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特許7053572複数勾配エコーMRIにおける場変動の遡及的補正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】複数勾配エコーMRIにおける場変動の遡及的補正
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 311
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019506522
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017069596
(87)【国際公開番号】W WO2018029063
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】62/372,486
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】メイネケ ヤン ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】キャッシャー ウーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ティム
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0314293(US,A1)
【文献】国際公開第2016/076076(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0102879(US,A1)
【文献】国際公開第2012/169349(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0221961(US,A1)
【文献】特開2014-091051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴(MR)画像再構成方法を実施するためにコンピュータによって可読及び実行可能な命令を記憶した非一時的記憶媒体であって、前記MR画像再構成方法は、
再構成されたMR画像を生成するために複数勾配エコーMR撮像データの反復再構成を実施するステップであって、前記反復再構成が、前記複数勾配エコーMR撮像データと前記再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用し、前記モデルがパラメータ化磁場変動成分を含む、実施するステップと、
前記反復再構成を前記実施するステップの間に、前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分のパラメータに関して前記再構成されたMR画像の偏導関数に依存するコスト関数を最適化するために、前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータを更新するステップと
を有し、
前記パラメータ化磁場変動成分が、3つの直交空間軸の各々に沿った線形変動として磁場変動の空間変動をモデル化する、非一時的記憶媒体。
【請求項2】
前記パラメータ化磁場変動成分が
【数16】
を含み、ここで、Tがk空間ロケーションk(t)における前記複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(r,k(t))が前記パラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む、請求項1に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項3】
前記複数勾配エコーMR撮像データと再構成されたMR画像とをリンクする前記モデルが、
【数17】
を含み、
ここで、f(r,T)が前記再構成されたMR画像であり、s(r)及びその複素共役
【数18】
がMR受信コイル感度をモデル化し、FTがフーリエ変換を示し、FT-1が逆フーリエ変換を示し、
【数19】
が、磁場変動によって破損した前記再構成されたMR画像である、請求項2に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項4】
磁気共鳴(MR)画像再構成方法を実施するためにコンピュータによって可読及び実行可能な命令を記憶した非一時的記憶媒体であって、前記MR画像再構成方法は、
再構成されたMR画像を生成するために複数勾配エコーMR撮像データの反復再構成を実施するステップであって、前記反復再構成が、前記複数勾配エコーMR撮像データと前記再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用し、前記モデルがパラメータ化磁場変動成分を含む、実施するステップと、
前記反復再構成を前記実施するステップの間に、前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分のパラメータに関して前記再構成されたMR画像の偏導関数に依存するコスト関数を最適化するために、前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータを更新するステップと
