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7053574媒質の内部で発光を生成する挿入装置およびシステムならびにその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】媒質の内部で発光を生成する挿入装置およびシステムならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20220405BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20220405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 47/52 20170101ALI20220405BHJP
   A61B 18/24 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61B18/18 200
A61K45/00
A61K41/00
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P37/06
A61P37/02
A61K31/37
A61K31/56
A61K31/473
A61K31/409
A61K31/352
A61K31/57
A61K47/52
A61B18/24
【請求項の数】 78
(21)【出願番号】P 2019507073
(86)(22)【出願日】2017-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017029300
(87)【国際公開番号】W WO2017189506
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】62/327,121
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509279561
【氏名又は名称】イミュノライト・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・エー・バーク・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド・ウォルダー
(72)【発明者】
【氏名】ザカリエ・ファティ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・エフ・バイヤー・ジュニア
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-511323(JP,A)
【文献】特開2008-109954(JP,A)
【文献】特表2014-514039(JP,A)
【文献】特開2006-149688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0242035(US,A1)
【文献】特表2011-518650(JP,A)
【文献】特表2013-524864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/00 - 5/10
A61B 18/18
A61L 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
前記媒質または前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号を生成するように構成された供給源と、
電子アセンブリユニットを有する挿入装置とを含み、
前記電子アセンブリユニットが、
1)前記ヒト被検体または前記動物被検体における疾患または障害を治療するため、または2)前記媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの前記波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、
前記開始信号を受信する受信機と、
液体貯留槽と、
前記液体貯留槽から前記挿入装置の外部への少なくとも1つの流体チャネルと、を備え、
前記電子アセンブリユニットが、前記開始信号を受信すると、前記放出源に電力を供給し、それによって前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の内部または前記媒質の内部に前記波長エネルギーを放出するように構成され、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な医薬品の流体または前記波長エネルギーによって活性化可能なナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記波長エネルギーによって活性化可能な前記医薬品の流体または前記波長エネルギーによって活性化可能な前記ナノ粒子の流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、システム。
【請求項2】
前記放出源が、100マイクロメートルから1センチメートル未満のサイズのマイクロ放出源カプセルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記放出源が、前記波長エネルギーを放出するように構成された発光ダイオードまたはエレクトロルミネセンス素子を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記開始信号が、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体または前記媒質の一部または全部を横断する低周波RF信号またはマイクロ波信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記挿入装置が、ケイ酸塩ガラス、アルカリガラス、ナトリウムガラス、およびリン酸塩ガラスのうちの少なくとも1つを含む封入壁を有した容器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、放出された前記波長エネルギーによる活性化の際に、がん、細菌感染、ウイルス感染、免疫拒絶反応、自己免疫疾患、再生不良性病態、およびそれらの組合せからなる群から選択される細胞増殖障害を治療する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、ソラレン、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デクリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、アロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、ビタミン代謝産物、ビタミン前駆体、ナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフォリンポルフィリン、色素及びフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、ならびにアントロキノンから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、ソラレン、クマリン、ポルフィリンまたはその誘導体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、8-MOPまたはAMTである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、7,8-ジメチル-10-リビチル、イソアロキサジン、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン、7,8-ジメチルアロキサジン、イソアロキサジン-アデニンジヌクレオチド、アロキサジンモノヌクレオチド、アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンから選択される1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、受容体部位に結合することができる担体に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記担体が、インスリン、インターロイキン、チモポエチンまたはトランスフェリンから選択される1つである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、共有結合によって前記担体に結合される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、非共有結合によって前記担体に結合される、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記受容体部位が、有核細胞の核酸、有核細胞上の抗原部位、またはエピトープから選択される1つである、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記細胞増殖障害が、標的細胞におけるアポトーシスによって処置される、請求項6に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記X線破壊可能容器内に存在し、標的細胞によって優先的に吸収される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記波長エネルギーが、エネルギー調節薬剤または光活性薬剤の有無にかかわらず、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体に所定の変化を誘発する、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、前記波長エネルギーを吸収、強化または変更するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、前記波長エネルギーを、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体における前記所定の変化に影響を与える光エネルギーまたは別の電磁エネルギーに変換するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記エネルギー調節薬剤が、前記波長エネルギーと比較して減少した波長の二次光を放出する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記エネルギー調節薬剤が、前記波長エネルギーと比較して増加した波長の二次光を放出する、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、生体適合性蛍光金属ナノ粒子、蛍光金属酸化物ナノ粒子、蛍光金属被覆金属酸化物ナノ粒子、蛍光色素分子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金被覆銀ナノ粒子、ポリアミドアミンデンドリマによって密閉された水溶性量子ドット、ルシフェラーゼ、生体適合性燐光性分子、複合電磁エネルギーハーベスタ分子、及び高輝度ルミネセンスを示すランタニドキレートから選択される1つ以上の要素を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、燐光性または蛍光性の薬剤の少なくとも1つを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体および酸化物半導体の少なくとも1つ、ならびにそれらの組合せを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、CaWO:Pb2+、CaWO:W、Sr(PO:Eu2+、Ba(PO:Eu2+、YSiO:Ce3+、SrMg(SiO:Eu2+、BaMgAl1424:Eu2+、ZnSiO::Mn2+、Y(Al,Ga)12:Ce3+、BaMgAl1424:Mn2+、BaMgAl1423:Mn2+、SrAl12SiO19:Mn2+、ZnAl1219:Mn2+、CaAl1219:Mn2+、YBO:Tb3+、SrSil4:Eu3+、Y:Eu3+、YSiO:Eu3+、YAl12Eu3+、CaSiO:Mn2+、YVO:Eu3+の少なくとも1つを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、誘電体-金属複合体を含むプラズモニクス薬剤、または複合プラズモニクス薬剤として、互いの近傍に配置された複数の異なったサイズの金属粒子を含むプラズモニクス薬剤をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
前記エネルギー調節薬剤が、前記媒質、ヒト被検体、または動物被検体内に存在し、Y;ZnS;ZnSe;MgS;CaS;Mn,ErZnSe;Mn,ErMgS;Mn,ErCaS;Mn,ErZnS;Mn,YbZnSe;Mn,YbMgS;Mn,YbCaS;Mn,YbZnS:Tb3+,Er3+;ZnS:Tb3+;Y:Tb3+;Y:Tb3+,Er3+;ZnS:Mn2+;ZnS:Mn,Er3+;CaWO,YaTO,YaTO:Nb,BaSO:Eu,LaS:Tb,BaSi:Pb,NaI(Tl),CsI(Tl),CsI(Na),CsI(pure),CsF,KI(Tl),LiI(Eu),BaF,CaF,CaF(Eu),ZnS(Ag),CaWO,CdWO,YAG(Ce)(YAl12(Ce)),BGOゲルマニウム酸ビスマス,GSOガドリニウムオキシオルトシリケート,LSOルテチウムオキシオルトシリケート,LaCl(Ce),及びLaBr(Ce)の少なくとも1つを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項29】
前記挿入装置が流動床に配置され、
前記挿入装置が、前記媒質を保持する人工容器内に延在する内側に向かう構造に配置されるか、または
前記挿入装置が、前記媒質を保持する人工容器の内壁に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記波長エネルギーによる活性化後の前記媒質中の少なくとも1つの光活性化可能薬剤の相互作用が前記媒質中のポリマーを硬化させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記光活性化可能薬剤が、ベンゾイン及び置換ベンゾイン、ミヒラーケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン、アセトフェノン及び置換アセトフェノン、ならびにキサントン及び置換キサントン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ-チオ-キサントン、アゾ-ビスイソブチロニトリル、N-メチルジエタノールアミンベンゾフェノン、カンファキノン、ペルオキシ酸エステル開始剤、及び非フルオレンカルボン酸ペルオキシ酸エステルの少なくとも1つを含む光開始剤を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
前記媒質または前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の外部から、前記媒質または前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号に応答して、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または前記媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの前記波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部で放出される前記波長エネルギーの量を加減する制御信号をもたらす制御装置と、
前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能な光活性化可能流体の少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器を含む液体貯留槽と、を備え、
X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体または光活性化可能流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、システム。
【請求項33】
前記放出源が、前記開始信号および前記制御信号の少なくとも1つを受信する受信機を含む装置を備えた、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記放出源が、前記媒質にまたは前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の内部に前記波長エネルギーを投与するスケジュールを決定するようにプログラムされた命令を含むプロセッサをさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記放出源が、前記波長エネルギーを放出するように構成された発光ダイオードまたはエレクトロルミネセンス素子を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記生物学的治療用流体または前記光活性化可能流体を前記ヒト被検体または前記動物被検体に送達するための少なくとも1つの流体チャネルをさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記X線破壊可能容器が、重金属がドープされた、ケイ酸塩ガラス、アルカリガラス、ナトリウムガラス、およびリン酸塩ガラスのうちの少なくとも1つを含むガラスを含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項38】
前記ガラス中の前記重金属が、Pb、CrおよびThのうちの少なくとも1つを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記放出源が、電気回路を持たない装置を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項40】
前記装置が、燐光性または蛍光性の薬剤の少なくとも1つを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記装置が、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体および酸化物半導体の少なくとも1つ、ならびにそれらの組合せを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記装置が、CaWO:Pb2+、CaWO:W、Sr(PO:Eu2+、Ba(PO:Eu2+、YSiO:Ce3+、SrMg(SiO:Eu2+、BaMgAl1424:Eu2+、ZnSiO::Mn2+、Y(Al,Ga)12:Ce3+、BaMgAl1424:Mn2+、BaMgAl1423:Mn2+、SrAl12SiO19:Mn2+、ZnAl1219:Mn2+、CaAl1219:Mn2+、YBO:Tb3+、SrSiCl:Eu3+、Y:Eu3+、YSiO:Eu3+、YAl12Eu3+、CaSiO:Mn2+、YVO:Eu3+の少なくとも1つを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項43】
前記装置が、誘電体-金属複合体を含むプラズモニクス薬剤、または複合プラズモニクス薬剤として、互いの近傍に配置された複数の異なったサイズの金属粒子を含むプラズモニクス薬剤をさらに含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項44】
前記装置が、Y;ZnS;ZnSe;MgS;CaS;Mn,ErZnSe;Mn,ErMgS;Mn,ErCaS;Mn,ErZnS;Mn,YbZnSe;Mn,YbMgS;Mn,YbCaS;Mn,YbZnS:Tb3+,Er3+;ZnS:Tb3+;Y:Tb3+;Y:Tb3+,Er3+;ZnS:Mn2+;ZnS:Mn,Er3+;CaWO,YaTO,YaTO:Nb,BaSO:Eu,LaS:Tb,BaSi:Pb,NaI(Tl),CsI(Tl),CsI(Na),CsI(pure),CsF,KI(Tl),LiI(Eu),BaF,CaF,CaF(Eu),ZnS(Ag),CaWO,CdWO,YAG(Ce)(YAl12(Ce)),BGOゲルマニウム酸ビスマス,GSOガドリニウムオキシオルトシリケート,LSOルテチウムオキシオルトシリケート,LaCl(Ce),及びLaBr(Ce)の少なくとも1つを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項45】
生物学的治療用流体が、細胞増殖関連障害を治療するために、前記波長エネルギーによって活性化されたときに所定の細胞変化を生じさせることができる少なくとも1つの活性化可能な医薬品を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項46】
前記細胞増殖関連障害が、がん、細菌感染、ウイルス感染、免疫拒絶反応、自己免疫疾患、再生不良性病態、及びそれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1つの要素である、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、ソラレン、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デクリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、アロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、ビタミン代謝産物、ビタミン前駆体、ナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフォリンポルフィリン、色素及びフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、ならびにアントロキノンから選択される、請求項45に記載のシステム。
【請求項48】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、ソラレン、クマリン、ポルフィリンまたはその誘導体である、請求項45に記載のシステム。
【請求項49】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、8-MOP、TMP、またはAMTである、請求項45に記載のシステム。
【請求項50】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、7,8-ジメチル-10-リビチル、イソアロキサジン、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン、7,8-ジメチルアロキサジン、イソアロキサジン-アデニンジヌクレオチド、アロキサジンモノヌクレオチド、アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンから選択される1つである、請求項45に記載のシステム。
【請求項51】
前記所定の細胞変化が、標的細胞におけるアポトーシスである、請求項45に記載のシステム。
【請求項52】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記対象において標的細胞と反応する自家ワクチン効果を引き起こす、請求項45に記載のシステム。
【請求項53】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、DNAインターカレータまたはそのハロゲン化誘導体である、請求項45に記載のシステム。
【請求項54】
活性化の際に、少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記細胞増殖関連障害と関連するDNAに結合する、請求項45に記載のシステム。
【請求項55】
少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記細胞増殖関連障害と関連するDNAをインターカレートし、活性化時に前記DNAに結合させる、請求項45に記載のシステム。
【請求項56】
媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
開始信号に応答して、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または前記媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの前記波長エネルギーを放出するように構成された、開始エネルギーを所定の方向に放出される前記波長エネルギーに変換するための指向性エネルギー変調器と、
所定の方向に沿って磁場をもたらし、前記ヒト被検体または前記動物被検体内において放出される前記波長エネルギーの方向を変化させるように構成された磁場発生器と、
液体貯留槽と、を備え、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能な光活性化可能流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体または光活性化可能流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出され、
前記指向性エネルギー変調器が層状アセンブリを備え、前記層状アセンブリが、
前記開始エネルギーを吸収し、前記波長エネルギーを放出するエネルギー変換材料の少なくとも1つの層と、
前記エネルギー変換材料の前記少なくとも1つの層の周りに配置されたエネルギー反射材料の多層膜とを備え、
前記波長エネルギーが、前記エネルギー反射材料によって反射され、前記層状アセンブリの長手方向の端部から出て行く、システム。
【請求項57】
前記層状アセンブリが球形である、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記層状アセンブリが直線的形状である、請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記層状アセンブリがロッド形状である、請求項56に記載のシステム。
【請求項60】
前記エネルギー反射材料が、Ag、Au、Al、またはCuのうちの少なくとも1つを含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項61】
前記エネルギー反射材料が、磁性材料または常磁性材料を含む、請求項56~60のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記エネルギー反射材料が、非磁性材料を含む、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記エネルギー反射材料が、鉄、ニッケル、コバルト、および希土類金属合金の少なくとも1つを含む、請求項61に記載のシステム。
【請求項64】
前記層状アセンブリの層間の分離距離が、10nm~1000nm、または100nm~700nm、または200nm~500nm、または300nm~400nmの範囲である、請求項61に記載のシステム。
【請求項65】
前記層状アセンブリの層間の分離距離が、1μm~1000μm、または10μm~100μm、または100μm~500μm、または300μm~400μmの範囲である、請求項61に記載のシステム。
【請求項66】
ヒト被検体もしくは動物被検体の内部で波長エネルギーを放出するシステムであって、
前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の外部から、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の少なくとも一部を透過する、開始エネルギーを含む開始信号に応答して、前記ヒト被検体または前記動物被検体の疾患または障害を治療するために前記波長エネルギーを放出する放出源と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置され、前記ヒト被検体または前記動物被検体の第1の血管から血液を迂回させる第1の血液供給弁と、
前記血液が前記波長エネルギーに曝される前記第1の血液供給弁に接続されたポートと、
前記ポート内の前記血液に光活性化可能薬物を送達するための光活性化可能薬物貯留槽と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置され、前記ポートから血液を前記ヒト被検体または前記動物被検体の第2の血管に戻す第2の血液供給弁とを含み、
前記光活性化可能薬物貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な光活性化可能薬物の流体を保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記光活性化可能薬物が、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、システム。
【請求項67】
前記血液を圧送するために前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置されるポンプをさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
前記光活性化可能薬物貯留槽が、前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置される、請求項66に記載のシステム。
【請求項69】
前記光活性化可能薬物貯留槽が、前記ヒト被検体または前記動物被検体の外部に配置される、請求項66に記載のシステム。
【請求項70】
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置される人工袋状体をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項71】
前記放出源、前記ポート、および前記光活性化可能薬物貯留槽のうちの少なくとも1つが、前記人工袋状体の内側に配置される、請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記血液を圧送するために前記人工袋状体の内部に配置されるポンプをさらに含む、請求項70に記載のシステム。
【請求項73】
医療用カテーテルであって、
電子アセンブリユニットを有する挿入装置と、
前記電子アセンブリユニットであって、
放出源と、
前記電子アセンブリユニットと通信するために信号を受信する受信機と、
液体貯留槽と、
前記液体貯留槽から前記挿入装置の外部への少なくとも1つの流体チャネルと、を備え、
前記電子アセンブリユニットが、前記信号を受信すると、ヒト被検体または動物被検体の内部に所定のタイプの波長エネルギーを放出するように、前記放出源に電力を供給して、前記ヒト被検体または前記動物被検体を治療するように構成される、前記電子アセンブリユニットと、
患者の体内に前記挿入装置を挿入するための遠位端を含む挿入スリーブと
を含み、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能なナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体またはナノ粒子の流体の少なくとも1つが、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、医療用カテーテル。
【請求項74】
アセンブリユニットを備える放出源カプセルであって、
前記アセンブリユニットが、
放出源と、
前記アセンブリユニットと通信するための開始信号を受信する受信機と、
液体貯留槽と、を備え、
前記放出源が、ヒト被検体または動物被検体を治療するために前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に波長エネルギーを放出するか、または媒質の内部に波長エネルギーを放出して、前記媒質に変化を生じさせ、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能なナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体またはナノ粒子の流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、放出源カプセル。
【請求項75】
挿入装置であって、
電子アセンブリユニットと、
前記電子アセンブリユニットを収容するように構成され、1)ヒト被検体または動物被検体の体内に、または2)媒質中に挿入するように構成された容器とを備え、
前記電子アセンブリユニットが、
1)前記ヒト被検体または前記動物被検体における疾患または障害を治療するため、または2)前記媒質に変化を生じさせるために、所定のタイプの波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、
液体貯留槽と、
前記液体貯留槽から前記挿入装置の外部への少なくとも1つの流体チャネルと、を備え、
を備え、
前記電子アセンブリユニットが、前記放出源に電力を供給して、前記容器から前記波長エネルギーを放出するように構成され、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能なナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体またはナノ粒子の流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、挿入装置。
【請求項76】
挿入装置であって、
電子アセンブリユニットと、
前記電子アセンブリユニットを収容するように構成され、1)ヒト被検体または動物被検体の体内に、または2)媒質中に挿入するように構成された容器とを備え、
前記電子アセンブリユニットが、
1)前記ヒト被検体または前記動物被検体における疾患または障害を治療するため、または2)前記媒質に変化を生じさせるために、所定のタイプの波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、
開始信号を受信する受信機と、
液体貯留槽と、
前記液体貯留槽から前記挿入装置の外部への少なくとも1つの流体チャネルと、を備え、
前記電子アセンブリユニットが、前記開始信号を受信すると、前記放出源に電力を供給して、それによって前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部または前記媒質の内部に前記波長エネルギーを放出するように構成され、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能なナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体またはナノ粒子の流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、挿入装置。
【請求項77】
媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
ヒト被検体または動物被検体の領域内に埋め込まれた埋め込み挿入装置と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の外部の信号の電磁的な伝達の外部電源を制御するコンピュータ制御装置と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の領域内に埋め込まれ、前記埋め込み挿入装置と外界との間に配置された中継器と、を備え、
前記埋め込み挿入装置が、
液体貯留槽と、
前記液体貯留槽から前記挿入装置の外部への少なくとも1つの流体チャネルと、を備え、
前記液体貯留槽に含まれる流体が、前記波長エネルギーによって活性化可能な生物学的治療用流体または前記波長エネルギーによって活性化可能なナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体またはナノ粒子の流体の少なくとも1つが、前記媒質、前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出され、
前記中継器が、電磁的に伝達される前記信号を前記埋め込み挿入装置に渡す、
システム。
【請求項78】
前記中継器が、信号の異常および損失が起こり得る前記ヒト被検体の体の厚い部分を通る前記電磁的伝達の伝達損失を軽減するためのブースタとして機能するようにプログラムされている、請求項77に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月25日に出願された「INSERTION DEVICES AND SYSTEMS FOR PRODUCTION OF EMITTED LIGHT INTERNAL TO A MEDIUM」と題する米国仮特許出願第62/327,121号に対する優先権を主張するものであり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2014年4月22日に出願された「INTERIOR ENERGY-ACTIVATION OF PHOTO-REACTIVE SPECIES INSIDE A MEDIUM OR BODY USING AN X-RAY SOURCE EMITTING LOW ENERGY X-RAYS AS INITIATION ENERGY SOURCE」と題する米国仮特許出願第61/982,585号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2014年12月24日に出願された「INTERIOR ENERGY-ACTIVATION OF PHOTO-REACTIVE SPECIES INSIDE A MEDIUM OR BODY USING AN X-RAY SOURCE EMITTING LOW ENERGY X-RAYS AS INITIATION ENERGY SOURCE」と題する仮出願第62/096,773号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2015年3月12日に出願された「TUMOR IMAGING WITH X-RAYS AND OTHER HIGH ENERGY SOURCES USING AS CONTRAST AGENTS PHOTON-EMITTING PHOSPHORS HAVING THERAPEUTIC PROPERTIES」と題する米国仮出願第62/132,270号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2015年4月14日に出願された「TUMOR IMAGING WITH X-RAYS AND OTHER HIGH ENERGY SOURCES USING AS CONTRAST AGENTS PHOTON-EMITTING PHOSPHORS HAVING THERAPEUTIC PROPERTIES」と題する米国仮出願第62/147,390号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、2009年3月10日に出願された「PLASMONIC ASSISTED SYSTEMS AND METHODS FOR INTERIOR ENERGY-ACTIVATION FROM AN EXTERIOR SOURCE」と題する米国仮出願第12/401,478号(現在米国特許第8,376,013号)の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2011年5月6日に出願された「ADHESIVE BONDING COMPOSITION AND METHOD OF USE」と題する米国出願第13/102,277号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2008年3月11日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR INTERIOR ENERGY-ACTIVATION FROM AN EXTERIOR SOURCE」と題する仮出願第61/035,559号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2008年2月21日に出願された「METHODS AND SYSTEMS FOR TREATING CELL PROLIFERATION DISORDERS USING PLASMONICS ENHANCED PHOTOSPECTRAL THERAPY (PEPST) AND EXCITON-PLASMON ENHANCED PHOTOTHERAPY (EPEP)」と題する仮出願第61/030,437号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2009年2月20日に出願された「METHODS AND SYSTEMS FOR TREATING CELL PROLIFERATION DISORDERS USING PLASMONICS ENHANCED PHOTOSPECTRAL THERAPY (PEPST) AND EXCITON-PLASMON ENHANCED PHOTOTHERAPY (EPEP)」と題する非仮出願第12/389,946号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2007年11月6日に出願された「METHODS AND SYSTEMS FOR TREATING CELL PROLIFERATION RELATED DISORDERS」と題する非仮出願第11/935,655号、及び2007年4月8日に出願された「METHOD OF TREATING CELL PROLIFERATION DISORDERS」と題する仮出願第60/910,663号の関連出願であり、それらのそれぞれの記載内容は参照により本明細書にその全体が援用される。本出願は、2008年3月11日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR INTERIOR ENERGY-ACTIVATION FROM AN EXTERIOR SOURCE」と題する仮出願第61/035,559号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2010年4月21日に出願された米国特許出願第12/764,184号の関連出願であり、その全開示は参照により本明細書に援用される。本出願はまた、2013年3月15日に出願された「INTERIOR ENERGY-ACTIVATION OF PHOTO-REACTIVE SPECIES INSIDE A MEDIUM OR BODY」と題する仮出願第61/792,125号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願はさらに、2011年7月8日に出願された仮出願第61/505,849号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2011年2月15日に出願された米国仮特許出願第61/443,019号の関連出願であり、その全開示は参照により本明細書に援用される。本出願は、2014年1月8日に出願された「PHOSPHORS AND SCINTILLATORS FOR LIGHT STIMULATION WITHIN A MEDIUM」と題する米国出願第14/131,564号の関連出願であり、そのそれぞれの全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2014年3月12日に出願された「INTERIOR ENERGY-ACTIVATION OF PHOTO-REACTIVE SPECIES INSIDE A MEDIUM OR BODY」と題する米国出願第14/206,337号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2015年4月22日に出願された「TUMOR IMAGING WITH X-RAYS AND OTHER HIGH ENERGY SOURCES USING AS CONTRAST AGENTS PHOTON-EMITTING PHOSPHORS HAVING THERAPEUTIC PROPERTIES」と題するPCT出願PCT/2015/027058号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2015年4月22日に出願された「INTERIOR ENERGY-ACTIVATION OF PHOTO-REACTIVE SPECIES INSIDE A MEDIUM OR BODY USING AN X-RAY SOURCE EMITTING LOW ENERGY X-RAYS AS INITIATION ENERGY SOURCE」と題するPCT出願PCT/2015/027060号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2015年1月14日に出願された「NON-INVASIVE SYSTEMS AND METHODS FOR TREATMENT OF A HOST CARRYING A VIRUS WITH PHOTOACTIVATABLE DRUGS」と題する米国特許出願第62/103,409号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2015年10月26日に出願された「METHODS FOR RADIOTHERAPY TO TRIGGER LIGHT ACTIVATION DRUGS」と題する米国特許出願第62/246,360号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。本出願は、2016年2月2日に出願された「PHOSPHOR-CONTAINING DRUG ACTIVATOR,SUSPENSION THEREOF,SYSTEM CONTAINING THE SUSPENSION,AND METHODS FOR USE」と題する米国特許出願第62/290,203号の関連出願であり、その全記載内容は参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、紫外領域及び可視光線領域の光に対して名目上不透明な媒質の内部で光を生成する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
背景の説明
現在、光(すなわち、無線周波数域から可視域を経てX線波長域にわたる電磁放射線)は、多くの産業科学医療用(ISM)バンドで、他の通信、電子及び製剤プロセスに加えて使用されている。赤外域及び可視域の光は、一般に、多くの場合、例えばいずれも(白熱電球において見られるような)黒体放射が発生する極高温にまで材料を加熱する電気エネルギー源から生成される。可視域及び紫外域の光は、一般に、ガスを加熱して、気体の原子または分子の、ある1つの電子状態からの遷移が発光を伴って生じる放電に至らせることによって生成される。材料中の電子/正孔が再結合して光放出を生成する、半導体を主材料とした光源(発光ダイオードや半導体レーザなど)もある。
【0005】
可視光は、380nmと750nmとの間の波長の電磁放射線として定義される。一般に、電磁放射線(光を含む)は、高い熱エネルギーを持つ分子の一部(または隣接した原子)や、または原子(または分子)中の電子などの、荷電粒子の加速及び減速、または運動(振動)の変化によって生成される。両方のプロセスは、白熱電球のフィラメントが輝くのに役割を果たすが、後者のプロセス(原子内の電子)は蛍光灯で生じる。
【0006】
参考までに、赤外線(IR)は、可視領域の赤色端を超えてすぐの放射線である。また、紫外線(UV)放射は、紫色光よりも短い波長を有する。スペクトルのUV部分は、3つの領域に分割される。UVA(315~400nm)、UVB(280~315nm)及びUVC(100~280nm)の3領域である。
【0007】
照明用途に使用される産業用ランプは、適正な白色の知覚のために、可視波長範囲をカバーする。加熱されるフィラメントのような熱源は、Wフィラメント、ハロゲンで保護されたWフィラメント、及び電気的に誘導される高温プラズマ(アークランプ)を含む、様々なタイプの導体で作ることができる。
【0008】
放射源の能力(1秒間に放出されるエネルギー)はワット(W)で多く表されるが、種々の波長の光に対して眼の感受性が変わることを説明するために、光をルーメン(lm)で表すこともできる。導出された関連単位は、ある方向のステラジアン(立体角の単位)当たりの線源のW/m(lm/m)での放射輝度(輝度)、及び表面のW/m(lm/mまたはルクス)での放射照度(照度)である。
【0009】
紫外線源の開発を機に、紫外線放射は、産業、化学及び製剤目的に、ますます利用されるようになっている。例えば、UV光は、媒質を殺菌することが知られており、接着剤またはコーティングにおけるポリマーの架橋結合など、多くの光活性化化学プロセスを推進することが知られている。典型的には、紫外線源は、ガス放電ランプを使用して、紫外域の放出光を生成する。次いで放出光は、光学的にフィルタリングされて、非紫外線周波数の全てではない多くを除去する。紫外線光は、半導体粒子蛍光体において、例えばX線照射などの高エネルギー源に由来するこのような蛍光体の励起の結果、生成することもできる。
【0010】
UV放射は、物質、特に生体媒質、ポリマー、及びほとんどの固体において、侵入深さが不足している。この理由から、UVに基づく光開始は、多くの3次元適用を妨げる、部位の直線的な連なりによって制限される。UVは、通常、(いくつかの例を挙げると)固体または液体;有機または無機;生体器官、生体組織、及びそれらの複合物、構造用複合材料、食品加工用の薬品タンク/化学反応器の内部に残留する物質、または炭化水素鎖分画であり得る物質の外表面で起こる反応に限定されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、放出光を生成するシステムが提供される。本システムは、1)媒質またはヒト被検体もしくは動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号を生成するように構成された供給源と、2)電子アセンブリユニットを持つ挿入装置とを備える。アセンブリユニットは、1)ヒト被検体もしくは動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの光を放出するように構成された放出源と、2)信号を受信する受信機と、オプションで3)受発信装置とを備える。アセンブリユニットは、信号を受信すると、放出源に電力を供給し、それによってヒト被検体もしくは動物被検体の内部、または媒質の内部に光を放出するように構成される。
【0012】
一実施形態では、電子アセンブリユニットを持つ挿入装置を備えた医療用カテーテルが提供される。アセンブリユニットは、1)放出源と、2)開始信号を受信する受信機とを備える。アセンブリユニットは、開始信号を受信すると、放出源に電力を供給し、それによってヒト被検体または動物被検体の内部に光を放出して、ヒト被検体または動物被検体を治療するように構成される。医療用カテーテルは、その遠位端に、患者に挿入するための挿入スリーブを備える。
【0013】
一実施形態では、電子アセンブリユニットを含む挿入装置が提供される。電子アセンブリユニットは、放出源と、開始信号を受信する受信機と、実行されると、制御装置に開始信号を認識させるとともに、放出源に電力を供給し、それによってヒト被検体もしくは動物被検体の内部に光を放出して、ヒト被検体もしくは動物被検体を治療するか、またはそれによって媒質の内部に光を放出して、媒質中に変化を生じさせる命令がプログラムされたメモリを持つ内部制御装置とを備える。
【0014】
一実施形態では、媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、放出光を生成するシステムが提供される。本システムは、ヒト被検体もしくは動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの光を放出するように構成された放出源を備える。本システムは、1)放出源を活性化させるために、媒質、またはヒト被検体もしくは動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号を制御し、かつ2)ヒト被検体または動物被検体の内部で放出される光の量を加減する制御信号をもたらす制御装置を備える。
【0015】
一実施形態では、媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムが提供される。本システムは、ヒト被検体または動物被検体の部位の中に埋め込まれた埋め込み挿入装置と、ヒト被検体または動物被検体の外部の、電磁的伝達のための外部線源を制御するコンピュータ制御装置と、ヒト被検体または動物被検体の部位の中に埋め込まれ、埋め込み挿入装置と外界との間に配置された中継器とを備える。中継器は、電磁的伝達を埋め込み挿入装置に与える。
【0016】
一実施形態では、光活性化可能薬物を用いて、患者または被検体を治療するシステムが提供される。本システムは、光活性化可能薬物を活性化できる波長エネルギーの供給源と、この波長エネルギーの吸収性が血液よりも低い生体適合液体を用いて、治療される患部または器官からの血液を一時的に置換する血液供給置換システムとを備える。
【0017】
本発明についての前述の一般的な説明、及び以下の発明を実施するための形態は、どちらも例示的なものであるが、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0018】
