(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】金属カルボニルを生成する方法
(51)【国際特許分類】
C01G 51/02 20060101AFI20220405BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C01G51/02
C07F15/06
(21)【出願番号】P 2019543973
(86)(22)【出願日】2017-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2017080179
(87)【国際公開番号】W WO2018149525
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】102017103217.7
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・リヴァス・ナス
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン・ラモン・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンゲリノ・ドッピウ
(72)【発明者】
【氏名】アイリーン・ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・カルヒ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-052390(JP,A)
【文献】特開昭50-037699(JP,A)
【文献】特開昭49-069591(JP,A)
【文献】特開昭47-016397(JP,A)
【文献】米国特許第03236597(US,A)
【文献】米国特許第02865716(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 51/02
C07F 15/06
B01J 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属カルボニルを生成するための方法であって、以下の成分:
(a)式(MeR
x)
w[式中、Meはコバルト(Co)であり、Rは6~12個の炭素原子を有するモノカルボキシレートであり、x=1、2、3又は4であり、w=1、2又は3である]の少なくとも1つの金属カルボン酸塩と、
(b)一酸化炭素と、
(c)4~7個の炭素原子を有する脂肪族アルコールと、
(d)溶媒と、を含有する反応混合物との反応が反応器内で実施され、前記反応器内の平均滞留時間が60分未満であり、
前記反応が連続的に実施される、方法。
【請求項2】
前記脂肪族アルコールがブタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属カルボニルがジコバルトオクタカルボニル(Co
2(CO)
8)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属カルボン酸塩が式CoR
2を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属カルボン酸塩がコバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコールがn-ブタノールである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が炭化水素を有するか、又はそれらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が100℃~300℃の範囲の温度で実施され、かつ/又は前記反応が50バール~500バールの範囲の圧力で実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が180℃~220℃の範囲の温度で実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応が180バール~210バールの範囲の圧力で実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用される一酸化炭素と金属カルボン酸塩とのモル比が3:1より大きい、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記平均滞留時間が5分~30分である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応混合物が、以下の成分:
水素と、
更なる反応剤と、
金属と、
更なる金属
塩と、
更なるジコバルトオクタカルボニルと、のうちの1つ以上を含有しない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属カルボニルが、固体として沈殿し、除去され、及び/又は前記金属カルボニルが少なくとも1つの炭化水素で洗浄され、かつ前記金属カルボニルに対して、0.5~8重量%の前記炭化水素を有する生成物が得られる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
