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特許7053643繊維-マトリックス半製品用の急速硬化エポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】繊維-マトリックス半製品用の急速硬化エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20220405BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220405BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 Z
C08J5/04 CFC
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019544780
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017077082
(87)【国際公開番号】W WO2018077836
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】16196273.3
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519161285
【氏名又は名称】ライヒホールド アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリンガー リオネル
(72)【発明者】
【氏名】ユー ミラン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニングセン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ツウェッカー ヨアキム
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021133(JP,A)
【文献】特表2016-517910(JP,A)
【文献】特開昭62-198668(JP,A)
【文献】特開平04-117434(JP,A)
【文献】特開平05-078445(JP,A)
【文献】特開平06-166742(JP,A)
【文献】特開2014-167102(JP,A)
【文献】特開平09-255802(JP,A)
【文献】特開昭62-267318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/40
C08L 63/00
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエポキシ樹脂(A1)を含む樹脂成分(A)と、
少なくとも1種のアミノアルキルイミダゾール化合物(B1)、ジシアンジアミドである潜在性硬化剤(B2)および少なくとも1種の一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)を含む硬化剤成分(B)と、を含む、
繊維補強材と組み合わせて使用する為のエポキシ樹脂組成物であって、
【化1】
(式中、XおよびYは、それぞれ互いに独立して、アルキレン基である)、
前記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の使用量が、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.007~0.025molの範囲内であり、および
前記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の第一級脂肪族アミン基と、含まれていてもよい任意のさらなる第一級アミンの合計量が組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.09molの割合を超えない、前記エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A1)が、モノマージオールまたはオリゴマージオールのジグリシジルエーテルであり、前記ジオールがビスフェノールAビスフェノールF、水素化ビスフェノールAおよび水素化ビスフェノールFからなる群から選択されるものである、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)が、一般式IIのアミノアルキルイミダゾール化合物である、請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物
【化2】
(式中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、
R2およびR3は、それぞれ互いに独立して、水素原子又はアルキル基であり、
R4は、アミノアルキル基である)。
【請求項4】
R1が、水素原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R2およびR3が、それぞれ互いに独立して、水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R4が、2~4個の炭素原子を有するアミノアルキル基である、請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)の使用量が、エポキシ樹脂(A1)の量に対して0.5~3.0%の範囲内である、請求項1~のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)が、,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エンまたはそれらの混合物である、請求項1~のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂組成物が、前記樹脂成分(A)のさらなる構成成分として、前記エポキシ樹脂(A1)と共に反応性希釈剤(A2)を含む、請求項1~のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂組成物が、さらなる構成成分として、前記エポキシ樹脂組成物中に懸濁された0.3~5.0cmの平均長さを有する短繊維補強材(C)を含む、請求項1~のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記短繊維補強材(C)が、1.2~5.0cmの平均長さを有する、請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
エポキシ樹脂組成物を製造するための方法であって、請求項1~のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物の構成成分を10~50℃で混合することを含む、前記方法。
【請求項11】
熟成された半固体の繊維-マトリックス半製品を製造するための方法であって、請求項または記載のエポキシ樹脂組成物を準備し、前記組成物を、10~50℃で熟成させることを含み、熟成時間が請求項または記載のエポキシ樹脂組成物の準備から始まり、0.5℃/秒で140℃まで加熱される2gの対応するエポキシ樹脂組成物の試験標本の粘度が決して0.5Pa*秒未満ではない時点で終わる期間である、前記方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法によって半固体の繊維-マトリックス半製品を製造する工程、および前記半固体の繊維-マトリックス半製品を硬化する工程を含む、硬化させた繊維-マトリックス半製品の製造方法
【請求項13】
半固体のシートモールディングコンパウンドを製造するためのまたは硬化させたシートモールディングコンパウンドを製造するための、請求項または記載のエポキシ樹脂組成物の使用。
【請求項14】
半固体のシートモールディングコンパウンドを製造するためのまたは硬化させたシートモールディングコンパウンドを製造するためのマトリックス成分としての請求項1~のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
説明
