(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】空中静止可能な航空機のためのロータ
(51)【国際特許分類】
B64C 27/54 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B64C27/54
(21)【出願番号】P 2019572077
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2018067495
(87)【国際公開番号】W WO2019002513
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518160436
【氏名又は名称】レオナルド・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アッティーリオ・コロンボ
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ・ボッタッソ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ピザーニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーア・ファヴァロット
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ・コロンボ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリーコ・モンターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・レゴニーニ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ブラギン
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ・チンクエマニ
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-33339(JP,B1)
【文献】英国特許出願公告第1120193(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360830(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0181377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0197487(US,A1)
【文献】国際公開第2015/031768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中静止可能な航空機(1)のためのロータ(3、3’、3’’’)であって、
- 第1軸(A)の周りに回転可能であり、複数のブレード(9)を備えたハブ(5)と、
- 前記航空機(1)の駆動部材に接続可能であり、前記ハブ(5)に動作可能に接続されて、前記第1軸(A)の周りに前記ハブ(5)を回転駆動するマスト(6)と、
- 前記第1軸(A)に直交した面内の、前記マスト(6)への振動の伝達を減衰する減衰手段(15;20a、20b;21a、21b)と、
を備え、
前記減衰手段(15;20a、20b;21a、21b)は、少なくとも1つの第1質量体(20a、20b)および少なくとも1つの第2質量体(21a、21b)を備え、これらの質量体は、前記第1軸(A)の周りに、個々に第1回転速度((N-1)*Ω)および第2回転速度(-(N+1)*Ω)で、前記マスト(6)に対して偏心して回転可能であり、
前記第1質量体(20a、20b)および前記第2質量体(21a、21b)は、前記マスト(6)に操作可能に接続されて、個々に、前記第1軸(A)に対して放射方向の主成分を有する第1および第2減衰力を前記マスト(6)に生じさせ、
前記ロータ(3、3’、3’’’)は変速機ユニット(19、19’、19’’’)をさらに備え、該変速機ユニットは、前記マスト(6)と前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)との間に挟まれて、該第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)を互いに対して反対方向に回転駆動する、ロータにおいて、
前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)は、使用時に、正弦波曲線行程を有する合力を前記マスト(6)に生じさせ、
前記ロータ(3、3’、3’’’)は、前記合力の振幅および位相を選択的に操作可能に変化させるアクチュエータ手段(80a、80b、81a、81b)をさらに備え、
該アクチュエータ手段(80a、80b、81a、81b)は、
- 駆動部材(82)と、
- 前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)の1つに操作可能に接続されて、前記マスト(6)に対して回転可能な支持要素(66)と、
- 前記駆動部材(82)によって駆動可能であり、使用時に、前記支持要素(66)を駆動するように設計されたさらなる変速機ユニット(65、67)と、
を備え、
該さらなる変速機ユニット(65、67)は、前記駆動部材(82)の出力部材(83)から前記支持要素(66)へのみの動作を不可逆的に伝達し、前記支持要素(66)前記駆動部材(82)への反対方向の動作の伝達を防止しており、
前記さらなる変速機ユニット(65、67)は、前記駆動部材(82)によって操作されることが可能なウォームねじ(65)、および前記支持要素(66)によって担持されて、前記ウォームねじ(65)と不可逆的に噛み合ったはすば歯車歯(67)を備え、
前記ロータ(3、3’、3’’’)は、前記第1質量体(20a、20b)および前記第2質量体(21a、21b)の各々に関して、対応した筐体(62、63)を備え、
該対応した筐体(62、63)は、前記マスト(6)および前記駆動部材(82)と一体的に、前記第1軸(A)の周りを回転し、且つ少なくとも部分的に前記さらなる変速機ユニット(66、67)を収容しており、
対応した前記出力部材(83)は、前記第1軸(A)に対して横向きの第2軸(B)の周りに、前記筐体(62、63)に対して回転し、
前記支持要素(66)は、前記第1軸(A)の周りに前記筐体(62、63)と角度的に一体となった様式で装着されているロータ(3、3’、3’’’)。
【請求項2】
前記変速機ユニット(19、19’、19’’’)は、前記第1質量体(20a、20b)に接続された第1出力部材(30、68;98c、98d、68)、および前記第2質量体(21a、21b)に接続された少なくとも1つの第2出力部材(40、68;98a、98b、68)を備え、
前記変速機ユニット(19、19’)は、前記第1出力部材(30、68;98c、98d、68)を、前記第1角速度((N-1)*Ω)に対応した第3角速度で第1方向に回転駆動し、且つ前記第2出力部材(40、68;98a、98b、68)を、第2角速度(-(N+1)*Ω)に対応した第4角速度で、前記第1方向とは反対の第2方向に回転駆動するように構成されている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記変速機ユニット(19、19’、19’’’)は、
- 前記マスト(6)と、少なくとも1つの前記第1質量体(20a、20b)と、の間に機能的に挟まれた第1ステージ(25)と、
- 該第1ステージ(25)と、少なくとも1つの前記第2質量体(21a21b)と、の間に機能的に挟まれた第2ステージ(26)と、
を備えている、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記第1および第2ステージ(25、26)は、個々に第1および第2遊星歯車装置を備え、
前記第1および第2遊星歯車装置の第1および第2太陽歯車(29、45)は、個々に前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)と共に前記第1軸(A)の周りに角度的に一体となった前記第1および第2ステージ(25、26)によって形成され、
前記第1太陽歯車(29)は、前記第2ステージ(26)によって形成された前記第2遊星歯車装置の第2環状歯車(41)とさらに角度的に一体となっており、
前記第1および第2ステージ(25、26)によって形成された前記第1および第2遊星歯車装置は、
- 個々の第1および第2遊星歯車(33、35;46,48)と、
- 共通の遊星歯車キャリア(28)であって、前記第1および第2遊星歯車(33、35;46,48)は、前記遊星歯車キャリアの周りを回転し、且つ前記航空機(1)の機体(2)に接続された遊星歯車キャリア(28)と、
