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  • 特許-トルクインパルスレンチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】トルクインパルスレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20220405BHJP
   F16D 1/00 20060101ALI20220405BHJP
   F16D 1/092 20060101ALI20220405BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B25B21/02 J
F16D1/00 210
F16D1/092
F16D1/06 242
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019529966
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017080335
(87)【国際公開番号】W WO2018104075
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】1630285-3
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】マリノフスキー ヴォイテク
(72)【発明者】
【氏名】シェーブロム トゥルビョン ラファエル
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522733(JP,A)
【文献】特表2013-526416(JP,A)
【文献】特開平04-262123(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19614677(DE,A1)
【文献】特開2009-269139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
F16D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)と、ロータ(21)を有する電気モータ(16)と、慣性駆動部材(26)及び出力シャフト(27)を有する油圧式パルスユニット(18)と、前記モータロータ(21)を前記慣性駆動部材(26)にリジッドに連結して一体型回転構造を形成するカップリング(28)とを備えたインパルスレンチであって、
・前記カップリング(28)が、前記慣性駆動部材(26)の雄型カップリング部分(32)と、前記モータロータ(21)の雌型カップリング部分(24)とを有し、
・前記雄型カップリング部分(32)が、前記雌型カップリング部分(24)に収容されて前記カップリング(28)を形成するように構成され、
・前記雄型カップリング部分(32)が外側ねじ部(25a)を有し、前記雌型カップリング部分(24)が内側ねじ部(25b)を有し、前記モータロータ(21)と前記慣性駆動部材(26)との相対的回転時に軸方向締め付け力が達成され、
・前記雄型カップリング部分(32)及び前記雌型カップリング部分(24)が、前記軸方向締め付け力によって一体化されて前記モータロータ(21)と前記慣性駆動部材(26)との間にリジッド連結部を形成する嵌合的な円錐面(36、37)を備えている、
ことを特徴とするインパルスレンチ。
【請求項2】
前記雄型カップリング部分(32)は、その最遠端に外側円筒案内面(38)を備え、前記雌型カップリング部分(24)は、前記雄型カップリング部分(32)上の前記外側円筒案内面(38)を収容して前記モータロータ(21)と前記慣性駆動部材(26)との間の半径方向支持体を形成するように構成された内側円筒案内面(39)を備えている、
請求項1に記載のインパルスレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクインパルスレンチに関し、具体的には、ロータを有する電気モータを支持するハウジングと、出力シャフトを有するパルスユニットと、モータロータをパルスユニットに連結するカップリングとを備えたポータブルトルクインパルスレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのロータとインパルスユニットの慣性駆動部材とがカップリングを介してリジッドに(剛に即ち固定的に)相互連結されて一体型回転構造を形成する上記タイプのインパルスレンチについては既に記載がある。このようなモータロータとパルスユニットの慣性駆動部材との間の剛性連結部により、モータロータとパルスユニットとの一体型回転構造全体を2つの軸受のみにおいて支持できるようになった。この構成の目的は、インパルスレンチを小型・軽量化することによってレンチの人間工学的特徴を改善することである。
【0003】
一体構造を形成して2つの軸受のみにおいて支持されるモータロータとパルスユニットとを有するこの種のインパルスレンチは、欧州特許出願公開第2012/061317号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許出願公開第2012/061317号明細書