本発明及びそれに付随する利点の多くは、添付の図面と関連させて考察すると、以下の詳細な説明を参照することによって、直ちに、完全に認識することができ、さらによく理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-1】Aは、開始エネルギー源が、媒質内に挿入装置が分散した媒質に向けられる、本発明の別の実施形態によるシステムを示す概略図である。Bは、開始エネルギー源が、媒質内に挿入装置が分散した媒質が封入された容器に向けられる、本発明の別の実施形態によるシステムを示す概略図である。
図1-2】Cは、UVまたは可視光の放出源を保持する密閉型構造を割り込ませることにより、挿入装置が媒質内で隔離されている状態の媒質が封入された容器に、開始エネルギー源が向けられる、本発明の別の実施形態によるシステムを示す概略図である。Dは、媒質内に挿入装置を流動床構成で隔離させた媒質を封入した容器に、開始エネルギー源が向けられる、本発明の別の実施形態によるシステムを示す概略図である。
図2-1】Aは、被処置媒質の構成要素に自己付着させる対向電極を持つ、本発明の挿入装置の一実施形態の概略図である。Bは、本発明のマイクロデバイスの一実施形態の概略断面図である。
図2-2】Cは、ナノスケールの結晶性へテロ構造を組み込んだ2つのタイプの無機LED装置設計の概略図である。
図2-3】Dは、カテーテルに取り付けられた本発明の挿入装置の一実施形態の概略図である。
図3】本発明の挿入装置(複数可)を活性化させるために、被検体に向けられた開始エネルギー源を有する、本発明の一実施形態による例示的なシステムの概略図である。
図4】本発明の様々な実施形態を実行するコンピュータシステムを示す。
図5】リング部材挿入装置の概略図である。
図6】肺の腫瘍のまわりの挿入装置の配置を示す概略図である。
図7図7Aは、平面状エレクトロルミネセンス(EL)挿入装置の概略図である。図7Bは、同軸エレクトロルミネセンス(EL)挿入装置の概略図である。
図8】本発明による無線EL挿入装置3の概略図である。
図9】本発明による、可撓性で無線式のUVまたは可視光を放出する挿入装置の概略図である。
図10】磁性成分または常磁性成分を有する典型的な燐光性または蛍光性の粒子を示す概略図である。
図11】メッシュ内の開口部の所定位置に固定された粒子を示す概略図である。
図12図12Aは、磁場の影響下で整列した典型的なリン含有粒子または蛍光性粒子を示す概略図である。図12Bは、正味の光放出が標的部位の方に(優先的に)向け直される磁場の影響下で整列した複数のリン含有粒子または蛍光性粒子を描写する概略図である。
図13】中間層にされるリン含有複合物または蛍光性複合物を作成する一実施形態による様々なステップを示すプロセス図である。
図14】X線による励起と、蛍光体結晶またはフォトニック結晶からの、ある特定の結晶面に沿う優先的な光放出とを示す概略図である。
図15】中空球の硬質シェルコア内部の浮遊性粒子を示す概略図である。
図16】浮遊性粒子構造を作成する一実施形態による様々なステップを示すプロセス図である。
図17】燐光性材料または蛍光性材料がロッドの形状(または他の細長い形状)に成形された、本発明の別の実施形態を示す。
図18】器官(すなわち、標的部位)と隣り合った適所に移植された挿入装置の配置図である。
図19】罹患部を取り囲む血管系からの血液を含む部位近傍の適所に移植された挿入装置の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、挿入装置から光を生成する方法及びシステムを対象とし、挿入装置は、生体媒質または非生体媒質の内部に挿入されると活性化が可能である。この媒質は、UV領域及び可視光線領域の光に対して名目上不透明であってもよい。本発明の様々な実施形態において、生成される光は、ヒト被検体もしくは動物被検体を治療する目的で、または媒質中に変化を生じさせるために、ヒト被検体または動物被検体の内部で生成される。
【0021】
以下の考察では、1)ソラレンとそれらの光反応性、及び2)アルキル化剤とそれらの光反応性、ならびに他のそのような光活性化可能薬物についての従来の知識について説明する。様々な実施形態において、本発明は、本明細書に記載される挿入装置を介して、光活性化可能薬物と標的細胞との反応を引き起こすために、それらの経路及び他の経路を利用することができる。
【0022】
本明細書に記載される以下の文献の全ては、その全記載内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本発明の挿入装置によって活性化可能なソラレン及び関連化合物
米国特許第6,235,508号には、ソラレンが、アジア及びアフリカで数千年にわたり治療目的で使用されている天然由来の化合物であることが記載されている。ソラレンと光の作用は、白斑及び乾癬を治療するのに使用されている(PUVA療法;ソラレン長波長紫外線治療)。ソラレンは、塩基対、すなわち、アデニン、グアニン、シトシン、及びチミン(DNA)またはウラシル(RNA)の間のインターカレーションによって核酸二重らせんに結合することができる。2個のUV-A光子を続けて吸収するとき、その励起状態のソラレンは、チミンまたはウラシルの二重結合と反応し、核酸らせんの両方の鎖と共有結合する。この架橋反応は、チミン(DNA)塩基またはウラシル(RNA)塩基に特異的であるように思われる。結合は、ソラレンがチミンまたはウラシルを含む部位にインターカレートされる場合に進展することがあるが、最初の光付加物は、下に示すように、二重らせんの2本の鎖のそれぞれを架橋するために、追加のUVA光子を吸収して、二重らせんの対向した鎖上の別のチミンまたはウラシルと反応しなければならない。これは、2個以上の光子の同時吸収とは対照的に、図示のように、2個の単一光子の連続吸収である。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
Wiesehanの米国特許第4,748,120号は、血液または血液製剤の処置のための光化学除染プロセスによって置換された特定のソラレンの使用の例である。
【0027】
ソラレンの光活性化の間に形成される一重項酸素及び他の高反応性酸素種を除去するために、酸化防止剤などの添加剤が、8-MOP、AMT及びI-IMTなどのソラレンと共に使用されることがある。UV活性化により、このような活性酸素種が作り出され、これが本来なら正常の細胞に重大な損傷を与え得ることは周知である。ウイルスの不活化の多くは、ソラレンの光活性化のいずれかの効果ではなく、これらの活性酸素種の結果であり得る。
【0028】
最もよく知られている光励起性化合物のいくつかは、核酸インターカレータであるソラレンまたはクマリンの誘導体である。ソラレンとクマリンについては、この化学経路は、例えはクマリンについて以下に示すような様々な開環種の形成をもたらす可能性が高い。
【0029】
【化3】
【0030】
Midden(W.R.Midden,Psoralen DNA photobiology,Vol I1 (ed.F.P.Gaspalloco) CRC press,pp.1.(1988))は、ソラレンが不飽和脂質と光反応し、かつ分子酸素と光反応して、膜組織に致死損傷を引き起こすスーパーオキシド及び一重項酸素などの活性酸素種を生成するという根拠を提示している。
【0031】
米国特許第6,235,508号には、8-MOP及びAMTは、それぞれが無差別に細胞及びウイルスの両方に損傷を与えるため、受け入れがたい光増感剤であることが記載されている。光増感剤としてのフロクマリンに対する陽イオン側鎖の効果の研究は、Psoralen DNA Photobiology,Vol.I,ed.F.Gaspano,CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.,Chapter 2に概説されている。米国特許第6,235,508号には、この概説から次のことが収集されている。すなわち、ほとんどのアミノ化合物は、8-MOPと比較して、DNAに結合して架橋する能力がずっと低く、1級アミノ基の官能性が光結合及び架橋結合の両方に好ましいイオン種であることを示唆している。
【0032】
米国特許第5,216,176号には、表皮成長因子の光活性化阻害剤として、ある程度の有効性を有する多数のソラレン及びクマリンが記載されている。ソラレン/クマリン主鎖に含まれ得る広範な官能基の中に、ハロゲン及びアミンが含まれる。
【0033】
米国特許第5,984,887号には、CMVに感染した血液を処置するために、8-MOPを用いた体外循環光療法を使用することが記載されている。次いで、処置された細胞ならびに死滅ウイルス及び/または弱毒化ウイルス、ペプチド、ウイルス自体の天然のサブユニット(これらは細胞分裂時に放出され、及び/または血液中に排出される)、及び/または非感染性の病原性ウイルスを使用して、処置前に存在しなかったウイルスに対する免疫反応を生じさせる。
【0034】
本発明の挿入装置によって活性化可能な他の光活性化合物
他の光活性化合物または光励起性化合物は当技術分野において公知である。これらのうち、Warfield et alによる「Ebola Virus Inactivation with Preservation of Antigenic and Structural Integrity by a Photoinduable Alkylating Agent」と題された論文(J.Infect.Dis.2007 Nov 15;196 Suppl 2:S276-83)には、感染した血液をマウスから抽出し、抽出した血液にアルキル化剤、この場合はザイールエボラウイルス(ZEBOV)を不活化するヨードナフチルアジド(INA)を含有させて、血液をUV光(310~360nm)に曝すことにより、ZEBOVを生体外(ex situ)で処置する方法が記載されている。不活化エボラウイルスで処置したマウスは、エボラウイルスへの曝露に耐性を示した。これらの著者は、INAがエボラウイルスの脂質二重層に優先的に分割する疎水性化合物であると報告している。これらの著者は、「INA処置は構造的撹乱なしにZEBOVを完全に非感染性にする」ということ、及び「INA不活化ZEBOVは、免疫原性であり、致死的攻撃からマウスを保護した」ということを報告している。
【0035】
「Inactivation of West Nile virus and malaria using photosensitizers」と題する米国特許第7,049,110号には、液体中または表面上、好ましくは血液または血液製剤及び生物活性のあるタンパク質を含む液体中の微生物の不活化が記載される。効果的で無毒量の光増感剤を液体に加え、その液体を光増感剤を活性化するのに十分な光線照射に曝し、それにより微生物を不活化している。
【0036】
‘110特許には、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジンの光増感剤と、内因性アロキサジンまたはイソアロキサジンの光増感剤を含む他の光増感剤とが記載されている。‘110特許には、ウイルス(細胞外及び細胞内の両方)、細菌、バクテリオファージ、真菌、マラリアなどの血液透過性寄生虫、及び原生動物を含む様々な微生物を保有する宿主の治療が記載されている。典型的なウイルスには、後天性免疫不全症(HIV)ウイルス、A型、B型及びC型肝炎ウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、例えばI型及びII型の単純ヘルペスウイルス、ヒトTリンパ球向性レトロウイルス、HTLV-III、リンパ節腫脹ウイルスLAV/IDAV、パルボウイルス、輸血感染(TT)ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、西ナイルウイルス、ならびに当技術分野で知られている他のものが含まれる。バクテリオファージには、ΦX174、Φ6、λ、R17、T4、及びT2が含まれる。典型的な細菌には、P.aeruginosa、S.aureus、S.epidermis、L.monocytogenes、E.coli、K.pneumonia、及びS.marcescensが含まれる。ある特有の綱の微生物は、非スクリーニング微生物、すなわち現在の血液バンク処理によってスクリーニングされない微生物である。非スクリーニング微生物には、マラリア及び西ナイルウイルスが含まれる。微生物の1つの綱には、蚊によって伝達されるものが含まれ、マラリア及び西ナイルウイルスが含まれる。
【0037】
‘110特許には、内在性光増感剤の使用が望ましいことが記載され、核酸複製を妨害することによって機能する内因性光増感剤が含まれる。7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジンでは、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジンと核酸との間で起こると考えられる化学反応は、一重項酸素依存プロセス(すなわちII型機序)を経ずに、直接的な増感剤-基質相互作用(I型機序)によって進行する。さらに、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジンは、UV光に曝されたときには大量の一重項酸素を生成しないが、むしろ励起状態の増感剤種との電子移動反応を介した、基質(例えば、核酸)との直接的相互作用を通して、その効果を発揮するようである。
【0038】
Sharma et al.による「Safety and protective efficacy of INA-inactivated Venezuelan equine encephalitis virus: Implication in vaccine development」と題された論文(Vaccine,volume 29,issue 5,29 January 2011,pages 953-959)には、疎水性アルキル化化合物である1,5-ヨードナフチル-アジド(INA)は、INAを「全明状態」に曝露したとき、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)の毒性株を効率的に不活化することができると記載されている。Sharmaらは、INA-不活化V3000及びINA-不活化V3526の予防効果が、乳獣期マウスに疾患を引き起こさず、毒性のVEEV攻撃からマウスを防御する抗VEEV抗体反応を誘導することを実証した。Sharmaらは、INA-不活化V3526を投与されたマウスのいずれも、猫背姿勢、発育不全、嗜眠または麻痺などの疾患の臨床症状をまったく示さず、対照マウスと同様に成長したことを報告している。
【0039】
Heilman et al.による「Light-Triggered Eradication of Acinetobacter baumannii by Means of NO Delivery from a Porous Material with an Entrapped Metal Nitrosyl」と題された論文(J.Am.Chem.Soc.,2012,134 (28),pp 11573-11582 (May 11,2012))には、MCM-41宿主の柱状細孔に充填された光活性マンガンニトロシル、すなわち[Mn(PaPy3)(NO)](ClO4)({Mn-NO})が記載されている。Helimanらは、生理食塩水中の充填物質の懸濁液を低出力(10~100mW)の可視光に曝すと、NOの急速な放出が観察されたと報告している。放出された酸化窒素は、培養皿の処置領域から細菌を効果的に除去し、酸化窒素が寒天層を容易に貫通することを示した。この化合物を活性化するのに使用した光量は、100ミリワット/平方センチメートルであった。
【0040】
「CELLUAR AND VIRAL INACTIVATION」と題する米国特許第8,268,602号には、ワクチンとして使用することができる不活化ウイルス、細菌、真菌、寄生虫及び腫瘍細胞の組成物を提供する手順が記載され、同様にそのような不活化ウイルス、細菌、真菌、寄生虫及び腫瘍細胞を作製するための方法も提供される。さらに具体的に言うと、‘602特許には、感染体またはがん細胞を不活化する方法が記載され、それらは、疎水性の光励起性化合物、例えば、紫外線によって活性化される1,5-ヨードナフチルアジド(INA)に病原体または細胞を曝すことを伴う。
【0041】
挿入装置及び使用方法
本発明の一システムは、1)媒質、またはヒト被検体もしくは動物被検体の少なくとも一部(またはその中の反応物の光活性化によって変化させるべき媒質)を透過する開始信号を生成するように構成された開始供給源と、2)マイクロエレクトロニクスアセンブリユニットに関連した放出源を含む挿入装置とを備える。一実施形態のアセンブリユニットは、1)放出源用の、ヒト被検体もしくは動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または媒質中に変化を生じさせるために、所定の波長の光を放出するように構成された発光装置(例えば、発光ダイオードすなわちLED、またはエレクトロルミネセンス素子など)と、2)発光装置に電力を供給するオプションのバッテリと、3)開始信号を受信し、及び/または電力を放出源に加える、受信機(例えば、RFアンテナ)とを備える。アセンブリユニットは、開始信号を受信すると、発光装置に電力を供給し、それによってヒト被検体または動物被検体の内部へ、または媒質の内部へ、所定の波長の光を放出するように構成される。
【0042】
本発明の一実施形態では、挿入装置は、マイクロデバイスであるか、または挿入装置のアレイである。「マイクロデバイス」という語は、数百ミクロンまたはサブミクロンの寸法の形態を有した装置のことを指す。これらの好ましい寸法を有した挿入装置は、直接的または間接的に媒質中に変化を生じさせるために、所定の光波長で内部構造を照射することを必要とする、いくつもの医学的、物理的、及び/または化学的プロセスで使用することができる。例えば、様々な実施形態の挿入装置は、活性化可能薬剤を媒質に注入するためのチャネルまたはマイクロチャネルを備えることができる。これらのチャネルのいくつかは、薬物活性化の有効性を高める目的で、血液分離機能に使用することができる。様々な限定されない実施形態におけるチャネルまたはマイクロチャネルは、直径が1μm~200μmほどであり、典型的には直径が10μm~75μm、長さが約0.1~50cmであってよい。チャネルまたはマイクロチャネルは、例えば約1nl~約100μl、典型的には約10nl~20μlの容積を有した微小空洞に接続されるか、またはそれ自体が微小空洞を形成することができる。しかし、本発明の挿入装置は、より大規模に、または小規模にすることができる。
【0043】
次に、添付図面を細部にわたって参照する。図面では、同様の参照符号は対応する要素を指している。
【0044】
図1-1Aに示すように、本発明の一実施形態による例示的なシステムは、媒質4を対象にした開始エネルギー源1を有することができる。媒質4は、人工培地または生体媒質であってよい。活性化可能薬剤2は、媒質4全体にわたって分散させることができ、または被処置媒質に挿入されたことが示されている挿入装置3から、局所的に投与することができる。開始エネルギー源1は、開始エネルギーの送出を指示することが可能なコンピュータシステム5に、ネットワーク8を介して接続され得る。様々な実施形態において、挿入装置(複数可)3は、マイクロ波放射線または無線周波数放射線の信号を受信し、ヒト被検体または動物被検体における疾患もしくは障害を治療するため、またはその媒質中に物理的変化及び/または生物学的変化を生じさせるため、赤外域、可視域、または紫外域の1つ以上の所定の波長の放出光を生成する。
【0045】
本明細書に用いる「媒質中に変化を生じさせる」という語は、例えば薬物活性化、細胞や細菌やウイルスや酵母の殺滅、ラジカル生成、滅菌、重合、硬化、治療、放出光による局所的加熱などの光活性化反応の誘発を含むが、これに限定されない。生物学的変化の一例には、同様にして、媒質中の細胞生存率において応答を誘発する治療薬の熱活性化または光活性化が含まれる。薬物の光活性化、光線力学的療法、フォトバイオモジュレーション、及び光刺激などによって誘導される生体媒質における他の変化について、以下で詳細に論じる。
【0046】
様々な実施形態では、挿入装置(複数可)3は、生体適合性のためにシリカまたはポリマーの中に密閉される。これらの実施形態におけるシリカまたはポリマーは、挿入装置(複数可)3を取り囲む媒質4に向けて、赤外線光、可視光、または紫外線光を透過させることが可能である。図1-1Aに示すように、開始エネルギー7は、(例えば開始エネルギー源1から放射される形で)媒質4全体に行き渡る。場合によっては、開始エネルギー源1からの開始エネルギー7は、媒質中を部分的に透過するだけでよい。
【0047】
様々な実施形態では、開始エネルギー源1は、媒質の少なくとも一部を透過し、かつ挿入装置から光放出を誘発する周波数の電磁波を放出する、無線周波数源もしくはマイクロ波源または赤外線源であってよい。様々な実施形態において、放出光は、挿入装置(複数可)3を取り囲む媒質の内部のエネルギー調節要素6と相互作用することができる。以下でさらに詳細に説明するように、活性化可能薬剤2またはエネルギー調節要素6は、挿入装置(複数可)3から放出される光の効果を増強するプラズモニクス薬剤を含むことができる。コンピュータもしくはプロセッサまたはコンピューティングデバイス5は、開始エネルギー源を制御し、挿入装置(複数可)3の制御のために無線信号を供給する。コンピュータ5から開始エネルギー源への通信は、有線、光ファイバ、または無線通信ネットワーク8を介して行われる。
【0048】
図1-1Bは、本発明の別の実施形態による別システムを示す概略図である。システムにおいて、図1-1Aの開始エネルギー源1は、挿入装置(複数可)3に向けられる。同様にして挿入装置(複数可)3は、媒質4(例えば、液体または他の流体様媒質)の近傍に配置されかつ容器9内に保持された、エネルギー調節要素6を照射する。図1-1Bに示すように、挿入装置(複数可)3は、それらを媒質中に配置することによって、媒質が挿入装置(複数可)3を取り囲んでいる状態にある。本実施形態の挿入装置(複数可)3は、媒質の内側にあるため、活性化される媒質の近傍に密接している。
【0049】
容器9は、開始エネルギー7に対して「透明」な材料で作られている。例えば、プラスチック、石英、ガラス、またはアルミニウムの容器は、X線に対して十分に透明であり、一方、プラスチック、石英、またはガラスの容器は、マイクロ波または無線周波数の放射に対して透明である。挿入装置(複数可)3または密閉型挿入装置6は、媒質全体に均一に分散させることができ、または以下に説明するように、媒質の別個の部分に分離させるか、もしくはカプセル封入構造10によって、媒質から物理的にさらに分離させることができる。供給源11は、媒質4を容器9に供給する。
【0050】
したがって、本明細書に用いる「近傍に」は、挿入装置(複数可)3または密閉型挿入装置6が、完全に媒質内に、部分的に媒質の内側にもしくは部分的に媒質の外側に、媒質に隣接して、または完全に媒質外に配されることを指し、そこで挿入装置3からの光が媒質の一部または全部を照射する。
【0051】
図1-2Cは、本発明の別の実施形態によるシステムを示す概略図である。開始エネルギー源は、媒質が封入された容器に向けられる。この媒質は、UVまたは可視光の放出源を保持する密閉型構造を割り込ませることにより、挿入装置が媒質内で隔離された状態になっている。図1-2Cにおいて、密閉型構造10(UVまたは可視光の放出源を含む)は、外部開始エネルギー源1と一致した向きに揃えられている。本構成において、密閉型構造10のそれぞれは、それ自体が密閉型構造10のうちの他のものによって遮られることのない、外部開始エネルギー源1に対する「見通し線」を有する。他の実施形態では、密閉型構造10は、その方向にそのように揃えられていないが、その方向に対して垂直に整列させてもよく、または任意に配置してもよい。
【0052】
図1-2Dは、媒質内に挿入装置(複数可)3を流動床構成で隔離させた媒質を封入した容器に、開始エネルギー源が向けられる、本発明の別の実施形態によるシステムを示す概略図である。流動床20は、被処置液体が密閉型構造10の間を通過する構成において、密閉型構造10の内部に挿入装置(複数可)3を含む。密閉型構造10は、本明細書に記載のエネルギー調節薬剤及び/または他の発光体物質及び/またはプラズモニクス薬剤も含むことができる。
【0053】
図1-2C及び図1-2Dのいずれの構成でも、一実施形態において、被処置媒質は密閉型構造10によって流れ、密閉型構造10間の分離距離は、媒質におけるUV侵入深さよりも小さい距離に設定される。このように、図1-2C及び図1-2Dに示すように、密閉型構造10が被処置媒質の近傍に存在するために、処置される媒質が静止している必要はない。他の実施形態では、被処置媒質は静止していてもよい。
【0054】
本明細書に記載される本発明の一実施形態では、媒質中の挿入装置(複数可)3の濃度、または密閉型構造10間の間隔は、挿入装置(複数可)3が、媒質内において、媒質中へのUV侵入深さ未満で互いに分離されるように、設定される。エネルギー源が全ての発光粒子を「照らす」のに十分な強度を持つならば、高濃度は確かに有用であり、高UVフラックスが生成される。
【0055】
比較的澄んだ水性媒質の場合、UV-B放射照度は、0.2m~1mの間の水系試料への透過後に1%まで減少するが、UV-Aは数メートルほどを透過する。そのような媒質の場合、光放出源の濃度は、UV誘導放出が媒質全体にわたって透過するのを媒質自体が遮らない、光放出源の濃度に基づいて設定されなければならないのではなく、意図されたUVフラックスが、媒質中の薬剤の失活または活性化を生じさせるのに必要とされる時間によって決定される。媒質の近傍における光放出源の配置は、媒質の光学密度によって制限されない。
【0056】
本発明に記載される挿入装置(複数可)3は、米国特許第5,358,514号に記載される多くの電気部品及び筐体構成要素を含むことができる。‘514特許では、電極を縫合することなく、神経または筋肉に取り付けられ、‘514特許のマイクロデバイス(本発明に適している)が、最小量のエネルギーを用いて、神経または筋肉を刺激し、または神経または筋肉に関連する信号を感知することを可能にする。
【0057】
図2-1Aは、筋肉、神経または器官に自己付着させる対向電極または不活性電極22を持つ、本発明の挿入装置3の一実施形態の概略図である。図2-1Aに示すように、対向電極が装置筐体24に取り付けられている。本発明における電極24の主な機能は、処置される筋肉、神経または標的器官に装置3を取り付けることであるが、処置の一部として必要であれば、電極24が、筋肉、神経または標的器官に対し、電気パルスを供給することができる。筐体24の内部には、電子制御回路と、開始信号の受信用コイルと、電子制御回路、光放出源、または流体注入器の充電用または給電用のバッテリとがある。一実施形態では、挿入装置3は、体液及び体内組織、または挿入装置が配置される媒質の他の構成要素に対して不活性である、密封された筐体を備える。
【0058】
図2-1Bは、本発明の挿入装置3の一実施形態の概略断面図である。本実施形態は、簡略化のために2つの取り付け電極22を示すが、装置(複数可)3をどのように使用するのかに応じて、さらに多くの取り付け電極(または取り付け電極なし)を使用することができる。電極は、筐体24に封止された取り付け部分28によって筐体24の内側に接続される。図2-1Bに示すように、少なくとも1つの放出源、例えば発光源26が筐体24内に収容されている。発光源26には、同じまたは異なる波長の光を放出する1つ以上の発光ダイオードが含まれ得る。発光源26は光を発し、それは壁24を通り抜けて、装置3を取り囲む媒質の中に伝送される。発光源は、図2-1Bに、コイル巻線30の下に配置されて示されるが、筐体24内の他の場所に配置されてもよい。一実施形態では、導管44内の導管チャネル46には、液体貯留槽38からの液体(例えば、光活性化可能薬剤)と共に、装置3からの光を伝送するための光チャネルが含まれ得る。一実施形態では、導管チャネル46は、二重壁被覆の内部空間が光を伝える一方で外壁が流体を運ぶか、またはその逆の、二重壁被覆設計である。
【0059】
受信機として作用するコイル巻線30は、開始エネルギー源から信号を受信することができる。受信信号には、制御命令を含めることができる。これらの信号を整流して、筐体24内に電力を供給してバッテリ32を充電しなおすこともできる。バッテリ32は、ICチップ36、及び発光源または放出源26に電力を供給する。一実施形態では、コイル巻線30は電力用の信号を受信するように構成され、コイル22は制御信号を受信するように構成され、それらがICチップ36に供給される。他の実施形態の放出源26は、以下に説明するように、音波信号、赤外線信号、RF信号、または所定の種類の他のエネルギーを放出することができる。
【0060】
一実施形態では、ICチップ36は、iCode Philipsチップであってもよい。iCode Philipsチップは、高速アクセスが可能で、読取り/書込み時間が短い、規格に準拠したトランスポンダである。高周波数動作によって、最大で53kbaudの通信速度を可能にする。iCode Philipsチップは、フレキシブルなメモリ構造を有し、アンテナ用に数ターンのワイヤか、またはプリントされた金属箔線しか必要としない。iCode Philipsチップのメモリは4バイトブロックとして構成され、最初の2ブロックが、工場でプログラムされた8バイトの固有シリアル番号(UID)を含む。他のブロックには、挿入装置の動作用のプログラミング命令を格納することができる。
【0061】
一実施形態では、内部制御装置として機能するICチップ36を、液体貯留槽38の表面34に据える。液体貯留槽38は、例えば、光活性化可能薬物または光活性化可能接着剤などの光活性化可能物質を保持し得る。ポンプ/バルブ40は、壁24を通って装置3の外部に延びる導管44内の液体導管チャネル46に、液体貯留槽38から光活性化可能物質(複数可)(またはエネルギー調節薬剤及びプラズモン薬剤または光結合流体などの他の物質)を供給する/汲み上げることができる。図2-1Bに示す導管44は、壁挿入物42を介してマイクロデバイスの壁24に固定され、これによりデバイス3の内部構成要素へのアクセスとそれらの組み立てとを可能にしている。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、挿入装置3は、患者の皮膚の切開部を通した移植を可能にする大きさ及び重量である。一部の実施形態では、このような切開部は、皮下注射針の穿刺孔と同じくらい小さくてもよく、装置3は、このような針の内腔を通して移植される。他の実施形態において、切開は従来の方法で行うことができるが、比較的小さな寸法(必ずしも必要ではないが)、例えば約5~10mm未満の線寸法を有することがさらに好ましい。本発明の一実施形態によれば、液体貯留槽38は、導管44への外科的接続を介して、それ自体を補充することができる。
【0063】
挿入装置3は、そこに生理食塩水が流れる状態で、光ファイバプローブを持つ外科医によって、移植され得る。光ファイバプローブは、外科医が光ファイバプローブに目を通すことによって、神経、筋肉または臓器を見ることを可能にする。そして適切に配置されると、外科医は、電極(複数可)22を、筋肉、神経または器官の周りに配置することができる。
【0064】
本発明の様々な実施形態によれば、任意の型の自己付着式電極を、本発明の挿入装置と共に使用することができる。自己付着式電極は、例えば、米国特許第4,920,979号(らせん電極)、第4,934,368号(カフ電極)、または第4,573,481号(らせん電極アレイ)に記載されている。さらに、米国特許第4,026,300号(織布材料結合)または第4,590,946号(縫合された被着体にらせん状に巻かれて固定された電極)などに示されるように、縫合された被着体に取り付けられる縫合電極または縫合電極アレイを使用することもできる。一方、縫合された電極構成を使用することにより、自己付着式電極を使用する利点の1つである、移植の容易さが損なわれる。
【0065】
さらに別の実施形態では、挿入装置3は、所望の生物医学的パラメータ(例えば、電圧、体位、圧力、磁場や、pH、酸素、塩分、グルコースの濃度などの化学的パラメータなど)を感知し、そのような感知したパラメータを電気信号に変換し(まだ電気信号でない場合)、そのような感知した信号を体外の場所に向けて送信するセンサ(例えば、ICチップ36に含まれる)を含むことができる。
【0066】
一実施形態では、挿入装置3は、外部線源から挿入装置に電力を結合させるように、交流磁場に伴う磁束の結合に必要な誘導をもたらすために、個別の用途に応じて、近似的に多数の巻数(例えば、200回転以上)を持ったコイル30を含む。一実施形態では、挿入装置3はコイルを含まず、電力用のバッテリ32のみに依拠する。
【0067】
装置筐体24は、不活性ガスで充填することができる。筐体24を封止する前に、不活性ガスを挿入装置の中に導入してもよいし、挿入装置を不活性ガス雰囲気中で組み立ててもよい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、窒素、またはその混合物(例えば10%のヘリウム及び90%のアルゴンもしくはクリプトン混合物、または他の通常使用される適切な生物学的適合性ガスを含む)であってよい。封止は、エポキシ封止/エポキシ硬化を介して達成することができる。
【0068】
本発明の一実施形態の挿入装置3は、米国特許第5,271,724号に記載されているポンプ部品及び弁部品を含むように製造することができる。‘724特許には、医薬品投与用のマイクロバルブ(及び製造プロセス)が記載されている。本明細書でポンプ/バルブ40として使用される‘724特許には、ガラスウェハに結合されたフォトリソグラフィ技術によってエッチングすることができるシリコンまたは他の任意の材料のウェハが記載されており、これは本発明では液体貯留槽38として機能する。このシリコンウェハは、入口バルブ、ポンプチャンバ、及び出口バルブ(調整バルブを形成する)を形成するように機械加工される。ガラス封着ウェハが入口バルブの上方でシリコンウェハに結合され、圧電ディスクがポンプチャンバの壁に形成される。‘724特許の入口バルブで本明細書に好適なものは、その中心近くにオリフィスを有し、入口チャネルの側面に隣接して環状封止リングを有した実質的に円形の膜を含んでいる。このバルブが開いているとき、入口チャネルは、このオリフィス及び別のオリフィスによって、ポンプチャンバと連通する。‘724号特許で本明細書に好適なものでは、出口バルブに位置検出器が設けられている。
【0069】
本発明の一実施形態におけるマイクロポンプは、以下のように機能する。停止時に、入口バルブ及び出口バルブは閉鎖位置にある。電圧が印加されると、ポンプチャンバの壁が変形し、出口バルブが開くまでポンプチャンバの圧力が上昇する。次いで、ポンプチャンバに収容された液体が、出口チャネルに向けて、この場合は液体導管チャネル46に向けて推進される。この段階の間中、入口バルブは、ポンプチャンバ内の圧力によって閉鎖された状態に保持される。しかし、電位が取り除かれたり、逆転したりすると、その中の圧力は減少する。これにより、出口バルブの閉鎖と入口バルブの開放とがもたらされる。それによって液体は、液体貯留槽38からポンプチャンバ内に引き込まれる。
【0070】
あるいは、本発明の挿入装置(複数可)3は、米国特許第6,454,759号に記載されるマイクロポンプ装置及び通信装置を利用することができる。‘759特許には、長期間(1年まで)にわたり、管理された投薬量の複数薬物を分泌することができる、微細加工された完全一体型の薬物送達システムが記載されている。‘759特許装置は、スライバに類似した方法で、ヒトの皮膚の下に植え込むための鋭利な前縁を設けた細長い形状のインプラントを含む。‘759特許のインプラント(及び本明細書のポンプ/バルブ40に適したインプラント)は、1)微細機械加工され、一体化された、ゼロ動力で、高圧かつ定圧を生ずる1つ以上の浸透圧エンジンと、2)浸透圧エンジンのスイッチを入れ、薬物用出口ポートを開くための、低電力でアドレス指定が可能なワンショット形状記憶高分子(SMP)バルブと、3)薬物充填マイクロチャネルから圧力源を隔離するための微細加工高分子ピストンとを含む。‘759特許の装置(本明細書ではICチップ30の一部としてまたはそれに追加して好適な装置)には、インプラントのSMPマイクロバルブなどを作動させるオンボード電子機器を制御するための外付けの制御装置が含まれる。
【0071】
あるいは、本発明の挿入装置(複数可)3は、挿入装置(複数可)3の発光素子用に、米国特許出願公開第2011/0168976号に記載される構造化LED装置及び構造化LED部品の構造を利用することができる。‘976公報には、格子歪を低減し、無機LEDのp型ドーピングを向上させ、OLEDの担体注入及び担体再結合を促進する、マイクロ構造またはナノ構造の形態の利用が記載されている。この点で、本発明の挿入装置(複数可)3は、‘976刊行物のナノヘテロエピタキシ技術を利用して、ナノメートル、すなわち、5nmから<1000nm、特に50~500nm、例えば100nmの形態サイズの放出源を生成することができる。本発明では、これらのマイクロ放出源及びナノ放出源は、発光源26の根幹をなすものである。
【0072】
一実施形態では、外部制御装置(例えば、コンピュータ5)は、開始エネルギー源1からの一斉送信を介して、挿入装置3内の回路に伝達する。例えば、開始エネルギー源1は、マイクロセンサ3に制御情報を一斉送信するための発振器を含むことができる。マイクロセンサ3によって受信された信号は、ICチップ36内の復調回路によって復調され、その結果得られるデータ信号が、マイクロデバイス3を制御するように導く。
【0073】
ICチップ36は、次のような命令がプログラムされたメモリを持つ内部制御装置として機能する。この命令は、実行されると、制御装置に開始信号を認識させるとともに、LEDに電力を供給し、それによってヒト被検体もしくは動物被検体の内部に紫外線光を放出して、ヒト被検体もしくは動物被検体を治療するか、または媒質の内部に紫外線光を放出して、媒質中に変化を生じさせる命令である。ICチップ36は、命令がプログラム済みであってもよく、または開始信号によってプログラムされてもよい。そのような命令は、挿入装置を制御して、次の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、及び/または8)のうちの少なくとも1つを実行する。
【0074】
1)マイクロデバイス3内の発光源26のうちのいずれに電力を供給するかを選択し、それによって波長別の照射を提供する。
2)LED動作のための電力レベル、持続時間、及び/またはデューティサイクルを設定する。
3)ポンプ/バルブ40を作動させ、挿入装置から1つ以上の液体を注入する。
4)開始エネルギー源1及び/または他の外部線源からトランスポンダ情報を受信して、処置される対象または媒質の内部のマイクロデバイス3の空間的位置を得る。
5)空間情報をコンピュータ5へ一斉返信させる。
6)挿入装置3の温度を測定し、温度情報をコンピュータ5へ返信させる。
7)開始信号を認識して放出源26に電力を供給し、それによってヒト被検体もしくは動物被検体の内部に所定のタイプのエネルギーを放出して、ヒト被検体もしくは動物被検体を治療するか、またはそれによって媒質の内部に所定のタイプのエネルギーを放出して、媒質中に変化を生じさせる。
8)被検体もしくは被処置媒質へ一斉送信される開始信号を認識し、またはICチップ36にプログラムされた開始信号を認識して、時間、空間座標、または温度のトリガに基づき、放出源26を作動させる。
【0075】
本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3の1つ以上をカテーテルに取り付けることができる。図2-3Dは、カテーテル50に取り付けられた本発明の挿入装置3の一実施形態の概略図である。カテーテル50は、マイクロエレクトロニクスアセンブリユニット54を有した放出源カプセル52を含む。マイクロエレクトロニクスアセンブリユニット54は、例えば、図2-1B、ICチップ36、及び放出源26に関して先に述べたように、UVまたは可視光の放出源、開始信号を受信する受信機、及び対応する回路を含む。マイクロエレクトロニクスアセンブリユニット54は、開始信号を受信すると、放出源に電力を供給し、それによってヒト被検体または動物被検体の内部の中に所定のタイプのエネルギーを放出して、ヒト被検体または動物被検体を治療するか、または生体媒質中もしくは非生体媒質中に変化をもたらすように構成される。カテーテル50は、その遠位端に、患者に挿入するための本発明の挿入装置(複数可)3の1つ以上を含む放出源カプセル52を有した挿入スリーブ60を備える。
【0076】
最初に挿入されるカテーテルの端に、図2-3D中、膨張状態で示される膨張可能なバルーン62を配置することができる。カテーテル50内に、冷却水管64及びセンサ線66を配置することもできる。
【0077】
本発明の一実施形態では、複数の挿入装置(複数可)3を標的腫瘍部位に取り付けることができる。本発明の一実施形態では、挿入装置3は、望ましい反応を誘発するためにUV(または可視)光を提供する。以下に詳述するように、UV及び可視発光ダイオード、ならびにUV及び可視光放出エレクトロルミネセンス素子は、当技術分野で公知であり、例えば、放出源26として本発明において使用可能である。光開始は、様々な医薬、調合薬及び化学反応で用いられる既知の機序である。本発明の一実施形態では、360nm(+/-50nm)で光開始を行って、例えば、標的腫瘍部位の異常細胞または異常細胞核の内部にソラレン(及び生物学的治療機能を有するソラレン誘導体)を誘発することができる。
【0078】
本発明の光活性化処置
何か特定の理論に縛られること、または何らかの形で限定されることを意図するものではないが、読者が本発明の理解及び認識を得るのに役立つように、科学的原理及び定義に関する以下の理論的考察を提供する。
【0079】
本明細書に用いる「被検体」という語は、ヒトに限定されることを意図するものではなく、動物、植物、または任意の適切な生物有機体を含むこともできる。
【0080】
本明細書に用いる「細胞増殖障害」という語句は、所与の生理学的状態及び生理学的条件の下で、細胞集団の成長速度が、所望の速度よりも小さいか、または所望の速度よりも大きい、全ての症状を指す。好適には、治療目的のために問題にしている増殖速度は、所望の速度よりも速いものであるが、所望の速度よりも遅い症状であっても、本発明の方法によって処置することができる。典型的な細胞増殖障害としては、がん、細菌感染、臓器移植の免疫拒絶反応、固形腫瘍、ウイルス感染、自己免疫疾患(例えば、関節炎、狼瘡、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群、多発性硬化症)、またはこれらの組合せ、及び細胞増殖が正常細胞と比較して遅い、再生不良性貧血などの、再生不良性病態を挙げることができるが、これらに限定されない。本方法を用いる治療にとって特に好適な細胞増殖障害は、がん疾患、黄色ブドウ球菌(特に、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌すなわちMRSAなどの抗生物質耐性株)症、及び自己免疫疾患である。
【0081】
本明細書に用いる「活性化可能薬剤」とは、活性化信号(例えば、1つ以上の光子)が不在のときは、不活性状態で標準的に存在する薬剤のことである。薬剤が活性化条件下で活性化信号によって活性化される場合、薬剤は、媒質中で所望の薬理学的効果、細胞効果、化学効果、電気的効果、または機械的効果(すなわち、媒質における所定の変化)を生じさせることができる。
【0082】
対応する薬剤を活性化するために使用され得る信号には、限定されるものではないが、特定の波長(例えば、X線、紫外線、または可視光)の光子が含まれ得る。例えば、光増感剤などの活性化可能薬剤は、UV-A放射線によって(例えば、媒質中で内部的に発生するUV-A放射線によって)活性化され得る。例えば、光増感剤などの活性化可能薬剤は、UV-B放射線またはUV-C放射線によって活性化され得る。一旦活性化すると、次に、その活性状態にある薬剤は、所定の変化を直ちに生じさせるように進めることができる。
【0083】
活性化すると、活性化可能薬剤は、限定されるものではないが、有機体活性の増加、有機体活性の減少、アポトーシス、及び/または代謝経路のリダイレクトを含む変化をもたらし得る。
【0084】
本明細書に用いる「活性化可能な医薬品」(あるいは「光活性薬剤」またはPAとも称する)は、活性化信号が不在のときは、不活性状態で標準的に存在する薬剤である。薬剤が活性化されると、標的細胞に対する所望の薬理作用(すなわち、好ましくは所定の細胞変化)に影響を及ぼすことができる。
【0085】
光活性化合物は、活性状態の特定の細胞構造に(モノ付加物形成または架橋形成で)結合することによって、その薬剤効果を達成する。光活性化合物は、活性化信号が与えられるときに、標的細胞構造に対して物理的に近接している必要がある。活性化条件のいくつかの例としては、温度、pH、配置、細胞の状態、補因子の有無が含まれ得るが、これらに限定されない。活性化可能な医薬品の選択は、所望の細胞変化、所望の活性化形態、ならびに適用され得る物理的制約及び生化学的制約などの多数の因子に大きく依存する。
【0086】
例えば、活性化可能な医薬品は、挿入装置からのUV光(または可視光)によって活性化されると、細胞変化に影響を及ぼす場合がある。細胞変化には、アポトーシス、溶解、代謝経路のリダイレクト、特定の遺伝子の発現上昇、特定の遺伝子の発現低下、サイトカインの分泌、サイトカイン受容体応答の変化、活性酸素種の生成もしくは調節、またはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
活性化可能な医薬品が、その所望の効果を達成し得るための機序は、具体的に限定されない。そのような機序には、所定の標的に対する直接的作用、及び生化学的経路の変化を介した間接的作用が含まれ得る。好ましい直接作用機序は、核DNA、mRNA、rRNA、リボソーム、ミトコンドリアDNA、または任意の他の機能的に重要な構造などの、重要な細胞構造に薬剤を結合させることによるものである。間接的機序には、正常な代謝経路を妨げる活性化時の代謝産物の調節またはこれを放出すること、標的化細胞応答を変化させるために活性化時に化学信号(例えば作用薬または拮抗薬)を放出すること、及び他の適切な生化学的変化または代謝性変化が含まれ得る。
【0088】
1つの好適な実施形態では、活性化可能な医薬品は、治療効果のある量で、DNAまたはミトコンドリアに化学的に結合することができる。本実施形態では、活性化可能な医薬品、好ましくは光活性化可能薬剤は、例えばCR及び/またはエネルギー調節薬剤によって内部的に発生した光に、原位置(in situ)で曝露される。
【0089】
活性化可能薬剤は小分子であってもよい。つまり、タンパク質などの生体分子、核酸もしくは脂質、超分子集合体、ナノ粒子、ナノ構造体、またはそれらの組合せ、あるいは一度活性化された薬剤活性を有する任意の他の分子実体であってよい。
【0090】
さらなる光活性薬剤としては、カルベン前駆体、ナイトレン前駆体、チオ誘導体、ベンゾフェノン、及びハロゲン化ピリミジンが挙げられるが、これらに限定されない。このような光化学は、タンパク質-DNA光架橋を得るために日常的に使用されているが、例えば、X線放射をUV放射に変換して、核種を活性化し、DNA光架橋を達成する、本明細書に提示される間接的方法を用いて達成された例はない。
【0091】
内因性に基づく誘導体には、内因性の光活性化分子から合成的に誘導された類似体及び相同体が含まれる。これらの類似体及び相同体は、それらが誘導された光増感剤の少数(1個から5個の炭素)のアルキル置換基またはハロゲン置換基を、有していてもよく、または欠いていてもよい。また、これらの類似体及び相同体は、その官能基と重要な非毒性とを保存している。内因性分子は本質的に非毒性であり、光線照射後に有毒な光産物を産出することがない。
【0092】
所定の細胞変化の性質は、所望の薬剤治療効果によって決まる。典型的な細胞変化には、形態変化、アポトーシス、壊死、特定の遺伝子の発現上昇、特定の遺伝子の発現低下、サイトカインの調節もしくは分泌、サイトカイン受容体応答の変化、またはそれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0093】
例えば、活性化可能な医薬品は、挿入装置からのUV光(または可視光)によって活性化されると、細胞変化をもたらす場合がある。細胞変化には、アポトーシス、代謝経路のリダイレクト、特定の遺伝子の発現上昇、特定の遺伝子の発現低下、サイトカインの分泌、サイトカイン受容体応答の変化、活性酸素種の生成、またはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の細胞増殖障害を治療する好適な方法では、光活性化可能薬剤を患者に投与し、挿入装置からのUV光(または可視光)によって光活性化可能薬剤を励起して、細胞損傷(または細胞死滅)を誘発し、自家ワクチン効果を生み出す。
【0095】
さらに、エネルギー調節薬剤が被処置媒質に含まれてもよい。エネルギー調節薬剤は、UV光を異なる波長のUV光へダウンコンバートすることによって、または可視光もしくは赤外光へダウンコンバートすることによって、内部的に発生したUV光を補うために使用することができる。
【0096】
本明細書に用いる「エネルギー調節薬剤」は、供給源から入力されたエネルギーを受け取り、次いで受容対象に異なるエネルギーを再放出することができる薬剤を指す。分子間のエネルギー移動は、様々な形で起こり得る。エネルギーの形態は、実際は、電子的、熱的、電磁気的、動力学的、または化学的であり得る。エネルギーは、ある分子から別の分子に(分子間移動)、または分子のある部分から同じ分子の別の部分に(分子内移動)、移動させることができる。例えば、調節薬剤は、電磁エネルギーを受け取り、普通なら光放出近傍の環境を加熱するのに寄与するはずのエネルギーを、熱エネルギーの形で再放出することができる。調節薬剤の中には、エネルギー保持時間が非常に短いものもあれば(fsほど、例えば蛍光性分子)、これに反して半減期が非常に長いものもある(数分から数時間ほど、例えば発光性分子または燐光性分子)。エネルギー調節薬剤材料は、好ましくは、PA分子を励起するために、X線及び/またはUV光を吸収し、異なる波長の光を放出することができる任意の材料を含むことができる。
【0097】
エネルギー調節薬剤として、量子ドット、半導体ナノ構造、及び量子ドットや半導体物質などに関連する様々な材料を使用することができる。エネルギー調節薬剤として、シンチレータ材料を使用することができる。様々なシンチレータ材料は、ルミネセンス発光を放出するエネルギー調節薬剤として使用することができ、このルミネセンス発光は、PAシステムを励起するために使用することができる。
【0098】
適切なエネルギー調節薬剤としては、燐光体、シンチレータ、生体適合性蛍光金属ナノ粒子、蛍光色素分子、金ナノ粒子、ポリアミドアミンデンドリマによって密閉された水溶性量子ドットなどの量子ドット、発光酵素、生体適合性燐光性分子、複合電磁エネルギーハーベスタ分子、高輝度ルミネセンスが可能なランタニドキレート、金属(金、銀など)、半導体材料、有機固体、金属錯体、無機固体、結晶、希土類材料(ランタニド)、ポリマー、及び励起子特性を示す材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
好ましい実施形態では、エネルギー調節薬剤は、挿入装置(複数可)3からのUV光を、例えば可視光を含む異なる波長の光に変換できる、例えば蛍光体などのダウンコンバータを含む。これらのダウンコンバータを組み合わせて使用すると、あらゆる可視光の活性化反応を活性化するだけでなく、様々なUV誘導光化学反応を活性化することができる。
【0100】
ルミネセンス粒子(ダウンコンバータ)の例では、金粒子(例えば金のナノ粒子など)、BaFBr:Eu粒子、CdSe粒子、Y:Eu3+粒子、及び/または例えばZnS:Mn2+;ZnS:Mn2+、Yb3+、Y:Eu3+;BaFBr:Tb3+;及びYF:Tb3+などの他の公知の誘導発光体物質が含まれ得る。ダウンコンバータのより具体的な例には、BaFCl:Eu2+、BaSO-:Eu2+、LaOBr:Tm3+、YTaO、YTaO:Nb()、CaWO、LaOBr:Tb3+、YS:Tb3+、ZnS:Ag、(Zn,Cd)S:Ag、GdS:Tb3+、LaS:Tb3+が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明の一態様では、ダウンコンバートするエネルギー調節薬剤は、金属酸化物;金属硫化物;ドープされた金属酸化物;及び混合金属カルコゲニドからなる群から選ばれた無機微粒子を含むことができる。本発明の一態様では、ダウンコンバート材料は、Y、YS、NaYF、NaYbF、YAG、YAP、Nd、LaF、LaCl、La、TiO、LuPO、YVO、YbF、YF、NaドープYbF、ZnS;ZnSe;MgS;CaS;CaWO,CaSiO:Pb、及びアルカリ鉛ケイ酸塩(SiO、B、NaO、KO、PbO、MgO、またはAgの組成、及びそれらの組合せ、合金または層を含む)のうちの少なくとも1つを含むことができる。本発明の一態様では、ダウンコンバート材料は、Er、Eu、Yb、Tm、Nd、Mn、Tb、Ce、Y、U、Pr、La、Gd及び他の希土類元素種またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つが含まれたドーパントを含むことができる。ドーパントは、モル濃度による0.01%~50%の濃度で含まれ得る。
【0102】
本発明の一態様では、ダウンコンバート用のエネルギー調節薬剤は、ZnSeS:Cu,Ag,Ce,Tb;CaS:Ce,Sm;LaS:Tb;YS:Tb;GdS:Pr,Ce,F;LaPOなどの材料を含むことができる。本発明の他の態様では、ダウンコンバート材料は、ZnS:Ag及びZnS:Cu,Pbなどの蛍光体を含むことができる。本発明の他の態様において、ダウンコンバート材料は、他の金属がドープされたZnSeS族の合金であってもよい。例えば、適切な材料には、ZnSexS:Cu,Ag,Ce,Tbが含まれる。ただし、以下のx値、y値及び中間値が条件に合う。すなわちx:yはそれぞれ、0:1;0.1:0.9;0.2:0.8;0.3:0.7;0.4:0.6;0.5:0.5;0.6:0.4;0.7:0.3;0.8:0.2;0.9:0.1;及び1.0:0.0である。
【0103】
