(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】抗菌性熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
C08G 18/83 20060101AFI20220405BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220405BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220405BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220405BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20220405BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20220405BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C08G18/83
C08G18/76 057
C08G18/48
C08G18/32 006
C08G18/66 074
C09D5/14
C09D175/08
(21)【出願番号】P 2019540668
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 US2018015837
(87)【国際公開番号】W WO2018140910
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-20
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ファ
(72)【発明者】
【氏名】デイ, ロジャー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォーフター, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】マカル, ユミット ジー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス, キアラ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 5/14
C09D 175/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性ポリマー組成物を作製するプロセスであって、前記プロセスが、
(a)抗菌性添加剤をポリマー材料中に混合するステップ
を含み、
前記ポリマー材料は、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結で構成されたポリマー主鎖を含み、そして
前記混合するステップは、前記ウレタン結合のうち少量の破壊をもたらして反応性イソシアネート基をもたらす条件下で行われ、そして
前記反応性イソシアネート基のうち2個またはそれよりも多くが前記抗菌性添加剤と反応して、前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料の前記ポリマー主鎖に共有結合させ、
その結果、抗菌性ポリマー組成物が得られる、プロセス。
【請求項2】
前記抗菌性添加剤が、脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記抗菌性添加剤が、脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニドを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、(a)ポリイソシアネート成分、(b)ポリオール成分、および(c)必要に応じた連鎖延長剤成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記混合するステップが、摂氏180から225度の間の温度で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記混合するステップが、前記抗菌性添加剤が前記ポリマー材料に添加される押出し機で行われ、前記混合するステップが、摂氏180から225度の間の温度で行われ、前記押出し機が、共回転自己ワイピングスクリューを備え、搬送および混合要素の混合物を備え、長さ対直径の比が30:1から50:1である、二軸の押出し機を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記抗菌性添加剤が、脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み、
前記反応性イソシアネート基が、前記抗菌性添加剤および前記ポリマー材料と反応して、前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料の前記ポリマー主鎖に共有結合させ、そして
前記混合するステップが、摂氏180から225度の間の温度で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記抗菌性添加剤が、ポリヘキサメチレンビグアニド、脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニド、またはこれらの組合せを含み、
前記ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)芳香族ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含み、
前記混合するステップが、前記抗菌性添加剤が前記ポリマー材料に添加される押出し機で行われ、そして前記混合するステップが、摂氏180から225度の間の温度で行われ、前記押出し機が、共回転自己ワイピングスクリューを備え、搬送および混合要素の混合物を備え、長さ対直径の比が30:1から50:1である、二軸の押出し機を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
得られた抗菌性ポリマー組成物が、AATCC 147 繊維材料の抗菌仕上げ評価:平行ストリーク法(AATCC 147 Antimicrobial Finishes on Textile Materials: Parallel Streak Method)によって決定されたときに非浸出性である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
ポリマー材料および抗菌性添加剤を含む抗菌性ポリマー組成物であって、
前記ポリマー材料が、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結を含むポリマー主鎖を含み、そして
前記抗菌性添加剤が、グアニドまたはビグアニドとイソシアネートとの窒素原子間の2つまたはそれよりも多くの連結によって、前記ポリマー材料の前記ポリマー主鎖に共有結合している、抗菌性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記抗菌性添加剤が、脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み、
前記ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項11に記載の抗菌性ポリマー組成物。
【請求項13】
抗菌性ポリマー組成物を含む物品であって、
前記抗菌性ポリマー組成物が、ポリマー材料および抗菌性添加剤を含み、
前記ポリマー材料が、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結を含むポリマー主鎖を含み、そして
前記抗菌性添加剤が、2つまたはそれよりも多くのイソシアネート連結によって、前記ポリマー材料の前記ポリマー主鎖に共有結合している、物品。
【請求項14】
前記抗菌性添加剤が、脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み、
前記ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記抗菌性ポリマー組成物が、前記物品を形成する材料上にコーティングされている、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
開示される技術は、良好な物理的特性を維持したまま非浸出抗菌特性を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物、同組成物の作製方法、およびそのような組成物から作製された物品を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
抗菌物質は、微生物有機体の成長または発生を低減および/もしくは緩和させる化学的化合物である。抗菌性添加剤は、作用様式、組成、活性度、および適用例に依存する様々なメカニズムによって作用する。適正に使用されるとき、抗菌性化合物は、標的微生物の死または成長停止をもたらす。1900年代初期のそれらの発見以来、抗菌物質は、感染性疾患の予防および処置を変えてきた。抗菌性添加剤は現在、様々な医学的適用例に使用されるポリマー材料での抗菌物質の使用を含めた、非常に多種多様な適用例にわたって使用されている。例えば、抗菌性添加剤を含むポリマー材料は、後に微生物有機体の成長または発生を排除、低減、および/もしくは緩和し、したがって医療用埋め込み物およびデバイスでの有害な感染症を含む感染性疾患の予防および処置を支援することになる、医学的適用例に向けた物品およびデバイスを作製するのに使用することができる。
【0003】
しかし、抗菌物質は、人の健康に有害にもなり得る。したがって、抗菌性添加剤が使用されている材料から浸出しない、抗菌性添加剤が求められている。さらに、抗菌性添加剤が使用されている材料から浸出しない、かつ材料の使用寿命全体を通して有効なままである、抗菌性添加剤が求められており、または抗菌性添加剤が使用されている材料から作製された物品もしくはデバイスが求められている。
【0004】
理想的には、これらの非浸出抗菌特性を提供する抗菌剤は、証明された使用履歴、および患者の健康にいかなる悪影響も及ぼさない様々な微生物に対する有効活性を有する。抗菌性材料、または抗菌性添加剤を含有するその他の材料は、医療用またはその他のヘルスケア製品および/またはその表面に、商業的に実現可能な製造方法、例えば成型、押出し、ならびに水媒介系および100%固形分(架橋可能な)液体を「変換」または溶媒ベースで処理するその他全ての熱可塑性方法によって、適用可能であるべきである。さらに、抗菌性添加剤は、処理される材料、医療用またはその他のヘルスケア製品ならびに/またはその表面の生理化学および/もしくは機械特性を妨げるべきではない。
【0005】
細菌感染は、医療用デバイスの使用に関連した一般的な合併症である。カテーテル、血管アクセスデバイス、末梢ライン、静脈内(IV)部位、ドレイン、経胃栄養管、気管チューブ、ステント、ガイドワイヤ、ペースメーカー、およびその他の埋め込み可能なデバイスを含むがこれらに限定されない様々な医療用デバイスの進歩は、診断上および治療上の医学的ケアに利益を与えてきた。しかし細菌感染は、医療用デバイス、特に危殆化された防御システムを用いて患者に埋め込まれるおよび/または使用される医療用デバイスの使用に関連した、重篤で一般的な合併症になりつつある。
【0006】
