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特許7053651下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法
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  • 特許-下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法 図1
  • 特許-下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法 図2A
  • 特許-下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法 図2B
  • 特許-下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法 図3
  • 特許-下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法 図4
  • 特許-下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】下顎前方固定デバイス、及び、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A61F5/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019549654
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081617
(87)【国際公開番号】W WO2018104358
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】62/430,382
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター ステファン
(72)【発明者】
【氏名】カラカヤ コーライ
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01972311(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/131827(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0045285(KR,A)
【文献】国際公開第2016/157174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/56
A61C 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの上歯列に係合する第1のブレース部材と、
ユーザの下歯列に係合する第2のブレース部材と、
前記第1のブレース部材を前記第2のブレース部材にそれぞれ連結する幾つかの連結アセンブリと、
を含み、
前記幾つかの連結アセンブリそれぞれは、前記連結アセンブリの寸法を自動的に調整する作動要素を含み、前記作動要素は、ボリューム応答性材料である、下顎前方固定デバイス。
【請求項2】
前記幾つかの連結アセンブリそれぞれは、第1の連結要素、及び、前記第1の連結要素内に部分的に延在する第2の連結要素を更に含み、前記第1の連結要素は、第1のピボット点で前記第1のブレース部材に連結され、前記第2の連結要素は、第2のピボット点で前記第2のブレース部材に連結され、前記寸法は、前記第1のピボット点と前記第2のピボット点との間の距離である、請求項1に記載の下顎前方固定デバイス。
【請求項3】
ユーザの上歯列に係合する第1のブレース部材と、
ユーザの下歯列に係合する第2のブレース部材と、
前記第1のブレース部材を前記第2のブレース部材にそれぞれ連結する幾つかの連結アセンブリと、
を含み、
前記幾つかの連結アセンブリそれぞれは、前記連結アセンブリの寸法を自動的に調整する作動要素を含む、下顎前方固定デバイスであって、
