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▶ アソシアシオン シュイス プール ラ ルシェルシュ オルロジェール(アエスエールアシュ)の特許一覧

特許7053658同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器
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  • 特許-同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器 図1
  • 特許-同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器 図2A
  • 特許-同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器 図2B
  • 特許-同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器 図3
  • 特許-同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】同一平面において振動するように配置された2つのバランスを含むタイムピース用の共振器
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/04 20060101AFI20220405BHJP
   G04C 3/08 20060101ALI20220405BHJP
   G04C 3/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G04B17/04
G04C3/08 A
G04C3/10 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019554039
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 IB2017057199
(87)【国際公開番号】W WO2018109583
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】16204580.1
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519217386
【氏名又は名称】アソシアシオン シュイス プール ラ ルシェルシュ オルロジェール(アエスエールアシュ)
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】バヤット ダラ
(72)【発明者】
【氏名】ペトレマンド イヴ
(72)【発明者】
【氏名】クイェルベルク イーヴァル
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-70919(JP,A)
【文献】特開2016-118548(JP,A)
【文献】実公昭46-24311(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0234354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/04
G04C 3/08-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器をタイムピースに取り付けられるようにすることを意図した支持構造体(2、4)と、同一平面において振動するよう配置された第1及び第2のバランス(6、8)と、前記第1のバランス(6)を前記支持構造体に接続するように配置された少なくとも1つの第1の弾性要素(12a、12b)と、前記第2のバランス(8)を前記支持構造体に接続するように配置された少なくとも1つの第2の弾性要素(14a、14b;14a’、14b’;14a’’、14b’’)とを含み、前記弾性要素の構成は、前記第1及び第2のバランスに対してそれぞれ2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)を定め、前記弾性要素は、前記バランスの各々を不動作位置に向けて角度をつけて戻すように配置された弾性手段を形成する、タイムピース用の共振器であって、
-前記第1及び第2のバランス(6、8)を結合するように配置されたストラップ(16、116、118)をさらに含み、前記ストラップは、前記第1及び第2のバランスに取り付けられ、前記ストラップをそれぞれ前記第1及び第2のバランスに接合する点(16a、16b)は、前記バランスの振動の平面と平行な同一平面内に配置され、前記バランスが不動作位置にあるとき、一方では前記接合点は、前記2つの幾何学的ピボット軸の間の中間に配置された対称中心(O)に対して対称であり、他方では、振動の前記平面に平行な、前記対称中心(O)を前記第1又は第2のバランスに接合する前記点(16a、16b)に接続する半径は、前記2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)を含む平面に対して少なくとも30°の角度(α)を形成することを特徴とする、共振器。