デバイス関連の感染を低減させる1つの手法は、例えば、抗菌性化合物を溶出および/または放出する材料で表面を作製しまたはコーティングすることによって、細菌活性を持つ表面を開発することである。ほぼ全ての処理は、下記の3つのカテゴリー:1)受動的なまたは界面活性剤と組み合わせたまたは表面結合ポリマーを用いた、材料の表面への抗菌性添加剤の吸着;2)材料表面上に塗布されたポリマーコーティング内への抗菌性添加剤の組み込み;3)デバイスを含むバルク材料中への抗菌性添加剤の配合、のうちの1つに包含される。
【0007】
しかし、これらの手法は全て、抗菌性添加剤が添加された材料の外に抗菌性添加剤が浸出する、浸出メカニズムに基づく。このことは、材料の抗菌性能が一般に、抗菌性添加剤(負荷)の濃度と、抗菌性添加剤が添加されている材料からのその放出の速度とに依存することを意味する。放出速度を制御し、表面において一定レベルの濃度を維持することは、しばしば非常に難しく、それは放出速度が、バルクポリマー中でのこれら活性成分の実際の濃度、溶解度、および拡散率など、使用時間の経過によっても変化し得る多くの因子に依存するからである。これらの課題の全ては、この浸出メカニズムに基づく手法がしばしば効果がないことを意味する。
【0008】
したがって、医学的適用例に有用な抗菌組成物を創出するための、かつその抗菌特性を得るのに浸出メカニズムに依存しない、簡単で費用効果のある方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示される技術は、良好な物理的特性を維持したまま非浸出抗菌特性を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物、同組成物の作製方法、およびそのような組成物から作製された物品を提供する。
【0010】
開示される技術は、抗菌性ポリマー組成物を作製するプロセスであって、前記プロセスは、(a)抗菌性添加剤をポリマー材料中に混合するステップを含み、ポリマー材料は、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結で構成されたポリマー主鎖を含み;混合するステップは、ウレタン結合のうち少量の破壊をもたらして反応性イソシアネート基をもたらす条件下で行われ;前記反応性イソシアネート基のうち2個またはそれよりも多くが前記抗菌性添加剤と反応して、前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料のポリマー主鎖に共有結合させ;その結果、抗菌性ポリマー組成物が得られる、プロセスを提供する。
【0011】
一部の実施形態では、抗菌性添加剤をポリマー主鎖の主鎖に反応させる手段によれば、得られる抗菌性ポリマー組成物の抗菌特性は実質的にまたは完全に非浸出性であり、抗菌性ポリマー組成物の物理的特性を保存することができる。
【0012】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含む、記述されるプロセスを開示する。これらの脱プロトン化化合物は、部分的脱プロトン化グアニジンおよび/もしくはビグアニジン化合物、完全脱プロトン化グアニジンおよび/もしくはビグアニジン化合物、またはこれらの混合物であってもよい。一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、遊離塩基PHMBとも呼ばれる脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)であり、一部の実施形態では、抗菌性添加剤はプロトン化PHMBを含まない。
【0013】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化PHMBを含む、記述されるプロセスを開示する。
【0014】
開示される技術はさらに、ポリマー材料が、(a)ポリイソシアネート成分、(b)ポリオール成分、および(c)必要に応じた連鎖延長剤成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、記述されるプロセスを開示する。
【0015】
開示される技術はさらに、ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、記述されるプロセスを開示する。一部の実施形態では、ポリエーテルポリオールは芳香族ポリエーテルポリオールである。
【0016】
開示される技術はさらに、混合するステップが、摂氏160から225度の温度で行われる、記述されるプロセスを開示する。混合するステップは、摂氏180から225、または160から200度で行ってもよい。一部の実施形態では、混合するステップが行われる温度の範囲は、抗菌性添加剤をポリマー材料に組み込んで、添加剤がポリマー材料の主鎖に反応するように、しかしポリマー材料中のウレタン連結が、広範な架橋が生じる程度に戻ってポリマー材料の物理的特性に影響を及ぼさないようにするために重要である。
【0017】
開示される技術はさらに、混合するステップが、抗菌性添加剤がポリマー材料に添加される押出し機で行われ、前記混合するステップが摂氏180から225度の間の温度で行われ、押出し機が、共回転自己ワイピングスクリューを備え、搬送および混合要素の混合物を備え、長さ対直径の比が20:1から50:1である、二軸の押出し機を含む、記述されるプロセスを開示する。
【0018】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み;ポリイソシアネートは、ポリウレタンが指示される温度で押し出されるときにポリウレタン結合の反転から不可避的に遊離され、ポリイソシアネートは、前記抗菌性添加剤および前記ポリマー材料と反応して前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料のポリマー主鎖に共有結合し;混合するステップが、摂氏180から225度の間、またはさらに摂氏190から210度の温度で行われる、記述されるプロセスを開示する。
【0019】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤がポリヘキサメチレンビグアニド、脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニド、部分脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニド、またはこれらの組合せを含み;ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含み;混合するステップが、抗菌性添加剤がポリマー材料に添加される押出し機で行われ、前記混合するステップが、摂氏180から225度の間の温度で行われ、押出し機が、共回転自己ワイピングスクリューを備え、搬送および混合要素の混合物を備え、長さ対直径の比が20:1から50:1である、二軸の押出し機を含む、記述されるプロセスを開示する。
【0020】
開示される技術はさらに、AATCC 147 繊維材料の抗菌仕上げ評価:平行ストリーク法(AATCC 147 Assessment of Antimicrobial Finishes on Textile Materials: Parallel Streak Method)において、阻害ゼロゾーンを示すことによって決定されたときに、得られる抗菌性ポリマー組成物が非浸出性である、記述されるプロセスを開示する。
【0021】
開示される技術はさらに、ポリマー材料および抗菌性添加剤から作製された抗菌性ポリマー組成物であって、ポリマー材料が、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結を含むポリマー主鎖を含み;抗菌性添加剤の少なくともいくつかは、グアニドまたはビグアニドとイソシアネートとの窒素原子間の2つまたはそれよりも多くの連結によって、ポリマー材料の前記ポリマー主鎖に共有結合している、抗菌性ポリマー組成物を開示する。
【0022】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化もしくは部分脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含む、記述される組成物を開示する。これらの脱プロトン化化合物は、部分脱プロトン化グアニジンおよび/もしくはビグアニジン化合物、完全脱プロトン化グアニジンおよび/もしくはビグアニジン化合物、またはこれらの混合物であってもよい。一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、遊離塩基PHMBとも呼ばれる脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)であり、一部の実施形態では、抗菌性添加剤はプロトン化PHMBを含まない。
【0023】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化PHMBを含む、記述される組成物を開示する。
【0024】
開示される技術はさらに、ポリマー材料が、(a)ポリイソシアネート成分、(b)ポリオール成分、および(c)必要に応じた連鎖延長剤成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、記述される組成物を開示する。
【0025】
開示される技術はさらに、ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化MDI、またはヘキサメチレンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、記述される組成物を開示する。
【0026】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み;指示される温度で押出しプロセス中に遊離されたポリイソシアネートが、前記抗菌性添加剤および前記ポリマー材料と反応して、前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料のポリマー主鎖に共有結合させる、記述される組成物を開示する。
【0027】
開示される技術はさらに、AATCC 147 繊維材料の抗菌仕上げ評価:平行ストリーク法(AATCC 147 Assessment of Antimicrobial Finishes on Textile Materials: Parallel Streak Method)によって決定されたときに、抗菌性ポリマー組成物が非浸出性である、記述される組成物を開示する。
【0028】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み;ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、記述される組成物を開示する。
【0029】
開示される技術はさらに、本明細書に記述される抗菌性ポリマー組成物で作製された物品を開示する。一部の実施形態では、物品は、ポリマー材料および抗菌性添加剤から作製された抗菌性ポリマー組成物から作製され、ポリマー材料は、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結を含むポリマー主鎖を含み;抗菌性添加剤は、2つまたはそれよりも多くのウレタン(もしくはカルバメート)連結によってポリマー材料の前記ポリマー主鎖に共有結合している。
【0030】
開示される技術はさらに、抗菌性添加剤が脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含み;ポリマー材料が、(a)ジフェニルメタンジイソシアネート、(b)ポリエーテルポリオール、および(c)ブタンジオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む、記述される物品を開示する。