前記幾つかの連結アセンブリそれぞれは、第1の連結要素、及び、前記第1の連結要素内に部分的に延在する第2の連結要素を更に含み、前記第1の連結要素は、第1のピボット点で前記第1のブレース部材に連結され、前記第2の連結要素は、第2のピボット点で前記第2のブレース部材に連結され、前記寸法は、前記第1のピボット点と前記第2のピボット点との間の距離であり、前記作動要素は、前記第2の連結要素に連結される付勢要素であり、前記幾つかの連結アセンブリそれぞれは、マイクロコントローラ、及び、前記マイクロコントローラに電気的に接続される動作アセンブリを更に含み、前記マイクロコントローラは、前記第2の連結要素に連結され、前記動作アセンブリは、第1の位置と第2の位置との間で移動し、前記動作アセンブリが前記第1の位置から前記第2の位置に移動すると、前記付勢要素は、前記第2の連結要素を、前記第1の連結要素に対して独立して移動させる、下顎前方固定デバイス。
【請求項4】
前記動作アセンブリは、前記マイクロコントローラに電気的に接続される電磁石、前記第1の連結要素に連結され、前記電磁石に磁気的に引き付けられる永久磁石、前記永久磁石に連結されるレバー、及び、前記レバーに連結されるばねを含み、前記マイクロコントローラは、前記電磁石を励磁し、これにより、前記永久磁石が前記レバーを前記第2の位置へ移動させ、それによって、前記動作アセンブリが前記第1の位置から前記第2の位置に移動し、それによって、前記付勢要素が前記第2の連結要素を移動させることを可能にする、請求項3に記載の下顎前方固定デバイス。
【請求項5】
前記ボリューム応答性材料は、前記第1の連結要素及び前記第2の連結要素と係合し、前記第2の連結要素を、前記第1の連結要素に対して独立して移動させる、請求項2に記載の下顎前方固定デバイス。
【請求項6】
前記ボリューム応答性材料は、ヒドロゲルである、請求項5に記載の下顎前方固定デバイス。
【請求項7】
前記第1の連結要素は、ユーザからの唾液が通過できるようにするために、幾つかの穿孔を有する、請求項5に記載の下顎前方固定デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本発明は、下顎前方固定デバイスに関する。本発明はまた、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02] 多くの人が睡眠時の呼吸障害に苦しんでいることはよく知られている。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、世界中で何百万もの人々に影響を及ぼしており、上記呼吸障害の一般的な例である。OSAは、呼吸ができないことによって睡眠が繰り返し中断される状態である。この呼吸不能は、通常、人の気道の断続的な閉塞によって引き起こされる。気道の閉塞は、少なくとも部分的には、上気道部を安定させる筋肉の全体的な弛緩に起因すると考えられている。これらの筋肉が弛緩すると、周囲組織が潰れ、これにより気道が閉塞する。
【0003】
[03] OSAに苦しむ人々は、潜在的に深刻な程度の酸素ヘモグロビン飽和度の低下を伴う睡眠断片化及び睡眠中の断続的な換気の停止を経験する。これらの症状は、臨床的に、昼間の極端な眠気、心不整脈、肺動脈高血圧症、うっ血性心不全及び/又は認知機能障害に変換される可能性がある。OSAの他の影響には、右室機能不全、睡眠時の二酸化炭素貯留、並びに覚醒状態及び継続的な動脈血酸素分圧の低下が含まれる。睡眠時無呼吸患者は、これらの要因による過度の死亡の危険性があるだけでなく、潜在的に危険な機器を運転及び/又は操作している間の事故の危険性が高まる。
【0004】
[04] 気道の閉塞が部分的にしか起こらない場合でも、人は上述の悪影響を被る可能性がある。気道の部分的な閉塞は、典型的には、低呼吸と呼ばれる浅い呼吸をもたらす。他のタイプの呼吸障害には、上気道抵抗症候群(UARS)及び咽頭壁の振動といった気道の振動(一般にいびきと呼ばれる)が含まれる。いびきが、UARS、低呼吸又は無呼吸に至る気道の閉鎖を伴うことがあることも知られている。したがって、いびきは、患者が異常な呼吸を経験していることの指標となる。
【0005】
[05] 呼吸障害の軽い症例は、下顎前方固定デバイス(MAD)といった口腔装置を使用して治療することができる。MADは、一般に、患者の下顎(下顎骨)を、上顎(上顎骨)に対して前方に引っ張るように構成され、これにより、患者の気道が開く。MADは、非常に効果的であるが、正しく使用されたとしても、下顎を突き出すことにより不快感をもたらす可能性がある。これは、MADが取り外されて顎を正常位置に再調整されなければならない朝に特に問題となる。このプロセスには数分かかることがあり、場合によっては、適切なツールによって容易にされる。
【0006】
