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特許7053589チオ尿素第4族遷移金属触媒および重合系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】チオ尿素第4族遷移金属触媒および重合系
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20220405BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220405BHJP
   C07C 335/16 20060101ALN20220405BHJP
   C07F 7/00 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C08F4/64
C08F10/00 510
C07C335/16
C07F7/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019515795
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017051292
(87)【国際公開番号】W WO2018063799
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/402,200
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アルカディ・エル・クラソフスキー
(72)【発明者】
【氏名】エンドレ・シュローミ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-530771(JP,A)
【文献】特表2004-533487(JP,A)
【文献】特開2001-240610(JP,A)
【文献】特開2000-281710(JP,A)
【文献】特開昭62-000430(JP,A)
【文献】特公昭48-003838(JP,B1)
【文献】A. Antinolo et al.,New Monocyclopentadienyl Complexes of Titanium(IV) and Zirconium(IV) with Chelating Pyrimidinethiolate, Oxypyrimidine, and Oxypyridine Ligands. Molecular Structure of [Zr(η5-C5Me5)(η2-O,N-ON2C6H7)3],Organometallics,1999年,Vol.18,Pages 5219-5224
【文献】Kishor Naktode et al.,Imidazolin-2-iminato Ligand-Supported Titanium Complexes as Catalysts for the Synthesis of Urea Derivatives,Inorganic Chemistry,2016年01月20日,Vol.55,Pages 1142-1153
【文献】Michael B. Harkness et al.,Coordination and Reactivity Study of Group 4 and 10 Transition Metal Complexes of N-Imidazol-2-ylidene-N′-p-tolylureate and Thioureate Ligands,ORGANOMETALLICS,2013年05月16日,Vol.32,Pages 3309-3321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00- 4/82
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による少なくとも1種のチオ尿素錯体を含む組成物であって、
MQ4-a(I)
式中、
Mが、Ti、Zr、またはHfから選択される金属中心であり、
aが、1または2であり、
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体のQ基が各々、前記金属中心に結合している二座チオ尿素配位子であり、前記チオ尿素配位子が、式(Ia)、式(Ib)、または式(Ic)を有し、
【化1】
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体中のR、R、およびR基が、アルキル基またはアリール基から、それぞれ独立して選択され、
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体中のZおよびZ基がそれぞれ、二価アルキレン基であり、
a=2の場合、2つのQ基のR基は、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合しているか、または前記2つのQ基のR基は、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合しており、
Xが各々、前記金属中心に共有結合または配位結合しており、アルキル基、ハロゲン化物、またはアミドから、独立して選択される、組成物。
【請求項2】
aが、1であり、
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体が、式(IIa)、式(IIb)、または式(IIc)を有し、
【化2】
式中、M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、置換フェニル基またはシクロアルキル基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
が各々、
【化3】
であり、式中、AおよびAが、独立して、(C-C10)アルキル基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体が、化合物C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の組成物。
【化4】
【請求項6】
aが、2であり、
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体が、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、
【化5】
式中、M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
が、-(CH-または-(CH-であり、
が、シクロヘキシル、または
【化6】
であり、式中、AおよびAは、独立して、(C-C10)アルキル基である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体が、化合物C1、C2、C3、C4、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の組成物。
【化7】
【請求項9】
aが、2であり、
前記2つのQ基のR基が、Z架橋基として互いに結合しており、
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体が、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)を有し、
【化8】

式中、
M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りであり、
が、アルキレン基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
が、(C-C40)アルキレン基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
aが、2であり、
前記2つのQ基のR基が、Z架橋基として互いに結合しており、
前記少なくとも1種のチオ尿素錯体が、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)を有し、
【化9】
式中、
M、R、R、Z、およびXは、式(I)で定義された通りであり、
が、アルキレン基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
が、(C-C40)アルキレン基である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
触媒量の請求項1に記載の組成物の存在下で、エチレン-co-アルキレンコポリマーを形成するために、エチレンとα-オレフィンコモノマーとを反応させることであって、前記α-オレフィンコモノマーは、少なくとも1種のC-C12α-オレフィンを含む、反応させること、を含む、重合方法。
【請求項14】
前記組成物が、式C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、またはそれらの組み合わせの化合物から選択される少なくとも1種のチオ尿素錯体を含む、請求項13に記載の重合方法
【化10】
【請求項15】
前記α-オレフィンコモノマーが、1-オクテンである、請求項13に記載の重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/402,200号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、全般的には、遷移金属触媒に関し、より具体的には、エチレン/α-オレフィンコポリマーの合成を含む、重合反応用のチオ尿素第4族遷移金属触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン系ポリマーは、様々な物品および製品の製造に利用されているので、そのようなポリマーに対する高い工業的需要がある。ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーは、様々な触媒系を介して生成される。重合プロセスにおいて使用されるそのような触媒系の選択は、そのようなオレフィン系ポリマーの特徴および特性に寄与する重要な要素である。
【0004】
ポリオレフィン重合プロセスは、異なる用途での使用に好適な異なる物理的特性を有する様々な得られるポリオレフィン樹脂を生成するために多くの手段で変えることができる。ポリオレフィンは、溶液相重合プロセス、気相重合プロセス、および/またはスラリー相重合プロセスにおいて、1つ以上の触媒系の存在下で、例えば直列または並列に接続された1つ以上の反応器中で生成可能であることが一般に知られている。
【0005】
ポリエチレンなどのポリオレフィン重合に好適な触媒系の開発における研究努力にもかかわらず、オレフィン系ポリマーに対する工業的需要を満たすための改良された重合触媒の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本実施形態は、オレフィン系ポリマーの工業的需要を満たすための代替合成スキームを提供する触媒系に関する。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、組成物または触媒組成物は、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体を含む。
MQ4-a(I)
式中、Mは、Ti、Zr、またはHfであり、aは1または2であり、X基はそれぞれ、金属中心に共有結合または配位結合しており、独立して、アルキル基、ハロゲン化物、またはアミドから選択され、チオ尿素錯体のQ基はそれぞれ、金属中心に結合している二座チオ尿素配位子であり、独立して、式(Ia)、式(Ib)、または式(Ic)を有する基から選択される。
【0008】
【化1】
【0009】
式(Ia)、(Ib)、および(Ic)中、R、R、およびR基は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基から選択され、ZまたはZ基は、それぞれ独立して、アルキレン基から選択される。したがって、a=2の場合、式(I)のチオ尿素錯体の2つのQ基は、同一であっても異なっていてもよい。a=2の場合、2つのQ基のR基が、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合しているか、または2つのQ基のR基が、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している。重合系は、エチレンとα-オレフィンとを共重合させるように構成することができる。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIa)、式(IIb)、または式(IIc)を有し、
【0011】
【化2】
【0012】
式中、M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りである。式(IIa)、式(IIb)、または式(IIc)の錯体中のX基はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、
【0014】
【化3】
【0015】
式中、M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りである。式(IIIa)、式(IIId)、または式(IIIe)の錯体中の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IIIa)の錯体の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IIIa)、式(IIIb)、または式(IIIc)の錯体中の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IIIc)の錯体中の2つのZ基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IIIe)の錯体中の2つのZ基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IIIa)~(IIIf)のうちのいずれかの錯体中の2つのX基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)を有し、
【0017】
【化4】
【0018】
式中、M、R、R、Z、およびXは、式(I)で定義された通りであり、Zは、少なくとも1つの共有結合を介して式(I)で定義された2つのR基が結合して形成されるアルキレン基である。式(IVa)の錯体中の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IVa)の錯体中の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IVc)の錯体中の2つのZ基は、同一であっても異なっていてもよい。式(IVa)~(IVc)のうちのいずれかの錯体中の2つのX基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)を有し、
【0020】
【化5】
【0021】
式中、M、R、R、Z、およびXは、式(I)で定義された通りであり、Zは、少なくとも1つの共有結合を介して式(I)で定義された2つのR基が結合して形成されるアルキレン基である。式(Va)の錯体中の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(Va)の錯体中の2つのR基は、同一であっても異なっていてもよい。式(Vc)の錯体中の2つのZ基は、同一であっても異なっていてもよい。式(Va)~(Vc)のうちのいずれかの錯体中の2つのX基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
さらなる実施形態は、本開示の少なくとも1つの実施形態による触媒量の少なくとも1つのチオ尿素錯体を含む組成物の存在下で、エチレンとα-オレフィンコモノマーとを共重合させるように構成された重合系に関する。
【0023】
さらなる実施形態は、本開示の少なくとも1つの実施形態による触媒量の少なくとも1つのチオ尿素錯体を含有する組成物が、エチレンとα-オレフィンとの重合中に存在する重合系から生成されるエチレン-co-アルキレンコポリマーに関する。
