(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】表皮材付発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/228 20060101AFI20220405BHJP
B29C 44/14 20060101ALI20220405BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220405BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20220405BHJP
B32B 1/06 20060101ALI20220405BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20220405BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220405BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20220405BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C08J9/228 CES
B29C44/14
B29C44/00 G
B29C44/44
B32B1/06
B32B5/24
B32B27/32 E
B29K23:00
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2019543624
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2018034313
(87)【国際公開番号】W WO2019059142
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2017183754
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】常盤 知生
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-085156(JP,A)
【文献】特開2011-067957(JP,A)
【文献】特開2010-082941(JP,A)
【文献】特開2016-088052(JP,A)
【文献】特開昭59-145125(JP,A)
【文献】特開2015-013450(JP,A)
【文献】特開2008-273117(JP,A)
【文献】特開2004-249558(JP,A)
【文献】特開2018-001493(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180678(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104275764(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102673077(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
B29C 49/00-49/80
B29C 69/00-69/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
前記発泡粒子成形体の見掛け密度が20kg/m
3以上60kg/m
3以下である請求項1から5のいずれかに記載の表皮材付発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形により形成された中空成形体からなる表皮材と、当該表皮材内に位置する発泡粒子成形体とを備える表皮材付発泡成形体に関し、特には、軽量かつ曲げ剛性に優れ、良好な寸法安定性が示される表皮材付発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロー成形により形成された中空成形体に穴を開け、中空成形体の中空部に熱可塑性発泡粒子を充填し、該熱可塑性発泡粒子を加熱し融着させることで形成された表皮材付発泡成形体が種々提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ブロー成形により形成された中空成形体(表皮材)に発泡粒子を充填する際に、上記中空成形体に穴をあけ、該中空成形体内を大気に開放するとともに、発泡粒子を加熱し融着させるために加熱用水蒸気を供給する技術が開示されている。上記技術によって表皮材付発泡成形体が製造される。
【0004】
上述する表皮材付発泡成形体は、表皮材をブロー成形により形成し、続けて当該表皮材の内部に、発泡粒子を充填して発泡粒子成形体を形成する一連の工程で製造される。そのため、上記表皮材付発泡成形体は、成形サイクルに優れ、また表皮材と発泡粒子成形体との接着性も良好であり、良好な曲げ剛性を有する。また上記表皮材付発泡成形体は、表皮材および発泡粒子成形体が同一の成形型内で一連の工程において製造される。そのため、単なる板状の成形体だけではなく、所望の複雑な形状の成形体が製造され得る。かかる表皮材付発泡成形体は、たとえば自動車用、産業用、農業用、医療用、又は介護用に用いられる各種部材への利用が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、自動車の各種部材に樹脂部材が用いられている。自動車外装部材に用いられる樹脂部材には、さらなる軽量性、より高い曲げ剛性、温度変化に対する寸法変化率が小さいことが要求される傾向にある。一般に金属部材に比べて樹脂部材は温度変化に対する寸法変化率が大きい傾向にある。特に表皮材付発泡成形体は、その芯材として発泡粒子成形体が用いられているため、発泡粒子成形体の熱膨張等により、一般的な非発泡の樹脂部材に比べて、温度変化に対する寸法変化率が大きくなる傾向にある。そのため、表皮材付発泡成形体を自動車外装部材として用いる場合には、温度変化に対する寸法安定性の改善が求められる。さらに、同じ寸法変化率であっても、長さが1mを超えるような長尺の表皮材付発泡成形体では、寸法変化の絶対値が大きくなる。そのため、このような長尺の表皮材付発泡成形体を自動車外装部材として用いる場合には、温度変化に対する寸法安定性のさらなる改善が求められる。また表皮材付発泡成形体の曲げ剛性を向上させるために、一般的には表皮材の厚みを厚くする手法が行われている。しかしこの場合、自動車外装部材に求められる軽量性の要求が満たされない場合がある。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、軽量でありながらも曲げ剛性に優れ、かつ温度変化に対する寸法安定性が良好な表皮材付発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表皮材付発泡成形体は、中空成形体からなる表皮材と、上記表皮材内に位置する発泡粒子成形体と、を備える表皮材付発泡成形体であって、上記表皮材の平均肉厚が1.0mm以上5.0mm以下であり、上記表皮材は、ガラス繊維を5質量%以上30質量%以下の範囲で含むガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されており、上記ガラス繊維の重量平均繊維長が0.4mm以上1.5mm以下であり、上記発泡粒子成形体はポリプロピレン系樹脂から構成されており、上記表皮材と上記発泡粒子成形体との剥離強度が0.1MPa以上であり、23℃以上80℃以下における上記表皮材付発泡成形体の長手方向の線膨張係数が7×10-5/℃以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表皮材付発泡成形体は、表皮材の平均肉厚が1.0mm以上5.0mm以下であるため、軽量性に優れる。上記表皮材は、ガラス繊維を5質量%以上30質量%以下含む繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成され、ガラス繊維の重量平均繊維長が0.4mm以上1.5mm以下であり、かつ表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度が0.1MPa以上である。そのため、本発明の表皮材付発泡成形体は、表皮材が薄肉であっても曲げ剛性に優れると共に、温度変化に対する寸法安定性にも優れる。上記優れた性質を備える本発明の表皮材付発泡成形体は、長手方向が1mを超える寸法に形成された場合であっても、寸法変化が抑制される。そのため、本発明の表皮材付発泡成形体は、自動車外装部材として好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の表皮材付発泡成形体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表皮材付発泡成形体(以下、単に発泡成形体ともいう)は、押出されたパリソンをブロー成形してなる中空成形体からなる表皮材と、上記表皮材内に位置する発泡粒子成形体と、を備える。本発明の発泡成形体は、表皮材と発泡粒子成形体とが融着している。本発明における表皮材は、ガラス繊維を含むガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されている。上記ガラス繊維は、特定範囲の重量平均繊維長を有する。上記表皮材の平均肉厚は、1.0mm以上5.0mm以下に調整されている。本発明における発泡粒子成形体はポリプロピレン系樹脂から構成されている。本発明において、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度は、0.1MPa以上である。
