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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】筐体壁を有する酸素供給器
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20220405BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61M1/16 120
A61M1/18 525
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019506165
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 DE2017000162
(87)【国際公開番号】W WO2018028727
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】102016009599.7
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016011946.2
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517259221
【氏名又は名称】ゼニオス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ヨッフル,クヌート
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,ゼバスチャン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03112746(US,A)
【文献】特表2013-532538(JP,A)
【文献】特開2009-172393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/18
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素供給器(10)であって、血液入口(2)、血液出口(3)、ガス入口(4)およびガス出口(5)を有する筐体空間(12)を画定する筐体壁(11)と、前記筐体空間(12)を通って流れる血液の温度を制御するための加熱要素とを有する酸素供給器(10)において、
前記加熱要素が、放射源と、前記放射源からの放射を熱に変える受け器(13)とを有し、前記受け器(13)の吸収能力を調整された方法で変更できることを特徴とする、酸素供給器(10)。
【請求項2】
前記放射源(30)が赤外光(31)を放出し、前記受け器(13)が、黒っぽい、好ましくは艶消し黒色の、表面(14)を有することを特徴とする、請求項1に記載の酸素供給器。
【請求項3】
前記放射源(30)の波長を調節可能であることを特徴とする、請求項2に記載の酸素供給器。
【請求項4】
前記放射源(30)が誘導コイルを有し、前記受け器(13)が誘導可能な材料を有することを特徴とする、請求項1に記載の酸素供給器。
【請求項5】
前記放射源(30)を調整された方法で位置合わせできることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項6】
前記放射源(30)がファンを有することを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項7】
前記放射源(30)が、前記筐体空間(12)から離れて設けることができる装置であることを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項8】
前記放射源(30)が筐体ホルダ上に配置されていることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項9】
前記放射源(30)が、前記筐体空間(12)と同心状に、好ましくは前記筐体空間(12)内で径方向に配置されていることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項10】
前記受け器(13)が前記筐体壁(11)に配置されていることを特徴とする、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項11】
前記受け器(13)が前記筐体空間(12)内に配置されていることを特徴とする、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項12】
前記酸素供給器が、特に中空繊維(17)のような膜を有することを特徴とする、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項13】