本発明は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分と、少なくとも1種のアミノアルキルイミダゾール化合物、少なくとも1種のジアザビシクロアルキレン化合物および少なくとも1種の潜在性硬化剤を含む硬化剤成分とを含むエポキシ樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂組成物が、一例として、ポリエステル系繊維-マトリックス半製品を製造し使用する従来の方法を変更せずに、繊維-マトリックス半製品(樹脂マット(シートモールディングコンパウンド(SMC))または未成形繊維-マトリックス半製品(バルクモールディングコンパウンド(BMC)))、特にSMCを製造するための熱硬化性マトリックスとして適している、上記エポキシ樹脂組成物に関する。上記エポキシ樹脂組成物において、上記アミノアルキルイミダゾール化合物の使用量は、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.007~0.025molの範囲内である。上記エポキシ樹脂組成物のもう1つの特徴は、第一級脂肪族アミン基の全量が組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.09molの割合を超えないことである。本発明は、また、上記のエポキシ樹脂組成物と、その中に懸濁された、平均長さが0.3~5.0cmの短繊維補強材とを含む、繊維-マトリックス半製品組成物、特にSMC組成物に関する。上記繊維-マトリックス半製品組成物は、構成成分を混合することによって製造することができ、その結果組成物は増粘する(予備硬化)。得られた増粘生成物((予備硬化させた)半固体の繊維-マトリックス半製品、特に(予備硬化させた)半固体SMCは、数日間または数週間貯蔵することができる。次いで適切な硬化条件下で硬化して、硬化させた繊維マトリックス半製品(硬化させたSMC)を得ることができる。本発明は、また、半固体の繊維-マトリックス半製品、特に(予備硬化させた)半固体SMCおよび硬化させた繊維-マトリックス半製品、特に硬化させたSMCに関する。
【0002】
SMCベースの成形プロセスの使用は、特に自動車産業(ショックアブソーバー、トランクリッドなど)において、さらに電気産業(鋳造部品、低電圧用途など)において近年大幅に拡大している。この技術で最も頻繁に使用される樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂である。これらの樹脂は、反応性モノマー、通常ビニルモノマー、特にスチレンモノマーの使用により架橋される。
従来の方法では、ビニルモノマー(例えばスチレン)中の不飽和カルボキシ末端ポリエステルからなる溶液を過酸化物または他の開始剤、酸化マグネシウムのような増粘剤、および炭酸カルシウムまたはアルミナのような充填剤と混合する。次に、この液体混合物を、一例としてガラス繊維または他の繊維の部分と2枚のホイル(一例としてポリエチレンまたはポリアミドからなる)の間で混合し、ここでスクイーズローラーを使用して気泡を除去する。粘度は、通常0.01~100Pa*秒である初期値から通常30 000~150 000Pa*秒の範囲内の値まで数日間にわたって上昇する。粘度増加はポリエステルの末端カルボキシ基と増粘剤との反応を介してもたらされる。増粘剤として酸化マグネシウムの場合には、ポリマーの炭酸マグネシウムが形成される。増粘剤が消費されると、粘度はプラトーに達する。
【0003】
この半固体のポリエステル系SMC組成物は、そのとき圧縮型への挿入に適している非粘着性の革様の粘稠度を有する。増粘生成物の粘度は、好ましくは少なくとも3ヶ月である期間にわたってほぼ一定のままであるはずであり、これは上記ポリエステル系SMC組成物に利用可能な加工時間である。
粘度が低すぎると、成形プロセス中に液体樹脂が型から漏れる。対照的に、粘度が高すぎると、上記SMCは板状になり、それ故、型に挿入することが困難であり、型の完全な充填に必要な流動性を欠くことになる。次いで、増粘ポリエステル系SMC組成物は、過酸化物によって開始される不飽和結合の重合を介して、典型的には120~180℃の温度で2~10分以内に硬化する。
上記の既知のポリエステル系SMC組成物の不利な点は、反応性希釈剤としてのスチレンの使用である。スチレンは、老化した増粘ポリエステル系SMC組成物から漏れる可能性があり、それ故、特に現在健康に比較的有害な物質として分類されているので、健康上のリスクを表している。スチレンをイソシアネートで置き換えることが以前に提案されているが、これらはスチレンよりも健康への有害性がわずかに少ないだけであり、それ故、問題に対する理想的な解決策ではない。
【0004】
既知のポリエステル系SMCに関する別の問題は、それから製造される部品が反りを非常に受けやすいことである。これに対抗するために、熱可塑性添加剤が通常添加される(例えばPSまたはPVA)。しかしながら、これらの添加剤は粘度および機械的性質に不利な影響を及ぼす。
WO 98/22527 A1号は、増粘剤としてのエポキシ樹脂、カルボン酸またはその無水物、潜在性硬化剤、および場合により硬化反応のための触媒を含むエポキシ樹脂系SMC組成物を記載している。その文献に記載されている組成物は、特に組成物が型中で圧縮され硬化させるさらなる加工のためには、比較的長い熟成時間の欠点を有する。
GB 2462996 A1号は、エポキシ樹脂、他の樹脂材料、増粘剤としてのアミン(Bステージング)、潜在性硬化剤、および硬化プロセス用の触媒または促進剤を含むプリプレグを製造するためのエポキシ樹脂マトリックスを開示している。その文献に記載されている組成物は、構成成分の混合から比較的短い時間という不利な点を有するが、その間、組成物は容易な取り扱いを可能にするために充分に柔軟な粘稠度を保持している。
CN 102337007 B号は、増粘剤としてアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、イソシアネート化合物、またはアルコールをベースとするエポキシ樹脂系SMCを開示している。
【0005】
ES 2303769 B号は、特にプリプレグを製造するための、エポキシ樹脂、鎖延長剤、潜在性硬化剤、硬化促進剤および添加剤からなる組成物を開示しており、言及された特定の鎖延長剤はアミン、アミン付加物、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ジスルフィド、チオール、ポリチオール、ポリスルフィド、ポリフェノール、ポリアミン、およびポリアミドである。
WO 2014/184012 A1号は、エポキシ樹脂、増粘剤としてのイミダゾール化合物(例えば、アミノアルキルイミダゾール)、潜在性硬化剤、および場合により硬化反応のための触媒を含むエポキシ樹脂系SMC組成物を記載している。硬化促進剤としてのジアザビシクロアルキレン化合物の使用は記載されていない。
製造後できるだけ早く、繊維補強材とマトリックスを分離させずに、硬化条件下(例えば140℃の硬化温度)の粘度が充分に低くなる(型に完全に充填するのに充分な流動性)が、同時に成形プロセスの間(特に加圧下で加工、特に圧縮プロセスの間)エポキシ樹脂マトリックスが型から漏れるのを防ぐのに充分に高いままであるその範囲内である充分に長い利用可能な加工時間(モールディングウインドウ)を達成するエポキシ樹脂系SMC組成物またはエポキシ樹脂系BMC組成物を提供することが望ましい。同時に、そのような組成物は急速な硬化を可能にしなければならない。更なる目的は、取扱い(例えばロールの形でのSMCの貯蔵;圧縮型へのSMCの挿入)を容易にするために、エポキシ樹脂系SMC組成物又はエポキシ樹脂系BMC組成物が可能な限り充分に柔軟な粘稠度を保持することである。
【0006】
従って、本発明は、少なくとも1種のエポキシ樹脂(A1)を含む樹脂成分(A)と、少なくとも1種のアミノアルキルイミダゾール化合物(B1)、少なくとも1種の潜在性硬化剤(B2)および少なくとも1種の一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)を含む硬化剤成分(B)とを含むエポキシ樹脂組成物であって、
【化1】
(式中、XおよびYは、それぞれ互いに独立して、好ましくは3~5個の炭素原子を有するアルキレン基である)、
上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の使用量が、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.007~0.025molの範囲であり、