を備え、
前記第1遊星歯車(33、35、37)は、前記第1太陽歯車(29)および第1環状歯車(27)と噛み合い、
前記第2遊星歯車(46、48)は、前記第2太陽歯車(45)および前記第2環状歯車(41)と噛み合っている、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記第1回転速度は(N-1)*Ωに等しく、前記第2回転速度は-(N+1)*Ωに等しく、ここでNは前記ブレード(9)の数であり、Ωは前記機体(2)と一体となった基準システム内の前記マスト(6)の回転速度であり、
前記第1質量体(20a、20b)は、前記マスト(6)と同じ方向に、前記マスト(6)に対して前記第1角速度((N-1)*Ω)で回転可能であり、
前記第2質量体(21a、21b)は、前記マスト(6)とは反対の方向に、前記マスト(6)に対して前記第2角速度((N+1)*Ω)で回転可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記アクチュエータ手段(80a、80b、81a、81b)は、前記第1軸(A)に関する前記第1質量体(20a、20b)の間の第1角度および/または前記第2質量体(21a、21b)の間の第2角度を変化させるように選択的に操作可能とされている、請求項1から5のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項7】
前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)は、前記マスト(6)に関して前記第1軸(A)に対して放射方向に沿って移動可能であり、前記第1軸(A)の周りに前記マスト(6)と一体的に回転する個々のガイド(23’)と接触する、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項8】
前記ロータは、前記ハブ(5)に接続され、且つ使用時に、前記ブレード(9)の回転から生じた所定の経路に従った気流を方向付けるように設計された流れコンベア(10)を備え、
前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)は、前記流れコンベア(10)内に収容されており、
前記ロータ(3、3’)は、前記第1および第2ステージ(25、26;90a、90b、90c、90d)を形成した前記第1および第2遊星歯車装置が、前記マスト(6)の内側に収容されるか、または
前記変速機ユニット(19’’’)の全体が前記流れコンベア(10)内に収容されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のロータ(3、3’、3’’’)を備えた空中静止可能な航空機(1)。
【請求項10】
空中静止可能な航空機(1)のためのロータ(3”)であって、
- 第1軸(A)の周りに回転可能であり、複数のブレード(9)を備えたハブ(5)と、
- 前記航空機(1)の駆動部材に接続可能であり、前記ハブ(5)に動作可能に接続されて、前記第1軸(A)の周りに前記ハブ(5)を回転駆動するマスト(6)と、
- 前記第1軸(A)に直交した面内の、前記マスト(6)への振動の伝達を減衰する減衰手段(15;20a、20b;21a、21b)と、
を備え、
前記減衰手段(15;20a、20b;21a、21b)は、少なくとも1つの第1質量体(20a、20b)および少なくとも1つの第2質量体(21a、21b)を備え、これらの質量体は、前記第1軸(A)の周りに、個々に第1回転速度((N-1)*Ω)および第2回転速度(-(N+1)*Ω)で、前記マスト(6)に対して偏心して回転可能であり、
前記第1質量体(20a、20b)および前記第2質量体(21a、21b)は、前記マスト(6)に操作可能に接続されて、個々に、前記第1軸(A)に対して放射方向の主成分を有する第1および第2減衰力を前記マスト(6)に生じさせ、
前記ロータ(3”)は変速機ユニット(19”)をさらに備え、該変速機ユニットは、前記マスト(6)と前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)との間に挟まれて、該第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)を互いに対して反対方向に回転駆動し、
前記変速機ユニット(19”)は、
- 前記機体(2)に対して固定された筐体(120)と、
- 前記マスト(6)と前記第2質量体(21a、21b)との間に機能的に挟まれた第1ステージ(90a、90b)と、
- 前記マスト(6)と前記第1質量体(20a、20b)との間に機能的に挟まれた第2ステージ(90c、90d)と、
を備え、
前記第1ステージ(90a、90b)および第2ステージ(90c、90d)は、個々に第1および第2遊星歯車装置を備え、
前記第1および第2遊星歯車装置は、個々の前記第2および第1質量体(21a、21b;20a、20b)に操作可能に接続されて、且つ第1および第2動作出力部を個々に形成した第3および第4太陽歯車(97a、97b;97c、97d)を個々に備え、
前記第1遊星歯車装置は、
- 第1動作入力部を形成し且つ前記マスト(6)と一体となって回転する第3環状歯車(96a;96b)と、
- 該第3環状歯車(96a、96b)および前記第3太陽歯車(97a、97b)と噛み合った、複数の第3遊星歯車(99a、99b)と、
- 第3遊星歯車キャリア(103a、103b)であって、前記第3遊星歯車(99a、99b)が、前記第3遊星歯車キャリアに対して回転可能な様式で装着された、第3遊星歯車キャリア(103a、103b)と、
をさらに備え、
前記第2遊星歯車装置は、
- 第4環状歯車(96c;96d)と、
- 該第4環状歯車(96c;96d)および前記第4太陽歯車(97c、97d)と噛み合った、複数の第4遊星歯車(99c、99d)と、
- 第2動作入力部を形成し、且つ前記マスト(6)と一体となって回転する第4遊星歯車キャリア(103c)であって、前記第4遊星歯車(99c、99d)が、前記第4遊星歯車キャリアに対して回転可能な様式で装着された、第4遊星歯車キャリア(103c)と、
を備え、
前記第3遊星歯車キャリア(103a、103b)および前記第4環状歯車(96c;96d)は、前記筐体(120)とスライド可能に接触した、ロータにおいて、
前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)は、使用時に、前記マスト(6)に対して正弦波曲線工程の合力を生じ、
前記ロータ(3”)は、前記合力の振幅および位相を選択的に操作可能に変化させるアクチュエータ手段(80a、80b、81a、81b)をさらに備え、
該アクチュエータ手段(80a、80b、81a、81b)は、
- 駆動部材(82”)と、
- 前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)に接続されて、前記マスト(6)に対して回転可能なように操作可能に接続された支持要素(66”)と、
- 前記駆動部材(82”)によって駆動されることが可能であり、使用時に、前記支持要素(66”)を駆動するように設計されたさらなる変速機ユニット(65、67)と、
を備え、
該さらなる変速機ユニット(65、67)は、前記駆動部材(82”)の出力部材(83)から前記支持要素(66”)へのみ動作を不可逆的に伝達し、前記支持要素(66”)から前記駆動部材(82”)への反対方向の動作の伝達を防止するように構成されており、
前記さらなる変速機ユニット(65、67)は、前記駆動部材(82)によって操作されることが可能なウォームねじ(65)、および前記支持要素(66)によって担持され且つ前記ウォームねじ(65)と不可逆的に噛み合ったはすば歯車歯(67)を備え、
前記ロータ(3”)は、
- 前記第1軸(A)の周りに前記第2質量体(21a、21b)を所定の角度だけ回転させるように設計された第1駆動部材(82”)、およびさらなる第1変速機ユニット(66”、67)によって前記第1駆動部材(82”)に操作可能に接続された前記第1支持要素(66”)であって、該第1支持要素(66”)は、前記第3遊星歯車キャリア(103a、103b)によって担持され、前記第1駆動部材(82”)の操作は、前記筐体(120)に対する且つ前記第1軸(A)の周りの、前記第3遊星歯車キャリア(103a、103b)の相対動作を生じさせる、第1駆動部材(82”)および第1支持要素(66”)、および/または
