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特許7053661弾性電極を含むエレクトロウェッティング眼科デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】弾性電極を含むエレクトロウェッティング眼科デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20220405BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20220405BHJP
   A61L 27/06 20060101ALI20220405BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61F2/16
A61L27/04
A61L27/06
A61L27/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019555494
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2018030247
(87)【国際公開番号】W WO2018204272
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】62/502,039
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/944,298
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】オッツ,ダニエル,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】カイパー,シュタイン
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519479(JP,A)
【文献】特表2010-517081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0026596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61L 27/04
A61L 27/06
A61L 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科デバイスであって、
支持構造体と、
前記支持構造体の両側に配設された第1および第2の光学窓と、
前記支持構造体と前記第1および第2の光学窓とによって形成されたキャビティ内に配設された2つの非混和性流体と、
前記キャビティ内の前記支持構造体の内面上に配設された弾性電極であって、前記弾性電極は、0.25%以上の降伏ひずみを有する弾性金属合金から形成され、前記弾性金属合金は、形状記憶合金、ばね鋼、又はTi6Al4Vであり、前記弾性電極は、前記弾性金属合金の箔から形成されている、弾性電極と、を備え、
前記眼科デバイスは、展開または巻き戻し時に非弾性変形を経験することなく、折り畳まれ又は巻き込まれるように構成されている、
眼科デバイス。
【請求項2】
前記形状記憶合金は、ニチノール、銅-亜鉛-アルミニウム、銅-アルミニウム、銅-
アルミニウム-ニッケル、および銅-アルミニウム-ベリリウムのうちの1つから選択さ
れる、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項3】
前記弾性金属合金は、バルブ金属被膜されている、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項4】
前記バルブ金属は、チタンである、請求項3に記載の眼科デバイス。
【請求項5】
記弾性電極は、前記弾性電極の一縁部から延在するフランジを含む、請求項1に記載
の眼科デバイス。
【請求項6】
前記フランジは、タブを形成する、請求項5に記載の眼科デバイス。
【請求項7】
前記弾性電極は、円錐形状の表面を有する、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項8】
前記弾性電極は、前記円錐形状の表面とは反対の後面を有する三角形状の断面を有し、
前記後面は、フランジ状の上面から下面に延在し、
前記後面における前記弾性電極の厚さは、前記円錐形状の表面に沿った前記弾性電極よりも厚い、請求項7に記載の眼科デバイス。
【請求項9】
前記弾性電極上に配設された第1および第2の誘電体層をさらに備え、
前記第1の誘電体層は、Parylene-C、Parylene-N、Paryle
ne-D、Parylene-HT、およびParylene-AF4のうちの1つから
選択される材料から形成され、
前記第2の誘電体層は、フルオロポリマーから形成される、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項10】
前記内面は、円錐台形状を有し、前記円錐台形状の最も内側の直径で切り取られており

前記支持構造体は、上側および底側にそれぞれ形成された第1および第2の凹部をさらに含み、前記第1および第2の凹部は、開口を取り囲んでおり、
前記第1の凹部は、前記上側の上面に垂直な第1の表面と、前記第1の表面に垂直な、かつ前記内面に向かって延在する第2の表面と、によって画定され、
前記第2の凹部は、前記底側の底面に垂直な第3の表面と、前記第3の表面に垂直な、かつ前記内面に向かって延在する第4の表面と、によって画定され、
前記第1の光学窓の一部分は、前記第1の凹部内に配設され、前記第2の光学窓の一部分は、前記第2の凹部内に配設されている、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項11】
前記弾性電極に電気的に連結された制御電子機器をさらに含み、少なくとも前記弾性電
極と前記2つの非混和性流体とは、前記制御電子機器によって制御される動的光学部品を
形成し、
前記2つの非混和性流体間の界面は、前記動的光学部品のレンズを形成し、
