IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アールズィーノミクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7053697癌特異的トランス-スプライシングリボザイム及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】癌特異的トランス-スプライシングリボザイム及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20220405BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 35/763 20150101ALN20220405BHJP
   A61K 49/00 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
C12N15/113 110Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K31/7105
A61K35/763
A61K49/00
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020028556
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2020146033
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0021191
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021014
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520062823
【氏名又は名称】アールズィーノミクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・リュル・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・イ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・スク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ハ・ジュ
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532032(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0132594(KR,A)
【文献】Hepatology, 2018; 68, Suppl 1, AASLD Abstract (Poster) 882A, Abstract Number: 1550
【文献】Kim., J., et al., Scientific Reports, 2015; 5, 12315,
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)プローモーター;及び
(ii)癌特異的遺伝子配列を標的にするトランス-スプライシングリボザイム、前記リボザイムの3'エクソンに連結された目的遺伝子を含む、リボザイム-目的遺伝子発現カセットを含み、
前記発現カセットは、リボザイム-目的遺伝子発現カセットの5'末端にスプライシング供与体/スプライシング受容体配列(splicing donor/splicing acceptor sequence、SD/SA sequence)が連結され、3'末端にWPRE(Woodchuck hepatitis virus Posttranscriptional Regulatory Element)が連結されたもので、
(iii)前記WPREの3'末端にマイクロRNA-122(microRNA-122、miR-122)を認識する核酸配列が追加に連結され、
前記癌特異的遺伝子配列は、TERT(Telomerase reverse transcriptase)mRNAであることを特徴とする、組換えベクター。
【請求項2】
前記TERT mRNA配列は、配列番号2の核酸配列を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項3】
前記トランス-スプライシングリボザイムは、配列番号3の核酸配列を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項4】
前記目的遺伝子は、癌治療用遺伝子又はレポーター遺伝子であることを特徴とする、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項5】
前記癌治療用遺伝子は、薬剤感受性遺伝子、細胞死滅遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、細胞毒性遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子、抗原性遺伝子、サイトカイン遺伝子及び抗新生血管生成遺伝子からなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項4に記載の組換えベクター。
【請求項6】
前記薬剤感受性遺伝子は、HSVtk(Herpes simplex virus-thymidine kinase)遺伝子であることを特徴とする、請求項5に記載の組換えベクター。
【請求項7】
前記HSVtk遺伝子は、配列番号4の核酸配列を含むものであることを特徴とする、請求項6に記載の組換えベクター。
【請求項8】
前記レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ(luciferase)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、変形された緑色蛍光タンパク質(modified green fluorescent protein;mGFP)、増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein;EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、変形された赤色蛍光タンパク質(mRFP)、増強された赤色蛍光タンパク質(ERFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、増強された青色蛍光タンパク質(EBFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強された黄色蛍光タンパク質(EYFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)又は増強されたシアン蛍光タンパク質(ECFP)であることを特徴とする、請求項4に記載の組換えベクター。
【請求項9】
前記マイクロRNA-122を認識する核酸配列は、配列番号5の核酸配列を1コピー以上含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の組換えベクター。
【請求項10】
請求項1に記載の組換えベクターを含むことを特徴とする、遺伝子伝達システム。
【請求項11】
請求項1に記載の組換えベクター又は請求項10に記載の遺伝子伝達システムを有効成分で含むことを特徴とする、癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項12】
前記癌は、肝癌、膠芽腫、胆管癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、骨癌、乳房癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、白血病、子宮癌、卵巣癌、リンパ腫又は脳癌であることを特徴とする、請求項11に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項13】
前記癌は、癌組織で発現されるmiR-122のコピー数が前記薬学的組成物により癌組織で発現されるリボザイムのコピー数の100倍未満であることを特徴とする、請求項11に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項14】
前記癌は、癌組織でmiR-122が実質的に発現されないものであることを特徴とする、請求項13に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記肝癌は、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)、肝癌組織でmiR-122の発現が低下されるC型肝炎ウイルス、アルコール、慢性肝炎、肝硬変症、非アルコール性脂肪肝、及びアフラトキシンからなる群より選択されるいずれか一つ以上を原因とするものであることを特徴とする、請求項12に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項16】
前記薬学的組成物は、静脈内、動脈内、癌組織内及び皮下からなる群より選択される経路で投与されるものであることを特徴とする、請求項11~請求項15のうちいずれか一項に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項17】
前記薬学的組成物は、注射剤形態で投与されるものであることを特徴とする、請求項11~請求項15のうちいずれか一項に記載の癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌特異的トランス-スプライシングリボザイム及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
テロメラーゼ(telomerase)は、リボ核タンパク質(ribonucleoprotein)であって、染色体の3'末端に存在するテロメアの終端部位にTTAGGG配列を繰り返して添加することで、DNA複製時に短くなるテロメア部位を修復して細胞の永続的な増殖を可能にする。テロメラーゼは、癌細胞の永続性(immortality)及び増殖能力を調節する最も重要な酵素のうち一つであって、造血細胞及び80~90%の癌細胞がテロメラーゼ活性を有した一方、癌細胞隣近の正常細胞は、その活性を有しなく、さらに進行された転移癌の永続的成長にテロメラーゼの再活性が主な影響を及ばしている。
【0003】
ヒトのテロメラーゼは、基質RNAで作用するヒトテロメラーゼRNA(humantelomerase RNA、hTR)と触媒機能をするヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase、hTERT)の2個で構成されている。ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子は、テロメラーゼ活性と比例して発現され、細胞内のhTERTレベルと細胞のテロメラーゼ活性は深い相関関係がある。特に、癌患者の90%以上でTERT活性が観察される。