[06] 例えば図1は、先行技術のMAD2を示す。MAD2は、第1のブレース部材4と、第2のブレース部材6と、各々が第1のブレース部材4と第2のブレース部材6とを互いに連結する幾つかの連結アセンブリ8、10とを含む。第1のブレース部材4は、ユーザの上歯列24と係合し、第2のブレース部材6は、ユーザの下歯列26と係合する。連結アセンブリ8、10の長さを調整し、したがって第1のブレース部材4に対する第2のブレース部材6の相対位置を調整するために、ユーザは、通常、MAD2がユーザの口の外側に配置されている間に、連結アセンブリ8、10を手動で調整する必要がある。これは、典型的には、専門家によって一度行われ、その後、MAD2は、ユーザの口の内外に配置されても位置を変えない。更に、このプロセスによって、ユーザは、不快な下顎の再調整の時間を見据えて、朝起きなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[07] したがって、改良された下顎前方固定デバイスと、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調整する方法とが必要とされている。
【0008】
[08] したがって、本発明は、改良された下顎前方固定デバイスと、下顎前方固定デバイスの寸法を調整する方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[09] 開示概念の一態様として、下顎前方固定デバイスは、ユーザの上歯列に係合する第1のブレース部材と、ユーザの下歯列に係合する第2のブレース部材と、第1のブレース部材を第2のブレース部材にそれぞれ連結する幾つかの連結アセンブリとを含む。幾つかの連結アセンブリそれぞれは、連結アセンブリの寸法を自動的に調整する作動要素を含む。作動要素は、付勢要素及びボリューム応答性材料からなる群から選択されている。
【0010】
[10] 開示概念の別の態様として、下顎前方固定デバイスは、ユーザの上歯列に係合する第1のブレース部材と、ユーザの下歯列に係合する第2のブレース部材と、第1のブレース部材を第2のブレース部材にそれぞれ連結する幾つかの連結アセンブリとを含む。幾つかの連結アセンブリそれぞれは、マイクロコントローラ、及び、マイクロコントローラに電気的に接続される作動要素を含む。マイクロコントローラは、所定時刻に基づいて作動要素をトリガする。
【0011】
[11] 開示概念の別の態様として、下顎前方固定デバイスの連結アセンブリの寸法を調節する方法が提供される。下顎前方固定デバイスは、ユーザの上歯列と係合する第1のブレース部材と、ユーザの下歯列に係合する第2のブレース部材と、第1のブレース部材を第2のブレース部材に連結する連結アセンブリとを含む。方法は、連結アセンブリのマイクロコントローラを用いて、所定時刻の信号を検出するステップと、連結アセンブリの寸法を調整するために、マイクロコントローラを用いて、連結アセンブリの作動要素をトリガするステップとを含む。
【0012】
[12] 本発明のこれらの及び他の目的、特徴及び特性、並びに、構造体の関連要素及び部品の組み合わせの動作方法及び機能及び製造の経済性は、添付図面を参照して以下の説明及び添付の請求項を検討することにより明らかとなろう。これらは全て、本明細書の一部を形成し、同様の参照符号は、様々な図面において対応する部分を指す。しかし、当然ながら、図面は、例示及び説明のために過ぎず、本発明の限定の定義を意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[13] 図1は、先行技術の下顎前方固定デバイスの等角図である。
図2A】[14] 図2Aは、開示概念の非限定的な実施形態による、第1の位置に示される下顎前方固定デバイス及びその連結アセンブリの一部の概略部分断面図である。
図2B】[15] 図2Bは、第2の位置に示される下顎前方固定デバイス及びその連結アセンブリの一部の概略部分断面図である。
図3】[16] 図3は、開示概念の別の非限定的な実施形態による、別の下顎前方固定デバイス及びその連結アセンブリの一部の概略部分断面図である。
図4】[17] 図4は、開示概念の別の非限定的な実施形態による、別の下顎前方固定デバイス及びその連結アセンブリの一部の概略部分断面図である。