前記2つの非混和性流体は、油と、電解液と、を含む、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項12】
眼科デバイスであって、
眼内レンズの支持構造体であって、前記支持構造体は、上側および底側、ならびに開口を形成する内面を有し、前記内面は、前記支持構造体の前記上側および底側に対して斜角をなし、前記支持構造体は、生体適合性材料から形成されている、支持構造体と、
前記眼内レンズ内にエレクトロウェッティングを電気的に誘発するために前記内面上に配設された弾性電極であって、前記弾性電極は、0.25%以上の降伏ひずみを有する弾性金属合金から形成され、前記弾性金属合金は、形状記憶合金、ばね鋼、又はTi6Al4Vであり、前記弾性電極は、前記弾性金属合金の箔から形成されている、弾性電極と、を備え、
前記眼科デバイスは、展開または巻き戻し時に非弾性変形を経験することなく、折り畳まれ又は巻き込まれるように構成されている、
眼科デバイス。
【請求項13】
眼科デバイスであって、
第1および第2の光学窓であって、それぞれ、前記支持構造体の前記上側および底側上に配設され、かつ前記開口を覆って延在している、第1および第2の光学窓と、
前記弾性電極上に配設された誘電体層と、
前記誘電体層上に配設されたポリマー層と、
前記支持構造体の前記開口内に配設され、かつ前記第1および第2の光学窓によって包含されている2つの非混和性流体と、
前記弾性電極および前記第1の光学窓に電気的に連結された制御電子機器であって、前記制御電子機器は、前記2つの非混和性流体間の界面に形状の変化を引き起こすように、前記ポリマー層の湿潤特性を改変することによって前記エレクトロウェッティングを誘発するために、前記弾性電極および前記第1の光学窓に電圧を提供する、制御電子機器と、をさらに備える、請求項12に記載の眼科デバイス。
【請求項14】
前記誘電体層は、Parylene-C、Parylene-N、Parylene-
D、Parylene-HT、およびParylene-AF4のうちの1つから形成さ
れ、
前記ポリマー層は、フルオロポリマーである、請求項13に記載の眼科デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月5日に出願された米国仮出願第62/502,039号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、眼科デバイスに関し、具体的には、排他的ではないが、弾性電極を含むエレクトロウェッティング眼科デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
老眼治療には、交換レンズの移植が含まれる場合がある。このようなレンズは、眼内レンズとも称され得、静的もしくは動的な調節、またはそれらの組み合わせを提供し得る。機械的または電気的に制御された調節など、動的な調節を提供するために、様々な技術が利用可能であり得る。調節は、複数レベルの屈折力を提供する動的光学構成要素の作動によって提供され得る。屈折力の変化は、眼内レンズを介してユーザに異なる焦点距離を提供し得る。しかしながら、作動の量は、例えば、機械的または電気的な、使用される技術に依存し得る。
【0004】
電気的作動が使用される場合、電子機器および導体は、可視性、移植適合性、および移植手順に関連するある種の要件を満たす必要があり得る。例えば、電子機器および/または導体の一部またはすべてが弾性であり、眼の中または眼の上の使用に適した材料からさらに形成されることが望ましい場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態は、以下の図を参照して説明され、特に指定しない限り、様々な視図を通して、同様の参照番号は、同様の部分を指す。適切な場合には、図面が乱雑にならないように、要素のすべての事例は、必ずしも標識されているわけではない。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、説明されている原理を例証することに重点が置かれている。
【0006】
図1】本開示の実施形態による、弾性電極を含む眼内レンズの図解である。
図2】本開示の実施形態による、弾性電極を含む眼内レンズの断面図である。
図3】本開示の実施形態による、電極の断面図である。
図4】本開示の実施形態による、電極の斜視図である。
図5】本開示の実施形態による、電極の断面図である。
図6】本開示の実施形態による、弾性電極を含む眼科デバイスの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、弾性電極を有する眼内レンズのための装置および方法の実施形態が説明されている。以下の説明では、実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者は、本明細書に記載された技術が、具体的な詳細のうちの1つ以上伴わずに、または他の方法、構成要素、材料などで実施することができることを認識するであろう。他の例では、ある種の態様を不明瞭にすることを避けるために、公知の構造、材料、または動作は、詳細に示されていないか説明されていない。
【0008】
本明細書を通じて「一実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このため、本明細書全体の様々な場所における「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様態で組み合わされてもよい。
【0009】
眼内レンズ(IOL)は、例えば、ユーザのレンズがもはや所望されるどおりに焦点を変更することができない場合の調節を支援するために、ユーザの眼に移植され得る。IOLは、静的屈折力を有し得、または、ユーザが自然な眼と同様に焦点を変え得るように、動的に調整する、例えば、IOLの屈折力を改変する、能力を有し得る。しかしながら、動的な調節は、例えば、内部レンズの形状を変更することができるIOLを必要とする場合がある。
【0010】
