。完全相補性からの逸脱は、そのような逸脱が二本鎖構造を形成する分子の能力を完全に除外しない限りは許容され得る。
【0065】
低ストリンジェンシー条件は、標的核酸配列に対するより低い配列同一性を有する核酸配列を選択するために使用され得る。約20℃~約55℃の範囲の温度で約0.15M~約0.9Mの塩化ナトリウム等の条件を採用することが望ましい場合がある。高ストリンジェンシー条件は、開示された核酸配列に対するより高い同一性の程度を有する核酸配列を選択するために使用され得る(Sambrook et al.,1989)。高ストリンジェンシー条件は、典型的には、約2×~約10×SSC(3M塩化ナトリウムおよび0.3Mクエン酸ナトリウムを含む20×SSC原液、pH7.0から蒸留水中に希釈)、約2.5×~約5×Denhardt溶液(1%(w/v)ウシ血清アルブミン、1%(w/v)ficoll、および1%(w/v)ポリビニルピロリドンを含有する50×原液から蒸留水中に希釈)、約10mg/mL~約100mg/mLの魚精子DNA、ならびに約0.02%(w/v)~約0.1%(w/v)SDS中、約50℃~約70℃で数時間から一晩のインキュベーション下での核酸ハイブリダイゼーションを含む。高ストリンジェンシー条件は、好ましくは、55℃で数時間のインキュベーション下での6×SSC、5×Denhardt溶液、100mg/mLの魚精子DNA、および0.1%(w/v)SDSにより提供される。ハイブリダイゼーションに続いて、一般にいくつかの洗浄ステップが行われる。。洗浄組成物は、一般に、約20℃~約70℃で15分間のインキュベーション下での、0.5×~約10×SSCおよび0.01%(w/v)~約0.5%(w/v)SDSを含む。好ましくは、核酸セグメントは、0.1×SSC中65℃で少なくとも1回の洗浄後、ハイブリダイズした状態を維持する。
【0066】
核酸分子は、好ましくは、低または高ストリンジェンシー条件下、配列番号3および配列番号4、それらの任意の補体、またはそれらの任意の断片、またはそれらの任意のシスエレメントとハイブリダイズする核酸配列を含む。核酸分子は、最も好ましくは、高ストリンジェンシー条件下、配列番号3および配列番号4、それらの任意の補体、またはそれらの任意の断片、またはそれらの任意のシスエレメントとハイブリダイズする核酸配列を含む。
【0067】
同一性スコア化を使用した配列類似性の分析
本明細書において使用される場合、「配列同一性」とは、2つの最適に整列したポリヌクレオチドまたはペプチド配列が、成分、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸の整列のウィンドウ全体にわたり不変である程度を指す。試験配列および参照配列の整列セグメントの「同一性割合」は、2つの整列した配列により共有される同一成分の数を、参照配列セグメント、すなわち参照配列全体または参照配列のより小さい画定部分における成分の総数で除した値である。
【0068】
本明細書において使用される場合、「配列同一性パーセント」または「同一性パーセント」という用語は、2つの配列が最適に整列した場合の、試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)と比較した、参照(「クエリ」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)の直線ポリヌクレオチド配列における同一ヌクレオチドのパーセンテージを指す(比較ウィンドウにわたり、合計して参照配列の20パーセント未満である適切なヌクレオチド挿入、欠失、またはギャップを有する)。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、当業者に周知であり、SmithおよびWatermanの局所的ホモロジーアルゴリズム、NeedlemanおよびWunschのホモロジー整列アルゴリズム、PearsonおよびLipmanの類似性検索方法等のツールによって、ならびに好ましくはGCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.,Burlington,MA)の一部として利用可能なGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA等のアルゴリズムのコンピュータ実装により行われてもよい。試験配列および参照配列の整列されたセグメントの「同一性割合」は、2つの整列した配列により共有される同一成分の数を、参照配列セグメント、すなわち参照配列全体または参照配列のより小さい画定部分における成分の総数で除した値である。配列同一性パーセントは、100を乗じた同一性割合として表現される。1つ以上のポリヌクレオチド配列の比較は、全長ポリヌクレオチド配列もしくはその一部、またはより長いポリヌクレオチド配列にわたってもよい。本発明の目的において、「同一性パーセント」はまた、翻訳されたヌクレオチド配列に対してはBLASTXバージョン2.0を使用して、またポリヌクレオチド配列に対してはBLASTNバージョン2.0を使用して決定され得る。
【0069】