収率が使用される前記金属の量に対して、少なくとも70%である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
空時収率が6,000kg/m
3dより大きい、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、以下の成分:
(a)コバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)と、
(b)一酸化炭素と、
(c)ブタノールと、
(d)炭化水素を含有する溶媒と、を含有し、前記反応混合物があらゆる水素を含有せず、前記反応が100℃~300℃の範囲の温度、かつ50バール~500バールの範囲の圧力で実施される、ジコバルトオクタカルボニルを生成するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属カルボン酸塩、一酸化炭素、脂肪族アルコール及び溶媒を含有する反応混合物中における、金属カルボニルの連続生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
金属カルボニルは、遷移金属の錯化合物であり、配位子として一酸化炭素を有する。金属は、本明細書では+/-0の酸化段階で存在する。金属カルボニルは、有機合成において重要な中間体及び最終産物である。
【0003】
金属カルボニルはまた、コーティングを生成するための遷移金属の堆積(deposition)において、前駆体としても使用される。この場合、ジコバルトオクタカルボニルは、ALD(原子層堆積;Thin Solid Films 517(2009)2563~2580;Appl.Phys.Lett.88(2006)051903~051907;Appl.Phys.Lett.88(2003)2883~2885;Nano Lett.12(2012)4775~4783)によって、コバルトを含有する原子層を生成するための中央前駆体である。ALDは、超高純度反応器(ALDチャンバ)内において熱的又は化学的に化学物質を処理する、コーティング技術である。この処理の目的は、表面(ウェハとして一般に知られる、キャリア表面)上への、特定の要素又は組成物の堆積である。この方法を繰り返しサイクルで実行することで、層が形成される。このタイプの高選択的、超高純度かつ高度に構造化された層形成(プラズマ堆積PVD又は古典的CVDとは対照的)は、例えば、電子部品(論理チップ若しくはメモリチップ)、LEDセル又は光起電力(PV)セルで使用される層に基づいて、材料を形成するために必要とされる。
【0004】
前駆体は、特にALDに対して必要である。コバルト前駆体の領域(area)において、ジコバルトオクタカルボニルは、ALD堆積方法における最終用途のためのコバルト前駆体の大部分を生成する決定的な出発物質である。
【0005】
金属カルボニルの非常に実用的な重要性のために、その生産のための改善された方法への必要性が増している。そうすることで、可能性のある最も高い収率及び純度を有する単純かつ効率的な方法を使用して、金属カルボニルを生成することが望ましい。このような金属錯体は不安定であって分解する傾向があるので、したがって取り扱いが容易ではなく、生成は概して些細なものではない。この方法は、一般に、多相系で行われるという事実のために困難である。この場合、ガス状(及び、更には高毒性)一酸化炭素が添加され、かつ金属カルボニルは固体である。
【0006】
金属カルボニルを生成するためには、典型的に、従来技術では従来のバッチ反応を使用する。その際、高圧かつ高温で反応を実施するオートクレーブへ出発物質を添加する。しかしながら、このようなバッチ反応は、金属カルボニルの工業規模製造に適していないか、又は好適ではない。一方で、圧力及び温度は、大量に使用される場合は特に、オートクレーブ内では制御及び調節が不可能であるか、又は困難である。他方で、容器の充填及び洗浄並びに製品の分離に必要な設定時間のせいで、バッチ反応が手間を要するということは、基本的に不利である。
【0007】
したがって、金属カルボニルを生成するための連続的な方法を提供することが望ましい。しかしながら、このような方法の連続的な実施は、高圧かつ高温で行われ、ガス状一酸化炭素を必要することで、とりわけ不安定である金属カルボニルをもたらすので、複雑である。このような反応は多くの場合、特別で複雑な装置及び試験設定を必要とし、その場合にも、所望の生成物はしばしば、高収率で得られないことが多い。
【0008】
したがって、Co2(CO)8を生成する既知の方法は、生産規模において大きな労力(最高約500バールの高圧、最高300℃の温度、大規模バッチ反応器)を利用してのみ拡大可能であり、かつ/又は充分な純度では製品を提供しない。本明細書における特定の問題は、とりわけ、Znといった還元性金属を伴う生成物中の不純物、又は他のコバルト化合物との混合物として製品を得ることである。既知の方法では、生成物は固体として得られず、むしろ、水と混和しない有機溶媒中の溶液として得られないこともまた問題となる。また通常、収率は改善を必要とする。