【0031】
開示される技術はさらに、本明細書に記述される抗菌性ポリマー組成物が、物品を形成する材料および/または表面上にコーティングされている、記述される物品を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
様々な好ましい特徴および実施形態について、非限定的な例示を用いて以下に記述する。
【0033】
開示される技術は、良好な物理的特性を維持したまま非浸出抗菌特性を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物、同組成物の作製方法、およびそのような組成物から作製された物品を提供する。
【0034】
開示される技術は、抗菌性ポリマー組成物を作製するプロセスであって、前記プロセスは、(a)抗菌性添加剤をポリマー材料中に混合するステップを含み;ポリマー材料は、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結で構成されたポリマー主鎖を含み;混合するステップは、ウレタン結合のうち少量の破壊をもたらして反応性イソシアネート基をもたらす条件下で行われ;前記反応性イソシアネート基のうち2個またはそれよりも多くが前記抗菌性添加剤と反応して、前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料のポリマー主鎖に共有結合させ;その結果、抗菌性ポリマー組成物が得られる、プロセスを提供する。
抗菌性添加剤
【0035】
開示される技術で使用される抗菌性添加剤は、抗菌性添加剤が組み込まれるポリマー材料に抗菌特性を提供し、抗菌性添加剤は、共有結合が形成されるようにイソシアネート基と反応することができる少なくとも2個の基および/または反応性部位を有する。このことが、本明細書に記述されるポリマー材料の主鎖との反応を可能にし、記述される抗菌性ポリマー組成物をもたらす。
【0036】
適切な抗菌性添加剤は、脱プロトン化グアニジン化合物、脱プロトン化ビグアニジン化合物、またはこれらの混合物を含む。これらの脱プロトン化化合物は、部分脱プロトン化グアニジンおよび/もしくはビグアニジン化合物、完全脱プロトン化グアニジンおよび/もしくはビグアニジン化合物、またはこれらの混合物であってもよい。一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、遊離塩基PHMB(その一例は、Matrixから市販されている)とも呼ばれる脱プロトン化ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)である。一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、プロトン化グアニジンおよび/またはビグアニジン化合物を含んでいてもよい。他の実施形態では、抗菌性添加剤は、プロトン化グアニジンおよび/またはビグアニジン化合物を実質的に含まずまたはさらに完全に含まない。
【0037】
上述の抗菌性添加剤に加え、1種または複数種の追加の抗菌性添加剤を、本明細書に記述される組成物中に使用してもよい。これらの添加剤は、記述されるそのような添加剤が反応するようには主鎖に反応しないと考えられ、しかし追加の抗菌性添加剤は、(i)受動的なまたは界面活性剤と組み合わせたまたは表面結合ポリマーを用いた材料の表面への抗菌性添加剤の吸着;(ii)材料表面上に塗布されたポリマーコーティングへの抗菌性添加剤の組込み;(iii)デバイスを含むバルク材料中への抗菌性添加剤の配合を含む、より慣習的な方法で組成物に添加することができる。
【0038】
これらの追加の抗菌性添加剤として使用され得る適切な抗菌性添加剤は、過度に限定されない。
【0039】
それらは、有機または有機金属化合物、例えば第四級アンモニウム塩、フェノール、アルコール、アルデヒド、ヨードフォア、ポリクアット(poly quats)(エチレン系不飽和ジアミンおよびエチレン系不飽和ジハロ化合物から誘導体化されたオリゴマーポリクアットなど)、ビグアニド、ベンゾエート、パラベン、ソルベート、プロピオネート、イミダゾリジニル尿素、1-(3-クロロアリル)-3,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンテン塩化物(Dowacil 200、クオタニウム)、イソチアゾロン、DMDMヒダントイン(2,3-イミダゾリジンジオン)、フェノキシエタノール、ブロノポール、フルオロキノロン(シプロフロキサシンなど)、「強力な」ベータ-ラクタム(第三および第四世代セファロスポリン、カルバペネム)、ベータ-ラクタム/ベータ-ラクタマーゼ阻害剤、糖ペプチド、アミノグリコシド、抗生剤、ヘパリン、ホスホリルコリン化合物、スルホベタイン、カルボキシベタイン、ならびに銀塩、亜鉛塩、および銅塩から選択される有機金属塩、ならびにそれらの誘導体とすることができる。これらの抗菌剤の例には、ペニシリン、トリクロサン、官能性ビグアニド、単官能性ポリクオタニウム、第四級化単官能性ポリビニルピロリドン(PVP)、シラン第四級アンモニウム化合物、およびその他の第四級化アンモニウム塩などの医薬品薬物が含まれる。
【0040】
一実施形態では、追加の抗菌性添加剤は、米国特許第6,492,445B2号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている第四級アンモニウム分子である。
【0041】
適切な単官能性抗菌化合物の他の例には、2-ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、2-ヒドロキシエチルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、エステルクアット(esterquats)、例えばベヘノイルPG-トリモニウムクロリド(Mason Chemical社製)、フルオロクアット(Fluoroquats)が含まれる。抗菌活性中心を保持するその他の低分子ジオールを、連鎖延長剤としてポリウレタン主鎖に組み込むことができる。そのような抗菌性連鎖延長剤の例には、ジエステルクアット(diester quats)、例えばメチルビス[エチル(タロウェート)]-2-ヒドロキシエチル]アンモニウムメチルスルフェート(CAS No.91995-81-2)、エソカード、例えばオクタデシルメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド(CAS No.3010-24-0)、オレイル-ビス-(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロリド、Lion Akzo Co. Ltdから入手可能なポリオキシエチレン(15)ココアルキルメチルアンモニウムクロリド(CAS No.61791-10-4)、および同様のものが含まれる。
【0042】
しかし、一部の実施形態では、追加の抗菌性添加剤は存在しない。むしろ、イソシアネート基と反応して共有結合を形成することができる少なくとも2個の基および/または反応性部位を有する、上述の抗菌性添加剤のみが、本明細書に記述されるプロセスで使用され、本明細書に記述される組成物を作製するのに使用される。言い換えれば、一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、イソシアネート基と反応して共有結合を形成することができる少なくとも2個の基および/または反応性部位を持たない添加剤を含まない。
【0043】
抗菌性添加剤は、任意の有効量で、即ち良好な抗菌性能を提供する量で、本明細書に記述される組成物中に存在していてもよい。一部の実施形態では、良好な抗菌性能は、本明細書に記述される試験の1つまたは複数で合格する結果を意味する。一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、記述される組成物中に、全組成物の0.1から10重量パーセントで、または0.1から5、または0.1から4重量パーセントで存在する。他の実施形態では、抗菌性添加剤は、記述される組成物中に、0.1、0.5、または1.0重量パーセントの下限から2.0、4.0、5.0、または10重量パーセントの上限まで存在する。一部の実施形態では、抗菌性添加剤は、記述される組成物中に、2.0から6.0重量パーセントで存在する。さらに他の実施形態では、抗菌性添加剤は、記述される組成物中に、1.5または2.0重量パーセントの下限から3.0または3.5重量パーセントの上限まで、またはさらに2.5重量パーセントで存在する。
ポリマー材料
【0044】
開示される技術は、ポリマー材料を作製し利用する。ポリマー材料は、それ自体がポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結で構成される、ポリマー主鎖で構成される。
【0045】
ポリマー材料のポリマー主鎖中のこれらの連結は、開示される技術に重要であり、その理由は、上述の抗菌性添加剤と後に反応することができる活性反応部位を創出するのがこれら連結の少数の反転であるからである。下記の反応は、抗菌性添加剤がポリマー材料のポリマー主鎖に直接結合し、したがって非浸出抗菌特性を組成物全体に与える新しいポリマー材料をもたらす。
【0046】
本明細書に記述されるプロセス、組成物、および物品に使用するのに適切なポリマー材料は、その主鎖に、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結を含む、任意のポリマー材料、またはウレタン連結を含有するポリマーの1種をブレンド中に含有するポリマーブレンドを含んでいてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、ポリマー材料は、(a)ポリイソシアネート成分、(b)ポリオール成分、および(c)必要に応じた連鎖延長剤成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0048】
一部の実施形態では、ポリマー材料は、(a)ポリイソシアネート成分、(b)ポリオール成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0049】
一部の実施形態では、ポリマー材料は、(a)ポリイソシアネート成分、(b)ポリオール成分、および(c)連鎖延長剤成分から誘導された熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0050】
ポリイソシアネート成分は、1種または複数のポリイソシアネートを含有していてもよい。適切なポリイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、またはこれらの組合せを含む。
【0051】
一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、1種または複数種の脂肪族ジイソシアネートを含む。一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、芳香族ジイソシアネートを本質的に含まず、またはさらに完全に含まない。他の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、1種または複数種の芳香族ジイソシアネートと組み合わせて、1種または複数種の脂肪族ジイソシアネートを含む。
【0052】