を有し、
前記パラメータ化磁場変動成分が、空間的に均一な時間磁場変動として磁場変動をモデル化し、前記パラメータ化磁場変動成分が
【数20】
を含み、ここで、Tがk空間ロケーションkにおける前記複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(k)が前記パラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む、非一時的記憶媒体。
【請求項5】
前記複数勾配エコーMR撮像データと再構成されたMR画像とをリンクする前記モデルが、
【数21】
を含み、
ここで、
【数22】
が前記複数勾配エコーMR撮像データであり、
【数23】
がMR受信コイル感度をモデル化し、FT-1が逆フーリエ変換を示し、f(r,T,ω(k))が磁場変動によって破損した前記再構成されたMR画像である、請求項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項6】
前記パラメータ化磁場変動成分が、前記複数勾配エコーMR撮像データを生成したMR撮像データ取得の単一の繰返し時間(TR)にわたって時間的に一定であるものとして磁場変動をモデル化する、請求項1からのいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項7】
前記コスト関数が総変動(TV)コスト関数を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項8】
前記更新するステップが、前記コスト関数を最適化するために前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータを更新するためにBroyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno(BFGS)アルゴリズムを適用するステップを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項9】
記憶された前記命令が、
マップを生成するために前記再構成されたMR画像を使用するR マッピングと、
感受性強調撮像(SWI)画像を生成するために前記再構成されたMR画像を使用する感受性強調撮像(SWI)と、
定量的感受性マッピング(QMS)マップを生成するために前記再構成されたMR画像を使用する定量的感受性マッピング(QMS)と
のうちの1つ又は複数を実施するために、前記コンピュータによって更に可読及び実行可能である、請求項1からのいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータと、
再構成された磁気共鳴(MR)画像を生成するために複数勾配エコーMR撮像データの反復再構成を実施するステップを有するMR画像再構成方法を実施するために前記コンピュータによって可読及び実行可能な命令を記憶した非一時的記憶媒体であって、前記反復再構成が、前記複数勾配エコーMR撮像データと前記再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用し、前記モデルが、前記反復再構成の間に更新されるパラメータを含むパラメータ化磁場変動成分を含む、非一時的記憶媒体と
を備え、
前記反復再構成が、前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータに関して前記再構成されたMR画像の偏導関数に依存するコスト関数を最適化するために、前記反復再構成の間に前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータを更新することを含み、
前記パラメータ化磁場変動成分が、3つの直交空間軸の各々に沿った線形変動として磁場変動の空間変動をモデル化する、MR画像再構成デバイス。
【請求項11】
前記パラメータ化磁場変動成分がω(r,k(t))Tの関数を含み、ここで、Tがk空間ロケーションk(t)における前記複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(r,k(t))が前記パラメータ化磁場変動成分のパラメータを含み、前記パラメータ化磁場変動成分がω(r,k(t))Tの指数関数を含む、請求項10に記載のMR画像再構成デバイス。
【請求項12】
前記パラメータ化磁場変動成分が、3つの直交空間軸の各々に沿った線形変動を含むものとしてω(r,k(t))をモデル化する、請求項11に記載のMR画像再構成デバイス。
【請求項13】
コンピュータと、
再構成された磁気共鳴(MR)画像を生成するために複数勾配エコーMR撮像データの反復再構成を実施するステップを有するMR画像再構成方法を実施するために前記コンピュータによって可読及び実行可能な命令を記憶した非一時的記憶媒体であって、前記反復再構成が、前記複数勾配エコーMR撮像データと前記再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用し、前記モデルが、前記反復再構成の間に更新されるパラメータを含むパラメータ化磁場変動成分を含む、非一時的記憶媒体と
を備え、