図5】[18] 図5は、下顎前方固定デバイスの第1のブレース部材及び第2のブレース部材の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[19] 本明細書において使用される場合、「a」、「an」及び「the」との単数形は、特に明記されない限り、複数形への参照も含む。本明細書において使用される場合、2つ以上の部分又はコンポーネントが「連結される」との記載は、これらの部分が直接的に又は間接的に(即ち、1つ以上の中間部分又はコンポーネントを介しても、一連となっている限り)接合し又は一緒に動作することを意味する。本明細書において使用される場合、「直接的に連結される」とは、2つの要素が、互いに直接的に接触していることを意味する。本明細書において使用される場合、「固定的に連結される」又は「固定される」とは、2つのコンポーネントが、互いに対し一定の向きを維持しつつ、一体に動くように連結されていることを意味する。
【0015】
[20] 本明細書において使用される場合、2つ以上の部分又はコンポーネントが互いに「係合する」との記載は、これらの部分が、直接的に又は1つ以上の中間部分又はコンポーネントを介して、互いに力を及ぼすことを意味する。本明細書において使用される場合、「数」との用語は、1又は1より大きい整数(即ち、複数)を意味する。
【0016】
[21] 本明細書において使用される場合、「ボリューム応答性材料」との用語は、別の材料と係合すると、ボリュームに関して、膨張又は収縮する材料を意味する。ボリューム応答性材料の非限定的な例は、例えば唾液といった材料と係合すると膨張する生体適合性ヒドロゲルである。ヒドロゲル材料の適切な非限定的な例は、ミズーリ州セントルイスにオフィスビルがあるシグマ・アルドリッチによって製造及び販売されているポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)である。
【0017】
[22] 本明細書において使用される場合、「一方向性膜」との用語は、1つの方向における分子の可動性が反対方向に対して高い膜を意味する。好適な方向における水輸送のための当該膜の一例は、水分子を引き付けるための吸水部分(即ち、外側)上に親水性表面を、保水側(即ち、内側)上に疎水性表面を含んでよい。一方向性膜の適切な非限定的な例は、ニューヨーク州ポートワシントンに本社があるポール・コーポレーションによって製造及び販売されているポリスルホン膜である。
【0018】
[23] 本明細書において使用される場合、「所定の時刻」との表現は、ユーザが目覚めているときにユーザによって前もって設定される1日のうちの固定の時間を意味する。
【0019】
[24] 本明細書において使用される場合、「マイクロコントローラ」との用語は、適切な処理デバイス及び処理デバイスの一部として提供されるか又は処理デバイスに動作可能に連結され、制御動作を行うために処理デバイスによって実行可能であるデータ及びソフトウェアルーチン用の有形記憶媒体を提供するメモリを意味する。
【0020】
[25] 例えば次に限定されることなく、左、右、上、下、前方、後方、~の上及びこれらの派生語といった本明細書において使用される方向に関する表現は、図面に示される要素の方向に関連し、特に明記されない限り、請求項に制限を課すものではない。
【0021】
[26] 図2Aは、開示概念の非限定的な実施形態によるMAD102の概略部分断面図である。MAD102は、ユーザの上歯列に係合する第1のブレース部材104と、ユーザの下歯列に係合する第2のブレース部材106と、それぞれ、適切なピボット可能な連結器(例えば次に限定されないが、球面継手、ヒンジ継手)を介して第1のブレース部材104を第2のブレース部材に連結する幾つかの連結アセンブリ108とを含む。図2Aの例では、1つの連結アセンブリ108しか示されていないが、当然ながら、好適な実施形態では、MAD102は、連結アセンブリ108と実質的に同じ第2の追加の連結アセンブリを有する。連結アセンブリ108は、第1の連結要素110と、第1の連結要素110内に部分的に延在する第2の連結要素112と、作動要素(例えば次に限定されないが、ばね114といった付勢要素)と、マイクロコントローラ116と、マイクロコントローラ116に給電する電池118と、マイクロコントローラ116に電気的に接続される動作アセンブリ123とを含む。1つの例示的な実施例では、ばね114は、第2の連結要素112と、MAD102のピボット点132とに連結されているが、当然ながら、代替実施形態では、ばね114は、第2の連結要素112及びピボット点132に連結されることなく、これらに単に係合することができる。
【0022】