関心対象の1つの技術は、動的な調節を提供するためのエレクトロウェッティングである。エレクトロウェッティングは、バイアスが印加されると、電極の表面エネルギーを疎水性から親水性に、およびその逆に、変化させることにより動作し、例えば、異なる屈折率の2つの非混和性液体の間に界面を引き起こして形状を変化させ、それによりレンズ効果を提供し得る。電極に印加される電圧は、2つの非混和性液体のうちの1つを引き付け、界面の形状に変化を引き起こし得る。電極の表面エネルギーは、例えば、電極上に配設された誘電体および/またはポリマー層によってさらに影響され、または確立され得る。
【0011】
加えて、IOLは眼に移植されるため、眼内の小さな切開が望ましい場合がある。しかし、IOLは元のレンズと同じサイズであり得るので、例えば、大きな切開が必要になる場合がある。しかしながら、IOLを円筒形に巻き上げる、または折り畳むことができる場合は、より小さな切開が可能であり得る。概して、IOLを形成する材料のほとんどは、巻き込む、または折り畳むことに適しているが、従来の導体は、巻き込み/曲げ事象の応力により信頼性の問題が発生する場合がある。例えば、従来の導体は、巻き込みから誘発された応力により基板から剥離、および/または、亀裂、および/または座屈する可能性がある。それゆえに、導体が柔軟で変形可能、例えば弾性、であることがさらに望ましい場合があり、導体、例えば電極、が非弾性変形を経験することなく巻き戻し/展開時に所望の形状に戻ることがさらに望ましい場合がある。
【0012】
本明細書の議論はIOLを中心としているが、そのような議論は限定することを意図するものではなく、本開示の態様は眼球装着型眼科デバイスにも等しく適用可能であることに留意されたい。概して、本開示の特徴は、例えば、非弾性電極を損傷する可能性のある曲げおよび/または巻き込みを経験し得るデバイスのための弾性電極に向けられている。
【0013】
図1は、本開示の実施形態による、弾性電極を含む眼内レンズ100の図示である。IOL100の例示的な実施形態は、支持構造体102、電極104、接点106、制御電子機器108、および光学窓116を含む。概して、IOL100は、(光学窓116から支持構造体102の反対側に配設された)第2の光学窓、および図1に示されていない動的光学部品などの他の構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、IOL100は、エレクトロウェッティングの原理に基づいて動的調節をユーザに提供する。例えば、IOL100は、印加電圧に応答して2つの非混和性流体間の界面の形状の変化を誘発することにより動的調節を提供し得る、油および電解液などの2つの非混和性流体を含み得る。液体界面の形状の変化は、レンズ挙動を提供し得る。IOL100の図示された実施形態では、電極104は、電圧を印加してレンズ挙動を誘発するための導体を提供する。
【0014】
支持構造体102は、IOL100の様々な特徴に対して機械的支持を提供し得る。例えば、支持構造体102は、電極104、接点106、制御電子機器108、光学窓116、および本明細書で説明される様々な他の構成要素のための基板であり得る。概して、支持構造体102は、眼への移植に適した生体適合性材料から形成され得る。材料の例には、シリコーン、ゾルゲル、AcrySof(登録商標)が含まれ得る。生体適合性ヒドロゲル、疎水性アクリル、フッ素化ポリメタクリレートおよび/または同様のものなどの他の生体適合性材料も使用され得る。支持構造体102は、他のIOL100構成要素のためのプラットフォームを提供するIOL100の主要な構造構成要素であり得る。支持構造体102は、小さな切開、例えば、ざっと長さ約2mmの切開を通して眼への挿入を適応させるために、より小さな形状に操作し得るように、巻き上げおよび/または折り畳むことができる柔軟性があり得る。展開後に元の形状に戻るように、弾性が高いことが好ましい。
【0015】
いくつかの実施形態では、支持構造体102は、制御電子機器108などの様々な電子機器を実装するための基板でもある。制御電子機器108は、少なくとも電極104に電圧を提供するように連結され得る。制御電子機器108は、支持構造体102の表面に実装されているように描写されているが、いくつかの実施形態では、制御電子機器108は支持構造体102に繋がれ、接点106に連結されている。そのような実施形態では、制御電子機器110は、生体適合性材料から形成され、IOL100とは異なる眼の領域に移植された基板などの別個の支持構造体に実装されてもよい。IOL100の図示された実施形態では、支持構造体102は、それを通って形成された開口部110、例えば、開口、を有する環形、例えばワッシャ形状、である。開口部110は、IOL100に対して光路を提供し得る。いくつかの実施形態では、光学窓116は、第2の光学窓(図1には図示せず)と共に、開口部110を覆って、支持構造体102の上面および底面の両方の上に載置される(例として図2を参照)。光学窓は、非混和性流体に対して境界を提供し、それらを開口部110内に保持し得る。
【0016】
開口部110は、支持構造体102の内面、例えば、側壁、によって形成され得る。IOL100の図示される実施形態では、側壁は、その上に配設された電極104を含む。側壁は、開口部110を画定し得る一方で、電極104は、その中に配設された非混和性流体に露出され得る。側壁は、支持構造体102の上面および/または底面に対して非直交角、例えば斜角であってもよい。例えば、側壁は、支持構造体102の上面または底面のうちの少なくとも1つに対して45°の角度であってもよい。概して、IOL100の性能態様は、側壁が支持構造体102の上面または底面に関してあり得る斜角を決定し得、45°以外の他の角度は、本開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、側壁の形状は円錐台を形成する。
【0017】