【0004】
最近、このようなhTERTを標的にするトランス-スプライシングリボザイム(trans-splicing ribozyme)が知られるにつれ、これを用いた癌治療剤を開発しようとする試みが活発に進行されている。しかし、トランス-スプライシングリボザイムと組織特異的なプローモーターとの組み合わせは、高い組織特異性を示す反面、発現効率が非常に低いため、治療効率の側面における短所が問題になる。また、幹細胞、造血母細胞、生殖細胞、正常的に細胞分裂する肝細胞(regenerating normal liver cell)などの正常細胞でもテロメラーゼ活性が現われるので、hTERTを標的にする治療が上記細胞に対する毒性を誘発することができる。肝細胞は、弱いが正常肝細胞の5%がテロメラーゼ活性を有しており、再生中の肝(regenerating liver)は、テロメラーゼ活性が増加することで知られている。特に、肝細胞癌腫(Hepatocellular carcinoma、HCC)は、大部分肝硬化が同伴され、このような肝硬化部位で再生結節を構成する非腫瘍性の肝細胞(non-tumorous hepatocytes)では、低いレベルであるがTERTが発現される。
【0005】
大韓民国公開特許第10-2016-0038674号は、組織特異的プローモーター、癌特異的遺伝子を標的にするトランス-スプライシングリボザイム、及び前記リボザイムの3'エクソンに連結された目的遺伝子を含むリボザイム-目的遺伝子発現カセットにマイクロRNA-122(microRNA-122、miR-122)を認識する核酸配列が追加的に連結された組換えベクターと、それから発現されたリボザイムの肝癌予防又は治療用途を開示している。前記miR-122は、正常の肝で非常に過量発現されると知られたマイクロRNAとして、肝癌に進行される場合、その発現が低くなる。 従来技術は、このような現象に基づいてリボザイム発現ベクターの3'UTR部位にmiR-122標的部位を導入することで、肝に伝達されたリボザイムが正常肝では過発現されたmiR-122により発現されないが、miR-122レベルが低くなった肝癌では発現されて作用するようにしたものである。
【0006】
しかし、従来技術は、治療効果を示すためにベクターが導入されたウイルスを高い濃度で処理しなければならない問題があった。また、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus、HCV)の感染が原因である肝癌組織では、多くの場合正常肝よりmiR-122の発現が増加するという報告があって、このようにmiR-122の発現が増加されている肝癌や肝癌以外の他の癌に適用可能であるかが問題になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許第10-2016-0038674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような問題を解決するためのものであって、安全性及び発現効率に優れた癌特異的トランス-スプライシングリボザイムの癌治療用途を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(i)サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)プローモーター;及び(ii)癌特異的遺伝子を標的にするトランス-スプライシングリボザイム、前記リボザイムの3'エクソンに連結された目的遺伝子を含む、リボザイム-目的遺伝子発現カセットを含み、前記発現カセットは、リボザイム-目的遺伝子発現カセットの5'末端にスプライシング供与体/スプライシング受容体配列(splicing donor/splicing acceptor sequence、SD/SA sequence)が連結され、3'末端にWPRE(Woodchuck hepatitis virus Posttranscriptional Regulatory Element)が連結されたもので、(iii)前記WPREの3'末端にマイクロRNA-122(microRNA-122、miR-122)を認識する核酸配列が追加に連結されたことを特徴とする組換えベクターを提供する。
【0010】
また、本発明は、前記組換えベクターを含む遺伝子伝達システムを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記組換えベクターから発現されたリボザイムを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記組換えベクター、遺伝子伝達システム又はリボザイムを有効成分で含む癌の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるトランス-スプライシングリボザイムは、正常組織には作用せず癌組織で特異的に発現されるので、安全性が高く、転写後レベルで発現効率に優れるので、癌の治療において有用に用いられ得る。具体的に、本発明の組換えベクターは、CMVプローモーター、SD/SA及びWPRE配列を保有することで、リボザイムの発現効率が高く、miR-122Tを保有してmiR-122により活性が調節できるので、安全性に優れる。したがって、HCVが原因である肝癌のうち、miR-122の発現が正常組織より癌組織で高く現われる一部肝癌を除けば、全ての肝癌の治療において効果的に用いられ得、miR-122を実質的に発現しない他の癌の治療にも効果的に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のCMVプローモーターに基づいたhTERT標的トランス-スプライシングリボザイム及び目的遺伝子発現カセットの構成を示した模式図である。
図2図2は、miR-122を発現しないHep3B細胞株(a)及びmiR-122を発現するHuh-7.5細胞株(b)で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図3図3は、miR-122を発現しない細胞株(a:Hep3B、b:SNU398、c:SNU449)で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図4図4は、miR-122を発現する細胞株(a:Huh-7、b:Huh-7.5)で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図5図5は、miR-122を発現するか又は発現しない多様な肝癌細胞株で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図6図6は、ソラフェニブに対して感受性があるか又は感受性のない肝癌患者由来の細胞株で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図7図7は、動物の肝癌モデルでECRT又はECRT-122Tを発現するアデノウイルスの注入用量による腫瘍重量(a)、腫瘍組織(b)及び肝酵素(GOT:glutamic oxaloacetic transaminase、GPT:glutamic pyruvic transaminase)数値(c)を確認した結果である。
図8図8は、 miR-122を発現するHuh-7細胞株で形質導入された組換えベクターのMOIによるRNA発現量(a:E4、b:リボザイム、c:miR-122)を示したグラフである。
図9図9は、miR-122を発現するHuh-7.5細胞株で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによるRNA発現量(a:E4、b:リボザイム、c:miR-122)を示したグラフである。
図10図10は、miR-122テトラサイクリン-オンシステムを有するHep3B安定化細胞株クローン(#7-14、7-4及び7-2)で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOI及びテトラサイクリン濃度による細胞生存率、miR-122発現量及びリボザイム発現量を示したグラフである。
図11図11は、肝癌患者の正常肝組織と肝癌組織でmiR-122の発現量を比較したグラフである(a:全体患者群、b:HBV連関患者群、c:HCV連関患者群、d:アルコール連関患者群、e:HBV及びHCV連関患者群を除いた慢性肝炎連関患者群、f:その他病因患者群)。
図12図12は、患者の肝癌細胞に由来した肝癌細胞株でhTERTのmRNA(a)及びタンパク質レベル(b)、miR-122レベル(c)を分析した結果である。
図13図13は、大膓癌細胞株、膠芽腫細胞株、黒色腫細胞株、子宮頸部癌細胞株、肺癌細胞株、骨肉種細胞株及び乳房癌細胞株で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図14図14は、胆管癌細胞株(a:SNU478、b:SNU869)で形質導入されたECRT-122TアデノウイルスのMOIによる細胞生存率を示したグラフである。
図15図15は、ヌードマウスに膠芽腫細胞であるLN229細胞株を注入して腫瘍形成を誘導した後、ECRT-122Tアデノウイルスを投与して腫瘍サイズ(a)及び腫瘍重量(b)を確認したグラフである。
図16図16は、ヌードマウスに膠芽腫細胞であるU87MG細胞株を注入して腫瘍形成を誘導した後、ECRT-122Tアデノウイルスを投与して腫瘍サイズを確認したグラフである。
図17図17は、正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを静脈注射で注入した後、主要組織で組換えベクターの分布程度を示したグラフである。
図18図18は、ラットにECRT-122Tアデノウイルスを肝動脈注射で注入した後、主要組織で組換えベクターの分布程度を示したグラフである。
図19図19は、ラットにECRT-122Tアデノウイルスを肝動脈注射で注入した後、各臓器でゲノムDNA(gDNA)を分離してHSVtk DNAを定量した結果を示したグラフである。
図20図20は、ラットにECRT-122Tアデノウイルスを肝動脈注射で注入した後、肝で分離したRNAからリボザイム発現レベルを確認した結果を示したグラフである。
図21図21は、正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを注入 AST及びALTレベルを測定した結果を示したグラフである。
図22図22は、正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを注入 マウスの体重(a)、飼料消費量(b)及び肝重量(c)を測定した結果を示したグラフである。
図23図23は、正常ICRマウスに他の用量のECRT-122Tアデノウイルスを注入した後の肝の組織病理学的検査結果を示す。
図24図24は、正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを注入し、GCVを処理した後AST及びALTレベルを測定した結果を示したグラフである。