[27] 動作アセンブリ123は、第1の端部124Aと反対側の第2の端部124Bとを有するレバー124を含む。レバー124は、第1の端部124Aと第2の端部124Bとの間のピボット点129で第1の連結要素にピボット可能に連結されている。レバー124は、だいたい第1の端部124Aに又はその付近に配置される永久磁石126と、第2の端部124B又はその付近に形成されるフック部127とを含む。動作アセンブリ123は、更に後述するように、電磁石130によって生成される磁場が永久磁石126と相互作用するように、第2の連結要素112上に配置及び連結される電磁石130を更に含む。
【0023】
[28] 第1の連結要素110は、第1のピボット点132で第1のブレース部材104に連結され、第2の連結要素112は、第2のピボット点134で第2のブレース部材106に連結される。マイクロコントローラ116、電池118及び電磁石130は、第2の連結要素112に連結されている。電池118は、マイクロコントローラ116に電気的に接続され、電磁石130は、マイクロコントローラ116に電気的に接続されている。永久磁石126は、第1の連結要素110に連結される。動作アセンブリ123は、付勢要素(例えば次に限定されないが、ばね131)を更に含み、当該付勢要素もまた、第1の連結要素110に連結されている。永久磁石126は、電磁石130が励磁すると、電磁石130に磁気的に引き付けられる。図2Aに示すように、第2の連結要素112は、切欠き部113を含む。レバー124は、切欠き部113と係合する。この第1の位置では、切欠き部113とレバー124との係合は、ユーザの下顎が治療中に突き出たままになるように、連結アセンブリ108を維持する。更に、1つの例示的な実施形態では、ばね131は、フック部127に連結され、治療中にフック部127を第2の連結要素112と係合するように付勢する。
【0024】
[29] 開示概念の一実施形態によれば、連結アセンブリ108の寸法(即ち、距離又は長さ)は、ユーザが朝目覚めたときに起きる任意の下顎の再調整を大幅に低減するために自動的に調整(即ち、変更)される。具体的には、図2Aは、ユーザの口の中に挿入される前の第1の治療位置(即ち、図2Aに示すように、ユーザの下顎が突き出るような前に出された位置)にあるMAD102を示す。図2Bには、後退位置(図2Bに示す)である第2の位置にある図2AのMAD102の変形例が、MAD102’として示されている。1つの例示的な実施形態では、位置変更は、ユーザが朝目覚める前の所定の時刻に起きることが好適である。したがって、MAD2(図1)とは異なり、MAD102は、MADデバイスを装着していないときの日中の顎の通常の位置と実質的に同じ位置に顎がある状態で、ユーザが朝目覚めることを可能にし、これにより、朝の任意の不快な下顎の再調整が実質的に減少される。MAD102は、ユーザが目覚めた時には、ユーザの顎がその通常の位置(即ち、下顎が突き出ていない)に既にあるように、ユーザが目覚めようとする時刻の前の所定の時刻に、連結アセンブリ108の寸法を自動的に調整する、又は、連結アセンブリ108の長さを変更することによって上記利点を達成する。
【0025】
[30] 動作アセンブリ123は、ピボット点132、134間の寸法(例えば次に限定されないが、距離136)を自動的に調整するために、第1の位置(図2A)と第2の位置(図2B)との間で移動する。これは、MAD102が朝取り外された時に、ユーザにより多くの快適さ及びくつろぎ感を有利に与える。一実施形態では、図2Aの距離136は、図2Bの距離136’より大きい。このようにして、第1の距離136が第2の距離136’に短縮されると、ユーザの下顎はもはやユーザの上顎に対して突き出ていない。
【0026】
[31] この望ましいメリットを達成するために、外部コントローラ150(例えば次に限定されないが、携帯電話機、目覚まし照明器、目覚まし時計及び/又は家庭用監視ハブ)が設けられる。外部コントローラ150は、ユーザによって予め設定された所定時刻(即ち、ユーザが目覚めたい時刻の数分前)に無線信号をマイクロコントローラ116に送信するか、又は、マイクロコントローラ116が電磁石130を励磁する設定時間の前に、無線信号をマイクロコントローラ116に送信する。したがって、マイクロコントローラ116が外部コントローラ150によって起動されると、マイクロコントローラ116は電磁石130を励磁する。この結果、電磁石130と永久磁石126との間に磁気引力があり、これにより、レバー124がピボット点129を中心に(即ち、図2Aに示す例では反時計回りに)回転し、第2の端部124Bが切り欠き部113から離れるように動き、係合が外される。更に、レバー124の第2の端部124Bが切欠き部113にもはや係合していないので、動作アセンブリ123が、第1の位置(即ち、切り欠き部113とレバー124との係合に対応する)から第2の位置(即ち、切り欠き部113とレバー124との係合解除に対応する)へ移動すると、ばね114は、距離136を自動的に調整するために、第2の連結要素112を、第1の連結要素110に対して独立して自由に動かす(即ち、第2の連結要素をピボット点132に向かって動かす)。