一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、1種または複数の芳香族ジイソシアネートを含む。一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、脂肪族ジイソシアネートを本質的に含まずまたはさらに完全に含まない。他の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、1種または複数の脂肪族ポリイソシアネートと組み合わせて、1種または複数の芳香族ジイソシアネートを含む。
【0053】
有用なポリイソシアネートの例には、芳香族ジイソシアネート、例えば、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、m-キシレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネート(TDI);3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ならびに脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI) 4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン-1,10-ジイソシアネート、リシンジイソシアネート(LDI)、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、イソホロンジイソシアネート(PDI)、およびジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)が含まれ得る。2種またはそれ超のポリイソシアネートの混合物を使用してもよい。一部の実施形態では、ポリイソシアネートはMDIおよび/またはH12MDIである。一部の実施形態では、ポリイソシアネートはMDIを含む。一部の実施形態では、ポリイソシアネートはH12MDIを含む。
【0054】
一部の実施形態では、2種またはそれよりも多くのポリイソシアネートの混合物が使用されてもよい。
【0055】
一部の実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、HDIを含むポリイソシアネート成分で調製される。一部の実施形態では、熱可塑性ポリウレタンHDIは、H12MDIから本質的になるポリイソシアネート成分で調製した。一部の実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、HDIからなるポリイソシアネート成分で調製される。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書に記述されるTPUおよび/またはTPU組成物を調製するのに使用されるポリイソシアネートは、重量ベースで少なくとも50%の脂環式ジイソシアネートである。一部の実施形態では、ポリイソシアネートは、5から20個の炭素原子を有するα,ω-アルキレンジイソシアネートを含む。
【0057】
一部の実施形態では、本明細書に記述されるTPUおよび/またはTPU組成物を調製するのに使用されるポリイソシアネートは、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、またはこれらの組合せを含む。
【0058】
一部の実施形態では、記述されるTPUは、HDI、H12MDI、LDI、IPDI、またはこれらの組合せを含むポリイソシアネート成分により調製される。一部の実施形態では、TPUは、HDIからなるまたはHDIからさらに本質的になるポリイソシアネート成分により調製される。
【0059】
さらに他の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、任意の非直鎖状脂肪族ジイソシアネート、任意の芳香族ジイソシアネート、または両方を、本質的に含まない(またはさらに完全に含まない)。さらに他の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、上述の直鎖状脂肪族ジイソシアネート以外の任意のポリイソシアネートを本質的に含まない(またはさらに完全に含まない)。
【0060】
一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネート、H12MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネートである。一部の実施形態では、ポリイソシアネート成分はヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0061】
ポリオール成分は、1種または複数のポリオールを含有していてもよい。本発明で使用するのに適切なポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、およびこれらの組合せを含んでいてもよい。ヒドロキシル末端中間体としても記述され得る適切なポリオールは、存在する場合、1種または複数種のヒドロキシル末端ポリエステル、1種または複数種のヒドロキシル末端ポリエーテル、1種または複数種のヒドロキシル末端ポリカーボネート、1種または複数種のヒドロキシル末端ポリシロキサン、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0062】
適切なヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、数平均分子量(Mn)が約500から約10,000、約700から約5,000、または約700から約4,000であり、一般に酸価が1.3未満または0.5未満である、線状ポリエステルを含む。分子量は、末端官能基のアッセイによって決定され、数平均分子量に関係する。ポリエステル中間体は、(1)1種または複数種のグリコールと1種または複数種のジカルボン酸もしくは無水物とのエステル化反応によって、または(2)エステル交換反応、即ち1種または複数種のグリコールとジカルボン酸エステルとの反応によって、生成されてもよい。末端ヒドロキシル基が圧倒的多数である直鎖が得られるように、一般に酸に対してグリコールが1モル超過剰なモル比が好まれる。適切なポリエステル中間体は、ε-カプロラクトンから典型的には作製されるポリカプロラクトンなどの様々なラクトン、およびジエチレングリコールなどの二官能性開始剤も含む。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはこれらの組合せとすることができる。単独でまたは混合物中で使用され得る適切なジカルボン酸は、一般に合計で4から15個の炭素原子を有し:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などを含む。フタル酸無水物またはテトラヒドロフタル酸無水物などの上記ジカルボン酸の無水物を使用することもできる。アジピン酸が好ましい酸である。反応して所望のポリエステル中間体を形成するグリコールは、脂肪族、芳香族、またはこれらの組合せとすることができ、連鎖延長剤のセクションで既に記述されたグリコールのいずれかを含み、合計で2から20個または2から12個の炭素原子を有する。適切な例には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、およびこれらの混合物が含まれる。
【0063】
ポリオール成分は、1種または複数種のポリカプロラクトンポリエステルポリオールを含んでいてもよい。本明細書に記述される技術に有用なポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、カプロラクトンモノマーから誘導されたポリエステルジオールを含む。ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、第一級ヒドロキシル基により終結する。適切なポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、ε-カプロラクトンと、二官能性開始剤、例えばジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、または本明細書に列挙されるその他のグリコールおよび/もしくはジオールのいずれかとから作製されてもよい。一部の実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールが、カプロラクトンモノマーから誘導された線状ポリエステルジオールである。
【0064】
有用な例には、CAPA(商標)2202A、2,000数平均分子量(Mn)線状ポリエステルジオール、およびCAPA(商標)2302A、3,000Mn線状ポリエステルジオールが含まれ、それらは共にPerstorp Polyols Inc.から市販されているものである。これらの材料は、2-オキセパノンおよび1,4-ブタンジオールのポリマーと記述されてもよい。
【0065】
ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、2-オキセパノンおよびジオールから調製されてもよく、このジオールは、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、モノエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、またはこれらの任意の組合せであってもよい。一部の実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールを調製するのに使用されるジオールが線状である。一部の実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールが1,4-ブタンジオールから調製される。一部の実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、500から10,000、または500から3,000、または600から1,000、または1,00から3,000、または500もしくは600から、または1,000もしくはさらに2,000から、4,000もしくはさらに3,000もしくはさらに約2000までの数平均分子量を有する。
【0066】