【0024】
さらなる実施形態は、本開示の少なくとも1つの実施形態による触媒量の少なくとも1つのチオ尿素錯体を含有する組成物の存在下で、エチレンとα-オレフィンコモノマーとを反応させて、エチレン-co-アルキレンコポリマーを形成することを含む重合方法に関する。いくつかの実施形態では、α-オレフィンコモノマーは、例えば、1-オクテンなどの少なくとも1つのC-C12α-オレフィンを含むことができる。
【0025】
本明細書に記載の実施形態の追加の特徴および利点は、後に続く詳細な説明で述べられ、その説明から当業者にとって容易に部分的に明らかになるか、後に続く詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実践することによって、認識されるであろう。
【0026】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面が、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原則および動作を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本開示で使用される一般的な略語は、Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル(-CH-Ph)、THF:テトラヒドロフラン、EtO:ジエチルエーテル、C:重水素化ベンゼン、CDCl:重水素化クロロホルム、DMSO-d:重水素化ジメチルスルホキシド、ZrBn:ジルコニウム(IV)テトラベンジル、HfBn:ハフニウム(IV)テトラベンジル、N:窒素ガス、MMAO:変性メチルアルミノキサン、NMR:核磁気共鳴、DSC:示差走査熱量測定、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル、min:分、h:時間、d:日数、GPC:ゲル浸透クロマトグラフィー、M:重量平均分子量、M:数平均分子量を含むことができる。
【0028】
「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、およびRなどのR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R、R、R、R、およびRはすべて、置換アルキルであってもよく、またはRおよびRは、置換アルキルであってもよく、Rは、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶液は、ヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、その名前を有するR基に対応すると当該技術分野において認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、限定するものではなく、当業者に公知の定義を補足し説明することを意図している。
【0029】
「部分」、「官能基」、または「基」という用語は、本明細書中で互換的に使用することができるが、当業者は、錯体または化合物の特定の部分を、官能基ではなく部分として、その逆も同様に認識し得る。さらに、「部分」という用語は、本開示の化合物または金属錯体中に存在する官能基および/または不連続的な結合残基を含む。本出願で使用される「部分」という用語は、本開示の一般式に記載されるように、コポリマー中の個々の単位またはポリマー配位子内の個々の単位を含む。
【0030】
「錯体」という用語は、一緒に配位結合して単一分子化合物を形成する金属および配位子を意味する。配位は、供与結合または共有結合を介して形成することができる。例示の目的で、本開示内で特定の代表的な群が定義される。これらの定義は、限定するものではなく、当業者に公知の定義を補足し説明することを意図している。
【0031】
「脂肪族」という用語は、「アルキル」、「分岐アルキル」という用語、「(C-C40)ヒドロカルビル」、「置換(C-C40)ヒドロカルビル」、「(C-C40)ヒドロカルビレン、および「置換(C-C40)ヒドロカルビレン」という用語を包含する。
【0032】
「ヘテロ脂肪族」という用語は、「(C-C40)ヘテロヒドロカルビル」および「置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル」、「[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン」、「置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン」「[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、」および「置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン」を含む。
【0033】
「芳香族」または「アリール」という用語は、「(C-C40)アリール」および「置換(C-C40)アリール基」という用語を包含する。「ヘテロ芳香族」という用語は、「(C-C40)ヘテロアリール」および「(C-C40)ヘテロアリール」を含む。
【0034】
特定の炭素原子含有化学基(例えば、(C-C40)アルキル)を記載するために使用される場合、括弧付きの表示(C-C40)は、「(C-C)」の形態で表すことができ、これは、化学基の非置換型が、x個の炭素原子からy個の炭素原子を含むことを意味し、ここでxおよびyは、それぞれ独立して、化学基について記載される整数である。R置換型の化学基は、Rの性質に応じて、y個を超える炭素原子を含有することができる。したがって、例えば、非置換(C-C40)アルキルは、1~40個の炭素原子を含有する(x=1およびy=40)。化学基が1個以上の炭素原子含有R置換基で置換されている場合、置換(C-C)化学基は、y個を超える総炭素原子を含むことができる。すなわち、炭素原子含有置換基(複数可)で置換された(C-C)化学基の炭素原子の総数は、yに炭素原子含有置換基(複数可)それぞれの炭素原子数の合計を加えたものに等しい。本明細書で特定されていない化学基の任意の原子は、水素原子であると理解される。
【0035】
いくつかの実施形態において、本開示における一般式の化合物および金属錯体の化学基(例えば、R、R、R)はそれぞれ、非置換であってもよい、すなわち上記の条件が満たされるという条件で、R置換基を使用せずに定義することができる。他の実施形態では、本開示の一般式の化合物および金属錯体の少なくとも1つの化学基は、独立して、1つ以上のR置換基を含む。化合物が2つ以上のR置換基を含む場合、Rは、それぞれ独立して、同一または異なる置換化学基に結合している。2つ以上のRが同一の化学基に結合している場合、それらは場合によっては、同一の化学基内で、化学基の過置換までを含めて、独立して、同一または異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合している。
【0036】
「過置換」という用語は、場合によっては、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合している水素原子(H)がそれぞれ、置換基(例えば、R)で置換されていることを意味する。「多置換」という用語は、場合によっては、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合している、すべてではないが少なくとも2つの水素原子(H)がそれぞれ、置換基で(例えば、R)置換されていることを意味する。「モノ置換」という用語は、場合によっては、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合しているただ1つの水素原子(H)が、置換基で(例えば、R)置換されていることを意味する。(C-C18)アルキレンおよび(C-C)アルキレン置換基は、場合によっては、対応する単環式または二環式非置換化学基の二環式または三環式類似体である置換化学基を形成するのに特に有用である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、ヘテロヒドロカルビレン、アルキル、アルキレン、ヘテロアルキル、ヘテロアルキレン、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキレン、オルガノシリレン、オルガノゲルミレンという用語の定義は、すべての可能な立体異性体を含むように意図されている。
【0038】
ヘテロアルキルおよびヘテロアルキレン基はそれぞれ、(C-C40)炭素原子、およびヘテロ原子またはヘテロ原子基、O、S、N、S(O)、S(O)、S(O)N、Si(R、Ge(R、P(R)、P(O)(R)、およびN(R)のうちの1つ以上を含む、上記に定義された、飽和直鎖または分岐鎖のラジカルまたはジラジカルである。ヘテロアルキルおよびヘテロアルキレン基は、それぞれ独立して、非置換または1つ以上のRによって置換されている。置換および非置換ヘテロアルキル基の例は、メトキシル、エトキシル、トリメチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、およびジメチルアミノである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「(C-C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C-C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、ここで、炭化水素ラジカルおよびジラジカルは、それぞれ独立して、芳香族(6個以上の炭素原子)または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環状(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含み、二環式、3個以上の炭素原子を含む)もしくは非環式、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、炭化水素ラジカルおよびジラジカルは、それぞれ独立して、別の炭化水素ラジカルおよびジラジカルと同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、非置換または1つ以上のRによって置換されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、(C-C40)ヒドロカルビルは、独立して、非置換または置換(C-C40)アルキル、(C-C40)シクロアルキル、(C-C20)シクロアルキル-(C-C20)アルキレン、(C-C40)アリール、または(C-C20)アリール-(C-C20)アルキレンである。さらなる実施形態において、上記の(C-C40)ヒドロカルビル基は、それぞれ独立して、最大20個の炭素原子(すなわち、(C-C20)ヒドロカルビル)を有し、他の実施形態では、最大15個の炭素原子を有する。
【0041】
「(C-C40)アルキル」という用語は、1~40個の炭素原子の、非置換または1つ以上のRによって置換されている、飽和直鎖または分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C-C40)アルキルの例としては、非置換(C-C20)アルキル、非置換(C-C10)アルキル、非置換(C-C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、2-エチルヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、1-デシル、2,2,4-トリメチルペンチルが挙げられる。置換(C-C40)アルキルの例としては、置換(C-C20)アルキル、置換(C-C10)アルキル、トリフルオロメチル、トリメチルシリルメチル、メトキシメチル、ジメチルアミノメチル、トリメチルゲルミルメチル、フェニルメチル(ベンジル)、2-フェニル-2,2-メチルエチル、2-(ジメチルフェニルシリル)エチル、およびジメチル(t-ブチル)シリルメチルが挙げられる。
【0042】
「(C-C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換または(1つ以上のRによる)置換の、単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は、芳香環炭素原子であり、単環式、二環式、または三環式ラジカルはそれぞれ、1、2、または3個の環を含み、ここで、1つの環は芳香族であり、任意の第2および第3の環は、独立して、縮合または非縮合であり、第2および第3の環は、それぞれ独立して、任意に芳香族化合物である。非置換(C-C40)アリールの例としては、非置換(C-C20)アリール、非置換(C-C18)アリール、フェニル、ビフェニル、オルト-テルフェニル、メタ-テルフェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェナンスレニル、およびトリプチセニルが挙げられる。置換(C-C40)アリールの例としては、置換(C-C20)アリール、置換(C-C18)アリール、2,6-ビス[(C-C20)アルキル]-フェニル、2-(C-C)アルキル-フェニル、2,6-ビス(C-C)アルキル-フェニル、2,4,6-トリス(C-C)アルキル-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-メチル-6-トリメチルシリルフェニル、2-メチル-4,6-ジイソプロピルフェニル、4-メトキシフェニル、および4-メトキシ-2,6-ジメチルフェニルが挙げられる。
【0043】
「(C-C40)シクロアルキル」という用語は、3~40個の炭素原子の、非置換または1つ以上のRによって置換されている、飽和環式または多環式(すなわち、縮合または非縮合)炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(C-C12)アルキル)も、同様の様式で定義される。非置換(C-C40)シクロアルキルの例としては、非置換(C-C20)シクロアルキル、非置換(C-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、オクタヒドロインデニル、ビシクロ[4.4.0]デシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、およびトリシクロ[3.3.1.1]デシルが挙げられる。置換(C-C40)シクロアルキルの例としては、置換(C-C20)シクロアルキル、置換(C-C10)シクロアルキル、2-メチルシクロヘキシル、およびペルフルオロシクロヘキシルが挙げられる。
【0044】
(C-C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C40)アリーレン、(C-C40)シクロアルキレン、および(C-C40)アルキレン(例えば、(C-C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、1,3-α、オメガジラジカル(例えば、-CHCHCH-)または1,5-α、内部置換(例えば、-CHCHCH(CH)CHCH-)を有するオメガジカジカルラジカルのようなヒドロカルビレンの末端原子上にある。他の実施形態では、ジラジカルは、C2,6-ジラジカル
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
を有するC2,6-ジラジカルのようなヒドロカルビレンの非末端原子上にある。
【0048】
[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレンおよび[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンという用語は、ジラジカル単位の原子を有する2つのラジカルが、1つ以上の介在する炭素、ケイ素および/またはゲルマニウム原子よって隔てられているジラジカルとして定義される。そのような[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレンおよび[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン基は、置換されていても置換されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、1,5-α,ω-ジラジカル(例えば、-CHCHSi(CCHCH-および-CHCHGe(CCHCH-)のようなオルガノシリレンまたはオルガノゲルミレンの末端原子上にある。他の実施形態では、ジラジカルは、置換(C+Si)2,6-ジラジカル