少なくとも1つの温度センサ(24)を有することを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項14】
温度調整装置(25)を有することを特徴とする、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項15】
前記温度調整装置(25)が制御盤(26)に配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の酸素供給器。
【請求項16】
前記温度調整装置(25)が、前記受け器(13)の温度を様々な部位において個々に調節または調整することを特徴とする、請求項14または15に記載の酸素供給器。
【請求項17】
過熱に際して用いる自動遮断装置を有することを特徴とする、請求項1~16のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項18】
前記受け器(13)が、前記筐体空間(12)内の様々な部位に異なる加熱出力をもたらすことを特徴とする、請求項1~17のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項19】
前記受け器(13)が、前記酸素供給器の様々な部位に配置できる複数の受け器部分(28、29、30)を有することを特徴とする、請求項1~18のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項20】
前記受け器(27)が、互いに別々に制御できる複数の受け器部分(28、29、30)を有することを特徴とする、請求項18または19に記載の酸素供給器。
【請求項21】
前記受け器(13)が、前記筐体空間(12)を通って流れるガスの温度も制御するように、前記酸素供給器内で前記ガス入口(4)と前記ガス出口(5)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1~20のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項22】
前記筐体壁(11)が、外部環境につながる4つだけの流体通路(2、3、4、5)を有することを特徴とする、請求項1~21のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項23】
前記受け器(13)の一部が配置される少なくとも1つのコネクタを有することを特徴とする、請求項1~22のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項24】
前記受け器が、前記受け器(13)からの熱を前記筐体空間(12)内に分散するための熱伝導装置を有することを特徴とする、請求項1~23のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項25】
前記筐体空間内を流れる血液を遮断するための遮断層を有することを特徴とする、請求項1~24のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項26】
前記筐体空間内を流れる血液からの熱放射を反射するように反射層を有することを特徴とする、請求項1~25のうちいずれか一項に記載の酸素供給器。
【請求項27】
前記遮断層および前記反射層の少なくともいずれかが透明であるか、または部分的に透明であることを特徴とする、請求項25または26に記載の酸素供給器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液入口、血液出口、ガス入口およびガス出口を有する筐体空間を画定する筐体壁と、筐体空間を通って流れる血液の温度を制御するための加熱要素とを有する酸素供給器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素供給器は、数日間続く心肺治療中、または手術中に主に使用する医療用ガス交換器である。別の用途は、例えば透析である。ガス交換に加えて、これらの酸素供給器は、酸素供給器の筐体空間を通って流れる血液の温度を制御する可能性も往々にしてもたらす。一般に、酸素供給器内の血液は加熱される。これは、体外循環内、すなわち患者の体外の血液の温度が時間とともに下がり、患者が低体温になるためである。この加熱に加えて、体温を下げるために心臓手術中に血液温度を下げることも可能である。
【0003】
ヒータークーラー(HC装置)が、手術中またはガス交換器を用いるより長期の治療セッション中に、患者の血液温度および体温を調整するために使用される。ヒータークーラー(HC装置)は、ホースを介して酸素供給器に接続される外部装置である。HC装置内では、水が金属支柱を通過し、加熱または冷却される。水は次いで、酸素供給器に導かれ、血液が通って導かれる、酸素供給器内の中空繊維で作られた熱交換器マット、または特に主に金属製の溝を通って流れる。そのような酸素供給器は、欧州特許第765683号明細書に記述されている。