上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の第一級脂肪族アミン基および含まれていてもよい任意のさらなる第一級アミンの合計量が、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.09molの割合を超えない、前記エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明は、また、少なくとも1種のエポキシ樹脂(A1)を含む樹脂成分(A)と、少なくとも1種のアミノアルキルイミダゾール化合物(B1)、少なくとも1種の潜在性硬化剤(B2)、および少なくとも1種のジアザビシクロアルキレン化合物(B3)を含む硬化剤成分(B)とを含むエポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)を含み、かつ上記エポキシ組成物(マトリックス成分)中に懸濁させた平均長さが0.3~5.0cmの短繊維補強材(C)(繊維成分)を含むエポキシ樹脂組成物(本明細書では繊維-マトリックス半製品組成物とも呼ばれる)であって、上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の使用量が、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.007~0.025molの範囲内であり、かつ上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の第一級脂肪族アミン基および含まれていてもよい任意のさらなる第一級アミンの全量が、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.09molの割合を超えない、前記エポキシ樹脂組成物を提供する。本発明のためには、繊維-マトリックス半製品組成物は、SMC組成物またはBMC組成物、好ましくはSMC組成物であり、SMC組成物の場合の上記短繊維補強材(C)は、好ましくは1.2~5.0cmの平均長さを有し、BMC組成物の場合の平均長さは、好ましくは0.3~2.5cmを有する。本発明の上記繊維-マトリックス半製品組成物中の上記短繊維補強材(C)の割合は、繊維-マトリックス半製品組成物全体に対して通常少なくとも10質量%である。
SMCおよびBMCの特性および命名法は、規格DIN EN 14598によって管理されている。
【0008】
本発明の上記エポキシ樹脂(A1)は、通常2~10個、好ましくは2~6個、特に非常に好ましくは2~4個、特に2個のエポキシ基を有する。上記エポキシ基は、特に、アルコール基とエピクロロヒドリンとの反応の間に生成されるグリシジルエーテル基を含む。上記エポキシ樹脂は、一般に1000g/molよりも小さい平均モル質量(Mn)を有する低分子量化合物、または高分子量化合物(ポリマー)を含み得る。これらのポリマーのエポキシ樹脂は、好ましくは2~25単位、特に好ましくは2~10単位のオリゴマー化度を有する。それらは、(シクロ)脂肪族化合物、または芳香族基を有する化合物を含み得る。特に、上記エポキシ樹脂は、2つの芳香族もしくは脂肪族6員環を有する化合物、またはこれらのオリゴマーを含む。工業的に重要な材料は、エピクロロヒドリンと少なくとも2個の反応性H原子を有する化合物、特にポリオールとの反応を介して得られるエポキシ樹脂である。特に重要な材料は、エピクロロヒドリンと少なくとも2個、好ましくは2個のヒドロキシ基を含みかつ2個の芳香族もしくは脂肪族6員環を含む化合物との反応を介して得られるエポキシ樹脂である。本発明のこれらのエポキシ樹脂(A1)の挙げることができる例は、特にビスフェノールAおよびビスフェノールF、ならびに水素化ビスフェノールAおよび水素化ビスフェノールFである-対応するエポキシ樹脂はビスフェノールAもしくはビスフェノールFのジグリシジルエーテル、または水素化ビスフェノールAもしくは水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテルである。本発明ではエポキシ樹脂(A1)としてビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)を使用することが通常である。この発明において、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)およびビスフェノールFジグリシジルエーテル(DGEBF)という表現は、対応するモノマーだけでなく対応するオリゴマー変形も意味する。本発明のエポキシ樹脂(A1)は、好ましくはモノマージオールまたはオリゴマージオールのジグリシジルエーテルである。ここでジオールは、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF、または水素化ビスフェノールAもしくは水素化ビスフェノールFからなる群から選択されるものであることが好ましく、上記オリゴマージオールのオリゴマー化度は、好ましくは2~25単位、特に好ましくは2~10単位である。本発明の他の適切なエポキシ樹脂(A1)は、テトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA)およびトリグリシジルアミノフェノール、ならびにそれらの混合物である。エピクロロヒドリンと他のフェノール類、例えばクレゾールと、またはフェノール-アルデヒド付加物、例えばフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、特にノボラックとの反応生成物を使用することも可能である。エピクロロヒドリンに由来しないエポキシ樹脂もまた適切である。使用することができるものの例は、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応を介してエポキシ基を含むエポキシ樹脂である。本発明において、使用されるエポキシ樹脂(A1)またはその混合物は、室温(25℃)で、特に8000~12 000 Pa*秒の範囲内の粘度を有する液体であることが好ましい。エポキシ当量(EEW)は、エポキシ基1モル当たりエポキシ樹脂の平均質量(g)を示す。本発明のエポキシ樹脂(A1)は、150~250、特に170~200の範囲内のEEWを有することが好ましい。
【0009】
本発明の特定の1つの実施態様においては、エポキシ樹脂(A1)として様々なエポキシ樹脂の混合物が使用される。好ましい混合物は、DGEBAとエポキシ-ノボラック樹脂と、好ましくは50:80~50:20の質量比での組合せである。
本発明の特定の1つの実施態様においては、エポキシ樹脂(A1)として個々のエポキシ樹脂、例えばDGEBAが使用される。
本発明の上記エポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分)は、少なくとも30質量%、特に少なくとも40質量%のエポキシ樹脂(A1)から構成されることが好ましい。
【0010】
本発明の特定の1つの実施態様においては、上記エポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分または繊維-マトリックス半製品組成物)は、エポキシ樹脂(A1)と共に樹脂成分(A)のさらなる構成成分として、反応性希釈剤(A2)を含む。本発明のためには、反応性希釈剤(A2)はそれから生成されるエポキシ樹脂組成物または繊維-マトリックス半製品組成物の初期粘度を低下させかつ上記組成物の硬化過程の間にエポキシ樹脂と硬化剤からなる展開ネットワークにより化学結合に入る化合物である。本発明のためには、好ましい反応性希釈剤(A2)は、低分子量有機化合物、好ましくは1個以上のエポキシ基を有する脂肪族化合物である。本発明の反応性希釈剤(A2)は、環状カーボネート、特に1~10個の炭素原子を有する環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセロールカーボネート、ブチレンカーボネートまたはビニレンカーボネートでもあり得る。