本発明の他の態様において、ダウンコンバート用のエネルギー調節薬剤は、フッ化イットリウムナトリウム(NaYF)、フッ化ランタン(LaF)、オキシ硫化ランタン(LaS)、オキシ硫化イットリウム(YS)、フッ化イットリウム(YF)、イットリウムガレート、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、フッ化ガドリニウム(GdF)、フッ化イットリウムバリウム(BaYF、BaY)、オキシ硫化ガドリニウム(GdS)、タングステン酸カルシウム(CaWO)、酸化イットリウム:テルビウム(YtTb)、オキシ硫化ガドリニウム:ユーロピウム(GdS:Eu)、オキシ硫化ランタン:ユーロピウム(LaS:Eu)、オキシ硫化ガドリニウム:プロメチウム,セリウム,フッ素(GdS:Pr,Ce,F)、YPO:Nd、LaPO:Pr、(Ca,Mg)SO:Pb、YBO:Pr、YSiO:Pr、YSi:Pr、SrLiSiO:Pr,Na、及びCaLiSiO:Prなどの材料であってよい。
【0104】
本発明の他の態様では、ダウンコンバート用のエネルギー調節薬剤は、KSrPO:Eu2+,Pr3+、NaGdF:Eu、ZnSiO:Tb3+,Yb3+、Ce3+イオン及びTb3+イオンを共ドープしたβ-NaGdF、GdS:Tm、BaYF:Eu3+、または可視光もしくはUV光の曝露の結果、(UVからNIRへ連鎖的に)NIRを放出する他のダウンコンバータなど、近赤外(NIR)ダウンコンバージョン(DC)蛍光体であってよい。
【0105】
本発明の一実施形態では、上記の一部の蛍光体は、390~410nmの範囲で吸収し、次いでUV放射を、赤色側に偏移した放出光へと次々にダウンコンバートして、可視において活性化させることができる。一例として、励起波長が300nm~450nmの間であり、発光は、6MgO、As:Mn4+の場合、及び3.5MgO、0.5MgF、GeO:Mn2+の場合と同様に、650nmを中心として展開することができる。
【0106】
本発明の様々な実施形態では、以下の発光ポリマーもエネルギー調節薬剤として好適である。ポリ(フェニレンエチニレン)、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(ピリジルビニレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(アセチレン)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(フルオレン)、及び同類のもの、ならびにコポリマー及び/またはそれらの誘導体である。
【0107】
本発明のエネルギー調節薬剤の多くはダウンコンバージョン薬剤(すなわち、高エネルギーの励起が低エネルギーの放出を生成する)であり、一方、米国特許第7,008,559号(この全記載内容は参照により本明細書に援用される)には、ZnSのアップコンバージョン性能、この場合、767nmで励起すると可視域の発光が得られることが記載されている。米国特許第7,008,559号に記載された、ZnS、ならびにEr3+ドープされたBaTiOナノ粒子、及びYb3+ドープされたCsMnClを含む材料は、本発明の様々な実施形態において好適である。この場合に、アップコンバータは、UVダウンコンバートに続いて、ダウンコンバートされた可視または赤外線波長をアップコンバートすることによって、目的の標的波長を生成するエネルギーカスケードのさらなる調整を可能にすることができる。
【0108】
したがって、本発明の様々な実施形態では、アップコンバータは、ダウンコンバータ(またはダウンコンバータの混合物)と組み合わせて、または様々なアップコンバータと組み合わせて使用することができる。本発明に適した様々なアップコンバータには、CdTe、CdSe、ZnO、CdS、Y、MgS、CaS、SrS及びBaSが含まれる。そのようなアップコンバージョン材料は、任意の半導体、さらに具体的に言うと、限定するものではないが、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体、及び酸化物半導体、ならびにそれらのナノ粒子、例えばZn1-xMn、Zn1-xMnSe、Zn1-xMnTe、Cd1-xMnS、Cd1-xMnSe、Cd1-xMnTe、Pb1-xMn、Pb1-xMnSe、Pb1-xMnTe、Mg1-xMnS、Ca1-xMn、Ba1-xMn及びSr1-x等(ただし、0<x≦1、及び0<y≦1)であってよい。上記の半導体の複合化合物もまた、本発明での使用が企図される。例えば、(M1-z1-xMn1-yBy(M=Zn、Cd、Pb、Ca、Ba、Sr、Mg;N=Zn、Cd、Pb、Ca、Ba、Sr、Mg;A=S、Se、Te、O;B=S、Se、Te、O;0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1)である。このような複合化合物の例としては、Zn0.4Cd0.4Mn0.2S及びZn0.9Mn0.10.8Se0.2の2つが挙げられる。さらなるコンバージョン材料には、ほんの数例の典型的な化合物を挙げると、BaF、BaFBr、及びBaTiOなどの絶縁体及び非導電性材料が含まれる。本発明に適した遷移及び希土類イオン共ドープ半導体には、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体、及び酸化物半導体、ならびにそれらのナノ粒子、例えばZnS;Mn;Er;ZnSe;Mn,Er;MgS;Mn,Er;CaS;Mn,Er;ZnS;Mn,Yb;ZnSe;Mn,Yb;MgS;Mn,Yb;CaS;Mn,Ybなど、及びそれらの複合化合物(M1-zNz)1-x(Mn1-q)xA1-yBy(M=Zn、Cd、Pb、Ca、Ba、Sr、Mg;N=Zn、Cd、Pb、Ca、Ba、Sr、Mg;A=S、Se、Te、O;B=S、・・・0<z≦1、0<q≦1)が含まれる。
【0109】
実際に、いくつかのナノ粒子、例えばZnS:Tb3+,Er3+;ZnS:Tb3+;Y:Tb3+;Y:Tb3+,Er3+;ZnS:Mn2+;ZnS:Mn,Er3+などは、2つの機能を有することが当技術分野では知られ、ダウンコンバージョンルミネセンス及びアップコンバージョンルミネセンスの両方を機能する能力がある。
【0110】
毒性、フリーラジカル種の生成を低減するため、またはこれらのナノ粒子もしくは挿入装置(複数可)に、生体不活性もしくは生体適合性をもたせるために、本明細書に記載される本発明の一実施形態では、ナノ粒子及び/または挿入装置(複数可)をシリカで被覆する。シリカは、塗料や磁性流体から高品質の紙コーティングまで、工業用コロイド製品のコーティング材として幅広く使用されている。そのうえ、シリカは化学的及び生物学的に不活性であり、また光学的に透明でもある。本発明に適した他のコーティングには、ポリメチルメタクリレート(PMMA)コーティング及びエチルセルロースコーティングが含まれる。一旦コーティングまたは密閉されると、挿入装置(複数可)は、好ましくは滅菌され、かつ滅菌環境の中にパッケージ化され、患者または被検体に挿入するのに好適である。他のコーティング、例えば、物理蒸着反応装置から得られるダイヤモンドライクコーティングなどを使用することができる。化学蒸着から得られる(ナノ結晶性ダイヤモンドのような)コーティングを使用可能である。他のコーティング、例えば、ゾル-ゲル法から得られる(ケイ酸塩コーティングのような)コーティングが好ましい。体内に挿入する前に、様々なコーティング方法を使用して、マイクロデバイスをコーティングすることができる。
【0111】
さらに、エネルギー調節薬剤は、単独で、または一連の2つ以上のエネルギー調節薬剤として使用することができ、エネルギー調節薬剤が、蛍光体もしくはシンチレータの光からエネルギーカスケードをもたらす。このように、カスケードにおける第1のエネルギー調節薬剤がUV光を吸収し、それを別のエネルギーに変換し、次にカスケードにおける第2のエネルギー調節によって吸収され、カスケードの終わりに到達するまで同じように続き、カスケードにおける最後のエネルギー調節薬剤が、活性化可能な医薬品を活性化するのに必要なエネルギーを放出する。
【0112】
本発明の一実施形態では、化学反応カスケードを誘発することができる。挿入装置(複数可)3からのUV光または可視光は、化学物質を活性化することができ、順に化学物質は、フォトニック経路と並行して、またはそれとは独立して、生物学的治療を活性化することができる。
【0113】
エネルギー調節薬剤または光活性化可能薬剤は、細胞標的化の目的で担体にさらに結合され得る。例えば、UVまたは可視光を発する挿入装置は、物理的挿入によって腫瘍部位に集中させることができる。
【0114】
一般に、光活性化可能薬剤は、本発明の挿入装置(複数可)3からのUVまたは可視の光によって励起され、それに続く照射、共鳴エネルギー転移、励起子移動、電子注入、または化学反応をもたらして、望まれる所定の細胞変化を引き起こし得る活性化エネルギー状態になる。一実施形態では、光活性化可能薬剤は、活性化されると、細胞内のDNAもしくはRNAまたは他の構造に結合する。薬剤の活性化エネルギー状態は、細胞に損傷を与え、アポトーシスを誘発することができる。アポトーシスのメカニズムは、細胞増殖障害の成長速度を低下させる免疫反応の増強と関連しており、患者の免疫系の状態、腫瘍中の薬剤の濃度、刺激に対する薬剤の感受性、及び刺激の長さに応じて、固形腫瘍を縮小させる可能性がある。
【0115】
薬物分子が励起光を吸収すると、電子は基底状態から励起電子状態に遷移する。その後、電子励起エネルギーは、放射放出(ルミネセンス)及び無放射性減衰チャネルを介して緩和される。分子が励起エネルギーを吸収すると、分子は、Sから、種々のS、・・・、Sにおける励起一重項状態のうちの1つの振動準位Sに上昇する。凝集媒質(組織)において、S状態の分子は、振動緩和(VR)プロセスによって10-13~10-11秒以内に急速に不活性化し、それらがSのあり得る最低振動準位に必ずあるようにする。VRプロセスは電子遷移よりも速いので、分子が失活して、対応する励起電子状態の低振動準位になるとき、いかなる超過の振動エネルギーも急速に失われる。この超過のVRエネルギーは、周囲媒質に熱エネルギーとして放出される。S状態から、分子は、内部転換(IC)プロセスを介して、Sn-1などの低電子状態である等エネルギー振動準位へ急速に不活性化する。ICプロセスは、同じ多重度の状態間の遷移である。その後、分子は、VRプロセスを介して、最低準位のSn-1準位まで失活する。一連のVRプロセスと直後に続くICプロセスとによって、分子は基底状態Sに急速に不活性化する。このプロセスは、周囲媒質に熱エネルギーとして放出される超過のVRエネルギー及びICエネルギーをもたらし、光吸収薬物分子を取り巻く局所環境の過熱を引き起こす。生成された熱は、局所の細胞または組織の破壊をもたらす。光吸収種には、組織内の天然発色団、またはインドシアニングリーン、ナフタロシアニン、ならびに遷移金属、金属ナノ粒子、及び金属のナノシェルが配位したポルフィリンなどの外因性色素化合物が含まれる。しかしながら、天然の発色団は、非常に低い吸収に悩まされる。外因性光熱剤の選択は、それらの強力な吸収断面積と高効率の光熱変換とに基づいて行われる。この特徴は、異常細胞の局所損傷を引き起こすのに必要なエネルギーの量を大幅に最小化し、治療方法を侵襲性の少ないものにする。
【0116】
本発明の挿入装置を用いた光線力学的療法(PDT)
PDTは、比較的新しい、光に基づいた治療法であり、United States Food & Drug Administration(FDA)によって、早期及び後期の肺癌治療向けに最近になって承認されている。他の国々でも、様々ながんの治療法としてPDTが承認されている。化学療法、放射線療法、及び外科手術とは異なり、PDTは、小細胞癌であろうと非小細胞癌であろうと、全ての細胞型の治療に有用である。PDTは、組織を破壊するか、または変性させる生体内での光力学的作用により、特別な光活性のある薬物群に対する光作用を用いて、がんなどの疾患を治療することを含む[Dougherty T.J.and Levy J.G.,「Photodynamic Therapy and Clinical Applications」,Biomedical Photonics Handbook,Vo-Dinh T.,Ed.,CRC Press,Boca Raton FL (2003)]。PDTは、もともと様々ながんの治療のために開発されたもので、現在では、前がん症状、例えば日光角化症、バレット食道における高度異形成、及び非がん性症状、例えば様々な眼疾患、例えば加齢黄斑変性症(AMD)の治療を含めて使用されている。光線力学的療法(PDT)は、様々ながん(肺、食道)、及びAMDの両方を対象にして、世界的に商業化のために承認されている。本発明の一実施形態では、上記の挿入装置は、PA薬物を直接に活性化すること、または内因性酸素を直接に励起することができる。例えば、一実施形態では、挿入装置は、光増感剤(下記の説明を参照)と相互作用する可視光を放出し、次に光増感剤が、患部近傍で一重項酸素または他のラジカル種を生成する。別の実施形態では、挿入装置は、患部近傍で一重項酸素または他のラジカル種を(内因性酸素から)生成する紫外線または可視光を放出する。
【0117】
PDTプロセスは3つの要素を必要とする。つまり、(1)PA薬物(すなわち、光増感剤)、(2)光増感剤を励起できる光、及び(3)内因性酸素である。想定される細胞傷害性薬剤は、以下のように、II型の光化学プロセスに従って形成された、基底状態である三重項酸素の電子励起状態である一重項酸素である。
PA+hν→PA(S) 励起
PA(S)→PA(T) 一重項の三重項状態への項間交差
PA(T)+O +PA 薬物から一重項酸素へのエネルギー移動
上式で、PA=基底状態の光活性薬物、PA(S)=励起一重項状態、PA(T)=励起三重項状態、 =酸素の一重項励起状態である。
【0118】
三重項状態は比較的長い寿命(μ秒から数秒)を持つので、励起三重項状態へ効率的に項間交差する光増感剤のみが、一重項酸素を生成するために、酸素と衝突するのに十分な時間を持つ。基底状態と一重項酸素との間のエネルギー差は、94.2kJ/molであり、約1270nmの近赤外における遷移に対応する。臨床用途のほとんどのPA光増感剤は、40~60%の範囲の三重項量子収率を有し、一重項酸素収率がわずかに低い。競合するプロセスには、蛍光または内部転換(環境または周囲媒質へのエネルギー損失)による基底状態への失活によるエネルギーの損失が含まれる。
【0119】
また一方、一重項酸素が高効率であることは望ましいが、治療が臨床的に有用であるには決して十分ではない。薬物動態、薬力学、生体内での安定性及び許容される毒性もまた、重要な役割を果たす[Henderson BW,Gollnick SO,「Mechanistic Principles of Photodynamic Therapy」,Biomedical Photonics Handbook,Vo-Dinh T.,Ed.,CRC Press,Boca Raton FL (2003)]。例えば、同様に必然的に励起光に曝露される正常な組織と比べて、治療される腫瘍または他の組織では、相対的に選択的な取込みをすることが望ましい。光増感剤の細胞内局在性などの薬力学的問題は、ある種の細胞小器官が他の細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)よりもPDT損傷に対して感受性が高いように思われることから、重要であり得る。PDT薬物活性に関連する重要な機序は、細胞におけるアポトーシスを伴う。光を吸収すると、光増感剤(PS)またはUV光は、ラジカル及び一重項酸素などの細胞傷害性種の直接または間接的な生成をもたらす化学反応を開始する。細胞傷害性種と細胞内小器官及び巨大分子(タンパク質、DNAなど)との反応は、PDT薬物を宿した細胞のアポトーシス及び/または壊死を引き起こし得る。がん細胞におけるPDT薬物分子の優先的蓄積は、本発明の挿入装置(複数可)3で可能な腫瘍への光の局所的送達と組み合わせて、がん性病変の優先的破壊をもたらし得る。他の従来の抗がん治療と比較して、PDTは、正常細胞の全身性の破壊を伴わない。直接的な細胞殺滅に加えて、PDTは、血管系に作用し、腫瘍への血流を減少させてその壊死を引き起こすこともできる。特定の状況では、PDTは、手術に代わる低侵襲性の手段として使用することができる。
【0120】
PDTには、ポルフィリン系増感剤を含むいくつかの化学種が用いられている。精製ヘマトポルフィリン誘導体であるPhotofrin(登録商標)は、アメリカ食品医薬品局の承認を受けている。ポルフィリンは、これらの薬物分子が640nmより短い波長の光を吸収するため、一般に、皮膚上もしくは皮膚直下の腫瘍、または内臓器官もしくは内腔の内側の腫瘍に用いられる。組織の深部で発生する腫瘍については、NIR領域に吸光度を有する第2世代の増感剤、例えば、ポルフィリンに基づく系[R.K.Pandey,「Synthetic Strategies in designing Porphyrin-Based Photosensitizers」,Biomedical Photonics Handbook,Vo-Dinh T.,Ed.,CRC Press,Boca Raton FL (2003)]、塩素、フタロシアニン、及びナフタロシアニンなどが研究されている。
【0121】
従来のPDTは、腫瘍中にいくつかの光増感剤を正常組織よりも長い時間、保持することが知られ、したがって本発明向けに、治療の選択性における潜在的な改良を提供する。Comer C.,”Determination of [3H]- and [14C] hematoporphyrin derivative distribution in malignant and normal tissue,” Cancer Res 1979,3 9:146- 15 1 ;Young SW,et al.,”Lutetium texaphyrin (PCI-0123) a near-infrared,water-soluble photosensitizer,” Photochem Photobiol 1996,63:892-897;及び Berenbaum MC,et al.,”Meso-Tetra(hydroxyphenyl)porphyrins,a new class of potent tumor photosensitisers with favourable selectivity,”Br J Cancer 1986,54:717-725を参照されたい。光線力学的療法は、特定の波長の光を用いて光感作薬を活性化する。色素レーザ及びダイオードレーザを含む種々の光源がPDT向けに開発されている。レーザによって生成された光は、光を所望の部位に伝送することを可能にする光ファイバに結合させることができる。Pass 1-11,”Photodynamic therapy in oncology: mechanisms and clinical use,”J Natl Cancer Inst 1993,85:443-456を参照されたい。研究者らによれば、PDTの細胞毒性効果は、Foote CS,”Mechanisms of photooxygenation,”Proa Clin Biol Res 1984,170:3-18に開示されているように、光酸化反応の結果である。光は、酸素の存在下で光増感剤の励起を引き起こして、一重項酸素及びヒドロキシルラジカルなどの様々な有毒種を生成する。
【0122】
本発明の挿入装置による光活性化処理
細胞増殖障害の治療のために、開始エネルギー源は、発光挿入装置(複数可)3が受け取る開始エネルギーを提供し、これらの装置に指示して、活性化可能な医薬品を活性化して被検体内の標的細胞を処置するか、光を放出させるか、または何らかの形態のエネルギーを放出させることができる。一実施形態では、放出光または放出エネルギーは、好ましくは標的細胞に近接して、活性化可能な医薬品に間接的に印加される。本発明の文中で、「間接的に印加される」という語句(またはこの語句の変形、例えば「間接的に印加している」、「間接的に印加する」、「間接的に印加された」、「間接的な印加」など)は、開始エネルギーの印加に言及する際に、開始エネルギーによる被検体の表面下の被検体中への、及び被検体内の挿入装置(複数可)3への侵入を意味する。
【0123】
何か特定の理論に縛られること、または何らかの形で限定されることを意図するものではないが、本発明の理解及び認識を得るのに役立つように、科学的原理及び定義に関する以下の理論的考察を提供する。
【0124】
本明細書に用いる「被検体」という語は、ヒトに限定されることを意図するものではなく、動物、植物、または任意の適切な生物有機体を含むこともできる。
【0125】
本明細書に用いる「細胞増殖障害」という語句は、所与の生理学的状態及び生理学的条件の下で、細胞集団の成長速度が、所望の速度よりも小さいか、または所望の速度よりも大きい、全ての症状を指す。好適には、治療目的のために問題にしている増殖速度は、所望の速度よりも速いものであるが、所望の速度よりも遅い症状であっても、本発明の方法によって処置することができる。典型的な細胞増殖障害としては、がん、細菌感染、臓器移植の免疫拒絶反応、固形腫瘍、ウイルス感染、自己免疫疾患(例えば、関節炎、狼瘡、炎症性腸疾患、シェーグレン症候群、多発性硬化症)、またはこれらの組合せ、及び細胞増殖が正常細胞と比較して遅い、再生不良性貧血などの、再生不良性病態を挙げることができるが、これらに限定されない。本方法を用いる治療にとって特に好適な細胞増殖障害は、がん疾患、黄色ブドウ球菌(特に、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌すなわちMRSAなどの抗生物質耐性株)症、及び自己免疫疾患である。
【0126】
薬剤の活性化は、薬剤に信号を送出することと同程度に単純であってよく、または一連の活性化条件をさらに前提としてもよい。例えば、前者の場合、光増感剤などの活性化可能な医薬品は、UV-A放射線(例えば、本発明の挿入装置(複数可)3からのUV-A光)によって活性化されてもよい。一旦活性化すると、次に、その活性状態にある薬剤は、細胞変化に直ちに影響を及ぼすように進めることができる。
【0127】
活性化が他の条件をさらに前提とする場合、活性化信号の単なる送出では、所望の細胞変化を引き起こすのには十分でないことがある。例えば、光活性化合物は、活性状態の特定の細胞構造に結合することによって、その薬剤効果を達成する。光活性化合物は、活性化信号が与えられるときに、標的細胞構造に対して物理的に近接している必要がある。このような活性化可能薬剤に対する、非活性化条件下での活性化信号の送出は、所望の薬理学的効果をもたらさない。活性化条件のいくつかの例としては、温度、pH、配置、細胞の状態、補因子の有無が含まれ得るが、これらに限定されない。活性化可能な医薬品の選択は、所望の細胞変化、所望の活性化形態、ならびに適用され得る物理的制約及び生化学的制約などの多数の因子に大きく依存する。
【0128】
例えば、活性化可能な医薬品は、活性化されると、細胞変化に影響を及ぼす場合がある。細胞変化には、アポトーシス、代謝経路のリダイレクト、特定の遺伝子の発現上昇、特定の遺伝子の発現低下、サイトカインの分泌、サイトカイン受容体応答の変化、活性酸素種の生成、またはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
活性化可能な医薬品が、その所望の効果を達成し得るための機序は、具体的に限定されない。そのような機序には、所定の標的に対する直接的作用、及び生化学的経路の変化を介した間接的作用が含まれ得る。好ましい直接作用機序は、核DNA、mRNA、rRNA、リボソーム、ミトコンドリアDNA、または任意の他の機能的に重要な構造などの、重要な細胞構造に光活性化可能薬剤(例えば、ソラレン、または後に詳述するアルキル化剤)を結合させることによるものである。間接的機序には、正常な代謝経路を妨げる活性化時の代謝産物を放出すること、標的化細胞応答を変化させるために活性化時に化学信号(例えば作用薬または拮抗薬)を放出すること、及び他の適切な生化学的変化または代謝性変化が含まれ得る。
【0130】
この治療は、2007年11月6日に出願された米国出願第11/935,655号(参照により組み込まれる)に記載されている方法によるものであってもよく、またはPDTなどの従来の治療法を変更したものであってもよいが、プラズモニクス活性薬剤を用いて、挿入装置(複数可)3から放出されるエネルギーを変更または強化することにより、治療を強化することができる。
【0131】
一実施形態では、活性化可能な医薬品は、治療効果のある量で、DNAまたはミトコンドリアに化学的に結合することができる。本実施形態では、活性化可能な医薬品、好ましくは光活性化可能薬剤は、挿入装置(複数可)3から放出される活性化エネルギーに、in situで曝露される。
【0132】
活性化可能薬剤は、天然起源または合成起源に由来してもよい。適切な活性化信号源によって活性化されて、所定の細胞変化をもたらし得る、そのような全ての分子実体は、本発明において有利に使用することができる。
【0133】
適切な光活性薬剤には、ソラレン及びソラレン誘導体、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デグリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジン(リボフラビン)、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン(ルミフラビン)、7,8-ジメチルアロキサジン(ルミクロム)、イソアロキサジン-アデニンジヌクレオチド(フラビンアデニンジヌクレオチド[FAD])、アロキサジンモノヌクレオチド(フラビンモノヌクレオチド[FMN]及びリボフラビン-5-ホスフェートとしても知られる)などのアロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、これらの代謝産物及び前駆体、及びナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフィリン、ナチュラルレッド、メチレンブルー、アクリジン、トルイジン、フラビン(塩酸アクリフラビン)及びフェノチアジン誘導体などの色素、クマリン、キノロン、キノン、及びアントロキノン、アルミニウム(111)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニン、ならびにタンパク質にほとんどまたはまったく影響を与えることなく核酸に優先的に吸着する化合物が含まれるが、これらに限定されない。「アロキサジン」という語には、イソアロキサジンが含まれる。
【0134】
内因性に基づく誘導体には、内因性の光活性化分子から合成的に誘導された類似体及び相同体が含まれる。これらの類似体及び相同体は、それらが誘導された光増感剤の少数(1個から5個の炭素)のアルキル置換基またはハロゲン置換基を、有していてもよく、または欠いていてもよい。また、これらの類似体及び相同体は、その官能基と重要な非毒性とを保存している。内因性分子は本質的に非毒性であり、光線照射後に有毒な光産物を産出することがない。
【0135】
以下の表1は、光活性化して、自家ワクチン効果を誘発することができる、いくつかの光活性化可能分子を一覧表示する。
【0136】
【表1】
【0137】
【化4】
【0138】
【化5】
【0139】
以下の表2は、いくつかのさらなる内因性光活性化可能分子を一覧表示する。
【0140】
【表2】
【0141】
所定の細胞変化の性質は、所望の薬剤治療効果によって決まる。典型的な細胞変化には、アポトーシス、壊死、特定の遺伝子の発現上昇、特定の遺伝子の発現低下、サイトカインの分泌、サイトカイン受容体応答の変化、またはそれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0142】
本発明の挿入装置(複数可)3から放出された光に由来するエネルギーは、ある分子から別の分子に(分子間移動)、または分子のある部分から同じ分子の別の部分に(分子内移動)、移動させることができる。例えば、受信した電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することができる。エネルギー移動過程は、分子励起とも呼ばれる。
【0143】
さらに、エネルギー調節薬剤が被処置媒質に含まれてもよい。エネルギー調節薬剤は、本発明の挿入装置(複数可)3から光を受けると、所望の光駆動反応に特有の光を再放出することができる。エネルギー調節薬剤には、エネルギー保持時間が非常に短いものもあれば(fsからnsほど、例えば蛍光性分子)、これに反して半減期が非常に長いものもある(数秒から数時間ほど、例えば発光性無機分子または燐光性分子)。これらの様々な例示的な使用法を、以下の好適な実施形態において説明する。
【0144】
調節薬剤は、細胞標的化の目的で担体にさらに結合され得る。例えば、エネルギー調節薬剤として、UV-Aバンドを放出する蛍光金属ナノ粒子または蛍光色素分子などの生体適合性分子を選択してもよい。
【0145】
本発明の挿入装置(複数可)3からの光は、好ましくは、被検体への全身投与によって、所望の部位(例えば、腫瘍)を対象にすることができる。
【0146】
一般に、光活性化可能薬剤は、本発明の挿入装置(複数可)3からの光によって励起され、それに続く照射、共鳴エネルギー転移、励起子移動、電子注入、または化学反応をもたらして、望まれる所定の細胞変化を引き起こし得る活性化エネルギー状態になる。一実施形態では、光活性化可能薬剤は、活性化されると、細胞内のDNAもしくはRNAまたは他の構造に結合する。薬剤の活性化エネルギー状態は、細胞に損傷を与え、アポトーシスを誘発することができる。アポトーシスのメカニズムは、細胞増殖障害の成長速度を低下させる免疫反応の増強と関連しており、患者の免疫系の状態、腫瘍中の薬剤の濃度、刺激に対する薬剤の感受性、及び刺激の長さに応じて、固形腫瘍を縮小させる可能性がある。
【0147】
本発明の細胞増殖障害を治療する好適な方法では、光活性化可能薬剤を患者に投与し、本発明の挿入装置(複数可)3からの光によって光活性化可能薬剤を励起して、細胞損傷を誘発し、自家ワクチン効果を生み出す。1つのさらなる好適な実施形態では、光活性化可能薬剤は、共鳴エネルギー転移によって励起される(以下に詳細に記載される)。
【0148】
1つの利点は、本発明の挿入装置(複数可)3から放出される複数波長の放射線を用いて、1つ以上の光活性化可能薬剤、またはその1つ以上の光活性化可能薬剤を励起することができるエネルギー調節薬剤を選択的に励起できることである。エネルギー調節薬剤は、好ましくは、正常細胞にほとんどまたはまったく損傷を与えない波長及びエネルギーで励起され、1つ以上のエネルギー調節薬剤からのエネルギーが、フェルスター共鳴エネルギー転移などによって、光活性化可能薬剤に伝達され、光活性化可能薬剤が、細胞に損傷を与え、細胞のアポトーシスなど、所望の細胞変化の発現を引き起こす。
【0149】
別の利点は、正常細胞を損傷することが知られているフリーラジカル、一重項酸素、水酸化物、及び他の極めて反応性に富む原子団の生成を制限することによって、副作用を大幅に低減できることである。さらに、酸化防止剤などの追加の添加剤を使用して、照射の望ましくない効果をさらに低減することができる。
【0150】
本発明の挿入装置で活性化可能な様々な光活性化医薬品
本発明の別の目的は、上記の本発明の発光挿入装置(複数可)3を用いて活性化された活性化可能な医薬品を用いて、被検体の症状、障害または疾患を治療することである。
【0151】
フェリチンは、いくつかの腫瘍組織によって内在化させることができ、この内在化が膜特異的受容体と関連していることが報告されている[S.Fargion,P.Arosio,A.L.Fracanzoni,V.Cislaghi,S.Levi,A.Cozzi,A Piperno and A.G.Firelli,Blood,1988,71,753-757;P.C.Adams,L.W.Powell and J.W.Halliday,Hepatology,1988,8,719-721]。過去の研究は、フェリチン結合部位、及びフェリチンのエンドサイトーシスが、腫瘍細胞において同定されたことを示している[M.S.Bretscher and J.N.Thomson,EMBO J.,1983,2,599-603]。フェリチン受容体は、抗がん剤の脳への送達に使用できる可能性がある[S.W.Hulet,S.Powers and J.R.Connor,J.Neurol.Sci.,1999,165,48-55]。一実施形態では、本発明は、フェリチンまたはアポフェリチンを用いて、PA及びエネルギー調節薬剤-PA系の両方をカプセル化し、かつ本発明はまた、増強された薬物送達及びその後の光線療法のために腫瘍細胞を選択的に標的化する。この場合、追加の生物反応器は必要ない。
【0152】
光活性薬物分子は、経口摂取、皮膚塗布によって、または静脈注射によって、患者に投与することができる。光活性薬物分子の薬物は、(受動的標的方法または能動的標的方法のいずれかを介して)体内の血流を通って標的腫瘍に向かって移動する。本発明の治療は、固形腫瘍におけるものを含む悪性細胞に対して、自家ワクチン効果を誘発するために使用することもできる。急速に分裂する全ての細胞または幹細胞が全身処置によって損傷され得る程度まで、さらにまた励起エネルギーを腫瘍に直接向けることが好ましく、大部分の正常で健常な細胞または幹細胞への損傷は、光活性化可能薬剤の光活性化または共鳴エネルギー移動を避けることによって予防する。
【0153】
あるいは、有糸分裂を遅らせるかまたは中断する処置を適用してもよい。このような処置は、がん細胞の有糸分裂を停止させることなく、治療中に急速に分裂する正常細胞または正常幹細胞の分裂を遅らせることができる。あるいは、有糸分裂を遅らせる処置を施す前に、遮断薬を悪性細胞に優先的に投与する。
【0154】
一実施形態において、侵襲性の細胞増殖障害は、有糸分裂の速度が大きく、全身的に施される処置の間でさえも、悪性細胞の不均衡な配分の選択的破壊を引き起こす。幹細胞及び正常細胞は、たとえ光活性化薬剤に曝露されたとしても、そのような光活性化薬剤が、結合、有糸分裂、または正常幹細胞の重要な細胞部分に損傷を生じさせる他の機序に先立ち、励起状態から低エネルギー状態に縮退するという条件で、大量のプログラム細胞死を免れることができる。したがって、自己免疫反応は誘発されない可能性がある。
【0155】
あるいは、幹細胞または正常細胞への損傷を、選択的に、損なわれないように予防または軽減する遮断薬を使用してもよい。例えば、遮断薬が悪性細胞に同様の恩恵を分け与えてしまわないように、遮断薬を選択し、または投与する。
【0156】
一実施形態では、特に幹細胞を、ドナー細胞株、または患者の前もって保存された正常細胞で置き換えることを意図して、幹細胞を、破壊するための標的とする。この場合は、遮断薬は使用しない。その代わりに、幹細胞を特異的に標的とする担体または光増感剤を使用する。
【0157】
光線力学的療法分野の研究成果は、細胞溶解、ひいては細胞死を引き起こすのに必要な一重項酸素の量は、0.32×10-3mol/リットル以上、つまり一重項酸素分子/細胞が10以上であることを示している。しかし、本発明の一実施形態では、標的細胞と正常細胞の両方を溶解する無差別の攻撃性のため、細胞溶解を引き起こす量の一重項酸素の生成を避けることが望ましい。したがって、本発明の一実施形態では、活性化の際に使用される、開始エネルギーまたは活性化可能な医薬品によって引き起こされる一重項酸素生成のレベルが、細胞溶解を引き起こすのに必要なレベルよりも低いことが本発明においては好ましい。
【0158】
さらなる実施形態では、本発明による方法は、治療の副作用を緩和する添加剤を添加することをさらに含むことができる。例示的な添加剤には、酸化防止剤、補助剤、またはそれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。一具体例としての実施形態では、ソラレンを活性化可能な医薬品として使用し、UV光を活性化エネルギーとして使用し、照射がもとの望まない副作用を低減するために、酸化防止剤を添加する。
【0159】
活性化可能な医薬品及びその誘導体も、エネルギー調節薬剤ならびにプラズモニクス化合物及びプラズモニクス構造も、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、活性化可能な医薬品と、薬剤的に許容できる担体とを含む。医薬組成物はまた、補完的な治療効果または診断効果を持つ少なくとも1つの添加剤を含み、添加剤が、酸化防止剤、補助剤、またはそれらの組合せから選択された1つである。
【0160】
本明細書に用いる「薬剤的に許容できる担体」は、薬剤投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤等を含むことが意図される。薬剤的活性物質のためにそのような媒質及び薬剤を使用することは、当技術分野において周知である。従来の任意の媒質または薬剤は、活性化合物と混合できない場合を除き、組成物中でのその使用が企図される。補足的な活性化合物をその組成物に組み込むこともできる。化合物の溶解性またはクリアランスに影響を及ぼすように、本発明の化合物を変更することができる。これらの分子はまた、D-アミノ酸と合成されて、酵素分解に対する耐性を増加させることができる。必要に応じて、活性化可能な医薬品は、シクロデキストランなどの溶解補助剤と同時投与することができる。
【0161】
本発明の医薬組成物(薬物、光活性化可能薬剤、またはエネルギー調節薬剤を含む)は、その意図される投与経路に適合するように配合される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、直腸投与、及び腫瘍への直接注射などの患部への直接注射が挙げられる。非経口用途、皮内用途または皮下用途に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る。すなわち、注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調整剤である。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口製剤は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または多人数用バイアルに封入することができる。
【0162】
注射用途に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌分散液、及び滅菌注射剤溶液または滅菌注射剤分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、無菌でなければならず、注射針を容易に通過できる程度に流動的であるべきである。組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合に必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の活動の妨害は、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、多価アルコール(マニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる作用剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンをその組成物に含めることによって、もたらすことができる。
【0163】
滅菌注射剤溶液は、必要に応じて、活性化合物を、上に列挙した成分を1つ以上組み合わせたものと共に、適切な溶媒中に必要量盛り込み、次いでろ過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基礎の分散媒と、上に列挙した中で必要とされる他の成分とを含む滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射剤溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は、事前に滅菌ろ過されたその溶液から、活性成分プラス任意の追加の所望の成分の粉末を産出する真空乾燥及び凍結乾燥法である。
【0164】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。これらの経口組成物は、ゼラチンカプセル内に封入するか、または錠剤へと圧縮することができる。経口治療投与の目的で、活性化合物は、賦形剤と混合され、錠剤、トローチまたはカプセルの形式で使用することができる。経口組成物はまた、口腔洗浄剤として使用するために液体様担体を使用して調製することができ、液体様担体中の化合物は、経口で用いられ、すすいで吐き出されるか、または飲み込まれる。薬剤的に適合した結合剤、及び/または補助剤の材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または似通った性質の化合物のいずれかを含むことができる。すなわち、微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(primogel)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterote)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味料などの香味剤である。
【0165】
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含む加圧された容器もしくはディスペンサーからのエアゾールスプレー、またはネブライザーの方式で送達される。
【0166】
全身投与を、経粘膜的手段または経皮的手段によって行うこともできる。経粘膜的投与または経皮投与のためには、浸透させるべき障壁に適合した浸透剤を製剤中に使用する。そのような浸透剤は、当技術分野では周知であり、例えば、経粘膜的投与向けには、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜的投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用を介して行える。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で周知の、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームの中に配合される。
【0167】
化合物は、直腸送達のために、坐剤(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤と共に)または停留浣腸の形に調製することもできる。
【0168】
一実施形態では、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御製剤などの、身体からの急速な排除に抗して化合物を保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニール、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料は商業的な方法で入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞に標的化されたリポソームを含む)を、薬剤的に許容できる担体として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0169】
投与の容易さと投薬量の均一性とのため、投薬量単位形態で経口組成物または非経口組成物を配合することが特に有利である。本明細書に用いる投薬量単位形態とは、治療される被検体の単位投薬量として適した物理的に不連続の単位をいう。各単位には、必要とされる医薬担体と共同して、所望の治療効果が生じるように計算された所定量の活性化合物が含まれる。本発明の投薬量単位形態の仕様は、活性化合物の特有の特性、及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体治療用のそのような活性化合物を合成する技術に固有の制限によって決定付けられ、かつそれらに直接依存する。
【0170】
医薬組成物は、投与のための説明書と共に、容器、パック、キットまたはディスペンサーに含めることができる。
【0171】
薬剤を投与する方法には、注射または経口注入などの従来の手段に限定されず、高度化された複雑な形態のエネルギー移動が含まれる。例えば、エネルギー調節薬剤を担持して発現する、遺伝子操作された細胞を使用することができる。宿主由来細胞に、生物発光剤を発現する遺伝子操作されたベクターで、遺伝子導入することができる。遺伝子導入は、ウイルスベクターの注入または遺伝子銃など、in situでの遺伝子治療技術を介して達成され得るか、または宿主細胞の試料を取り出し、その後、遺伝子導入成功時に宿主に戻すことにより、ex vivoで行われ得る。そのような遺伝子導入された細胞を、異常細胞が位置する部位に挿入するか、そうでない場合は、その部位を標的化することができる。
【0172】
種々の薬剤の投与順序は特に限定されないことも理解される。薬剤の吸収速度、薬剤の局在化及び分子輸送特性、ならびに他の薬物動態または薬力学的留意事項などの因子に応じて、様々な順序付けの組合せが有利に使用され得ることが理解されよう。
【0173】
本アプローチの方法の有利な点は、急速に分裂する細胞などの細胞増殖障害の影響を受けた細胞を特異的に標的化すること、及びこれらの細胞において、アポトーシスなどの細胞変化をin situで誘発することにより、宿主の免疫系を刺激して、異常細胞に対する免疫反応を持たせることである。宿主自体の免疫系がそのような反応を持つように刺激されると、活性化可能な医薬品によって処置されない他の異常細胞が、宿主自体の免疫系によって認識されて破壊され得る。そのような自家ワクチン効果は、例えば、ソラレン及びUV光を使用する処置において得ることができ、そのUV光が本発明の発光挿入装置(複数可)3から発せられる。
【0174】
本明細書に記載される方法は、細胞増殖障害の治療のために、単独で、または他の療法と組み合わせて使用することができる。さらに、記載される本方法は、必要に応じて、Giacchetti et al,Journal of Clinical Oncology,Vol 24,No 22 (August 1),2006: pp.3562-3569に詳述されたもの(その全記載内容は参照により本明細書に援用される)などの、時間医学の最近の進歩と併せて使用することができる。
【0175】
時間医学では、がんなどの特定の種類の障害に罹患している細胞は、一日のある特定の時間に他の時間よりも良好に反応を示すことが見出されている。したがって、本発明の治療の効果を高めるために、本方法と併せて、時間医学を使用するということもあり得る。
【0176】
本発明の挿入装置による光処置
本発明の別の目的は、上記の本発明の発光挿入装置(複数可)3を用いて活性化された活性化可能な医薬品を用いて、被検体の症状、障害または疾患を治療することである。例示的な症状、障害または疾患としては、がん、自己免疫疾患、心臓の摩耗(例えば、心不整脈及び心房細動)、光血管形成(photoangioplastic)症状(例えば、新規アテローム性動脈硬化、再狭窄)、内膜過形成、動静脈瘻、黄斑変性、乾癬、にきび、円形脱毛症、ポートワイン血管腫、脱毛、リウマチ性関節炎及び炎症性関節炎、関節症状、リンパ節症状、ならびに認知症状及び行動症状を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0177】
したがって、一実施形態において、本発明は、所望の薬理作用の送達が在来型技術よりも集中的で正確、かつ効果的であるように、分子剤への、及び分子剤間のエネルギー移動の原理を利用して、薬学的活性薬剤の送達及び活性化を制御する方法を提供する。ここで、エネルギー移動には、本発明の発光挿入装置(複数可)3からの光に由来するエネルギー移動を含めることができる。
【0178】
何か特定の理論に縛られること、または何らかの形で限定されることを意図するものではないが、読者が本発明の理解及び認識を得るのに役立つように、科学的原理及び定義に関する以下の理論的考察を提供する。
【0179】
本明細書に用いる「被検体」という語は、ヒトに限定されることを意図するものではなく、動物、植物、または任意の適切な生物有機体を含むこともできる。
【0180】
本明細書に用いる「疾患または症状」という語句は、がん、軟組織損傷及び骨組織損傷、慢性痛、創傷治癒、神経再生、ウイルス性感染症及び細菌性感染症、脂肪沈着(脂肪吸引)、静脈瘤、前立腺肥大、網膜損傷及び他の眼疾患、パーキンソン病、ならびに行動障害、知覚障害及び認知障害を含むが、これらに限定されない症状、障害または疾患をいう。例示的な症状には、神経(脳)のイメージング及び刺激、光による脳細胞活性の直接的な制御、細胞死(アポトーシス)の制御、ならびに細胞増殖及び細胞分裂の変化を含めることもできる。さらに他の例示的な症状、障害または疾患としては、心臓の摩耗(例えば、心不整脈及び心房細動)、光血管形成(photoangioplastic)症状(例えば、新規アテローム性動脈硬化、再狭窄)、内膜過形成、動静脈瘻、黄斑変性、乾癬、にきび、円形脱毛症、ポートワイン血管腫、脱毛、リウマチ性関節炎及び炎症性関節炎、関節症状、ならびにリンパ節症状を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0181】
本明細書に用いる「標的構造」は、真核細胞、原核細胞、細胞下構造(細胞膜、核膜、細胞核、核酸、ミトコンドリア、リボソーム、または他の細胞器官もしくは細胞成分など)、細胞外構造、ウイルスまたはプリオン、及びそれらの組合せを指す。
【0182】
所定の細胞変化の性質は、所望の薬剤治療効果によって決まる。典型的な細胞変化には、アポトーシス、壊死、特定の遺伝子の発現上昇、特定の遺伝子の発現低下、サイトカインの分泌、サイトカイン受容体応答の変化、シトクロムc酸化酵素及びフラビンタンパク質の調節、ミトコンドリアの活性化、抗酸化保護経路の刺激、細胞増殖及び細胞分裂の調節、神経の発火パターンの変化、レドックス特性の変化、活性酸素種の生成、細胞内の細胞内成分の活量、量もしくは数の調節、細胞によって産生されるか、細胞によって排出されるか、もしくは細胞に関連する細胞外成分の活量、量、もしくは数の調節、またはそれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。所定の細胞変化は、標的構造の破壊または不活化をもたらすこともあれば、もたらさないこともある。
【0183】
本発明の発光挿入装置(複数可)3からのエネルギーまたは光は、細胞変化を直接引き起こすのに十分なレベルのエネルギーで、または所定の細胞変化を引き起こす能力を持った調節薬剤を介して、提供される。また、本発明の挿入装置(複数可)3からのエネルギーまたは光は、活性化可能薬剤を直接活性化するのに十分なレベルのエネルギーを与える能力を持った任意のエネルギー源であってもよく、または活性化可能薬剤の活性化エネルギーを放出するのに入力が必要とされる調節薬剤にエネルギーを供給するための任意のエネルギー源であってもよい(間接活性化)。
【0184】
本発明のさらなる実施形態は、本発明の挿入装置(複数可)3を必要とする被検体において、本発明の挿入装置(複数可)3を手段として、in situでエネルギーを生成することによって、症状、疾患または障害を治療する方法を提供することである。生成されたエネルギーを直接改変のために使用し、それによって症状、疾患または障害を治療することができ、またはエネルギーを、活性化可能薬剤を活性化するのに使用し、その薬剤が活性化すると改変をもたらし、それによって症状、疾患または障害を治療することができる。エネルギーは、化学ルミネセンスなどの化学反応を含むが、これに限定されない任意の所望の方法によって、in situで生成することができる。またはエネルギーは、挿入装置(複数可)3から印加されたエネルギーを、1つ以上のエネルギー調節薬剤の使用によって、in situで異なるエネルギー(印加されたエネルギーよりも低いまたは高いエネルギー)に変換することが可能な変換によって、in situで生成することができる。
【0185】
本発明のさらなる実施形態は、治療の効果を高めるために、症状、疾患または障害の治療と、罹患した標的構造における熱の発生とを組み合わせる。例えば、光活性化可能医薬品(ソラレンまたはその誘導体など)を使用した細胞増殖障害の治療において、直接的または間接的に医薬品を活性化する本発明の発光挿入装置(複数可)3からの光または他のエネルギーを印加することによって、光活性化可能医薬品を活性化することができる。本出願の他の箇所に記載されているように、この本発明の挿入装置(複数可)3から放出されるエネルギーは、それが医薬化合物を活性化するのに適しているか、またはそれが医薬化合物を活性化するのに適したエネルギーに変換され得る限り、いかなる種類のものであってもよい。このエネルギーを本発明の挿入装置(複数可)3から印加することに加えて、本発明のこの実施形態では、標的構造の加熱を引き起こすさらなるエネルギーが印加される。がんなどの細胞増殖障害の場合、加熱は、がん細胞の増殖速度を増加させる。このことは、細胞増殖障害がソラレンまたはその誘導体などのDNAインターカレーション剤を用いて治療されているとき、最初は直観に反するようであるが、この細胞増殖の増加は、実のところアポトーシスを引き起こすソラレンを支援し得る。具体的には、ソラレンがDNAにインターカレートされると、細胞が次の分裂周期を経る際に、アポトーシスが起こる。細胞が分裂する速度を増加させることによって、本発明の方法を用いて、アポトーシスの発現を高めることができる。
【0186】
一実施形態では、任意の所望の方法によって熱を発生させることができる。好ましくは、熱は、無線周波数、マイクロ波、テラヘルツまたはNIRエネルギーを標的構造に印加することを用いて、または金属のナノ粒子もしくは金属シェルを有したナノ粒子を使用することによって、生成することができる。熱は、本発明の発光挿入装置からの光の吸収によって発生させることもできる。あるいは、腫瘍温熱療法において行われるように、磁性金属ナノ粒子は、在来型技術を用いてがん細胞を標的とし、その後、制御された条件下で、被検体に磁場を印加することによって、熱を発生させるために使用することができる。(DeNardo SJ,DeNardo GL,Natarajan A et al.: Thermal dosimetry predictive of efficacy of 111In-ChL6 NPAMF-induced thermoablative therapy for human breast cancer in mice.J.Nucl.Med.48(3),437-444 (2007).)