【0049】
【化8】
【0050】
【化9】
【0051】
のようなオルガノシリレンまたはオルガノゲルミレンの非末端原子上にある。
【0052】
「(C-C40)アルキレン」という用語は、1~40個の炭素原子の、非置換または1つ以上のRによって置換されている、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖のジラジカルを意味する。非置換(C-C40)アルキレンの例としては、非置換1,3-(C-C10)アルキレンを含む非置換(C-C20)アルキレン、1,4-(C-C10)アルキレン、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、および-(CHCH(CH)-が挙げられる。置換(C-C40)アルキレンの例としては、置換(C-C20)アルキレン、-CFCFCF-、および-(CH14C(CH(CH-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)が挙げられる。前述のように、2つのRが一緒になって(C-C40)アルキレンを形成することができる。したがって、置換(C-C40)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0053】
「(C-C40)シクロアルキレン」という用語は、3~40個の炭素原子の、非置換または1つ以上のRによって置換されている、環式ジラジカル(すなわち、ジラジカルが環原子上にある)を意味する。非置換(C-C40)シクロアルキレンの例は、1,3-シクロブチレン、1,3-シクロペンチレン、および1,4-シクロヘキシレンである。置換(C-C40)シクロアルキレンの例は、2-トリメチルシリル-1,4-シクロヘキシレンおよび1,2-ジメチル-1,3-シクロヘキシレンである。
【0054】
「(C-C40)ヘテロヒドロカルビル」および「(C-C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、それぞれ1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルまたはジラジカルを意味し、ヘテロ炭化水素は、それぞれ独立して、1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子基、O、S、N、S(O)、S(O)、S(O)N、Si(R、Ge(R、P(R)、P(O)(R)、およびN(R)を有し、式中、Rは、それぞれ独立して、水素、非置換(C-C18)ヒドロカルビル、または非置換(C-C18)ヘテロヒドロカルビルであるか、または存在しない(例えば、Nが-N=を含む場合、存在しない)。(C-C40)ヘテロヒドロカルビルおよび(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンは、それぞれ独立して、非置換もしくは(1つ以上のRによる)置換、芳香族もしくは非芳香族、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)もしくは非環式、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、それぞれは同一または他とは異なる。
【0055】
(C-C40)ヘテロヒドロカルビルは、独立して、非置換もしくは置換(C-C40)ヘテロアルキル、(C-C40)ヒドロカルビル-O-(C-C40)ヒドロカルビル-S-、(C-C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C-C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C-C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C-C40)ヒドロカルビル-Ge(R-、(C-C40)ヒドロカルビル-N(R)-、(C-C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C-C40)ヘテロシクロアルキル、(C-C19)ヘテロシクロアルキル-(C-C20)アルキレン、(C-C20)シクロアルキル-(C-C19)ヘテロアルキレン、(C-C19)ヘテロシクロアルキル-(C-C20)ヘテロアルキレン、(C-C40)ヘテロアリール、(C-C19)ヘテロアリール-(C-C20)アルキレン、(C-C20)アリール-(C-C19)ヘテロアルキレン、または(C-C19)ヘテロアリール-(C-C20)ヘテロアルキレンであってもよい。
【0056】
「(C-C40)ヘテロアリール」という用語は、1~40個の総炭素原子および1~6個のヘテロ原子の非置換または(1つ以上のRによる)置換の、単環式、二環式、または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、または三環式ラジカルはそれぞれ、1、2、または3個の環を含み、ここで、1つの環はヘテロ芳香族であり、任意の第2および第3の環は、独立して、縮合または非縮合であり、第2または第3の環は、それぞれ独立して、任意にヘテロ芳香族化合物である。他のヘテロアリール基(例えば(C-C12)ヘテロアリール)も、同様の様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、それぞれ、1~4個の炭素原子および4~1個のヘテロ原子を有し、ヘテロ原子はそれぞれ、O、S、N、またはPである。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルである。6員環は、3~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を有し、ヘテロ原子は、NまたはPである。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピリジン-2-イル、ピリミジンー2-イル、およびピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系である。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イルおよびベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イルおよびイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系である。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例としては、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,5,6-環系の例としては、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例としては、アクリジン-9-イルである。
【0057】
(C-C40)ヘテロアリールは、2,7-二置換カルバゾリルまたは3,6-二置換カルバゾリルを含むことができ、ここで、Rは、それぞれ独立して、フェニル、メチル、エチル、イソプロピル、またはtert-ブチル、2,7-ジ(tert-ブチル)-カルバゾリル、3,6-ジ(tert-ブチル)-カルバゾリル、2,7-ジ(tert-オクチル)-カルバゾリル、3,6-ジ(tert-オクチル)-カルバゾリル、2,7-ジフェニルカルバゾリル、3,6-ジフェニルカルバゾリル、2,7-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-カルバゾリル、または3,6-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-カルバゾリルである。
【0058】
非置換(C-C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C-C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C-C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S、S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルである。
【0059】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)ラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、またはヨウ化物(I)アニオンを意味する。
【0060】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上のR置換基で置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意にR置換基中に存在してもしなくてもよい。
【0061】
「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、炭素-ケイ素二重結合、または炭素-窒素三重結合を含有すること、存在する場合、R置換基中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。
【0062】
組成物、チオ尿素錯体、および触媒系
上記の定義を考慮して、本出願の特定の実施形態が記載される。本開示は、異なる形態で具体化することができ、記載された任意の特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、かつ主題の範囲を完全に当業者に伝えるように提供される。
【0063】
本開示の実施形態による組成物は、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体を含む。
MQ4-a(I)
【0064】
式(I)では、Mは、Ti、Zr、またはHfから選択される金属中心である。いくつかの実施形態では、Mは、チタンである。他の実施形態では、Mは、ジルコニウムである。さらに他の実施形態では、Mは、ハフニウムである。いくつかの実施形態では、Mは、+2、+3、または+4の形式酸化状態にある。例示的実施形態では、Mは、+4の形式酸化状態にある。
【0065】
式(I)では、aは1または2であり、チオ尿素錯体中に存在するQ基の数を表す。したがって、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、1個のQ基または2個のQ基のいずれかを有することができる。2個のQ基が存在する場合(すなわち、a=2の場合)、Q基はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つのチオ尿素錯体のQ基はそれぞれ、金属中心に結合している二座チオ尿素配位子である。二座チオ尿素配位子は、式(Ia)、式(Ib)、または式(Ic)を有することができ、波状結合は金属中心Mへの原子の配位を表し、点線は多重結合にわたる電子の非局在化を表す。
【0066】
【化10】
【0067】
a=1である実施形態では、Q基は、式(Ia)、式(Ib)、または式(Ic)のうちのいずれか1つを有することができる。a=2である実施形態では、両方のQ基は、式(Ia)を有することができ、両方のQ基は、式(Ib)を有することができ、両方の基は、式(Ic)を有することができ、一方のQ基は、式(Ia)を有することができ、他方のQは、式(Ib)または式(Ic)を有し、または一方のQ基は式(Ib)を有することができ、他方のQ基が式(Ic)を有する。
【0068】
少なくとも1つのチオ尿素錯体では、R、R、およびR基は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基から選択される。したがって、a=2で、2つのQ基が存在する場合、少なくとも1つのチオ尿素錯体中のR、R、およびR基はそれぞれ、少なくとも1つのチオ尿素錯体中の他のR、R、およびR基と同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つのチオ尿素錯体中のZ基は、それぞれ独立して、アルキレン基から選択される。同様に、a=2で、2つのQ基が存在する場合、両方とも式(Ib)を有し、例えば、少なくとも1つのチオ尿素錯体中のZ基はそれぞれ、少なくとも1つのチオ尿素錯体中の他のZ基と同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つのチオ尿素錯体中のZ基は、それぞれ独立して、アルキレン基から選択される。同様に、a=2で、2つのQ基が存在する場合、両方とも式(Ic)を有し、例えば、少なくとも1つのチオ尿素錯体中のZ基はそれぞれ、少なくとも1つのチオ尿素錯体中の他のZ基と同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
式(I)では、a=2で、2つのR基が存在する場合、2つのQ基のR基は、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している。式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体がa=2を有し、2つのQ基のR基が少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している実施形態では、錯体の2つのQ基は、金属中心Mに結合している単一の四座配位子を形成する。
【0070】
式(I)では、a=2で、2つのR基が存在する場合、2つのQ基のR基は、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している。式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体がa=2を有し、2つのQ基のR基が少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している実施形態では、錯体の2つのQ基は、金属中心Mに結合している単一の四座配位子を形成する。
【0071】
式(I)では、Xはそれぞれ、金属中心に共有結合または配位結合しており、独立して、アルキル基またはハロゲン化物から選択される。実施形態によれば、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体のXは、それぞれ独立して、中性、モノアニオン性、またはジアニオン性である単座または多座配位子である。一般に、式(I)の少なくとも1つのチオ尿素錯体のXおよびaは、式(I)によるチオ尿素錯体が全体的に中性であるように選択される。いくつかの実施形態では、Xは、それぞれ独立して、単座配位子である。一実施形態では、2つ以上のX単座配位子がある場合、Xはそれぞれ、同一である。いくつかの実施形態では、単座配位子は、モノアニオン性配位子である。モノアニオン性配位子は、-1の形式酸化状態を有する。モノアニオン性配位子は、それぞれ独立して、水素化物、(C-C40)ヒドロカルビルカルボアニオン、(C-C40)ヘテロヒドロカルビルカルボアニオン、ハロゲン化物、ナイトレート、カーボネート、ホスフェート、ボラート、ホウ水素化物、スルフェート、HC(O)O-、アルコキシド、またはアリールオキシド(RO-)、(C-C40)ヒドロカルビル-C(O)O-、HC(O)N(H)-、(C-C40)ヒドロカルビル-C(O)N((C-C20)ヒドロカルビル)-、(C-C40)ヒドロカルビル-C(O)N(H)-、RB-、RN-、RO-、RS-、RP-、またはRSi-であってもよく、式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素であり、(C-C40)ヒドロカルビル、または(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、またはRおよびRは、一緒になって(C-C40)ヒドロカルビレン、または(C-C40)ヘテロヒドロカルビレン、および先に定義されたRを形成する。