【0009】
米国特許第2,865,716号は、有機酸のコバルト塩を一酸化炭素で変換することによってジコバルトオクタカルボニルを生成する方法について記載している。反応は、高温かつ高圧でオートクレーブ中において従来のバッチ反応として実施される。反応は実験室規模で行われ、出発物質及び生成物の量は、グラム範囲である。詳細に記載される様々な反応によって、約30~78%の収率が得られる。これはバッチスケールでの改善を依然として必要とする。
【0010】
特に問題であるのは、米国特許第2,865,716号のバッチ方法が、数時間の範囲で比較的長い反応時間を必要とする点である。オートクレーブ中で数時間の反応時間を既に必要とするようなバッチ方法は、一般的に、連続方法と効率的かつ同様の収率で実施することができない。連続方法で反応が遅すぎる場合、抽出物の添加及び生成物の除去が、必要な速度で行われない可能性がある。
【0011】
独国特許出願公開第2332638(A1)号は、ジコバルトオクタカルボニルを生成する連続方法について記載している。例示的な実施形態によれば、酢酸コバルト水溶液は、ブタノール、一酸化炭素及び水素の存在下において、高温かつ高圧で変換される。酢酸コバルトが高度に希釈された水溶液(1% CO2+)で使用されるため、この方法は非常に非効率的である。したがって、この方法は、実験室規模でのみ記載され、ミリリットルの範囲内の量である。強い希釈のため大型のデバイスが必要とされるので、生産規模までのスケールアップが要求されて非効率的であろう。更なる欠点は、水素の存在下において反応が行われる点である。分子水素が爆発性であって、取り扱いが困難であり、かつ高価であるために、この欠点は望ましくない。別の欠点は、生成物が希釈水溶液中に存在し、これが多くの下流用途に不利である点である。その上、生成物の収率又は純度についての情報が一切与えられない。全体的に、この方法は、生産規模でジコバルトオクタカルボニルを効率的に生成するのに好適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、前述の欠点を克服する方法が必要とされている。特に、生産規模で実施することができる、高収率かつ高純度でジコバルトオクタカルボニルといった金属カルボニルを生成する方法が必要とされている。単純な様式で実施、制御及びスケーリングすることができる、連続プロセスが特に望ましい。
【0013】
本発明の目的
本発明は、上記の欠点を克服する方法を提供するという目的に基づく。特に、金属カルボニルを生成するための、効率的かつ改善された方法が提供されるものとする。本発明が基づく特定の目的は、ジコバルトオクタカルボニルを生成するための改良された方法を提供することである。
【0014】
この方法は、工業規模における金属カルボニルの生成を、大きな収率でかつ高純度で可能にする。可能な限り単純かつ効率的に方法を実施することが可能となる。そうすることで、可能な限り少ない出発物質及び添加剤が必要となる。特に、金属及び金属化合物といった生成物を汚染するような化合物、又は水素といった高度反応性化合物の添加は避けられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、具体的には、以下の実施形態1~25を特徴とする。
実施形態1.金属カルボニルを生成するための方法であって、以下の成分:
(a)式(MeRx)w[式中、Meは遷移金属であり、Rは6~12個の炭素原子を有するモノカルボキシレートであり、x=1、2、3又は4であり、w=1、2又は3である]の少なくとも1つの金属カルボン酸塩と、
(b)一酸化炭素と、
(c)4~7個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくは、ブタノールと、並びに
(d)溶媒と、を含有する反応混合物との反応が、反応器内で実施され、
反応器内の平均滞留時間(dwell time)が60分未満である、方法。
実施形態2.反応が連続的に実施される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.金属カルボニルが式Me3(CO)12、Me2(CO)8、Me(CO)4、Me(CO)5又はMe(CO)6を有する、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4.金属Meが、Co、W、Mo、Ru、Ni及びMnから選択される遷移金属である、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
実施形態5.金属カルボニルが、Co2(CO)8、W(CO)6、Mo(CO)6、Ru3(CO)12、Ni(CO)4及びMn2(CO)10から選択される、実施形態4に記載の方法。
実施形態6.金属カルボニルがジコバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)である、実施形態5に記載の方法。
実施形態7.金属カルボン酸塩が式CoR2を有する、実施形態6に記載の方法。