電極104は、支持構造体102の側壁上に配設され得る。いくつかの実施形態では、電極104は、弾性であり、巻き込みおよび巻き戻し、または折り畳み/展開時に所望の形状に戻ることが望ましいと言ってよい。このような品質を得るために、電極104は、巻き戻し、展開などの際に電気的および/または機械的特性に悪影響を与えることなく変形、巻き上げされ得る、または高度の柔軟性を有する材料から形成され得る。概して、材料は、非弾性変形および/またはねじれや亀裂の形成をもたらすことなく、大量の変形、例えば、巻き込み/曲げに耐えることが望ましいと言える。このような特性を得るには、材料は、高い降伏ひずみを有し、最小降伏ひずみは0.25%~5%またはそれより大きい範囲でなければならない。例示的な材料には、ばね鋼または1つ以上の形状記憶合金が含まれ得る。ばね鋼は、例えば、301ばね焼き戻しステンレス鋼であってもよく、形状記憶合金は、ニッケルチタン(ニチノール)であってもよいが、他の形状記憶合金も実施され得る。いくつかの実施形態では、電極104は、所望の弾性または超弾性金属合金から事前に形成され、IOL100の形成中に支持構造体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、電極104は、所望の金属合金の箔から打ち抜かれてもよく、所望の合金の原料から機械加工されてもよい。いくつかの実施形態では、電極104は、支持構造体102の成形中に支持構造102に組み込まれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、電極104は、1つ以上の誘電体内にカプセル化されている。例えば、誘電体層が、電気分解を防ぎ、耐久性、他の構成要素からの保護、および機械的支持を提供するために、少なくとも電極104を覆って形成されてもよい。誘電体層は、ポリマーから形成されてもよく、誘電体が共形コーティングを提供することが望ましい場合がある。例示的なポリマーは、Parylene-C(登録商標)、Parylene-N、Parylene-D、Parylene-HT、およびParylene-AF4であり得る。いくつかの実施形態では、誘電体層は、例えばフルオロポリマーなどの表面エネルギー変化層によってカプセル化される。
【0019】
接点106は、電極104の一部であってもよく、上面または底面など、支持構造体102の表面上に配設されてもよい。IOL100の図示された実施形態では、接点106は上面に示されている。接点106は、例えば、電極104に電圧を提供するための接点を提供し得る。しかしながら、接点106は、電極104の一部である必要はなく、別個の構成要素であってもよい。
【0020】
概して、電極104は、制御電子機器108によってなど、IOL100にエレクトロウェッティングを誘発する電圧で通電され得る。電極104上の電圧は、電極104および/または電極104上に配設された1つ以上の誘電体層の表面エネルギーに変化を引き起こし得る。表面エネルギーの変化は、表面を親水性から疎水性に、またはその逆に変化させ得る。表面エネルギーの変化は、開口内の1つ以上の液体の形状を変化させ得、IOL100の屈折力に影響を与え得る。
【0021】
図2は、本開示の実施形態による、弾性電極を含む眼内レンズ200の断面図である。IOL200は、概してIOL100と同様であってもよい。IOL200の図示された例は、支持構造体202と、電極204と、第1および第2の光学窓214および216と、2つ以上の非混和性流体212と、を含む。IOL200は、エレクトロウェッティングの原理により誘発される動的調節をユーザに提供し得る。
【0022】
支持構造体202は、環形であり、貫通して形成された開口210を有し得る。支持構造体202の側壁218は、支持構造体202の他の内部切子面と共に、少なくとも部分的に開口210を形成し得る。支持構造体202は、電極204、電極204の1つ以上の接点パッド(図示せず)、および光学窓214、216に対して構造的支持を提供し得る。加えて、支持構造体202は、少なくとも電極204に電荷を提供するための電子機器および/または電源用の基板を提供して、IOL200のエレクトロウェッティングベースの動的調節を誘発し得る。
【0023】
支持構造体202は、開口210を取り囲む上面および底面220、222の両方の内縁にそれぞれ形成された凹部をさらに有し得る。凹部は、光学窓214、216を支持構造体202に実装して密封するための表面を提供し得る。凹部は、底面222に形成された表面224および226によって画定されて得、それは、上面220に反映され得る。いくつかの実施形態では、上面220に形成された凹部と底面222に形成された凹部とは異なっていてもよく、支持構造体202の異なる表面積を提供してもよい。加えて、支持構造体202の凹んだ上面および底面から延在する側壁218は、開口210の最小直径を画定する最も内側の点で切り取られてもよい。当然のことながら、支持構造体202は、表面224および226を伴わずに形成されてもよく、代わりに、光学窓214および216は、それぞれ上面および底面220、222上に配設されてもよい。
【0024】
支持構造体202は、シリコーン、ゾルゲル、ポリマー、および同様のものなどの1つ以上の生体適合性材料から形成され得る。例えば、支持構造体202は、テキサス州フォートワースのAlconによって製造されたAcrySofから形成されてもよい。生体適合性材料は、眼への移植に適し得、IOL200がユーザの眼に移植されるのを可能にする。加えて、支持構造体202は、移植後のユーザの視界に影響を与えないように透明であってもよい。
【0025】
第1および第2の光学窓214、216は、支持構造体202の上側および底側に実装され得る。第1および第2の光学窓214、216は、透明または部分的に透明なポリマーまたは薄いガラスから形成され得る。例示的なポリマーには、ポリジメチルシロキサン、疎水性アクリル(例えば、AcrySof)、シリコーン、アクリル、エポキシ、ウレタン、それらの組み合わせなどが含まれる。本明細書では、支持構造体202の反対側を議論するために上部および底部が使用されているが、上部および底部の指定は、IOL200に何らかの方向性を示すものではなく、図2に関して単に参照として使用されている。光学窓214、216は透明であり得、開口210を覆うように配設され得る。光学窓214、216は、屈折力を有しても有さなくてもよい。いくつかの実施形態では、光学窓の一方または両方は、IOL200に静的屈折力を提供し、これは、IOL200のエレクトロウェッティングベースの動的調節によって影響を受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、光学窓214、216は、いかなる屈折力も持たない。いずれの実施形態でも、光学窓214、216は、支持構造体202に連結されて、キャビティ内に2つの非混和性流体212を保持し得る。キャビティは、電極204がキャビティに露出された状態で、支持構造体202および光学窓214、216によって形成され得る。