【文献】国際公開第1991/014541号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この上述したインパルスレンチでは、モータをパルスユニットに連結するカップリングに起因する2つの欠点が識別されており、1つ目の欠点は、一体型回転構造の2つの部品間に位置ずれを生じ得るカップリングの不十分な剛性に関するものであり、もう1つの欠点は、モータロータ及びハウジングの部品を取り外さなければ保守のためにハウジングからパルスユニットを取り外すことができないというカップリングの設計特徴に関するものである。
【0006】
上述したモータロータとパルスユニットの慣性駆動部材との間のカップリングの最初に述べた短所については、長い動作期間にわたって完全かつ十分に効率的なインパルスレンチの動作を維持するために、2つの軸受構成が非常に剛性の高い回転構造を必要とする。インパルスレンチでは、モータロータとパルスユニットの慣性駆動部材との間のカップリングが完全に剛性ではなく、すなわちいずれかの遊び又は不安定性がある場合、パルスの伝搬に支障を来す。この理由は、レンチによって発生する各トルクインパルスのエネルギーを生じる全回転慣性の活性部分がモータロータと慣性駆動部材とによって形成されているからである。モータロータと慣性駆動部材との間の連結部に遊びがあると、トルクピークが低下してはっきりしなくなる。
【0007】
モータロータとパルスユニットの慣性駆動部材との間のカップリングの剛性に関しては、最適なレンチの効率を得るためには、カップリングが完全に剛性であって、半径方向にも、軸方向にも、回転方向にも一切の遊びが存在しないことが極めて重要である。上記の公表文献に記載されている2つの軸受による一体型モータパルスユニット構成では、中心ねじによって軸方向に締め付けられる六角形とキー溝とを組み合わせたカップリングが採用されている。この種の連結部は、カップリングの組み立てを可能にするために何らかのごくわずかな初期遊びが不可避であるため、一切の遊びが発生しないことを保証するものではなく、中心ねじは、レンチの動作中における望ましくない半径方向及び/又は回転方向の遊びの発生を防がない軸方向の締め付け力しか付与しない。初期のごくわずかな遊びは、容易に望ましくないレベルまで拡大し得る。
【0008】
上述したパルスユニットの保守時における不便で時間を食うレンチの解体に関する欠点は、レンチハウジングからパルスユニットを取り外せるようにするにはカップリングを互いに軸方向に締め付ける中心ねじを取り外す必要があるという事実に起因する。ねじにはモータロータの内部からしかアクセスすることができず、すなわち保守時にパルスユニットの取り外しを可能にするにはモータと後方軸受とをハウジングから取り外す必要がある。つまり、レンチのオペレータに余分なサービスコストが掛かる不便で時間を食う余計な作業が発生してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、パルスユニットの慣性駆動部材に接続されたロータを有する電気モータを支持するハウジングを有し、モータロータとパルスユニットの慣性駆動部材との間の連結部がモータロータとパルスユニットとの間に発生するあらゆる遊びを防ぐことによって、送出されるトルクインパルスの最適な効率を保証するインパルスレンチを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、パルスユニットの慣性駆動部材に接続されたロータを有する電気モータを支持するハウジングを有し、モータロータとパルスユニットとの間の連結部が、ハウジングからのモータの分解及び/又は取り外しを必要とすることなくハウジングからのパルスユニットの取り外しを可能にするインパルスレンチを提供することである。
【0011】
以下の明細書及び特許請求の範囲からは、本発明のさらなる目的及び利点が明らかになるであろう。
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるインパルスレンチの一部を破断した側面図である。
図2図1のインパルスレンチに含まれているカップリングの拡大した詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図示のインパルスレンチは、出力制御トリガ12を備えたハンドル11を有するハウジング10と、例えば電源又は交換可能なバッテリユニットに接続された受電手段とを有している。ハウジング10は、電気モータ16を有する後部Bと、油圧式パルスユニット18を有する前部Aとを有している。前部Aは、パルスユニット18を支持する前方玉軸受19を支持する。
【0015】
これらのパルスユニット及びモータは、上述した欧州特許出願公開第2012/061317号に記載されているものと同様の設計であるため、これらについてはこれ以上詳細に説明しない。
【0016】