本発明の発泡成形体は、表皮材の厚みが上述のとおり所定範囲の薄肉であるため、軽量性に優れる。また本発明の発泡成形体は、一連の成形工程で表皮材とこれに被覆される発泡粒子成形体とが形成されるので、生産性にも優れる。
【0012】
本発明における表皮材はガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されている。上記ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂は、重量平均繊維長0.4mm以上1.5mm以下のガラス繊維を、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂100質量%において5質量%以上30質量%以下の範囲で含有する。これによって、本発明は、従来の表皮材付発泡成形体に比べ、発泡成形体の線膨張係数を小さくすることを可能とした。具体的には、23℃以上80℃以下における本発明の発泡成形体の長手方向の線膨張係数は、7×10-5/℃以下である。本発明の発泡成形体は、このように線膨張係数が改善されており、温度変化に対する寸法安定性に優れる。そのため本発明の発泡成形体は、自動車外装部材のように熱環境の厳しい用途において金属部材とともに用いられた場合であっても、金属部材との線膨張係数の差が縮小される。この結果、本発明の発泡成形体は、取付強度などにも優れる。
また本発明の発泡成形体は、表皮材中のガラス繊維の含有量および繊維長を所定範囲に規定されている。これにより、本発明の発泡成形体は、表皮材にガラス繊維が含有されたことに起因して当該表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度の低下が生じないよう配慮されている。そのため、本発明の発泡成形体は、従来のガラス繊維を含まない表皮材を有する表皮材付発泡成形体と同様に、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度に優れる。本発明の発泡成形体は、このように良好な剥離強度で接着する表皮材と発泡粒子成形体とを備える上、当該表皮材にガラス繊維が含有されるため、良好な曲げ剛性を示し得る。以下に、本発明の発泡成形体の詳細について説明する。
【0013】
(表皮材)
本発明における表皮材は、中空成形体であり、内部に発泡粒子成形体が位置する。たとえば、後述にて述べる
図1に示すように、本発明における表皮材は、発泡粒子成形体を被覆している。発泡粒子成形体の略全面が表皮材により被覆されていることが好ましい。ただし、本発明は、発泡粒子成形体の略全面が表皮材で被覆されてなる発泡成形体を適宜裁断し、裁断面において発泡粒子成形体が露出する態様を包含する。また、成形工程上で形成された成形痕が、表皮材に複数残る場合があるが、これらの成形痕においては発泡粒子成形体が表皮材により被覆されていなくてもよい。上記成形痕は、たとえば、表皮材内に発泡粒子を充填するために形成される充填孔、または表皮材内にスチームピンを挿入するために形成されたスチームピン挿入跡等が挙げられる。
【0014】
本発明における中空成形体とは、押出されたパリソンをブロー成形することにより形成された成形体を意味する。上記中空成形体は、ブロー成形することにより形成されて中空の状態となるが、その後、速やかにその内部に発泡粒子が充填され発泡粒子成形体が形成される。そのため、発泡成形体においては発泡粒子成形体が上記中空成形体内部に密に充満された状態となる。
【0015】
本発明における表皮材は、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成される。即ち、表皮材はポリプロピレン系樹脂およびガラス繊維を含んで構成される。ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン由来の構成単位を主たる構成単位として有する樹脂をいう。ここで、主たる構成単位とは、重合体100質量%中の含有量が50質量%を超える構成単位を意味する。ポリプロピレン系樹脂の構造としては、特に限定されず、例えばプロピレンの単独重合体、プロピレンと他のモノマーとのランダム共重合体またはブロック共重合体のいずれでもよい。さらに、ポリプロピレン系樹脂は、前記単独重合体、ランダム共重合体またはブロック重合体中に、エチレン-プロピレン系共重合体ゴムまたはポリエチレン及びエチレン-プロピレン系共重合体ゴムが分散している耐衝撃性ポリプロピレン(所謂ブロックポリプロピレン)でもよい。
【0016】
上記ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂の基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂のみから構成されることが好ましい。しかし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂以外の他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。他の重合体の配合割合は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0017】
本発明において、表皮材を構成するガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂に含有されるガラス繊維は、所謂、強化繊維の一種であって、ガラスを主成分とする繊維状の材料である。ガラス繊維は、例えば主成分に二酸化ケイ素を含み、任意の他の成分(例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム)を含んでいてもよい。
【0018】
上記ガラス繊維は、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂100質量%において5質量%以上30質量%以下の範囲で含有される。ガラス繊維の含有量が5質量%未満であると、発泡成形体の線膨張係数を所定値以下に調整することができず、また発泡成形体の曲げ剛性を有意に向上させることができない。またガラス繊維の含有量が30質量%以下とすることで、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度が十分となる。上記観点からは、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂中のガラス繊維の含有量は、7質量%以上であることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましく、また26質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、22質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
たとえば、本発明における表皮材は、ガラス繊維を12質量%以上25質量%以下の範囲で含むガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されていることが好ましい。
上記範囲でガラス繊維を含む表皮材を備える本発明は、特にたわみ荷重を良好に調整することができる。より具体的には、表皮材におけるガラス繊維の含有量が12質量%以上である場合、本発明の発泡成形体の5mmたわみ荷重を900N以上、さらには1000N以上に調整することが可能である。またガラス繊維を25質量%以下の範囲とすることで、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度を0.2MPa以上に調整し易い。
【0020】