- 前記第1軸(A)の周りに前記第1質量体(20a、20b)を所定の角度だけ回転させるように設計された第2駆動部材(82”)、およびさらなる第2変速機ユニット(66”、67)によって前記第2駆動部材(82”)に操作可能に接続された前記第2支持要素(66”)であって、該第2支持要素(66”)は、前記第4環状歯車(96c、96d)によって担持され、前記第2駆動部材(82”)の操作は、使用時に、前記筐体(120)に対する且つ前記第1軸(A)の周りの、前記第4環状歯車(96c、96d)の相対動作を生じさせる、第2駆動部材(82”)および第2支持要素(66”)、
をさらに備えている、ロータ。
【請求項11】
前記変速機ユニット(19”)は、前記第1質量体(20a、20b)に接続された第1出力部材(30、68;98c、98d、68)、および前記第2質量体(21a、21b)に接続された少なくとも1つの第2出力部材(40、68;98a、98b、68)を備え、
前記変速機ユニット(19”)は、前記第1出力部材(30、68;98c、98d、68)を、前記第1角速度((N-1)*Ω)に対応した第3角速度で第1方向に回転駆動し、且つ前記第2出力部材(40、68;98a、98b、68)を、前記第2角速度(-(N+1)*Ω)に対応した第4角速度で、前記第1方向とは反対の第2方向に回転駆動するように構成されている、請求項10に記載のロータ。
【請求項12】
前記第1回転速度は(N-1)*Ωに等しく、前記第2回転速度は-(N+1)*Ωに等しく、ここで、Nは前記ブレード(9)の数であり、Ωは前記機体(2)と一体となった基準システム内の前記マスト(6)の回転速度であり、
前記第1質量体(20a、20b)は、前記マスト(6)と同じ方向に、前記マスト(6)に対して前記第1角速度((N-1)*Ω)で回転可能であり、
前記第2質量体(21a、21b)は、前記マスト(6)とは反対の方向に、前記マスト(6)に対して前記第2角速度((N+1)*Ω)で回転可能である、請求項10または11に記載のロータ。
【請求項13】
前記アクチュエータ手段(80a”、80b”、81a”、81b”)は、前記第1軸(A)に関する前記第1質量体(20a、20b)の間の第1角度および/または前記第2質量体(21a、21b)の間の第2角度を変化させるように選択的に操作可能とされている、請求項10から12のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項14】
前記ロータは、前記ハブ(5)に接続され、且つ使用時に、前記ブレード(9)の回転から生じた所定の経路に従った気流を方向付けるように設計された流れコンベア(10)を備え、
前記第1および第2質量体(20a、20b;21a、21b)は、前記流れコンベア(10)内に収容されており、
前記ロータ(3”)は、前記第1および第2ステージ(25、26;90a、90b、90c、90d)を形成した前記第1および第2遊星歯車装置が、前記マスト(6)の内側に収容されることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載のロータ(3”)を備えた空中静止可能な航空機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年6月30日に出願された欧州特許出願第17179162.7号明細書および欧州特許出願第17207833.9号明細書の優先権を主張するものであり、それらの開示は参照によって統合されている。
【0002】
本発明は空中静止可能な航空機のためのロータ、特にヘリコプターのためのロータに関する。
【背景技術】
【0003】
ヘリコプターは、機体、機体の上部に配置され且つ自身の軸の周りを回転する主ロータ、および気体の端部に配置されたテールロータを基本的に備えているとして知られている。
【0004】
より詳細には、ロータは、前述の軸の周りを回転可能なハブであって、このハブに径方向に締結されて前述のハブから突出した複数のブレードを備えたハブと、駆動部材に接続され、且つハブに操作可能に接続されてハブを回転駆動することが可能なマストと、を基本的に順に備えている。
【0005】
使用時に、ロータの運転は高周波および低周波の振動を生じる。より具体的には、低周波振動は、ブレードからおよびハブの中心から分離する波のうねりによって生じる。この分離はハブの中心において発生し、テールおよびテールロータのすべての垂直および水平空気力学的表面に影響する。
【0006】
使用時に、高速の角速度におけるブレードの回転は、さらなる高周波振動を発生させ、この振動はマストへと、結果的に機体へと伝達され、機体内側の乗員の快適性を悪化させる。
【0007】
より具体的には、振動荷重はハブおよびマストの両方に、およびマストの回転軸の軸方向および回転軸に直交した方向の両方に作用する。
【0008】
業界内では、回転している基準システム、ひいては一体化されたロータ、ハブ、およびマストにおいて、ロータの面内において作用する振動荷重は、(N+1)*Ω、(N-1)*Ω、およびそれらの倍数に等しいパルスを有することが知られており、ここでΩはマストの回転速度であり、Nはロータのブレードの数を示している。機体の回転システムから固定システムへと通過する際に、ロータの面内において作用する振動荷重は周波数シフトし、N*Ωおよび対応したその倍数に等しいパルスを、固定システムにおいて有する。換言すると、ハブおよびマストは、ブレードの面内において作用する振動の空気力学的荷重パルスを前述のパルスに伝達する。
【0009】
前述のことから、マストの回転速度とロータのブレードの数との積に等しい、前述のパルスを有する振動の、マストから機体への伝達を制限する必要性が、業界内において明確に感じられる。
【0010】
この目的のために、受動的および能動的減衰装置が知られている。
【0011】
受動的減衰装置は、マストまたはハブから弾性的に懸架された質量体を基本的に備えている。これらの懸架された質量体の振動は、マストおよびハブの振動を少なくとも部分的に消滅させる。
【0012】
それらは、単純に構成され且つ組み込まれて、ロータの外部のエネルギ源を必要としないが、受動的減衰装置は、それらが提供可能な性能に関して、最大の制限を有する。
【0013】
能動的減衰装置は、基本的にハブまたはマストに正弦波曲線状の減衰力を加えるアクチュエータであり、この減衰力は、振動によって生じた力に対抗する。
【0014】
これらの能動的減衰装置は、本願出願人が出願した特許文献1に示されている。
【0015】
特許文献1は、操作可能にマストに接続された一対のアクチュエータを使用して、マストの回転軸に直交した面内の成分を有する個々の減衰力をマストに発生させるように制御されることを記載している。
【0016】
より詳細には、アクチュエータは環状に形成され、一方が他方の上に重ねられ、マストによって回転駆動され、且つ回転軸の周りにマストに対して回転可能に装着されている。
【0017】
アクチュエータはマストの回転軸の周りに逆回転し、マストに個々の力を生じさせ、その力は、マストの回転速度とブレードの数との積に等しく、前述の角振動数に対抗する。
【0018】
能動的減衰装置のさらなる例は、特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0019】
能動的減衰装置は、ハブおよびマストの振動状態の展開にしたがって、それらの減衰特性を改良することが可能である利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】欧州特許出願公開第2 857 313号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0325828号明細書
【文献】米国特許第8,453,200号明細書
【文献】英国特許出願公開第1 120 193号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0360830号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、能動的減衰装置は、重量、動力、および体積の観点において、受動的減衰装置よりも本質的に手間がかかる。さらに、能動的減衰装置は、かなりの量のエネルギを供給される必要がある。
【0022】
前述の能動的減衰装置の効果を維持し、それと同時に可能な限り専用の駆動部材の必要性を制限して、重量、体積、および全体のコストを減少した、マストおよびハブの曲げ振動を減衰する必要性の認識が、業界内に存在する。
【0023】
マストに加えられる減衰力の数値を可能な限り正確に且つ反復可能にして、可能な限り正確に且つ反復可能に振動減衰動作を形成する必要性の認識も、業界内に存在する。
【0024】
それに加えて、機体の多様な振動状態に基づいてマストに加えられる減衰力の位相および振幅を調節することを可能とすることの必要性の認識が、存在している。
【0025】
最後に、1つの駆動部材の故障の場合に、所望しない振動荷重の発生をチェックし続ける必要性の認識が、業界内に存在する。
【0026】
特許文献4は、請求項1の前段による、航空機のためのロータを開示している。