配列同一性のパーセントは、好ましくは、Sequence Analysis Software Package(商標)(Version 10;Genetics Computer Group,Inc.、Madison、WI)の「Best Fit」または「Gap」プログラムを使用して決定される。「Gap」は、NeedlemanおよびWunsch(Needleman and Wunsch,JOURNAL OF MOLECULAR BIOLOGY 48:443-453,1970)のアルゴリズムを利用して、マッチの数を最大化してギャップの数を最小化する2つの配列の整列を見つける。「BestFit」は、SmithおよびWaterman(Smith and Waterman,ADVANCES IN APPLIED MATHEMATICS,2:482-489,1981、Smith et al.,NUCLEIC ACIDS RESEARCH 11:2205-2220,1983)の局所的ホモロジーアルゴリズムを使用して、2つの配列間の類似性の最善のセグメントの最適な整列を実行し、マッチの数を最大化するためにギャップを挿入する。同一性パーセントは、最も好ましくは、「Best Fit」プログラムを使用して決定される。
【0070】
配列同一性を決定するための有用な方法はまた、National Library of Medicine,National Institute of Health,Bethesda,Md.20894のNational Center Biotechnology Information(NCBI)から公的に利用可能なBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)プログラムにおいて開示されている。BLAST Manual,Altschul et al.,NCBI,NLM,NIH;Altschul et al.,J.MOL.BIOL.215:403-410(1990)を参照されたい。BLASTプログラムのバージョン2.0以降では、整列内にギャップ(欠失および挿入)を導入することができる。ペプチド配列に対してはBLASTXを使用して配列同一性を決定することができ、ポリヌクレオチド配列に対してはBLASTNを使用して配列同一性を決定するこことができる。
【0071】
本明細書において使用される場合、「実質的な配列同一性パーセント」という用語は、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、またはさらにより高い配列同一性、例えば約98%または約99%の配列同一性の配列同一性パーセントを指す。したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、またはさらにより高い配列同一性、例えば約98%または約99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド分子である。本発明のACSおよびCS遺伝子の活性を有するポリヌクレオチド分子は、様々なカプサイシノイドの生成を導くことができ、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列に対し実質的な配列同一性パーセントを有し、本発明の範囲内に包含される。
【0072】
「相同性」とは、位置同一性(すなわち配列類似性または同一性)のパーセントに関する2つ以上の核酸またはアミノ酸配列間の類似性のレベルを指す。相同性はまた、異なる核酸またはタンパク質間の類似の官能特性の概念を指す。
【0073】
代替の実施形態において、核酸分子は、配列番号3および配列番号4、それらの任意の補体、それらの任意の断片、またはそれらの任意のシスエレメントからなる群から選択される核酸分子に対して、70%以上の同一性、より好ましくは少なくとも80%以上、85%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を示す。核酸分子は、好ましくは、配列番号3および配列番号4、それらの任意の補体、それらの任意の断片、またはそれらに任意のシスエレメントからなる群から選択されるポリヌクレオチドと、75%以上の配列同一性を示す核酸配列を含む。核酸分子は、より好ましくは、配列番号3および配列番号4、それらの任意の補体、それらの任意の断片、またはそれらの任意のシスエレメントからなる群から選択されるポリヌクレオチドとの80%以上の配列同一性を示す核酸配列を含む。核酸分子は、最も好ましくは、配列番号3および配列番号4、それらの任意の補体、それらの任意の断片、またはそれらの任意のシスエレメントからなる群から選択されるポリヌクレオチドとの85%以上の配列同一性を示す核酸配列を含む。
【0074】
本発明の目的において、「同一性パーセント」は、また翻訳されたヌクレオチド配列に対してはBLASTXバージョン2.0を使用して、またポリヌクレオチド配列に対してはBLASTNバージョン2.0を使用して決定され得る。本発明の好ましい実施形態において、本明細書において開示されるトウモロコシゲノムプロモーター配列は、それぞれのホモログに関して200超のBLASTスコア、好ましくは300超のBLASTスコア、さらにより好ましくは400超のBLASTスコアを有する核酸分子または断片を含む。