本発明の好ましい反応性希釈剤(A2)は、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセロールカーボネート、1,4-ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル、グリシジルネオデカノエート、グリシジルバーサテート、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、C8-C10-アルキルグリシジルエーテル、C12-C14-アルキルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルパラ-アミノフェノール、ジビニルベンジルジオキシド、およびジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択されるものである。1,4-ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C8-C10-アルキルグリシジルエーテル、C12-C14-アルキルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジビニルベンジルジオキシドおよびジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択されるものが特に好ましい。それらは特に、1,4-ブタンジオールビスグリシジルエーテル、C8-C10-アルキルモノグリシジルエーテル、C12-C14-アルキルモノグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジビニルベンゼンジオキシドおよびジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択されるものである。
本発明の反応性希釈剤(A2)は、上記エポキシ樹脂組成物の樹脂成分全体(A)(エポキシ樹脂(A1)および使用される任意の反応性希釈剤(A2))に対して、好ましくは30質量%まで、特に好ましくは20質量%まで、特に1~10質量%の割合を占める。
【0011】
上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)は、好ましくは一般式IIのアミノアルキルイミダゾール化合物である
【化2】
(式中、
R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基であり、
R2およびR3は、それぞれ互いに独立して、水素原子またはアルキル基であり、
R4は、アミノアルキル基である)。
【0012】
一般式IIのアミノアルキルイミダゾール化合物のR1は、水素原子、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、3~16個の炭素原子を有するアリール基、または4~20個の炭素原子を有するアリールアルキル基であることが好ましい。R1は、水素原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、3~7個の炭素原子を有するアリール基、または4~10個の炭素原子を有するアリールアルキル基であることが特に好ましい。R1は、水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であることが特に非常に好ましい。
一般式IIのアミノアルキルイミダゾール化合物のR2およびR3は、それぞれ互いに独立して、水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であることが好ましい。
一般式IIのアミノアルキルイミダゾール化合物のR4は、2~4個の炭素原子を有しかつ第一級アミノ基を有するアミノアルキル基であることが好ましい。これらのアミノアルキルイミダゾールの例は、1-(2-アミノエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-アミノエチル)-2-エチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-エチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-フェニルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-ヘプタデシルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2,4-ジメチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2,5-ジメチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-エチル-5-メチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-4-メチル-2-ウンデシルイミダゾール、および1-(3-アミノプロピル)-5-メチル-2-ウンデシルイミダゾールである。これらの化合物の中で、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール(API)が特に好ましい。
【0013】
一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)は、好ましくは7,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)または1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン(DBN)またはその混合物である。本発明の特定の1つの実施態様においては、一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)は、,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)である。本発明の特定のもう1つの実施態様においては、一般式Iのジアザビシクロアルキレン化合物(B3)は、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン(DBN)である。
本発明のためには、アルキル基は1~20個の炭素原子を有する。アルキル基は直鎖、分枝鎖または環状であり得る。アルキル基は飽和または(ポリ)不飽和であり得る。アルキル基はヘテロ原子を有する置換基がない。ヘテロ原子は、C原子およびH原子以外のすべての原子である。
本発明のためには、アルキレン基は1~20個の炭素原子を有する。アルキレン基は直鎖または分枝鎖であり得る。アルキレン基は好ましくは直鎖である。アルキレン基は飽和または(ポリ)不飽和であり得る。アルキレン基は好ましくは飽和である。アルキレン基はヘテロ原子を有する置換基がない。ヘテロ原子は、C原子およびH原子以外のすべての原子である。
【0014】
本発明のためには、アリール基は3~20個の炭素原子を有する。芳香環系は、環当たり1個または2個のヘテロ原子、好ましくは窒素および/または酸素を含み得る。アリール基はヘテロ原子を有する置換基がない。ヘテロ原子は、C原子およびH原子以外のすべての原子である。
本発明のためには、第一級脂肪族アミン基は、芳香族系または互変異性系の一部ではない炭素原子に結合している第一級アミン基である。
本発明のエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分または繊維-マトリックス半製品組成物)において、使用される1種以上のアミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の合計量は、組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.007~0.025molの範囲内、好ましくは組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.010~0.020molの範囲内である。
