IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7053588斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置
<>
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図1
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図2
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図3
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図4
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図5
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図6
  • 特許-斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法ならびに斜面顕微鏡および斜面顕微鏡用の画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20220405BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220405BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G02B21/36
G01N21/64 Z
G02B21/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019514741
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017073300
(87)【国際公開番号】W WO2018050832
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】93225
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/109323(WO,A2)
【文献】特表2015-521749(JP,A)
【文献】特開2012-47502(JP,A)
【文献】特表2010-517029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - 21/74
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾いた被照面(31)を有する顕微鏡(2)を用いてプレビュー画像(71)を形成する方法であって、
連続する時点(t~t)に、観察光学系(7)の光軸(23)に対して傾いておりかつ互いに離隔された種々異なる被照面(31)を照明し、ライン状に配置された複数の感光素子(89)を有するセンサ(44、45、45a)に結像し、
前記センサ(44、45、45a)の長手方向延在長さ(102)で行に平行に配向されておりかつ1つの読出ステップにおいて読み出し可能な、前記センサ(44、45、45a)の、ストライプ状のそれぞれ少なくとも1つの読出領域(80)を読み出し、
順次に読み出される読出領域(80)から、前記観察光学系(7)の前記光軸(23)に対して垂直に配置されている観察面(73a)を再生し、
連続する時点(t ~t )に生成されるそれぞれの前記被照面(31)のプレビューストライプ(77)をストライプ像(79)として前記センサ(44、45、45a)に結像し、前記ストライプ像(79)は、1つの読出ステップにおいて読み出し可能な読出領域(80)を複数含む、
方法。
【請求項2】
前記顕微鏡(2)は、斜面顕微鏡(2a)である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記読出領域(80)を、それぞれ、読出過程の開始時に前記センサ(44、45、45a)から読み出す、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
それぞれの前記被照面(31)のプレビューストライプ(77)を、前記センサ(44、45、45a)の読出開始部(91)に結像する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前記読出領域(80)は、別々に読み出し可能な少なくも2つのセンサ(44、45、45a)にわたって延在している、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
それぞれのストライプ像(79)の順次に読み出される前記読出領域(80)を、前記観察光学系(7)の前記光軸(23)に対するそれぞれの前記被照面(31)の傾斜角(27)に依存し、かつ/または、異なる時点(t~t)に照明される前記被照面(31)間の間隔(75)に依存して、歪み補正しかつ/または平均化し、これにより、前記プレビュー画像(71)を形成する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記センサ(44、45、45a)に対する前記被照面(31)の像(46)の位置を変化させるために、前記センサ(44、45、45a)をスライドさせる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
傾いた被照面(31)を有する顕微鏡(2)であって、
連続する時点(t~t)に、観察光学系(7)の光軸(23)に対して傾いておりかつ互いに離隔された種々異なる被照面(31)が設けられており、前記被照面(31)が、ライン状に配置された複数の感光素子(89)を含む、前記顕微鏡(2)のセンサ(44、45、45a)に結像されており、
前記顕微鏡(2)は、前記観察光学系(7)の前記光軸(23)に対して垂直に配置されている観察面(73a)を再生するプレビュー画像(71)を出力するインタフェース(50)を備えた画像データプロセッサ(49)を有しており、
前記センサ(44、45、45a)は、前記センサ(44、45、45a)の長手方向延在長さで行に平行でありかつストライプ状の少なくとも1つの読出領域(80)を含み、
前記プレビュー画像(71)は、順次に照明される前記被照面(31)の像(46)の、順次に読み出されるストライプ状の複数の読出領域(80)から合成され、
連続する時点(t ~t )に生成されるそれぞれの前記被照面(31)のプレビューストライプ(77)は、ストライプ像(79)として前記センサ(44、45、45a)に結像され、前記ストライプ像(79)は、1つの読出ステップにおいて読み出し可能な読出領域(80)を複数含む、
顕微鏡(2)。
【請求項9】
