IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アートラ・メディカル、エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許-負圧装置および方法 図1
  • 特許-負圧装置および方法 図2
  • 特許-負圧装置および方法 図3
  • 特許-負圧装置および方法 図4
  • 特許-負圧装置および方法 図5
  • 特許-負圧装置および方法 図6
  • 特許-負圧装置および方法 図7
  • 特許-負圧装置および方法 図8
  • 特許-負圧装置および方法 図9
  • 特許-負圧装置および方法 図10
  • 特許-負圧装置および方法 図11
  • 特許-負圧装置および方法 図12
  • 特許-負圧装置および方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】負圧装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019554647
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018025980
(87)【国際公開番号】W WO2018187394
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】15/478,327
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519352676
【氏名又は名称】アートラ・メディカル、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AATRU MEDICAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】ミッドオー、リチャード・エル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイチェホフスキ、ティモシィ
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ、トーマス・イー
(72)【発明者】
【氏名】マニカム、サンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター、ジョン・ディ
(72)【発明者】
【氏名】ブアン、ジョン
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536851(JP,A)
【文献】特表2007-509639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するドレープであって、前記開口以外の前記ドレープを通る液体および空気の移動を妨げる可撓性材料から作られる前記ドレープ、前記ドレープによってカバーされるウィッキング要素、及び前記ウィッキング要素を囲み皮膚に固着されると前記ドレープと協働するシーリング材であって、該ドレープによってカバーされ前記シーリング材によって囲まれる密閉空間を、該密閉空間の空気が前記開口以外から前記密閉空間を出るのを妨げられるように画定する前記シーリング材を具える創傷カバー組立体と、
空気中のガスと反応して該ガスを消費するように構成された反応器と、
該反応器を覆う密封層であって、該記密封層が除去されるまで、又は該密封層に孔があく、すなわち、該密封層が切断されるまで、前記反応器が周囲にさらされるのを防ぐ前記密封層と、
中に前記反応器が配置されているチェインバを画定する容器と、
該容器を前記創傷カバー組立体と機械的に接続するコネクタを具え、
前記チェインバが、前記ガスが前記密閉空間から消費される間、予め定められたチェインバ容積を維持するように構成されており、
前記チェインバが、前記コネクタを介して前記密閉空間と流体連通関係にある、
負圧装置。
【請求項2】
前記容器が前記ドレープからオフセットされて配置されている、請求項1の負圧装置。
【請求項3】
前記容器が、前記密封層に孔をあけ、前記反応器が周囲にさらされるのを防ぐように構成されている、請求項1の負圧装置。
【請求項4】
前記容器が、圧迫されて、前記密封層に孔をあけるように構成されている、請求項3の負圧装置。
【請求項5】
前記容器が蓋及びベースを具え、前記反応器が前記ベースに対して前記蓋を回転させることによって起動させられる、請求項1の負圧装置。
【請求項6】
前記容器が蓋及びベースを具え、前記ベースに対して前記蓋を枢動させて前記反応器を露出させる、請求項1の負圧装置。
【請求項7】
アクチュエータを更に具え、前記容器に対して前記アクチュエータを移動させて前記反応器を起動させる、請求項1の負圧装置。
【請求項8】
前記容器に対して前記アクチュエータを摺動させて前記反応器を起動させる、請求項7の負圧装置。
【請求項9】
前記容器に対して前記アクチュエータを移動させて前記密封層を切断する、請求項7の負圧装置。
【請求項10】
前記容器が剛性容器である、請求項1の負圧装置。
【請求項11】
前記密閉空間が、前記ウィッキング要素によって占められる固体体積部分、及び前記反応器が前記ガスを消費する前の前記密閉空間に閉じ込められた空気によって占められる初期の空気体積部分を具え、前記予め定められたチェインバ容積が、前記初期の空気体積部分より少なくとも6倍大きい、請求項の負圧装置。
【請求項12】
前記開口を覆う取外し可能な層または部分を更に有し、該取外し可能な層または部分は、前記取外し可能な層または部分、及び前記開口以外の前記ドレープを通る空気および液体の移動を妨げるように構成され、該取外し可能な層または部分が取除かれた後、前記開口を周囲にさらす、請求項1の負圧装置。
【請求項13】
前記反応器が、酸素を消費するように構成された、請求項1の負圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
負圧(negative pressure)とは、通常の大気圧よりも低い圧力を表現するために用いられる用語である。既知の局所的な負圧装置は、面倒なしわ取り吸引装置から、流体透過性創腔充填要素、被覆包帯、皮膚を密閉するための適度な気密手段、及び創傷部位と創腔充填要素を、体液回収容器を介して排水管(drainage tube)に連結する創傷療法にまで及ぶ。
【背景技術】
【0002】