【0027】
特許文献5は、ハブ、マスト、少なくとも1つの第1質量体および少なくとも1つの第2質量体を備えた減衰手段、ならびに第1および第2質量体を反対方向に回転駆動する変速機ユニットを備えた、航空機のためのロータを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前述の目的は、請求項1に定義された空中静止可能な航空機のためのロータに関する限り、本発明によって達成される。
【0029】
本発明は、請求項10において請求したような空中静止可能な航空機のためのロータにも関する。
【0030】
本発明の目的は、空中静止可能な航空機のためのロータを創出することであり、このロータは、単純且つ安価な様式において、これまでに詳述した必要性の少なくとも1つを満足させ得る。
【0031】
前述の目的は、請求項1に定義された空中静止可能な航空機のためのロータに関する限り、本発明によって達成される。
【0032】
本発明のより良好な理解のために、4つの好適な実施形態がこれ以降に記載されており、これらは単に非限定的な例であり、添付図を参照して記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の大実施形態によるロータを備えたヘリコプターの側面を示した図である。
【
図2】
図1のロータ内に組み込まれた減衰装置の断面を示した図であり、明確化の目的のために部品を完全には示していない。
【
図3】
図2内のロータの第1部品を示した拡大図である。
【
図4】
図3の減衰装置の第2部品を示した、またさらなる拡大図である。
【
図5】
図2の減衰装置特定の部分の詳細を示した、さらなる拡大断面図である。
【
図8】
図5の第1部品の動作線図を示した図である。
【
図9】
図8の線IX-IXに沿った断面を示した図である。
【
図10】
図8の線X-Xに沿った断面を示した図である。
【
図11】本発明のさらなる実施形態によるロータの断面を示した図であり、明確化の目的のために部品を完全には示していない。
【
図12】
図11の線XII-XIIに沿った断面を示した図である。
【
図13】本発明の第3実施形態によるロータの断面を示した図であり、明確化の目的のために部品を完全には示していない。
【
図14】本発明の第3実施形態によるロータの断面を示した図であり、明確化の目的のために一部を除外している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、参照符号1は空中静止可能な航空機、特にヘリコプターを示しており、ヘリコプターは基本的に、機体2、機体2の上部に配置され且つ軸Aの周りを回転する主ロータ3、および機体2の一端に配置されて、軸Aに対して横向きの、自身の軸の周りを回転するテールロータ4を備えている。
【0035】
より詳細には、ロータ3は軸Aと共に中空ハブ5を備え、このハブは、軸Aに対して放射状に延びた、片持ち梁式に搭載された複数のブレード9を担持している。
【0036】
図2を参照すると、ロータ3は、機体2と一体化された基準システムに対して角速度Ωで軸Aの周りを回転可能なマスト6を備え、マストはハブ5と角度的に一体となっており、ヘリコプター1に担持された例えばタービン等の図示されていない駆動部材と連結されている。
【0037】
より具体的には、マスト6はハブ5内に部分的に収容されており、ハブ5と角度的に一体となっている(
図2)。
【0038】
より具体的には、マスト6は、マスト6とハブ5との間に径方向に挟まれたスプラインプロファイル7および楔8を用いて、ハブ5と角度的に一体となっている。特に、スプラインプロファイル7は、前述の楔8の間に軸方向に挟まれている。
【0039】
特に、マスト6は中空である。
【0040】
主ロータ3は、所定の経路にしたがって、ロータ3の回転により発生した気流を案内するように設計された流れコンベア10を備え、その経路は、ハブ5の反対側の端部に配置されたブレード9の先端からの前述の流れの分離により生じた振動を制限するような形状とされている。
【0041】
より詳細には、流れコンベア10は環状であり、軸Aの周りに延びて、機体2に対してハブ5の反対側に配置されている。
【0042】
流れコンベア10は「帽子状」の形状であり、互いに軸方向を向いた一対の表面11および12によって区切られ、より具体的には表面11は、ハブ5の反対側に流れコンベア10を軸方向に区切り、一方で表面12は、ハブ5に近接した側において流れコンベア10を軸方向に区切っている。
【0043】
表面11は連続的であり、軸Aを始点として径方向に進んだ場合に、ハブ5からの軸方向の距離を減少するように広がっている。
【0044】
表面12は円形の第1周端縁13、および端縁13の反対側にあり且つ周端縁13に対して径方向最外側に配置された第2周端縁(
図2では図示略)を備えている。さらに、表面12の第2周端縁は、表面11の周端縁に軸方向に面している。
【0045】
表面11および12は、軸Aを始点として径方向に進んだ場合に、それらの軸方向距離が減少するような形状である。
【0046】
より具体的には、端縁13から第2端縁に向かって進んだ場合に、表面12は最初にハブ5から離れるように移動し、次にハブ5に近づくように移動する。
【0047】
表面11および12は軸Aに関して対称であり、且つ表面11と表面12との間に広がった側面を備えた管状本体14により、互いに接続されている。
【0048】
ロータ3は、軸Aに直交した面内において、マスト6への振動の伝達を減衰するための振動減衰装置15をさらに備えている。換言すると、装置15は、マスト6への曲げ振動を減衰する。
【0049】
より詳細には、装置15は、一対の質量体20a、20b、および一対の質量体21a、21bを備え、これらは第1および第2の角速度で軸Aの周りを偏心して回転することが可能である。
【0050】
質量体20a、20b;21a、21bは、マスト6に接続されている。
【0051】
このように、質量体20a、20bは、マスト6に第1減衰力を生じさせ、質量体21a、21bは、マスト6に第2減衰力を生じさせる。
【0052】
第1および第2減衰力は、質量体20a、20b;21a、21bのマスト6における偏心回転により、マスト6に生じる遠心力に相当している。
【0053】
これらの第1および第2減衰力は正弦波曲線行程を有し、振幅は個々の質量体20a、20b;21a、21bの大きさに、ならびに軸Aからのこれらの質量体20a、20b;21a、21bの個々の距離および軸Aの周りの個々の回転速度に依存している。
【0054】
第1および第2減衰力は、正弦波曲線行程を有する個々の第1および第2合力をマスト6に対して生じさせ、その振幅および位相は、個々の質量体20a、20b、21a、21bの軸Aに対する角度距離に依存している。例えば、質量体20a、20b;21a、21bの間の角度がゼロである場合、第1(第2)合力は、最大振幅を有する。逆に、この角度が180度である場合、第1(第2)合力はゼロ振幅を有する。
【0055】
好適に、質量体20a、20bは、軸Aの周りのマスト6の回転の方向と同じ方向に、マスト6に対して軸Aの周りを回転可能であり、マスト6に対して(N-1)*Ωの角速度を有しており、ここでNはブレード9の数、Ωはマスト6の回転角速度である。このように、第1減衰力は、機体と一体化された基準システムに対して、N*Ωの角振動数を伴った正弦波曲線である。
【0056】
本記載においては、角振動数との用語は、2πを乗じられた振動数を意味している。
【0057】
質量体21a、21bは、マスト6の回転の方向とは反対の方向に、軸Aの周りを回転し、マスト6に対して(N+1)*Ωの角振動数を有する。
【0058】
明示的に示されていない場合、本記載においてはこれ以降、角速度(N-1)*Ωは、マスト6の角速度Ωと同じ意味であり、角速度(N+1)*Ωは、マスト6の角速度とは反対の意味であると理解され、角速度(N-1)*Ωおよび(N+1)*Ωは、マスト6と一体化された基準システム内の角速度であると理解される。
【0059】
このように、第1および第2減衰力の両方は、機体2と一体化された基準システム内においてN*Ωの角振動数を有する。この角振動数N*Ωは減衰される振動、すなわちブレード9から機体2へと伝達される振動の角振動数に相当している。
【0060】
第1減衰力は、振幅において互いに等しく、第2減衰力は、振幅において互いに等しい。
【0061】
質量体20a、20b;21a、21bは、一対において互いに等しい。
【0062】
図示されたケースでは、質量体20a、20bは、質量体21a、21bに等しい。
【0063】
図示されていないさらなる実施形態においては、質量体20a、20b;21a、21bは、互いとは異なった数値を有し得る。
【0064】