本発明のエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分または繊維-マトリックス半製品組成物)において、使用される一般式Iの1種以上のジアザビシクロアルキレン化合物(B3)の合計量は、エポキシ樹脂(A1)の量に対して、好ましくは0.5~3.0質量%の範囲内、特に好ましくは0.5~2.0質量%の範囲内である。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される潜在性硬化剤(B2)は、このために知られており、かつ周囲条件下(大気圧で10~50℃の温度)でほとんど反応せず、高温(例えば80℃よりも高く、特に120℃よりも高い)で反応して使用されるエポキシ樹脂と架橋する化合物またはその混合物を含み得る。上記潜在性硬化剤と上記エポキシ樹脂との間で有意でない反応は、周囲条件下で24時間以内にエポキシ樹脂組成物の粘度をせいぜい2倍にする反応である(例えば、0倍または2倍未満、室温(25℃)で24時間以内に粘度が上昇する)。比較的低温でも上記エポキシ樹脂と反応する硬化剤は、不適切な貯蔵寿命を有する製品(半固体の繊維-マトリックス半製品(半固体SMCまたはBMC))をもたらす。望ましい貯蔵寿命は、室温で少なくとも5日間、好ましくは少なくとも2週間、特に少なくとも1ヶ月、特に非常に好ましくは少なくとも2ヶ月である。これに関連して、貯蔵寿命は製造から始まり、半固体の繊維-マトリックス半製品を依然として硬化させたSMCおよびそれぞれBMCの成形(例えば圧縮プロセス)に有利に使用することができる期間である。
本発明のためには、適切な潜在性硬化剤(B2)は、一例として、第四級ホスホニウム化合物、さらに三フッ化ホウ素-アミン付加物、特に対応する第三級脂肪族アミンとの付加物である。特に微粉砕された形態のジシアンジアミド(DICY)は、潜在性硬化剤(B2)として特に適している。それにより、おそらく反応性開裂産物のために、材料が溶融すると高温でエポキシ樹脂系の硬化が生じる。本発明の好ましい潜在性硬化剤(B2)はDICYである。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分または繊維-マトリックス半製品組成物)中の潜在性硬化剤(B2)の使用量は、半固体の繊維-マトリックス半製品、例えば半固体SMCを効果的に硬化させるのに充分な量である。一例として、増粘プロセス後に半固体の繊維-マトリックス半製品中に依然として残存しているエポキシ基の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも98%が反応するときに効果的な硬化が存在する。増粘プロセス後に残存するエポキシ当量に対して、0.4~1.2当量、好ましくは0.6~1.1当量、特に好ましくは0.8~1.0当量の潜在性硬化剤または潜在性硬化剤の混合物を使用することが通常である。潜在性硬化剤(B2)としてDICYの場合には、硬化性組成物のエポキシ基の(当初使用された)モル数に対して、0.05~0.30molのDICY、好ましくは0.10~0.25molのDICYを使用することが通常である。
上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)は、本発明のエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分または繊維-マトリックス半製品組成物)の増粘をもたらし、上記半固体の繊維-マトリックス半製品を得、同時に、それは特にDICYが潜在性硬化剤(B2)として使用される場合には、潜在性硬化剤(B2)を介してもたらされる硬化のための触媒として作用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まないマトリックス成分または繊維-マトリックス半製品組成物)の硬化剤成分(B)は、上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)と共に、上記潜在性硬化剤(B2)、および上記ジアザビシクロアルキレン化合物(B3)、上記樹脂成分のエポキシ基と反応することができるか、または上記基の反応を開始させ、促進させまたは触媒することができる他の構成成分(上記硬化剤成分(B)の任意選択構成成分)も含むことができる。
【0017】
上記硬化剤成分(B)のこれらの任意選択構成成分は、一例としてアミン、特に第一級アミンを含む。上記硬化剤成分(B)の任意選択構成成分として、1個以上、特に1個または2個の第一級アミノ基を有するモノアミンまたはポリアミンを使用することが好ましい。上記硬化剤成分(B)の任意選択構成成分として使用することができるアミンの例は、ジメチルジシカン(DMDC)、イソホロンジアミン(IPDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、メチレンジアニリン(例えば、4,4'-メチレンジアニリン)、ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンD230、ポリアミノアミド、例えばバーサミド140、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、2,4-ジアミノ-1-メチルシクロヘキサン、2,6-ジアミノ-1-メチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、ジアミノジフェニルオキシド、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、1,12-ジアミノドデカン、1,10-ジアミノデカン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2'-オキシビス(エチルアミン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4-エチル-4-メチルアミノ-1-オクチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミンと2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミンの混合物(MDACH)、メンセンジアミン、キシリレンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ネオペンタンジアミン、ノルボルナンジアミン、オクタメチレンジアミン、4,8-ジアミノトリシクロ[5.2.1.0]デカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン、さらにアリールモノアミン、例えばアニリン、脂環式モノアミン、例えばシクロヘキシルアミン、およびアルキルモノアミン、例えば1-プロピルアミンである。
【0018】
第一級アミンが本発明のエポキシ樹脂組成物の構成成分である場合には、その増粘、または対応する繊維-マトリックス半製品組成物の増粘に寄与し得る(上記半固体の繊維-マトリックス半製品を得るために、例えば上記半固体SMCを得るために)。ここで決定的な要因は、上記半固体の繊維-マトリックス半製品について達成される利用可能な操作時間または利用可能な処理時間が充分であるように、第一級脂肪族アミン基の合計量が組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.09molの割合を超えないことである。本発明の特定の1つの実施態様において、上記エポキシ樹脂組成物または上記繊維-マトリックス半製品組成物中に含まれる第一級アミンの量は、第一級脂肪族アミン基の合計量が組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.01~0.05molの範囲内にあるような量である。本発明の特定のもう1つの実施態様においては、上記エポキシ樹脂組成物はアミノアルキルイミダゾール化合物(B1)に加えて本質的に第一級アミンを含まない。
硬化剤成分(B)の任意選択構成成分は、一例として上記ジアザビシクロアルキレン化合物(B3)および上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)に加えて硬化反応のためのさらなる触媒および/または促進剤を含む。これらの触媒および/または促進剤の例は、尿素誘導体(ウロン)、例えば1,1-ジメチル-3-フェニル尿素(フェヌロン)または3,3'-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチル尿素)(Dyhard(登録商標)UR500)、および第三級アミン、例えばトリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP30)またはテトラメチルグアニジン(TMG)である。
【0019】
本発明の特定の1つの実施態様においては、上記エポキシ樹脂組成物は、本質的にビニルモノマー、特にスチレンを含まない。