図25図25は、正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを注入し、GCVを処理した後マウスの体重(a)、飼料消費量(b)及び肝重量(c)を測定した結果を示したグラフである。
図26図26は、正常ICRマウスに他の用量のECRT-122Tアデノウイルスを注入し、GCVを処理した後の肝の組織病理学的検査結果を示す。
図27図27は、マウスにHep3B細胞を注入して肝癌形成を誘導した後、CRT-122T又はECRT-122Tアデノウイルスを投与して抗癌効能を比較した結果を示す。
図28図28は、マウス異種移植皮下モデルにSNU398細胞を注入して腫瘍形成を誘導した後、CRT-122T又はECRT-122Tアデノウイルスを投与して抗癌効能を比較した結果を示す。
図29図29は、正常ICRマウスにECRT又はECRT-122Tアデノウイルスを注入した後、AST及びALTレベルを測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0016】
本発明で、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
<組換えベクター>
本発明の一様態は、(i)サイトメガロウイルスプローモーター;及び(ii)癌特異的遺伝子配列を標的にするトランス-スプライシングリボザイム、前記リボザイムの3'エクソンに連結された目的遺伝子を含む、リボザイム-目的遺伝子発現カセットを含み、前記発現カセットは、リボザイム-目的遺伝子発現カセットの5'末端にスプライシング供与体/スプライシング受容体配列(SD/SA sequence)が連結され、3'末端にWPREが連結されたもので、(iii)前記WPREの3'末端にマイクロRNA-122を認識する核酸配列が追加に連結されたことを特徴とする組換えベクターである。
【0018】
本発明による組換えベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プローモーターを用い、リボザイム及び目的遺伝子の両末端にSD/SA配列及びWPREを構成要素で含ませるとき、生体内で癌治療効果が卓越であることに基づき、CMVプローモーター、SD/SA配列及びWPREを同時に用い、miR-122を認識する核酸配列を追加に含むことで、肝癌細胞だけではなく多様な癌細胞の治療を可能にしたことを特徴とする。
【0019】
本発明で用いられた用語「ベクター」は、適当な宿主細胞で目的遺伝子を発現することができる発現ベクターであって、ベクター内に含まれた遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子構造物のことを言う。
【0020】
本発明で用いられた用語「作動可能に連結された(operably linked)」は、一般的機能を行う核酸発現調節配列と目的する遺伝子をコーディングする核酸配列が機能的に連結(functional linkage)されていることを言う。
【0021】
例えば、リボザイム暗号化配列をプローモーターに作動可能に連結させることによって、リボザイム暗号化配列の発現は、プローモーターの影響又は調節下に置かれるようになる。2本の核酸配列(リボザイム暗号化配列及びこの配列の5'末端のプローモーター部位配列)は、プローモーター作用が誘導されてリボザイム暗号化配列が転写されると、作動可能に連結されたものであり、前記2本の配列間の連結特性がフレームシフト突然変異(frameshift mutation)を誘導しなく、発現調節配列がリボザイムの発現を阻害しない場合、作動可能に連結されたと言う。組換えベクターとの作動可能な連結は、当該技術の分野においてよく知られた遺伝子組換え技術を用いて製造することができ、部位-特異的DNA切断及び連結は、当該技術の分野において一般的に知られた酵素などを用いることができる。
【0022】
本発明によるベクターは、プローモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル、エンハンサーのような発現調節要素外にも、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列又はリーダー配列を含み、目的に応じて様々に製造され得る。ベクターのプローモーターは、構成的又は誘導性であってもよい。また、発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能な発現ベクターの場合は複製起点を含むことができる。ベクターは、自己複製するか宿主DNAに統合され得る。
【0023】
本発明によるベクターは、好ましくは、プラスミドベクター、コズミドベクター又はウイルスベクターなどであってもよく、より好ましくは、ウイルスベクターであってもよい。前記ウイルスベクターは、好ましくは、レトロウイルス(Retrovirus)、例えば、ヒト免疫欠乏ウイルス(Human immunodeficiency virus、HIV)、マウス白血病ウイルス(Murine leukemia virus、MLV)、鳥類肉腫/白血病ウイルス(Avian sarcoma/leucosis virus、ASLV)、脾臓壊死ウイルス(Spleen necrosis virus、SNV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus、RSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(Mouse mammary tumor virus、MMTV)など、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ関連ウイルス(Adeno-associated virus、AAV)又は単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus、HSV)などに由来したベクターであってもよいが、これに制限されない。本発明による組換えベクターは、さらに好ましくは、組換えアデノウイルスベクターであってもよい。
【0024】
本発明で用いられた用語「発現カセット」は、CMVプローモーターとトランス-スプライシングリボザイム-目的遺伝子を含み、トランス-スプライシングリボザイム-目的遺伝子の各末端にSD/SA配列及びWPRE配列が存在し、前記WPREの3'末端には、miR-122を認識する核酸配列が追加に連結されたことを特徴として、トランス-スプライシングリボザイム-目的遺伝子を発現させることができる単位カセットを意味する。
【0025】
本発明によるトランス-スプライシングリボザイム-目的遺伝子発現カセットは、前記トランス-スプライシングリボザイム-目的遺伝子が連結された配列に転写レベルを調節する配列、すなわち、調節誘導体をさらに含むものであってもよい。これに制限されるものではないが、本発明では、特にスプライシング供与体/スプライシング受容体配列(splicing donor/splicing acceptor sequence、SD/SA sequence)及び/又はWPRE(Woodchuck hepatitis virus Posttranscriptional Regulatory Element)が連結され、前記WPREの3'末端には、miR-122を認識する配列が追加に連結されていてもよい。これにより、リボザイム-目的遺伝子の発現レベルを調節することができ、miR-122が一定レベル以下であるときのみリボザイムが発現されるようにして正常肝細胞に及ぶ影響を最小化することができる。
【0026】
本発明によるリボザイム-目的遺伝子発現カセットは、好ましくは、リボザイムの5'末端にスプライシング供与体/スプライシング受容体配列(SD/SA)が連結され、目的遺伝子の3'末端には、WPREが連結され、前記WPREの3'末端にmiR-122を認識する配列が連結されたものであってもよい。
【0027】
本発明によるSD/SAは、転写開始(transcription initiation)とRNAポリメラーゼ(polymerase)IIのプロセッシング(processing)及びmRNAの核から細胞質への移動(nucleocytoplasmic export)を増加させ、本発明によるWPREは、mRNAのプロセッシングと核から細胞質への移動を増加させることによって、それぞれpre-mRNAのレベルを増加させることができる。上記のような構成を通じて、細胞内でリボザイムのRNAレベルを顕著に増加させて生体内で癌細胞の死滅は高めると共に癌細胞特異的に発現が行われるようにすることで、正常細胞に及ぼす毒性は却って減少させることができる。
【0028】
本発明によるSD/SA配列は、RNA転写体のイントロンを除去するスプライシング反応において切り離されるイントロンの開始部分と終止部分に該当する配列であって、一般的に、SD配列は、イントロン5'末端のGU配列であってもよく、SA配列は、イントロンの3'末端のAG配列であってもよい。
【0029】
本発明によるWPREは、DNAに転写を促進する3次構造を誘導して遺伝子の発現を増加させる配列を意味する。
【0030】
本発明で、前記SD/SA配列及びWPRE配列は、それぞれ配列番号6及び配列番号7の配列を含むことができるが、目的遺伝子発現カセット内に存在しながら目的遺伝子の発現を促進させることができる限り、これに制限されない。
【0031】
本発明によるmiR-122を認識する核酸配列は、本明細書内でmiR-122T(microRNA-122 target site)と名付けられる。前記miR-122Tは、配列番号5の配列を1回以上含むことができ、例えば、1回~10回、好ましくは、1回~5回、より好ましくは、1回~3回繰り返して含むことができる。miR-122は、正常肝細胞では正常的に発現されるが、肝癌細胞では発現量が減少する特徴がある。これを用いて肝癌細胞に対する敏感度及び特異度を増加させた治療剤を開発することができ、本発明では、目的遺伝子が連結されたリボザイムにmiR-122を認識する核酸配列を連結することで肝癌細胞特異的なリボザイムの発現が行われるようにした。
【0032】
本発明の一実施例で、SD/SA及びWPREが追加に連結された場合、リボザイムの発現が増加して細胞死を誘導する効果が一層増加する。また、miR-122を標的にするmiR-122Tを連結することで、miR-122の発現が正常的に行われる正常肝細胞に対しては細胞死を誘導せず、miR-122の発現が減少された肝癌細胞に対してのみ細胞死を誘導して肝癌細胞特異的に治療が可能であることを確認した(図2)。
【0033】
本発明で用いられた用語「癌特異的遺伝子」は、癌細胞でのみ特異的に発現されるか又は顕著に過発現される遺伝子を意味する。前記癌特異的遺伝子は、本発明によるリボザイムが癌特異的に作用できる特徴を付加することができる。このような癌特異的遺伝子は、好ましくは、TERT(Telomerase reverse transcriptase)mRNA、AFP(alphafetoprotein)mRNA、CEA(carcinoembryonic antigen)mRNA、PSA(Prostate-specific antigen)mRNA、CKAP2(Cytoskeleton-associated protein 2)mRNA又はmutant RAS(Rat sarcoma)mRNAであってもよく、より好ましくは、TERT(Telomerase reverse transcriptase)mRNAであってもよく、さらに好ましくは、hTERT(human telomerase reverse transcriptase)mRNA配列であってもよい。