【0075】
前述の説明から明らかであるように、本開示のある特定の態様は、本明細書において例示される例の特定の詳細によって限定されず、したがって、当業者は、他の修正および用途、またはそれらの均等物を思いつくことが企図される。したがって、特許請求の範囲は、本開示の趣旨および範囲から逸脱しない全てのそのような修正および用途を網羅するものであることが意図される。
【0076】
さらに、別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載される、またはそれらと同様もしくは同等であるいずれの方法および材料も、本開示の実践または試験に使用され得るが、好ましい方法および材料が上で説明されている。
【0077】
上記発明は、理解の目的のために図解および例示としてある程度詳細に説明されているが、ある特定の変更および修正が実践され得ることが当業者には明らかであろう。したがって、説明および例は、添付の特許請求の範囲により説明される本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0078】
したがって、特定のカプサイシノイドの生成を提供する本明細書における本発明の実施形態は、単に本発明の原理の例示であることを理解されたい。上記説明から、開示される生成方法の形態、使用方法、および要素の用途、ならびに選択された微生物株の変更が、本発明の趣旨から逸脱することなく使用され得ることが明らかであろう。
【0079】
実施例1
500mg/Lのバニリルアミンおよび500mg/Lの個々の脂肪酸を、ゴーストチリACS1およびCS遺伝子を過剰発現するE.coli培養物に供給した。生成物試料を、基質供給から1日後および2日後に採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した(
図2を参照されたい)。
【0080】
図1および2に見られるように、この実験の結果として、ノニバミドおよび他のカプサイシノイドが生成された。NVは、ペラルゴン酸(n-ノナン酸)およびバニリルアミンのアミドである。ノニバミドは、スパイシーな香味を付与するための食品添加剤として、ならびに関節炎および筋肉痛を緩和するための医薬品として広く使用されている。
【0081】
本明細書において生成されるCP、DHCP、およびNVカプサイシノイドは、ゴーストチリペッパーからACSおよびCS遺伝子を運搬するように改変された改変E.coli培地中で合成された。これらの遺伝子は、適切に供給された選択された株が、8-メチルノネノイル部分を8-メチルノネノイル-CoAからバニリルアミンに送達してアミドコンジュゲートを形成する挿入アシルトランスフェラーゼCSを介してカプサイシノイドを合成するのを可能にした。バニリルアミンは、フェニルプロパノイド経路から形成されるが、分岐鎖脂肪酸は、分岐鎖アミノ酸、例えばバリンから誘導される(Curry,et al.,1999;Mazourek,et al.,et al.,2009)。アミノトランスフェラーゼ(pAMT)は、バニリン(
図1)のバニリアミンの形成を触媒する。ACS1およびCSを共過剰発現するBL21のグリセロール原液(DE3)培養物を使用して、100mg/Lのカーベニシリンおよび100mg/Lのスペクチノマイシンを含有する5mlのTB(Terrific Broth)培地を播種し、培地を、37℃で一晩振盪した。次いで、一晩培養物を使用して、100mg/Lのカーベニシリンおよび100mg/Lのスペクチノマイシンを含有する20mlのTB培地を接種した。培養物を、まず37℃で0.4のOD600まで成長させ、25℃まで冷却した。次いで、1mMのIPTGを添加し、ACS1およびCSの発現を誘導した。25℃で3時間のインキュベーション後、500mg/LのVNおよび500mg/Lの各個々の脂肪酸を培養物に添加し、培養物を引き続き25℃でインキュベートした。基質の供給から24時間後および48時間後に試料を採取した。酢酸エチルにより培養物からカプサイシノイドを抽出し、酢酸エチル相をHPLCにより分析した。実験は3連で行った。
【0082】
我々の以前の出願において、対応する基質の供給後にゴーストチリペッパーからACS1およびCS遺伝子を過剰発現するE.coli培養物中のCPおよびDHCPの生成のためのプロセスを説明した(表1;Chen et al.,2015)。本発明により、我々は、NVの生成を報告する。本発明によれば、形質転換培養物には、そのような培養物によって生成される生成物が単一のカプサイシノイドの種であるように特定の脂肪酸が供給される(表3を参照されたい)。これは、当然ながら、様々なカプサイシノイドとCPおよびDHCPとの混合物が生成および抽出される植物系生成に対する効率の改善である。
【0083】
ノニバミドが天然に存在するカプサイシノイド種(Constant et al.1996)として特定されているが、含量が非常に低いため、商業的には天然のノニバミドは使用されていない。
【0084】