【請求項2】
前記バランスがその不動作位置にあるとき、前記ストラップの前記形状は、前記対称中心(O)に対して対称であることを特徴とする、請求項1に記載の共振器。
【請求項3】
前記バランスがその不動作位置にあるとき、振動の前記平面に平行な、前記対称中心(O)を前記第1又は第2のバランスに接合する前記点(16a、16b)に接続する半径は、前記2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)を含む前記平面に対して少なくとも45°の角度(α)を形成することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の共振器。
【請求項4】
中間で互いに取り付けられかつそれぞれ前記第1及び第2のバランス(6、8)に取り付けられた1対のストラップ(116、118)を含み、前記ストラップの対は前記ストラップを含み、
-前記バランス(6、8)がその不動作位置にあるとき、前記ストラップの前記対の前記2つのストラップ(116、118)は、一方では、前記2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)を含む前記平面に対して、他方では、前記2つの幾何学的ピボット軸から等距離の平行な中間平面(m)に対して互いに対して対称であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の共振器。
【請求項5】
前記ストラップの対(116、118)は、その2つの端部で前記第1のバランス(6)に取り付けられた第1の可撓性ストリップと、その2つの端部で前記第2のバランス(8)に取り付けられた第2の可撓性ストリップと、前記第1の可撓性ストリップの中央部分及び前記第2の可撓性ストリップの中央部分を剛に接続して、前記2つの可撓性ストリップの前記中央部分が互いから離間されかつ互いに平行に保持されるように配置された結合要素(120)とを含むことを特徴とする、請求項4に記載の共振器。
【請求項6】
前記第1及び第2のバランス(6、8)は、細長い形状を有することを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載の共振器。
【請求項7】
前記第1及び第2のバランスの前記2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)と前記第1及び第2のバランスの前記縁部との間のそれぞれの距離は、両方とも、前記2つの幾何学的ピボット軸を含む前記平面に平行な方向におけるよりも、前記2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)を含む前記平面に直角な方向において、少なくとも1.5倍大きいことを特徴とする、請求項6に記載の共振器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の弾性要素(12a、12b)は、前記バランス(6、8)のピボット運動の前記平面と平行な第1の対の弾性ストリップを含み、前記第1の対の前記ストリップ(12a、12b)は、1つの端部で前記支持構造体(2、4)に固定され、他方の端部で前記第1のバランス(6)に固定され、前記少なくとも1つの第2の弾性要素(14a、14b;14a’、14b’;14a’’、14b’’)は、前記バランス(6、8)のピボット運動の前記平面と平行な第2の対の弾性ストリップを含み、前記第2の対の前記ストリップ(14a、14b;14a’、14b’;14a’’、14b’’)は、1つの端部で前記支持構造体(2、4)に固定され、他方の端部で前記第2のバランス(8)に固定され、前記2つのバランスの前記2つの幾何学的ピボット軸(X’、X’’)は、それぞれ前記対の1つの前記2つの弾性ストリップと直角に交差することを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかに記載の共振器。
【請求項9】
前記弾性ストリップの前記第1及び第2の対(12a、12b、14a、14b)のいずれか一方の弾性ストリップの対は、前記一方の前記弾性ストリップのが、前記2つの幾何学的ピボット軸の一つと交差する位置において交点を有するように、前記バランスのピボット運動の平面に平行な同一平面内に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の共振器。
【請求項10】