上記ガラス繊維の重量平均繊維長は0.4mm以上1.5mm以下である。本発明の発泡成形体は、表皮材が上記重量平均繊維長の範囲のガラス繊維を含むことで、表皮材と発泡粒子成形体とが十分に接着すると共に、温度変化に対して良好な寸法安定性を示す。即ち、表皮材に配合されるガラス繊維の重量平均繊維長が短すぎる場合、発泡成形体の温度変化に対する寸法変化の抑制効果は有意に得られない。一方、ガラス繊維の重量平均繊維長が長すぎる場合、温度変化に対する寸法変化の抑制効果は減少する傾向にある。上記観点から、上記重量平均繊維長は、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、また1.4mm以下であることが好ましく、1.3mm以下であることがより好ましい。
【0021】
また重量平均繊維長1.5mm以下のガラス繊維が表皮材に配合されることで、表皮材のパーティングラインでの割れが回避され、またスチームピンなどのピンによる孔開き性も良好となる。その結果、表皮材と発泡粒子成形体との接着性が良好となる。また、上記重量平均繊維長が1.5mmを超えると、発泡成形体における表皮材の外面に毛羽立ちが出現し、また表面の平滑性が不良となるといった表面性の問題が発生する場合がある。しかし、本発明の発泡成形体では、これら表面性の問題が回避されている。
【0022】
表皮材に含有されるガラス繊維の重量平均繊維長の調整方法は特に限定されない。たとえば、市販のガラス繊維およびポリプロピレン系樹脂、市販のガラス繊維入りポリプロピレン系樹脂、または市販のガラス繊維入りポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を、表皮材形成用の押出機にて混練することにより、ガラス繊維を所望の重量平均繊維長に調整することができる。なお、押出時の剪断等によりガラス繊維が粉砕され、押出前と押出後とでガラス繊維の重量平均繊維長が変化する。そのため、発泡成形体の製造に際しては、その製造前に、製造時と同条件で予め原料樹脂を押出して表皮材のみを形成し、押出後のガラス繊維の重量平均繊維長を確認する必要がある。また必要に応じて、押出機にて混錬することにより製造された原料を再度押出機にて1回または2回以上混練した原料を用いることで、所望の範囲の重量平均繊維長に調整することができる。
【0023】
本発明において、表皮材の平均肉厚は1.0mm以上5.0mm以下である。本発明における表皮材は、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されているため、平均肉厚が、1.0mm以上であることで、発泡成形体の曲げ剛性を有意に向上させることができると共に、発泡成形体の表面の平滑性を良好にしやすい。かかる観点からは、上記平均肉厚は、1.2mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。また上記平均肉厚が、5.0mm以下であることで、発泡成形体の軽量化が図られる。かかる観点からは、平均肉厚は、4.5mm以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましく、3.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の発泡成形体における表皮材は、ガラス繊維を含むことから、従来の表皮材付発泡成形体におけるガラス繊維を含まない表皮材に比べて、曲げ弾性率が向上している。表皮材の長手方向における曲げ弾性率は、1000MPa以上であることが好ましく、1300MPa以上であることがより好ましく、1400MPa以上であることがさらに好ましい。また表皮材の短手方向における曲げ弾性率は、1000MPa以上であることが好ましく、1100MPa以上であることがより好ましく、1200MPa以上であることがさらに好ましい。これら曲げ弾性率の上限は特に限定されないが、たとえば5000MPa程度である。
【0025】
表皮材を構成するガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂の熱流束示差走査熱量測定における80℃~140℃の範囲の部分融解熱量(ΔHp)は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、さらに好ましくは、30J/g以上であり、上限はたとえば70J/gである。また、上記ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂に関する部分融解熱量(ΔHp)と全融解熱量(ΔHt)との比(ΔHp/ΔHt)は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.14以上であり、さらに好ましくは0.20以上であり、特に好ましくは0.40以上である。尚、熱流束示差走査熱量測定において、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂の融解熱量を定める上で再現性よく当該熱量を求めることができるベースラインの起点として80℃が好適であることから本発明では、ベースラインの起点を80℃とする。温度範囲80℃~140℃の部分融解熱量(ΔHp)は、ベースラインの起点である80℃と、発泡成形体成形時のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の成形温度に近い値である140℃に基づくものである。
【0026】
表皮材に含まれるガラス繊維の配向に関し、好ましい態様について説明する。
本発明は、表皮材の内面側に存在するガラス繊維のうち、表皮材の面内方向において押出方向に沿った線である基準線に対して45度以下の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合が個数基準で80%以上であることが好ましい。ここで表皮材の内面側とは、表皮材の発泡粒子成形体に面する側を指す。表皮材の内面側に存在するガラス繊維とは、内面から肉厚方向に肉厚の凡そ2%までの範囲に存在するガラス繊維を指す。また押出方向とは、中空成形体成形時に、パリソンが押し出される方向を指す。
一般的に、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度は、表皮材の肉厚が薄いほど小さくなる傾向にある。本発明における表皮材は、平均肉厚が1.0mm以上5.0mm以下と薄い。しかし、本発明の表皮材に含まれるガラス繊維のうち、上記範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合を80%以上に調整することで、表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度を充分な値(たとえば0.1MPa以上)に容易に調整することが可能となる。
尚、基準線に対し45度以下の範囲とは、基準線を中心として右に45度以下の範囲と左に45度以下の範囲との合計90度の範囲を意味する。以下の角度の範囲も同様である。
【0027】
また本発明は、表皮材の外面側に存在するガラス繊維のうち、表皮材の面内方向において押出方向に沿った線である基準線に対して45度以下の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合が個数基準で80%以上であることが好ましい。ここで表皮材の外面側とは、表皮材の上記内面側とは反対の側を指す。表皮材の外面側に存在するガラス繊維とは、外面から肉厚方向に肉厚の凡そ2%までの範囲に存在するガラス繊維を指す。押出方向は、上述と同様である。
一般的に、表皮材に有意な量のガラス繊維が含まれる場合、発泡成形体の曲げ剛性を向上させることができるものの、表面平滑性が損なわれる虞がある。本発明における表皮材は、ガラス繊維を5質量%以上30質量%以下の範囲で含むが、上記外側面に存在するガラス繊維の配向角を上記範囲に調整することで、良好な表面性を備える発泡成形体を提供することができる。
【0028】
次に、表皮材の肉厚方向中央部に存在するガラス繊維の配向について説明する。ここで肉厚方向中央部とは、中空成形体(即ち表皮材)を肉厚方向略2分の1の部分を意味する。下記では、中空成形体の肉厚方向中央部において面内方向にスライスして形成された切断面を観察し、確認されるガラス繊維の配向について述べる。
表皮材の肉厚方向中央部に存在するガラス繊維のうち、表皮材の面内方向において下記割合Iが個数基準で40%以上であり、下記割合IIが個数基準で20%以上50%以下であり、かつ、割合Iおよび割合IIの合計が80%以上であることが好ましい。上記割合Iは、好ましくは80%以下である。
上記割合Iは、肉厚方向中央部に存在するガラス繊維のうち、中空成形体の面内方向において押出方向に対して10度以下の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合を意味する。また上記割合IIは、中空成形体の面内方向において押出方向に対して10度を超えて45度以下の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合を意味する。