有利には、ロータ3は、マスト6と質量体20a、20b;21a、21bとの間に機能的に挟まれた変速機ユニット19(
図8)を備え、個々にマスト6に対して(N-1)*Ω;(N+1)*Ωの角速度で、個々に相互に逆方向の回転において、前述の質量体20a、20b;21a、21bを駆動する。
【0065】
このように、質量体20a、20b;21a、21bは、マスト6の外部のアクチュエータまたはエネルギ源を使用することなく、個々の回転速度(N-1)*Ω;(N+1)*Ωで回転するように駆動されることが可能である。
【0066】
好適に、変速機ユニット19は(
図5)、
- 角速度Ωを有するマスト6の回転からの動作を受け入れ、且つ出力において、質量体20a;20bと角度的に一体となって、マスト6の回転方向と同じ方向に回転速度(N-1)*Ωで回転するシャフト30を備えたステージ25と、
- シャフト30の回転からの動作を受け入れ、且つ出力において、質量体21a;21bと角度的に一体となって、マスト6の回転方向とは反対の方向に回転速度(N+1)*Ωで回転するシャフト40を備えたステージ26と、
を備えている。
【0067】
特に、シャフト30および40は軸Aの周りを回転し、マスト6内に収容されている。シャフト40はシャフト30と同軸であり、シャフト30内に収容されている。
【0068】
シャフト30はマスト6と同じ方向に回転し、一方でシャフト40は、マスト6およびシャフト30とは反対の方向に回転する。
【0069】
図示されたケースにおいては、
図2に見られているように、質量体20a、20b;21a、21bは流れコンベア10の本体14の内側に配置されている。
【0070】
ステージ25、26は、それぞれ遊星歯車列である。
【0071】
より詳細には、ステージ25は(
図8から
図10)、
- マスト6の内側に同軸に搭載された管状筐体27であって、マスト6の角速度Ωと同じ角速度で軸Aの周りを回転することが可能であり、軸Aに関して径方向内向きにギア歯31を形成した、管状筐体27と、
- 機体2に固定され、したがって軸Aに対して角度的に固定された遊星歯車キャリア28と、
- 軸Aの周りを回転可能であり、軸Aに対して径方向外向きにギア歯32を形成し、およびシャフト30と角度的に一体となった、太陽歯車29と、
を備えている。
【0072】
ステージ25はさらに、
- 複数の、図示されたケースでは3つの遊星歯車33であって、軸Aに平行な自身の軸Cの周りを回転可能であり、対応した軸Cに関して外側ギア歯34をそれぞれ備え、筐体27のギア歯31と噛み合った、遊星歯車33と、
- 複数の、図示されたケースでは3つの遊星歯車35であって、軸A、Cに平行な自身の軸Dの周りを回転可能であり、対応した軸Dに関して外側ギア歯36をそれぞれ備え、各々が個々の遊星歯車33のギア歯34と噛み合った、遊星歯車35と、
を備えている。
【0073】
遊星歯車キャリア28は、個々に軸Cおよび軸Dに平行な複数のアーム44;39を備え、個々の遊星歯車33、35;37は、これらのアームの周りを回転可能である。
【0074】
マスト6およびシャフト30は、遊星歯車33、35が存在しているために、同じ回転方向に回転する。
【0075】
換言すると、ステージ25は遊星歯車装置であり、
- 筐体27は、動作入力部を形成し、機体2と一体化された基準システム内の軸Aの周りを角速度Ωで回転する環状歯車を形成しており、
- 太陽歯車29は、軸Aの周りを角速度(N-1)*Ωで回転し、動作出力部を形成しており、
- 遊星歯車キャリア28は、軸Aに対して角度的に固定されている。
【0076】
ステージ26は特に、
- マスト6内に収容され、太陽歯車29とシャフト30との間に軸方向に挟まれ、太陽歯車29およびシャフト30と角度的に一体となって、且つ軸Aに関して内側ギア歯42を備えた環状歯車41と、
- 角速度(N+1)*Ωで軸Aの周りを回転可能であり、シャフト40と角度的に一体となって、且つ軸Aに関して外側ギア歯43を備えた太陽歯車45と、
を備えている。
【0077】
ステージ26はさらに、
- 複数の、図示されたケースでは3つの遊星歯車46であって、軸Aに平行な自身の軸Eの周りを回転可能であり、対応した軸Eに関して外側ギア歯47をそれぞれ備え、且つ環状歯車41のギア歯42と噛み合った遊星歯車46と、
- 複数の、図示されたケースでは3つの遊星歯車48であって、遊星歯車46と角度的に一体となって、対応した軸Eに関して外側ギア歯47をそれぞれ備え、且つ太陽歯車45のギア歯43と噛み合った遊星歯車48と、
を備えている。
【0078】
特に、軸Eは、個々の軸Cと軸Dとの間に径方向に挟まれている。
【0079】
さらに、遊星歯車46の直径は、遊星歯車48の直径よりも大きい。
【0080】
遊星歯車キャリア28は、個々の軸Eに平行な一対のアーム50を備え、軸Eの周りを、個々の遊星歯車46、48は回転可能とされている。
【0081】
換言すると、ステージ26は遊星歯車装置であり、
- 環状歯車41は、マスト6の回転方向と同じ回転方向において、角速度(N-1)*Ωの動作入力を画定し、且つステージ25の太陽歯車29と角度的に一体となっており、
- 太陽歯車45は、マスト6の回転方向とは反対の回転方向において、角速度(N+1)*Ωで回転し、且つ動作出力を画定し、
- 遊星歯車キャリア28は固定され、ステージ25と共有されている。
【0082】
ロータ3(
図3、
図4、
図6、および
図7)は、
- シャフト30と個々の質量体20a、20bとを軸Aの周りに角度的に一体に接続するための接続グループ60a、60bと、
- シャフト40と個々の質量体21a、21bとを軸Aの周りに角度的に接続するための接続グループ61a、61bと、
を備えている。
【0083】
特に
図6を参照すると、接続グループ60a、60b;61a、61bは、マスト6と角度的に一体となっており且つマスト6内に収容された筐体51内に収容されている。
【0084】
以下に、1つのみの接続グループ60a、60b;61a、61bが記載され、これらの接続グループ60a、60b;61a、61bは同一である。
【0085】
接続グループ60a、60b(61a、61b)は基本的に(
図4、
図6、および
図7)、
- 軸Aと同軸のシャフト30に嵌合されたスリーブ62と、
- スリーブ62を取り囲み、スリーブ62によって回転駆動され、本記載においてさらに詳細に記載される様式において、質量体20a、20bに角度的に接続された筐体63と、
を備えている。
【0086】
より詳細には、筐体63は軸Aの周りに延びて、
- 軸Aに直交し且つ軸Aからオフセットされた軸Bの周りを、筐体63に対して回転可能であり、且つ軸Aの周りに筐体63と角度的に一体となったシャフト64と、
- 軸Bの周りをシャフト64と一体的に回転するウォームねじ65と、
- スリーブ62およびシャフト30(40)に対して軸Aの周りを角度移動可能なように装着され、軸Aに対して外側にらせんギア歯67を備えてウォームねじ65と噛み合って、且つ質量体20a、20b(21a、21b)と角度付きで一体化されたディスク66と、
を備えている。
【0087】
筐体63は、シャフト64およびディスク66の動作の潤滑、ならびにウォームねじ65の保護のために必要なオイルの収容機能も発揮する。
【0088】
ディスク66は、角度的に一体化された様式において、対応したアーム68とも接続されている。アーム68は軸Aの一側のみから放射状に延び、軸に対して反対側の端部において張り出すように、対応した質量体20a、20b(21a、21)を担持している。
【0089】
ウォームねじ65およびディスク66のギア歯67は、不可逆動作の状態を生じるように構成されている。
【0090】
特に、軸Bの周りのウォームねじ65の回転は、ディスク66の回転を生じさせ、したがって、軸Aの周りに質量体20a20b(21a、21b)を所定の角度だけ回転させる。逆に、軸Aの周りのディスク66の回転は、ウォームねじ65の軸Bの周りの回転を生じさせない。
【0091】
前述のことから、軸Aの周りのシャフト30の回転は、ウォームねじ65、ディスク66、および質量体20a、20b(21a、21b)の、軸Aの周りの同じ角速度(N-1)*Ω((N+1)*Ω)での回転を駆動する。
【0092】
ウォームねじ65とギア歯67との間に存在する不可逆動作の状態が、ウォームねじ65が軸Bに対して角度的に静止している場合、ディスク66の慣性に、ウォームねじ65とギア歯67との間の相対動作が生じることを防止させていることは、重要なことである。換言すると、ウォームねじ65が軸Bに対して角度的に静止している場合、ウォームねじ65およびディスク66は、互いに堅固に接続された本体のような挙動を示し、軸Aの周りに一体的に回転する。
【0093】
有利には、ロータ3は、質量体20a、20b、21a、21bの回転によりマスト6に生じた第1および第2合力の位相および振幅を操作可能に選択的に変化させる、複数のアクチュエータ80a、80b;81a、81bをさらに備えている(