前記センサ(45、45a)は、読出方向(95)にシリアルに読み出される少なくとも2つの前記読出領域(80)を形成する、複数の感光素子(89)の少なくとも1つのフィールド(97)を有し、少なくとも1つの前記読出領域(80)は、前記センサ(45a)の読出開始部(91)に位置し、
プレビューストライプ(77)の前記像(46)は、前記読出方向(95)に対して垂直に配向されている、
請求項8記載の顕微鏡(2)。
【請求項10】
少なくとも2つのセンサ(44、45、45a)が設けられており、前記少なくとも2つのセンサ(44、45、45a)の読出開始部(91)は、対向して配置されており、かつ、実質的に互いに平行に配向されている、
請求項9記載の顕微鏡(2)。
【請求項11】
前記プレビューストライプ(77)は、少なくとも1つの読出開始部(91)に結像される、
請求項9または10記載の顕微鏡(2)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記センサ(44、45、45a)は、少なくとも1つの前記読出領域(80)の長手方向延在長さ(102)に沿って、かつ/または、前記センサ(44、45、45a)の読出方向(95)に沿ってもしくは反対にスライド可能に配置されている、
請求項8から11までのいずれか1項記載の顕微鏡(2)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記センサ(44、45、45a)は、前記センサ(44、45、45a)の法線ベクトル(74)の周りに、実質的に互いに垂直に配向された少なくとも2つの回動位置に回動可能に配置されている、
請求項8から12までのいずれか1項記載の顕微鏡(2)。
【請求項14】
前記画像データプロセッサ(49)は、歪み補正および/または平均化装置(51)を含んでおり、
前記歪み補正および/または平均化装置(51)により、前記観察光学系(7)の前記光軸(23)に対する、それぞれ前記被照面(31)の傾斜角(27)に依存してかつ/または時間的に順次に照明される被照面(31)間の間隔(75)に依存して、連続する時点(t~t)に画像データ読出装置(47)によって前記センサ(44、45、45a)から読み出したストライプ状の、それぞれのストライプ像(79)の読出領域(80)が、歪み補正かつ/または平均化されて、前記プレビュー画像(71)が形成される、
請求項8から13までのいずれか1項記載の顕微鏡(2)。
【請求項15】
時間的に順次に、観察光学系(7)の光軸(23)に対して斜めに延在しかつ互いに離隔された複数の被照面(31)を形成してセンサ(44、45、45a)に結像する、傾いた被照面(31)を有する顕微鏡(2)用の画像形成装置(55)であって、
ライン状に配置された複数の感光素子(89)を含むセンサ(44、45、45a)と、
前記センサ(44、45、45a)の長手方向延在長さに沿って行に平行に配向されて読み出される、それぞれの前記被照面(31)の像(46)の、ストライプ状の少なくとも1つの読出領域(80)を供給する出力部(53)を備えた画像データ読出装置(47)と、
読み出した前記読出領域(80)から、前記観察光学系(7)の前記光軸(23)に対して垂直に配置された観察面(73a)を再生するプレビュー画像(71)を形成する画像データプロセッサ(49)と、
を有し、
連続する時点(t ~t )に生成されるそれぞれの前記被照面(31)のプレビューストライプ(77)は、ストライプ像(79)として前記センサ(44、45、45a)に結像され、前記ストライプ像(79)は、1つの読出ステップにおいて読み出し可能な読出領域(80)を複数含む、
画像形成装置(55)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾いた被照面を有する顕微鏡を用いて、特に斜面顕微鏡を用いてプレビュー画像を形成する方法に関する。さらに本発明は、顕微鏡、特に斜面顕微鏡と、傾いた被照面を有する顕微鏡用の、特に斜面顕微鏡用の画像形成装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元イメージングのためのスキャン方法は、従来技術から、例えばC. Dunsbyによる"Optically sectioned imaging by oblique plane microscopy"、Opt. Express 16、20306-20316 (2008)または国際公開第2015/109323号(WO 2015/109323 A2)から公知である。斜面顕微鏡は、例えば、傾いた平面を観察する、いわゆる光シート顕微鏡である。さらに「斜面顕微鏡」という呼称には、共に3次元スキャン顕微鏡であるOblique Plane illumination Mikroskope(OPM)もSwept Confocally-Aligned Planar Excitation(SCAPE)顕微鏡も共に含まれる。
【0003】
斜面顕微鏡は、共焦的に配置された平面的な励起もしくは照明で動作し、この平面的な励起もしくは照明は、SCAPE顕微鏡では、試料を通過してスイベル動作でスキャンされるのに対し、OPMでは、平面的な励起は、試料に対して直線的にスキャンされ、例えば、スライド可能なレンズにより、もしくは試料を直線的にスライドさせることにより、スキャンされる。
【0004】
代表的な2つの技術において、第1には、被照面の平面的な照明を実現するために、第2には、同じ光学系を介して、照明される被照面から送出される散乱ビームもしくは蛍光ビームを受光して像検出およびデータ処理に利用するために、開口数(NA)の大きなただ1つの光学系が、例えば、大きなNAを有する対物レンズが使用される。
【0005】
OPMでは、互いに平行な(SCAPE顕微鏡では互いに可能な限りに平行な)それぞれ連続する時点に撮影された、被照面の複数の像から成る画像スタックが形成される。個々の被照面は、照明および照明される被照面の結像に使用される対物レンズの光軸に対して傾いている。
【0006】
種々異なる被照面の位置は、スキャン部材、例えば、好ましくはモータ駆動されるスライドテーブルにより、レンズもしくはレンズ装置または試料がスライドされる(OPM)か、またはスキャンミラー(SCAPE)が傾けられることにより、変化させられる。スキャン部材により、照明ビーム路も、観察ビーム路も共に、検査される試料に対してスライドもしくは傾けられる。
【0007】
斜面顕微鏡のユーザが、検査される試料のプレビュー画像をリアルタイムに得ようとする場合、単に、試料において個々に照明された被照面の像を評価して再生するか、または撮影された画像スタック全体からプレビュー画像を形成することにより、試料における配向のために、このプレビュー画像を得ることができる。
【0008】
第1の手法の欠点は、プレビュー画像が、対物レンズの光軸に対して傾いていることであり、これにより、ユーザには、試料における配向が困難になる。
【0009】