【0004】
そのような酸素供給器は、実用性に秀でている。しかし、使用されるヒータークーラー装置は、使用時に汚れることがある水槽と共に使用され、周囲の空気を汚すことがある。HC装置は、水槽および冷却機器のせいで、非常に重く、動かせない。HC装置は、定期的に清掃されなければならない。これは、HC装置が、酸素供給器の近くで、したがって、病院内、例えば、手術室内または集中治療室内で使用されるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第765683号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、酸素供給器をさらに発展させるという目的に基づく。この目的は、加熱要素が、放射源と、放射源の放射を熱に変える受け器とを有する、汎用の酸素供給器によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体搬送管を用いた、血液入口と血液出口との間における酸素供給器内の加熱が、複雑な追加装置を必要とする、という知見に基づく。加熱要素が放射源および受け器を有するので、HC装置を省略することができ、放射源のために唯一の電圧供給源が必要とされる。
【0008】
血液入口と血液出口との間では、プライミング液などの血液代用溶液、または薬剤を添加した緩衝液などの医療溶液のような、血液以外の液体も、酸素供給器内で加熱することができる。血液温度という用語が以下で使用されるとき、この用語は、そのような液体も指す。
【0009】
放射源は、血液温度を体温の範囲内、よって36~38℃に保つことを可能にする。装置のいかなる箇所でも温度が40℃を超えないように注意を払わなければならない。血液が受け器を冷却するので、受け器の加熱が、血流に応じて35℃~60℃で生じる。
【0010】
第1の変形は、放射源が赤外光を放出することと、受け器が黒っぽい、好ましくは艶消し黒色の、表面を有することとを規定する。黒っぽい表面は、血液自体によって形成できるので、赤外光放射は、血液に当たるときに熱エネルギーを血液に放出する。よって、血液の黒っぽい表面は、受け器を形成する。加えてまたは代わりに、受け器は、放射源と血液との間に配置された黒っぽい表面を有し、それ自体を加熱させた後に血液を加熱することができる。しかし、赤外光が血液を通って受け器表面に当たることにより、一方では血液を直接加熱し、他方では加熱された受け器表面を介して血液を間接的に加熱するように、受け器表面を配置することもできる。
【0011】
スペクトル範囲10-3m~7.8*10-7m(1mmおよび780nm)は、赤外と呼ばれる。これは、周波数範囲3*1011Hz~約4*1014Hz(300GHz~4000THz)に相当する。近赤外NIR(波長0.78~1.4μmを伴うIR-A、および波長1.4~3.0μmを伴うIR-B)、ならびに中赤外NIR(波長3~50μmを伴うIR-C)が特に好適である。
【0012】
ここで、赤外光の浸入度は、放射の波長および当たる表面の材料特性、ならびに、必要であれば、筐体部品によるフィルタリングおよび放射源と受け器との間に位置する血流に依存する。
【0013】
酸素供給器は、一般に、ポリウレタンなどの透明材料で作られる。このため、筐体の外側壁を通って放射する赤外線の供給源が筐体の外部に配置される、従来技術の酸素供給器が使用される。
【0014】
このタイプの受け器は、血液を加熱するように任意のタイプの医療ガス交換器に組み込むことができる。このために、黒っぽい、特に熱放射吸収性の、材料で作られた表面が、酸素供給器上または酸素供給器内に形成されるか、または、酸素供給器の筐体内に配置されたフィルムが使用される。筐体内における受け器の対称配置に加えて、多くの体積流を伴う領域に特に大きな受け器表面を設けることを可能にする、流れに適応した配置も使用することができる。
【0015】
酸素供給器の内側の血液の状態を医者が視覚的に確認できる透明領域を、酸素供給器がなお有する場合が有利である。
【0016】
赤外線放射器の強度を変化させるために、赤外線放射器が、好ましくは加熱強度を調節するように個々に制御できる、複数の調光可能なランプ、イオン、もしくはレーザ、またはフィルタなどの複数の放射源を有することが提案される。したがって、一方では、放射源の波長を調節できる場合が有利である。ここで、波長は、異なる浸入度が達成されるようにアルゴリズムによって変化させることができる。
【0017】
他方では、受け器の吸収能力を調整された方法で変更できる場合が有利である。このことは、例えば、受け器の色を変えたり、放射源に対する受け器の位置を変えたりすることにより、達成することができる。このために、赤外光をガス交換器の異なる箇所に導いたり、多少の赤外光を受け器で吸収したりするために、例えば、フラップ機構または指向性スクリーンを設けることができる。特に、時間に応じて酸素供給器の異なる領域を照射するような方法で、放射源による照射を位置合わせすることができる。このことは、あちらこちらに移動する形態の照射をもたらす。自動調整の場合、これらのデータは、制御盤に報告され、加熱出力を制御または調整するために使用される。