【0026】
加えて、光学窓のうちの一方は、導電性であってもよい。例えば、内面218が面する光学窓214は導電性である。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導体が、光学窓214上に堆積されてもよい。光学窓214を導電性にすることにより、電極204と光学窓214との間に電位差が形成されることを可能にし、これを用いてエレクトロウェッティング誘発調節を適用し得る。
【0027】
2つの非混和性流体212は、キャビティ内に配設されてもよく、それらの非混和性のために、2つの間に界面228が形成されてもよい。界面は、IOL200の動的光学部品を形成し得る。例えば、電極204と光学窓214との間の電位差は、電極204での界面228を電極204の面を上下に移動させ得る。界面228の動きは、界面の形状を変化させ得、これにより、IOL200の屈折力を変化させ得る。2つの非混和性流体212は、異なる屈折率を有し得、これはレンズ機能を提供する。2つの非混和性流体212の例は、油および生理食塩水であってもよい。
【0028】
電極204は、弾性、超弾性、または擬弾性金属合金から形成されてもよい。金属合金は、0.25%の最小降伏ひずみを有することが望ましい場合があるが、いくつかの実施形態では0.5%が好ましく、さらに他の実施形態では5%以上が好ましい。いくつかの実施形態では、電極204は、0.25%の降伏ひずみを有するばね鋼、または形状記憶合金から形成される。例えば、形状記憶合金は、5%以上の降伏ひずみを有する様々な組成のニチノール(ニッケル-チタン合金)、銅-亜鉛-アルミニウム、銅-アルミニウム、銅-アルミニウム-ニッケル、または銅-アルミニウム-ベリリウムであってもよい。ニチノールを含む実施形態では、電極204の表面は、バルブ金属層で仕上げられ、例えば、コーティングされてもよい。加えて、いくつかの実施形態では、バルブ金属被覆電極204は、さらに陽極酸化されてもよい。バルブ金属の例はチタンであってもよいが、ジルコニウム、ハフニウム、およびタンタル(例えば、IVBおよびVB元素)などの他のバルブ金属もまた本開示によって企図されている。他の実施形態では、高い弾性を有する医療グレードのチタンなどの生体適合性の弾性金属合金から電極204を形成することが望ましい場合がある。例えば、医療グレードのチタンはTi6Al4Vであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、電極204は、事前に形成され、支持構造体202の形成中または形成後に側壁218上に配設される。事前に形成された電極204は、材料に応じて5~100ミクロンの厚さを有し得る。電極204は、凹部を形成する表面226の少なくとも一部分に配設されたフランジを有する一縁部から延在するフランジを加えて含み得る。電極204の周りに完全な円を形成するか、単にタブを形成するフランジは、支持構造体202の上側または底側のいずれかの表面226上に配設され得る。
【0030】
加えて、IOL200は、展開/巻き戻し時に非弾性変形を経験することなく、ユーザの眼に挿入するために折り畳まれるか、または巻き込まれ得る。曲げまたは巻き込み半径もまた、電極204の所望の厚さに影響を及ぼし得る。電極204は、巻き込みまたは曲げ後に塑性変形せず、いかなるねじれまたは亀裂もその上に/その中に形成されることなく所望の形状に戻ることが望ましく、これは、電極204を形成するために使用される金属合金の降伏ひずみに依存し得る。ねじれや亀裂は、エレクトロウェッティング作用に影響を与える可能性があり、レンズ効果に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
いくつかの例では、電極204をカプセル化する2つ以上のポリマーベースの共形層がある場合がある。2つのポリマーベースの誘電体層を有する実施形態では、電極204と接触する誘電体層は、耐久性、保護および機械的支持を提供し得、一方で、第2の誘電体層は、異なる表面エネルギーを有する外面を提供し得る。例示的な誘電体には、パリレン、シリコーン、およびフルオロポリマーが含まれ得る。
【0032】
図2に示すように、支持構造体202の側壁218は、支持構造体202の上面および底面220、222に対してそれぞれ斜角をなしている。いくつかの実施形態では、内面218は、円錐台のような形状である。いくつかの実施形態では、内面218は、支持構造体202の上面および底面に対して45°である。しかしながら、支持構造体202の上面および/または底面に対する内面218の角度は45°以外の角度であってもよく、その角度は、IOL200の所望の動作パラメータに基づき得る。
【0033】
動作において、電極204と光学窓214との間の電位差は、制御回路108などの制御回路によって確立され得る。電位差は、電極204上に電荷が蓄積するのを引き起こし得、それは、電極204または任意のカプセル化誘電体層の表面エネルギーを変化させ得る。表面エネルギーの変化は、応答して、キャビティ内の流体のうちの1つに形状を変化させ得る。例えば、極性流体は、電極204に多かれ少なかれ引き付けられ、それは、界面228に形状を変化させ得る。境界面228の形状の変化は、レンズ効果を引き起こし得、それは、IOL200の屈折力を変化させ得る。
【0034】
図3は、本開示の一実施形態による、電極304の断面図である。電極304は、電極104および/または204の一例であり得る。電極304の図示される実施形態は、面330、フランジ332、および下面334を含む。断面図は、電極304の一部分のみを示しているが、電極は、少なくとも面330に関して、概して完全な円を完成させ得る。いくつかの実施形態では、フランジ332は、面330の周りの完全な円または部分的な円であり得る。