前記反復再構成が、前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータに関して前記再構成されたMR画像の偏導関数に依存するコスト関数を最適化するために、前記反復再構成の間に前記モデルの前記パラメータ化磁場変動成分の前記パラメータを更新することを含み、
前記パラメータ化磁場変動成分が、空間的に均一な時間磁場変動として磁場変動をモデル化し、前記パラメータ化磁場変動成分が(ω(k))Tの関数を含み、ここで、Tが、k空間ロケーションkにおける前記複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(k)が前記パラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む、MR画像再構成デバイス。
【請求項14】
前記パラメータ化磁場変動成分が、前記複数勾配エコーMR撮像データを生成したMR撮像データ取得の各繰返し時間(TR)にわたって時間的に一定であるものとして磁場変動をモデル化する、請求項10から13のいずれか一項に記載のMR画像再構成デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、一般に、磁気共鳴(MR)撮像技術、勾配エコー(GRE)MR撮像技術、及びR マッピング、感受性強調撮像(SWI:susceptibility weighted imaging)、又は定量的感受性マッピング(QMS:quantitative susceptibility mapping)など、関係する撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
勾配エコー(GRE)磁気共鳴(MR)撮像技法は、比較的短い取得時間において高解像度3次元(3D)データを有利に取得する。しかしながら、GREシーケンスは180°リフォーカシング無線周波数パルスがなく、したがって、磁場不均質性に敏感である。オフ共鳴効果に対する敏感性のために、呼吸又は他の対象の動きによって誘起される生理的変動は、関心組織がスキャンの持続時間の間静止したままである場合でもアーティファクトにつながることがある。これは、特に、感受性強調撮像(SWI)、定量的感受性マッピング(QMS)、又はR マッピングなど、GREベースの撮像技法において通常使用されるような長いエコー時間、たとえば、約数十ミリ秒において当てはまる。磁場変動は、それらが位相符号化の間に時間的に変動するので、追加の測定値を使用するために補正され得る。しかし、これは、追加のハードウェアを追加すること、及び/又はナビゲータエコーを追加することなど、取得シーケンスに追加を行うことを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下に、新規の改善されたシステム、デバイス、及び方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの開示される態様では、非一時的記憶媒体は、磁気共鳴(MR)画像再構成方法を実施するためにコンピュータによって可読及び実行可能な命令を記憶する。再構成されたMR画像を生成するために、複数勾配エコーMR撮像データの反復再構成が実施される。反復再構成は、複数勾配エコーMR撮像データと再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用する。モデルは、パラメータ化磁場変動成分を含む。反復再構成の実施の間に、モデルのパラメータ化磁場変動成分のパラメータは、モデルのパラメータ化磁場変動成分のパラメータに関して再構成されたMR画像の偏導関数に依存するコスト関数を最適化するために更新される。いくつかの実施形態では、パラメータ化磁場変動成分は、
【数1】
を含み、ここで、Tは、k空間ロケーションk(t)における複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(r,k(t))はパラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む。いくつかの実施形態では、パラメータ化磁場変動成分は、空間的に均一な時間磁場変動として磁場変動をモデル化し、パラメータ化磁場変動成分は、
【数2】
を含み、ここで、Tは、k空間ロケーションkにおける複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(k(t))はパラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む。いくつかの実施形態では、パラメータ化磁場変動成分は、複数勾配エコーMR撮像データを生成したMR撮像データ取得の単一の繰返し時間(TR)にわたって時間的に一定であるものとして磁場変動をモデル化する。
【0005】