適切なヒドロキシル末端ポリエーテル中間体は、合計で2から15個の炭素原子を有するジオールまたはポリオールから誘導されたポリエーテルポリオールを含み、一部の実施形態では、2から6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、典型的にはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはこれらの混合物を含む、エーテルと反応させられたアルキルジオールまたはグリコールである。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエーテルは、最初にプロピレングリコールとプロピレンオキシドとを反応させ、その後、引き続きエチレンオキシドと反応させることによって、生成することができる。エチレンオキシドから得られる第一級ヒドロキシル基は、第二級ヒドロキシル基よりも反応性があり、したがって好ましい。有用な商用のポリエーテルポリオールは、エチレングリコールと反応させられたエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応させられたプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレン)グリコール、重合テトラヒドロフランと記述することもできかつPTMEGと一般に呼ばれるテトラヒドロフランと反応させられた水を含むポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)を含む。一部の実施形態では、ポリエーテル中間体がPTMEGを含む。適切なポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシドのポリアミド付加物も含み、例えば、エチレンジアミンおよびプロピレンオキシドの反応生成物を含むエチレンジアミン付加物と、ジエチレントリアミンおよびプロピレンオキシドの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加物と、類似のポリアミド型ポリエーテルポリオールとを含むことができる。コポリエーテルを、所望の組成物中に利用することもできる。典型的なコポリエーテルには、THFとエチレンオキシドとの、またはTHFとプロピレンオキシドとの反応生成物が含まれる。これらは、BASFから、PolyTHF(登録商標)B、ブロックコポリマー、およびPolyTHF(登録商標)R、ランダムコポリマーとして、入手可能である。様々なポリエーテル中間体は、一般に、約700よりも大きい、例えば約700から約10,000、約1,000から約5,000、または約1,000から約2,500の平均分子量である、末端官能基のアッセイによって決定された数平均分子量(Mn)を有する。一部の実施形態では、ポリエーテル中間体は、2種またはそれ超の異なる分子量ポリエーテルのブレンド、例えば2,000Mnおよび1,000MnのPTMEGのブレンドを含む。
【0067】
適切なヒドロキシル末端ポリカーボネートは、グリコールとカーボネートとを反応させることによって調製されたものを含む。米国特許第4,131,731号は、ヒドロキシル末端ポリカーボネートおよびその調製の開示に関して参照により本明細書に組み込まれる。そのようなポリカーボネートは線状であり、末端ヒドロキシル基を有するが、その他の末端基は本質的に排除されている。本質的な反応物は、グリコールおよびカーボネートである。適切なグリコールは、4から40個および またはさらに4から12個の炭素原子を含有する脂環式および脂肪族ジオールから、および1分子当たり2から20個のアルコキシ基を含有するポリオキシアルキレングリコールであって各アルコキシ基が2から4個の炭素原子を含有しているものから、選択される。適切なジオールには、4から12個の炭素原子を含有する脂肪族ジオール、例えば1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール;および脂環式ジオール、例えば1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジオール-、1,3-ジメチロールシクロヘキサン-、1,4-エンドメチレン-2-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、およびポリアルキレングリコールが含まれる。反応に使用されるジオールは、最終生成物に望まれる性質に応じて、単一のジオールであってもジオールの混合物であってもよい。ヒドロキシル末端であるポリカーボネート中間体は、一般に当技術分野および文献で公知のものである。適切なカーボネートは、5から7員環で構成されるアルキレンカーボネートから選択される。本明細書で使用される適切なカーボネートには、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-エチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、および2,4-ペンチレンカーボネートが含まれる。また、ジアルキルカーボネート、脂環式カーボネート、およびジアリールカーボネートも本明細書では適切である。ジアルキルカーボネートは、2から5個の炭素原子を各アルキル基中に含有することができ、その特定の例は、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートである。脂環式カーボネート、特に二脂環式カーボネートは、4から7個の炭素原子を各環状構造内に含有することができ、そのような構造の1つまたは2つを存在させることができる。一方の基が脂環式であるとき、他方はアルキルまたはアリールのどちらかであり得る。それに対して、一方の基がアリールである場合、他方はアルキルまたは脂環式であり得る。6から20個の炭素原子を各アリール基中に含有することができる、適切なジアリールカーボネートの例は、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、およびジナフチルカーボネートである。
【0068】
適切なポリシロキサンポリオールは、α-ω-ヒドロキシルまたはアミンまたはカルボン酸またはチオールまたはエポキシ末端ポリシロキサンを含む。その例には、ヒドロキシルまたはアミンまたはカルボン酸またはチオールまたはエポキシ基で終結するポリ(ジメチルシロキサン)(poly(dimethysiloxane))が含まれる。一部の実施形態では、ポリシロキサンポリオールがヒドロキシル末端ポリシロキサンである。一部の実施形態では、ポリシロキサンポリオールは、300から5,000または400から3,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0069】
ポリシロキサンポリオールは、ポリシロキサン主鎖上にアルコール性ヒドロキシ基を導入するための、ポリシロキサン水素化物と脂肪族多価アルコールまたはポリオキシアルキレンアルコールとの間の脱水素反応によって、得られてもよい。
【0070】
一部の実施形態では、ポリシロキサンは、下式:
【化1】
を有する1種または複数種の化合物により表されてもよく、
【0071】
式中:各R1およびR2は、独立して、1から4個の炭素原子のアルキル基、ベンジル、またはフェニル基であり;各Eは、OHまたはNHR3(式中、R3は、水素、1から6個の炭素原子のアルキル基、または5から8個の炭素原子のシクロ-アルキル基である)であり;aおよびbは、それぞれ独立して、2から8の整数であり;cは、3から50の整数である。アミノ含有ポリシロキサンでは、E基の少なくとも1つがNHR3である。ヒドロキシル含有ポリシロキサンでは、E基の少なくとも1つがOHである。一部の実施形態では、R1およびR2が共にメチル基である。
【0072】
適切な例には、α,ω-ヒドロキシプロピル末端ポリ(ジメチルシロキサン)およびα,ω-アミノプロピル末端ポリ(ジメチルシロキサン)が含まれ、それらは共に市販されている材料である。さらなる例には、ポリ(ジメチルシロキサン)材料とポリ(アルキレンオキシド)とのコポリマーが含まれる。
【0073】
ポリオール成分は、存在する場合には、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、ポリ(トリメチレンオキシド)、エチレンオキシドでキャップされたポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレン-co-ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタメチレンアジペート)、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール、ポリ(ペンタメチレンカーボネート)グリコール、ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコール、ダイマー脂肪酸をベースにしたポリエステルポリオール、植物油をベースにしたポリオール、またはこれらの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0074】
適切なポリエステルポリオールを調製するのに使用されてもよいダイマー脂肪酸の例には、Crodaから市販されているPriplast(商標)ポリエステルグリコール/ポリオール、およびOleonから市販されているRadia(登録商標)ポリエステルグリコールが含まれる。
【0075】
一部の実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0076】
一部の実施形態では、ポリオール成分がポリエーテルポリオールを含む。一部の実施形態では、ポリオール成分は、ポリエステルポリオールを本質的に含まずまたはさらに完全に含まない。一部の実施形態では、TPUを調製するのに使用されるポリオール成分は、ポリシロキサンを実質的に含まずまたはさらに完全に含まない。
【0077】
一部の実施形態では、ポリオール成分は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマー、およびエピクロロヒドリンなど、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、ポリオール成分は、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)を含む。
【0078】
他の実施形態では、ポリオール成分は、任意のポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、または上記の全てを本質的に含まない(またはさらに完全に含まない)。
【0079】
テレケリックポリアミドポリオールを含む適切なポリアミドオリゴマーは、過度に限定されず、低分子量ポリアミドオリゴマーおよびテレケリックポリアミド(コポリマーを含む)であって、主鎖構造中にN-アルキル化アミド基を含むものを含む。テレケリックポリマーは、2個の反応性末端基を含有する高分子である。アミン末端ポリアミドオリゴマーは、開示される技術におけるポリオールとして有用であり得る。ポリアミドオリゴマーという用語は、2つまたはそれよりも多くのアミド連結を持つオリゴマーを指し、または場合によってはアミド連結の量が指定される。ポリアミドオリゴマーのサブセットは、テレケリックポリアミドである。テレケリックポリアミドは、単一化学型の2個の官能基、例えば2個の末端アミン基(第一級、第二級、または混合物のいずれかを意味する)、2個の末端カルボキシル基、2個の末端ヒドロキシル基(この場合も、第一級、第二級、または混合物を意味する)、または2個の末端イソシアネート基(脂肪族、芳香族、または混合物を意味する)を高い百分率でまたは指定された百分率で持つポリアミドオリゴマーである。テレケリックの定義を満たすことができる二官能基パーセントに関する範囲は、より高いまたはより低い官能性とは対照的に、二官能性であるオリゴマーを少なくとも70、80、90、または95モル%含む。反応性アミン末端テレケリックポリアミドは、末端基が共にアミン型であり、第一級または第二級のいずれかおよびこれらの混合物である、即ち第三級アミン基を除外した、テレケリックポリアミドオリゴマーである。
【0080】
一部の実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである。一部の実施形態では、ポリエーテルポリオールはPTMEGである。
【0081】
一部の実施形態では、連鎖延長剤成分は、1種または複数の連鎖延長剤を含有していてもよい。本発明で使用するのに適切な連鎖延長剤は、一般式HO-(CH2)x-OH(式中、xは2から12の整数であり、または4から6の整数でもある)の少なくとも1種のジオール連鎖延長剤を含んでいてもよい。他の実施形態では、xは整数4である。
【0082】