カプサイシンおよびその類似体の合成のための無機または非生物学的プロセスは、例えばCrombieら(J.CHEM SOC.,1025-27(1955))によって報告されており、これは、赤唐辛子の有効成分であるカプサイシン、N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-8-メチルノン-トランス-6-エナミドの明確な合成を説明している。他の有機経路は、LaHannらに対して発行された米国特許第4,493,848号、およびChenらに対して発行された米国特許第5,094,782号において示されている。
【0085】
カプサイシノイドは、痛みを信号伝達すると考えられる小径求心性神経線維C繊維およびA-デルタ繊維に対するその選択的作用のため、実験ツールとして長い間使用されてきた。動物における研究から、カプサイシノイドは、カルシウムおよびナトリウム透過性のカチオンチャネルを開くことにより、C-繊維膜脱分極を誘引すると思われる。最近、カプサイシノイド効果のための受容体の1つがクローニングされている。
【0086】
ほとんどの唐辛子において、バニリルアミンは、フェルリン酸、バニリン、および関連化合物を介してフェニルアラニンから形成され、カプサイシノイドは、カプサイシンシンターゼによりバニルアミンおよび分岐鎖肪酸から生成される(
図1)。
【0087】
合成生物学
遺伝子操作された微生物は、再生可能源からの薬物、化学物質およびバイオ燃料の生成のための益々重要なプラットホームとなってきている(Du et al.,2011)。これらのバイオ技術製品は、食品において使用される場合、現在の規制に従って食品セクターにおいて「天然」と標示され得る(Hausler and Munch,1997)。
【0088】
例示的なカプサイシノイドとしては、これらに限定されないが、ノニバミド、N-バニリルノナンアミド、N-バニリルスルホンアミド、N-バニリルウレア、N-バニリルカルバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]-シス-単飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]二不飽和アミド、3-ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、シュードカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル、ポリゴジアール、アフラモジアール、シンナモジアール、シンナモスモライド、シンナモライド、シバムド、ノニバミド、オルバニル、N-オレイル-ホモバニルアミジア、イソベレラル、スカララジアール、アンシストロジアール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。
【0089】
以前に、脂肪酸およびバニリルアミン/バニリンの供給後に様々なカプサイシノイドが生成され得るE.coli発酵プラットホームが開発された(Chen et al.2015)。本明細書に記載のように、この系によるノニバミドの生成もまた可能である(
図2)。
【0090】
Acyl-CoAの生成:クローニング
出願人らは、ACSl-sumo-F:CGC GAA CAG ATT GGA GGT GCAACAGATAAATTTATTATTGおよびACSl-sumo-R:GTG GCG GCC GCT CTA TTA TCACTTGGTACCCTTGTACATのプライマーを使用して、ゴーストチリペッパーの緑色の果実のcDNAからACSI遺伝子を増幅した。結果として生じたPCR産物を1%アガロースゲルで精製し、直鎖pETite N-His SUMO Kan発現ベクター(Lucigen、Middleton、WI)と混合した。DNA混合物を使用して、ヒートショック(Lucigen)によってH1-コントロール10G化学的コンピテント細胞を形質転換した。遺伝子挿入を完全に配列決定し、コードされたアミノ酸配列をACSlのものと整列させた。以前に示されたように(Chen et al.,2015)、これらの2つの配列は、既知のCapsicum配列におけるIle476がゴーストペッパーACSl(本明細書に記載の配列番号1)におけるバリン残基により置き換えられる置換突然変異のため、新規のものである。ゴーストペッパーACSlの配列を使用して、アラビドプシスデータベース(http://www.arabidopsis.org)およびホモログとして特定されたLCAS4およびLCAS5をブラストした。以前に示されたように、これらの3つの配列は、66%の配列同一性および92%の配列類似性を共有する。LCAS4およびLCAS5は両方とも、脂肪酸およびグリセロ脂質代謝に関与する長鎖アシル-CoAシンセターゼとして生化学的に特徴付けられている(Shockey et al al.,2003)。近年、LCAS4は、アラビドプシスにおける花粉コート脂質の形成に必要であることが実証されている(Belza and Jessen,2005)。
【0091】
発現