実施形態8.金属カルボン酸塩がコバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)である、実施形態6又は7に記載の方法。
実施形態9.アルコールが一価アルコールである、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
実施形態10.アルコールが、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びヘプタノールから選択される、実施形態9に記載の方法。
実施形態11.アルコールがn-ブタノールである、実施形態10に記載の方法。
実施形態12.アルコールがポリオールである、実施形態1~8のういずれか一つに記載の方法。
実施形態13.溶媒が炭化水素を有するか、又はそれらからなる、実施形態1~12のいずれか一つに記載の方法。
実施形態14.溶媒が、例えば5重量%未満である芳香族化合物の小部分を有し得る脂肪族を含む、炭化水素混合物である、実施形態13に記載の方法。
実施形態15.反応が100℃~300℃、特に180℃~220℃の範囲の温度で実施される、実施形態1~14のいずれか一つに記載の方法。
実施形態16.反応が50バール~500バール、又は特に180バール~210バールの範囲の圧力で実施される、実施形態1~15のいずれか一つに記載の方法。
実施形態17.使用される一酸化炭素と金属カルボン酸塩とのモル比が3:1より大きい、実施形態1~16のいずれか一つに記載の方法。
実施形態18.平均滞留時間が5分~30分である、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法。
実施形態19.反応混合物が、以下の成分:
水素と、
更なる反応剤と、
金属と、
更なる金属塩、特に亜族金属(subgroup metal)の塩と、
更なるジコバルトオクタカルボニルと、のうちの1つ以上を含有しない、実施形態1~18のいずれか一つに記載の方法。
実施形態20.金属カルボニルが、固体として沈殿し、そして除去される、実施形態1~19のいずれか一つに記載の方法。
実施形態21.反応混合物が、変換後に10℃未満又は-10℃未満の温度まで冷却される、実施形態1~20のいずれか一つに記載の方法。
実施形態22.金属カルボニルが少なくとも1つの炭化水素で洗浄され、かつ金属カルボニルに対して、0.5~8重量%の炭化水素を有する生成物が得られる、実施形態1~21のいずれか一つに記載の方法。
実施形態23.収率が使用される金属の量に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%である、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
実施形態24.空時収率(space-time yield)が6,000kg/m3dより大きい、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法。
実施形態25.反応混合物が、以下の成分:
(a)コバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)と、
(b)一酸化炭素と、
(c)ブタノールと、
(d)炭化水素を含有する溶媒と、を含有し、
反応混合物が、あらゆる水素を含有せず、
反応が100℃~300℃の範囲の温度、かつ50バール~500バールの範囲の圧力で実施される、ジコバルトオクタカルボニルを生成するための実施形態1~24のいずれか一つに記載の方法。
【0016】
発明の開示
驚くべきことに、本発明が基づく目的は、本特許請求の範囲による方法によって達成される。
【0017】
本発明の主題は、金属カルボニルを生成する方法であり、以下の成分:
(a)式(MeRx)w[式中、Meは、遷移金属であり、Rは、6~12個の炭素原子を有するモノカルボキシレートであり、x=1、2、3又は4であり、そしてw=1、2又は3である]の少なくとも1つの金属カルボン酸塩と、
(b)一酸化炭素と
(c)4~7個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくは、ブタノールと、並びに
(d)溶媒と、を含有する反応混合物との反応が反応器内で実施され、
反応器内の平均滞留時間が60分未満である。
【0018】
この方法では、成分(a)~(c)は、金属カルボニルと反応する。この方法は、好ましくは、反応混合物中で生じる単一の反応工程のみを含む。反応は本質的に酸化還元反応であって、とりわけ、金属はブタノールのエステル化と併せて還元される。
【0019】
本発明によれば、成分(a)~(c)の反応は、予想外に迅速に進行することが見出された。したがって、反応は比較的短い滞留時間によって特徴付けられ、平均滞留時間は60分未満である。方法において、平均滞留時間とは、例えば、反応器内において画定された体積の液体が「滞留する(dwells)」時間である。滞留時間とはまた、溶解化合物が、反応器内でどれほどの長さ滞留するのかを示し、その濃度は反応によって低減されない。滞留時間は、ギリシャ文字τ(タウ)によって特徴付けられ、具体的には、連続反応による方法の効率を表す。連続反応について、平均滞留時間は、反応器容積と流出体積流量との比から計算することができる。滞留時間はまた、不活性トレーサー化合物中の流れの持続時間を測定することによって、経験的に決定することもできる。バッチ反応器では、滞留時間は反応時間に等しい。