本発明の特定の1つの実施態様においては、上記エポキシ樹脂組成物は、本質的に溶媒を含まない。本発明のためには、溶媒は、室温で液体でありかつ上記エポキシ樹脂組成物と化学的に反応することなく本発明のエポキシ樹脂組成物の1種以上の構成成分を溶解または希釈または懸濁するのに適した化合物である。この意味での溶媒は、一例として、水、ジエチルエーテル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、さらにトルエンまたはキシレンのような炭化水素、およびジクロロメタンまたはテトラクロロメタンのような塩素化炭化水素である。この意味での特定の溶媒は水である。
本発明の特定の1つの実施態様においては、上記エポキシ樹脂組成物は、本質的にカルボン酸およびカルボン酸無水物を含まない。
本発明の特定の1つの実施態様においては、上記エポキシ樹脂組成物は、本質的に非エポキシ系硬化性樹脂および非エポキシ系熱可塑性材料を含まない。特定の非エポキシ系硬化性樹脂および熱可塑性材料は、フェノール樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリビニルホルムアルデヒド樹脂、およびポリアミドである。
【0020】
「本質的に含まない」という表現は、本発明のためには、対応する組成物全体に対して、≦1質量%、好ましくは≦0.1質量%、特に好ましくは「検出閾値未満」の割合を意味する。
本発明のためには、短繊維補強材(C)は、0.3~5.0cmの平均長さを有する短繊維部分である。SMCで使用するためには、平均長さが1.2~5.0cmの繊維部分を使用することが好ましく、BMCで使用するためには、平均長さが0.3~2.5cmの繊維部分を使用することが好ましい。これらの繊維は通常ガラスまたはミネラルウールでできているか、あるいはナイロン繊維、アラミド繊維、または炭素繊維を本発明の繊維補強材として使用することができる。上記繊維補強材(C)は、ガラス繊維部分および/または炭素繊維部分を含み、特に短繊維補強材(C)はガラス繊維部分を含むことが好ましい。上記短繊維補強材(C)の平均長さは、平均長さの最大10%、好ましくは最大5%、特に最大2%の標準偏差を有することが好ましい。
本発明の繊維-マトリックス半製品組成物は、通常、繊維マトリックス半製品組成物全体に対して10~75質量%、好ましくは25~65質量%の割合の繊維補強材(C)を含む。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、他の添加剤、例えば充填剤、希釈剤、顔料、染料、離型剤、強化剤、流動剤、湿潤剤、消泡剤または難燃剤を含むこともできる。機能的な量のこれらの添加剤、すなわち一例として顔料の場合には、上記組成物の所望の色をもたらす量を添加するのが通常である。
適切な充填剤の例は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸塩、変性モンモリロナイト、炭酸カルシウム、またはアルミナである。充填剤の通常使用される量は、充填剤を含まない硬化性組成物全体に対して0~200質量%である。
SMCまたはBMCの製造のためには、上記繊維-マトリックス半製品組成物の構成成分を互いに接触させ、混合する。SMC製造の場合には、上記混合物は一般に2枚のホイルの間にシートのように適用される。構成成分を混合した後、繊維-マトリックス半製品組成物の増粘は室温で起こる。このプロセスはガラス転移温度(Tg)および材料の粘度の上昇に特徴を有する。材料の増粘により、半固体の繊維-マトリックス半製品(半固体のSMCまたはBMC)が製造される。
【0022】
ここで重要なことは、この半製品が、上記構成成分の混合から始めて、室温で可能な限り最長の取扱い時間、すなわちそれがある程度の柔軟性を有する最長の可能時間を有することである。特に、これが通常ロールの形態で貯蔵されている半固体SMCの場合には、材料をロールから取り出し(巻出し易さ)、更なる加工(硬化)に必要な形状(平らなマットまたはシート)に変換すること(製造し易さ)が重要である。材料が増粘プロセスの過程でその柔軟性を失う場合には、取り扱いはより困難になるが、それでも一般的には処理することができる(圧縮型内での圧縮プロセス)。本発明のためには、対応するエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まない)が一例として5℃のガラス転移温度を超えない期間の間(利用可能な操作時間)、取り扱いの充分な容易さまたは巻き出しの容易さが保証されることが見出された。本発明の繊維-マトリックス半製品組成物のエポキシ樹脂組成物については、この条件は室温で少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間の期間満たされる。
【0023】
同時に、材料が可能な限り急速に進行してさらに加工(硬化)することができる状態になることが重要である。加工は、一般に、加圧(例えば100バール)下高温(例えば150℃)で圧縮型中に材料を押圧することにより行われる。これらの条件下で、材料が圧縮型を均一にかつ完全に満たすことができるように、半固体の繊維-マトリックス半製品の粘度は最初に低下する。同時に、これらの条件下では、上記潜在性硬化剤は材料の硬化をもたらし、従ってその粘度を再び急速に上昇させる。さもなければ樹脂マトリックスと繊維補強材との分離、および圧縮型からの材料の漏れが起こり得るので、材料の粘度が上記加工中にあまり大きく低下しないことがここでは重要である。本発明のためには、この点で適切な加工性(半固体の繊維-マトリックス半製品の圧縮プロセス)が、140℃に急速に加熱(0.5℃/秒)された対応するエポキシ樹脂組成物(繊維補強材を含まない)の試験標本(約2gに達する)の粘度が、一例としてレオメーター(例えば、Anton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz))で測定された0.5Pa*秒未満にはならない時点から保証されることが判明した。構成成分の混合から出発して計算される、ある温度で上記時点までに組成物が必要とする時間が熟成時間である。本発明の繊維-マトリックス半製品組成物のエポキシ樹脂組成物の室温における熟成時間は、最大で14日間、好ましくは最大で10日間、特に好ましくは最大で8日間、特に最大で6日間である。
【0024】
エポキシ樹脂組成物の利用可能な操作時間は、理想的にはその熟成時間よりも長いので、上記半固体の繊維-マトリックス半製品、特に上記半固体SMCのための圧縮プロセスは、その製造に直接従うことを可能にする。
上記エポキシ樹脂組成物は、また、加工に利用可能な最長可能時間を示すことが好ましい。利用可能なこの時間は、熟成時間の終わりから始まり、粘度が加工(圧縮プロセス)の間、もはやほとんど低下しなくなり、圧縮型の完全で均一な充填を確実にするときに終了する。本発明のためには、この点において充分な加工性(半固体の予備硬化した繊維-マトリックス半製品の圧縮プロセス)が、一例として140℃に急速に加熱(0.5℃/秒)された適切なエポキシ樹脂組成物の試験標本(約2gの量に達する)の粘度がレオメーター(例えば、Anton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz))で測定された1000Pa*秒未満のままである限り保証されることが見出された。
あるいは、材料(繊維-マトリックス半製品組成物)の粘度が圧縮プロセスの間、材料が圧縮型から漏れることがないかあるいは限界しか漏れないことを保証するのに充分に高いままであるときに始まり、粘度が圧縮プロセスの間、圧縮型の完全で均一な充填を保証するのにもはやほとんど低下しないときに終了する時間モールディングウインドウは、EN ISO 12114 IIに記載されるような押圧装置によって材料を絞り出す樹脂を測定することにより求めることができる。好ましくは、できる限り早く始まり、できるだけ長く続くモールディングウインドウが実現される。好ましくは、本発明の繊維-マトリックス半製品組成物のためのモールディングウインドウは、室温で、構成成分の混合から開始して最大で14日間、好ましくは最大で10日間、特に好ましくは最大で8日間、特に最大で6日間開始する。好ましくは、本発明の繊維-マトリックス半製品組成物のためのモールディングウインドウは、室温で少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間続く。
【0025】