表皮材の肉厚方向中央部に存在するガラス繊維の配向が、上記の範囲を満たす態様では、ねじれ剛性が高くなり好ましい。上記ガラス繊維の割合の範囲を満たす中空成形体を用いて形成された本発明の発泡成形体は、長さが1m以上の長尺物であってもねじれ剛性に優れ、例えば自動車外装部材等に好適である。
【0029】
ところで一般的に、パリソンをブロー成形して中空成形体(表皮材)を形成する場合、パリソンが強化繊維を含むとパリソンの延展性が悪くなり、ブロー比が大きくなることでブロー成形中にパリソンが破裂し、良好な中空成形体が得られなくなる虞がある。しかしながら、本発明における表皮材は、ガラス繊維を含有するものの、当該繊維の長さ及び含有量を所定範囲に規定している。そのため、本発明では、ブロー成形時にパリソンの破裂が防止される。
【0030】
本発明におけるパリソンの拡幅性を表すブロー比とは、ダイのリップ部の周長(La)に対する、ブローアップされたパリソンの最大周長(Lc)の比(Lc/La)を意味する。
【0031】
本発明における表皮材は、発泡体であってもよいし、非発泡体であってもよく、外観意匠性等の観点からは、非発泡体であることが好ましい。
【0032】
(発泡粒子成形体)
次に本発明の表皮材付発泡成形体における発泡粒子成形体について説明する。本発明における発泡粒子成形体は、上述する表皮材内に位置しており、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下の説明では、単に発泡粒子という場合がある)を含んで構成される。上記発泡粒子成形体を構成する基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂のみであることが好ましいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、ポリプロピレン系樹脂に加え、他の重合体を含んでいてもよい。尚、上記発泡粒子成形体を構成する基材樹脂、及びポリプロピレン系樹脂に関しては、上述する表皮材における基材樹脂、及びポリプロピレン系樹脂に関する記載を適宜参照することができるため、ここでは詳細な説明を一部割愛する。
【0033】
発泡粒子成形体の見掛け密度は20kg/m3以上60kg/m3以下であることが好ましい。見掛け密度が、20kg/m3以上であることにより、発泡粒子成形体は、成形型から取り出され冷却された際に過度に収縮することがなく、また60kg/m3以下であることにより、良好な軽量性が保たれる。かかる観点からは、上記見掛け密度は、25kg/m3以上50kg/m3以下であることがより好ましい。
【0034】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記表皮材および上記発泡粒子成形体は、酸化防止剤、紫外線防止剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、金属不活性剤、導電性フィラー等の添化剤を含むことができる。また、上記発泡粒子成形体は、気泡調整剤を含むことができる。
【0035】
(表皮材付発泡成形体)
本発明の表皮材付発泡成形体(発泡成形体)は、その長手方向において、線膨張係数が7×10-5/℃以下である。ここで、線膨張係数とは、温度の変化に対する長さの変化率をいう。線膨張係数が小さいほど、温度変化に対する寸法変化が小さく好ましいという観点からは、本発明における線膨張係数の下限は、特に限定されない。ただし、線膨張係数の下限は、概ね3×10-5/℃である。なお、本発明に関し、発泡成形体の長手方向とは、製造された任意形状の発泡成形体の寸法から認識される長手方向を意味する。本発明の発泡成形体の長手方向は、当該発泡成形体に備わる表皮材を形成する際のパリソンの押出し方向と一致または略一致する。そのため、発泡成形体の長手および短手が不明確な形状である場合には、上記押出し方向を長手方向として線膨張係数を測定してもよい。発泡成形体に備わる表皮材の長手方向の説明として、上述する発泡成形体の長手方向の説明が参照される。なお、本発明の発泡成形体においては、その長手方向の長さが短手方向の長さの1.2倍以上であることが好ましい。
【0036】
本発明の発泡成形体では、表皮材にガラス繊維が含まれていても、当該表皮材と発泡粒子成形体とが良好に接着している。即ち、発泡粒子成形体と表皮材との剥離強度は、0.1MPa以上であり、好ましくは0.20MPa以上であり、より好ましくは0.25MPa以上である。剥離強度が低すぎると、発泡成形体が撓んだ際に、表皮材と発泡粒子成形体とが初期段階で剥離してしまうため、曲げ剛性が不十分となる。上記剥離強度の上限は特に限定されるものではないが、概ね0.8MPaである。後述する実施例において、上記剥離強度の具体的な測定方法を示す。
【0037】
本発明の発泡成形体の見掛け密度は、20kg/m3以上60kg/m3以下であることが好ましい。見掛け密度が前記範囲であることにより、軽量性と剛性とのバランスに優れた発泡成形体となる。
【0038】
(表皮材付発泡成形体の製造方法)
次に本発明の発泡成形体の製造方法の例について説明する。ガラス繊維を含むポリプロピレン系樹脂から構成されるパリソンをブロー成形することにより形成した、ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成される中空成形体の中空部にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填し、該発泡粒子を加熱融着させて発泡粒子成形体を形成すると共に該発泡粒子成形体と該中空成形体の内周面とを加熱融着させ、これによって、本発明の表皮材付発泡成形体を製造することができる。ただし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、下記に示す製造方法の一部を変更してもよい。
【0039】
以下に示す本発明の発泡成形体の製造に用いる原料に関し、ガラス繊維の形態は特に限定されないが、たとえば予め、ペレット状のガラス繊維含有ポリプロピレン系樹脂を準備してもよい。
【0040】
まず、押出機にて、ポリプロピレン系樹脂を溶融させると共に、ポリプロピレン系樹脂とガラス繊維とを混練して、ポリプロピレン系樹脂及びガラス繊維を含む溶融樹脂組成物を形成する。該溶融樹脂組成物を押出機に備えられたダイを通して、ダイの直下に位置する分割成形型間に押出してパリソンを形成する。そして、分割成形型を型締めして当該成形型でパリソンを挟み込み、当該成形型内で該パリソンをブロー成形することによりガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成される中空成形体からなる表皮材を形成する。
【0041】
上記分割成形型の型温度は、40℃以上90℃以下の範囲で調整されることが好ましい。型温度が40℃以上であると、表皮材と発泡粒子成形体とを良好に融着させ易い。また型温度が90℃以下であると、発泡成形体の外観に不具合が発生し難い上、冷却時間を適度に抑えることができるので生産性の観点からも好ましい。
【0042】
次いで、上述のとおり形成された表皮材に充填フィーダにより充填孔を形成し、表皮材内に充填フィーダを通してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する。そして表皮材内に挿入した複数の加熱媒体供給排出ピン(スチームピン)からスチームなどの加熱媒体を供給し、排出させる。これにより該発泡粒子を加熱して発泡粒子相互を融着させ発泡粒子成形体を形成するとともに発泡粒子成形体と表皮材の内周面とを融着させる。
【0043】
表皮材内にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する工程は、表皮材が固化する前の軟化状態のうちに行うことが好ましい。また上記工程として、所謂圧縮充填法を採用することが好ましい。圧縮充填法は、中空成形体内の圧力を大気圧よりも高い状態で一定に調整し、予め気体により中空成形体内の圧力よりも高い圧力で加圧して圧縮された発泡粒子を中空成形体の内部に充填し、充填完了後、中空成形体内の圧力を開放する充填方法である。発泡粒子の充填前に加熱媒体供給排出ピンを表皮材の壁部を貫通させて表皮材内に挿入し、該ピンを通して所定の圧力の気体を表皮材内に供給し、適宜気体を排出させることにより、中空成形体内の圧力を調整することができる。
【0044】
その後、分割成形型を開いて成形物を取り出し、バリを取り除くことにより、表皮材付発泡成形体を得ることができる。尚、上記加熱媒体供給排出ピンとは、中空成形体内へスチームなどの加熱媒体を供給することもできれば、中空成形体内から加熱媒体を排出することもできるピンを意味する。
【0045】
上記製造方法において製造された表皮材付発泡成形体100を
図1に示す。
図1は、表皮材付発泡成形体100の斜視図であり、内部が理解容易となるよう、表皮材20の一部を図示省略している。また、
図1は、表皮材20中に含有されたガラス繊維についても図示省略している。