第2のアプローチの欠点は、プレビュー画像をリアルタイムに提供できないことであり、ひいては試料の移動にユーザが即時に追従できないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、斜面顕微鏡におけるプレビュー画像の形成をリアルタイムに可能にする、方法、顕微鏡および画像形成装置を提供することであり、ここでは、プレビュー画像に再生される平面が、試料の境界面に対して平行に、もしくは観察光学系の光軸に対して垂直に配向されるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による方法は、連続する時点に、観察光学系の光軸に対して傾いておりかつ互いに離隔された種々異なる被照面を照明し、ライン状に配置された複数の感光素子を有するセンサに結像し、センサの長手方向延在長さで行に平行に配向されておりかつ1つの読出ステップにおいて、読み出し可能な、センサの、ストライプ状のそれぞれ少なくとも1つの読出領域を読み出し、順次に読み出される読出領域から、観察光学系の光軸に対して垂直に配置されている観察面を再生するプレビュー画像を形成することにより、上記の課題を解決する。
【0012】
冒頭に述べた本発明による顕微鏡は、連続する時点に、観察光学系の光軸に対して傾いておりかつ互いに離隔された種々異なる被照面が設けられており、被照面が、ライン状に配置された複数の感光素子を含む、顕微鏡のセンサに結像されており、顕微鏡が、観察光学系の光軸に対して垂直に配置されている観察面を再生するプレビュー画像を出力するインタフェースを備えた画像データプロセッサを有しており、センサが、センサの長手方向延在長さで行に平行に配向されておりかつ1つの読出ステップにおいて読み出し可能な、ストライプ状の少なくとも1つの読出領域を含み、プレビュー画像が、順次に照明される被照面の像の、順次に読み出されるストライプ状の複数の読出領域から合成されることにより、上記の課題を解決する。
【0013】
時間的に順次に、観察光学系の光軸に対して斜めに延在しかつ互いに離隔された複数の被照面を照明してセンサに結像する、例えば3次元スキャン顕微鏡またはSCAPE顕微鏡またはオブリークプレーン顕微鏡のような、傾いた被照面を有する顕微鏡用の、特に斜面顕微鏡用の、冒頭に述べた本発明による画像形成装置は、この画像形成装置が、ライン状に配置された複数の感光素子を含むセンサと、センサの長手方向延在長さに沿って行に平行に配向されて読み出される、それぞれの被照面の像の、ストライプ状の少なくとも1つの読出領域を供給する出力部を備えた画像データ読出装置と、読み出した読出領域から、観察光学系の光軸に対して垂直に配置された観察面を再生するプレビュー画像を形成する画像データプロセッサと、を有することにより、上記の課題を解決する。
【0014】
本発明による方法および顕微鏡ならびに本発明による画像形成装置が有する利点は、観察光学系の光軸に対して垂直に配向されている、検査対象の試料のプレビュー画像が提供されることである。このような配向は、ユーザにとって通例の顕微鏡画像の配向に対応し、したがって試料における配向が格段に容易になる。さらに本発明による方法および本発明による顕微鏡ならびに画像形成装置は、プレビュー画像をリアルタイムに生成して表示することができ、これにより、試料の迅速な配向が可能になるという利点を有する。これが可能であるのは、本発明では、従来技術のように平面センサ全体が読み出されるのではなく、1つの読出ステップにおいて読み出すことができる少なくとも1つの読出領域だけが読み出されるからである。このような読出領域は、使用されるセンサと、1つの読出ステップにおいて読み出されるその最小単位と、によって実現される。
【0015】
読出領域のこの配向によって保証されるのは、この読出領域が、プレビュー画像用にも読み出しできることである。これによって達成可能な速度の利点により、プレビュー画像をリアルタイムに形成することができる。
【0016】
リアルタイムにプレビュー画像を形成することのさらなる利点は、画像スタック全体からプレビュー画像を形成するのと比較して、いわゆるローリングシャッター作用を最小化するもしくは抑止できることである。この作用は、特に移動するシャッターの、すなわち移動する絞り(これは、例えば、斜面顕微鏡において、スキャン部材によって移動する被照面に対応する)の移動方向に対して垂直に、対象体が移動するか移動している場合に発生することがあり、撮影される画像の歪みに結び付き得る。
【0017】
平面センサを読み出すのに必要な時間は、読み出される行の個数と共に線形に増大減少されるのに対し、読み出される列の個数は、読み出し時間に影響を及ぼさない。センサの長手方向延在長さに沿って行に平行に配向された、ストライプ状のそれぞれ少なくとも1つの読出領域だけを読み出すことにより、列全体を読み出すのに比べて速度上の利点が得られ、この速度上の利点により、高速の固有の動的変化を有する、検査される試料のプレビュー画像が、このような歪みを有しないことが保証される。
【0018】
本発明による解決手段は、それぞれ、それ自体有利でありかつ任意に互いに組み合わせることが可能な以下の複数の実施形態により、さらに改善することが可能である。
【0019】
本発明による方法によれば、ラインセンサまたは一部の領域が読み出される平面センサであってよいセンサにおいて、好ましくはそれぞれ少なくとも1つの読出領域が読み出される。したがって読出領域は、1つの読出ステップにおいて読み出し可能な、対応するセンサの最小単位と理解される。読出領域は、ラインセンサでは、行全体を含んでいてよく、部分的に読み出される平面センサでは、複数の行を含む領域を有していてよい。したがってそれぞれの読出ステップにより、好ましくは、対応するセンサの少なくとも1つの行全体を、より正確にいうと、照明される被照面の像によって生成される電荷分布の少なくとも1つの行全体を読み出し、例えば、さらなる処理のためにコンバータに転送することが可能である。
【0020】
読出領域は、直接隣り合いかつ接触し合う複数の感光素子から成るデータフィールドとみなすことができる。1つのラインセンサのデータフィールドは、行全体または関連する複数の感光素子を含むことができ、一部の領域が読み出される平面センサのデータフィールドは、1つまたは複数の行を含み、好ましくは、複数の列を部分的にカバーすることができる。
【0021】
ストライプ状の読出領域は、その長手方向延在長さで、好ましくは、行に平行に配向されている。すなわち、このストライプ状の読出領域は、ストライプの形態の2次元幾何学形状を有しており、このストライプは、例えば、ラインセンサの行に平行であるかもしくは平面センサの行に平行に配向されている。
【0022】
本発明による方法は、連続する時点に1つのセンサに結像される複数の被照面を結像することに基づいている。それぞれの被照面は、好ましくは、対応する斜面顕微鏡の光学的な構造にしたがい、適切な照明によって照明され、観察光学系によって結像され、垂直照明ユニットを用いて平坦に、すなわち平面センサ上のまっすぐな平面に結像される。
【0023】