図3、
図4、
図6、および
図7)。
【0094】
より詳細には、アクチュエータ80a、80bは、軸Aの周りの質量体20aと質量体20bとの間の角度を操作可能に選択的に変化させて、第1合力の位相および振幅を変化させる。
【0095】
アクチュエータ81a、81bは、軸Aの周りの質量体21aと質量体21bとの間の角度を操作可能に選択的に変化させて、第2合力の位相および振幅を変化させる。
【0096】
特に
図3から
図7を参照すると、各アクチュエータ80a、80b;81a、81bは、
- 軸Bに平行なかつ軸Bからオフセットされた軸の周りを回転可能な出力シャフト83を備えた電気モータ82と、
- 電気モータ82と、対応したシャフト64と、の間に挟まれ、軸Bに平行な出力シャフト83の回転をシャフト64およびウォームねじ65の軸Bの周りの回転へと変換する歯車84と、
を備えている。
【0097】
電気モータ82は、対応した筐体63の外側に収容されている。
【0098】
電気モータ82は、対応した筐体63と、したがって軸Aの周りのシャフト30と角度的に一体となっている。
【0099】
その結果、スイッチを入れた場合およびスイッチを切った場合の両方の場合に、電気モータ82は、シャフト30(40)および筐体63と一体的に、(N-1)*Ω((N+1)*Ω)の角速度で軸Aの周りを回転する。
【0100】
逆に、電気モータ82のスイッチを入れることは、軸Bに平行なシャフト83、64、およびウォームねじ65を、筐体63およびシャフト30(40)に対して軸Bの周りに回転させる。
【0101】
ウォームねじ65の軸Bの周りの回転は、ディスク66および対応した質量体20a、20b(21a、21b)のアーム68を軸Aの周りに回転させる。
【0102】
換言すると、各アクチュエータ80a、80b;81a、81bは、関連した電気モータ82への選択的な動力供給を通じて、対応した質量体20a、20b;21a、21bを軸Aの周りに対応したシャフト30;40に関して所定の角度だけ追加で回転させる。この回転は、軸Aの周りにおける個々の角速度(N-1)*Ω;(N+1)*Ωでの質量体20a、20b;21a、21bの継続的な回転を追加する。
【0103】
ロータ3はさらに、
- 機体2に担持された電源をアクチュエータ80a、80bの電気モータ82に電気的に接続するための第1スリップリング(図示略)と、
- 電源をアクチュエータ81a、81bの電気モータ82に電気的に接続するための第2スリップリング(同じく図示略)と、
を備えている。
【0104】
最終的に、ロータ3は、
- 軸Aに直交した面内における機体2の加速度の状態に対応した複数の信号を発生することが可能な、(
図2に概略的に示された)複数のセンサ85と、
- センサ85によって発生した信号の1つに基づいて、アクチュエータ80a、80b、81a、81bのための制御信号を発生するように構成された、(同じく
図2に概略的に示された)制御ユニット86と、
を備えている。
【0105】
使用時には、マスト6は、ハブ5およびブレード9を軸Aの周りに回転駆動する。
【0106】
より具体的には、マスト6は、機体2と一体化された基準システムを基準として、角速度Ωで軸Aの周りに回転する。
【0107】
ハブ5およびブレード9の回転は振動を生じ、この振動はマスト6に伝達され、そこからヘリコプター1の機体2へと伝達される。
【0108】
機体の固定されたシステムに関して、これらの振動は、主にN*Ωに等しい角振動数を有し、ここでNはブレード9の数であり、Ωはマスト6の角回転速度である。
【0109】
これらの振動を減少させるために、マスト6は、変速機ユニット19を通じて、軸Aの周りに個々の角速度(N-1)*Ω;(N+1)*Ω)で、且つマスト6の回転方向と同一のまたは反対の個々の方向において、質量体20a、20b;21a、21bの偏心回転を駆動する。
【0110】
遠心効果により、質量体20a、20b;21a、21bのこれらの偏心回転は、マスト6に作用する個々の第1および第2減衰力を生じる。
【0111】
より具体的には、第1および第2減衰力は正弦波曲線的であり、マスト6と一体化された基準システム内において(N-1)*Ωおよび(N+1)*Ωに等しい角振動数をそれぞれ有する。
【0112】
これらの第1および第2減衰力は、軸Aに直交した面内のこれらの振動による荷重に反作用する。
【0113】
さらに、これらの第1および第2減衰力は、機体2と一体化された基準システム内において、N*Ωに等しい角振動数、すなわち減衰されることを意図した振動力を阻害する角振動数を有する。
【0114】
第1および第2減衰力は、マスト6に個々の第1および第2合力を発生させる。
【0115】
これらの第1および第2合力は、質量体20a、20b;21a、21bの間の個々の角度に依存した振幅および位相を備えている。例えば、これらの第1および第2合力の振幅は、対応した質量体20a、20b;21a、21bの間の角度が0°の場合に最大になり、対応した質量体20a、20b;21a、21bの間の角度が180°の場合に最小になるだろう。
【0116】
質量体20a、20b;21a、21bが、個々の第1および第2合力をマスト6に加え、ならびにアクチュエータ80a、80b;81a、81bが稼働された場合且つそれらが停止された場合に、個々の角速度(N-1)*Ω;(N+1)*Ωで回転することを理解することは、重要である。
【0117】
一方で、アクチュエータ80a、80b;81a、81bの選択的な稼働は、マスト6への第1および第2合力の振幅および位相を変化させることを可能にする。
【0118】
ロータ3の機能は、これ以降、アクチュエータ80a、80b;81a、81bが停止した状態から開始するものとして記載されている。
【0119】
マスト6は、変速機ユニット19のステージ25を通じてシャフト30を、および変速機ユニット19のステージ26を通じてシャフト40を、軸Aの周りに回転駆動する。
【0120】
ステージ25および26は、シャフト30および40が、マスト6と一体化された基準システム内において、軸Aの周りを個々の角速度(N-1)*Ωおよび(N-1)*Ωで回転するようなサイズとされている。
【0121】
特に、マスト6およびシャフト30は同じ方向に回転し、シャフト40は、マスト6およびシャフト30とは反対方向に回転する。
【0122】
シャフト30;40は、対応した接続グループ60a、60b;61a、61bを用いて、質量体20a、20b;21a、21bを個々の角速度(N-1)*Ω;(N-1)*Ωで軸Aの周りに回転駆動する。
【0123】
より詳細には、シャフト30(40)は自身と一体に、スリーブ62、筐体63、シャフト64、ウォームねじ65、ディスク66、および個々の接続グループ60a、60b(61a、61b)に対応したアクチュエータ80a、80b(81a、81b)によって形成されたアセンブリを、軸Aの周りに回転駆動する。
【0124】
アクチュエータ80a、80b;81a、81bが停止した状態において、電気モータ82は動力供給されておらず、したがって、ウォームねじ65は軸Bに対して角度的に静止している。
【0125】
この状態においては、対応した接続グループ60a、60b(61a、61b)のウォームねじ65およびディスク66は、接続された剛体のような挙動を示す。このことは、ウォームねじ65とディスク66のギア歯67との間の不可逆動作の状態が、ディスク66の慣性に、ウォームねじ65とギア歯67との間の相対動作を生じさせることを防止しているために発生する。
【0126】
その結果、前述の状態においては、接続グループ60a、60b(61a、61b)のディスク66は、軸Aの周りにシャフト30(40)に対して角度移動可能な様式で装着されているが、シャフト30(40)によって個々の角速度(N-1)*Ω;((N+1)*Ω)で回転駆動される。
【0127】
ディスク66の回転は、アーム68を通じて、対応した質量体20a、20b;21a、21bを軸Aの周りに角速度(N-1)*Ω;(N+1)*Ωで偏心回転させる。
【0128】
ロータ3の機能は、これ以降、アクチュエータ80a、80b;81a、81bが稼働している状態を基準として記載されている。
【0129】
制御ユニット86は、第1および第2合力の位相および振幅を変化させる必要を検出した場合に、マスト6の加速度の状態に対応したセンサ85からの信号を受信して、アクチュエータ80a、80b;81a、81bの電気モータ82のための制御信号を発生させる。
【0130】
アクチュエータ80a、80b;81a、81bの1つ以上の電気モータ82の稼働は、個々の出力シャフト83を個々の軸Bの周りに所定の角度だけ回転させる。
【0131】
1つ以上の出力シャフト83は、対応したシャフト64およびウォームねじ65を、歯車84を用いて個々の軸Bの周りに所定の角度だけ回転駆動する。