図1に示すとおり、表皮材付発泡成形体100は、所定形状の発泡粒子成形体10と、発泡粒子成形体10を覆う表皮材20とを備える。発泡粒子成形体10は、上述のとおり、中空成形体である表皮材20の内部に発泡粒子が充填され加熱されることで形成されているため、本発明で特定される剥離強度(0.1MPa以上)が実現される。本発明において表皮材20は、平均肉厚が1.0mm以上5.0mm以下であるため、成形時に用いられる成形型の内側面に沿って所望の形状に形成され得る。そのため、
図1に示すような直方体などの比較的に単純な形状だけではなく、図示省略する複雑な形状にも対応しうる。また、発泡粒子成形体10は、複雑な形状に形成された中空成形体である表皮材20の内部に発泡粒子を充填して形成されるため、複雑な形状の表皮材20の内側面に接合する複雑な形状を構成することが可能である。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、表1には、表皮材に用いた原料A~Dの詳細を示し、表2には、表皮材付発泡成形体(発泡成形体)の製造条件を示した。
【0047】
本実施例において表皮材を形成するために用いられた原料A~F、および発泡粒子成形に用いた発泡粒子である原料Gは、以下のとおりである。尚、原料Fは、原料Eを用いて形成された表皮材を有する実施例7の発泡成形体から表皮材を分離し、その表皮材を一軸高速剪断式粉砕機によって破砕することによって調製された回収原料である。
原料A:ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂
原料B:ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂
原料C:ポリプロピレン系樹脂
原料D:ポリプロピレン系樹脂
原料E:ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂
原料F:ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂
原料G:ポリプロピレン系樹脂発泡粒子[基材樹脂:プロピレン-エチレンランダム共重合体、(融点145℃、エチレン含有量2.5質量%)、見掛け密度:56kg/m3、平均粒子径:2.8mm]
【0048】
上記原料A~Fの詳細を表1に示す。また表2に各実施例および比較例の製造条件を示す。尚、表1に示す原料A~Fに関し、ガラス繊維長及び密度は、カタログ値であり、融点、曲げ弾性率、溶融粘度(Pa・s)、溶融伸び(m/分)は、以下の通り求めた値である。
(融点)
JIS K7121-1987に記載の熱流束示差走査熱量測定(DSC)に基づき、原料A~Fの融点を測定した。試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、加熱速度及び冷却速度としては共に10℃/分を採用した。窒素流入量は30mL/分であった。得られたDSC曲線における融解ピークの頂点温度を融点とした。
(曲げ弾性率)
JIS K7171-1994に準じ、以下のとおり、原料A~Fの曲げ弾性率を測定した。原料A~Fそれぞれについて、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの曲げ弾性率測定用のサンプルを射出成形にて5個作製した。そして、それぞれのサンプルをオートグラフ試験機(株式会社島津製作所製)に供し、スパン間距離64mm、圧子の半径(R1)2mm、支持台の半径(R2)2mm、試験速度10mm/分の条件で各サンプルの曲げ弾性率を測定した。上記測定で得た曲げ弾性率の算術平均値を算出し、これらを原料の曲げ弾性率(MPa)とし表1に示した。
(溶融粘度)
ノズル径1mm、ノズル長10mmのオリフィスを用い、測定温度230℃、剪断速度100sec-1の条件にて、原料A~Fの溶融粘度を測定した。測定装置として、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを使用した。
(溶融伸び)
以下のとおり、原料A~Fの溶融伸び(m/分)の測定を行なった。測定装置として、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを使用した。シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用いた。シリンダー内にオリフィスを配置し、シリンダー内の設定温度を190℃とした。測定試料約15gを該シリンダー内に入れ、5分間放置して測定試料を溶融させて溶融樹脂を得た。次いでピストン降下速度を10mm/分として上記溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出した。上述のとおり押し出された紐状物を直径45mmのプーリーに掛けた。そして4分で引取速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速率で引取速度を増加させながら引取りローラーで上記紐状物を引取って、紐状物が破断した際の直前の引取速度を計測した。この測定を、異なる10点の測定試料について行い、それらの算術平均値を溶融伸びとした。
【0049】
(実施例1)
原料Aおよび原料Cを用い、原料Aおよび原料Cの総量100質量%においてガラス繊維が10質量%となる様に配合比を調整してドライブレンドしてブレンド物を調製し、このブレンド物を内径65mmの押出機(L/D=28)に供給し、215℃で混練して溶融樹脂組成物を調製した。尚、ガラス繊維の含有量は表3に示す。
上記溶融樹脂組成物を押出機の下流側に付設されたアキュムレータに充填した。このときアキュムレータの設定温度は215℃とした。そしてアキュムレータに充填された溶融樹脂組成物を吐出量600kg/hでリップ部の直径190mmのサーキュラーダイから押出してパリソンを形成した。ダイ直下に配置された縦350mm、横260mm、厚さ25mmの略直方体の成形キャビティを有する分割金型で、軟化状態にある該パリソンを挟みこんだ。分割金型の設定温度は60℃とした。型締め完了後、パリソンにブローピンを打ち込み、ブローピンから0.50MPa(G)の加圧空気をパリソン内に吹き込み、上記成形キャビティの形状を反映した中空成形体(表皮材)を形成した。尚、金型として、分割金型の一方側に、1機の充填フィーダ(口径20mmφ)および縦2列×横4段の計8本のスチームピンが設けられた金型を用いた。スチームピンの間隔は100mmピッチとした。上記スチームピンは、口径8mmφであり、側面にスチーム供給排出用のスリットが形成されている。
【0050】
次いで、軟化状態の中空成形体内に、中空成形体の壁部を貫通させて充填フィーダおよび8本のスチームピンを挿入した。そしてスチームピンから中空成形体内部に対し気体を給排気して、中空成形体内部の圧力を0.15MPa(G)に調整しながら、予め0.20MPa(G)の加圧空気で圧縮しておいた発泡粒子を充填フィーダを通して中空成形体内に充填した。該発泡粒子としては、上記原料Gを用いた。
【0051】
発泡粒子充填後、中空成形体内に挿入された8本のスチームピンうち4本のスチームピンAから吸引しながら、他の4本のスチームピンBから中空成形体内に0.34MPa(G)のスチームを8秒間供給した。次にスチームピンBから吸引しながら、スチームピンAから中空成形体内に0.34MPa(G)のスチームを6秒間供給した。次に、全てのスチームピンから中空成形体内に0.34MPa(G)のスチームを5秒間供給した。これらのスチーム加熱により発泡粒子を二次発泡させると共に、発泡粒子相互を融着させ、さらに中空成形体の内面と発泡粒子成形体とを融着させ、発泡成形体を得た。発泡成形体の冷却完了後、充填フィーダ及びスチームピンを発泡成形体から抜き取り、金型を開いてバリ付きの発泡成形体を取り出し、余分なバリを取り除いた発泡成形体を実施例1とした。
【0052】
(実施例2)
原料Aと原料Cの配合比率を変更し、表皮材のガラス繊維量を20質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造し、実施例2とした。
【0053】
(実施例3)
原料Cの替りに原料Dを用いたこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造し、実施例3とした。
【0054】
(実施例4)
原料Aと原料Dの配合比率を変更し、表皮材のガラス繊維量を20質量%に変更したこと以外は、実施例3と同様に発泡成形体を製造し、実施例4とした。
【0055】
(実施例5)
原料Bおよび原料Cを用い、原料Bおよび原料Cの総量100質量%においてガラス繊維が10質量%となる様に配合比を調整してドライブレンドしてブレンド物を調製した。次いで該ブレンド物を内径50mmの単軸押出機に投入し、230℃で混練し溶融樹脂組成物を調製した。該溶融樹脂組成物をストランド状に押出し、ストランドをカットし、ペレットを得た。