センサが、傾いた中間画像を立ち上がらせることなく、被照面を結像することができる別のセンサであることも可能である。このためには、例えばビームスプリッタにより、観察ビーム路に沿って伝搬する光の一部をこの別のセンサに偏向することができる。このビームスプリッタもしくはセンサは、観察ビーム路に旋回して挿入可能に形成することが可能である。したがって本発明による方法、顕微鏡および本発明による画像形成装置では、検出面のストライプにプレビューストライプを投影することができる。
【0024】
それぞれ観察光学系の光軸に対して傾いておりかつ互いに離隔された種々異なる被照面を連続する時点に照明するため、スキャン部材、例えばスキャンミラーまたはスライドテーブルを使用することができる。好ましくは、それぞれの照明される被照面は、センサ上に結像される。
【0025】
それぞれ結像された被照面は、像の輝度分布に対応して、特に複数の感光素子、例えばピクセルから成る、センサの面に電荷分布を生成する。しかしながら本発明によれば、この電荷分布をすべて読み出す必要はなく、読出領域の電荷分布だけがセンサから読み出される。読み出される読出領域は、照明される被照面の像のストライプ状の部分の輝度分布に対応する。
【0026】
本発明による方法の別の一実施形態では、連続する時点に生成されるそれぞれの被照面のプレビューストライプをストライプ像としてセンサ上に結像し、このストライプ像が、1つの読出ステップにおいて読み出し可能な少なくとも1つの読出領域を含む。ストライプ像は、特に、整数個の読出領域に対応し得る。
【0027】
本発明による方法、顕微鏡および本発明による画像形成装置によれば、異なる時点に照明される複数の被照面からプレビュー画像を形成するため、それぞれ、これらの被照面の1つのプレビューストライプだけを使用する。それぞれのプレビューストライプは、光学的に選択されるのでなく、すなわち被照面全体は引き続いて照明されているのであり、選択を介して、特にストライプ像の大きさが定められる。
【0028】
被照面を照明する間、ストライプ像によって覆われた、センサの領域だけが読み出される。このためには、ストライプ像の読出領域の個数にしたがい、対応する個数の読出ステップが必要である。
【0029】
本発明による方法の別の一実施形態では、少なくとも1つの読出領域を、それぞれ、読出過程の開始時にセンサから読み出す。このようにすることの利点は、ストライプ像の読み出しを行った後、読出過程を停止もしくは中断でき、これによって時間が節約されることである。平面センサが、例えば、任意の個数の感光ピクセルを有する約1000個の行を含み、読出領域が、行全体を含み、ストライプ像が10ピクセルだけしか含まない場合には、最初の10行だけを読み出せばよいとき、読出速度を、約100倍に増大させることができる。一般に、1000行のうちのセンサの最後の10行も読み出される場合、もしくはセンサの最後の10行だけが読み出される場合、読出速度は、センサ全体を読み出すのと比較して増大しない。別の複数の実施形態では、読出領域は、複数の行を含んでいてよく、これにより、例示的に挙げた10行を読み出すために、10個よりも少ない読出ステップしか必要でないことがあり得る。読出ステップの個数は、1つの読出ステップにおいて読出可能な最小の、センサの単位の大きさに依存する。
【0030】
平面センサは、好ましくは、行パラメタおよび列パラメタによってアドレッシング可能な複数の感光ピクセル、例えばフォトダイオードから成る2次元構造を有する。平面センサは、好ましくは、この平面センサの列に沿って配向され、読出終了部から読出開始部へと向いている読出方向を有する。このように定められる読出方向は、個々の感光素子において生成される電荷のシフトの方向に依拠しており、これにより、この読出方向を、物理的な読出方向と理解することができる。言い換えると、このような平面センサは、読出開始部に位置する行からスタートして読み出され、読出終了部に位置する、この平面センサの行は、読出過程の最後になってはじめて読み出される。
【0031】
ラインセンサは、複数の感光ピクセルから成る1つの行だけしか含まないため、ラインセンサは、感光ピクセルをアドレッシングするために1つの列パラメタしか使用しない。このようなラインセンサでは、一般に、この行の生成される電荷分布が、1つの読出ステップにおいて完全に読み出される。
【0032】
センサは、好ましくは、CCDセンサおよび/またはCMOSセンサを有する。特に、センサは、平面センサであってよい。
【0033】
本発明による方法では、それぞれの被照面のプレビューストライプは、実質的に行に平行に配向されて結像されることが可能であり、プレビューストライプは、好ましくは、横方向の長さが、それぞれの観察面によって、実質的に対称に切断されてよい。このようにすることの利点は、平面センサの電荷分布の読み出されるストライプが、観察光学系の光軸に対して垂直に位置する観察面のすぐ近くに配置されている、照明される被照面の部分に対応することである。
【0034】
本発明による方法の別の一実施形態では、照明方向に沿って延在し、したがって光軸に対して傾いている、照明される被照面のストライプ状の部分は、平面センサの列に沿って結像される。このようにすることの利点は、観察光学系の光軸に沿ってもしくはこれとは反対にプレビュー面から離れて配置されている、試料の領域が、ラインセンサの読み出されない領域または一部の領域が読み出される平面センサの読み出されない領域に結像されることである。
【0035】
本発明による方法の別の一実施形態では、それぞれの被照面のプレビューストライプを、センサの読出開始部に結像する。このようにすることの利点は、プレビュー画像に関連する画像情報が、読出過程の開始時に読み出される、センサの領域に結像され、したがってプレビュー画像の形成が加速されることである。プレビューストライプは、それぞれの照明される被照面の一部分と理解することができる。プレビューストライプは、実質的に、平面センサの読出開始部において観察される行の個数によって定められる。
【0036】
ラインセンサでは、存在する行だけを読み出すことができるため、これは、読出開始部に対応する。
【0037】
例えば、平面センサの読出開始部の最初の10行を考察し、これらの行が、例えば、5~6μmの大きさを有する場合、観察光学系による約10~20倍の倍率では、プレビューストライプは、約3~6μmの幅を有する。しかしながら、実質的に被照面全体が平面センサに結像されるため、プレビューストライプは、光学的に選択されるのではなく、平面センサの限られた個数の行が読み出されることによって選択される。
【0038】
したがってプレビューストライプの像、すなわちストライプ像が、好ましくは、センサの読出開始部に位置し、さらに行に平行に配向されているため、プレビュー画像に関連する画像情報は、センサ全体を読み出さなくても、読出過程の開始時に極めて迅速に読み出すことができる。
【0039】
センサの読出開始部は、特にその1つの行であってよい。したがって読出過程のスタート時には、好ましくは、読出開始部の最も近くに位置する、センサの行全体を1つの読出ステップにおいて読み出すことができる。したがって輝度分布に対応する荷電粒子分布の形態で読出開始部に位置する画像情報は、センサの読み出し時に最初に読み出される。