【0034】
本発明で用いられた用語「TERT」は、癌細胞の永続性(immortality)及び増殖(proliferation)能力を調節する最も重要な酵素のうち一つであって、染色体に末端小粒(telomere)構造を形成して染色体の末端を保護する役目を通じて細胞の老化を抑制する酵素を意味する。正常的な細胞では、細胞が分裂する度に末端小粒の長さが少しずつ短くなり、ついには遺伝物質が損失されて、細胞が死滅するようになる。しかし、癌細胞では、この酵素が末端小粒を継続的に延長させるため、細胞が死滅せず、癌細胞の不滅性に直接寄与することにより、癌の治療において重大な障害要素と知られている。本発明では、癌特異的遺伝子として配列番号2の配列を含むhTERT mRNAを用いることができるが、これに制限されない。
【0035】
本発明で用いられた用語「プローモーター」は、DNAの一部分に転写を開始することができるようにRNA重合酵素の結合に関与する。一般的に、標的遺伝子に隣接してその上流に位置しており、RNA重合酵素又はRNA重合酵素を誘導するタンパク質である転写因子(transcription factor)が結合する場所であって、前記酵素又はタンパク質が正確な転写開始部位に位置するように誘導することができる。すなわち、センスストランド(sense strand)で転写しようとする遺伝子の5'部位に位置してRNA重合酵素が直接又は転写因子を介して該当位置に結合して、標的遺伝子に対するmRNA合成を開始するように誘導するものであって、特定の遺伝子配列を有する。
【0036】
本発明によるプローモーターは、遺伝子の発現を高めるための観点で、配列番号1の配列を含むサイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)プローモーターであることが好ましい。
【0037】
本発明の一実施例で、本発明による組換えベクターにCMVプローモーターを導入すると、リボザイムの発現効率に優れ、組換えベクターが保有したmiR-122TによりmiR-122の調節を受けるが、高いリボザイム発現によってある程度のmiR-122発現にもかかわらず細胞死を誘導して抗癌効果を示すことを確認した(図3及び図4)。
【0038】
本発明で用いられた用語「リボザイム」は、酵素のように作用するRNA分子又はそのRNA分子を含むタンパク質から構成される分子であって、RNA酵素又は触媒的RNAとも呼ばれる。明確な3次構造を有するRNA分子で化学反応を行い、触媒的又は自己触媒的特性を有する。一部のリボザイムは、自己又は他のRNA分子を切断して活性を阻害し、他のリボザイムは、リボソームのアミノ基転移酵素(aminotransferase)活性を触媒することが確認された。このようなリボザイムには、ハンマーヘッド(hammerhead)リボザイム、VSリボザイム及びヘアピン(hairpin)リボザイムなどが含まれ得る。
【0039】
本発明によるリボザイムは、トランス-スプライシング反応を通じて癌特異的遺伝子の活性を阻害させて選択的な抗癌効果を示すことができるだけではなく、癌治療遺伝子と接合された形態で発現されて癌治療遺伝子を活性化させることができる。したがって、癌特異的遺伝子を不活性化させ、癌治療遺伝子を活性化させることができる特性を示すものであれば、如何なる形態のものでも使用することができる。
【0040】
本発明によるリボザイムは、好ましくは、上述したhTERT mRNAを標的するリボザイムであってもよく、hTERTが過多発現される癌細胞を標的にしてhTERT mRNAを特異的に切断して発現を抑制させ、治療遺伝子を特異的に発現させる役目を果たすことができる。
【0041】
本発明で用いられた用語「トランス-スプライシング(trans-splicing)」は、互いに異なる遺伝子からのRNAを互いに連結することを意味する。好ましくは、癌に特異的なhTERTのmRNAを認知してトランス-スプライシングする能力が検証されたhTERT標的トランス-スプライシンググループIリボザイムを用いるものであってもよい。
【0042】
本発明で用いられた用語「目的遺伝子」は、前記リボザイムにより癌特異的遺伝子のmRNAと連結されて発現が誘導される遺伝子を意味する。
【0043】
本発明による目的遺伝子は、好ましくは、癌治療用遺伝子又はレポーター遺伝子であってもよく、より好ましくは、癌治療用遺伝子であってもよい。
【0044】
本発明で用いられた用語「癌治療遺伝子(anti-cancer therapeutic gene)」は、癌細胞で発現するとき治療学的効果を示すポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチド配列を意味する。前記癌治療遺伝子は、前記リボザイムと接合された形態で発現されるか又は独立的に発現されて抗癌活性を示すことができる。このような癌治療遺伝子は、好ましくは、薬剤感受性遺伝子、細胞死滅遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、細胞毒性遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子、抗原性遺伝子、サイトカイン遺伝子及び抗新生血管生成遺伝子からなる群より選択される一つ以上であってもよく、より好ましくは、薬剤感受性遺伝子であってもよい。
【0045】
本発明では、前記癌治療遺伝子を単独で用いるか、又は二つ以上の遺伝子を複合的に用いることができる。
【0046】
本発明による薬剤感受性遺伝子(drug-sensitizing gene)は、毒性のない前駆体(prodrug)を毒性物質に転換させる酵素をコーディングする遺伝子であって、遺伝子が導入された細胞が死滅するようになるので、自殺遺伝子(suicide gene)とも呼ばれる。すなわち、正常細胞には毒性のない前駆体を全身に投与したとき、癌細胞にのみ前駆体が毒性代謝物(toxic metabolite)に転換されて薬剤に対する感受性を変化させることで癌細胞を破壊させる方法である。このような薬剤感受性遺伝子は、好ましくは、ガンシクロビル(ganciclovir)を前駆体で用いるHSVtk(Herpes simplex virus-thymidine kinase)遺伝子、又は5-フルオロシトシン(5-fluorocytosine、5-FC)を前駆体にする大膓菌のシトシン脱アミノ酵素(cytosine deaminase、CD)遺伝子であってもよく、より好ましくは、配列番号4の配列を含むHSVtk遺伝子であってもよい。
【0047】
本発明による細胞死滅遺伝子(proapoptotic gene)は、発現されるとプログラムされた細胞死を誘導するヌクレオチド配列を言う。当業者に公知された細胞死滅遺伝子には、p53、アデノウイルスE3-11.6K(Ad2及びAd5由来)又はアデノウイルスE3-10.5K(Ad由来)、アデノウイルスE4遺伝子、p53経路遺伝子及びカスパーゼをコーディングする遺伝子が含まれ得る。
【0048】
本発明による細胞増殖抑制遺伝子(cytostatic gene)は、細胞内で発現されて細胞周期の途中で細胞周期を停止させるヌクレオチド配列を意味する。その例として、p21、網膜芽細胞腫遺伝子、E2F-Rb融合タンパク質遺伝子、サイクリン従属性キナーゼ抑制因子をコーディングする遺伝子(例えば、p16、p15、p18及びp19)、成長中止特異性ホメオバックス(growth arrest specific homeobox、GAX)遺伝子などがあり、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明による細胞毒性遺伝子(cytotoxic gene)は、細胞内で発現されて毒性効果を現わすヌクレオチド配列を言う。その例として、シュードモナス外毒素(exotoxin)、リシン毒素、ジフテリア毒素などをコーディングするヌクレオチド配列などがあり、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明による腫瘍抑制因子遺伝子(tumor suppressor gene)は、標的細胞内で発現されて腫瘍表現型を抑制することができるか細胞死滅を誘導することができるヌクレオチド配列を意味する。代表的なものとして、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor-α、TNF-α)、p53遺伝子、APC遺伝子、DPC-4/Smad4遺伝子、BRCA-1遺伝子、BRCA-2遺伝子、WT-1遺伝子、網膜芽細胞腫遺伝子、MMAC-1遺伝子、大腸腺腫症ポリポーシスタンパク質(adenomatous polyposis coil protein)、欠損された結腸腫瘍(DCC)遺伝子、MMSC-2遺伝子、NF-1遺伝子、染色体3p21.3に位置した鼻咽喉腫瘍抑制因子遺伝子、MTS1遺伝子、CDK4遺伝子、NF-1遺伝子、NF-2遺伝子、VHL遺伝子又はsPD-1(programmed death-1)が含まれ得る。
【0051】
本発明による抗原性遺伝子(antigenic gene)は、標的細胞内で発現されて免疫システムで認識できる細胞表面抗原性タンパク質を生産するヌクレオチド配列を言う。当業者に公知された抗原性遺伝子の例には、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen、CEA)及びp53が含まれ得る。
【0052】
本発明によるサイトカイン遺伝子(cytokine gene)は、細胞内で発現されてサイトカインを生成するヌクレオチド配列を意味する。代表的なものとして、GMCSF、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-4、IL-12、IL-10、IL-19、IL-20)、インターフェロンα、β、γ(インターフェロンα-2b)及びインターフェロンα-2α-1のような融合体などが含まれ得る。
【0053】
本発明による抗新生血管生成遺伝子(anti-angiogenic gene)は、発現されて抗新生血管生成因子を細胞の外に放出するヌクレオチド配列を言う。その例として、アンギオスタチン、血管内皮成長因子(VEGF)の抑制因子、エンドスタチンなどが含まれ得る。
【0054】