得られたペレットを乾燥させた後、内径65mmの押出機(L/D=28)に投入し、225℃で混練して溶融樹脂組成物を調製し、該溶融樹脂組成物を225℃に調整されたアキュムレータに充填した以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造し、実施例5とした。尚、実施例5では、比較例3におけるガラス繊維よりも実施例5におけるガラス繊維の繊維長をやや短くするため、原料Bおよび原料Cを単軸押出機にて一度混練してペレットを形成した後、当該ペレットを再度、表皮材形成用の押出機にて混練した。
【0056】
(比較例1)
表皮材の原料として、原料Aを用いず原料Cのみを用いたこと、および210℃で混練して溶融樹脂組成物を調製したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を製造し、これを比較例1とした。
【0057】
(比較例2)
表皮材の原料として、原料Cの替りに原料Dのみを用いたこと以外は比較例1と同様に発泡成形体を製造し、これを比較例2とした。
【0058】
(比較例3)
原料Bおよび原料Cを用い、原料Bおよび原料Cの総量100質量%においてガラス繊維が10質量%となる様に配合比を調整してドライブレンドしてブレンド物を調製した。次いで該ブレンド物を内径65mmの押出機(L/D=28)に投入し、225℃で混練して溶融樹脂組成物を調製した以外は、実施例5と同様に発泡成形体を製造して比較例3とした。
【0059】
(比較例4)
原料Aおよび原料Cを用い、原料Aおよび原料Cの総量100質量%においてガラス繊維が10質量%となる様に配合比を調整してドライブレンドしてブレンド物を調製した。次いで該ブレンド物を内径25mmの2軸押出機に投入し、230℃で混練して溶融樹脂組成物を調製した。該溶融樹脂組成物をストランド状に押出し、ストランドをカットし、ペレット1を得た。このペレット1(1回目混練物)を乾燥させた後、再度、内径25mmの2軸押出機に投入し、上記と同様にしてペレット2(2回目混練物)を得た。上述に倣い、2軸押出機に合計4回混練して得られたペレット4を用いた以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造し、これを比較例4とした。尚、比較例4は、原料Aおよび原料Cをドライブレンド後、二軸押出機にて4回混練することで、表皮材に含有されるガラス繊維の繊維長が実施例1よりも短くなるよう調整した。
【0060】
(実施例6)
原料Aおよび原料Cを用い、原料Aおよび原料Cの総量100質量%においてガラス繊維が15質量%となる様に配合比を調整してドライブレンドしてブレンド物を調製した。このブレンド物を内径120mmの押出機(L/D=28)に供給し、215℃で混練して溶融樹脂組成物を調製した。
上記溶融樹脂組成物を押出機の下流側に付設されたアキュムレータに充填した。このときアキュムレータの設定温度は210℃とした。そしてアキュムレータに充填された溶融樹脂組成物を吐出量1200kg/hでリップ部の直径250mmのサーキュラーダイから押出してパリソンを形成した。ダイ直下に配置された縦2070mm、横170mm、厚さ70mmの長尺の略直方体の成形キャビティを有する分割金型で、軟化状態にある該パリソンを挟みこんだ。分割金型の設定温度は60℃とした。型締め完了後、パリソンにブローピンを打ち込み、ブローピンから0.50MPa(G)の加圧空気をパリソン内に吹き込み、上記成形キャビティの形状を反映した中空成形体(表皮材)を形成した。尚、金型として、分割金型の一方側に、1機の充填フィーダ(口径20mmφ)および直線方向に対しジグザグ状に計10本のスチームピンが設けられた金型を用いた。スチームピンの間隔は250mmピッチとした。スチームピンは、口径8mmφであり、側面にスチーム供給排出用のスリットが形成されている。
【0061】
次いで、軟化状態の中空成形体内に、中空成形体の壁部を貫通させて充填フィーダおよび10本のスチームピンを挿入した。そしてスチームピンから中空成形体内部の気体を給排気して、中空成形体内部の圧力を0.15MPa(G)に調整しながら、予め0.20MPa(G)の加圧空気で圧縮しておいた発泡粒子を充填フィーダを通して中空成形体内に充填した。該発泡粒子としては、上記原料Gを用いた。
【0062】
発泡粒子充填後、中空成形体内に挿入された10本のスチームピンうち5本のスチームピンAから吸引しながら、他の5本のスチームピンBから中空成形体内に0.40MPa(G)のスチームを10秒間供給した。次にスチームピンBから吸引しながら、スチームピンAから中空成形体内に0.40MPa(G)のスチームを8秒間供給した。次に、全てのスチームピンから中空成形体内に0.40MPa(G)のスチームを8秒間供給した。これらのスチーム加熱により発泡粒子を二次発泡させると共に、発泡粒子相互を融着させ、さらに中空成形体の内側面と発泡粒子成形体とを融着させ、発泡成形体を得た。発泡成形体の冷却完了後、充填フィーダ及びスチームピンを発泡成形体から抜き取り、金型を開いてバリ付きの発泡成形体を取り出し、余分なバリを取り除いた発泡成形体を実施例6とした。
【0063】
(実施例7~9)
表皮材の成形条件を表2に示す内容とし、かつ表皮材に含有されるガラス繊維量を表3に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造し、実施例7~9とした。
【0064】
(実施例10)
表皮材の成形条件を表2に示す内容としたこと以外は、実施例6と同様に発泡成形体を製造し、実施例10とした。
【0065】
(比較例5)
表皮材の原料として、原料Aを用いず原料Cのみを用いたこと、および205℃で混練して溶融樹脂を調製したこと以外は実施例6と同様にし、発泡成形体を製造し、これを比較例5とした。
【0066】
(比較例6)
表皮材の成形条件を表2に示す内容としたこと以外は、実施例7と同様に発泡成形体を製造し、比較例6とした。
【0067】
以上のとおり得られた各実施例及び比較例の発泡成形体について、以下の内容について測定し、また評価した。測定結果および評価結果は、表2~表5に示した。
【0068】
(発泡粒子の見掛け密度)
中空成形体に充填される発泡粒子の見掛け密度[kg/m3]を、以下のとおり測定し表2に示した。まず、発泡粒子を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置した。次いで、200mLのメスシリンダーを準備し、該メスシリンダーに温度23℃の水100mLを入れた。嵩体積約30mLの発泡粒子(発泡粒子の質量W1)を上記メスシリンダー内の水中に金網を使用して沈めた。そして、金網の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の体積V1[mL]を測定した。この体積V1をメスシリンダーに入れた発泡粒子の個数(N)にて割り算(V1/N)し、発泡粒子1個あたりの平均体積を算出した。そして、得られた平均体積と同じ体積を有する仮想真球の直径をもって発泡粒子の平均粒子径[mm]とした。また、メスシリンダーに入れた発泡粒子の質量W1[g]を体積V1で割り算(W1/V1)し、単位換算することにより、発泡粒子の見掛け密度[kg/m3]を得た。
(パリソンの拡幅性)
各実施例及び各比較例の実施と同条件にて、パリソンを形成し、パリソンの下部をピンチオフし、ダイ側からパリソン内に0.15MPa(G)の圧縮空気を導入してパリソンを拡幅させ、パリソンの拡幅性を以下のとおり評価した。評価結果は、表2に示した。なお、リップ部の直径×π(円周率)からリップ部の周長を求めた。また、拡幅中のパリソンを正面からビデオ撮影し、パリソンが破裂する寸前のパリソン押出方向と直交する方向の最大長さを計測した。この最大直径×πによりパリソンの最大周長を求めた。
A:ブロー比1.9でパリソンが破裂しない
B:ブロー比1.7以上1.9未満でパリソンが破裂する
C:ブロー比1.5以上1.7未満でパリソンが破裂する
D:ブロー比1.3以上1.5未満でパリソンが破裂する
【0069】
(スチームピンによる孔の開き性)
中空成形体にスチームピンを打ち込んだ際に形成されたスチームピンによる孔の開き性を以下のとおり評価し、表2に示した。
A:すべての箇所において、孔が開いており、かつスチームピンのスリットも伸びた樹脂により閉塞されていない。
B:一部の箇所において、孔が開いてない、若しくはスチームピンのスリットを閉塞してしまうほど樹脂が伸びている。
D:すべての箇所において孔が開いていない。
【0070】
(繊維配合量)
表3に示す表皮材における繊維配合量(質量%)を、上述のとおり原料の配合比率により調整した。
【0071】
(繊維の重量平均繊維長)
表皮材におけるガラス繊維の重量平均繊維長(mm)を、以下のとおり測定した。