【0040】
本発明による方法の別の一実施形態では、ストライプは、別々に読み出し可能な少なくとも2つのセンサにわたって延在している。このようにすることの利点は、画像情報を同時に、少なくとも2つの別々のセンサから読み出すことができ、これにより、読出時間が短くなることである。好ましくは、少なくとも2つの別々のセンサは、部分的に読み出される複数の平面センサとして構成される。
【0041】
本発明による方法の別の一実施形態では、それぞれのストライプ像の順次に読み出される読出領域を、観察光学系の光軸に対するそれぞれの被照面の傾斜角に依存し、かつ/または異なる時点に照明される被照面間の間隔に依存して、歪み補正し(entscheren)かつ/または平均化し、これにより、プレビュー画像を形成する。歪み補正(Entscheren)では、元々矩形をしていた領域の、平行四辺形状にずらされた描画の歪みが補正され、これにより、再度、元の矩形の形状が得られる。
【0042】
異なる時点に読み出される読出領域は、好ましくは、プレビューストライプのスタックに対応し、個々のプレビューストライプは、それぞれ互いに離隔されており、観察光学系の光軸に対して傾いている。読み出される複数のストライプは、観察面を含む体積体に対応し、この体積体は、実質的に観察光学系の光軸に対して垂直に延在しており、かつこの光軸に沿って、数マイクロメートルの範囲内に入り得るわずかな長さを有する。
【0043】
したがって観察面の歪みのない2次元像を得るためには、部分的に重なり合うプレビューストライプを、特にこれらから合成される体積体を歪み補正して、光軸に沿って平均化する必要がある。これにより、観察光学系の対物レンズの光軸に沿った体積体の仮想的な投影が生成される。
【0044】
本発明による方法の別の一実施形態では、センサに対して被照面の像の位置を変化させるために、センサをスライドさせる。センサを移動することにより、センサによって読み出される読出領域を維持しながら、被照面の像の別の部分、すなわち別のストライプ像だけが読み出され、より正確にいうと、対応する読出領域の電荷分布が読み出される。
【0045】
行に平行な方向に対して垂直にセンサをスライドさせる場合、観察光学系の光軸に沿って、再生される観察面をスライドさせることができる。これに対し、行に平行な方向に沿ったセンサの移動により、観察光学系との距離を同じに保ったままで、観察面の画像部分を変化させることができる。
【0046】
センサのスライドは、好ましくは、その平面内で行うことが可能である。その法線ベクトルに沿ってもしくはこれとは反対にセンサを移動することにより、それぞれの被照面の像のフォーカシングが、すなわちセンサ上のストライプ像のフォーカシングが可能である。
【0047】
さらに、顕微鏡に対して検査対象の試料をスライドさせることにより、プレビュー画像によって再生される被照面の位置を変化させることも同様に可能である。
【0048】
冒頭で述べた本発明による顕微鏡は、有利な一実施形態によれば、さらに、被照面内にある面照明を形成する照明装置を有していてよい。この照明装置およびスキャン部材、例えばスキャンミラーまたはスライドテーブルにより、顕微鏡において、連続する時点に種々異なる被照面を照明することができる。言い換えると、異なる時点に、1つの試料の異なる領域が、照明装置によって照明され、これらの領域は、2次元で、すなわち平面的に照明される。照明される被照面の形状に起因して、光シートという語を使用することができ、試料におけるそれぞれの光シートの位置は、時間的に、特にスキャン部材に依存して変化する。
【0049】
それぞれの被照面は、照明装置により、観察光学系を通して照明され、観察光学系は、同時に、被照面から送出される散乱ビームもしくは蛍光ビームをセンサ上に結像する。
【0050】
画像データプロセッサは、画像データ読出ユニットと、センサの読み出した電荷分布を一時記憶するための記憶装置と、を有していてよい。
【0051】
顕微鏡の照明光学系は、観察光学系の光軸に対して傾いた被照面の散乱ビームまたは蛍光ビームを、ラインセンサまたは一部の領域が読み出される平面センサであってよいセンサ上に結像する。
【0052】
被照面の照明方向に対して垂直に配向されるプレビューストライプは、行に平行に配向されるストライプとして結像されることが可能である。すでに上で説明したように、プレビューストライプは、センサから読み出される、少なくとも1つの読出領域を含むストライプ像によって定められる。
【0053】
本発明による顕微鏡の別の一実施形態において、平面センサは、読出方向にシリアルに読み出される少なくとも2つの読出領域を形成する、複数の感光素子の少なくとも1つのフィールドを有し、少なくとも1つの読出領域が、センサの読出開始部に位置し、プレビューストライプの像が、読出方向に対して垂直に配向されている。読出方向に対して垂直にプレビューストライプを結像することの利点は、プレビューストライプによって発生する、センサにおける電荷分布を、すなわち複数の感光素子のフィールドにおける電荷分布を、プレビューストライプの像もしくはストライプ像の比較的幅の狭い拡がりに沿って読み出せることである。したがって、読出方向に沿ってストライプ像を配向するのに比べて、読出過程が格段に加速される。読出方向は、読出終了部から読出開始部への物理的な読出方向として配向されており、それぞれのセンサにおいて生成される電荷分布のシフト方向に対応する。
【0054】
ラインセンサも、読出方向にシリアルに読み出される感光素子のフィールドを有しているが、これは1次元的である。ラインセンサには、個別の読出ステップにおいて読み出される1つの行だけしか含まれていないため、このようなラインセンサに対して読み出し方向を設定することはできない。
【0055】
ラインセンサの感光素子は、行に対して垂直な方向に拡がりを有しているため、ラインセンサに結像されるプレビューストライプの像は、感光素子の幅と、ラインセンサの行の長さと、を有する。
【0056】
好ましくは、プレビューストライプは、センサの読出開始部に結像されるため、これによって発生する、センサにおける電荷分布は、読出過程の開始時に読み出すことができ、その際には全読出過程を実行する必要はない。
【0057】
本発明による顕微鏡の別の一実施形態では、読出開始部が、対向して配置されており、かつ実質的に互いに平行に配向されている、少なくとも2つのセンサが設けられている。2つのセンサを、特に複数の平面センサをこのように配置することの利点は、読出過程を実質的に2倍は加速できることである。複数の平面センサは、構造上は1つにまとめて構成し、特に部分的に読み出される平面センサとして構成することが可能である。同様に、読出開始部が、行の配向方向に沿って互いに接しているかもしくは対向している、3、4またはそれ以上の平面センサを設けることも可能である。
【0058】