出願人は、pETite N-His SUMO-ゴーストペッパーACSlを使用して、HI-Control BL21(DE3)細胞(Lucigen)を形質転換し、0.5mM IPTGにより16℃で20時間His-SUMO-ACSlの発現を誘導した。融合タンパク質をNi-NTAカラムにより精製した。ACSlは、約73.5Kdの分子量を有し、His-SUMOタグのサイズは、約12Kdである。SDS-PAGEにおけるHis-SUMO-ゴーストペッパーACSl融合タンパク質は、予測サイズ近くまで移動した。
【0092】
生成物
出願人らは、ゴーストペッパーACSl(Chen et al.,2011)の活性を測定するために、HPLCベースの方法を使用した。簡潔に説明すると、反応混合物(400μE)は、0.1Mのトリス-HCl、pH7.5、2mMのDTT、5mMのATP、10mMのMgCl2、0.5mMのCoA、0.1%のTriton、および200μMのカルボン酸を含有していた。20の精製酵素を添加することにより反応を開始し[1]、30分後に20マイクロモル酢酸を添加することにより停止した。Acclaim(登録商標)120 CI8逆相カラム(Thermo Scientific;3μ、120A、150×3mm)を使用したUltiMate(著作権)3000 LC Systems(Thermo Scientific)により、HPLCを行った。移動相は、溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(アセトニトリル)からなっていた。勾配溶出手順は以下の通りであった。0~5分、5%のB;5から9分、5~80%のBの直線勾配;9~11分、80%のB;11~12分、5%のB。流速は0.6ml/分であった。ダイオードアレイ検出器は、200~400nmの範囲でデータを収集した。基質および生成物の検出および定量化のために、ピーク面積を257nmで測定した。
【0093】
図8に示すように、ACS1は、カプリン酸(CIO)との最高活性を有する長鎖カルボン酸に対して様々な培地中で活性を有した。対照的に、ACS1は、酢酸(C2)または酪酸(C4)短鎖カルボン酸に対してはいかなる活性も示さなかった。
【0094】
次いで出願人は、ACS1活性をアッセイするための基質として、8-メチル-トランス-6-ノネン酸(6E)、カプサイシノイド生合成経路における内因性中間体またはその還元生成物、8-メチルノナン酸(8M)を使用した。
図2に示されるように、ACS1は両方の基質との活性を示し、6Eに対してより高い活性を有していた。出願人らは、生成物ピークに対して対応するHPLC分画を収集し、さらなるMS/MS特定のためにそれらをSpeedVac Concentrator上で乾燥させた。
【0095】
生成物の確認
メタノール:水:アセトニトリル緩衝液。TriVersa Nanomate(登録商標)(Advion、Ithaca、NY)を使用した直接注入に、10μEを使用した。質量分析計、LTQ -Orbitrap Velos(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を陰イオン化モードで操作した。MS調査スキャンは、300~2,000m/zの質量範囲からFT細胞内で実行した。分解能は、400m/zで60,000に設定された。CID断片化をMS/MSに使用し、検出をイオントラップで1.5m/zの単離ウィンドウで行った。断片化は、35%の正規化された衝突エネルギーで行った。以前に示されたように、MSデータは、それぞれ、8-メチル-トランス-6-ノネノイル-CoAおよび8-メチルノナノイル-CoAの分子量に一致した。
【0096】
8-メチルノナン酸に対するACS1の最適pHも調査した。アセテート、ホスフェート、トリス、およびグリシン/NaOH緩衝液を使用して、4.0~10.5のpH範囲を提供した。ACS1の光学pHは、約9.5である。したがって、出願人は、カプサイシンシンターゼの基質を提供するゴーストホットペッパー中の新規の培地/長鎖アシル-CoAシンセターゼを特定した。加えて、新規の酵素はまた、中鎖脂肪酸誘導体を作製するためのバイオ燃料産業における用途も有し得る。
【0097】
C. roseusからのCaUGT2の添加によるノルジヒドロカプサイシンの生成
本発明によれば、様々な選択されたカプサイシノイドは、選択された出発材料を使用して生成され得る。本発明はまた、特定の酵素を使用することによる特定のカプサイシノイド化合物の生成を提供する。このプロセスにより、出願人は、医薬、食品、および芳香剤用途が完全に確定され、可溶化および投薬を補助するために改変が行われ得るように、以前には不可能であった量で、特定の、および所望のカプサイシノイドを生成することができる。
【0098】