別の開示される態様では、MR画像再構成デバイスは、コンピュータと、MR画像再構成方法を実施するためにコンピュータによって可読及び実行可能な命令を記憶した非一時的記憶媒体とを備える。本方法では、再構成されたMR画像を生成するために、複数勾配エコーMR撮像データの反復再構成が実施される。反復再構成は、複数勾配エコーMR撮像データと再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用する。モデルは、反復再構成の間に更新されるパラメータを含むパラメータ化磁場変動成分を含む。いくつかの実施形態では、パラメータ化磁場変動成分はω(r,k(t))Tの指数関数又は他の関数を含み、ここで、Tは、k空間ロケーションk(t)における複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(r,k(t))はパラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む。いくつかの実施形態では、パラメータ化磁場変動成分は、空間的に均一な時間磁場変動として磁場変動をモデル化し、たとえば、パラメータ化磁場変動成分はω(k(t))Tの関数を含み、ここで、Tは、k空間ロケーションkにおける複数勾配エコーMR撮像データのエコー時間であり、ω(k(t))はパラメータ化磁場変動成分のパラメータを含む。MR画像再構成デバイスは、コンピュータと動作可能に接続されたディスプレイを更に備え、記憶された命令は、定量的感受性マッピング(QMS)を実施し、ディスプレイ上にQMSマップを表示するために、コンピュータによって更に可読及び実行可能であり、並びに/又はディスプレイ上に再構成されたMR画像を表示するために、コンピュータによって更に可読及び実行可能である。
【0006】
別の開示される態様では、MR撮像デバイスは、複数勾配エコーMR撮像データを取得するように構成されたMRスキャナと、MRスキャナによって取得された複数勾配エコーMR撮像データを再構成するために動作可能に接続された、直前の段落に記載されているMR画像再構成デバイスとを備える。
【0007】
1つの利点は、再構成されたマルチ勾配エコー(マルチGRE)磁気共鳴画像における改善された画像品質にある。
【0008】
別の利点は、時間磁場変動に対する再構成されたマルチ勾配エコー(マルチGRE)磁気共鳴画像の改善されたロバストネスにある。
【0009】
別の利点は、空間的に均一な時間磁場変動に対する再構成されたマルチ勾配エコー(マルチGRE)磁気共鳴画像の改善されたロバストネスにある。
【0010】
別の利点は、追加のMR撮像データの取得を必要とすることなしに、上記の画像品質利点及びロバストネス利点のうちの1つ又は複数を与えることにある。
【0011】
別の利点は、時間磁場変動の計算効率の良い補償を使用して上記の利点のうちの1つ又は複数を与えることにある。
【0012】
別の利点は、時間磁場変動によって引き起こされる画像劣化に特に敏感である、R マッピング、感受性強調撮像(SWI)、及び/又は定量的感受性マッピング(QMS)のコンテキストにおいて上記の利点のうちの1つ又は複数を与えることにある。
【0013】
所与の実施形態は、上記の利点のいずれをも与えないか、又は上記の利点のうちの1つ、2つ、3つ以上又はすべてを与え、及び/或いは当業者が、本開示を読み、理解すると明らかになるような他の利点を与える。
【0014】
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の配列での形態、並びに様々なステップ及びステップの配列での形態をとる。図面は、好ましい実施形態を示すためのものにすぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。別段に記載されていない限り、図面は概略であり、異なる構成要素の相対的な寸法を縮尺するか、例示するためのものであると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】複数勾配エコー(マルチGRE)撮像を実施するように構成された磁気共鳴(MR)スキャナと、磁場変動補償を用いて再構成された画像を生成するためにマルチGRE撮像データを再構成するように構成された再構成デバイスとを含むMR撮像システムを概略的に示す図である。
図2】本明細書で報告される数値ファントム実験の場合の、正弦波的に変動する磁場オフセット+線形ドリフトに対応するk空間データ変更をプロットする図である。
図3】本明細書で報告される数値ファントム実験によって生成された数値ファントム再構成画像を提示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で開示されるいくつかの例示的な実施形態では、再構成されたMR画像を生成するために、複数勾配エコー(マルチGRE)MR撮像データの反復再構成が実施される。反復再構成は、複数勾配エコーMR撮像データと再構成されたMR画像とをリンクするモデルを使用する。モデルは、パラメータ化磁場変動成分を含む。反復再構成を実施する間に、モデルのパラメータ化磁場変動成分のパラメータは、モデルのパラメータ化磁場変動成分のパラメータに関して再構成されたMR画像の偏導関数に依存するコスト関数を最適化するために更新される。
【0017】
マルチGRE撮像の特性のアプリオリな知識を活用するパラメータ化モデルを使用することによって、計算効率の良いやり方で、時間磁場変動補償が実施され得る。たとえば、パラメータ化磁場変動成分は、磁場変動が単一の繰返し時間(TR)にわたって比較的一定であるはずであるという予想において、複数勾配エコーMR撮像データ取得の単一のTRにわたって一定であるとして磁場変動をモデル化する。追加又は代替として、パラメータ化磁場変動成分は、3つの直交空間軸の各々に沿った線形変動を有するパラメータを採用する。これは、多数のモデルパラメータを導入することなしに、空間的に変動する時間磁場変動のより正確な補償を与える。