局所的な負圧をより長く使用可能にするために、ポンプのような真空発生源を含む動力付きのシステムが開発され、この種のシステムの多くの実施例が、皮膚治療、及び一時的なしわ取りのような回復目的のために今日使われる。しかしながら、これらのシステムの多くは、ユーザーにとって不便である。この種の既知のシステムは、大きく、重く、うるさく、不快であり、ユーザーがコントロールされた圧力条件を加えたり、起動したりする際に、簡単ではないことがあり得る。この種の既知のシステムはまた、局所的な負圧条件を作り出すために、外部の力、すなわち、真空源に頼っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の組織治療(tissue treatment)、手術および他の高度な技術的な介入は、老人人口、及び次第に免疫不全になる患者人口の両方の発生により、より一般的になっている。この傾向は、続くものと思われる。創傷治療において、例えば、ヘルスケア専門家は、複雑な治癒障害によって、今日、治療困難な創傷に遭遇する傾向にある。局所的な負圧を組織部位に加えることが可能なより単純な機械式装置を作り出す試みがなされてきた。この種の医療器具は、設計が比較的単純であるため、材料費および組立て費の削減が期待されるということはいうまでもない。例えば、組織部位に局所的な負圧をかけるために手動ポンプ・システムを使用する試みがなされてきた。しかしながら、この種のシステムは、ユーザーが容易に用いたり、目立たずに使用したり、長期間にわたって便利に使用することができない。実際、再排出がしばしば必要である。特に、この種の多くのシステムは、例えば、終夜のような、長い期間、理想的には使用可能であるため、これらは重大な欠陥になり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述を考慮して、負圧装置は、ドレープ、ウィッキング要素、シーリング材、反応器、チェインバおよび通気性液体不透過性(air permeable liquid impervious)要素を含む。ドレープは、開口を含み、開口以外のドレープを通る液体および空気の移動を妨げる可撓性材料から作られる。ウィッキング要素は、ドレープによってカバーされる。シーリング材はウィッキング要素を囲み、シーリング材が皮膚に固着されるとドレープと協働し、ドレープによってカバーされシーリング材によって囲まれた密閉空間を画定する。密閉空間の中の空気は、開口を通る以外に密閉空間から出ることができない。反応器は、空気中のガスと反応してガスを消費するように構成される。チェインバは、開口を介して反応器および密閉空間と流体連通関係にある。チェインバは、ガスが密閉空間から消費される間、予め定められたチェインバ容積を維持するように構成される。通気性液体不透過性要素は、チェインバと密閉空間の間に配置されて、液体がチェインバに入るのを妨げるように構成される。
【0005】
組織部位(tissue site)を治療する方法は、組織部位を囲んでいる皮膚にドレープを固着すること、及びウィッキング要素をカバーすることを含む。ドレープは、開口を含み、開口以外のドレープを通る液体および空気の移動を妨げる可撓性材料から作られる。この方法は、ドレープと協働するシーリング材で組織部位の周りを密閉することを更に含み、ドレープによってカバーされ、シーリング材によって囲まれた密閉空間を画定する。この方法は、空気中のガスと反応してガスを消費するように構成された反応器を具えること、反応器と密閉空間とが流体連通関係になるようにチェインバを接続することを更に含む。チェインバは、反応器が密閉空間のガスを消費する間、予め定められたチェインバ容積を維持するように構成される。この方法は、反応器が密閉空間のガスを消費する間、液体がチェインバに入るのを妨げることを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、創傷カバー組立体の断面図。
図2図2は、図1に示された創傷カバー組立体の平面図。
図3図3は、別の創傷または組織カバー組立体にポンプ組立体を取付ける前の、当該別のカバー組立体及びポンプ組立体を含む負圧装置の横断面図。
図4図4は、別のカバー組立体に取付けられたポンプ組立体を有する負圧装置の横断面図。
図5図5は、もう一つの創傷または組織カバー組立体の横断面図。
図6図6は、図5に示されたカバー組立体の平面図。
図7図7は、別のポンプ組立体の横断面図。
図8図8は、もう一つの別のポンプ組立体の横断面図。
図9図9は、もう一つの別のポンプ組立体の横断面図。
図10図10は、創傷または組織カバー組立体、及びもう一つの別のポンプ組立体を含む別の負圧装置の模式図。
図11図11は、図10に示されたカバー組立体とともに用いるためのもう一つの別のポンプ組立体の概略図。
図12図12は、図10に示されたカバー組立体とともに用いるためのもう一つの別のポンプ組立体の概略図。
図13図13は、図10に示されたカバー組立体とともに用いるためのもう一つの別のポンプ組立体の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、創傷カバー膜12および取外し可能な層14を含む創傷カバー組立体10を表す。創傷カバー膜12は、創傷カバー膜12にカバーされた創傷部位16から周囲へ、または周囲から創傷カバー膜12にカバーされた創傷部位16へ、液体および空気の少なくとも一方が創傷カバー膜12を通過できるように構成される。取外し可能な層14は、創傷カバー膜12の少なくとも一部をカバーする。創傷カバー膜12が創傷部位16周辺の皮膚18に固着されているとき、取外し可能な層14は創傷カバー膜12から取外し可能である。創傷カバー膜12が創傷部位16周辺の皮膚18に固着され、取外し可能な層14が創傷カバー膜12と接続されているとき、空気および液体が創傷カバー膜12および取外し可能な層14を通過できないように、取外し可能な層14は構成される(例えば、特定の材料または複数の材料から作られる。)。このように、取外し可能な層14が創傷カバー膜12に接続されて、少なくとも一部の創傷カバー膜12をカバーしている状態では、創傷カバー組立体10は「空気を通す(breathable)」包帯ではなく、閉塞性(occlusive)の包帯と呼ばれ得る。
【0008】
図示の実施例では、創傷カバー膜12は、可撓性材料からなり、薄い可撓性エラストマーフィルムから作られてもよい。この種の材料の例としては、ポリウレタンまたはポリエチレンフィルムが挙げられる。接着剤(図示せず)が創傷カバー膜12の皮膚接触面に塗布され、皮膚18に創傷カバー膜12を固着する。いくつかの例では、創傷カバー膜12は空気のみを通す一方で、他の例では、創傷カバー膜12は空気と液体の両方を通す。創傷カバー膜12は、開口(図1では見えないが、少なくとも一つの開口を有する他の実施例が以下に記載されている。)を具えてもよく、空気および液体が開口以外の創傷カバー膜12を通らないように創傷カバー膜12は構成されてもよい。例えば、創傷カバー膜12は、空気および液体が開口以外の創傷カバー膜12を通らないように、空気及び液体不透過性材料から作られてもよいし、ヒドロゲルまたは親水コロイドのような物質でコーティングされたり、金属でコーティングされたりしてもよい。別の実施例では、水蒸気、酸素、窒素および他のガスに対しては透過性がある一方で、創傷部位16の周りの水分を維持できる半透過性材料から創傷カバー膜12が作られてもよい。