まず、得られた発泡成形体から表皮材を切り分けた。次に表皮材の無作為に選択した5箇所からそれぞれ約1gの試験片を切り出した。そして、全ての試験片を200mLのデカヒドロナフタレンにて煮沸してポリプロピレン系樹脂を溶解させた状態で、400メッシュのろ紙を用いてろ過して繊維のみを採取した。その後、マイクロスコープを用いて50倍の範囲に拡大した上記繊維の画像を観察した。観察画像から無作為に選んだ100本の繊維の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を用いて以下の式1に基づき計算して、繊維の重量平均繊維長を求めた。求められた値は、表3に示した。[式1]
重量平均繊維長Lw=Σ(Ni×Li
2)/Σ(Ni×Li) (1)
Li:繊維長、Ni:繊維の本数
【0072】
(表皮材原料の密度)
表3に示す表皮材を構成するガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の密度(g/cm3)を用いた原料の密度と配合比率とから表皮材原料の密度を算出した。
【0073】
(部分融解熱量、融解熱量比)
表皮材の部分融解熱量(J/g、80℃~140℃)および融解熱量比(即ち、部分融解熱量/全融解熱量)を次のようにして測定した。即ち、熱流束示差走査熱量測定において、表皮材から3~5mgの試験片を切り出し、該試験片を常温から200℃まで加熱速度10℃/分で加熱し、その後直ちに10℃/分の冷却速度で40℃まで冷却した。次いで10℃/分の加熱速度で再度200℃まで加熱して得られるDSC吸熱曲線において、部分融解熱量(ΔHp)を、以下の通り求めた。
1.DSC吸熱曲線上の80℃の点αと、融解終了温度(Te)に相当する点βとを結ぶ直線(α-β)を引いた。
2.次にDSC吸熱曲線上の140℃の点σからグラフの縦軸に平行な直線を引き、直線(α-β)と交差する点をγとした。
3.部分融解熱量(ΔHp)をDSC曲線と、線分(σ-γ)および線分(γ-α)とによって囲まれる部分の面積に相当する熱量として算出した。また、全融解熱量(ΔHt)を、DSC曲線と、線分(α-β)とによって囲まれる部分の面積に相当する熱量として算出し、部分融解熱量の値を全融解熱量の値で除することで、融解熱量比を算出した。算出された値は、表3に示した。
【0074】
(表皮材の平均肉厚)
得られた発泡成形体を、長手方向中央部及び長手方向両端部付近の計3箇所において、長手方向に対し垂直に切断した。そして、各サンプルの断面(両断面のうちのいずれか一方)において示される表皮材の断面において、表皮材の周方向に沿って等間隔に6箇所を選択し、選択された箇所の表皮材の厚みを測定した。但し、上記6箇所は、発泡成形体の充填フィーダ及びスチームピンの挿入跡は避けて選択された。測定された18箇所の厚みの値を算術平均し、これを表皮材の平均肉厚(mm)とし、表3に示した。
【0075】
(表皮材の曲げ特性)
表皮材の長手方向および短手方向における曲げ弾性率(MPa)をJIS K7171-1994に準じ、以下のとおり測定した。
まず、得られた発泡成形体の下記板面のうちスチームピン挿入跡が形成されていない側の面の無作為に選択した5箇所から、表皮材のみを切り分けて測定用サンプルを得た。
・実施例1~5、7~9及び比較例1~4、6に関する上記板面は、金型の成形キャビティの縦350mm×横260mmの面と対応する面である。
・実施例6、10及び比較例5に関する上記板面は、金型の成形キャビティの縦2070mm×横170mmの面と対応する面である。
上記測定用サンプルの厚みは、表皮材の厚みと同じとした。そして、表皮材の長手方向と測定用サンプルの長さ方向とを一致させ、長さ80mm、幅10mmの長手方向曲げ弾性率測定用のサンプル1を5個作製した。また、同様に、表皮材の短手方向と測定用サンプルの長さ方向を一致させ、長さ80mm、幅10mmの短手方向曲げ弾性率測定用のサンプル2を5個作製した。そして、それぞれのサンプルをオートグラフ試験機(株式会社島津製作所製)に供し、スパン間距離64mm、圧子の半径(R1)2mm、支持台の半径(R2)2mm、試験速度10mm/分の条件で各サンプルの曲げ弾性率を測定した。上述の測定結果から、サンプル1、2それぞれの曲げ弾性率の算術平均値を算出し、これらを表皮材の長手方向の曲げ弾性率(MPa)及び短手方向の曲げ弾性率(MPa)とし表4に示した。また長手方向の曲げ弾性率と短手方向の曲げ弾性率の比率(長手/短手)を表4に示した。
【0076】
(パーティングラインでの割れ)
得られた発泡成形体を外観観察し、目視において表皮材の外面に視認されるパーティングラインで割れが生じていない場合には、評価「A」とし、割れが生じている箇所が発見された場合には、評価「D」とした。評価結果は、表3に示した。
【0077】
(発泡粒子成形体及びスチームピン挿入跡近傍の発泡粒子成形体の見掛け密度)
発泡粒子成形体の見掛け密度[kg/m3]を以下のとおり測定し、見掛け密度1として表3に示した。まず得られた発泡成形体から、表皮材を切り分け、発泡粒子成形体のみからなる試験片を作製した。上記試験片の質量[kg]を、水没法により求めた当該試験片の体積[m3]により除すことによって、発泡粒子成形体の見掛け密度を求めた。
また、発泡粒子成形体のスチームピン挿入跡近傍部分の見掛け密度[kg/m3]は、以下の通り測定し、見掛け密度2として表3に示した。上記発泡粒子成形体から、各スチームピン挿入跡を中心に縦5cm×横3cm×厚み(試験片の厚みのまま)で切り取り、試験片を8個作製した。上記試験片の質量[kg]を、水没法により求めた当該試験片の体積[m3]により除すことによって、発泡粒子成形体のスチームピン挿入跡近傍部分の見掛け密度を求めた。それぞれの試験片の見掛け密度の算術平均値を求め、これを見掛け密度2とした。
【0078】
(表皮材に含有される繊維の繊維長0.4mm以上の割合)
表皮材に含有される繊維に関し、繊維長0.4mm以上の割合(個数基準)を以下のとおり測定した。測定結果は、繊維長0.4mm以上の割合として表4に示した。
まず、得られた発泡成形体から表皮材を切り分けた後、無作為に選択した5箇所からそれぞれ約1gの試験片を切り出した。そして、全ての試験片を200mLのデカヒドロナフタレンにて煮沸して表皮材を構成しているポリプロピレン系樹脂を溶解させ、400メッシュのろ紙を用いてろ過して繊維のみを採取した。その後、マイクロスコープを用いて50倍に拡大し、100本の繊維を無作為に選択して各繊維の長さを測定し、繊維長が0.4mm以上の繊維の個数基準の割合を求めた。
(表皮材に含有される繊維の配向角度)
外面側における繊維の配向:
表皮材の外面側の面内方向において、押出方向に対し45度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を、以下のとおり測定した。測定結果は、外面配向≦45度の割合として表4に示した。
表皮材中のガラス繊維配向状態をマイクロフォーカスX線CTシステム(島津製作所製inspeXio SMX-100CT)により確認した。具体的には、発泡成形体から表皮材を切り分け、表皮材の無作為に選択した5か所から10mm角のサンプルを切り出した。各サンプルの外面から肉厚方向(深さ方向)に10μmごとにCTスキャンしてCT画像を得た。なお、繊維の配向角度とは、基準線と繊維とがなす角度を意味し、表皮材を形成するためのパリソンの押出方向に沿った線を基準線とした。
外面から深さ方向に10μmの位置におけるCT画像(φ6mmの範囲)において、前記CTシステムの画像処理ソフトを用いて、認識されるガラス繊維の数を計測すると共に、これらのガラス繊維の全部について配向角度を測定した。さらに、深さ方向に20μm、30μm、40μm、50μmのそれぞれの位置のCT画像において、上述と同様の操作を行った。そして、基準線に対し45度の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の数をガラス繊維の全数で割り算することにより、押出し方向(基準線)に対し45度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を求めた。
中央部における繊維の配向1:
表皮材の中央部の面内方向において、押出し方向に対し0度以上10度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を、以下のとおり測定した。測定結果は、中央部配向≦10度の割合として表4に示した。
表皮材を肉厚中央部でスライスし、スライス面から外面側に10μm、20μmの位置と、内面側に10μm、20μmの位置の計4か所のCT画像を用いた以外は、前記と同様にして、ガラス繊維の全数及びガラス繊維の配向角度を計測した。
そして、基準線に対し0度以上10度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の数をガラス繊維の全数で割り算することにより、押出し方向(基準線)に対し0度以上10度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を求めた。