本発明で用いられた用語「HSV-tk(Herpes simplex virus-thymidine kinase)」は、単純疱疹ウイルスに由来するチミジンリン酸化酵素を意味する。この酵素は、毒性のない前駆体(prodrug)を毒性物質に転換させることで、その遺伝子が移入された細胞を死滅させる薬剤感受性遺伝子の代表的な例である。本発明において、HSVtk遺伝子は、本発明によるリボザイムに接合された形態で発現されて抗癌活性を示す癌治療遺伝子として用いられ得る。このようなHSVtk遺伝子は、好ましくは、ジェンバンク(genbank)登録番号AAP13943、P03176、AAA45811、P04407、Q9QNF7、KIBET3、P17402、P06478、P06479、AAB30917、P08333、BAB84107、AAP13885、AAL73990、AAG40842、BAB11942、NP_044624、NP_044492、CAB06747などに記載されたものであってもよい。
【0055】
本発明で用いられた用語「レポーター遺伝子」は、本発明の一例による組換えベクターの導入有無又はリボザイムの発現効率をモニタリングするために用いられる遺伝子であって、感染された細胞又は組織の損傷を伴うことなくモニタリングすることができる遺伝子であれば、制限なしに用いられ得る。好ましくは、ルシフェラーゼ(luciferase)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、変形された緑色蛍光タンパク質(modified green fluorescent protein;mGFP)、増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein;EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、変形された赤色蛍光タンパク質(modified red fluorescent protein;mRFP)、増強された赤色蛍光タンパク質(ERFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、増強された青色蛍光タンパク質(EBFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強された黄色蛍光タンパク質(EYFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)又は増強されたシアン蛍光タンパク質(ECFP)であってもよい。
【0056】
目的遺伝子としてレポーター遺伝子を挿入して癌細胞特異的なリボザイムの発現程度を観察することができ、特に、本発明のリボザイムは、プローモーター及びマイクロRNA標的部位を含んでいるため、正常細胞では発現されなく癌細胞特異的に発現することができる。これを用いて特定の組織で癌が発生したか否かを診断するのに適用できることは、当業者にとって自明なことである。
【0057】
<遺伝子伝達システム>
本発明の他の様態は、本発明による組換えベクターを含む遺伝子伝達システムである。
【0058】
本発明で用いられた用語「遺伝子伝達システム(gene delivery system)」は、目的する遺伝子及び/又は核酸配列の細胞内部への伝達効率を高めて発現効率を増加させることができるシステムを意味し、ウイルス媒介システム及び非ウイルスシステムに分類され得る。
【0059】
ウイルス媒介システムは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターのようなウイルス性ベクターを用い、ヒト細胞に感染を起こすウイルス固有の細胞内浸透機序を用いるので、非ウイルス性システムより細胞内遺伝子伝達効率が比較的高いと知られている。また、細胞内に入った後、非ウイルス性ベクターは、エンドソームがリボソームと融合された後にエンドリボソームで遺伝子が分解される問題点があるが、ウイルス性ベクターは、リボソームを通過せず核内に遺伝子を伝達する機序により遺伝子の損失が小さいので遺伝子伝達効率が高い長所がある。
【0060】
本発明で用いられるウイルス性ベクターは、前記組換えベクターで説明したように、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどに由来したベクターであってもよい。このようなウイルス性ベクターは、ウイルス粒子に組み立てられた後、感染(infection)のような形質導入(transduction)方法で細胞の内部に導入され得る。
【0061】
本発明の一実施例で、遺伝子伝達体の例として上述した組換えベクターを含む組換えアデノウイルスを考案した。すなわち、前記組換えアデノウイルスは、癌特異的遺伝子に特異的なトランス-スプライシングリボザイムを発現する組換えベクターを目的する細胞(例えば、癌細胞)に伝達する機能を行い、細胞内に伝達された組換えベクターは、細胞内の転写システムにより発現される。発現されたトランス-スプライシングリボザイムは、癌細胞内にたくさん存在する癌特異的遺伝子の転写体にリボザイムに連結された目的遺伝子を挿入することができる。
【0062】
前記非ウイルス性システムは、核酸及び/又は遺伝子の伝達媒介体として陽イオン性脂質伝達体又は陽イオン性高分子伝達体などを用いるか、電気穿孔法を用いる方法である。
【0063】
陽イオン性脂質伝達体は、主に陽イオン性脂質からなったナノメートルサイズのリボソームや脂質素材ナノ粒子の陽電荷を用いて陰電荷である遺伝子、遺伝子を含む発現ベクター又は核酸と複合体を形成させた後、この複合体を貪食作用によって細胞内に伝達する方法である。細胞内に伝達された複合体は、エンドソームからリボソームに1次伝達された後、細胞質に抜け出て発現される。陽イオン性高分子伝達体は、脂質の代わりに高分子を用いること以外は、陽イオン性脂質伝達体と類似な方式で遺伝子を伝達し、代表的な陽イオン性高分子としては、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine)、ポリL-リシン(poly-L-lysine)、キトサン(chitosan)などがある。
【0064】
したがって、本発明の組換えベクターが陽イオン性脂質伝達体又は陽イオン性高分子伝達体と結合して形成された複合体は、遺伝子伝達体で用いられ得る。
【0065】
本発明で、前記遺伝子伝達システムは、上述した組換えベクターを含み、ウイルス媒介システム及び非ウイルスシステムに全て用いられ得るが、ウイルス媒介システムを用いることが好ましい。
【0066】
<リボザイム>
本発明の他の様態は、本発明による組換えベクターから発現されたリボザイムである。
【0067】
本発明による組換えベクター又はリボザイムに関する内容は、上述した通りである。
【0068】
<薬学的組成物>
本発明の他の様態は、本発明による組換えベクター、前記組換えベクターを含む遺伝子伝達システム又はリボザイムを有効成分で含む癌の予防又は治療用薬学的組成物である。
【0069】
本発明による組換えベクター、遺伝子伝達システム又はリボザイムに関する内容は、上述した通りである。
【0070】
本発明で用いられた用語「癌」は、細胞の正常的な分裂、分化及び死滅の調節機能に問題が発生して非正常的に過多増殖し、周囲組織及び臓器に浸潤して塊りを形成し、既存の構造を破壊するか変形させた状態を意味する。
【0071】
本発明による癌は、好ましくは、肝癌、膠芽腫、胆管癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、骨癌、乳房癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、白血病、子宮癌、卵巣癌、リンパ種又は脳癌であってもよく、より好ましくは、肝癌、膠芽腫又は胆管癌であってもよく、さらに好ましくは、肝癌であってもよい。
【0072】
また、本発明による癌は、好ましくは、癌組織で発現されるmiR-122のコピー数(発現量)が前記薬学的組成物により癌組織で発現されるリボザイムのコピー数の100倍未満のものであってもよい。
【0073】
本発明の一実施例で、細胞死を誘導することができるmiR-122Tを保有したhTERT標的リボザイムの発現量と細胞内miR-122の発現量を比較した結果、リボザイムに対するmiR-122の割合が高くなるほどリボザイムの発現が減少して細胞死の誘導効果が減少した(図4、8及び9)。したがって、癌組織内のmiR-122発現量によって抗癌効果を現わすためのリボザイムの量を類推してリボザイムを発現するアデノウイルスの注入量を決めることができる。具体的に、miR-122の最小コピー数がリボザイムのコピー数の約100倍以上であると、miR-122標的部位を有するリボザイムの機能(発現)が弱化されるので、癌組織で発現されるmiR-122のコピー数が本発明による薬学的組成物により癌組織で発現されるリボザイムのコピー数の100倍未満であれば、高い抗癌効能が得られることを確認した(図10)。
【0074】
また、本発明による癌は、好ましくは、癌組織でmiR-122が実質的に発現されない癌であってもよい。前記「癌組織でmiR-122が実質的に発現されない癌」とは、癌組織でmiR-122が発現されるが、miR-122標的部位を有するリボザイムの機能に実質的な影響を及ぼさないほどに癌組織で発現されるmiR-122のコピー数が少ない癌を意味する。
【0075】
本発明の一実施例で、癌組織でmiR-122が実質的に発現されない大腸癌、膠芽腫、黒色腫、子宮頸部癌、肺癌、骨肉種、乳房癌及び胆管癌細胞株で本発明によるリボザイムの抗癌効能を確認した(図13及び図14)。
【0076】
また、本発明による肝癌は、好ましくは、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)、肝癌組織でmiR-122の発現が低下されるC型肝炎ウイルス、アルコール、慢性肝炎、肝硬変症、非アルコール性脂肪肝疾患、アフラトキシン及び家族力からなる群より選択されるいずれか一つ以上を原因とするものであってもよい。
【0077】
本発明の一実施例で、多様な病因因子により発生した肝癌でmiR-122の発現量を分析した。その結果、HCVが病因である肝癌のうち一部と残り病因による肝癌は、正常の肝組織でのmiR-122発現量が肝癌組織での発現量より高かった。したがって、本発明によるリボザイムは、miR-122により正常肝組織ではその機能が弱化され、miR-122の発現が減少した肝癌組織では作用できることを確認した(図11)。
【0078】
また、本発明による肝癌は、ソラフェニブ(sorafenib)に抵抗性があるものであってもよい。ソラフェニブは、進行性肝癌に対する1次治療剤であり、本発明の一実施例で、本発明によるリボザイムは、ソラフェニブに対して感受性がある細胞株とない細胞株の両方で細胞死を誘発するので、ソラフェニブにより治療されないソラフェニブ抵抗性肝癌患者群にも適用が可能であることを確認した(図6)。
【0079】
本発明で用いられた用語「予防」は、本発明による組換えベクターを含む組成物の投与により癌を抑制させるか発病を遅延させる全ての行為を意味する。
【0080】
本発明で用いられた用語「治療」は、本発明によるベクターを含む組成物の投与により癌が好転されるか良好に変更する全ての行為を意味する。
【0081】
本発明による薬学的組成物は、 薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。本発明の薬学的組成物に用いられる薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、 澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与するか非経口投与することができるが、非経口で投与することが好ましい。