【0009】
取外し可能な層14は、創傷カバー膜12の少なくとも一部をカバーする。図1及び2には取外し可能な層14が一つしか示されていないが、一つ以上の取外し可能な層14が設けられてもよい。例えば、複数の取外し可能な層14の各取外し可能な層14が創傷カバー膜12の一部をカバーする。取外し可能な層14は、薄い可撓性フィルムから作られてもよい。この種の材料の例としては、ポリウレタンまたはポリエチレンフィルムが挙げられる。取外し可能な層14が創傷カバー膜12をカバーし、創傷カバー膜12と接続されるとき、取外し可能な層14は、空気および液体が取外し可能な層14を通過しないように構成されている。取外し可能な層14は、空気及び液体不透過性材料から作られてもよいし、ヒドロゲルまたは親水コロイドのような物質でコーティングされても、空気及び液体不透過性となるように金属化されてもよい。
【0010】
取外し可能な層14が創傷カバー膜12から取外されると、創傷カバー膜12を介してではあるが創傷部位16は周囲にさらされる。創傷カバー膜12が空気および液体透過性であるとき、取外し可能な層14を取外すことで創傷カバー組立体10を閉塞性包帯から非閉塞性包帯へ変えることができる。取外し可能な層14を創傷カバー膜12から取外した状態で、以下でさらに詳述するように、後述する実施例のポンプ組立体を創傷カバー組立体10、または皮膚18に固着し、創傷部位16に負圧をかけてもよい。
【0011】
創傷カバー組立体10は、皮膚18と創傷カバー膜12との間に配置されたシーリング材20を含んでもよい。シーリング材20は、創傷カバー膜12が皮膚18に固着されるとき、皮膚18と創傷カバー膜12との間を気体および液体が通過するのを妨げるように構成され、典型的に、創傷カバー膜12を皮膚18に固着するために用いる接着剤に付加してある。シーリング材20は、ガスケットと同様に作動し、ヒドロゲル材料、または創傷カバー膜12の下及び皮膚18上の創傷部位16からの空気および液体の移動を妨げることができる他のいかなる材料から作られてもよい。
【0012】
図2を参照すると、取外し可能な層14は、シーリング材20によって(その内側に)囲まれた創傷カバー膜12の少なくとも一部をカバーすることができる。創傷カバー膜12が空気または液体透過性であるとき、取外し可能な層14を取外すことで創傷カバー組立体10を閉塞性包帯から非閉塞性包帯、すなわち、「空気を通す」包帯へ変えることができる。
【0013】
創傷カバー組立体10は、創傷カバー膜12によってカバーされた少なくとも一つのスペーサ要素24を含むこともできる。創傷部位16の周りの創傷カバー膜12の下が減圧されるとき、創傷カバー膜12と創傷カバー膜12によってカバーされた創傷部位16との間の間隔を維持するように、スペーサ要素24は構成される。創傷カバー膜12は薄膜から作られてもよく、これにより、負圧が創傷カバー膜12の下の創傷部位16に加えられた場合に人体の曲線に創傷カバー膜12を沿わせることが可能となるが、創傷カバー膜12が創傷部位16の方へ引き寄せられる傾向もある。創傷カバー膜12と創傷部位16との間に十分な間隔を維持すると共に、スペーサ要素24はこれらの曲線に沿うように構成される。このようなスペーサ要素の実施例は、別の実施例を参照して、以下で、更に詳細に説明される。
【0014】
ここで図3を参照すると、負圧装置26の例示的な実施例は、創傷カバー組立体28とポンプ組立体30を含む。図3と4で示される創傷カバー組立体28は、機能の点で上記の創傷カバー組立体10と同様である。図4を参照すると、創傷部位16をカバーするように創傷部位16を囲む皮膚18に創傷カバー組立体28は固着される。それから、創傷部位16を減圧(一般的には大気圧よりも低い圧力)するために、創傷カバー組立体28または創傷部位16の周りの皮膚18にポンプ組立体30は固着され得る。創傷カバー組立体28はまた、ポンプ組立体30を用いずに創傷部位16をカバーするために用いることもできる。創傷カバー組立体28を製造するために選ばれる材料に応じて、創傷カバー組立体28は、閉塞性包帯または非閉塞性包帯を創傷部位に利用可能とする。
【0015】
図3に戻って参照すると、創傷カバー組立体28は全体として、創傷接触層32またはウィッキング要素34を含むことができる創傷接触要素、機能の点で上記の創傷カバー膜12と同様であってもよいドレープ36、および上記の取外し可能な層14と類似してもよい剥離層38を含む。したがって、創傷カバー膜12とドレープ36は入れ替えて用いることが可能であり、取外し可能な層14と剥離層38も入れ替えて用いることができる。
【0016】
ドレープ36は、創傷接触層32とウィッキング要素34から構成されてもよい創傷接触要素をカバーする。ドレープ36は、ドレープ36の下部(内側)表面44からドレープ36の外側表面46まで延びる少なくとも一つの開口40を含む。剥離層38は、開口40をカバーする。創傷部位16を囲んでいる皮膚18とドレープ36が接触しているとき、剥離層38はドレープ36から剥離可能である。創傷部位16を囲んでいる皮膚18にドレープ36が固着され、開口40をカバーしている剥離層38がドレープ36に接続される場合、空気および液体がドレープ36の開口40を通って創傷部位16から周囲へ又は周囲から創傷部位16へ通過するのを妨げられるように、剥離層38はドレープ36と接続される。このように、ドレープ36が創傷部位16を囲んでいる皮膚18に固着され、開口40をカバーしている剥離層38がドレープ36に接続される場合、ドレープ36と剥離層38は、創傷部位16の周りのドレープ36と剥離層38の下に密閉空間42を画定することができる。
【0017】
創傷接触要素は、創傷接触層32またはウィッキング要素34を含むことができる。本明細書において、「または」の語は、お互いを排除する関係を意味しない。創傷接触層32は、ゴム状弾性を有する重合物質のようなエラストマー材料から作られてもよい。創傷接触層32は、薄い、可撓性エラストマーフィルムであるエラストマー材料から作られてもよい。この種の材料の例としては、銀メッキ・ナイロン、穴のあいたシリコーン・メッシュまたは人間の組織に固着しないその他の材料が挙げられる。創傷部位16からの滲出液が創傷接触層32を通過し、ウィッキング要素34内に保持されるように創傷接触層32がウィッキング要素34と連動して用いられる場合、創傷接触層32は、複数の開口(図示せず。)を含むことができる。創傷接触層32は、創傷カバー組立体28が創傷部位16上に配置される場合に(図2を参照。)皮膚18または創傷部位16に接触する皮膚接触側50を含む。創傷接触層32はまた、創傷カバー組立体28が創傷部位16上の皮膚18に固着される場合に創傷部位16から離れて向き合う皮膚接触側50の反対側の上側52を含む。