【0132】
1つ以上のウォームねじ65の回転は1つ以上のディスク66を、したがって1つ以上の質量体20a、20b;21a、21bをマスト6に対して且つ軸Aの周りに所定の角度だけ回転させる。
【0133】
図11および
図12を参照すると、参照符号3’は、本発明の第2実施形態によるロータを示している。
【0134】
ロータ3’はロータ3と類似しており、これ以降は、ロータ3との差異に関してのみ記載されている。ロータ3、3’の同じまたは等価の部品は、可能であれば同じ参照符号によって示されている。
【0135】
特に、ロータ3’は、質量体20a、20b;21a、21b、アクチュエータ80a、80b;81a、81b、および接続グループ60a、60b;61a、61bが、流れコンベア10の本体14内に収容されている点において、ロータ3と異なっている。
【0136】
さらに、ロータ3’は、質量体20a、20b;21a、21bが個々に、軸Aに平行な個々の軸の周りを回転する個々のローラ22’のように成形されている点において、ロータ3と異なっており、ローラ22’は、軸Aに対して放射状に、対応したアーム68に対して移動可能なように装着され、流れコンベア10の本体14内に設けられた個々のガイド23’上を回転する。
【0137】
より具体的には、ローラ22’は、軸Aに平行な個々の軸の周りに延び、互いに対向し且つアーム68の自由端によって形成された対応した径方向スロット18’内を径方向にスライドする個々の軸端部24’を備えている。
【0138】
ロータ3’の機能は全体的にロータ3の機能と類似しており、ロータ3の機能とは異なった機能に関してのみ記載されている。
【0139】
特に、質量体20a、20b;21a、21bを形成したローラ22’は、本体14内に設けられたガイド23’に対して遠心力によって押し付けられる。
【0140】
ローラ22’が、対応したアーム68に対して、軸Aに対して放射状にスライドすることが可能でるので、ローラ22’に作用する遠心力は、流れコンベア10の本体14に蓄積される。
【0141】
図13を参照すると、参照符号3”は、本発明の第3実施形態によるロータを示している。
【0142】
ロータ3”はロータ3と類似しており、これ以降は、ロータ3との差異に関してのみ記載されている。ロータ3、3”の同じまたは等価の部品は、可能であれば同じ参照符号によって示されている。
【0143】
ロータ3”は、変速機ユニット19”が複数のステージ90a、90b;91a、91bを備えている点においてロータ3と異なっており、これらのステージは、角速度Ωで回転するマスト6からの動作を受けて、対応した質量体20a、20b;21a、21bのアーム68を、マスト6と一体化された基準システム内において対応した角速度(N-1)*Ω;(N+1)*Ωで回転駆動する。
【0144】
より詳細には、各ステージ90a、90bは、
- 動作入力部を形成し、且つマスト6と共に軸Aの周りを回転する環状歯車96a、96bと、
- シャフト98a、98bに接続されて、軸Aの周りを回転可能な太陽歯車97a、97bと、
- 複数の、図示されたケースにおいては3つの遊星歯車99a、99bであって、軸Aに平行且つ軸Aからオフセットされた、各自の自身の軸Hの周りを回転可能であり、個々に対応した軸Hの反対側の、環状歯車96a、96bのギア歯101a、101bおよび太陽歯車97a、97bのギア歯102a、102bと噛み合った個々のギア歯100a、100bを備えた遊星歯車99a、99bと、
- 遊星歯車キャリア103a、103bであって、個々の遊星歯車99a、99bが遊星歯車キャリアに対して個々の軸Hの周りを回転する、遊星歯車キャリア103a、103bと、
を備えている。
【0145】
各ステージ90c、90dは、
- 環状歯車96c、96dと、
- シャフト98c、98dに接続されて、軸Aの周りを回転可能な太陽歯車97c、97dと、
- 複数の、図示されたケースにおいては3つの遊星歯車99c、99dであって、軸Aに平行且つ軸Aからオフセットされた、各自の自身の軸Iの周りに回転可能であり、個々に対応した軸Iの反対側の、環状歯車96c、96dのギア歯101c、101dおよび太陽歯車97c、97dのギア歯102c、102dと噛み合った個々のギア歯100c、100dを備えた遊星歯車99c、99dと、
- ステージ90c、90dに共通した遊星歯車キャリア103cであって、動作入力部を形成し、マスト6と一体的に軸Aの周りを回転し、且つステージ90bの環状歯車96bに固定された遊星歯車キャリア103cと、
を備えている。
【0146】
遊星歯車99c、99dは、各自の自身の軸Iの周りを、共通の遊星歯車キャリア103cに対して回転可能である。
【0147】
各ステージ90a、90b、90c、90dは、ブローチ状要素104a、104b、104c、104dも備え、これらの要素は、対応した太陽歯車97a、97b、97c、97dに関して軸方向反対側且つ軸Aに関して放射状に外側に配置された個々のシャフト98a、98b、98c、98dの一部を、軸Aに関して放射状に内側に配置された対応した質量体21a、21b;20a、20bのアーム68の一部と接続している。
【0148】
図示されたケースにおいては、環状歯車96aは、マスト6から径方向外向きに延びたフランジ110に接続されている。
【0149】
環状歯車96bと遊星歯車キャリア103cとは、フランジ110の軸方向の反対側端部において、マスト6に接続された中空本体111に接続されている。
【0150】
図示されたケースにおいては、シャフト98a、98b、98c、98dは、軸Aの反対側に径方向に進んだ場合、この順に配置されている。
【0151】
シャフト98aは、マスト6を取り囲んでいる。
【0152】
本体111は、シャフト98a、98b、98c、98d、およびマスト6を取り囲んでいる。
【0153】
さらに、シャフト98a、98b、98c、98dは、この順において、軸Aに平行に測定された長さが減少している。
【0154】
軸Hは、軸Aと軸Iとの間に径方向に挟まれている。
【0155】
変速機ユニット19”は、ステージ90a、90b、90c、90dを収容し且つ詳細には示されていない方法で機体2に接続された筐体120をさらに備えている。
【0156】
遊星歯車キャリア103a、103bおよび環状歯車96c、96dは、個々の環状ブッシュ121a、121b、121c、121dによって、軸Aに対して同軸に筐体120に接続されている。
【0157】
図示されたケースにおいては、ブッシュ121a、121b;121c、121dは、軸Aに向かって筐体120から片持ち梁の様式で突出したアーム122;123と、個々の遊星歯車キャリア103a、103bおよび環状歯車96c、96dと、の間に挟まれている。
【0158】
ロータ3”もロータ3とは異なっており、アクチュエータ80a”、80b”、81a”、81b”は、遊星歯車キャリア103a、103bによっておよび環状歯車96c、96dによって、個々に担持されている。
【0159】
各アクチュエータ80a”、80b”、81a”、81b”は、
- 軸Bの周りを回転可能な出力部材83を備え、この出力部材にウォームねじ65が装着された電気モータ82”と、
- ウォームねじ65と噛み合ったはすば歯車歯67”を備え、対応した遊星歯車キャリア103a、103bおよび環状歯車96c、96dに固定されたディスク66”と、
をさらに備えている。
【0160】
ロータ3”の機能は、全体的にロータ3の機能と類似しており、ロータ3の機能との差異に関してのみ記載されている。
【0161】
特に、マスト6はシャフト98a、98bを、したがって質量体21a、21bを個々のステージ90a、90bを通じて回転駆動する。マスト6はシャフト98c、98dも、したがって質量体20a、20bも個々のステージ90c、90dを通じて回転駆動する。
【0162】
より詳細には、ステージ90c、90dは、質量体20a、20bが、角速度(N-1)*Ωでマスト6の回転方向と同じ回転方向に軸Aの周りを回転するような大きさとされている。ステージ90c、90dは、質量体21a、21bが、角速度(N+1)*Ωでマスト6の回転方向と反対の方向に軸Aの周りを回転するような大きさとされている。
【0163】
アクチュエータ80a”、80b”、81a”、81b”が停止した状態において、遊星歯車キャリア103a、103bおよび環状歯車96c、96dは、筐体120と角度的に一体となったままであり、したがって軸Aに対して角度的に固定されている。
【0164】
これらの状態においては、質量体20a、20b;21a、21bの間の角度は一定のままである。
【0165】