【0027】
[32] 好適には、この動作アセンブリ123の位置変更は、最大限の治療が実現されるが、ユーザは、依然として、MAD102を装着していないときの日中の顎の位置に顎がある状態で目覚めることができるように、ユーザが目覚めたい時刻の前(即ち、数分前)の所定時刻に起きる。開示される実施形態は、本明細書では、動作アセンブリ123に関連して説明されているが、当然ながら、ユーザが目覚める前の所定時刻に距離136を自動的に調整する所望の機能を行うために、任意の適切な代替動作アセンブリをばね114と共に使用することができる。更に当然ながら、適切な代替実施形態では、レバー114を解放することによって、ばね114を引っ張る必要なくユーザの顎を自然に再調整できるように、ばね114は、作動要素としてではなくダンパとして機能することができる。
【0028】
[33] 図5は、第1のブレース部材104及び第2のブレース部材106の概略図を示す。なお、開示される例示的な実施形態では、ピボット点132、134(図2A)は、それぞれ、第1のブレース部材104上の位置401及び第2のブレース部材106上の位置402に対応する。したがって、前述の利点を提供するために、MAD102が第1の位置(図2A)から第2の位置(図2B)に移動すると、距離136が短縮する。しかし、代替実施形態では、同様のMADの同様の適切な代替ピボット点が、それぞれ、第1のブレース部材104上の位置403及び第2のブレース部材106上の位置404に対応することが理解されよう。このような代替実施形態では、ユーザがその顎が非治療位置にある状態で目覚めることができるように、作動要素(例えば次に限定されないが、ばねといった付勢要素)は、MADが位置間を移動すると、距離を長くする。
【0029】
[34] 図3は、開示概念の別の非限定的な実施形態による別の新規のMAD202の概略部分断面図である。MAD102(図2A)と同様に、MAD202は、ユーザの上下の歯列と係合する第1のブレース部材204及び第2のブレース部材206と、それぞれ、第1のブレース部材204を第2のブレース部材206に連結する幾つかの連結アセンブリ(図3の実施例では、1つの連結アセンブリ208のみが示されている)とを含む。しかし、連結アセンブリ208は、連結アセンブリ108(図2A)とは異なる。連結アセンブリ208は、第1の連結要素210と、第1の連結要素210内に部分的に延在する第2の連結要素212と、作動要素(例えば次に限定されないが、電気モータ214)と、電気モータ214に電気的に接続されるマイクロコントローラ216と、マイクロコントローラ116に給電する電池218と、マイクロコントローラ116に電気的に接続され、第1の連結要素210を第2の連結要素212に連結する動作アセンブリ223とを含む。
【0030】
[35] 第1の連結要素210は、第1のピボット点232で第1のブレース部材204に連結され、第2の連結要素212は、第2のピボット点234で第2のブレース部材206に連結される。動作アセンブリ223は、電気モータ214に連結されるねじ付きスピンドル224と、第1の連結要素210に連結されるねじ付きチューブ226とを含む。図3に示すように、ねじ付きスピンドル224は、ねじ付きチューブ226内に延在し、ねじ付きチューブ226と螺合する。マイクロコントローラ216は、電気モータ214に電気的に接続される。マイクロコントローラ216は更に、電池218に電気的に接続される。動作アセンブリ123(図2A)と同様に、動作アセンブリ223は、連結アセンブリ208の寸法(即ち、ピボット点232、234間の距離又は長さ236)を自動的に調整するために、第1の位置と第2の位置との間で移動する。つまり、1つの例示的な実施形態では、動作アセンブリ223は、最大限の治療が実現されるが、MAD202を装着していないときの通常の位置に顎が既にある状態でユーザが目覚めることができるように、ユーザが目覚める前の所定時刻に、距離236を第1の長さから第2のより短い長さに自動的に短縮する。