前記2つの弾性ストリップ(12a、12b、14a、14b)対のいずれか一方の2つの前記弾性ストリップは、中間で交差することを特徴とする、請求項9に記載の共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイムピースに共振器を取り付けられるようにすることを意図した支持構造体と、同一平面において振動するように配置された2つのバランスと、2つのバランスを支持構造体に接続するように配置された複数の弾性要素とを含み、複数の弾性要素の構成は、2つのバランスのための2つの平行な弾性ピボット軸を定め、複数の弾性要素は、2つのバランスの各々が不動作位置に向けて角度をつけて戻るように配置された弾性手段(resilient means)も形成する、タイムピース用の共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の機械式時計は、通常、ばねバランス(sprung balance)を調整部材として用いる。このばねバランスは、3つの主要部品、すなわち、モーメンタムホイールの形態のバランスと、該バランスを支え、かつ該バランスをタイムピースフレームに取り付けるのを可能にする、2つのピボットで終端するスピンドルと、最後にバランスとその均衡位置との間の角度のサイズに比例する戻り回転力を発生させる渦巻きばねとから構成される。よく知られているように、ばねバランスは、300年以上にわたって機械式時計用の準専用タイムベースである。
【0003】
ばねバランスをタイムベースとして使用することで、頑丈でありかつ1日当たり15秒のオーダーの時計の精度を有することが証明された時計を有する可能性が与えられる。従って、ばねバランスは、信頼性が高く正確な共振器ということができる。しかし、クオーツ時計の精度が、ばねバランスを取り付けた機械式時計の精度よりも依然として高いことも事実である。この精度の違いは、一部は、クオーツの音叉の品質係数がばねバランスのそれより相当高いという事実に起因し得る。
【0004】
ばねバランスの振動の振幅は、相当なものである。通常、これは、主ばねの巻きの程度及び時計が水平に近いか又は垂直に近いかによって、180°から315°までの間で変化する。この条件において、バランスのスピンドルが回転する2つの軸受には大きな応力がかかり、摩擦によってバランスのエネルギーのごく一部を散逸させる。この摩擦が、ばねバランスの品質係数を低下させていることが理解されるであろう。最適化された減摩特性を有するバランス軸受を提供するのに大きな前進を遂げてきた。品質係数に対する摩擦の負の影響は、未だ克服されていないことも事実である。
【0005】
上述の問題を克服する目的で、バランスのピボット手段を可撓性ピボットと置き換えることが提案されている。特許文献1は、特に、共振器をタイムピースに取り付けられるようにすることを意図した支持要素と、モーメンタムホイールの形態のバランスと、最後に、互いに交差しながら支持要素をバランスに接続する2つの弾性ストリップとを含むタイムピース用の共振器を記載している。2つの弾性ストリップの構成は、バランスと同心の幾何学的ピボット軸を定めるよう選択される。さらに、2つのストリップは、バランスに戻り回転力を及ぼすように配置される。この構造により、共振器が振動すると、2つのストリップは変形し、渦巻きばね及び可撓性ピボットとして同時に作用する。前述の説明からわかるように、この先行技術文献で提案された解決策は、バランスの軸受をなくして、それを可撓性ピボットと置き換えるので、摩擦の主原因の一つを克服することを可能にすることは、上記の記述から理解されるであろう。特許文献1によれば、提案された発振器は、ばねバランスの品質係数より10倍高い品質係数を有する。
【0006】
しかしながら、上述の共振器には、一定の不利な点がある。事実、特許文献1によれば、バランスの振動の振幅は、通常20°である。この条件下では、一方でバランスの角運動量と、他方ではバランスの幾何学的ピボット軸との間の共直線性が不足する可能性の影響は、回転によって単純に相殺することができない。さらに、上述したもののような可撓性ピボットを有するバランスは、ばねバランスよりも衝撃に敏感であるというリスクがある。これら2つの問題を解決するため、特許文献2は、それぞれが可撓性ピボットを有する2つの共振器を結合し、音叉の形態を生成することを提案している。本提案によれば、2つの共振器間の結合は、2つの共振器の弾性ストリップを一端で固定させる可動接続要素により提供される。各ストリップの各対の他端は、従来通り2つのバランスのうち1つに接続される。この2つ目の先行技術文献によれば、接続要素は、それ自体が、タイムピースに強固に取り付けられた支持要素に弾性的に固定されながら、2つのバランスを支えていることが理解されるであろう。かかる配置により、2つのバランスの幾何学的ピボット軸は、タイムピースのフレームに対して集合的に可動でありながら、接続要素に対して固定された位置をそれぞれ占有する。
【0007】