【0187】
さらなる実施形態では、光活性化可能薬剤は、フォトケージ内に含まれた活性薬剤を有するフォトケージ錯体であってもよい。活性薬剤は、特定の標的への結合を妨げる他の分子で増大され、それによってその活性が遮蔽される。フォトケージ錯体が光活性化されると、増大部分が脱落し、活性薬剤が露出する。このようなフォトケージ錯体では、フォトケージ分子が光活性であってもよく(すなわち、光活性化された場合、それらはフォトケージ錯体から解離し、それによって内部の活性薬剤を露出させる)、または活性薬剤が光活性化可能薬剤であってもよく(光活性化するとフォトケージが脱落する)、あるいはフォトケージ及び活性薬剤の両方が、同じ波長または異なる波長で光活性化される。例えば、有毒な化学療法剤をフォトケージ化することができ、これにより送達時の全身毒性を低下させる。薬剤が腫瘍に集中したあとは、薬剤に活性化エネルギーが照射される。これにより、「ケージ」が脱落し、腫瘍細胞内に細胞傷害性薬剤が残る。好適なフォトケージには、Young and Deitersによって、“Photochemical Control of Biological Processes”,Org.Biomol.Chem.,5,pp.999 - 1005 (2007)、及び“Photochemical Hammerhead Ribozyme Activation”,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,16(10) ,pp.2658-2661 (2006)に開示されたものが含まれ、その内容は参照により本明細書に援用される。一実施形態では、化合物または薬剤を脱ケージする本発明の発光挿入装置(複数可)3からの光(例えば、または他のエネルギー)の使用。
【0188】
一実施形態では、化合物または薬剤を脱ケージする本発明の発光挿入装置(複数可)3からの光(例えば、または他のエネルギー)の使用が、ニューロン機能の解明、及び例えば2光子グルタミン脱ケージのイメージングに使用されている(Harvey CD,et al.,Nature,450:1195-1202 (2007);Eder M,et al.,Rev.Neurosci.,15:167-183 (2004))。他のシグナリング分子、例えば、GABA、二次メッセンジャー(例えば、Ca2+及びMg2+)、カルバコール、カプサイシン、及びATPは、UV光刺激によって放出され得る(Zhang F.,et al.,2006)。イオンチャネル及び受容体の化学修飾を行って、それらを光応答性にすることができる。Ca2+は、受精、分化、増殖、アポトーシス、シナプス可塑性、記憶、及び軸索の発生の制御に関与している。さらに別の好ましい実施形態において、Ca2+波は、UV照射(単一光子吸収)及びNIR照射(2光子吸収)によって、ケージに入れられたCa2+、細胞外プリン作動性メッセンジャーInsP3 (Braet K.,et al.,Cell Calcium,33:37-48 (2003))、またはイオンチャネルリガンド(Zhang F.,et al.,2006)を放出することにより、誘導され得る。
【0189】
遺伝子標的化は、遺伝子学的に規定された細胞集団の形態学的及び電気生理学的な特徴付けを可能にする。したがって、さらなる実施形態では、エレクトロポレーション、DNAマイクロインジェクション、ウイルス送達、リポソーム遺伝子導入、形質転換系統の作製、及びリン酸カルシウム沈殿を含む多数の技法を介して、光感受性タンパク質を細胞または生体対象に導入する。例えば、レンチウイルス技術は、安定した長期発現、高力価ベクター産生の容易さ、及び低い免疫原性という従来の組合せ、使いやすい組合せを提供する。光感受性タンパク質は、例えば、チャネルロドプシン-2(ChR2)及びクロライドポンプハロロドプシン(NpHR)であってよい。細胞特異的プロモータと共に光タンパク質コード遺伝子(複数可)を、レンチウイルスベクターまたは他のベクターに組み込み、標的細胞への光感受性タンパク質コード遺伝子の送達をもたらすことができる。光センサ及び陽イオンチャネルを含むChR2は、Ch2Rを持つ細胞が光でパルス照射されるとき、適切な速度と大きさの電気刺激をもたらして、ニューロンスパイク発火を活性化する。
【0190】
一実施形態では、高輝度ルミネセンスが可能なランタニドキレートを使用することができる。例えば、ランタニドキレート剤は、クマリンもしくはクマリン誘導体またはキノロンもしくはキノロン誘導体増感剤に共有結合で結合され得る。増感剤は、2-キノロンもしくは4-キノロン、2-クマリンもしくは4-クマリン、またはこれらの例の誘導体もしくは組合せであってよい。カルボスチリル124(7-アミノ-4-メチル-2-キノロン)、クマリン120(7-アミノ-4-メチル-2-クマリン)、クマリン124(7-アミノ-4-(トリフルオロメチル)-2-クマリン)、アミノインエチルトリメチルソラレン、または他の類似の増感剤を使用することができる。キレートは、DTPAなどのキレート剤群によって、テルビウムまたはユーロピウムなどのランタニドとの高親和性錯体を形成するように選択することができる。このようなキレートは、多種多様の周知のプローブまたは担体のいずれかに結合され、8-MOPなどのソラレンもしくはソラレン誘導体への、またはDNAに結合できる他の光活性分子への、共鳴エネルギー移動に使用することができる。1つの代替例では、ランタニドキレートは、適切な担体分子、担体粒子または担体ポリマーを用いて、疾患の部位に局在化され、電磁エネルギーの供給源は、ランタニドキレート及び光活性分子を曝露した後に、標的構造を照射するように、最小限の侵襲的処置(例えば、本発明のアップコンバータを含むガス)によって導入される。
【0191】
別の実施形態では、光活性化可能分子への共鳴エネルギー移動を刺激するために、生体適合性の内因性フルオロフォア放出源を選択することができる。生体適合性の内因性フルオロフォア放出源の吸収範囲内に発光極大を有する生体適合性放出源(例えば、本発明の発光挿入装置(複数可)3からの光)を選択して、フルオロフォア放出源内の励起状態を刺激することができる。1つ以上のハロゲン原子を、核酸(DNAまたはRNAのいずれか)中の積層ヌクレオチド塩基の間に挿入することができる任意の循環的リング構造に付加して、インターカレータに新しい光活性特性を付与することができる。任意のインターカレート分子(ソラレン、クマリン、または他の循環的リング構造)を、ハロゲン化、または非水素結合イオン置換基の添加によって選択的に修飾して、当技術分野で周知のように、その反応光科学、及びその拮抗的結合親和性においての、細胞膜または荷電タンパク質に対する優位性を、核酸に与えることができる。
【0192】
皮膚の光線過敏症は、光増感剤の主要な毒性である。皮膚が直射日光に数分間でも曝されると、重度の日焼けが生じる。初期のマウス研究は、免疫反応の活発で長期的な刺激を示唆した。しかしながら、実際の臨床試験では、光線力学的療法の初期の見込みを達成できていない。光線力学的療法用の初期の光増感剤は、酸素の存在下で光活性化したときに一重項酸素を作り出すII型反応を標的とした。一重項酸素は、細胞壊死を引き起こし、炎症及び免疫反応を伴った。I型反応を誘発し、細胞構造を直接損傷するために、いくつかの別途の光増感剤が開発されている。
【0193】
ポルフィマナトリウム(フォトフリン(Photofrin);QLT Therapeutics,Vancouver,BC,Canada)は、部分精製したヘマトポルフィリン誘導体(HpD)の調剤品である。フォトフリンは、閉塞性食道癌、微小侵襲性気管支内非小細胞肺癌、及び閉塞性気管支内非小細胞肺癌の治療向けに、アメリカ食品医薬品局により承認されている。フォトフリンは、約2~5mmの組織透過性を有する630nmで活性化される。フォトフリンは、皮膚の光線過敏症の持続時間が比較的長い(約4~6週間)。
【0194】
テトラ(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(ホスカン(Foscan);Scotia Pharmaceuticals,Stirling,UK)は、652nmの光によって活性化される合成塩素化合物である。臨床研究では、ホスカン及び652nmの光を用い、最大で10mmまで、組織に効果が及ぶことを実証した。ホスカンは、正常組織よりも腫瘍においてより選択的な光増感剤であり、比較的短い光活性化時間を必要とする。推奨用量である0.1mg/kgは比較的低く、比較的低い線量の光を使用することができる。それでも、皮膚の光線過敏症の持続時間は妥当なものである(約2週間)。だが、ホスカンは比較的高収率の一重項酸素を誘発し、これがこの分子のDNA損傷の主要機序である可能性がある。
【0195】
モテキサフィンルテチウム(ルテチウムテキサフィリン)は、近赤外領域(732nm)の光によって活性化される。この波長での吸収は、他の光増感剤を活性化するのに使用される光量と比較して、潜在的に組織の中により深く侵入するという有利な点を持つ。ルテチウムテキサフィリンはまた、正常組織の選択性と比較して、腫瘍の選択性が最も高いと報告されているものの1つである(Young SW,et al.: Lutetium texaphyrin (PCI-0123) a near-infrared,water-soluble photosensitizer.Photochem Photobiol 1996,63:892-897.)。さらに、その臨床用途は、皮膚の光線過敏症の持続時間(24~48時間)と関連している。ルテチウムテキサフィリンは、転移性皮膚癌について評価されている。現在、再発乳癌及び局所再発前立腺癌の治療のために調査中である。腫瘍に対する高い選択性は、臨床試験における結果をさらに良くする見込みがある。
【0196】
一般に、このアプローチは、活性化可能な分子を励起するための任意の供給源と共に使用することができる。このプロセスは、循環光療法プロセスであってもよく、または循環光療法と同じようであってもよい。光泳動は、一般に、UV光などによる光子励起に限られるものと考えられているが、他の形態の放射線を系の一部として使用して、活性化可能な分子を活性化することができる。挿入装置(複数可)3からの光放出は、8-MOPなどの活性化可能な分子の活性化を刺激することができる。一例では、本発明の挿入装置(複数可)3からの光または他のエネルギーの放出が、固形腫瘍に向けられ、8-MOPの活性化を、直接的または間接的に刺激する。
【0197】
さらに別の実施形態では、活性化可能な医薬品、好ましくは光活性薬剤は、受容体部位に対して強い親和性を有した担体によって、受容体部位を対象にする。担体は、ポリペプチドであってもよく、例えば、光活性薬剤と共有結合を形成してもよい。ポリペプチドは、例えば、インスリン、インターロイキン、チモポエチンまたはトランスフェリンであってもよい。あるいは、光活性医薬品は、担体に結合することなく、標的細胞に対して強い親和性を有することができる。
【0198】
例えば、有糸分裂を遅らせるかまたは中断するように作用する処置を適用してもよい。このような処置は、がん細胞の有糸分裂を停止させることなく、急速に分裂する正常細胞または正常幹細胞の分裂を遅らせることができる。したがって、非標的細胞と標的細胞との間の増殖速度の差がさらに差異化されて、本発明の方法の有効性を高める。
【0199】
さらなる実施形態では、本発明による方法は、治療の副作用を緩和する添加剤を添加することをさらに含むことができる。例示的な添加剤には、酸化防止剤、補助剤、またはそれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。一具体例としての実施形態では、ソラレンを活性化可能な医薬品として使用し、UV-Aを活性化エネルギーとして使用し、照射がもとの望まない副作用を低減するために、酸化防止剤を添加する。
【0200】
別の態様において、本発明はまた、自家ワクチンを産生するための方法を提供する。方法は、(1)標的細胞集団を供給すること、(2)細胞をソラレンまたはその誘導体を用いてex vivoで処置すること、(3)ex vivoまたはin vivoでソラレンを活性化して、標的細胞に対する自家ワクチン効果を誘導することによって、標的細胞の集団における標的構造に所定の変化を誘導することを含み、処置した細胞に自家ワクチン効果を引き起こす。
【0201】
フォトバイオモジュレーション
低出力レーザ療法(LLLT)、コールドレーザ療法、及びレーザ刺激治療法としても知られるフォトバイオモジュレーションは、新興医学及び獣医学の技法であり、低出力レーザ光への曝露により、細胞機能を刺激または阻害し、有益な臨床効果をもたらすことができる。波長、強度、持続時間、及び治療間隔の「最良」の組合せは複雑であり、個別の治療パラメータ及び治療技法を必要とする種々の疾患、傷害及び機能不全については時に議論を呼ぶ。
【0202】
本発明の一実施形態では、本発明の発光挿入装置(複数可)3は、フォトバイオモジュレーションを生成するための光を提供する。本発明の発光挿入装置から特定の強度で放出される特定の波長の光は、例えば、組織再生を助け、炎症を解消し、痛みを和らげ、免疫系を増強する。期待される実際の生物学的及び生理学的な効果には、細胞膜浸透性の変化、ならびにアデノシン三リン酸及び酸化窒素の上方制御及び下方制御が含まれる。
【0203】
全ての光誘起生物学的効果は、照射のパラメータ(波長、線量、強度、照射時間、標的細胞の深さ、及び連続波モードまたはパルスモード、パルスパラメータ)に依存する。(例えば、Karu IT,Low-Power Laser Therapy”,in Biomedical Photonics Handbook,Vo-Dinh T.Ed.,CRC Press,Boca Raton,FL,pp.48-1から48-25,(2003)参照)。本発明の発光挿入装置(複数可)3は、既知のフォトバイオモジュレーションのものと同等の光を送出するようにプログラムされるか、または命令されてもよい。例えば、本発明の発光挿入装置(複数可)3は、典型的には1~500mWの範囲の平均電力の光、または200nsのパルス幅で1~100Wの範囲であるピーク電力及び短パルス幅の光を送出するようにプログラムされるか、または命令されてもよい。この例では、平均ビーム放射照度は、典型的には10mW/cm~5W/cmである。本発明の発光挿入装置(複数可)3は、典型的には600~1000nmの範囲の波長の光を送出するようにプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。例えば、ダウンコンバート用の蛍光体を、挿入装置の発光面にコーティングして、UVまたは可視光をこのような波長または他の適切な波長に変換するようにしてもよい。例えば、挿入装置内の光放出源を、それ自体が直接、このような波長または他の適切な波長を生成するようにしてもよい。赤外から近赤外(NIR)の領域は、フォトバイオモジュレーションにとって好ましい。他の波長、例えば、ニューロンにはUV光、及び前立腺組織には緑色光を使用することもできる。最大の生物学的応答は、組織が620、680、760、及び820~830nmで照射される場合に生じることが、先行の研究から判明している(Karu TI,et al.,(1998))。
【0204】
細胞系からの超微弱放出の現象は、1900年代から様々な調査の論題となっている。この論題は、70年以上前のロシアの生物学者であるGurwitsch Alexander G.Gurwitschの初期の調査にまでさかのぼることができ、彼らは、超微弱光子放出が細胞内の情報を伝達すると推測した[A.G.Gurwitsch,S.S.Grabje,and S.Salkind,‘‘Die Natur des spezifischen Erregers der Zellteilung,’’ Arch.Entwicklungsmech.Org.100,11-40,1923]。
【0205】
UV励起は超微弱放出を増強することが知られており、UV-Aレーザ誘起超微弱光子放出を検出する方法を用いて、がん細胞と正常細胞との間の差異を評価した。[H.J.Niggli et al,Laser-ultraviolet-A-induced ultraweak photon emission in mammalian cells,Journal of Biomedical Optics 10(2),024006 (2005)]。
【0206】
したがって、本発明の一実施形態において、本発明の挿入装置(複数可)3からの光またはエネルギーが、処置を必要とする被検体内の標的構造に印加されるとき、開始エネルギーが標的構造と接続し、in situで上記の標的構造に所定の変化が誘発される。
【0207】
所定の変化とは、標的からのエネルギー放出を増強することであり、これにより、次に被検体における他の標的構造、または第2のタイプの標的構造(例えば、異なる細胞タイプ)の生物活性が、影響され、開始され、または増強される。
【0208】
以下の特定の理論に拘束されるものではないが、光受容体は先ず、照射に使用される光を吸収する。電子的に励起状態である昇位後、これらの状態からの一次分子プロセスは、細胞レベルでの(二次的生化学反応、または光シグナル伝達カスケード、または細胞内シグナル伝達を介して)測定可能な生物学的効果をもたらすことができる。赤外からNIRの領域の真核細胞の光受容体は、細胞ミトコンドリアに位置する呼吸鎖シトクロムc酸化酵素の終末酵素であると考えられている。紫色から青色のスペクトル領域では、フラビンタンパク質(例えば、呼吸鎖の始めのNADHデヒドロゲナーゼ)も光受容体の1つである。本発明の発光挿入装置は、このような波長の光を送出するようにプログラムされるか、もしくは命令されるか、または構成することができる。
【0209】
フォトバイオモジュレーションの臨床応用には、例えば、軟組織及び骨損傷の治療、慢性痛、創傷治癒と神経及び感覚の再生/修復、ならびに場合によってはウイルス感染及び細菌感染の解消、神経疾患及び精神疾患(例えば、てんかん及びパーキンソン病)の治療さえもが含まれる(例えば、Zhang F.,et al.,Nature,446:617-9 (April 5,2007);Han X.,et al.,PloS ONE,2(3):e299 (March 21,2007);Arany PR,et al.,Wound Repair Regen.,15(6):866-74 (2007);Lopes CB,et al.,Photomed.Laser Surg.,25(2):96-101 (2007))。大いに有望であることを示す1つの臨床応用は炎症の治療であり、位置及び線量特異的レーザ照射の抗炎症効果がNSAIDsと類似の結果をもたらすが、潜在的に有害な副作用を伴わない(Bjordal JM,Couppe C,Chow RT,Tuner J,Ljunggren EA (2003).”A SYSTEMatic review of low level laser therapy with location-specific doses for pain from chronic joint disorders”.The Australian journal of physiotherapy 49(2):107-16)。本発明の発光挿入装置は、この研究で報告された波長及び照度の光を送出するようにプログラムされるか、もしくは命令されるか、または構成することができる。
【0210】
NIR光線治療は、培養ニューロン(脳)細胞における細胞死(アポトーシス)を防止することができる(Wong-Reiley MT,et al.,JBC,280(6):4761-71 (2005))。光の特定の波長は、シトクロムc酸化酵素を介して、細胞内のエネルギー産生細胞小器官であるミトコンドリアを活性化させる細胞増殖を促進することができる。NIR治療は、ミトコンドリア機能を増強し、抗酸化保護経路を刺激することができる。NIR治療がミトコンドリア機能を増強し、抗酸化保護経路を刺激できる証拠は、パーキンソン病(PD)の実験室モデル(ヒトドーパミン作動性ニューロン細胞の培養物)を用いて実施されたフォトバイオモジュレーション実験によってもたらされる(Whelan H.,et.al.,SPIE,Newsroom,pages 1-3 (2008))。本発明の発光挿入装置(複数可)3は、このようなNIR波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、及び/または構成され得る。
【0211】
赤潮鞭毛藻の、Chattonellantiqueにおいて、光は、細胞の増殖及び分裂に対して、誘起効果及び阻害効果の両方を有することも示されている(Nemote Y.,Plant and Cell Physiol.,26(4):669-674 (1985))。本発明の発光挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0212】
興奮性細胞(例えば、ニューロン、心筋細胞)が単色可視光で照射される場合、光受容体はまた、呼吸鎖の成分であると考えられている。照射により、ミトコンドリアにおける吸収を介して、非色素興奮性細胞に生理学的変化及び形態学的変化が引き起こされ得ることが、実験データ(Karu,T.I.,(2002).Low-power laser therapy.In: CRC Biomedical Photonics Handbook,T.Vo-Dinh,Editor- in-Chief,CRC Press,Boca Raton (USA))から明らかである。後に、同様の照射実験が、低出力レーザ治療に関連して、ニューロンを用いて行われた。HeNeレーザ放射が、神経の発火パターンを変化させることが、80年代に示された。また、HeNeレーザによる経皮照射が、行動反射の末梢部刺激の効果を模倣することも見出された。これらの知見は、疼痛治療と関連があることが判明した(Karu TI,et al.,(2002))。本発明の発光挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するようにプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0213】
光受容体が光子を吸収するとき、電子励起が起こり、低励起状態(一番目の一重項及び三重項)から生じる光化学反応が続く。吸収中心の電子励起がそれらのレドックス特性を変化させることも知られている。文献では5つの1次反応が議論されている(Karu TI,et al.,(2002))。そのうちの2つはレドックス特性の変化と関連があり、2つの機序は活性酸素種(ROE)の生成を伴う。また、吸収発色団の局所的な一過性の(非常に短時間の)加熱を誘導することが起こり得る。これらの機序の詳細は、(Karu TI,et.al.,(2002);Karu TI,et al.,(1998).The Science of Low Power Laser Therapy.Gordon and Breach Sci.Publ.,London)に記載されている。本発明の挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0214】
呼吸鎖の活性化による光生物学的作用は、細胞内で起こる一般的機序であると考えられている。この種の細胞代謝活性化の非常に重要な事象は、細胞酸化還元電位の酸化傾向への移行に起因して、さらにはATPの追加合成に起因して生じている。照射に対する感受性と、活性化能力とは、照射される細胞の生理学的状態に依存する。つまり、全体の酸化還元電位が、還元した状態に移行する細胞(例:一部の病的状態)は、照射に対して鋭敏である。最終的な光生物学的応答の選択性は、呼吸鎖における1次反応のレベルで決まるわけではなく、細胞内シグナル伝達カスケード時の転写レベルで決定される。いくつかの細胞では、細胞代謝の部分的な活性化のみが、この機序によって起こる(例:リンパ球のレドックスプライミング)。本発明の挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0215】
遠赤外線及びNIR線は、例えば、感染創、虚血性創傷及び低酸素創傷などの創傷治癒を促進することが示されている(Wong-Reley,WTT,JBC,280(6):4761-4771 (2005))。赤色からNIRの放射線はまた、メタノール毒性のげっ歯類モデルにおいて、メタノール由来のギ酸の毒性作用から網膜を保護し、ミトコンドリア機能障害が役割を果たすと考えられる網膜損傷及び他の眼疾患からの回復を促進し得る(Eells JT.,PNAS,100(6):3439-44 (2003))。フォトバイオモジュレーションの別の臨床応用は、IRレーザ照射による軟組織及び骨組織の修復である(Martinez ME,et al.,Laser in Med.Sci.,2007)。侵襲的レーザ補助脂肪吸引は、最近開発された方式であり、レーザファイバをチューブに通して皮膚内に直接脂肪細胞へと導入し、細胞を破裂させて液体として排出させる(Kim KH,Dermatol.Surg.,32(2):241-48 (2006))。その周辺の組織は凝固する。さらに、フォトバイオモジュレーションの別の応用は、非外科的な静脈瘤治療(血管内レーザ治療)であり、レーザが切開部と、静脈瘤の全長とに通される(Kim HS,J.Vasc.Interv.Radiol.,18(6):811 (2007))。レーザがゆっくりと引き抜かれるとき、熱が静脈壁に加えられ、静脈を恒久的に閉じて消失させる。本発明の挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0216】
緑色光レーザは、前立腺肥大組織を蒸発させて除去するレーザである(Heinrich E.,Eur.Urol.,52(6):1632-7 (2007))。レーザ光(緑色)の色の重要性は、これが、赤血球内に含まれるヘモグロビンによる吸収をもたらし、水には吸収されないことである。この手順は、レーザ前立腺切除術、またはレーザ経尿道的前立腺切除術(TURP)としても知られ得る。この技法は、前立腺被膜に達するまで、前立腺肥大部をレーザで照射することを要する。前立腺のこの部分を取り除くことにより、患者は、前立腺内の広く開いた導管を通して、遥かに容易に排尿することができる。この処置は、全身麻酔下または脊椎麻酔下で行われる必要がある。この方法の有利な点は、従来の手術と比較して出血が少ないため、抗凝血剤(例えば、脳卒中を予防するためのアスピリン)を服用している患者でも治療することができることである。本発明の挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0217】
さらに、フォトバイオモジュレーションの別の適用分野は、光による脳細胞活性の直接的な制御である。この技法は、NIR分光法に基づいており、機能的磁気共鳴画像法及び陽電子放出断層撮影法などの他の方法よりも、使用が簡単で、安価である。
【0218】
脳の領域が活性化されるたびに、脳のその部分は多くの酸素を使用する。この技法は、脳内の血流及び酸素消費量を測定することによって機能する。NIRレーザダイオードによって放出された光は、光ファイバによってヒトの頭部に搬送される。この光は頭蓋骨を透過し、そこでこの光は脳の酸素レベル及び血液量を評価する。その時、散乱された光は、光ファイバによって収集され、検出器に送られてコンピュータによって分析される。どのくらいの光が散乱され、どのくらい吸収されたかを調べることによって、脳の部分と、脳活動に関する抽出情報とをマッピングすることができる。散乱を計測することによって、ニューロンが発火している場所が決定される。このことは、科学者が同時に血液灌流と神経活動との両方を検出できることを意味する。この技法は、多くの診断、予後及び臨床の用途に使用することができる。例えば、小児の血腫の発見、睡眠中無呼吸時の脳内血流の研究、及び回復期にある脳卒中患者の日常的な、またはさらには1時間単位のモニタリング(これはMRIを用いて行うには実際的でない)に使用することができる。この技法を検証するために、NIR分光法と、脳研究における現在の「至適基準」である機能MRIとによって同時に得られた、脳内のヘモグロビン酸素濃度を比較した。両方の方法を使用して、指の動きと停止による周期的な刺激のシーケンスの間に、脳の運動皮質の機能マップを作成した。指運動に関係した運動皮質におけるヘモグロビン信号とMRI信号との間の空間的一致が実証された。研究者らはまた、ヘモグロビン酸素レベルと脳活動による散乱の変化との間の結びつきを実証した。速いニューロン信号に関連する散乱の変化は、正確に同じ場所から生じた。本発明の挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0219】
低強度レーザ光-酸素がん療法は、フォトバイオモジュレーションの別の応用である。光-酸素効果(LOE)は、光力学作用と同様に、生物系に溶解された分子酸素が一重項状態に変換されるように、直接光励起によって、すなわち、細胞内に溶解されたO由来の分子一重項酸素の光生成によって、低光学線量の光学的放射による生物系の活性化または生物系に対する損傷を伴う(Zakharov SD,et al.,Quantum Electronics,29(12):1031-53 (1999))。He-Neレーザ放射により、光増感剤の存在下または不在下で腫瘍細胞が破壊されることが示された。LOEは、少量の光学線量によって活性化することができ、その量は、光力学作用(PDE)の形でよく知られている類似したものと比較した場合に見い出される線量よりも、4~5桁少ない。本発明の挿入装置(複数可)3は、このような波長の光を送出するように構築され、かつプログラムされ、もしくは命令され、または構成することができる。
【0220】
フォトバイオモジュレーションの別のタイプは、2つの大まかなカテゴリに分類される。一方の方法のセットでは、光を使用して化合物を脱ケージし、その後化合物が生化学的に活性になり、下流のエフェクタに結合する。他方のセットでは、光を使用してロドプシン(ChR2)などの光感受性タンパク質を活性化し、次いでこれがオプシンを発現する細胞を励起することができる。本発明の挿入装置(複数可)3は、このようなタイプのフォトバイオモジュレーション向けに光を送出するように構築され、及びまたは命令され、または構成することができる。
【0221】
第1のセットでは、この方法は、試料に「ケージド」化学物質を加え、その後、ケージを開くために光を使用して、反応を引き起こすことを含む。修飾されたグルタミン酸塩は、ニューロン間の興奮性結合部を見出すのに有用である。非ケージドグルタミン酸塩が、一方のニューロンが他方のニューロンに作用する天然のシナプス活性を模倣するためである。この方法は、ニューロン機能の解明、及び例えば、2光子グルタミン脱ケージを用いた、脳切片におけるイメージングに使用される(Harvey CD,et al.,Nature,450:1195-1202 (2007);Eder M,et al.,Rev.Neurosci.,15:167-183 (2004))。他のシグナリング分子、例えば、GABA、二次メッセンジャー(例えば、Ca2+及びMg2+)、カルバコール、カプサイシン、及びATPは、UV光刺激によって放出され得る(Zhang F.,et al.,2006)。イオンチャネル及び受容体の化学修飾を行って、それらを光応答性にすることができる。Ca2+は、受精、分化、増殖、アポトーシス、シナプス可塑性、記憶、及び軸索の発生の制御に関与している。さらに別の好ましい実施形態において、Ca2+波は、UV照射(単一光子吸収)及びNIR照射(2光子吸収)によって、ケージに入れられたCa2+、細胞外プリン作動性メッセンジャーInsP3 (Braet K.,et al.,Cell Calcium,33:37-48 (2003))、またはイオンチャネルリガンド(Zhang F.,et al.,2006)を放出することにより、誘導され得る。
【0222】
ロドプシン(ChR2)などの光感受性タンパク質を活性化するために光を使用する第2のセットでは、次いでこれがオプシンを発現する細胞を励起することができる。光センサ及び陽イオンチャネルを含むモノリシックタンパク質であるチャネルロドプシン-2は、適切な速度及び大きさの電気刺激を提供して、ニューロンのスパイク発火を活性化することが示されている。近年、光により神経作用を抑制する光抑制が、光活性化クロライドポンプハロロドプシンなどの分子を神経制御に利用することによって、実現可能になっている。合わせると、青色光で活性化されるチャネルロドプシン-2と、黄色光で活性化されるクロライドポンプハロロドプシンとは、多色の、光学的活性化、及び神経作用の抑制を可能にする。
【0223】
ChR2光刺激には、ニューロンに対するChR2の遺伝的標的設定、及びChR2タンパク質を発現するニューロンに光がパルス出力することが必要とされる。この実験は、光ファイバを使用して光を外側視床下部に送達する、in vivoでの深部脳光刺激によって、マウスにおいてin vitro及びin vivoで実施された(Adamantidis AR,et al.,Nature 450:420-425 (2007))。ChR2の遺伝的標的設定は、画定された細胞サブセットの排他的刺激を可能にし、ケージドグルタミン酸塩を添加する必要が回避され、in vivoでの光刺激を容易にする(Wang H.,et al.,PNAS,104(19):8143-48 (2007))。ChR2光刺激は、虫及びハエにおける行動反応を呼び起こさせる目的で、視覚障害を持つマウスにおいて視覚機能を回復させるために使用されている(Wang H.,et al.,2007)。マウスにおけるChR2支援の光刺激によって引き出されたロバストな連合学習は、in vivoでの知覚及び認識の基盤となる回路の研究への門戸を開く(Huber D.,et al.,2007)。この種のニューロンの標的化及び刺激は、行動特性、知覚特性及び認識特性を制御して、脳がどのように機能するかを画像化して研究するために、例えばパーキンソン病及び他の障害を治療するための脳深部刺激などの臨床応用が可能である(Zhang F.,et al.,Nature Methods,3(10):785-792 (2006);Wong-Riley MT.,et al.,JBC,280(6):4761-4771 (2005))。
【0224】
古細菌と呼ばれる微生物から取り入れられた別の遺伝子であるクロライドポンプ(NpHR)は、黄色光の存在下でニューロンの活性を低下させることができる。2つの遺伝子ChR2及びNpHRは、組み合わせると、ニューロンを、運転者が交通信号に従うように、光のパルスに従わせることを可能にする。つまり、青は「進め」(信号を放出せよ)を意味し、黄色は「止まれ」(放出するな)を意味する。
【0225】
光感受性タンパク質は、エレクトロポレーション、DNAマイクロインジェクション、ウイルス送達、リポソーム遺伝子導入及びリン酸カルシウム沈殿を含む多数の技法によって、細胞または生体対象に導入することができる。
【0226】
光刺激
光刺激技法は、イオンチャネル及び受容体を化学修飾して光応答性にすることを含む。本発明の挿入装置(複数可)3は、この技法向けに光を送出するように構築され、及びまたは命令され、または構成することができる。細胞における最も基本的なシグナル伝達機構のいくつかは、Ca2+イオンの放出及び取込みを伴う。Ca2+は、受精、分化、増殖、アポトーシス、シナプス可塑性、記憶、及び軸索の発生の制御に関与している。Ca2+波は、UV照射(単一光子吸収)及びNIR照射(2光子吸収)によって、ケージに入れられたCa2+、細胞外プリン作動性メッセンジャーInsP3 (Braet K.,et al.,Cell Calcium,33:37-48 (2003))、またはイオンチャネルリガンド(Zhang F.,et al.,2006)を放出することにより、誘導され得ることが示されている。
【0227】
光で脳細胞の活動を直接制御することは、神経回路を試験する新しい手段であり、いくつかの障害の治療につながる可能性がある。この達成は、ミリ秒の時間スケールで神経回路の動態をマッピングして、これらの動態の機能障害が深刻な精神科的症状の根底にあるかどうかを確認する目標に向けての一歩である。個別のニューロンが持つ作用を知ることは、研究者が、正常な脳回路の働きと、病的な脳回路の働きとを理解するのに役立ち得る。この技法を使用することにより、ある特定の種類のニューロンにおける活性変化が症状の根底にあることを示すことができる場合、この洞察が、例えば、それらのニューロンを修復するための標的化遺伝子治療または標的化薬品治療の開発を可能にする。考えられるところでは、光によるニューロン活動を直接的に制御すること自体が、そのうち治療法になる可能性がある。この点で、本発明の挿入装置(複数可)3は、ニューロン活動を直接的に制御するための光を送出するように構築され、及びまたは命令され、または構成することができる。
【0228】
生命体において、科学者らは、蠕虫であるC.elegansの遺伝子改変された運動ニューロンが、顕微鏡を介して増強された黄色光のパルスに曝露されている間、それらに遊泳するのを停止させることができている。一部の実験では、青色光に曝すことで、蠕虫に、平静を保ちながら移動しない仕方で、小刻みに動くようにさせた。光を消したとき、蠕虫はそれらの正常な振る舞いを取り戻した。
【0229】
その一方で、マウスから抽出した生体脳組織での実験では、研究者らはこの技法を使用して、ニューロンが本来行うように、ニューロンに、ミリ秒の時間スケールでシグナル伝達またはシグナル停止をさせることができた。他の実験では、細胞が、光への曝露による病的影響を被っていないとみられることが示されている。マウスは、曝露が終わると、それらの正常機能を取り戻す。
【0230】
光ニューロン制御の最も直接的な用途は、神経回路を対象に実験することで、なぜ病的なものが機能しなくなるのか、正常なものがどのように働くかを解明することである。
【0231】
例えば、パーキンソン病の患者において、研究者らは、細胞の電気的な「脳深部刺激」が患者の力になり得ることを示している。研究者らが、脳内の個別のニューロンを選択的に刺激し、または抑制することを可能にすることによって、光刺激技法は、深部脳刺激から効能を受けているニューロンが具体的にどれなのか、判断するのに役立つ可能性がある。そのようなことは、いくつかの望まない副作用を伴う電気的治療を、より的を絞ったものにすることにつながり得る。
【0232】
もう1つの潜在用途は、神経伝達をシミュレートすることを対象に実験することである。ニューロンは、時にオン及び時にオフのシグナルパターンを生成することによって伝達するので、これらのパターンでバイナリコンピュータコードの0及び1のように、青色光及び黄色光を点滅させることにより、実際の神経の指示に対応した伝達内容を、ニューロンに強制的に放出させることができる。将来は、これにより、研究者は、非常に高度なニューロンの挙動を分析して調整することができるようになる可能性がある。さらに先の将来いつか、動きの指示などの神経シグナルを人為的に刺激する能力によって、医師は、損傷した脊柱の閉塞を橋渡しすることができ、麻痺患者の四肢に何らかの機能を回復させる可能性がある。
【0233】
最後に、本技法は、正常な脳のほとんど知られていない機能を引き出すのに有用である可能性がある。この点で、本発明の挿入装置(複数可)3は、このようなニューロン活動及び他のニューロン活動を制御するための光を送出するように構築され、及びまたは命令され、または構成することができる。
【0234】
薬物パッケージ化
本発明の方法及びシステムに有用な試薬及び化学物質を、キットにパッケージ化して、本発明の利用を容易にすることができる。一具体例としての実施形態では、ソラレン、ならびに自家ワクチンの分画及び単離を容易にする分画容器を含むキットが企図される。キットのさらなる実施形態は、所定の細胞変化を引き起こすことができる少なくとも1つの活性化可能な医薬品、励起されたときに少なくとも1つの活性化可能薬剤を活性化することができる少なくとも1つのエネルギー調節薬剤、及び薬剤を安定した形で貯蔵するのに適した容器を含み、好ましくは、少なくとも1つの活性化可能な医薬品及び少なくとも1つのエネルギー調節薬剤を被検体に投与するための、ならびに開始エネルギー源から開始エネルギーを印加して、挿入装置(複数可)を活性化し、次にこれが医薬品を活性化させるための説明書をさらに含む。説明書は、キット挿入物に印刷されたもの、1つ以上の容器に印刷されたもの、及びコンピュータ可読記憶メディアなどの電子記憶メディアに提供される電子的に格納された説明書を含むが、これらに限定されない任意の所望の形態であってよい。またオプションで、ユーザが、開始供給源の照射の強度を計算して制御するために、情報を統合して制御線量を計算することを可能にするコンピュータ可読記憶メディア上のソフトウェアパッケージも含まれる。
【0235】
液体の滅菌及び低温殺菌法
波長が254nmの紫外線(UV)は、ほとんどの種類の微生物を不活化する傾向があることが知られている。ほとんどのジュースは、その中の懸濁物質の濃度が高いために、UVに対して不透明であり、したがって水処理に通常使用される従来のUV処理はジュースの処理に使えない。このプロセスを効率的にするために、ガラス製の薄膜反応器を使用し、ジュースを垂直のガラス管の薄膜としての内面に沿わせて流している。Innovative Food Science & Emerging Technologies (Volume 5,Issue 4,December 2004,Pages 495-502)に掲載されたTran et al.による「Ultraviolet Treatment of Orange Juice」(その全記載内容は参照により本明細書に援用される)を参照されたい。Tran et al.は、還元したオレンジジュース(OJ;10.5°Brix)に必要なD値(decimal reduction doses)は、標準の好気性生菌数(APC)ならびに酵母及びカビに対して、それぞれ87±7及び119±17mJ/cmであると報告している。彼らはまた、生オレンジジュースの貯蔵寿命が、UVの制限された照射(73.8mJ/cm)で5日間に延長されたと報告している。ビタミンCの濃度に対するUVの影響を、HPLC及び滴定法の両方の測定法を用いて調べた。ビタミンCの分解は、100mJ/cmという高いUV曝露下で17%であり、加熱殺菌で普通に見られる値と同じようであった。ジュースの曇り消失(cloud loss)の主要原因であるエンザイムペクチンメチルエステラーゼ(PME)活性も測定した。オレンジジュースのUV処理に必要なエネルギー(2.0kWh/m)は、熱処理に必要なエネルギー(82kWh/m)よりもはるかに小さかった。ジュースの色及びpHは、処理によって有意に影響されなかった。
【0236】
本明細書に記載される発明は、下記の点でこのアプローチに勝る有利な点を提供する。つまり、本発明の挿入装置(複数可)3は、オレンジジュース内の石英またはガラスなどの器具(カプセル封入構造)の内部に配置され、マイクロ波またはRF電力を照射して、オレンジジュース(または他の液体媒質)内の挿入装置(複数可)3を活性化させることができる、という点である。
【0237】
オレンジジュースに関して論じているが、食品、医療用品及び化粧品を含む滅菌すべき他の媒質は、本明細書に記載の本発明の技術を用いて処理することができる。
【0238】
血液製剤の滅菌
米国特許第6,087,141号(その全記載内容は参照により本明細書に援用される)には、輸血製品の滅菌のための紫外線光活性化ソラレンプロセスが記載されている。本発明は、輸血製品中のAIDS及びHIVまたは他のウイルスもしくは病原体の無力化に利用することができる。本実施形態では、少なくとも1つの光活性化可能薬剤が、ソラレン、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デクリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、アロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、ビタミン代謝産物、ビタミン前駆体、ナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフォリンポルフィリン、色素及びフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、アントロキノン、ポルフィセン、ルビリン、ロサリン、ヘキサフィリン、サフィリン、クロロフィル、クロリン、フタロシアニン、ポルフィラジン、バクテリオクロロフィル、フェオフィチン、テキサフィリン大環状系成分、またはそれらのメタル化誘導体から選択される。これらの光活性化可能薬剤は、挿入装置(複数可)3から生じた光の受容体として機能する。
【0239】
本発明の本実施形態及び他の実施形態における受容体は、レーザ色素、フルオロフォア、ルモフォア、または蛍光体のうちの少なくとも1つを含むことができる。レーザ色素は、p-テルフェニル、スルホローダミンB、p-クアテルフェニル、ローダミン101、カルボスチリル124、クレシルバイオレットペルクロラート、popop、ヨウ化DODC、クマリン120、スルホローダミン101、クマリン2、オキサジン-4-ペルクロラート、クマリン339、PCM、クマリン1、オキサジン-170-ペルクロラート、クマリン138、ナイルブルーAペルクロラート、クマリン106、オキサジン-1-ペルクロラート、クマリン102、ピリジン1、クマリン314T、スチリル7、クマリン338、ヨウ化HIDC、クマリン151、ヨウ化PTPC、クマリン4、クリプトシアニン、クマリン314、ヨウ化DOTC、クマリン30、ヨウ化HITC、クマリン500、HITCペルクロラート、クマリン307、ヨウ化PTTC、クマリン334、DTTCペルクロラート、クマリン7、IR-144、クマリン343、HDITCペルクロラート、クマリン337、IR-NO、クマリン6、IR-132、クマリン152、IR-125、クマリン153、ボロン-ジピロメテン、HPTS、フルオレセイン、ローダミン110、2,7-ジクロロフルオレセイン、ローダミン65、及びローダミン-19-ペルクロラート、ローダミンb、ならびに適切な置換基の付加によって修飾され、溶解度を変更するか、または生物環境内でそれらの相互作用を調整するこれらのレーザ色素の誘導体の少なくとも1つであり得る。
【0240】
本発明の様々な実施形態では、受容体は、他の機能を果たす二次薬剤である。本発明に適した二次薬剤には、二次放出源、細胞傷害性薬剤、磁気共鳴画像法(MRI)薬剤、陽電子放出断層撮影(PET)薬剤、放射線画像薬剤、または光線力学的療法(PDT)薬剤が含まれる。
【0241】
これらの光活性化可能薬剤(受容体及び二次薬剤)は、血液製剤(または患者の血流)に導入される。マイクロ波またはRF電力が、血液製剤(または患者)に印加される。挿入装置(複数可)3(血液製剤または密閉型構造に含まれる)は、血液生成物中の光活性化可能薬剤を活性化するUV光などの二次光を生成する。