【0031】
[36] この望ましいメリットを達成するために、外部コントローラ250(例えば次に限定されないが、携帯電話機、目覚まし照明器、目覚まし時計及び/又は家庭用監視ハブ)が設けられ、当該外部コントローラ250は、ユーザによって予め設定された所定時刻(即ち、ユーザが目覚めたい時刻の数分前)に無線信号をマイクロコントローラ216に送信するか、又は、マイクロコントローラ216が電気モータ214をトリガする設定時間の前に、無線信号をマイクロコントローラ216に送信する。この結果、電気モータ214は、距離236を自動的に調整するために動作アセンブリ223を駆動する。つまり、電気モータ214は、ねじ付きスピンドル224をねじ付きチューブ226内で回転させ、これにより、距離236を短縮する。言い換えれば、電気モータ214が、ねじ付きスピンドル224をねじ付きチューブ226内で回転させると、ねじ付きスピンドル224は、距離236を第1の長さから第2のより短い長さに短縮し、MAD102と同じメリットを提供するために、第1の連結要素210をピボット点234に向かって引く。開示される実施形態は、本明細書では、動作アセンブリ223に関連して説明されているが、当然ながら、ユーザが目覚める前の所定時刻に距離236を自動的に調整する所望の機能を行うために、任意の適切な代替動作アセンブリを電気モータ214と共に使用することができる。例えば次に限定されないが、電気モータ214は、第1のブレース部材204又は第2のブレース部材206のいずれかに連結されるピニオン及びギアラック(図示せず)と組み合わされてもよい。
【0032】
[37] 更に、MAD202は、ユーザが朝目覚める直前の所定時刻に位置間を移動することができるが、MAD202はまた、ユーザがMAD202を挿入して眠った後に、第2の位置(非治療位置)から第1の位置(治療位置)に移動することもできる。このようにすると、ユーザは、MAD202が依然として自然な非治療位置にある間に眠りにつくことができる。したがって、このような実施形態におけるMAD202は、ユーザの睡眠相を検出するために、センサ(例えば次に限定されないが、フィットネストラッカ(図示せず))に連結される必要がある。
【0033】
[38] 図5は、第1のブレース部材204及び第2のブレース部材206を示す。なお、開示される例示的な実施形態では、ピボット点232、234(図3)は、それぞれ、第1のブレース部材204上の位置401及び第2のブレース部材206上の位置402に対応する。したがって、前述の利点を提供するために、MAD202が第1の位置(図3)から第2の位置に移動すると、距離236が短縮する。しかし、代替実施形態では、同様のMADの同様の適切な代替ピボット点が、それぞれ、第1のブレース部材204上の位置403及び第2のブレース部材206上の位置404に対応することが理解されよう。このような代替実施形態では、ユーザがその顎が非治療位置ある状態で目覚めることができるように、動作アセンブリ223は、MADが位置間を移動すると、距離を長くする。
【0034】
[39] 当然ながら、MAD102、202の連結アセンブリ108、208の寸法136、236を調整する方法は、マイクロコントローラ116、216を用いて、所定時刻の信号を検出するステップと、寸法136、236を調整するために、マイクロコントローラ116、216を用いて、作動要素114、214をトリガするステップとを含む。方法はまた、作動要素114、214をトリガするために、外部コントローラ150、250を用いて、無線信号をマイクロコントローラ116、216に送信するステップを含む。
【0035】
[40] 図4は、開示概念の別の非限定的な実施形態による別のMAD302の概略部分断面図を示す。MAD302は、ユーザの上下の歯列と係合する第1のブレース部材304及び第2のブレース部材306を含んで、MAD102、202(図2A及び図3)と同様にされるが、MAD302は、連結アセンブリ308の対応する距離336を、所定時刻にではなく、自動的に、徐々に調整する作動要素(例えば次に限定されないが、ボリューム応答性材料314)を有する。具体的には、連結アセンブリ308は、それぞれのピボット点332、334で第1のブレース部材304及び第2のブレース部材306に連結される第1の連結要素310及び第2の連結要素312を含み、ボリューム応答性材料314は、連結要素310、312間に配置され、各連結要素310、312と係合する。図4に示すように、第1の連結要素310は、幾つかの穿孔316を有する。また、連結アセンブリ308は更に、第1の連結要素310の内部に配置されかつ内部に連結される一方向性膜318を有することを理解されたい。