【0072】
いくつかの実施形態では、Xの少なくとも1つの単座配位子は、独立して、中性配位子である。一実施形態では、中性配位子は、RNR、ROR、RSR、またはRPRである中性ルイス塩基基であり、式中、Rは、それぞれ独立して、水素、(C-C40)ヒドロカルビル、[(C-C10)ヒドロカルビル]Si、[(C-C10)ヒドロカルビル]Si(C-C10)ヒドロカルビル、または(C-C40)ヘテロヒドロカルビルであり、ならびにRおよびRは、それぞれ独立して、先に定義した通りである。
【0073】
いくつかの実施形態において、Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、非置換(C-C20)ヒドロカルビル、非置換(C-C20)ヒドロカルビルC(O)O-、またはRN-などのアミドである、単座配位子であり、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、非置換(C-C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、単座配位子Xはそれぞれ、塩素原子、(C-C10)ヒドロカルビル(例えば、(C-C)アルキルまたはベンジル)、非置換(C-C10)ヒドロカルビルC(O)O-、またはRN-であり、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、非置換(C-C10)ヒドロカルビルである。
【0074】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのXがあり、2つのXは、一緒になって二座配位子を形成する。いくつかの実施形態では、二座配位子は、中性二座配位子である。一実施形態では、中性二座配位子は、式(RC=C(R)-C(R)=C(Rのジエンであり、Rは、それぞれ独立して、H、非置換(C-C)アルキル、フェニル、またはナフチルである。いくつかの実施形態では、二座配位子は、モノアニオン性-モノ(ルイス塩基)配位子である。モノアニオン性-モノ(ルイス塩基)配位子は、式(D):R-C(O-)=CH-C(=O)-R(D)の1,3-ジオナートであってよく、式中、Rは、それぞれ独立して、H、非置換(C-C)アルキル、フェニル、またはナフチルである。いくつかの実施形態では、二座配位子は、ジアニオン性配位子である。ジアニオン性配位子は、-2の形式酸化状態を有する。一実施形態では、ジアニオン性配位子は、それぞれ独立して、カーボネート、オキサレート(すなわち、-OCC(O)O-)、(C-C40)ヒドロカルビレンジカルボアニオン、(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンジカルボアニオン、ホスフェート、またはスルフェートである。
【0075】
前述のように、Xの数および電荷(中性、モノアニオン性、ジアニオン性)は、式(I)の重合触媒および全体的に中性となるように、Mの形式酸化状態に応じて選択される。
【0076】
いくつかの実施形態では、Xはそれぞれ、同一であり、Xはそれぞれ、メチル、イソブチル、ネオペンチル、ネオフィル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、またはクロロである。いくつかの実施形態では、aは1であり、すべてのX基は、同一である。いくつかの実施形態では、aは2であり、すべてのX基は、同一である。いくつかの実施形態では、すべてのX基は、ベンジルである。いくつかの実施形態では、すべてのX基は、クロロである。
【0077】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのXは、異なる。いくつかの実施形態では、Xはそれぞれ、メチル、イソブチル、ネオペンチル、ネオフィル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、およびクロロのうちの異なるものである。
【0078】
式(I)を有する少なくとも1つのチオ尿素錯体のさらなる非限定的な実施形態が記載される。
【0079】
式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体の、かつ式(Ia)または(Ic)による1つまたは2つのQ基を有する、R基はそれぞれ、チオ尿素配位子の金属結合窒素原子に結合しており、独立して、アルキル基またはアリール基から選択される。したがって、1つのチオ尿素錯体中に複数のR基が存在する場合、個々のR基はそれぞれ、アルキル基であってもよく、個々のR基はそれぞれ、アリール基であってもよく、または1つ以上の個々のR基は、アルキル基であってもよく、一方で1つ以上の他の個々のR基は、アリール基であってもよい。いくつかの実施形態では、1つの以上の個々のR基は、例えば(C-C40)ヒドロカルビル、置換(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、(C-C10)ヒドロカルビル、置換(C-C10)ヒドロカルビル、(C-C10)ヘテロヒドロカルビル、または置換(C-C10)ヘテロヒドロカルビルから選択されるアルキル基であってもよい。いくつかの実施形態では、1つの以上の個々のR基は、例えば(C-C40)アリール基、置換(C-C40)アリール基、(C-C10)アリール基、置換(C-C10)アリール基から選択されるアリール基であってもよい。
【0080】
例示的な実施形態では、R基は、それぞれ独立して、フェニル、置換フェニル、(C-C10)シクロアルキル基、または(C-C10)アルキル基から選択することができる。さらなる例示的な実施形態では、R基は、それぞれ独立して、例えばフェニル、置換フェニル、またはシクロヘキシルなどの(C-C10)シクロアルキル基から選択することができる。さらなる例示的な実施形態では、R基はそれぞれ、置換フェニルであってもよい。さらなる例示的な実施形態では、R基はそれぞれ、シクロヘキシルであってもよい。
【0081】
さらなる例示的な実施形態では、1つ以上のR基は、独立して、(C-C10)シクロアルキル基、または下記式による置換フェニル基から選択することができる。
【0082】
【化11】
【0083】
式中、AおよびAは、独立して、水素または(C-C10)アルキル基である。いくつかの実施形態では、AおよびA基は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、1,1-ジメチルエチル、またはブチルであってもよい。他の実施形態では、AおよびA基は、両方とも水素であってもよく、それによりR基は、フェニルである。他の実施形態では、AおよびA基は、両方ともメチルであってもよい。他の実施形態では、AおよびA基は、両方とも1-メチルエチルであってもよい。
【0084】
式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体の、かつ式(Ia)による1つまたは2つのQ基を有する、R基はそれぞれ、チオ尿素配位子の第二級窒素原子に結合しており、独立して、アルキル基またはアリール基から選択される。したがって、1つのチオ尿素錯体中に複数のR基が存在する場合、個々のR基はそれぞれ、アルキル基であってもよく、個々のR基はそれぞれ、アリール基であってもよく、または1つ以上の個々のR基は、アルキル基であってもよく、一方で1つ以上の他の個々のR基は、アリール基であってもよい。いくつかの実施形態では、1つの以上の個々のR基は、例えば(C-C40)ヒドロカルビル、置換(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、(C-C10)ヒドロカルビル、置換(C-C10)ヒドロカルビル、(C-C10)ヘテロヒドロカルビル、または置換(C-C10)ヘテロヒドロカルビルから選択されるアルキル基であってもよい。いくつかの実施形態では、1つの以上の個々のR基は、例えば(C-C40)アリール基、置換(C-C40)アリール基、(C-C10)アリール基、または置換(C-C10)アリール基から選択されるアリール基であってもよい。
【0085】
例示的な実施形態では、R基は、それぞれ独立して、(C-C40)アルキル基、(C-C20)アルキル基、(C-C10)アルキル基、またはフェニル末端(C-C)ヒドロカルビル基から選択することができる。さらなる例示的な実施形態では、R基は、それぞれ独立して、-(CHPh基から選択することができ、式中、nは、例えば、0~5、1~5、または4~5である。さらなる例示的な実施形態では、R基は、ベンジル基(-CHPh)であってもよい。
【0086】
式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体の、かつ式(Ia)または(Ib)による1つまたは2つのQ基を有する、R基はそれぞれ、チオ尿素配位子の第二級窒素原子に結合しており、独立して、アルキル基またはアリール基から選択される。したがって、1つのチオ尿素錯体中に複数のR基が存在する場合、個々のR基はそれぞれ、アルキル基であってもよく、個々のR基はそれぞれ、アリール基であってもよく、または1つ以上の個々のR基は、アルキル基であってもよく、一方で1つ以上の他の個々のR基は、アリール基であってもよい。いくつかの実施形態では、1つの以上の個々のR基は、例えば(C-C40)ヒドロカルビル、置換(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、(C-C10)ヒドロカルビル、置換(C-C10)ヒドロカルビル、(C-C10)ヘテロヒドロカルビル、または置換(C-C10)ヘテロヒドロカルビルから選択されるアルキル基であってもよい。いくつかの実施形態では、1つの以上の個々のR基は、例えば(C-C40)アリール基、置換(C-C40)アリール基、(C-C10)アリール基、置換(C-C10)アリール基から選択されるアリール基であってもよい。
【0087】
例示的な実施形態では、R基は、それぞれ独立して、(C-C40)アルキル基、(C-C20)アルキル基、(C-C10)アルキル基、またはフェニル末端(C-C)ヒドロカルビル基から選択することができる。さらなる例示的な実施形態では、R基は、それぞれ独立して、-(CHPh基から選択することができ、式中、nは、例えば、0~5、1~5、または4~5である。さらなる例示的な実施形態では、R基は、ベンジル基(-CHPh)であってもよい。さらなる例示的な実施形態では、RおよびRの両方が少なくとも1つのチオ尿素錯体中に存在し、結合してZ基を形成しない場合、Rは、Rと同一であってもよい。
【0088】
式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体の、かつ式(Ia)による1つまたは2つのQ基を有する、Z基は、それぞれ独立して、例えば(C-C40)ヒドロカルビレン、置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、置換(C-C10)ヒドロカルビレン、[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、または置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンなどのアルキレン基から選択される。例示的な実施形態では、Z基はそれぞれ、-(CH-などのCヒドロカルビレンまたは-(CH-などのCヒドロカルビレンであってもよい。
【0089】
式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体の、かつ式(Ic)による1つまたは2つのQ基を有する、Z基は、それぞれ独立して、例えば(C-C40)ヒドロカルビレン、置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、置換(C-C10)ヒドロカルビレン、[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、または置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンなどのアルキレン基から選択される。例示的な実施形態では、Z基はそれぞれ、-(CH-などのCヒドロカルビレンまたは-(CH-などのCヒドロカルビレンであってもよい。
【0090】
前述のように、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体では、a=2の場合、2つのQ基のR基は、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している。式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体がa=2を有し、2つのQ基のR基が少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している実施形態では、Rは、Z架橋基を形成することができる。存在する場合、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体のZ架橋基は、独立して、例えば(C-C40)ヒドロカルビレン、置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、置換(C-C10)ヒドロカルビレン、(C-C)ヒドロカルビレン、置換(C-C)ヒドロカルビレン、[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、または置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンなどのアルキレン基から選択することができる。Z架橋基は、式(IVa)、(IVb)、および(IVc)のチオ尿素錯体を参照して、後により詳細に記載される。
【0091】
前述のように、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体では、a=2の場合、2つのQ基のR基は、任意に少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している。式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体がa=2を有し、2つのQ基のR基が少なくとも1つの共有結合を介して互いに結合している実施形態では、Rは、Z架橋基を形成することができる。存在する場合、式(I)による少なくとも1つのチオ尿素錯体のZ架橋基は、独立して、例えば(C-C40)ヒドロカルビレン、置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、置換(C-C10)ヒドロカルビレン、(C-C)ヒドロカルビレン、置換(C-C)ヒドロカルビレン、[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、または置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンなどのアルキレン基から選択することができる。Z架橋基は、式(Va)、(Vb)、および(Vc)のチオ尿素錯体を参照して、後により詳細に記載される。
【0092】
式(I)を有する少なくとも1つのチオ尿素錯体の例示的な実施形態が記載される。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(I)を有することができ、式中、少なくとも1つのチオ尿素錯体が式(IIa)、式(IIb)、または式(IIc)を有するように、aは1である。
【0094】
【化12】
【0095】
式中、M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りであり、先に記載された通りである。