有用な延長剤はまた、比較的小さいポリヒドロキシ化合物などのジオール連鎖延長剤、例えば、2から20個、または2から12個、または2から10個の炭素原子を有する低級脂肪族または短鎖グリコールを含む。適切な例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(HEPP)、ヘプタンジオール、ノナンジオール、ドデカンジオール、エチレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびヒドロキシエチルレゾルシノール(HER)など、ならびにこれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、連鎖延長剤は、BDO、HDO、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、連鎖延長剤がBDOを含む。その他のグリコール、例えば芳香族グリコールを使用することができるが、一部の実施形態では、本明細書に記述されるTPUは、そのような材料またはその組合せを本質的に含まずまたはさらに完全に含まない。
【0083】
一部の実施形態では、連鎖延長剤は、環状連鎖延長剤を含む。適切な例には、CHDM、HEPP、HER、およびこれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、連鎖延長剤は、芳香族環状連鎖延長剤、例えばHEPP、HER、またはこれらの組合せを含み得る。一部の実施形態では、連鎖延長剤は、脂肪族環状連鎖延長剤、例えばCHDMを含み得る。一部の実施形態では、連鎖延長剤は、芳香族連鎖延長剤、例えば芳香族環状連鎖延長剤を実質的に含まずまたはさらに完全に含まない。一部の実施形態では、連鎖延長剤は、ポリシロキサンを実質的に含まずまたはさらに完全に含まない。
【0084】
一部の実施形態では、連鎖延長剤成分は、ブタンジオールである。
抗菌性ポリマー材料
【0085】
本明細書に記述されるポリマー材料は、一般に、上述の熱可塑性ポリウレタン(TPU)材料の1種または複数を含む。
【0086】
ポリマー材料は、1種または複数種の追加の成分も含み得る。これらの追加の成分は、本明細書に記述されるTPUとブレンドされ得るその他のポリマー性材料を含む。これらの追加の成分は、組成物の性質に影響を及ぼすための、TPUに添加され得る1種もしくは複数の添加剤またはTPUを含有するブレンドも含む。
【0087】
本明細書に記述されるTPUは、1種または複数種のその他のポリマーとブレンドされてもよい。本明細書に記述されるTPUがブレンドされ得るポリマーは、過度に限定されない。一部の実施形態では、記述される組成物は、記述されるTPU材料のうちの2種またはそれ超を含む。一部の実施形態では、組成物は、記述されるTPU材料の少なくとも1種と、記述されるTPU材料の1種ではない少なくとも1種のその他のポリマーとを含む。一部の実施形態では、記述されるブレンドは、TPU組成物に関して既に述べた性質と同じ組合せを有する。他の実施形態では、TPU組成物は、当然ながら記述される性質の組合せを有することになり、一方、上述のその他のポリマー性材料のうちの1種または複数種とのTPU組成物のブレンドは、そうであってもそうでなくてもよい。
【0088】
本明細書に記述されるTPU材料と組み合わせて使用され得るポリマーは、非カプロラクトンポリエステルベースのTPU、ポリエーテルをベースにしたTPU、または非カプロラクトンポリエステルおよびポリエーテル基の両方を含有するTPUなどの、より慣習的なTPU材料も含む。本明細書に記述されるTPU材料とブレンドされ得るその他の適切な材料には、ポリカーボネート、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリオキシメチレンポリマー、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、またはこれらの組合せが含まれる。
【0089】
本明細書に記述されるブレンド使用されるポリマーには、ホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。適切な例には、(i)ポリオレフィン(PO)、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリオキシエチレン(POE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、またはこれらの組合せ;(ii)スチレン系、例えばポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、スチレンブタジエンゴム(SBRまたはHIPS)、ポリアルファメチルスチレン、スチレンマレイン酸無水物(SMA)、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBC)(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBS)およびスチレン-エチレン/ブタジエン-スチレンコポリマー(SEBS))、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー(SEPS)、スチレンブタジエンラテックス(SBL)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)および/またはアクリル系エラストマーで修飾されたSAN(例えば、PS-SBRコポリマー)、またはこれらの組合せ;(iii)上述のもの以外の熱可塑性ポリウレタン(TPU);(iv)ポリアミド、例えばNylon(商標)であって、ポリアミド6,6(PA66)、ポリアミド1,1(PA11)、ポリアミド1,2(PA12)、コポリアミド(COPA)、またはこれらの組合せを含めたもの;(v)アクリル系ポリマー、例えばポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートスチレン(MS)コポリマー、またはこれらの組合せ;(vi)ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、またはこれらの組合せ;(vii)ポリオキシメチレン(polyoxyemethylene)、例えばポリアセタール;(viii)ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテル-エステルブロックコポリマーを含むコポリエステルおよび/またはポリエステルエラストマー(COPE)、例えばグリコール修飾ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー、またはこれらの組合せ;(ix)ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、またはこれらの組合せ;またはこれらの組合せが含まれる。
【0090】
一部の実施形態では、これらのブレンドは、群(i)、(iii)、(vii)、(viii)、またはこれらのいくつかの組合せから選択される、1種または複数種の追加のポリマー性材料を含む。一部の実施形態では、これらのブレンドは、群(i)から選択される1種または複数種の追加のポリマー性材料を含む。一部の実施形態では、これらのブレンドは、群(iii)から選択される1種または複数種の追加のポリマー性材料を含む。一部の実施形態では、これらのブレンドは、群(vii)から選択される1種または複数種の追加のポリマー性材料を含む。一部の実施形態では、これらのブレンドは、群(viii)から選択される1種または複数種の追加のポリマー性材料を含む。
【0091】
本明細書に記述されるTPU組成物で使用するのに適切な追加の添加剤は、過度に限定されない。適切な添加剤には、顔料、UV安定化剤、UV吸収剤、抗酸化剤、潤滑化剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、架橋活性化剤、難燃剤、層状化シリケート、放射線不透過剤(例えば、硫酸バリウム、タングステン金属、非酸化物ビスマス塩(non-oxide bismuth salt))、充填材、着色剤、強化剤、接着媒介剤、衝撃強度改良剤、抗菌物質、およびこれらの任意の組合せが含まれる。
【0092】
本明細書に記述されるTPU組成物は、安定化剤と呼んでもよい追加の添加剤も含み得る。安定化剤は、フェノール類、ホスファイト、チオエステル、およびアミンなどの抗酸化剤、ヒンダードアミン光安定化剤およびベンゾチアゾールUV吸収剤などの光安定化剤、その他のプロセス安定化剤、およびこれらの組合せを含んでいてもよい。一実施形態では、好ましい安定化剤は、BASFのIrganox(登録商標)-1010およびChemturaのNaugard(登録商標)-445である。安定化剤は、TPU組成物の約0.1重量パーセントから約5重量パーセント、別の実施形態では約0.1重量パーセントから約3重量パーセント、別の実施形態では約0.5重量パーセントから約1.5重量パーセントの量で使用される。
【0093】
またさらなる任意選択の添加剤を、本明細書に記述されるTPU組成物に使用してもよい。添加剤は、着色剤、抗酸化剤(フェノール類、ホスファイト、チオエステル、および/またはアミンを含む)、オゾン劣化防止剤、安定化剤、不活性充填材、潤滑剤、阻害剤、加水分解安定化剤、光安定化剤、ヒンダードアミン光安定化剤、ベンゾトリアゾールUV吸収剤、熱安定化剤、変色を防止する安定化剤、染料、顔料、無機および有機充填材、放射線不透過剤、強化剤、ならびにこれらの組合せを含む。
【0094】
上述の添加剤の全ては、これらの物質には通例の有効量で使用され得る。これらの追加の添加剤は、TPU樹脂の成分に、またはTPU樹脂を調製するための反応混合物に、またはTPU樹脂を作製した後に、組み込むことができる。別のプロセスでは、全ての材料をTPU樹脂と混合し、次いで溶融することができ、または全ての材料をTPU樹脂の溶融体に直接組み込むことができる。
プロセス
【0095】
開示される技術は、記述される抗菌性ポリマー組成物を作製するためのプロセスを含む。記述されるプロセスは、上述の1種または複数の抗菌性添加剤を、やはり上述の1種または複数のポリマー材料中に混合するステップを含む。ポリマー材料は、ポリイソシアネートおよびポリオールに由来するウレタン連結で構成されたポリマー主鎖を含む。混合するステップは、ウレタン結合のうち少量の破壊をもたらして反応性イソシアネート基をもたらす条件下で行われる。前記反応性イソシアネート基のうち2個またはそれよりも多くは、前記抗菌性添加剤と反応して、前記抗菌性添加剤を前記ポリマー材料のポリマー主鎖に共有結合させる。得られた材料は、抗菌性ポリマー組成物である。
【0096】
開示される技術は、抗菌性添加剤が、イソシアネート基と反応することが可能な記述される反応性基のうち2個またはそれよりも多くを有するとき、ならびにポリマー材料および抗菌性添加剤の混合が、ポリマー材料のポリマー主鎖に少数のウレタン連結をもたらす制御条件下で行われて、ポリマー材料のポリマー主鎖中のウレタン連結の少数が可逆的になりまたは解離するようになるとき、ならびに反応性イソシアネート基を持つようになった破壊されたポリマー鎖の比較的少数が抗菌性添加剤と反応して新しいポリマーが形成され、そこで破壊されたポリマー主鎖が新しい主鎖中に存在する抗菌性添加剤により再形成されるようになるとき、非浸出抗菌性ポリマー組成物の所望の結果を提供する。したがって、抗菌性添加剤は、ポリマー主鎖に接続されたまたは結合されたペンダント基として存在しない。さらに、抗菌性添加剤は、ポリマー鎖の末端に接続されたまたは結合された末端基として存在しない。むしろ開示される技術の抗菌性添加剤は、ポリマー材料自体の主鎖にランダムに結合される。さらになお、開示される技術の利益は、抗菌性添加剤がポリマー材料の合成中に添加される場合、得られるポリマー材料の主鎖全体を通して抗菌性添加剤を適正に費やすことができず、および/またはTPUの合成中に望ましくない副反応を創出する可能性があるので、実現することができない。また、ほとんどの抗菌性添加剤は、2箇所よりも多くの反応性部位を有するので、それらは架橋剤として作用する可能性があり、本明細書に記述される使用および適用例に適切ではない使用できない高架橋ポリマー材料を形成する。最後に、本明細書に記述される主鎖の破壊および再形成を創出しない条件下で抗菌性添加剤をポリマー材料に単に添加することは、抗菌性添加剤が主鎖に結合されたポリマー材料をもたらさず、むしろ抗菌性添加剤がポリマー材料に結合しておらず、浸出が生ずると考えられる、単純な混合物のみもたらすと考えられる。