制御ユニット86が、第1および第2合力の位相または振幅を変化させる必要性を検出した場合、1つ以上のアクチュエータ80a”、80b”、81a”、81b”が稼働され、対応した遊星歯車キャリア103a、103bまたは環状歯車96c、96dに固定された、対応した1つ以上のウォームねじ65を軸Bの周りに、および対応した1つ以上のディスク66”を軸Aの周りに、所定の角度だけ回転させる。この回転は、対応した1つ以上の太陽歯車97a、97b、97c、97dに、続いて対応した1つ以上の質量体20a、20b、21a、21bに伝達される。
【0166】
遊星歯車キャリア103a、103bおよび/または環状歯車96c、96dの軸Aの周りの回転は、筐体120と、遊星歯車キャリア103a、103bおよび/または環状歯車96c、96dと、の間に挟まれたブッシュ121a、121b、121c、121dによって可能とされている。
【0167】
図14を参照すると、参照符号3’’’は、本発明の第4実施形態によるロータを示している。
【0168】
ロータ3’’’はロータ3に類似しており、これ以降、ロータ3との差異に関してのみ記載されている。ロータ3、3’’’の同一のまたは等価の部品は、可能であれば、同一の参照符号によって示されている。
【0169】
特に、変速機ユニット19’’’の全体、すなわち両方のステージが、流れコンベア10の本体14内に収容されている点において、ロータ3’’’はロータ3と異なっている。
【0170】
ロータ3’’’の機能はロータ3の機能と同じであり、したがって記載されていない。
【0171】
本発明によるロータ3、3’、3”、3’’’の試験から、それらと共に達成され得る利点が明白である。
【0172】
特に、質量体20a、20b;21a、21bは、変速機ユニット19、19’ 、19”、19’’’を通じてマスト6によって回転駆動される。
【0173】
このように、マスト6の回転を利用することによって、および個々の質量体20a、20b;21a、21bにより発生した力の第1および第2合力の振幅および位相を調整するためのみに電気モータ82、82”を使用することによって、軸Aに直交した面内でマスト6の「動的」振動減衰を達成することが可能である。これにより、コスト、体積、および重量を大幅に削減した「動的」減衰器に特有の利点を実現することが可能である。
【0174】
変速機ユニット19、19’、19”、19’’’が、マスト6と質量体20a、20b;21a、21bとの間に挟まれた遊星歯車装置を備えていることにより、高精度に且つ繰り返し可能に質量体20a、20b;21a、21bの回転速度を制御することが可能である。結果的に、質量体20a、20b;21a、21bの減衰動作は、特に正確且つ繰り返し可能でもある。
【0175】
アクチュエータ80a、80b、81a、81b;80a”、80b”、81a”、81b”は、ブレード9の運転状態の広い範囲において、第1および第2合力の位相および振幅を制御することが可能である。
【0176】
各ウォームねじ65と、対応したディスク66、66”のギア歯67との間の連結は、不可逆的である。より詳細には、各ウォームねじ65の軸Bの周りの回転は、対応したディスク66、66”を、その結果として対応したシャフト30、40、および対応した質量体20a、20b;21a、21bを軸Aの周りに回転させる。逆に、ディスク66の軸Aの周りの任意の回転は、対応したウォームねじ65を軸Bの周りに回転させない。それに加えて、ディスク66、66”は、マスト6に対して軸Aの周りに回転する方式で装着されている。
【0177】
したがって、電気モータ82、82”が停止された場合、対応したウォームねじ65は軸Bに対して角度的に静止し、ディスク66の慣性によって回転駆動されることが不可能である。この状態において、ウォームねじ65および対応したディスク66、66”は、接続された剛体のような挙動を示し、個々の角速度(N-1)*Ω((N+1)*Ω)でシャフト30(40)によって回転駆動される。
【0178】
逆に、電気モータ82、82”が稼働された場合、対応したウォームねじ65の回転は対応したディスク66、66”を、したがって対応した質量体20a、20b;21a、21bを、マスト6に対して且つ第1および第2合力の振幅および位相の所望の数値を達成するために必要な角度だけ軸Aの周りに回転させる。
【0179】
ロータ3’の質量体20a、20b;21a、21bを形成したローラ22’は、対応したアーム68に対して径方向に移動可能であり、ガイド23’内を径方向にスライドする。このように、第1および第2合力は、流れコンベア10の本体14に放出され、本体14からマスト6へと伝達される。
【0180】
ロータ3”のアクチュエータ80a”、80b”、81a”、81b”の電気モータ82、82”は、軸Aに対して角度的に固定されている。結果的に、これらの電気モータ82、82”に電力供給するためのスリップリングを設けることは必要とされず、製品およびロータ3”の保守作業を明らかに簡素化している。
【0181】
ロータ3、3’、3”、3’’’は、二対のアクチュエータ80a、80b、81a、81b;80a”、80b”、81a”、81b”を備えている。結果的に、質量体20a、20b;21a、21bの1つに接続された電気モータ82の1つが故障した場合、質量体20a、20b;21a、21bの他の1つに対応した電気モータ82を容易に操作して、軸Aの周りの角度位置を適切に変化させることによって、振動減衰機能を維持することが可能である。
【0182】
ロータ3’’’は、流れコンベア10の本体14内に収容された変速機ユニット19’’’の全体を備え、マスト6を自由にしており、アセンブリを簡素化している。
【0183】
最後に、改良および変形が、個々に記載され且つ図示されたロータ3、3’、3”、3’’’に、請求項によって定義された範囲から逸脱することなく適用されることが可能である。
【0184】
特に、ロータ3、3’、3”、3’’’は、ヘリコプター1の代わりに転換式航空機に使用され得る。
【0185】
さらに、質量体20a、20b;21a、21bの代わりに、ロータ3、3’、3”、3’’’は、これらの質量体と軸Aとの間の距離を調節するために操作可能な個々のパンタグラフに装着された2つの質量体を備え、これによりマスト6に生じた減衰力の合力の振幅および位相を制御し得る。
【0186】
最終的に、質量体20a、20b;21a、21bの代わりに、ロータ3、3’、3”、3’’’は、個々のアームにスライド可能に装着された2つの質量体、および個々の質量体と接触した、らせんプロファイルを有する一対のガイドを備え得る。この解決策において、アームは軸Aの周りに回転駆動され、マスト6に生じた減衰力の合力の位相を調節し、ガイドも回転駆動されて、この減衰力の合力の振幅を調節する。
【0187】
最終的に、本発明によるロータは、主ロータ3、3’、3”、3’’’の代わりにヘリコプター1のテールロータとなり得る。
【符号の説明】
【0188】
1 ・・・空中静止可能な航空機、ヘリコプター
2 ・・・機体
3、3’、3”、3’’’ ・・・ロータ
4 ・・・テールロータ
5 ・・・中空ハブ
6 ・・・マスト
7 ・・・スプラインプロファイル
8 ・・・楔
9 ・・・ブレード
10 ・・・流れコンベア
11、12 ・・・表面
13 ・・・第1周端縁
14 ・・・管状本体
15 ・・・振動減衰装置
19、19’、19”、19’’’ ・・・変速機ユニット
20a、20b、21a、21b ・・・質量体
22’ ・・・ローラ
23’ ・・・ガイド
25、26 ・・・ステージ
27 ・・・管状筐体
28 ・・・遊星歯車キャリア
29、45 ・・・太陽歯車
30、40 ・・・シャフト
31 ・・・ギア歯
33、35 ・・・遊星歯車
34、36 ・・・外側ギア歯
39、44 ・・・アーム
41 ・・・環状歯車
42 ・・・内側ギア歯
43 ・・・外側ギア歯
46、48 ・・・遊星歯車
47、49 ・・・外側ギア歯
51 ・・・筐体
60a、60b、61a、61b ・・・接続グループ
62 ・・・スリーブ
63 ・・・筐体
64 ・・・シャフト
65 ・・・ウォームねじ
66 ・・・ディスク
67 ・・・ギア歯
68 ・・・アーム
80a、80b、81a、81b ・・・アクチュエータ
82 ・・・電気モータ
83 ・・・出力シャフト
85 ・・・センサ
86 ・・・制御ユニット
90a、90b、90c、90d、91a、91b ・・・ステージ
96a、96b、96c、96d ・・・環状歯車
97a、97b、97c、97d ・・・太陽歯車
98a、98b、98c、98d ・・・シャフト
99a、99b、99c、99d ・・・遊星歯車
100a、100b、100c、100d、101a、101b、101c、101d、102a、102b、102c、102d ・・・ギア歯
103a、103b、103c ・・・遊星歯車キャリア
110 ・・・フランジ
111 ・・・中空本体
120 ・・・筐体
121a、121b、121c、121d ・・・環状ブッシュ