本発明による顕微鏡の別の一実施形態では、プレビューストライプは、少なくとも1つの読出開始部に結像される。このようにすることの利点は、センサを完全に読み出さなくても、プレビューストライプの像によって生成されるセンサの電荷分布を読み出すことができることである。
【0059】
好ましくは、プレビューストライプは、少なくとも2つまたはそれ以上のセンサの、特に平面センサの読出開始部に対称に結像され、これにより、プレビューストライプは、これらのセンサに、特にそれらの読出開始部に結像され、プレビューストライプの輝度に対応する電荷分布が生成される。プレビューストライプの像は、少なくとも1つの読出領域を含むストライプ像に対応する。
【0060】
さらに、それぞれの少なくとも2つのセンサは、別の読出モジュールを有していてよく、これにより、これらのセンサを、それらのそれぞれの読出方向に沿って互いに同時に読み出すことが可能である。
【0061】
少なくとも2つのセンサは、ライン状の読出開始部を有してよく、少なくとも2つのセンサに、特に平面センサに結像されるプレビューストライプは、好ましくは、行に平行に配向されている。
【0062】
プレビュー画像を形成するために個々の平面センサの10行が読み出された上の例を用いる場合、2つの平面センサを有する、顕微鏡の実施形態において、プレビュー画像の特性を維持して、平面センサのそれぞれの読出開始部に位置するそれぞれ5行を読み出すことができ、ここでは、2つの平面センサのそれぞれ5行を並列に読み出すことにより、これに必要な時間は実質的に半分になる。
【0063】
本発明による顕微鏡の別の一実施形態において、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの読出領域の長手方向延在長さに沿って、かつ/またはセンサの読出方向に沿ってもしくは反対にスライド可能に配置されている。このようにすることの利点は、検査対象の試料をスライドさせることなく、観察光学系の光軸に対して垂直に配置されている観察面を光軸に沿ってスライドさせることができることである。
【0064】
センサは、特に、被照面の像の結像面において、行に平行な方向に対して垂直にスライド可能であってよい。
【0065】
センサの読出方向に沿ってもしくは反対にセンサをスライドさせることにより、本発明による顕微鏡、方法もしくは画像形成装置において、それぞれの被照面の像の、読み出される部分を変化させることができる。この部分は、それぞれのセンサの移動により、異なる時点に照明されるすべての被照面について同じになるため、観察面は、観察光学系の光軸に沿って単に平行にスライドされる。
【0066】
さらに、少なくとも1つのセンサは、行に平行な方向に対して平行に、もしくはその読出方向に対して垂直にスライド可能に配置してもよい。このようなスライドは、観察される画像領域をスライドさせるために利用可能である。
【0067】
センサ上の被照面の像のフォーカシングを再調整するため、センサの法線ベクトルに沿って少なくとも1つのセンサをスライドさせることが可能である。
【0068】
本発明による顕微鏡の別の一実施形態では、少なくとも1つのセンサが、その法線ベクトルの周りに、実質的に互いに垂直に配向された少なくとも2つの回動位置に回動可能に配置されている。このようにすることの利点は、この顕微鏡により、観察光学系の光軸に対して垂直に位置する被照面を再生するプレビュー画像が形成されるか、または被照面の照明の伝搬方向と光軸とによって張られる垂直な観察面を再生することができるプレビュー画像が形成されることである。したがって、検査対象の試料の水平方向の断面図も垂直方向の断面図も共にリアルタイムに容易に生成することができる。
【0069】
ラインセンサは、確かに1次元的なセンサとみなされるが、その感光素子は平面的に拡がっていることに起因して、法線ベクトルを定めることが可能な表面を有する。
【0070】
本発明による顕微鏡の別の一実施形態では、画像データプロセッサが、歪み補正および/または平均化装置を含んでおり、この歪み補正および/または平均化装置により、観察光学系の光軸に対する、それぞれの被照面の傾斜角に依存して、かつ/または時間的に順次に照明される被照面間の間隔に依存して、連続する時点に画像データ読出装置によって読み出したストライプ状の、それぞれのストライプ像の読出領域が、歪み補正かつ/または平均化されて、プレビュー画像が形成される。すでに上で本発明の方法の一環として説明したように、この実施形態は、傾いたかつ/または互いに離隔されるストライプから合成されるプレビュー体積体が、変形なしに、例えば歪みなしに2次元のプレビュー画像に投影することができる、という利点を有する。
【0071】
歪み補正および/または平均化装置は、適切な平均化を行う複数のサブアセンブリを含んでいてよい。これは、例えば、平均値装置または積分器によって行うことができる。
【0072】
冒頭に述べた、本発明による画像形成装置は、傾いた被照面を有する顕微鏡用の付加的な構成部分もしくは付加的なアセンブリと理解することができる。画像形成装置は、例えば、傾いた被照面を有する既存の顕微鏡に付加モジュールまたはアップグレードモジュールとして組み込むことが可能である。画像形成装置は、少なくとも1つの読出領域を含むストライプ像だけを読み出し、ここでこのストライプ像は、それぞれの被照面内にありかつ被照面の照明方向に対して垂直に配向されたプレビューストライプに対応する。読み出されたストライプ像は、例えば全体が読み出されるセンサによって行われる場合よりも格段に高い速度で読み出されて供給されることが可能である。
【0073】
以下では、添付の図面に示した、本発明の種々異なる実施形態に基づき、本発明を詳しく説明する。これらの実施形態の複数の技術的な特徴は、任意に組み合わせることができ、かつ/または、取り除いた技術的な特徴によって生じる技術的な効果が重要でない場合には、これらを取り除くことができる。
【0074】
同じ技術的な特徴、もしくは技術的に同じ作用を有する技術的な特徴には、同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】斜面顕微鏡の概略図である。
図2】3つの被照面の詳細図である。
図3】3つのプレビューストライプの詳細図である。
図4】複数の被照面の詳細図である。
図5】複数のプレビューストライプの詳細図である。
図6】平面センサの第1実施形態の概略平面図である。
図7】平面センサの第2実施形態の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1には、3次元スキャン顕微鏡1として構成された顕微鏡2の、特にSCAPE顕微鏡3の概略図が示されている。この顕微鏡は、照明装置5と、観察光学系7と、スキャンミラー9と、ダイクロイックミラー11と、結像光学系13と、を有する。図示したSCAPE顕微鏡3は、斜面顕微鏡2aの特別な一実施形態と理解される。
【0077】