【0036】
[41] 1つの例示的な実施形態では、MAD302がユーザによって着用されると、ボリューム応答性材料314は、第1の連結要素310に対して独立して第2の連結要素312を移動させる(即ち、第2の連結要素312に押し付けられ、第2の連結要素312を押す)ように膨張する。つまり、ボリューム応答性材料314は、第2の連結要素312をピボット点332から離れるように移動させる。より具体的には、この構成は、ボリューム応答性材料314に接触してボリューム応答性材料314を膨張させるために、ユーザからの唾液が穿孔316及び一方向性膜318を通過することを可能にする。この結果、距離336が、第1の長さから第2の長さへと長くなる。なお、治療期間中(即ち、一晩中)、ボリューム応答性材料314が膨張するにつれて、第2の連結要素312は、その治療前位置に戻され、これにより、ユーザは、MAD302がないときの通常の位置と実質的に同じ位置に顎がある状態で目覚めることができる。したがって、MADを取り外した後、朝に顎を再調整する時間があることに関連する問題は、ユーザがMAD302を着用すると実質的に低減される。
【0037】
[42] 更に、日中、MAD302がユーザによって着用されていないとき、ボリューム応答性材料314は、MAD302を収縮させて「治療準備完了」の位置に戻すために乾燥される。MAD302の乾燥は、例えば次に限定されないが、MAD302をデシケータ(図示せず)内に乾燥状態で保管することや、及び/又は、ボリューム応答性材料314の材料ネットワーク内の水結合挙動を変えるための化学的駆動プロセスによって達成される。MAD102、202(図2A及び図3)に関して、電池118、218(図2A及び図3)は、MAD102、202(図2A及び図3)が着用されていない日中に、例えば次に限定されないが、MAD102、202(図2A及び図3)をワイヤレス充電所(図示せず)に置くことによって無線で充電するか、又は、MAD102、202をケーブルベースの充電器(図示せず)に接続することによって充電することができる。
【0038】
[43] 図5は、第1のブレース部材304及び第2のブレース部材306を示す。なお、開示される例示的な実施形態では、ピボット点332、334(図4)は、それぞれ、第1のブレース部材304上の位置403及び第2のブレース部材306上の位置404に対応する。したがって、MAD302(図4)が第1の位置から第2の位置へ移動すると距離336が長くなり、前述の利点が得られる。
【0039】
[44] 請求項では、括弧内に置かれる任意の参照符号は、請求項を限定すると解釈されるべきではない。「包含する」又は「含む」との用語は、請求項に記載される要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段のうちの幾つかは、全く同一のハードウェアアイテムによって具現化される。ある要素に先行する用語「a」又は「an」は、その要素が複数存在することを排除するものではない。幾つかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段のうちの幾つかは、全く同一のハードウェアアイテムによって具現化される。特定の要素が相互に異なる従属請求項に記載されるだけで、これらの要素の組み合わせを使用できないことを示すものではない。
【0040】
[45] 上記説明は、現在最も現実的でかつ好適であると考えられる実施形態に基づいて例示のために詳細に説明されたが、当然ながら、このような詳細は、単にその目的のためだけであり、本発明は、開示された実施形態に限定されず、それどころか、添付の請求項の精神及び範囲内である変更形態及び等価配置を対象とすることを意図している。例えば当然ながら、本発明は、可能な限りの範囲で、任意の実施形態の1つ以上の特徴が、任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わされてもよいことも想定している。

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5