特許文献2の表題に示されるように、記載される発振器は、音叉の形態である。この点において、音叉の対称性に関連する利点は、高い品質係数を有する幾つかの明確な振動モードを生成することが知られている。振動モードのうち、2つの最も基本的モードは、対称モード及び反対称モードである。時計学的用途に関して、反対称モード(音叉のプロングが同時に反対方向に動く)は、外的事象、特に衝撃に対する感度が低いという理由で最も有利である。従って、時計学的用途を意図した音叉において、対称的振動モード(音叉のプロングが同時に同一方向に動く)が常に効果的に減衰されることが重要である。この点において、特許文献2は、固定要素上に弾性的に懸架された接続要素を用いることによる2つのバランスの振動の結合を教示している。反対称的共振モードの1つの具体的特徴は、システムの質量中心は動かないまま、音叉の接続要素に作用する力が互いに相殺されることである。この条件において、反対称的共振モードを生成するためには、接続要素の懸架を調整することにより、接続要素が自由なままで第1のバランスが受けた励振パルスを第2のバランスに伝達するようにしながら、この要素の振動を大幅に減衰させる必要がある。上記の記述に鑑みると、接続要素の懸架の十分な調整には、高度な器用さが求められるという懸念があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】スイス国特許709 291 A2号明細書
【文献】欧州特許3 035 127 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、高い品質係数を有し、2つの機械的に結合されたバランスを含み、バランス間の結合により反対称的共振モードを生成するように設計された共振器を提供することである。本発明は、添付の請求項1において請求されるような共振器を提供することにより、この目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本特許出願において、「支持構造体」という表現は、必ずしも単一の支持部品を指すものではない。事実、本発明によれば、支持構造体は、例えば、支持要素の1つが第1のバランスを取り付ける役割を果たし、他方の支持要素は第2のバランスを取り付ける役割を果たす、2つの別個の支持要素を含むことができる。
本発明の他の特徴及び利点は、単に限定されない例として、添付図面を参照して与えられる以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の具体的実施形態による、タイムピース用の共振器を上から見た平面図である。
図2A図1に示す第1の実施形態の第2の変形による、バランスの1つを支持構造体に接続する弾性ストリップの対を詳細に示す上から見た部分図である。
図2B図1に示す第1の実施形態の第3の変形による、バランスの1つを支持構造体に接続する弾性ストリップの対を詳細に示す上から見た部分図である
図3】本発明の第2の具体的実施形態による、タイムピース用の共振器の斜視図である。
図4】本発明の第2の具体的実施形態による、タイムピース用の共振器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の第1の具体的実施形態によるタイムピース用の共振器を上から見た平面図である。本発明によれば、図示される共振器は、機械式時計のフレーム(図示せず)上にこれを取り付けられるようにすることを意図した支持構造体を含む。この例において、支持構造体は、それぞれ2及び4で参照される2つのバーにより形成される。また、共振器は、図示される例においては、それぞれが大きな中央ノッチを有する概ね楕円の形態である、全体が6及び8で参照される2つのバランスを含む。図示されるように、バランスが不動作位置にあるとき、2つのノッチの開口部は互いに向き合う。また、支持構造体の2つのバー2、4は、それぞれがノッチの1つの内側に配置されることも分かる。また、各バランスは、該バランスにより大きい慣性を与えるように設けられたリム10も含む。リムは、バランスの周囲に沿って延びる。第1及び第2のバランスは、同一の質量及び同一の寸法を有して、これらを容易に同一周波数で振動させられることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、バランスは、複数の弾性要素により支持構造体に接続される。より具体的には、図示される実施形態において、各バランス6、8は、弾性ストリップの対(それぞれ、12a、12b及び14a、14bで参照される)により2つのバー2、4のうちの1つに接続される。図示されるように、各ストリップの端部の一方は、ノッチの底部でバランスに取り付けられる一方、他方の端部は、弾性ストリップの各対が、取り付けられるバランスのノッチの内側に配置されるように、同一のノッチ内に配置されたバーに固定して取り付けられる。また、同じ対の2つの弾性ストリップは互いに交差して、ノッチの内側のバランスの平面内に延びるX字を形成することが分かる。当業者であれば、上記の説明により、バランスのうちの1つを支持構造体に接続するストリップの対の構成は、このバランスに対して幾何学的弾性ピボット軸X’、X’’を定めることが分かる。幾何学的ピボット軸は、バランスの平面に対して直角であり、かつXの2つのストリップの交点を通る。この交点は、バランスの運動中、極わずかに動く。以下でより明確になる理由により、弾性ストリップにより形成されるXは、幾何学的ピボット軸とバランスの平面との交点が質量均衡の中心と一致するように、ノッチ内に配置されることが好ましい。
【0014】