【0018】
ウィッキング要素34は、創傷部位16から滲出液を吸収するように、液体を吸収できる吸収材料から作られてもよい。ウィッキング要素34は、創傷カバー組立体28が創傷部位16上の皮膚18に固着されるときに、皮膚18および創傷部位16と向き合う皮膚に面する側54を含む。ウィッキング要素34はまた、創傷カバー組立体28が創傷部位16上の皮膚18に固着されるときに、皮膚に面する側54の反対側であり、皮膚18の外側を向く上側56を含んでもよい。ウィッキング要素34は、超吸収性ポリマーおよび吸収性ビーズ、発泡体または天然吸収性材料から作られてもよい。創傷カバー組立体28はまた、以下に詳細が記された、創傷接触層32を取外すことなくウィッキング要素34の交換を可能にする方法で組み立てられてもよい。
【0019】
ドレープ36は、ウィッキング要素34と創傷接触層32をカバーする。ドレープ36は機能の点で上記の創傷カバー膜12と同様であってもよく、創傷カバー膜12と同様に、可撓性材料から作られてもよいし、薄い、可撓性エラストマーフィルムから作られてもよい。この種の材料の例としては、ポリウレタンまたはポリエチレンフィルムが挙げられる。ドレープ36は、開口40以外のドレープ36を通る空気および液体の移動を妨げるように構成されてもよい。例えば、ドレープ36は空気及び液体不透過性材料から作られてもよく、ヒドロゲルまたは親水コロイドのような物質でコーティングされたり、金属化されたりしてもよく、これにより、開口40以外のドレープ36を通る液体および空気の移動が妨げられる。替わりの実施例では、ドレープ36は、水蒸気、酸素、窒素および他のガスは透過するが、創傷部位16周辺の水分を維持できる半透性材料から作られてもよい。
【0020】
創傷カバー組立体28は、上記のシーリング材20と同様に作動する、シーリング材60を更に含む。ドレープ36は可撓性のフィルム状の材料から作られてもよいので、ドレープ36が創傷部位16周辺の皮膚18に固着されるとき、小さい空気通路が皮膚18とドレープ36の間に形成され得る。シーリング材60は、創傷接触層32の皮膚接触面50上に、または、ドレープ36の下部表面44上に配置される。シーリング材60は、ガス及び液体が創傷接触層32またはドレープ36と皮膚18の間に形成されるいかなる空洞も通過しないように、ガス及び液体がドレープ36の末梢端62周辺に出るのを妨げるように、構成される。シーリング材60は、ドレープ36およびシーリング材60が皮膚18に固着されたときに、ガスおよび液体が人間の皮膚18と創傷接触層32(または創傷接触層32が含まれない場合は、ウィッキング要素34)またはドレープ36の間を通過するのを妨げるように、構成される。シーリング材60は、ガスケットと同様に作動して、ヒドロゲル材料、またはドレープ36または創傷接触層32の下及び人間の皮膚18の上の創傷部位16からのガス及び液体の移動を妨げることができる他のいかなる材料からも作られることができる。シーリング材60は、図3および4において、図式的に表されて、複合リングを含むように作られてもよく、ドレープ36およびシーリング材60が皮膚18に固着されたときに、人間の皮膚18と創傷接触層32(または創傷接触層32が含まれない場合は、ウィッキング要素34)またはドレープ36の間で空気および液体が通過しなければならない込入った通路をもたらす方法で配置されてもよい。
【0021】
ドレープ36が創傷部位16周辺の人間の皮膚18に固着されるとき、創傷カバー組立体28はドレープ36によってカバーされる少なくとも一つのスペーサ要素64を含んでもよい。スペーサ要素64は、スペーサ要素24と類似している。スペーサ要素64は、密閉空間42が減圧されたときに、ドレープ36とドレープ36によってカバーされる創傷部位16の間の間隔を維持するように構成される。ドレープ36は可撓性材料から作られてもよいので、密閉空間42が減圧されるにつれて、ドレープ36は皮膚18および創傷部位16の方へ引き寄せられ得る。ポンプ組立体30が空気中の選択されたガスと反応して、密閉空間42からこれらの選択されたガスを除去して圧力を低下させる状況において、創傷部位16に向かってドレープ36がつぶれると、密閉空間42の圧力が周囲に向かって高くなる可能性があり、それは負圧創傷治療には望ましくない。スペーサ要素64は、密閉空間42が減圧されたときに、ドレープ36と創傷部位16の間に適切な間隔を維持するように容量をコントロールすることができる枠組構造または類似の構造要素であってもよい。スペーサ要素64はまた、可撓性のコイルスプリングでもよく、これにより、創傷カバー組立体28が皮膚18に固着されるとき、創傷部位16上の創傷カバー組立体28の柔軟性をより高めることができる。スペーサ要素64は、ドレープ36と創傷部位16の間に十分な間隔を維持する一方で、人体の曲線に沿うように構成される。
【0022】
密閉空間42が減圧されるとき、ドレープ36を創傷部位16から適切に離間させるスペーサ要素として、他の装置が用いられてもよい。また、空気中のガスに適切な空所をもたらすようにウィッキング要素34が構成されてもよく、これにより、減圧が維持され得る。ウィッキング要素34は、例えば、創傷からの滲出液を吸収する一方で、ガスの空所を維持する、ドレープ36と比較して比較的より硬質の発泡体から作られてもよい。ウィッキング要素34はまた、上述の容量をコントロールするために、例えば、隣接するビーズ間などで、膨張してガスの空所を形成する上記の超吸収性ポリマーから作られてもよい。
【0023】
創傷カバー組立体28は、また、創傷ドレープ剥離ライナー70を含んでもよく、それは、既知の包帯で使用される剥離ライナーと同様であってもよい。創傷ドレープ剥離ライナー70は、ドレープ36の下部表面44上に設けられる。創傷ドレープ剥離ライナー70は、ドレープ36の下部表面44に設けられた接着剤72を露出させるために、取外し可能である。皮膚18と創傷部位16上に創傷カバー組立体28を固着する前に、創傷ドレープ剥離ライナー70は、ドレープ36から取り除かれる。
【0024】