【0020】
本発明によれば、滞留時間が比較的低い場合であっても、高収率を達成することができる。そうすることで、平均滞留時間が、40分以下、30分以下、20分未満又は15分未満である場合に、充分となり得る。したがって、滞留時間は、好ましくは1分超、2分超又は5分超である。好ましい実施形態では、平均滞留時間は、2分~60分、又は特に5分~30分、又は5分~20分である。
【0021】
反応は、連続的に、半連続的に又はバッチ反応として実施されてもよい。反応は、好ましくは連続的に実施される。化学工学において通例である通り、連続方法は、連続的かつ中断なしに実施することができる方法として特徴付けられる。この方法では、反応を行っている間に、出発物質を添加し、生成物を除去することができる。連続反応は、反応開始前に出発物質が配置され、かつ反応の終了後まで生成物は除去されないバッチ方法とは、対照的である。慣例的に、連続方法は、反応混合物が貫流する反応器内で行われ、一方でバッチ方法は、密閉容器内で行われる。
【0022】
生成物は、金属カルボニル、すなわち式Mey(CO)zの化合物である。この場合、yは1~3の整数であることが好ましく、zは4~12の整数であることが好ましい。金属カルボニルは、例えば、式Me3(CO)12、Me2(CO)8、Me(CO)4、Me(CO)5又はMe(CO)6を有し得る。例えば、Co2(CO)8、W(CO)6、Mo(CO)6、Ru3(CO)12、Ni(CO)4又はMn2(CO)10から選択してもよい。
【0023】
反応混合物は、(a)式(MeRx)wのうち少なくとも1つの金属カルボン酸塩を含有する。本明細書における金属は、好ましくは、Co、W、Mo、Ru、Ni及びMnから選択される、遷移金属である。金属は、特に好ましくはCoである。金属は、好ましくは反応段階2、3又は4、特に2において、金属カルボン酸塩中に存在する。式(MeRx)wでは、値xは、金属の酸化段階に相当する。反応を単純化するためには、反応混合物中に単一の金属カルボン酸塩のみが含有されることが好ましい。値wは、1~3である。これは、式(MeRx)の化合物が、一量体、二量体又は三量体として存在し得ることを意味する。
【0024】
金属カルボン酸塩は、モノカルボキシレート、すなわち6~12個の炭素原子を有するモノカルボン酸のカルボキシレートである。モノカルボン酸は、好ましくは8個の炭素原子を有する。カルボン酸は、好ましくは分枝鎖又は直鎖であって、特に分枝鎖である。
【0025】
ブタノールと一酸化炭素との反応の一般的な反応式を、以下の通り示す。
2Co(RCOO)2+10CO+4C4H9OH→[Co(CO)4]2+4RCOOC4H9+2CO2+2H2O
【0026】
好ましい実施形態では、金属カルボン酸塩は、コバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)であって(コバルト(II)エチルヘキサノエートとしても特徴付けられる)、式(I):
【0027】
【0028】
を有する。
【0029】
式Co2(CO)8の金属カルボニルジコバルトオクタカルボニル及び金属カルボン酸コバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)が、特に好ましい。
【0030】
好ましくは、金属カルボン酸塩を、既に溶解した形態にて反応器へ添加する。金属カルボン酸塩は、特に好ましくは、炭化水素混合物中の溶液の形態で使用される。このような炭化水素混合物中の金属カルボン酸塩の溶液は、市販されている。例えば、25%炭化水素混合物中の70%コバルト-2-エチルヘキサノエートの溶液は、商標名VALIREXとしてUmicoreによって販売されている。これで、種々のコバルト濃度を得ることができる。
【0031】
反応混合物は、成分(b)として一酸化炭素(CO)を含有する。気相と液相との効率的で完全な混合は、圧力の増加によって達成することができる。一酸化炭素は、好適な形態、例えばガスとして、反応器に添加される。好ましい実施形態では、一酸化炭素は、圧縮液化形態で若しくは超臨界流体として添加されるか、及び/又は反応中にこの形態で存在する。
【0032】
反応混合物は、成分(c)として4~7個の炭素原子を有する、脂肪族アルコールを含有する。脂肪族アルコールは、元素C、O及びHからなる。アルコールは、概して、反応中にカルボキシレートを有するアルキルエステルを形成する。アルコールは、好ましくは一価アルコールである;しかしながら、多価、例えば、二価又は三価であってもよい。アルコールは、直鎖、分枝鎖又は環式であってもよい。アルコールは、有利には、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びヘプタノールから選択される。アルコールは、好ましくは直鎖アルコール及び/又は1-アルコールである。アルコールは、特に好ましくは、ブタノールである。n-ブタノール(1-ブタノール)を使用することが特に好ましい。