【0242】
具体例では、光活性化可能薬剤は、ソラレン、クマリン、またはその誘導体であり、上記のように、in vivoで(すなわち、患者内で)または血液製剤(例えば献血など)の容器内で血液製剤を滅菌することができる。この処理は、例えば、がん細胞、腫瘍細胞、自己免疫欠乏症ウイルス、または血液感染性殺菌剤などの障害を治療するために利用することができ、ソラレン、クマリン、またはその誘導体によって処置される。
【0243】
廃液無害化
光触媒はまた、規制排出限度に応じるとともに、生物学的処理において酸化されていない化合物を酸化させるために、廃液の三次処理として使用されている。光触媒は、いくつかの汚染物質(例えば、アルカン、アルケン、フェノール、芳香族化合物、農薬)を削減または排除するために使用され、大きな成功を収めている。多くの場合、有機化合物の全無機化が観察されている。CdS、Fe、ZnO、WO、及びZnSなどのいくつかの光触媒が研究されてきたが、最良の結果はTiO25で得られている。これらの光触媒は、本発明において用いることができる。
【0244】
石油精製所の廃液は、プロセスで使用される設備を洗浄することから生じる水、有害な廃棄物、及び汚水である。これらの排出物は、溶液中の他の有機化合物の他に、油及びグリースの含有量が高い。これらの汚染物質は、環境に深刻な毒性危険物を与え得る、残留性の化学的酸素要求量(COD)を生じさせる。
【0245】
廃液の削減浄化に、光触媒を使用できることが知られている。Cooper et al.に対する米国特許第5,118,422号(その全記載内容が参照により本明細書に援用される)には、易酸化性の汚染物質化合物を含有する水供給原料を浄化するための紫外線駆動光触媒後処理技術が記載されている。この研究では、水供給原料を、約0.01~約1.0ミクロンの範囲の粒子サイズを有し、水の約0.01重量%~約0.2重量%の量の光触媒半導体粒子(例えば、TiO、ZnO、CdS、CdSe、S、SrTiO、WO、Fe、及びTa粒子)と混合した。半導体混合物を含む水を、易酸化性の汚染物質の酸化に作用して、水を浄化するのに十分な時間、バンドギャップ光子に曝露する。クロスフロー膜濾過を用いて、浄水を半導体粒子から分離した。Cooper et al.は、再循環バッチ反応器を使用して、公称40PPMレベルでシミュレートした再生水の有機不純物炭素含有量が、10億分の1に減少したことを示している。
【0246】
Cooper et al.は、光触媒プロセスの重要な一面は、水中に分散した微粉によってもたらされる非常に大きな表面積への有機分子の吸着であることを特定した。Cooper et al.は、光電気化学的用途では、固相(金属酸化物半導体)もまた光反応性であること、及び生成される電荷担体が有機酸化に直接関与するということの事実が利用されることをさらに示した。半導体粒子によるバンドギャップ光子の吸収は、電子(e)/正孔(h)対の形成をもたらす。Cooper et al.は、伝導帯で生成された電子が溶液酸素と反応して二原子酸素陰イオン(O2-)種を形成し、続いてこれがさらなる反応を受けて、その結果、強力な酸化性のヒドロキシルラジカル種OHの生成をもたらすことを説明する。これらの強力な酸化剤は、それ自体で有機化合物を酸化することが知られている。さらに、Cooper et al.は、価電子帯で生成された強力に酸化させる正孔が、全ての有機結合を酸化するのに十分なエネルギーを有すると説明している。
【0247】
Cooper et al.の反応器では、廃液汚染物質及び光触媒チタニア粒子が確実にUV光に曝されるようにするために、乱流が必要である。Cooper et al.は、光触媒光吸収とその対流による混合との関係についての最も基本的な考察を説明している。0.1wt%の光触媒充填では、光の90%が0.08cm以内に吸収されることが実験によって示されている。これは主に光触媒の大きなUV吸収係数のためであり、したがって、光電気化学の大部分はこの照射領域内で生じる。Cooper et al.の反応器をレイノルズ数(Re)が4000で操作することによって、光活性領域のかなりの部分が十分に混合された乱流区域の中にあることが保証される。
【0248】
Santos et al.は、“Photocatalysis as a tertiary treatment for petroleum refinery wastewaters” published in Braz.J.Chem.Eng.vol.23,No.4,2006(その全記載内容が参照により本明細書に援用される)において、汚染物質の量を規制排出限度の水準まで十分に低減し、生物処理で酸化されなかった難分解性化合物を酸化させる、石油精製廃液の三次処理用の光触媒について報告している。精製所(ブラジルの石油精製所であるREDUC/PETROBRAS)で使用される処理手順では、石油/水分離の後に生物処理が続く。生化学的酸素要求量(BOD)除去に関してのプロセス効率は高いものの、残留性の持続的なCODとフェノール含有量とは残存する。精製所の精製能力は41,000m/日であり、1,100m/hで廃液が生成され、廃液はグアナバラ湾(リオデジャネイロ)に直接排出される。残留性の持続的なCODの処理は優先事項のままである。
【0249】
Santos et al.は、60mLの廃液を収容する開放型の250mL反応器で実施される、最初の一連の実験を行った。別の一連の実験では、550mLの廃液を収容するPyrex(登録商標)環状反応器が使用された(De Paoli and Rodrigues,1978)。反応器内の反応混合物は磁気撹拌によって懸濁状態に維持された。全ての実験において、空気が懸濁液を通って継続的に泡立てられた。250WのPhillips HPL-N中圧水銀蒸気ランプが(その外管が外された状態で)UV光源(λ>254nmで108J・m-2・s-1の放射束)として使用された。一組の実験において、ランプは、液体の表面の上の固定された高さ(12cm)のところに配置された。別の組では、ランプはウェルに挿入された。Santos et al.による全ての実験は25±1℃で行われた。触媒濃度は0.5~5.5gL-1の範囲であり、初期pHは3.5~9の範囲であった。
【0250】
本明細書に記載の本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3は、廃液内の石英またはガラスの器具の内部に配置されるか、または光触媒TiOのように、照射の間に廃液に同伴し得る、廃液内のシリカ密閉型構造上に配置される。
【0251】
例えばマイクロ波またはRF電力を照射すると、挿入装置(複数可)3は、光触媒剤のあるその近くにUV光を発生させる。本実施形態に関して言い換えれば、挿入装置(複数可)3は廃液液流中の光触媒半導体粒子と共に混合され、かつ外部活性化エネルギー源が容器(例えば、プラスチック容器またはアルミニウム容器)を透通して廃液の大部分を照射して、廃液全体にUV光を発生させ、続いてUV光が光触媒反応を引き起こす。一実施形態では、挿入装置(複数可)3は、ダウンコンバート用の粒子または他のエネルギー調節薬剤と複合体化される。
【0252】
光刺激
光刺激は、物性を変化させるため、または変更するために光を照射する分野である。例えば、消費者及び生物医学分野における生分解性ポリマーの使用に一層の焦点が当てられている。ポリ乳酸(PLA)プラスチック及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)プラスチックは、その目的を達成する上で極めて重要な役割を果たしてきた。しかし、それらの比較的疎水性の表面は、様々な用途において、それらの使用を制限する。したがって、これらのフィルム表面を表面修飾する必要がある。修飾可能な側鎖基の欠如のため、作業者は、これらの生体ポリマーの表面修飾のために、連続二段階光グラフト技法を使用してきた。ステップ1では、ベンゾフェノンをフィルム表面に光グラフトし、ステップ2では、アクリル酸及びアクリルアミドのような親水性モノマーをフィルム表面に光重合させた。
【0253】
作業者は、UV照射が効果的なグラフト共重合を実現できることを見出した。エタノール中でのUV支援光グラフトは、親水性ポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸)及びポリアクリルアミド)をPLA、PHA、及びPLA/PHAブレンドフィルムの表面から成長させるために使用されている。その研究では、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)を膜表面に光グラフトすることによって、機能性ポリウレタン(PU)表面を調製した。グラフト共重合は、光酸化及び照射グラフトを併用することによって行われた。PU膜を光酸化して、ヒドロペルオキシド基を表面に導入した後、予めモノマー溶液に浸漬させた膜にUV光を照射している。結果は、UV照射がグラフト共重合を効果的に実現できることを、本発明以前に示している。
【0254】
本明細書に記載の本発明において、これらのプロセスは、光刺激に使用される液体媒質における分散液中に挿入装置(複数可)3を含めることによって促進される。マイクロ波またはRF電力の照射の際に、挿入装置(複数可)3はUV光を生成して、バッチタイプまたはバルクタイプの処理を容器内で並行して行うことを可能にする。
【0255】
光不活性化
多くの産業プロセス、特に食品産業及び飲料産業では、原料中の糖の転換など、媒質中に変化を引き起こすために酵母が使用される。特に顕著な一例が、ワイン業界である。ワインがさらに発酵するのを停止させることによって、その時点の甘味の度合いが保持される。同じように、ワインをさらに発酵させ続けることは、日ごとにワインの甘味を低下させるのみにすぎない。最終的にワインは完全に辛口になり、その時点で発酵は自然に停止する。これは、発酵プロセスの間に、酵母が糖をアルコールに変えるためである。
【0256】
発酵プロセスを止めるのを望むことは、それ自体はまったく役に立つことである。しかし残念ながら、実際に首尾よく発酵を止めてしまう実用的な方法はない。亜硫酸塩及びソルベートなどの添加剤を加えて、発酵製品を安定化させ、さらなる発酵を停止させることは可能である。多くのワイン醸造家は、答えを求めて、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたはキャンプデンタブレットに見られる亜硫酸塩に頼ることになる。しかし、これら2品は、活動が完全に停止することを保証するほど十分には、少なくともワインをなおも飲める状態のままにする標準の投与量では、酵母を確実に殺滅することができない。
【0257】
これらの成分のいずれかからの亜硫酸塩の大部分がワインから空気中に放散されると、亜硫酸塩が消散するので、十分な時間が与えられれば残りのわずかな生酵母細胞が増殖し、再び発酵する可能性が非常に高い。これは通常、ワインが瓶詰めされて、しまいこまれた後のように、最も不都合な時に発生する。
【0258】
ソルビン酸カリウムは、ワインがさらに発酵するのを止めようとするときに多くのワイン醸造家が考慮するもう一つの成分である。この製品には多くの誤解がある。ソルビン酸カリウムは、通常、ワインを甘くするときに家庭向けワイン作りの本によって要求されるものである。この段階では発酵は既に完了し、瓶詰めの準備ができている状況である。甘味のために加える砂糖と一緒に、ソルビン酸カリウムを加える。
【0259】
ソルビン酸カリウムは、酵母が新たに添加された砂糖を発酵させるのを停止する。したがって、多くのワイン醸造家は、ソルビン酸カリウムが活発な発酵を同様にうまく停止させることができると考えているが、ソルビン酸カリウムは酵母をまったく殺滅せずに、酵母を増殖不能にする。つまり、ソルビン酸カリウムは、酵母のそれ自体を複製する能力を無にする。しかし、酵母が糖を発酵させてアルコールにする能力を妨げることはしない。
【0260】
紫外光は酵母の培地を破壊することが知られているが、UV光は液体媒質全体に侵入できないため、利用に制約がある。熱を使用して酵母の活性を破壊することができるが、製品の加熱は時期尚早であるか、または濃度と及び味に望ましくない変化を引き起こし得る。流動食食品または流体食品については、上記の同じ技術を、本明細書に記載される用途に用いることができる。非液体食品については、毒性がほとんどない、好ましくは毒性のないエネルギー調節薬剤(例えば、Fe酸化物または酸化チタン)を添加することができる。この場合に、これらの添加剤の濃度は、予想外の味の変化によって制限される可能性が高い。
【0261】
この点で、挿入装置(複数可)3によって生成されるUV光は、酵母を不活性化させるであろう。
【0262】
ポリマーの光活性化架橋結合及び硬化
この用途では、本発明の挿入装置(複数可)3を用意し、これを媒質中の感光剤活性化用の未硬化ポリマー系媒質の中に分散させて、ポリマー系媒質の架橋結合及び硬化を促進させる。一実施形態では、挿入装置(複数可)3には、ポリマーに添加される前に、ダウンコンバート用発光粒子または他のエネルギー調節薬剤が設けられる。
【0263】
接着剤及び表面コーティングの用途では、必要な処理が行われた媒質へのUV光の侵入深さのために、光活性化処理が制限される。光で活性化される接着剤及び表面コーティング処理において、主な制限は、硬化すべき材料に、種類(波長またはスペクトル分布)及び強度の両方につき、光を捉えさせる必要があることである。この制限は、ある1つの媒質が適切な光を決まって透過させなければならないことを意味する。接着剤及び表面コーティングの用途では、全ての「陰になった」領域には二次硬化機序が必要とされ、陰のない領域よりも硬化時間が長くなり、その後の硬化を進めるために通されなければならない、閉ざされた外殻の存在に起因して、硬化時間がさらに遅延する。
【0264】
従来、水分硬化性機序、熱硬化機序、及び光開始硬化機序は、反応性シリコーン、反応性ポリマー、及び反応性接着剤などの反応性組成物の硬化、すなわち架橋結合を開始するために使用されている。これらの機序は、水分が特定の基を加水分解する縮合反応、または電磁放射線もしくは熱などのエネルギー形態によって開始され得る付加反応のいずれかに基づいている。
【0265】
本明細書に記載される本発明は、以下の光活性化硬化性ポリマーのいずれか、さらには本発明の挿入装置(複数可)3が添加される当技術分野で周知の他のものを使用することができる。
【0266】
本発明の挿入装置による光硬化
この用途では、本発明の挿入装置(複数可)3を用意し、これを媒質中の感光剤活性化用の未硬化ポリマー系媒質の中に分散させて、ポリマー系媒質の架橋結合及び硬化を促進させる。接着剤及び表面コーティングの用途では、必要な処理が行われた媒質へのUV光の侵入深さのために、光活性化処理が制限される。光で活性化される接着剤及び表面コーティング処理において、主な制限は、硬化すべき材料に、種類(波長またはスペクトル分布)及び強度の両方につき、光を捉えさせる必要があることである。この制限は、ある1つの媒質が適切な光を決まって透過させなければならないことを意味する。接着剤及び表面コーティングの用途では、全ての「陰になった」領域には二次硬化機序が必要とされ、陰のない領域よりも硬化時間が長くなり、その後の硬化を進めるために通されなければならない、閉ざされた外殻の存在に起因して、硬化時間がさらに遅延する。
【0267】
従来、水分硬化性機序、熱硬化機序、及び光開始硬化機序は、反応性シリコーン、反応性ポリマー、及び反応性接着剤などの反応性組成物の硬化、すなわち架橋結合を開始するために使用されている。これらの機序は、水分が特定の基を加水分解する縮合反応、または電磁放射線もしくは熱などのエネルギー形態によって開始され得る付加反応のいずれかに基づいている。
【0268】
本明細書に記載される本発明は、以下の光活性化硬化性ポリマーのいずれか、さらには本発明の挿入装置3が添加される当技術分野で周知の他のものを使用することができる。
【0269】
Loctite Corporationは、UV及びUV/水分の二重硬化性シリコーン組成物を設計して開発しており、これはまた、可燃性及び燃焼性に対して高い抵抗力を示す。ここで、難燃性成分は、アルミナ水和物と、遷移金属のオルガノリガンド錯体、遷移金属のオルガノシロキサンリガンド錯体、及びそれらの組合せからなる群から選択された要素との組合せである。Benningtonに対する米国特許第6,281,261号及び第6,323,253号を参照されたい。これらの製剤はまた、本発明に好適である。
【0270】
他の既知のUV光活性化可能なシリコーンとしては、例えば、カルボン酸塩、マレイン酸塩、ケイ皮酸塩、及びこれらの組合せで官能化されたシリコーンが挙げられる。これらの製剤はまた、本発明に好適である。本発明に好適な他の既知のUV光活性化可能シリコーンには、参照によりその全記載内容が本明細書に援用される米国特許第6,051,625号に記載されるように、ベンゾインエーテル(「UVフリーラジカル発生剤」)、及びフリーラジカル重合可能な機能性シリコーンポリマーが含まれる。UVフリーラジカル発生剤(すなわち、ベンゾインエーテル)は、硬化性組成物の総重量に基づいて0.001~10wt%含まれる。組成物を照射して生成したフリーラジカルは、重合反応の開始剤として機能し、対象組成物中の重合性官能基に関連した触媒量のフリーラジカル発生剤を添加することができる。さらにこれらのシリコーン樹脂には、シロキサン結合を形成することができるシリコン結合二価酸素原子化合物を含めることができるが、それぞれの場合における残りの酸素は、他のシリコンと結合してシロキサン結合を形成するか、またはメチルもしくはエチルと結合してアルコキシ基を形成するか、または水素と結合してシラノールを形成することができる。このような化合物としては、トリメチルシリル、ジメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ビニルジメチルシリル、トリフルオロプロピルジメチルシリル、(4-ビニルフェニル)ジメチルシリル、(ビニルベンジル)ジメチルシリル、及び(ビニルフェネチル)ジメチルシリルが挙げられる。
【0271】
本発明の光開始剤成分は、上記のフリーラジカル発生剤に限定されず、前述のベンゾイン及び置換ベンゾイン(アルキルエステル置換ベンゾインなど)、ミヒラーケトン、ジエトキシアセトフェノン(「DEAP」)、ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン、アセトフェノン及び置換アセトフェノン、ならびにキサントン及び置換キサントンを含む、当技術分野で周知の任意の光開始剤であってよい。他の望ましい光開始剤としては、DEAP、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ-チオ-キサントン、アゾ-ビスイソブチロニトリル、N-メチルジエタノールアミンベンゾフェノン、及びこれらの混合物が挙げられる。可視光開始剤としては、カンファキノン、ペルオキシ酸エステル開始剤、及び非フルオレンカルボン酸ペルオキシ酸エステルが挙げられる。
【0272】
本発明に好適な光開始剤の市販の例として、IRGACURE及びDAROCURという商標名でのVantico,Inc.,Brewster,N.Y.からのもの、特にIRGACURE184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、907(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン)、369(2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン)、500(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニールケトン及びベンゾフェノンの組合せ)、651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、1700(ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの組合せ)、及び819[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]、ならびにDAROCUR1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン)及び4265(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの組合せ);ならびにIRGACURE784DC(ビス(.eta..sup.5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン)が挙げられる。
【0273】
一般に、光開始剤(またはフリーラジカル発生剤)の量は、約0.1重量%~約10重量%の範囲内、例えば、約2~約6重量%の範囲内とすべきである。ベンゾインエーテルに対するフリーラジカル発生剤濃度は、一般的に、硬化性組成物の総重量に基づいて0.01~5%である。
【0274】
組成物を硬化させるのに効果的な量の水分硬化触媒を含めることもできる。例えば、本発明では、約0.1~約5重量%、例えば約0.25~約2.5重量%の水分硬化触媒を使用して、光活性化硬化以上に硬化プロセスを促進することができる。そのような触媒の例には、チタン、スズ、ジルコニウム及びこれらの組合せの有機化合物が含まれる。チタン酸テトライソプロポキシ及びチタン酸テトラブトキシは、水分硬化触媒として好適である。米国特許第4,111,890号も参照されたい。
【0275】
本発明に好適な従来のシリコーン組成物(ならびに他の無機及び有機の接着性ポリマー)には、様々な無機充填剤が含まれる。例えば、Q-CELという商標名でKishによって供給される中空マイクロ球体は、白色の易流動性粉体である。一般に、これらのホウケイ酸塩の中空マイクロ球体は、反応性樹脂系での増量剤として奨励されて、通常は炭酸カルシウムなどの重い充填剤に取って代わり、それによって共に形成される複合材料の重量を低減させる。Q-CEL5019中空マイクロ球体は、ホウケイ酸塩を材料として作られ、液体置換密度0.19g/cm、平均粒径70ミクロン、及び粒子サイズ範囲10~150umである。他のQ-CEL製品を以下に表形式で示す。別の市販の中空ガラスマイクロ球体が、KishによってSPHERICELという商標名で販売されている。SPHEREICEL 110P8は、平均粒径が約11.7ミクロンであり、粉砕強度は10,000psiを超える。さらに他の市販の中空ガラスマイクロ球体が、Schundler Company,Metuchen,N.J.によってPERLITEという商標名で、Whitehouse Scientific Ltd.,Chester,UK及び3M,Minneapolis,Minn.によってSCOTCHLITEという商標名で販売されている。
【0276】
一般に、これらの無機充填剤成分(及びフュームドシリカなどの他の成分)は、硬化された組成物に構造的特性を加えるとともに、未硬化状態の組成物に流動性特性を付与して、UV硬化放射線の透過率を高める。フュームドシリカは、存在する場合、約50重量パーセントまでのレベルで使用することができ、約4から少なくとも約10重量パーセントまでの範囲が望ましい。シリカの正確なレベルは、特定のシリカの特性、ならびに組成物及びその反応生成物の所望の特性に応じて変化し得るが、本発明の組成物の透過率を適切なレベルにして、UV硬化を起こさせるように、当業者は注意を払うべきである。
【0277】
望ましい疎水性シリカとしては、ヘキサメチルジシラザン処理されたシリカ、例えば、Wacker-Chemie,Adrian,Mich.からHDK-2000という販売名で市販されているものが挙げられる。他のものとしては、ポリジメチルシロキサン処理されたシリカ、例えば、Cabot CorporationからCAB-O-SIL N70-TSという販売名で市販されているもの、またはDegussa CorporationからAEROSIL R202という販売名で市販されているものが挙げられる。さらに他のシリカとしては、トリアルキルシラン処理されたシリカ、例えば、DegussaからAEROSIL R805という販売名で市販されているトリメトキシオクチルシラン処理されたシリカ、ならびにDegussaからR972、R974及びR976という販売名で市販されている3-ジメチルジクロロシラン処理されたシリカが挙げられる。
【0278】
これらの無機充填剤は、従来のUV硬化シリコーン系の使用法を拡張して、UV侵入の表皮厚さを超える材料の硬化を可能にしているが、これらの無機充填剤のみでは陰影効果は克服されず、侵入深さを事実上小さくするように助長するUV散乱を受ける。本明細書に記載される本発明において、これらの無機充填剤を蛍光体またはシンチレータ粒子と共に含めることは、通常は影になる、外部のUV源または他の光源が届かない領域の、接着固化されるアセンブリ本体の深部に、均一な光活性化硬化を生じさせることができるメカニズムを提供する。
【0279】
したがって、本明細書に記載される本発明の本例では、従来のシリコーン及びポリマー接着剤もしくは剥離剤またはコーティング組成物を、従来の混合技術、加熱技術及び培養技術を用いて調製する。これらの従来の組成物に、本発明のアップコンバータ構造を含める。次いで、これらの組成物は、一緒に固定されるべき物体の表面に、または成型される物体の製造のための硬質コーティングが硬化性の形態で望まれるかもしくは鋳造される表面に、塗布することができる。これらの組成物は、活性化すると、ポリマー組成物の光活性化硬化のための放射光を生成する。これらの組成物中の蛍光体の密度は、ルミネセンス粒子含有組成物の「光透過性」に依存する。
【0280】
Bach et al.に対する米国特許第7,294,656号(参照によりその全記載内容が本明細書に援用される)には、従来の放射線硬化性組成物に勝るいくつかの利点を有した2つのUV硬化性ウレタンアクリラートの混合物を広範に含む、UV放射によって硬化可能な非水性組成物が記載されている。Bache et al.の組成物は、UV-C(200~280nm)、UV-B(280~320nm)、UV-A(320~400nm)、及び可視光線(400nm以上)を使用して、比較的短時間のうちに硬化させることができる。具体的には、Bache et al.の組成物は、320nm以上の波長の放射線を使用して硬化させることができる。完全に硬化した場合(使用した放射線の種類にかかわらず)、Bache et al.の組成物は、少なくとも従来のコーティングに匹敵する硬度及び耐衝撃性を示す。
【0281】
本明細書に記載される本発明において、本発明の発光挿入装置をこれらのBache et al.の組成物に添加する。外部エネルギー源がBache et al.の組成物の全体に深く侵入するという事実のために、厚みを増した表面コーティングを実現することができる。さらに、コーティングは、例えば凹部または突起が作られた入り組んだ表面に施すことができる。
【0282】
例えば、特に好適な光活性化ポリマー化合物には、メタクリレート官能基を有するUV硬化性シリコーンが含まれる。Linに対する米国特許第4,675,346号(参照によりその開示が本明細書に明示的に援用される)は、少なくとも50%の特定の種類のシリコーン樹脂、少なくとも10%のフュームドシリカ充填剤及び光開始剤を含むUV硬化性シリコーン組成物、ならびにその硬化組成物を対象とする。本発明に好適な他の周知のUV硬化性シリコーン組成物としては、(メタ)アクリラート官能基を含むオルガノポリシロキサン、光増感剤、及び溶媒を含み、硬化して硬質フィルムを作る。本発明に好適な他の周知のUV硬化シリコーン組成物は、平均して1分子当たり少なくとも1つのアクリルオキシ及び/またはメタクリルオキシ基を有するオルガノポリシロキサン、低分子量ポリアクリルイル架橋結合剤、及び光増感剤の組成物を含む。
【0283】
したがって、本明細書に記載される本発明の本例では、従来のシリコーン及びポリマー接着剤もしくは剥離剤またはコーティング組成物を、従来の混合技術、加熱技術及び培養技術を用いて調製する。これらの従来の組成物に、本発明の挿入装置(複数可)3を含める。次いで、これらの組成物は、一緒に固定されるべき物体の表面に、または成型される物体の製造のための硬質コーティングが硬化性の形態で望まれるかもしくは鋳造される表面に、塗布することができる。これらの組成物は、活性化すると、ルミネセンス粒子含有ポリマー組成物の光活性化硬化のための放射光を生成する。これらの組成物中のアップコンバータ構造の密度は、ルミネセンス粒子含有組成物の「光透過性」に依存する。これらの組成物がかなりの量の上記の無機充填剤を含有する場合、挿入装置(複数可)3の濃度は、例えば、光透過性が著しく低下する黒色顔料を含む組成物と比べて、低減することができる。
【0284】
Bach et al.に対する米国特許第7,294,656号(参照によりその全記載内容が本明細書に援用される)には、従来の放射線硬化性組成物に勝るいくつかの利点を有した2つのUV硬化性ウレタンアクリラートの混合物を広範に含む、UV放射によって硬化可能な非水性組成物が記載されている。Bache et al.の組成物は、UV-C(200~280nm)、UV-B(280~320nm)、UV-A(320~400nm)、及び可視光線(400nm以上)を使用して、比較的短時間のうちに硬化させることができる。具体的には、Bache et al.の組成物は、320nm以上の波長の放射線を使用して硬化させることができる。完全に硬化した場合(使用した放射線の種類にかかわらず)、Bache et al.の組成物は、少なくとも従来のコーティングに匹敵する硬度及び耐衝撃性を示す。
【0285】
本明細書に記載される本発明において、挿入装置3をこれらのBache et al.の組成物に添加する。外部エネルギー源がBache et al.の組成物の全体に深く侵入するという事実のために、厚みを増した表面コーティングを実現することができる。さらに、コーティングは、例えば凹部または突起が作られた入り組んだ表面に施すことができる。
【0286】
挿入装置による細胞増殖障害の治療
本発明の好ましい実施形態において、被検体は、少なくとも1つの光活性薬物を含む活性化可能な医薬品を投与される。挿入装置(複数可)3は好ましくは患者の患部近傍に挿入される。挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)は、被検体の内部の少なくとも1つの光活性薬物を活性化し、それによって被検体の細胞増殖障害を治療する。
【0287】
代わりに、または加えて、本発明の別の態様は、ウイルスを保有する被検体を治療する方法であって、ウイルスを保有する被検体を治療するために少なくとも1つの光活性薬物を被検体の内部に供給するとともに、1つ以上の挿入装置を被検体内に挿入する方法を含む。少なくとも1つの光活性薬物を、挿入装置3からのUV光(または可視光)(またはエネルギー調節薬剤からの光)によって被検体内の標的において直接的または間接的に活性化させて、それによりウイルスを保有する被検体を治療する。
【0288】
本発明に含まれる機序は、ソラレンもしくはその誘導体またはアルキル化剤などの薬物の光活性化を引き起こし得る。本発明に含まれる機序は、一重項酸素などの高反応性酸素種の形成を引き起こし得る。これらの機序のいずれかを組み合わせてまたは選択的に使用して、細胞増殖障害を持つ被検体、またはウイルスを保有しているか、及び/またはそれらに関連した障害もしくは症状を有した被検体を治療することができる。一実施形態では、挿入装置からのUV光(または可視光)を使用して、アルキル化剤(例えば、ヨードナフチルアジド)をウイルスに付着させるために、それを活性化させることができる。一実施形態では、挿入装置からのUV光(または可視光)を使用して、患者の細菌感染または他の障害の治療のために、ソラレン(またはその誘導体もしくは代替物)を活性化させることができる。一実施形態では、挿入装置からのUV光(または可視光)の1つの波長を使用して、アルキル化剤(例えば、ヨードナフチルアジド)をウイルスに付着させるために、それを活性化させることができ、一方挿入装置からのUV光(または可視光)の別の異なった波長を使用して、患者の細菌感染または他の障害の治療のために、ソラレン(またはその誘導体もしくは代替物)を活性化させることができる。一実施形態では、1つの波長を用いて、アルキル化剤またはソラレンを活性化させることができ、一方別の波長は、例えば一重項酸素(すなわち、高反応性酸素種)の生成、または滅菌UV光の生成のため、または細胞増殖の促進もしくは炎症の低減などの異なった目的に使用される。
【0289】
様々な実施形態では、挿入装置からのUV光(または可視光)の1つ以上の波長を、宿主の治療またはウイルス、例えばエボラ、西ナイル、脳炎、HIVなどの阻止のために、及び/または様々な程度のアポトーシス(プログラム細胞死PCDのプロセス)及び壊死(典型的には外的要因からの細胞及び生体組織の早期の死)を含む生物学的応答の調節及び制御のために使用することができる。壊死に関しては、感染、毒素、または外傷などの、細胞または組織の外部の因子が、細胞成分の無秩序な消化をもたらす。対照的に、アポトーシスは、プログラム化されかつ標的化された自然に起こる細胞死の原因である。アポトーシスはしばしば生物に有益な効果をもたらすが、壊死はほとんどの場合有害であり、致死的となる場合がある。
【0290】
本発明の様々な実施形態では、アルキル化剤は、1,5-ヨードナフチルアジド(INA)などのヨードノフィルアジドファミリー由来の薬物の少なくとも1つ以上であり得る。これらの光励起性化合物は、生体膜二重層の最も内側の領域に浸透し、そのような内膜領域に選択的に蓄積することができる非毒性の疎水性化合物である。膜領域の内部または近傍に生成される、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)またはエネルギー調節薬剤からの光で照射されると、この化合物の反応性誘導体が生成され、これが脂質二重層の奥深くにある膜タンパク質に結合すると考えられている。このプロセスは、膜の細胞外表面から突出したタンパク質の構造的完全性及び活性を維持しながら、膜に埋め込まれた内在性膜タンパクを不活性化させる。本発明の一態様では、不活性化剤は、対象の動物もしくは鳥類またはヒトの内部で、動物もしくは鳥類またはヒトのウイルスまたは細菌の感染に特異的なワクチンを用いて作られるワクチンを構成する。
【0291】
本発明の様々な実施形態において、ソラレンまたはその誘導体などの光活性薬物は、単独に、または少なくとも1つのアルキル化剤と併せて使用される。ソラレンを使用する場合、ソラレンは、挿入装置からのUV光(または可視光)により、またはエネルギー調節薬剤からの光により、細胞内または細胞の近くで生成される紫外線または可視光によって、細胞内で光活性化される。活性化したソラレンは、ウイルスの遺伝的内容物に付着し、その複製を妨げ、局所細胞死(治療の一形態)を引き起こす。代わりにまたは加えて、ソラレン不活化ウイルスは、動物もしくは鳥類またはヒトから自己免疫反応を誘発し、体内の他の領域の未処置ウイルスを効果的に排除することをもたらす。
【0292】
本発明の一実施形態において、1,5-ヨードナフチルアジド(INA)が、光活性化可能な疎水性化合物として使用される。INAは無毒性の疎水性化合物である。1,5-ヨードナフチルアジド(INA)の構造を以下に示す。
【0293】
細胞に曝されると、光活性化可能疎水性化合物は、生体膜二重層の最も内側の領域に浸透することができ、これらの領域に選択的に蓄積する。挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)またはエネルギー調節薬剤からの光によって動物もしくは鳥類またはヒトの被検体の内部で生成される(または他の方法で与えられる)紫外線(例えば、320~400nm)で照射されると、反応性誘導体が生成され、これが脂質二重層の奥深くにある膜タンパク質に結合すると考えられている。
【0294】
本発明の別の実施形態では、本発明の光活性化可能疎水性化合物は、可視光を用いて、ウイルス、細菌、寄生虫及び腫瘍細胞の不活化に使用することができる。しかしながら、可視光を使用する場合、光活性薬物が可視光によって直接活性化されるように開発されない限り、光増感剤である発色団が通常は必要とされる。光増感剤発色団は、可視光域に吸収極大を有し、本発明の光活性化可能疎水性化合物を光増感することができる。一般に、光増感剤発色団は、約450~約525nmまたは約600~約700nmの範囲に吸収極大を有する。好適な光増感剤発色団には、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、プルプリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン、カルボシアニン、テキサフィリン、非テトラピロール、または当技術分野で周知の他の光増感剤の1つ以上が含まれ得る。光増感剤発色団の具体例としては、フルオレセイン、エオシン、ボディパイ、ニトロ-ベンゾ-ジアゾール(NBD)、エリスロシン、アクリジンオレンジ、ドキソルビシン、ローダミン123、ピコエリトリンなどが挙げられる。
【0295】
本発明の様々な実施形態において記述のとおり、ウイルス、細菌、寄生虫及び腫瘍細胞、ならびに他の感染性構造及び微生物は、挿入装置からのUV光(または可視光)もしくはエネルギー調節薬剤からの光により、または光増感剤発色団からの光により、動物もしくは鳥類またはヒトの被検体の内部で発生した光によってそれ自体が活性化される光活性化可能疎水性化合物への曝露によって不活化され得る。様々な実施形態において、光活性化可能疎水性化合物は、1,5-ヨードナフチルアジド(INA)または関連化合物である。本発明の一実施形態では、ウイルス、寄生虫または腫瘍細胞を、先立って光活性化させた疎水性化合物と接触させる。疎水性化合物は、本発明のエネルギー調節薬剤を用いて内部で生成した紫外線によって光活性化させる。ウイルス、寄生虫、腫瘍細胞または他の感染性構造及び微生物を、光活性化可能疎水性化合物と可視光を吸収する光増感剤発色団との両方に接触させる場合、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)もしくはエネルギー調節薬剤からの光によって内部的に生成される可視光、または光増感剤発色団からの光が、光活性化可能疎水性化合物を光活性化させることができる。したがって、一実施形態では、内部的に発生した紫外線光への曝露が、ウイルス及び細胞膜の内部にある光活性化可能疎水性化合物を直接光活性化する。一実施形態では、内部的に発生した可視光への曝露が、まず光増感剤発色団を光活性化し、次いで光増感剤発色団が、ウイルスまたは細胞膜の内部にある光活性化可能疎水性化合物を活性化または光増感する。
【0296】
どちらの場合にも、光活性化可能疎水性化合物の反応性誘導体が生成され、これが脂質二重層の奥深くにある膜タンパク質に結合する。このプロセスは、膜の外側に突き出たタンパク質の完全性及び活性を維持しながら、膜に埋め込まれた内在性膜タンパクの特異的不活化を引き起こすと考えられている。
【0297】
内部的に発生した光を用いる本発明は、不活化した種を、それらが引き起こす疾患を阻害するための免疫的組成物またはワクチンとして安全に使用できるように、多種多様のウイルス、細菌、寄生虫及び腫瘍細胞を不活化し得る方法を提供することができる。活性化された薬物剤(光活性化可能薬物を活性化する、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)から間接的に生成される)は、その構造及び配座を維持する特異的な方法で生物体または細胞を死滅させる。したがって、不活化されたウイルス/細胞の構造は、生存しているウイルス/細胞の構造と類似している。このようにして、生物体または細胞の免疫原性は総じて維持され、これは被検体の動物もしくは鳥類または患者の免疫システムを刺激するために安全に使用することができる。同様に、本発明の一態様では、動物もしくは鳥類またはヒトの被検体の内部で生成される不活化されたウイルス、細菌、がん細胞、または寄生虫は、疾患または他のマイナスの副作用を引き起こすことなく、ワクチン接種に使用することができる。
【0298】
したがって、INAの内部処置手順は、アルドリチオール不活化HIV(AIDSワクチンプログラムSAICによって開発された)と同様の方法で使用できる不活性ウイルスを被検体内に生成する。あるいは、本発明のINA内部不活化手順は、アルドリチオール不活化手順と併せて使用して、FDAの要件に適合する不活性HIVを生成することができる。したがって、本発明の一態様では、機構的に独立した2つの不活化方法を使用して、エイズまたはHIVの予防ワクチンを提供することができる。
【0299】
本発明の一態様では、微生物感染、ウイルス感染、寄生虫感染、プリオン感染またはがんの予防または治療は、一般的に感染またはがんに伴う少なくとも1つの症状の緩和または減弱を含むことを意図している。予防または治療にはまた、複数の症状の緩和または減弱が含まれる。理想的には、本発明の内部的不活性化剤による治療は、その薬剤に対して動物もしくは鳥類またはヒトに免疫を生じさせ、一方本発明の不活性化剤による予防は、感染またはがんに伴う症状を実質的に排除する。
【0300】
本発明の様々な実施形態において、本内部的活性化薬物剤(光活性化可能薬物を活性化する、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)から生成される)によって治療され得る感染症には、哺乳動物もしくは他の動物または鳥類に感染し得る、あらゆる感染性の標的微生物及び構造による感染が含まれる。そのような感染性の標的微生物及び構造には、哺乳動物を含む動物に感染し得る任意のウイルス、細菌、真菌、単細胞生物、プリオン立体構造または寄生生物が含まれるが、これらに限定されない。例えば、標的微生物には、ウイルス、細菌、真菌、酵母菌株及び他の単細胞生物が含まれる。別の実施形態では、本発明の不活性化剤は、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌の両方に対して免疫を生じさせ得る。
【0301】
本発明によって治療することができる典型的なウイルス感染には、エンベロープウイルス及び非エンベロープウイルス、DNAウイルス及びRNAウイルス、ウイロイド、ならびにプリオンを含む動物(哺乳動物または鳥類を含むが、これらに限定されない)に感染し得るウイルスによる感染が含まれる。したがって、例えば、以下のウイルス及びウイルス型の感染または好ましくない段階を内部的に処置することができる。すなわち、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、出血熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パポバウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、アルファウイルス、ルビウイルス、インフルエンザウイルスA型及びB型、フラビウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルス、モルビリウイルス、ニューモウイルス、ラブドウイルス、リッサウイルス、オルソミクソウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、ナイロウイルス、ヘパドナウイルス、アレナウイルス、レトロウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルスならびにフィロウイルスである。
【0302】
生物兵器としての潜在性を持つと考えられる以下の標的ウイルス及びウイルス型の感染または好ましくない段階を、本発明の内部的不活性化剤によって治療、予防または対処することができる。すなわち、出血熱ウイルス(HFV)、チクングンヤ熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、サル痘ウイルス、痘瘡ウイルス、コンゴ-クリミヤ出血熱ウイルス、フニンウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、白痘、エボラウイルス、マチュポウイルス、天然痘ウイルス、黄熱病ウイルス、ハンターンウイルス、マールブルグウイルス、及びダニ媒介性脳炎ウイルスである。
【0303】