【0096】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIa)または式(IIC)を有し、R基は、置換フェニル基または(C-C10)シクロアルキル基である。置換フェニル基としてのRの例としては、以下の式による基が挙げられる。
【0097】
【化13】
【0098】
式中、AおよびAは、独立して、水素または(C-C10)アルキル基である。いくつかのそのような実施形態では、AおよびA基は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)、またはn-ブチルから選択することができる。他のそのような実施形態では、AおよびA基は、両方とも水素であってもよく、それによりR基は、フェニルである。いくつかの実施形態では、AおよびA基は、同一であってもよい。例えば、AおよびA基の両方は、メチルであってもよく、AおよびA基の両方は、エチルであってもよく、AおよびA基の両方は、プロピルであってもよく、両方は、1-メチルエチルであってもよく、AおよびA基の両方は、1,1-ジメチルエチルであってもよく、またはAおよびA基の両方は、ブチルであってもよい。他のそのような実施形態において、AおよびA基の両方は、メチルであってもよく、またはAおよびA基の両方は、1-メチルエチルであってもよい。
【0099】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIa)を有し、式中、RおよびRは、独立して、-(CHPh基であり、式中、nは、0~5、1~5、または4~5である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIa)を有することができ、式中、RおよびRは、両方とも-CHPhである。
【0100】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIc)を有し、式中、Zは、(C-C10)アルキレン基または(C-C)アルキレン基である。そのような実施形態では、Zは、ヒドロカルビル基-(CH-であってもよく、式中、nは、4~10または4~5である。Z基が-(CH-である場合、ZとZが結合している窒素原子との組み合わせは、5員のピロリジニル基を形成する。Z基が-(CH-である場合、ZとZが結合している窒素原子との組み合わせは、6員のピペリジニル基を形成する。
【0101】
例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIc)を有し、式中、Zは、-(CH-または-(CH-であり、Rはそれぞれ、例えば、二置換フェニル基またはシクロヘキシルなどの(C-C10)シクロアルキル基である。二置換フェニル基の例としては、2,5-ジメチルフェニルおよび2,5-ジ(1-メチルエチル)フェニルが挙げられる。
【0102】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIa)、式(IIb)、または式(IIc)を有し、すべてのX基は、同一である。例えば、X基はそれぞれ、ベンジルであってもよいか、またはX基はそれぞれ、クロリドであってもよい。
【0103】
式(IIa)を有するチオ尿素錯体の特定の例示的かつ非限定的な実施形態は、化合物C8およびC12を含む。
【0104】
【化14】
【0105】
式(IIc)を有するチオ尿素錯体の特定の例示的かつ非限定的な実施形態は、化合物C5、C6、C7、C9、C10、およびC11を含む。
【0106】
【化15】
【0107】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(I)を有することができ、式中、aは2であり、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIC)、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有することができる。
【0108】
【化16】
【0109】
式中、M、R、R、R、Z、Z、およびXは、式(I)で定義された通りであり、先に記載された通りである。
【0110】
例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、式中、Zは、(C-C10)アルキレン基であり、M、R、R、R、Z、およびX基は、式(I)で定義された通りである。そのような実施形態の例としては、Zが、(C-C10)ヒドロカルビル基、(C-C)アルキレン基、または(C-C)ヒドロカルビル基であるものが挙げられる。そのような実施形態のさらなる例としては、Zが、-(CH-であるものが挙げられ、式中、nは4~10または4~5である。特定の例では、Zは、-(CH-または-(CH-であってもよい。
【0111】
さらなる例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、Z基は、(C-C10)アルキレン基、(C-C10)ヒドロカルビル基、(C-C)アルキレン基、または(C-C)ヒドロカルビル基であってもよく、一方または両方のR基は、独立して、シクロヘキシルおよび二置換フェニルから選択することができ、M、R、R、Z、およびX基は、式(I)で定義された通りである。二置換フェニル基Rの例としては、以下の式によるものが挙げられる。
【0112】
【化17】
【0113】
式中、AおよびAは、独立して、水素または(C-C10)アルキル基である。いくつかのそのような実施形態では、AおよびA基は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)、またはn-ブチルから選択することができる。他のそのような実施形態では、AおよびA基は、両方とも水素であってもよく、それによりR基は、フェニルである。いくつかの実施形態では、AおよびA基は、同一であってもよい。例えば、AおよびA基は、両方ともメチル、両方ともエチル、両方ともプロピル、両方とも1-メチルエチル、両方とも1,1-ジメチルエチル、または両方ともブチルであってもよい。他のそのような実施形態において、AおよびA基の両方は、メチルであってもよく、またはAおよびA基の両方は、1-メチルエチルであってもよい。
【0114】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、式中、Xは、それぞれ独立して、金属中心に配位結合しているベンジル基またはクロリドであり、M、R、R、R、Z、およびZ基は、式(I)で定義された通りである。例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、式中、Xはそれぞれ、金属中心に配位結合しているベンジル基である。例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IIIa)、式(IIIb)、式(IIIc)、式(IIId)、式(IIIe)、または式(IIIf)を有し、式中、Xはそれぞれ、金属中心に配位結合しているクロリドである。
【0115】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IIIa)を有し、式中、両方のR基は同一であり、両方のR基は同一であり、両方のR基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態は、式(I)のチオ尿素錯体の例を表し、式中、両方のQ基は同一である。さらなる例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IIIc)を有し、式中、両方のZ基は同一であり、両方のR基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態はまた、式(I)のチオ尿素錯体の追加の例も表し、式中、両方のQ基は同一である。さらなる例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IIIe)を有し、式中、両方のR基は同一であり、両方のZ基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態はまた、式(I)のチオ尿素錯体の追加の例も表し、式中、両方のQ基は同一である。式(I)のチオ尿素錯体の両方のQ基が同一である場合、チオ尿素錯体は、典型的には、少なくとも1つの対称面を有する。
【0116】
式(IIIe)を有するチオ尿素錯体の特定の例示的かつ非限定的な実施形態は、化合物C1、C2、C3、およびC4を含む。
【0117】
【化18】
【0118】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(I)を有することができ、式中、aは2であり、2つのQ基のR基は、Z架橋基として互いに結合しており、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)を有する。
【0119】
【化19】
【0120】
式中、M、R、R、R、Z、およびXは、式(I)で定義され、先に記載された通りであり、Zは、少なくとも1つの共有結合を介して式(I)で定義された2つのR基が結合して形成されるアルキレン基である。
【0121】
例示的な実施形態では、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)によるチオ尿素錯体のZ基は、例えば(C-C40)ヒドロカルビレン、置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、置換(C-C10)ヒドロカルビレン、[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、または置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンなどのアルキレン基であってもよい。そのような実施形態では、特定の式に適用可能なM、R、R、Z、およびXは、前述のように式(I)で定義された通りである。例示的な実施形態では、Z基は、(C-C12)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、-(CH-などのCヒドロカルビレン、または(CH-などのCヒドロカルビレンであってもよい。
【0122】
例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)を有し、式中、Xは、それぞれ独立して、金属中心に配位結合しているベンジル基またはクロリドである。例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)を有し、式中、Xはそれぞれ、金属中心に配位結合しているベンジル基である。例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IVa)、式(IVb)、または式(IVc)を有し、式中、Xはそれぞれ、金属中心に配位結合しているクロリドである。
【0123】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IVa)を有し、式中、両方のR基は同一であり、両方のR基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態は、式(I)のチオ尿素錯体の例を表し、式中、両方のQ基は同一である。さらなる例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(IVc)を有し、式中、両方のZ基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態は、式(I)のチオ尿素錯体の追加の例を表し、式中、両方のQ基は同一である。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(I)を有することができ、式中、aは2であり、2つのQ基のR基は、Z架橋基として互いに結合しており、少なくとも1つのチオ尿素錯体は、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)を有する。
【0125】
【化20】
【0126】
式中、M、R、R、Z、およびXは、式(I)で定義され、先に記載された通りであり、Zは、少なくとも1つの共有結合を介して式(I)で定義された2つのR基が結合して形成されるアルキレン基である。
【0127】
例示的な実施形態では、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)によるチオ尿素錯体のZ基は、例えば(C-C40)ヒドロカルビレン、置換(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、置換(C-C10)ヒドロカルビレン、[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、置換[(C+Si)-(C+Si)40]オルガノシリレン、[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレン、または置換[(C+Ge)-(C+Ge)40]オルガノゲルミレンなどのアルキレン基であってもよい。そのような実施形態では、特定の式に適用可能なM、R、R、Z、およびXは、前述のように式(I)で定義された通りである。例示的な実施形態では、Z基は、(C-C12)ヒドロカルビレン、(C-C10)ヒドロカルビレン、-(CH-などのCヒドロカルビレン、または(CH-などのCヒドロカルビレンであってもよい。
【0128】
例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)を有し、式中、Xは、それぞれ独立して、金属中心に配位結合しているベンジル基またはクロリドである。例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)を有し、式中、Xはそれぞれ、金属中心に配位結合しているベンジル基である。例示的実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(Va)、式(Vb)、または式(Vc)を有し、式中、Xはそれぞれ、金属中心に配位結合しているクロリドである。
【0129】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(Va)を有し、式中、両方のR基は同一であり、両方のR基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態は、式(I)のチオ尿素錯体の例を表し、式中、両方のQ基は同一である。さらなる例示的な実施形態では、少なくとも1つのチオ尿素組成物は、式(Vc)を有し、式中、両方のZ基は同一であり、両方のX基は同一である。そのような実施形態は、式(I)のチオ尿素錯体の追加の例を表し、式中、両方のQ基は同一である。
【0130】
さらなる実施形態では、組成物は、式(I)による複数のチオ尿素錯体の組み合わせまたは混合物を含むことができる。例えば、組成物は、式(I)による2種、3種、4種、5種、または5種を超えるチオ尿素錯体を含むことができる。例示的な実施形態では、式(I)による複数のチオ尿素錯体は、前述のような化合物C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12のうちのいずれかを、任意の組み合わせまたは割合で含むことができる。
【0131】
ポリオレフィン組成物
本開示の実施形態によるエチレン-co-アルキレンコポリマーなどのポリオレフィン組成物は、前述の触媒量の少なくとも1つの組成物の存在下で、エチレンと1つ以上のオレフィンモノマーとの反応生成物を含み、重合条件下で、任意に1つ以上の助触媒および/または捕捉剤の存在下で、少なくとも1つのチオ尿素錯体を含む。
【0132】
ポリオレフィン組成物は、例えば、エチレン系ポリマー、例えばエチレンと任意にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)であってもよい。そのようなエチレン系ポリマーは、0.860g/cm~0.973g/cmの範囲の密度を有することができる。0.860g/cm~0.973g/cmのすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、密度は、0.860、0.880、0.885、0.900、0.905、0.910、0.915、または0.920g/cmの下限~0.973、0.963、0.960、0.955、0.950、0.925、0.920、0.915、0.910、または0.905g/cmの上限であってもよい。