【0097】
抗菌性添加剤がポリマー材料の主鎖に結合される、開示される技術の非浸出抗菌性ポリマー組成物は、ポリマー材料および抗菌性添加剤が混合される条件の慎重な制御によって実現される。特に押出しの温度および押出しスクリューの構成は、反応性イソシアネート基をもたらすようウレタン結合を適正に反転させるのに十分な熱エネルギーを保証するのに重要である。抗菌および非浸出ポリマー生成物をもたらす正確な温度およびスクリュー構成は、配合物中のTPUを生成するのにどのタイプのイソシアネートが使用されるのかに依存することになるが、それは脂肪族ウレタン結合が反転して、芳香族ウレタン結合よりも低い温度でイソシアネート基を与え、その結果、脂肪族TPUが配合物に使用される場合には、芳香族TPUと比較したときに抗菌TPUを生成するための押出しに関してより低い温度を使用できることが、当業者に周知だからである。
【0098】
最初に、本発明の熱可塑性ポリウレタンは、2ステップ、バッチプロセスまたはワンショット技法などであるがこれらに限定することのない、ポリウレタンエラストマーを合成するための当技術分野における従来のプロセスによって調製することができる。2ステッププロセスでは、プレポリマー中間体を過剰な量のジイソシアネートと反応させ、その後、それを連鎖延長する。バッチプロセスでは、望む場合には、成分、即ちジイソシアネート(複数可)、ポリオール(複数可)、および連鎖延長剤(複数可)、ならびに触媒(複数可)、および任意のその他の添加剤(複数可)を、容器に導入し、混合し、トレイに吐出して(dispense)、硬化させる。次いで硬化したTPUを顆粒化し、ペレット化することができる。ワンショット手順は、押出し機で、例えば一軸、二軸の押出し機で行い、形成可能成分が個々にまたは混合物として押出し機に導入される。
【0099】
1種または複数種の重合触媒を、重合反応中に存在させてもよい。一般に、任意の従来の触媒を利用して、ジイソシアネートとポリオール中間体または連鎖延長剤とを反応させることができる。ジイソシアネートのNCO基とポリオールのヒドロキシ基と連鎖延長剤との反応を特に加速させる、適切な触媒の例は、従来技術により公知の従来の第三級アミンであり、例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどであり、また特に、有機金属化合物、例えばチタンエステル(titanic ester)、鉄化合物、例えばアセチルアセトン第二鉄、スズ化合物、例えば二酢酸第一スズ、二オクタン酸第一スズ、二ラウリン酸第一スズ、または脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えば二酢酸ジブチルスズ、または二ラウリン酸ジブチルスズなどである。触媒の通常使用される量は、100重量部のポリヒドロキシ化合物(b)当たり、0.0001から0.1重量部である。
【0100】
上述のTPU材料は、上述のように、(I)a)少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネートを含む、上述のポリイソシアネート成分;b)少なくとも1種のポリエステルポリオールを含む、上述のポリオール成分;およびc)置換2,5-ジケトピペラジンを含む、上述の連鎖延長剤成分を反応させるステップを含むプロセスによって調製されてもよい。
【0101】
プロセスはさらに:(II)ステップ(I)のTPU組成物を、上述のもののいずれかを含む、1種または複数の追加のTPU材料および/またはポリマーを含む1種または複数種のブレンド成分と混合するステップを含んでいてもよい。
【0102】
プロセスはさらに:(II)ステップ(I)のTPU組成物を、顔料、UV安定化剤、UV吸収剤、抗酸化剤、潤滑化剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、架橋活性化剤、難燃剤、層状化シリケート、充填材、着色剤、強化剤、接着媒介剤、衝撃強度改良剤、および抗菌物質からなる群から選択される1種または複数種の追加の添加剤と混合するステップを含んでいてもよい。
【0103】
プロセスはさらに、(II)ステップ(I)のTPU組成物を、上述のもののいずれかを含む、1種または複数の追加のTPU材料および/またはポリマーを含む1種または複数種のブレンド成分と混合するステップ、ならびに/または(III)ステップ(I)のTPU組成物を、顔料、UV安定化剤、UV吸収剤、抗酸化剤、潤滑化剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、架橋活性化剤、難燃剤、層状化シリケート、充填材、着色剤、強化剤、接着媒介剤、衝撃強度改良剤、および抗菌物質からなる群から選択される1種または複数種の追加の添加剤と混合するステップを含んでいてもよい。
【0104】
プロセスはさらに、一般式HO-(CH2)x-OH(式中、xは2から6の整数である)の少なくとも1種のジオール連鎖延長剤を含む共延長剤成分の含有を、ステップIにおいて含んでいてもよい。
【0105】
TPUの用意ができたら、それを開示されるプロセスのポリマー材料として使用することができ、それを上述の抗菌性添加剤と混合することができる。
【0106】
慎重に制御された混合条件は、ポリマー材料を効果的に溶融し、抗菌性添加剤をポリマー材料中に効果的に混合し、また、少数のウレタン結合をポリマー材料の主鎖に効果的に反転または解離させなければならない。
【0107】
一部の実施形態では、理論に拘泥することを望むものではないが、出願人は、ポリマー材料の主鎖中で少数のウレタン結合が解離すると考える。このことは、一部の実施形態では、ポリマー材料の主鎖中の全ての結合の20%未満、または10%未満、または5%未満、または2%未満を意味する。他の実施形態では、このことは、結合の0.1から20%、またはウレタン結合の0.1から10、0.1から5、0.1から2%を意味する。他の実施形態では、このことは、結合の1から20%、またはウレタン結合の1から10、1から5、1から2%を意味する。さらに他の実施形態では、このことは、ウレタン結合の約0.1、0.2、0.5、または1%から、2、3、または5%を意味する。一部の実施形態では、ポリマー材料の主鎖中の少数のウレタン結合の解離は、ポリマー材料の主鎖中の全てのウレタン結合の0.1%から2%または0.1から5%を意味する。ウレタン結合破壊に関する追加の情報については、参照により共に組み込まれる、Chemical Review、2013年、113巻(1号)、80~118頁、およびMacromolecular Materials and Engineering、2003年、288巻(6号)、525~530頁を参照されたい。
【0108】
開示される技術はさらに、混合が摂氏160から225度の温度で混合デバイスで行われる、記述されるプロセスを開示する。混合は、摂氏180から225度、または摂氏160から200度で行ってもよい。
【0109】
ポリマー材料が脂肪族TPU(脂肪族ジイソシアネートから作製されたTPU)を含む、一部の実施形態では、混合は、摂氏160から200度の温度で混合デバイスで行われる。混合は、摂氏155から175度、または160から180度、またはさらに165から185度で行ってもよい。
【0110】
ポリマー材料が芳香族TPU(芳香族ジイソシアネートから作製されたTPU)を含む、一部の実施形態では、混合は、摂氏180から220度の温度で混合デバイスで行われる。混合は、摂氏175から215度、または180から220度、またはさらに185から225度で行ってもよい。
【0111】
開示される技術はさらに、混合が、抗菌性添加剤がポリマー材料に添加される押出し機内で行われ、前記混合が、摂氏180から225度の間の温度で行われ、押出し機が、共回転自己ワイピングスクリューを備え、搬送および混合要素の混合物を備え、長さ対直径の比が30:1から50:1である二軸の押出し機を含む、記述されるプロセスを開示する。他の実施形態では、記述される押出し機での記述されるプロセスは、摂氏160から200度、155から175度、160から180度、または165から185度で行われる。他の実施形態では、記述される押出し機での記述されるプロセスは、摂氏180から220度、175から215度、180から220度、または185から225度で行われる。
物品
【0112】
本明細書に記述される組成物は、1種または複数種の物品の調製に使用されてもよい。本明細書に記述されるTPU材料および/または組成物から作製され得る特定のタイプの物品は、過度に限定されない。
【0113】
本発明はさらに、本明細書に記述されるTPU材料および/または組成物から作製された物品を提供する。その例には、限定するものではないが、医療の適用例、ならびにパーソナルケアの適用例、医薬品の適用例、ヘルスケア製品の適用例、または任意のその他の数の適用例での使用が含まれる。これらの物品は、押出し、射出成型、または任意の組合せによって調製され得る。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書に記述される組成物は、管状医療用デバイスを作製するのに使用される。本発明の意味の範囲内にある管状医療用物品は、流体を伝導させることができるような医療用物品である。詳細には医療用物品は、カテーテル、中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、呼吸管、ステント、カップリング、ポート、コンジットシステム、コネクター、スパイク、弁、三方活栓、シリンジ、コンジット、注入ポート、創傷ドレイン、胸腔ドレイン、およびプローブからなる群から選択される。
【0115】
本明細書に記述される組成物を使用して作製することができる、他の適切な医療用物品には、中心静脈カテーテル;末梢静脈カテーテル;呼吸管、ステント;局所麻酔適用用の製品、特にカテーテル、カップリング、フィルター;輸液治療用の製品、特に容器、ポート、コンジットシステム、フィルター;付属品、例えばコネクター、スパイク、弁、三方活栓、シリンジ、コンジット、注入ポート;配合用の製品、特に移送セット、混合セット;泌尿器科用製品、特にカテーテル、尿測定および収集デバイス;創傷ドレイン;創傷ドレッシング;外科用縫合糸材料;埋め込み補助品ならびに埋め込み物、特にプラスチック埋め込み物、例えばヘルニアメッシュ、不織布、ニットウェア/ニット布、ポート、ポートカテーテル、人工血管;消毒剤;使い捨て外科用器具;胸部ドレイン;プローブ;カテーテル;医療用デバイスのハウジング、特に輸液ポンプ、透析デバイスおよびスクリーン;人工義歯;液体用の容器、特にコンタクトレンズの容器が含まれる。本明細書に開示される組成物に対する他の適切な適用例には、食品加工用品および化粧用材料が含まれる。
【0116】
一部の実施形態では、本明細書に記述される組成物は、PICCカテーテルおよびCVCカテーテルを作製するのに使用される。
抗菌特性
【0117】