【0018】
代替的な実施形態は、放射源が誘導コイルを有することと、受け器が誘導可能な材料で作られることとを規定する。銅または鉄合金が、誘導可能な材料の例である。この手段により、誘導式加熱が可能となる。
【0019】
例えば、放射源は、高周波交番磁場を発生させる高周波リッツ線からなる大型の平坦な単一層コイルとすることができる。コンデンサと共に、このコイルは、1または複数の切換えトランジスタによって共振状態になる浮遊回路を形成する。出力管理は、トランジスタ回路、励磁周波数制御、およびパルス幅制御などの様々な回路コンセプトを用いて実施することができる。誘導式加熱の格別な利点は、出力が非常に正確に調節される点である。
【0020】
赤外光を有する放射源と同様に、放射源の周りの指向性スクリーンまたは半球状保護スクリーンも、誘導コイルの形態の放射源について規定されることができる。このことは、磁気散乱または干渉放射の防止を可能にする。この手段により、交番磁場または電場が、空間的に画定されたままとなる。
【0021】
過熱を避けるために、放射源はファンを有することができる。これらの手段は、酸素供給器および受け器を所望の温度へと非常に正確に調整することを可能にする。
【0022】
受け器は、筐体空間内を流れる血液を加熱するように酸素供給器の外側壁に配置することができる。しかし、受け器が筐体空間内に配置される場合が特に有利である。このことは、大きな受け器表面の使用、したがって、受け器表面と血液との小さな温度差を可能にする。このことは、血液の損傷を防止する。
【0023】
しかし、用途に応じて、受け器は、筐体壁に配置することもできる。このことは、単純な構造形態を可能にし、特に、平行に置かれた平坦な中空繊維マットの場合に、受け器から血液への良好な伝熱を可能にする。
【0024】
特に膜のような半透過性材料が、酸素供給器のガス領域と血液領域との間に通常配置される。これらの膜は、平坦フィルムまたは中空繊維とすることができる。
【0025】
平坦膜または管状膜を酸素供給器内に保持するために、プラスチックなどのポッティング材料が使用される。したがって、酸素供給器が、流体ラインを保持するためのポッティング層を有し、受け器が、このポッティング層に配置され、または少なくともこのポッティング層にも配置される場合が有利である。
【0026】
血液を加熱するときには、血液が特定の領域でのみ過熱される場合でも、血液の損傷が生じないように注意を払わなければならない。したがって、酸素供給器が少なくとも1つの温度センサを有することが提案される。いかなる領域でも温度が高すぎないことを確実にするように、温度センサが、酸素供給器内の様々な箇所に設けられる場合が、特に有利である。したがって、温度センサも、可能であれば、少なくとも、血流速度が筐体空間の他の領域よりも小さい領域か、または、筐体空間内の平均血流速度よりも小さい領域、したがって過熱のリスクがある領域に配置されるべきである。
【0027】
受け器の温度は、放射源に加えられる電圧によって変化させることができ、したがって、酸素供給器が温度調整装置を有する場合が有用である。
【0028】
温度が、設定された時間インターバルで1または複数の箇所で計測される場合が有利である。周期は、アルゴリズムを用いて指定することができる。この手段により、過熱リスクを避けることができる。このことは、パルス幅変調と呼ばれる。
【0029】
多くの場合、酸素供給器は、例えば、酸素供給器を通るガスまたは血液の流れを制御するために使用できる制御盤に接続される。そのような制御盤は、酸素供給器の使用を制御または調整するための制御電子機器を含む。放射源および/または受け器も、そのような制御盤によって制御することができ、この作動は、血液またはガスの流れおよび酸素供給器内の温度など、制御盤上で入手可能な他のデータまたは処理パラメータに応じて調整することができる。
【0030】
特に有利な実施形態の変形は、温度調整により、受け器の様々な部位の温度が個々に調節または調整されることを規定する。このことは、酸素供給器内の典型的な流速に基づいて、様々な部位で異なる加熱強度をもたらすことを可能にする。
【0031】
このために、受け器が筐体空間内の様々な部位で異なる加熱出力をもたらすことが規定される。加熱出力は、血流、血液速度、ガス流およびガス速度によって変化させることができる。
【0032】
実施形態の一変形は、酸素供給器内の様々な部位に配置できる複数の受け器部分を受け器が有することを規定する。これらの受け器部分は次いで、酸素供給器内の特定の加熱強度分布を達成し、必要であれば、酸素供給器の作動中に同分布を変更するように、互いに独立して個々に制御することができる。