【0133】
本明細書で使用される場合、「エチレン系ポリマー」という用語は、50モル%を超えるエチレンモノマーから誘導された単位を有するポリマーを意味する。
【0134】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、1000個の炭素原子当たり0.0~3個の長鎖分岐(LCB)の範囲内の長鎖分岐頻度を有することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、2.0以上の範囲内の(従来のGPC法に従って測定される)(M/M、多分散指数(PDI)としても知られる)分子量分布を有することができる。2以上のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、エチレン/α-オレフィンコポリマーは、2~20の範囲内の分子量分布(M/M)を有することができるか、または代わりに、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、2~5の範囲内の分子量分布(M/M)を有することができる。
【0135】
他の実施形態では、連鎖移動剤が重合に使用される場合、エチレン系ポリマーは、例えば2未満の分子量分布M/Mを有することができる。2未満のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、エチレン系ポリマーのM/Mは、2未満、または代わりに1.9未満、または代わりに1.8未満、または代わりに1.5未満であってもよい。特定の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.5~2の分子量分布を有する。
【0136】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、20,000g/モル以上の範囲内、例えば、20,000~1,000,000g/モルの範囲内、または代わりに20,000~350,000g/モル、または代わりに100,000~750,000g/モルの分子量(M)を有することができる。
【0137】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.02~200g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有することができる。0.02~200g/10分のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、メルトインデックス(I)は、0.1、0.2、0.5、0.6、0.8、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、10、15、20、30、40、50、60、80、90、100、または150g/10分の下限~0.9、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、10、15、20、30、40、50、60、80、90、100、150、または200g/10分の上限であってもよい。
【0138】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、5~30の範囲内のメルトフロー比(I10/I)を有することができる。5~30のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、メルトフロー比(I10/I)は、5、5.5、6、6.5、8、10、12、15、20、または25の下限~5.5、6、6.5、8、10、12、15、20、25、または30の上限であってもよい。
【0139】
エチレン系ポリマーは、50モルパーセント未満の1つ以上のα-オレフィンコモノマーから誘導された単位を含むことができる。50モルパーセント未満のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、30モルパーセント未満の1つ以上のα-オレフィンコモノマーから誘導された単位、または代わりに20モルパーセント未満の1つ以上のα-オレフィンコモノマーから誘導された単位、または代わりに1~20モルパーセントの1つ以上のα-オレフィンコモノマーから誘導された単位、または代わりに1~10モルパーセントの1つ以上のα-オレフィンコモノマーから誘導された単位を含むことができる。
【0140】
α-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、それらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択され得るか、または代替的に1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0141】
エチレン系ポリマーは、50モルパーセントを超えるエチレンから誘導された単位を含むことができる。50モルパーセントを超えるすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、少なくとも52モルパーセントのエチレンから誘導された単位、または代わりに少なくとも65モルパーセントのエチレンから誘導された単位、または代わりに少なくとも85モルパーセントのエチレンから誘導された単位、または代わりに50~100モルパーセントのエチレンから誘導された単位、または代わりに80~100モルパーセントのエチレンから誘導された単位を含むことができる。
【0142】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、上記の鎖往復重合プロセスに従って調製されたオレフィンブロックコポリマーを含む。オレフィンブロックコポリマーまたはポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマーは、エチレン誘導ハードセグメント(すなわち、ポリエチレンハードセグメント)と、α-オレフィンおよびエチレンからの残基を含むソフトセグメントとを含む。α-オレフィンおよびエチレンの残基は、典型的には、ソフトセグメント中にほぼランダムに分布している。好ましくは、ポリエチレンハードセグメントは、その中に共有結合で組み込まれた5モルパーセント(モル%)未満のα-オレフィンの残基を有することを特徴とする。好ましくは、ポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマーは、後述の手順を用いて示差走査熱量測定法によって決定されるように、100℃を超える、より好ましくは120℃を超える融点を有することを特徴とする。ポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマーは、エチレン残基および1つ以上の共重合性α-オレフィンコモノマー残基(すなわち、重合形態のエチレンおよび1つ以上の共重合性α-オレフィンコモノマー)を含む。ポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマーは、化学的特性または物理的特性が異なる2種以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。すなわち、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、ブロックインターポリマー、好ましくはマルチブロックインターポリマーまたはコポリマーである。「インターポリマー」および「コポリマー」という用語は、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、次式:(AB)によって表すことができる、式中、nは少なくとも1であり、好ましくは1を超える整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはより高く、「A」は、ハードブロックまたはセグメントを表し、「B」は、ソフトブロックまたはソフトセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、分岐状または星状ではなく、線状に結合している。
【0143】
「ハード」セグメントとは、エチレン残基が、ポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマー中に95重量パーセント超、好ましくは98重量パーセント超の量で存在する、重合単位のブロックを指す。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー(すなわち、α-オレフィン)残基含有量は、5重量パーセント未満、好ましくは2重量パーセント未満である。いくつかの実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてエチレン残基を含む。「ポリエチレンハードセグメント」および「エチレン誘導ハードセグメント」という語句は同義語であり、ポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマーのハードセグメント部分を意味する。
【0144】
「ソフト」セグメントとは、コモノマー(すなわち、α-オレフィン)の残基含有量が、ポリ(エチレンα-オレフィン)ブロックコポリマー中に5重量パーセント超、好ましくは8重量パーセント超、10重量パーセント超、または15重量パーセント超の、重合単位のブロックを指す。いくつかの実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー残基含有量は、20重量パーセント超、25重量パーセント超、30重量パーセント超、35重量パーセント超、40重量パーセント超、45重量パーセント超、50重量パーセント超、または60重量パーセント超であってもよい。
【0145】
重合プロセス
任意の従来の重合プロセスが、本発明によるポリオレフィン組成物を生成するために使用され得る。そのような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えば、ループ反応器、等温反応器、流動床反応器、撹拌槽型反応器、バッチ式反応器の並列、直列、および/またはそれらの任意の組み合わせを用いた、溶液重合プロセス、粒子形成重合プロセス、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
一実施形態では、ポリオレフィン組成物は、例えば、1つ以上のループ反応器、等温反応器、およびそれらの組み合わせを用いて、溶液相重合プロセスを介して生成することができる。
【0147】
一般に、溶液相重合プロセスは、1つ以上のループ反応器または1つ以上の球形等温反応器などの1つ以上の良く撹拌される反応器内で、120~300℃、例えば160~215℃の範囲内の温度で、300~1500psi、例えば400~750psiの範囲内の圧力で行われる。溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、典型的には、2~30分、例えば、5~15分の範囲内である。エチレン、1つ以上の溶媒、1つ以上の高温オレフィン重合触媒系、1つ以上の助触媒、および/または捕捉剤、および任意に1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.,ヒューストン、テキサス州からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、得られたエチレン系ポリマーと溶媒との混合物が反応器から取り出され、エチレン系ポリマーが単離される。溶媒は、典型的には、溶媒回収ユニット、すなわち熱交換器および気液分離器ドラムを介して回収され、次いで重合系に再循環される。
【0148】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、単一反応器系、例えば単一ループ反応器系における溶液重合を介して生成することができ、ここで、エチレンおよび任意に1つ以上のα-オレフィンが、1つ以上の高温オレフィン重合触媒系、任意に1つ以上の他の触媒、および任意に1つ以上の助触媒の存在下で重合される。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系における溶液重合を介して生成することができ、ここで、エチレンおよび任意に1つ以上のα-オレフィンが、1つ以上のオレフィン重合触媒系、任意に1つ以上の他の触媒、および任意に1つ以上の助触媒の存在下で重合される。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系における溶液重合を介して生成することができ、ここで、エチレンおよび任意に1つ以上のα-オレフィンが、両方の反応器において、本明細書に記載されるように、1つ以上の高温オレフィン重合触媒系の存在下で重合される。
【0149】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、気相重合プロセスを用いて、例えば流動床反応器を利用して作製することができる。この種類の反応器および反応器を操作するための手段はよく知られており、例えばUS3,709,853、同4,003,712、同4,011,382、同4,302,566、同4,543,399、同4,882,400、同5,352,749、同5,541,270、EP-A-0802202、およびベルギー特許第839,380号に完全に記載されている。これらの特許は、気相重合プロセスを開示し、ここで、重合媒体は、気体モノマーおよび希釈剤の連続流によって機械的に攪拌または流動化される。
【0150】
重合プロセスは、流動床プロセスなどの連続気相プロセスとして行うことができる。流動床反応器は、反応域およびいわゆる減速域を含むことができる。反応域は、反応域を通して重合熱を除去するために、ガス状モノマーおよび希釈剤の連続流によって流動化される成長ポリマー粒子、形成されたポリマー粒子、および少量の触媒粒子の床を含むことができる。任意に、再循環ガスの一部は、冷却され圧縮されて液体を形成することができ、それは反応域に再入された際に、循環ガス流の熱除去能力を増大させる。好適なガス流量は、簡単な実験によって容易に決定することができる。循環ガス流へのガス状モノマーの補給は、粒状ポリマー生成物およびそれに関連したモノマーが反応器から抜き出され、反応器を通過するガスの組成物が本質的に反応域内の定常状態のガス状組成物を維持するように調整される速度に等しい速度である。反応域を出るガスは、減速域に送られ、そこで同伴粒子が除去される。より微細な同伴粒子およびダストは、サイクロンおよび/または微細フィルター内で任意に除去することができる。ガスは熱交換器を通過し、そこで、重合熱が除去され、圧縮機内で圧縮され、次いで反応域に戻される。
【0151】
本明細書の流動床プロセスの反応器温度は、好ましくは30℃、または40℃、または50℃~90℃、または100℃、または110℃、または120℃の範囲である。一般に、反応器温度は、反応器内のポリマー生成物の焼結温度を考慮して実行可能である最高温度で操作される。この流動床プロセスでは、重合温度、または反応温度は、形成されるポリマーの溶融または「焼結」温度未満であるべきである。したがって、一実施形態での上限温度は、反応器内で生成されるポリオレフィンの溶融温度である。
【0152】
スラリー重合プロセスも使用することができる。スラリー重合プロセスは、一般に、1~50気圧の範囲内およびさらにそれを超える圧力、0℃~120℃の範囲内およびより具体的には30℃~100℃の温度を使用する。スラリー重合では、固体の粒状ポリマーの懸濁液が、液体重合希釈媒体中に形成され、それにエチレンおよびコモノマーおよび多くの場合水素が触媒と共に添加される。希釈剤を含む懸濁液は、反応器から断続的にまたは連続的に除去され、そこで揮発性成分がポリマーから分離され、蒸留後に任意に反応器に再循環される。重合媒体に使用される液体希釈剤は、典型的には、3~7個の炭素原子を有するアルカン、一実施形態では分岐アルカンである。使用される媒体は、重合条件下で液体で、比較的不活性であるべきである。プロパン媒体が使用すされる場合、このプロセスは、反応希釈剤の臨界温度および圧力を超えて操作する必要がある。一実施形態では、ヘキサン、イソペンタン、またはイソブタン媒体が使用される。