同様に、以下の標的微生物の例の感染または好ましくない段階を、本発明によって処置することができる。すなわち、Aeromonas属菌(例えば、Aeromonas hydrophila、Aeromonas caviae及びAeromonas sobriaを含む)、Bacillus属菌(例えば、Bacillus cereus、Bacillus anthracis及びBacillus thuringiensisを含む)、Bacteroides属菌(例えば、B.fragilis、B.thetaiotaomicron、B.vulgatus、B.ovatus、B.distasonis、B.uniformis、B.stercoris、B.eggerthii、B.merdae、及びB.caccaeを含む)、Campylobacter属菌(例えば、Campylobacter jejuni、Campylobacter laridis、及びCampylobacter hyointestinalisを含む)、Clostridium属菌(全ての型のClostridium botulinum(I群、II群、III群及びIV群のもの、ならびにボツリヌス中毒症A、B、C、D、E、F及びGを産生するものを含む)、全ての型のClostridium tetani、全ての型のClostridium difficile、及び全ての型のClostridium perfringensを含む病原性クロストリジウムなど)、Ebola属菌(例えばEBOVザイール)、Enterobacter属菌(例えば、Enterobacter aerogenes(Klebsiella mobilisと呼ばれることもある)、Enterobacter agglomerans(Pantoea agglomeransと呼ばれることもある)、Enterobacter amnigenus、Enterobacter asburiae、Enterobacter cancerogenus(Enterobacter taylorae及び/またはErwinia cancerogenaと呼ばれることもある)、Enterobacter cloacae、Enterobacter cowanii、Enterobacter dissolvens(Erwinia dissolvensと呼ばれることもある)、Enterobacter gergoviae、Enterobacter hormaechei、Enterobacter intermedium、Enterobacter intermedius(Enterobacter intermediumと呼ばれることもある)、Enterobacter kobei、Enterobacter nimipressuralis(Erwinia nimipressuralisと呼ばれることもある)、Enterobacter sakazakii、及びEnterobacter taylorae(Enterobacter cancerogenusと呼ばれることもある)を含む)、Enterococcus属菌(例えば、バンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus durans、Enterococcus gallinarum、及びEnterococcus casseliflavusを含む)、Escherichia属菌(腸毒素原性(ETEC)株、腸病原性(EPEC)株、E.coli O157:H7と命名された腸管出血性(EHEC)株、及び腸管侵襲性(EIEC)株を含む)、Gastrospirillum属菌(例えば、Gastrospirillum hominis(現在、Helicobacter heilmanniiと呼ばれることもある)を含む)、Helicobacter属菌(例えば、Helicobacter pylori及びHelicobacter hepaticusを含む)、Klebsiella属菌(例えば、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella ozaenae、Klebsiella rhinoscleromatis、Klebsiella oxytoca、Klebsiella planticola、Klebsiella terrigena、及びKlebsiella ornithinolyticaを含む)、Salmonella属菌(例えば、S.typhi、S.paratyphi A、B、及びC、S.enteritidis、ならびにS.dublinを含む)、Shigella属菌(例えば、Shigella sonnei、Shigella boydii、Shigella flexneri、及びShigella dysenteriaeを含む)、Staphylococcus属菌(例えば、Staphylococcus aureus、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、Staphylococcus saprophyticus及びStaphylococcus epidermisを含む)、Streptococcus亜種(Streptococcus pneumoniaeを含む、A群(40の抗原性型を持つ1種であるStreptococcus pyogenes)、B群、C群、D群(5種(Streptococcus faecalis、Streptococcus faecium、Streptococcus durans、Streptococcus avium、及びStreptococcus bovis))、F群、及びG群を含む)、Pseudomonas属菌(例えば、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas maltophilia、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas putida、Pseudomonas cepacia、Pseudomonas stutzeri、Pseudomonas mallei、Pseudomonas pseudomallei及びPseudomonas putrefaciensを含む)、Vibrio属菌(例えば、Vibrio cholera Serogroup O1及びVibrio cholera Serogroup Non-O1、Vibrio parahaemolyticus、Vibrio alginolyticus、Vibrio furnissii、Vibrio carchariae、Vibrio hollisae、Vibrio cincinnatiensis、Vibrio metschnikovii、Vibrio damsela、Vibrio mimicus、Vibrio vulnificus、ならびにVibrio fluvialisを含む)、Yersinia属菌(例えば、Yersinia pestis、Yersinia enterocolitica及びYersinia pseudotuberculosisを含む)、Neisseria、Proteus、Citrobacter、Aerobacter、Providencia、Serratia、Brucella、Francisella tularensis(Pasteurella tularensis、Bacillus tularensis、Brucella tularensis、野兎病、ウサギ熱、メクラアブ熱、大原病、及び/またはフランシス病と呼ばれることもある)などである。
【0304】
したがって、例えば、本発明によって治療、予防または対処をすることができる様々な細菌感染または好ましくないレベルの細菌には、炭疽病(Bacillus anthracis)、ブドウ球菌感染(Staphylococcus aureus)、発疹チフス(Salmonella typhi)、食中毒(O157:H7などのEscherichia coli)、細菌性赤痢(Shigella dysenteria)、肺炎(Psuedomonas aerugenosa及び/またはPseudomonas cepacia)、コレラ(Vibrio cholerae)、潰瘍(Helicobacter pylori)、Bacillus cereus、Salmonella、Clostridium perfringens、Campylobacter、Listeria monocytogenes、Vibrio parahaemolyticus、ボツリヌス中毒症(Clostridium botulinum)、天然痘(variola major)、リステリア症(Listeria monocytogenes)、野兎病(Francisella tularensis)、ペスト(Yersinia pestis;bubonic plague、pneumonic plague、及び/または黒死病と呼ばれることもある)などに関連するものが含まれるが、これらに限定されない。E.coli血清型O157:H7は、下痢、出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群(HUS)及び血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病因に関与している。本明細書に示すように、本発明の内部的不活性化剤はまた、薬剤耐性株及び多剤耐性株、例えば、Staphylococcus aureusの多剤耐性株ならびにEnterococcus faecium及びEnterococcus faecalisのバンコマイシン耐性株に対して薬理活性を持つ。
【0305】
本発明によって治療または予防することができる真菌感染症には、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Cryptococcus neoformans、Candida albicansを含むCandida亜種、Aspergillus fumigatusを含むAspergilli亜種、Sporothrix、Trichophyton亜種、Fusarium亜種、Tricosporon亜種、Pneumocystis carinii、及びTrichophyton mentagrophytesを含む、哺乳動物または鳥類に感染する真菌による感染が含まれる。したがって、例えば、標的真菌の感染または好ましくない段階を、本不活性化剤によって治療、予防または対処することができる。そのような真菌にはまた、Coccidioides immitis及びHistoplasma capsulatumを含む、生物兵器に使用される可能性のある菌類病原体が含まれる。
【0306】
本発明において治療可能なプリオンは、複数の立体構造を採り得るタンパク質であり、そのうちの少なくとも1つは、ベータシート構造に富み、感染性であり、事実上いつまでもとどまることができる。このような感染性タンパク質は、固有の生物学的表現型を符号化する、株または変異体としても知られる多様な感染性プリオン立体構造を形成するとともに、プリオン種(伝達)障壁を確立して克服する能力を含む、いくつかの顕著な生物学的活性を示す。例えば、Tessier et al.,Unraveling infectious structures,strain variants and species barriers for the yeast prion [PSI+],Nat.Struct.Mol.Biol.2009 Jun;16(6):598-605を参照されたい。
【0307】
本発明によって治療することができるがんには、固形哺乳類腫瘍及び血液悪性腫瘍が含まれる。固形哺乳類腫瘍には、頭と首、肺、中皮腫、縦隔、食道、胃、膵臓、肝胆道系、小腸、結腸、結腸直腸、直腸、肛門、腎臓、尿道、膀胱、前立腺、尿道、陰茎、精巣、婦人科系臓器、卵巣、乳房、内分泌系、皮膚中枢神経系;軟部組織及び骨の肉腫;ならびに皮膚及び眼内起源のメラノーマのがんが含まれる。血液悪性腫瘍には、小児白血病及び小児リンパ腫、ホジキン病、リンパ球及び皮膚起源のリンパ腫、急性及び慢性白血病、形質細胞腫ならびにAIDS関連がんが含まれる。さらに、原発性癌、転移性癌及び再発性癌など、いかなる進行度のがんも治療することができる。ヒトへの使用及び獣医学的用途の両方が企図される。
【0308】
がんの他に、リンパ節の他の障害(例えば、ウイルス性感染症及び/または細菌性感染症)を本発明によって治療することができる。したがって、本発明の一実施形態では、ウイルスまたは細菌に感染した被検体を治療する方法が提供され、本方法は、1)被検体のリンパ節内に、ウイルスまたは細菌の治療のための少なくとも1つの光活性薬物または光活性化可能薬物をあてがい、2)少なくとも1つの供給源から開始エネルギーをリンパ節に印加する。本方法は、3)挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)によって、リンパ節の内部の標的において、少なくとも1つの光活性薬物または光活性化可能薬物を直接的または間接的に活性化させる。リンパ節の内部で、本方法は、4)活性化させた薬物をウイルスまたは細菌と反応させて、ウイルスまたは細菌を不活化し、それによって被検体を治療する。
【0309】
一般的応用
先に記載される本発明は、医学的用途及び非医学的用途の両方において、本発明の以下の応用に見ることができる。上述される挿入装置(複数可)3からの光またはエネルギーは、挿入装置(複数可)3が、処理される媒質の内部にあるかまたは近傍にあるかにかかわらず、挿入装置(複数可)3の近傍における媒質に変化を生じさせることができる。誘発される変化とは、生体媒質または非生体媒質での変化のことであり得る。
【0310】
生成される変化が、放射線硬化性媒質中の光開始剤を活性化させることによって、放射線硬化性媒質を硬化させることができる。この場合は、放出される光またはエネルギーの波長を、光開始剤またはUV架橋剤への結合などの光触媒効果を誘発して、未硬化媒質中に硬化を生じさせるのに適した波長にすることができる。媒質の硬化または重合は、部分的または完全な3次元ネットワークの形成をもたらす。放射線硬化性媒質を、放射線硬化性媒質中の光開始剤を活性化させることによって硬化させることができる。対照的に、材料が未硬化の状態では、粘度が高くても低くてもよいが、材料は液体様の挙動を示す状態と考えられる。硬化状態では、典型的には、材料が固体様もしくはゴム様の挙動または粘弾性的挙動を示す状態がもたらされ、適用される応力下での限られた流れが生成される状態をもたらすことができる。
【0311】
生じた変化は、光刺激による媒質への変化をもたらすことができる。生じた変化は、放射線硬化された媒質をもたらすことができる。生じた変化は、滅菌された媒質をもたらすことができる。生じた変化は、治療薬剤を活性化させることができる。
【0312】
多くの用途では、挿入装置(複数可)3は、マイクロ波照射または無線周波数照射など、低周波源から伝送される信号によって、活性化させることができる。本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3によるマイクロ波放射または無線周波数放射の受信が、それに続く可視光及び/または紫外線光の放出をもたらす。
【0313】
一実施形態では、本発明は、マイクロ波エネルギーまたは無線周波数エネルギーを利用して、挿入装置(複数可)3からの発光をトリガし、その光放出が次に上述の多数の物理的変化及び生物学的変化を生じさせる。
【0314】
本発明の一実施形態では、活性化されたときに所定の細胞変化を活性化し得る少なくとも1つの活性化可能な医薬品が、被検体に投与される。挿入装置(複数可)3からの光またはエネルギーは、少なくとも1つの活性化可能な医薬品と相互作用して、in situで活性化可能な医薬品を活性化し、それによって被検体の媒質において所定の細胞変化を起こす。
【0315】
本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3からの光によって治療される細胞増殖障害は、がん、細菌感染、ウイルス感染、免疫拒絶反応、自己免疫疾患、再生不良性病態、及びそれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1つの要素である。本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、挿入装置(複数可)3からの光によって活性化可能な光活性化可能薬剤である。活性化可能な医薬品は、ソラレン、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デクリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、アロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、ビタミン代謝産物、ビタミン前駆体、ナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフォリンポルフィリン、色素及びフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、ならびにアントロキノンから選択することができる。
【0316】
本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3からの光によって活性化される医薬品は、ソラレン、クマリン、ポルフィリンまたはその誘導体である。本発明の一実施形態では、医薬品は、8-MOPまたはAMTである。本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、7,8-ジメチル-10-リビチル、イソアロキサジン、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン、7,8-ジメチルアロキサジン、イソアロキサジン-アデニンジヌクレオチド、アロキサジンモノヌクレオチド、アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンから選択される1つである。
【0317】
本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、受容体部位に結合することができる担体に結合される。担体は、インスリン、インターロイキン、チモポエチンまたはトランスフェリンから選択される1つであり得る。本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、共有結合によって担体に結合される。本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、非共有結合によって担体に結合される。本発明の一実施形態では、受容体部位は、有核細胞の核酸、有核細胞上の抗原部位、またはエピトープから選択される1つである。
【0318】
本発明の一実施形態では、医薬品は標的細胞に対して親和性を有する。本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、標的細胞によって優先的に吸収され得る。本発明の一実施形態では、所定の細胞変化は、標的細胞におけるアポトーシスである。
【0319】
本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、被検体において標的細胞と反応する自家ワクチン効果を引き起こす。自家ワクチン効果は、関節またはリンパ節で生じさせることができる。本発明の一実施形態では、活性化可能な医薬品は、DNAインターカレータまたはそのハロゲン化誘導体である。
【0320】
本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3からの光またはエネルギーは、治療を必要とする被検体の標的構造に印加され、光が標的構造と接触し、被検体の媒質において、標的構造に所定の変化をin situで誘発し、所定の変化が、標的構造を修飾し、標的構造の生物活性を調節する。本実施形態では、放出光または放出エネルギーは、エネルギー調節剤または光活性薬剤の有無にかかわらず、標的構造に所定の変化を誘発することができる。
【0321】
一実施形態では、標的構造に所定の変化をもたらすエネルギーへと、挿入装置(複数可)3から放出された光を、吸収し、強化し、または変更するエネルギー調節薬剤を被検体に投与することができる。本実施形態では、エネルギー調節薬剤は、標的構造の周りに、標的構造上に、または標的構造内に、特異的に配置することができる。本実施形態では、エネルギー調節薬剤は開始電磁エネルギーを、標的構造に所定の変化をもたらす光エネルギーまたは別の電磁エネルギーに変換することもできる。本実施形態では、エネルギー変調薬剤は、開始エネルギーの波長を低下させることができる。本実施形態では、エネルギー変調薬剤は、開始エネルギーの波長を増加させることができる。本実施形態では、エネルギー調節薬剤(複数可)は、生体適合性蛍光金属ナノ粒子、蛍光金属酸化物ナノ粒子、蛍光金属被覆金属酸化物ナノ粒子、蛍光色素分子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金被覆銀ナノ粒子、ポリアミドアミンデンドリマによって密閉された水溶性量子ドット、ルシフェラーゼ、生体適合性燐光性分子、複合電磁エネルギーハーベスタ分子、及び高輝度ルミネセンスを示すランタニドキレートから選択される1つ以上の要素を含むことができる。
【0322】
一実施形態では、所定の変化は、標的構造の破壊、溶解または不活性化をもたらすことができ、またはもたらさないことができる。本実施形態では、所定の変化は、標的構造の活性を増進させることができる。増進した活性は、標的からのエネルギー放出となることができ、これにより、次に被検体内の他の標的構造、または第2の標的構造の生物活性が、影響され、開始され、または増強される。
【0323】
一実施形態では、標的構造は、真核細胞、原核細胞、細胞下構造のうちの少なくとも1つであり得る。細胞下構造は、細胞膜、核膜、細胞核、核酸、ミトコンドリア、リボソーム、または他の細胞器官または細胞成分であり得る。本実施形態において、標的構造は、細胞外構造、ウイルスまたはプリオン、細胞組織のうちの少なくとも1つであってよい。
【0324】
一実施形態では、所定の変化が、被検体において、症状、障害または疾患の治療をもたらすことができる。症状、障害または疾患とは、がん、軟部組織及び/または軟骨に生じる疾患、骨組織に発生する疾患、慢性痛、自己免疫疾患、プリオン感染、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、または寄生虫感染、静脈瘤を特徴とする疾患、前立腺肥大を特徴とする疾患、網膜傷害及び他の眼疾患を特徴とする疾患、行動障害、知覚障害及び/または認知障害を特徴とする疾患、またはパーキンソン病の少なくとも1つであり得る。
【0325】
一実施形態では、所定の変化とは、創傷治癒、組織増殖の増強、神経再生の増強もしくは感覚の再生/修復の増強、脂肪沈着の減少もしくは除去(脂肪吸引)、神経(脳)イメージング及び神経(脳)刺激もしくは光による脳細胞活性の直接的な制御、細胞死(アポトーシス)の調節、細胞成長及び細胞分裂の調節、細胞内の細胞内成分の活性、量もしくは数の調節、または細胞によって産生されるか、細胞によって排出されるか、もしくは細胞に関連する、細胞外成分の活性、量、もしくは数の調節であり得る。
【0326】
一実施形態では、挿入装置(複数可)3からの光またはエネルギーで標的構造内に熱を発生させることができ、その熱が所定の変化の誘発を高めることができる。本実施形態では、所定の変化は、標的構造を修飾して標的構造の生物活性を調節し、それによって標的構造に影響を与える症状、障害または疾患を治療することができる。
【0327】
コンピュータ支援制御
図3は、本発明の一具体例としての実施形態によるシステムを示す。図3を参照すると、本発明の一実施形態による例示的なシステムは、被検者4に向けられた開始エネルギー源1を有することができる。活性化可能な医薬品2及び挿入装置3を被検者4に投与することができる。開始エネルギー源は、開始エネルギー(例えば、電波通信またはマイクロ波通信)の送出を指示することが可能なコンピュータシステム5によって、追加的に制御することができる。
【0328】
別の実施形態では、処置されるべき媒質または被検体もしくは患者に挿入されたときに、挿入装置(複数可)3の近傍に提供される開始エネルギー源、エネルギー伝達剤、及び活性化可能な医薬品の適切な組合せを設計して選択するためのコンピュータ実装システムも提供される。本システムは、
記憶メディアを有する中央処理装置(CPU)を備え、この記憶メディアには、
励起性化合物のデータベース、
必要に応じて標的細胞構造または標的細胞成分と結合することができる励起性化合物(例えば、光活性化可能薬物)を特定して設計する第1の計算モジュール、及び
励起性化合物の励起に必要な、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)の線量または光束を予測する第2の計算モジュールが設けられ、
本システムが、標的細胞構造または標的細胞成分の選択時に、標的構造と相互作用することができる励起性化合物を割り出す。
【0329】
本発明の一実施形態によるコンピュータ実装システムは、メモリユニットに接続された中央処理装置(CPU)を有することができ、CPUがユーザ入力を処理して、挿入装置(複数可)3と共に本発明の方法で使用する開始源(または開始エネルギーもしくは距離)、活性化可能な医薬品、及びエネルギー変調薬剤またはエネルギー伝達剤の組合せを選択することができるように構成される。
【0330】
本発明の一実施形態によるコンピュータ実装システムは、所定の紫外光曝露のために、挿入装置(複数可)3への制御命令を計算して与えるように構成された制御装置を備える(または制御装置として機能するようにプログラムされている)。例えば、図3に示すコンピュータシステム5は、記憶メディアを有する中央処理装置(CPU)を備えることができ、この記憶メディアには、励起性化合物のデータベース、光活性化可能薬剤またはエネルギー伝達剤のための第1の計算モジュール、及びエネルギー伝達剤または光活性化可能薬剤を十分に活性化させるのに必要な必須の紫外線光束または可視光光束を予測する第2の計算モジュールが設けられる。
【0331】
以下、図4を参照して、コンピュータシステム5を更に詳細に説明する。以下に詳細に説明するように、開始エネルギー源1は、外部エネルギー源であってもよく、または少なくとも部分的に生物学的なもしくは非生物学的な媒質4に位置するエネルギー源であってもよい。他のところで詳細に論じるように、活性化可能薬剤2及び/またはエネルギー調節薬剤及び/またはプラズモニクス薬剤(挿入装置(複数可)3からの紫外線光束か可視光光束かを増強する)を、生物学的または非生物学的な媒質に直接的にまたは間接的に変化を生じさせるために、媒質に導入することができる。
【0332】
図4は、本発明の様々な実施形態を実装するためのコンピュータシステム1201を示す。コンピュータシステム1201は、コンピュータシステム5として使用されて、上述の機能のいずれかまたは全てを実行することができる。コンピュータシステム1201は、情報を伝達するためのバス1202または他の通信機構と、情報を処理するためにバス1202に結合されたプロセッサ1203とを備える。コンピュータシステム1201はまた、情報と、プロセッサ1203によって実行される命令とを格納するためにバス1202に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置(例えば、ダイナミックRAM(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)、及びシンクロナスDRAM(SDRAM))などのメインメモリ1204を備える。さらに、メインメモリ1204は、プロセッサ1203による命令の実行中に、一時変数または他の中間情報を記憶するために使用されることがある。コンピュータシステム1201は、静的情報と、プロセッサ1203用の命令とを格納するために、バス1202に結合された読出し専用メモリ(ROM)1205または他の静的記憶装置(例えば、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、及び電気的に消去可能なPROM(EEPROM))をさらに備える。
【0333】
コンピュータシステム1201はまた、磁気ハードディスク1207、及びリムーバブルメディアドライブ1208(例えば、フロッピーディスクドライブ、読取り専用コンパクトディスクドライブ、読取り/書込みコンパクトディスクドライブ、コンパクトディスクジュークボックス、テープドライブ、及びリムーバブル光磁気ドライブ)など、情報及び命令を格納するための1つ以上の記憶装置を制御するためにバス1202に結合されたディスクコントローラ1206を備える。記憶装置は、適切なデバイスインタフェース(例えば、小型コンピュータ用周辺機器インタフェース(SCSI)、統合デバイスエレクトロニクス(IDE)、enhanced-IDE(e-IDE)、ダイレクトメモリアクセス(DMA)、またはultra-DMA)を使用して、コンピュータシステム1201に追加することができる。
【0334】
コンピュータシステム1201は、特殊用途論理デバイス(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))または構成可能論理デバイス(例えば、シンプルプログラマブルロジックデバイス(SPLD)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))を備えることもできる。
【0335】
コンピュータシステム1201は、コンピュータユーザに情報を表示するために、陰極線管(CRT)などのディスプレイを制御するようにバス1202に結合されたディスプレイコントローラ1209を含むこともできる。コンピュータシステムは、コンピュータユーザとインタラクトして情報をプロセッサ1203に提供するための、キーボード及びポインティングデバイスなどの入力デバイスを備える。ポインティングデバイスは、例えば、方向情報及びコマンド選択をプロセッサ1203に伝達して、ディスプレイ上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはポインティングスティックであってもよい。さらに、プリンタは、コンピュータシステム1201によって記憶されたデータ及び/または生成されたデータの印刷されたリストを提供することができる。
【0336】
コンピュータシステム1201は、メインメモリ1204などのメモリに含まれる1つ以上の命令のうちの1つ以上のシーケンスをプロセッサ1203が実行することに応答して、本発明の処理ステップ(または機能)の一部または全部を実行する。そのような命令は、ハードディスク1207またはリムーバブルメディアドライブ1208などの、別のコンピュータ可読メディアからメインメモリ1204内に読み込ませることができる。マルチプロセッシング構成の1つ以上のプロセッサを使用して、メインメモリ1204に含まれる命令のシーケンスを実行することもできる。別の実施形態では、ハードワイヤード回路をソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用することができる。したがって、実施形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとの特定の組合せに限定されない。
【0337】
上記のとおり、コンピュータシステム1201は、本発明の教示に従ってプログラムされた命令を保持するための、かつ本明細書に記載のデータ構造、テーブル、レコード、または他のデータを格納するための、少なくとも1つのコンピュータ可読メディアまたはメモリを備える。コンピュータ可読メディアの例として、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピーディスク、テープ、磁気光ディスク、PROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM、もしくは他の任意の磁気メディア、コンパクトディスク(例えば、CD-ROM)、もしくは他の任意の光メディア、パンチカード、紙テープ、もしくは穴のパターンを使用する他の物理的メディア、搬送波(後述する)、またはコンピュータが読み取ることができる他の任意のメディアが挙げられる。
【0338】
本発明は、コンピュータ可読メディアのいずれか1つまたは組合せに格納される、コンピュータシステム1201を制御するソフトウェア、本発明を実装するために1つまたは複数のデバイスを駆動するソフトウェア、及びコンピュータシステム1201がヒューマンユーザ(すなわち、操作者)とインタラクトできるようにするソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアには、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、及びアプリケーションソフトウェアが含まれるが、これらに限定されない。このようなコンピュータ可読メディアは、本発明を実装する際に実行される処理の全部または一部(処理が分散されている場合)を実行する本発明のコンピュータプログラム製品をさらに含む。
【0339】
本発明のコンピュータコードデバイスは、限定はしないが、スクリプト、解釈可能プログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)、Javaクラス、及び完全な実行可能プログラムを含む、任意の解釈可能コード機構または実行可能コード機構であってよい。さらに、本発明の処理の一部を、性能、信頼性、及び/またはコストを良好にするために、分散させてもよい。
【0340】
本明細書に用いる「コンピュータ可読メディア」という語は、実行のためにプロセッサ1203に命令を提供することに関与する、あらゆるメディアを指す。コンピュータ可読メディアは、非揮発性メディア、揮発性メディア、及び伝送メディアを含むが、これに限定されない、多くの形態をとることができる。不揮発性媒体には、例えば、ハードディスク1207またはリムーバブルメディアドライブ1208など、光学ディスク、磁気ディスク、及び光磁気ディスクが含まれる。揮発性メディアには、メインメモリ1204など、ダイナミックメモリが含まれる。伝送メディアには、バス1202を構成する電線を含む、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバが含まれる。また、伝送メディアは、挿入装置(複数可)3と通信するためのマイクロ波送信と共に使用することが可能な、電波及び赤外線データ通信の際に生成される波など、音波または光波の形をとることもできる。
【0341】
様々な形態のコンピュータ可読メディアが、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行のためにプロセッサ1203に搬送するのに関与し得る。例えば、命令は、最初にリモートコンピュータの磁気ディスク上に移送されてもよい。リモートコンピュータは、本発明の全部または一部をリモートで実装する命令をダイナミックメモリにロードし、モデムを使用して電話回線によって命令を送信することができる。コンピュータシステム1201にローカル接続するモデムは、電話回線によってデータを受信し、赤外線送信機を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。バス1202に結合されている赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信し、データをバス1202に載せることができる。バス1202はデータをメインメモリ1204に搬送し、プロセッサ1203がそこから命令を取り出して実行する。メインメモリ1204が受け取った命令は、プロセッサ1203による実行前か実行後かのどちらかに、記憶装置1207または1208に随意に格納することができる。
【0342】
コンピュータシステム1201はまた、バス1202に結合された通信インタフェース1213を備える。通信インタフェース1213は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)1215に、またはインターネットなどの別の通信ネットワーク1216に接続されたネットワークリンク1214に結合する双方向データ通信を提供する。例えば、通信インタフェース1213は、任意のパケット交換方式LANに接続するためのネットワークインタフェースカードであってもよい。別の例として、通信インタフェース1213は、非対称型デジタル加入者回線(ADSL)カード、総合デジタル通信網(ISDN)カード、または対応する種類の通信回線へのデータ通信接続を提供するモデムとすることができる。無線リンクを実装することもできる。そのようないかなる実装においても、通信インタフェース1213は、各種の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号または光信号を送受信する。
【0343】
ネットワークリンク1214は、通常、1つ以上のネットワークを介して、他のデータデバイスとのデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク1214は、ローカルネットワーク1215(例えば、LAN)を介して、または通信ネットワーク1216を介して通信サービスを提供するサービスプロバイダによって運用される機器を介して、別のコンピュータへの接続を提供することができる。ローカルネットワーク1214及び通信ネットワーク1216は、例えば、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号、及び関連する物理層(例えば、CAT5ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバなど)を使用する。コンピュータシステム1201との間でデジタルデータをやり取りする、様々なネットワークを通り抜ける信号、及びネットワークリンク1214上の、通信インタフェース1213を通り抜ける信号は、ベースバンド信号または搬送波ベースの信号で実現されてもよい。ベースバンド信号は、デジタルデータを、デジタルデータビットのストリームを表す無変調の電気パルスとして搬送し、この場合、「ビット」という語は、シンボルを意味するものと広く解釈されるべきであり、それぞれのシンボルは、少なくとも1つ以上の情報ビットを伝達する。デジタルデータは、導電媒質によって伝搬され、または伝搬媒質を通じて電磁波として伝送される、振幅偏移変調された信号、位相偏移変調された信号及び/または周波数偏移変調された信号などで搬送波を変調するために使用することもできる。したがって、デジタルデータは、「有線」通信チャネルを通じて無変調ベースバンドデータとして送られてもよく、及び/または搬送波を変調することによって、ベースバンドと異なる所定の周波数帯域内で送られてもよい。コンピュータシステム1201は、ネットワーク(複数可)1215及び1216、ネットワークリンク1214、ならびに通信インタフェース1213を介して、プログラムコードを含むデータを送受することができる。さらに、ネットワークリンク1214は、LAN1215を介して、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、または携帯電話などのモバイルデバイス1217への接続を提供することができる。
【0344】
一実施形態では、媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、放出光を生成するシステムが提供される。本システムは、1)媒質またはヒト被検体もしくは動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号を生成するように構成された供給源と、2)電子アセンブリユニットを持つ挿入装置とを備える。アセンブリユニットは、1)ヒト被検体もしくは動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの光を放出するように構成された放出源と、2)信号を受信する受信機と、3)信号(オプションで、iCode Philipsチップの信号)の受信、処理、及び発信をする能力を持つトランスポンダ(例えば、上述のコンピュータシステム1201のコンポーネントを含む)とを備える。アセンブリユニットは、信号を受信すると、放出源に電力を供給し、それによってヒト被検体もしくは動物被検体の内部、または媒質の内部に光を放出するように構成される。
【0345】
上記のとおり、iCode Philipsチップは、高速アクセスが可能で、読取り/書込み時間が短い、規格に準拠したトランスポンダである。高周波数動作によって、最大で53kbaudの通信速度を可能にする。iCode Philipsチップは、フレキシブルなメモリ構造を有し、アンテナ用に数ターンのワイヤか、またはプリントされた金属箔線しか必要としない。
【0346】
一実施形態では、媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、放出光を生成するシステムが提供される。本システムは、1)媒質またはヒト被検体もしくは動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号を生成するように構成された供給源と、2)電子アセンブリユニットを持つ挿入装置とを備える。アセンブリユニットは、1)ヒト被検体もしくは動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの光を放出するように構成された放出源と、2)信号を受信する受信機と、オプションで3)受発信装置とを備える。アセンブリユニットは、信号を受信すると、放出源に電力を供給し、それによってヒト被検体もしくは動物被検体の内部、または媒質の内部に光を放出するように構成される。本アセンブリ(例えば、上記のコンピュータシステム1201のコンポーネントを含む)は、ヒトまたは動物の被検体に埋め込まれ、診断機能(例えば、温度の局所測定)を実行して、その後、処理されるべき情報を発信するように構成することができる。そのような高周波信号の伝送は、任意選択的に、遵守事項及び通信プロトコルならびにISO15693/ISO18000-3などの標準の範囲内に、または任意選択的にそのようなプロトコルの範囲外であってもよい。リモート制御される埋込装置から受信した情報は、次に、コンピュータ制御システム(図3のコンピュータシステム5など)によって処理される。コンピュータ制御システムは、挿入装置によって行われる次のステップに応じて、フィードバックループを提供する。
【0347】
本発明の方法及びシステムに有用な試薬及び化学物質を、キットにパッケージ化して、本発明の利用を容易にすることができる。一具体例としての実施形態では、キットは、挿入装置(複数可)3、所定の細胞変化を生じさせることができる少なくとも1つの活性化可能薬剤、励起したときに少なくとも1つの活性化可能薬剤を活性化させることができる少なくとも1つのオプションとしてのエネルギー調節薬剤、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)が、活性化するときに媒質に変化を生じさせる少なくとも1つの活性化可能薬剤を活性化させるように、挿入装置(複数可)3からのUV光(または可視光)を増強させることができる少なくとも1つのオプションとしてのプラズモニクス薬剤、及び種々の薬剤を安定した形で貯蔵するのに適した容器を含み、少なくとも1つの活性化可能薬剤及び/または少なくとも1つのエネルギー調節薬剤を媒質に投与するための、及び開始エネルギー源から開始エネルギーを印加して、挿入装置(複数可)3を活性化させるための説明書をさらに含む。説明書は、キット挿入物に印刷されたもの、1つ以上の容器に印刷されたもの、及びコンピュータ可読記憶メディアなどの電子記憶メディアに提供される電子的に格納された説明書を含むが、これらに限定されない任意の所望の形態であってよい。またオプションで、ユーザが、照射源の強度を計算して制御するために、情報を統合して制御線量を計算することを可能にするコンピュータ可読記憶メディア上のソフトウェアパッケージも含まれる。
【0348】
具体的な挿入装置構成
上述の挿入装置(複数可)3は、以下に説明する構成のうちの1つ以上を採用することができる。
【0349】
本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3は、罹病器官に近接した血液を供給する血管に挿入される静脈内紫外線インプラントの一部である。米国特許出願第2006/0183987号には、剛性リングに内向きに半径方向に取り付けられた複数の紫外周波数(UV)LEDと、一端がUV-LEDリングに接続され、他端がバッテリなどの電源に接続された電源コードと、電源、ならびに他の標準的な電子部品、例えば抵抗器及びバッテリ接点などを包み込む筐体とを有した人体内の静脈内紫外線インプラントが記載されている。‘987出願では、静脈を通過する血液にUV光線を照射できるように、リングが大静脈内に外科的に設置された。
【0350】
図5は、リング部材挿入装置の概略図である。本発明の一実施形態では、リング部材挿入装置は、手術用スリット116経由で主幹静脈または主幹動脈110の内部に設置することができ、したがって、開始信号の受信時に、通過する血液にUV及び/または可視光の周波数で照射することができる。
【0351】
‘987出願の場合と同様に、挿入装置(複数可)は、リング部材102の内部または外部に沿って配置され、リング部材102の内面に放射状に取り付けられた複数のUVまたは可視LED104を含む。弾性管状コード106は、LED104に電力を供給する一対の導電性ワイヤを包み込むことができる。筐体108は、LED104の制御用及び電力供給用の部品を包み込む。静脈または動脈110に挿入した後、リング部材102を90度回転させ、その結果血液がリング部材102を通って流れ、UVまたは可視LED104によって照射されるようにすることができる。筐体108の内部には、UVまたは可視LED104を動作させるためのバッテリ及び制御電子機器がある。制御電子機器は、上述のように開始信号を受信することができる。ここで、本発明において、筐体108には、活性化可能薬物、エネルギー調節薬剤、及び/またはプラズモン薬剤の供給物を含めることができる。エネルギー調節薬剤及び/またはプラズモン薬剤は、動脈または静脈の一部全体にわたって、UV光または可視光の侵入を高めるように作用することができ、罹病器官に隣接して配置される場合、UV光または可視光の罹病器官への侵入を高めるように作用することができる。
【0352】
本発明の一実施形態では、リング部材102(または、例えば図2-1Aに示す挿入装置3)を、罹病器官(例えば、肺)の内部または近傍にある動脈(例えば、気管支動脈)の外側に取り付ける。リング部材102から放出されるUV光または可視光は、エネルギー調節薬剤及び/またはプラズモン薬剤の補助の有無にかかわらず、器官の異常細胞に侵入し、別々にまたは挿入装置(複数可)3から投与される上記の光活性化可能薬物を活性化させることができる。
【0353】
本発明の別の実施形態において、図6は、肺腫瘍周辺の挿入装置(複数可)3の外科的配置を示す。挿入装置(正確な縮尺で示されていない)は、腫瘍の表面に取り付けられる。(ここでは肺腔を完全に露出させて図示しているが、挿入装置は、ロボット装置または腔内カテーテルによって配置することができる。)複数の挿入装置を保持するミリメートルサイズの装置またはシートもしくはワイヤチューブ構成(後述する)が、腫瘍の表面に配置されて、固定される。本発明の一実施形態では、腫瘍への光の良好な結合を促進するために、挿入装置(複数可)3を、実質的にUV透過性のまたは可視光透過性の接着剤で、腫瘍の表面に接着する。本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3を固定する前に、金ナノ粒子などのプラズモニクス構造を腫瘍の中に圧入してもよい。金ナノ粒子は、UV光強度を増強させるように作用し、それによって、がん性腫瘤中の光活性化可能薬物が活性化される確率を高める。
【0354】
挿入装置を固定した時点で、患者を縫合することができる。その後、光活性化可能薬物が同時に存在する状態での、周期的なUV光及び/または可視光による曝露を制御するために、開始エネルギーを使用する。
【0355】
図7Aは、本発明の別の挿入装置構成を示す。具体的に、図7Aは、平面状エレクトロルミネセンス(EL)挿入装置の概略図である。この構成では、エレクトロルミネセンス素子がUV光及び/または可視光の光源として使用される。エレクトロルミネセンス(EL)素子は、電流の流れに応答して、または強電場に応答して、光を放出する材料(複数可)を含む。図7Bは、本発明のさらに別の挿入装置構成を示す。具体的に、図7Bは、同軸エレクトロルミネセンス(EL)挿入装置の概略図である。
【0356】