【0083】
本発明の一実施例によると、本発明による薬学的組成物は、静脈内、動脈内、癌組織内又は皮下に直接投与され得、注射剤で投与され得る。本発明による注射剤は、患者に投与するときそのまま用いられるように滅菌媒質に分散された形態であってもよく、投与するとき注射用蒸溜水を加えて適切な濃度で分散させた後に投与する形態であってもよい。また、注射剤で製造されるとき、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などと混合され得、単位投薬アンプル又は多重投薬形態で製造され得る。
【0084】
本発明の薬学的組成物の投与量は、患者の状態及び体重、重症度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。一方、本発明による薬学的組成物は、単独で用いられるか、又は外科的手術療法などの補助治療方法と並行して用いられ得る。
【0085】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書による実施例は、様々な他の形態に変形されることができ、本明細書の範囲が下で詳述する実施例によって限定されるものではない。本明細書の実施例は、当業界において平均的な知識を有した者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0086】
実施例1:hTERT標的トランスースプライシングリボザイム組換えベクターの製作
miR-122標的部位であるmiR-122Tを有するとともに高い発現率を示すhTERT標的トランス-スプライシングリボザイムを製作するために、既存のトランス-スプライシングリボザイムを変形した組換えベクターを考案した。
【0087】
具体的に、hTERT mRNAの+21番部位を標的にして、326ヌクレオチド長さのアンチセンス(antisense)配列(配列番号8)を保有し、治療遺伝子としてHSV-tkを保有する既存のトランス-スプライシングリボザイムにCMVプローモーターを導入した。CMVプローモーターとリボザイムの間には、SV40イントロンスプライシング供与体/受容体(SV40 intron splicing donor/acceptor、SD/SA)配列を挿入して転写効率を高めた。治療遺伝子であるHSV-tkの3'部位には、Woodchuck Hepatitis Virusの転写後調節因子(posttranscriptional Regulatory Element)であるWPREを挿入して治療遺伝子のタンパク質発現効率を高め、コンストラクト(construct)の3'末端部位に3コピー(copy)のmiR-122Tを挿入してmiR-122により調節されるようにした。
【0088】
考案されたトランス-スプライシングリボザイムの全体ベクター構造は、図1に示した通りであり、これをECRT-122Tと名付けた。
【0089】
実施例2:miR-122を発現するHep3B安定化細胞株(stable cell line)の製作
Hep3B細胞を35mm培養皿に2×10個分注した後、37℃、5%のCOインキュベーターで培養した。Tet-repressor(TetR)miR-122発現ベクター1μgとOpti-MEM 100μlを1.5mlチューブに入れて混ぜ、Lipofectamin2000 5μlと無血清培地100μlを他の1.5mlチューブに入れて混合した後、5分間常温に放置した。その後、上記二つのチューブの内容物を混合し、リボソーム(liposome)形態の複合体をなすように20分間常温で保管した。20分後、チューブを10秒間遠心分離した後にそれぞれの細胞上に振りかけて形質注入(transfection)し、4時間後に新しい培地に交替した。37℃、5%のCOインキュベーターで24時間の間培養した後、1X PBSで細胞を洗浄し、トリプシン(trypsin)を処理して細胞を離した後、100mm培養皿に移して培養した。2日~3日に一回ずつ抗生剤であるブラストサイジン(blasticidin)を5μg/mlの濃度で含む培地に交替した。細胞クローンを選別してそれぞれを育てた後、RT-PCRでTetRの発現を確認した。
【0090】
実験例1:ECRT-122Tの抗癌効能の確認(in vitro)
1-1.miR-122発現によるECRT-122Tの抗癌効能の比較
実施例1で製作したECRT-122Tの抗癌効能がmiR-122発現有無によって変わるかを確認した。
【0091】
hTERTは発現してmiR-122は発現しないHep3B細胞株、hTERT及びmiR-122を全て発現するHuh-7.5肝癌細胞株を準備し、1×10個の細胞を96-ウェルに分注した。翌日、細胞に処理する感染多重度(Multiplicity of Infection、MOI)によってアデノウイルス(type5)を細胞培養培地で段階別に希釈し、総体積100μlで作った後に各ウェルに処理した。用いたベクターは次のようである:miR-122Tを有するECRT-122T;miR-122Tを有しないECRT;及びCMVプローモーター、hTERT標的トランス-スプライシングリボザイム及びHSVtkで構成されたCRT。アデノウイルスを処理して24時間後にGCV(ganciclovir)を細胞培養培地に希釈し、最終的に、200μMになるように混ぜた後に各ウェルに処理した。2日間隔で総3回のGCVを処理し、最後のGCV処理24時間後にMTS assay試薬を入れた後、450nmの波長で吸光度を測定して生きている細胞を確認した。
【0092】
その結果、図2の(a)に示したように、miR-122を発現しないHep3B細胞株では、miR-122標的部位の有無に関係なく(ECRT、ECRT-122T)同一な細胞死が誘導された。SD/SA、WPRE及びmiR-122Tを保有しないCRTは、細胞死を誘導したが、ECRT及びECRT-122Tより効果が落ちた。その結果から、ECRT及びECRT-122Tに導入された因子によりリボザイムの作用効率が高くなったことが分かった。
【0093】
一方、図2の(b)に示したように、miR-122を発現するHuh-7.5細胞株では、ECRT-122Tによる細胞死誘導効果が減少した。それを通じて、ECRT-122Tに導入されたmiR-122標的部位にmiR-122が作用してリボザイムの作用を妨害したことが分かった。しかし、ECRT-122Tは相変らずCRTを処理したレベルの細胞死を誘導した。それを通じて、miR-122TによりmiR-122の調節を受けたが、リボザイムの高い発現によりある程度のmiR-122発現にもかかわらず抗癌効果を示すことができることを確認した。
【0094】
1-2.プローモーターによるECRT-122Tの抗癌効能の比較
実施例1で製作したECRT-122Tの抗癌効果を構成が異なる他のベクターと比較した。
【0095】
具体的に、hTERTは発現されてmiR-122は発現されないHep3B、SNU398及びSNU449細胞株と、hTERT及びmiR-122が全て発現されるHuh-7及びHuh-7.5肝癌細胞株を準備した。前記細胞株に、ECRT-122T、ECRT、CRTに肝特異的プローモーターであるPEPCKプローモーター、SD/SA、WPRE及びmiR-122Tを導入したEPRT-122T又はmiR-122Tを有しないEPRTを処理した後、相対的な細胞生存率を比較した。細胞増殖分析は、実験例1-1と同一の方法で行った。
【0096】
その結果、図3に示したように、miR-122を発現しない細胞株では、miR-122標的部位の有無に関係なく(ECRT、ECRT-122T)同一な細胞死が誘導された。ECRT-122Tは、EPRT-122Tより低いウイルスMOI処理サンプルでも高い割合で細胞死滅を誘導した。それを通じて、組織特異的プローモーターであるPEPCKよりCMVプローモーターが一層強力にリボザイムの発現を増加させて少ない量のウイルスが処理されたサンプルでも高い抗癌効能を示すことができることが分かった。また、ECRT-122Tは、miR-122TがないECRTと同一な抗癌効能を示したことから、miR-122T導入によるリボザイムの活性低下がないことが分かった。
【0097】
一方、図4に示したように、miR-122を発現する細胞株では、EPRT-122Tによる細胞死が観察されなかった。その結果から、miR-122がmiR-122Tに作用してリボザイムの発現を減少させたことが分かった。しかし、ECRT-122Tは、miR-122の発現にもかかわらず細胞死滅を誘導したことから、PEPCKよりCMVプローモーターが一層強力にリボザイムの発現を増加させることが分かった。ただし、miR-122のない細胞株と異なりECRT-122Tによる細胞死程度がECRTよりは低かったことから、ECRT-122TのmiR-122TがmiR-122により調節されてリボザイムの発現が低くなったことが分かった。
【0098】
追加に、多様な肝癌細胞株でCRT-122T、ECRT-122T及びEPRT-122Tの抗癌効果を比較した。その結果、図5に示したように、ほとんど全ての肝癌細胞株でECRT-122TのMOIが増加するによって細胞死が増加し、比較群(CRT-122T及びEPRT-122T)よりECRT-122Tの抗癌効果が優れた。
【0099】
本実験例の結果から、リボザイムにCMVプローモーター、SD/SA及びWPREを導入することで、リボザイムの発現が増加して抗癌効果が増加し、miR-122Tの導入によってmiR-122によるリボザイムの活性が調節できるので、ECRT-122Tは、肝癌治療において抗癌効能と安全性が最適化された物質であることが分かった。
【0100】
1-3.ECRT-122Tのソラフェニブ(sorafenib)抵抗性肝癌への適用
進行性肝癌に対して、1次治療剤で用いられているソラフェニブに感受性のある肝癌でECRT-122Tの抗癌効能を確認した。
【0101】
具体的に、ソラフェニブに対して感受性のある肝癌患者又は感受性のない(抵抗性がある)肝癌患者由来の細胞株を準備し、ECRT-122T又はECRTを処理した後、相対的な細胞生存率を比較した。細胞増殖分析は、実験例1-1と同一の方法で行った。
【0102】
その結果、図6に示したように、ソラフェニブに対して感受性のある細胞株と感受性のない細胞株で全て細胞死が観察された。その結果から、ECRT-122Tは、ソラフェニブにより治療できないソラフェニブ抵抗性肝癌患者群にも適用可能であることが分かった。
【0103】
実験例2:ECRT-122Tの抗癌効能の確認(in vivo)
肝癌動物モデルでECRT-122Tによる抗癌効能及び肝毒性を確認した。
【0104】
脾臓内肝転移マウスモデルに、miR-122を発現しないHep3B細胞株を脾臓に注入して同所の(orthotopic)多発性(multifocal)肝癌を誘発し、ECRT又はECRT-122Tを発現するアデノウイルスを尾静脈注入(tail-vein injection)で全身投与した後、GCVを注入して抗癌効能を確認した。
【0105】