【0033】
しかし、互いに独立して制御できる複数の受け器部分を有する受け器を規定することもできる。
【0034】
筐体空間を通って流れるガスの温度も制御するように酸素供給器内でガス入口とガス出口との間に受け器を配置することにより、追加の効果が達成される。特に、このことは、結露を防止する。
【0035】
酸素供給器の単純な実施形態は、外部環境につながる4つだけの流体通路を有する筐体壁を酸素供給器が有することを規定する。このうち、2つの流体通路をガスの入口および出口のために使用することができ、2つの流体通路を血液の入口および出口のために使用することができる。
【0036】
コネクタが、酸素供給器へのホースの接続可能性を識別する。そのようなコネクタ内に加熱要素の一部を配置することができる。
【0037】
酸素供給器が、加熱要素に熱を伝導するための熱伝導装置を有する場合が有利である。例えば、加熱要素が加熱可能な金属部品として設計される場合、同加熱要素は、表面領域を増やしたり、血液と金属部品との接触を防止したりするように、熱伝導装置によって取り囲むことができる。この熱伝導装置は次いで、加熱要素から、血液と接触する表面領域、好ましくは加熱要素の表面領域よりも大きな表面領域に熱を伝える。そのような表面領域は、格子またはフィルムの表面領域とすることができる。
【0038】
熱伝導装置は、特に、筐体空間内の加熱要素からの熱の分散を可能にする役割を果たすべきである。
【0039】
有利な実施形態の変形は、酸素供給器が、筐体空間内を流れる血液を遮断するように遮断層または真空層を有することを規定する。遮断層および反射層も、酸素供給器を冷やすことによって過熱を避けるように熱を再び容易に解放するように、開放可能に設計することができる。加えて、層は、部分的に配置することもでき、または部分的に配置する可能性を有することができる。
【0040】
筐体空間内を流れる血液からの熱放射を血液に反射して戻し、したがって酸素供給器からの熱放射の放出も最小化するために、酸素供給器が反射層を有することが提案される。そのような反射層は、例えば、金属フィルムまたは光沢面とすることができる。
【0041】
酸素供給器内の血流の観察を可能にするために、遮断および/または反射層が透明または少なくとも部分的に透明である場合が有利である。このために、例えば、密接に噛み合う格子、穴開きフィルム、または透明窓領域付きのフィルムを設けることができる。
【0042】
特に筒状の酸素供給器に適した単純な実施形態の変形が、酸素供給器が、ドーム状の保持要素を有する中央開口を有することを規定する。ドーム状の保持要素は次いで、筐体空間内を流れる血液を加熱するように加熱要素、特に放射源も有することができる。
【0043】
方法に関して、本発明の基になる目的は、酸素供給器の加熱要素からの熱出力を調整するための方法であって、酸素供給器を通る血液の流れ、および還流を統御するポンプの出力が計測され、それに応じて加熱出力が調節される、方法によって達成される。受け器は、互いに別々に制御できる複数の受け器部分を有することができ、受け器部分は、受け器部分における血液の温度と、受け器部分の温度との温度差が所定値を超えないように制御される。これらの方法は、先行する請求項のうちいずれか一項に記載の酸素供給器に特に適している。
【0044】
本発明の酸素供給器の実施形態の例が、図に示され、以下でより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】従来技術の酸素供給器を血液、ガスおよび水の流れと共に示す図である。
図2】赤外光を照射された酸素供給器を模式的に示す図である。
図3図2に示した酸素供給器の平面図である。
図4】積層膜繊維マットおよび半透過性の印刷受け器表面を有する酸素供給器を模式的に示す図である。
図5】別々に制御できる積層マットおよび受け器部分を有する酸素供給器を模式的に示す図である。
図6】アルゴリズムの構成要素の相互作用を模式的に示す図である。
図7】時間に対してプロットされた平均温度を模式的に示す図である。
図8】時間に対してプロットされた第1の部位の平均温度を模式的に示す図である。
図9】時間に対してプロットされた第2の部位の平均温度を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1に示す酸素供給器1は、血液入口2および血液出口3を有する。ガス供給が、ガス入口4およびガス出口5によって実現される。熱交換器内には、中空繊維が設けられ、そこを通って水が径方向内側領域を流れ、半透過性の中空繊維が設けられ、そこを通ってガスが径方向外側領域を流れる。この手段により、水入口8から入り水出口9から出る水により、径方向内側領域で加熱が生じ、径方向外側領域7でガス交換が生じる。そのような酸素供給器のより詳細な説明については、欧州特許第765683号明細書が参照される。
【0047】