【0018】
図1を参照すると、磁気共鳴(MR)スキャナ10は、(例示的な例では水平ボア14として配置された)検査領域14において静(B)磁場を生成するように配置された磁石(ただし、一般的には、必ずしも超伝導とは限らない)と、たとえば、直交するx、y、及びz方向に沿って磁場勾配を生成するための磁場勾配コイルのセットとを含む構成要素(図示せず)を含んでいるか又はその上に取り付けられたハウジング12を含む。磁気共鳴を励起し、読み取るために、脳撮像の場合のヘッドコイルなど、1つ又は複数の無線周波数コイル(RFコイル、図示せず)が採用される。MRスキャナ10は、一般的にマイクロプロセッサ又は他のプログラマブル電子プロセッサを含むコンピュータ又は他の電子デバイスであるMRコントローラ16を更に含むか、又はMRコントローラ16と動作可能に接続される。一般的な動作パラダイムでは、超伝導磁石は、検査領域14において(名目上)空間的に及び時間的に一定のB磁場を作り出すためにランプされ、安定させられ、MRコントローラ16は、H原子又は撮像対象の他の標的核(たとえば、磁気共鳴脳撮像の場合、医療患者の脳)において磁気共振周波数における核磁気共鳴を励起するように(1つ又は複数の)RFコイルを制御し、励起された磁気共鳴を空間的に符号化し、及び/又は勾配エコーなどを生成するように磁場勾配コイルを制御し、励起された磁気共鳴を読み取るように(1つ又は複数の)RFコイルを制御する。得られたMR撮像データは、MR撮像データストレージ18、たとえばハードディスクドライブ、RAIDディスクアレイ、ソリッドステートドライブ(SSD)などに記憶される。
【0019】
本明細書で開示される例示的な実施形態では、MRコントローラ16は、詳細には、複数勾配エコー(マルチGRE)MR撮像取得シーケンスを実行するためにMRスキャナ10を動作させるようにプログラムされる。GREシーケンスでは、反対の極性の磁場勾配が、勾配エコーを生成するために順次適用され、マルチGREでは、このプロセスは、複数勾配エコーMR撮像データ取得の単一の繰返し時間(TR)の過程にわたってそれぞれのエコー時間(TE)において、対応する2つ又はそれ以上の連続勾配エコーを生成するために2回又はそれ以上繰り返される。マルチGREシーケンスは、たとえば、脳或いは別の標的器官又は組織の急速なR マッピング、感受性強調撮像(SWI)、及び/又は定量的感受性マッピング(QMS)を実施するために使用され得る。たとえば、一般的なSWI又はQMS取得では、各RF励起パルスは、そのRF励起のためのTRにわたって所与の位相符号化ステップを用いて連続TE値における複数の勾配エコーを生成するために操作される。これは、3D画像f(r,T)を取得するために連続位相符号化ステップの間繰り返され、ここで、rは空間位置を示し、Tは(本明細書ではTEとして示されることもある)エコー時間である。所与の空間位置の場合、Tの関数としての信号減衰は、T 減衰(又は等価的にR 緩和)の測度を与え、したがって、R マッピングを可能にする。SWI及びQMSは、(脳撮像において)小さい出血、急速な脈管形成を呈する腫瘍、或いはいくつかの他のタイプの脳損傷又は異常についての臨床的に有用なコントラストを与える、感受性強調画像又は定量的感受性マップを作り出すために、画像フィルタ処理及び/又は他の画像処理とともに、連続TE値における、位相画像、又は大きさと位相の両方を含む複素画像を活用する関係技法である。これらの撮像技法では、(いくつかの撮像シーケンスにおいて数十ミリ秒程度の)長いTE時間は、通常、感受性効果に対する感度を向上させるために使用される。しかしながら、GRE撮像における長いTE時間とスピンリフォーカシングの欠如との組合せにより、R マッピング、SWI、及びQMS撮像が、時間磁場変動による画像品質劣化に敏感であるという結果になる。
【0020】
引き続き図1を参照すると、MR画像再構成デバイス20が、適切にプログラムされたコンピュータ22、又は他の適切にプログラムされた電子データ処理デバイスを介して実施される。その上、開示されるMR画像再構成技法の一実施形態は、開示される再構成を実施するためにコンピュータ22によって可読及び実行可能な命令を記憶した非一時的記憶媒体として具現される。非一時的記憶媒体は、非限定的な例示的な例として、ハードディスクドライブ又は他の磁気記憶媒体、ソリッドステートドライブ(SSD)又は他の電子記憶媒体、光ディスク又は他の光記憶媒体、それらの様々な組合せなどである。MR画像再構成デバイスは、再構成されたMR画像を生成するために、ストレージ18に記憶されたマルチGRE撮像データを処理し、再構成されたMR画像は、いくつかの実施形態では、ディスプレイ24上に表示される、R 、SWI、及び/又はQMS画像を含む。MR画像再構成デバイス20は、FOV外の対象の動きによって誘起される、たとえば呼吸によって引き起こされる、場変動のためのMR画像の遡及補正を組み込んだ反復画像再構成を実施する。単一のTRの短い読出しの間に生理的動きが止められたと見なされ得るので、同時にすべての取得されたエコーについてのデータに基づいて所与の位相符号化ステップについて(又はより一般的には、単一のTRについて)、データ補正のためのパラメータが推定される。