【0035】
面330は、エレクトロウェッティング電極の活性面であり得、所望の角度で形成され得る。例えば、面330は、フランジ332に対して斜角であってもよく、円錐形または円錐台の形状であってもよい。概して、面330は、内面218など、IOL支持構造体の内面に適合し得る。フランジ332は、面330の縁部から延在してもよく、駆動回路および/または電源への電気接続のための領域を形成し得る。いくつかの実施形態では、フランジ332は、駆動回路および電源のための機械的支持をさらに提供し得る。下面334は、支持構造体102および/または202などの支持構造体と密着していてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、面330は、その上に配設された1つ以上の誘電体層を有する。例えば、パリレンベースの層およびフルオロポリマーベースの層は、この順序で、面330上に堆積され得る。加えて、面330が鏡面仕上げのような滑らかな仕上げを有することが望ましい場合がある。表面330上の粗い斑点が界面228などの2つの非混和性液体の界面をピン留めする可能性があるため、滑らかな仕上げを有することにより、IOLによるより良好なエレクトロウェッティング作用が可能になり得る。ピン留めされた界面は、エレクトロウェッティングレンズ作用が所望されるとおりに機能することを妨げる場合がある。
【0037】
いくつかの実施形態では、下面334は、望ましくは、粗いか、表面に垂直に延在するアンカーまたは結節を含み得る。粗さ/結節/アンカーは、電極304の、下にある支持構造体への接着を促進し得、それは、柔らかい弾性ポリマーから形成され得る。
【0038】
電極304は、様々な様態で形成され得る。例えば、電極304は、例えば、ばね鋼またはニチノールの箔から打ち抜かれてもよい。代替的に、電極304は、犠牲形状基板上に所望の金属合金のスパッタリングを介して形成されてもよく、その後、電極304を残して除去されてもよい。電極はまた、電鋳を使用して形成されてもよく、犠牲形状基板が使用されて、所望の金属合金から電極を電鋳し、その後基板を除去し得る。リング状にレーザカットされてもよく、ニチノールの場合は、約500℃の温度で円錐形の形状に熱硬化される。
【0039】
電極304の厚さは、IOLの様々な要因に依存し得る。いくつかの実施形態では、厚さは、電極304を形成するために使用される材料と、ユーザの眼に挿入する前にIOLを巻き込み/折り畳むための所望の曲げ半径と、によって影響され得る。例えば、ばね鋼が電極304を形成するために使用される場合、電極304の厚さは、5~10ミクロンであり得る。別の例では、ニチノールが電極304を形成するために使用される場合、厚さは、最大150ミクロンであり得る。最大厚さは、電極の角度に依存する。いくつかの実施形態では、より厚い電極304を有することにより、電極およびその後のIOLの組み立て/製造を容易にし得る。
【0040】
図4は、本開示の実施形態による、電極404の斜視図である。電極404は、電極104および/または204の一例であり得る。図示された電極404の実施形態は、面430、タブ436、および下面434を含む。表面430および下面434は、電極304の同様の番号の特徴に類似していてもよく、簡潔にするために詳細には考察しない。タブ436は、電極404の延長部であってもよく、電気接続のための場所を提供する。いくつかの実施形態では、タブ436は、サイズおよび円周が制限されたフランジであってもよい。電極404は、図3に関して考察した例と同様に形成され得る。
【0041】
図5は、本開示の実施形態による、電極504の断面図である。電極504は、電極104および/または204の一例であり得る。電極504は、電極304および404と同様の多くの特徴を有するが、電極504の厚さは異なる。いくつかの実施形態では、電極504は、電極504がどのように形成されるかにより、電極304、404よりも厚くてもよい。例えば、電極504は、ニチノールまたは他の弾性金属合金の原料からダイヤモンドポイント旋盤加工されてもよい。一点ダイヤモンド旋削は、滑らかな表面530を提供し得る。しかしながら、電極504がニチノールから形成される場合、より厚い電極が望ましい場合がある。当然のことながら、電極504の厚さは、図5に示される厚さより小さくてもよく、他の厚さも本開示の範囲内である。さらに、原料材料から電極504を機械加工することは、電極504に三角形の形状を提供し得、それにより円錐形状の面530が得られる。
【0042】
電極504は、表面530が円錐形である三角形状の断面を有してもよい。下面534は、表面530から後面540まで延在してもよい。後面540は、下面534とフランジ状表面538との間に延在し、電極504のより厚い部分を形成し得る。電極504を組み込むIOLでは、電極504が内面218などの支持構造体の円錐台形状の内面を置換し得るので、表面530は開口110と同様の開口を形成し得る。
【0043】
電極は、2つの反対のより薄い部分を有し得る。電子部品は、(任意選択的に)より厚い部分の近くに載置される。より薄い(一体式ヒンジ状)部分は、レンズを均一な半径で曲げるよりもむしろ、半分に折り曲げるのを容易にする。より厚い部分は実質的に真っ直ぐなままであるため、電子部品およびその保護バリアコーティングが曲がって損傷するのを防ぐ。この実施形態は、電極の剛性が、電極の周りのポリマーレンズ本体の剛性よりも大きい場合に特に有効である。
【0044】
フランジ状表面538は、電極504への電気的連結領域を提供し得る。加えて、電極304および404と同様に、下面534は、アンカーまたは結節などの接着促進構造を含み得る。代替的に、下面534は、接着促進材料またはプロセス、例えば、エッチングまたはシランで同様に処理されてもよい。電極504は、支持構造体の成形中に、支持構造体102および/または202などの支持構造体に組み込まれてもよい。例えば、電極504は、支持構造体材料の注入の前に型内に配置されてもよい。支持構造体材料は、下面534に適合し、フランジ538まで壁を上っていてもよく、支持構造体は、2つの構成要素が付着されたままであることを保証するように、任意の接着促進アンカー/結節の周りに成形されてもよい。