中央部における繊維の配向2:
表皮材の中央部の面内方向において、押出し方向に対し10度を超えて45度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を、上述と同様に測定した。測定結果は、中央部配向10度<~45度の割合として表4に示した。
内面側における繊維の配向:
表皮材の内面側の面内方向において、押出し方向に対し45度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を、以下のとおり測定した。測定結果は、内面配向≦45度の割合として表4に示した。
表皮材の内面側から肉厚方向(深さ方向)に10μmごとにCTスキャンしてCT画像を得た以外は、前記と同様にして、押出し方向(基準線)に対し45度以下の範囲の配向角度で配向しているガラス繊維の割合(個数基準における%)を求めた。
【0079】
(線膨張係数)
発泡成形体の長手方向の線膨張係数を以下の通り測定した。得られた発泡成形体について、23℃以上80℃以下の温度範囲において発泡成形体の長手方向における線膨張係数(/℃)を測定した。測定結果を表5に示した。具体的には、まず、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に発泡成形体を48時間載置した後、同条件の恒温室内で発泡成形体の長手方向の寸法(L23)を測定した。次に、80℃、相対湿度50%のオーブン内に発泡成形体を2時間載置し、オーブンから取り出した後直ちに発泡成形体の長手方向の寸法(L80)を測定した。そして、下記式2により、線膨張係数を算出した。
[式2]
線膨張係数=(L80-L23)/{L23×(80-23)} (2)
【0080】
(剥離強度)
表皮材と発泡粒子成形体との剥離強度を以下のとおり測定した。得られた表皮材付発泡成形体の板面の無作為に選択した5箇所から、両面に表皮材を有する直方体形状の試験片(50mm×50mm×厚み:成形体厚みのまま)を切り出した。上記試験片の上下面(表皮材面)に接着剤を塗布し、上記試験片を剥離強度測定用冶具に接着させた。そして、接着された試験片をテンシロン(万能試験機)にて2mm/分の引張速度にて引張試験に供した。上記引張試験における最大点応力を剥離強度(MPa)とし、表5に示した。万能試験機としてオリエンテック社製、RTC-1250Aを使用した。
【0081】
(長手方向収縮率)
成形金型の成形キャビティにおける最大長さ(金型長手寸法)L0を測定した。成形金型から取り出した直後の発泡成形体を、23℃、相対湿度50%の雰囲気下に48時間載置した。その後、該発泡成形体において、上記金型長手寸法L0に対応する箇所の寸法を測定して発泡成形体長手寸法L1を得た。そして、下記式3より長手方向収縮率(%)を求め、表5に示した。
[式3]
長手方向収縮率(%)=(L0-L1)/L0×100 (3)
【0082】
(質量)
得られた発泡成形体を23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室に48時間載置した後、全体の質量(g)を測定し、表5に示した。
【0083】
(表皮材付発泡成形体の曲げ特性)
表皮材付発泡成形体の曲げ弾性率(MPa)、5mmたわみ荷重(N)、曲げ強さ(MPa)、最大荷重時の変位(mm)をJIS K7171-1994に準じ、以下のとおり測定した。
まず、サンプルとして表皮材付発泡成形体を5個準備した。そして、それぞれのサンプルを用い、オートグラフ試験機(株式会社島津製作所製)に供した。具体的には、スパン間距離300mm、圧子の半径R1が25mm、支持台の半径R2が5mm、試験速度が20mm/分の条件で、サンプルの板面の長手方向中央部付近を圧子で押した。これによりサンプルを曲げ、各サンプルの曲げ弾性率を測定し、それぞれの曲げ弾性率の算術平均値を算出した。上記算術平均値を表皮材付発泡成形体の曲げ弾性率(MPa)として表5に示した。同様に、サンプルを5mmたわませた際の荷重である5mmたわみ荷重(N)、曲げ強さ(MPa)、最大荷重時の変位(mm)を求め、表5に示した。
【0084】
(比曲げ弾性率)
上述のとおり測定した発泡成形体の長手方向における曲げ弾性率(MPa)を、上述のとおり測定した発泡成形体の質量で除することで、比曲げ弾性率(MPa/g)を求め、表5に示した。
【0085】
(表面性評価1)
得られた発泡成形体の表面を目視で観察し、表面性を以下のとおり評価した。評価結果は表5に示した。
A:発泡成形体の表面にガラス繊維によるささくれが確認されなかった
D:発泡成形体の表面にガラス繊維によるささくれが確認された
【0086】
(表面性評価2)
得られた発泡成形体の表面性について、表面粗さRzを指標として以下のとおり評価した。まず、発泡成形体の板面の無作為に選択した5箇所から、片面側に表皮材を残して20mm厚みの試験片を切り出した。測定装置として株式会社小坂研究所製サーフコーダのSE1700αを使用した。試験片を表皮材側が上面となるように水平な台に静置した。そして、先端曲率半径が2μmの触針の先端を上記試験片の表面(表皮材の表面)に当接させて、触針を0.5mm/sにて表皮材の押出方向に沿って移動させて表面粗さ(最大高さRz)を測定した。尚、カットオフ値は8mmとし、触針の移動距離で特定される測定長さは20mmとし、そのほかのパラメータは、JIS B0601:2001に準拠して、輪郭曲線の最大高さRz(μm)を得た。得られた最大高さRz(μm)を用い、表面粗さを以下のとおり評価した。
A:最大高さRzが40μm未満
B:最大高さRzが40μm以上60μm以下
D:最大高さRzが60μmを超える
【0087】
尚、本実施例に関し示す種々の測定方法、評価方法は、いずれも本発明の発泡成形体または発泡成形体の各構成の測定方法、評価方法として参照される。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)押出されたパリソンをブロー成形してなる中空成形体からなる表皮材と、前記表皮材内に位置する発泡粒子成形体とを備え、前記表皮材と前記発泡粒子成形体とが融着している表皮材付発泡成形体であって、
前記表皮材の平均肉厚が1.0mm以上5.0mm以下であり、前記表皮材は、ガラス繊維を5質量%以上30質量%以下の範囲で含むガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されており、前記ガラス繊維の重量平均繊維長が0.4mm以上1.5mm以下であり、前記発泡粒子成形体はポリプロピレン系樹脂から構成されており、前記表皮材と前記発泡粒子成形体との剥離強度が、0.1MPa以上であり、23℃以上80℃以下における前記表皮材付発泡成形体の長手方向の線膨張係数が7×10-5/℃以下である、表皮材付発泡成形体。
(2)前記表皮材が、前記ガラス繊維を12質量%以上25質量%以下の範囲で含む前記ガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されている上記(1)に記載の表皮材付発泡成形体。
(3)前記表皮材の内面側に存在する前記ガラス繊維のうち、前記表皮材の面内方向において押出方向±45度の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合が個数基準で80%以上である上記(1)又は(2)に記載の表皮材付発泡成形体。
(4)前記表皮材の外面側に存在する前記ガラス繊維のうち、前記表皮材の面内方向において押出方向±45度の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合が個数基準で80%以上である上記(1)から(3)のいずれかに記載の表皮材付発泡成形体。
(5)前記表皮材の肉厚方向中央部に存在する前記ガラス繊維のうち、前記表皮材の面内方向において押出方向±10度の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合Iが個数基準で40%以上であると共に、押出方向+10度を超えて押出方向+45度以下及び押出方向-10度を下回り押出方向-45度以上の範囲の配向角で配向しているガラス繊維の割合IIが個数基準で20%以上50%以下であり、かつ、前記割合Iおよび前記割合IIの合計が80%以上である上記(1)から(4)のいずれかに記載の表皮材付発泡成形体。
(6)前記発泡粒子成形体の見掛け密度が20kg/m3以上60kg/m3以下である上記(1)から(5)のいずれかに記載の表皮材付発泡成形体。
【0094】
この出願は、2017年9月25日に出願された日本出願特願2017-183754号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0095】
10・・・発泡粒子成形体
20・・・表皮材
100・・・表皮材付発泡成形体(発泡成形体)