その結果、図7の(a)及び図7の(b)に示したように、対照群(PBS注入)に比べてECRT-122Tを注入した実験群では、大部分の癌が死滅した。このとき、同一量のウイルスを注入した実験群で、miR-122Tを保有しないECRTよりECRT-122Tが一層優れた抗癌効能を示した。その結果から、miR-122Tの導入により正常肝組織ではリボザイムの発現が抑制されるので、正常肝では安全性を確保することができ、癌組織では高い抗癌効能を示すことが分かった。また、図7の(c)に示したように、対照群(PBS注入)に比べてECRT-122Tを注入した実験群は類似なレベルの肝毒性数値を示した。その結果から、アデノウイルスを用いたECRT-122T生体内伝達が適切であることが分かった。
【0106】
実験例3:miR-122発現量とリボザイム発現量の相関関係
miR-122の発現量によるリボザイムの作用を分析するために、miR-122発現量とリボザイム発現量の相関関係を分析した。
【0107】
hTERT及びmiR-122が全て発現されるHuh-7及びHuh-7.5肝癌細胞株を準備し、ECRT、ECRT-122T、EPRT又はEPRT-122Tを発現するアデノウイルスを処理した後、TRI試薬で総RNA 5μgを抽出した。
【0108】
抽出した総RNAに、ランダムプライマー(5'-NNNNNN-3')で逆転写過程を行ってcDNAを合成し、合成したcDNA 2μlに10× PCRバッファー、dNTP 10mM、それぞれのプライマー10pmole、taq polymerase 2.5unit、10x cybergreen 1μlを添加した後、dHOで最終体積70μlを合わせた。これを20μlずつ分注し、95℃で30秒、58℃で30秒、72℃で30秒、40サイクルの条件でリアルタイムPCRを行ってリボザイムの発現量を確認した。リボザイムのPCRに用いたプライマー配列は、下記表1の通りである。
【0109】
【表1】
【0110】
次に、抽出した総RNAからmature miR-122 probe(ABI)を用いてcDNAを合成し、合成したcDNA 2μlに20x Taqman small RNA assay 3.5μl、2x Taqman Universal PCR Master Mix II(ABI)35μlを添加して、dHOで最終体積70μlを合わせた。これを20μlずつ分注し、95℃で15秒、60℃で60秒、40サイクルの条件でPCRを行ってmiR-122の発現量を確認した。miR-122のPCRは、ABI社で提供するTaqman probeを用いた(Assay ID:002245)。
【0111】
その結果、図8の(c)に示したように、Huh-7細胞株では、miR-122が約1000~2000コピー程度発現されることを確認し、図8の(b)に示したように、ECRT-122T又はECRT処理群は全てMOIが増加するによってリボザイムの発現量が増加することが分かった。また、感染濃度5MOI以下では、ECRT処理群よりECRT-122T処理群でリボザイムが一層たくさん発現されるが、10 MOIを処理すると、ECRT処理群よりECRT-122T処理群でリボザイム発現量が減少した。それを通じて、Huh-7が発現するmiR-122がmiR-122Tに作用してリボザイムの発現を減少させたことが分かった。
【0112】
一方、ECRT-122Tを10 MOIで処理したときのリボザイム及びmiR-122のコピー数割合は、約1:2.5(600コピー:1500コピー)であって、MOIによる細胞死割合を確認した図4の(a)で、10 MOIでもECRT-122Tによる細胞死が誘導されることは、リボザイムに対するmiR-122の割合が低くてmiR-122によるリボザイムの発現抑制が不十分に行われたからであることが分かった。
【0113】
一方、図9の(c)に示したように、Huh-7.5細胞株では、miR-122が約10000~15000コピー程度発現された。これは、Huh-7より高い数値として、リボザイムによる細胞死誘導程度がHuh-7でより低いことが分かった。また、図9の(b)に示したように、Huh-7とは反対に、同一な感染条件でECRT-122T処理群よりECRT処理群のリボザイム発現量が同一であるか高く、10 MOIを処理した場合、発現されるリボザイムのコピー数がHuh-7(約600コピー)でより一層低かった(約120コピー)。前記結果とMOIによる細胞死割合を示した図4の(b)の結果から、リボザイムとmiR-122の割合が高くなるほどリボザイムの発現が減少して細胞死誘導効果が減少することが分かった。
【0114】
実験例4:miR-122の発現量によるリボザイムの作用
miR-122の発現量とリボザイムの相互作用をより詳しく分析するため, miR-122の発現量によるリボザイムの作用を分析した。
【0115】
実施例2で製作したmiR-122テトラサイクリン-オンシステムを有した安定化細胞株(Hep3B)に、EPRT、EPRT-122T又はmiR-122が結合しないように任意に配列を変えた突然変異miR-122標的部位を保有したEPRT-mt 122Tベクターを発現するアデノウイルスを処理した後、相対的な細胞生存率を比較した。実施例2で製作した細胞株は、テトラサイクリン処理濃度に依存的にmiR-122の発現が増加し、発現程度がそれぞれ異なる3個のクローンの安定化細胞株を用いて実験を行った。細胞増殖分析は、実験例1-1と同一の方法で行った。
【0116】
その結果、図10に示したように、EPRT-122T処理群は、テトラサイクリン処理濃度が増加するによってmiR-122コピー数が増加し、それによって、EPRT-122Tによる細胞死が減少した。一方、EPRT、EPRT-mt 122T処理群又は陽性対照群であるPTの場合、miR-122発現量とは関係なく細胞死誘導効果が維持された。また、テトラサイクリン処理濃度が増加するによってmiR-122のコピー数は増加し、それによって、リボザイムのコピー数は減少した。前記効果は、実験に用いた3個の独立的クローンで全て同一であった。
【0117】
前記実験で確認されたmiR-122とリボザイムのコピー数間の相関関係を数値化した。その結果、下記表2に示したように、細胞株ごとにその割合は異なるが、miR-122の最小コピー数がリボザイムコピー数の約100倍以上であると、miR-122標的部位を有するリボザイムの機能が顕著に弱化された。この結果から、miR-122標的部位を保有したトランス-スプライシングリボザイムは、miR-122により発現が調節できるので、miR-122の発現量によって抗癌効果を示すためのリボザイムの量を類推してリボザイムを発現するアデノウイルスの注入量を決定することができることが分かった。
【0118】
【表2】
【0119】
実験例5:肝癌患者組織でmiR-122の発現分析
肝癌患者の正常肝組織と肝癌組織でmiR-122の発現をリアルタイムPCRで分析した。
【0120】
具体的に、大韓民国内肝癌患者70人の人体由来物組織の分譲を受けてmiR-122発現を分析した。肝癌患者の正常肝組織、肝癌組織をそれぞれ1mlのTrizol溶液に浸した後、均質化(homogenization)して粉砕して常温に5分間放置した。その後、0.2mlのクロロホルムを添加して常温で3分間放置し、これを12,000rpmで4℃で30分間遠心分離して上層液のみ分離した。分離した上層液に0.5mlのイソプロパノールを添加して-20℃で反応させ、これをさらに14,000rpmで4℃で20分間遠心分離してRNAペレットを得た後、100μlのRNase-free waterにとかした。抽出したRNA 50ngをTaqMan miRNA Reverse Transcription kit方法によって逆転写してcDNAを合成し、合成されたcDNA 1μlをTaqMan 2X Universal PCR Master Mixと混ぜてABI StepOne plus装備でPCRを行った。PCRは、ABI社で提供するTaqman probeを用いて行った(Assay ID:002245)。
【0121】
その結果、図11の(a)に示したように、70人のうち48人の患者(68.6%)で正常肝組織より肝癌組織でのmiR-122の発現量が低く現われた。病因によって分析した結果、図11の(b)、図11の(d)~図11の(f)に示したように、HBV連関患者8人のうち8人、アルコール連関患者2人のうち2人、慢性肝炎連関患者7人のうち6人、その以外の肝癌病因患者35人のうち26人が肝癌組織でmiR-122の発現が正常肝組織より低いことで現われた。一方に、図11の(c)に示したように、HCV連関患者群では18人のうち6人だけが肝癌組織でmiR-122の発現が低く現われた。その結果から、HCVが原因である肝癌では他の病因とは反対に、むしろ肝癌が進行される場合にmiR-122の発現が増加又は維持される患者がもっと多いことが分かった。
【0122】
また、統計分析を実施した結果、下記表3に示したように、HCV連関患者の場合、miR-122の発現が正常肝組織より肝癌組織で高く観察される現象が統計的に有意であり、他の肝炎ウイルスであるHBVの場合は、全ての肝癌組織でmiR-122の発現が減少される現象が統計的に有意であった。その結果から、HCV連関患者の肝癌組織でmiR-122の発現が減少されないか増加する結果は統計的に意味があり、これは肝炎ウイルスによる一般的現象ではないHCV特異的現象であることが分かった。
【0123】
【表3】
【0124】
前記結果から、HCVが病因である肝癌のうちmiR-122発現が正常肝組織より肝癌組織で増加された患者を除いた残り肝癌患者にECRT-122Tを適用すると、miR-122により正常肝組織では作用せず、miR-122の発現が減少している肝癌組織では作用するので、癌特異的に抗癌作用を示すことができる。
【0125】
追加に、患者の肝癌細胞に由来した肝癌細胞株でhTERTのmRNA及びタンパク質レベル及びmiR-122レベルを分析した。肝癌細胞株を培養して当業界に知られた方法によってRNA及びタンパク質を分離した。RNAは、qRT-PCTに用い、タンパク質は電気永動してウエスタンブロッティングを行った。
【0126】
その結果、図12の(a)及び図12の(b)に示したように、大部分の肝癌細胞株でECRT-122Tの標的分子であるhTERT mRNAが発現されることを確認することができ、hTERTタンパク質レベルも類似な傾向を示した。また、肝癌で発現が減少しているという報告と同様に各肝癌細胞株でmiR-122がほとんど発現されないことを確認した(図12の(c))。
【0127】
実験例6:miR-122を発現しない肝癌外の他の癌腫への適用
6-1.細胞実験(in vitro)
miR-122を実質的に発現しない組織の癌細胞株でECRT-122Tの抗癌効能を確認した。
【0128】
具体的に、hTERTを発現する膠芽腫細胞株、大腸癌細胞株、黒色腫細胞株、子宮頸部癌細胞株、肺癌細胞株、骨肉種細胞株、乳房癌細胞株及び胆管癌細胞株に、ECRT-122Tを発現するアデノウイルスを処理した後、相対的な細胞生存率を比較した。細胞増殖分析は、実験例1-1と同一の方法で行った。
【0129】