創傷カバー組立体28は、ドレープ36の開口40をカバーする通気性液体不透過性膜78を含むこともできる。図3および4に図示される実施例において、通気性液体不透過性膜78は、ドレープ36の下部表面44に固着されるが、通気性液体不透過性膜78はまた、図5に示されるように、ドレープ36の開口40をカバーしているドレープ36の外部表面46に配置されてもよい。図4に示されるように、ポンプ組立体30が創傷カバー組立体28に固着されるとき、通気性液体不透過性膜78は液体(例えば、滲出液)が開口40を通ってウィッキング要素34からポンプ組立体30の方へ移動するのを妨げる。図5を参照すると、通気性液体不透過性膜78がドレープ36の外部表面46に配置されるとき、再密封可能な接着剤を用いてドレープ36に接続されてもよく、これにより、ドレープ36から通気性液体不透過性膜78を除去し、ドレープ36に通気性液体不透過性膜78を再び取付けることができ、ウィッキング要素34の取付けまたは交換を可能にし得る。図5に表される実施例では、剥離層38を取除くことによって通気性液体不透過性膜78が取除かれないような方法で剥離層38がドレープ36に接続されている。例えば、図5では、剥離層38は通気性液体不透過性膜78よりも大きく、(例えば、接着剤、溶着剤等を介した)剥離層38とドレープ36の間の接続は通気性液体不透過性膜78の外縁エッジから離れているため、剥離層38を取除くことによって通気性液体不透過性膜78が必ず取除かれるということはない。
【0025】
剥離層38はドレープ36の開口40(二個以上設けられている場合は複数の開口)をカバーする。図3乃至5においては1つの剥離層38だけが示されているが、複数の剥離層38が設けられてもよい。例えば、図6には、複数の剥離層38が示されていて、各剥離層38はドレープ36の開口40(図6では見えない。)をそれぞれカバーする。剥離層38は、薄い、可撓性フィルムから作られることが可能である。この種の材料の例としては、ポリウレタンまたはポリエチレンフィルムが含まれる。剥離層38は、剥離層38がドレープ36の開口40をカバーするとき、空気および液体が剥離層38を介して通過することを妨げるように構成される。剥離層38は空気および液体不透過の材料から作られてもよく、または剥離層38は空気および液体不透過となるようにヒドロゲルまたは親水コロイドのような物質でコーティングされても、金属化されてもよい。
【0026】
上述したとおり、ドレープ36が皮膚18と接触し創傷部位16をカバーするとき、剥離層38はドレープ36から剥離可能である。剥離層38がドレープ36から取除かれるとき、ドレープ36の開口40は周囲にさらされる。ドレープ36が空気および液体不透過性であるとき、剥離層38を取除くことで創傷カバー組立体28を閉塞性包帯から非閉塞性包帯に変えることができる。ドレープ36から剥離層38を取除いた状態で、ポンプ組立体30を創傷カバー組立体28または皮膚18に固着することができ、創傷部位16に負圧をかけることができる。図6を参照して、剥離層38の1つが取除かれ、(以下により詳細に説明する)機械式ポンプに接続された取付具によってカバーされてもよく、第二(または、例えば、第三)剥離層38が取除かれ、第二(または第三)剥離層38によってカバーされたそれぞれの開口40を周囲にさらしてもよい。これにより、機械式ポンプに接続された非閉塞性の空気を通す包帯がもたらされ、比較的大量の滲出液を作り出すより大きな創傷に役立ち得る。
【0027】
図示された実施例では、剥離層38は、ドレープ36に接続されたドレープ36とは別の層として示されている。剥離層38は、接着剤、溶着剤または他の類似の手段により剥離層38の外周でドレープ36に接続されてもよく、これにより、剥離層38とドレープ36の間の接続が空気および液体不透過性シールとなる。また、剥離層38は、ドレープ36の取外し可能な部分であってもよい。剥離層38を画定するために、刻み目ラインがドレープ36の厚み方向に貫通しないように切られてもよい。
【0028】
ポンプ組立体30は、ポンプ100とポンプ・ドレープ102を全体として含む。ポンプ・ドレープ102は、剥離層38がドレープ36から取除かれたあと、ドレープ36または創傷部位16の周りの皮膚18に固着し、ドレープ36の開口40をカバーするように構成される。図4には、皮膚18に固着されたポンプ・ドレープ102の左側およびドレープ36に固着されたポンプ・ドレープ102の右側が示されている。ポンプ・ドレープ102が皮膚18に接触して、ドレープ36の外周端62を囲むようにポンプ・ドレープ102をより大きく作ってもよい。また、ポンプ・ドレープ102がドレープ36のみに固着されるように、ポンプ・ドレープ102をより小さく作ってもよい。
【0029】
ポンプ・ドレープ102は、下側104および下側104の反対側の外側106を含む。ポンプ・ドレープ102の下側104は、ポンプ組立体30が創傷カバー組立体28に固着されるときに、ドレープ36の外部表面46に接触する側、または、ポンプ・ドレープ102が皮膚18に固着されるときに、皮膚18に接触する側である。ポンプ・ドレープ102の外側106は、例示の実施例では周囲にさらされる。
【0030】
ポンプ組立体30はまた、ポンプ・ガスケット108または接着剤110を含むことができるポンプ・シーリング材を含む。ポンプ・シーリング材108、110は、ポンプ・ドレープ102の下側104に配置されてもよい。例えば、接着剤110がドレープ36とのみ接触し、皮膚18とは接触しないとき、接着剤110はドレープ36の接着剤72よりもより強い、すなわち、強力な接着剤であってもよい。ポンプ・ガスケット108は、例えば、ヒドロゲルのような同一材料から作られてもよく、シーリング材60と同様に作動し得る。例えば、ポンプ・ドレープ102が創傷カバー組立体28より大きい場合、ポンプ・ガスケット108は人間の皮膚18と接触できる。ポンプ・シーリング材108、110は、ポンプ・ドレープ102がドレープ36に固着されるとき、ポンプ・ドレープ102とドレープ36の間に空気が浸入するのを妨げるように、または、ポンプ・ドレープ102が皮膚18に固着されるとき、ポンプ・ドレープ102と皮膚18の間に空気が浸入するのを妨げるように構成される。
【0031】
ポンプ組立体30はまた、ポンプ・シーリング材をカバーするポンプ・ドレープ剥離ライナー112を含み、それは接着剤110またはガスケット108であってもよい。ポンプ・ドレープ剥離ライナー112は、ポンプ組立体30を創傷カバー組立体28または皮膚18に固着する前に、ポンプ・ドレープ102から取除かれる。
【0032】
ポンプ組立体30のポンプ100は、空気中の選択されたガス、亜鉛/空気電池、機械式ポンプ、またはポンプ組立体30が創傷カバー組立体28に固着されるとき開口40を介して密閉空間42を減圧することができる他の小さなポンプ装置と反応するように構成された反応器であってもよい。ポンプ100が空気中の選択されたガスと反応するように構成された反応器である実施例において、反応器は、密閉空間42中の選択されたガスを消費する。ポンプ100がこの種の反応器である実施例において、ポンプ・ドレープ102は、ポンプ100をカバーする。ポンプ組立体30において用いられることが可能である反応器の実施例が米国特許明細書2014/0109890A1に記載されている。米国特許明細書2014/0109890A1では、酸素ベースのヒーターが開示されているが、酸素ベースのヒーターは密閉空間42の中で酸素を消費する反応器として用いられてもよく、それ故、密閉空間42の中に部分的な真空を作り出す。反応器は、還元剤、反応器基質上の結合剤、および電解質溶液を含んでもよく、それは、電解質に浸したパッドに設けられてもよい。例えば、反応器基質上の還元剤は、亜鉛、アルミニウムまたは鉄であってもよい。