米国特許第6,204,514号は、紫外線発光装置がどのように製造され得るのかを示している。‘514特許の技術は、本発明においては、UV発光挿入装置化学成分の調製に適している。例えば、‘514特許によると、高波長純度の紫外光を放出することができるEL素子(またはレーザ発光素子)は、Si、Ge、Sn、及びPbから選択された元素が直接結合した、ポリマーまたはオリゴマーのうちのいずれかから作られた薄膜を含んでいる。選択される元素は、互いに同じであっても異なっていてもよい。薄膜は2つの電極の間に配置される。少なくとも1つの電極は透明である。本発明の一実施形態では、薄膜ポリマー系構造は、本発明の挿入装置(複数可)3を可撓性のあるテンプレート上に製作することを可能にし、それによって罹病器官の所定の位置に「巻きつける」ことができるコンフォーマルな発光シートを提供する。
【0357】
‘514号特許は、Si、Ge、Sn、及びPbから選ばれた元素(それらの元素は互いに同じであっても異なっていてもよい)を直接結合させることによって、ポリマーまたはオリゴマーから作られる薄膜を形成し、それをEL素子またはレーザ発光素子の発光層として用いることができることを示している。Si、Ge、Sn、及びPbから選択された元素が直接結合した、ポリマーまたはオリゴマーとして(それらの元素は互いに同じであっても異なっていてもよい)、化学式1を以下のように用いることができる。
【0358】
Si、Ge、Sn、及びPbから選択された元素が互いに同一であり、それらの元素が直接結合しているポリマーもしくはオリゴマー、または化学式2を、以下のように用いることができる。
【0359】
Si、Ge、Sn、及びPbから選択された元素が互いに異なったポリマーまたはオリゴマー、ならびにこれらの元素が直接結合している。
【0360】
【化6】
【0361】
ここで、MはSi、Ge、Sn、またはPbを表し、R及びRは前述の元素の置換基を表す。両者は同じであっても異なっていてもよい。R及びRとしては、アルキル基、アリル基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性水酸基等が選択されてもよい。ただし、これらは、上述の基に限定されるものではない。
【0362】
【化7】
【0363】
ここで、M及びMはSi、Ge、Sn、またはPbを表し、R、R、R、及びRは前述の元素の置換基を表す。両者は同じであっても異なっていてもよい。R及びRとしては、アルキル基、アリル基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性水酸基等が選択されてもよい。ただし、これらは、上述の基に限定されるものではない。
【0364】
第14族元素であるSi、Ge、Sn、及びPbの4種のいずれかのポリマーは基本的に同じ物性を有する。ポリマーまたはオリゴマーから、紫外域の発光スペクトルを有するEL素子及びレーザ発光素子が得られるように、ポリマーまたはオリゴマーにおける上述の元素が互いに交換される。このようなEL素子は発光バンドが狭いため、14族元素の種類や元素の配列を変えることによって、発光波長が異なるEL素子及びレーザ発光素子を作製することができる。
【0365】
‘514特許及び本発明では、UV発光EL素子は、スピンコーティング、真空蒸着、光CVD、熱CVD、及びMBE(分子線エピタキシー)などの従来の方法を使用して作製することができ、発光層膜を形成するのに使用することができる。発光層をCVD法によって直接基板上に形成する場合、シラン処理された表面を用いることが有利である。
【0366】
‘514特許及び本発明では、本発明において発光層として用いられるポリマーまたはオリゴマーに対して、主構造を構成するSi、Ge、Sn、及びPbの原子数を変えることによって、発光波長を制御することができる。一般に、ポリマーまたはオリゴマーの鎖長が長くなると、ピーク波長は長波長側にシフトする。
【0367】
‘514特許及び本発明では、ポリシラン自体の発光を使用して、紫外線エレクトロルミネセンス素子を提供する。このような‘514特許の材料を、図7A及び図7Bのいずれかの構成で利用して、平面状または同軸状のエレクトロルミネセンス(EL)挿入装置3を製造することができる。
【0368】
同様に、Nature Communications|3:690|DOI: 10.1038/ncomms1683|www.nature.com/naturecommunications Received 03 May 2011 Accepted 12 January 2012 Published 21 February 2012においてBrovelli et alは、溶液処理法により得られたSiO薄膜に埋め込まれたSnOナノ粒子に基づき、最大外部量子効率が約0.3%、390nmで発光する完全無機紫外発光ダイオードの実現について報告している。Brovelli et alの技法は、挿入装置(複数可)3用のUV(または可視)発光EL素子の製造を目的として、本発明に適用できる。Brovelli et alは、p-シリコン基板及び半透明Auキャップチタンカソード(約10nmのAu、約5nmのTi)を備えた、図7Aに示されるものと同様の複合平面システムについて報告している。電極としてチタンを選択すると、SnO2NCの伝導帯への良好な電子注入が保証され(図2e)、電気伝導とその結果としてのNC内部の励起子生成とを促進する。さらに、チタンは、ガラス状活性膜上への良好な接着性を確かなものとし、機械的損傷に耐性のある著しく頑強なLEDをもたらす。
【0369】
このようなBrovelli et alの論文の材料を、図7A及び図7Bのいずれかの構成で利用して、平面状または同軸状のエレクトロルミネセンス(EL)挿入装置3を製造することができる。
【0370】
”Ultraviolet electroluminescence from ZnO/polymer heterojunction light-emitting diodes”と題された、Konenkamp et alの論文、Nano Lett.2005 Oct;5(10):2005-8には、透明SnO膜とp型伝導性ポリマーとの間に挟まれた電着ZnOナノロッドからなるダイオード構造からの390nm紫外エレクトロルミネセンスが記載されている。ナノロッドは絶縁性ポリスチレン層に埋め込まれた。ZnOの析出は90℃で起こり、約20cmの領域にわたって非常に高均一性の垂直配向ナノロッドを生成する。電子線回折は、ナノロッドが単結晶ウルツ鉱ZnOであることを示す。as-grownの膜は、可視スペクトルにわたって広いエレクトロルミネセンスバンドを示す。中温(T=300℃)でのアニーリングは、放出を増加させ、励起子の寄与を強く引き上げた。Konenkamp et alの論文において最適に処理が行われた膜は、約390nmでの狭い紫外線エレクトロルミネセンス線を示した。このようなKonenkamp et alの論文の材料を、図7A及び図7Bのいずれかの構成で利用して、平面状または同軸状のエレクトロルミネセンス(EL)挿入装置3を製造することができる。90℃の低温蒸着ZnOは、本発明において、低温の可撓性高分子基材上への蒸着に特に適しており、それによってEL装置の柔軟でコンフォーマルなシートを提供して、腫瘍に適用する。
【0371】
米国特許第8,786,188号には、挿入装置3に対する遠隔通信及び電力供給のために本発明で使用できる別の構成が記載されている。‘188特許には、上部(または第1)電極層及び下部(または第2)電極層、エレクトロルミネセンス層、ならびに相互接続部を有する無線エレクトロルミネセンス素子が記載されている。相互接続部は、上部電極層及び下部電極層を巻線として構成し、かつエレクトロルミネセンス層が2つの電極層の間に位置した状態で、2つの電極層を接続する。
【0372】
‘188特許には、本発明の挿入装置3において好ましい動作モードが記載されている。すなわちAC電圧が電磁場によって電極層に誘導される。誘導電圧は、2つの電極層の間に位置するエレクトロルミネセンス層に印加される。このように、第1及び第2の電極層を、エレクトロルミネセンス層に電圧を印加するように適合させてある。エレクトロルミネセンス素子はダイオードとして機能して、逆方向の電流を遮断するので、半波のうちの一方の間でのみ電流が流れる。‘188特許の目的のためには、AC周波数はフリッカを回避するのに十分な程度に高くなければならず、例えば100Hzよりも大きくなければならないが、ここ本発明では、「フリッカ」は単にUV発光または可視発光の高周波デューティサイクルを提供するに過ぎない。AC周波数がkHz、MHzまたはさらにGHzの領域にある場合、巻線の空間長は、使用されている巻線の共振周波数に部分的に基づいて電力結合を制御する。
【0373】
図8は、本発明による無線EL挿入装置3の概略図である。‘188特許の発光素子と同様に、エレクトロルミネセンス素子は、可撓性または剛性の材料であり得る共通の基板1000上に取り付けられる。各ELデバイスは、上部電極1102、下部電極1104、エレクトロルミネセンス層1106、相互接続部1108、及び絶縁層1110を含む。
【0374】
エレクトロルミネセンス層1106、上部電極1102及び下部電極1104は時計回りの巻線として構成されている。別の方法として、反時計回りの巻線を使用することもできる。エレクトロルミネセンス層1106は、上部電極1102と下部電極1104との間に位置している。相互接続部1108は、上部電極1102と下部電極1104とを接続する。上部電極1102の巻線の起点は、下部電極1104の外周の巻線の端部に接続される相互接続部1108と接続している。絶縁層1110は、短絡を回避するために、上部電極1102の他の部分を相互接続部1108から絶縁する。絶縁層は、挿入装置(複数可)が配置される媒質から、これらの構成要素及び材料を隔離して不動態化する、カプセル封入層を形成するようにも適用され得る。
【0375】
動作時には、AC電圧が上部電極1102及び下部電極1104の巻線に誘導される。下部電極1104の外周の巻線の端部は、上部電極1108の巻線の起点に接続されているので、これらの2点の間に短絡が作られる。したがって、これらの点における印加電圧はゼロボルトである。電磁場の方向に応じて、巻線内の電圧は、巻線の起点から外周の巻線の端部まで、増加または減少する。
【0376】
例えば、巻線の起点から外周の巻線の端部まで電圧が減少する場合、上部電極1102の誘起電圧は、巻線の起点の0ボルトから、外周の巻線の端部における最大の負の値まで減少する。最大値は電磁場のパワーに依存する。下部電極1104の電圧は、外周の巻線の端部における0ボルトから、巻線の起点での最大値まで増加する。このように、最大電圧が電磁場によって誘起され、上部電極1102と下部電極1104との間には一定の電圧が存在する。
【0377】
均一の電圧が2つの電極の間に印加されるので、エレクトロルミネセンス層は均一に発光する。エレクトロルミネセンス層の巻線構造によって短絡が回避される。ショートカットを回避するために、エレクトロルミネセンス層106は、好ましくは、一方の電極から他方の電極へ向かう方向には良好な導体であり、垂直の方向には不良導体である。これは、図1の構造化されたエレクトロルミネセンス層1106によって達成される。あるいは、エレクトロルミネセンス層の厚さが、電極の隣接する巻線間の距離よりも著しく小さい場合、短絡のリスクなしに、構造化されていない連続的なエレクトロルミネセンス層を適用することもできる。エレクトロルミネセンス層の典型的な厚さは100nmである。隣接する巻線間の距離は、少なくとも1mmに調整することができる。導電率が均質なエレクトロルミネセンス層の場合、一方の電極から向かい側の電極への電気的経路は、一方の巻線からこれに隣接する電極の巻線までの電気的経路の約10000分の1にすることができる。
【0378】
米国特許第8,317,561号には、同様に、約30~500kHz、及び約10~15MHzの周波数に応答して動作する発光ダイオード材料及び構成が記載されている。材料及び構成は、本発明の挿入装置(複数可)に好適である。実際、‘561特許に記載され、本発明に適用可能なように、交流電磁場は、通常、コイル及び/またはアンテナに電圧を誘導し、(例えば、図8の上部及び下部電極が)電圧/電流を生成する。‘561特許に記載され、本発明に適用可能なように、図8の上部及び下部電極に加えて、または上部電極及び下部電極として、本発明においてマイクロコイルを使用することができる。マイクロコイルは、例えば、断面において、高さが2mm以下、例えば1mm以下であり、及び/または幅が5mm以下、例えば3mm以下である。一部の実施形態では、マイクロコイルの長さは、約20mm~50mmに等しく、例えば一実施形態では、マイクロコイルの長さは30mmに等しい。マイクロコイルは、フェライトコアを含むことができる。
【0379】
本発明の一実施形態では、交流電磁場から受信機によって引き出されるエネルギーを、長期間にわたって貯蔵または蓄積する装置(例えば、蓄電池)を(例えば、基板1000上にまたは筐体24もしくは108の内部に)含めることができる。すなわち交流電磁場の1周期または数周期よりも長い持続時間である。その後、蓄積された電力は、「オンデマンド」で使用されて、UVまたは可視光の発光挿入装置(複数可)3に電力を供給することができる。
【0380】
図9は、本発明による、可撓性で無線式のUVまたは可視光を放出する挿入装置の概略図である。本発明の一実施形態では、基板1000は、UV光または可視光を放出する無線給電式のLEDまたはEL素子300を複数個含む多孔質テンプレートであってもよい。一実施形態において素子300は、上述の光放出源及びマイクロコイルを含む。別の実施形態において素子300は、光放出源を含み、基板1000上のストリップアンテナ、及びバッテリを用いて、素子に電力を供給する。図9に示すように、基板1000には任意数の穴302があり、穴のいずれかは含む必要はないが、柔軟性を付加する。
【0381】
多孔質テンプレート(すなわちスルーホールを有する基板)を備えることによって、小さなLEDチップをロボット制御で多孔質膜上に(またはもっと詳しく言うなら基板1000上に)ピックアンドプレースし、膜上の配線トレースに、はんだバンプで接合することができる。配線トレースは、電力結合用のアンテナまたはマイクロコイルの要求を満たす。このテンプレートを用いると、テンプレートの穴は、処置される媒質(例えば、血液、または硬化されるポリマー、または滅菌される媒質)がその間に流れ込むことを可能にする。この可撓性材料で作られたテンプレートは、細孔の有無にかかわらず、腫瘍部位の内部または腫瘍部位の近くに配置するために、基板1000または多孔質テンプレートをクルクルと巻いた状態で、カテーテルを手段として挿入することができる。
【0382】
本発明の一実施形態では、UV光または可視光を放出するLEDまたはEL素子300は、米国特許第7,355,284号に記載される材料及び構造で作製することができる。概して、‘284特許には、フェイスを有する基板と、そのフェイス上の、光学素子を内部に含む可撓性フィルムと、基板と可撓性フィルムとの間にあり、光学素子を介して光を放出するように構成される半導体発光素子とを含む半導体発光装置が記載されている。フェイスはその中にキャビティを含むことができ、半導体発光素子はそのキャビティ内にあってもよい。可撓性フィルムはキャビティの範囲を越えてフェイス上に及び、光学素子はキャビティ上に横たわる。
【0383】
‘284特許において見られ、本発明に好適であるように、一部の実施形態では、蛍光体を半導体発光装置に組み込むように構成してもよい。一部の実施形態では、蛍光体は、レンズと半導体発光素子との間の可撓性フィルム上に設けられる。他の実施形態では、レンズが、半導体発光素子に隣接する凹状内面を備え、蛍光体は、その凹状内面にコンフォーマルな蛍光体層を備える。さらに他の実施形態では、光学素子は、キャビティの上を覆うとともにキャビティから突出するレンズを含み、可撓性フィルムは、レンズと発光素子との間に、キャビティに向かって突出する突出要素をさらに含み、コンフォーマルな蛍光体コーティングが突出要素上に設けられる。これらの構成及び/または他の構成の蛍光体の組合せ及び部分的組合せを設けてもよい。さらに、これらの実施形態のいずれかにおいて、蛍光体と半導体発光素子との間に光結合媒質を設けることができる。本発明の一実施形態では、挿入装置(複数可)3は、半導体発光素子と罹病器官との間に光結合媒質を備えることができる。光結合媒質は、血液と比較して比較的高い、可視または紫外の透過率を有した液体にすることができる。一例では、生理食塩水が、光結合媒質の役割を果たすことができる。
【0384】
‘284特許において見られ、本発明に好適であるように、挿入装置(複数可)3の発光素子は、炭化ケイ素基板上に製造された窒化ガリウム系LEDまたはレーザ、例えばDurham,N.C.のCree,Inc.によって製造されて販売される装置であってもよい。他の好適なLED及び/またはレーザが、2003年1月9日に公開され、「Group III Nitride Based Light Emitting Diode Structures With a Quantum Well and Superlattice,Group III Nitride Based Quantum Well Structures and Group III Nitride Based Superlattice Structures」と題された発行された米国特許公報第US 2003/0006418 A1号、及び「Light Emitting Diodes Including Modifications for Light Extraction and Manufacturing Methods Therefor」と題された発行された米国特許公報第US 2002/0123164 A1号に記載されている。さらに、2003年9月9日に出願された「Phosphor-Coated Light Emitting Diodes Including Tapered Sidewalls and Fabrication Methods Therefor」と題する米国出願第10/659,241号はまた、本発明の実施形態における挿入装置(複数可)3での使用に適している。LEDは、光放出が基板を通って生じるような動作となるように構成することができる。そのような実施形態では、例えば、上記の米国特許公報第US 2002/0123164 A1号に記載されているように、発光装置の光出力を向上させるように基板をパターニングすることができる。
【0385】
本発明の別の実施形態では、UV光または可視光を放出するLEDまたはEL素子300は、米国特許出願公開第2008/0096365号に記載されている材料及び構造で作製することができる。‘365出願において見られ、本発明に好適であるように、本発明の挿入装置(複数可)3は、ウェハレベルでの半導体装置から製造することができる。導電性接合媒質を用いるウェハレベル接合を使用して、接合不良のないウェハレベルでの永久接合を達成することができる。接合媒質は、堆積によってまたは予備的形成品として、仮接合されたウェハに導入することができる。
【0386】
本明細書で論じられる論説、論文、特許、及び特許出願は、参照によりそれらの全記載内容が本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0387】
受動挿入装置及び能動挿入装置
本発明の様々な実施形態による内部光(例えば、UVまたは可視)生成装置の遠隔制御は、受動装置(すなわち、必ずしも発光電子装置を含まない装置)または能動装置(すなわち、発光電子装置を必ず含む装置)の遠隔制御によって達成することができる。受動装置の場合は、一実施形態において、受動装置は、化学薬品を含まず、光活性化可能薬物もしくは光活性化可能触媒などの生物学的薬物と共インキュベートされるか、または光開始剤などの他の光活性化可能物質と共インキュベートされる。受動装置の場合は、一実施形態において、受動装置は、被検体中または被処置媒質中に解放されると、その後で通常は受動装置から放出される光によって、必ずしも必要ではないが、上述のとおり、参照により組み込まれた多くの関連事例に記載されているように、何らかの形の蛍光または発光によって、活性化される化学薬品を必ず含む。受動装置の場合は、一実施形態において、受動装置は化学薬品を含まないが、上記のように参照により組み込まれた多くの関連事例に記載されているように、フォトバイオモジュレーション経路を介して、疾患または障害を治療することができる。
【0388】
能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置は、化学薬品を含まず、光活性化可能薬物もしくは光活性化可能触媒などの生物学的薬物と共インキュベートされるか、または光開始剤などの他の光活性化可能物質と共インキュベートされる。能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置は、被検体中または被処置媒質中に解放されると、その後で受動装置(複数可)から放出される光によって活性化される化学薬品を必ず含む。能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置は化学薬品を含まないが、フォトバイオモジュレーション経路を介して、疾患または障害を治療することができる。能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置は、オンボードのエネルギー源(例えば、バッテリ)を有することができる。能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置は、装置を充電するために、及び/または能動装置がいつ、どのように機能するかについての命令を与えるために、外部信号に依拠することができる。能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置を、被検体または被処置媒質に挿入する前にプログラムすることができる。能動装置の場合は、一実施形態において、能動装置は、被検体または被処置媒質の内部に入ると命令(プログラム)を受信することができる。
【0389】
一実施形態では、受動装置は、磁場を使用した遠隔操作により、方向づけることができる。図10は、磁性成分または常磁性成分を有し、X線エネルギー及び/または電子ビームを用いて活性化させることができる典型的な燐光性または蛍光性の粒子を示す概略図である。磁性成分または常磁性成分は、一実施形態では、燐光性または蛍光性の粒子の表面を部分的に覆い、したがって、その放出面を部分的に覆う、磁性または常磁性の膜(またはコーティング)を含む。磁性または常磁性の膜で被覆された粒子が磁場に曝されると、被覆粒子は共通の方向に整列する。コーティングの存在は、整列を支援するだけでなく、反射または妨害によって優先的な方向に光放出を向ける際にも役立つ。光の反射は、磁性膜または常磁性膜と燐光性粒子または蛍光性粒子との間の内側面で起こる。磁性材料を堆積させる前に、粒子が金または銀などの金属コーティングで被覆されている場合、反射特性を高めることができる。光の妨害は、膜の厚さが、磁性膜の透過係数がリン含有材料から発される放出光を減衰させる場合に生じる。
【0390】
本発明の好適な強磁性層は、本発明の一実施形態において、(La0:7Sr0:3MnO)などの亜マンガン酸塩の製造のための原子層堆積(ALD)システムにおいて成長させることができる。他の常磁性薄膜及び磁性薄膜(及びALD法)は、Proceedings of the Workshop on Smoothing and Characterization of Magnetic Films.Vol.112 (2007) ACTA PHYSICA POLONICA A No.6に記載され、その全記載内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0391】
本発明の一実施形態では、磁気配向性リン含有粒子を製造する際の製造上の考慮事項は、例えば以下に記載する方法に従うが、以下の記載は、磁性膜が付着した蛍光体粒子を製造する唯一の方法ではない。この製造可能な方法では、所与の質量の蛍光体を、例えば1gmの蛍光体対10mLの溶媒(例えば、アセトン)の比の容積の溶媒と混合することによって、蛍光体のスラリーを作製する。
【0392】
蛍光体スラリーをメッシュ状のディスク(例えば、ふるいのようなもの)にのせてスピンさせる。平均粒子サイズは、アパーチャのサイズとぴったり合って一致する。スピンプロセス中にメッシュの一方の側から僅かに真空をかけて、蛍光体をそれぞれのアパーチャに押し込む。溶媒の弾性力は、リン含有粒子のメッシュへの結合を増加させる。粒子が所定の位置に固定された時点で、メッシュを乾燥させて、溶媒を除去する。
【0393】
図11は、メッシュ内の開口部の所定位置に固定された粒子を示す概略図である。
【0394】
次いで、メッシュを金属蒸着システムに移して、蛍光体粒子の露出した上面に磁気コーティングを堆積させる。一実施形態では、上記の原子層堆積(ALD)プロセスを使用して、メッシュの片面に、したがって埋め込まれた粒子の片面に、磁気コーティングを堆積させることができる。一実施形態では、La0:7Sr0:3MnOが、堆積される磁性材料である。
【0395】
堆積が行われたら、メッシュディスクを、正圧がメッシュの裏側からかかるステーションに移して、粒子をメッシュから容器の中に押し出す。別法としては、電磁石を用いて、部分的に被覆された粒子を拾い上げることができる。この場合は、磁場の結合力が、メッシュと粒子との間の保持力を超えなければならない。どちらの場合にも(磁場の有無にかかわらず、正の圧力をかけて粒子を除去することができる)、燐光性、蛍光性、または他の発光粒子は、その結果として、磁性コーティングで部分的に被覆される。この磁気コーティングはまた、蛍光体粒子の放出を一方向に反射する光反射体として機能する。粒子が溶液中に懸濁されている場合、その時は粒子は自由度を獲得し、外部から加えられた磁場の影響下で、粒子の配向及び再配向をすることができる。
【0396】
図12Aは、磁場の影響下で整列した典型的なリン含有粒子または蛍光性粒子を示す概略図であり、粒子を好ましい方向に配向させ、それによって光放出の方向を配向させることができることを示す。
【0397】
特に、図12Bは、磁場の影響下で整列した複数のリン含有粒子または蛍光性粒子を図示したものであり、そこで正味の光放出(入射KV、MV X線ビームによって誘導される)が標的部位、例えば罹患部に(優先的に)向けられ、それによって正常組織を回避する。一実施形態では、X線の代わりに粒子ビームまたは光子ビームを使用することができる。
【0398】
通常は、リン含有粒子が励起エネルギーに曝され、その励起及び続いてその放出を引き起こすとき、放出光は多数の色中心から発し、放出は均一である(等方性放出)。
【0399】
非等方性光放出を達成するための1つの方法は、本発明の一実施形態によれば、粒子を、燐光層または蛍光層を有する金属薄層を層の間に入れることによって構成させることである。図13は、中間層にされるリン含有複合物または蛍光性複合物を作成する一実施形態による様々なステップを示すプロセス図である。先ず、図13の上面図に示すように、ウェハ(真性シリコンウェハなど)をエッチングして、キャビティのセット(例えば、シリコンウェハにエッチングされる小さな半球)を形成する。
【0400】
ステップa-1に、シリコンウェハにエッチングされた半球の断面図を示す。ステップa-2では、シリコンウェハを成膜装置の内部に配置し、そこで金属(例えば、AgまたはAu)薄膜(及び/または磁性膜または常磁性膜)とそれに続く蛍光体薄膜(例えば、YTaO)または他の燐光性膜もしくは蛍光性膜との順次堆積によって、中間層を形成する。
【0401】
薄膜金属(この場合はAgまたはAu)と薄い蛍光体膜(この場合はYTaO)との中間層が半球を作る。一実施形態では、各層の厚さは、層堆積シーケンスのタイミングによって達成可能な中間層及び拡張層の厚さで、100nm~800nm、または10~2000nm、または200~800nm、または400~500nmに変えることができる。他の実施形態では、上記の層状アセンブリの層間の分離距離は、10nm~1000nm、または100nm~700nm、または200nm~500nm、または300nm~400nmの範囲であってもよい。さらに他の実施形態では、上記の層状アセンブリの層間の分離距離は、1μm~1000μm、または10μm~100μm、または100μm~500μm、または300μm~400μmの範囲であってもよい。
【0402】
ステップa-3に示すように、半球を作成するために使用した2枚のウェハであった各ウェハの半球を、熱及び圧力のもとに共に接合して圧潰させて、薄い金属層を融合し、2つの半球から中間層構造の入った球を形成する。
【0403】
ステップa-4に見られるような粒子が、シリコンのエッチングによってウェハから取り出される。
【0404】
本発明の一実施形態では、薄膜金属(この場合はAg)と薄膜蛍光体(この場合はYTaO)とを順次積層することによって形成されたこれらの粒子は、X線などの励起エネルギーの影響を受けて異方性発光する。
【0405】
本発明の一実施形態では、非等方性放出を伴う、特別に存在するフォトニック結晶及び「黒色」蛍光体があり、この非等方性放出は異方性放出を生成するために利用できる。
【0406】
ある面に沿って多くのエネルギーを放出することができるが、他の面には放出することができない、そのような材料の一例として、
結晶構造が斜方晶であり、蛍光体がCeOをエッジ共有する線形鎖を有したSrCeOが挙げられる。
【0407】
そのような蛍光体の他の例としては、
(Y0.82Al0.07La0.06)VO:Eu0.05
(Y0.5Gd0.52.97 (Al0.5Ga0.512:Ce0.03が挙げられる。
【0408】
構築方法及び使用する具体的な化学反応は米国特許第6,013,199号に記載されており、その全記載内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0409】
本発明の一実施形態では、これらの蛍光体は、(上記のように)磁性材料または常磁性材料でコーティングされ、(上記のように)磁場によって配向される。これらの蛍光体結晶またはフォトニック結晶のX線エネルギー励起は、これらの材料の種々の結晶面に沿って優先的に光放出をもたらす。図14は、X線による励起と、蛍光体結晶またはフォトニック結晶からの、ある特定の結晶面に沿う優先的な光放出とを示す概略図である。
【0410】
一実施形態において、燐光性または蛍光性の粒子は、中空球の硬質シェルコア内部の「浮遊性」粒子である。図15は、中空球の硬質シェルコア内部の浮遊性粒子を示す概略図である。本実施形態の一態様では、多結晶粒子または単結晶粒子が、カプセル化用硬質シェルコアによって提供される空洞の中の流体媒質の内部に密閉される。本実施形態の一態様では、流体媒質は、生物学的治療用懸濁液(例えば、光活性化可能薬物または他の治療剤)であってもよい。シェルの破壊により、生物学的治療用懸濁液が被処置対象中に放出される。
【0411】
本発明の一実施形態では、浮遊性粒子構造を製造する際の製造上の考慮事項は、例えば以下に記載する方法に従うが、以下の記載は、本構造を製造する唯一の方法ではない。
【0412】
図16は、浮遊性粒子構造を作成する一実施形態による様々なステップを示すプロセス図である。ステップb-1において、中空上半球を有した真性シリコンウェハを準備する。(この場合の半球は、説明のために5~10ミクロンの範囲にあり得る。)ケイ酸塩化学構造(6SiO:1Al:2NaOの範囲内の割合を有する)を含む溶液を調製する。ステップb-2に示すように、例えばウェハを250rpmの速度で回転させながら、ケイ酸塩溶液をウェハ表面に加え、半球を充填する。ステップb-3に示すように、IRランプを使用して、ウェハ上のケイ酸塩化学構造スパンを乾燥させてガラス質にする。2枚のウェハを同じ方法で準備する。下側のウェハは、蛍光体粉末を収容するように設計されている。上部ウェハをフォトレジスト技術を用いて処理して、流体チャネルをエッチングする。(磁性粉末を含むスラリーまたは磁性粉末の乾燥粉末スプレーを使用して、磁性材料の「ストリップ」を得ることができる。)
【0413】
蛍光体を含むスラリーを、例えばまた約100rpmで回転させながらウェハに添加する。ウェハを乾燥させ、蛍光体粒子を半球体内に留めるようにする。ステップb-4は、この完了したステップの描写を示す。
【0414】
また、ケイ酸塩コーティングを含むとともにマイクロ流体チャネルを含む第2のウェハ(上部ウェハ)を、蛍光体を含む第1のウェハの上に配置する。2つのウェハを、ケイ酸塩コーティングが融合して(個別の上部ウェハ及び下部ウェハのそれぞれに含まれる2つの初期半球から)球が形成されるまで圧し、かつ加熱する。
【0415】
複合化された2枚のウェハが融合した時点で、マイクロ流体チャネルを通して生物学的薬物を加える(ステップb-5)。ケイ酸塩カプセルが生物学的薬物で満たされるまで圧力を加える。上部ウェハを下部ウェハから外す。ガラスコーティングは、短時間の熱スパイクをウェハに加えて、あえて熱膨張の不整合を起こさせることによって、上部ウェハから解放される。ガラスカプセルが形成され、これは蛍光体粒子及び生物学的薬物で部分的に充填されている。ケイ酸塩球の内部体積と蛍光体粒子との間に残された自由体積は、部分的に(例えば、充填率約65%で)充填される。球の上部の小さな開口(マイクロチャネルが存在する)は、レーザを用いて閉じる。下側のウェハを、ランプを使用して急速な熱に曝して、ウェハから全てのガラスカプセルを外す。結果として、蛍光体および生物学的薬物を含む球体が形成される。
【0416】
b-4に描写されたこのような円筒状リン含有材料は、例えば、リン含有粉末を圧縮し、次いで粉末を焼結して所望の形状を形成することによって作ることができる。有機バインダを用いて粉末に圧粉体強度を付与することができ、押し出し法を使用して、バインダを700℃で加熱して燃焼させた後、高温で焼結することができる。焼結温度は約1500℃にすることができる。焼結温度は、3SiO:1NaOなどの小さなケイ酸塩化学構造を添加して、粒子が共にネッキングし得る温度を下げることによって、低下させることができる。
【0417】
本発明の一実施形態では、磁気ストリップを有する例えば非晶質、多結晶または単結晶粒子などの粒子を、硬質シェルカバーの内部に流体媒質を用いて密閉することができ、(流体媒質は生物学的治療懸濁液であってもよく、)硬質シェルが、特定のX線エネルギーの下で壊れるようにすることができる。概略的には、構造要素は図15のものと同じであるが、硬質シェルはX線損傷を受け易い材料でできており、構造的完全性が失われている。
【0418】
この実施形態では、X線エネルギー曝露の影響下で破壊され得る(または構造的完全性を失い得る)流体の生物学的薬物を含む硬質シェルカプセルは、例えばPbOを含有するように改質されたガラスである。粉末形態の生物学的薬物を使用することもできる。しかし、これを添加する製造方法は、流体の生物学的薬物の方法と異なる。Pbは、シリカに対して0.5%のモル%の割合でガラス化学構造に網目形成成分として組み込むことができる。X線照射時に、Si-O-Pbブリッジが壊れる。これらの鉛含有ケイ酸塩ブリッジの十分な量が壊れた場合、ガラスは構造的完全性を失う。CuおよびAgの網目形成成分などの他の重金属を、Pbの代わりに、またはPbの補充物として、添加することができる。使用する重金属に関わらず、X線によって破壊可能な結合という同じ現象が、X線によって破壊可能なガラスカプセルを生成するように作用する。
【0419】
一実施形態では、複数の硬質シェルカプセルに、同一または異なる生物学的薬物を含めることができる。各カプセルは、各種のX線ビームまたは照射線量の下で壊れる個別の厚さを有したシェルで作製することができ、したがって、段階的で制御可能な薬物送達システムが考案される。
【0420】
図17は、燐光性材料または蛍光性材料がロッドの形状(または他の細長い形状)に成形された、本発明の別の実施形態を示す。長手方向軸に沿って磁気ストリップが存在し、これはロッドの配向と放出光の反射とに役立つ。この構造は、前述の図13において製造した工学的粒子と同様の方法で作製するが、ベースウェハに半球形の球体ではなく、トレンチをエッチングすることによって始めることができる。
【0421】
一実施形態では、複数の硬質シェルカプセルを、流体の区画を持たない「単純な」燐光性または蛍光性の粒子またはロッドと共に、標的部位または患部の近傍に挿入することができる。一実施形態では、複数の硬質シェルカプセルを、前述の挿入装置と共に、標的部位または患部の近傍に挿入することができる。一実施形態では、複数の硬質シェルカプセル、単純な燐光性または蛍光性の粒子、および挿入装置を、すべて交換できるように、または一緒に使用して、標的部位を治療することができる。
【0422】
一実施形態では、複数の挿入装置を標的部位の近傍に挿入し、協働させて標的部位を治療する。複数の挿入装置は、遠隔制御されるか、または事前にプログラムされており、必要に応じて(罹患部を取り囲む微小環境の罹患部において)体内に移植される。
【0423】
図18は、器官(すなわち、標的部位)と隣り合った適所に移植された挿入装置の配置図である。挿入装置から光が放出されると、挿入装置からではない他の場所から器官に供給された光活性化可能薬物(すなわち、生物学的薬物もしくは補助薬剤または組合せ)が、放出光を吸収し、器官の異常細胞に結合する。図18に示す本実施形態では、身体の外側に位置する貯留槽が、光活性化可能薬物をカテーテルを介して器官に供給する。図18に示す本実施形態では、挿入装置はオンボードバッテリを備えたLEDカプセルであり、バッテリを遠隔充電することができ、カプセル内のプロセッサを遠隔でプログラムまたはトリガすることができる。
【0424】
図19は、例えば器官の罹患部を取り囲む血管系からの血液を含む部位近傍の適所に移植された挿入装置の配置図である。図19に示す実施形態では、制御可能なTバルブは、罹患部を取り囲む血管系から血液を採取し、生物学的薬物を含む貯留槽から血液を混合する。血液は、LEDカプセルからの光を用いて血液および薬の混合物を処理する整合的袋状体(血液が放出光に曝されるポートとして機能する)に移動する。セカンダリTバルブでは、適切な圧力条件を作り出すようにポンプを使用して、処理された血液を一方のポートから取り出し、血液を循環させる。ポンプとしては、前述の図2-1Bに関する、ポンプ/バルブ40、液体貯留槽38、流体導管チャネル46、および/または導管44を利用して、血液をポンプ輸送することができ、および/または生物学的薬物もしくは光活性化可能薬剤を血液に供給することができる。
【0425】
図19に示す実施形態では、モジュラーシステム(貯留槽、Tバルブ、LEDカプセル、ポンプ)の組合せにより、体循環用の主幹動脈の周囲で治療を行うことが可能になる。本発明のシステムおよび方法は、従来確立されているソラレンおよび紫外線A(PUVA)放射線治療に取って代わることができる。
【0426】
放出光は、血液供給を処理するか、またはヒト被検体もしくは動物被検体の器官を直接治療する。エネルギー調節薬剤は、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体および酸化物半導体の少なくとも1つを含む燐光性薬剤または蛍光性薬剤の少なくとも1つ、およびそれらの組合せであり得る。
【0427】
本発明の一実施形態では、図19に示すように、中継装置があって利用される。中継装置の機能は、プログラム可能なマイクロデバイス(または場合によっては複数のマイクロデバイス)と外界との間の通信を仲介することであり、コンピュータシステムは、実行すべき次のプロセスステップを監視して、それに応じてフィードバックを提供する。そうすることによって、マイクロデバイスからの微弱な信号でさえも、拾い上げて、プロセスを監視してガイドするコンピュータシステム(制御)に中継することができる。
【0428】
したがって、本発明の一実施形態において、媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムは、ヒト被検体または動物被検体の部位の中に埋め込まれた埋め込み挿入装置と、ヒト被検体または動物被検体の外部の、電磁的伝達のための外部線源を制御するコンピュータ制御装置と、ヒト被検体または動物被検体の部位の中に埋め込まれ、埋め込み挿入装置と外界との間に配置された埋め込み中継器ユニットとを備える。埋め込み中継器は、電磁的伝達を渡し、埋め込み挿入装置と通信する。
【0429】
本発明の一実施形態では、埋め込み中継器は、信号の異常および損失が起こり得る人体の厚い部分を通る電磁的伝達の伝達損失を軽減するためのブースタとして機能するようにプログラムされている。
【0430】
生物学的薬物及び/または1つ以上のエネルギー調節薬剤の制御放出
特異的性質を持つ特別なコーティングおよび材料に関しては、ケイ酸ナトリウムおよび他のケイ酸塩が本発明に好適である。ケイ酸ナトリウムの溶液にHClを含む通常の酸を添加すると、縮合ケイ酸(SiO.HO)のゼラチン状沈殿物が得られる。この沈殿物を部分的に脱水すると、それは広くシリカゲルと呼ばれる多孔質材料を形成する。この物質には、人体の内部に埋め込まれたときのその徐放性のために、生物学的薬物を含浸させてもよい。さらに、一部の結合がリン含有網目形成成分であるPbで作られている場合、生物学的薬物の放出を促進することができる。そのような物質は、部分的にその完全性を失い、体内における生物学的薬物のさらなる放出を引き起こす。蛍光体材料(すなわち、X線エネルギー下のUV放出源)および多孔性材料(生物学的薬物を含浸する)の両方を腫瘍部位に(インプラントとして)送達することができる。この技法の付加利益は、X線が感知された場合にのみ生物学的薬物の放出が起こり、X線エネルギーがもたらされた場合にのみ蛍光体がUVを活性化させることである。このような治療は、例えば骨肉腫に使用され、これらの材料が骨に移植される(穿孔される)。その後、X線治療の頻度によって、治療が実施される頻度が決まる。他の例としては、蛍光体および含浸された多孔質ゲルが歯の根元に移植され、イメージング線量を送達する歯科用X線に曝露されて、治療を活性化させる顎骨が挙げられる。
【0431】
エネルギー調節薬剤の放出に関する本発明の一実施形態において、エネルギー調節薬剤(上記の蛍光体)は、CaWO:Pb2+、CaWO:W、Sr(PO:Eu2+、Ba(PO:Eu2+、YSiO:Ce3+、SrMg(SiO:Eu2+、BaMgAl1424:Eu2+、ZnSiO::Mn2+、Y(Al,Ga)12:Ce3+、BaMgAl1424:Mn2+、BaMgAl14O23:Mn2+、SrAl12SiO19:Mn2+、ZnAl1219:Mn2+、CaAl1219:Mn2+、YBO:Tb3+、SrSiCl:Eu3+、Y:Eu3+、YSiO:Eu3+、YAl12Eu3+、CaSiO:Mn2+、YVO:Eu3+の少なくとも1つであってよい。
【0432】
エネルギー調節薬剤の放出に関する一実施形態において、エネルギー調節薬剤は、誘電体-金属複合体を含むプラズモニクス薬剤、または複合プラズモニクス薬剤として、互いの近傍に配置された複数の異なったサイズの金属粒子を含むプラズモニクス薬剤をさらに含むことができる。
【0433】
エネルギー調節薬剤の放出に関する一実施形態において、エネルギー調節薬剤は、Y;ZnS;ZnSe;MgS;CaS;Mn,ErZnSe;Mn,ErMgS;Mn,ErCaS;Mn,ErZnS;Mn,YbZnSe;Mn,YbMgS;Mn,YbCaS;Mn,YbZnS:Tb3+,Er3+;ZnS:Tb3+;Y:Tb3+;Y:Tb3+,Er3+;ZnS:Mn2+;ZnS:Mn,Er3+;CaWO,YaTO,YaTO:Nb,BaSO:Eu,LaS:Tb,BaSi:Pb,NaI(Tl),CsI(Tl),CsI(Na),CsI(pure),CsF,KI(Tl),LiI(Eu),BaF,CaF,CaF(Eu),ZnS(Ag),CaWO,CdWO,YAG(Ce)(YAl12(Ce)),BGOゲルマニウム酸ビスマス,GSOガドリニウムオキシオルトシリケート,LSOルテチウムオキシオルトシリケート,LaCl(Ce),及びLaBr(Ce)の少なくとも1つであってよい。
【0434】
上述のエネルギー調節薬剤(および当技術分野で周知であるかまたは本明細書の他の箇所に記載されている他のもの)は、上述の受動装置として、または治療される患部または標的部位の近くに配置されることによって、上述の能動装置と組み合わせて使用することができる。
【0435】
上述のエネルギー調節薬剤(および当技術分野で周知であるかまたは本明細書の他の箇所に記載されている他のもの)は、生理食塩水溶液中の、または上記の光活性化可能薬物または生物学的薬物を含有する溶液中の挿入装置から注入することができる。
【0436】
挿入装置を用いた場合と用いない場合の血液処理および処置
血液は、栄養素や酸素を組織や器官に輸送してpHや温度を調節するといった多くの機能を果たす。血液はまた、外来微生物および創傷治癒に対する防御を目的とした免疫細胞の輸送のために、血管網を介した効率的な輸送システムを提供する。概して、血漿および細胞は、それぞれが約60%および約40%の体積分率を個々に有する2つの主要な血液成分を構成する。血液細胞成分は、主に、赤血球(RBC)、白血球および血小板で構成される。血1ミリリットルあたり約50億個の細胞のうち、赤血球(RBC)が全ての細胞成分の>99%を占めている。また一方、紫外線はRBCによって大きく減衰する。
【0437】
したがって、本発明の一実施形態では、光活性化可能薬物を用いて、患者または被検体を治療するシステムが提供され、本システムは、光活性化可能薬物を活性化できる波長エネルギーの供給源と、血液供給置換システム(例えば、上述の図5図18および図19に示されるようなバルブ、ポンプ、貯留槽等の構成)とを備え、その方法は、治療される患部または器官からの血液を置換するか、またはフラッシュする。血液を置換するものは、波長エネルギーの吸収性が血液よりも低い生体適合液体である。したがって、本発明の一実施形態では、結果として得られる治療では、内部波長エネルギーが、被検者または患者の血液によって吸収されるよりも、光活性化可能薬物を光活性化させる可能性が高い。一実施形態では、生体適合液体は生理食塩水である。別の実施形態では、生体適合液体は血漿である。別の実施形態では、生体適合液体は、被検者の血液供給源から血漿分離される。別の実施形態では、生体適合液体は、例えばソラレンまたはINAなどの光活性化可能薬物を含む。別の実施形態では、生体適合液体は、光活性化可能薬物および/またはルミネセンス薬剤(例えば、燐光性または蛍光性の薬剤など)を含む。一実施形態では、生体適合液体は、10分間未満、好ましくは5分間未満、一層好ましくは2分間未満、さらに一層好ましくは1分間未満の期間、血液を置換する。一実施形態では、内部波長エネルギーは、本発明の受動装置によって患者または被検者の内部で(置換の間に)生成される。一実施形態では、内部波長エネルギーは、本発明の能動装置によって患者または被検者の内部で(置換の間に)生成される。別の実施形態では、血液の置換を、生理食塩水及び/または光活性化可能薬物溶液の針注入によって生じさせる。