当業者なら、「抗菌物質、抗菌性(antimicrobial)」という用語が何を意味するかよく知っている。さらに当業者は、抗菌特性を有する広く様々な化学物質に馴染みがある。それにも関わらず、出願人は、本発明の文脈における「抗菌物質、抗菌性」という用語の定量的定義を提供する。本発明の抗菌性添加剤は、それを含有するポリマーに、50%の倍率で、ポリマーの表面でE.coliの濃度を低減させる能力を与える添加剤である。
【0118】
開示される技術はさらに、AATCC 147 繊維材料の抗菌仕上げ評価:平行ストリーク法(AATCC 147 Assessment of Antimicrobial Finishes on Textile Materials: Parallel Streak Method)において阻害ゼロゾーンを示すことによって決定したときに、得られた抗菌性ポリマー組成物が非浸出性である、記述されるプロセスを開示する。
【0119】
他の実施形態では、本明細書に記述されるTPU材料および/または組成物は、埋め込み物または埋め込み物のコーティングなどの医療用デバイスを生成するのに使用されてもよく、TPUは、移植の部位で1種または複数種の治療剤を送達する。「治療剤」および「薬物」という用語は、埋め込み部位で治療的効果を有する任意の材料を意味するのに本明細書では同義で使用される。また、本明細書で使用される場合、本発明のデバイスは、治療剤を「送達」または「溶出」するといわれ--これらの用語は、治療剤が組織に接触することによる任意のメカニズムを指すのに同義的におよび一般的に使用される。
【0120】
治療剤(複数可)は、いくつかの方法で送達されてもよい。一実施例では、治療剤(複数可)は、埋め込み物またはその他の医療用物品または医療用デバイスの1つもしくは複数の表面に接着する、本明細書に記述されるTPU材料および/または組成物を使用して作製されるコーティング内に埋め込まれる。一部の実施形態では、コーティングは、治療剤が、時間と共にポリマーから溶出するように、またはそれがin-vivoで分解するにつれてコーティングから放出されるように、治療剤(複数可)と混ぜた本明細書に記述されるTPU材料および/または組成物のうちの1種もしくは複数から作製される。一部の実施形態では、1種または複数種の治療剤が、埋め込み物またはその他の医療用物品または医療用デバイスの1つもしくは複数の個々のセクションまたは表面の、個別の領域に適用される。
【0121】
記述される各化学成分の量は、他に指示しない限り、商用の材料に通常存在し得るいかなる溶媒も除外して提示され、即ち活性化学物質ベースで提示される。しかし、他に指示しない限り、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商用グレード中に存在すると通常理解されるようなその他の材料を含有し得る、商用グレードの材料であるとして解釈されるべきである。
【0122】
本発明によれば、「実質的に含まない」は、記述する材料が、1重量%よりも低い、好ましくは0.5重量%よりも低い、より好ましくは0.01重量%よりも低い量で存在し得ることを意味し、重量百分率は、管状医薬物品を調製するための組成物の全重量に対するものである。
【0123】
上述の材料のいくつかは、最終配合物中で相互に作用し得ることが公知であり、したがって最終配合物の成分は、最初に添加されるものとは異なる可能性がある。例えば、金属イオン(例えば、難燃剤の)は、その他の分子のその他の酸性またはアニオン部位に移行することができる。それによって形成される生成物は、その意図される用途で本明細書に記述される本技術の組成物を用いることによって形成された生成物も含め、容易な記述が可能ではないことがある。それにも関わらず、全てのそのような改変物および反応生成物は、本明細書に記述される技術の範囲内に含まれ;本明細書に記述される技術は、上述の成分を混合することによって調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0124】
本明細書に記述される技術は、以下の非限定的な実施例を参照しながら、より良く理解され得る。
【0125】
以下に提示する実施例は、阻害ゾーン(ZOI)試験によって非溶出であるか否かを決定するために評価され、それらの抗菌性能を決定するために、JIS Z2801、QualityLab Certika(商標)アッセイおよび/またはInnovotech BEST(商標)アッセイを含む様々な試験によっても試験される。
材料
【0126】
下記の材料を、実施例1から3の調製において使用した:
(1) 遊離塩基PHMB、Matrixから得た(脱プロトン化)PHMB。
(2) 中性PHMB、Lonzaから得た中性pHプロトン化PHMB。
(3) TPU A、Tecothane(商標)TT1095A、およびLubrizolから市販されている93ショアA硬さの芳香族ポリエーテルTPU。
(4) TPU B、Tecoflex(商標)EG93A-B30、放射線造影剤で修飾された、Lubrizolから市販されている90ショアA硬さの脂肪族ポリエーテルTPU。
【0127】
抗菌性ポリマー組成物の調製:各実施例について、抗菌性添加剤PHMBおよびTPUを重量測定供給機で、共回転自己ワイピングスクリューを備え、搬送および混合要素の両方を備え、L/D比が39:1である、26mmの二軸の押出し機に供給する。ストランドを冷水浴中に押し出し、ペレットに切断する。ペレットは、追加の試験に向けて後で圧縮成型してフィルムにし、または押し出して管材にする。添加剤の負荷レベルをNMRによって確認し、そのレベルは、全ての場合において押出し機に供給された添加剤の比に本質的に等しかった。配合物および性能の結果を表1にまとめる。
【0128】
以下に示す実施例は、標準試験法JIS Z2801によってによって、抗菌効力に関して試験する。様々な組成物に関する抗菌効力試験の結果を、表1に示す。
【0129】
以下に示される実施例は、それらの抗菌および非浸出特性に関しても評価される。
【0130】
JIS Z 2801試験法法は、硬質表面が微生物の成長を阻害しまたはそれらを死滅させる能力を、24時間の接触期間にわたって定量的に試験するよう設計される。JIS Z 2801試験では、(i)試験微生物を調製し、(ii)試験微生物の懸濁液を、栄養ブロス中で希釈することにより標準化し、(iii)対照および試験表面に微生物を接種し、微生物接種物を薄い滅菌フィルムで覆い、(iv)微生物濃度を、溶出とその後に続く希釈および播種によって、「ゼロ時間」で決定し、(v)対照実験を試料で行い、(vi)試料を、湿った環境で24時間、干渉せずにインキュベートし、(vii)インキュベーション後、微生物濃度を決定する。初期濃度および対照表面に対する微生物の低減を計算し、したがって、より高い結果は、より良好な抗菌性能を示す。実施例は、重量平均分子量(MW)および多分散性指標(PDI)に関して、GPCによっても分析された。分子量は、Waters Model 717自動サンプラー、Waters Model 2414屈折率(40℃)を備えた、Waters Model 515ポンプGPCを使用し、このときPLgel Guard+2×Mixed D(5u)、300×7.5mmカラムセットで、THFを用いたものを使用し、250ppm BHT、1.0ml/分で安定化させ、40℃の移動相および50μlの注入体積(即ち、濃度約0.12%)で測定した。分子量較正曲線を、Polymer Laboratories製のEasiCalポリスチレン標準で確立した。
【表1】
【0131】
結果は、遊離塩基PHMB(即ち、脱プロトン化PHMB)を使用したとき、抗菌性能が、TPUそのものに比べて著しく改善されたことを示す。さらに結果は、TPU中1%のPHMBが、4%のプロトン化PHMBで処理したTPUと同等の抗菌性能を与えることを示す。
【0132】
表2は、種々の形態および量のPHMBが使用される、それらの抗菌性能に関して試験され得る追加の実施例を示す:
【表2】
【0133】
表3は、異なる処理が用いられる、それらの抗菌性能に関して試験され得る追加の実施例を示す。「高温」と記された実施例は、組成物の混合が摂氏225度よりも上で実施されることを意味する。「低温」と記された実施例は、組成物の混合が摂氏170度よりも下で実施されることを意味する。
【表3】
【0134】
上記で言及された文献のそれぞれは、上記に特に列挙されていてもいなくても、そこから優先権が主張される任意の先行出願も含めて参照により本明細書に組み込まれる。任意の文献の言及は、そのような文献が従来技術として資格を与えられまたは任意の管轄権限の当業者の一般的知識を構成することを、認めるものではない。実施例の中を除き、または他に明示される場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、および炭素原子の数などを指定するこの記述における全ての数量は、「約」という単語によって修飾されることが理解される。本明細書に記述される、量、範囲、および比の上限および下限は、独立して組み合わせてもよいことが理解される。同様に、本明細書に記述される技術の各要素に関する範囲および量は、その他の要素のいずれかに関する範囲または量と一緒に使用することができる。
【0135】
以下に述べるように、上述の材料の分子量は、ポリスチレン標準を使用するGPC分析などの公知の方法を使用して決定してきた。ポリマーの分子量を決定するための方法は周知である。方法は、例えば、(i)P.J. Flory、「Principles of star polymer Chemistry」、Cornell University Press 91953)、第VII章、266~315頁;または(ii)「Macromolecules, an Introduction to star polymer Science」、F. A. BoveyおよびF. H. Winslow編、Academic Press(1979)、296~312頁に記述される。本明細書で使用されるように、記述される材料の重量平均および数重量平均分子量は、希釈剤、不純物、非連結星形ポリマー鎖、およびその他の添加剤に関連したピークを除外した、目的の材料に対応するピークの下の面積を積分することによって得られる。
【0136】
「含む(including)」、「含有する」、または「~によって特徴付けられる」と同義の、本明細書で使用される「含む(comprising)」という移行語は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。しかし、本明細書における「含む(comprising)」のそれぞれの列挙では、その用語が、代替の実施形態として、「~から本質的になる」および「~からなる」という文言を包含することも意図され、この「~からなる」は、指定されていない任意の要素またはステップを除外するものであり、「~から本質的になる」は、考慮中の組成物または方法の基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の列挙されていない要素またはステップの包含を、認めるものである。即ち、「~から本質的になる」は、考慮中の組成物の基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質の包含を認める。
【0137】
ある代表的な実施形態および詳細を、本明細書に記述される本技術を例示する目的で示してきたが、そこには、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および改変を行うことができることが、当業者に明らかである。これに関し、本明細書に記述される技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。