その結果、図13に示したように、ほとんど全ての癌細胞株でMOIが増加するによって細胞死が増加し、比較群(CRT-122T及びEPRT-122T)よりECRT-122Tの抗癌効果が優れた。具体的に、肝組織特異的プローモーターを含むEPRT-122Tは、細胞死を誘導することができない場合が多く、CRT-122Tは、細胞死は誘導するがECRT-122Tよりその効率が低かった。
【0130】
膠芽腫細胞株であるT98GとU87MG細胞株では、約1 MOI以下で90%程度の細胞死が現われ、LN229細胞株では、5 MOI以上で90%程度の細胞死が現われた。また、子宮頸部癌細胞株であるHeLa細胞株では、0.5 MOI以下で90%以上の細胞死が現われ、黒色腫細胞株であるSK-MEL2細胞株では、約1 MOI以下で90%程度の細胞死を確認することができた。
【0131】
また、図14に示したように、胆管癌細胞であるSNU478とSNU869細胞株でもMOIが増加するによって細胞死が増加した。
【0132】
6-2.動物実験(in vivo)
6週齢の雄Balb/c-nunuマウスに膠芽腫細胞であるLN229細胞株1x10個(100μl)又はU87MG細胞株5x10個(100μl)を皮下に注入して腫瘍形成を誘導した。腫瘍が一定サイズに成長すると、ECRT-122Tを発現するアデノウイルスを1.0x10VP(100μl)用量で2日に一回ずつ総3回注入した。GCVは、一番目のウイルス注入24時間後から50mg/kg用量を一日に2回ずつ10日間投与(総20回)した。
【0133】
実験結果、図15に示したように、対照群(Ad-EGFP注入)では腫瘍サイズが継続増加するが、ECRT-122Tを注入した実験群では腫瘍がほとんど生長しないことが分かり、腫瘍の重量も全てのECRT-122Tを注入した実験群で少なかった。また、図16に示したように、U87MG細胞株を用いた実験でもECRT-122Tの腫瘍生長抑制効果を確認することができた。
【0134】
本実験例の結果から、ECRT-122Tから発現されるリボザイムは、肝癌以外にmiR-122を発現しない多様な癌腫に対しても効果的に適用できることを確認した。また、ECRT-122Tを肝癌以外の他の癌に対する抗癌剤で全身又は局所投与すると、正常肝に導入されるが、このとき、miR-122Tの作用により正常肝での毒性誘導を抑制することができる。
【0135】
実験例7:ECRT-122Tの生体内分布の確認
7-1.静脈注入
正常ICRマウスにECRT-122Tを発現するアデノウイルスを2.5x1010VP用量で静脈注射で注入し、8日、11日及び15日後に各主要臓器を分離してDNAを抽出した。抽出したDNAを主型にして、リボザイム検出用プライマーセットでPCRを行って主要組織でECRT-122Tの分布を確認した。
【0136】
その結果、図17に示したように、注入した大部分のアデノウイルスが肝に分布することを確認することで、肝癌を標的にするECRT-122Tの伝達にアデノウイルスが適合であることが分かった。 また、注入したECRT-122Tは、全身導入した後11日目に血液内で完全に消失し、全身注入8日後から2週以内にウイルス性DNAの70%が消失されることを確認することができた。
【0137】
7-2.肝動脈(hepatic artery injection)注入
ラット(rat)にECRT-122Tを発現するアデノウイルスを2.5x1011VP用量で肝動脈注射(hepatic artery injection)で注入し、前記7-1と同一の方法で主要組織でECRT-122Tの分布を確認した。
【0138】
その結果、図18に示したように、注入後2日目に肝で最も多い量のECRT-122T DNAが現われることを確認することができ、このような傾向は、注入後14日まで維持された。ウイルス性DNAは、注入後14日に肝で98%が消失され、他の組織でもほとんど大部分消失された。
【0139】
また、ラットの各臓器でゲノムDNA(gDNA)を分離してHSVtk DNAを定量した。その結果、図19に示したように、注入後14日目にほとんど全ての臓器でHSVtk DNAが消失されることが分かった。
【0140】
ラットの肝で総RNAを抽出し、qRT-PCRでリボザイム発現程度を確認した。 その結果、図20の(a)に示したように、ECRT-122Tを注入した後2日目からリボザイムが発現されることが分かり、注入後14日には、2日目に比べて約3.85%のリボザイムのみ発現されることを確認することができた。ゲノムDNAでも確認した結果、図20の(b)に示したように、注入後2日目に比べて14日目には、アデノウイルスのgDNAがほとんど消失されて約2.23%程度のみ残っていることが分かった。
【0141】
前記結果を通じて、ECRT-122Tアデノウイルスを静脈又は動脈に注入しても生体内分布は類似に現われ、注入後14日が経過すると、ウイルス性DNAはほとんど消失されることが分かった。
【0142】
実験例8:GCV処理有無によるECRT-122Tの毒性確認
8-1.GCV未処理
正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを1回注入し、注入後15日、29日にAST及びALTレベルを測定した。
【0143】
その結果、図21に示したように、2.5x1010VP実験群で微弱な毒性が現われ、残り用量の実験群では、PBS注入群と類似な程度のAST及びALTレベルが現われて毒性がほとんどないことが分かった。
【0144】
また、図22に示したように、実験期間の間マウスの体重、飼料消費量及び肝重量において異常所見は確認されなかった。アデノウイルスを静脈内に1回投与した後29日後に実施した肝の組織病理学的検査結果、図23に示したように、2.5x1010VP実験群(G3)で肝細胞壊死(矢印)と炎症が観察されて微弱な肝損傷が誘発されたことが分かった。1.0x1010VP実験群(G2)では、炎症性細胞が局所的に浸潤(矢印)されたが、肝損傷は誘発されないことを確認することができた。図21で、cvは、中心静脈(central vein)、pは、門脈空間(portal area)を意味する。
【0145】
下記表4に組織病理学的検査結果を整理した。
【0146】
【表4】
【0147】
8-2.GCV処理
正常ICRマウスにECRT-122Tアデノウイルスを注入し、GCVを1日2回ずつ10日間投与した後、AST及びALTレベルを測定した。
【0148】
その結果、図24に示したように、2.5x1010VP実験群を除いた残り用量の実験群では、対照群(PBS注入群)と類似な程度のAST及びALTレベルが現われて毒性がほとんどないことが分かった。
【0149】
また、図25の(a)及び図25の(b)に示したように、実験過程の間マウスの体重、飼料消費量は有意味した変化がなく、図25の(c)に示したように、肝重量も異常所見が確認されなかった。
【0150】
肝の組織病理学的分析結果、図26に示したように、PBS注入群(G1)、PBS+GCV投与群(G2)及び0.25x1010VP+GCV投与群(G5)では、異常所見が確認されなかった。一方、1.0x1010VP+GCV投与群(G3)では、中性区の浸潤により形成された局所微細膿瘍(microabscess)(太い矢印)が確認されたが、肝損傷は誘発されなかった。2.5x1010VP+GCV投与群(G4)では、大きい核を有する肥大化された肝細胞、怪死性肝細胞(太い矢印)、多発性炎症細胞浸潤(原)、増加された肝細胞類似分裂(太い矢印)及び胆細管(b)周辺のリンパ構成細胞の浸潤が観察されて肝損傷が誘発されたことが分かった。GCVを投与しないG6(1.0x1010VP注入群)では、類似分裂する肝細胞(矢印)の数が多少増加した。
【0151】
下記表5に組織病理学的検査結果を整理した。
【0152】
【表5-1】
【表5-2】
【0153】
AST及びALTレベル、組織病理学的検査結果、アデノウイルスを2.5x1010VP/head用量で静脈内に投与し、GCVを1日2回、10日間投与すると、肝細胞怪死と炎症を誘発するなど肝損傷が誘導されることで現われた。しかし、0.25x1010VP/head及び1.0x1010VP/headで単独又はGCVと併用投与したとき、投与後15日までは肝損傷と関連されたAST及びALT数値が増加したが、29日目に実施した組織学的検査では、肝でアデノウイルス投与と関連されたと判断される意味のある毒性学的変化は観察されなかった。
【0154】
比較例1:CRT-122T及びECRT-122Tの効能の比較
1-1.抗癌効能の比較
マウス国際標準モデルにHep3B細胞を3x10個注入して肝癌形成を誘導し、CRT-122T又はECRT-122Tベクターを含むアデノウイルスを投与して抗癌効能を比較した。前記CRT-122Tは、ECRT-122TでSV40イントロンスプライシング供与体/受容体(SD/SA)配列、WPREが除去された形態である。
【0155】
その結果、図27に示したように、アデノウイルスを2.5x1010VP(virus particle)で注入したとき、CRT-122Tに比べてECRT-122Tの抗癌効能がさらに優れたことが分かった。CRT-122Tの抗癌効能は、ECRT-122Tを1.25x1010VP用量で投与したものと類似であった。
【0156】
1-2.抗癌効能の比較
マウス異種移植皮下モデル(mouse xenograft subcutaneous model)にSNU398細胞を注入して腫瘍形成を誘導し、腫瘍が一定サイズ以上に成長すると、CRT-122T又はECRT-122Tベクターを含むアデノウイルスを1x10VP用量で2日に一回ずつ、総2回癌組織内に注入(intratumoral injection、I.T.injection)した。 アデノウイルスを注入した後、マウスを飼育しながら3日間隔で腫瘍サイズ、体重を測定し、22日後にマウスを犠牲させて最終腫瘍サイズ、肝重量、AST(aspartate transaminase)及びALT(alanine transaminase)レベルを測定した。
【0157】
その結果、図28の(a)及び図28の(b)に示したように、CRT-122Tに比べてECRT-122Tの抗癌効能がさらに優れることを確認することができた。マウスの体重と肝重量は、実験群の間に有意味した差がなく、AST及びALTレベルからアデノウイルスが肝毒性を誘導しないことが分かった(図28の(c)~図28の(e))。
【0158】
前記結果を通じて、少量のアデノウイルスのみ注入しても十分な抗癌効果を得ることができることを確認し、CRT-122Tに比べてECRT-122Tの抗癌効能が顕著に優れることが分かった。
【0159】
1-3.毒性の比較
アデノウイルスの注入用量による毒性を確認するために、正常ICRマウスにECRT又はECRT-122Tアデノウイルスを注入し、注入後2日、7日及び14日にAST及びALTレベルを測定した。
【0160】
その結果、図29に示したように、ECRTを2.5x1010VP用量で投与したマウスでは、非常に高い肝毒性が注入後14日目まで維持されたが、ECRT-122Tを2.5x1010VP用量で投与したマウスでは、ECRTに比べて肝毒性が非常に低いことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【配列表】
0007053697000001.app