【0438】
さらに、以下では挿入装置として説明するが、以下に説明するマイクロ流体素子は、被検者または患者の体内に挿入する必要はなく、体外に存在してもよい。
【0439】
本発明の一実施形態によれば、上述の挿入装置は、RBCを器官から分離または迂回させることを可能にするマイクロ流体素子を含むか、または追加することができ、その間に(残りの血液からの)血漿および/または生理食塩水は罹病器官または患部を通してポンプ輸送される。一実施形態では、上に示したものと同様に、血液供給を迂回させるためにバルブを使用し、血漿または生理食塩水の貯留槽を血流の代わりに使用することができる。RBCの長期間の迂回は、臓器内の異常細胞及び正常細胞にとって有害であるが、短期間(例えば、10秒~2分)では、このRBCの流れが無い血液置換のギャップ時間の間に、その効果は有害にはならないと予想される。さらに、本発明の一実施形態によれば、ソラレンなどの光活性化可能薬物が、発光挿入装置からのUV光(または他の放射波長)によって当てられて活性化されるのは、ギャップ期間の、好ましくはその後半の期間または最後の4分の1の期間である。その結果、挿入装置が受動装置の場合(上記の議論を参照)、UVまたは他の放射波長は、罹病器官または患部の中または近くに配置された燐光性または蛍光性の薬剤(または他のルミネセンス薬剤)によって、上に詳述したギャップ期間中に生成される。
【0440】
過去10年の間、新しいマイクロ流体ベースの技術が出現して、臨床血液サンプルを処理するようになっている。マイクロ流体工学は、マイクロスケールでの流体流動挙動を研究する科学であり、このような小さなスケールで発生する特別な物理現象を利用した小型分析システムを開発するものである。マイクロ流体素子は、音響泳動を用いた血漿およびRBC分離が可能である。本発明のこの手法では、全血を含むマイクロチャネルがλ/2波長超音波定在波によって励起され、これはRBCを主音響放射力によってチャネル中心に集中させる。超音波定在波によって生成される音響力は、マイクロチャネル内の血漿分離に使用することができる。これらの音響波によって細胞に発生した放射力は、それらを定在波場の圧力ノードに移動させる。半波長幅の超音波でマイクロ流体チャネルを励起することによって、細胞/粒子をチャネルの中心に位置する圧力ノードに集束させることができる。典型的に、これらの装置では、マイクロチャネルおよび流出口を含むチップの下にトランスデューサが配置され、トランスデューサは、流れに垂直なチャネル壁の間に超音波定在波を生成する。複数流出口を持つシステムにより、濃縮された血液細胞分画をチャネルの中心から移動させることを可能にし、一方、純粋な血漿画分を側面から引き抜くことができ、本発明では、それを使用して、患部または標的部位に血漿を供給し、それによって薬物の光活性化時の期間中に血液を部位から移動させることができる。
【0441】
米国特許出願第2014/0008307(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、2段階マイクロ流体素子が記載されている。この2段階マイクロ流体素子は、表面弾性波を使用し、かつ少なくとも一対の第1の弾性表面波発生器であって、第1の弾性表面波発生器の対が互いに対向して配置される第1の弾性表面波発生器と、第1の弾性表面波発生器の対の間に配置された第1のチャネルとを含む粒子集束ステージと、第2の一対の弾性表面波発生器であって、弾性表面波発生器の対が互いに対向して配置される第2の弾性表面波発生器と、第2の弾性表面波発生器の対の間に配置された第2のチャネルとを含む粒子分離ステージとを有し、第1のチャネルと第2のチャネルとが互いに流体連通する。米国特許出願第2008/0181828号(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、粒子/流体/生体細胞の分離に有効な超音波共振器の1/4波分離チャンバが記載されている。‘828超音波共振器は、連続流クローズドシステムの一部であり、各出口ポートの近くの細胞タイプ/体積を光学的に監視して、収集純度を維持する出口バルブを制御する。未収集細胞/血漿はドナー患者に戻すことができる。‘828システムでは、非共鳴二次超音波を共振器に与えて、出口ポートからの凝集細胞排出を流動化/促進させることができる。
【0442】
米国特許第6,664,104号(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、流水式マイクロ流体チップが組み込まれたカートリッジを含む流体サンプルから検体を分離するための装置が記載されている。‘104マイクロ流体チップは、検体を捕獲し、続いて捕獲した検体を溶出液に放出する微細構造アレイを有した抽出チャンバを備える。微細構造のそれぞれは、少なくとも2:1のアスペクト比を有する。‘104カートリッジはまた、サンプルおよび溶出流体の流れをマイクロ流体チップに通すためのチャネルおよび少なくとも1つのフローコントローラ(例えば、1つ以上のバルブ)を備える。米国特許出願第2013/0175226号(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、その間に分離チャンバを画定する2つの平行なチャンバ壁であって、各チャンバ壁が、チャンバの一方の側を確定する、2つの平行なチャンバ壁と、流体が通ってチャンバ内に流入することができる流入口手段と、流体が通ってチャンバから流出することができる流出口手段とを有する音響分離器が記載されている。チャンバ壁の1つは、圧力波を、チャンバを横切ってチャンバ壁の他方に向けて伝達させるように配置したトランスデューサを含み、同様にしてチャンバ壁の他方が圧力波を反射してチャンバ内に定在波を立てるように構成されている。流出口手段は、チャンバの1つの側面に開口部を画定する。
【0443】
このようなマイクロ流体素子や当技術分野で周知の他のものは、本発明によれば、血漿または生理食塩水が、UV光または他の波長のエネルギーによる活性化のために、罹病器官または患部に光活性化可能薬物を供給するとき、上述のギャップ期間中にRBCを分離することができる。
【0444】
本発明の別の実施形態では、マイクロ流体素子は、循環腫瘍細胞を、罹病器官または患部を出る血流から収集することを可能にする。背景として、血液中の循環腫瘍細胞(CTC)は、がん転移の重要な中間段階であり、全てのがん関連死の約90%の主な原因となる。臨床試験は、CTCの計数値が、がんの進行と相関し得ることを示している。
【0445】
CTCと他の血液細胞成分とのサイズの差が大きいため(CTCは約16~20μm、RBCは約8μm、白血球は約10~15μmである)、マイクロ流体素子におけるサイズベースのCTC分離は、様々な形状の微細構造を用いて、大きなCTCを物理的に捕獲することによって、多くの場合達成される。このような素子における工学的寸法は、ほとんど汚染されずに最大のCTC捕獲を可能にするように設計された細孔/構造体のサイズであった。5~10μmの間隙サイズまたはふるいサイズを使用して、マイクロ流体素子は、高効率(>80%)でがん細胞を単離するのに使用されている。
【0446】
本発明の一実施形態では、単離されたCTCは、続いてソラレンなどの光活性化可能薬物で処理され、UV活性化され、血液を逆行させる逆向きのポンプ輸送によってふるいを通して血流に戻される。本発明の一実施形態では、マイクロ流体素子は、時間の経過に伴うがんの進行または退縮のモニタとして、患者または被験者の血流からのCTCの分離および収集のために、使用することができる。
【0447】
本発明の一実施形態では、マイクロ流体素子を、血流中の微生物(例えば、CTC、細菌病原体、およびウイルス病原体)の分離および処理に使用することができる。血液からの微生物の分離は、血流を介して広がり、身体の免疫系に障害を生じさせる全身的な微生物感染によって引き起こされる致死的な疾患、敗血症を治療するための血液浄化法治療として、主に使用されている。抗生物質は多くの場合、治療の中心になるが、薬が効果を発揮するまでの数時間は、炎症が広がり続ける。上記のように、一度光活性化されたソラレンは、がん細胞のアポトーシスに有効であり、人体からの自家ワクチン応答を生み出す。上記のように、一度光活性化されたヨードナフチルアジド(INA)は、人体からのオートワクチン応答を引き起こす効果的な抗ウイルス剤および抗菌剤である。本発明の一実施形態では、単離された微生物は、ソラレンまたはINAなどの光活性化可能薬物で処理され、UV活性化され、血液を逆行させる逆向きのポンプ輸送によってふるいを通して血流に戻される。
【0448】
米国特許出願第2011/0301058号(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、SU-8フォトレジストで作られたモノリシック微小内柱(MIPi)として作製されたマイクロ流体素子が記載され、そこでは内柱(MIPiチップ)を有するマイクロ流体チップが細胞捕獲に使用される。MIPiの表面を特異抗体でコーティングし、次いで親和結合によって細胞を捕獲するためにこれを使用した。抗体である、抗EGFR(肺癌細胞に対して高い親和性を有する)、CL1-5を微小柱上にコーティングした。被覆されたMIPiチップは、MIPiチップを介してポンプ輸送されたがん細胞を特異的に捕獲した。上記の特異的なコーティングを有するこの素子は、本発明において、経時的ながんの進行または退縮のモニタリングに特に有用であるが、例えば、細胞を放出するために微小柱を加熱することによって、処理された細胞の収集、処理および放出に使用することもできる。
【0449】
例えば、Gurkan et al.“Controlled viable release of selectively captured label-free cells in microchannels” Lab Chip.2011 Dec 7;11(23): 10.1039/c1lc20487d(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、マイクロチャネル(10μLの小さな液体体積によって達成される)への急速な加熱(37℃)および冷却(<32℃)が、結合種の放出を可能にすることが記載されている。さらに具体的に言うと、Gurkan et alは、3つの平行なチャネル(4mm×22mm×80μm)でできたマイクロ流体チップを使用して(そのうちの1つ(ミドルチャンネル)は温度インジケータチャネルとして使用される)、本発明に適用可能な以下の加熱/冷却シーケンスを記載している。血液を上部放出チャネルおよび下部放出チャネルに導入する。37℃のチャネル表面は、そのチャネル表面上の細胞を捕獲し、チャネル中の捕獲されていない細胞は洗い流される。次いで、マイクロチップを32℃未満に(5分未満で)冷却する。放出された細胞を、チャネルから洗い流し、チャネル流出口に集める。
【0450】
米国特許第8,834,794号(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、血液中の循環腫瘍細胞(CTC)を検出するための使い捨てハンドヘルド装置(HCTCD)が記載されている。HCTCDは1ミリリットル当たり1CTC未満を検出することができる。HCTCDは、高アスペクト比の自立型金属ナノニードルの高密度アレイからなり、マイクロ流体素子内に組み込まれた抗体で機能化され、(電気信号検出を使用して)CTCを選択的に捕獲して計数する。ナノニードルアレイのための適切な機能化プロトコルを選択することによって、HCTCDは、ヒトの体液中に混在する様々な希少細胞を選択的に捕獲するように使用することができる。上記の特異的な抗体を有するこの素子は、本発明において、経時的ながんの進行または退縮のモニタリングに特に有用であるが、例えば、細胞を放出するためにナノニードルを加熱することによって、処理された細胞の収集、処理および放出に使用することもできる。
【0451】
米国特許出願第2014/0061049号(参照によりその全記載内容が本明細書に組み込まれる)には、マイクロ流体素子を備え、マイクロ流体素子に無線で電力を供給するプリント回路が記載されている。‘049マイクロ流体素子は、粒子を含む流体用の経路を提供する流体チャネルを有した基板を備える。流体チャネルは、流体流入口および流体流出口を含む。流入口及び流出口付近の一対の電極は、電極対で受け取られる交流(AC)周波数電圧に応答して、負の誘電泳動(DEP)効果を使用し、粒子を流体チャネルの中心に向かって誘導する。追加の対の電極が、流体チャネルの流入口および流出口付近の電極対の間の流体チャネルの境界に沿って配置されて、追加の電極対のうちの個別の電極対で受け取られるそれぞれの周波数のAC電圧に応答して、正および負のDEP効果を使用し、粒子の亜集団を分離する。この種の装置を用いて、本発明において、プラズマとRBCとの分離を達成することができた。
【0452】
‘049出願に記載されているように、本発明が優先的にCTCまたは微生物を捕獲するのに適しているように、異なるサイズを有する細胞は、電極対を通過する際に異なる量の誘電泳動力を受ける。負の誘電泳動(DEP)を受ける細胞は上部の室に偏向され、正のDEPを受ける細胞は下部の室に流入する。その後、細胞は、平行アレイ電極によって生成された移動DEP力によってさらに細分される。これらの電極間の位相差は90°である。例えば、アレイ内の第1の電極が0°の位相を有する場合、後続の電極は、それぞれ90°、180°および270°の位相を有する。正の移動DEPを受ける細胞は、負のDEPを受ける細胞とは異なる素子領域に偏向される。このようにして、細胞は同種のグループに分類される。
【0453】
そのようなマイクロ流体素子および当技術分野で周知のその他のものは、本発明によれば、血液供給からCTCまたは微生物を捕獲して、UV光または他の波長のエネルギーによる活性化を伴う光活性化可能薬物でその処理を行うことができる。
【0454】
発明の一般化された記述
以下の本発明の記述は、本発明の1つ以上の特徴付けを提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0455】
1.媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、前記媒質または前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の少なくとも一部を透過する開始信号を生成するように構成された供給源と、電子アセンブリユニットを持つ挿入装置とを備える。前記アセンブリユニットは、1)前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または2)前記媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの前記波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、前記開始信号を受信する受信機とを備える。前記アセンブリユニットは、前記信号を受信すると、前記放出源に電力を供給し、それによって前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の内部または前記媒質の内部に前記波長エネルギーを放出するように構成される。
【0456】
2.前記放出源が、100ミクロンから1センチメートル未満のサイズのマイクロ放出源カプセルを含む、記述1に記載のシステム。
【0457】
3.前記放出源が、前記波長エネルギーを放出するように構成された発光ダイオードまたはエレクトロルミネセンス素子を含む、記述1または2に記載のシステム。
【0458】
4.前記開始信号が、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体または前記媒質の一部または全部を横断する低周波RF信号またはマイクロ波信号である、記述1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【0459】
5.前記挿入装置が、ケイ酸塩ガラス、アルカリガラス、ナトリウムガラス、およびリン酸塩ガラスのうちの少なくとも1つを含む封入壁を有した容器を含む、記述1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【0460】
6.液体貯留槽と、
前記液体貯留槽から前記挿入装置の外部への少なくとも1つの流体チャネルとをさらに含む、記述1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【0461】
7.前記液体貯留槽が、活性化可能な医薬品の流体またはナノ粒子の流体のうちの少なくとも1つを含む、記述6に記載のシステム。
【0462】
8.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、放出された前記波長エネルギーによる活性化の際に、がん、細菌感染、ウイルス感染、免疫拒絶反応、自己免疫疾患、再生不良性病態、およびそれらの組合せからなる群から選択される細胞増殖障害を治療する、記述7に記載のシステム。
【0463】
9.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、ソラレン、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デクリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、アロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、ビタミン代謝産物、ビタミン前駆体、ナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフォリンポルフィリン、色素及びフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、ならびにアントロキノンから選択される、記述7または8に記載のシステム。
【0464】
10.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、ソラレン、クマリン、ポルフィリンまたはその誘導体である、記述7~9のいずれか1項に記載のシステム。
【0465】
11.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、8-MOPまたはAMTである、記述7~10のいずれか1項に記載のシステム。
【0466】
12.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、7,8-ジメチル-10-リビチル、イソアロキサジン、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン、7,8-ジメチルアロキサジン、イソアロキサジン-アデニンジヌクレオチド、アロキサジンモノヌクレオチド、アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンから選択される1つである、記述7に記載のシステム。
【0467】
13.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、受容体部位に結合することができる担体に結合される、記述7~12のいずれか1項に記載のシステム。
【0468】
14.前記担体が、インスリン、インターロイキン、チモポエチンまたはトランスフェリンから選択される1つである、記述13に記載のシステム。
【0469】
15.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、共有結合によって前記担体に結合される、記述13または14に記載のシステム。
【0470】
16.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、非共有結合によって前記担体に結合される、記述13または14に記載のシステム。
【0471】
17.前記受容体部位が、有核細胞の核酸、有核細胞上の抗原部位、またはエピトープから選択される1つである、記述13~16のいずれか1項に記載のシステム。
【0472】
18.前記細胞増殖障害が、標的細胞におけるアポトーシスによって処置される、記述7~17のいずれか1項に記載のシステム。
【0473】
19.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、存在し、標的細胞によって優先的に吸収される、記述7~18のいずれか1項に記載のシステム。
【0474】
20.前記波長エネルギーが、エネルギー調節薬剤または光活性薬剤の有無にかかわらず、前記標的構造に所定の変化を誘発する、記述1~19のいずれか1項に記載のシステム。
【0475】
21.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、前記波長エネルギーを吸収、強化または変更するように構成される、記述20に記載のシステム。
【0476】
22.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、前記波長エネルギーを、前記標的構造における前記所定の変化に影響を与える光エネルギーまたは別の電磁エネルギーに変換するように構成される、記述20または21に記載のシステム。
【0477】
23.前記エネルギー調節薬剤が、前記波長エネルギーと比較して減少した波長の二次光を放出する、記述20~22のいずれか1項に記載のシステム。
【0478】
24.前記エネルギー調節薬剤が、前記波長エネルギーと比較して増加した波長の二次光を放出する、記述20~22のいずれか1項に記載のシステム。
【0479】
25.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、生体適合性蛍光金属ナノ粒子、蛍光金属酸化物ナノ粒子、蛍光金属被覆金属酸化物ナノ粒子、蛍光色素分子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、金被覆銀ナノ粒子、ポリアミドアミンデンドリマによって密閉された水溶性量子ドット、ルシフェラーゼ、生体適合性燐光性分子、複合電磁エネルギーハーベスタ分子、及び高輝度ルミネセンスを示すランタニドキレートから選択される1つ以上の要素を含む、記述20~24のいずれか1項に記載のシステム。
【0480】
26.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、燐光性または蛍光性の薬剤の少なくとも1つを含む、記述20~25のいずれか1項に記載のシステム。
【0481】
27.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体および酸化物半導体の少なくとも1つ、ならびにそれらの組合せを含む、記述20~26のいずれか1項に記載のシステム。
【0482】
28.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、CaWO:Pb2+、CaWO:W、Sr(PO:Eu2+、Ba(PO:Eu2+、YSiO:Ce3+、SrMg(SiO:Eu2+、BaMgAl1424:Eu2+、ZnSiO::Mn2+、Y(Al,Ga)5O12:Ce3+、BaMgAl1424:Mn2+、BaMgAl123:Mn2+、SrAl12SiO19:Mn2+、ZnAl1219:Mn2+、CaAl1219:Mn2+、YBO:Tb3+、SrSiCl:Eu3+、Y:Eu3+、YSiO:Eu3+、YAl12Eu3+、CaSiO:Mn2+、YVO:Eu3+の少なくとも1つを含む、記述20~26のいずれか1項に記載のシステム。
【0483】
29.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、誘電体-金属複合体を含むプラズモニクス薬剤、または複合プラズモニクス薬剤として、互いの近傍に配置された複数の異なったサイズの金属粒子を含むプラズモニクス薬剤をさらに含む、記述20~28のいずれか1項に記載のシステム。
【0484】
30.前記エネルギー調節薬剤が、存在し、Y;ZnS;ZnSe;MgS;CaS;Mn,ErZnSe;Mn,ErMgS;Mn,ErCaS;Mn,ErZnS;Mn,YbZnSe;Mn,YbMgS;Mn,YbCaS;Mn,YbZnS:Tb3+,Er3+;ZnS:Tb3+;Y:Tb3+;Y:Tb3+,Er3+;ZnS:Mn2+;ZnS:Mn,Er3+;CaWO,YaTO,YaTO:Nb,BaSO:Eu,LaS:Tb,BaSi2O:Pb,NaI(Tl),CsI(Tl),CsI(Na),CsI(pure),CsF,KI(Tl),LiI(Eu),BaF,CaF,CaF(Eu),ZnS(Ag),CaWO,CdWO,YAG(Ce)(YAlO1(Ce)),BGOゲルマニウム酸ビスマス,GSOガドリニウムオキシオルトシリケート,LSOルテチウムオキシオルトシリケート,LaCl(Ce),及びLaBr(Ce)の少なくとも1つを含む、記述20~29のいずれか1項に記載のシステム。
【0485】
31.前記挿入装置が流動床に配置され、
前記挿入装置が、前記媒質を保持する人工容器内に延在する内側に向かう構造に配置されるか、または
前記挿入装置が、前記媒質を保持する人工容器の内壁に配置される、記述1~30のいずれか1項に記載のシステム。
【0486】
32.前記波長エネルギーによる活性化後の前記媒質中の少なくとも1つの光活性化可能薬剤の相互作用が前記媒質中のポリマーを硬化させる、記述1~31のいずれか1項に記載のシステム。
【0487】
33.前記光活性化可能薬剤が、ベンゾイン及び置換ベンゾイン、ミヒラーケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン、アセトフェノン及び置換アセトフェノン、ならびにキサントン及び置換キサントン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ-チオ-キサントン、アゾ-ビスイソブチロニトリル、N-メチルジエタノールアミンベンゾフェノン、カンファキノン、ペルオキシ酸エステル開始剤、及び非フルオレンカルボン酸ペルオキシ酸エステルの少なくとも1つを含む光開始剤を含む、記述32に記載のシステム。
【0488】
34.媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
開始信号信号に応答して、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または前記媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの前記波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部で放出される前記波長エネルギーの量を加減する制御信号をもたらす制御装置とを備えた前記システム。
【0489】
35.前記放出源が、前記開始信号および前記制御信号の少なくとも1つを受信する受信機を含む能動装置を備えた、記述34に記載のシステム。
【0490】
36.前記放出源が、前記媒質にまたは前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体の内部に前記波長エネルギーを投与するスケジュールを決定するようにプログラムされた命令を含むプロセッサをさらに備える、記述34または35に記載のシステム。
【0491】
37.前記放出源が、前記波長エネルギーを放出するように構成された発光ダイオードまたはエレクトロルミネセンス素子を含む、記述34~36のいずれか1項に記載のシステム。
【0492】
38.生物学的治療用流体を含む液体貯留槽をさらに備えた、記述34~37のいずれか1項に記載のシステム。
【0493】
39.前記生物学的治療用流体を前記ヒト被検体または前記動物被検体に送達するための少なくとも1つの流体チャネルをさらに含む、記述38に記載のシステム。
【0494】
40.光活性化可能流体を含む液体貯留槽をさらに備えた、記述34~37のいずれか1項に記載のシステム。
【0495】
41.前記生物学的治療用流体を前記媒質にまたは前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体に送達するための少なくとも1つの流体チャネルをさらに含む、記述40に記載のシステム。
【0496】
42.生物学的治療用流体または光活性化可能流体の少なくとも1つを保持するX線破壊可能容器をさらに備え、X線暴露時に、容器壁が壊れ、前記生物学的治療用流体または光活性化可能流体の少なくとも1つが、前記媒質にまたは前記ヒト被検体または前記動物被検体に放出される、記述34~37のいずれか1項に記載のシステム。
【0497】
43.前記X線破壊可能容器が、重金属がドープされた、ケイ酸塩ガラス、アルカリガラス、ナトリウムガラス、およびリン酸塩ガラスのうちの少なくとも1つを含むガラスを含む、記述42に記載のシステム。
【0498】
44.前記ガラス中の前記重金属が、Pb、CrおよびThのうちの少なくとも1つを含む、記述43に記載のシステム。
【0499】
45.前記放出源が、電気回路を持たない受動装置を含む、記述34~44のいずれか1項に記載のシステム。
【0500】
46.前記受動装置が、燐光性または蛍光性の薬剤の少なくとも1つを含む、記述45に記載のシステム。
【0501】
47.前記受動装置が、硫化物半導体、テルル化物半導体、セレン化物半導体および酸化物半導体の少なくとも1つ、ならびにそれらの組合せを含む、記述45または46に記載のシステム。
【0502】
48.前記受動装置が、CaWO:Pb2+、CaWO:W、Sr(PO:Eu2+、Ba(PO:Eu2+、YSiO:Ce3+、SrMg(SiO:Eu2+、BaMgAl1424:Eu2+、ZnSiO::Mn2+、Y(Al,Ga)12:Ce3+、BaMgAl1424:Mn2+、BaMgAl1423:Mn2+、SrAl12SiO19:Mn2+、ZnAl1219:Mn2+、CaAl1219:Mn2+、YBO:Tb3+、SrSiCl:Eu3+、Y:Eu3+、YSiO:Eu3+、YAl12Eu3+、CaSiO:Mn2+、YVO:Eu3+の少なくとも1つを含む、記述45~47のいずれか1項に記載のシステム。
【0503】
49.前記受動装置が、誘電体-金属複合体を含むプラズモニクス薬剤、または複合プラズモニクス薬剤として、互いの近傍に配置された複数の異なったサイズの金属粒子を含むプラズモニクス薬剤をさらに含む、記述45~48のいずれか1項に記載のシステム。
【0504】
50.前記受動装置が、Y;ZnS;ZnSe;MgS;CaS;Mn,ErZnSe;Mn,ErMgS;Mn,ErCaS;Mn,ErZnS;Mn,YbZnSe;Mn,YbMgS;Mn,YbCaS;Mn,YbZnS:Tb3+,Er3+;ZnS:Tb3+;Y:Tb3+;Y:Tb3+,Er3+;ZnS:Mn2+;ZnS:Mn,Er3+;CaWO,YaTO,YaTO:Nb,BaSO:Eu,LaS:Tb,BaSi:Pb,NaI(Tl),CsI(Tl),CsI(Na),CsI(pure),CsF,KI(Tl),LiI(Eu),BaF,CaF,CaF(Eu),ZnS(Ag),CaWO,CdWO,YAG(Ce)(YAl12(Ce)),BGOゲルマニウム酸ビスマス,GSOガドリニウムオキシオルトシリケート,LSOルテチウムオキシオルトシリケート,LaCl(Ce),及びLaBr(Ce)の少なくとも1つを含む、記述45~49のいずれか1項に記載のシステム。
【0505】
51.細胞増殖関連障害を治療するために、前記波長エネルギーによって活性化されたときに所定の細胞変化を生じさせることができる少なくとも1つの活性化可能な医薬品を対象に投与する機構をさらに含む、記述34~50のいずれか1項に記載のシステム。
【0506】
52.前記細胞増殖障害が、がん、細菌感染、ウイルス感染、免疫拒絶反応、自己免疫疾患、再生不良性病態、及びそれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1つの要素である、記述51に記載のシステム。
【0507】
53.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、ソラレン、ピレンオレイン酸コレステリル、アクリジン、ポルフィリン、フルオレセイン、ローダミン、16-ジアゾルコルチゾン、エチジウム、ブレオマイシンの遷移金属錯体、デクリコブレオマイシンの遷移金属錯体、有機白金錯体、アロキサジン、ビタミンK類、ビタミンL、ビタミン代謝産物、ビタミン前駆体、ナフトキノン、ナフタレン、ナフトール及び平面状分子配座を有するそれらの誘導体、ポルフォリンポルフィリン、色素及びフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、ならびにアントロキノンから選択される、記述51または52に記載のシステム。
【0508】
54.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、ソラレン、クマリン、ポルフィリンまたはその誘導体である、記述51~53のいずれか1項に記載のシステム。
【0509】
55.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、8-MOP、TMP、またはAMTである、記述51~54のいずれか1項に記載のシステム。
【0510】
56.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、7,8-ジメチル-10-リビチル、イソアロキサジン、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン、7,8-ジメチルアロキサジン、イソアロキサジン-アデニンジヌクレオチド、アロキサジンモノヌクレオチド、アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリン、及びフタロシアニンから選択される1つである、記述51~52のいずれか1項に記載のシステム。
【0511】
57.前記所定の細胞変化が、標的細胞におけるアポトーシスである、記述51~56のいずれか1項に記載のシステム。
【0512】
58.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記対象において標的細胞と反応する自家ワクチン効果を引き起こす、記述51~57のいずれか1項に記載のシステム。
【0513】
59.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、DNAインターカレータまたはそのハロゲン化誘導体である、記述51~58のいずれか1項に記載のシステム。
【0514】
60.活性化の際に、少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記細胞増殖関連障害と関連するDNAに結合する、記述51~59のいずれか1項に記載のシステム。
【0515】
61.少なくとも1つの前記活性化可能な医薬品が、前記細胞増殖関連障害と関連するDNAをインターカレートし、活性化時に前記DNAに結合させる、記述51~60のいずれか1項に記載のシステム。
【0516】
62.開始エネルギーを優先方向に放出される波長エネルギーに変換するための指向性エネルギー変調器であって、
層状アセンブリが、
前記開始エネルギーを吸収し、前記波長エネルギーを放出するエネルギー変換材料の少なくとも1つの層と、
前記エネルギー変換材料の前記少なくとも1つの層の周りに配置されたエネルギー反射材料の多層膜とを備え、
前記波長エネルギーが、前記エネルギー反射材料によって反射され、前記層状アセンブリの長手方向の端部から出て行く、前記変調器。
【0517】
63.前記層状アセンブリが球形である、記述62に記載の変調器。
【0518】
64.前記層状アセンブリが直線的形状である、記述62に記載の変調器。
【0519】
65.前記層状アセンブリがロッド形状である、記述62に記載の変調器。
【0520】
66.前記エネルギー反射材料が、Ag、Au、Al、またはCuのうちの少なくとも1つを含む、記述62に記載の変調器。
【0521】
67.前記エネルギー反射材料が、磁性材料または常磁性材料を含む、記述62~66のいずれか1項に記載の変調器。
【0522】
68.前記エネルギー反射材料が、非磁性材料を含む、記述62~67のいずれか1項に記載の変調器。
【0523】
69.前記エネルギー反射材料が、鉄、ニッケル、コバルト、および希土類金属合金の少なくとも1つを含む、記述62~68のいずれか1項に記載の変調器。
【0524】
70.前記層状アセンブリの層間の分離距離が、10nm~1000nm、または100nm~700nm、または200nm~500nm、または300nm~400nmの範囲である、記述62~69のいずれか1項に記載の変調器。
【0525】
71.前記層状アセンブリの層間の分離距離が、1μm~1000μm、または10μm~100μm、または100μm~500μm、または300μm~400μmの範囲である、記述62~69のいずれか1項に記載の変調器。
【0526】
72.媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
開始信号に応答して、前記ヒト被検体もしくは前記動物被検体における疾患もしくは障害を治療するために、または前記媒質中に変化を生じさせるために、所定のタイプの前記波長エネルギーを放出するように構成された、記述62~71のいずれか1項に記載の変調器と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体内において放出される前記波長エネルギーの方向を緩和させる所定の方向に沿って磁場をもたらすように構成された磁場発生器とを備える、前記システム。
【0527】
73.ヒト被検体もしくは動物被検体の内部で波長エネルギーを放出するシステムであって、
開始エネルギーを含む開始信号に応答して、前記ヒト被検体または前記動物被検体の疾患または障害を治療するために前記波長エネルギーを放出する放出源と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置され、前記ヒト被検体または前記動物被検体の第1の血管から血液を迂回させる第1の血液供給弁と、
前記血液が前記波長エネルギーに曝される前記血液供給弁に接続されたポートと、
前記ポート内の前記血液に光活性化可能薬物を送達するための光活性化可能薬物貯留槽と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置され、前記ポートから血液を前記ヒト被検体または前記動物被検体の第2の血管に戻す第2の血液供給弁とを含む、前記システム。
【0528】
74.前記血液を圧送するために前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置されるポンプをさらに含む、記述73に記載のシステム。
【0529】
75.前記貯留槽が、前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置される、記述73または74に記載のシステム。
【0530】
76.前記貯留槽が、前記ヒト被検体または前記動物被検体の外部に配置される、記述73または74に記載のシステム。
【0531】
77.前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に配置される人工袋状体をさらに含む、記述73~76のいずれか1項に記載のシステム。
【0532】
78.前記放出源、前記ポート、および前記貯留槽のうちの少なくとも1つが、前記人工袋状体の内側に配置される、記述73~77のいずれか1項に記載のシステム。
【0533】
79.前記血液を圧送するために前記人工袋状体の内部に配置されるポンプをさらに含む、記述73~78のいずれか1項に記載のシステム。
【0534】
80.医療用カテーテルであって、
電子アセンブリユニットを有する挿入装置と、
前記アセンブリユニットであって、
放出源と、
前記アセンブリユニットと通信するために信号を受信する受信機とを備え、
前記アセンブリユニットが、前記信号を受信すると、前記ヒト被検体または前記動物被検体の所定のタイプの内部波長エネルギーを放出するように、前記放出源に電力を供給して、前記ヒト被検体または前記動物被検体を治療するように構成される、前記アセンブリユニットと、
患者の体内に前記挿入装置を挿入するための遠位端を含む挿入スリーブと
を含む、前記医療用カテーテル。
【0535】
81.アセンブリユニットを備える放出源カプセルであって、
前記アセンブリユニットが、
放出源と、
前記アセンブリユニットと通信するための開始信号を受信する受信機とを備え、
前記放出源が、ヒト被検体または動物被検体を治療するために前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部に波長エネルギーを放出するか、または媒質の内部に波長エネルギーを放出して、前記媒質に変化を生じさせる、前記放出源カプセル。
【0536】
82.挿入装置であって、
電子アセンブリユニットと、
前記電子アセンブリユニットを収容するように構成され、1)ヒト被検体または動物被検体の体内に、または2)媒質中に挿入するように構成された容器とを備え、
前記電子アセンブリユニットが、
1)前記ヒト被検体または前記動物被検体における疾患または障害を治療するため、または2)前記媒質に変化を生じさせるために、所定のタイプの波長エネルギーを放出するように構成された放出源を備え、
前記電子アセンブリユニットが、前記放出源に電力を供給して、前記容器から前記波長エネルギーを放出するように構成されている、前記挿入装置。
【0537】
83.挿入装置であって、
電子アセンブリユニットと、
前記電子アセンブリユニットを収容するように構成され、1)ヒト被検体または動物被検体の体内に、または2)媒質中に挿入するように構成された容器とを備え、
前記電子アセンブリユニットが、
1)前記ヒト被検体または前記動物被検体における疾患または障害を治療するため、または2)前記媒質に変化を生じさせるために、所定のタイプの波長エネルギーを放出するように構成された放出源と、
開始信号を受信する受信機とを備え、
前記電子アセンブリユニットが、前記開始信号を受信すると、前記放出源に電力を供給して、それによって前記ヒト被検体または前記動物被検体の内部または前記媒質の内部に前記波長エネルギーを放出するように構成された、前記挿入装置。
【0538】
84.媒質の内部で、またはヒト被検体もしくは動物被検体の内部で、波長エネルギーを放出するシステムであって、
ヒト被検体または動物被検体の領域内に埋め込まれた埋め込み挿入装置と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の外部の電磁的伝達の外部電源を制御するコンピュータ制御装置と、
前記ヒト被検体または前記動物被検体の領域内に埋め込まれ、前記埋め込み挿入装置と外界との間に配置された中継器とを備え、
前記中継器が、前記電磁的伝達を前記埋め込み挿入装置に渡す、前記システム。
【0539】
85.前記中継器が、信号の異常および損失が起こり得る前記ヒトの体の厚い部分を通る前記電磁的伝達の伝達損失を軽減するためのブースタとして機能するようにプログラムされている、記述84に記載のシステム。
【0540】
86.光活性化可能薬物を用いて患者または被検者を治療するシステムであって、
前記光活性化可能薬物を活性化することができる波長エネルギーの供給源と、
前記波長エネルギーの吸収性が血液よりも低い生体適合液体を用いて、治療される患部または器官からの血液を一時的に置換する血液供給置換システムとを備える、前記システム。
【0541】
87.症状、障害、または疾患を治療する方法であって、
(1)記述1~61、72~79、または84~86のいずれか1つのシステム、(2)記述80の医療用カテーテル、(3)記述81の放出源カプセル、または(4)記述82~83のうちの1つの挿入装置によって、必要とされる対象においてin-situでエネルギーを発生させること、
in-situで生成される前記エネルギーが、(a)前記被検体に変化を直接的にもたらし、したがって、前記状態、前記障害または前記疾患を治療するか、または(b)in-situで前記エネルギーを発生する前に、もしくはそれと同時に投与された活性化可能な医薬品を活性化し、活性化すると、活性化された前記活性化可能な医薬品が変化をもたらし、それによって前記状態、前記障害または前記疾患を治療する、前記方法。
【0542】
本発明を一般的に説明したが、例示のみを目的として本明明細書に提供され、特に明記されない限り限定することを意図しない特定の具体例を参照することによってさらなる理解を得ることができる。
【0543】
上記の教示に照らして、本発明の多くの変更および変形が可能である。したがって、添付の明細書の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施することができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0544】
1 開始エネルギー源
2 活性化可能薬剤
3 挿入装置
4 媒質(被験者)
5 コンピュータシステム
6 エネルギー調節要素
7 開始エネルギー
8 ネットワーク
9 容器
10 密閉型構造
11 供給源
20 流動床
22 取り付け電極
24 筐体
26 発光源
30 コイル巻線
32 バッテリ
34 表面
36 ICチップ
38 液体貯留槽
40 ポンプ/バルブ
42 壁挿入物
44 導管
46 導管チャネル
50 カテーテル
52 放出源カプセル
54 マイクロエレクトロニクスアセンブリユニット
60 挿入スリーブ
62 バルーン
64 冷却水管
66 センサ線
102 リング部材
104 LED
106 エレクトロルミネセンス層
108 筐体
110 動脈
300 EL素子
302 穴
1000 基板
1102 上部電極
1104 下部電極
1106 エレクトロルミネセンス層
1108 相互接続部
1110 絶縁層
1201 コンピュータシステム
1202 バス
1203 プロセッサ
1204 メインメモリ
1205 専用メモリ(ROM)
1206 ディスクコントローラ
1207 記憶装置
1208 リムーバブルメディアドライブ
1209 ディスプレイコントローラ
1213 通信インターフェース
1214 ネットワークリンク
1215 ローカルエリアネットワーク
1216 通信ネットワーク
1217 モバイルデバイス
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19