【0033】
反応混合物は、成分(d)として溶媒を含有する。好適な溶媒は、金属カルボン酸塩(a)を溶解し、液体形態ではアルコール(c)と混和性であって、かつ反応において不活性である、化合物又は混合物である。反応混合物は好ましくは溶液であり、液体形態で存在し、一酸化炭素は液体中に少なくとも部分的に分布した気相を形成することができる。好ましくは、この方法において、金属カルボン酸塩は、溶媒(d)中の溶液として得られ、反応混合物へ添加される。
【0034】
好ましい実施形態では、溶媒は炭化水素を有するか、又はそれらからなる。炭化水素は、脂肪族、芳香族又はこれらの混合物であり得る。炭化水素混合物が、好ましくは使用される。脂肪族を含む混合物、例えば、単素環式(isocyclic)及び環式脂肪族が、特に好適である。これらは、例えば、5重量%未満又は2重量%未満である芳香族化合物の小部分を有してもよい。例えば、分枝鎖又は直鎖であり得る非環式炭化水素も、同様に好適である。例えばグリコールエーテルといったポリオールはまた、例えば最大2%などの少量で存在してもよく、かつ反応に影響を与えない。
【0035】
好ましい実施形態では、反応混合物は、成分(a)~(d)からなる。本発明によれば、成分(a)~(d)が含有される場合にのみ、効率的な反応が可能であることが判明している。更なる反応物又は添加剤は、必須ではない。したがって、連続方法は、比較的単純な様式で、調整、実行及び制御することができる。
【0036】
反応は、(a)~(d)の出発化合物のみを用いて効率的に行うことができる点で有利である。したがって、反応自体又は生成物へ悪影響を及ぼす更なる成分を添加する必要はない。好ましい実施形態では、反応混合物が、以下の成分:
水素と、
更なる反応剤と、
金属と、
更なる金属塩、特に亜族金属の塩と、
更なるジコバルトオクタカルボニルと、のうちの1つ以上を含有しない。
【0037】
例えば、取り扱いが非常に困難である、水素といった反応性化合物を添加する必要はない。金属カルボニルを生成するための先行技術の方法では、多くの場合、一酸化炭素及び水素を含む混合物が添加される。水素の反応性が高いため、この方法は、より複雑で、要求が厳しく、かつ高価である。還元剤として使用される有機化合物といった更なる還元剤、又は、例えば、Zn、Hg、Al及びMgといった更なる金属(even metals)は必要でなく、したがって有利には含まれないため、反応剤はまた還元剤であってもよい。また、生成物を汚染し得る更なる金属又は金属化合物を使用する必要もない。特に、電子部品を製造するためのALDといったコーティング方法で金属カルボニルが使用される場合、他の金属からのわずかな汚染さえ許容することはできない。
【0038】
更に好ましい実施形態では、反応が30℃~300℃の温度で実施される。温度は、好ましくは150℃超又は180℃超、好ましくは300℃未満及び250℃未満である。温度は、好ましくは100℃~300℃、又は特に150℃~250℃の範囲である。とりわけ、ジコバルトオクタカルボニルの生成は、180℃~220℃、又は特に190℃~210℃、又は180℃~200℃の範囲で、特に効率的である。このような温度、特に約200℃の温度は、ジコバルトオクタカルボニルの生成に特に好適である。
【0039】
好ましい実施形態では、反応が50バール~500バールの圧力で実施される。100バール超又は150バール超、及び特に300バール未満又は250バール未満の圧力が、特に好適である。圧力は、好ましくは150~250バールである。とりわけ、ジコバルトオクタカルボニルの生成は、180バール~210バール、又は190バール~約210バール、又は特に約200バールの範囲で、特に効率的である。
【0040】
一酸化炭素は、金属(金属カルボン酸塩)と比較して、モル過剰で使用されることが好ましい。その際、モル比は、2:1超又は3:1超であることが好ましい。好ましい実施形態では、一酸化炭素と金属カルボン酸塩とのモル比は、5:1より大きい。一酸化炭素はまた、著しく過剰に、例えば、10:1超、50:1超、又は200:1超で使用することもできる。しかしながら、本発明によれば、例えば比較的小さな過剰である7.5:1でさえも、高収率で迅速な反応を実行するには充分であることが判明している。したがって、一酸化炭素過剰を可能な限り低く保つための効率及び材料節約の理由から、これは有利である。したがって、50:1未満、又は20:1未満、又は10:1未満の、一酸化炭素と金属カルボン酸塩とのモル比が好ましい。特に、一酸化炭素と金属カルボン酸塩とのモル比は、3:1~20:1の範囲である。
【0041】