モータ16は、給電巻線を有する非回転式中心ステータ20と、ステータ20を取り囲む中空円筒部分23及び前方に延びる雌型カップリング部分24によって形成されるロータ21とを有する。ロータ21は、以下でさらに詳細に説明するカップリング28を介してパルスユニット18にモータトルクを伝えるように構成される。
【0017】
パルスユニット18は、モータトルク受信慣性部材26と出力シャフト27とを含み、出力シャフト27は、図示していないパルス発生機構を介して慣性部材26に断続的に結合される。出力シャフト27は、作動させるべきねじ継手に係合するナットソケットを受け取るように構成されている。慣性駆動部材26には、ロータ21の雌型カップリング部分24に収容され、これと協働してカップリング28を形成するように構成された、後方に延びる同軸カップリング部分32が形成される。
【0018】
パルスユニットは、既知の記載されている設計のものであり、従ってこれ以上詳細には説明しない。例えば、国際公開第1991/014541号を参照されたい。
【0019】
上述したように、ロータ21の雌型カップリング部分24及び慣性駆動部材26の雄型カップリング部分32は、ロータ21と慣性駆動部材26との間に剛性連結部を形成してロータ21と慣性駆動部材26とが一体型回転構造を形成するように意図されたカップリング28を共に形成する。この構造は、2つの軸方向に離間した玉軸受30及び19において、すなわち出力シャフト27に位置する前方軸受19と、カップリング28に位置する後方軸受30とにおいてハウジング10に対して支持される。従って、前方軸受19は、出力シャフト27のみならず、後方軸受30と共に全体的な一体構造の前端部も支持する。
【0020】
従って、カップリング28は、慣性駆動部材26上に同軸配置で配置された雄型カップリング部分32と、モータロータ21上に同軸配置で配置された雌型カップリング部分24とを含み、雄型カップリング部分32は、雌型カップリング部分24に収容されてカップリング28を形成するように構成されている。雄型カップリング部分32は、雌型カップリング部分24上の嵌合的な内側ねじ部25bに係合するように構成された外側ねじ部25aを備え、これによってロータ21と慣性駆動部材26との間にねじ連結部35を形成する。ねじ連結部34は、慣性駆動部材26とモータロータ21とを結合する軸方向締め付け力を達成するように意図される。
【0021】
雄型カップリング部分32には、雌型カップリング部分24上の嵌合的な内側円錐面37と協働するように意図された外側円錐面36が形成され、これによってロータ21と慣性駆動部材26との間に剛性の安定化固定連結部を形成する。円錐面36、37は、ねじ連結部34よりもパルスユニット18の近くに位置し、すなわちねじ連結部34は、円錐面36、37間の引張力及び結合作用を達成する。
【0022】
雄型及び雌型カップリング部分24、32間には、2つの軸方向に離間した案内支持部が、すなわち雄型カップリング部分32の最遠端に位置付して雌型カップリング部分24内の内側円筒案内面39と協働するように構成された外側円筒案内面38を有する第1の案内支持部と、雄型カップリング部分32上のねじ部25aと円錐面36との間に位置して雌型カップリング部分24内の内側円筒面45と協働するように構成された円筒支持面41を有する第2の案内支持部とが設けられる。中心に位置するねじ連結部34、及び案内支持面38、39、41、45の相互作用表面38、39によって得られる半径方向支持は、共に円錐面36、37間の正確な真の係合を保証して、雄型及び雌型カップリング部分32、24間に剛性結合効果をもたらすカップリングを円錐面36、37に形成させる。ロータ21と慣性駆動部材26との間のキー溝又は六角形カップリングのような他のタイプの連結部とは対象的に、慣性駆動部材26とモータロータ21とを連結する本発明によるカップリング28は完全に遊びが無く、レンチの長期使用期間中にも遊びの無い状態を持続する。このことは、レンチの最適なインパルス発生及び出力が持続することを意味する。
【0023】
ロータ21及び慣性駆動部材26を中心に配置して固定する手段を有する上述したカップリング28により、2つの部品間の非常に安定した遊びの無い連結部が得られるだけでなく、パルスユニット18に対する保守業務が容易になるという利点ももたらされる。パルスユニット18は、ねじ連結部34の中心位置に起因して、モータ及びハウジング10の他の部品を一切緩めたり又は取り外したりすることなくモータロータ21から分離してハウジング10から取り外すことができる。パルスユニット18を取り外す際には、前方軸受19を有するハウジング10の前部Aをハウジング10の残り部分から切り離し、ねじ連結部34を緩めることによって慣性駆動部材26をロータ21から引き離すことができる。ねじ連結部34を緩める際にロータ21が回転するのを防ぐために、ハウジング10内及びロータ21の周辺部には、1又は2以上のロックピンを挿入してハウジング10に対するロータ21の回転をロックできる2~3つの図示しない開口部が設けられる。
【0024】
なお、本発明は、上記で図示し説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で自由に変更することができる。
図1
図2