【0033】
ポンプ組立体30は、ドレープ36の開口40をカバーする通気性液体不透過性膜78と類似していてもよい通気性液体不透過性膜120を更に含む。ポンプ100が密閉空間42の酸素を消費する反応器である実施例において、ドレープ36にドレープ36の開口40をカバーするポンプ・ドレープ102が固着されるとき、反応器は通気性液体不透過性膜120とポンプ・ドレープ102の間に配置される。また、通気性液体不透過性膜120がポンプ100を包んでもよい。
【0034】
再び図3を参照して、ポンプ組立体30は、取外し可能な密封層130が除去されるまで、反応器が周囲酸素にさらされるのを防ぐ取外し可能な密封層130を含んでもよい。ポンプ100が酸素と反応するように構成された反応器である実施例においては、ポンプ組立体30を創傷カバー組立体28、または皮膚18に固着する前に、ポンプ・ドレープ剥離ライナー112および取外し可能な密封層130の両方が、ポンプ組立体30から除去される。必要に応じて、ポンプ・ドレープ剥離ライナー112は取外し可能な密封層130に取り付けられることが可能であり、これにより、ポンプ・ドレープ102からのポンプ・ドレープ剥離ライナー112を除去することで取外し可能な密封層130が除去され、その結果、反応器が周囲にさらされる。他の替わりの構成では、ポンプ・ドレープ剥離ライナー112は、ポンプ・ドレープ剥離ライナー112だけが除去されるまで、ポンプ100(本実施例において、酸素を消費するように構成される反応器である。)が周囲にさらされないような方法、例えば、取外し可能な密封層130を設けずに、ポンプ・ドレープ102に固着されてもよい。
【0035】
上記したように、ポンプ100は、亜鉛/空気電池でもあり得る。ポンプ100が亜鉛/空気電池であるとき、亜鉛/空気電池は密閉空間42(図3)中の酸素と反応し、密閉空間42中の酸素を除去することができる。その結果、密閉空間42中の圧力が下がる。図7に示される、ポンプ100が亜鉛/空気電池である実施例において、ポンプ・ドレープ102はポンプ100をカバーする。ポンプ100が亜鉛/空気電池である実施例において、常時開スイッチ142を有する回路140(図7において、両方とも図式的に表されている。)を、亜鉛/空気電池の陽極と陰極それぞれに接続してもよい。例えば、オペレータがスイッチ142の近くでポンプ・ドレープ102を押し下げて、スイッチ142を閉じてもよい。亜鉛/空気電池が密閉空間42(図3)の酸素と反応して密閉空間42から酸素が除去され、密閉空間42中の圧力が下がる。図7を続けて参照すると、ポンプ組立体30は、通気性液体不透過性膜120、および取外し可能な密封層130が除去されるまで亜鉛/空気電池が周囲酸素にさらされるのを防ぐ取外し可能な密封層130を含んでもよい。
【0036】
上記の反応器および亜鉛/空気電池の替わりに、ポンプ100は、電気化学ポンプ、真空オンデマンド装置(本明細書ではVODと呼ぶ)、電解槽、減圧固体デバイス、酸素吸収鉄パケット、若しくはジルコニウムチタン、バナジウム鉄、リチウム、リチウム金属、マグネシウム、カルシウム、リチウムバリウムの組み合わせ、亜鉛空気電池、亜鉛空気電池コンポーネント、若しくは創傷床環境にある窒素、二酸化炭素、酸素ガスのような選択されたガスと高度に反応する他の材料のゲッターの中の1つまたはそれらの任意の組合せでもよい。
【0037】
再び図3を参照して、ポンプ組立体30は、ポンプ・ドレープ102によってカバーされる少なくとも一つのスペーサ要素160を更に含むことができる。ポンプ組立体30のスペーサ要素160は、創傷カバー組立体28に設けられているスペーサ要素64と構成および機能の点で類似していてもよい。ドレープ36の下、すなわち、密閉空間42の中が減圧されるとき、ポンプ組立体30のスペーサ要素160はポンプ・ドレープ102とドレープ36との間の間隔を維持するように構成される。
【0038】
ポンプ・ドレープ102は、反応器であり得るポンプ100及びスペーサ要素160をカバーし、ガスが密閉空間42から消費されている間、少なくとも予め定められたチェインバ容積を維持するチェインバ162を画定する。ドレープ36が薄い、可撓性エラストマーフィルムから製造され得るので、密閉空間42からガスが消費されると、ドレープ36は創傷部位16と隣接する皮膚の方へ引かれ、これにより、密閉空間42の容積を減らすことができる。理想気体の法則に従って、密閉空間42の容積が減少すると、密閉空間42の圧力は(周囲圧力に対する)相対的な負圧から周囲圧力に向かって増加する。創傷部位16周辺の周囲圧力に対して相対的な負圧を維持することが望ましいので、密閉空間42の周囲圧力に向かう圧力の増加は望ましくない場合がある。しかしながら、予め定められたチェインバ容積を有するチェインバ162を具えることによって、ドレープ36が創傷部位16の方へ引き寄せられる、またはウィッキング要素34が滲出液で満たされ始める場合であっても、密閉空間42と予め定められたチェインバ容積を含むシステム全体の容積は維持され得る。このように、相対的な負圧は、システム全体の容積において、維持されてもよい。これは、ガスが密閉空間42とチェインバ162の両方から消費される場合、密閉空間42の容積が減少しても、予め定められたチェインバ容積が維持されるためである。
【0039】
密閉空間42は、ウィッキング要素34が占める固体体積部分と、密閉空間42に閉じ込められた空気が占める空気体積部分とで構成される。創傷治療で利用される治療負圧システムの場合、報告された操作圧の範囲は、標準大気圧760mmHgに対して、-60mmHgから-200mmHg(560~700mmHgの絶対圧)である。ポンプ100が酸素を消費するように構成された反応器である場合、システム全体の容積中の空気から酸素分子の全てが反応器により消費されたあと、システム全体の容積中のガス圧は、システム全体の容積が一定のままであったと仮定して21%(または159.6mmHg)まで減少する。従って、乾いた空気で-159.6mmHgの最大ポテンシャルをもたらす理想的なケースの場合(湿度の存在によりこの数値が変化する可能性がある点に注意する。)、密閉空間42の容積、及びウィッキング要素34に侵入し空気を除去する滲出液の体積の変化を考慮しながら、正しい作動圧をもたらすシステムを設計することはきつい作業である。
【0040】