本発明によれば、連続方法を実施すると、約6~12分の非常に低い滞留時間でさえも、80%より大きい非常に高い収率を達成することができることが見出された。同等のバッチ反応が数時間の反応時間を必要とする従来技術において既知であるため(米国特許第2,865,718号)、これは予想外であった。このような遅い反応は、概して、連続的な実施には好適でない。この理由とは、反応流が反応器内で非常にゆっくりと調整されなければならないことである。これにより、反応の過程に影響を与える反応器の内部に、沈殿が生じる可能性がある。したがって、先行技術から開始して、米国特許第2,865,718号に係るバッチプロセスが、言うまでもなく短時間でかつ高収率を達成しながら、連続的に実行可能であることは予想外であった。
【0042】
アルコール(c)、特にブタノールの量は、最適な反応が起こるように選択される。コバルトとブタノールとのモル比は、好ましくは1:1~1:6である。
【0043】
本発明に係る反応は、水の非存在下で本質的に行うことができる。これにより、完全に又は本質的に無水である金属カルボニルを得ることができる。AVDといった多くの下流用途には無水金属カルボニルが必要とされるため、これは有利である。反応混合物の含水量は、好ましくは0~2重量%、又は特に0.1~1.6重量%、又は0.2~1.1重量%である。最終産物の含水量は、好ましくは0.5重量%未満、又は好ましくは0.2重量%未満である。
【0044】
好ましい実施形態では、金属カルボニルは沈殿し、固体として除去される。変換後、反応混合物は、好ましくは弛緩(relaxed)かつ冷却され、そして反応混合物は沈殿する。反応生成物は、好ましくは、反応器内の反応ゾーンを通じて進行した後に回収される。そうすることで、反応生成物を含有する液相は、好ましくは回収される。反応生成物を有する画分は、好ましくは、相分離器で分離される。金属カルボニルの固体としての沈殿は、好ましくは冷却によって行われる。この方法では、反応混合物を、例えば室温、又は10℃未満、又は-10℃未満の温度まで冷却することができる。反応混合物は、好ましくは-18℃まで冷却される。完全な沈殿を達成するために、本明細書の反応混合物を、より長い時間、例えば30分~10時間インキュベートすることができる。金属カルボニルは、好ましくは、例えばヘキサン又はイソヘキサンといった炭化水素で洗浄される。洗浄後、金属カルボニルは、好ましくは、炭化水素の小部分、好ましくは約0.5~8重量%を有する。このようなタイプの生成物は、貯蔵安定性の増加を示す。
【0045】
この反応は、連続反応のために、慣例的な反応器内で実施することができる。その際、出発物質が一方の側に導入され、生成物が反応器の出口で回収される、単純な管状反応器が特に好適となる。このような単純な管状反応器の利点は、反応が全体として比較的単純に制御され得るという点である。温度及び圧力は、管状反応器内で常に調節され得るため、比較的単純な様式でスケールアップすることができる。好ましい実施形態では、反応器は、反応混合物の連続的で完全な混合を確実にするためのミキサーを有する。乱流を発生させるために、静的ミキサーを使用することが好ましい。
【0046】
金属カルボニルは、本発明に係る方法によって高収率で得ることができる。好ましい実施形態では、収率が使用される金属の量に対して、少なくとも70%又は少なくとも80%である。
【0047】
生成物は、5,000超、好ましくは6,000超、又は更により好ましくは7,000kg/m3d超の空時収率(STY)で得ることが好ましい。したがって、連続反応は、高効率かつ高収率で実施することができる。
【0048】
本発明に係る方法は、連続方法において、ジコバルトオクタカルボニルを生成するのに特に好適である。好ましい実施形態では、反応混合物が、以下の成分:
(a)コバルト(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)と、
(b)一酸化炭素と、
(c)ブタノールと、
(d)炭化水素を含有する溶媒と、を含有し、
反応混合物が、あらゆる水素を含有せず、
この反応が100℃~300℃の範囲の温度、かつ50バール~500バールの範囲の圧力で実施される。本明細書において、一酸化炭素とコバルトとのモル比は好ましくは3:1より大きく、平均滞留時間は好ましくは2~30分であり、収率は使用される金属の量に対して、少なくとも70%であることが好ましい。
【0049】
ジコバルトオクタカルボニルの生成は、本明細書では、好ましくは、最大200バールの圧力及び200℃の温度でブタノール中のコバルトカルボン酸塩を一酸化炭素によって変換することで行われる。この場合の反応物は均一相にあり、数分以内に生成物と反応する。反応混合物を常圧まで緩和させ(relaxing)、そして-18℃まで冷却した後、ジコバルトオクタカルボニルは、橙色の針として沈殿する。単純かつ迅速な反応制御により、パイロット規模(管状反応器:直径12mm、長さ約1m、スループット時間約12分)で良好に試験された、連続反応制御を可能にする。
【0050】
文献にて既知である複数の合成の標的化された改善及び単純化、並びに丈夫な(strong)炭素含有コバルト前駆体の使用が高収率につながることを観察すると、更なる広範な処理を伴わずに、高収率で純粋なCo2(CO)8をもたらす連続プロセスが可能となった。水素又は還元金属といった更なる還元剤が使用されないため、この方法によって、更に安全であり、より高純度の生成物が得られる。
【0051】