図1は、2つの端部の中間に接合点を有するXを形成する2つの弾性ストリップ12a、12b又は14a、14bも示す。シミュレーションでは、実際に、X字形状の構造体の2つのストリップが中間で交差する構成が、幾何学的ピボット軸の周りで摩擦のない自転(intrinsic rotation)を得ることを可能にすることが示される。さらに、このタイプのX字形状の可撓性ピボットは、バランスとその均衡位置との間の角度のサイズに比例する戻り回転力を、他方におけるように一方向に生成させる有利な特徴を有する。また、上で使用される「自転」という表現は、ピボット軸の変位を最小にする回転を示すことにも留意されたい。
【0015】
本説明の残りにおいて、ストリップの高さは、バランスの平面に対して直角の延長部に対応し、ストリップの厚さは、その長さに直角のバランスの平面における延長部に対応すると仮定する。ストリップの厚さは、バランスの平面において十分な可撓性を有する弾性ストリップを提供するように低減されることが好ましい。ストリップの高さは、ストリップに十分な剛性を与えて、同一の特定の平面においてバランスの振動を閉じ込めるように決定される。ストリップの2つの対は、同一材料から生成されることが好ましい。さらに、図示されるように、2つのX字形状の可撓性ピボットは、第1及び第2のバランスが同じ質量及び同じ慣性モーメントを有するときに同じ基本共振周波数を有するように、同一寸法を有することが好ましい。
【0016】
図2A及び図2Bは、バランスのうちの1つを本発明の共振器の支持構造体に接続する弾性ストリップの対の第2及び第3の構成の変形を示す部分拡大図である。図1図2A及び図2Bを比較することにより、特に、これらの図は、バー4、4’、又は4’’のうちの1つから生じる2つの弾性ストリップ間に形成される角度の値が異なることが分かる。図1において、この角度は、実質的に90°に等しく、図2Aにおいては、実質的に90°を下回り、図2Bにおいては、90°を上回る。ストリップが交差する角度は、バランスの平面の外側の特定の振動モードの励振性に影響を及ぼす。本発明の共振器の大部分の時計学的用途に対して、これらの高いモードは望ましくない。実際には、弾性ストリップ間の角度は、バランスの形状及び異なる平面における所望の剛性に従って選択される。
【0017】
本発明によれば、共振器は、第1及び第2のバランス6及び8を結合するように配置されたストラップを構成する可撓性ストリップ16も含む。可撓性ストリップは、第1及び第2のバランスに取り付けられ、それぞれ可撓性ストリップを第1及び第2のバランスに接合する点16a及び16bは、同一平面において、2つのバランスの振動の平面に平行に配置され、かつ図の中心点(Oとして参照される)に対して互いに対称である。さらに図1を参照すると、2つの接合点16a及び16bの間で、ストリップ16の形状は、中心点Oの周りで中心対称であることを理解することが可能である。しかし、この特徴は、バランス6、8が不動作位置にあるときにのみ存在することを理解されたい。図において検証できる通り、対称中心Oは、2つのバランスの幾何学的ピボット軸間の中間に配置される。
【0018】
図1は、中心O、及び可撓性ストリップ16が2つのバランス6、8を接合する点16a、16bを通る直線dも示す。例示された実施形態において、直線dは、第1及び第2の幾何学的ピボット軸を含む平面に対して、少なくとも30°、又はさらには少なくとも45°の角度αを形成する。
【0019】
本発明によれば、第1及び第2のバランスは、同一の基本共振周波数を有する。ストラップ16の存在により、バランスのうちの1つが均衡位置から離れるように動くと、それと共にストラップを引き、他方のバランスは、その動きに追従させられ、従って、均衡位置から離れるように他の方向に動かされる。特に図1を参照すると、第1のバランス6が時計回りにピボット回転するとき、ストラップ16に牽引力を及ぼすことが理解されるであろう。ストラップの慣性は、バランスの慣性に対して非常に低いので、ストラップが受ける張力は、接合点16bにおいて第2のバランス8に影響を及ぼす。従って、第2のバランスは、反時計回りのピボット回転を生じさせる傾向のある回転力を受ける。このように不動作位置から離れるように動くことにより、2つのバランスは、これらを支持構造体(バー2及び4)に接続するX字形状弾性ストリップ12a、12b、14a、14bの変形を生じさせる。2対の弾性ストリップの変形は、第1及び第2のバランスにそれぞれ作用する2つの戻り回転力を発生させる。上記の記述により、ストラップ16の存在は、2つのバランスの振動の同期を生じさせることが理解できる。また、共振周波数における2つの結合されたバランスの振動は、上述したものによる反対称モードにおいて振動が発生する場合は、非同期であり、単純同期ではないと言われることに留意されたい。
【0020】