【0045】
図6は、本開示の実施形態による、弾性電極を含む眼科デバイス600の機能ブロック図である。眼科デバイス600は、眼内レンズなどの移植可能デバイスであり得る。描写された実施形態では、眼科デバイス600は、眼に移植されるように形成されたエンクロージャ素材642を含む。基板644は、電源646、コントローラ648、アンテナ664、および様々な相互接続のための実装面を提供するために、エンクロージャ素材642内に埋め込まれるか、または囲まれている。基板644および関連する電子機器は、制御電子機器108および支持構造体102などの関連する基板の一実装形態であり得る。電源646の図示される実施形態は、環境発電アンテナ652、充電回路654、および電池656を含む。コントローラ648の図示された実施形態は、制御ロジック658、調節ロジック660、および通信ロジック662を含む。示されるように、調節アクチュエータ650は、エンクロージャ素材642に配設されている。
【0046】
電源646は、コントローラ648および/または調節アクチュエータ650に動作電圧を供給する。アンテナ664は、眼科デバイス600と情報をやり取りするためにコントローラ648によって動作される。図示された実施形態では、アンテナ664、コントローラ648、および電源646は、基板644上/内に配設され、一方、調節アクチュエータ650は、エンクロージャ素材642内(基板642内/上ではない)に配設されている。しかしながら、他の実施形態では、眼科デバイス600に含まれる様々な回路片およびデバイスは、眼科デバイス600の具体的な設計に応じて、基板644内/上またはエンクロージャ素材642内に配設され得る。例えば、一実施形態では、調節アクチュエータ650は、内面218などの基板642の内面上に配設され得、電極104、204、304、404、および/または504などの弾性電極を含む。
【0047】
基板644は、コントローラ648、電源646、およびアンテナ664を実装するのに適した1つ以上の表面を含む。基板644は、電極、相互接続、アンテナなどを作成するために、チップベースの回路のための実装プラットフォーム(例えば、フリップチップ実装による)として、および/または導電性材料(例えば、金、プラチナ、パラジウム、チタン、銅、アルミニウム、銀、金属、その他の導電性材料、これらの組み合わせ、など)をパターン化するためのプラットフォームとして、両方に使用され得る。いくつかの実施形態では、実質的に透明な導電性材料(例えば、酸化インジウムスズまたは銀ナノワイヤメッシュ)を基板644上でパターン化して、回路、電極、などを形成することができる。例えば、アンテナ664は、基板644上に金または別の導電性材料のパターンを堆積することにより形成され得る。同様に、相互接続は、基板644上に導電性材料の好適なパターンを堆積することによって形成され得る。レジスト、マスク、および堆積技術の組み合わせを使用して、基板644上に材料をパターン化することができる。基板644は、エンクロージャ素材642内の回路および/または電子機器を構造的に支持するのに十分である一方、巻き上げまたは折り畳むのに十分な柔軟性がある、ポリマーまたは別の材料などの、比較的柔らかい材料にすることができる。眼科デバイス600は、代替的に、単一の基板644ではなく、接続されていない基板のグループで構成することができる。例えば、コントローラ648および電源646は、1つの基板644に実装され得、一方アンテナ664は、別の基板644に実装されて、2つは相互接続を介して電気的に接続され得る。基板644はまた、集積回路として前述のデバイスアーキテクチャ片のすべてまたは一部を収容する連続した半導体片であってもよい。
【0048】
基板644は、埋め込まれた電子部品の実装プラットフォームを提供するのに十分な半径方向の幅寸法を有する平坦なリングとして成形することができる。基板644は、眼科デバイス600のプロファイルに悪影響を与えることなく、基板644をエンクロージャ素材642に埋め込むことを可能にするのに十分に小さい厚さを有することができる。基板644は、その上に実装された電子機器を支持するのに適した構造的安定性を提供するのに十分に大きい厚さを有することができる。例えば、基板644は、約10ミリメートルの直径、約1ミリメートルの半径方向幅(例えば、外側半径は、内側半径よりも1ミリメートル大きい)、および約50マイクロメートルの厚さを有するリングとして形作ることができる。いくつかの実施形態では、基板644は、調節アクチュエータ650に関連付けられた少なくとも光学領域を取り囲み得、支持構造体102および/または202に類似であり得る。例えば、基板644は、周辺領域に、および光学素子214および216などの少なくとも2つの光学素子間に配設されてもよい。
【0049】
図示された実施形態では、電源646は、コントローラ648を含む様々な埋め込み電子機器に電力を供給する電池656を含む。電池656は、充電回路654および環境発電アンテナ652によって誘導的に充電され得る。一実施形態では、アンテナ664および環境発電アンテナ652は独立したアンテナであり、環境発電および通信のそれぞれの機能を果たす。別の実施形態では、環境発電アンテナ652およびアンテナ664は、誘導充電および読み取り装置605とのワイヤレス通信のそれぞれの機能のために時分割される同じ物理アンテナである。追加的または代替的に、電源646は、入ってくる紫外線、可視光線、および/または赤外線の放射からエネルギーを捕捉するために太陽電池(「光電池」)を含んでもよい。さらに、周囲の振動からエネルギーを捕捉するために、慣性力排除方式を含めることができる。
【0050】
充電回路654は、電池656を充電するため、および/または直接コントローラ648に電力供給するために捕捉されたエネルギーを調整するための整流器/安定化器を含み得る。充電回路654はまた、環境発電アンテナ652の高周波変動を緩和するために、1つ以上のエネルギー蓄積デバイスを含んでもよい。例えば、1つ以上のエネルギー蓄積デバイス(例えば、コンデンサ、インダクタなど)を接続して、ローパスフィルタとして機能させることができる。