図2に模式的に示す酸素供給器の場合、基本構造が実質的に保たれており、水入口8、水出口9、および水が通って流れる中空繊維が省略されている。酸素供給器10は、筐体空間12を取り囲む筐体壁11を有する。図1に示したように、この筐体空間12は、血液入口2および血液出口3、ならびにガス入口4およびガス出口5を有する。筐体壁11に配置された半透過性の艶消し黒色印刷面14が、フィルムの形態で筐体空間12に均一に巻き回された受け器13として機能する。フィルム14は、放射源30が赤外光31を放出するように電圧が電気端子接続部15、16に加えられるときに加熱される、受け器を形成する。
【0048】
酸素供給器は、図1図3の実施形態の例と同じように、筐体空間12内に配置された巻回中空繊維マット17、または、図4および図5に示すように、2つのプレート19および20の間に配置された中空繊維膜積層マット18を有することができる。図4に示した実施形態の例において、半透過性の艶消し黒色印刷面21が、上側プレート20に設けられる。放射源22が、赤外線を印刷面21に導くために電気端子接続部に接続される。
【0049】
図5は、2つのプレート19および20の間にある中空繊維マット27を示しており、その上側プレート20は、半透過性の艶消し黒色印刷面21を有する。模式的に3つの受け器部分28、29、30が示されており、同部分は、酸素供給器の様々な部位で異なる量の熱が発生するように、異なる放射吸収能力を有することができ、または異なる方法で照射されることができる。特に、受け器部分28、29および30は、受け器部分と受け器部分における血液温度との特定の温度差を超過しないように、制御することができる。
【0050】
図3は、制御盤26に実装された温度調整装置25に接続された温度センサ24を模式的に示している。
【0051】
図6図9には、時間インターバルによるアルゴリズム制御を最適化された形態で示している。モデルが、現実のガス交換器から決定される。計測箇所部位用の酸素供給器モデル114として図6に描かれた、このガス交換器モデルでは、計測箇所が定義されており、計算用のパラメータとして必要な材料特性が決定される。温度は、全ての計測箇所で計測することができる。
【0052】
ECMOシステム内に既に存在するセンサ、血液およびガスのパラメータ(KD)が、制御盤に供給される。所望の温度が次いで、制御盤の値(KD)を考慮して、計測温度と比較される。このことは、各計測箇所および各加熱要素について個々に行われる。結果として、様々な公差が、計測値と所望の温度との間に生じる。血液に対する障害が可能な限り少ない所望の温度を達成した後に維持するために、適切な加熱周期が、加熱の発生頻度および強度と共に、各加熱要素について全てのパラメータから選択される。これらの周期は、テーブルに記憶して、その後の酸素供給器の制御を容易にすることができる。
【0053】
図6に示したアルゴリズムにおいて、使用者101は、制御盤103に入力される所望の温度102を設定する。血流、ガス流および圧力パラメータ104も、制御盤に入力される。制御盤は、酸素供給器の異なる計測箇所における平均温度106、107および108を決定するように温度計測105を開始する。所望の温度(WT)と様々な部位における平均計測温度との比較109は、差の値(AG)をもたらす。この値は、様々な部位にて決定された温度偏差110、および、血流などの制御盤データ(KD)と区別される。このことは、温度偏差(AT)と制御盤データ(KD)との比較(AG)に基づく、加熱要素の個々の調整111の基礎的条件をもたらす。加熱要素112は、これらの値によって制御することができる。加えて、個々の調整は、テーブルから選択されるとともに計測パラメータから生じる加熱アルゴリズム113によっても統御することができる。加えて、制御プロセスを統御するために、加熱アルゴリズムに加えて、または加熱アルゴリズムに代えて、受け器(色、位置、切換えなど)の任意の変更を用いることができる。
【0054】
加熱要素112の熱出力は、温度計測プロセスによって計測される温度105に影響を及ぼし、計測温度へのフィードバックをもたらす。
【0055】
図7は、時間(秒)に対して温度(℃)をプロットした座標系で所望の温度120を示している。ラムダ値は、材料定数の影響を受けるとともに、吸収される温度ピークをもたらす、熱伝導率を示す。X、X、XおよびXは、温度計測箇所122の例である。
【0056】
図8および図9は、時間に対してプロットした、2つの計測箇所の温度プロファイルを示している。図8において、第1の計測箇所における温度プロファイル123は、温度124の付近で変動し、デルタT(ΔT)125を規定し、時間に対して波線としてプロットされている。同様に、図9において、第2の部位における現在の温度126は、平均温度127に対して記録され、温度偏差デルタT(ΔT)128をもたらす。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9