図3及び図4は、本発明の第2の具体的実施形態によるタイムピース用の共振器の斜視図である。図から分かるように、図3及び図4に示される共振器は、図1の共振器に非常に似ている。しかし、本例の目的である本発明の第2の具体的実施形態によれば、共振器は、剛性結合要素120により中間で互いに取り付けられた1対のストラップ116、118を含む。ストラップ116、118は、それぞれ第1及び第2のバランス6及び8にも取り付けられる。図3において、第1のバランス6と結合要素120との間に延びるストラップ116の半分は、参照記号116’で示され、結合要素と第2のバランス8との間に延びるストラップ116の他方の半分は、参照記号116’’で示される。同様に、第1のバランスと結合要素との間に配置されたストラップ118の半分は、参照記号118’で示され、他方の半分は参照記号118’’で示される。
【0021】
特に図3において、図示されるように、バランスが不動作位置にあるとき、ストラップ116、118は、一方では第1及び第2の幾何学的ピボット軸X’、X’’を含む平面に対して対称であり、他方では2つの幾何学的ピボット軸から等距離にある平行な中間平面に対して対称である(バランスの平面における中間平面の経路は、図3において参照記号mで示される破線で図示する)。
【0022】
再度図3及び図4を参照すると、ストラップ116、118の対は、主として2つの端部で第1のバランス6に取り付けられた第1の可撓性ストリップと、2つの端部で第2のバランス8に取り付けられた第2の可撓性ストリップとから形成されることに気付くことができる。また、2つの可撓性ストリップは、結合要素120を用いて互いに接続されることも分かる。2つの可撓性ストリップは、中間で結合要素に接続され、図示された構成において、第1の可撓性ストリップの2つの半分は、それぞれストラップ116の半分116’及びストラップ118の半分118’を構成することが理解されるであろう。同様に、第2の可撓性ストリップの2つの半分は、それぞれストラップ116の他方の半分116’’及びストラップ118の他方の半分118’’を構成する。
【0023】
図示される実施形態によれば、結合要素120は、剛性でありかつ第1の可撓性ストリップの中央部分と第2の可撓性ストリップの中央部分を剛に接続して、これらの2つの中央部分を互いから離間し、互いに平行に保持する。上述の第2の実施形態の1つの利点は、共振器の反対称振動モードにおいてさらに大きい安定性をもたらす高度な対称性質である。別の利点は、共振におけるバランスの振動が、共振器の対称平面(前述の中間平面m)において直線軌道上の剛性結合要素120の反復運動を生じさせることである。直線軌道において反復運動を生じさせる部品を配置する事実は、特に、脱進機を共振器と関連付けるために活用することができる。
【0024】
図3及び図4に示される例において、各バランス6、8のリム10は、バランスの下側に配置される。しかし、変形において、リム10は、バランスの上側又は両側に配置できる。
【0025】
本発明による共振器は、例えば、シリコン又は二酸化シリコン、ダイヤモンド、クオーツ又は金属などから一体部品として形成することができる。このために、DRIE又はLIGA型式技術を用いることが可能である。また、本発明による共振器は、部品の組立体により得ることもできる。
【0026】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して様々な修正及び/又は改良を行い得ることも理解するであろう。具体的には:
-バランス6、8は、楕円形状以外に細長い形状を有することができ、円形、正方形、蝶の羽形、又は他の形状を有することもできる。しかし、細長い形状は、ストラップ16、116、118がバランス6、8に取り付けられた点と間隔をおいてバランス間の弾性結合の調整を容易にすることが可能なので、好ましい;
-バー2、4及び弾性ストリップ12a、12b、14a、14bが配置されるバランス6、8のノッチは、互いに向かい合って開口する代わりに、バランス6、8の外側に向けて開口することができ又は閉じることもできる;
-ノッチ内のバー2、4及び弾性ストリップ12a、12b、14a、14bの配向は、図示されるものとは異なることができる。例えば、バー2、4のうちの1つ又は両方を、図1に示す位置に対して約90°回転させることができる。バー2、4のそれぞれの配向は、同一に又は反対にすることができる;
-図示した実施形態のように同一平面にさせる及び物理的に交差させる代わりに、各対の弾性ストリップ12a、12b、14a、14bは、2つの異なる平面に延ばして「Wittrick」型式の可撓性ピボットを形成することができる。「Wittrick」型式の可撓性ピボットに対して、図示した実施形態で用いられるX字形状の可撓性ピボットは、撓む際の幾何学的ピボット軸X’、X’’の望ましくない運動が大きくなるほか、ストリップが短くなり応力の集中が高まるという不利な点がある。対照的に、ストリップの横断方向の剛性は、ずっと高まり、そのことは、バランス6、8の回転平面における安定性及び回転平面の外側からの耐衝撃性を改善する;
-X字形状のピボット若しくは「Wittrick」ピボット以外の型式の可撓性ピボットを用いて、各バランス6、8を支持構造体2、4に接続することができる。さらに、各可撓性ピボットを形成するストリップ又は弾性要素の数は、2を上回ることができ、又は1に等しくすることさえできる。
図1
図2A
図2B
図3
図4