【0021】
図1に概略的に示されているように、場変動補正を用いたMR画像再構成は、取得されたマルチGRE撮像データ(通常、未加工k空間データの形態)を再構成されたMR画像に接続する順方向モデル30を採用する。順方向モデル30は、時間磁場変動を補償するパラメータ化磁場変動成分32を含む。反復再構成プロセスの各反復は、更新された再構成された画像36を生成するために、再構成された画像を、再構成された画像と、逆フーリエ変換を介して画像空間に変換されたモデルデータとの間の差分を低減するように調整する反復ステップ34を伴う。反復プロセスとして、プロセスフロー38は、(たとえば、反復間の改善がしきい値を下回ることによって定義されるように、又は何らかの他の停止基準に従って)最終画像に到達されるまで、再構成された画像36を反復的に改善するために反復ステップ34を反復的に繰り返すためにループバックする。画像空間において動作するのではなく、モデル30は、代わりに、たとえば、再構成された画像に順方向フーリエ変換を適用することと、k空間における撮像データと比較することとによって、k空間において動作する。反復プロセスを開始するために、初期画像推定値36が採用され、初期画像推定値36は、アプリオリ情報が利用可能でない場合に均一な画像である(及び初期条件バイアスを反復再構成に導入する可能性を有利に回避する)か、又はアプリオリな画像推定値が利用可能である場合にそのような画像推定値である。
【0022】
再構成プロセスはまた、時間磁場変動を補償するパラメータ化磁場変動成分32のパラメータを反復的に調整する。この目的で、モデル30のパラメータ化磁場変動成分32のパラメータに関して、再構成されたMR画像36の偏導関数に依存する、好適なコスト関数40が採用される。好適な実施形態では、コスト関数40は、再構成された画像36の画像品質と、パラメータ化磁場変動成分32のパラメータに関するそれのヤコビアン(Jacobian)とを測定する。更新ステップ42では、パラメータ化磁場変動成分32のパラメータは、コスト関数40の値を低減するために変更(すなわち、更新)される。別の見方をすると、順方向モデル30は画像再構成パイプラインであり、(コイルアレイを採用する撮像の場合)コイル結合と、フーリエ変換及び/又は逆フーリエ変換とを適切に含む。コスト関数40は、たとえば、(ここで、パラメータ化磁場変動成分32のパラメータに関して)画像勾配の係数の1ノルムとして定義される総変動コスト関数として実施される。他の空間勾配ベースコスト関数が、コスト関数40として採用され得る。パラメータ更新ステップ42は、たとえば、制約なし非線形最適化問題を解決するための反復法であるBroyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno(BFGS)アルゴリズムを採用する。
【0023】
引き続き図1を参照すると、最後に更新されて再構成された画像36は、最終再構成された画像である。これは直接使用され、たとえば、選定されたTE値における画像が表示される。臨床評価作業の場合、最終の再構成された画像を処理すること、たとえば、R マップ50、及び/又は感受性強調撮像(SWI)によって生成された感受性強調画像52、及び/又は定量的感受性マッピング(QMS)によって生成された定量的感受性マップ54を生成し、ディスプレイ24上に表示することはより有用である。
【0024】
以下では、例示的な例が説明される。この例は、補償されるべき時間的に変動する磁場変動が空間的に均一であると仮定する。この仮定の下で、統合されたパラメータ化磁場変動成分32をもつモデル30は、次のように適切に実施される。
【数3】
式(1)のモデルでは、FT-1は逆フーリエ変換を示し、
【数4】
は、c番目のチャネルについてのコイル感度を表し(たとえば、コイルアレイのc番目のコイルはMR読出しにおいて使用され、上付き「」は複素共役を示す)、
【数5】
は、c番目のチャネルについて測定されるk空間データである。所与のエコー時間TEについて取得されるk空間データ上で空間的に均一変動する磁場オフセットω(t)の効果が、
【数6】
によって与えられるパラメータ化磁場変動成分32によって表され、ここで、
【数7】
は理想的な(すなわち場変動がない)信号であり、
【数8】
は、時間的に変動するが(この例では)空間的に均一な磁場変動によって破損した信号である。パラメータは、項ω(k(t))である。ここでは、ω(k(t))はすべてのエコーについて同じであり、すなわち、空間変動が、繰返し時間TRにわたって明らかに変化しないと仮定されるので、パラメータは、式(1)においてω(k)として書かれている。コスト関数40は、非限定的な例として、各エコーについての総変動(TV)の和であり、以下に従って計算される。
【数9】
ここで、演算子
【数10】
は、パラメータ化磁場変動成分32のパラメータに対するそれぞれの勾配演算子であり、その勾配演算子は、各エコーTEについての再構成された画像f(T)(式(1)において、ただしエコーTの場合にのみ、与えられる破損を伴う再構成された画像)と、外部総和(outer summation)によってすべてのエコーにわたって加算された結果とに適用される。パラメータω(k)の最適選定を見つけるために式(3)のコスト関数を最小限に抑えるために、省メモリBFGSアルゴリズムなど、好適な最小化アルゴリズムが採用される。