【0153】
粒子形態重合、温度がポリマーが溶液になる温度より低く維持されるプロセスも有用である。他のスラリープロセスとしては、ループ反応器を使用するもの、および直列、並列、またはそれらの組み合わせで複数の撹拌反応器を利用するものが挙げられる。スラリープロセスの非限定的な例としては、連続ループプロセスまたは撹拌槽プロセスが挙げられる。また、スラリープロセスの他の例は、US4,613,484およびMetallocene-Based Polyolefins Vol.2 pp.322-332(2000)に記載されており、その開示は本明細書に許容される範囲で組み込まれる。
【0154】
一実施形態では、式(I)による、または本開示の任意の実施形態の少なくとも1つのチオ尿素錯体を含有する触媒組成物は、重合プロセスにおいて1つ以上の追加の触媒と組み合わせることができる。使用に好適な触媒としては、所望の組成または種類のポリマーを調製するのに適した任意の化合物または化合物の組み合わせが挙げられる。不均一系触媒および均一系触媒の両方が使用され得る。不均一系触媒の例としては、周知のチーグラー-ナッタ組成物、特に第2族金属ハロゲン化物または混合ハロゲン化物上に担持された第4族金属ハロゲン化物、およびアルコキシド、ならびに周知のクロムまたはバナジウム系触媒が挙げられる。しかしながら、好ましくは、使用の容易さ、および溶液中での狭い分子量のポリマーセグメントの生成のために、本明細書で使用するための触媒は、比較的純粋な有機金属化合物または金属錯体、特に第3~10族または元素周期表のランタニド系列から選択される化合物または錯体ベースのオイル金属を含む均一系触媒である。本明細書で使用されるいずれの触媒も、本重合の条件下で他の触媒の性能に著しく悪影響を及ぼさないことが好ましい。望ましくは、本重合の条件下で、触媒の活性は、25パーセントを超えて、より好ましくは10パーセントを超えて低減することはない。
【0155】
エチレン系ポリマーは、1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。そのような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含むことができる。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーおよび1つ以上の添加剤の重量を基準として、そのような添加剤の合計重量により、約0~約10パーセント折衷することができる。エチレン系ポリマーは、さらに充填剤を折衷することができ、それらとしては、有機または無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。そのような充填剤、例えば炭酸カルシウム、タルク、Mg(OH)は、本発明のエチレン系ポリマーおよび1つ以上の添加剤および/または充填剤の重量を基準として、約0~約20パーセントの濃度で存在することができる。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーとさらにブレンドされてブレンドを形成することができる。
【実施例
【0156】
以下の実施例は、前述の実施形態による様々な触媒組成物を例示するものであり、本開示の範囲を限定することを決して意図しない。
【0157】
すべての溶媒および試薬を、商業的供給源から入手し、別段の記載がない限り、受け取ったまま使用した。無水トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、およびジエチルエーテルを、活性アルミナおよび場合によってはQ-5反応物質を通過させることによって精製した。窒素充填グローブボックス中で行われる実験に使用される溶媒を、活性化4Å分子ふるい上での貯蔵によりさらに乾燥させた。感湿反応用ガラス器具を、使用前に一晩オーブン内で乾燥させた。
【0158】
NMRスペクトルを、Varian 400-MRおよびVNMRS-500分光計で記録した。H NMR(プロトンNMR)データを、以下のように報告する:化学シフト(多重度(br=ブロード、s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、p=ペンテット、sex=セクテット、sept=セプテット、およびm=マルチプレット)、積分、および代入)。参考として、重水素化溶媒中の残留プロトンを用いて、H NMRデータの化学シフトを内部テトラメチルシラン(TMS、δスケール)からの低磁場をppmで報告する。13C NMR(炭素NMR)データを、Hデカップリングを用いて決定し、化学シフトをテトラメチルシランに対するppmで報告する。
【0159】
触媒効率を、調製されたポリオレフィンコポリマーのグラム数を、使用される触媒中の金属Mの総グラム数(すなわち、式(I)の少なくとも1つの金属-配位子錯体の金属Mのグラム数)で割ることによって計算する。したがって、触媒効率を、調製されたポリオレフィンコポリマーのグラム数を、重合反応に使用される式(I)の金属-配位子錯体(複数可)の金属Mのグラム数で割って表すことができる。
【0160】
分子量データを、ハイブリッドSymyx/Dow built Robot-Assisted Dilution高温ゲル浸透クロマトグラフィー(Sym-RAD-GPC)での分析によって決定する。ポリマー試料を、300ppmのブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)によって安定化された、10mg/mLの濃度で1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中に、160℃で120分間加熱することによって溶解した。次いで、各試料を、試料の250μLアリコートを注入する直前に1mg/mLに希釈した。GPCには、160℃で2.0mL/分の流量で、2つのPolymer Labs PLgel 10μm MIXED-Bカラム(300×10mm)を装着した。試料検出を、濃度モードでPolyChar IR4検出器を用いて行った。狭いポリスチレン(PS)標準の従来の較正を、この温度でTCB中のPSおよびPEについての既知のMark-Houwink係数を用いてホモポリエチレン(PE)に調整された見かけの単位を用いて利用した。
【0161】
溶融温度(T)、ガラス転移温度(T)、結晶化温度(T)、および融解熱を、加熱-冷却-加熱温度プロファイルを用いて、示差走査熱量測定法(DSC Q2000、TA Instruments、Inc.)によって測定する。3~6mgのポリマーのオープンパンDSC試料を、最初に室温から設定点まで毎分10℃で加熱する。痕跡を、TA Universal AnalysisソフトウェアまたはTA Instruments TRIOSソフトウェアを用いて個別に分析する。
【実施例1】
【0162】
【化21】
【0163】
一般的な構造1a、1b、または1cによる配位子を、1モル当量のイソチオシアネート(R-N=C=S、式中、Rは本明細書で先に定義した通りである)を含有するジエチルエーテル(EtO)溶液に、1モル当量のニートアミン滴下することによって25℃で調製した。即座に白色の沈殿物が形成される。溶液を25℃で30分間撹拌した後、沈殿物を濾過により単離し、2つの乾燥EtOのアリコートで洗浄し、真空下で乾燥させる。上記の反応工程を用いて一般構造1a、1b、または1cに従って調製された配位子の収率は、Rが2,5-ジメチルフェニル、2,5-ジ(1-メチルエチル)-フェニル、またはシクロヘキシルである場合ほぼ定量的である。それぞれ一般構造1a、1b、または1cのうちの1つに従う例示的な配位子L1、L2、L3、L4およびL5の合成および特性評価を、実施例2~6に記載する。
【実施例2】
【0164】
【化22】
【0165】
配位子L1を実施例1の一般的方法に従って、ほぼ定量的な収率で調製した。式中、R基は、2,5-ジメチルフェニルであり、アミンはピロリジンであった。配位子L1を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、CDCl)δ7.11(m、3H)、6.49(br s、1H)、3.69(br s、4H)、2.27(s、6H)、2.05(br s、4H)。13C NMR(101MHz、DMSO-d)δ177.59、138.21、136.51、127.46、127.46、126.39、25.20、18.19。
【実施例3】
【0166】
【化23】
【0167】
配位子L2を実施例1の一般的方法に従って、ほぼ定量的な収率で調製した。式中、R基は、2,5-ジ(1-メチルエチル)-フェニルであり、アミンはピロリジンであった。配位子L1を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400 MHz、CDCl)δ7.33(t、J=7.7Hz、1H)、7.19(d、J=7.7Hz、2H)、6.36(br s、1H)、3.76(br s、4H)、3.13(m、2H)、2.09(br s、4H)、1.30(d、J=6.8Hz、6H)、1.16(d、J=6.9Hz、6H)。13C NMR(101MHz、CDCl)δ179.97、146.97、134.06、128.78、128.63、125.87、125.56、123.67、77.16、28.62、25.88、24.38、23.08。
【実施例4】
【0168】
【化24】
【0169】
配位子L3を実施例1の一般的方法に従って、ほぼ定量的な収率で調製した。式中、R基は、2,5-ジ(1-メチルエチル)-フェニルであり、アミンはピペリジンであった。配位子L1を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.24(m、1H)、7.15(m、2H)、6.26(br s、1H)、3.38(m、4H)、3.27(m、2H)、1.40(d、J=6.8Hz、6H)、1.19(d、J=6.9Hz、6H)、1.15(m、6H)。13C NMR(101MHz、CDCl)δ146.36、134.48、129.06、128.32、124.80、123.62、122.54、50.91、49.70、28.58、25.74、25.45、24.35、24.15、24.08、23.30。
【実施例5】
【0170】
【化25】
【0171】
配位子L4を実施例1の一般的方法に従って、ほぼ定量的な収率で調製した。式中、R基は、2,5-ジ(1-メチルエチル)-フェニルであり、アミンはジベンジルアミン(N-ベンジル-1-フェニルメタンアミン)であった。配位子L1を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.21(m、1H)、7.10(m、10H)、7.03(m、2H)、6.48(s、1H)、4.81(br s、4H)、3.09(m、2H)、1.45(d、J=6.9Hz、6H)、0.92(d、J=6.9Hz、6H)。13C NMR(101MHz、CDCl)δ184.27、146.44、136.22、134.42、129.17、128.40、128.10、126.94、123.52、54.93、28.68、24.20、23.07。
【実施例6】
【0172】
【化26】
【0173】
配位子L5を実施例1の一般的方法に従って、ほぼ定量的な収率で調製した。式中、R基は、シクロヘキシルであり、アミンはピロリジンであった。配位子L1を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR (400MHz、CD6)δ4.70(m、1H)、4.56(d、J=6.9Hz、1H)、3.09(br s、4H)、2.19(m、2H)、1.56(dt、J=13.5、3.6Hz、2H)、1.45(dt、J=12.8、3.7Hz、1H)、1.28(m、2H)、1.18(m、4H)、1.01(m、3H)。13C NMR(101MHz、DMSO-d)δ176.89、53.61、49.46、32.26、25.28、25.16、24.81。
【実施例7】
【0174】
【化27】
【0175】
本明細書の実施例2に従って調製された2モル当量のチオ尿素配位子L1(0.100g、0.43mmol)を5mLのジクロロメタン(CHCl)に溶解し、次いで得られた溶液を1モル当量のテトラベンジルジルコニウム(ZrBn)(0.097g、0.21mmol)と混合することによって、触媒C1を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。固体を高真空下で一晩さらに乾燥させて、生成物(触媒C1)を定量的収率で得た。
【0176】
触媒C1を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.39(dd、J=8.3、1.1Hz、4H)、7.21(t、J=7.7Hz、4H)、6.89(tt、J=7.2、1.2Hz、2H)、6.78(s、6H)、3.42(br s、4H)、2.85(s、4H)、2.31(br s、4H)、2.13(s、12H)、0.86(br s、8H)。13C NMR(101MHz、C)δ174.19、149.22、146.77、133.57、125.21、121.47、80.84、20.11。
【実施例8】
【0177】
【化28】
【0178】
本明細書の実施例3に従って調製された2モル当量のチオ尿素配位子L2(0.100g、0.34mmol)を5mLのCHClに溶解し、次いで得られた溶液を1モル当量のZrBn(0.078g、0.17mmol)と混合することによって、触媒C2を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。固体を高真空下で一晩さらに乾燥させて、生成物(触媒C2)を定量的収率で得た。
【0179】
触媒C2を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.36(d、J=7.1Hz、4H)、7.22(t、J=7.7Hz、4H)、7.05(m、6H)、6.88(t、J=7.3 Hz、2H)、3.50(dt、J=13.4、6.7Hz、4H)、3.41(br s、4H)、2.61(s、4H)、2.51(br s、4H)、1.34(d、J=6.8Hz、12H)、1.19(d、J=6.8Hz、12H)、0.90(m、8H)。13C NMR(101MHz、C)δ173.86、149.34、144.87、144.63、127.99、126.98、121.49、85.58、29.44、25.73、24.63、21.77。
【実施例9】
【0180】
【化29】
【0181】
本明細書の実施例6に従って調製された2モル当量のチオ尿素配位子L5(0.100g、0.47mmol)を5mLのCHClに溶解し、次いで得られた溶液を1モル当量のZrBn(0.107g、0.24mmol)と混合することによって、触媒C3を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。固体を高真空下で一晩さらに乾燥させて、生成物(触媒C3)を定量的収率で得た。
【0182】
触媒C3を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.34(d、J=7.1Hz、4H)、7.14(m、4H)、6.83(t、J=7.3Hz、2H)、3.35(m、8H)、3.25(s、4H)、1.81(d、J=12.2Hz、4H)、1.54(m、11H)、1.23(s、9H)、1.06(m、6H)。13C NMR(101MHz、C)δ177.18、151.28、128.27、127.37、120.67、74.64、58.06、51.56、26.46、26.17、25.72。
【実施例10】
【0183】
【化30】
【0184】