好ましくは、コバルトエチルヘキサノエートといった、分子中に高濃度炭素部分(high carbon portion)を有するコバルト前駆体が使用される。CO及びブタノールのみが更なる反応物として使用される一方で、Znといった水素又は還元剤は必須ではない。
【0052】
生成物は純粋な形態で沈殿する。コバルト水素化物といった他のコバルト化合物からの必須不純物は、形成又は発見されない。生成物は溶解形態では存在せず、むしろ反応後に沈殿し、そして温度を約-18℃まで低下させる。反応時間は非常に短い(数分)。
【0053】
反応混合物は水を含有しない点で有利である。特に、例えば独国特許出願公開第2332638(A1)号に記載される方法といった、大量の水の存在下では、収率は低下し、使用される炭化水素は、副生成物としてヒドリドコバルトテトラカルボニルをもたらす。
【0054】
この方法は、Co2(CO)8の既知の合成と比較して、著しくより効率的、より安全、かつより高純度である。この方法は、単純で慣習的な製造機器で実現することができる。方法及び機器の簡略化並びにいくつかの出発物質によって、この方法は、単純な様式で上方にスケーリングすることができる。したがって、収率が低く、例えば20%であった場合、効率的かつ競合的な様式で、方法自体は実行することができた。しかしながら、本発明によれば、最大81%以上の非常に高い収率を達成することができる。
【0055】
本発明は、清浄な生成物の生成を可能にする、効率的で安全な方法を提供する。機器は連続的に操作でき、それにより生成物の有効かつ制御された生成を可能にすることができる。水素又は他の試薬といった更なるガスは必須ではない。還元剤(Zn又はその他)のモル量は、分注することができる。金属カルボニルは、高純度であるために、電子用途及びALD(原子層堆積)法に好適である。これらはまた、例えば、触媒若しくは触媒前駆体として、又は医薬品用途、ファインケミカル製品といった超高純度生成物の製造、又は下流化学における用途にも好適である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
例示的な実施形態
A:実施
種々の連続方法において、コバルト-2-エチルヘキサノエート、一酸化炭素及びブタノールから、ジコバルトオクタカルボニルを生成した。
【0057】
25%炭化水素混合物中の70%コバルト-2-エチルヘキサノエートの溶液(2重量%未満の芳香族化合物及びグリコールエーテルを安定剤として有する、単素環式及び環式脂肪族を含む混合物;VALIREX(登録商標)Co 12% D60UPR;Umicore)を、n-ブタノールで希釈し、5mL/分の流量で管状反応器へ注入した。一酸化炭素(CO)について同じ流量を調整して、コバルトに対して著しく過剰量で添加した。理想ガスとして一酸化炭素(CO)を仮定すると、一酸化炭素(CO)とコバルトとのモル比は、420:1であった。反応は、200℃の温度かつ200バールの圧力で実施した。反応器内の反応混合物の滞留時間は約12.5分であった。
【0058】
連続方法の条件を変更した(実施例4~17)。それぞれの試験条件及び結果を表1にまとめる。
【0059】
管状反応器は、それぞれ体積122mLで長さ1,100mm及び直径12mmであり(実施例4~13)、体積279mLで直径18mm(実施例14~17)であった。反応器の端部に冷却チャンバを接続し、反応混合物を約50℃の相分離器に回収した。70分間にわたって収集された液相を、生成物が結晶化するまで冷凍庫内で冷却した。生成物を濾過し、低温のジエチルエーテルで洗浄した。
【0060】
表1は、炭化水素混合物(VALIREX(登録商標))中のコバルト-2-エチルヘキサノエートの溶液のブタノールとのモル比、及び一酸化炭素(CO)とコバルト(Co)とのモル比を示す。「ミキサー」カラムは、所望の乱流を確実にするために、試験設定で静的ミキサーが使用されたかどうかを示す。「STY」カラムは、空時収率を示す。「期間(Age)」カラムは、VALIREX(登録商標)溶液が予めどれくらいの長さ保存されているかを提示する。
【0061】
比較のために、3つの不連続方法(バッチ方法)を実施した(比較例1~3)。表1において、「バッチ」及び「連続」という情報は、バッチ方法又は連続方法を示す。連続的に実施されなかった試験では、各場合に使用される反応器の容積が示される。
【0062】
B:結果
結果は、本発明に係る方法が、非常に短い反応時間で実施することができ、高収率を依然として得ることができるということを示す。連続反応器内の平均滞留時間は、本明細書では、約6~24分の範囲で調整することができる。その際、実施例17に従って、81%のジコバルトオクタカルボニルの収率を得た。これは、同等の条件下におけるバッチ反応での収率に相当した。しかしながら、連続方法では、空時収率は、最大8,457g(m3d)-1まで劇的に増加した。実施例5~7では、コバルト-2-エチルヘキサノエートのより長い貯蔵時間に起因し得ることで、より小さな収率を得た。結果は、全体的に、本発明に係る反応が非常に迅速かつ高収率で進行することを示す。連続方法は、同等のバッチ方法よりも著しくより効率的に実施することができる。
【0063】