以下では、SCAPE顕微鏡3に基づいて本発明を説明する。この説明は、本発明を明示的にSCAPE顕微鏡3に限定するものではなく、任意の形態の斜面顕微鏡2aに関連するものであり、本発明は、単に代表的に、SCAPE顕微鏡3に基づいて説明される。
【0078】
照明装置5は、照明ビーム路17に沿って進行しかつダイクロイックミラー11で偏向される光15を放射する。照明ビーム路17は、ダイクロイックミラー11からさらにスキャンミラー9に進行し、スキャンミラー9は、照明ビーム路17の光15を、拡大に使用される望遠鏡19の方向に偏向する。これについて以下で説明する。
【0079】
照明ビーム路17は、観察光学系7を離れる際に収束され、観察光学系7によって焦点領域21において集束される。照明ビーム路17は、非近軸に望遠鏡19に供給され、観察光学系7内でも引き続いて非近軸に進行する。これにより、結果的に、直線の形態で描画されている焦点領域21が、観察光学系7の光軸23に対して傾いていることになる。
【0080】
図1に示したSCAPE顕微鏡3において、焦点領域21は、2次元的である、すなわち、この焦点領域21は、図平面に入り込むもしくはさらにこの図平面から突き出るように延在し、光シート25を形成する。光シート25は、光軸23に対して、傾斜角27で傾いておりかつ概略的に示した試料29内にある。
【0081】
したがって光シート25は、照明される被照面31を形成し、この被照面31を起点として散乱ビームまたは蛍光ビーム33が、フロントレンズ35aによって定められる、観察光学系7の瞳35に入射する。
【0082】
散乱ビームまたは蛍光ビーム33は、観察光学系7を通過して、望遠鏡19内に第1中間画像37を形成し、第1中間画像37は、望遠鏡19および別のレンズ41により、別のレンズ41の背後で第2中間画像39として結像される。
【0083】
第1中間画像37も第2中間画像39も共に、結像光学系のそれぞれの光軸に対して傾いている。
【0084】
図1にさらに示されているのは、結像光学系13が、別のレンズ41(別のレンズ41は、観察光学系7の光学素子とみなすことができる)の光軸23に対して傾いており、これにより、結像光学系13が、被照面31の第2中間画像39を、結像光学系13の光軸23に対して垂直に配向されている焦平面43に集束させることである。
【0085】
焦平面43では、被照面31が、少なくとも1つのラインセンサ44(図示せず)または平面センサ45に平坦に結像される。平面センサ45は、例えば、2次元CCDセンサまたはCMOSセンサである。したがって平面センサ45上には、被照面31の像46が存在する。
【0086】
図1にはさらに、概略的に示した画像データ読出装置47と、画像データプロセッサ49と、が示されており、画像データプロセッサ49は、画像データ読出装置47に接続されており、歪み補正および/または平均化装置51を含み、インタフェース50を提供する。
【0087】
画像データ読出装置47は、さらに出力部53を有しており、図1に示した実施形態では、画像形成装置55を成している。
【0088】
図1にさらに示されているのは、スキャンミラー9を傾斜方向57に沿って傾けることができ、これにより、照明ビーム路が、観察光学系7においてスライド方向59に沿ってスライドされることである。スキャンミラーを傾けることにより、被照面31もスライド方向59に沿ってスライドする。
【0089】
斜面顕微鏡2aの、例えばオブリークプレーン顕微鏡の図示しない実施形態では、スライドテーブルのようなスライド部材(両方とも図示せず)を用いて試料内で被照面31をスライドさせることができる。
【0090】
被照面31のスライドは、SCAPE顕微鏡3において、結果的に、望遠鏡19内に形成される、被照面31の第1中間画像37も同様にスライド方向59に沿ってスライドさせることになる。散乱ビームまたは蛍光ビーム33の結像ビーム路61も同様に、傾いたスキャンミラー9に当たるため、結像ビーム路61のオフセットもスキャンミラー9によって再度補償され、これにより、結像ビーム路61aは、静止しており、スキャンミラー9の移動の影響を受けない。したがって、試料29において種々異なる位置を取り得る被照面31は、静止している結像ビーム路61aにより、静止して、すなわち平面センサ45上の焦平面43においてつねに同じ位置において結像される。
【0091】
オブリークプレーン顕微鏡として構成された斜面顕微鏡2aでは、第1中間画像37は、静止している。
【0092】
図1にさらに示されているのは、説明のために、異なる3つの座標系が使用されていることである。試料座標系63は、試料座標zおよびxを有しており、試料座標zは、観察光学系7の光軸23に対して平行に延在している。
【0093】
さらに、照明座標x’およびz’を有する照明座標系65が示されている。センサ座標系67は、センサ座標z’’だけで示されている。
【0094】
すべての座標系63、65、67は、別の座標系に移行する際に変換する必要のないy座標を共通に有する。
【0095】
照明座標系z’に沿って照明方向101が延在しており、照明方向101に沿って被照面31が照明される。
【0096】
図1ではSCAPE顕微鏡3が、時点tにおいて示されており、すなわち、静止している図において、画像情報だけが、書き込まれた被照面31から平面センサ45上に結像され、画像データプロセッサ49により、表示装置69を用いてプレビュー画像71として表示可能である。
【0097】
しかしながら図示したプレビュー画像71は、図示した被照面31と一致する観察面73に対応する。観察面73は、光軸23に対して傾斜角27で傾いており、この傾斜により、ユーザが、試料29において配向するのを困難にしている。
【0098】
図2には、観察光学系7の瞳35およびフロントレンズ35aだけが示された、SCAPE顕微鏡3の詳細が示されている。
【0099】
さらに図2には、時点t、tおよびtに照明される被照面31a、31b、31cが示されている。光シート25a~25cは、被照面31a~31cに対応し、互いに所定の間隔75を有しており、実質的に互いに平行に配向されている。すなわち、図示した複数の被照面31は、それぞれ、光軸23に対して傾斜角27で傾いている。
【0100】
図2にはさらに、光軸23に対して垂直に配向されており、かつ試料29におけるユーザの容易な配向を可能にする観察面73aが示されている。この好ましい観察面73aは、試料座標xおよびy座標によって張られる。観察面73aは、この上に垂直に立ちかつ光軸23に対して平行に配向されている法線ベクトル74を有する。
【0101】
図3には、図2と同じ状況が図示されており、ここでは時点t、tおよびtに照明されるプレビューストライプ77a、77b、77cだけが示されている。
【0102】
図3に示されているプレビューストライプ77a~77cは、それぞれの被照面31のストライプ80aとして、もしくはストライプ状の部分79aとして理解され、このことは、この被照面31cおよびこのプレビューストライプ77cだけの斜視図を有するプレビューストライプ77cの例で示されている。この斜視図を説明するため、被照面31cのための照明座標系65が書き込まれている。