本明細書の実施例6に従って調製された2モル当量のチオ尿素配位子L5(0.041g、0.19mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液をテトラベンジルハフニウム(HfBn)(0.052g、0.10mmol)と混合することによって、触媒C4を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。固体を高真空下で一晩さらに乾燥させて、生成物(触媒C4)を定量的収率で得た。
【0185】
触媒C4を、プロトンNMRおよび炭素13 NMRによって次のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.32(d、J=7.1Hz、4H)、7.18(m、4H)、6.79(t、J=7.3Hz、2H)、3.32(br s、8H)、2.87(br s、2H)、2.78(brs、2H)、1.83(d、J=11.5Hz、4H)、1.55(m、11H)、1.19(br s、9H)、1.06(brs、6H)。13C NMR(101MHz、C)δ175.54、152.01、129.67、128.02、127.50、126.03、120.69、79.45、57.77、51.61、35.29、34.32、26.44、26.19、25.68。
【実施例11】
【0186】
【化31】
【0187】
本明細書の実施例2に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L1(0.050g、0.21mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のZrBn(0.097g、0.21mmol)と混合することによって、触媒C5を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した(0.129g)。生成物を5mLのトルエンに溶解し、10mLのペンタンと層状にした。次いで、バイアルを-30℃に一晩冷却した。得られた濁った溶液を0.45μmシリンジフィルターに通し、濾液を真空下で蒸発乾固させた。触媒C5の総収量は0.115g(90%)であった。
【0188】
触媒C5を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.15(m、6H)、6.96(t、J=7.4Hz、3H)、6.91(m、6H)、6.85(s、3H)、3.38(s、2H)、2.27(s、2H)、2.11(s、6H)、2.05(s、6H)、0.84(s、4H)。13C NMR(101MHz、C)δ172.87、147.46、142.71、134.14、131.30、130.18、129.77、126.12、123.77、76.69、19.56。
【実施例12】
【0189】
【化32】
【0190】
本明細書の実施例3に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L2(0.050g、0.17mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のZrBn(0.078g、0.17mmol)と混合することによって、触媒C6を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した(0.112g)。生成物を5mLのトルエンに溶解し、10mLのペンタンと層状にした。バイアルを-30℃に一晩冷却した。得られた濁った溶液を0.45μmシリンジフィルターに通し、濾液を真空下で蒸発乾固させた。触媒C6の総収量は0.110g(89%)であった。
【0191】
触媒C6を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.15(m、6H)、7.02(m、3H)、6.96(m、9H)、3.44(s、2H)、3.27(p、J=6.8Hz、2H)、2.50(s、2H)、2.18(s、6H)、1.24(d、J=6.8Hz、6H)、1.10(d、J=6.8Hz、6H)、0.89(m、4H)。13C NMR(101MHz、C)δ173.00、131.30、130.04、130.00、129.07、127.22、124.12、123.84、77.24、29.54、24.82、24.20。
【実施例13】
【0192】
【化33】
【0193】
本明細書の実施例4に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L3(0.050g、0.16mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のZrBn(0.075g、0.16mmol)と混合することによって、触媒C7を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。固体を高真空下で一晩さらに乾燥させて、生成物(触媒C7)を定量的収率で得た。
【0194】
触媒C7を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.14(m、6H)、7.06(s、3H)、6.94(m、9H)、3.15(p、J=6.8Hz、2H)、3.01(br s、4H)、2.15(s、6H)、1.24(d、J=6.8Hz、6H)、1.09(d、J=6.8Hz、6H)、1.02(m、4H)、0.96(m、2H)。13C NMR(101MHz、C)δ175.65、145.69、142.85、142.58、130.01、129.96、126.92、124.89、123.85、77.40、49.78、29.31、26.64、24.97、24.81、24.36。
【実施例14】
【0195】
【化34】
【0196】
1モル当量のチオ尿素配位子L4(0.050g、0.12mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のZrBn(0.055g、0.12mmol)と混合することによって、触媒C8を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。固体を高真空下で一晩さらに乾燥させて、生成物(触媒C8)を定量的収率で得た。
【0197】
触媒C8を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.19(t、J=7.7Hz、6H)、6.99(m、22H)、4.29(br s、4H)、3.15(p、J=6.7Hz、2H)、2.21(s、6H)、1.23(d、J=6.7Hz、6H)、0.70(d、J=6.7Hz、6H)。13C NMR(101MHz、C)δ176.66、144.97、143.16、142.47、136.23、130.22、130.02、129.30、127.09、124.98、124.00、78.24、29.20、25.59、24.85。
【実施例15】
【0198】
【化35】
【0199】
本明細書の実施例2に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L1(0.050g、0.21mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のHfBn(0.116g、0.21mmol)と混合することによって、触媒C9を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去し、生成物を5mLのトルエンに溶解し、次いで15mLのヘキサンと混合した。バイアルを-30℃に一晩冷却した。大量の固体が形成された。固体物質を濾過により単離し、真空下で乾燥させた。触媒C9の総収量は0.121g(83%)であった。
【0200】
触媒C9を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.18(t、J=7.7Hz、6H)、7.00(d、J=7.3Hz、6H)、6.94(t、J=7.3Hz、3H)、6.83(m、3H)、3.33(br s、2H)、2.26(br s、2H)、2.04(s、6H)、1.94(s、6H)、0.80(br s、4H)。13C NMR(101MHz、C)δ170.87、146.43、142.90、134.48、134.41、129.81、129.65、126.54、123.68、84.68、19.84、19.34。
【実施例16】
【0201】
【化36】
【0202】
本明細書の実施例3に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L2(0.050g、0.17mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のHfBn(0.093g、0.17mmol)と混合することによって、触媒C10を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。生成物を5mLのトルエンに溶解し、15mLのヘキサンと混合した。次いで、バイアルを-30℃に一晩冷却した。得られた濁った溶液を0.45μmシリンジフィルターに通し、濾液を真空下で蒸発乾固させた。触媒C10の総収量は0.122g(96%)であった。
【0203】
触媒C10を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.18(t、J=7.7Hz、6H)、7.05(d、J=7.2Hz、7H)、7.00(s、1H)、6.98(d、J=1.8Hz、1H)、6.94(t、J=7.3Hz、3H)、3.40(br s、2H)、3.18(p、J=6.8Hz、2H)、2.42(br s、2H)、2.00(s、6H)、1.23(d、J=6.8Hz、6H)、1.04(d、J=6.8Hz、6H)、0.84(br s、4H)。13C NMR(101MHz、C)δ171.38、144.36、143.89、143.05、129.83、129.58、127.68、124.09、123.68、85.48、29.61、24.84、24.15。
【実施例17】
【0204】
【化37】
【0205】
本明細書の実施例4に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L3(0.050g、0.16mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のHfBn(0.089g、0.16mmol)と混合することによって、触媒C11を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。生成物を5mLのトルエンに溶解し、15mLのヘキサンと混合した。次いで、バイアルを-30℃に一晩冷却した。得られたわずかに濁った溶液を0.45μmシリンジフィルターに通し、濾液を真空下で蒸発乾固させた。触媒C11の総収量は0.121g(98%)であった。
【0206】
触媒C11を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.17(t、J=7.7Hz、6H)、7.03(s、6H)、7.01(s、3H)、6.93(t、J=7.3Hz、3H)、3.08(p、J=6.8Hz、2H)、2.95(br s、4H)、1.99(s、6H)、1.24(d、J=6.8Hz、6H)、1.03(d、J=6.8Hz、6H)、0.98(m、4H)、0.92(m、2H)。13C NMR(101MHz、C)δ174.13、144.41、143.12、129.79、129.52、127.38、124.86、123.67、85.98、50.02、29.37、26.53、25.01、24.72、24.26。
【実施例18】
【0207】
【化38】
【0208】
本明細書の実施例5に従って調製された1モル当量のチオ尿素配位子L4(0.060g、0.14mmol)を5mLのCHClに溶解し、得られた溶液を1モル当量のHfBn(0.078g、0.14mmol)と混合することによって、触媒C12を調製した。10分後、溶媒を真空下で除去した。生成物を5mLのトルエンに溶解し、15mLのヘキサンと混合した。次いで、バイアルを-30℃に一晩冷却した。得られたわずかに濁った溶液を0.45μmシリンジフィルターに通し、濾液を真空下で蒸発乾固させた。触媒C12の総収量は0.123g(99%)であった。
【0209】
触媒C12を、プロトンNMRおよび炭素-13 NMRによって、以下のように特徴付けた:H NMR(400MHz、C)δ7.22(t、J=7.7Hz、6H)、6.99(m、22H)、4.69(br s、2H)、4.09(br s、2H)、3.07(p、J=6.7Hz、2H)、2.05(s、6H)、1.23(d、J=6.7Hz、6H)、0.65(d、J=6.7Hz、6H)。13C NMR(101MHz、C)δ175.50、143.70、143.41、143.08、135.89、129.96、129.67、129.54、129.35、127.56、126.04、124.97、123.78、87.12、29.28、25.67、24.74。
【実施例19】
【0210】
エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合
本明細書の実施形態による様々な触媒の有効性を決定するために、触媒C1、C2、C3、C5、C6、C7、およびC8の存在下でエチレンおよび1-オクテンをバッチ共重合した。
【0211】
共重合を、エチレン単独重合およびエチレン/α-オレフィン共重合用に設計された1Gオートクレーブバッチ反応器内で行った。反応器を電気加熱帯で加熱し、冷却グリコールを含有する内部蛇行冷却コイルによって冷却した。反応器および加熱/冷却系の両方を、Camile TGプロセスコンピューターによって制御および監視した。反応器の底部には、反応器内容物を空にして、節約された実験のためにガラス製ダンプポットに入れる、または廃棄物用にプラスチック製ダンプドラムに入れる、ダンプバルブを取り付けた。ドラムとガラス釜の両方を窒素パージしながら、ダンプポットを大気に通気した。重合または触媒組成に使用されるすべての化学物質(溶媒およびモノマーを含む)を精製カラムに通して、重合に影響を及ぼし得るあらゆる不純物を除去した。高圧窒素および高圧水素は、Airgasから供給された超高純度グレードである。
【0212】
反応器に、独立したMicromotion Flow Meterを介して、Isopar Eおよび1-オクテンを充填した。反応器を重合設定温度に加熱した。エチレンを反応温度で反応器に添加して、反応圧力設定値を維持した。エチレン添加量を、Micromotion Flow Meterによって監視した。
【0213】
MMAO-3A捕捉剤、RIBS-II活性剤([HNMe(C1837][B(C])、および触媒(触媒C1、C2、C3、C5、C6、C7またはC8のうちの1つ)を、不活性雰囲気のグローブボックス内で適量のトルエンと混合して、所望のモル濃度の溶液を得た。混合物をシリンジに引き入れ、グローブボックスの外側に位置する触媒ショットタンクに移した。反応器圧力設定点が達成された際に、混合物を高圧N注入を介して添加した。
【0214】
触媒添加直後に実験タイマーをスタートさせた。通常、成功した触媒実験の最初の1分以内に、発熱が観察され、反応器圧力も低下した。次いで、エチレンをBronkhorst圧力制御器を利用してCamileによって添加して、反応器内の圧力設定値を維持した。重合を最大10分間(または標的エチレンの取り込みが観察された場合は、10分未満)続け、次いで撹拌機を停止し、底部ダンプバルブを開いて反応器内容物を空にして釜に入れた。釜内容物をトレイに注ぎ入れ、実験室のフードに入れ、そこで溶媒を一晩蒸発させた。次いで、残りのポリマーを含有するトレイを真空オーブンに移し、そこでそれらを真空下で100℃に加熱して、あらゆる残りの溶媒を除去した。トレイを周囲温度に冷却した後、ポリマーを収率および効率について秤量し、ポリマー試験に供した。
【0215】
触媒C1、C2、C3、C5、C6、C7、およびC8のそれぞれについて、120℃で1回および150℃でもう1回、10分間の2回の実験を行った。各実験の関連データを表1に示す。
【0216】
【表1】
【0217】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に様々な修正および変更がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。