負圧装置26は、負圧システムを創傷カバー組立体28(すなわち、包帯部分)とポンプ組立体30の2つのパーツに分けることによってこの作業を達成する。創傷カバー組立体28(包帯部分)は包帯として機能し、可撓性があり、必要に応じて液体(滲出液)を吸収する。加えて、創傷カバー組立体28は、ポンプ組立体30に接続されている間、空気の作用による連通関係を維持したまま、2つの組立体の間の流体の移動を妨げるように機能する。液体(滲出液)を創傷カバー組立体28だけが吸収することによって、システム上の容積損失、故に圧力損失の効果を最小限に抑えることができる。創傷カバー組立体28を作り上げる材料は、柔らかく順応性があり、ポンプ組立体30はより剛性な成分を含み、ポンプ組立体30の容積損失を減らし、システム全体の容積の圧力が治療範囲にとどまるという可能性を増加させる。前述の観点から、密閉空間42の初期の空気体積部分(この例では、反応器が酸素を消費する前。)の少なくとも6倍は大きい予め定められたチェインバ容積を有することが望ましい。
【0041】
上記のように、ポンプ100は機械式ポンプであってもよい。そのような実施例の1つが図8に模式的に示されている。図8に示される実施例では、ポンプ組立体30は、ポンプ100と電気的に接続され、ポンプ・ドレープ102とも接続された電源150を更に含んでもよい。ポンプ100が機械式ポンプである実施例では、回路152は常時開スイッチ154を具えてもよい。例えば、オペレータはポンプ・ドレープ102を押してスイッチ154を閉じ、小型バッテリであってもよい電源150からポンプ100に電力を供給することができる。ポンプ100が機械式ポンプである実施例では、一方向チェックバルブ156がポンプ・ドレープ102に設けられて、ガスが一方向チェックバルブ156を通って密閉空間42から周囲に移動可能であってもよい。しかしながら、一方向チェックバルブ156を通って密閉空間42の方へ移動することはできない。
【0042】
ポンプ組立体30は、ポンプ・ドレープ102に(剥離層38と同様の)ポンプ剥離層にカバーされた(開口40と同様の)開口を含んでもよい。ポンプ剥離層の除去によってポンプ・ドレープ102の開口が露出し、ポンプ100の交換が可能となる。剥離層38がドレープ36に接続されるのと同じ方法で、ポンプ剥離層は、ポンプ・ドレープ102に接続される。ポンプ剥離層は、剥離層38と同じ材料から作られるであろう。
【0043】
機械式ポンプの他の実施例が図9に示される。本実施例において、ポンプ100は、流体管路170を介してポンプ・ドレープ102に接続され、ポンプ100はポンプ・ドレープ102の外部に配置される。継手172はポンプ・ドレープ102を貫通し、流体管路170によって内側通路を具える継手172がポンプ100と接続される。ポンプ100は、排気ライン176を介して容器174と接続される。
【0044】
図10には、創傷カバー組立体228およびポンプ組立体230を含む負圧装置226の他の実施例が示される。創傷カバー組立体228は、上記の創傷カバー組立体28と類似していてもよく、開口240を含むドレープ236を含んでもよい。ドレープ236は、開口240以外のドレープ236を通る液体および空気の移動を妨げる可撓性材料から作られる。ドレープ236はウィッキング要素34と同様の(見えない)ウィッキング要素をカバーする。創傷カバー組立体228は、構造および機能の点で上記のシーリング材60と同様の(見えない)シーリング材も具える。シーリング材はウィッキング要素を囲み、皮膚に固着されると、ドレープ236と協働して、ドレープ236によってカバーされ、シーリング材によって囲まれた(上記の密閉空間42と同様の)密閉空間を画定する。密閉空間の中の空気は、開口240以外を通って密閉空間から出ることはできない。
【0045】
ポンプ組立体230は、例示の実施例では、空気中のガスと反応してガスを消費するように構成された反応器であるポンプ300を含む。反応器は、開口240を通って創傷カバー組立体228により画定される密閉空間と流体連通関係にあるチェインバ302の中に配置される。図10に示された実施例では、それは、密閉空間と流体連通関係にあり、チェインバ302を画定する剛性容器304である。反応器によって消費されるガスが密閉空間から消費される間、上記のチェインバ162のようなチェインバ302は予め定められたチェインバ容積を維持するように構成される。従って、密閉空間のガスが消費されるにつれて密閉空間の容積が減少する場合、予め定められたチェインバ容積は維持される。
【0046】
図10において、コネクタ310は剛性容器304を創傷カバー組立体228と機械的に接続して、チェインバ302を空気作用により密閉空間に接続する。(図10では見えないが、上記の通気性液体不透過性膜120と同様の)通気性液体不透過性要素は、チェインバ302と密閉空間の間に配置されて、密閉空間に引き込まれる液体(滲出液)がチェインバ302に入るのを妨げるように構成される。このように、流体(滲出液)を創傷カバー組立体228だけで吸収することによって、システム全体の容積損失、故に圧力損失の効果を最小限に抑えることができる。
【0047】
図10の剛性容器304は、起動後に反応器がチェインバ302と密閉空間の中の空気から選択されたガスを消費し始めるように、反応器を起動させるために剛性容器304を圧迫または押し下げることができるフィンガー凹部312を含んでもよい。例えば、フィンガー凹部312で剛性容器304を圧迫することによって、反応器が周囲にさらされるのを防ぐ密封層に孔をあけ、反応器を空気にさらすことができる。反応器を起動させることができる他の方法をより詳細に後述する。
【0048】
図11には、空気中のガスと反応してガスを消費するように構成され反応器であるポンプ340を含むポンプ組立体330が示される。反応器は、剛性容器344により画定されるチェインバ342の中に配置される。コネクタ310と同様のコネクタ346は、剛性容器344を、図10の創傷カバー組立体228のような創傷カバー組立体と機械的に接続することができ、チェインバ342を、創傷カバー組立体により画定された密閉空間と空気作用により接続することができる。上記のチェインバ162のようなチェインバ342は、ポンプ組立体330が接続される創傷カバー組立体によって画定される密閉空間から反応器によって消費されるガスが消費される間、予め定められたチェインバ容積を維持するように構成される。剛性容器344は、ベース352に嵌合する蓋350を含んでもよい。反応器は、ベース352に対して蓋350を回転させることにより起動させることができる。
【0049】