【0051】
コントローラ648は、他の埋め込み部品の動作を振り付けるためのロジックを含む。制御ロジック658は、ロジックユーザインターフェース、電力制御機能などを提供することを含めて、眼科デバイス600の一般的な動作を制御する。調節ロジック660は、眼の配向を監視するセンサから信号を受信し、現在の視線方向またはユーザの焦点距離を決定し、これらの物理的合図に応じて調節アクチュエータ650(コンタクトレンズの焦点距離)を操作するためのロジックを含む。自動調節は、視線追跡からのフィードバックに基づいてリアルタイムで実施され得、ユーザが具体的な調節方式(例えば、読書のための近視野調節、定期的な活動のための遠視野調節など)を選択することを可能にする。通信ロジック662は、アンテナ664を介した読み取り装置605とのワイヤレス通信のための通信プロトコルを提供する。一実施形態では、通信ロジック662は、電磁場680の存在下で読み取り装置605から出力される、アンテナ664を介した後方散乱通信を提供する。一実施形態では、通信ロジック662は、後方散乱ワイヤレス通信のためにアンテナ664のインピーダンスを変調するスマートワイヤレス無線周波数識別(「RFID」)タグとして動作する。コントローラ648の様々なロジックモジュールは、汎用マイクロプロセッサ上で実行されるソフトウェア/ファームウェア、ハードウェア(例えば、特定用途向け集積回路)、または両方の組み合わせで実装され得る。
【0052】
眼科デバイス600は、様々な他の埋め込み電子機器およびロジックモジュールを含み得る。例えば、ユーザに視覚的なフィードバックを提供するために、光源またはピクセルアレイが含まれ得る。位置、回転、方向、または加速度のフィードバック情報をコントローラ648に提供するために、加速度計またはジャイロスコープが含まれ得る。
【0053】
図示された実施形態はまた、プロセッサ672と、アンテナ674と、メモリ666と、を備える、読み取り装置605を含む。読み取り装置605のメモリ666は、データ記憶668およびプログラム命令670を含む。示されるように、読み取り装置605は、眼科デバイス600の外側に配設され得るが、眼科デバイス600を充電するためにその近傍に載置され得、眼科デバイス600に命令を送り、および/または眼科デバイス600からデータを抽出し得る。一実施形態では、読み取り装置605は、ユーザが夜間に眼科デバイス600を置いて充電、データの抽出、レンズのクリーニングなどを行う従来のコンタクトレンズホルダに似ていてもよい。
【0054】
外部読み取り装置605は、眼科デバイス600との間でワイヤレス信号680を送受信するためのアンテナ674(または1つ以上のアンテナのグループ)を含む。外部読み取り装置605はまた、メモリ666と通信するプロセッサ672を備えるコンピューティングシステムを含む。メモリ666は、非一時的なコンピュータ可読可能な媒体であり、限定はされないが、プロセッサ672によって読み取り可能な磁気ディスク、光ディスク、有機メモリ、および/または任意の他の揮発性(例えば、RAM)または不揮発性(例えば、ROM)記憶システムを含むことができる。メモリ666は、データログ(例えば、ユーザログ)、プログラム設定(例えば、眼科デバイス600および/または外部読み取り装置605の挙動を調整するための)などのようなデータの指標を保存するデータ記憶668を含むことができる。メモリ666はまた、プロセッサ672による実行のためのプログラム命令670を含み得、命令670によって指定されたプロセスを外部読み取り装置605に行わせることができる。例えば、プログラム命令670は、外部読み取り装置605に、眼科デバイス600から通信される情報を回収することを可能にする、または眼科デバイス600の動作モードをプログラムまたはさもなければ選択するために眼科デバイス600に情報を送信することを可能にするユーザインターフェースを提供させ得る。外部読み取り装置605はまた、眼科デバイス600との間でワイヤレス信号680を送受信するためにアンテナ674を動作させるための1つ以上のハードウェア構成要素を含むことができる。
【0055】
外部読み取り装置605は、ワイヤレス通信リンク680を提供するのに十分なワイヤレス接続性を備えたスマートフォン、デジタルアシスタント、または他のポータブルコンピューティングデバイスとすることができる。外部読み取り装置605はまた、通信リンク680が、ポータブルコンピューティングデバイスでは一般に使用されない搬送周波数で動作する実施形態においてなど、ポータブルコンピューティングデバイスにプラグインすることができるアンテナモジュールとして実装することもできる。場合によっては、外部読み取り装置605は、ワイヤレス通信リンク680が低い電力予算で動作することを可能にするために、着用者の眼の比較的近くに着用されるように構成された専用デバイスである。例えば、外部読み取り装置605は、ネックレス、イヤリングなどの宝石片に一体化することができ、または、帽子、ヘッドバンドなどのような頭の近くに着用される衣類物品に一体化することができる。
【0056】
要約に記載されているものを含めて、本発明の図示された実施形態の上記の説明は、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。本発明の具体的な実施形態、および実施例は、例示目的で本明細書に説明されており、当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な修正が可能である。
【0057】
上記の詳細な説明に照らして、本発明にこれらの修正を加えることができる。以下の特許請求の範囲で使用される用語は、本明細書に開示される具体的な実施形態に本発明を限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるべきであり、特許請求の範囲の説明の確立された原則に従って解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6