ガラス転移温度は、規格DIN 53765に従って示差熱量測定法(DSC)によって求めることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特定の急速な硬化速度を示し、それ故、硬化させた物品の製造のための高い処理量を可能にする。
ゲル化時間は、反応混合物への硬化剤の添加と液体状態からゲル状態への反応性樹脂組成物の変換との間の間隔についての情報をDIN 16 945に従って与える。ここでは温度が重要な役割を果たすので、ゲル化時間は常に所定の温度に対して決定される。動的機械的方法、特に回転粘度測定法を使用することによって、少量の試験標本を準等温的に調べることおよびこれらについて全体の粘度曲線または剛性曲線を記録することも可能である。規格ASTM D4473に従い、減衰tanδが値1を有する貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との交点がゲル化点であり、硬化剤の反応混合物への添加からゲル化に達するのに要した時間がゲル化時間である。このようにして決定されたゲル化時間および硬化時間は、硬化速度の尺度と見なすことができる。
【0026】
本発明は、また、本発明の繊維-マトリックス半製品組成物(SMC組成物又はBMC組成物)、特にSMC組成物を製造するための方法であって、本発明の繊維-マトリックス半製品組成物の構成成分を使用されるエポキシ樹脂(A1)が使用される潜在性硬化剤(B2)とほとんど反応しない温度で、好ましくは10~50℃の温度で混合することを含む、前記方法を提供する。上記潜在性硬化剤と上記エポキシ樹脂との間で有意でない反応は、周囲条件下で24時間以内に、上記エポキシ樹脂組成物の粘度がせいぜい2倍になる反応である(例えば、0倍または2倍未満、室温(25℃)で24時間以内での粘度の上昇)。
本発明は、また、熟成された半固体の繊維-マトリックス半製品(熟成された半固体SMCまたはBMC)を製造するための方法であって、本発明の繊維-マトリックス半製品組成物(SMC組成物またはBMC組成物)を準備することおよび少なくとも熟成時間の間、使用されるエポキシ樹脂(A1)が使用される潜在性硬化剤(B2)とほとんど反応しない温度で、好ましくは10~50℃の温度で上記組成物を熟成させることを含む、前記方法を提供する。上記繊維-マトリックス半製品組成物を熟成して上記半固体繊維マトリックス半製品を得る間に、上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)は上記組成物の増粘をもたらす。上記潜在性硬化剤と上記エポキシ樹脂との間で有意ではない反応は、周囲条件下で24時間以内に、上記エポキシ樹脂組成物の粘度がせいぜい2倍になる反応である(例えば、0倍または2倍未満、室温(25℃)で24時間以内での粘度の上昇)。熟成時間は、繊維-マトリックス半製品組成物の準備から始まり、0.5℃/秒で140℃に急速に加熱される2gの対応するエポキシ樹脂組成物の試験標本の粘度が決して1Pa*秒未満ではない(一例としてレオメーター(例えばAnton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz)で測定される)時点で終わる期間である。
【0027】
本発明は、特に、熟成された半固体SMCを製造するための方法であって、本発明のSMC組成物を準備すること、上記組成物から層を成形すること、および少なくとも熟成時間の間、使用されるエポキシ樹脂(A1)が、使用される潜在性硬化剤(B2)とほとんど反応しない温度で、好ましくは10~50℃の温度で上記組成物を熟成させることを含む、前記方法を提供する。上記潜在性硬化剤と上記エポキシ樹脂との間で有意ではない反応は、周囲条件下で24時間以内に、エポキシ樹脂組成物の粘度がせいぜい2倍になる反応である(例えば、0倍または2倍未満、室温(25℃)で24時間以内での粘度の上昇)。熟成時間は、繊維-マトリックス半製品組成物の準備から始まり、0.5℃/秒で140℃まで急速に加熱される2gの対応するエポキシ樹脂組成物の試験標本の粘度が決して1Pa*秒未満ではない(一例としてレオメーター(例えばAnton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz)で測定される)時点で終わる期間である。上記エポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)は、通常、2枚のホイル(一般に、例えばポリエチレンまたはポリアミドでできた除去可能なホイル)の間で短繊維補強材(C)と一緒に混合されてSMC組成物を層の形態で得る。スクイーズローラーが気泡を除去するために通常使用される、上記エポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)の短繊維補強材(C)と混合するプロセスの開始時の粘度は、上記エポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)による上記繊維補強材の含浸を改善するために、一般的には5~50Pa*秒の範囲内である。層の形態の上記SMC組成物の製造直後に、上記樹脂マトリックス(エポキシ樹脂組成物)からの短繊維補強材(C)の分離を最小にするのに充分な粘度を既に達成していることが好ましい。
【0028】
本発明は、また、本発明の繊維-マトリックス半製品組成物(SMC組成物またはBMC組成物)の準備および少なくとも熟成時間の間、使用されるエポキシ樹脂(A1)が使用される潜在性硬化剤(B2)とほとんど反応しない温度で、好ましくは10~50℃の温度での上記組成物の熟成を介して製造されるかまたは製造され得る成熟された半固体の繊維-マトリックス半製品を提供する。上記潜在性硬化剤と上記エポキシ樹脂との間で有意ではない反応は、周囲条件下で24時間以内に、上記エポキシ樹脂組成物の粘度がせいぜい2倍になる反応である(例えば、0倍または2倍未満、室温(25℃)で24時間以内での粘度の上昇)。熟成時間は、繊維-マトリックス半製品組成物の供給から始まり、0.5℃/秒で140℃まで急速に加熱される2gの対応するエポキシ樹脂組成物の試験標本の粘度が決して1Pa*秒未満ではない(一例としてレオメーター(例えば、Anton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz)で測定される)時点で終わる期間である。
【0029】
本発明は、また特に、本発明のSMC組成物の準備、上記組成物から層の成形、および少なくとも熟成時間の間、使用されるエポキシ樹脂(A1)が、使用される潜在性硬化剤(B2)とほとんど反応しない温度で、好ましくは10~50℃の温度で上記組成物を熟成させることにより、製造されるかまたは製造され得る熟成させた半固体SMCであって、上記エポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)を2枚のホイル(一般に除去可能なホイル、一例としてポリエチレンまたはポリアミドでできた)の間で短繊維補強材(C)と混合し、成形してSMC組成物を層の形態で得ることが好ましく、かつ短繊維補強材(C)と混合するプロセスの開始時の上記エポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)の粘度が、好ましくは5~50Pa*秒の範囲内である、前記成熟させた半固体SMCを提供する。上記潜在性硬化剤と上記エポキシ樹脂との間で有意ではない反応は、周囲条件下で24時間以内に、上記エポキシ樹脂組成物の粘度がせいぜい2倍になる反応である(例えば、0倍または2倍未満、室温(25℃)で24時間以内での粘度の上昇)。熟成時間は、上記繊維-マトリックス半製品組成物の準備から始まり、0.5℃/秒で140℃まで急速に加熱される2gの対応するエポキシ樹脂組成物の試験標本の粘度が決して1Pa*秒未満ではない(一例としてレオメーター(例えばAnton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz)で測定される)時点で終わる期間である。
【0030】