図12には、空気中のガスと反応しガスを消費するように構成された反応器であるポンプ380を含むポンプ組立体370が示される。反応器は剛性容器384によって画定されるチェインバ382の中に配置される。コネクタ310と同様のコネクタは、剛性容器384を、図10の創傷カバー組立体228のような創傷カバー組立体と機械的に接続することができ、チェインバ382を、創傷カバー組立体により画定された密閉空間と空気作用により接続することができる。上記のチェインバ162のようなチェインバ382は、ポンプ組立体370が接続される創傷カバー組立体によって画定される密閉空間から反応器によって消費されるガスが消費される間、予め定められたチェインバ容積を維持するように構成される。剛性容器384は、ベース392と枢動可能に接続された蓋390を含んでもよい。反応器を起動させるために、ベース392に対して蓋390を枢動させて反応器を露出させる。取外し可能な密封層が除去されるまで反応器が周囲にさらされているのを防ぐ取外し可能な密封層によってカバーされる場合、蓋390がベース392から離れる方向に枢動するとき、取外し可能な密封層を除去することができる。反応器の起動後、蓋390は閉じられ、ベース392を密閉し、チェインバ382を画定する。
【0050】
図13には、空気中のガスと反応してガスを消費するように構成された反応器である(見えない)ポンプを含むポンプ組立体430が示される。反応器は、剛性容器434により画定されたチェインバ432の中に配置される。コネクタ310と同様のコネクタは、剛性容器434を、図10の創傷カバー組立体228のような創傷カバー組立体と機械的に接続することができ、チェインバ432を、創傷カバー組立体により画定された密閉空間と空気作用により接続することができる。上記のチェインバ162のようなチェインバ432は、ポンプ組立体430が接続される創傷カバー組立体によって画定される密閉空間から反応器により消費されるガスが消費される間、予め定められたチェインバ容積を維持するように構成される。剛性容器434に対してアクチュエータ436を動かして、反応器を起動させることができる。例えば、反応器を起動させるために、剛性容器434に対してアクチュエータ436を摺動させる。アクチュエータ436は、密封層に孔があくまで、反応器が周囲にさらされるのを防ぐ密封層を切断するための切断要素と接続され得る。
【0051】
創傷部位16を治療する方法を、図3に示される創傷カバー組立体28と図3、4、および図7乃至9に示されるポンプ組立体30を参照して後述する。しかしながら、創傷部位16を治療する方法は、図3に示された創傷カバー組立体28とは構造的に異なる創傷カバー組立体、または示されたポンプ組立体30とは構造的に異なるポンプ組立体を用いてなされてもよい。
【0052】
創傷部位16を治療する方法は、創傷部位16を囲む皮膚18上に創傷カバー組立体28のドレープ36の下部表面44を配置することを含む。ドレープ36は開口40を含む。方法は、ドレープ36から剥離層38を除去して開口40を周囲にさらすことを更に含んでもよい。方法は、また、ポンプ組立体30をドレープ36または皮膚18に固着してドレープ36の開口40をカバーすることを含む。ポンプ組立体が、大気中の選択されたガスと反応するように構成された反応器、または亜鉛/空気電池と、取外し可能な密封層が除去されるまで、反応器、または亜鉛/空気電池が周囲にさらされるのを防ぐ取外し可能な密封層130を含む場合、方法は取外し可能な密封層130を除去すること、そして、ポンプ組立体30をドレープ36または皮膚18に固着する前にポンプ100を周囲にさらすことを更に含んでもよい。ポンプ組立体がポンプ100として亜鉛/空気電池を含む場合、方法は亜鉛/空気電池を含む配電回路140(図7)を閉じることを含んでもよい。また、ポンプ組立体がポンプ100として機械式ポンプを含む実施例では、方法は機械式ポンプと電源150を含む配電回路152を閉じることを含んでもよい。
【0053】
創傷部位16周辺の容積をコントロールすることは、負圧を維持するために重要であり得る。ドレープ36とポンプ・ドレープ102の両方は、ガスが創傷部位の周辺から除去されるにつれて創傷部位16の方につぶれる薄膜から作られてもよい。ドレープ36、102の下が減圧されたとき、スペーサ要素64、160はドレープ36、102と創傷部位16または皮膚18の間に十分な間隔を維持することができる。
【0054】
また、場合によっては、剥離層38は設けられなくてもよい。剥離層38が設けられない場合、負圧装置26は、例えば、創傷カバー組立体28とポンプ組立体30を含むような2部品設計を依然として有してもよい。剥離層38が設けられない場合、ドレープ36は、ポンプ・ドレープ102、およびポンプ組立体30の残りによってカバーされる開口40(または複数の開口)を含んでもよい。剥離層38が設けられない場合、ドレープ36は、また、ドレープ36を介してガスが通り抜けられる材料から作られてもよい。
【0055】
また、負圧装置26は、剥離層38のない1部品設計を有してもよい。このような例では、創傷接触層32またはウィッキング要素34を含んでもよい創傷接触要素、(例えば、ポンプ・ドレープ102と類似の外側ドレープのような)ドレープ、ポンプ100、及び(例えば、スペーサ要素64、160と同様の)スペーサ要素が1つのユニットとして皮膚18に固着される1つの組立体として設けられてもよい。この例では、(図4のドレープ36と同様の)内側ドレープは設けられなくてもよい。この替わりの構成において、ドレープは、ドレープを通って空気および液体の移動ができないように構成される。この替わりの構成において、上記のシーリング材60と同様のシーリング材は、創傷接触要素の皮膚接触側上に、またはドレープの下部表面上に配置されてもよい。この替わりの構成において、ポンプは、ドレープによってカバーされて、上記のポンプのいずれであってもよい。この替わりの構成において、負圧装置26は、通気性液体不透過性膜120と同様の通気性液体不透過性膜を含んでもよい。上記のようにポンプが反応器である場合、創傷部位16を囲む皮膚18にドレープが固着されるとき、ポンプは通気性液体不透過性膜とドレープの間に配置される。ポンプが反応器であるこの替わりの構成では、負圧装置は、取外し可能な密封層が除去されるまで反応器が周囲にさらされるのを防ぐ取外し可能な密封層を含むこともできる。この替わりの構成において、負圧装置26は、ドレープの下部表面に設けられた剥離ライナーを含んでもよく、剥離ライナーは取外し可能であり、ドレープの下部表面に設けられた接着剤を露出させる。
【0056】
負圧装置の実施例および創傷部位を治療する方法が、上記にて詳細に記された。上記の詳細な説明を読み理解すれば、修正および変更が思いつくであろう。しかしながら、本発明は上記の実施例に限定されるものではない。その替わりに、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって全体として定められる。種々の上記の他の特徴および機能、またはそれらの代替や変形は、多くの他の異なるシステムやアプリケーションと望ましく組み合わされてもよい。また、以下の請求項には、当業者によって、各種の現在思いがけないか予期しない変形例、修正、変種または改善が、その後になされることができるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13