【0025】
図2及び図3を参照すると、式(1)~(3)の例を、球体からなる数値ファントムについてテストした。いくつかのエコー時間においてk空間データを生成するために人工コイル感度を使用し、付加雑音が30の信号対雑音比(SNR)に対応する。k空間データを、図2に示されているように、正弦波的に変動する磁場オフセット+線形ドリフトに対応して変更した。最小化アルゴリズムは、図3中で提示される数値ファントム結果に示されているように、場変動に起因するアーティファクトを低減し、場変動を近似的に復元することが可能であった。図3は、図3の下側の列ラベルで示されている様々なエコー時間について、場変動によって破損したデータ(図3の上側の行)と、補正されたデータ(図3の下側の行)とについてグランドトゥルースに関する強度画像(magnitude image)の差分を示す。
【0026】
前の例は、時間的に変動するが、空間的に均一な磁場変動を仮定する。次に、時間磁場変動の空間的な均一性の仮定を緩和する、より一般的な例示的な例が提示される。ここで、場変動による破損がない(最新の更新の)再構成された画像は、空間的位置rとエコー時間Tとの関数であるf(r,T)として示される。次いで、空間的及び時間的に変動する場変動、ω(r,k(t))によって破損した画像は、次のモデルによって適切に表される。
【数11】
式(4)において、FTはフーリエ変換であり、FT-1は逆フーリエ変換であり、s(r)(及びそれの複素共役
【数12】
)は、同じくコイル感度をモデル化する。式(4)において、指数因子
【数13】
は、追加のオフ共鳴によって引き起こされる測定された磁化に対する効果(すなわち、この例では、空間的に均一であると仮定されない、時間的に変動する磁気変動b)を表すパラメータ化磁場変動成分32であり、したがって、いかなる時間tにおいても、ω=γbであり、ここで、γは磁気回転比であり、bは、テスラ単位の場変動である。定義によれば、時間に対するbの平均は0である。
【0027】
空間的に均質の場変動の場合、式(5)の指数項は、フーリエ変換外でとられ得、空間的に均一な時間的に変動する磁場変動について、式(1)のモデルにつながる。
【0028】
磁場変動が空間的にも変動すると仮定される一般的な場合では、撮像される磁化分布がすでに知られていなければならないという点で、困難が生じる。この困難に対処するための1つの手法は、破損したデータを使用して生成される画像から開始し、最も好適な補正パラメータを決定するために反復再構成を適用することである。別の手法は、場変動の空間成分をモデル化することである。一般に、多くとも、3つの空間軸(たとえば、x、y、及びz)に沿った磁場変動の線形空間依存が、マルチGRE脳撮像において観測される。画像空間における線形位相増加は平行移動して、k空間における同じ軸に沿った傾斜に比例するシフトになる。したがって、線形的に空間的に変動する場変動の効果は、k空間における測定されたデータを数学的にリサンプリングすることによって表され得る。線形空間成分のこのモデルを使用して、式(4)は、次のように書き直され得る。
【数14】
式(6)において、式(5)のパラメータ化磁場変動成分32は、演算子
【数15】
として書かれており、それは、線形的に変動する位相寄与の場合の均質場変動及びk空間シフトをモデル化するために、指数関数での乗算を実施する。式(6)によって、測定されたk空間データから直接補正画像の計算が達成され、したがって、式(3)の例示的なコスト関数の効率的な計算が達成され得る。コスト関数を最小限に抑えることは、空間的に均一な磁場変動例についてすでに説明されたように、時間の関数として、改善された画像及び推定された場変動を生じる。
【0029】
3つの直交する空間軸の各々に沿った線形変動として、たとえば、式(6)に従って、空間変動をモデル化するときに、これらの軸のうちの1つ又は複数に沿った線形変動は、0傾斜を有するものとしてモデル化され得、すなわち、その軸に沿って空間的に変動しないものとしてモデル化され得ることに留意されたい。
【0030】
上記の得られた例は例示にすぎない。他のモデルが採用され得る。たとえば、式(1)、(4)、又は(6)の例示的なモデルは、k空間におけるサブサンプリングを含むように拡張され得る。特定の例として、SENSE再構成、より一般的には、他の並列撮像技法が組み込まれ得る。
【0031】
総変動(TV)がコスト関数40の例示的な例として使用されるが、他のコスト関数が、前に説明されたように企図される。更に、マルチGRE脳撮像、より詳細には、R 、SWI、及び/又はQMS脳撮像が例示的な例として本明細書で説明されるが、変動する磁場変動を時間的に(及び随意に空間的にも)補償するための開示される技法は、実質的に任意の撮像対象の任意のタイプのマルチGRE撮像、たとえば、人間対象の他の解剖学的領域の撮像、或いは犬又は猫又は他の獣医学の対象の脳又は他の解剖学的領域の撮像などにおいて採用され得ることが了解されよう。
【0032】
本発明は、好ましい実施形態に関して説明された。上記の詳細な説明を読み、理解した他者は、変更及び改変に想到する。本発明は、すべてのそのような変更及び改変が、添付の特許請求の範囲又はそれの均等物の範囲内に入る限りにおいて、それらの変更及び改変を含むものと解釈されるものである。
図1
図2
図3