本発明は、また、上記半固体の繊維-マトリックス半製品または半固体SMCを硬化させることにより、製造されるかまたは製造され得る硬化された半固体の繊維マトリックス半製品(硬化されたSMCまたはBMC)、特に硬化されたSMCを提供する。その硬化は、90~200℃の範囲内、好ましくは110~180℃の範囲内、特に130~170℃の範囲内の温度で有利に実施される。硬化時間は、使用される潜在性硬化剤(B2)および選択された硬化温度に依存する。硬化時間は、増粘プロセス後に上記半固体の繊維-マトリックス半製品中に残存するエポキシ基の少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%が反応するように選択すべきである。硬化時間は、通常1~120分、好ましくは2~60分、特に好ましくは2~15分、特に2~5分の範囲である。その硬化は、通常5~200バール、特に25~150バールの圧力で型内での圧縮により行われる。
本発明は、また、半固体SMCを製造するためのまたは硬化させたSMCを製造するためのマトリックス成分としての、少なくとも1種のエポキシ樹脂(A1)を含む樹脂成分(A)および少なくとも1種のアミノアルキルイミダゾール化合物(B1)、少なくとも1種の潜在性硬化剤を含む硬化剤(B2)および少なくとも1種のジアザビシクロアルキレン化合物(B3)を含む硬化剤成分(B)の使用であって、上記アミノアルキルイミダゾール化合物(B1)の使用量が組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.007~0.025molの範囲内であり、かつ含まれていてもよい第一級脂肪族アミン基の合計量が組成物全体のエポキシ基1モル当たり0.09molの割合を超えない、前記使用を提供する。
本発明は、また、半固体SMCを製造するためのまたは硬化させたSMCを製造するための本発明のSMC組成物の使用を提供する。
【0031】
実施例
実施例1
エポキシ樹脂組成物E1~E5(本発明)およびC1~C4(比較用)の製造
各場合において、100gのDEGBA(Epilox A 18-00, Leuna Harze GmbH, EEW = 180g/eq)を6.5gのDICY(Dyhard 100 SH、AlzChem、Mw 84g/mol)および1g(エポキシ樹脂組成物全体におけるエポキシ基1モル当たり0.014mol)のAPI(Lupragen(登録商標)API、BASF SE)ならびに硬化促進剤と室温の混合装置内で一緒に混合した(比較例C1は硬化促進剤を含まない)。表1は、組成物E1~E5およびC1~C4の硬化剤成分についての、使用された種々の硬化促進剤を含む構成成分、さらにこれらの量(エポキシ樹脂100g当たりのg)をまとめたものである。
【0032】
表1:
エポキシ樹脂組成物C1~C4およびE1~E5についての硬化剤成分の組成

【0033】
実施例2:
エポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4のガラス転移温度および粘度の経時測定
示差走査熱量測定(DSC)を規格DIN 53765に従って使用して、エポキシ樹脂組成物E1~E11およびC1~C4のガラス転移温度をそれぞれのエポキシ樹脂組成物の構成成分を混合した直後に、各場合において対応するエポキシ樹脂組成物を25℃で貯蔵する間に1日1回測定した。表2は、このようにして求めたガラス転移温度を、それぞれのエポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4について貯蔵時間の関数としてまとめたものである。
それぞれのエポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4についての構成成分を混合した直後に、各場合において25℃で貯蔵中に1日1回、試験標本の急速加熱から得られる粘度曲線の最小値を求めた。このために、各場合において、それぞれのエポキシ樹脂組成物の試験標本(約2g)を採取し、貯蔵温度(25℃)から硬化温度(140℃)まで0.5℃/秒で加熱し、その一方で粘度を時間の関数として測定した。粘度はレオメーター(Anton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz))を使用することにより測定した。試験標本を加熱すると最初に粘度が下がるが、潜在性硬化が始まるため、さらに経時急速に粘度が上がる。表3は、それぞれのエポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4についての貯蔵時間の関数として粘度曲線の最小値をまとめたものである。
【0034】
表2:
エポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4の経時(0日から最大7日間まで)ガラス転移温度(℃)

【0035】
表3:
エポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4について0日から最大5日間までの経時粘度最小値(mPa*秒)(少なくとも500mPa*秒の粘度最小値に達するまで)-少なくとも500mPa*秒の粘度最小値に達する時間でサンプルが充分に熟成されて、例えば140℃のSMC成形条件下での硬化が可能になる

【0036】
実施例3:
エポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4についてのガラス転移温度の測定
それぞれのエポキシ樹脂組成物E1~E5およびC1~C4についての構成成分を混合した直後に、各場合においてガラス転移温度(Tg)をASTM D3418に従ってDSCにより測定し、ここで使用した温度プロファイルは次の通りであった:3分間-50℃→-5K/分250℃→10分間250℃→20K/分0℃→20K/分250℃。各場合において、2つの手順を実施し、ここでのTgは各場合において第2の手順において求めた。表4は、結果をまとめたものである。
【0037】
表4:
エポキシ樹脂組成物E1~E3、E5およびC1~C4についてのガラス転移温度(℃)

【0038】
本発明に従うジアザビシクロアルキレン促進剤の添加は、硬化させたエポキシ樹脂のガラス転移温度を損なわない。
【0039】
実施例4:
エポキシ樹脂組成物E1~E5およびC1~C4のゲル化時間および硬化時間の測定
それぞれのエポキシ樹脂組成物E1~E5およびC1~C4についての構成成分を混合した直後に、各場合において損失弾性率(G'')および貯蔵弾性率(G')をレオメーター(Anton Paar MCR 301、FW3.30粘度計(プレートオンプレート構成;直径25mm;ギャップ1000μm、振動、剪断速度10Hz))を使用することにより規格ASTM D4473に従って140℃の硬化温度で経時測定した。G''およびG'の交点がゲル化時間を示し、最大値G''に達するのにかかる時間が硬化時間を示す。表5は、結果をまとめたものである。
【0040】
表5:
エポキシ樹脂組成物E1~E5およびC1~C4についての140℃におけるゲル化時間(分)および硬化時間(分)

【0041】
硬化促進剤としてジアザビシクロアルキレン化合物を含む本発明のエポキシ組成物は、Dyhard(登録商標)UR500、TMGまたはDMP30のような他の硬化促進剤を有するエポキシ樹脂組成物と比較して、著しく短いゲル化時間および硬化時間を示す。同時に、硬化させたエポキシ樹脂の取扱い時間および熟成時間およびガラス転移温度は、他の硬化促進剤を有するエポキシ樹脂組成物と比較して本発明のエポキシ組成物については損なわれていない。
【0042】
実施例5:
エポキシ樹脂組成物C1、C3およびE1をベースとする繊維-マトリックス半製品の樹脂絞り出しの測定
SMCは、エポキシ樹脂組成物C1、C3およびE1をベースとし、55% b.w.(2.5cm繊維長)のガラス繊維含有量を有するSMCパイロットラインで調製した。そのSMCを23℃で貯蔵した。樹脂絞り出し(質量減少として測定される)をEN ISO 12114 IIに記載されるような押圧装置によって経時求めた。次の成形条件が適用された:66%の型適用範囲、5分間の成形時間、140~145℃の温度および66バールの圧力(型内)。モールディングウインドウの開始は5%の樹脂損失によって定義され、モールディングウインドウの最後は0%の樹脂損失およびSMCの不完全な流れによって定義された。モールディングウインドウの長さを日数で表6に示す。
【0043】
表6
エポキシ樹脂組成物C1、C3およびE1をベースとするSMCのためのモールディングウインドウ(日数)

【0044】
硬化促進剤DBUを使用する本発明に従うSMCのモールディングウインドウの長さ(E1)は、比較例の長さ(C1、硬化促進剤を含まない)に匹敵する。対照的に、硬化促進剤TMG(比較例C3で使用されるように)は適用可能な成形時間を実質的に短縮する。