【0103】
図3に示した状況については、図6についての説明において再度述べる。
【0104】
図4には、連続した時点t~t16に照明される複数の被照面31が示されている。被照面31は、照明座標z’およびy座標に沿って延在している。同様に、試料座標xおよびy座標に沿って延在する観察面73aが書き込まれている。
【0105】
図示した観察面73aは、ユーザにとって、取り扱いが最も簡単な観察面を表している。というのは、観察面73aは、観察光学系7の光軸23に対して垂直に配向されているからである。
【0106】
したがって観察面73a内にあるプレビュー画像71を形成するために必要であるのは、複数の被照面31から輝度分布81の形態の画像情報を合成することであり、その際には観察面73aの近傍の輝度分布81だけが使用される。このような状況は、複数のプレビューストライプ77が示されている図5に描画されており、これらのプレビューストライプ77は、それぞれ、観察面73aによって対称に切断されている。
【0107】
したがって試料座標zに沿った複数のプレビューストライプ77の個々の輝度分布81の平均化83により、プレビュー画像71を形成することができる。
【0108】
図5において単に例示的に、プレビュー画像71の形成が示されている。これは、試料29の光路において行われるのではなく、画像データプロセッサ49において、プレビューストライプ77の相互の間隔75と、プレビューストライプ77の傾斜角27と、を考慮して行われる(図1を参照されたい)。
【0109】
図6には、平面センサ45の第1実施形態が平面図で示されている。平面センサ45は、行85および列87を構成する複数の感光素子89を含み、一部の行が読み出される平面センサ45aである。
【0110】
行85は、y座標に沿って配向されているのに対し、列87は、センサ座標z’’に沿って配向されている。
【0111】
図示した平面センサ45は、読出方向95を定める読出開始部91および読出終了部93を有する。これにより、1つの読出過程において、感光素子89aが、この読出過程の開始時に読み出されるのに対し、感光素子89bが、この読出過程の終了時に読み出されることになる。
【0112】
図示した平面センサ45は、部分的に読み出される平面センサ45aであるため、1つの読出ステップにおいて、それぞれ1つの読出領域80が読み出され、これにより、感光素子89cは、感光素子89aと同時に読み出される。図6に示した平面センサ45の実施形態の読出領域80は、1つの行85を含み、長手方向延在長さ102で延在している。
【0113】
平面センサ45の別の実施形態では、読出領域80は、その全長に沿ったもしくは部分的な複数の行を含んでいてよい。複数の感光素子89は、入射光によって荷電粒子分布98が生成されるフィールド97を形成する。この荷電粒子分布98は、読出方向95に沿って読み出す際に読出開始部91にシフトされる。したがって読出方向95は、荷電粒子分布98のシフトの物理的な読出方向と理解することができる。
【0114】
読出過程を観察すると、このようなシリアルの、すなわち、行85aで開始され、行85bおよび行85cが続く順次の読出過程では、それぞれ1つの読出領域80が、すなわち、行全体85が、部分的に読み出される平面センサ45aから読み出される。行85cを読み出した後にこの読出過程が停止すると、行85a~85cは、ストライプ像79を定め、すなわち、それぞれの被照面31のプレビューストライプ77の像46を定める(図示せず)。図6に示したストライプ像79は、3つの読出領域80を含んでいる。
【0115】
したがって平面センサ45上のストライプ像79は、対応する被照面31のストライプ状の部分79aに対応する。被照面31におけるこれらのストライプ状の部分79aは、図3および図5において、プレビューストライプ77、77a、77b、77cとして描画されており、またこのように称されている。ここで再度、言及したいのは、被照面31におけるストライプ状の部分79aの選択は、所定数の被照面80を含む、平面センサ45のストライプ像79を読み出すことによって、すなわち、平面センサ45によって行われ、対応する被照面31の照明を限定することによって行われないことである。
【0116】
図6に示されたストライプ像79は、例えば、時点tに撮影され、したがって、ストライプ状の部分79の像、すなわち図3のプレビューストライプ77cに対応する。
【0117】
図7には、部分的に読み出される2つの平面センサ45aを含む、平面センサ45の第2実施形態が示されている。
【0118】
部分的に読み出される2つの平面センサ45aは、読出終了部93および読出開始部91を有しており、読出開始部91は、隣り合ってかつ互いに平行に配置されている。したがって部分的に読み出される2つの平面センサ45aの2つの読出方向95は、隣り合って配置されている2つの読出開始部91の方を向いて逆向きになっている。
【0119】
理想的にはプレビューストライプ77の像46は、プレビューストライプ77が、部分的に読み出される2つの平面センサ45aに対称に結像されかつ部分的に読み出されるそれぞれの平面センサ45aのライン状の読出開始部91に沿って配向されるように、図7に示した平面センサ45に結像される。このようなストライプ像79は、図7に書き込まれており、ストライプ像79は、第1半分部分79aおよび第2半分部分79bを有しており、これらの部分は、読出過程の際に、部分的に読み出されるそれぞれの平面センサ45aによって同時に読み出される。
【0120】
図7に示した実施形態では、ストライプ像79の第1半分部分79aも第2半分部分79bも共にそれぞれ2つの読出領域80を有しており、これにより、図示したストライプ像79を読み出すために2つの読出ステップが必要である。
【0121】
同時の読み出しに起因して、図7の平面センサ45の第2実施形態により、ストライプ像79は、図6の平面センサ45の第1実施形態の同じストライプ像79の約2倍の速さで読み出される。
【0122】
さらに図7の平面センサ45の第2実施形態は、平面センサ45により、光軸23の方向にセンタリングされて試料29内に位置する観察面73aを再生するプレビュー画像71を形成することができるという重要な利点を有する。したがって平面センサ45の第2実施形態の移動99により、光軸23に沿ってスライドさせることができるプレビュー画像71を用いて、フルの解像度で3次元顕微鏡画像を撮影するための正しい領域を設定することができる。図6の平面センサ45の第1実施形態により、試料29において、プレビュー画像71を用いることによって配向を行うこともできるが、3次元の顕微鏡視される領域は、フルの解像度で撮影される際には、試料29もしくはラインセンサ44または平面センサ45が対応して新たに位置決めされない限り、観察面73aの上側だけに位置することになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7