本発明によれば、Catharanthus roseusの培養細胞によるカプサイシンおよび8-ノルジヒドロカプサイシンのグリコシル化が報告されている(Shimoda et al.2007)。しかしながら、この特定の活性に関与する遺伝子は以前に特定されていない。他の研究者(Kaminaga et al.(2004))は、C.roseusからのUDP-グルコシルトランスフェラーゼ、CaUGT1およびCaUGT2をコードする2つの遺伝子を特定し、それらがクルクミンからのクルクミンモノグルコシドの形成、およびクルクミンモノグルコシドからクルクミンジグルコシドへの変換を触媒することを実証したが、カプサイシノイド活性については言及していない。実際には、これらの著者は、カプサイシンに対するCaUGT2の活性も試験したが、それはカプサイシンをグリコシル化できないことが分かった(Kaminage et al.,2004)。しかしながら、本発明によれば、CaUGT2がカプサイシングルコシドの形成を触媒できることが、in vitroおよびin vivoの両方において実証された。
【0099】
本発明によれば、Catharanthus roseus CaUGT2遺伝子(GenBank:AB159213.1)が合成され、E.coliに対してコドン最適化され、pDEST17ベクター内にクローニングされた(表5を参照されたい)。得られたpDEST17-CaUGT2プラスミドを使用して、BL21 Star(DE3)コンピテント細胞を形質転換した。形質転換培養物を、まずOD600=0.4までLB(AMP+)培地中で37℃で成長させ、次いで16℃に冷却し、1mMのIPTGを添加して、CaUGT2タンパク質の発現を誘導した。誘導から16時間後に細胞を遠心分離によって回収し、可溶性タンパク質を B-PER(商標)Bacterial Protein Extraction Reagent(Thermo Fisher Scientific)により製造者の説明に従って抽出し、Ni-NTA親和性クロマトグラフィーによりさらに精製した(
図6)。この改変酵素の使用は、対象となるカプサイシノイドを生成し得ることが確定された(
図7~10)。
【0100】
加えて、カプサイシン-gluおよびノニバミド-gluの生成のために、それぞれCaUGT2を過剰発現するBL21 Star(DE3)培養物を約5mg/Lの力価で使用して、カプサイシンおよびノニバミドのin vivoバイオ形質転換を行った。さらに、7M-CPの脂肪酸鎖を、脂肪酸、7-メチルオクタン酸(7M)またはイソペラルゴン酸から誘導した。7Mをこの培養系に供給すると、7M-CPが生成された(
図9および10)。
図9に示されるように、7M-CPの保持時間(10.077分)は、C9-CPの保持時間(10.190分)とは若干異なり、それらのUVスペクトルがほぼ同一である(
図9中の挿入写真を参照されたい)。培養物中の7M-CPおよびC9-CPのレベルも定量化された(
図10)。7M-CPの力価は、C9-CPの力価より若干低い。
【0101】
カプサイシノイドの生成
図2に示されるように、我々の培養系は、CPの力価と同様のCP9力価を有していたが、CP8およびCP10の力価が若干低かった。HPLCでは、CP8(N-バニリオクタミド)、CP9(ノニバミド)またはCP10(N-バニリルデカンアミド)は、それぞれ10.9、11.3および11.8分の保持時間を有していた。しかしながら、それらのUVスペクトルは互いに非常に類似している(
図3)。CP9の保持時間およびUVスペクトルは、ノニバミド標準のものと非常に良好に一致する(
図4)。
【0102】
Acclaim(登録商標)120 C18逆相カラム(Thermo Scientific;3μ、120Å、150×3mm)を使用したDionex-UltiMate(登録商標)3000 LC Systems(Thermo Scientific)により、HPLCを行った。移動相は、溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(アセトニトリル)からなっていた。勾配溶出手順は以下の通りであった。0~5分、5%のB;5から9分、5~80%のBの直線勾配;9~11分、80%のB;11~12分、5%のB。流速は0.6ml/分であった。ダイオードアレイ検出器は、200~400nmの範囲でデータを収集した。基質および生成物の検出および定量化のために、ピーク面積を280nmで測定した(
図3および4)。
産業上の利用可能性/技術分野の記述
【0103】
本開示は、食品、医薬、および薬理学的産業における利用可能性を有する。本開示は、一般に、改変微生物株を介したカプサイシノイドの生合成生成のための方法に関する。
明細書中で参照される表
表1.ゴーストチリペッパーからクローニングされたACS1およびCSのアミノ酸配列。
上記のタンパク質配列において、ACSは、配列番号1とみなされ、CSは、配列番号2とみなされるものとする。
表1(続き)ゴーストチリペッパーからクローニングされたACSlおよびCSの核酸配列。
上記の核酸配列において、ACSは、配列番号3とみなされ、CSは、配列番号4とみなされるものとする。
表2.
表3.特定のカプサイシノイドの生成のための供給スケジュール
表4.カプサイシノイド試料の
13C同位体分析
*実験で使用されるチャイニーズファーンから採取される
表5.コドン最適化CaUGT2の配列
上記のCaUGT2の核酸およびアミノ酸配列において、DNAは、配列番号5とみなされ、タンパク質配列は、配列番号6とみなされるものとする。
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